IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シャープ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-表示装置 図1
  • 特開-表示装置 図2
  • 特開-表示装置 図3
  • 特開-表示装置 図4
  • 特開-表示装置 図5
  • 特開-表示装置 図6
  • 特開-表示装置 図7
  • 特開-表示装置 図8
  • 特開-表示装置 図9
  • 特開-表示装置 図10
  • 特開-表示装置 図11
  • 特開-表示装置 図12
  • 特開-表示装置 図13
  • 特開-表示装置 図14
  • 特開-表示装置 図15
  • 特開-表示装置 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180083
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/08 20100101AFI20241219BHJP
   H01L 33/48 20100101ALI20241219BHJP
   G02B 27/02 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
H01L33/08
H01L33/48
G02B27/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099524
(22)【出願日】2023-06-16
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)本願は、令和2年度、国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)、研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)「高臨場感VR/ARディスプレイのための高輝度フルカラーモノリシックLEDの開発」委託研究の成果である、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】上田 吉裕
【テーマコード(参考)】
2H199
5F142
5F241
【Fターム(参考)】
2H199CA02
2H199CA12
2H199CA25
5F142CD02
5F142DB24
5F142GA01
5F241AA14
5F241CA05
5F241CA40
5F241CA74
5F241CA92
5F241CB11
5F241CB27
5F241FF01
(57)【要約】
【課題】表示装置における発光素子間の迷光の伝搬を低減し、表示装置の表示品位を改善する。
【解決手段】表示装置は、第1発光領域(14)を有する第1発光素子(10)、第2発光領域(24)を有する第2発光素子(20)、および第3発光領域(34)を有する第3発光素子(30)を備える。各発光領域の何れかの位置は互いに3回回転対称の位置にある。隣接する2つの発光領域の間において向かい合う2辺は交差する方向に延伸する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1発光領域を有する第1発光素子と、前記第1発光素子と隣接するとともに第2発光領域を有する第2発光素子と、前記第1発光素子および前記第2発光素子の双方と隣接するとともに第3発光領域を有する第3発光素子を備え、
平面視において、前記第1発光領域、前記第2発光領域、および前記第3発光領域のそれぞれの何れかの部分が互いに3回回転対称の位置にあり、
前記第1発光領域と前記第2発光領域との間、前記第2発光領域と前記第3発光領域との間、および前記第3発光領域と前記第1発光領域との間において、平面視において向かい合う2辺は交差する方向に延伸する表示装置。
【請求項2】
平面視において、前記第1発光領域、前記第2発光領域、および前記第3発光領域のそれぞれの図心が互いに3回回転対称の位置にある請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
平面視において、前記第1発光領域、前記第2発光領域、および前記第3発光領域は同一の形状を有する請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
平面視において、前記第1発光領域、前記第2発光領域、および前記第3発光領域のうち少なくとも一つが、他の何れかの発光領域を当該発光領域の外側を中心に回転させて、回転させた当該発光領域の内側を中心に回転させた領域と一致する請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
平面視において、前記第1発光領域、前記第2発光領域、および前記第3発光領域のそれぞれが四角形状である請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項6】
平面視において、前記第1発光領域、前記第2発光領域、および前記第3発光領域のそれぞれがひし形、平行四辺形、または台形の何れかである請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】
前記第1発光素子は第1発光層を含み、前記第2発光素子は第2発光層を含み、前記第3発光素子は第3発光層を含む請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項8】
前記第1発光素子、前記第2発光素子、および前記第3発光素子が位置する第1基板を備えた請求項7に記載の表示装置。
【請求項9】
前記第1基板の、前記第1発光素子、前記第2発光素子、および前記第3発光素子の側の表面である第1表面と、前記第1発光層、前記第2発光層、および前記第3発光層の何れかの側面とが成す第1角度が鋭角または鈍角である請求項8に記載の表示装置。
【請求項10】
前記第1発光層、前記第2発光層、および前記第3発光層のうち少なくとも2つは、互いに、前記第1基板の、前記第1発光素子、前記第2発光素子、および前記第3発光素子の側の表面である第1表面からの距離が異なる請求項8に記載の表示装置。
【請求項11】
前記第1発光素子、前記第2発光素子、および前記第3発光素子のそれぞれと接合材を介して接合する第2基板を備えた請求項7に記載の表示装置。
【請求項12】
前記第2基板の、前記接合材の側の表面である第2表面と、前記第1発光層、前記第2発光層、および前記第3発光層の何れかの側面とが成す第2角度が鋭角または鈍角である請求項11に記載の表示装置。
【請求項13】
前記第2基板は、前記第1発光素子、前記第2発光素子、および前記第3発光素子のそれぞれを駆動する画素回路を含む請求項11に記載の表示装置。
