IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シャープ株式会社の特許一覧 ▶ 学校法人 名城大学の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180080
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】表示パネル
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/33 20060101AFI20241219BHJP
   H01L 33/08 20100101ALI20241219BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
G09F9/33
H01L33/08
G09F9/30 349Z
G09F9/30 348A
G09F9/30 349C
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099521
(22)【出願日】2023-06-16
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)本願は、令和2年度、国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)、研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)「高臨場感VR/ARディスプレイのための高輝度フルカラーモノリシックLEDの開発」委託研究の成果である、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】599002043
【氏名又は名称】学校法人 名城大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】上田 吉裕
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 素顕
(72)【発明者】
【氏名】末広 好伸
(72)【発明者】
【氏名】今泉 雄太
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 竜成
【テーマコード(参考)】
5C094
5F241
【Fターム(参考)】
5C094AA06
5C094AA09
5C094BA12
5C094BA23
5C094CA19
5C094CA24
5C094ED13
5C094ED15
5C094FA01
5C094FA02
5C094FB01
5C094FB02
5C094FB14
5C094FB15
5C094JA08
5C094JA13
5F241AA14
5F241CA05
5F241CA40
5F241CA65
5F241CA74
5F241CB11
5F241CB23
5F241CB27
5F241CB36
5F241FF01
(57)【要約】
【課題】点灯した発光素子から発した光が迷光となる可能性を低減できる表示パネルを提供する。
【解決手段】表示パネル(1)は、発光層(E1)を含む積層された複数の半導体層で構成された島状の積層体(11)と、アノード(A1)と、カソード(K1)とを備えた発光素子(D1)と、発光層(E1・E2)を含む積層された複数の半導体層で構成された島状の積層体(12)と、アノード(A2)と、カソード(K2)とを備えた発光素子(D2)と、発光層(E1~E3)を含む積層された複数の半導体層で構成された島状の積層体(13)と、アノード(A3)と、カソード(K3)とを備えた発光素子(D3)とを含み、複数個の発光素子(D1~D3)それぞれが備えている島状の積層体(11~13)の間には、積層体(11~13)を構成する材料とは異なる材料を含む、可視光領域の光を散乱する散乱体(SCB)が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光層を含む積層された複数の半導体層で構成された島状の積層体と、アノードと、カソードとを備えた発光素子を複数個含み、
前記複数個の発光素子それぞれが備えている前記島状の積層体の間には、前記積層体を構成する材料とは異なる材料を含む、可視光領域の光を散乱する散乱体が設けられている、表示パネル。
【請求項2】
前記複数個の発光素子それぞれが備えている前記島状の積層体の間には、前記積層体の最大高さ部分よりも高さが低い前記散乱体を含む凹部が設けられている、請求項1に記載の表示パネル。
【請求項3】
前記凹部の高さは、前記発光層からの光が出射する面である表示面から最も近い前記半導体層の前記表示面側の表面から前記表示面から最も近い前記発光層の前記表示面側の表面までの厚さに対応する高さ以下で形成されている、請求項2に記載の表示パネル。
【請求項4】
前記発光層からの光が出射する面である表示面を有する基板を含み、
前記凹部の底面は、前記基板の前記表示面とは反対側の面である、請求項2に記載の表示パネル。
【請求項5】
前記発光層からの光が出射する面である表示面を有する基板を含み、
前記凹部の底面は、前記基板の前記表示面とは反対側の面に形成された凹部である、請求項2に記載の表示パネル。
【請求項6】
前記島状の積層体と前記散乱体との間には、絶縁膜が設けられている、請求項1に記載の表示パネル。
【請求項7】
前記絶縁膜は、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸窒化シリコン膜及び酸化アルミニウム膜の何れかを含む、請求項6に記載の表示パネル。
【請求項8】
前記島状の積層体の側壁に垂直な方向に、前記絶縁膜が3nm以上、100nm以下の厚さで形成されている、請求項6に記載の表示パネル。
【請求項9】
前記散乱体の最大長さは、5nm以上、5μm以下である、請求項1から8の何れか1項に記載の表示パネル。
【請求項10】
前記散乱体は、ナノ粒子である、請求項1から8の何れか1項に記載の表示パネル。
【請求項11】
前記散乱体は、コアとシェルとを含むナノ粒子である、請求項10に記載の表示パネル。
【請求項12】
前記散乱体は、無機化合物または有機化合物である、請求項1から8の何れか1項に記載の表示パネル。
【請求項13】
前記散乱体は、絶縁体、半導体、金属及び金属酸化物の何れかである、請求項1から8の何れか1項に記載の表示パネル。
【請求項14】
前記散乱体は、アクリル基、エポキシ基、ウレタン基及びシリコーン基の1つ以上を含む樹脂である、請求項1から8の何れか1項に記載の表示パネル。
【請求項15】
前記散乱体の屈折率は、前記積層体に含まれる少なくとも一つの層の屈折率と異なる、請求項1から8の何れか1項に記載の表示パネル。
【請求項16】
