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特開2024-180073光導波路用樹脂組成物、光導波路用ドライフィルム、及び光導波路
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  • 特開-光導波路用樹脂組成物、光導波路用ドライフィルム、及び光導波路 図1
  • 特開-光導波路用樹脂組成物、光導波路用ドライフィルム、及び光導波路 図2
  • 特開-光導波路用樹脂組成物、光導波路用ドライフィルム、及び光導波路 図3
  • 特開-光導波路用樹脂組成物、光導波路用ドライフィルム、及び光導波路 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180073
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】光導波路用樹脂組成物、光導波路用ドライフィルム、及び光導波路
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/12 20060101AFI20241219BHJP
   G03F 7/033 20060101ALI20241219BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20241219BHJP
   G02B 6/12 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C08F290/12
G03F7/033
G03F7/004 501
G03F7/004 512
G02B6/12 371
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099510
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 格
(72)【発明者】
【氏名】中芝 徹
【テーマコード(参考)】
2H147
2H225
4J127
【Fターム(参考)】
2H147BG17
2H147DA09
2H147EA19A
2H147EA19B
2H147FD08
2H147FE02
2H147GA19
2H225AC43
2H225AC44
2H225AC46
2H225AD03
2H225AD07
2H225AE15P
2H225BA22P
2H225CA30
2H225CB06
4J127AA03
4J127AA04
4J127BB041
4J127BB081
4J127BB221
4J127BC031
4J127BC151
4J127BD061
4J127BG041
4J127BG04Y
4J127BG171
4J127BG17Y
4J127CB281
4J127CB371
4J127CC031
4J127DA52
4J127EA12
4J127FA22
(57)【要約】
【課題】白濁及び黄変を抑制し、透明性を高めることができる光導波路用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】光導波路用樹脂組成物は、(メタ)アクリレート樹脂(A)と、エポキシ樹脂(B)と、光重合開始剤(C)と、を含有する。(メタ)アクリレート樹脂(A)は、脂環式(メタ)アクリレート化合物(A-1)と、芳香族(メタ)アクリレート化合物(A-2)及び/又は(メタ)アクリレートモノマー(A-3)と、を含む。脂環式(メタ)アクリレート化合物(A-1)は、側鎖に非芳香族炭素環を有する。芳香族(メタ)アクリレート化合物(A-2)は、1分子中に少なくとも2つのヒドロキシ基を有する。光重合開始剤(C)は、波長405nmの光に対する吸収係数が500mL/(g・cm)以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリレート樹脂(A)と、エポキシ樹脂(B)と、光重合開始剤(C)と、を含有し、
前記(メタ)アクリレート樹脂(A)は、脂環式(メタ)アクリレート化合物(A-1)と、芳香族(メタ)アクリレート化合物(A-2)及び/又は(メタ)アクリレートモノマー(A-3)と、を含み、
前記脂環式(メタ)アクリレート化合物(A-1)は、側鎖に非芳香族炭素環を有し、
前記芳香族(メタ)アクリレート化合物(A-2)は、1分子中に少なくとも2つのヒドロキシ基を有し、
前記光重合開始剤(C)は、波長405nmの光に対する吸収係数が500mL/(g・cm)以下である、
光導波路用樹脂組成物。
【請求項2】
前記脂環式(メタ)アクリレート化合物(A-1)が、下記式(1)の構造単位を有するシクロヘキサン環含有化合物(A-11)を含む、
請求項1に記載の光導波路用樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。R及びRはそれぞれ独立しており、Rは飽和炭化水素基を表し、Rはアクリレート基又はメタクリレート基を表す。nは1以上4以下の整数である。)
【請求項3】
前記芳香族(メタ)アクリレート化合物(A-2)が、ビスフェノール(メタ)アクリレート化合物(A-21)を含む、
請求項1に記載の光導波路用樹脂組成物。
【請求項4】
前記脂環式(メタ)アクリレート化合物(A-1)の含有量が、前記(メタ)アクリレート樹脂(A)及び前記エポキシ樹脂(B)の合計100質量部に対して、35質量部以上75質量部以下である、
請求項1に記載の光導波路用樹脂組成物。
【請求項5】
前記芳香族(メタ)アクリレート化合物(A-2)の含有量が、前記(メタ)アクリレート樹脂(A)及び前記エポキシ樹脂(B)の合計100質量部に対して、25質量部以上55質量部以下である、
請求項1に記載の光導波路用樹脂組成物。
【請求項6】
前記エポキシ樹脂(B)が、液状エポキシ化合物(B-1)を含む、
請求項1に記載の光導波路用樹脂組成物。
【請求項7】
前記光重合開始剤(C)が、ラジカル重合開始剤(C-1)を含む、
請求項1に記載の光導波路用樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の光導波路用樹脂組成物又は前記光導波路用樹脂組成物の半硬化物を含む樹脂層を備える、
光導波路用ドライフィルム。
【請求項9】
フィルム基材及び保護フィルムの少なくともいずれかを更に備える、
請求項8に記載の光導波路用ドライフィルム。
【請求項10】
コア部と、前記コア部を覆うクラッド層と、を備え、
前記コア部及び前記クラッド層の少なくとも一方が、請求項1~7のいずれか1項に記載の光導波路用樹脂組成物の硬化物を含む、