【請求項14】
前記第1発光層、前記第2発光層、および前記第3発光層のうち少なくとも2つは、互いに、前記第2基板の、前記接合材の側の表面である第2表面からの距離が異なる請求項11に記載の表示装置。
【請求項15】
平面視において、前記第1発光領域、前記第2発光領域、および前記第3発光領域の少なくとも一つは、平面視において周囲よりも外側に突出する凸部と、平面視において周囲よりも内側に窪む凹部と、の少なくとも一方を有する請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項16】
前記第1発光素子は第1光を発し、前記第2発光素子は前記第1光と異なる波長を有する第2光を発し、前記第3発光素子は前記第1光および前記第2光の双方と異なる波長を有する第3光を発する請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項17】
平面視において前記第1発光素子に隣接するとともに前記第2光を発する第4発光素子と、平面視において前記第1発光素子に隣接するとともに前記第3光を発する第5発光素子と、を備えた請求項16に記載の表示装置。
【請求項18】
前記第1光が青色光であり、前記第2光が緑色光であり、前記第3光が赤色光である請求項16に記載の表示装置。
【請求項19】
前記第1発光素子と、前記第2発光素子と、前記第3発光素子と、を含む発光装置を備えたウェアラブルデバイスである請求項1または2に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は発光素子を複数備えた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1はサブピクセルごとにマイクロLEDを備えたマイクロLEDディスプレイ装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-185515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のマイクロLEDディスプレイ装置のように、サブ画素ごとに発光素子を備えた表示装置においては、あるサブ画素から出射した光が他のサブ画素まで伝搬する迷光が生じる場合がある。迷光は表示装置の表示品位を低下させ得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る表示装置は、第1発光領域を有する第1発光素子と、前記第1発光素子と隣接するとともに第2発光領域を有する第2発光素子と、前記第1発光素子および前記第2発光素子の双方と隣接するとともに第3発光領域を有する第3発光素子を備え、平面視において、前記第1発光領域、前記第2発光領域、および前記第3発光領域のそれぞれの何れかの位置が互いに3回回転対称の位置にあり、前記第1発光領域と前記第2発光領域との間、前記第2発光領域と前記第3発光領域との間、および前記第3発光領域と前記第1発光領域との間において、平面視において向かい合う2辺は交差する方向に延伸する。
【発明の効果】
【0006】
発光素子の間における迷光の伝搬を低減し、表示品位を改善する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態1に係る表示装置の画素の拡大平面図である。
図2】実施形態1に係る表示装置の概略平面図である。
図3】実施形態1に係る表示装置の拡大平面図である。
図4】実施形態1に係る表示装置の概略側断面図である。
図5】実施形態1に係る発光素子の積層構造を説明するための模式図である。
図6】実施形態1に係る表示装置の他の概略側断面図である。
図7】実施形態1に係る表示装置の製造方法を示すフローチャートである。
図8】実施形態1に係る表示装置の製造方法を示す工程断面図である。
図9】実施形態1に係る表示装置の製造方法を示す他の工程断面図である。
図10】実施例と比較例とのそれぞれに係る表示装置における、発光領域の図心からの距離と輝度との関係を示すグラフである。
図11】実施形態2に係る表示装置の画素の拡大平面図である。
図12】実施形態3に係る表示装置の概略側断面図である。
図13】実施形態4に係る表示装置の画素の拡大平面図である。
図14】実施形態5に係る表示装置の拡大平面図である。
図15】実施形態5に係るウェアラブルデバイスの概略断面図である。
図16】実施形態5に係る他のウェアラブルデバイスの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔実施形態1〕
<表示装置:概要>
以下、本開示の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において、同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0009】
図2は本実施形態に係る表示装置1の概略平面図である。表示装置1は、例えば、テレビまたはスマートフォン等のディスプレイ、あるいは、HMD、VRゴーグル、ARゴーグル等のウェアラブルデバイスに用いることのできる装置である。表示装置1は、表示部DAと表示部DAの外周に形成された額縁部NAとを備える。表示装置1は、表示部DAに形成された後述する複数の発光素子のそれぞれからの発光を制御することにより、表示部DAにおいて表示を行う。額縁部NAには、表示部DAの複数の発光素子のそれぞれを駆動するためのドライバ等が形成されてもよい。
【0010】
<表示装置:画素および発光素子の配置>
本実施形態に係る表示装置1の詳細について、図3を参照して説明する。図3は、表示装置1の表示部DAの拡大平面図であり、特に、図2に示す領域Eについて拡大して示す平面図である。なお、図3を含む本開示における表示装置1の表示部DAの拡大平面図は、各部材をより明確に示すために、後述する発光素子のそれぞれの発光領域を抜き出して示す。
【0011】
表示装置1は、第1発光素子としての青色発光素子10と、第2発光素子としての緑色発光素子20と、第3発光素子としての赤色発光素子30と、を発光素子としてそれぞれ複数備える。表示装置1は、青色発光素子10、緑色発光素子20、および赤色発光素子30を一つずつ含む画素Pを複数含む。
【0012】
青色発光素子10は第1光として青色光を発し、緑色発光素子20は第2光として緑色光を発し、赤色発光素子は第3光として赤色光を発する。表示装置1は各画素Pの発光素子のそれぞれを個別に駆動して、各画素から青色光、緑色光、および赤色光を個々に取り出す。これにより、表示装置1は表示部DAにおいてフルカラー表示を行う。
【0013】