前記散乱体の周囲に可視光領域の光を吸収する光吸収体を有する、請求項1から8の何れか1項に記載の表示パネル。
【請求項17】
前記光吸収体は、有機化合物または無機化合物である、請求項16に記載の表示パネル。
【請求項18】
前記光吸収体は、ピリジン骨格を含む、請求項16に記載の表示パネル。
【請求項19】
前記光吸収体は、変性アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、シアノアクリレート系樹脂、フルオロエチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)及びポリ塩化ビニル(PVC)の中から選択される一つ以上を含む、請求項16に記載の表示パネル。
【請求項20】
前記光吸収体は、アゾ系の染料、キノン系の染料、インジゴ系の染料、ポリメチン系の染料、スチリル系の染料、アゾ系の顔料、キノン系の顔料、インジゴ系の顔料、ポリメチン系の顔料及びスチリル系の顔料の中から選択される一つ以上を含む、請求項16に記載の表示パネル。
【請求項21】
前記光吸収体は、炭素材料、金属硫化物及び前記可視光領域において吸収を有する半導体材料から選択される一つ以上を含む、請求項16に記載の表示パネル。
【請求項22】
前記複数個の発光素子は、第1色を発光する第1発光素子と、前記第1色とは異なる第2色を発光する第2発光素子と、前記第1色及び前記第2色とは異なる第3色を発光する第3発光素子とを含み、
前記第1発光素子は、前記島状の積層体として、前記第1色を発光する第1発光層を含む第1積層体を備えており、
前記第2発光素子は、前記島状の積層体として、前記第1積層体と、前記発光層からの光が出射する面である表示面から前記第1積層体よりも遠くに設けられた前記第2色を発光する第2発光層を含む第2積層体とを備えており、
前記第3発光素子は、前記島状の積層体として、前記第1積層体と、前記第2積層体と、前記表示面から前記第2積層体よりも遠くに設けられた前記第3色を発光する第3発光層を含む第3積層体とを備えており、
前記第3発光素子が備えている前記島状の積層体の最大高さ部分よりも高さが低い前記散乱体を含む凹部は、前記発光層からの光が出射する面である表示面から最も近い半導体層の前記表示面側の表面から前記第3発光層の前記表示面側の表面までの厚さに対応する高さ以下で形成されている、請求項1に記載の表示パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光素子としてマイクロLED(Light Emitting Diode)を複数個備えた表示パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロLEDを複数個備えた表示パネルは、例えば、AR(Augmented Reality)、VR(Virtual Reality)及び小型から大型の表示装置の分野など幅広い分野で用いることができ、高い注目を集めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2023-1062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、隣接する発光素子間の一部に設けたドーム状の樹脂層と、前記ドーム状の樹脂層の形状に沿って設けられた各発光素子に共通な一続きの層である有機層(例えば、電子注入層)の一部及び共通反射電極層の一部とを備えた可視光を吸収または反射する構造体を含む有機EL表示装置について記載されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されている有機EL表示装置の場合、各発光素子に共通な一続きの層である有機層(例えば、電子注入層)が備えられているため、点灯した発光素子を含むサブ画素から発した光が各発光素子に共通な一続きの層である有機層(例えば、電子注入層)を伝搬し迷光となり、消灯した発光素子を含む隣接サブ画素を疑似的に発光しているように視認させる(疑灯)問題が生じてしまう。
【0006】
また、マイクロLEDを複数個備えた表示パネルの分野においては、各発光素子に共通な一続きの層である共通反射電極層は設けられないため、特許文献1に記載の構造体を形成できないという問題がある。
【0007】
本開示の一態様は、点灯した発光素子から発した光が迷光となる可能性を低減できる表示パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の表示パネルは、前記の課題を解決するために、
発光層を含む積層された複数の半導体層で構成された島状の積層体と、アノードと、カソードとを備えた発光素子を複数個含み、
前記複数個の発光素子それぞれが備えている前記島状の積層体の間には、前記積層体を構成する材料とは異なる材料を含む、可視光領域の光を散乱する散乱体が設けられている。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、点灯した発光素子から発した光が迷光となる可能性を低減できる表示パネルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態1の表示パネルの概略的な構成を示す断面図である。
図2図1に示す表示パネルの表示面の平面図である。
図3図1に示す表示パネルの製造方法を説明するための図である。
図4図3に示すS20工程、S22工程及びS24工程を説明するための図である。
図5図3に示すS26工程を説明するための図である。
図6図3に示すS28工程を説明するための図である。
図7図3に示すS30工程を説明するための図である。
図8図3に示すS30工程の後であって、図3に示すS32工程を行う前の表示パネルの状態をアノード及びカソードが形成されている側から見た場合の平面図である。
図9】比較例1の表示パネルの概略的な構成を示す断面図である。
図10】実施形態1の表示パネル及び比較例1の表示パネルにおいて、迷光を発生させる要因の一つを説明するための図である。
図11】比較例1の表示パネルにおいて、図10に示す要因で発生した迷光によって、消灯した発光素子を含む隣接サブ画素が疑似的に発光しているように視認される場合を示す図である。
図12】実施形態1の表示パネル及び比較例1の表示パネルにおいて、迷光を発生させる要因の他の一つを説明するための図である。
図13】比較例1の表示パネルにおいて、図12に示す要因で発生した迷光によって、消灯した発光素子を含む隣接サブ画素が疑似的に発光しているように視認される場合を示す図である。
図14】比較例1の表示パネルにおける迷光の分布を示す図である。
図15】実施形態1の表示パネルにおける迷光の分布と、実施形態1の表示パネルにおいて、点灯した発光素子から発した光が迷光となることを抑制できる理由とを説明するための図である。