光導波路。
【請求項11】
前記コア部が、前記脂環式(メタ)アクリレート化合物(A-1)及び前記芳香族(メタ)アクリレート化合物(A-2)を含む前記光導波路用樹脂組成物の硬化物を含み、
前記クラッド層が、前記脂環式(メタ)アクリレート化合物(A-1)及び前記(メタ)アクリレートモノマー(A-3)を含む前記光導波路用樹脂組成物の硬化物を含む、
請求項10に記載の光導波路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光導波路用樹脂組成物、光導波路用ドライフィルム、及び光導波路に関する。
【背景技術】
【0002】
FTTH(Fiber To The Home)や車載等の中距離通信の分野では、伝送媒体として光ファイバケーブルが用いられているが、短距離通信の分野では、高密度配線(狭ピッチ、分岐、交差、多層化等)が求められており、光ファイバケーブルにより実現することは難しい。そこで、上記の条件を満たすことができる光導波路を備えた光配線板、さらに電気回路を備えた光電気複合配線板が考えられている。
【0003】
光導波路としては、例えば、樹脂材料を用いた、ポリマー光導波路等が挙げられる。光電気複合配線板に備えられる光導波路としては、電気回路が備えられた配線板との適合性からも、ポリマー光導波路が好ましい。
【0004】
ポリマー光導波路を形成する工程の一つとして、現像工程があり、現像方法の一つとしてアルカリ水溶液を現像液として用いるアルカリ現像がある。アルカリ現像とは、光導波路を形成するうえで不要である未硬化の樹脂組成物をアルカリ溶液に溶解させることで現像を行う方法である。
【0005】
このような光導波路の材料として、特許文献1に記載の(A)カルボキシル基を有するポリマー、(B)(メタ)アクリレート、(C)光ラジカル重合開始剤、及び(D)フェノール系酸化防止剤を含む樹脂を用いた光導波路成形用樹脂組成物が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5771978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、光導波路のコア及びクラッドには、高い透明性が求められている。そのため、用いる樹脂組成物及びドライフィルムには優れた透明性が求められる。しかし、樹脂の組み合わせや光重合開始剤の選択によっては、白濁したり黄変したりすることがある。
【0008】
本開示の目的は、白濁及び黄変を抑制し、透明性を高めることができる光導波路用樹脂組成物、光導波路用ドライフィルム、及び光導波路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係る光導波路用樹脂組成物は、(メタ)アクリレート樹脂(A)と、エポキシ樹脂(B)と、光重合開始剤(C)と、を含有する。前記(メタ)アクリレート樹脂(A)は、脂環式(メタ)アクリレート化合物(A-1)と、芳香族(メタ)アクリレート化合物(A-2)及び/又は(メタ)アクリレートモノマー(A-3)と、を含む。前記脂環式(メタ)アクリレート化合物(A-1)は、側鎖に非芳香族炭素環を有する。前記芳香族(メタ)アクリレート化合物(A-2)は、1分子中に少なくとも2つのヒドロキシ基を有する。前記光重合開始剤(C)は、波長405nmの光に対する吸収係数が500mL/(g・cm)以下である。
【0010】
本開示の一態様に係る光導波路用ドライフィルムは、前記光導波路用樹脂組成物又は前記光導波路用樹脂組成物の半硬化物を含む樹脂層を備える。
【0011】
本開示の一態様に係る光導波路は、コア部と、前記コア部を覆うクラッド層と、を備える。前記コア部及び前記クラッド層の少なくとも一方が、前記光導波路用樹脂組成物の硬化物を含む。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、白濁及び黄変を抑制し、透明性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本実施形態に係る光導波路用ドライフィルムの構成を示す断面図である。
図2図2A図2Cは、本実施形態に係る光導波路を備えた光電気複合配線板の製造方法を説明するための図である。
図3図3A図3Cは、本実施形態に係る光導波路を備えた光電気複合配線板の製造方法を説明するための図である。
図4図4A図4Cは、本実施形態に係る光導波路を備えた光電気複合配線板の製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.光導波路用樹脂組成物
本実施形態に係る光導波路用樹脂組成物は、(メタ)アクリレート樹脂(A)と、エポキシ樹脂(B)と、光重合開始剤(C)と、を含有する。なお、以下において「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の各々を意味する。
【0015】
(メタ)アクリレート樹脂(A)は、脂環式(メタ)アクリレート化合物(A-1)と、芳香族(メタ)アクリレート化合物(A-2)及び/又は(メタ)アクリレートモノマー(A-3)と、を含む。これについては、以下の3つの場合があり得る。
【0016】
(1)(メタ)アクリレート樹脂(A)が、脂環式(メタ)アクリレート化合物(A-1)及び芳香族(メタ)アクリレート化合物(A-2)の2種を含み、かつ(メタ)アクリレートモノマー(A-3)を含まない場合、
(2)(メタ)アクリレート樹脂(A)が、脂環式(メタ)アクリレート化合物(A-1)及び(メタ)アクリレートモノマー(A-3)の2種を含み、かつ芳香族(メタ)アクリレート化合物(A-2)を含まない場合、
(3)(メタ)アクリレート樹脂(A)が、脂環式(メタ)アクリレート化合物(A-1)、芳香族(メタ)アクリレート化合物(A-2)、及び(メタ)アクリレートモノマー(A-3)の3種を含む場合。
【0017】
特に(1)の場合の光導波路用樹脂組成物は、光導波路において、コア部11の形成に有利である。一方、(2)の場合の光導波路用樹脂組成物は、光導波路において、クラッド層8の形成に有利である。これにより、コア部11及びクラッド層8の各々の透明性を高めることができるだけでなく、両者の屈折率を容易に異ならせることができる。
【0018】
ここで、脂環式(メタ)アクリレート化合物(A-1)は、側鎖に非芳香族炭素環を有する。芳香族(メタ)アクリレート化合物(A-2)は、1分子中に少なくとも2つのヒドロキシ基を有する。
【0019】
光重合開始剤(C)は、波長405nmの光に対する吸収係数が500mL/(g・cm)以下である。
【0020】
