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特開2024-180082発光装置、表示装置、ウェアラブル装置、および発光装置の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180082
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】発光装置、表示装置、ウェアラブル装置、および発光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/08 20100101AFI20241219BHJP
   H01L 33/48 20100101ALI20241219BHJP
   G02B 27/02 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
H01L33/08
H01L33/48
G02B27/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】28
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099523
(22)【出願日】2023-06-16
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)本願は、令和2年度、国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)、研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)「高臨場感VR/ARディスプレイのための高輝度フルカラーモノリシックLEDの開発」委託研究の成果である、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】599002043
【氏名又は名称】学校法人 名城大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】上田 吉裕
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 素顕
(72)【発明者】
【氏名】末広 好伸
(72)【発明者】
【氏名】今泉 雄太
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 竜成
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 直希
【テーマコード(参考)】
2H199
5F142
5F241
【Fターム(参考)】
2H199CA02
2H199CA12
2H199CA25
2H199CA86
5F142CA13
5F142CD02
5F142DB24
5F142GA01
5F241AA14
5F241CA05
5F241CA40
5F241CA65
5F241CA74
5F241CB11
5F241CB27
5F241CB36
5F241FF01
(57)【要約】
【課題】迷光を低減する。
【解決手段】本開示に係る発光装置(10)は、第1発光層を含む第1半導体層(11)と、第2発光層を含む第2半導体層(12)とを備え、第1半導体層(11)が有する第1側壁(W1)と、第2半導体層(12)が有する第2側壁(W2)とが間隙(S1)を介して隣り合い、第1側壁(W1)の法線と第2側壁(W2)の法線とが平行でない(α≠0°)。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1発光層を含む第1半導体層と、第2発光層を含む第2半導体層とを備え、
前記第1半導体層が有する第1側壁と、前記第2半導体層が有する第2側壁とが間隙を介して隣り合い、
前記第1側壁の法線と前記第2側壁の法線とが平行でない、発光装置。
【請求項2】
前記第1側壁および前記第2側壁間の最小距離が30〔nm〕~2.0〔μm〕である、請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記第1半導体層および前記第2半導体層を平面視したときの前記第1側壁および前記第2側壁間の距離が一定でない、請求項1に記載の発光装置。
【請求項4】
前記間隙の屈折率は、前記第1半導体層および前記第2半導体層の屈折率よりも小さい、請求項1に記載の発光装置。
【請求項5】
前記第1発光層および前記第2発光層は、光取り出し面からの距離が異なる、請求項1に記載の発光装置。
【請求項6】
前記第1側壁および前記第2側壁からも光が出射する、請求項1に記載の発光装置。
【請求項7】
前記第1側壁および前記第2側壁は、平面形状である、請求項1に記載の発光装置。
【請求項8】
前記第1側壁および前記第2側壁は、湾曲形状である、請求項1に記載の発光装置。
【請求項9】
前記第1半導体層および前記第2半導体層は、平面視において四角形である、請求項7に記載の発光装置。
【請求項10】
前記第1半導体層および前記第2半導体層は、平面視において楕円である、請求項8に記載の発光装置。
【請求項11】
前記第1半導体層を平面視したときの楕円の長軸と、前記第2半導体層を平面視したときの長軸とが平行でない、請求項10に記載の発光装置。
【請求項12】
前記第1半導体層および前記第2半導体層は、平面視において、5本以上の辺をもつ凹多角形である、請求項7に記載の発光装置。
【請求項13】
前記第1側壁および前記第2側壁間の距離が、厚み方向の位置によって変化しない、請求項1に記載の発光装置。
【請求項14】
前記第1側壁および前記第2側壁間の距離が、厚み方向の位置によって変化する、請求項1に記載の発光装置。
【請求項15】
前記第1半導体層および前記第2半導体層は、テーパ形状である、請求項14に記載の発光装置。
【請求項16】
前記第1半導体層および前記第2半導体層は、光取り出し面から離れる方向に先細りする形状である、請求項15に記載の発光装置。
【請求項17】
前記第1側壁の法線および前記第2側壁の法線がなす鋭角が10°以下である、請求項1に記載の発光装置。
【請求項18】
第3発光層を含む第3半導体層を備え、
前記第3半導体層が有する第3側壁と、前記第2半導体層が前記第2側壁の反対側に有する第4側壁とが、間隙を介して隣り合い、
前記第3側壁の法線および前記第4側壁の法線が平行でない、請求項1に記載の発光装置。
【請求項19】
前記第1発光層を含む第1発光素子と、前記第2発光層を含む第2発光素子とを備える、請求項1に記載の発光装置。
【請求項20】
前記第1半導体層および前記第2半導体層と結合する成長用基板と、
前記第1発光素子および前記第2発光素子が実装される駆動用基板と、を備える、請求項19に記載の発光装置。
【請求項21】