図16】実施形態1の他の表示パネルの概略的な構成を示す断面図である。
図17】実施形態1のさらに他の表示パネルの概略的な構成を示す断面図である。
図18】散乱体によるレイリー散乱を説明するための図である。
図19】散乱体によるミー散乱を説明するための図である。
図20図1に示す表示パネルに備えられた散乱体よりも大きいサイズの散乱体を用いている点以外は、図1に示す表示パネルと同じである実施形態2の表示パネルをモデルとした光学的な計算によって求めた迷光の分布を示す図である。
図21】実施形態3の表示パネルの概略的な構成を示す断面図である。
図22】実施形態3の表示パネルにおける迷光の分布を示す図である。
図23】実施形態4の表示パネルの概略的な構成を示す断面図である。
図24】比較例2の表示パネルの概略的な構成を示す断面図である。
図25図24に示す比較例2の表示パネルをモデルとした光学的な計算によって求めた迷光の分布を示す図である。
図26図23に示す実施形態4の表示パネルをモデルとした光学的な計算によって求めた迷光の分布を示す図である。
図27】実施形態5の表示パネルの概略的な構成を示す断面図である。
図28】比較例3の表示パネルの概略的な構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の実施の形態について、図1から図28に基づいて説明すれば、次の通りである。以下、説明の便宜上、特定の実施形態にて説明した構成と同一の機能を有する構成については、同一の符号を付記し、その説明を省略する場合がある。
【0012】
〔実施形態1〕
図1は、実施形態1の表示パネル1の概略的な構成を示す断面図である。なお、図1においては、アノードA1~A3、カソードK1~K3および絶縁膜PFの図示を省略している。
【0013】
図1に示すように、表示パネル1は、発光層E1を含む積層された複数の半導体層で構成された島状の積層体11と、アノードA1と、カソードK1とを備えた発光素子D1と、発光層E1・E2を含む積層された複数の半導体層で構成された島状の積層体12と、アノードA2と、カソードK2とを備えた発光素子D2と、発光層E1~E3を含む積層された複数の半導体層で構成された島状の積層体13と、アノードA3と、カソードK3とを備えた発光素子D3とを含み、複数個の発光素子D1~D3それぞれが備えている島状の積層体11~13の間には、積層体11~13を構成する材料とは異なる材料を含む、可視光領域の光を散乱する散乱体SCBが設けられている。
【0014】
本実施形態においては、発光素子(第1発光素子)D1は、発光層E1である青色発光層を含む積層された複数の半導体層で構成された島状の積層体11を備えているとともに、発光層E1からの光L1が青色光である青色発光素子であり、発光素子(第2発光素子)D2は、発光層E2である緑色発光層と発光させない発光層E1とを含む積層された複数の半導体層で構成された島状の積層体12を備えているとともに、発光層E2からの光L2が緑色光である緑色発光素子であり、発光素子(第3発光素子)D3は、発光層E3である赤色発光層と発光させない発光層E1および発光層E2とを含む積層された複数の半導体層で構成された島状の積層体13を備えているとともに、発光層E3からの光L3が赤色光である赤色発光素子である場合を一例に挙げて説明するが、これに限定されることはない。
【0015】
図1に示すように、複数個の発光素子D1~D3それぞれが備えている島状の積層体11~13の間には、積層体11~13それぞれの最大高さ部分よりも高さが低い散乱体SCBを含む凹部SCが設けられている。本実施形態においては、散乱体SCBと樹脂材料RSとの混合材料を用いて、散乱体SCBを含む凹部SCを形成した場合を一例に挙げて説明するが、これに限定されることはなく、散乱体SCBを含む凹部SCを散乱体SCBのみで形成してもよい。なお、本実施形態においては、樹脂材料RSとして可視光領域における透過率が高い透明樹脂材料を用いた。
【0016】
図1に示すように、表示パネル1における凹部SCの高さは、発光層E1~E3からの光が出射する面である表示面DMから最も近い半導体層の表示面DM側の表面から表示面DMから最も近い発光層E1の表示面DM側の表面までの厚さに対応する高さ以下で形成してもよい。本実施形態においては、凹部SCの高さを、成長用基板SKから島状の積層体11~13に含まれる表示面DMから最も近い発光層E1の表示面DM側の表面までの高さで形成したが、これに限定されることはない。なお、図示してないが、後述するように、成長用基板SK(例えば、C面サファイア基板)を除去した場合には、成長用基板SKを除去する前において成長用基板SKが有する表示面DMから最も近い半導体層の表面が新たな表示面となる。
【0017】
本実施形態においては、図1に示すように、表示パネル1において、凹部SCの底面が、成長用基板SKの表示面DMとは反対側の面である場合を一例に挙げて説明するが、これに限定されることはなく、図示してないが、凹部SCの底面は、成長用基板SKの表示面DMとは反対側の面に形成された凹部であってもよい。
【0018】
図2は、図1に示す表示パネル1の表示面SMの平面図である。
【0019】
本実施形態においては、図2に示すように、例えば、1画素PIは、赤色サブ画素RSUBと、緑色サブ画素GSUBと、青色サブ画素BSUBとを含み、青色サブ画素BSUBは青色発光素子である発光素子(第1発光素子)D1を含み、緑色サブ画素GSUBは緑色発光素子である発光素子(第2発光素子)D2を含み、赤色サブ画素RSUBは赤色発光素子である発光素子(第3発光素子)D3を含む場合を一例に挙げて説明するが、これに限定されることはなく、例えば、1画素PIは、赤色サブ画素RSUB、緑色サブ画素GSUBおよび青色サブ画素BSUB以外の他の色のサブ画素をさらに含んでいてもよい。
【0020】