本実施形態において、青色発光素子10は、当該青色発光素子10を含む画素Pに含まれる緑色発光素子20および赤色発光素子30と隣接する。また、青色発光素子10は、当該青色発光素子10を含む画素Pとは異なる画素Pに含まれる、第4発光素子としての緑色発光素子40、および第5発光素子として赤色発光素子50と隣接してもよい。なお、本開示において、「2つの発光素子が隣接する」とは、平面視当該2つの発光素子の各発光領域の向かい合う辺の間に他の発光素子が位置しないことを指す。
【0014】
本実施形態において、隣接する2つの画素Pは、各画素Pにおける青色発光素子10、緑色発光素子20、および赤色発光素子30の位置関係が互いに異なっていてもよい。これにより表示装置1は、同一周期にて同一発光色の発光領域が視認されることに伴う表示品位の低下を抑制する。また、本実施形態において各発光素子は、隣接する2つの発光素子の発光色が異なるように配置されてもよい。これにより表示装置1は、隣接する2つの発光素子の発光領域が見かけ上つながり実質的に解像度が低下することに伴う表示品位の低下を抑制する。
【0015】
<表示装置:基板>
表示装置1の表示部DAにおける構造について、図4を参照してさらに詳細に説明する。図4は表示装置1の概略側断面図であり、特に、図3に示すIV-IV線矢視断面図である。換言すれば、図4は表示装置1の青色発光素子10、緑色発光素子20、および赤色発光素子30を通る側断面について示す。
【0016】
図4に示すように表示装置1は、第1基板2と、第1基板2に対向する第2基板7と、第1基板2と第2基板7との間の青色発光素子10、緑色発光素子20、および赤色発光素子30と、を備える。第1基板2および第2基板7は例えば表示部DAおよび額縁部NAにわたって形成される。なお、特に言及しない限り本開示においては、第1基板2から各発光素子への方向を「下方向」、第2基板7から各発光素子への方向を「上方向」として説明する。
【0017】
第1基板2は透光性を有する硬直な基板であり、例えば、第2基板7の側に位置する第1表面2FにC面を有するサファイアを含むサファイア基板である。第1表面2F上には、青色発光素子10、緑色発光素子20、および赤色発光素子30が位置する。第2基板7は、青色発光素子10、緑色発光素子20、および赤色発光素子30のそれぞれを後述する方法にて駆動する画素回路71を含む。また、表示装置1は、第2基板7の第1基板2の側に位置する第2表面7F上に接合材6を備える。第2基板7は接合材6を介して青色発光素子10、緑色発光素子20、および赤色発光素子30と接合する。第1基板2と第2基板7とは額縁部NA等の各発光素子の周囲において接合材等によって接合されてもよい。
【0018】
<表示装置:発光素子:積層構造>
青色発光素子10、緑色発光素子20、および赤色発光素子30は、第1基板2の側から順に、下地層3、電子輸送層4、第1発光層としての青色発光層13、および正孔輸送層5を備える。また、緑色発光素子20、および赤色発光素子30は、青色発光層13直下の正孔輸送層5の下面の一部に、第1基板2の側から順に、電子輸送層4、第2発光層としての緑色発光層23、および正孔輸送層5を備える。さらに、赤色発光素子30は、緑色発光層23直下の正孔輸送層5の下面の一部に、第1基板2の側から順に、電子輸送層4、第3発光層としての赤色発光層33、および正孔輸送層5を備える。
【0019】
青色発光層13、緑色発光層23、および赤色発光層33のそれぞれと第1基板2との間に位置する層の数は互いに異なる。したがって、青色発光層13、緑色発光層23、および赤色発光層33のそれぞれから第1基板2の第1表面2Fまでの距離L1、距離L2、および距離L3は互いに異なる。また、第1基板2の第1表面2Fと第2基板7の第2表面7Fとは略平行である。このため、青色発光層13、緑色発光層23、および赤色発光層33のそれぞれから第2基板7の第2表面7Fまでの距離L4、距離L5、および距離L6が互いに異なる。
【0020】
本実施形態に係る各発光素子の積層構造について、図5を参照して詳細に説明する。図5は、青色発光素子10の下地層3から正孔輸送層5までの積層構造を抜き出して示す模式図である。
【0021】
下地層3は、サファイア基板である第1基板2のサファイア結晶と後述する電子輸送層4の半導体の結晶との格子整合のための層である。下地層3は、第1基板2の側から順に、第1バッファ層81と第2バッファ層82とを含む。第1バッファ層81は第1表面2F上に、例えば600℃以下の低温にてエピタキシャル成長された半導体結晶を含み、例えば膜厚40nmの窒化ガリウム結晶を含んでもよい。第2バッファ層82は第1バッファ層81上にエピタキシャル成長された半導体結晶を含み、例えば膜厚2μmのノンドープの窒化ガリウム結晶を含んでもよい。第2バッファ層82は電子輸送層4と正孔輸送層5との間のそれぞれにも形成されてよい。
【0022】
電子輸送層4は後述するカソードからの電子を発光層に輸送する層である。電子輸送層4は、第2バッファ層82上にエピタキシャル成長されたn型半導体結晶を含み、例えば、ドーパントとしてSi等の14族元素を有する膜厚2μmの窒化ガリウム結晶を含んでもよい。
【0023】
正孔輸送層5は、後述するアノードからの正孔を発光層に輸送する層である。正孔輸送層5は、第1基板2の側から順に、第1p型半導体層83、第2p型半導体層84、第1n型半導体層85、第2n型半導体層86を含む。
【0024】
第1p型半導体層83および第2p型半導体層84のそれぞれは、エピタキシャル成長により形成されたp型半導体結晶を含む。例えば、第1p型半導体層83は膜厚20nmの窒化アルミニウムガリウム結晶を含んでもよく、第2p型半導体層84は膜厚120nmの窒化ガリウム結晶を含んでもよい。第1p型半導体層83および第2p型半導体層84はドーパントとしてMg等の2族元素を有してもよい。
【0025】
第1n型半導体層85および第2n型半導体層86のそれぞれは、エピタキシャル成長により形成されたn型半導体結晶を含む。例えば、第1n型半導体層85は膜厚25nmの窒化ガリウム結晶を含んでもよく、第2n型半導体層86は膜厚400nmの窒化ガリウム結晶を含んでもよい。第1n型半導体層85および第2n型半導体層86はドーパントとしてSi等の14族元素を有してもよい。
【0026】
青色発光層13、緑色発光層23、および赤色発光層33は、電子輸送層4はからの電子と正孔輸送層5からの正孔との再結合により生成された励起子によって発光する発光材料を含む。青色発光層13、緑色発光層23、および赤色発光層33のそれぞれの発光材料は、青色光、緑色光、および赤色光を発し、例えば多重量子井戸構造を有してもよい。
【0027】