前記第1発光層および前記第2発光層から出射する光がランバーシアン配向である、請求項1に記載の発光装置。
【請求項22】
前記第1半導体層および前記第2半導体層それぞれが、ガリウムを含む窒化物半導体結晶である、請求項1に記載の発光装置。
【請求項23】
前記第1半導体層は、前記成長用基板の成長面に結合し、
前記成長用基板の前記成長面の反対側の面が光取り出し面である、請求項20に記載の発光装置。
【請求項24】
前記第1発光素子は、アノードおよびカソードを備え、
前記アノードおよび前記カソードの少なくとも一方は光反射性を有する、請求項19に記載の発光装置。
【請求項25】
請求項1に記載の発光装置を含む、表示装置。
【請求項26】
請求項1に記載の発光装置を含む、ウェアラブル装置。
【請求項27】
成長用基板に半導体結晶を成長させる工程と、
前記半導体結晶をパターニングすることで、第1発光層を含み、第1側壁を有する第1半導体層と、第2発光層を含み、第2側壁を有する第2半導体層とを形成する工程とを含み、
前記第1側壁と前記第2側壁とが間隙を介して隣り合い、前記第1側壁の法線および前記第2側壁の法線を平行としない、発光装置の製造方法。
【請求項28】
前記第1半導体層を含む第1発光素子と、前記第2半導体層を含む第2発光素子とを形成する工程と、
前記第1発光素子および前記第2発光素子を駆動用基板に実装する工程とを含む、請求項27に記載の発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光装置、表示装置、ウェアラブル装置、および発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、複数のマイクロLEDが行と列に配列された平面視で矩形状のマイクロLEDパネルを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-185515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような従来技術には、視認可能な程度の迷光が生じる問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る発光装置は、第1発光層を含む第1半導体層と、第2発光層を含む第2半導体層とを備え、前記第1半導体層が有する第1側壁と、前記第2半導体層が有する第2側壁とが間隙を介して隣り合い、前記第1側壁の法線と前記第2側壁の法線とが平行でない、構成である。
【0006】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る表示装置は、本開示に係る発光装置を含む構成である。
【0007】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係るウェアラブル装置は、本開示に係る発光装置を含む構成である。
【0008】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る発光装置の製造方法は、成長用基板に半導体結晶を成長させる工程と、前記半導体結晶をパターニングすることで、第1発光層を含み、第1側壁を有する第1半導体層と、第2発光層を含み、第2側壁を有する第2半導体層とを形成する工程とを含み、前記第1側壁と前記第2側壁とが間隙を介して隣り合い、前記第1側壁の法線および前記第2側壁の法線を平行としない、方法である。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、迷光を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一実施形態に係る発光装置の構成の一例を示す平面図である。
図2図1のアノードを通るX方向断面図である。
図3図1のカソードを通るX方向断面図である。
図4図1の第1~3発光素子それぞれを通るY方向断面図である。
図5】比較例1に係る発光装置の構成を示す平面図およびX方向断面図を含む二面図である。
図6】本開示の一実施形態に係る発光装置の構成の別の幾つかの例を示す平面図である。
図7】本開示の一実施形態に係る発光装置の構成の別の幾つかの例を示す平面図である。
図8】本開示の一実施形態に係る発光装置の構成の別の幾つかの例を示す平面図である。
図9】本開示の一実施形態に係る発光装置の構成の別の一例を示す平面図である。
図10】本開示の一実施形態に係る発光装置の構成の別の一例を示す平面図である。
図11】本開示に係る半導体層の様々な形状例を示す平面図である。
図12】本開示に係る半導体層の位置関係の一例を示す平面図である。
図13】本開示に係る半導体層の位置関係の一例を示す平面図である。
図14】本開示に係る半導体層の位置関係の一例を示す平面図である。
図15】発光層から出射する光の配光分布を示すX方向断面図である。
図16図5に示した比較例1の発光層が発光しているときの、取出される光の強度分布を示す図である。
図17図5に示した比較例1の主発光および周期状迷光を示すX方向断面図である。
図18図5に示した比較例のブロードな迷光および周期状迷光を示すX方向断面図である。
図19】本実施形態の実施例1に係る発光装置の製造方法を示すフローチャートである。
図20】実施例1に係る発光装置の製造方法を示す断面図である。
図21】実施例1に係る発光装置の製造方法を示す断面図である。
図22】実施例1に係る発光装置の製造方法を示す断面図である。
図23】実施例1に係る発光装置の製造方法を示す断面図である。
図24】本実施形態の実施例2に係る発光装置の構成を示す断面図である。
図25】比較例2に係る発光装置の1つの発光素子を発光させ、撮影した写真を示す図である。
図26】実施例2に係る発光装置の1つの発光素子を発光させ、撮影した写真を示す図である。
図27】本開示の一実施形態に係る発光装置の平面図である。
図28】本開示の一実施形態に係る発光装置のアノードを通るX方向断面図である。
図29】本開示の一実施形態に係る表示装置の構成の一例を示す断面図である。
図30】本開示の一実施形態に係る表示装置の構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施形態1〕
(構成)
図1は、本開示の一実施形態に係る発光装置の構成の一例を示す平面図である。図2は、図1のアノードを通るX方向断面図である。図3は、図1のカソードを通るX方向断面図である。図4は、図1の第1~3発光素子それぞれを通るY方向断面図である。本開示において、発光装置10の光取り出し方向をz方向とし、第1発光素子D1および第2発光素子D2が並んでいる方向をx方向とし、x方向およびz方向と直交する方向をy方向とする。また、光取り出し方向(z方向)を上下方向とし、発光装置10の光取り出し面TSが在る側を上側とする。
【0012】
