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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180070
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 9/20 20060101AFI20241219BHJP
   B60C 9/00 20060101ALI20241219BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20241219BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20241219BHJP
   B60C 13/00 20060101ALI20241219BHJP
   B60C 15/06 20060101ALI20241219BHJP
   B60C 5/14 20060101ALI20241219BHJP
   B60C 9/18 20060101ALI20241219BHJP
   B60C 9/22 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B60C9/20 E
B60C9/00 J
B60C11/00 D
B60C11/00 F
B60C11/03 Z
B60C13/00 E
B60C15/06 C
B60C15/06 B
B60C5/14 Z
B60C9/20 G
B60C9/18 K
B60C9/22 C
B60C9/18 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】31
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099505
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】御▲崎▼ 桃加
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA02
3D131AA03
3D131AA04
3D131AA07
3D131AA10
3D131AA12
3D131AA15
3D131AA32
3D131AA39
3D131AA45
3D131AA49
3D131BA01
3D131BA02
3D131BA03
3D131BA05
3D131BA07
3D131BA08
3D131BA11
3D131BA18
3D131BB01
3D131BB03
3D131BB06
3D131BB10
3D131BB11
3D131BC31
3D131CB11
3D131DA33
3D131DA43
3D131DA52
3D131DA54
3D131DA57
3D131EA02U
3D131EA10V
3D131EB07U
3D131HA33
3D131HA38
3D131JA02
(57)【要約】
【課題】耐久性能が向上したタイヤを提供すること。
【解決手段】トレッドと、サイドウォールと、クリンチと、それぞれにビードコアが埋設された一対のビード部と、インナーライナーと、スチールコードを有する少なくとも1つのタイヤ部材とを備えるタイヤであって、スチールコードを有する少なくとも1つのタイヤ部材が1×1構造のスチールコードを有する、少なくとも1層のプライを含む、タイヤ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッドと、
サイドウォールと、
クリンチと、
それぞれにビードコアが埋設された一対のビード部と、
インナーライナーと、
スチールコードを有する少なくとも1つのタイヤ部材とを備えるタイヤであって、
前記スチールコードを有する少なくとも1つのタイヤ部材が1×1構造のスチールコードを有する、少なくとも1層のプライを含む、タイヤ。
【請求項2】
前記スチールコードの外径Dmmが0.50mm以下である、請求項1記載のタイヤ。
【請求項3】
前記スチールコードのタイヤ幅方向50mmあたりの配列本数が60本/50mm以下である、請求項1または2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記トレッドはゴム成分を含むゴム組成物により構成され、前記トレッドはトレッド接地面を構成するキャップゴム層を含み、前記キャップゴム層の30℃におけるtanδ(30℃tanδTc)と前記トレッドの厚みGTmmとの積(30℃tanδTc×GT)が9.0以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記トレッドはゴム成分を含むゴム組成物により構成され、前記トレッドはトレッド接地面を構成するキャップゴム層を含み、前記トレッドの厚みGTmmに対する前記キャップゴム層の30℃における複素弾性率(30℃E*Tc)の比(30℃E*Tc/GT)が0.2以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記トレッドの陸部面積比率が40%以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記サイドウォールはゴム成分を含むゴム組成物により構成され、前記ゴム組成物の70℃におけるtanδ(70℃tanδs)が、0.03以上0.20以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記サイドウォールはゴム成分を含むゴム組成物により構成され、前記ゴム組成物の70℃における複素弾性率(70℃E*s)が、2.5MPa以上6.5MPa以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項9】
タイヤ断面高さHtmmに対する前記クリンチの高さHcmmの比(Hc/Ht)が、0.45以下である、請求項1~8のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記クリンチはゴム成分を含むゴム組成物により構成され、前記ゴム組成物の70℃におけるtanδ(70℃tanδc)と、前記クリンチの高さHcmmとの積(70℃tanδc×Hc)が、0.6以上14.0以下である、請求項1~9のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記クリンチはゴム成分を含むゴム組成物により構成され、前記クリンチの高さHcmmに対する前記ゴム組成物の70℃における複素弾性率(70℃E*c)の比(70℃E*c/Hc)が、0.07以上0.75以下である、請求項1~10のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項12】
前記クリンチはゴム成分を含むゴム組成物により構成され、前記ゴム組成物の70℃における複素弾性率を70℃E*cとしたとき、前記クリンチの厚さGcmmと70℃E*cの積(Gc×70℃E*c)が25以上450以下である、請求項1~11のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項13】
前記ビード部はビードエイペックスを備え、前記ビードエイペックスはゴム成分を含むゴム組成物により構成され、前記ビードエイペックスのタイヤ半径方向高さHBAmmと前記ゴム組成物の70℃におけるtanδ(70℃BA)との積(HBA×70℃tanδBA)が0.3以上12.0以下である、請求項1~12のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項14】
前記ビード部はビードエイペックスを備え、前記ビードエイペックスはゴム成分を含むゴム組成物により構成され、前記ビードエイペックスのタイヤ半径方向高さHBAmmと前記ゴム組成物の70℃における複素弾性率(70℃E*BA)との積(HBA×70℃E*BA)が100以上9000以下である、請求項1~13のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項15】
前記インナーライナーはゴム成分を含むゴム組成物により構成され、インナーライナーの厚みGImmと前記ゴム成分の70℃におけるtanδ(70℃tanδI)の積(GI×70℃tanδI)が0.02以上1.40以下である、請求項1~14のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項16】
前記スチールコードを有する少なくとも1つのタイヤ部材がベルト層であって、
前記ベルト層は、1×1構造のスチールコードからなるベルトコードと前記ベルトコードを被覆するベルトトッピングゴムとから構成される少なくとも1層のベルトプライを含むものである、請求項1~15のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項17】
前記ベルトプライの厚さGbが0.5mm以上1.2mm以下である、請求項16記載のタイヤ。
【請求項18】
前記ベルトコードが、長手方向にくせ付けを施され、前記くせ付けのピッチPが3mm以上30mm以下である、請求項16または17記載のタイヤ。
【請求項19】
前記ベルトコードの強力が200N以上580N以下である、請求項16~18のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項20】
前記ベルトコードの占有面積比率が9%以上18%以下である、請求項16~19のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項21】
前記ベルトトッピングゴムの70℃におけるtanδ(70℃tanδBE)が0.13以上である、請求項16~20のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項22】
前記ベルトトッピングゴムの100%モジュラスが5.0MPa以上10.0MPa以下である、請求項16~21のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項23】
前記ベルトトッピングゴムからの、ASTM-1871に準拠して測定されたスチールコードの引抜力が、500N以上2000N以下である、請求項16~22のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項24】
前記ベルト層が2層以上のベルトプライからなり、タイヤ回転軸を通る断面において、隣り合う2層のスチールコード間のタイヤ赤道面上での距離GBBが0.5mm以上である、請求項16~23のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項25】
乗用車用タイヤである、請求項1~24のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項26】
前記スチールコードを有する少なくとも1つのタイヤ部材がバンドであって、
前記バンドは、1×1構造のスチールコードからなるバンドコードと前記バンドコードを被覆するバンドトッピングゴムとから構成される少なくとも1層のバンドプライを含むものである、請求項1~24のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項27】
前記バンドコードの占有面積比率が30%以上60%以下である、請求項26記載のタイヤ。
【請求項28】
前記バンドコードの44N負荷時の中間伸度が1.2%以上9.5%以下である、請求項26または27記載のタイヤ。
【請求項29】
前記バンドコードの熱収縮率が0.1%以上5.0%以下である、請求項26~28のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項30】
前記バンドコードの強力が120N以上700N以下である、請求項26~29のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項31】
重荷重用タイヤである、請求項1~24および26~30のいずれか一項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種タイヤ性能を改善する手法が種々検討されており、例えば、特許文献1には、並列した多数のベルトコードを含むベルトと、螺旋状に巻かれたバンドコードを含むバンドとを備えることで、走行による形状変化を抑え、耐偏摩耗性の向上を達成できる、重荷重用空気入りタイヤが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-47999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、ライフ性能向上の観点から、タイヤの耐久性能の向上が望まれていることから、タイヤの耐久性能をさらに向上させていくことが望まれていると考えられる。本発明は、前記課題を解決し、耐久性能の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
トレッドと、
サイドウォールと、
クリンチと、
それぞれにビードコアが埋設された一対のビード部と、
インナーライナーと、
スチールコードを有する少なくとも1つのタイヤ部材とを備えるタイヤであって、
前記スチールコードを有する少なくとも1つのタイヤ部材が1×1構造のスチールコードを有する、少なくとも1層のプライを含む、タイヤである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、耐久性能が向上したタイヤが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】タイヤ回転軸を通る平面によるタイヤの断面図である。
図2】タイヤのトレッドパターンを模式的に示した図である。
図3】タイヤのトレッドパターンを模式的に示した図である。
図4】タイヤ径方向から見たベルト層を模式図に示した図である。
図5】タイヤ回転軸を通る平面によるベルト層の断面を模式的に示した図である。
図6】ベルトプライ1層の、ベルトコードの長手方向に垂直な平面による断面を模式的に示した図である。
図7】タイヤ回転軸を通る平面によるランフラットタイヤの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態であるタイヤは、トレッドと、サイドウォールと、クリンチと、それぞれにビードコアが埋設された一対のビード部と、インナーライナーと、スチールコードを有する少なくとも1つのタイヤ部材とを備えるタイヤであって、前記スチールコードを有する少なくとも1つのタイヤ部材が1×1構造のスチールコードを有する、少なくとも1層のプライを含む、タイヤである。
【0009】
前記スチールコードの外径Dmmは0.50mm以下であることが好ましい。
【0010】
前記スチールコードのタイヤ幅方向50mmあたりの配列本数は60本/50mm以下であることが好ましい。
【0011】
前記トレッドはゴム成分を含むゴム組成物により構成され、前記トレッドはトレッド接地面を構成するキャップゴム層を含み、前記キャップゴム層の30℃におけるtanδ(30℃tanδTc)と前記トレッドの厚みGTmmとの積(30℃tanδTc×GT)が9.0以下であることが好ましい。
【0012】
前記トレッドはゴム成分を含むゴム組成物により構成され、前記トレッドはトレッド接地面を構成するキャップゴム層を含み、前記トレッドの厚みGTmmに対する前記キャップゴム層の30℃における複素弾性率(30℃E*Tc)の比(30℃E*Tc/GT)は0.2以下であることが好ましい。
【0013】
前記トレッドの陸部面積比率は40%以上であることが好ましい。
【0014】
前記サイドウォールはゴム成分を含むゴム組成物により構成され、前記ゴム組成物の70℃におけるtanδ(70℃tanδs)は、0.03以上0.20以下であることが好ましい。
【0015】
前記サイドウォールはゴム成分を含むゴム組成物により構成され、前記ゴム組成物の70℃における複素弾性率(70℃E*s)は、2.5MPa以上6.5MPa以下であることが好ましい。
【0016】
タイヤ断面高さHtmmに対する前記クリンチの高さHcmmの比(Hc/Ht)が、0.45以下であることが好ましい。
【0017】
前記クリンチはゴム成分を含むゴム組成物により構成され、前記ゴム成分の70℃におけるtanδ(70℃tanδc)と、クリンチの高さHcmmとの積(70℃tanδc×Hc)は、0.6以上14.0以下であることが好ましい。
【0018】
前記クリンチはゴム成分を含むゴム組成物により構成され、Hcmmに対する前記ゴム組成物の70℃における複素弾性率(70℃E*c)の比(70℃E*c/Hc)は、0.07以上0.75以下であることが好ましい。
【0019】
前記クリンチはゴム成分を含むゴム組成物により構成され、前記ゴム組成物の70℃における複素弾性率を70℃E*cとしたとき、前記クリンチの厚さGcmmと70℃E*cの積(Gc×70℃E*c)は25以上450以下であることが好ましい。
【0020】
前記ビード部はビードエイペックスを備え、前記ビードエイペックスはゴム成分を含むゴム組成物により構成され、前記ビードエイペックスのタイヤ半径方向高さHBAmmと前記ゴム組成物の70℃におけるtanδ(70℃BA)との積(HBA×70℃tanδBA)は0.3以上12.0以下であることが好ましい。
【0021】
前記ビード部はビードエイペックスを備え、前記ビードエイペックスはゴム成分を含むゴム組成物により構成され、前記ビードエイペックスのタイヤ半径方向高さHBAmmと前記ゴム組成物の70℃における複素弾性率(70℃E*BA)との積(HBA×70℃E*BA)は100以上9000以下であることが好ましい。
【0022】
前記インナーライナーはゴム成分を含むゴム組成物により構成され、インナーライナーの厚みGImmと前記ゴム成分の70℃におけるtanδ(70℃tanδI)の積(GI×70℃tanδI)は0.02以上1.40以下であることが好ましい。
【0023】
前記スチールコードを有する少なくとも1つのタイヤ部材がベルト層であって、前記ベルト層は、1×1構造のスチールコードからなるベルトコードと前記ベルトコードを被覆するベルトトッピングゴムとから構成される少なくとも1層のベルトプライを含むものであることが好ましい。
【0024】
前記ベルトプライの厚さGbは0.5mm以上1.2mm以下であることが好ましい。
【0025】
前記ベルトコードは、長手方向にくせ付けを施され、前記くせ付けのピッチPは3mm以上30mm以下であることが好ましい。
【0026】
前記ベルトコードの強力は200N以上580N以下であることが好ましい。
【0027】
前記ベルトコードの占有面積比率が9%以上18%以下であることが好ましい。
【0028】
前記ベルトトッピングゴムの70℃におけるtanδ(70℃tanδBE)は0.13以上であることが好ましい。