図1に示す発光素子D1~D3は、素子分離されているので、図2に示すサブ画素単位で発光を制御することができる。本実施形態においては、一つの成長用基板SK(例えば、C面サファイア基板)上に異なる色で発光する複数個の発光素子D1~D3が設けられたモノリシック構造のウエハを複数個製造し、複数個のウエハをウエハ単位で、一つの駆動基板DK上に整列させるように、駆動基板DKに導電性接着層JCを介して接合して製造した表示パネル1を一例に挙げて説明するが、これに限定されることはない。例えば、後述する実施形態4の表示パネル2のように、一つの成長用基板SK上に同じ色で発光する複数個の発光素子D1’が設けられたモノリシック構造のウエハを複数個製造し、複数個のウエハをウエハ単位で、一つの駆動基板DK上に整列させるように、駆動基板DKに導電性接着層JCを介して接合して製造してもよい。さらに、例えば、後述する実施形態5の表示パネル3のように、青色発光素子である発光素子D1’を含むチップと、緑色発光素子である発光素子D2’を含むチップと、赤色発光素子である発光素子D3’を含むチップとを複数個製造し、チップ単位で、一つの駆動基板DK上に整列させるように、駆動基板DKに導電性接着層JCを介して接合して製造してもよい。なお、本実施形態で説明する表示パネル1・1a・1bと、実施形態5で説明する表示パネル3は、異なる色で発光する複数個の発光素子を備えた表示パネルであるため、一つの表示パネルを用いることで、例えば、AR(Augmented Reality)、VR(Virtual Reality)および小型から大型のカラー表示装置を実現できる。一方、実施形態4で説明する表示パネル2は、一つの色で発光する複数個の発光素子を備えた単色表示パネルであるため、例えば、赤色単色表示パネルと、緑色単色表示パネルと、青色単色表示パネルとの三つの表示パネルと、ミラーなどの光学系部材を用いることで、例えば、AR(Augmented Reality)、VR(Virtual Reality)および小型から大型のカラー表示装置を実現できる。
【0021】
以下、図3から図7に基づき、本実施形態の表示パネル1の製造工程について説明する。
【0022】
図3は、図1に示す表示パネル1の製造方法を説明するための図である。図4は、図3に示すS20工程、S22工程およびS24工程を説明するための図である。図5は、図3に示すS26工程を説明するための図である。図6は、図3に示すS28工程を説明するための図である。図7は、図3に示すS30工程を説明するための図である。
【0023】
「成長用基板上に半導体結晶を成長させる」図3に示すS20工程では、図4に示すように、成長用基板SK(例えば、C面サファイア基板)上に半導体結晶SLを、MOCVD装置等を用いてエピタキシャル成長させる。半導体結晶SLは、例えば、窒化物半導体結晶であってよい。窒化物半導体としては、GaN系半導体のほか、AlN(窒化アルミニウム)およびInN(窒化インジウム)等を挙げることができる。
【0024】
図4に示すように、半導体結晶SLを形成するS20工程は、バッファ層BA、下地層U1、カソードコンタクト層C1、発光層E1、中間層G1、p型層H1、トンネルジャンクション層T1、およびアノードコンタクト層F1をこの順に形成する第1工程と、下地層U2、カソードコンタクト層C2、発光層E2、中間層G2、p型層H2、トンネルジャンクション層T2、およびアノードコンタクト層F2をこの順に形成する第2工程と、下地層U3、カソードコンタクト層C3、発光層E3、中間層G3、p型層H3、トンネルジャンクション層T3、およびアノードコンタクト層F3をこの順に形成する第3工程とを含む。上述した第1工程から第3工程のそれぞれは、例えば、MOCVD装置内においてシーケンシャルに行うことができる。
【0025】
バッファ層BAは、低温(例えば、600℃以下)形成の窒化ガリウム結晶(例えば、厚さ40nm)であってよい。下地層U1・U2・U3は、ノンドープの窒化ガリウム結晶(例えば、厚さ2μm)であってよい。カソードコンタクト層C1・C2・C3は、n型の窒化ガリウム結晶(例えば、厚さ2μm)であってよい。発光層E1・E2・E3は、MQW(多重量子井戸)構造の活性層であってよい。例えば、波長450nm程度の青色光を発する発光層E1として、厚さ50nmであってIn(インジウム)の組成比が20%の窒化インジウムガリウム(InとGaの原子比が1:4の混晶)を用いることができる。例えば、波長550nm程度の緑色光を発する発光層E2として、Inの組成比が25%の窒化インジウムガリウム(混晶)を用いることができる。例えば、波長630nm程度の赤色光を発する発光層E3として、Inの組成比が30%の窒化インジウムガリウム(混晶)を用いることができる。中間層G1・G2・G3は、p型の窒化アルミニウムガリウム結晶(例えば、厚さ20nm)であってよい。p型層H1・H2・H3は、p型の窒化ガリウム結晶(例えば、厚さ120nm)であってよい。トンネルジャンクション層T1・T2・T3は、ノンドープ型の窒化ガリウム結晶(例えば、厚さ25nm)であってよい。アノードコンタクト層F1・F2・F3は、n型の窒化ガリウム結晶(例えば、厚さ400nm)であってよい。
【0026】
「半導体結晶をエッチングによってパターニングし、アノードコンタクト層およびカソードコンタクト層を露出させる」図3に示すS22工程では、図4に示すように、半導体結晶SLをドライエッチングによってパターニングし、カソードコンタクト層C1・C2・C3およびアノードコンタクト層F1・F2・F3を露出させる。この工程では、エッチングマスクとして、レジストあるいはリフトオフ法でパターニングした無機膜(酸化シリコン膜、ニッケル膜等)を用いることができる。ドライエッチングには、塩素またはフッ素等のハロゲンを用いた反応性イオンエッチング(RIE)法を適用することができる。なお、エッチングマスクは、リムーバー、酸性溶液等によって除去する。
【0027】
「アノードコンタクト層上にアノードを形成すると同時に、カソードコンタクト層上にカソードを形成する」図3に示すS24工程では、図4に示すように、アノードコンタクト層F1・F2・F3それぞれ上にアノードA1・A2・A3を形成すると同時に、カソードコンタクト層C1・C2・C3それぞれ上にカソードK1・K2・K3を形成する。具体的には、レジストをマスクとして蒸着した電極材(例えば、アルミニウムとチタンの積層膜)をリフトオフ法でパターニングした。
【0028】
「半導体結晶をエッチングによってパターニングし、積層体を形成する」図3に示すS26工程では、図5に示すように、半導体結晶SLをドライエッチングによってパターニングし、島状の積層体11、島状の積層体12および島状の積層体13を形成した。ここでは、素子分離する領域以外をレジストで保護し、例えば、ハロゲン系RIE法によって、素子間に成長用基板SKが露出するように、半導体結晶SLのうち素子間の部分を完全に除去した。成長用基板SK自体をエッチングして、成長用基板SKに凹凸を形成してもよい。本実施形態においては、良好な電気的な素子分離および光学的な素子分離のために、成長用基板SKの表面が露出するようにエッチングを行い、成長用基板SK上に島状の積層体11、島状の積層体12および島状の積層体13を形成した。なお、島状の積層体11、島状の積層体12および島状の積層体13それぞれは、側壁Wを有する。
【0029】