図1図4に示すように、本開示に係る発光装置10は、第1発光層E1を含む第1半導体層11と、第2発光層E2を含む第2半導体層12とを備え、第1半導体層11が有する第1側壁W1と第2半導体層12が有する第2側壁W2とが間隙S1を介して隣り合い、第1側壁W1の法線と第2側壁W2の法線とが平面視で平行でない。平面の法線は、当該平面に直交する2つの平面の交差線に平行であり、当該平面を通る。曲面の法線は、当該曲面に接する接平面の法線であり、当該接平面が当該曲面に接する接点を通る。
【0013】
上記構成によれば、第1側壁W1から垂直に出射された光は、間隙S1を通過して、第2側壁W2に斜めに入射する。そして、光の一部は、第2側壁W2で反射されて間隙S1に戻り、別の一部は、第2側壁W2で屈折されて第2半導体層12内部に入る。このように、第1側壁W1から垂直に出射された光が、第2側壁W2で反射および屈折されやすいため、伝播しにくく、発光装置10の内部で減衰しやすい。
【0014】
図5は、比較例1に係る発光装置の構成を示す平面図およびX方向断面図を含む二面図である。図5に示すように、比較例1は、発光層1001を含む半導体層1002と、半導体層1002と間隙を介して隣り合う半導体層1003とを備え、半導体層1002の側壁1004の法線が、半導体層1003の側壁1005の法線と平行である。側壁1004から垂直に出射された光は、側壁1005に垂直に入射する。垂直に入射した光は、斜めに入射した光よりも反射が少なく、加えて、屈折されない。このため、側壁1004から垂直に出射された光が、伝播しやすく、迷光として、発光層1001から離れた位置で発光装置の外部に出射されやすい。
【0015】
したがって、本開示に係る構成は、図4に示す比較例1の構成と比較して、発光装置10の迷光を低減することができる。
【0016】
図1を参照して、第2側壁W2は、第1側壁W1の法線が第2側壁W2と交わるように、決める。第1側壁W1の法線が第2側壁W2と交わり、かつ、第2側壁W2の法線が第1側壁W1と交わってよい。第1側壁W1および第2側壁W2は互いと平行でないため、その間の間隙S1を横切る距離は、一定でない。第1側壁W1および第2側壁W2の間の最小距離は、30〔nm〕~2.0〔μm〕である。第1半導体層11および第2半導体層12を平面視したときの第1側壁W1および第2側壁W2の間の距離が、一定でない。第1側壁W1の法線および第2側壁W2の法線が成す鋭角αは、10°以下であってよい。
【0017】
本開示において、ある半導体層Xの側壁と、別の半導体層Yの側壁とが間隙を介して隣り合い、かつ、前記ある半導体層Xの前記側壁の法線が、前記別の半導体層Yの前記側壁と交わるとき、前記別の半導体層Yの前記側壁は、前記ある半導体層Xの前記側壁と対向すると表現する。半導体層Xのある側壁の法線が、半導体層Xの別の側壁と交わるとき、半導体Xは、前記ある側壁の反対側に前記別の側壁を有すると表現する。2つの側壁の法線が平行であるとき、前記2つの側壁は平行であると表現する。
【0018】
第1側壁W1および第2側壁W2の間の間隙S1の屈折率は、第1半導体層11および第2半導体層12の屈折率よりも小さくてよい。この屈折率差によって、第2側壁W2に入射する光は、反射および屈折されやすい。したがって、迷光をより低減することができる。第1半導体層11および第2半導体層12の屈折率は、間隙S1の屈折率の2.0倍以上が好ましい。例えば、第1半導体層11および第2半導体層12を窒化ガリウム系半導体から形成し、間隙S1をガスで充たす。波長450〔nm〕の光に対して、窒化ガリウム系半導体の屈折率は約2.4であり、ガスの屈折率は約1である。
【0019】
図2図4を参照して、第1発光層E1および第2発光層E2は、光取り出し面TSからの距離が異なる。第2半導体層12は、第1発光層E1と同材料で構成されたダミー発光層N1を有し、ダミー発光層N1は、光取り出し面TSからの距離が第1発光層E1と同一である。第1発光層E1は第1色で発光し、第2発光層E2は第2色で発光する。第1色および第2色はそれぞれ、赤、緑および青の何れかである。
【0020】
第1半導体層11は、第1側壁W1を含む側壁からも光を出射する。第2半導体層12は、第2側壁W2および後述の第4側壁W4を含む側壁からも光を出射する。第1側壁W1および第2側壁W2からも光が出射する。
【0021】
図6図7および図8は、本開示の一実施形態に係る発光装置の構成の別の幾つかの例を示す平面図である。図1図6図7および図8を参照して、第1側壁W1および第2側壁W2は、平面形状である。図1図6図7および図8を参照して、第1半導体層11および第2半導体層12は例えば、平面視において四角形である。前記四角形は、矩形、台形、および菱形の何れか1つであってよい。
【0022】
図9は、本開示の一実施形態に係る発光装置の構成の別の一例を示す平面図である。図9に示すように、第1側壁W1および第2側壁W2は、湾曲形状であってもよい。第1半導体層11および第2半導体層12は例えば、平面視において円または楕円である。第1半導体層11を平面視したときの楕円の長軸と、第2半導体層12を平面視したときの楕円の長軸とが平行でない。第1半導体層11の側壁が湾曲しているとき、第1半導体層11の側壁の部分であって、法線が第2半導体層の側壁と交差する部分を、第1側壁W1とする。第2半導体層12の側壁が湾曲しているとき、第2半導体層12の側壁の部分であって、第1側壁W1の法線と交差する部分を、第2側壁W2とする。
【0023】
図10は、本開示の一実施形態に係る発光装置の構成の別の一例を示す平面図である。図10に示すように、第1側壁W1および第2側壁W2は、平面形状であり、第1半導体層11および第2半導体層12は平面視において、5本以上の辺をもつ凹多角形である。
【0024】
図2および図3を参照して、第1側壁W1および第2側壁W2の間の距離が、厚み方向zの位置によってほぼ変化しない。第1側壁W1および第2側壁W2は、光取り出し面TSに対して略垂直である。
【0025】
図1図4を参照して、発光装置10はさらに、第3発光層E3を含む第3半導体層13を備え、第3半導体層13が有する第3側壁W3と第2半導体層12が第2側壁W2の反対側に有する第4側壁W4とが間隙S2を介して隣り合い、第3側壁W3の法線と第4側壁W4の法線とが平面視で平行でない。第4側壁W4は、第2半導体層12の側壁のうち、第2側壁W2の法線と交差する側壁とする。
【0026】
上記構成によれば、第4側壁W4から垂直に出射された光は、間隙S2を通過して、第3側壁W3に斜めに入射する。このため、間隙S1および第2半導体層12を通過して第4側壁W4から垂直に出射された光が、第3側壁W3で反射および屈折されやすいため、伝播しにくく、発光装置10の内部で減衰しやすい。したがって、迷光をより低減することができる。
【0027】
