(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180077
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】歯車研削盤
(51)【国際特許分類】
B23F 23/12 20060101AFI20241219BHJP
B24B 49/10 20060101ALI20241219BHJP
B23F 19/05 20060101ALI20241219BHJP
B23Q 17/20 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B23F23/12
B24B49/10
B23F19/05
B23Q17/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099516
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】391003668
【氏名又は名称】トーヨーエイテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】國重 正博
【テーマコード(参考)】
3C025
3C029
3C034
【Fターム(参考)】
3C025HH08
3C029BB02
3C034AA13
3C034AA19
3C034BB71
3C034BB92
3C034CA01
(57)【要約】
【課題】歯車研削盤において、回転軸に取り付けた状態の歯車の寸法を測定することを可能とし、検査の工数を削減する
【解決手段】砥石を回転可能な砥石回転軸5aと、砥石回転軸に隣接し、砥石回転軸と交差する方向に延びるテーブル回転軸4aを有し、テーブル回転軸を中心に回転可能な回転テーブル4と、回転テーブルに設けられるワーク回転軸7aを有し、テーブル回転軸を中心に旋回可能であるとともに、ワーク回転軸を中心にワークを回転可能である少なくとも2つのワーク加工部41と、ワーク回転軸に取り付けられたワークの寸法を測定可能に、回転テーブルの外に設けられた測定器20と、を備え、測定器は、ワークとしての歯車の寸法を測定する測定器であり、回転テーブルの内側へ向かって延びるアーム部22の先端に測定子21を有し、ワーク回転軸に取り付けられた状態の歯車に測定子を接触させて測定可能に構成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
砥石を回転可能な砥石回転軸と、
前記砥石回転軸に隣接し、前記砥石回転軸と交差する方向に延びるテーブル回転軸を有し、前記テーブル回転軸を中心に回転可能な回転テーブルと、
前記回転テーブルに設けられるワーク回転軸を有し、前記テーブル回転軸を中心に旋回可能であるとともに、前記ワーク回転軸を中心にワークを回転可能である少なくとも2つのワーク加工部と、
前記ワーク回転軸に取り付けられた前記ワークの寸法を測定可能に、前記回転テーブルの外に設けられた測定器と、を備え、
前記測定器は、前記ワークとしての歯車の寸法を測定する測定器であり、前記回転テーブルの内側へ向かって延びるアーム部の先端に測定子を有し、前記ワーク回転軸に取り付けられた状態の歯車に前記測定子を接触させて測定可能に構成されることを特徴とする歯車研削盤。
【請求項2】
一の前記ワーク加工部と前記砥石回転軸とが対向するとき、前記測定器が、他の前記ワーク加工部に設置されたワークの寸法を測定可能に、他の前記ワーク加工部に対向することを特徴とする請求項1に記載の歯車研削盤。
【請求項3】
前記測定器から入力された測定値と、予め設定された基準値とを比較し、その比較結果に基づき、フィードバック制御によって歯車研削盤の制御を行う制御部を、更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の歯車研削盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、歯車研削盤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被加工物である歯車へ砥石を噛み合わせ、歯車の歯面を仕上げ加工する歯車研削盤が知られている。歯車研削盤には、例えば特許文献1に示されるように、回転プレート上に複数の被加工物用スピンドルが回転可能に支持される構成のものがある。