このような光導波路用樹脂組成物であれば、白濁や黄変を十分に抑制することができるため、高い透明性を有する光導波路用ドライフィルムを形成することができる。さらに、高い透明性を有する光導波路を形成することもできる。
【0021】
白濁を抑制できる理由としては、光導波路用樹脂組成物に含有される樹脂成分同士の相溶性が高く、均一に混ざりやすいためであると考えられる。また、黄変を抑制できる理由としては、波長405nmの光に対する吸収係数が低いためであると考えられる。
【0022】
また、本実施形態に係る光導波路用樹脂組成物は優れたアルカリ現像性を有する。なお、ここでのアルカリ現像性とは、一般的なアルカリ現像で用いられるアルカリ性の現像液に対して優れた溶解性を示すことである。すなわち、優れたアルカリ現像性とは、光導波路の形成において、不要な未硬化部をアルカリ性の現像液を用いることで容易に除去できることである。
【0023】
現像液としては、特に限定されないが、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類等が挙げられる。また、現像方法は、未硬化部を除去することができれば特に限定されないが、例えば、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等が挙げられる。
【0024】
<(メタ)アクリレート樹脂(A)>
(メタ)アクリレート樹脂(A)は、脂環式(メタ)アクリレート化合物(A-1)と、芳香族(メタ)アクリレート化合物(A-2)及び/又は(メタ)アクリレートモノマー(A-3)と、を含む。
【0025】
特に脂環式(メタ)アクリレート化合物(A-1)と芳香族(メタ)アクリレート化合物(A-2)とは、相互に相溶性が高いため、光導波路用ドライフィルムが白濁することを抑制することができる。すなわち、透明性が高まる。
【0026】
≪脂環式(メタ)アクリレート化合物(A-1)≫
脂環式(メタ)アクリレート化合物(A-1)は、1分子中に少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を有する。また、脂環式(メタ)アクリレート化合物(A-1)は、非芳香族炭素環を含む側鎖を有する。
【0027】
非芳香族炭素環とは、芳香族炭素環を含まない炭素環のことである。非芳香族炭素環は、炭素原子のみを環構成原子とする。非芳香族炭素環としては、単結合のみからなる飽和炭素環と、二重結合又は三重結合を少なくとも1つ有する不飽和炭素環があり、飽和炭素環であることが好ましい。飽和炭素環であれば、光導波路用樹脂組成物の硬化反応が進行する際に、不要な副反応が生じにくくなる。
【0028】
非芳香族炭素環に含まれる炭素の数は、3個以上であることが好ましく、5個以上であることがより好ましい。一方、非芳香族炭素環に含まれる炭素の数は、12個以下であることが好ましく、7個以下であることがより好ましい。炭素環に含まれる炭素の数が3個以上12個以下であれば、脂環式(メタ)アクリレート化合物(A-1)は、保存安定性が高まり、好適な反応性を有し、硬化しやすくなる。
【0029】
非芳香族炭素環は、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、及びテトラヒドロジシクロペンタジエン環からなる群より選ばれた少なくとも1種であることが好ましく、シクロヘキサン環であることがより好ましい。この場合、光導波路用樹脂組成物の硬化反応を阻害することなく、硬化反応が進行しやすくなる。また、不要な副反応が生じにくくなる。
【0030】
非芳香族炭素環に含まれる水素原子は、本実施形態の効果を阻害しない置換基で置換されていてもよい。置換基としては、特に限定されないが、例えば、アルキル基、ヒドロキシ基等が挙げられる。
【0031】
脂環式(メタ)アクリレート化合物(A-1)は、下記式(1)で表される構造単位を含むシクロヘキサン環含有化合物(A-11)を含むことが好ましい。
【0032】
【化1】
【0033】
式(1)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。R及びRは、それぞれ独立しており、Rは、飽和炭化水素基を表し、Rは、(メタ)アクリレート基を表す。nは1以上4以下の整数である。
【0034】
飽和炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、直鎖又は分枝状の炭素数1以上6以下のアルキレン基、炭素数3以上8以下のシクロアルキレン基、及びこれらの組み合わせからなる2価の有機基等が挙げられる。
【0035】
アルキレン基としては、特に限定されないが、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が挙げられる。
【0036】
シクロアルキレン基としては、特に限定されないが、例えば、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロオクチレン基等が挙げられる。
【0037】
は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、フェニレン基、シクロへキシレン基、又は-CH-フェニレン基-CH-であることが好ましく、メチレン基、エチレン基、又はプロピレン基であることがより好ましく、メチレン基であることがさらに好ましい。
【0038】
シクロヘキサン環含有化合物(A-11)を含むことで、光導波路用ドライフィルムの透明性が高まる。また、優れたタック性を有し、硬化物を含む光導波路は、光損失が少なくなる。
【0039】
また、シクロヘキサン環含有化合物(A-11)は、上記式(1)で表される構造単位と、下記式(2)で表される構造単位と、を有することが好ましい。
【0040】
【化2】
【0041】
は、水素原子又はメチル基を表す。Rは、水素原子、炭素数が1以上6以下のアルキル基、又は炭素数が1以上6以下のヒドロキシアルキル基を表す。この場合、アルカリ現像性がより高まる。
【0042】
脂環式(メタ)アクリレート化合物(A-1)の数平均分子量は、10000以上であることが好ましく、15000以上であることがより好ましく、21000以上であることがさらに好ましい。一方、脂環式(メタ)アクリレート化合物(A-1)の数平均分子量は、30000以下であることが好ましく、29500以下であることがより好ましく、29000以下であることがさらに好ましい。
【0043】
脂環式(メタ)アクリレート化合物(A-1)の数平均分子量が10000以上30000以下であれば、光導波路用ドライフィルムの透明性が高まる。また、アルカリ現像性がより高まる。