【0029】
前記ベルトトッピングゴムの100%モジュラスは5.0MPa以上10.0MPa以下であることが好ましい。
【0030】
前記ベルトトッピングゴムからの、ASTM-1871に準拠して測定されたスチールコードの引抜力は、500N以上2000N以下であることが好ましい。
【0031】
前記ベルト層は2層以上のベルトプライからなり、タイヤ回転軸を通る断面において、隣り合う2層のスチールコード間のタイヤ赤道面上での距離GBBは0.5mm以上であることが好ましい。
【0032】
前記タイヤは乗用車用タイヤであることが好ましい。
【0033】
前記スチールコードを有する少なくとも1つのタイヤ部材はバンドであって、前記バンドは、1×1構造のスチールコードからなるバンドコードと前記バンドコードを被覆するバンドトッピングゴムとから構成される少なくとも1層のバンドプライを含むものであることが好ましい。
【0034】
前記バンドコードの占有面積比率は30%以上60%以下であることが好ましい。
【0035】
前記バンドコードの44N負荷時の中間伸度は1.2%以上9.5%以下であることが好ましい。
【0036】
前記バンドコードの熱収縮率は0.1%以上5.0%以下であることが好ましい。
【0037】
前記バンドコードの強力は130N以上700N以下であることが好ましい。
【0038】
前記タイヤは、重荷重用タイヤであることが好ましい。
【0039】
[定義]
図1はタイヤの回転軸を含む断面を示しており、タイヤの幅方向をXで、半径方向をYで示している。また、タイヤの回転軸を含む断面において、幅方向の中心CLはタイヤ赤道面である。
【0040】
「正規状態」とは、正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填された無負荷の状態である。「タイヤの各部の寸法等」は、特に断りがない限り、正規状態で、または、タイヤをタイヤ回転軸を含む平面(タイヤ赤道面)で切断し、当該タイヤ片を正規リムのリム幅に保持した状態で、特定される値とする。
【0041】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMA(日本自動車タイヤ協会)であれば「JATMA YEAR BOOK」に記載されている適用サイズにおける“標準リム”、ETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)であれば「STANDARDS MANUAL」に記載されている“Measuring Rim”、TRA(The Tire and Rim Association,Inc.)であれば「YEAR BOOK」に記載されている“Design Rim”を指し、JATMA、ETRTO、TRAの順に参照し、参照時に適用サイズがあればその規格に従う。そして規格に定められていないタイヤの場合には、リム組み可能であって、内圧が保持できるリム、即ちリム/タイヤ間からエア漏れを生じさせないリムの内、最もリム径が小さく、次いでリム幅が最も狭いものを指す。
【0042】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば“最高空気圧”、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値を指し、「正規リム」の場合と同様にJATMA、ETRTO、TRAの順に参照し、その規格に従う。そして、規格に定められていないタイヤの場合、前記正規リムを標準リムとして記載されている別のタイヤサイズ(規格に定められているもの)の正規内圧(ただし、250kPa以上)を指す。なお、250kPa以上の正規内圧が複数記載されている場合には、その中の最小値を指す。
【0043】
「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、およびETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重であり、正規リムおよび正規内圧と同様にJATMA、ETRTO、TRAの順に参照し、参照時に適用サイズがあればその規格に従う。そして、規格に定められていないタイヤの場合は、以下の計算により、正規荷重WLを求める。
V={(Dt/2)2-(Dt/2-Ht)2}×π×Wt
L=0.000011×V+175
V:タイヤの仮想体積(mm3
Dt:タイヤ外径Dt(mm)
Ht:タイヤの断面高さ(mm)
Wt:タイヤの断面幅(mm)
【0044】
「タイヤ外径Dt」とは、正規状態におけるタイヤの外径を指す。
【0045】
「タイヤの断面幅Wt」とは、正規状態における、タイヤ側面に模様または文字などがある場合にはそれらを除いたものとしてのサイドウォール外面間の最大幅である。
【0046】
「タイヤの断面高さHt」とは、タイヤのタイヤ回転軸を含む断面における、タイヤ半径方向の高さを指し、タイヤのリム径をR(mm)としたとき、タイヤの外径Dtとリム径Rとの差の半分に相当する。言い換えると、断面高さHtは(Dt-R)/2により求めることが可能である。
【0047】
「タイヤの重量」とは、リムの重量を含まない、タイヤ単体の重量である。一方、タイヤの内腔に、スポンジやシーラントからなる部材またはセンサー部材などを備える場合はそれらを含む重量である。
【0048】
「溝」とは、タイヤのトレッド面に形成された凹み部のこと指し、当該溝のトレッド表面での開口幅が2mm未満のものを「サイプ」と呼ぶ。また、タイヤ径方向内側の溝幅がトレッド表面における溝幅よりも広いものを「拡幅溝」と呼ぶ。
【0049】
「周方向溝」とは、タイヤ周方向に連続して延びる溝を指す。周方向溝は、周方向に沿って直線状に延びていてもよく、周方向に沿って波状や、正弦状や、ジグザグ状に延びていてもよい。
【0050】
「溝深さ」とは、トレッド表面における当該溝の端部を繋ぎ合わせた直線と、当該溝のタイヤ半径方向の最低部との直線距離の最大値を指す。当該溝の溝深さがタイヤ幅方向または周方向で変化する場合にはこの最大値を当該溝の溝深さとする。また、複数の溝が交わる三叉路以上の点における深さは溝深さから除外される。
【0051】
「溝角度」とは、トレッドに設けられた溝の終端間を繋ぎ合わせて得られる直線とタイヤ周方向に平行な直線とがなす角度である。
【0052】
「接地領域」とは、正規リムにリム組みし、正規内圧を充填したタイヤに正規荷重を負荷した際にトレッド面が接地する領域をいう。また、前記接地領域のタイヤ幅方向の最大幅を「接地幅TW」と呼ぶ。
【0053】
「陸部」とは、前記周方向溝および接地領域の接地端部によって区切られるトレッドの領域である。
【0054】
「陸部の幅」とは、陸部のタイヤ幅方向での最大幅を指す。
【0055】
「陸部面積比率」とは、前記接地領域において、当該接地領域に存在する溝をすべて埋めた接地領域の全面積に対する、当該溝の面積を除いた接地領域の面積の割合(%)である。
【0056】
「トレッドラジアス」とは、タイヤの子午線断面における、タイヤ赤道面とトレッド面との交点からタイヤ幅方向外側にかけての、トレッド面のなす円弧の曲率半径を意味する。
【0057】
「トレッドを構成する各ゴム層の厚み」は、トレッドを形成する各ゴム層のタイヤ赤道面上におけるタイヤ半径方向の厚みを指す。トレッドが複数のゴム層から形成される場合にはそれらの厚みの合計値が「トレッドの厚みGT」である。また、タイヤ赤道面上に溝を有する場合には、タイヤ赤道面に最も近い陸部のタイヤ幅方向中央部におけるゴム層の厚みをトレッドを構成する各ゴム層の厚み、または、トレッドの厚みGTとする。
【0058】
「サイドウォールを構成するゴム層の厚み」は、タイヤ回転軸を含む断面上において両側のサイドウォール間の距離が最も長くなる位置におけるサイドウォールを形成するゴム層のタイヤ幅方向に平行な方向での厚みである。
【0059】
「サイド補強層を構成するゴム層の厚み」は、タイヤ回転軸を含む断面上におけるタイヤ幅方向の最大厚みである。
【0060】
「クリンチを構成する各ゴム層の厚み」は、サイドウォールとクリンチがタイヤ外面上において接する点Pcを通るカーカスの本体部の法線に沿って測定される当該ゴム層の厚みを指す。クリンチが複数のゴム層から形成される場合にはそれらの厚みの合計値が「クリンチの厚さGc」である。
【0061】
「インナーライナーの厚み」、「カーカスの厚み」、「ベルト層の厚み」、「バンド(ベルト補強層)の厚み」はタイヤ回転軸を含む断面の赤道面上における各部材1層あたりのタイヤ径方向の厚みである。当該部材が前記赤道面上に存在しない場合は、当該部材のタイヤ幅方向中央の位置における当該部材1層あたりのタイヤ径方向の厚みである。
【0062】
「サイド補強層高さ」、「クリンチのタイヤ半径方向外側端部の高さ」はタイヤ回転軸を含む断面上における各部材のタイヤ半径方向下端から上端の直線距離である。
【0063】
「ビードエイペックスの高さ」は、タイヤ回転軸を含む断面上におけるビードコアの下端からビードエイペックスのタイヤ半径方向外側端部までの直線距離である。なお、ビード補強層を備える場合には、ビード補強層も含めたタイヤ半径方向外側端部までの直線距離である。
【0064】
「フィラメント」とは、スチールコードもしくは繊維コードを形成する最小単位を指す。当該フィラメントを複数撚り合わせたものをヤーンと呼ぶ。
【0065】
「フィラメントの外径」は、当該スチールコードもしくは繊維コードを形成するフィラメントの長手方向に対する垂直な断面における径である。当該フィラメントの断面形状が楕円など長軸および短軸を有する場合にはこれらの単純平均をフィラメントの外径として扱う。
【0066】
「ヤーンの外径」は、当該スチールコードもしくは繊維コードが複数のフィラメントを撚り合わせられてヤーンを形成している場合において、ヤーンの長手方向に対して垂直な断面における当該ヤーンの外接円の径を指す。
【0067】
「コードの外径D」は、当該スチールコードもしくは繊維コードの長手方向に対して垂直な断面における径である。当該コードが複数のフィラメントもしくはヤーンを撚り合わせたコードである場合にはその外接円の径が当該コード径として定義される。また、当該コードに撚りがかけられておらず、断面形状が扁平など、長軸、短軸を有する場合には、長軸および短軸の単純平均をコードの外径として取り扱う。
【0068】
「コードの配列本数」とは、当該スチールコードもしくは繊維コードの長手方向に垂直な断面における配列方向50mmあたりの配列本数である。
【0069】
「コードの占有面積比率」は、当該スチールコードもしくは繊維コードを含む部材のコードの長手方向に対して垂直な断面における当該コードの占有面積比率である。当該コード一本あたりの断面積をS(mm2)、コードの配列本数をE(本/50mm)、当該部材の厚みをG(mm)としたとき、S×E/50×G×100%として定義される。
【0070】
「繊度」とは、当該コードが繊維コードである場合において、その繊維コード1000mあたりの重量(g)を指し、コード全体の繊度を「総繊度」と呼ぶ。
【0071】
「撚り数」とは、タイヤ内のスチールコードもしくは繊維コードの長手方向10cmあたりの撚り数(回/10cm)である。当該コードが複数のフィラメントを撚り合わせたヤーンを複数集めてさらに撚りが加えられたものである場合には、ヤーンにおけるフィラメントの撚り数を下撚り数、コード内のヤーンどうしを撚り合わせた際の撚り数を上撚り数と呼ぶ。
【0072】
「撚り係数」とは、前記撚り数とコードの繊度を用いて、以下の式により算出されるものである。撚り係数=撚り数×繊度1/2
【0073】
「くせ付け」とは、スチールコードもしくは繊維コードの長手方向に波形のくせを付けることをいう。
【0074】
「中間伸度」とは、JIS L 1017の「一定荷重時伸び率」の試験方法に準拠して測定される値である。
【0075】
「熱収縮率」とは、JIS L 1017:2002「化学繊維タイヤコード試験方法」に準拠し、試料長さ500mm、加熱条件150℃×30分の条件にて加熱したときに測定される試料コードの乾熱収縮率(%)である。スチールコードであっても有機繊維コードであっても前記方法により測定される。
【0076】
「コード強力」とは、スチールコードの場合には、JIS G 3510:1992「スチールタイヤコードの試験方法」に準拠し、引張試験を行ったときに測定される力(N:ニュートン)である。繊維コードである場合には、JIS L 1017:2002「化学繊維タイヤコード試験方法」に準拠し、温度20℃の条件で引張試験を行ったときに測定される力(N:ニュートン)である
【0077】
「コードの弾性率」とは、JIS L 1017:2002「化学繊維タイヤコード試験方法」に準拠して、コード単線が1.5%伸びた時の傾き(s-s曲線)から算出したコード単線の弾性率(cN/dtex)である。スチールコードであっても繊維コードであっても前記測定方法により測定される。
【0078】
「コードの引抜力」は、ASTM-1871“Standard Test Method for Adhesion Between Tire Bead Wire and Rubber”に準拠し、室温(23℃)、速度50mm/分の条件下で測定される、引抜までの最大荷重(N)である。
【0079】
「ゴム成分のスチレン含量(質量%)」とは、ゴム成分全体(100質量%)を構成する各ゴムについて、そのスチレン含量とゴム成分全体に占める含有率とを掛け合わせた値を算出し、それらすべてを合算したものである。
【0080】
「ゴム成分のビニル含量(質量%)」とは、ゴム成分全体(100質量%)を構成する各ゴムについて、その1,2ブタジエン結合に由来するビニルブタジエン単位含量とゴム成分全体に占める含有率とを掛け合わせた値を算出し、それらすべてを合算したものである。
【0081】
「ゴム組成物のガラス転移温度」とは、当該ゴム組成物の加硫後の-60℃から40℃の範囲における損失正接(tanδ)の温度分散曲線におけるtanδの最大値を与える温度である。なお、-60℃から40℃の範囲において、tanδが温度上昇と共に増加し続ける場合においては、上記の定義から当該ゴム組成物のガラス転移温度は40℃となる。一方、-60℃から40℃の範囲において、tanδが温度上昇と共に減少し続ける場合においては、同様に当該ゴム組成物のガラス転移温度は-60℃となる。また、-60℃から40℃の範囲において、tanδが最大となる点が2点以上存在する場合においては、これらのうち、最も温度が低いものを当該ゴム組成物のガラス転移温度として取り扱う。
【0082】
「ゴム組成物のゴム成分」とは、ゴム組成物内で架橋に寄与する成分であり、一般的に、重量平均分子量(Mw)が1万以上のものである。
【0083】
「軟化剤」とは、ゴム成分に可塑性を付与する材料であり、ゴム組成物からアセトンを用いて抽出される成分である。軟化剤は、25℃で液体(液状)の軟化剤および25℃で固体の軟化剤を含む。ただし、通常タイヤ工業で使用されるワックスおよびステアリン酸は含まないものとする。
【0084】
「軟化剤の含有量」は、予めオイル、樹脂成分、液状ゴム成分等の軟化剤により伸展された伸展ゴム成分中に含まれる軟化剤の量も含む。また、オイルの含有量、樹脂成分の含有量、液状ゴムの含有量についても同様であり、例えば、伸展成分がオイルである場合には伸展オイルはオイルの含有量に含まれる。
【0085】
「ゴム組成物の硫黄量」とは、ゴム組成物内に含まれる架橋剤、加硫促進剤、カーボンブラックなどに由来するゴム組成物全体に含まれる硫黄量を指す。
【0086】
「ゴム成分のガラス転移温度」とは、当該ゴム組成物を形成する各ゴム成分のガラス転移温度とゴム成分中に含まれる質量%を掛け合わせた平均値である。また、ここで、各ゴム成分のガラス転移温度は、前記ゴム組成物のガラス転移温度とは異なり、示差操作熱量計(DSC)により求められる各ゴム成分の静的なガラス転移温度である。
【0087】
[測定方法]
「接地領域」は、タイヤを正規リムに組み付け、正規内圧を充填し、タイヤトレッド表面に墨を塗り、正規荷重を負荷して、厚紙に垂直に押し付け、転写させることで得られる。同様の転写作業をタイヤを72度ずつ回転させ、合計5か所について得た後、各接地領域の形状の最大幅の平均値を求めることで「接地幅TW」を算出することができる。
【0088】
「陸部の幅」は、前記接地領域の測定において得られた5か所の接地領域の形状において、各陸部のタイヤ幅方向での最大幅を指し、5か所の測定で得られた同一の陸部の最大幅の平均値を用いる。
【0089】
「陸部面積比率」は、前記接地領域の測定において得られた5か所の接地領域の形状において、溝によって途切れた外輪角を滑らかにつなぎ合わせることで得られる5か所の全体面積の平均に対する、5か所の接地形状の面積の比率(%)を求めることにより算出することができる。すなわち、5か所の接地形状の面積の平均値÷5か所の全体面積の平均値×100として算出することができる。
【0090】
「溝幅」は、タイヤ子午線断面においてトレッドの踏面に表れる溝縁間の長さから求めることができる。
【0091】
「トレッドを構成する各ゴム層の厚み」、「サイドウォールを構成するゴム層の厚み」、「サイド補強層を構成するゴム層の厚み」、「クリンチを構成する各ゴム層の厚み」、「インナーライナーの厚み」、「カーカス層の厚み」、「ベルト層の厚み」、「ベルト補強層の厚み」、「サイド補強層高さ」、「クリンチの高さ」、「ビードエイペックスの高さ」はタイヤを72度ずつ回転させた5か所におけるタイヤ回転軸を含む断面において測定されるそれぞれの値の平均値を用いる。なお、これらはタイヤ回転軸を含む断面セクションを作成し、そのビード間を正規リム幅に合わせた状態で測定することが可能である。
【0092】
「フィラメントの外径」、「ヤーンの外径」、「コードの外径」、「コードの断面積」、「コードの配列本数」は当該コードの長手方向に切り出した断面セクションにおいて、赤道面と交差する部分から±25mmの範囲で求めたそれぞれの値の平均値から算出することができる。なお、当該コードの配列方向がタイヤの周方向に対して垂直である場合には、赤道面上において切り出したコードについて任意の範囲で50mmの範囲にあるコードのそれぞれの値を算出することにより求めることができる。
【0093】
「繊度」はタイヤから抜き出した当該繊維コードの周りに付着した被覆ゴム層を除外した後、長さ1000mの重量を算出することにより求めることが可能である。なお、当該繊維コードを1000mタイヤから抜き出すことができない場合においては、10cm以上の長さで抜き出し、1000mあたりの重量を算出することで、繊度を求めることができる。
【0094】