このような歯車研削盤では、一の被加工物用スピンドルに設置された被加工物を砥石によって研磨している間に、他の被加工用スピンドルに設置された加工済みの被加工物を取外し、新たな未加工の被加工物を設置することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、歯車研削盤によって加工された歯車は、各種測定器によって、研削の精度が評価される。例えば、OBD(オーバーボールダイヤメータ)測定器は、歯車の溝に測定子を当てて歯車の寸法を測り、OBD測定値を得る。予め設定された基準値とOBD測定値との差が許容範囲内であれば合格だが、不合格の場合、歯車研削盤によって再度の研削加工(追い込み加工)を行う。その場合、OBD測定値を図るために歯車研削盤から取り外した歯車を、再度取り付けなればならないため、検査に工数が掛かることが問題である。
【0005】
本開示は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、歯車研削盤において、回転軸に取り付けた状態の歯車の寸法を測定することを可能とし、検査の工数を削減することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この開示技術では、回転テーブル外に測定器を備えた。具体的には、本開示では、
砥石を回転可能な砥石回転軸と、
前記砥石回転軸に隣接し、前記砥石回転軸と交差する方向に延びるテーブル回転軸を有し、前記テーブル回転軸を中心に回転可能な回転テーブルと、
前記回転テーブルに設けられるワーク回転軸を有し、前記テーブル回転軸を中心に旋回可能であるとともに、前記ワーク回転軸を中心にワークを回転可能である少なくとも2つのワーク加工部と、
前記ワーク回転軸に取り付けられた前記ワークの寸法を測定可能に、前記回転テーブルの外に設けられた測定器と、を備え、
前記測定器は、前記ワークとしての歯車の寸法を測定する測定器であり、前記回転テーブルの内側へ向かって延びるアーム部の先端に測定子を有し、前記ワーク回転軸に取り付けられた状態の歯車に前記測定子を接触させて測定可能に構成される。
【0007】
上記の構成によれば、ワーク回転軸に取り付けられた状態のワークに対して寸法を測定できるため、測定のためにワークを取り外す必要がない。測定の結果、寸法が基準を満たさず再度の研削加工が必要になっても、すぐに追い込み加工を開始できるため検査の工数を削減することができる。
【0008】
本開示の歯車研削盤は、一の前記ワーク加工部と前記砥石回転軸とが対向するとき、前記測定器が、他の前記ワーク加工部に設置されたワークの寸法を測定可能に、他の前記ワーク加工部に対向するように構成してもよい。
【0009】
上記の構成によれば、一のワーク加工部においてワークを研削加工中に、他のワーク加工部において加工済みのワークの測定を行うことができるため、測定時間がサイクルタイムに影響せず、製造効率がよい。
【0010】
また、本開示の歯車研削盤は、前記測定器から入力された測定値と、予め設定された基準値とを比較し、その比較結果に基づき、フィードバック制御によって歯車研削盤の制御を行う制御部を、更に備えてもよい。
【0011】
上記の構成によれば、製造効率を高めるとともに、加工寸法を安定させることが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本開示によると、加工後の歯車を取り付けた状態で寸法を測定することを可能にし、検査の工数を削減する歯車研削盤を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態の歯車研削盤の概略斜視図である。
【
図2】第1実施形態の歯車研削盤の概略平面図である。
【
図3】第1実施形態の歯車研削盤の概略側面図である。
【
図4】第2実施形態の歯車研削盤の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0015】
図1は第1実施形態に係る歯車研削盤の斜視図、
図2は平面図、
図3は側面図である。
図1から
図3に示すように、本実施形態に係る歯車研削盤1は、歯車等の被加工物11,12,13(以下、ワークという)を、回転する砥石によって研削する装置である。
【0016】
以下、本実施形態では、
図3のように、砥石コラム3と回転テーブル4が並ぶ方向を左右方向として見たときに、その左右方向をX軸方向、X軸に直交する紙面奥行方向をY軸方向、砥石コラム3が立設する上下方向をZ軸方向とする。
【0017】