【0044】
脂環式(メタ)アクリレート化合物(A-1)の含有量は、(メタ)アクリレート樹脂(A)及びエポキシ樹脂(B)合計100質量部に対して、35質量部以上であることが好ましく、40質量部以上であることがより好ましい。一方、脂環式(メタ)アクリレート化合物(A-1)の含有量は、(メタ)アクリレート樹脂(A)及びエポキシ樹脂(B)の合計100質量部に対して、75質量部以下であることが好ましく、70質量部以下であることがより好ましい。
【0045】
脂環式(メタ)アクリレート化合物(A-1)の含有量が35質量部以上75質量部以下であれば、光導波路用ドライフィルムの透明性が高まる。また、優れたアルカリ現像性を示す。
【0046】
脂環式(メタ)アクリレート化合物(A-1)としては、具体的には、ダイセル・オルネクス株式会社製の(ACA)Z200M、(ACA)Z230AA、(ACA)Z250、(ACA)Z251、(ACA)Z300等が挙げられる。
【0047】
脂環式(メタ)アクリレート化合物(A-1)は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
≪芳香族(メタ)アクリレート化合物(A-2)≫
芳香族(メタ)アクリレート化合物(A-2)は、1分子中に少なくとも2つのヒドロキシ基を含む芳香族化合物である。なお、ここでのヒドロキシ基の数は、カルボキシ基が有するヒドロキシ基は含まれない。芳香族(メタ)アクリレート化合物(A-2)は、1分子中に少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を有し、1分子中に少なくとも2つの(メタ)アクリレート基を有することが好ましい。芳香族(メタ)アクリレート化合物(A-2)は、芳香環を1分子中に少なくとも1つ有する。
【0049】
芳香族(メタ)アクリレート化合物(A-2)が有する芳香環は、炭化水素環であることが好ましく、単環であることがより好ましく、ベンゼン環であることがさらに好ましい。芳香族(メタ)アクリレート化合物(A-2)は、芳香環を主鎖に含んでいることが好ましい。
【0050】
芳香族(メタ)アクリレート化合物(A-2)は、ビスフェノール骨格を有するビスフェノール(メタ)アクリレート化合物(A-21)を含むことが好ましい。
【0051】
ビスフェノール(メタ)アクリレート化合物(A-21)とは、一般的なビスフェノール化合物に含まれるヒドロキシ基の水素原子が、ヒドロキシ基及び(メタ)アクリレート基を有する有機基に置換されている構造を有する。すなわち、ビスフェノール(メタ)アクリレート化合物(A-21)は、ビスフェノール化合物の誘導体である。特にビスフェノールA型化合物の誘導体であることが好ましい。ビスフェノール(メタ)アクリレート化合物(A-21)を含むことで、硬化物の光損失が低くなる。
【0052】
有機基は、ヒドロキシ基及び(メタ)アクリレート基を有する置換基であり、直鎖状であることが好ましい。
【0053】
有機基は、ヒドロキシアルキレン基を含むことが好ましい。ヒドロキシアルキレン基とは、上述したアルキレン基の水素原子の少なくとも1つがヒドロキシ基で置換されたものである。具体的には、ヒドロキシアルキレン基としては、例えば、ヒドロキシメチレン基、1-ヒドロキシエチレン基、2-ヒドロキシエチレン基、1,2-ジヒドロキシエチレン基、1-ヒドロキシトリメチレン基、2-ヒドロキシトリメチレン基、3-ヒドロキシトリメチレン基、1-ヒドロキシテトラメチレン基、2-ヒドロキシテトラメチレン基、3-ヒドロキシテトラメチレン基、4-ヒドロキシテトラメチレン基、1,2-ジヒドロキシテトラメチレン基、1,3-ジヒドロキシテトラメチレン基、1,4-ジヒドロキシテトラメチレン基、2,3-ジヒドロキシテトラメチレン基、2,4-ジヒドロキシテトラメチレン基、4,4-ジヒドロキシテトラメチレン基等が挙げられる。
【0054】
また有機基は、オキシ基、アルキレンオキシ基、及びアルキレンジオキシ基の少なくともいずれかを含むことが好ましい。オキシ基は、異なる2つの炭素原子と結合してエーテル結合を形成している酸素原子のことである。アルキレンオキシ基は、アルキレン基の末端のどちらかがオキシ基である置換基である。アルキレンジオキシ基は、アルキレン基の両末端がオキシ基である置換基である。
【0055】
また有機基は、(メタ)アクリレート基、ヒドロキシアルキレン基、オキシ基、アルキレンオキシ基、及びアルキレンジオキシ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の基を含むことが好ましく、(メタ)アクリレート基、ヒドロキシアルキレン基、及びオキシ基からなる群から選ばれた少なくとも1種の基を含むことがより好ましい。
【0056】
有機基が有する炭素数は、1個以上であることが好ましく、2個以上であることがより好ましい。一方、有機基が有する炭素数は、10個以下であることが好ましく、5個以下であることがより好ましい。有機基が有する炭素数が1個以上10個以下である場合、光導波路用ドライフィルムの透明性が高まる。
【0057】
芳香族(メタ)アクリレート化合物(A-2)の含有量は、(メタ)アクリレート樹脂(A)及びエポキシ樹脂(B)の合計100質量部に対して、25質量部以上であることが好ましく、30質量部以上であることがより好ましい。一方、芳香族(メタ)アクリレート化合物(A-2)の含有量は、(メタ)アクリレート樹脂(A)及びエポキシ樹脂(B)の合計100質量部に対して、55質量部以下であることが好ましく、53質量部以下であることがより好ましい。芳香族(メタ)アクリレート化合物(A-2)の含有量が25質量部以上55質量部以下であれば、光導波路用ドライフィルムの透明性が高まる。
【0058】
芳香族(メタ)アクリレート化合物(A-2)は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
≪(メタ)アクリレートモノマー(A-3)≫
(メタ)アクリレートモノマー(A-3)は、1分子中に(メタ)アクリレート基を少なくとも1つ有する化合物である。また、(メタ)アクリレートモノマー(A-3)は、1分子中に環状構造を有さない非環状化合物である。この場合、光導波路用ドライフィルムは白濁しにくくなり、透明性が高まる。
【0060】
(メタ)アクリレートモノマー(A-3)は、1分子中に(メタ)アクリレート基を2個以上有することが好ましく、3個以上有することがより好ましい。この場合、アルカリ現像性を高めることができ、硬化物の架橋密度を高めることができる。