「積層体それぞれの側壁を覆う絶縁膜を形成する」図3に示すS28工程では、図6に示すように、島状の積層体11、島状の積層体12および島状の積層体13それぞれが有する側壁Wを覆う絶縁膜PFを形成し、発光素子D1・D2・D3を得た。ここでは、アノードA1・A2・A3およびカソードK1・K2・K3を覆うマスクをフォトリソグラフィ法等により形成した後に電子ビーム蒸着によって側壁Wを覆う酸化シリコンを形成し、絶縁膜PFとした。絶縁膜PFは、素子間の短絡防止および酸化防止の機能がある。本実施形態においては、絶縁膜PFが酸化シリコン膜である場合を一例に挙げて説明したが、これに限定されることはなく、絶縁膜PFは、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸窒化シリコン膜および酸化アルミニウム膜の何れかを含む膜であってもよい。また、島状の積層体11・12・13の側壁Wに垂直な方向に、絶縁膜PFは、3nm以上、100nm以下の厚さで形成されていることが好ましい。本実施形態のように、島状の積層体11・12・13それぞれの側壁Wを覆う絶縁膜PFが形成されている場合、後述する散乱体SCB、樹脂材料RSおよび光吸収体LAそれぞれの材料の選択幅が広くなる。すなわち、絶縁膜PFが形成されている場合には、散乱体SCB、樹脂材料RSおよび光吸収体LAそれぞれの材料として導電性材料を選択してもよい。なお、散乱体SCB、樹脂材料RSおよび光吸収体LAそれぞれの材料として絶縁性の高い材料を選択する場合には、上述した図3に示すS28工程は省いてもよい。
【0030】
「積層体の間に光を散乱する散乱体を形成する」図3に示すS30工程では、図1および図7に示すように、成長用基板SKからの凹部SCの高さは、例えば、成長用基板SKから島状の積層体11~13に含まれる表示面DMから最も近い発光層E1の表示面DM側の表面までの高さであってもよいが、これに限定されることはない。
【0031】
図16は、実施形態1の他の表示パネル1aの概略的な構成を示す断面図である。図17は、実施形態1のさらに他の表示パネル1bの概略的な構成を示す断面図である。図16に示す表示パネル1aは、発光素子D1と、発光素子D2と、発光素子D3とを含む。発光素子D1は、島状の積層体11として、発光層E1を含む第1積層体(バッファ層BA、下地層U1、カソードコンタクト層C1、発光層E1、中間層G1、p型層H1、トンネルジャンクション層T1、およびアノードコンタクト層F1)を備えている。発光素子D2は、島状の積層体12として、前記第1積層体と、表示面DMから前記第1積層体よりも遠くに設けられた発光層E2を含む第2積層体(下地層U2、カソードコンタクト層C2、発光層E2、中間層G2、p型層H2、トンネルジャンクション層T2、およびアノードコンタクト層F2)とを備えている。発光素子D3は、島状の積層体13として、前記第1積層体と、前記第2積層体と、表示面DMから前記第2積層体よりも遠くに設けられた発光層E3を含む第3積層体(下地層U3、カソードコンタクト層C3、発光層E3、中間層G3、p型層H3、トンネルジャンクション層T3、およびアノードコンタクト層F3)とを備えている。そして、発光素子D3が備えている島状の積層体13の最大高さ部分よりも高さが低い散乱体SCBを含む凹部SCは、発光層E1~E3からの光が出射する面である表示面DMから最も近い半導体層であるバッファ層BAの表示面DM側の表面から発光層E3の表示面DM側の表面までの厚さに対応する高さ以下で形成してもよく、表示パネル1aにおいては、散乱体SCBを含む凹部SCは、表示面DMから最も近い半導体層であるバッファ層BAの表示面DM側の表面から発光層E3の表示面DM側の表面までの厚さに対応する高さで形成されている。これに限定されることはなく、図17に示す表示パネル1bのように、複数個の発光素子D1・D2・D3それぞれが備えている島状の積層体11・12・13の間を完全に埋めるように、散乱体SCBを含む凹部SCが設けられていてもよい。
【0032】
本実施形態においては、散乱体SCBとして、平均粒径が450nmである絶縁性のSiO粒子を用いたが、これに限定されることはない。本実施形態においては、上述したように、絶縁性のSiO粒子を樹脂材料RSである透明樹脂材料と混合して用いたが、例えば、図17に示す表示パネル1bのように、島状の積層体11・12・13の間を完全に埋めるように、散乱体SCBを含む凹部SCを設ける場合には、絶縁性のSiO粒子のみを用いて散乱体SCBを含む凹部SCを形成してもよい。
【0033】
散乱体SCBの最大長さは、5nm以上、5μm以下であってもよい。散乱体SCBは、ナノ粒子であってもよい。散乱体SCBは、コアとシェルとを含むナノ粒子であってもよい。散乱体SCBは、無機化合物または有機化合物であってもよい。散乱体SCBは、絶縁体、半導体、金属及び金属酸化物の何れかであってもよい。散乱体SCBは、アクリル基、エポキシ基、ウレタン基及びシリコーン基の1つ以上を含む樹脂であってもよい。また、散乱体SCBの屈折率は、積層体11~13に含まれる少なくとも一つの層の屈折率と異なってもよい。
【0034】
「発光素子(第1~第3発光素子)を駆動基板に実装する」図3に示すS32工程では、図1に示すように、発光素子D1・D2・D3を、導電性接着層JCを介して、駆動回路を含む駆動基板DKに実装し、表示パネル1を得る。導電性接着層JCには、半田あるいは異方導電性接着材を用いることができる。図1および図7に示す表示パネル1においては、アノードA1・A2・A3の正孔を、n型半導体層であるアノードコンタクト層F1・F2・F3およびトンネルジャンクション層T1・T2・T3を介してp型層H1・H2・H3にトンネル注入する構成である。このような構成であるため、アノードA1・A2・A3およびカソードK1・K2・K3を同材料を用いて同時形成することができ、アノードおよびカソードを異なるプロセス、異なる材料で形成する一般的な手法と比較して工程の簡略化が図れる。また、ドライエッチングおよび機械研磨によって高抵抗化しやすいp型(半導体)層を露出させなくて済み、発光素子の電気特性が安定化するというメリットもある。なお、図3に示すS32工程後に、レーザリフトオフ法等により成長用基板SKを、島状の積層体11、島状の積層体12、島状の積層体13、絶縁膜PFおよび散乱体SCBを含む凹部SCから剥離する工程を行い、成長用基板SKを除去してもよい。
【0035】
図8は、図3に示すS30工程の後であって、図3に示すS32工程を行う前のウエハの状態をアノードおよびカソードが形成されている側から見た場合の平面図である。
【0036】
本実施形態においては、図8に示すように、発光素子D1が備えている島状の積層体11、発光素子D2が備えている島状の積層体12および発光素子D3が備えている島状の積層体13それぞれの平面視におけるサイズが20μm×120μmで、積層体11・12・13それぞれは、10μm離れている場合を一例に挙げて説明するが、これに限定されることはない。
【0037】
