(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180087
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】NMNおよびリュウガンの組み合わせ
(51)【国際特許分類】
A23L 33/13 20160101AFI20241219BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20241219BHJP
A61K 36/77 20060101ALI20241219BHJP
A61K 31/706 20060101ALI20241219BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20241219BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241219BHJP
A61Q 19/02 20060101ALI20241219BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20241219BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20241219BHJP
A61K 131/00 20060101ALN20241219BHJP
【FI】
A23L33/13
A23L33/105
A61K36/77
A61K31/706
A61P17/00
A61P43/00 121
A61P43/00 111
A61Q19/02
A61K8/9789
A61K8/60
A61K131:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099528
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】金 辰也
【テーマコード(参考)】
4B018
4C083
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4B018MD44
4B018MD52
4B018ME14
4C083AA111
4C083AA112
4C083AD601
4C083AD602
4C083CC03
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD38
4C083EE16
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA63
4C086NA05
4C086ZA89
4C086ZC41
4C086ZC75
4C088AB12
4C088AC04
4C088BA08
4C088MA04
4C088MA52
4C088MA63
4C088NA05
4C088ZA89
4C088ZC41
4C088ZC75
(57)【要約】
【課題】NMNおよびリュウガンの組み合わせを提供する。
【解決手段】NMNおよびリュウガンの組み合わせ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リュウガンと組み合わせて使用するための、NMNを含んでなる組成物。
【請求項2】
NMNと組み合わせて使用するための、リュウガンを含んでなる組成物。
【請求項3】
NMNおよびリュウガンを含んでなる、組成物。
【請求項4】
皮膚の美白のための、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
NAMPT産生促進のための、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド産生促進のための、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
組成物中のNMNの乾燥重量をCA、リュウガンの乾燥重量をCBとした場合、CA/CBが0.2~20である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
食品組成物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NMNおよびリュウガンの組み合わせに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、肌の老化(たるみやシワ)をはじめとした全身の加齢に伴う疲労感、虚弱(フレイル)、生活習慣病(糖尿病等)の症状に悩まされる人は多く存在する。このような症状を改善するための1つのアプローチとしては、体質改善を可能にする成分、例えば、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドおよび/またはその前駆体であるニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)の摂取が挙げられる。ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドは生体内に広く分布する補酵素で、エネルギー代謝に使用され、多数のシグナル伝達機能への関与が知られており、その不足は細胞機能の低下を引き起こすと考えられることから、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドおよび/またはNMNを摂取することにより体質の改善につながることが期待される。
【0003】
このようにニコチンアミドアデニンジヌクレオチドおよび/またはNMNは直接摂取することの他にも、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドおよび/またはNMNの産生に関連する因子を活性化することで生体内のニコチンアミドアデニンジヌクレオチドおよび/またはNMNの量を増加させることにより体質改善を達成することも可能であると考えられる。ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドおよび/またはNMNの産生に関連する因子としては、例えば、ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ(NAMPT)が一般的に知られている。NAMPTはNMN産生に関与する酵素であり、したがって、NAMPT活性化剤やNAMPT産生促進剤は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドおよび/またはNMNの産生を促進するための成分として使用し得るものである。
【0004】
実際、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、NMN、およびこれらの産生に関連する因子を用いた健康食品の研究開発は従来から行われており、例えば、特許文献1では、NMNおよび黒ウコンを含有するサーチュイン活性化剤、およびこのサーチュイン活性化剤を含有する、健康食品組成物が開示されている(特許文献1)。