「ゴム組成物の損失正接および複素弾性率」は、動的粘弾性測定装置(例えば、GABO社製のイプレクサーシリーズ)を用い、伸長モードで測定される各条件での損失正接(tanδ)および複素弾性率E*(MPa)である。動的粘弾性測定に用いられるサンプルは長さ20mm×幅4mm×厚さ1mmの加硫ゴム組成物である。タイヤから切り出してサンプルを作成する場合には、当該サンプルを作成する部材がトレッド、ベルト補強層、ベルト層、インナーライナーである場合には、長さ方向とタイヤ周方向を一致させ、厚さ方向はタイヤ径方向と一致させる。当該サンプルを作成する部材がサイドウォール、クリンチ、ビードエイペックス、サイド補強層である場合にはサンプルの長さ方向はタイヤ周方向に対する接線方向と一致させ、厚さ方向はタイヤ幅方向と一致させる。なお、いずれの場合においても、当該サンプルを可能な限り、所定の寸法に近づけた状態でサンプルを作成する。サンプルに加わる歪は長さに対して規格化されており、測定されるtanδおよびE*共に、サンプルの幅、厚さで規格化されるため、サンプルのサイズによる影響はないと考えられるためである。0℃におけるtanδは温度0℃、周波数10Hz、初期歪10%、動歪±2.5%の条件下で測定される。0℃におけるE*は温度0℃、周波数10Hz、初期歪10%、動歪±2.5%の条件下で測定される。30℃におけるtanδおよびE*は温度30℃、周波数10Hz、初期歪5%、動歪±1%の条件下で測定される。70℃におけるtanδおよびE*は温度70℃、周波数10Hz、初期歪5%、動歪±1%の条件下で測定される。
【0095】
「ゴム組成物のガラス転移温度」は、ゴム組成物の損失正接および複素弾性率と同様に作成されたサンプルで、動的粘弾性測定装置(例えば、GABO社製のイプレクサーシリーズ)を用い、伸長モードで測定される。測定は周波数10Hz、初期歪10%、動歪±0.5%および昇温速度2℃/minの条件下で-60℃から40℃の範囲におけるtanδの温度分布曲線を測定し、得られた温度分布曲線における最も大きいtanδ値に対応する温度として決定する。
【0096】
「ゴム組成物のショア硬度」は、JIS K 6253に準拠して23℃でタイプAデュロメータをサンプルに押し付け測定する。硬度測定サンプルを試験タイヤから作成する場合には、当該サンプルがトレッドである場合には試験タイヤの接地面を形成する表面側からタイヤ半径方向が厚さ方向となる様にトレッドを切りだし、表面側からタイプAデュロメータをサンプルに押し付け測定する。当該サンプルがトレッド以外の部材である場合には、タイヤを回転軸を含む断面で切り出し、断面を平滑にした後、当該部材に対して断面方向からタイプAデュロメータを押し付けて測定する。
【0097】
「ゴム組成物の100%モジュラス」、「ゴム組成物の破断強度」、「ゴム組成物の破断伸び」は、厚さ1mmの7号ダンベル形状の試験片を作製し、JIS K 6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」に準じて、23℃雰囲気下にて、引張速度3.3mm/秒の条件で引張試験を実施した際の100%伸張時応力(MPa)、破断強度(MPa)、破断伸び(%)である。測定サンプルを試験タイヤから作成する場合の長手方向および厚さ方向はゴム組成物のtanδおよびE*の測定サンプルと同様である。また、当該サンプルを厚さ1mmで採取することが困難な場合には、可能な限り1mmに近づけた状態でサンプルを採取する。100%モジュラス、破断強度、破断伸びはいずれも規格化された値で測定されるため、厚みによる影響はないと考えられるためである。
【0098】
「ゴム成分のガラス転移温度」は、JIS K 7121に従い、示差走査熱量計(例えば、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)の示差走査熱量計(Q200))を用いて昇温速度10℃/分で昇温しながら測定することにより、測定する。
【0099】
「スチレン含量」は、1H-NMR測定により算出される値であり、例えば、SBR等のスチレンに由来する繰り返し単位を有するゴム成分(スチレン単位含有ゴム)に適用される。
【0100】
「ビニル含量(1,2-結合ブタジエン単位量)」は、JIS K 6239-2:2017に従い、赤外吸収スペクトル分析により算出される値であり、例えば、SBR、BR等のブタジエンに由来する繰り返し単位を有するゴム成分に適用される。
【0101】
「シス含量(シス-1,4-結合ブタジエン単位量)」は、JIS K 6239-2:2017に従い、赤外吸収スペクトル分析により算出される値であり、例えば、BR等のブタジエンに由来する繰り返し単位を有するゴム成分に適用される。
【0102】
「重量平均分子量(Mw)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(例えば、東ソー(株)製のGPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTIPORE HZ-M)による測定値を基に、標準ポリスチレン換算により求めることができる。例えば、SBR、BR、軟化剤等に適用される。
【0103】
「カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)」は、JIS K 6217-2:2017に準じて測定される。「シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)」は、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定される。
【0104】
「平均一次粒子径」は、粒子を透過型または走査型電子顕微鏡で写真撮影し、400個の粒子径の算術平均により求められる。粒子径は、粒子の形状がほぼ円形の場合には円の直径を粒子径とし、針状または棒状の場合には短径を粒子径とし、それ以外の場合には電子顕微鏡画像から円相当径を算出して粒子径とする。円相当径は、「4×(粒子の面積)/πの正の平方根」として求められる。平均一次粒子径は、シリカやカーボンブラック等に適用される。
【0105】
「樹脂成分の軟化点」は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である
【0106】
[タイヤ]
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係るタイヤを説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまで一例であり、本発明のタイヤは、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0107】
図1は、タイヤの回転軸を含む断面が図示された図面である。図1において、Y方向がタイヤ1の半径方向であり、X方向がタイヤ1の幅方向である。トレッド2は、トレッド接地面を構成するキャップゴム層2aおよびトレッドのタイヤ半径方向最内側に配置されたベースゴム層2bを備えている。
【0108】
なお、図1では、キャップゴム層2aおよびベースゴム層2bからなる2層構造トレッド2の例が示されているが、トレッド2は単層構造トレッド、3層以上の構造を有するトレッドで構成されるものでもよい。また、トレッド2はタイヤの幅方向に異なる複数のゴム層を有していても良い。図1では、キャップゴム層2aが周方向溝によって分割された結果、タイヤ幅方向に複数のゴム層となっている。
【0109】
また、トレッド2のキャップゴム層のゴム組成物に含まれるカーボンブラック量が少なく、通電性の確保が困難である場合には、トレッド2に通電ゴム部材2cを設けていても良い。
【0110】
トレッド2の厚みGTは、4.0mm以上が好ましく、4.5mm以上がより好ましく、5.0mm以上がさらに好ましい。一方、上限としては特に限定されないが、18.0mm以下が好ましく、17.0mm以下がより好ましく、16.0mm以下がさらに好ましい。
【0111】
トレッド2がタイヤ径方向において複数のゴム層から形成される場合、トレッド2のキャップゴム層の厚みGTCは、1.0mm以上であることが好ましく、2.0mm以上であることがより好ましい。一方、上限は特に限定されないが、16.0mm以下が好ましく、14.0mm以下がさらに好ましい。
【0112】
また、トレッド2が複数のゴム層から形成される場合、トレッド2のベースゴム層の厚みGTBは、0.5mm以上であることが好ましく、0.7mm以上であることより好ましく、1.0mm以上であることがさらに好ましい。一方、上限としては特に限定されないが、8.0mm以下であることが好ましく、7.5mm以下であることがより好ましく、7.0mm以下であることがさらに好ましい。
【0113】
また、トレッド2が複数のゴム層から形成される場合、トレッド2の厚みGTに対するトレッド2を形成するキャップゴム層の厚みGTcの比(GTc/GT)は、0.10以上であることが好ましく、0.15以上であることがより好ましい。一方上限としては特に限定されないが、0.95以下が好ましく、0.90以下であることがより好ましい。
【0114】
また、トレッド2が複数のゴム層から形成される場合、トレッド2の厚みGTに対するトレッド2を形成するゴム層のベースゴム層の厚みGTBの比(GTB/GT)は、0.70以下であることが好ましく、0.50以下であることがより好ましい。一方下限としては特に限定されないが、0.05以上が好ましく、0.10以上であることがより好ましい。
【0115】
トレッド2のキャップゴム層の0℃におけるtanδ(0℃tanδTC)は0.20以上であることが好ましく、0.90以下であることが好ましい。
【0116】
トレッド2のキャップゴム層の30℃におけるtanδ(30℃tanδTC)は0.10以上であることが好ましく、0.40以下であることが好ましい。
【0117】
トレッド2のキャップゴム層の30℃におけるE*(30℃E*TC:MPa)は4.0MPa以上であることが好ましく、25MPa以下であることが好ましい。
【0118】
トレッド2のキャップゴム層のガラス転移温度(TgTC:℃)は-60℃以上であることが好ましく、0℃以下であることが好ましい。
【0119】
トレッド2のキャップゴム層の硬度HSTCは55以上であることが好ましく、80以下であることが好ましい。
【0120】
トレッド2のキャップゴム層の100%伸長時モジュラスM100TC(MPa)は、0.5MPa以上であることが好ましく、5.0MPa以下であることが好ましい。
【0121】
トレッド2のキャップゴム層の破断強度TBTC(MPa)は10MPa以上であることが好ましく、30MPa以下であることが好ましい。
【0122】
トレッド2のキャップゴム層の破断伸びEBTC(%)は350%以上であることが好ましく、900%以下であることが好ましい。
【0123】
トレッド2のベースゴム層の70℃におけるtanδ(70℃tanδTB)は0.25以下が好ましく、0.20以下が好ましく、0.15以下がさらに好ましい。下限としては特に限定されないが、0.01以上が好ましく、0.02以上がより好ましく、0.03以上がさらに好ましい。
【0124】
トレッド2のベースゴム層の70℃におけるE*(70℃E*TB)は、1.5MPa以上が好ましく、2.0MPa以上がより好ましく、3.0MPa以上がさらに好ましい。一方、上限としては特に限定されないが、25.0MPa以下が好ましく、20MPa以下がより好ましく、15MPa以下がさらに好ましい。
【0125】
トレッド2のベースゴム層のガラス転移温度TgTBは0℃以下が好ましく、-15℃以下が好ましく、-20℃以下がさらに好ましい。下限としては特に限定されないが、-60℃以上が好ましい。
【0126】
トレッド2のベースゴム層の硬度HSTBは40以上であることが好ましく、75以下であることが好ましい。
【0127】
トレッド2のベースゴム層の100%伸長時モジュラスM100TBは、1.5MPa以上であることが好ましく、10.0MPa以下であることが好ましい。
【0128】
トレッド2のベースゴム層の破断強度TBTBは、10MPa以上であることが好ましく、40MPa以下であることが好ましい。
【0129】
トレッド2のベースゴム層の破断伸びEBTBは、150%以上であることが好ましく、500%以下であることが好ましい。
【0130】
トレッド2が3層以上のゴム層から形成されている場合において、キャップゴム層およびベースゴム層以外の中間層のゴム層の0℃tanδ、0℃E*、30℃tanδ、30℃E*、70℃tanδ、70℃E*、Tg、HS、M100、TB、EBは特に限定されず、用途に合わせて任意の範囲とすることが可能である。
【0131】
なお、ゴム組成物のtanδ、E*、ゴム硬度Hs、モジュラス、TB、EB等の各物性は、後記のゴム成分、充填剤、軟化剤等の種類や配合量により適宜調整することができる。例えば、30℃E*は、ゴム組成物中の充填剤の量を増やすこと、軟化剤の含有量を減らすことなどにより、上げることができ、ゴム硬度Hsは、ゴム組成物中の充填剤の量を増やすこと、軟化剤の含有量を減らすことにより、高くすることができる。
【0132】
トレッドは周方向に延びる周方向溝を有していても良い。タイヤ1において、トレッドは周方向に延びる2本の周方向溝12を有している。周方向溝12は、周方向に沿って直線状に延びていてもよく、周方向に沿って湾曲していてもよく、周方向に沿ってジグザグ上に延びていても良い。周方向溝12は、周方向に途切れることなく連通していることは必須ではなく、例えば、横溝によって分断されていても良い。
【0133】
周方向溝12の最深部の溝深さDSは、3.0mm以上であることが好ましく、3.5mm以上であることがより好ましく、4.0mm以上であることがさらに好ましい。一方、上限としては特に限定されないが、15.0mm以下が好ましく、14.0mm以下が好ましく、12.0mm以下がさらに好ましい。
【0134】
トレッド2の厚みGTと周方向溝12の最深部の溝深さDSの差(GT-DS)は、5.0mm以下であることが好ましく、3.0mm以下とすることが好ましく、2.0mm以下がより好ましい。一方下限としては特に限定されないが、0.2mm以上が好ましく、0.3mm以上がより好ましく、0.5mm以上がさらに好ましい。
【0135】
トレッド2の厚みGTとトレッド2のキャップゴム層の30℃tanδTCの積(30℃tanδTC×GT)は9.0mm以下であることが好ましい。
【0136】
トレッド2の厚みGTに対するトレッド2のキャップゴム層の30℃E*TCの比(30℃E*TC/GT)は0.2MPa/mm以上であることが好ましい。
【0137】
トレッド2が3層以上のゴム層で形成されている場合、トレッド2のキャップゴム層の厚みGTCは周方向溝12の最深部の溝深さDSよりも小さいことが好ましい。
【0138】
周方向溝12のトレッド表面におけるタイヤ幅方向で最大の開口幅WSは2.0mm以上が好ましく15.0mm以下であることが好ましい。
【0139】
また、周方向溝12は前記開口幅WSに対して、タイヤ半径方向内側で幅が広がっている拡幅溝であっても良い。
【0140】
図2に、トレッドパターンの一例に係る模式図を示す。該トレッドパターンは、図2に示すように、タイヤ周方向に連続して延びる3本の周方向溝12と、幅方向に延びる横溝13、18、およびサイプ14、15とを有する。
【0141】
図2において、周方向溝12は3本設けられているが、周方向溝の数は特に限定されず、例えば2本~5本であってもよい。また、周方向溝12は、周方向に沿って直線状に延びているが、このような態様に限定されるものではなく、例えば、周方向に沿って波状や正弦波状やジクザク状に延びていてもよい。
【0142】
図2のトレッドパターンは、3本の周方向溝12およびトレッド接地端Teによって仕切られた陸部16、17を有している。タイヤ幅方向最も外側の周方向溝12とトレッド接地端Teで区切られる一対の陸部17はショルダー陸部といい、ショルダー陸部よりもタイヤ幅方向内側に存在する陸部16をセンター陸部という。図2においては、陸部の数はショルダー陸部が二つ、および、センター陸部が二つの合計4つであるが、陸部の数は特に限定されず、例えば1つ~6つであってもよい。
【0143】
陸部には、横溝(幅方向溝)および/またはサイプが設けられていても良い。図2においては、二つのトレッド接地端Teと周方向溝12によって区切られたショルダー陸部17には末端が周方向溝12および接地端Teに開口している複数のショルダー横溝13と、片端が周方向溝12に開口している複数のショルダーサイプ14とが設けられている。また、このような態様のほか、片端が周方向溝12に開口し、もう一方の末端が陸部17内で終端する横溝や、片端が周方向溝12に開口し、もう一方の末端が接地端Teに開口しているサイプを備えていても良い。
【0144】
ショルダー陸部17にショルダー横溝13を有する場合、タイヤ周方向でのショルダー横溝13の間隔は3.0mm以上空いていることが好ましい。一方、ショルダー横溝13の間隔は特に限定されないが、80.0mm以下であることが好ましい。
【0145】
ショルダー陸部17にショルダー横溝13を有する場合、ショルダー横溝13の溝深さDSHは2.0mm以上であることが好ましく、3.0mm以上であることがより好ましい。一方、上限としては17.0mm以下であることが好ましく、15.0mm以下であることがより好ましい。
【0146】
ショルダー陸部17にショルダー横溝13を有する場合、トレッド面においてショルダー横溝17の長手方向がタイヤ幅方向となす角である溝角度CSは75~115度の範囲にあることが好ましい。
【0147】
1つのショルダー陸部17の幅WLSは接地幅TWの40%以下であることが好ましい。また、一対のショルダー陸部17において、各ショルダー陸部の幅は同一であっても良く、異なっていても良い。
【0148】
ショルダー陸部17にショルダーサイプ14を有する場合、タイヤ周方向でのショルダーサイプ14の間隔は1.0mm以上開いていることが好ましい。一方、ショルダーサイプ14の間隔の上限は特に限定されないが、60.0mm以下であることが好ましい。
【0149】
ショルダー陸部17にショルダーサイプ14を有する場合、ショルダーサイプ14の深さは2.0mm以上であることが好ましい。一方、上限は特に限定されないが、10.0mm以下であることが好ましく、8.0mm以下であることがより好ましい。
【0150】
また、周方向溝12のみで区切られているセンター陸部16には、片端が周方向溝12に開口している複数のセンターサイプ15、両端が周方向溝12に開口した横溝18が設けられている。また、このような態様に限られず、陸部16は両端が周方向溝12に開口したサイプ、片側の周方向溝のみに開口した横溝を有していても良い。
【0151】
トレッドパターンの陸部面積比率は40%以上であることが好ましく、45%以上であることがより好ましく、55%以上であることがさらに好ましい。一方、上限としては特に限定されず、100%であっても良い。
【0152】
陸部16、17は、小穴を1個以上有していても良い。図2では、周方向溝で区切られたセンター陸部16において、小穴19が設けられている。小穴のトレッド表面での開口面積は、0.1~15mm2が好ましい。
【0153】