第3側壁W3は、第4側壁W4の法線が第3側壁W3と交わるように、決める。第4側壁W4の法線が第3側壁W3と交わり、かつ、第3側壁W3の法線が第4側壁W4と交わってよい。第3側壁W3および第4側壁W4は互いと平行でないため、その間の間隙S2を横切る距離は、一定でない。第3側壁W3および第4側壁W4の間の最小距離は、30〔nm〕~2.0〔μm〕である。第3半導体層13および第2半導体層12を平面視したときの第3側壁W3および第4側壁W4の間の距離が、一定でない。第3側壁W3および第4側壁W4の間の最小距離は、第1側壁W1および第2側壁W2の間の最小距離と異なってよい。第3側壁W3の法線および第4側壁W4の法線が成す鋭角βは、10°以下であってよい。
【0028】
第3側壁W3および第4側壁W4の間の間隙S2の屈折率は、第3半導体層13および第2半導体層12の屈折率よりも小さくてよい。この屈折率差によって、第3側壁W3に入射する光は、反射および屈折されやすい。したがって、迷光をより低減することができる。第3半導体層13および第2半導体層12の屈折率は、間隙S2の屈折率の2.0倍以上が好ましい。例えば、第3半導体層13および第2半導体層12を窒化ガリウム系半導体から形成し、間隙S2をガスで充たす。
【0029】
第3発光層E3は、第1発光層E1および第2発光層E2と、光取り出し面TSからの距離が異なる。第3半導体層13は、第1発光層E1と同材料で構成されたダミー発光層N1を有し、ダミー発光層N1は、光取り出し面TSからの距離が第1発光層E1と同一である。第3半導体層13は、第2発光層E2と同材料で構成されたダミー発光層N2を有し、ダミー発光層N2は、光取り出し面TSからの距離が第2発光層E2と同一である。第3発光層E3は第3色で発光する。第3色は、赤、緑および青の何れかである。
【0030】
第3半導体層13は、第3側壁W3を含む側壁からも光を出射する。第3側壁W3は平面形状であり、第3半導体層13は、平面視において四角形である。図1図6図7および図8を参照して、前記四角形は、矩形、台形、および菱形の何れか1つであってよい。図9を参照して、第3側壁W3および第4側壁W4は、湾曲形状であってもよい。第3半導体層13は例えば、平面視において円、楕円、または長円形であり、第3半導体層13を平面視したときの楕円の長軸と、第2半導体層12を平面視したときの楕円の長軸とが平行でない。図10を参照して、第3側壁W3は、平面形状であり、第3半導体層13は平面視において、5本以上の辺をもつ凹多角形であってよい。
【0031】
加えて、第1側壁W1に対向する平行な側壁が存在しないことが好ましく、第1半導体層11の何れの側壁についても、対向する平行な側壁が存在しないことがより好ましい。第2半導体層12および第3半導体層13の側壁についても同様に、対向する平行な側壁が存在しないことが好ましい。
【0032】
図11は、本開示に係る半導体層の様々な形状例を示す平面図である。図11に示すように、第1半導体層11、第2半導体層12および第3半導体層13は、三角形、非等脚台形、七角形およびその他の形状を有してよい。多角形である場合、少なくとも1辺は、自身と平行な対向する辺を有さないことが好ましい。
【0033】
図12は、本開示に係る半導体層の位置関係の一例を示す平面図である。図12に示すように、第1半導体層11、第2半導体層12および第3半導体層13が平面視で、幅tおよび高さhの略矩形であり、側壁間の平均間隔がsであるとき、第1側壁W1および第2側壁W2が互いに離れているように、下記条件式(1)を満たす。また、第3側壁W3および第4側壁W4が互いと非平行かつ離れているように、下記条件式(2)(3)を満たす。鋭角α,βはそれぞれ、鋭角であるので、0°より大きく、90°より小さい。
【0034】
【数1】
条件式(1)(3)からそれぞれ、下記条件式(1´)(3´)が導出される。
【0035】
【数2】
図13および図14は、本開示に係る半導体層の位置関係の一例を示す平面図である。図13および図14はそれぞれ、第1半導体層11および第2半導体層12が平面視で、上底の長さtおよび高さhの等脚台形であり、上底が間隔sで一直線上に並び、第1~4側壁W1~W4が等脚台形の斜辺であるときを示す。図13に示すように、上底が下底よりも小さい場合、第1側壁W1および第2側壁W2が互いと離れているように、下記条件式(4)を満たす。図14に示すように、上底が下底よりも大きい場合、下底の長さが0より大きいように、下記条件式(5)を満たす。
【0036】
【数3】
条件式(4)(5)からそれぞれ、下記条件式(4´)(5´)が導出される。
【0037】
【数4】
図1図4を参照して、発光装置10は、第1発光層E1を含む第1発光素子D1と、第2発光層E2を含む第2発光素子D2と、第3発光層E3を含む第3発光素子D3とを備える。発光装置10は、第1半導体層11、第2半導体層12および第3半導体層13と結合する成長用基板SKと、第1発光素子D1、第2発光素子D2および第3発光素子D3が実装される駆動用基板DKと、を備える。
【0038】
第1発光素子D1は、第1半導体層11を備え、第1半導体層11および駆動用基板DKの間に位置するアノードA1およびカソードK1を備える。第2発光素子D2は、第2半導体層12を備え、第2半導体層12および駆動用基板DKの間に位置するアノードA2およびカソードK2を備える。第3発光素子D3は、第3半導体層13を備え、第3半導体層13および駆動用基板DKの間に位置するアノードA3およびカソードK3を備える。アノードA1、A2、A3およびカソードK1、K2、K3が同材料で構成されてよい。
【0039】
発光装置10は、アノードA1,A2,A3およびカソードK1,K2,K3それぞれを駆動用基板DKに電気的に接続する電導層JCを備える。電導層JCは、第1発光素子D1、第2発光素子D2および第3発光素子D3を駆動用基板DKに機械的に接合する接合材料としても機能してよい。
【0040】
第1半導体層11は、アノードA1に接するアノードコンタクト層F1とカソードK1に接するカソードコンタクト層C1とを含み、アノードコンタクト層F1およびカソードコンタクト層C1それぞれがn型半導体層である。第1半導体層11はさらに、第1発光層E1およびアノードコンタクト層F1の間に位置するトンネルジャンクション層T1と、第1発光層E1およびトンネルジャンクション層T1の間に位置するp型層H1と、第1発光層E1およびp型層H1の間に位置する中間層G1と、を含む。第1半導体層11はさらに、成長用基板SKと接するバッファ層BAと、バッファ層BAおよびカソードコンタクト層C1との間に位置する下地層U1とを含む。
【0041】
p型は、半導体材料のフェルミ準位が、価電子帯と伝導帯との中央より価電子帯に近い側に位置することを意味する。p型半導体は正孔輸送性である。n型は、半導体材料のフェルミ準位が、価電子帯と伝導帯との中央より伝導帯に近い側に位置することを意味する。n型半導体は電子輸送性である。