図9は、比較例1の表示パネル51の概略的な構成を示す断面図である。図10は、実施形態1の表示パネル1および比較例1の表示パネル51において、迷光を発生させる要因の一つを説明するための図である。図11は、比較例1の表示パネル51において、図10に示す要因で発生した迷光によって、消灯した発光素子を含む隣接サブ画素が疑似的に発光しているように視認される場合を示す図である。図12は、実施形態1の表示パネル1および比較例1の表示パネル51において、迷光を発生させる要因の他の一つを説明するための図である。図13は、比較例1の表示パネル51において、図12に示す要因で発生した迷光によって、消灯した発光素子を含む隣接サブ画素が疑似的に発光しているように視認される場合を示す図である。図14は、比較例1の表示パネル51における迷光の分布を示す図である。図15は、実施形態1の表示パネル1における迷光の分布と、実施形態1の表示パネル1において、点灯した発光素子から発した光が迷光となることを抑制できる理由とを説明するための図である。
【0038】
図9に示す比較例1の表示パネル51は、散乱体SCBを備えていない点のみで、実施形態1の表示パネル1とは異なる。図10および図11に示すように、実施形態1の表示パネル1および比較例1の表示パネル51においては、発光層E1・E2・E3の端面から発した光のうち、隣接サブ画素に向かって横方向に伝搬する光成分が迷光を発生させる要因の一つとなる場合がある。図10に示すように、発光層E1・E2・E3の端面から発した光は、出射角θが0°または0°近傍(±5°未満)の光成分と、出射角θが±5°よりも大きい光成分とに分けることができる。図11に示すように、出射角θが0°または0°近傍(±5°未満)の光成分は、隣接サブ画素の側壁に垂直入射する成分である。この成分は、素子/大気、大気/素子界面でほとんど反射されず、比較的遠距離まで減衰しつつ伝搬し、明確なピークを持たないブロードな迷光となる。減衰は素子を構成する半導体の、特に発光層とp型層によるものである。一方、出射角θが±5°よりも大きい光成分の一部は素子/大気、大気/素子界面で反射され、残りは透過しつつ伝搬する。反射した光は、成長用基板SK側または駆動基板DK側に向かうが、駆動基板DKに向かう成分は駆動基板DKで吸収されるため、ほぼ迷光とならない。一方で、成長用基板SK側に向かう成分は素子の側壁の位置で周期的にピークを形成する迷光となる。図12および図13に示すように、実施形態1の表示パネル1および比較例1の表示パネル51においては、発光層E1・E2・E3の表側(駆動基板DK側)および裏側(成長用基板SK側)方向に発する光の内、出射角θの絶対値が0°よりも大きい、概ね、出射角θの絶対値が5°よりも大きい光成分は、表側(駆動基板DK側)の電極で反射され入射角と同じ出射角で素子外へ向かい、素子の側壁付近で周期的なピークを持つ迷光となる。一方、出射角θが0°、概ね、出射角θの絶対値が5°未満の光成分は、迷光とはならない。図14に示すように、発光素子D1のみを点灯させた場合の比較例1の表示パネル51においては、発光素子D1・D2・D3の配列と間隔に対応した周期的な迷光の分布を持つ。表示パネルにおいて、迷光は、コントラストの低下、虚像、疑灯等、画質低下の要因となる。
【0039】
そこで、本実施形態の表示パネル1においては、上述した散乱体SCBを設けることで、点灯した発光素子から発した光が迷光となることを抑制した。散乱体SCBに入射した光成分は、散乱体SCBにより多重散乱されるため隣接サブ画素に伝搬する光は大きく減衰する。また、散乱体SCBによる散乱は全方位の入射光に均等に作用するため、ピーク状の迷光とブロードな迷光を同時に抑制することができる。
【0040】
図18は、散乱体によるレイリー散乱を説明するための図である。図19は、散乱体によるミー散乱を説明するための図である。
【0041】
平均粒径が5nmである散乱体SCBを用いれば、さらに迷光を抑制することができる。これは、散乱体SCBのサイズが発光波長よりも小さい場合に生じる図18に示すレイリー散乱による効果を得るためであり、散乱体SCBのサイズ≧発光波長の場合に生じる図19に示すミー散乱に比べてさらに強く散乱させることができるからである。また、図19に示すように、ミー散乱は前方へ強い散乱を起こすのに対し、図18に示すようにレイリー散乱は等方的な散乱を起こすため、直進する入射光をより効果的に減衰させる。また、図18に示すレイリー散乱は波長の-4乗に比例して散乱が強くなるため赤色、緑色および青色の順に迷光抑制効果が強くなる。上述した効果に加えて、発光波長よりも小さいnmオーダー径の散乱体SCBを用いることで、隣接サブ画素の間隔を縮小しても散乱体SCBを問題なく充填することができるので、表示パネルを高精細化できる。例えば、粒径5nmの散乱体SCBであれば、幅20nm程度の島状の積層体11~13の間にも充填することができる。
【0042】
〔実施形態2〕
図20は、図1に示す表示パネル1に備えられた散乱体SCBよりも大きいサイズの散乱体を用いている点以外は、図1に示す表示パネル1と同じである実施形態2の表示パネルをモデルとした光学的な計算によって求めた迷光の分布を示す図である。
【0043】
本実施形態の表示パネルにおいては、平均粒径が600nmである散乱体SCBを用いた点以外は、図1に示す表示パネル1と同じである。本実施形態の表示パネルの場合、散乱体SCBの平均粒径が発光波長より大きいため、図18に示すレイリー散乱の効果は弱く、図19に示すミー散乱の効果は大きい。したがって、図20に示すように、スパイク状の迷光が、最近接サブ画素間に現れている。このことから、発光波長に近い平均粒径の散乱体SCBを使うことで、より良い迷光抑制効果を得られることがわかる。よって、赤色、緑色および青色に対しては、それぞれ630nm、550nmおよび450nmの平均粒径を持つ散乱体SCBを用いてもよい。また、赤色発光素子、緑色発光素子、および青色発光素子を集積した表示パネルでは、これら3つのサイズの散乱体SCBを混合してパネル全域の素子間に充填してもよい。
【0044】
〔実施形態3〕
図21は、実施形態3の表示パネル1cの概略的な構成を示す断面図である。図22は、実施形態3の表示パネル1cにおける迷光の分布を示す図である。
【0045】
図21に示すように、散乱体SCBを含む凹部SC’において、散乱体SCBの周囲に可視光領域の光を吸収する光吸収体LAを有する。
【0046】