【0061】
(メタ)アクリレートモノマー(A-3)の数平均分子量は、1000以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましい。一方、(メタ)アクリレートモノマー(A-3)の数平均分子量は、100以上であることが好ましい。(メタ)アクリレートモノマー(A-3)の数平均分子量が100以上1000以下であれば、光導波路用ドライフィルムは白濁しにくくなり、透明性が高まる。
【0062】
(メタ)アクリレートモノマー(A-3)としては、特に限定されないが、例えば、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0063】
(メタ)アクリレートモノマー(A-3)としては、市販されているものを使用してもよく、例えば、日本化薬株式会社製の、KAYARAD D-310、KAYARAD D-320、KAYARAD D-330、KAYARAD DPHA、KAYARAD GPO-303、KAYARAD TMPTA、KAYARAD THE-330、KAYARAD TPA-330、KAYARAD PET-30等が挙げられる。
【0064】
<エポキシ樹脂(B)>
エポキシ樹脂(B)は、光硬化性、及び高い透過性を有するエポキシ化合物を含む。エポキシ樹脂(B)が有するエポキシ基は、(メタ)アクリレート樹脂(A)が有するカルボキシ基と反応し、硬化度が高まる。その結果、光導波路用樹脂組成物の硬化物の耐熱性が高まる。
【0065】
エポキシ樹脂(B)は、液状エポキシ化合物(B-1)を含むことが好ましい。液状エポキシ化合物(B-1)は25℃で液状である。液状エポキシ化合物(B-1)の25℃における粘度は、30000mPa・s以下であることが好ましく、17000mPa・s以下であることがより好ましい。一方、液状エポキシ化合物(B-1)の25℃における粘度は、100mPa・s以上であることが好ましい。粘度が100mPa・s以上30000mPa・s以下であれば、(メタ)アクリレート樹脂(A)との相溶性が高まり、均一な光導波路用ドライフィルムを形成することができる。
【0066】
液状エポキシ化合物(B-1)は、液状ビスフェノールA型エポキシ化合物(B-11)を含むことが好ましい。液状ビスフェノールA型エポキシ化合物(B-11)は、25℃で液状であり、エポキシ基を1分子中に1つ又は2つ有するビスフェノールA型のエポキシ化合物である。液状ビスフェノールA型エポキシ化合物(B-11)を用いることでアルカリ現像性が高まる。液状ビスフェノールA型エポキシ化合物(B-11)としては、具体的には、DIC株式会社製の840、840-S、850、850-S、EXA-850CR等が挙げられる。
【0067】
液状ビスフェノールA型エポキシ化合物(B-11)は、上記に例示した化合物のうち1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
エポキシ樹脂(B)の含有量は、(メタ)アクリレート樹脂(A)及びエポキシ樹脂(B)の合計100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましい。一方、エポキシ樹脂(B)の含有量は、(メタ)アクリレート樹脂(A)及びエポキシ樹脂(B)の合計100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、7質量部以下であることがより好ましい。エポキシ樹脂(B)の含有量が1質量部以上10質量部以下であることで、光損失が低減される。
【0069】
<光重合開始剤(C)>
光重合開始剤(C)は、波長405nmの光に対する吸収係数が500mL/(g・cm)以下であり、光導波路用樹脂組成物の光による硬化反応を促進することができれば、特に限定されない。なお、波長405nmの光に対する吸収係数は、光重合開始剤(C)を溶媒(アセトニトリル又はメタノール)に溶解させて調整した、濃度0.1g/1Lの溶液を用いて、波長405nm、光路長1cmの条件で測定して得られた値である。このような光重合開始剤(C)を用いることで、光導波路用ドライフィルムの黄変が抑制され、透明性が高まる。
【0070】
光重合開始剤(C)について、波長405nmの光に対する吸収係数は100mL/(g・cm)以下であることが好ましく、10mL/(g・cm)以下であることがより好ましい。この場合、光導波路用ドライフィルムは更に高い透明性を有する。
【0071】
光重合開始剤(C)は、本実施形態の効果を得ることができれば、特に限定されないが、ラジカル重合開始剤(C-1)を含むことが好ましい。
【0072】
ラジカル重合開始剤(C-1)としては、特に限定されないが、例えば、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステル、オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステル、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン等が挙げられる。
【0073】
ラジカル重合開始剤(C-1)は、市販されているものを使用してもよく、例えば、Irgacure127、Irgacure184、Irgacure500、Irgacure651、Irgacure754、Irgacure907、Irgacure1173、Irgacure2959等が挙げられる。
【0074】
光重合開始剤(C)の含有量は、光導波路用樹脂組成物の固形分全量に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。一方、光重合開始剤(C)の含有量は、光導波路用樹脂組成物の固形分全量に対して、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。
【0075】
光重合開始剤(C)の含有量が0.1質量%以上20質量%以下であれば、光導波路用樹脂組成物の硬化が促進され、硬化物の耐薬品性が高まる。また、形成された光導波路の光損失を低くすることができる。
【0076】
光重合開始剤(C)は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、照射する予定の波長に対して、高い感光性を示す光重合開始剤(C)を適宜用いてもよい。さらに本実施形態の効果を阻害しない範囲で、その他の光重合開始剤(C-2)を用いてもよい。
【0077】
<添加剤>