1つの陸部16または陸部17において、タイヤの周方向の長さLT(mm)に対する小穴19の総数N(N/LT)は、0.05~2.0が好ましく、0.1~1.0が好ましく、0.2~0.8がさらに好ましい。
【0154】
前記小穴19の最深部の深さは、周方向溝12の深さの30~90%が好ましい。
【0155】
また、本発明の別の実施態様では図3に示すように、トレッド2は、タイヤ周方向に延びる溝が、傾斜横溝と、隣接する傾斜横溝を繋ぐ傾斜継ぎ溝とから構成されていても良い。
【0156】
図3において、前記トレッド2は、タイヤ赤道CLよりもタイヤ幅方向一方側に配される第1のトレッドパターン部P1と、タイヤ軸方向他方側に配される第2のトレッドパターン部P2とを具える。この第1、第2のトレッドパターン部P1、P2は、タイヤ周方向に互いに位置ずれした(即ち、タイヤ周方向に位相がずれた)線対称状のパターン模様を具える。
【0157】
前記第1、第2のトレッドパターン部P1、P2は、それぞれ、タイヤ周方向に間隔を隔てて配される複数の傾斜横溝20と、タイヤ周方向で隣り合う傾斜横溝20、20間を繋ぐ少なくとも1本の傾斜継ぎ溝21とを具える。本例では、傾斜継ぎ溝21は、トレッドパターン部P1、P2のそれぞれのほぼ中央に、1筋ずつ配されている。また、このような態様だけに限られず、例えば、タイヤ幅方向内側に配される内側傾斜継ぎ溝と、そのタイヤ幅方向外側に配される外側傾斜継ぎ溝とから構成されるものであってもよい。
【0158】
また、トレッドには、第1、第2のトレッドパターン部P1、P2の傾斜継ぎ溝21と交差するサイプ22が配されている。
【0159】
図1のタイヤ1において、それぞれのサイドウォール3は、トレッド2の端から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール3の半径方向外側部分は、トレッド2およびウイング4と接合されている。サイドウォール3のタイヤ半径方向外側端部は図1のようにトレッド2のタイヤ半径方向内側で終端していても良く、トレッド2に覆いかぶさるようにトレッド2のキャップゴム層よりもタイヤ半径方向外側で終端していても良い。
【0160】
サイドウォール3の半径方向内側部分は、クリンチ5と接合されている。サイドウォール3のタイヤ半径方向内側端部は、タイヤ表面側に露出していても良く、クリンチ5のタイヤ幅方向内側に潜り込むようにタイヤ表面に露出していなくても良い。
【0161】
サイドウォール3はタイヤ表面に部分的または完全に露出しない層を具える2層以上のゴム層から形成されていても良い。また、部分的に露出しない層としては美観性の観点から黒以外の着色を施したゴム層であっても良い。
【0162】
また、サイドウォール3は美観性の観点から、周期的な凹凸を施しても良い。凹凸としては、文字、模様などの装飾の他、内部の部材の接合点により生じる凹凸を視認しにくくするためのセレーションや、セレーションよりも細かい凹凸を付与することで、光学的に黒色度が増すように設定した微小突起など様々なものを有することが可能である。
【0163】
また、サイドウォール3の内部には、外部との通信を可能とした電子タグなどが埋め込まれていても良い。
【0164】
サイドウォール3の厚みGSは、7.0mm以下が好ましく、6.0mm以下がより好ましく、5.0mm以下がさらに好ましい。一方、下限は特に限定されないが、0.1mm以上が好ましく、0.5mm以上が好ましく、0.8mm以上がさらに好ましい。
【0165】
サイドウォール3の70℃におけるtanδ(70℃tanδS)は、0.30以下が好ましく、0.25以下が好ましく、0.20以下がさらに好ましい。下限としては特に限定されないが、0.01以上が好ましく、0.02以上がより好ましく、0.03以上がさらに好ましい。
【0166】
サイドウォール3の70℃におけるE*(70℃E*S)は、1.5MPa以上が好ましく、2.0MPa以上がより好ましく、2.5MPa以上がさらに好ましい。一方、上限としては特に限定されないが、10.0MPa以下が好ましく、8.0MPa以下がより好ましく、6.5MPa以下がさらに好ましい。
【0167】
サイドウォール3のゴム組成物のガラス転移温度TgSは0℃以下が好ましく、-15℃以下が好ましく、-20℃以下がさらに好ましい。下限としては特に限定されないが、-60℃以上が好ましい。
【0168】
サイドウォール3の硬度HSSは40以上であることが好ましく、60以下であることが好ましい。
【0169】
サイドウォール3の100%伸長時モジュラスM100S(MPa)は、0.5MPa以上であることが好ましく、5.0MPa以下であることが好ましい。
【0170】
サイドウォール3の破断強度TBSは、10MPa以上であることが好ましく、40MPa以下であることが好ましい。
【0171】
サイドウォール3の破断伸びEBSは、150%以上であることが好ましく、500%以下であることが好ましい。
【0172】
図1のウイング4は、トレッド2とサイドウォール3との間に位置している。ウイング4は、トレッド2およびサイドウォール3のそれぞれと接合している。なお、ウイング4は具えても備えなくても良い。
【0173】
図1のクリンチ5は、サイドウォール3の半径方向略内側に位置し、少なくとも1か所以上、リムと接する部分を有している。また、リムと接触する部分の一部において、クリンチ5の耐久性能の観点からチェーファー11を具えても良い。チェーファー11は内部に有機繊維を有するキャンバスチェーファーであっても、ゴム組成物で形成されるラバーチェーファーであっても良い。
【0174】
クリンチ5のタイヤ半径方向外側端部は、タイヤ表面側に露出していても良く、露出していなくても良い。クリンチ5の高さHcは、75mm以下であることが好ましく、70mm以下であることがより好ましい。一方、下限としては特に限定されないが、10mm以上であることが好ましく、15mm以上であることがより好ましい。
【0175】
また、タイヤ断面高さHt(mm)に対するクリンチ5の高さHc(mm)の比(Hc/Ht)は0.5以下が好ましく、0.45以下がより好ましい。下限は特に限定されないが、0.1以上が好ましい。
【0176】
クリンチ5の最大厚さGcは30mm以下が好ましく、20mm以下が好ましい。一方、下限は特に限定されないが、2mm以上が好ましく、4mm以上がさらに好ましい。
【0177】
クリンチを構成するゴム組成物の70℃におけるtanδ(70℃tanδc)は、0.25以下が好ましく、0.15以下がより好ましい。一方、下限としては特に限定されないが、0.02以上が好ましく、0.03以上がより好ましい。
【0178】
クリンチ5を構成するゴム組成物の70℃におけるE*(70℃E*c)は、4MPa以上が好ましく、5MPa以上がより好ましい。一方、上限としては特に限定されないが、20MPa以下が好ましく、15MPa以下がより好ましい。
【0179】
クリンチ5の高さHcと70℃tanδcの積は(70℃tanδc×Hc)は14.0mm以下が好ましく、12.0mm以下がより好ましい。一方、下限としては特に限定されないが、0.4mm以上が好ましく、0.6mm以上がより好ましい。
【0180】
クリンチ5の高さHcに対する70℃E*cの比(70℃E*c/Hc)は、0.05MPa/mm以上が好ましく、0.07MPa/mm以上がより好ましい。一方、上限としては特に限定されないが、1.00MPa/mm以下が好ましく、0.75MPa/mm以下がより好ましい。
【0181】
クリンチ5の厚さGcと70℃tanδcの積(Gc×70℃tanδc)は、7.50mm以下が好ましく、6.00mm以下がより好ましい。一方、下限としては特に限定されないが、0.10mm以上が好ましく、0.25mm以上がより好ましい。
【0182】
クリンチ5の厚さGcと70℃E*cとの積は(Gc×70℃E*c)は、20MPa・mm以上が好ましく、25MPa・mm以上がより好ましい。一方、上限は特に限定されないが、600MPa・mm以下が好ましく、450MPa・mm以下がより好ましい。
【0183】
クリンチ5を構成するゴム組成物のガラス転移温度Tgcは0℃以下が好ましく、-15℃以下が好ましく、-20℃以下がさらに好ましい。下限としては特に限定されないが、-60℃以上が好ましい。
【0184】
クリンチ5を構成するゴム組成物の硬度HScは50以上であることが好ましく、90以下であることが好ましい。
【0185】
クリンチ5を構成するゴム組成物の100%伸長時モジュラスM100Sは、2.0MPa以上であることが好ましく、15.0MPa以下であることが好ましい。
【0186】
クリンチ5を構成するゴム組成物の破断強度TBcは、10MPa以上であることが好ましく、40MPa以下であることが好ましい。
【0187】
クリンチ5を構成するゴム組成物の破断強度TBcは、10MPa以上であることが好ましく、40MPa以下であることが好ましい。
【0188】
図1のビード部6は、ビードコア6a、ビードエイペックス6b、およびビード補強層6cとを具える。
【0189】
それぞれのビードコア6aはリング状であり、巻回された非伸縮性のワイヤを含むことが望ましい。ビードコア6aは複数のビードワイヤーを引きそろえたテープを巻回して製造されても良く、また、単一のコアワイヤの周りに複数本のワイヤを螺旋状に巻き付けたケーブル状のビードコアを用いても良い。
【0190】
ビードコア6aが複数のビードワイヤーを引きそろえたテープを巻回して製造される場合、タイヤ径方向に配列されるテープ内のビードワイヤーの本数は各層で異なっていても良い。この場合、タイヤ周方向に巻回すごとに、巻き付けるテープの種類を変更すれば良い。
【0191】
一方、ビードコア6aが単一のコアワイヤの周りに複数本のワイヤを螺旋状に巻き付けて得られるケーブル状のビードコアである場合、コアコードは1本のワイヤで構成されても良く、複数本のワイヤで構成されても良い。また、コアコードの周囲のワイヤは3~10本とすることができる。
【0192】
ビードコア6aはビードコア6aから半径方向外向きに延びるビードエイペックス6bを具えている。ビードエイペックス6bは、半径方向外向きに先細りである。
【0193】
また、図1において、ビード部6はカーカス層8のタイヤ幅方向外側にビード補強層6cを具えている。
【0194】
ビードエイペックスのタイヤ径方向高さHBAは5mm以上が好ましく、7mm以上がより好ましい。一方、上限としては特に限定されないが、60mm以下であることが好ましく、55mm以下であることがより好ましい。なお、ビード補強層6cを具える場合には、ビードエイペックスの高さHBAはビードエイペックス6bもしくはビード補強層6cの高さのいずれか高い方の値である。
【0195】
ビードエイペックス6bを構成するゴム組成物の70℃におけるtanδ(70℃tanδBA)は、0.25以下が好ましく、0.22以下がより好ましい。一方、下限は特に限定されないが、0.02以上が好ましく、0.03以上がより好ましい。なお、ビード補強層6cを具える場合には、ビードエイペックス6bの70℃tanδBAはビードエイペックス6bもしくはビード補強層6cを構成するゴム組成物の70℃tanδのいずれか低い方の値である。
【0196】
また、ビードエイペックス6bを構成するゴム組成物の70℃における複素弾性率(70℃E*BA)は、8MPa以上が好ましく、10MPa以上がより好ましい。一方、上限は特に限定されないが、200MPa以下が好ましく、150MPa以下がより好ましい。なお、ビード補強層6cを具える場合には、ビードエイペックス6bを構成するゴム組成物の70℃E*BAはビードエイペックス6bもしくはビード補強層6cの70℃E*δのいずれか高い方の値である。
【0197】
ビードエイペックス6bのタイヤ半径方向高さHBAと70℃tanδBAの積(HBA×70℃tanδBA)は、15.0mm以下が好ましく、12.0mm以下がより好ましい。一方、下限としては特に限定されないが、0.2mm以上が好ましく、0.3mm以上がより好ましい。
【0198】
ビードエイペックス6bのタイヤ半径方向高さHBAと70℃E*BAの積(HBA×70℃E*BA)は80MPa・mm以上が好ましく、100MPa・mm以上がより好ましい。一方、下限としては特に限定されないが、12000MPa・mm以下が好ましく、9000MPa・mm以下がより好ましい。
【0199】
ビードエイペックス6bを構成するゴム組成物の硬度HSBAは70以上であることが好ましく、100以下であることが好ましい。なお、ビード補強層6cを具える場合には、ビードエイペックス6bの硬度HSBAはビードエイペックス6bもしくはビード補強層6cの硬度のいずれか高い方の値である。
【0200】
ビードエイペックス6bを構成するゴム組成物の100%伸長時モジュラスM100BAは、5.0MPa以上であることが好ましく、30MPa以下であることが好ましい。なお、ビード補強層6cを具える場合には、ビードエイペックス6bの100%伸長時モジュラスM100BAはビードエイペックス6bもしくはビード補強層6cの100%伸長時モジュラスのいずれか高い方の値である。
【0201】
ビードエイペックス6bを構成するゴム組成物の破断強度TBBAは、10MPa以上であることが好ましく、40MPa以下であることが好ましい。なお、ビード補強層6cを具える場合には、ビードエイペックス6bの破断強度TBBAはビードエイペックス6bもしくはビード補強層6cの破断強度のいずれか高い方の値である。
【0202】
ビードエイペックス6bを構成するゴム組成物の破断伸びEBBAは。70%以上であることが好ましく、250%以下であることが好ましい。なお、ビード補強層6cを具える場合には、ビードエイペックス6bの破断伸びEBBAはビードフエイペックス6bもしくはビード補強層6cの破断伸びのいずれか高い方の値である。
【0203】
インナーライナー7はタイヤ内腔面をなすように形成されており、この部材により、空気透過量を低減して、タイヤ内圧を保持することができる。このインナーライナー7とカーカス層8との間には接着性の観点からインスレーション層が設けられても良い。
【0204】
インナーライナー7の厚みGIは0.2mm以上であることが好ましく、0.3mm以上が好ましい。一方、上限は特に限定されないが、5.0mm以下が好ましく、4.0mm以下がより好ましい。
【0205】
インナーライナー7を構成するゴム組成物の70℃におけるtanδ(70℃tanδI)は、0.30以下が好ましく、0.28以下がより好ましい。一方、下限は特に限定されないが、0.05以上が好ましく、0.08以上がより好ましい。
【0206】
また、インナーライナー7を構成するゴム組成物の70℃における複素弾性率(70℃E*I)は、2.0MPa以上が好ましく、2.5MPa以上がより好ましい。一方、上限は特に限定されないが、8.0MPa以下が好ましく、7.0MPa以下がより好ましい。
【0207】
インナーライナー7の厚さGIと70℃tanδIの積(GI×70℃tanδI)は1.50mm以下が好ましく、1.40mm以下がより好ましい。一方、下限としては特に限定されないが、0.01mm以上が好ましく、0.02mm以上がより好ましい。
【0208】
インナーライナー7の厚さGIと70℃E*の積(GI×70℃E*I)は、40.0MPa・mm以下が好ましく、35.0MPa・mm以下がより好ましい。一方、下限としては特に限定されないが、0.4MPa・mm以上が好ましく、0.5MPa・mm以上がより好ましい。
【0209】
インナーライナー7を構成するゴム組成物の硬度HSIは35以上であることが好ましく、55以下であることが好ましい。
【0210】
インナーライナー7を構成するゴム組成物の100%伸長時モジュラスM100Iは、0.2MPa以上であることが好ましく、5.0MPa以下であることが好ましい。
【0211】
インナーライナー7を構成するゴム組成物の破断強度TBIは、7MPa以上であることが好ましく、25MPa以下であることが好ましい。
【0212】
インナーライナー7を構成するゴム組成物の破断伸びEBIは、400%以上であることが好ましく、1000%以下であることが好ましい。
【0213】
インナーライナー7のタイヤ内腔表面側にはパンク時に穴を塞ぐためのシーラント層、が取り付けられても良い。また、インナーライナー層7のタイヤ内腔表面側には制音体、および立体網目構造体からなる群より選ばれる1以上の低密度部材が取り付けられても良い。低密度部材を設けることにより、トレッド表面から振動が伝わった際に、タイヤ内部でこれらの低密度部材が振動することで、トレッド部内の振動を相殺することが可能になる。
【0214】
シーラント層としては、一般にパンク防止用として、トレッド部のタイヤ内周面に用いられるものを好適に使用することができる。そのようなシーラント層の具体例としては、例えば、特開2020-23152号公報に記載のものが挙げられる。シーラント層の厚さは、通常、1~10mmであることが好ましい。シーラント層の幅は、通常、ベルト層の最大幅の85~115%であることが好ましく、95~105%であることが好ましい。
【0215】
制音体としては、タイヤ内腔で制音効果を発揮できるものであればいずれも好適に用いることができる。そのような制音体の具体例としては、例えば、特開2019-142503号公報に記載のものが挙げられる。制音体は、例えば、多孔質状のスポンジ材により構成される。スポンジ材は、海綿状の多孔構造体であり、例えばゴムや合成樹脂を発泡させた連続気泡を有するいわゆるスポンジそのものの他、動物繊維、植物繊維または合成繊維等を絡み合わせて一体に連結したウエブ状のものを含む。また「多孔構造体」には、連続気泡のみならず独立気泡を有するものを含む。制音体としては、ポリウレタンからなる連続気泡のスポンジ材が挙げられる。スポンジ材としては、例えば、エーテル系ポリウレタンスポンジ、エステル系ポリウレタンスポンジ、ポリエチレンスポンジなどの合成樹脂スポンジ、クロロプレンゴムスポンジ(CRスポンジ)、エチレンプロピレンゴムスポンジ(EDPMスポンジ)、ニトリルゴムスポンジ(NBRスポンジ)などのゴムスポンジを好適に用いることができ、とりわけエーテル系ポリウレタンスポンジを含むポリウレタン系またはポリエチレン系等のスポンジが、制音性、軽量性、発泡の調節可能性、耐久性などの観点から好ましい。
【0216】
立体網目構造体としては、一般に、吸音材として作用するものであればいずれも好適に用いることができる。そのような吸音材の具体例としては、例えば、特開2018-90131号公報に記載のものが挙げられる。立体網目構造体は、より詳しくは、樹脂を溶融させた複数の線条が不規則に絡み合い、その絡合部が溶着されることにより形成されたものである。
【0217】
立体網目構造体は、タイヤ内腔に固定されていることが好ましい。タイヤ内腔への固定方法は、特に限定されず、例えば、接着剤等によりタイヤ内面に接着すればよいが、上記シーラント層を構成するシーラント材により固定されることもでき、そのように固定されることは好ましい。
【0218】