例えば、波長450〔nm〕程度の青色光を発する青色発光層13として、厚さ50〔nm〕であってIn(インジウム)の組成比が20%の窒化インジウムガリウム(InとGaの原子比が1:4の混晶)を用いることができる。例えば、波長550〔nm〕程度の緑色光を発する緑色発光層23として、Inの組成比が25%の窒化インジウムガリウム(混晶)を用いることができる。例えば、波長630〔nm〕程度の赤色光を発する赤色発光層33として、Inの組成比が30%の窒化インジウムガリウム(混晶)を用いることができる。
【0028】
<表示装置:発光素子:電極>
図4の参照に戻ると、青色発光素子10、緑色発光素子20、および赤色発光素子30のそれぞれは、アノード11、アノード21、およびアノード31を備える。各アノードは各発光素子の最も第2基板7に近接する正孔輸送層5の下面と電気的に接続する。また、各アノードは接合材6等を介して各画素回路71と電気的に接続し、各画素回路71を介して個々に電圧が印加される。
【0029】
青色発光素子10、緑色発光素子20、および赤色発光素子30のそれぞれは、カソード12、カソード22、およびカソード32を備える。各カソードは各発光素子の最も第2基板7に近接する正孔輸送層5の下面の一部と電気的に接続する。各カソードは接合材6等を介して不図示の補助電源に接続され、共通の電圧が印加される。
【0030】
本実施形態において、電子輸送層4はn型の半導体層であり、正孔輸送層5は各アノードの側にn型の半導体層を含む。このため、表示装置1は、各アノードの材料と各カソードの材料との間において仕事関数に差異を生じさせる必要が低減し、例えば、各アノードの材料と各カソードの材料との材料を同一とできる。各アノードおよび各カソードは例えばTi、Al、Tiの積層構造を有してもよい。
【0031】
なお、本実施形態に係る表示装置1は、青色発光素子10、緑色発光素子20、および赤色発光素子30をそれぞれ複数備える構成に限定されない。例えば表示装置1は、青色発光素子10、緑色発光素子20、および赤色発光素子30のうち何れかを複数備えた単色の表示装置であってもよい。
【0032】
また表示装置1は、各発光素子から出射した光の波長を変換する波長変換層を各発光素子より光取り出し側に備えてもよい。例えば、表示装置1は、複数の青色発光素子10を備え、平面視において一部の青色発光素子10と重なる位置に、緑色光および赤色光を発する蛍光体を含む緑色変換層および赤色変換層を波長変換層として平面視において配列して備えてもよい。あるいは、表示装置1は、複数の紫外光を発する発光素子を備えてもよい。この場合、表示装置1は、平面視において各発光素子と重なる位置に、青色光、緑色光、および赤色光を発する蛍光体を含む青色変換層、緑色変換層、および赤色変換層を波長変換層として平面視において配列して備えてもよい。これにより、表示装置1は同一発光色の発光素子のみを複数備えつつカラー表示を可能としてもよい。
【0033】
<発光素子の発光原理>
表示装置1は、不図示のドライバ等を介して画素回路71のそれぞれを駆動することにより、各発光素子のアノードに個別に電圧を印加することにより、各発光素子のアノードとカソードとの間に電位差を生じさせる。これにより、表示装置1は、各アノードから正孔輸送層5に正孔を、各カソードから電子輸送層4に電子を注入させる。
【0034】
なお、各アノードからの正孔は、正孔輸送層5の第2n型半導体層86および第1n型半導体層85をトンネルし第2p型半導体層84に注入されてもよい。この場合、表示装置1は、各アノードと各カソードとの材料を同一としつつ、各発光素子における電極からの電荷の注入を効率的に達成できる。表示装置1は、各発光素子の電極から発光層に正孔と電子とを注入させ発光層を発光させることにより、各発光素子から光を取り出す。
【0035】
なお、青色発光素子10において、カソード12からの電子は青色発光層13の直上の電子輸送層4を経由して青色発光層13に注入されればよく、換言すれば下地層3を経由しなくともよい。また、緑色発光素子20において、カソード22からの電子は緑色発光層23の直上の電子輸送層4を経由して緑色発光層23に注入されればよく、換言すれば当該電子輸送層4よりも第1基板2の側の各層を経由しなくともよい。さらに、赤色発光素子30において、カソード32からの電子は赤色発光層33の直上の電子輸送層4を経由して赤色発光層33に注入されればよく、換言すれば当該電子輸送層4よりも第1基板2の側の各層を経由しなくともよい。
【0036】
<発光素子の発光領域>
本実施形態に係る表示装置1の画素Pにおける各発光素子について、図1を参照してより詳細に説明する。図1は表示装置1の他の拡大平面図であり、特に図3に示す画素Pについてさらに拡大した平面図である。図1においては各発光層のうち当該発光層を備えた発光素子を駆動した場合に発光する領域を抜き出して示している。
【0037】
青色発光素子10、緑色発光素子20、および赤色発光素子30は、それぞれの発光領域として第1発光領域14、第2発光領域24、および第3発光領域34を有する。第1発光領域14、第2発光領域24、および第3発光領域34は平面視において四角形状を有し、本実施形態においては特にひし形形状を有する。このため、第1発光領域14、第2発光領域24、および第3発光領域34のそれぞれは、平面視において4つの端辺15、端辺25、および端辺35を有する。
【0038】
隣接する2つの画素Pの距離を保ちつつ各発光領域を拡大する観点から、各画素Pが含む発光領域は平面視における外形が略正六角形となる領域に収まることが望ましい。画素Pが含む各発光領域が平面視において四角形状を有することにより、画素Pの外形をより略正六角形に近接させることが可能となる。さらに画素Pの外形を略正六角形に近接させる観点から、画素Pが含む各発光領域の外形は、平面視においてひし形、平行四辺形、あるいは台形であってもよい。
【0039】
なお、各発光素子の製造時におけるマスクパターンを簡素とし表示装置1の製造をより容易とする観点から、第1発光領域14、第2発光領域24、および第3発光領域34は平面視において同一の形状を有してもよい。本開示において、「同一の形状を有する」とは2つの部材が完全に一致する形状を有することを必ずしも指さず、例えば製造誤差等の差異を許容する。
【0040】
各発光素子の発光領域の端辺の一つは、平面視において他の発光素子の発光領域の端辺の一つと互いに向かい合う。ここで、当該互いに向かい合う2辺は、平面視において交差する方向に延伸し、換言すれば当該2辺は平面視において非平行である。例えば、端辺15と端辺25との間、端辺25と端辺35との間、および端辺35と端辺15との間において、互いに向かい合う2辺は平面視において交差する方向に延伸する。
【0041】