【0042】
第2半導体層12は、アノードA2に接するアノードコンタクト層F2とカソードK2に接するカソードコンタクト層C2とを含み、アノードコンタクト層F2およびカソードコンタクト層C2それぞれがn型半導体層である。第2半導体層12はさらに、第2発光層E2およびアノードコンタクト層F2の間に位置するトンネルジャンクション層T2と、第2発光層E2およびトンネルジャンクション層T2の間に位置するp型層H2と、第2発光層E2およびp型層H2の間に位置する中間層G2と、を含む。第2半導体層12はさらに、成長用基板SKと接するバッファ層BAと、バッファ層BAおよびカソードコンタクト層C2との間に位置する下地層U2とを含む。
【0043】
第2半導体層12は、下地層U1、カソードコンタクト層C1、中間層G1、p型層H1、トンネルジャンクション層T1、およびアノードコンタクト層F1それぞれと同材料で構成されたダミー層を有してよい。
【0044】
第3半導体層13は、アノードA3に接するアノードコンタクト層F3とカソードK3に接するカソードコンタクト層C3とを含み、アノードコンタクト層F3およびカソードコンタクト層C3それぞれがn型半導体層である。第3半導体層13はさらに、第3発光層E3およびアノードコンタクト層F3の間に位置するトンネルジャンクション層T3と、第3発光層E3およびトンネルジャンクション層T3の間に位置するp型層H3と、第3発光層E3およびp型層H3の間に位置する中間層G3と、を含む。第3半導体層13はさらに、成長用基板SKと接するバッファ層BAと、バッファ層BAおよびカソードコンタクト層C3との間に位置する下地層U3とを含む。
【0045】
第3半導体層13は、下地層U1、カソードコンタクト層C1、中間層G1、p型層H1、トンネルジャンクション層T1、アノードコンタクト層F1、下地層U2、カソードコンタクト層C2、中間層G2、p型層H2、トンネルジャンクション層T2、およびアノードコンタクト層F2それぞれと同材料で構成されたダミー層を有してよい。
【0046】
第1半導体層11、第2半導体層12および第3半導体層13はそれぞれガリウムを含む窒化物半導体結晶であってよい。第1半導体層11、第2半導体層12および第3半導体層13はそれぞれ、成長用基板SKの成長面BS(図2図4の下面)に結合し、成長用基板SKの成長面BSの反対側の面(図2図4の上面)が発光装置10の光取り出し面TSである。アノードA1,A2,A3およびカソードK1、K2、K3が光反射性を有することが好ましい。光反射によって、発光装置10の光取り出し効率を向上することができる。
【0047】
(配光分布および強度分布)
図15は、発光層から出射する光の配光分布を示すX方向断面図である。図15に示すように、第1発光層E1、第2発光層E2、第3発光層E3および比較例1の発光層1001から出射する光はそれぞれ、何れの面から出射する場合も、ランバーシアン配向である。すなわち、出射面の法線方向と出射方向との間の角度を出射角度θとして、出射光強度はcosθに比例する。
【0048】
図16は、図5に示した比較例1の発光層が発光しているときの、取出される光の強度分布を示す図である。図16に示すように、比較例1の発光層1001が発光しているときの、光取り出し面1006における強度分布1007は、主発光による成分1008と、周期状迷光による成分1009と、ブロードな迷光による成分1010と、が足し合わさっている。
【0049】
図17は、図5に示した比較例1の主発光および周期状迷光を示すX方向断面図である。図17に示すように、発光層1001から光取り出し面に略直交する方向に出射された光は、主発光となる。これは、発光層1001の上面および下面からθ≒0°で出射された光と、発光層1001の側壁からθ≒90°で出射された光とを含む。例えば、発光層1001の上面および下面からθ≦5°で出射された光と、発光層1001の側壁から85°≦θで出射された光とを含む。
【0050】
図18は、図5に示した比較例のブロードな迷光および周期状迷光を示すX方向断面図である。図18に示すように、発光層1001から光取り出し面に略平行な方向に出射された光は、ブロードな迷光となる。これは、発光層1001の上面および下面からθ≒90°で出射された光と、発光層1001の側壁からθ≒0°で出射された光とを含む。例えば、発光層1001の上面および下面から85°≦θで出射された光と、発光層1001の側壁からθ≦5°で出射された光とを含む。
【0051】
図17および図18を参照して、発光層1001から光取り出し面に斜め方向に出射された光は、周期状迷光となる。これは、発光層1001の上面、下面および側壁から0°<<θ<<90°で出射された光を含む。例えば、発光層1001の上面、下面および側壁から5°<θ<85°で出射された光を含む。
【0052】
比較例1のように隣り合う側壁が互いと平行である場合、側壁から垂直に出射した光は、別の側壁に垂直に入射し、ほとんど反射されない。このため、側壁から垂直に出射された光が、遠くまで伝播する。一方、本開示に係る構成によれば、第1側壁W1から垂直に出射した光は、第2側壁W2に非垂直に入射する。一般的に半導体材料の屈折率は大気の屈折率より大きいため、半導体材料から大気へ入射する光は全反射角度が広い。したがって、第2半導体層12に非垂直に入射した光は、第2半導体層12内で反射され、大気中への出射困難である。この結果、迷光が低減される。
【0053】
(実施例1)
図19は、本実施形態の実施例1に係る発光装置の製造方法を示すフローチャートである。図20図23は、実施例1に係る発光装置の製造方法を示す断面図である。図20図23に示すように、ステップS20では、成長用基板SK(例えば、C面サファイア基板)上に半導体結晶SLを、MOCVD装置等を用いてエピタキシャル成長させる。半導体結晶SLは窒化物半導体結晶であってよい。窒化物半導体としては、GaN系半導体のほか、AlN(窒化アルミニウム)およびInN(窒化インジウム)等を挙げることができる。本開示において、エピタキシャル成長を単に「成長」と称することがある。
【0054】
ステップS20は、バッファ層BA、下地層U1、カソードコンタクト層C1、第1発光層E1、中間層G1、p型層H1、トンネルジャンクション層T1、およびアノードコンタクト層F1をこの順に形成するステップ20aと、下地層U2、カソードコンタクト層C2、第2発光層E2、中間層G2、p型層H2、トンネルジャンクション層T2、およびアノードコンタクト層F2をこの順に形成するステップ20bと、下地層U3、カソードコンタクト層C3、第3発光層E3、中間層G3、p型層H3、トンネルジャンクション層T3、およびアノードコンタクト層F3をこの順に形成するステップ20cとを含む。ステップ20a~20cは、例えばMOCVD装置内においてシーケンシャルに行うことができる。