立体網目構造体の厚さは、特に限定されないが、好ましくは1.0~150mm、より好ましくは30~120mmである。幅は、特に限定されないが、効果がより好適に得られるという理由から、上記シーラント層の幅の50~95%であることが好ましく、60~90%であることがより好ましい。
【0219】
インナーライナー7のタイヤ内腔表面側にはタイヤの状態をリアルタイムでモニタリングするためのセンシングコアなどが取り付けられても良い。
【0220】
カーカス8は、カーカスプライ8aを具えている。図1のタイヤ1では、カーカス8は1枚のカーカスプライ8aからなるが、2枚以上で構成されてもよい。
【0221】
図1のタイヤ1では、カーカスプライ8aは、両側のビードコア6aの間に架け渡されており、トレッド2およびサイドウォール3に沿っている。カーカスプライ8aは、ビードコア6aの周りにて、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。すなわち、カーカスプライ8aは、主部とビードコアでの折り返し部とを備えている。
【0222】
また、複数層のカーカスプライ8aを具える場合において、全てのカーカスプライ8aが折り返し部を有していても良く、いずれかが折り返し部を有していていれば、残りは折り返し部を有していなくても良い。
【0223】
タイヤ1のカーカスプライ8aが折り返し部を有する場合、折り返し部はその本体部と隣接していても良く、隣接していなくても良い。また、カーカスの折り返し部のタイヤ径方向外側端部の高さであるカーカス折り返し部の高さHKはベルト層端部の高さHBEよりも低い。また、HKは、クリンチの端部の高さよりも高くても良く、低くても良い。またHKはビードエイペックスのタイヤ半径方向高さHBAよりも高くても良く、低くても良い。
【0224】
図示されていないが、カーカスプライ8aは、並列された多数のコード(カーカスコード)と被覆ゴム層とからなることが望ましい。それぞれのコードが赤道面CLに対してなす角度の絶対値は、75°から90°が好適である。換言すれば、このカーカス8はラジアル構造を有することが好ましい。
【0225】
また、カーカスプライの本体部と折り返し部に配列された多数のコードが赤道面CLに対してなす角度は同じであっても、異なっていても良い。
【0226】
カーカスコードとしては後述の有機繊維コードもしくはスチールコードを用いることが可能である。
【0227】
カーカスコードの外径dKは、0.50mm以上であることが好ましく、1.00mm以下であることが好ましい。
【0228】
カーカスコードの配列本数EKは25本/50mm以上、45本/50mm以下であることが好ましい。
【0229】
カーカスコードの外径dKと配列本数EKの積(DK×EK)は20以上であることが好ましく、30以下であることが好ましい。
【0230】
カーカスコードの占有面積比率は30%以上、50%以下であることが好ましい。
【0231】
カーカスコードの44N負荷時の中間伸度としては、1.0以上が好ましく、8.5以下が好ましい。
【0232】
カーカスコードの熱収縮率としては、0.2%以上が好ましく、5.0%以下が好ましい。
【0233】
カーカスコードの強力としては、140N以上が好ましく、630N以下が好ましい。
【0234】
カーカスコードの被覆ゴム層を構成するゴム組成物の70℃におけるtanδ(70℃tanδK)は、0.30以下が好ましい。下限は特に限定されないが、0.05以上であると好ましい。
【0235】
カーカスコードの被覆ゴム層を構成するゴム組成物の70℃におけるtanδ(70℃tanδK)は、0.30以下が好ましい。下限は特に限定されないが、0.05以上であると好ましい。
【0236】
図1のベルト層9は、トレッド2のタイヤ半径方向内側に位置している。ベルト層9は、カーカス8の上に積層されている。ベルト層9は、カーカス8を補強する。図1のタイヤ1において、ベルト層9は、内側ベルトプライ9aおよび外側ベルトプライ9bの2層のベルトプライからなる。図1から明らかなように、タイヤ幅方向において、内側ベルトプライ9aのタイヤ幅方向の幅W9aは外側ベルトプライ9bの幅W9bよりも大きいことが望ましい。このタイヤ1では、ベルト層9の軸方向幅はタイヤ1の断面幅の0.6倍以上が好ましく、0.9倍以下が好ましい。
【0237】
なお、図1では、内側ベルトプライ9aおよび外側ベルトプライ9bの2層のベルトプライからなるベルト層9の例が示されているが、ベルト層9は、単層のベルトプライ、3層以上のベルトプライから構成されるものでもよい。
【0238】
図1の内側ベルトプライ9a、および、外側ベルトプライ9bは、ベルトコードを複数並列し、これをベルトトッピングゴムにより被覆して構成されている。
【0239】
ここで図4は、ベルト層をタイヤ径方向から見た模式図であり、図5はタイヤ回転軸を通る平面によるベルト層の断面の模式図、図6はベルトプライ1層の、ベルトコードの長手方向に垂直な平面による断面の模式図である。なお、図4では、ベルト層9に隣接するバンド層10a(フルバンドまたはバンドプライともいう)は示されているが、バンド層10b(エッジバンドまたはエッジバンドプライともいう)は図示が省略されている。また、ベルトプライ9a、9bおよびバンド層10aに施された斜線は内包されたベルトコードの配列方向を表している。
【0240】
図4から内側ベルトプライ9a内のベルトコードおよび外側ベルトプライ9b内のベルトコードはタイヤ周方向に対してそれぞれθ9a、θ9bの角度で傾いている。θ9a、θ9bは特に限定されないが、±15~60度の範囲内であることが好ましい。また、図4のように複数のベルトプライを有する場合は隣り合うベルトプライ内のベルトコードとタイヤ周方向のなす角度θはそれぞれ正負が逆になっていることが好ましい。このようにすることで、箍効果を生じさせることができ、カーカス8を拘束しやすくすることが可能となる。
【0241】
図5において、GBBは、隣り合う2層のベルトプライ9aおよび9bに含まれるベルトコードについて、各層に含まれるベルトコード断面の中心を繋いだ線分の、タイヤ赤道面上での距離である。GBBは0.5mm以上であることが好ましく、1.2mm以下であることが好ましい。
【0242】
また、ベルトコードはタイヤ周方向に対して角度θで傾いて配列されているため、ベルトコードの長手方向に垂直な断面形状が真円である場合においても、タイヤ幅方向の断面においては、ベルトコードの断面形状は楕円などとなる。
【0243】
図6において、ベルトコードの断面形状は真円状であるが、このような態様に限られず、ベルトコードの断面形状は楕円状であっても、トラック状であっても良い。
【0244】
ベルトコードの外径dBは0.2mm以上、0.5mm以下である。このような範囲とすることにより、路面からの入力によるコードの曲がり量が最適化され、コード折れへの耐久性を上げることができる。ベルトコードの外径dBが0.2mm未満の場合には、1本あたりの強力が低く、0.5mm超の場合には、コードの曲げ中心より外側の引張が大きくなるため折れやすくなると考えられる。
【0245】
ベルトコードの断面形状が楕円状など、長軸、短軸を有する形状である場合において、短軸に対する長軸の比(長軸/短軸)は、1.05以上が好ましく、1.10以上がより好ましい。一方、上限は特に限定されないが、2.00以下が好ましく、1.80以下がより好ましい。
【0246】
ベルトコードは、耐久性能などの観点から、予め長手方向にくせ付けを施したものを使用しても良い。ベルトコードにくせ付けが施される場合には、長手方向に対するくせ付けのピッチPは3mm以上であると好ましく、30mm以下であると好ましい。
【0247】
また、ベルトコードの長手方向に垂直な断面における、ベルトコードの配列本数EBは60本/50mm以下であることが好ましく、55本/50mm以下であることが好ましい。このような配列本数とすることにより、横方向のコード間隔が確保され、亀裂成長速度を抑制することができると考えられる。一方、下限としては、30本/50mm以上が好ましく、35本/50mm以上がより好ましい。
【0248】
また、ベルトコードの長手方向に垂直な断面において、隣り合うベルトコード間の距離dBBは0.20mm以上であることが好ましく、0.80mm以下であることが好ましい。
【0249】
ベルトコードの強力としては200N以上が好ましく580N以下が好ましい。
【0250】
また、一層のベルトプライの厚さGBは、1.20mm以下であることが好ましく、0.5mm以上であることが好ましい。
【0251】
ベルトコードの占有面積比率は9%以上、18%以下であることが好ましい。
【0252】
ベルトコードの外径dBと配列本数EBの積(dB×EB)は15以上であることが好ましく、30以下であることが好ましい。
【0253】
ベルトコードは、ベルトトッピングゴムにより被覆されていることが好ましい。ベルトトッピングゴムを構成するゴム組成物の70℃におけるtanδ(70℃tanδBE)は0.20以下であると好ましい。一方、下限は特に限定されないが、0.04以上であると好ましい。
【0254】
ベルトトッピングゴムを構成するゴム組成物の100%伸長時モジュラスM100BEは、1.0MPa以上であることが好ましく、4.0MPa以下であることが好ましい。
【0255】
ベルトトッピングゴムを構成するゴム組成物の破断強度TBBEは、10MPa以上であることが好ましく、40MPa以下であることが好ましい。
【0256】
ベルトトッピングゴムを構成するゴム組成物の破断伸びEBBEは、150%以上であることが好ましく、500%以下であることが好ましい。
【0257】
また、ベルトコードおよびベルトトッピングゴムの接着性を向上させる観点から、ベルトトッピングゴムはコバルト、ニッケル、ビスマス、アンチモン、鉄などのイオン化傾向が銅および亜鉛の間に属する金属元素の塩を含むことが好ましい。また、その他の接着性を向上させる観点からポリベンゾオキサジン化合物やフェノール樹脂などの接着性樹脂を含ませても良い。
【0258】
また、ベルトコードおよびベルトトッピングゴムの接着性を向上させる観点から、ベルトコードの表面に銅および亜鉛を含むめっき層が形成されていることが好ましい。また、前記した銅、亜鉛に加えて、コバルト、ニッケル、ビスマス、アンチモンなどのイオン化傾向が銅および亜鉛の間に属する金属元素を含むめっきが施されていることがより好ましい。
【0259】
図1のバンド(ベルト補強層)10は、ベルト層9の半径方向外側に位置している。図1のタイヤ1では、タイヤ幅方向において、バンド10はベルトプライ9aの幅と同等の幅を有しているが、ベルトプライ9aの幅よりも大きな幅を有していてもよい。
【0260】
図1において、バンド10は、ベルト全体を覆う半径方向内側のバンドプライ10aと、ベルト層のエッジ部分のみを覆うエッジバンドプライ10bとから形成されているが、このような態様に限定されるものではなく、例えば、バンドは、タイヤ幅方向に連続している層を含むものであってもよく、または、ベルト層のタイヤ幅方向両端部のタイヤ半径方向外側のみを覆うものであっても良い。また、図1において、バンドは2層で形成されているが、このような態様に限定されるものではなく、1層で形成されていてもよく、3層以上で形成されていても良い。
【0261】
バンド10は、図示していないが、バンドコードとバンドトッピングゴムとからなることが望ましい。バンドコードは、タイヤ周方向に螺旋状に巻かれている。このようなバンドは、いわゆるジョイントレス構造を有することとなる。バンドコードは、実質的にタイヤ周方向に延びている。タイヤ周方向に対するバンドコードの角度は、±10°以下、さらには±5°以下であることが好ましい。このバンドコードによりベルト層9が拘束されるので、走行中の内圧によりタイヤの外径が大きくなることが抑制される。
【0262】
バンド10としては、スチールコードもしくは後記の有機繊維コードを用いることが可能である。
【0263】
バンドコードの外径dBANDは、0.50mm以上であることが好ましく、0.90mm以下であることが好ましい。
【0264】
バンドコードの配列本数EBANDは、40本/50mm以上、60本/50mm以下であることが好ましい。
【0265】
バンドコードの占有面積比率は、30%以上、60%以下であることが好ましい。
【0266】
バンドコードの中間伸度としては、1.2%以上が好ましく、9.5%以下が好ましい。
【0267】
バンドコードの熱収縮率としては、0.1%以上が好ましく、5.0%以下が好ましい。
【0268】
バンドコードの強力としては、130N以上が好ましく、700N以下が好ましい。
【0269】
バンドコードの外径dBANDと配列本数EBANDの積(dBAND×EBAND)は2.0以上が好ましく、5.4以下が好ましい
【0270】
バンドコードの被覆ゴムを構成するゴム組成物の70℃におけるtanδ(70℃tanδBAND)は、0.30以下が好ましい。下限は特に限定されないが、0.05以上であると好ましい。
【0271】
バンドコードの被覆ゴムを構成するゴム組成物の70℃におけるE*(70℃E*BAND)は、3.0MPa以上であることが好ましく、10.0MPa以下であることが好ましい。
【0272】
他のタイヤの一実施形態としてはランフラットタイヤが挙げられる。ランフラットとは、空気圧が失われた状態でも車輌を支えることができるよう構成されたタイヤであって、通常、そのためのサイド補強層を備えている。ここで、サイド補強層とは、ランフラットタイヤのサイドウォール部の内側に配置されたゴム層のことをいう。
【0273】
図7は、ランフラットタイヤの断面図の右半分を示す。図7は、ウイングやバンド等の不要な構成を省略した模式図である。図7において、サイド補強層23はカーカスの内側に接してビード部からトレッドのショルダー部にわたって配置される。また、サイド補強層23はカーカス本体部分とその折返し部の間にビード部からトレッド部にわたって配置される、あるいは複数のカーカスプライまたは補強プライの間に2層に配置される。サイド補強層23は、横断面形状が上下方向の両端に向かうにつれて厚さが漸減する略三日月状をなして配置されているが、この形状に限定されない。
【0274】
[コード]
本発明のタイヤは、スチールコードを有する少なくとも1つのタイヤ部材を備え、前記スチールコードを有する少なくとも1つのタイヤ部材が、1×1構造のスチールコードを有する少なくとも1層のプライを含むものである。ここで、1×1構造のスチールコードとは、1本のフィラメントからなるコードであり、モノフィラメントともいう。
【0275】
本発明のタイヤにおいて、1×1構造のスチールコードを有する少なくとも1層のプライを含むタイヤ部材は、特に制限されず、例えば、上記のカーカス、ベルト層、バンド等であってよいが、当該タイヤ部材はベルト層およびバンドからなる群より選択される少なくとも1つのタイヤ部材であることが好ましい。
【0276】
本発明のタイヤにおいて、1×1構造のスチールコードを有する少なくとも1層のプライを含むタイヤ部材がベルト層である場合、本発明のタイヤは種々の用途のタイヤに用いることができるが、なかでも、乗用車用タイヤであることが好ましい。本発明のタイヤにおいて、1×1構造のスチールコードを有する少なくとも1層のプライを含むタイヤ部材がバンドである場合、本発明のタイヤは、重荷重用タイヤであることが好ましい。
【0277】
本発明のタイヤにおいて、前記1×1構造のスチールコードを有する少なくとも1層のプライを含むタイヤ部材以外のタイヤ部材については、その他の構造のスチールコードを含め種々の構造のコードを用いることができる。そのような構造のコードとしては、N本のフィラメントを撚り合わせた1×N構造のスチールコードや、N本のフィラメントを撚り合わせたヤーンをM本撚り合わせたM×N構造のスチールコード、N本のコアフィラメントの周りにM本のフィラメントを撚り合わせたN+M構造のスチールコードの他、スチールコード以外のコード、例えば、繊維コードなどが挙げられる。
【0278】
≪スチールコード≫
本発明において、スチールコードを形成するスチールフィラメントの材質としては特に限定されず、HT材(High Tensile)やSHT材(Super High Tensile)、UHT材(Ultra High Tensile)などを用いることが可能である。また、使用済みの鉄製品を溶融させて得られるリサイクル鉄を用いても良い。
【0279】
本発明に係るスチールコードは、メッキ層を施してもよい。メッキ層を有するスチールコードは、高温多湿の過酷な条件下においても高い耐湿熱接着性能を発揮することから、トッピングゴムとスチールコード間の剥離を防止することができ、湿熱条件におけるタイヤの耐久性を向上させることができる。なお、スチールコードが複数のフィラメントを有する場合には、各フィラメントについて、その表面にメッキ層を施すことができる。
【0280】
メッキ層は、伸線加工前のフィラメントに、銅層、亜鉛層、およびコバルト層等をメッキにより形成した後、熱処理することによりフィラメントの表面に形成した各層の金属を拡散することで形成することができる。なお、メッキ層を形成するためにフィラメントに形成する積層順は特に限定されない。
【0281】
なお、スチールコードを有するタイヤ部材に、複数本のスチールフィラメントを撚り合わせたスチールコードを用いる場合、スチールコード内部に被覆ゴム層が入り込みやすくすることで、耐久性能を向上させる観点から、予め長手方向にくせ付けを施したスチールフィラメントを用いても良い。
【0282】
≪スチールコード以外のコード≫
本発明のタイヤは、スチールコード以外のコードを有しても良い。スチールコード以外のコードとしては、例えば繊維コードが挙げられ、繊維コードには、有機繊維コード等が挙げられる。有機繊維コードを構成する有機繊維としては、ポリエステル、ポリアミド、セルロースなどが挙げられる。これらは合成繊維でも良く、バイオマス由来の繊維であっても良い。また、ライフサイクルアセスメントの観点から、リサイクル、再生材料由来であることが望ましい。また、これらの繊維は合成繊維、バイオマス繊維、リサイクル/再生繊維の単一成分で形成されていても良く、これらを撚り合わせたハイブリッドコード、それぞれのフィラメントを合わせたマルチフィラメントを用いたコード、それぞれの成分が化学的に結合した化学構造を有するコードの何れであっても良い。
【0283】
ポリエステルコードとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)コード、ポリエチレンナフタレート(PEN)コード、ポリエチレンフラノエート(PEF)等が挙げられる。他のポリエステルコードと比較して、耐空気透過性に優れ、タイヤ内部の空気圧を保持しやすい観点から、PEFを用いても良い。また、ポリエステルコードの一部がポリアミド繊維等他の有機繊維からなるコードに代わった他の有機繊維からなるコードとのハイブリッドコードであっても良い。
【0284】
ポリエステルコードがバイオマス由来のポリエステルコードである場合、例えば、バイオマス由来のテレフタル酸やエチレングリコールを用いたバイオマスPETコード、バイオマス由来のフランジカルボン酸を用いたバイオマスPEFなどを好適に用いることができる。