本実施形態の効果を阻害しない範囲で、光導波路用脂組成物は、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、特に限定されないが、例えば、酸化防止剤、レベリング剤、溶媒等が挙げられる。酸化防止剤としては、特に限定されないが、フェノール系の酸化防止剤、ホスファイト系の酸化防止剤、硫黄系の酸化防止剤等が挙げられる。
【0078】
フェノール系の酸化防止剤としては、例えば、株式会社アデカ製のAO-20、AO-30、AO-40、AO-50、AO-60、AO-80、住友化学株式会社製のSUMILIZERGA-80等が挙げられる。
【0079】
ホスファイト系の酸化防止剤としては、例えば、株式会社アデカ製のPEP-8、PEP-36、HP-10、2112、1178、1500、城北化学工業株式会社製のJP-360、JP-3CP等が挙げられる。
【0080】
硫黄系の酸化防止剤としては、例えば、株式会社ADEKA製のAO-412S、AO-503、住友化学株式会社製のSUMILIZERTP-D等が挙げられる。
【0081】
酸化防止剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。特にフェノール系の酸化防止剤を用いることが好ましい。酸化防止剤を光導波路用樹脂組成物に含有させることで、耐熱性の高い光導波路を好適に形成できる。
【0082】
光導波路用樹脂組成物が酸化防止剤を含有する場合、酸化防止剤の含有量は、光導波路用樹脂組成物100質量部に対して、0質量部超であることが好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましく、0.3質量部以上であることがさらに好ましい。一方、酸化防止剤の含有量は、光導波路用樹脂組成物100質量部に対して、5質量部以下であることが好ましく、2質量部以下であることがより好ましく、1質量部以下であることがさらに好ましい。
【0083】
光導波路用樹脂組成物が酸化防止剤を含有する場合、酸化防止剤の含有量が5質量部を超えると、酸化防止剤が可塑剤として働き、硬化物の耐熱性を低下させるおそれがある。そのため、光導波路用樹脂組成物が酸化防止剤を含有する場合、酸化防止剤の含有量が0質量部超5質量部以下であることが好ましく、これにより耐熱性の高い光導波路を好適に形成できる。
【0084】
レベリング剤としては、一般的に分散剤として用いられる種々の分散剤を用いることができる。例えば、OMNOVASolutions製のPF-636等が挙げられる。
【0085】
以上のように、本実施形態に係る光導波路用樹脂組成物は、耐熱性の高い光導波路を形成することができる。
【0086】
<硬化方法>
光導波路用樹脂組成物を硬化させる方法は、光硬化が進行すれば、特に限定されないが、具体的には、光導波路用樹脂組成物に対して、波長365nmの光線を照射し、かつ140℃にて10分の熱処理を行う方法が挙げられる。より具体的には、光導波路用樹脂組成物に対して、波長365nmの光線を1000mJ/cm照射し、かつ140℃にて10分の熱処理を行う方法が挙げられる。なお、吸収波長及び熱処理の条件は、光硬化が進行すれば特に限定されない。
【0087】
フォトマスクを利用した投影露光によっても、本実施形態に係る光導波路用樹脂組成物の光硬化は、上記と同様に進行するため、好適な光導波路を形成することができる。また、i線領域外の光線を用いて、光硬化を進行させてもよい。
【0088】
2.光導波路用ドライフィルム
本実施形態に係る光導波路用樹脂組成物は、光導波路を形成する際に用いる光導波路用ドライフィルムの材料として用いることができる。
【0089】
本実施形態に係る光導波路用ドライフィルムは、上記光導波路用樹脂組成物を含む樹脂層1を備えるものであれば、特に限定されない。具体的には、光導波路用ドライフィルムは、図1に示すように、樹脂層1の一方の面上にフィルム基材2を備え、他方の面上に保護フィルム3を備えるもの等が挙げられる。光導波路用ドライフィルムは、樹脂層1を備えていればよく、フィルム基材2及び保護フィルム3だけではなく、他の層を備えていてもよい。フィルム基材2及び保護フィルム3は必須ではない。なお、図1は、本実施形態に係る光導波路用ドライフィルムの構成を示す断面図である。
【0090】
樹脂層1は、上記光導波路用樹脂組成物又は半硬化物を含有する。樹脂層1は、本実施形態に係る光導波路用樹脂組成物から形成されるため、タック性が抑制されている。そのため、加工性が高まる。
【0091】
光導波路用ドライフィルムの厚みは、適宜調整することが好ましいが、例えば、20μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましい。厚みが20μm以上であれば、硬化物は十分な物理強度を有する。一方、光導波路用ドライフィルムの厚みは、100μm以下であることが好ましく、80μm以下であることがより好ましい。厚みが100μm以下であれば、好適な光導波路を形成することができる。
【0092】
フィルム基材2としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリスルホン、液晶ポリマーなどが挙げられる。特にフィルム基材2は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、又はポリスルホンであることが好ましい。これらは、優れた柔軟性及び強靭性を有する。
【0093】
フィルム基材2の厚みは、適宜調整することが好ましいが、例えば、3μm以上250μm以下であることが好ましい。このような厚みであれば、優れたフィルム強度及び柔軟性を有する光導波路用ドライフィルムを製造することができる。その結果、光導波路用ドライフィルムの加工性が高まり、好適な光導波路を形成しやすくなる。
【0094】
フィルム基材2の樹脂層1と接する面には、含フッ素化合物等を用いて剥離処理を行ってもよい。剥離処理を行うことで、樹脂層1をフィルム基材2から剥離しやすくなる。
【0095】
保護フィルム3としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン等が挙げられる。特に保護フィルム3は、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンであることが好ましい。これらは、優れた柔軟性及び強靭性を有する。
【0096】
保護フィルム3の厚みは、適宜調整することが好ましいが、例えば、10μm以上250μm以下であることが好ましい。このような厚みであれば、優れたフィルム強度及び柔軟性を有する光導波路用ドライフィルムを製造することができる。その結果、光導波路用ドライフィルムの加工性が高まり、好適な光導波路を形成しやすくなる。また、フィルム基材2と同様に剥離処理を行ってもよい。