光吸収体LAとしては、有機化合物または無機化合物を用いることができ、例えば、ピリジン骨格を含む分子構造のものを用いてもよい。本実施形態においては、光吸収体LAとして、絶縁性の化合物である、例えば、ブラックダイと呼ばれる黒色染料(商品名:N749、物質名:Ruthenium 620, Tris(N,N,N-tributyl-1-butanaminium)[[2,2′′6′,2′′-terpyridine]-4,4′,4′′-tricarboxylato(3-)-N1,N1′,N1′′]tris(thiocyanato-N)hydrogen ruthenate(4-))を用いた。上記ブラックダイの可視光領域におけるモル吸光度は3×10-3~7×10-3(1/M・cm)であり、上記ブラックダイの分子構造は、3個のピリジン骨格を含み、窒素および複数の官能基が結合した構造である。なお、本実施形態のように、光吸収体LAとして、有機化合物を用いる場合、光吸収体LAによって、アノードA1・A2・A3やカソードK1・K2・K3が工程中に覆われても、アノードA1・A2・A3やカソードK1・K2・K3部分に開口を有するメタルマスクを用いて素子表面を保護した状態で、アッシングを行うことで、アノードA1・A2・A3やカソードK1・K2・K3上の光吸収体LAを酸化除去することができる。
【0047】
光吸収体LAは、変性アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、シアノアクリレート系樹脂、フルオロエチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)およびポリ塩化ビニル(PVC)の中から選択される一つ以上を含んでいてもよい。また、光吸収体LAは、アゾ系の染料、キノン系の染料、インジゴ系の染料、ポリメチン系の染料、スチリル系の染料、アゾ系の顔料、キノン系の顔料、インジゴ系の顔料、ポリメチン系の顔料およびスチリル系の顔料の中から選択される一つ以上を含んでいてもよい。さらに、光吸収体LAは、炭素材料、金属硫化物および可視光領域において吸収を有する半導体材料から選択される一つ以上を含んでいてもよい。
【0048】
図22に示すように、表示パネル1cの場合、散乱体SCBとともに光吸収体LAを備えているので、散乱体SCB単独の構成に比べて、より強く迷光を抑制することができる。散乱された光は、多重散乱しながら全方位に伝搬するが、その際、光吸収体LAにより強く吸収を受けるため。隣接サブ画素の方向に直進する光は急激に減衰する。
【0049】
なお、散乱体SCBを含む凹部SC’は、散乱体SCBを例えば、ブラックダイのような液体染料または液体顔料に混合して塗布することで光吸収体LAと散乱体SCBとをともに形成することができる。
【0050】
〔実施形態4〕
図23は、実施形態4の表示パネル2の概略的な構成を示す断面図である。図24は、比較例2の表示パネル52の概略的な構成を示す断面図である。図25は、図24に示す比較例2の表示パネル52をモデルとした光学的な計算によって求めた迷光の分布を示す図である。図26は、図23に示す実施形態4の表示パネル2をモデルとした光学的な計算によって求めた迷光の分布を示す図である。
【0051】
図23に示す実施形態2の表示パネル2および図24に示す比較例2の表示パネル52のそれぞれは、一つの色で発光する複数個の発光素子を備えた単色表示パネルである点において、上述した実施形態1で説明した実施形態1の表示パネル1および比較例1の表示パネル51とは異なる。図23に示す実施形態2の表示パネル2および図24に示す比較例2の表示パネル52のそれぞれは、青色単色表示パネルである。なお、図23に示す実施形態2の表示パネル2は散乱体SCBを備えている点のみで、図24に示す比較例2の表示パネル52とは異なる。
【0052】
図25および図26に示すように、図2に示すH2方向における迷光の分布の何れにおいても、図26に示す実施形態2の表示パネル2の場合、散乱体SCBを設けたことにより、周期的なスパイク状の迷光と、ブロードな迷光の両方が低減していることが分かる。また、散乱体SCBを備えていない図25に示す比較例2の表示パネル52と比較すると、図26に示す実施形態2の表示パネル2の場合、迷光の強度が少なくとも1/10に低減できていることを確認できる。
【0053】
なお、図26に示す実施形態2の表示パネル2においては、複数個の発光素子D1’それぞれが備えている島状の積層体11’の間を完全に埋めるように、散乱体SCBが充填されている場合を一例に挙げて説明したが、これに限定されることはなく、散乱体SCBは、例えば、発光層E1からの光が出射する面である表示面DMから最も近い半導体層である下地層U1の表示面DM側の表面から表示面DMから最も近い発光層E1の表示面DM側の表面までの厚さに対応する高さ以下で形成してもよく、散乱体SCBを、下地層U1の表示面DM側の表面から発光層E1の表示面DM側の表面までの厚さに対応する高さで形成してもよい。
【0054】
〔実施形態5〕
図27は、実施形態5の表示パネル3の概略的な構成を示す断面図である。図28は、比較例3の表示パネル53の概略的な構成を示す断面図である。
【0055】
図27に示す実施形態3の表示パネル3および図28に示す比較例3の表示パネル53のそれぞれは、青色発光素子である発光素子D1’を含むチップと、緑色発光素子である発光素子D2’を含むチップと、赤色発光素子である発光素子D3’を含むチップとを複数個製造し、チップ単位で、一つの駆動基板DK上に整列させるように、駆動基板DKに導電性接着層JCを介して接合して製造している点において、実施形態4において上述した表示パネル2および比較例2の表示パネル52とは異なる。なお、図27に示す実施形態3の表示パネル3は散乱体SCBを備えている点のみで、図28に示す比較例3の表示パネル53とは異なる。
【0056】
図示してないが、図2に示すH2方向における迷光の分布においても、図27に示す実施形態3の表示パネル3の場合、散乱体SCBを設けたことにより、周期的なスパイク状の迷光と、ブロードな迷光の両方を低減できる。また、散乱体SCBを備えていない図28に示す比較例3の表示パネル53と比較すると、図27に示す実施形態3の表示パネル3の場合、迷光の強度が少なくとも1/10に低減できる。
【0057】
なお、図27に示す実施形態3の表示パネル3の製造工程の場合、図3に示すS26工程で、複数の発光素子D1’・D2’・D3’それぞれは、個別にチップ化されるため、図3に示すS30工程を行う前に、チップ化された複数の発光素子D1’・D2’・D3’それぞれを駆動基板DKに実装する図3に示すS32工程を行う必要がある。なお、図3に示すS28工程は省いている。そして、図3に示すS30工程においては、上述したS32工程において生じる成長用基板SK間の隙間GPを利用して、散乱体SCBを島状の積層体の間に充填することができる。
【0058】
〔まとめ〕
本開示の態様1に係る表示パネルは、発光層を含む積層された複数の半導体層で構成された島状の積層体と、アノードと、カソードとを備えた発光素子を複数個含み、前記複数個の発光素子それぞれが備えている前記島状の積層体の間には、前記積層体を構成する材料とは異なる材料を含む、可視光領域の光を散乱する散乱体が設けられている。