歯車研削盤1は、後述する各回転軸や搬送装置を駆動するモータ等の駆動装置を収容する筐体として略直方体状のベッド2を備える。ベッド2の上面には、砥石コラム3と回転テーブル4とが隣接して配置される。ベッド2は、長手方向の一端側の上部に砥石コラム3が立設し、他端側の上部に回転テーブル4が配置され、その更に他端側の上部に測定器20が配置される。ベッド2の内部には、各種の駆動装置(図示省略)や、それらを制御する制御部10が収容される。また、歯車研削盤1は、カバー100によってその外周を覆われている。カバー100は、
図2にのみ示し、
図1及び
図3においては省略した。カバー100は、回転テーブル4の外周において、開閉可能な作業用扉101を複数備える。作業用扉101は、作業者による回転テーブル4への砥石の交換や、後述するワーク交換装置9によるワークの交換を可能にする。
【0018】
砥石コラム3は、X軸方向に移動可能であり、回転テーブル4に対して進退可能である。砥石コラム3は、Y軸方向及びZ軸方向に駆動する砥石移動装置31と、砥石5を回転可能かつ着脱可能に支持する砥石ヘッド32とを備える。砥石移動装置31は、Z軸方向に移動可能なZ方向スライダ(図示省略)を備え、そのZ方向スライダに、Y軸方向に移動可能なY方向スライダ(図示省略)が設けられて、Y軸方向及びZ軸方向に駆動可能に構成されている。砥石ヘッド32は砥石移動装置31によってY軸方向及びZ軸方向に移動可能である。砥石ヘッド32は、Y軸方向に延びる砥石回転軸5aとX軸方向に延びる砥石角度回転軸5bを有し、砥石5を回転駆動する。砥石5は、
図1及び
図3に示すように、砥石回転軸5aを中心に、B方向(正逆両方向)に回転可能かつ、砥石角度回転軸5bを中心にA方向(正逆両方向)に回転可能である。このような砥石コラム3の構成により、砥石ヘッド32は、X,Y,Z,A方向に移動及び回転可能である。砥石コラム3において、砥石5は回転テーブル4側の面に設けられ、砥石回転軸5aと回転テーブル4とが隣接して配置される。砥石コラム3、砥石移動装置31及び砥石回転軸5aを駆動する各モータ(図示省略)は、ベッド2内に収容され、制御部10によって制御される。
【0019】
回転テーブル4は、円形の上面を有する略円柱状の部材である。本実施形態において、回転テーブル4は、砥石コラム3とX軸方向に隣接して設けられる。回転テーブル4は、砥石回転軸5aと直交する方向に延びるテーブル回転軸4aを有し、テーブル回転軸4aを中心に回転可能である。本実施形態において、テーブル回転軸4aは、Z軸方向に延びる。回転テーブル4は、
図1及び
図2に示すように、テーブル回転軸4aを中心にC1方向(正逆両方向)に回転可能である。テーブル回転軸4aを駆動するモータ40は、回転テーブル4内及びベッド2内に収容される。
【0020】
回転テーブル4には、2つのワーク加工部41,41、砥石収容部42及びドレッシング部43が設けられる。ワーク加工部41、砥石収容部42及びドレッシング部43は、回転テーブル4の回転に伴い、同じ回転軌道上を移動する。回転テーブル4の上面には、ワークコラム7が立設する。ワークコラム7によって、ワーク加工部41,41と、砥石収容部42と、ドレッシング部43が区画される。なお、
図2及び
図3においては、ワークコラム7の一部を省略した。なお、本発明の歯車研削盤1において、砥石収容部42の設置は任意である。
【0021】
具体的には、ワークコラム7は、回転テーブル4の略中央に立設してテーブル回転軸4aを収容する柱部71と、柱部71から放射状に延びて回転テーブル4上を4つのエリアに区画する4つの隔壁72を有する。ワーク加工部41,41、砥石収容部42及びドレッシング部43は、それぞれ隔壁72によって区画される。また、ワークコラム7には、ワーク11,12を鉛直方向(W方向)の上方から押さえるテールストック70が設けられる。なお、
図2及び
図3においては、テールストック70を省略した。
【0022】
隔壁72は、柱部71から回転テーブル4の径方向外側に延びるとともに、回転テーブル4の上面からZ軸方向に延びる。また、
図2に示すように、歯車研削盤1の外周を覆うカバー100は、テーブル回転軸4aと砥石回転軸5aとの間において、その内側面から回転テーブル4へ向かってY軸方向に延びるカバー隔壁102を有し、カバー隔壁102は、回転テーブル4上の隔壁72と連接可能である。隔壁72を、少なくともワーク加工部41と砥石収容部42との間を仕切るように設けることで、例えば、ワーク11の研削加工中に、作業者が作業用扉101を開放し、砥石収容部42に対して砥石の交換作業を安全に行うことが可能となる等、作業が効率化できる。
【0023】