【0055】
バッファ層BAは、低温(例えば600℃以下)形成の窒化ガリウム結晶(例えば厚さ40〔nm〕)であってよい。下地層U1・U2・U3は、ノンドープの窒化ガリウム結晶(例えば厚さ2〔μm〕)であってよい。カソードコンタクト層C1・C2・C3は、n型の窒化ガリウム結晶(例えば厚さ2〔μm〕)であってよい。第1発光層E1、第2発光層E2および第3発光層E3は、MQW(多重量子井戸)構造の活性層であってよい。例えば、波長450〔nm〕程度の青色光を発する第1発光層E1として、厚さ50〔nm〕であってIn(インジウム)の組成比が20%の窒化インジウムガリウム(InとGaの原子比が1:4の混晶)を用いることができる。例えば、波長550〔nm〕程度の緑色光を発する第2発光層E2として、Inの組成比が25%の窒化インジウムガリウム(混晶)を用いることができる。例えば、波長630〔nm〕程度の赤色光を発する第3発光層E3として、Inの組成比が30%の窒化インジウムガリウム(混晶)を用いることができる。中間層G1・G2・G3は、p型の窒化アルミニウムガリウム結晶(例えば厚さ20〔nm〕)であってよい。p型層H1・H2・H3は、p型の窒化ガリウム結晶(例えば厚さ120〔nm〕)であってよい。トンネルジャンクション層T1・T2・T3は、ノンドープ型の窒化ガリウム結晶(例えば厚さ25〔nm〕)であってよい。アノードコンタクト層F1・F2・F3は、n型の窒化ガリウム結晶(例えば厚さ400〔nm〕)であってよい。
【0056】
ステップS22では、半導体結晶SLをドライエッチングによってパターニングし、カソードコンタクト層C1・C2・C3を露出させる。ステップS22のエッチングマスクとして、レジストあるいはリフトオフ法でパターニングした無機膜(酸化シリコン膜、ニッケル膜等)を用いることができる。ドライエッチングには、塩素またはフッ素等のハロゲンを用いた反応性イオンエッチング(RIE)法を適用することができる。エッチングマスクは、リムーバ、酸性溶液等によって除去する。
【0057】
ステップS24では、アノードコンタクト層F1・F2・F3上にアノードA1・A2・A3を形成すると同時に、カソードコンタクト層C1・C2・C3上にカソードK1・K2・K3を形成する。具体的には、レジストをマスクとして蒸着した電極材(例えば、アルミニウムとチタンの積層膜)をリフトオフ法でパターニングした。
【0058】
ステップS26では、半導体結晶SLをドライエッチングによってパターニングし、第1半導体層11、第2半導体層12および第3半導体層13を形成した。ここでは、素子分離する領域以外をレジストで保護し、例えばハロゲン系RIE法によって、素子間に成長用基板SKが露出するように、半導体結晶SLのうち素子間の部分を完全に除去した。成長用基板SK自体をエッチングして、成長用基板SKに凹凸を形成してもよい。電気的な素子分離は、第1発光層E1、第2発光層E2および第3発光層E3の直下でエッチングを停止すれば足りるが、光学的な素子分離のために、成長用基板SKの表面が露出するようにエッチングを行ってもよい。
【0059】
ステップS28では、第1半導体層11に含まれる第1側壁W1と、第2半導体層12に含まれる第2側壁W2および第4側壁W4と、第3半導体層13に含まれる第3側壁W3とを覆う保護膜PFを形成し、第1発光素子D1、第2発光素子D2および第3発光素子D3を形成した。ここでは、アノードA1・A2・A3およびカソードK1・K2・K3を覆うマスクをフォトリソグラフィ法等により形成した後に電子ビーム蒸着によって第1~第4側壁W1~W4を覆う酸化シリコンを形成し、保護膜PFとした。保護膜PFは、素子間の短絡防止および酸化防止の機能がある。
【0060】
ステップS30では、第1発光素子D1、第2発光素子D2および第3発光素子D3を、導電層JCを介して駆動基板DKに実装し、発光装置10を得る。導電層JCには、半田あるいは異方導電性接着材を用いることができる。駆動基板DKへの実装後に、レーザリフトオフ法等により成長用基板SKを第1発光素子D1、第2発光素子D2および第3発光素子D3から剥離してもよい。
【0061】
比較例1は、n型半導体から形成したカソードコンタクト層と、p型半導体から形成したアノードコンタクト層とを含む。窒化ガリウム系半導体は、価電子帯と伝導帯との間のバンドギャップが大きい。したがって、比較例1に係る構成では、カソードおよびアノードそれぞれに適する金属の仕事関数が大きく異なり、異種金属を使う必要がある。カソードにアルミニウムおよびチタンが適し、アノードにニッケルおよび金が適する。これらの金属はそれぞれ蒸着条件が異なり、別個に蒸着を行う必要がある。したがって、カソードおよびアノードの形成に、複数の絶縁層が必要であり、蒸着マスクのためのフォトリソグラフィを複数回必要である。
【0062】
一方、実施例1に係る発光装置10は、アノードA1・A2・A3の正孔を、n型半導体層であるカソードコンタクト層C1・C2・C3およびトンネルジャンクション層T1・T2・T3を介してp型層H1・H2・H3にトンネル注入する構成である。これにより、アノードA1・A2・A3およびカソードK1・K2・K3を同材料を用いて同時形成することができ、アノードおよびカソードを異なるプロセス、異なる材料で形成する一般的な手法と比較して工程の簡略化が図れる。また、ドライエッチングおよび機械研磨によって高抵抗化しやすいp型(半導体)層を露出させなくて済み、発光素子の電気特性が安定化するというメリットもある。図1図5では第1~第3発光素子D1~D3を成長用基板SK上にモノリシック形成しているが、これに限定されない。個別に形成した第1~第3発光素子D1~D3を駆動基板DKに実装してもよい。
【0063】
(実施例2)
図24は、本実施形態の実施例2に係る発光装置の構成を示す断面図である。図24に示すように、実施例2に係る第1発光層E1、第2発光層E2および第3発光層E3を同一材料および同一層から形成した。下地層U1・U2・U3、カソードコンタクト層C1・C2・C3、中間層G1・G2・G3、p型層H1・H2・H3トンネルジャンクション層T1・T2・T3およびアノードコンタクト層F1・F2・F3もそれぞれ共通化した。平面視で、実施例2に係る第1半導体層11、第2半導体層12および第3半導体層13を、図1に示したように、法線の成す鋭角α,βが2°であるように、配置した。
【0064】
実施例2に係る発光装置10は、対向する側壁が非平行であるように配置された更なる半導体層を複数含む。
【0065】
(比較例2)
比較例2に係る発光装置を、対向する側壁が平行であるように半導体層を配置したことを除いて、実施例2に係る発光装置10と同様に形成した。
【0066】