第1発光領域14、第2発光領域24、および第3発光領域34のそれぞれは、図心16、図心26、および図心36を有する。本実施形態において、各発光領域の図心は、平面視における各発光領域の2つの対角線の交点と一致してもよい。本開示において、平面視におけるある領域の図心とは、平面視における当該領域を断面とした場合において断面一次モーメントが0となる位置を指す。
【0042】
<発光領域の位置関係>
画素P内における各発光領域の位置関係について説明するために、図1には点線にて仮想的な図形Tが示される。図形Tは平面視において図心TCを有する正三角形状の図形であり、3つの頂点TVを有する。このため、図形Tは平面視において図心TCを中心とした3回回転対称の図形であり、さらに、3つの頂点TVは互いに平面視における図心TCを中心とした3回回転対称の位置にある。
【0043】
本実施形態において、図心16、図心26、および図心36のそれぞれは、平面視において図形Tの頂点TVと重なる。このため、図心16、図心26、および図心36のそれぞれは、平面視において互いに3回回転対称の位置にある。
【0044】
また、画素P内における各発光領域の位置関係について説明するために、図1には点線にて仮想的な第2発光領域24A、および第3発光領域34Aが示される。第2発光領域24Aおよび第3発光領域34Aのそれぞれは、平面視において、第1発光領域14の外側に位置する点、特に図心TCを中心に第1発光領域14を回転させた領域と一致する。
【0045】
ここで、第2発光領域24は、平面視において第2発光領域24Aの内側に位置する点、特に第2発光領域24Aの図心を中心に回転させた領域と一致する。また、第3発光領域34は、平面視において第3発光領域34Aの内側に位置する点、特に第3発光領域34Aの図心を中心に回転させた領域と一致する。これにより、表示装置1は、端辺15と端辺25との間、および端辺15と端辺35との間において、互いに向かい合う2辺が平面視において非平行である構成を容易に達成する。
【0046】
<迷光の低減>
各発光領域の位置関係により奏される効果について図1を参照し説明する。
【0047】
表示装置1の各発光素子からの光は、各発光層から第1基板2または第2基板7への方向に取り出されることにより、表示部DAにおける表示に用いられる。一方、表示装置1の各発光素子からの光には、各発光層の側面から出射する光が含まれ、当該光はある発光素子から他の発光素子への方向に伝搬する成分を含む。
【0048】
例えば、各発光素子から表示装置の表示面と平行な方向に伝搬する光は表示に用いることが困難である。このため、当該光の発生は各発光素子からの光の取り出し効率の低下につながる。
【0049】
また、ある発光素子から他の発光素子への方向に伝搬する光のうち、表示装置の表示面と平行な方向からずれた方向に伝搬する光は、当該他の発光素子と平面視において重なる位置から取り出される場合がある。当該光は本来取り出されることを想定した位置と異なる位置において取り出された迷光であり、表示装置の表示品位を低下させる。さらに、迷光は発光素子の間において多重反射する場合があり、表示装置の表示品位のさらなる低下につながる場合がある。
【0050】
本実施形態において、隣接する2つの発光領域の間において向かい合う2辺は平面視において非平行である。このため、ある発光素子の発光層の側面から出射した光は他の発光素子に入射した場合に屈折する。さらに、本実施形態において、発光領域のそれぞれの一部は平面視において3回回転対称の位置にある。このため、上述したように屈折した光は、平面視において一部が互いに3回回転対称に位置にある発光領域を含む3つの発光素子の間を旋回するように伝搬させることを可能とする。
【0051】
例えば、図1に示すように、青色発光層13の側面から光SL1が緑色発光素子20への方向に出射したとする。この場合、緑色発光素子20に入射した光SL1は第2発光領域24の端辺25において屈折し、光SL2として緑色発光素子20内を伝搬する。さらに、光SL2は第2発光領域24の他の端辺25において再度屈折し、赤色発光素子30へ向かって伝搬する光SL3となる。以上を繰り返すことにより、画素P内の何れかの発光層の側面から出射した光は、平面視において画素P内を旋回するように伝搬する。したがって、表示装置1は当該光が画素Pの外部に取り出され迷光となることを抑制する。
【0052】
以上より、本実施形態に係る表示装置1は、ある発光素子の発光層の側面から出射した光が離れた発光素子と平面視において重なる位置から取り出されることを低減する。したがって、表示装置1は迷光の発生を低減し表示品位を改善する。また、本実施形態に係る表示装置1は、相対的に各発光層から表示面に向かう方向への光の強度を高め、各発光素子からの光の取り出し効率を向上させる。
【0053】
特に、本実施形態において、図心16、図心26、および図心36のそれぞれは、平面視において互いに3回回転対称の位置にある。これにより表示装置1は、第1発光領域14、第2発光領域24、および第3発光領域34の平面視における位置の回転対称性を高め、より迷光を低減できる。
【0054】
<発光層の側面と基板の表面との関係>
図6を参照して、本実施形態に係る発光素子をより詳細に説明する。図6は本実施形態に係る表示装置1の他の概略側断面図である。特に図6図1に示すVI-VI線矢視断面図であり、換言すれば赤色発光素子30を通る断面における表示装置1の概略側断面図である。
【0055】
赤色発光素子30の外側面は、青色発光層13の外側面13S、緑色発光層23の外側面23S、および赤色発光層33の外側面33Sを含み、略面一である。ここで、赤色発光素子30の外側面は、第1基板2の第1表面2Fと第1角度A1を成し、第2基板7の第2表面7Fと第2角度A2を成す。
【0056】
本実施形態において、赤色発光素子30は第1基板2の側に先端の側を有する錐台形状の部分を有してもよい。この場合、当該部分において、第1角度A1は鋭角であり、第2角度A2は鈍角である。換言すれば、外側面13S、外側面23S、および外側面33Sは、第1表面2Fと鋭角を成し第2表面7Fと鈍角を成す。
【0057】
なお、青色発光素子10および緑色発光素子20は、第2基板7の側の各層の一部が接合材6に置き換わる点を除き、赤色発光素子30と同一の構成を有する。このため、青色発光素子10および緑色発光素子20においても、各発光層の外側面は、第1表面2Fと鋭角を成し第2表面7Fと鈍角を成す。
【0058】
上記構成により表示装置1は、各発光層の外側面から出射した光のうち第1表面2Fまたは第2表面7Fに平行な方向に伝搬する光の成分を低減でき、各発光素子からの光の取り出し効率を向上させる。また、表示装置1は、各発光素子の外側面、特に各発光層の外側面における迷光が遠方まで伝搬することを低減し、表示品位を改善する。
【0059】
<表示装置の製造方法>