ワーク加工部41は、テーブル回転軸4aの回転に伴い、テーブル回転軸4aを中心に旋回可能である。ワーク加工部41は、回転テーブル4を挿通するように設けられる複数のワーク回転軸7aを有する。ワーク回転軸7aは、テーブル回転軸4aと同じ方向、つまり、Z軸方向に延びる。ワーク回転軸7aは、テーブル回転軸4aの径方向外側に配置される。本実施形態では、2つのワーク回転軸7a,7aを、テーブル回転軸4aを挟んで向かい側に配置する。テーブル回転軸4aは、その上端部にワーク11,12を回転可能かつ着脱可能に保持する。ワーク11,12は、テーブル回転軸4aの回転に伴い、テーブル回転軸4aを中心に旋回可能である。また、ワーク11,12は、
図2に示すように、それぞれワーク回転軸7aを中心にC2,C3方向(正逆両方向)に回転可能である。ワーク加工部41の上方において、テールストック70が鉛直方向(W方向)に移動可能に設けられる。テールストック70は、ワーク回転軸7aに取り付けられたワーク11,12に対向してそれぞれ設けられる。テールストック70は、上方から回転テーブル4へ向かってワーク11,12を押さえ、ワーク回転軸7aとともにワーク11,12を保持する。
【0024】
砥石収容部42は、テーブル回転軸4aの回転に伴い、テーブル回転軸4aを中心に旋回可能である。砥石収容部42は、回転テーブル4上に設けられる。具体的には、回転テーブル4に砥石5が納まるほどに、回転テーブル4の周縁部よりも径方向内側に設けられる。砥石収容部42には、少なくとも2つの砥石5を収容可能である。砥石収容部42に収容される砥石5は交換用の砥石であり、加工後に砥石回転軸5aから取り外された砥石、及び、摩耗した砥石と交換される新しい砥石である。本実施形態では、2つの砥石収容部42をZ軸方向に並べて配置した。砥石収容部42において、回転テーブル4の周縁部よりも径方向内側に砥石搬送装置8が設けられる。砥石搬送装置8は、回転テーブル4の外側でなく内側に設けられることで、外側に設けた場合よりも作動距離をより短くできるため、より効果的に装置の大型化を防止できる。
【0025】
砥石搬送装置8は、具体的には、柱部71に設けられる。砥石搬送装置8は、砥石収容部42における砥石の収容個数に応じて複数設けられ、それぞれが砥石5を保持可能である。砥石搬送装置8は、砥石回転軸5aに対して砥石5の取り外し動作および取り付け動作を行うように構成される。砥石搬送装置8は、砥石収容部42と砥石回転軸5aの間を進退可能である。従来の歯車研削盤は、上記のような砥石コラム3の構成により、砥石回転軸5aをX,Y,Z,A方向に移動及び回転可能である。砥石回転軸5aが砥石搬送装置8の砥石を受け取り又は取り外し可能に移動及び回転するため、砥石搬送装置8は少なくとも砥石収容部42と砥石回転軸5aの間を進退可能であればよい。砥石を一方向へ搬送するための駆動装置を少なくとも備えればよいため、砥石搬送装置8を導入するコストを削減でき、歯車研削盤の大型化も防ぐことができる。
【0026】
具体的には、砥石搬送装置8は、柱部71から径方向外側に延びる砥石搬送アームを有する。砥石搬送装置8は、砥石搬送アームに砥石5を載置又は挟持させることが可能である。本実施形態では、
図1から3に示すように、砥石搬送アームは、砥石の回転軸が鉛直方向となるよう砥石を保持するが、砥石の回転軸が水平方向となるよう保持してもよい。砥石搬送アームは、柱部71から径方向外側に進退可能である。言い換えれば、砥石搬送アームは、砥石収容部42が砥石回転軸5aの正面に位置した際に、砥石収容部42と砥石回転軸5aの間を進退可能である。また、このように進退可能に構成された砥石搬送装置8は、歯車研削盤1のカバー100の外側へ砥石を搬送することも可能である。例えば、砥石収容部42が
図2の位置にある場合、砥石搬送アームは、柱部71から作業用扉101へ向かって延び、作業用扉101を介してカバー100の内部と外部を出入り可能である。作業者は、砥石搬送アームによって作業用扉101の外へ露出した砥石52に対して交換作業を行うことが可能となるため、カバー100内において砥石を交換するよりも作業性が格段に優れる。
【0027】