【0097】
光導波路用ドライフィルムの形成方法は、特に限定されないが、例えば、以下の方法が挙げられる。まず、光導波路用樹脂組成物に溶媒等を加えてワニス状にし、このワニスをフィルム基材2上に塗布する。この塗布は、コンマコーター等を用いる塗布等が挙げられる。このワニスを乾燥させることにより、フィルム基材2上に樹脂層1が形成される。さらに樹脂層1上に保護フィルム3を積層する。この積層方法としては、例えば、熱ラミネート法が挙げられる。光導波路用ドライフィルムにおける樹脂層1が、光導波路の材料として用いられる。光導波路用ドライフィルムは、光導波路のコアを形成する際に用いてもよいし、クラッドを形成する際に用いてもよい。
【0098】
3.光導波路
本実施形態に係る光導波路の形成方法について、図2A図2C図3A図3C、及び図4A図4Cを参照しながら説明する。ここでは、光導波路を備えた光電気複合配線板の製造方法について説明する。なお、図2A図2C図3A図3C、及び図4A図4Cは、本実施形態に係る光導波路を備えた光電気複合配線板の製造方法を説明するための図である。
【0099】
まず、図2Aに示すように、電気回路9を有する基板5を用意する。次に、図2Bに示すように、基板5の、電気回路9が設けられた面上に、クラッド層8(下クラッド層10)を形成する。下クラッド層10を形成する方法は特に限定されないが、例えば、光導波路用ドライフィルム(樹脂層1)を基板5上に重ね、光を光導波路用ドライフィルムの所定箇所に照射して、光が照射された部分を硬化させる方法等が挙げられる。
【0100】
次に、光導波路用ドライフィルムを用いて、下クラッド層10の上にコア部11を形成する。具体的には、図2Cに示すように、光導波路用ドライフィルムから保護フィルム3を剥離する。そして、図3Aに示すように、樹脂層1が下クラッド層10の上に配置されるように積層した後、フィルム基材2を剥離する。次に、図3Bに示すように、光源12を用いて、樹脂層1の所定箇所に波長365nmの光線(点線矢印で示す)を照射し、樹脂層1において光が照射された部分を光硬化させる。その後、現像することによって、図3Cに示すように、コア部11が形成される。コア部11は、樹脂層1において光が照射された部分である。
【0101】
現像を行う方法は特に限定されないが、例えば、樹脂層1の未硬化部をアルカリ現像液で除去する方法が挙げられる。樹脂層1の未硬化部は、光が照射されなかった部分である。
【0102】
次に、光導波路用ドライフィルムを用いて、クラッド層8(上クラッド層13)を形成する。上クラッド層13を形成する方法は特に限定されないが、例えば、図4Aに示すように、光導波路用ドライフィルムを用いて、下クラッド層10及びコア部11を覆うように、樹脂層1を積層する。なお、光導波路用ドライフィルムは、フィルム基材2及び保護フィルム3を備えてもよい。
【0103】
次に、図4Bに示すように、光源12を用いて、樹脂層1の所定箇所に波長365nmの光線(点線矢印で示す)を照射し、樹脂層1において光が照射された部分を光硬化させる。そうすることによって、樹脂層1のうち光が照射された部分が上クラッド層13となる。なお、図4Cに示すように、ビア15を形成する場所以外に波長365nmの光線を照射し、その後、現像することによって、図4Cに示すように、ビア15を形成することができる。
【0104】
以上のようにして、本実施形態に係る光導波路用ドライフィルムを用いて、光導波路を形成することができる。すなわち、図4Cに示す光導波路は、コア部11と、クラッド層8(下クラッド層10及び上クラッド層13)と、を備える。上クラッド層13は、コア部11を覆っている。上クラッド層13は、光導波路用樹脂組成物の硬化物である。
【0105】
以上のように、本実施形態に係る光導波路用ドライフィルムは、樹脂層1を備える。また、本実施形態に係る光導波路は、コア部11と、コア部11を覆うクラッド層8と、を備え、コア部11及びクラッド層8の少なくとも一方が、光導波路用樹脂組成物の硬化物を含む。
【0106】
特にコア部11は、上述の(1)の場合の光導波路用樹脂組成物で形成することが好ましい。この場合、(メタ)アクリレート樹脂(A)は、脂環式(メタ)アクリレート化合物(A-1)及び芳香族(メタ)アクリレート化合物(A-2)の2種を含み、かつ(メタ)アクリレートモノマー(A-3)を含まない。
【0107】
一方、クラッド層8(下クラッド層10及び上クラッド層13)は、上述の(2)の場合の光導波路用樹脂組成物で形成することが好ましい。この場合、(メタ)アクリレート樹脂(A)は、脂環式(メタ)アクリレート化合物(A-1)及び(メタ)アクリレートモノマー(A-3)の2種を含み、かつ芳香族(メタ)アクリレート化合物(A-2)を含まない。
【0108】
これにより、コア部11及びクラッド層8の各々の透明性を高めることができるだけでなく、両者の屈折率を容易に異ならせることができる。
【0109】
4.態様
上記実施形態から明らかなように、本開示は、下記の態様を含む。以下では、実施形態との対応関係を明示するためだけに、符号を括弧付きで付している。
【0110】
第1の態様は、光導波路用樹脂組成物であって、(メタ)アクリレート樹脂(A)と、エポキシ樹脂(B)と、光重合開始剤(C)と、を含有する。前記(メタ)アクリレート樹脂(A)は、脂環式(メタ)アクリレート化合物(A-1)と、芳香族(メタ)アクリレート化合物(A-2)及び/又は(メタ)アクリレートモノマー(A-3)と、を含む。前記脂環式(メタ)アクリレート化合物(A-1)は、側鎖に非芳香族炭素環を有する。前記芳香族(メタ)アクリレート化合物(A-2)は、1分子中に少なくとも2つのヒドロキシ基を有する。前記光重合開始剤(C)は、波長405nmの光に対する吸収係数が500mL/(g・cm)以下である。
【0111】
この態様によれば、白濁及び黄変を抑制し、透明性を高めることができる。
【0112】
第2の態様は、第1の態様に基づく光導波路用樹脂組成物である。第2の態様では、前記脂環式(メタ)アクリレート化合物(A-1)が、下記式(1)の構造単位を有するシクロヘキサン環含有化合物(A-11)を含む。
【0113】
【化3】
(式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。R及びRはそれぞれ独立しており、Rは飽和炭化水素基を表し、Rはアクリレート基又はメタクリレート基を表す。nは1以上4以下の整数である。)
【0114】