本実施形態に係る表示装置1の製造方法について、図7から図9を参照して説明する。図7は、表示装置1の製造方法について示すフローチャートである。図8および図9は、表示装置1の製造方法について示す工程断面図である。本実施形態における工程断面図は、何れも図4に示す表示装置1の断面と対応する位置における表示装置1の断面を示す。
【0060】
図7に示すように、表示装置1の製造方法においては、はじめに第1基板2を準備する(ステップS1)。ステップS1においては、第1表面2Fを上方に向けた第1基板2を準備する。ステップS1においては、大判の第1基板2を準備してもよく、この場合、表示装置1の製造方法においては、後に第2基板7とともに切断し個々の表示装置1に個片化してもよい。
【0061】
次いで、第1基板2の第1表面2F上への、下地層3の成膜(ステップS2)、電子輸送層4の成膜(ステップS3)、発光層の成膜(ステップS4)、および正孔輸送層5の成膜(ステップS5)を順に実行する。各層の成膜は上述した通りの方法により実行してもよい。また、表示装置1が複数の発光層を備える場合、ステップS3からステップS5を発光層の層数だけ繰り返し実行してもよい。これにより、図8のステップS5に示すように。第1基板2上に複数の半導体層の積層構造が形成される。
【0062】
次いで、当該半導体層をエッチングする(ステップS6)。ステップS6においては、例えば、ドライエッチングにより半導体層をエッチングしてもよい。ステップS6は、レジストの成膜、フォトリソグラフィによるレジストのパターニング、平面視においてレジストから露出する半導体層のエッチング、およびレジストの除去を、繰り返し実行することによって実行してもよい。
【0063】
ステップS6において、各発光素子の形成位置においては、当該発光素子が含む発光層の直上の正孔輸送層5および直下の電子輸送層4のそれぞれの一部が露出するようにエッチングを行う。例えば、青色発光素子10の形成位置においては、青色発光層13の直上の正孔輸送層5および直下の電子輸送層4のそれぞれの一部が露出するようにエッチングを行う。
【0064】
さらに、各発光素子の形成位置の間においては、第1基板2上の全ての半導体層を除去する。ステップS6においては、各発光素子の形成位置の間における半導体層の除去におけるパターニングおよびエッチングの条件を変更することにより、各層の端面と第1表面2Fとの成す角度、換言すれば第1角度A1を制御してもよい。以上により、図8のステップS8に示す構造が形成される。なお、各発光素子の形成位置の間における半導体層を除去は、後述する電極の形成後に実行してもよい。
【0065】
次いで、各発光素子のアノードおよびカソードを含む電極を形成する(ステップS7)。例えば、ステップS7においては、ステップS6により露出した電子輸送層4の上面および正孔輸送層5の上面を含む位置に、レジストパターンを形成した後、Ti、Al、Tiの順に金属薄膜を蒸着法等により成膜する。次いで、レジストパターンを除去することにより成膜した金属薄膜をパターニングする。以上により、図8のステップS7に示すように、各発光素子の形成位置において、正孔輸送層5の上面に各アノードが形成され、電子輸送層4の上面に各カソードが形成される。上述した製造方法は各アノードと各カソードとの材料が同一である場合に実行でき、各アノードの成膜工程と各カソードの成膜工程とを別々に実行する必要を低減し、表示装置1の製造方法をより簡素とする。
【0066】
以上により、第1基板2上に半導体層および電極が形成された第1積層体LA1が形成される。この後、本実施形態においては、第1基板2上の青色発光素子10、緑色発光素子20、赤色発光素子30の側面を覆う保護層を形成する工程を実行してもよい。
【0067】
本実施形態に係る表示装置1の製造方法においては、上述した第1積層体LA1の形成とは別に、第2基板7を準備する(ステップS8)。ステップS8においては、第2表面7Fを上方に向けた第2基板7を準備する。ステップS8においては、第2基板7に画素回路71を形成してもよい。
【0068】
次いで、第2表面7F上に接合材6を形成する(ステップS9)。接合材6は、例えば、感光性樹脂の成膜とフォトリソグラフィによる当該感光性樹脂のパターニングとにより形成されてもよい。ステップS8においては、後述する第2積層体LA2に貼り付けられる第1積層体LA1に形成された各層の高さを考慮して各接合材6の高さが設計される。ステップS8においては、画素回路71とアノードとの間、および補助電極とカソードとの間の電気的接続を実現するためのコンタクト部を接合材6に形成してもよい。
【0069】
以上により、第2基板7上に接合材6が形成された第2積層体LA2が形成される。
【0070】
ステップS7とステップS9との完了後、本実施形態に係る表示装置1の製造方法においては、第1積層体LA1と第2積層体LA2とを張り合わせる(ステップS10)。ステップS10においては、例えば、第1表面2Fと第2表面7Fとを向い合せ、第1基板2と第2基板7とを不図示の接着材料等により接合することにより、第1積層体LA1と第2積層体LA2とを張り合わせる。以上により、表示装置1の製造方法が完了する。なお、第1積層体LA1と第2積層体LA2とを張り合わせた後、レーザリフトオフ法等により第1基板2を各発光素子から剥離してもよい。
【0071】
<表示装置の光学特性の評価>
以下、実施例と比較例とのそれぞれに係る表示装置を作製し、各表示装置の光学特性を評価した。
【0072】
実施例に係る表示装置は、本実施形態に係る表示装置1と同一の構成を有し、上述した表示装置1の製造方法と同一の方法によって製造した。比較例に係る表示装置は、本実施形態に係る表示装置1と比較して、平面視における各発光素子の発光領域の形状のみが異なる。比較例に係る表示装置の各発光領域は矩形状であり、平面視において行列方向に配列する。また、比較例に係る表示装置において隣接する2つの発光領域の向かい合う2辺は略平行に延伸する。
【0073】
実施例と比較例とのそれぞれにおいて、各表示装置の何れか1つの発光素子のみを発光させ、各表示装置の表示面の各位置における輝度を測定した。図10は、実施例に係る表示装置における測定結果を示すグラフG1、および比較例に係る表示装置における測定結果を示すグラフG2およびグラフG3である。図10に示すそれぞれのグラフにおいて、縦軸は発光させた発光素子が有する発光領域の図心からの平面視における距離(単位μm)、横軸は輝度(単位W/μm)を表す。グラフG1およびグラフG2は、実施例および比較例のそれぞれに係る表示装置のうち、図4に示す測定面MAにおける測定結果を示し、グラフG3は、比較例に係る表示装置のうち、図4に示す測定面MBにおける測定結果を示す。測定面MAは第1基板2の第1表面2Fから内部側に200nm離れた位置にあり、測定面MAは第1基板2の第1表面2Fと各発光素子との界面に位置する。なお、図10に示すそれぞれのグラフのデータは、最大輝度を示すことが可能なスケールにてプロットされており、各軸の縮尺がグラフごとに異なる点に留意されたい。