本実施形態において、砥石収容部42に2つの砥石搬送装置81,82を設け、2つの砥石5を収容可能としたが、例えば、一方の砥石搬送装置81には、交換用の新しい砥石52を保持し、他方の砥石搬送装置82は、摩耗した砥石51を収容できるようにスペースをあけておくことができる。このような状態にしておけば、ワーク11の加工完了後、テーブル回転軸4aの回転によって砥石収容部42が砥石回転軸5aの正面に位置した後、空の砥石搬送装置82が砥石回転軸5aへ向かって前進するとともに、砥石コラム3及び砥石ヘッド32が砥石回転軸5aをX,Y,Z,A方向に移動及び回転させ、摩耗した砥石51を砥石搬送装置82へ載せることができる。そして、摩耗した砥石51を載せた砥石搬送装置82が後退するとともに、新しい砥石52を載せた砥石搬送装置81が砥石回転軸5aへ向かって前進し、砥石回転軸5aへ新しい砥石52を取り付け可能とすることができる。このように、回転テーブル4を回転させることなく、摩耗した砥石51の取り外しと新しい砥石52の取り付けを効率良く行うことが可能となる。
【0028】
ドレッシング部43は、テーブル回転軸4aの回転に伴い、テーブル回転軸4aを中心に旋回可能である。ドレッシング部43は、回転テーブル4上に設けられる。ドレッシング部43には、砥石回転軸5aに取り付けられた砥石51をドレスするためのドレス装置6が配置されている。ドレス装置6は、ドレッシング部43が砥石回転軸5aの正面に位置した状態で砥石回転軸5aと平行な方向(Y軸方向)へ延びるドレッサ回転軸6aを備える。
【0029】
回転テーブル4がテーブル回転軸4aを中心に回転すると、ワーク加工部41,41、砥石収容部42及びドレッシング部43が、テーブル回転軸4aを中心に旋回する。本実施形態では、回転テーブル4が90°ずつ区画され4つの領域に分かれている。そのため、例えば、
図2のように、一方のワーク加工部41が砥石回転軸5aの正面に位置する状態から、テーブル回転軸4aが時計回りに90°回転すると、ドレス装置6が砥石回転軸5aの正面に位置し、ドレス装置6が砥石51をドレスすることができる。
【0030】
測定器20は、ワーク回転軸7aに取り付けられたワーク11,12の寸法を測定可能に回転テーブル4の外に設けられる。測定器20は、ワーク11,12としての歯車に対してオーバーボール径を測定するOBD測定器である。測定器20は、一対の測定子21,21と、測定子21を支持するアーム部22と、アーム部22を水平方向に移動させる本体部23と、ゲージ24を備える。ゲージとして、例えば、電気マイクロメータやダイヤルゲージ等を用いることができる。一のワーク加工部41Aと砥石回転軸5aとが対向し、例えば、
図1から3のように、ワーク11が砥石51によって加工されているとき、測定器20は、他のワーク加工部41Bに設置されたワーク12の寸法を測定可能に、他のワーク加工部41Bに対向する位置に設けられる。
【0031】
本体部23は、ベッド2の上面に固定され、水平方向に間隔をあけて一対のアーム部22,22を備える。本実施形態において、測定器20は、回転テーブル4を挟んで砥石コラム3と向かい合うように、X軸方向の一端部に配置されるとともに、作業用扉101と回転テーブル4の間に配置される。測定器20は、ワーク11,12の脱着が行われる位置に設けられる。本体部23はY軸方向に延び、Y軸方向に間隔をあけて一対のアーム部22,22を備える。アーム部22は、回転テーブル4の外側から回転テーブル4の内側へ向かって延びる。一対のアーム部22,22は互いに接近及び離隔するようにY軸方向に移動可能である。一対のアーム部22の先端には、互いに向かい合う方向に突出する略球状の測定子21が固定される。測定器20は、ワーク回転軸7aに取り付けられた状態のワーク12に対して、測定子21を接触させ、OBD測定値を測定する。測定器20は、得られたOBD測定値を、制御部へ入力する。
【0032】
歯車研削盤1は、回転テーブル4に隣接するワーク交換装置9を備えてもよい。ワーク交換装置9は、
図2にのみ示し、
図1及び
図3においては省略した。
図2に示すように、ワーク交換装置9は、測定器20がワークを測定する位置において、ワークを交換可能に設けられる。ワーク交換装置9は、搬送回転軸9aと、複数のワーク搬送アーム91,92を有する。ワーク交換装置9は、搬送回転軸9aを中心に回転可能である。搬送回転軸9aは、テーブル回転軸4aと同じ方向、つまり、Z軸方向に延びる。搬送回転軸9aは、カバー100の外側に設けられる。ワーク搬送アーム91,92は、搬送回転軸9aから水平方向に延び、本実施形態では、2つのワーク搬送アーム91,92が搬送回転軸9aを挟んで両側に設けられる。ワーク搬送アーム91,92は、
図2に示すように、搬送回転軸9aを中心にC4(正逆両方向)に回転可能である。ワーク搬送アーム91,92は、搬送回転軸9aを中心に回転することで、作業用扉101を介してカバー100の内部と外部を出入り可能である。ワーク搬送アーム91,92は、その端部にワーク12,13を挟持可能であり、ワーク回転軸7aに対してワーク12,13を取り外し及び取り付け可能である。