【0285】
バイオマスポリエステルコードは、例えば、バイオエタノールやフルフラール類、カレン類、シメン類、テルペン類などから変換、もしくは各種動植物由来の化合物から変換、微生物等から直接発酵製造したバイオマステレフタル酸、バイオマスエチレングリコールなどから得ることが可能である。
【0286】
ポリアミドコードとしては、例えば、脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミド、全芳香族ポリアミドが挙げられる。
【0287】
脂肪族ポリアミドは、直鎖の炭素鎖がアミド結合により繋がった骨格を有するポリアミドであり、ナイロン4(PA4)、ナイロン410(PA410)、ナイロン6(PA6)、ナイロン66(PA66)、ナイロン610(PA610)、ナイロン1010(PA1010)、ナイロン1012(PA1012)、ナイロン11(PA11)、などを挙げることが出来る。中でも部分的または完全にバイオマス由来の材料で得られやすい観点からはナイロン4、ナイロン410、ナイロン610、ナイロン10、ナイロン1010、ナイロン11などが挙げられる。
【0288】
ナイロン6およびナイロン66としては、従来の化学合成由来のカプロラクタムを開環重合させたもの、ヘキサメチレンジアミン、アジピン酸を縮合重合させたものほか、バイオ由来のシクロヘキサンを出発原料としてバイオカプロラクタムもしくは、バイオアジピン酸、バイオヘキサメチレンジアミンを製造し、それらを用いたナイロン6、もしくはナイロン66を用いても良い。また、前述のバイオ原料は、グルコースのような糖などから得たものであっても良い。これらのナイロン6、ナイロン66は従来用いられてきたものと同様の強度を備えると考えられる。
【0289】
ナイロン4としては、バイオ発酵由来のグルタミン酸から、γ-アミノ酪酸に変換したのちに得られる2-ピロリドンを原料としたものが代表として挙げられるが、これに限られない。ナイロン4は、熱的・機械的安定性が良好であり、高分子構造設計が容易という特徴を有しているため、タイヤの性能、強度向上に寄与するため、好適に用いることが可能である。
【0290】
ナイロン410、ナイロン610、ナイロン1010、ナイロン1012、ナイロン11等は、ひまし油(トウゴマ)から得られるリシノール酸などを原料として得ることが出来る。具体的には、ひまし油から得たセバシン酸、ドデカン二酸と、任意のジアミン化合物とを縮合重合することにより、ナイロン410、ナイロン610、ナイロン1010を得ることができ、ひまし油から得た11-アミノウンデカン酸を縮合重合することによりナイロン11を得ることが可能である。
【0291】
ナイロン4T、ナイロン6T、ナイロン10Tは、ジカルボン酸として、テレフタル酸を用い、それぞれ任意の炭素数のジアミン化合物と縮合重合を行うことにより得ることが可能である。その際、前述のバイオマス由来のテレフタル酸を用いてこれらのナイロン材料を得ることも可能である。これらは分子鎖内に剛直な環状構造を有する為、耐熱性などの観点で優れる。
【0292】
また、前述の脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミドとして、リジン由来の1,5-ペンタンジアミンをジカルボン酸類と重合したポリアミド5X(Xはジカルボン酸由来の炭素数であり、整数もしくはテレフタル酸を表すT)などを挙げることが出来る。
【0293】
全芳香族ポリアミドとしては、芳香環がアミド結合により繋がった骨格を有するポリアミドであり、ポリパラフェニレンテレフタルアミドなどを挙げることができる。全芳香族ポリアミドも前述の脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミドと同様に、バイオマス由来のテレフタル酸とフェニレンジアミンを結合させることにより得ても良い。
【0294】
セルロース繊維としては、木材パルプ等の植物素材から製造されるレーヨン、ポリノジック、キュプラ、アセテート、リヨセル、モダール等を挙げることができる。これらセルロース系繊維は、原料がカーボンニュートラルであるだけでなく、生分解性であり使用後焼却しても有害ガスが出ない等の優れた環境性能を有するため好ましい。上記の中でも、工程の効率、環境への優しさ、機械強度のバランスから、レーヨン、ポリノジック、リヨセルが特に好ましい。
【0295】
また、上記の有機繊維コードは、合成、バイオマス由来を問わず、飲料用ボトルや衣料品などの使用済みのものから回収、精製したものを再度紡糸することにより得られたリサイクルコードであっても良い。
【0296】
上記の有機繊維コードは、1本以上のフィラメントを撚り合わせることにより形成されてよい。例えば、1100デシテックスのマルチフィラメントをそれぞれ2本合わせて(言い換えれば、1100/2デシテックス)、48回/10cmの下撚りをかけた後、この下撚コード2本を合せて下撚と反対または同方向に同数の上撚をかけたもの、1670デシテックスのマルチフィラメントをそれぞれ2本合わせて(言い換えれば、1670/2デシテックス)、40回/10cmの撚りをかけた後、この下撚コード2本を合せて上撚をかけたものなどを使用することが出来る。
【0297】
また、上記の有機繊維コードは、被覆層との良好な接着性を確保する観点から、予め接着層が塗布された処理をされていることが好ましい。接着層としては公知のものが使用でき、例えばレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)による処理のほか、ソルビトールポリグリシジルエーテルとブロックイソシアネートとを含む接着剤組成物などによりエポキシ処理した後、RFL処理したものや、ハロヒドリン化合物とブロックイソシアネート化合物とゴムラテックスとを含む接着剤組成物により処理したもの等が使用可能である。
【0298】
レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)は、例えば、特開昭48-11335号公報に記載されているように、天然ゴムおよび/または合成ゴムラテックスと、フェノール-ホルムアルデヒドとレゾルシノールとの共縮合物とを含む接着剤組成物などが挙げられる。このような接着剤組成物は、例えば、アルカリ性触媒の存在下でフェノールとホルムアルデヒドとを縮合する工程と、水性フェノール-ホルムアルデヒド樹脂溶液とレゾルシノールとを共重合する工程と、生成したフェノール-ホルムアルデヒド-レゾルシノール樹脂溶液とラテックスゴムとを混合する工程とを含む製造方法により製造できる。
【0299】
なお、合成ゴムラテックスとしては、ブタジエン重合体ラテックス、スチレン/ブタジエン共重合体ラテックス、イソプレン重合体ラテックス、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体ラテックス、ブタジエン/ビニルピリジン重合体ラテックス、ブタジエン/ビニルピリジン/スチレン共重合体ラテックスなどが挙げられる。
【0300】
上記レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)からなる接着層は、RFL接着剤を付与すること(上記有機繊維コードをRFL液に浸漬(DIP:ディッピング)する方法など)により、形成できる。上記RFL接着剤は、通常、撚糸して繊維コードを得た後に付着されるが、撚糸の前または途中に行ってもよい。
【0301】
上記RFL接着剤の組成は特に限定されず、適宜選択すればよいが、なかでも、レゾルシン0.1~10質量%、ホルマリン0.1~10質量%、およびラテックス1~28質量%を含む組成物であることが好ましく、レゾルシン0.5~3質量%、ホルマリン0.5~3質量%、およびラテックス10~25質量%を含む組成物であることがより好ましい。
【0302】
加熱処理における加熱方法としては、例えば、RFL接着剤組成物が付着した繊維コードを100~250℃で1~5分乾燥処理した後、さらに、150~250℃で1~5分で熱処理を行う方法などが挙げられる。乾燥処理後の熱処理の条件は、180~240℃で1~2分であることが望ましい。
【0303】
加熱処理における加熱方法としては、例えば、RFL接着剤組成物が付着した繊維コードを100~250℃で1~5分乾燥処理した後、さらに、150~250℃で1~5分で熱処理を行う方法などが挙げられる。乾燥処理後の熱処理の条件は、180~240℃で1~2分であることが望ましい。
【0304】
ソルビトールポリグリシジルエーテルとしては、ソルビトールジグリシジルエーテル、ソルビトールトリグリシジルエーテル、ソルビトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールペンタグリシジルエーテル、ソルビトールヘキサグリシジルエーテル、またはこれらの混合物などが挙げられ、ソルビトールモノグリシジルエーテルが含まれていてもよい。ソルビトールポリグリシジルエーテルは、1分子中に多数のエポキシ基を有しており高い架橋構造を形成することができる。
【0305】
ソルビトールポリグリシジルエーテルの塩素含有量は、9.6質量%以下が好ましく、9.5質量%以下がより好ましく、9.4質量%以下が更に好ましく、9.3質量%以下が特に好ましい。該塩素含有量の下限は、特に限定されず、例えば、1質量%以上である。なお、本発明において、ソルビトールポリグリシジルエーテルの塩素含有量は、JIS K 7243-3に記載の方法などにより求めることができる。
【0306】
ソルビトールポリグリシジルエーテルの塩素含有量は、エポキシ化合物を合成する際に使用するエピクロルヒドリンの量を削減すること等により低減できる。
【0307】
ブロックイソシアネートは、イソシアネート化合物とブロック剤との反応により生成し、ブロック剤由来の基により一時的に不活性化されている化合物であり、所定温度で加熱するとそのブロック剤由来の基が解離し、イソシアネート基を生成する。
【0308】
イソシアネート化合物としては、分子内に2個以上のイソシアネート基を有するもの等が挙げられる。2個のイソシアネート基を有するジイソシアネート類としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、ジフェニルプロパンジイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、およびこれらの異性体、アルキル置換体、ハロゲン化物、ベンゼン環への水素添加物等を使用できる。また、3個のイソシアネート基を有するトリイソシアネート類、4個のイソシアネート基を有するテトライソシアネート類、およびポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等を使用できる。これらのイソシアネート化合物は、1種単独でまたは2種以上併用することができる。中でも、トリレンジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートが好ましい。
【0309】
ブロック剤としては、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム、β-プロピオラクタム等のラクタム系;フェノール、クレゾール、レゾルシノール、キシレノール等のフェノール系;メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルアルコール等のアルコール系;ホルムアミドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトン等の活性メチレン系等を挙げることができる。なかでも、ラクタム系、フェノール系、オキシム系ブロック剤が好ましい。
【0310】
上記ソルビトールポリグリシジルエーテルとブロックイソシアネートとを含む接着剤組成物において、ブロックイソシアネートの含有量は、ソルビトールポリグリシジルエーテル100質量部に対して、好ましくは50質量部以上、より好ましくは200質量部以上である。上限は、好ましくは500質量部以下、より好ましくは400質量部以下である。
【0311】
上記ソルビトールポリグリシジルエーテルとブロックイソシアネートとを含む接着剤組成物には、必要に応じて以下の任意成分が含まれていても良い。例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル以外のエポキシ化合物、ソルビトールポリグリシジルエーテルと共重合可能な樹脂、ブロックドイソシアネート以外の硬化剤、有機増粘剤、酸化防止剤、光安定剤、接着性向上剤、補強剤、軟化剤、着色剤、レベリング剤、難燃剤、および帯電防止剤等が挙げられる。
【0312】
ソルビトールポリグリシジルエーテル以外のエポキシ化合物として、例えば、エチレングリコールグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、およびブロム化ビスフェノールAジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル;ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステル、およびダイマー酸グリシジルエステル等のグリシジルエステル;トリグリシジルイソシアヌレート、グリシジルヒンダントイン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルパラアミノフェノール、トリグリシジルメタアミノフェノール、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、ジグリシジルトリブロムアニリン、およびテトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン等のグリシジルアミン;並びに3,4-エポキシシクロヘキシルメチルカルボキシレート、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油等の脂環族あるいは脂肪族エポキサイド等が挙げられる。
【0313】
上記ソルビトールポリグリシジルエーテルとブロックイソシアネートとを含む接着剤組成物による処理としては、RFLに含まれる各種成分を繊維コードに付着させるために行われる処理、および必要に応じてその後の加熱処理を含む処理などが挙げられる。
【0314】
付着方法としては、例えば、ローラーを使った塗布、ノズルからの噴霧、浴液(接着剤組成物)への浸漬等任意の方法を用いることができる。均一に付着させ、かつ余分な接着剤を除去する観点から、浸漬による付着が好ましい。
【0315】
また、繊維コードへの付着量を調整するために、圧接ローラーによる絞り、スクレイパー等によるかき落とし、空気吹き付けによる吹き飛ばし、吸引、ビーターによる叩き等の手段をさらに採用してもよい。
【0316】
繊維コードへの付着量は、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上であり、また、好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下である。なお、繊維コードへの付着量は、繊維コード100質量部に対して、付着される上記RFL接着剤中の固形分の量である。
【0317】
上記ソルビトールポリグリシジルエーテルとブロックイソシアネートとを含む接着剤組成物の全固形分濃度は、好ましくは0.9質量%以上、より好ましくは14質量%以上であり、また、好ましくは29質量%以下、より好ましくは23質量%以下である。
【0318】
上記ソルビトールポリグリシジルエーテルとブロックイソシアネートとを含む接着剤組成物には、レゾルシン、ホルマリン、ゴムラテックスの他に、加硫調整剤、亜鉛華、酸化防止剤、消泡剤等を添加してもよい。
【0319】
加熱処理における加熱方法としては、例えば、RFL接着剤組成物が付着した補強材16を100~250℃で1~5分乾燥処理した後、さらに、150~250℃で1~5分で熱処理を行う方法などが挙げられる。乾燥処理後の熱処理の条件は、180~240℃で1~2分であることが望ましい。
【0320】
上記ハロヒドリン化合物とブロックイソシアネート化合物とゴムラテックスとを含む接着剤組成物はこれらの成分を含むものであれば特に限定されないが、ハロヒドリン化合物、ブロックイソシアネート化合物およびゴムラテックスを含み、かつレゾルシンおよびホルムアルデヒドを含まない接着剤組成物が望ましい。
【0321】
ハロヒドリン化合物としては、ポリオール化合物とエピハロヒドリン化合物(ハロヒドリンエーテル)と反応させて得られる化合物などが挙げられる。ポリオール化合物とは、分子内に2つ以上のヒドロキシル基を有する化合物であり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのグリコール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、酒石酸などのヒドロキシル酸、グリセリン酸、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。エピハロヒドリン化合物としては、例えば、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリンなどが挙げられる。
【0322】
ハロヒドリン化合物としては、例えば、フルオロアルコール化合物、クロロヒドリン化合物、ブロモヒドリン化合物、ヨードヒドリン化合物などが挙げられる。なかでも、ハロゲン化ソルビトール、ハロゲン化グリセロールが好ましい。
【0323】
ハロヒドリン化合物100質量%中のハロゲン含有量は、5.0~15.0質量%が好ましく、7.0~13.0質量%がより好ましく、9.0~12.0質量%が更に好ましい。
【0324】
ブロックイソシアネート化合物は、例えば、前述のブロックイソシアネートと同様の化合物が挙げられる。また、ゴムラテックスは、前述のゴムラテックスと同様のものが挙げられる。
【0325】
上記ハロヒドリン化合物とブロックイソシアネート化合物とゴムラテックスとを含む接着剤組成物は、ハロヒドリン化合物が10.0~30.0質量部、ブロックイソシアネート化合物10.0~30.0質量部、およびゴムラテックス80.0~240.0質量部を含むことが望ましい。そして、当該接着剤組成物は、レゾルシンおよびホルムアルデヒドを含まない。
【0326】
上記ハロヒドリン化合物とブロックイソシアネート化合物とゴムラテックスとを含む接着剤組成物からなる接着剤層は、該接着剤組成物を使用して、繊維コードの表面上に形成される。該接着剤層は、例えば、浸漬、ブラッシング、鋳造、噴霧、ロールコーティング、ナイフコーティングなどによって形成されるが、これらに限定されない。
【0327】
[タイヤ部材用ゴム組成物]