図25は、比較例2に係る発光装置の1つの発光素子を30〔ms〕発光させ、300〔ms〕集光して撮影した写真を示す図である。図26は、実施例2に係る発光装置の1つの発光素子を30〔ms〕発光させ、300〔ms〕集光して撮影した写真を示す図である。図25および図26に示すように、周期状迷光による成分が、比較例2の発光装置では撮影されたが、一方、実施例2の発光装置10では撮影されなかった。したがって、本開示の構成が、周期状迷光を低減できることを確認できた。
【0067】
〔実施形態2〕
本開示の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0068】
図27は、本開示の一実施形態に係る発光装置の平面図である。図28は、本開示の一実施形態に係る発光装置のアノードを通るX方向断面図である。図27図28に示すように、第1側壁W1の法線と第2側壁W2の法線とが断面視で平行でない。第1側壁W1および第2側壁W2の間の距離が、厚み方向zの位置によって変化する。第1半導体層11および第2半導体層12はそれぞれテーパ形状であり、例えば、光取り出し面TSから離れる方向に先細りする形状である。また、第3側壁W3の法線と第4側壁W4の法線とが断面視で平行でなくてよい。第3側壁W3および第4側壁W4の間の距離が、厚み方向zの位置によって変化し、第3半導体層13がテーパ形状であり、光取り出し面TSから離れる方向に先細りする形状である。
【0069】
図5を参照して、一般的に素子密度を高めるために、素子間の間隙が狭く、側壁1004および側壁1005が断面視で略平行であることが有益である。そのため、側壁1004および側壁1005は、基板1020に対して略垂直である。一方、本開示の発明者らは、迷光を低減するために、第1側壁W1および第2側壁W2が断面視で平行でないことが有益であることを見出した。そのため、本実施形態に係る構成において、第1側壁W1および第2側壁W2は成長用基板SKに対して傾斜している。この構成は、ステップS300において、エッチングの選択比が1より大きいように、エッチングマスクの材料を決定することによって実現できる。選択比Rは、エッチングマスクがエッチングされる速度をVとし、半導体結晶SLがエッチングされる速度をVとして、R:=V÷Vである。
【0070】
鋭角α,βはそれぞれ、10°以下であってよい。本実施形態2は、前述の実施形態1と組み合わせ可能である。例えば、第1側壁W1の法線と第2側壁W2の法線とが、平面視および断面視の双方で非平行であってよい。
【0071】
〔実施形態3〕
図29は、本開示の一実施形態に係る表示装置の構成の一例を示す断面図である。図229に示すように、本開示に係る表示装置50は、発光装置10を備える。表示装置50は複数の画素PXを有し、画素PXは、例えば第1~第3発光素子D1~D3を含む。画素PXからの光は、そのまま人間の目あるいはセンサ等に入射してもよいし、投影物80を介して入射してもよい。発光装置10または表示装置50を含むウェアラブル装置60を構成し、外界90と表示装置50の映像とを重ね合わせることもできる。
【0072】
図30は、本開示の一実施形態に係る表示装置の構成の一例を示す断面図である。図30に示すように、第1~第3発光素子D1~D3を備える発光装置10を含む青色表示パネルと、第4~第6発光素子D4~D6を備える発光装置10を含む緑色表示パネルと、第5~9発光素子D5~D9を備える発光装置10を含む赤色表示パネルとを組合せて、表示装置に用いてもよい。単色表示パネルを重ね合わせることによって多色表示することができる。あるいは、第1、第4および第7発光素子D1,D4,D7からの光を投影物80の同一画素PXで重ね合わせてもよい。
【0073】
〔まとめ〕
本開示の態様1に係る発光装置は、第1発光層を含む第1半導体層と、第2発光層を含む第2半導体層とを備え、前記第1半導体層が有する第1側壁と、前記第2半導体層が有する第2側壁とが間隙を介して隣り合い、前記第1側壁の法線と前記第2側壁の法線とが平行でない、構成である。
【0074】
本開示の態様2に係る発光装置は、態様1に係る発光装置であり、前記第1側壁および前記第2側壁間の最小距離が30〔nm〕~2.0〔μm〕である、構成であってよい。
【0075】
本開示の態様3に係る発光装置は、態様1または2係る発光装置であり、前記第1半導体層および前記第2半導体層を平面視したときの前記第1側壁および前記第2側壁間の距離が一定でない、構成であってよい。
【0076】
本開示の態様4に係る発光装置は、態様1~3の何れかに係る発光装置であり、前記間隙の屈折率は、前記第1半導体層および前記第2半導体層の屈折率よりも小さい、構成であってよい。
【0077】
本開示の態様5に係る発光装置は、態様1~4の何れかに係る発光装置であり、前記第1発光層および前記第2発光層は、光取り出し面からの距離が異なる、構成であってよい。
【0078】
本開示の態様6に係る発光装置は、態様1~5の何れかに係る発光装置であり、前記第1側壁および前記第2側壁からも光が出射する、構成であってよい。
【0079】
本開示の態様7に係る発光装置は、態様1~6の何れかに係る発光装置であり、前記第1側壁および前記第2側壁は、平面形状である、構成であってよい。
【0080】
本開示の態様8に係る発光装置は、態様1~7の何れかに係る発光装置であり、前記第1側壁および前記第2側壁は、湾曲形状である、構成であってよい。
【0081】
本開示の態様9に係る発光装置は、態様1~7の何れかに係る発光装置であり、前記第1半導体層および前記第2半導体層は、平面視において四角形である、構成であってよい。
【0082】
本開示の態様10に係る発光装置は、態様1~6、8の何れかに係る発光装置であり、前記第1半導体層および前記第2半導体層は、平面視において楕円である、構成であってよい。
【0083】
本開示の態様11に係る発光装置は、態様10に係る発光装置であり、前記第1半導体層を平面視したときの楕円の長軸と、前記第2半導体層を平面視したときの長軸とが平行でない、構成であってよい。
【0084】
本開示の態様12に係る発光装置は、態様7に係る発光装置であり、前記第1半導体層および前記第2半導体層は、平面視において、5本以上の辺をもつ凹多角形である、構成であってよい。
【0085】
本開示の態様13に係る発光装置は、態様1~12の何れかに係る発光装置であり、前記第1側壁および前記第2側壁間の距離が、厚み方向の位置によって変化しない、構成であってよい。
【0086】
本開示の態様14に係る発光装置は、態様1~12の何れかに係る発光装置であり、前記第1側壁および前記第2側壁間の距離が、厚み方向の位置によって変化する、構成であってよい。
【0087】
本開示の態様15に係る発光装置は、態様14に係る発光装置であり、前記第1半導体層および前記第2半導体層は、テーパ形状である、構成であってよい。