この態様によれば、透明性を更に高めることができる。
【0115】
第3の態様は、第1又は第2の態様に基づく光導波路用樹脂組成物である。第3の態様では、前記芳香族(メタ)アクリレート化合物(A-2)が、ビスフェノール(メタ)アクリレート化合物(A-21)を含む。
【0116】
この態様によれば、透明性を更に高めることができる。
【0117】
第4の態様は、第1~第3の態様のいずれか一つに基づく光導波路用樹脂組成物である。第4の態様では、前記脂環式(メタ)アクリレート化合物(A-1)の含有量が、前記(メタ)アクリレート樹脂(A)及び前記エポキシ樹脂(B)の合計100質量部に対して、35質量部以上75質量部以下である。
【0118】
この態様によれば、透明性を更に高めることができる。
【0119】
第5の態様は、第1~第4の態様のいずれか一つに基づく光導波路用樹脂組成物である。第5の態様では、前記芳香族(メタ)アクリレート化合物(A-2)の含有量が、前記(メタ)アクリレート樹脂(A)及び前記エポキシ樹脂(B)の合計100質量部に対して、25質量部以上55質量部以下である。
【0120】
この態様によれば、透明性を更に高めることができる。
【0121】
第6の態様は、第1~第5の態様のいずれか一つに基づく光導波路用樹脂組成物である。第6の態様では、前記エポキシ樹脂(B)が、液状エポキシ化合物(B-1)を含む。
【0122】
この態様によれば、透明性を更に高めることができる。
【0123】
第7の態様は、第1~第6の態様のいずれか一つに基づく光導波路用樹脂組成物である。第7の態様では、前記光重合開始剤(C)が、ラジカル重合開始剤(C-1)を含む。
【0124】
この態様によれば、透明性を更に高めることができる。
【0125】
第8の態様は、光導波路用ドライフィルムであって、第1~第7の態様のいずれか一つに基づく光導波路用樹脂組成物又は前記光導波路用樹脂組成物の半硬化物を含む樹脂層(1)を備える。
【0126】
この態様によれば、白濁及び黄変を抑制し、透明性を高めることができる。
【0127】
第9の態様は、第8の態様に基づく光導波路用ドライフィルムである。第9の態様では、フィルム基材(2)及び保護フィルム(3)の少なくともいずれかを更に備える。
【0128】
この態様によれば、光導波路用ドライフィルムの取扱性が向上する。
【0129】
第10の態様は、光導波路であって、コア部(11)と、前記コア部(11)を覆うクラッド層(8)と、を備える。前記コア部(11)及び前記クラッド層(8)の少なくとも一方が、第1~第7の態様のいずれか一つに基づく光導波路用樹脂組成物の硬化物を含む。
【0130】
この態様によれば、白濁及び黄変を抑制し、透明性を高めることができる。
【0131】
第11の態様は、第10の態様に基づく光導波路である。第11の態様では、前記コア部(11)が、前記脂環式(メタ)アクリレート化合物(A-1)及び前記芳香族(メタ)アクリレート化合物(A-2)を含む前記光導波路用樹脂組成物の硬化物を含む。前記クラッド層(8)が、前記脂環式(メタ)アクリレート化合物(A-1)及び前記(メタ)アクリレートモノマー(A-3)を含む前記光導波路用樹脂組成物の硬化物を含む。
【0132】
この態様によれば、コア部(11)及びクラッド層(8)の双方の透明性を更に高めることができる。
【実施例0133】
以下、本開示を実施例によって具体的に説明する。ただし、本開示は以下の実施例に限定されない。
【0134】
[(メタ)アクリレート樹脂(A)]
・脂環式(メタ)アクリレート化合物(A-1)、式(1)の構造単位を有するシクロヘキサン環含有化合物(A-11)、ダイセル・オルネクス株式会社製、商品名:(ACA)Z250
・芳香族(メタ)アクリレート化合物(A-2)、ビスフェノール(メタ)アクリレート化合物(A-21)、株式会社ダイセル製、商品名:EBECRYL600
・(メタ)アクリレートモノマー(A-3)、日本化薬株式会社製、商品名:KAYARAD PET-30
・その他の(メタ)アクリレート化合物(A-4)、新中村化学工業株式会社製、商品名:ABE―300。
【0135】
[エポキシ樹脂(B)]
・液状エポキシ化合物(B-1)、液状ビスフェノールA型エポキシ化合物(B-11)、DIC株式会社製、商品名:850―S、エポキシ当量:183~193g/eq。
【0136】
[光重合開始剤(C)]
ラジカル重合開始剤(C-1)、IGM Resins B.V.製、商品名:Irgacure754、波長405nmの光に対する吸収係数が500mL/(g・cm)以下、
その他の光重合開始剤(C-2)、IGM Resins B.V.製、商品名:Omnirad819、波長405nmの光に対する吸収係数が500mL/(g・cm)超。
【0137】
[光導波路用樹脂組成物]
光導波路用樹脂組成物を以下のように調製した。まず、表1に示す組成(質量部)となるように、各材料をガラス容器内に秤量し、溶剤として2-ブタノンと、トルエンと、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとをそれぞれ7:2:1の割合で加えた。その配合物を80℃の還流下で攪拌させることで、溶解可能な固形分が全て溶解した均一なワニス状の組成物を得た。得られたワニス状の組成物を、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の孔径1μmのメンブレンフィルターでろ過した。これにより、含有されている固形状の異物が除去された。以下、ろ過されたワニス状の光導波路用樹脂組成物を用いた。
【0138】
[光導波路用ドライフィルム]
次に、上記のワニス状の光導波路用樹脂組成物を用いて、光導波路用ドライフィルムを作製した。具体的には、ワニス状の光導波路用樹脂組成物を、株式会社ヒラノテクシード製のコンマコーターヘッドのマルチコーターを用い、フィルム基材としてのPETフィルム(東洋紡株式会社製、商品名:A4100)上に、光導波路用樹脂組成物からなる層が50μmとなるように塗布した後、80℃にて30分間乾燥させた。そうすることによって、PETフィルム上に、厚さ50μmの樹脂層(光導波路用樹脂組成物からなる層)が形成された。
【0139】
[透明性]
上記のようにして得られた光導波路用ドライフィルムの外観を目視により観察し、「透明」、「白濁」又は「黄色」と評価した。なお、光導波路用ドライフィルムが透明であれば、その硬化物も透明であるとみなしてよい。
【0140】
【表1】
【符号の説明】
【0141】
1 樹脂層
2 フィルム基材
3 保護フィルム
8 クラッド層
11 コア部
図1
図2
図3
図4