本発明のタイヤに係るタイヤ部材用ゴム組成物(以下、本発明のゴム組成物という)について説明する。特に断りのなり限り、トレッド各ゴム層、ベルトトッピングゴム、バンドトッピングゴム、サイドウォール、ビード部、クリンチ、インナーライナー等のいずれのタイヤ部材においても共通して用いることができる。
【0328】
≪ゴム成分≫
本発明のゴム組成物は、ゴム成分を含有する。ゴム成分としては、ジエン系ゴムを含有することが好ましい。ジエン系ゴムとしては、タイヤ工業において通常使用されるものをいずれも好適に使用することができる。具体的には、例えば、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンゴム(SIR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。これらのジエン系ゴムは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0329】
なお、ゴム成分とは、架橋に寄与する成分であり、一般的に、重量平均分子量(Mw)が1万以上のポリマーで、アセトンにより抽出されないポリマー成分がゴム成分に該当する。前記ゴム成分は、常温(25℃)で固体状態である。
【0330】
(イソプレン系ゴム)
イソプレン系ゴムとしては、例えば、イソプレンゴム(IR)および天然ゴム等タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。天然ゴムには、非改質天然ゴム(NR)の他に、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素化天然ゴム(HNR)、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム、グラフト化天然ゴム等の改質天然ゴム等も含まれる。これらのイソプレン系ゴムは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0331】
NRとしては、特に限定されず、タイヤ工業において一般的なものを用いることができ、例えば、SIR20、RSS#3、TSR20等が挙げられる。
【0332】
ゴム成分中のイソプレン系ゴムの含有量は、0~100質量%(例えば、1、3、5、7、10、12、15、17、20、22、25、28、30、32、35、37、40、42、45、47、50、52、55、57、60、62、65、68、70、72、74、76、80、82、85、88、90、92、95、99)とすることができる。
【0333】
(BR)
BRとしては特に限定されるものではなく、例えば、シス含量が50モル%未満のBR(ローシスBR)、シス含量が90モル%以上のBR(ハイシスBR)、希土類元素系触媒を用いて合成された希土類系ブタジエンゴム(希土類系BR)、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR(SPB含有BR)、変性BR(ハイシス変性BR、ローシス変性BR)等タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。これらのBRは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0334】
ハイシスBRとしては、例えば、日本ゼオン(株)、宇部興産(株)、JSR(株)等より市販されているものを使用することができる。ハイシスBRを含有することで低温特性および耐摩耗性能を向上させることができる。ハイシスBRのシス含量は、95モル%以上が好ましく、96モル%以上がより好ましく、97モル%以上がさらに好ましい。なお、BRのシス含量は、前記測定方法により測定される。
【0335】
BRを含有する場合のゴム成分中の含有量は、0~100質量%(例えば、1、3、5、7、10、12、15、17、20、22、25、28、30、32、35、37、40、42、45、47、50、52、55、57、60、62、65、68、70、72、74、76、80、82、85、88、90、92、95、99)とすることができる。
【0336】
(SBR)
SBRとしては特に限定はなく、溶液重合SBR(S-SBR)、乳化重合SBR(E-SBR)、これらの変性SBR(変性S-SBR、変性E-SBR)等が挙げられる。変性SBRとしては、末端および/または主鎖が変性されたSBR、スズ、ケイ素化合物等でカップリングされた変性SBR(縮合物、分岐構造を有するもの等)等が挙げられる。さらに、これらSBRの水素添加物(水素添加されたSBR)等も使用することができる。これらのSBRは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0337】
SBRとしては油展SBRを用いることもできるし、非油展SBRを用いることもできる。本発明で使用できるSBRとしては、JSR(株)、住友化学(株)、宇部興産(株)、旭化成(株)、ZSエラストマー(株)、ARLANXEO社等より市販されているものを使用することができる。
【0338】
SBRのスチレン含量は、5質量%~90質量%以下(例えば、8、10、12、15、17、20、22、25、28、30、32、35、37、40、42、45、47、50、52、55、57、60、62、65、68、70、72、74、76、80、82、85、88)とすることができる。SBRのスチレン含量は、前記測定方法により測定される。
【0339】
SBRを含有する場合のゴム成分中の含有量は、0~100質量%(例えば、1、3、5、7、10、12、15、17、20、22、25、28、30、32、35、37、40、42、45、47、50、52、55、57、60、62、65、68、70、72、74、76、80、82、85、88、90、92、95、99)とすることができる。
【0340】
ゴム成分中のジエン系ゴムの含有量は50質量%以上(例えば、50、52、55、57、60、62、65、68、70、72、74、76、80、82、85、88、90、92、95、98、100)が好ましい。
【0341】
(非ジエン系ゴム)
ゴム成分は、非ジエン系ゴムを含んでもよい。非ジエン系ゴムとしては、例えば、ブチル系ゴム(IIR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム、塩化ポリエチレンゴム、フッ素ゴム(FKM)、アクリルゴム(ACM)、ヒドリンゴム等が挙げられる。非ジエン系ゴムは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0342】
(ブチル系ゴム)
上記その他のゴム成分のうち、ブチル系ゴムとしては、例えば、非ハロゲン化ブチルゴム(レギュラーブチルゴム、IIR)、臭素化ブチルゴム(Br-IIR)や塩素化ブチルゴム(Cl-IIR)等のハロゲン化ブチルゴム(X-IIR)、イソブチレンとp-アルキルスチレンとの共重合体等が挙げられる。
【0343】
非ジエン系ゴムを含有する場合のゴム成分中の含有量は、0~100質量%(例えば、1、3、5、7、10、12、15、17、20、22、25、28、30、32、35、37、40、42、45、47、50、52、55、57、60、62、65、68、70、72、74、76、80、82、85、88、90、92、95、99)とすることができる。
【0344】
トレッド各ゴム層、ベルトトッピングゴム、バンドトッピングゴム、サイドウォール、ビード部およびクリンチに用いられるゴム組成物の場合には、ゴム成分は、イソプレン系ゴム、BR、およびSBRからなる群より選ばれるゴム成分を含有することが好ましい。インナーライナーに用いられるゴム組成物の場合には、イソプレン系ゴム、BR、CR、および非ジエン系ゴムからなる群より選ばれるゴム成分を含有することが好ましい。ここで、非ジエン系ゴムとしては、ブチル系ゴムが好ましい。
【0345】
≪フィラー≫
本発明のゴム組成物は、フィラーを含有することが好ましい。フィラーとしては、タイヤ工業で一般的に使用されるものを使用することができ、シリカ、カーボンブラックの他、さらに、水酸化アルミニウム、アルミナ(酸化アルミニウム)、クレー、炭酸カルシウム、マイカ、バイオ炭(BIO CHAR)等が挙げられる。フィラーは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0346】
<シリカ>
シリカとしては、特に限定されず、例えば、乾式法により調製されたシリカ(無水シリカ)、湿式法により調製されたシリカ(含水シリカ)等、タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。なかでもシラノール基が多いという理由から、湿式法により調製された含水シリカが好ましい。また、これらのシリカの他、もみ殻などのバイオマス材料を原料としたシリカも用いることができる。シリカは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0347】
シリカとしては上記の他、ライフサイクルアセスメントの観点などから、もみ殻などのバイオマス材料を原料としたシリカを用いても良い。
【0348】
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、50m2/g~500m2/g(例えば、80、100、120、150、180、200、220、250、280、300、350、400)とすることができる。なお、シリカのN2SAは、前記測定方法により測定される。
【0349】
シリカの平均一次粒子径は、5nm~300nm(例えば、5、7、8、10、12、15、17、20、22、25、28、30、32、35、37、40、42、45、47、50、52、55、57、60、62、65、68、70、72、74、76、80、82、85、88、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、220、250、280)とすることができる。なお、シリカの平均一次粒子径は、前記測定方法により測定される。
【0350】
ゴム成分100質量部に対するシリカの含有量は、0~200質量部(例えば、1、3、5、7、8、10、12、15、17、20、22、25、28、30、32、35、37、40、42、45、47、50、52、55、57、60、62、65、68、70、72、74、76、80、82、85、88、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200)とすることができる。
【0351】
<カーボンブラック>
カーボンブラックとしては特に限定されず、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF等、タイヤ工業において一般的なものを使用でき、具体的にはN110、N115、N120、N125、N134、N135、N219、N220、N231、N234、N293、N299、N326、N330、N339、N343、N347、N351、N356、N358、N375、N539、N550、N582、N630、N642、N650、N660、N683、N754、N762、N765、N772、N774、N787、N907、N908、N990、N991等を好適に用いることができ、これ以外にも自社合成品等も好適に用いることができる。市販品としては、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱ケミカル(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0352】
また、カーボンブラックとしては上記の他、ライフサイクルアセスメントの観点などから、リグニンなどのバイオマス材料を原料としたカーボンブラックや、タイヤなどのカーボンブラックを含む製品を熱分解して精製したリカバードカーボンを用いても良い。
【0353】
本明細書において「リカバードカーボンブラック」とは、カーボンブラックを含む使用済みのタイヤ等の製品を粉砕し、粉砕物を焼成して得られるカーボンブラックであって、JIS K 6226-2:2003に準拠した熱重量測定法で、空気中の加熱で酸化燃焼させたとき、燃焼しない成分である灰分の質量(灰分量)の割合が13質量%以上であるカーボンブラックをいう。すなわち、再生カーボンブラックの前記酸化燃焼による減量分の質量(カーボン量)の割合は、87質量%以下である。リカバードカーボンブラックは、再生カーボンブラックともいい、rCBで表すこともある。
【0354】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、50m2/g~500m2/g(例えば、80、100、120、150、180、200、220、250、280、300、350、400)とすることができる。なお、カーボンブラックのN2SAは、前記測定方法により測定される。
【0355】
ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量は、0~200質量部(例えば、1、3、5、7、8、10、12、15、17、20、22、25、28、30、32、35、37、40、42、45、47、50、52、55、57、60、62、65、68、70、72、74、76、80、82、85、88、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200)とすることができる。
【0356】
カーボンブラックの平均一次粒子径は、5nm~300nm(例えば、5、7、8、10、12、15、17、20、22、25、28、30、32、35、37、40、42、45、47、50、52、55、57、60、62、65、68、70、72、74、76、80、82、85、88、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、220、250、280)とすることができる。なお、カーボンブラックの平均一次粒子径は、前記測定方法により測定される。
【0357】
<その他のフィラー>
シリカおよびカーボンブラック以外のフィラーを含有する場合のゴム成分100質量部に対するその他のフィラーの合計含有量は、0~100質量部(例えば、1、3、5、7、8、10、12、15、17、20、22、25、28、30、32、35、37、40、42、45、47、50、52、55、57、60、62、65、68、70、72、74、76、80、82、85、88、90、95)とすることができる。
【0358】
≪その他の配合剤≫
本実施形態に係るゴム組成物には、ゴム成分およびフィラー以外にも、従来タイヤ工業で一般に使用される配合剤、例えば、軟化剤、ワックス、ステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤、加硫剤、加硫促進剤等を適宜含有することができる。
【0359】
<軟化剤>
本発明のゴム組成物は、軟化剤を含有してもよい。軟化剤としては、例えば、樹脂成分、オイル、液状ゴム、エステル系可塑剤等が挙げられる。なお、軟化剤にはオイル伸展、樹脂伸展、液状ゴム伸展を行ったゴム成分の伸展オイル、伸展樹脂、伸展液状ゴム成分なども含まれる。これらの軟化剤は石油由来のものであってもよく、バイオマス由来のものであってもよい。また、使用済みのタイヤや各種成分を含む製品を熱分解、抽出することにより得た、低分子量の炭化水素成分を軟化剤として用いても良い。
【0360】
(樹脂成分)
樹脂成分としては、特に限定されないが、タイヤ工業で慣用される石油樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0361】
石油樹脂としては、C5系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、C5C9系石油樹脂等が挙げられる。
【0362】
本明細書において「C5系石油樹脂」とは、C5留分を重合することにより得られる樹脂をいう。C5留分としては、例えば、シクロペンタジエン、ペンテン、ペンタジエン、イソプレン等の炭素数4~5個相当の石油留分が挙げられる。C5系石油樹脂しては、ジシクロペンタジエン樹脂(DCPD樹脂)が好適に用いられる。
【0363】
本明細書において「芳香族系石油樹脂」とは、C9留分を重合することにより得られる樹脂をいい、それらを水素添加したものや変性したものであってもよい。C9留分としては、例えば、ビニルトルエン、アルキルスチレン、インデン、メチルインデン等の炭素数8~10個相当の石油留分が挙げられる。芳香族系石油樹脂の具体例としては、例えば、クマロンインデン樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、および芳香族ビニル系樹脂が好適に用いられる。芳香族ビニル系樹脂としては、経済的で、加工しやすく、発熱性に優れているという理由から、α-メチルスチレンもしくはスチレンの単独重合体またはα-メチルスチレンとスチレンとの共重合体が好ましく、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体がより好ましい。芳香族ビニル系樹脂としては、例えば、クレイトン社、イーストマンケミカル社、三井化学(株)等より市販されているものを使用することができる。
【0364】
本明細書において「C5C9系石油樹脂」とは、前記C5留分と前記C9留分を共重合することにより得られる樹脂をいい、それらを水素添加したものや変性したものであってもよい。C5留分およびC9留分としては、前記の石油留分が挙げられる。C5C9系石油樹脂としては、例えば、東ソー(株)、LUHUA社等より市販されているものを使用することができる。
【0365】
樹脂成分としては、上記の石油樹脂が部分的または完全に水素添加されたた石油樹脂も使用することができる。かかる、水素添加された石油樹脂は、水素付加された構造の類似性から、相溶性に優れ、系内での分散が良好と考えられる観点から、外側トレッドゴム層を構成するゴム組成物に好適に使用される。なお、本発明で使用される水素添加された石油樹脂は、分子内の不飽和結合が部分的にまたは完全に水素添加されており、例えば、主鎖または側鎖にベンゼン環等の芳香族環を有する石油樹脂が水素化される場合においては、該芳香族環が還元されている(例えば、芳香族環がベンゼン環であれば、シクロへキサン環等に還元されている)。
【0366】
テルペン系樹脂としては、α-ピネン、β-ピネン、リモネン、ジペンテン等のテルペン化合物から選ばれる少なくとも1種からなるポリテルペン樹脂;前記テルペン化合物と芳香族化合物とを原料とする芳香族変性テルペン樹脂;テルペン化合物とフェノール系化合物とを原料とするテルペンフェノール樹脂;並びにこれらのテルペン系樹脂に水素添加処理を行ったもの(水素添加されたテルペン系樹脂)が挙げられる。芳香族変性テルペン樹脂の原料となる芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルトルエン等が挙げられる。テルペンフェノール樹脂の原料となるフェノール系化合物としては、例えば、フェノール、ビスフェノールA、クレゾール、キシレノール等が挙げられる。