【0074】
図10の各グラフの比較から明らかであるように、実施例に係る表示装置は比較例に係る表示装置と比較して、発光させた発光素子の発光領域の図心近傍における輝度が高く、図心から10μm程度離れた位置において輝度が急激に低下する。さらに、実施例に係る表示装置は比較例に係る表示装置と比較して、当該図心から100μm以上離れた位置における輝度がほとんど得られない。このことから、実施例に係る表示装置は比較例に係る表示装置と比較して、発光させた発光素子の発光領域より離れた位置において取り出される迷光を低減することがわかる。
【0075】
〔実施形態2〕
<発光領域の形状の変形例>
他の実施形態に係る表示装置について、図11を参照して説明する。図11は、本実施形態に係る表示装置1の拡大平面図であり、図1に示す領域と同一の領域を拡大して示す。
【0076】
本実施形態に係る表示装置1は、前実施形態に係る表示装置1と比較して、各発光素子の形成位置を除いて同一の構成を備える。本実施形態において、特に、本実施形態において、図心16、図心26、および図心36は、平面視において図形Tの頂点TVとは異なる位置にある。ただし、図形Tの各頂点TVは、第1発光領域14、第2発光領域24、および第3発光領域34のそれぞれの一部分と平面視において重なる。本実施形態に係る表示装置1は、前実施形態に係る表示装置1の製造方法のうち、ステップS6における半導体層のエッチング位置を変更した製造方法により製造できる。
【0077】
以上により、本実施形態に係る表示装置1においても、第1発光領域14、第2発光領域24、および第3発光領域34のそれぞれの何れかの部分が互いに3回回転対称の位置にある。したがって、本実施形態に係る表示装置1は、前実施形態において説明した理由と同一の理由から、発光素子の間における迷光の伝搬を低減して表示品位を改善する。
【0078】
〔実施形態3〕
<発光素子の形状の変形例>
他の実施形態に係る表示装置について、図12を参照して説明する。図12は、本実施形態に係る表示装置1の概略側断面図であり、図6に示す側断面と同一の位置における側
断面を示す。
【0079】
本実施形態に係る表示装置1は、前述の各実施形態に係る表示装置1と比較して、第1角度A1が鈍角であり、かつ第2角度が鋭角である点を除いて同一の構成を備える。本実施形態において、表示装置1の各発光素子は第2基板7の側に先端の側を有する錐台形状を有してもよい。本実施形態に係る表示装置1は、前実施形態に係る表示装置1の製造方法のうち、ステップS6における半導体層のエッチングの条件、およびステップS9における接合材6の形成の条件を変更した製造方法により製造できる。本実施形態に係る表示装置1は、前述した理由と同一の理由から、各発光素子からの光の取り出し効率を向上させる、また、各発光層の外側面における迷光が遠方まで伝搬することを低減し、表示品位を改善する。
【0080】
〔実施形態4〕
<発光領域の凹凸>
他の実施形態に係る表示装置について、図13を参照して説明する。図13は、本実施形態に係る表示装置1の拡大平面図であり、図1に示す領域と同一の領域を拡大して示す。
【0081】
本実施形態に係る表示装置1は、前述の各実施形態に係る表示装置1と比較して、各発光素子の発光領域の平面視における形状を除いて同一の構成を備える。本実施形態に係る何れかの発光素子の発光領域は、平面視において周囲よりも外側に突出する凸部と、平面視において周囲よりも内側に窪む凹部と、の少なくとも一方を有する。
【0082】
例えば、図13に示すように、第1発光領域14は凸部18と凹部19とを有し、第2発光領域24は凸部28と凹部29とを有し、第3発光領域34は凸部38と凹部39とを有する。本実施形態に係る表示装置1は、前実施形態に係る表示装置1の製造方法のうち、ステップS6における半導体層のエッチング位置を変更した製造方法により製造できる。
【0083】
なお、本実施形態において、各発光領域の端辺は、平面視における各発光領域の頂点同士を結ぶ線分上に位置するとする。このため、本実施形態においても、端辺15と端辺25との間、端辺25と端辺35との間、および端辺35と端辺15との間において、互いに向かい合う2辺は平面視において交差する方向に延伸する。本実施形態に係る表示装置1は、前述の理由と同一の理由から、発光素子の間における迷光の伝搬を低減して表示品位を改善する。
【0084】
さらに、本実施形態に係る各発光領域は凹部および凸部を備える。このため、本実施形態に係る表示装置1は、隣接する2つの発光層の向かい合う側面の延伸方向をさらに異ならせる。したがって、本実施形態に係る表示装置1は、前述の理由と同一の理由から、さらに発光素子の間における迷光の伝搬を低減して表示品位を改善する。
【0085】
〔実施形態5〕
<発光素子の配列の変形例>
他の実施形態に係る表示装置について、図14を参照して説明する。図14は、本実施形態に係る表示装置1の拡大平面図であり、図3に示す領域と同一の領域を拡大して示す。
【0086】
本実施形態に係る表示装置1は、前述の各実施形態に係る表示装置1と比較して、各発光素子の配列方法を除き構成が異なる。特に、本実施形態に係る表示装置1は、青色発光素子10、緑色発光素子20、および赤色発光素子30の平面視における位置関係が、全ての画素Pにおいて同一である。本実施形態に係る表示装置1は、前実施形態に係る表示装置1の製造方法のうち、ステップS6における半導体層のエッチング位置を変更した製造方法により製造できる。
【0087】
ただし、本実施形態においても、青色発光素子10は、当該青色発光素子10を含む画素Pに含まれる緑色発光素子20および赤色発光素子30と隣接する。また、青色発光素子10は、当該青色発光素子10を含む画素Pとは異なる画素Pに含まれる、緑色発光素子40および赤色発光素子50と隣接する。さらに、本実施形態において各発光素子は、隣接する2つの発光素子の発光色が異なるように配置される。これにより表示装置1は、隣接する2つの発光素子の発光領域が見かけ上つながり実質的に解像度が低下することに伴う表示品位の低下を抑制する。
【0088】
〔実施形態6〕
<ウェアラブルデバイス>
図15および図16は、本実施形態に係るウェアラブルデバイスの構成例を表す概略断面図である。図15に示すウェアラブルデバイス90、および図16に示すウェアラブルデバイス91のそれぞれは、発光装置92を備える。発光装置92は、前述の各実施形態に係る画素Pを複数有し、画素Pは前述の各実施形態に係る青色発光素子10、緑色発光素子20、および赤色発光素子30を含む。