【0088】
本開示の態様16に係る発光装置は、態様15に係る発光装置であり、前記第1半導体層および前記第2半導体層は、光取り出し面から離れる方向に先細りする形状である、構成であってよい。
【0089】
本開示の態様17に係る発光装置は、態様1~16の何れかに係る発光装置であり、前記第1側壁の法線および前記第2側壁の法線がなす鋭角が10°以下である、構成であってよい。
【0090】
本開示の態様18に係る発光装置は、態様1~17の何れかに係る発光装置であり、第3発光層を含む第3半導体層を備え、前記第3半導体層が有する第3側壁と、前記第2半導体層が前記第2側壁の反対側に有する第4側壁とが、間隙を介して隣り合い、前記第3側壁の法線および前記第4側壁の法線が平行でない、構成であってよい。
【0091】
本開示の態様19に係る発光装置は、態様1~18の何れかに係る発光装置であり、前記第1発光層を含む第1発光素子と、前記第2発光層を含む第2発光素子とを備える、構成であってよい。
【0092】
本開示の態様20に係る発光装置は、態様19に係る発光装置であり、前記第1半導体層および前記第2半導体層と結合する成長用基板と、前記第1発光素子および前記第2発光素子が実装される駆動用基板とを備える、構成であってよい。
【0093】
本開示の態様21に係る発光装置は、態様1~20の何れかに係る発光装置であり、前記第1発光層および前記第2発光層から出射する光がランバーシアン配向である、構成であってよい。
【0094】
本開示の態様22に係る発光装置は、態様1~21の何れかに係る発光装置であり、前記第1半導体層および前記第2半導体層それぞれが、ガリウムを含む窒化物半導体結晶である、構成であってよい。
【0095】
本開示の態様23に係る発光装置は、態様20および態様20を引用する態様21および22との何れかに係る発光装置であり、前記第1半導体層は、前記成長基板の成長面に結合し、前記成長用基板の前記成長面の反対側の面が光取り出し面である、構成であってよい。
【0096】
本開示の態様24に係る発光装置は、態様19および態様19を引用する態様20~23の何れかに係る発光装置であり、前記第1発光素子は、アノードおよびカソードを備え、前記アノードおよび前記カソードの少なくとも一方は光反射性を有する、構成であってよい。
【0097】
本開示の態様25に係る表示装置は、態様1~24の何れかに係る発光装置を含む、構成である。
【0098】
本開示の態様26に係るウェアラブル装置は、態様1~25の何れかに係る発光装置を含む、構成である。
【0099】
本開示の態様27に係る発光装置の製造方法は、成長用基板に半導体結晶を成長させる工程と、前記半導体結晶をパターニングすることで、第1発光層を含み、第1側壁を有する第1半導体層と、第2発光層を含み、第2側壁を有する第2半導体層とを形成する工程とを含み、前記第1側壁と前記第2側壁とが間隙を介して隣り合い、前記第1側壁の法線および前記第2側壁の法線を平行としない、方法である。
【0100】
本開示の態様28に係る発光装置の製造方法は、態様27に係る発光装置の製造方法であり、前記第1半導体層を含む第1発光素子と、前記第2半導体層を含む第2発光素子とを形成する工程と、前記第1発光素子および前記第2発光素子を駆動用基板に実装する工程とを含む、方法であってよい。
【0101】
本開示に係る発光装置では、前記第1側壁の法線が前記第2側壁と交わり、前記第2側壁の法線が前記第1側壁と交わってよい。
【0102】
本開示に係る発光装置では、前記第1半導体層および前記第2半導体層の屈折率は、前記間隙の屈折率の2.0倍以上であってよい。
【0103】
本開示に係る発光装置では、前記態様9に記載の四角形が、長方形、台形および菱形のいずれか1つである、構成であってよい。
【0104】
本開示に係る発光装置では、前記第2半導体層が、前記第1発光層と同材料で構成されたダミー発光層を有してよい。
【0105】
本開示に係る発光装置では、前記第1発光層が第1色で発光し、前記第2発光層が第2色で発光してよい。
【0106】
本開示に係る発光装置では、前記第1側壁および前記第2側壁それぞれが絶縁膜で覆われていてよく、この場合は、前記第1側壁を覆う絶縁膜の法線と、前記第2側壁を覆う絶縁膜の法線とが平行でない構成であってよい。
【0107】
本開示に係る発光装置では、前記第3側壁の法線が前記第4側壁と交わり、前記第4側壁の法線が前記第3側壁と交わってよい。
【0108】
本開示に係る発光装置では、前記第3側壁および前記第4側壁間の最小距離が30〔nm〕~2.0〔μm〕であってよい。
【0109】
本開示に係る発光装置では、前記第3半導体層および前記第2半導体層を平面視したときの前記第3側壁および前記第4側壁間の距離が一定でなくてよい。
【0110】
本開示に係る発光装置では、前記第3発光層が第3色で発光してよい。
【0111】
本開示に係る発光装置では、前記第1発光素子が、前記第1半導体層および前記駆動用基板の間に位置する、アノードおよびカソードを備えてよい。
【0112】
本開示に係る発光装置では、前記第1半導体層が、前記アノードに接するアノードコンタクト層と、前記カソードに接するカソードコンタクト層とを含み、前記アノードコンタクト層および前記カソードコンタクト層それぞれがn型半導体層であってよい。
【0113】
本開示に係る発光装置では、前記第1半導体層が、前記第1発光層および前記アノードコンタクト層の間に位置するトンネルジャンクション層を含んでよい。
【0114】
本開示に係る発光装置では、前記アノードおよび前記カソードが同材料で構成されていてよい。
【0115】
本開示に係る発光装置では、前記第1半導体層が、前記成長用基板と接するバッファ層を含んでよい。
【0116】
本開示に係る発光装置では、前記第1色は、赤、緑および青のいずれかであってよい。
【0117】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0118】
10 発光装置
11 第1半導体層
12 第2半導体層
13 第3半導体層
50 表示装置
60 ウェアラブル装置
A1、A2、A3 アノード
BA バッファ層
BS 成長面
C1、C2、C3 カソードコンタクト層
D1 第1発光素子
D2 第2発光素子
D3 第3発光素子
DK 駆動用基板
E1 第1発光層
E2 第2発光層
E3 第3発光層
F1、F2、F3 アノードコンタクト層
K1、K2、K3 カソード
N1、N2 ダミー発光層
S1、S2 間隙
SK 成長用基板
SL 半導体結晶
T1、T2、T3 トンネルジャンクション層
TS 光取り出し面
W1 第1側壁
W2 第2側壁
W3 第3側壁
W4 第4側壁
図1
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