【0367】
ロジン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば天然樹脂ロジン、それを水素添加、不均化、二量化、エステル化等で変性したロジン変性樹脂等が挙げられる。
【0368】
フェノール系樹脂としては、特に限定されないが、フェノールホルムアルデヒド樹脂、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、アルキルフェノールアセチレン樹脂、オイル変性フェノールホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
【0369】
樹脂成分を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、0~100質量部(例えば、1、3、5、7、8、10、12、15、17、20、22、25、28、30、32、35、37、40、42、45、47、50、52、55、57、60、62、65、68、70、72、74、76、80、82、85、88、90、95、100)とすることができる。
【0370】
(オイル)
オイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、植物油等が挙げられる。また、環境対策で多環式芳香族(polycyclic aromatic compound:PCA)化合物の含量の低いプロセスオイルを使用することもできる。前記低PCA含量プロセスオイルとしては、軽度抽出溶媒和物(MES)、処理留出物芳香族系抽出物(TDAE)、重ナフテン系オイル等が挙げられる。また、ライフサイクルアセスメントの観点から、ゴム混合機やエンジンからの廃油や、飲食店での調理からの廃油を精製したものを用いてもよい。
【0371】
本発明において「植物油」とは、例えば、あまに油、なたね油、べに花油、大豆油、コーン油、綿実油、米油、トール油、ごま油、えごま油、ひまし油、桐油、パイン油、パインタール油、ひまわり油、ココナッツ油、パーム油、パーム核油、オリーブ油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、落花生油、グレープシード油、木ろう等が挙げられる。さらに、植物油としては、前記油を精製した精製油(サラダ油など)、前記油をエステル交換したエステル交換油、前記油を水素添加した硬化油、前記油を熱重合させた熱重合油、前記油を酸化させた酸化重合油、食用油等として利用したものを回収した廃食用油等も挙げられる。なお、植物油は常温(25℃)で液体であっても固体であっても良い。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、前記植物油は、後述の軟化剤に含まれる成分であり、他の軟化剤と併用しても良い。また、公知のゴム組成物中の軟化剤成分の一部をこれらの植物油に等量置換し、本発明の関係性を満たすようにしても良い。
【0372】
本実施形態に係る植物油は、アシルグリセロールを含むことが好ましく、トリアシルグリセロールを含むことがより好ましい。なお、本明細書において、アシルグリセロールとは、グリセリンの持つヒドロキシ基と脂肪酸とがエステル結合をした化合物を指す。アシルグリセロールとしては、特に限定されず、1-モノアシルグリセロールでもよく、2-モノアシルグリセロールでもよく、1,2-ジアシルグリセロールでもよく、1,3-ジアシルグリセロールでもよく、トリアシルグリセロールでもよい。さらに、アシルグリセロールは、単量体でもよく、2量体でもよく、3量体以上の多量体であってもよい。なお、2量体以上のアシルグリセロールは、熱重合や酸化重合等によって得ることができる。また、アシルグリセロールは常温(25℃)で液体であっても固体であっても良い。
【0373】
ゴム組成物中に前記アシルグリセロールが含まれているか確認する方法としては、特に限定されないが、1H-NMR測定によって確認することができる。例えば、トリアシルグリセロールを配合したゴム組成物を常温(25℃)で24時間重クロロホルムに浸漬し、ゴム組成物を除いた後、室温下で1H-NMRを測定し、テトラメチルシラン(TMS)のシグナルを0.00ppmとした場合、5.26ppm付近、4.28ppm付近、4.15ppm付近のシグナルが観測され、該シグナルはエステル基の酸素原子に隣接する炭素原子に結合した水素原子由来のシグナルと推測される。なお、この段落における「付近」とは、±0.10ppmの範囲とする。
【0374】
前記脂肪酸としては、特に限定されず、不飽和脂肪酸であっても、飽和脂肪酸であっても良い。不飽和脂肪酸としては、オレイン酸等の一価不飽和脂肪酸や、リノール酸、リノレン酸等の多価不飽和脂肪酸が挙げられる。
【0375】
植物油としては、例えば、出光興産(株)、三共油化工業(株)、ENEOS(株)、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、富士興産(株)、日清オイリオグループ(株)等より市販されているものを使用することができる。
【0376】
オイルを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、0~100質量部(例えば、1、3、5、7、8、10、12、15、17、20、22、25、28、30、32、35、37、40、42、45、47、50、52、55、57、60、62、65、68、70、72、74、76、80、82、85、88、90、95、100)とすることができる。
【0377】
(液状ゴム)
液状ゴムは、常温(25℃)で液体状態のポリマーであれば特に限定されないが、例えば、液状ブタジエンゴム(液状BR)、液状スチレンブタジエンゴム(液状SBR)、液状イソプレンゴム(液状IR)、液状スチレンイソプレンゴム(液状SIR)、液状ファルネセンゴム等が挙げられる。これらの液状ゴムは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0378】
軟化剤のゴム成分100質量部に対する含有量(複数の軟化剤を併用する場合は全ての合計量)は、0~200質量部(例えば、1、3、5、7、8、10、12、15、17、20、22、25、28、30、32、35、37、40、42、45、47、50、52、55、57、60、62、65、68、70、72、74、76、80、82、85、88、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200)とすることができる。
【0379】
老化防止剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、アミン系、キノリン系、キノン系、フェノール系、イミダゾール系の各化合物や、カルバミン酸金属塩等の老化防止剤が挙げられ、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、N-シクロヘキシル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン等のフェニレンジアミン系老化防止剤、および2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン等のキノリン系老化防止剤が好ましい。これらの老化防止剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0380】
老化防止剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.5~10.0質量部(例えば、0.5、0.8、1.0、1.2、1.5、1.8、2.0、2.5、2.8、3.0、3.2、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5)とすることができる。
【0381】
ワックスを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.5~10.0質量部(例えば、0.5、0.8、1.0、1.2、1.5、1.8、2.0、2.5、2.8、3.0、3.2、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5)とすることができる。
【0382】
ステアリン酸を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.5~10.0質量部(例えば、0.5、0.8、1.0、1.2、1.5、1.8、2.0、2.5、2.8、3.0、3.2、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5)とすることができる。
【0383】
酸化亜鉛を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.5~10.0質量部(例えば、0.5、0.8、1.0、1.2、1.5、1.8、2.0、2.5、2.8、3.0、3.2、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5)とすることができる。
【0384】
≪架橋剤≫
架橋剤としては硫黄が好適に用いられる。硫黄としては、粉末硫黄、油処理硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄等を用いることができる。
【0385】
硫黄を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.5~10.0質量部(例えば、0.5、0.8、1.0、1.2、1.5、1.8、2.0、2.5、2.8、3.0、3.2、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5)とすることができる。
【0386】
硫黄以外の架橋剤として、公知の有機架橋剤を用いることもできる。有機架橋剤としては、ポリスルフィド結合以外の架橋鎖を形成できるものであれば特に限定されないが、例えば、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物、1,6-ヘキサメチレン-ジチオ硫酸ナトリウム・二水和物、1,6-ビス(N,N’-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド等が挙げられ、1,6-ビス(N,N’-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサンが好ましい。これらの有機架橋剤は、田岡化学工業(株)、ランクセス(株)、フレクシス社等より市販されているものを使用することができる。
【0387】
加硫促進剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド-アミン系もしくはアルデヒド-アンモニア系、イミダゾリン系、キサンテート系加硫促進剤が挙げられる。これらの加硫促進剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0388】
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)等が挙げられる。
【0389】
チアゾール系加硫促進剤としては、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール(MBT)またはその塩、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド(MBTS)、2-(2,4-ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2-(2,6-ジエチル-4-モルホリノチオ)ベンゾチアゾール等が挙げられる。
【0390】
チウラム系加硫促進剤としては、例えば、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等が挙げられる。
【0391】
チオウレア系加硫促進剤としては、例えば、チアカルバミド、ジエチルチオ尿素、ジブチルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、ジオルトトリルチオ尿素などのチオ尿素化合物、N,N’-ジフェニルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、N,N’-ジエチルチオ尿素等が挙げられる。
【0392】
グアニジン系加硫促進剤としては、例えば、1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、1-o-トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ-o-トリルグアニジン塩、1,3-ジ-o-クメニルグアニジン、1,3-ジ-o-ビフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-クメニル-2-プロピオニルグアニジン等が挙げられる。
【0393】
ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤としては、例えば、ピペリジニウムペンタメチレンジチオカルバメート(PPDC)、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnMDC)、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnEDC)、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnBDC)、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDBzC)、N-エチル-N-フェニルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnEPDC)、N-ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛(ZnPDC)、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム(NaBDC)、ジメチルジチオカルバミン酸銅(CuMDC)、ジメチルジチオカルバミン酸鉄(FeMDC)、ジエチルジチオカルバミン酸テルル(TeEDC)等が挙げられる。
【0394】
加硫促進剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.5~10.0質量部(例えば、0.5、0.8、1.0、1.2、1.5、1.8、2.0、2.5、2.8、3.0、3.2、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5)とすることができる。
【0395】
[製造]
本発明のゴム組成物は、公知の方法により製造することができる。例えば、前記の各成分をオープンロール、密閉式混練機(バンバリーミキサー、ニーダー等)等のゴム混練装置を用いて混練りすることにより製造できる。
【0396】
混練り工程は、例えば、加硫剤および加硫促進剤以外の配合剤および添加剤を混練りするベース練り工程と、ベース練り工程で得られた混練物に加硫剤および加硫促進剤を添加して混練りするファイナル練り(F練り)工程とを含んでなるものである。さらに、前記ベース練り工程は、所望により、複数の工程に分けることもできる。
【0397】
混練条件としては特に限定されるものではないが、例えば、ベース練り工程では、排出温度150~170℃で3~10分間混練りし、ファイナル練り工程では、70~110℃で1~5分間混練りする方法が挙げられる。加硫条件としては、特に限定されるものではなく、例えば、150~200℃で10~30分間加硫する方法が挙げられる。
【0398】
本発明のゴム組成物から構成されるタイヤ部材を備えた本発明のタイヤは、通常の方法により製造することができる。すなわち、ゴム成分に対して上記各成分を必要に応じて配合して調製した未加硫のゴム組成物を各タイヤ部材の形状にあわせて押出し加工し、必要応じてスチールコードを埋設し、こうして得た各タイヤ部材をタイヤ成型機上で貼り合わせ、通常の方法にて成型することにより未加硫タイヤを形成し、この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを製造することができる。加硫条件としては、特に限定されるものではなく、例えば、150~200℃で10~30分間加硫する方法が挙げられる。
【0399】
[用途]
本発明のタイヤは、空気入りタイヤ、非空気入りタイヤを問わず、いずれの用途にも使用することができ、乗用車用タイヤ、大型乗用車用、大型SUV用タイヤ、競技用タイヤ、モーターサイクル用タイヤ、重荷重用タイヤ、ランフラットタイヤとして使用することができる。乗用車用タイヤとは、四輪で走行する自動車に装着されることを前提としたタイヤであり、その最大負荷能力が1400kg未満のものを指す。重荷重用タイヤとは、その最大負荷能力が1400kg以上のタイヤを指す。また、本発明のタイヤは、全シーズン用タイヤ、夏用タイヤの他、スタッドレスタイヤ等の冬用タイヤに使用可能である。
【符号の説明】
【0400】
1 タイヤ
2 トレッド
2a キャップゴム層
2b ベースゴム層
2c 通電ゴム部材
3 サイドウォール
4 ウイング
5 クリンチ
6 ビード部
6a ビードコア
6b ビードエイペックス
6c ビード補強層
7 インナーライナー
8 カーカス
8a カーカスプライ
9 ベルト層
9a 内側ベルトプライ
9b 外側ベルトプライ
10 バンド(ベルト補強層)
10a バンドプライ
10b エッジバンドプライ
11 チェーファー
12 周方向溝
13 横溝(ショルダー横溝)
14 サイプ(ショルダーサイプ)
15 サイプ(センターサイプ)
16 センター陸部
17 ショルダー陸部
18 横溝
19 小穴
20 傾斜横溝
21 傾斜継ぎ溝
22 サイプ
23 サイド補強層
CL タイヤ赤道
X タイヤ幅方向
Y タイヤ半径方向
T トレッドの厚み
TC キャップゴム層の厚み
TB ベースゴム層の厚み
S 周方向溝の最深部の溝深さ
S 周方向溝のタイヤ幅方向で最大の開口幅
S 横溝の長手方向がタイヤ幅方向となす角
LS ショルダー陸部の幅
S サイドウォールの厚み
C クリンチの厚み
C サイドウォールとクリンチのタイヤ表面上の接合点
Ht タイヤ断面高さ
BE ベルト層端部の高さ
K カーカス折り返し部の高さ
BA ビードエイペックスの高さ
C クリンチの高さ
Te トレッド接地端
P1 第1のトレッドパターン部
P2 第2のトレッドパターン部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7