【0089】
ウェアラブルデバイス90、およびウェアラブルデバイス91のそれぞれは、身体または他の装置等に装着可能である。図15に示すように、ウェアラブルデバイス90において、画素Pからの光は、そのまま人間の目あるいはセンサ等に入射してもよい。図16に示すように、ウェアラブルデバイス91において、画素Pからの光は、投影物93を介して入射してもよい。ウェアラブルデバイス90、およびウェアラブルデバイス91のそれぞれは、発光装置92の映像に外界94を重ね合わせることもできる。
【0090】
<まとめ>
本開示の態様1に係る表示装置は、第1発光領域を有する第1発光素子と、前記第1発光素子と隣接するとともに第2発光領域を有する第2発光素子と、前記第1発光素子および前記第2発光素子の双方と隣接するとともに第3発光領域を有する第3発光素子を備え、平面視において、前記第1発光領域、前記第2発光領域、および前記第3発光領域のそれぞれの何れかの部分が互いに3回回転対称の位置にあり、前記第1発光領域と前記第2発光領域との間、前記第2発光領域と前記第3発光領域との間、および前記第3発光領域と前記第1発光領域との間において、平面視において向かい合う2辺は交差する方向に延伸する。
【0091】
本開示の態様2に係る表示装置は、上記の態様1において、平面視において、前記第1発光領域、前記第2発光領域、および前記第3発光領域のそれぞれの図心が互いに3回回転対称の位置にあってもよい。
【0092】
本開示の態様3に係る表示装置は、上記の態様1または2において、平面視において、前記第1発光領域、前記第2発光領域、および前記第3発光領域は同一の形状を有してもよい。
【0093】
本開示の態様4に係る表示装置は、上記の態様3において、平面視において、前記第1発光領域、前記第2発光領域、および前記第3発光領域のうち少なくとも一つが、他の何れかの発光領域を当該発光領域の外側を中心に回転させて、回転させた当該発光領域の内側を中心に回転させた領域と一致してもよい。
【0094】
本開示の態様5に係る表示装置は、上記の態様1から4の何れかにおいて、平面視において、前記第1発光領域、前記第2発光領域、および前記第3発光領域のそれぞれが四角形状であってもよい。
【0095】
本開示の態様6に係る表示装置は、上記の態様5において、平面視において、前記第1発光領域、前記第2発光領域、および前記第3発光領域のそれぞれがひし形、平行四辺形、または台形の何れかであってもよい。
【0096】
本開示の態様7に係る表示装置は、上記の態様1から6の何れかにおいて、前記第1発光素子は第1発光層を含み、前記第2発光素子は第2発光層を含み、前記第3発光素子は第3発光層を含んでもよい。
【0097】
本開示の態様8に係る表示装置は、上記の態様7において、前記第1発光素子、前記第2発光素子、および前記第3発光素子が位置する第1基板を備えてもよい。
【0098】
本開示の態様9に係る表示装置は、上記の態様8において、前記第1基板の、前記第1発光素子、前記第2発光素子、および前記第3発光素子の側の表面である第1表面と、前記第1発光層、前記第2発光層、および前記第3発光層の何れかの側面とが成す第1角度が鋭角または鈍角であってもよい。
【0099】
本開示の態様10に係る表示装置は、上記の態様8または9において、前記第1発光層、前記第2発光層、および前記第3発光層のうち少なくとも2つは、互いに、前記第1基板の、前記第1発光素子、前記第2発光素子、および前記第3発光素子の側の表面である第1表面からの距離が異なってもよい。
【0100】
本開示の態様11に係る表示装置は、上記の態様7から10の何れかにおいて、前記第1発光素子、前記第2発光素子、および前記第3発光素子のそれぞれと接合材を介して接合する第2基板を備えてもよい。
【0101】
本開示の態様12に係る表示装置は、上記の態様11において、前記第2基板の、前記接合材の側の表面である第2表面と、前記第1発光層、前記第2発光層、および前記第3発光層の何れかの側面とが成す第2角度が鋭角または鈍角であってもよい。
【0102】
本開示の態様13に係る表示装置は、上記の態様11または12において、前記第2基板は、前記第1発光素子、前記第2発光素子、および前記第3発光素子のそれぞれを駆動する画素回路を含んでもよい。
【0103】
本開示の態様14に係る表示装置は、上記の態様11から13の何れかにおいて、前記第1発光層、前記第2発光層、および前記第3発光層のうち少なくとも2つは、互いに、前記第2基板の、前記接合材の側の表面である第2表面からの距離が異なってもよい。
【0104】
本開示の態様15に係る表示装置は、上記の態様1から14の何れかにおいて、平面視において、前記第1発光領域、前記第2発光領域、および前記第3発光領域の少なくとも一つは、平面視において周囲よりも外側に突出する凸部と、平面視において周囲よりも内側に窪む凹部と、の少なくとも一方を有してもよい。
【0105】
本開示の態様16に係る表示装置は、上記の態様1から15の何れかにおいて、前記第1発光素子は第1光を発し、前記第2発光素子は前記第1光と異なる波長を有する第2光を発し、前記第3発光素子は前記第1光および前記第2光の双方と異なる波長を有する第3光を発してもよい。
【0106】
本開示の態様17に係る表示装置は、上記の態様16において、平面視において前記第1発光素子に隣接するとともに前記第2光を発する第4発光素子と、平面視において前記第1発光素子に隣接するとともに前記第3光を発する第5発光素子と、を備えてもよい。
【0107】
本開示の態様18に係る表示装置は、上記の態様16または17において、前記第1光が青色光であり、前記第2光が緑色光であり、前記第3光が赤色光であってもよい。
【0108】
本開示の態様19に係る表示装置は、上記の態様1から18の何れかにおいて、前記第1発光素子と、前記第2発光素子と、前記第3発光素子と、を含む発光装置を備えたウェアラブルデバイスであってもよい。
【0109】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0110】
1 表示装置
2 第1基板
2F 第1表面
6 接合材
7 第2基板
7F 第2表面
10 青色発光素子(第1発光素子)
13 青色発光層(第1発光層)
14 第1発光領域
16 (第1発光領域の)図心
20 緑色発光素子(第2発光素子)
23 緑色発光層(第2発光層)
24 第2発光領域
26 (第2発光領域の)図心
30 赤色発光素子(第3発光素子)
33 赤色発光層(第3発光層)
34 第3発光領域
36 (第3発光領域の)図心
71 画素回路
A1 第1角度
A2 第2角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16