【0033】
次に、歯車研削盤1の動作を説明する。ワーク加工部41Bと砥石回転軸5aとが対向し、ワーク加工部41Bに設置されたワーク12が砥石51に加工される。加工後のワーク12を載せたワーク加工部41Bは、テーブル回転軸4aの回転に伴い、測定器20と対向する位置へ旋回する。ワーク12が測定器20の対向位置に到着すると、測定器20のアーム22,22が互いに接近する方向へ移動し、ワーク12を挟み込むようにワーク12の外周に測定子21,21を接触させ、OBD値を計測する。測定器20は、得られたOBD値を制御部10へ入力する。制御部10は、測定器20から入力されたOBD測定値と、予め設定されたOBD基準値とを比較する。OBD測定値とOBD基準値との差が許容範囲内である場合、ワーク交換装置9によって加工済みのワーク12を、未加工のワーク13へ交換する。OBD測定値とOBD基準値との差が許容範囲外である場合、テーブル回転軸4aが回転して、ワーク加工部41Bはワーク12を載せたまま再び砥石回転軸5aと対向する位置へ旋回される。制御部10は、フィードバック制御によって、例えば、砥石回転軸5aの駆動モータや、ワーク回転軸7aの駆動モータ等、歯車研削盤の各種駆動装置を制御し、ワーク12がOBD基準値に近づくように追い込み加工を行うことで、製造効率を高めるとともに、加工寸法を安定させることができる。なお、測定器20がワーク12を測定している間、他のワーク11を加工することも可能である。
【0034】
(作用効果)
このように構成した本実施形態の歯車研削盤1は、ワーク回転軸7aに取り付けられた状態のワークに対してオーバーボール径を測定できるため、測定のためにワークを取り外す必要がない。測定の結果、寸法が基準を満たさず再度の研削加工が必要になっても、回転テーブル4を回転させ、ワークを研削可能な位置へ移動すれば、すぐに追い込み加工を開始できるため検査の工数を削減することができる。また、回転テーブル4にワーク加工部41を複数備え、一のワーク加工部41Aにおいてワーク11を研削加工中に、他のワーク加工部41Bにおいて加工済みのワーク12の測定を行うことができるため、測定時間がサイクルタイムに影響せず、製造効率がよい。
【0035】
(第2実施形態)
次に、
図4に基づいて、歯車研削盤の第2実施形態について説明する。
図4は、第2実施形態の歯車研削盤の概略平面図である。以下の説明において、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。第2実施形態では、測定器20及びワーク交換装置9の設けられる位置、並びに、回転テーブル4上の配置が第1実施形態と異なる。第2実施形態において、2つのワーク加工部41A,41Bは、隔壁72を挟んで隣接して設けられる。測定器20は、
図4のように、一のワーク加工部41Aと砥石回転軸5aとが対向し、ワーク11が砥石51によって加工されているとき他のワーク加工部41Bに設置されたワーク12の寸法を測定可能である。本実施形態において、砥石回転軸5aは、測定器20からテーブル回転軸4aを中心に90度移動した位置にある。測定器20は、作業用扉101と回転テーブル4の間において、ワーク11,12の脱着が行われる位置に設けられる。このような第2実施形態の歯車研削盤においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0036】
(他の実施形態)
上記実施形態では、2つの砥石収容部42をZ軸方向に並べて配置したが、砥石収容部の数は3つ以上であってもよく、その配置もZ軸方向には限定されない。また、上記実施形態では、測定器はOBD測定器としたが、例えば、またぎ歯厚測定器等の他の測定器であってもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 歯車研削盤
2 ベッド
3 砥石コラム
4 回転テーブル
4a テーブル回転軸
5 砥石
5a 砥石回転軸
5b 砥石角度回転軸
6 ドレス装置
6a ドレッサ回転軸
7 ワークコラム
7a ワーク回転軸
8 砥石搬送装置
9 ワーク交換装置
9a 搬送回転軸
10 制御部
11,12,13 ワーク
20 測定器(OBD測定器)
31 砥石移動装置
32 砥石ヘッド
41,41A,41B ワーク加工部
42 砥石収容部
43 ドレッシング部
51,52 砥石
81,82 砥石搬送装置
91,92 ワーク搬送アーム
100 カバー
101 作業用扉
102 カバー隔壁