【0059】
本開示の態様2に係る表示パネルは、態様1に係る表示パネルであり、前記複数個の発光素子それぞれが備えている前記島状の積層体の間には、前記積層体の最大高さ部分よりも高さが低い前記散乱体を含む凹部が設けられていてもよい。
【0060】
本開示の態様3に係る表示パネルは、態様2に係る表示パネルであり、前記凹部の高さは、前記発光層からの光が出射する面である表示面から最も近い前記半導体層の前記表示面側の表面から前記表示面から最も近い前記発光層の前記表示面側の表面までの厚さに対応する高さ以下で形成されていてもよい。
【0061】
本開示の態様4に係る表示パネルは、態様2に係る表示パネルであり、前記発光層からの光が出射する面である表示面を有する基板を含み、前記凹部の底面は、前記基板の前記表示面とは反対側の面であってもよい。
【0062】
本開示の態様5に係る表示パネルは、態様2に係る表示パネルであり、前記発光層からの光が出射する面である表示面を有する基板を含み、前記凹部の底面は、前記基板の前記表示面とは反対側の面に形成された凹部であってもよい。
【0063】
本開示の態様6に係る表示パネルは、態様1~5の何れかに係る表示パネルであり、前記島状の積層体と前記散乱体との間には、絶縁膜が設けられていてもよい。
【0064】
本開示の態様7に係る表示パネルは、態様6に係る表示パネルであり、前記絶縁膜は、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸窒化シリコン膜及び酸化アルミニウム膜の何れかを含んでいてもよい。
【0065】
本開示の態様8に係る表示パネルは、態様6に係る表示パネルであり、前記島状の積層体の側壁に垂直な方向に、前記絶縁膜が3nm以上、100nm以下の厚さで形成されていてもよい。
【0066】
本開示の態様9に係る表示パネルは、態様1~8の何れかに係る表示パネルであり、前記散乱体の最大長さは、5nm以上、5μm以下であってもよい。
【0067】
本開示の態様10に係る表示パネルは、態様1~8の何れかに係る表示パネルであり、前記散乱体は、ナノ粒子であってもよい。
【0068】
本開示の態様11に係る表示パネルは、態様1~10の何れかに係る表示パネルであり、前記散乱体は、コアとシェルとを含むナノ粒子であってもよい。
【0069】
本開示の態様12に係る表示パネルは、態様1~11の何れかに係る表示パネルであり、前記散乱体は、無機化合物または有機化合物であってもよい。
【0070】
本開示の態様13に係る表示パネルは、態様1~11の何れかに係る表示パネルであり、前記散乱体は、絶縁体、半導体、金属及び金属酸化物の何れかであってもよい。
【0071】
本開示の態様14に係る表示パネルは、態様1~11の何れかに係る表示パネルであり、前記散乱体は、アクリル基、エポキシ基、ウレタン基及びシリコーン基の1つ以上を含む樹脂であってもよい。
【0072】
本開示の態様15に係る表示パネルは、態様1~14の何れかに係る表示パネルであり、前記散乱体の屈折率は、前記積層体に含まれる少なくとも一つの層の屈折率と異なってもよい。
【0073】
本開示の態様16に係る表示パネルは、態様1~15の何れかに係る表示パネルであり、前記散乱体の周囲に可視光領域の光を吸収する光吸収体を有していてもよい。
【0074】
本開示の態様17に係る表示パネルは、態様16に係る表示パネルであり、前記光吸収体は、有機化合物または無機化合物であってもよい。
【0075】
本開示の態様18に係る表示パネルは、態様16に係る表示パネルであり、前記光吸収体は、ピリジン骨格を含んでいてもよい。
【0076】
本開示の態様19に係る表示パネルは、態様16に係る表示パネルであり、前記光吸収体は、変性アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、シアノアクリレート系樹脂、フルオロエチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)及びポリ塩化ビニル(PVC)の中から選択される一つ以上を含んでいてもよい。
【0077】
本開示の態様20に係る表示パネルは、態様16に係る表示パネルであり、前記光吸収体は、アゾ系の染料、キノン系の染料、インジゴ系の染料、ポリメチン系の染料、スチリル系の染料、アゾ系の顔料、キノン系の顔料、インジゴ系の顔料、ポリメチン系の顔料及びスチリル系の顔料の中から選択される一つ以上を含んでいてもよい。
【0078】
本開示の態様21に係る表示パネルは、態様16に係る表示パネルであり、前記光吸収体は、炭素材料、金属硫化物及び前記可視光領域において吸収を有する半導体材料から選択される一つ以上を含んでいてもよい。
【0079】
本開示の態様22に係る表示パネルは、態様1、2、4~8の何れかに係る表示パネルであり、前記複数個の発光素子は、第1色を発光する第1発光素子と、前記第1色とは異なる第2色を発光する第2発光素子と、前記第1色及び前記第2色とは異なる第3色を発光する第3発光素子とを含み、前記第1発光素子は、前記島状の積層体として、前記第1色を発光する第1発光層を含む第1積層体を備えており、前記第2発光素子は、前記島状の積層体として、前記第1積層体と、前記発光層からの光が出射する面である表示面から前記第1積層体よりも遠くに設けられた前記第2色を発光する第2発光層を含む第2積層体とを備えており、前記第3発光素子は、前記島状の積層体として、前記第1積層体と、前記第2積層体と、前記表示面から前記第2積層体よりも遠くに設けられた前記第3色を発光する第3発光層を含む第3積層体とを備えており、前記第3発光素子が備えている前記島状の積層体の最大高さ部分よりも高さが低い前記散乱体を含む凹部は、前記発光層からの光が出射する面である表示面から最も近い半導体層の前記表示面側の表面から前記第3発光層の前記表示面側の表面までの厚さに対応する高さ以下で形成されていてもよい。
【0080】
〔付記事項〕
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0081】
1、1a、1b、1c、2、3 表示パネル
11、12、13、11’、12’ 島状の積層体
W 島状の積層体の側壁
SK 成長用基板
DM 表示面
D1~D3、D1’~D3’ 発光素子
E1~E3 発光層
SCB 散乱体
RS 樹脂
LA 光吸収体
SC 散乱体と樹脂を含む混合体
SC’ 散乱体と光吸収体を含む混合体
PF 絶縁膜
JC 導電性接着層
DK 駆動回路基板
A1~A3 アノード
K1~K3 カソード
L1~L3 発光層からの光
PI 画素
RSUB、GSUB、BSUB サブ画素
H1 第1方向
H2 第2方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28