【0005】
このように、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、NMN、およびこれらの産生に関連する因子を用いた健康食品としては様々なものが見出されているが、その効果は必ずしも十分ではなく、より効果の高いもの、特に優れた効果を有するNAMPT活性化剤やNAMPT産生促進剤が現在でも求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【0007】
本発明者らは、NMNおよびリュウガンの組み合わせがNAMPTの産生促進に有用であることを見出した。本発明はこの知見に基づくものである。
【0008】
よって、本発明は、NMNおよびリュウガンの組み合わせを提供する。
【0009】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)リュウガンと組み合わせて使用するための、NMNを含んでなる組成物。
(2)NMNと組み合わせて使用するための、リュウガンを含んでなる組成物。
(3)NMNおよびリュウガンを含んでなる、組成物。
(4)皮膚の美白のための、(1)~(3)のいずれかに記載の組成物。
(5)NAMPT産生促進のための、(1)~(4)のいずれかに記載の組成物。
(6)ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド産生促進のための、(1)~(5)のいずれかに記載の組成物。
(7)組成物中のNMNの乾燥重量をCA、リュウガンの乾燥重量をCBとした場合、CA/CBが0.2~20である、(1)~(6)のいずれかに記載の組成物。
(8)食品組成物である、(1)~(8)のいずれかに記載の組成物。
(9)皮膚の美白を目的とする薬剤の製造のための、NMNおよびリュウガンの組み合わせの使用。
(10)NAMPTの産生を促進することを目的とする薬剤の製造のための、NMNおよびリュウガンの組み合わせの使用。
(11)ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドの産生を促進することを目的とする薬剤の製造のための、NMNおよびリュウガンの組み合わせの使用。
(12)前記薬剤における、NMNの乾燥重量をCA、リュウガンの乾燥重量をCBとした場合、CA/CBが0.2~20である、(9)~(11)のいずれかに記載の使用。
(13)NMNおよびリュウガンの組み合わせの、皮膚の美白のための使用。
(14)NMNおよびリュウガンの組み合わせの、NAMPTの産生を促進するための使用。
(15)NMNおよびリュウガンの組み合わせの、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドの産生を促進するための使用。
(16)組成物中のNMNの乾燥重量をCA、リュウガンの乾燥重量をCBとした場合、CA/CBが0.2~20である、(13)~(15)のいずれかに記載の使用。
(17)皮膚の美白のための、NMNおよびリュウガンの組み合わせ。
(18)NAMPTの産生を促進するための、NMNおよびリュウガンの組み合わせ。
(19)ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドの産生を促進するための、NMNおよびリュウガンの組み合わせ。
(20)NMNの乾燥重量をCA、リュウガンの乾燥重量をCBとした場合、CA/CBが0.2~20になるように使用される、(17)~(19)のいずれかに記載の組み合わせ。
(21)被験体における皮膚の美白のための方法であって、NMNおよびリュウガンの組み合わせの有効量を投与することを含む、方法。
(22)被験体において、NAMPTの産生を促進する方法であって、NMNおよびリュウガンの組み合わせの有効量を投与することを含む、方法。
(23)被験体において、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドの産生を促進する方法であって、NMNおよびリュウガンの組み合わせの有効量を投与することを含む、方法。
(24)NMNの乾燥重量をCA、リュウガンの乾燥重量をCBとした場合、CA/CBが0.2~20になるように投与される、(21)~(23)のいずれかに記載の方法。
【0010】
本発明によれば、NMNおよびリュウガンの組み合わせが提供される。本発明の組み合わせを用いることにより、効果的にNAMPTの産生を促進することも可能である。また、本発明の組み合わせを用いることにより、効果的にニコチンアミドアデニンジヌクレオチドの産生を促進することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、アスコルビン酸および/またはβ-NMNを添加した培養液を用いた皮膚モデルの培養の開始10~12日後に回収した培養液に含まれるNAMPTの量を評価した結果を示した図である。
【
図2】
図2は、β-NMNおよび/またはリュウガンニクを添加した培養液を用いた皮膚モデルの培養の開始10~12日後に回収した培養液に含まれるNAMPTの量を評価した結果を示した図である。
【
図3】
図3は、アスコルビン酸および/またはβ-NMNを添加した培養液を用いた培養の開始3週間後の皮膚モデルにおけるメラニンの量を評価した結果を示した図である。
【
図4】
図4は、β-NMNおよび/またはリュウガンニクを添加した培養液を用いた培養の開始3週間後の皮膚モデルにおけるメラニンの量を評価した結果を示した図である。
【
図5】
図5は、アスコルビン酸および/またはβ-NMNを添加した培養液を用いた培養の開始3週間後の皮膚モデルにおけるNAMPTの量を評価した結果を示した図である。
【
図6】
図6は、β-NMNおよび/またはリュウガンニクを添加した培養液を用いた培養の開始3週間後の皮膚モデルにおけるNAMPTの量を評価した結果を示した図である。
【
図7】
図7は、アスコルビン酸および/またはβ-NMNを添加した培養液を用いた培養の開始3週間後の皮膚モデルにおけるNAD+の量を評価した結果を示した図である。
【
図8】
図8は、β-NMNおよび/またはリュウガンニクを添加した培養液を用いた培養の開始3週間後の皮膚モデルにおけるNAD+の量を評価した結果を示した図である。
【発明の具体的説明】
【0012】
本発明の一つの態様によれば、リュウガン、またはリュウガンを含んでなる組成物と組み合わせて使用するための、NMNが提供される。このようなNMNは、NMNを含んでなる組成物であってもよい。
【0013】
本発明の別の一つの態様によれば、NMN、またはNMNを含んでなる組成物と組み合わせて使用するための、リュウガンが提供される。このようなリュウガンは、リュウガンを含んでなる組成物であってもよい。
【0014】
本発明のさらに別の一つの態様によれば、NMNおよびリュウガンを含んでなる、組成物が提供される。
【0015】
本発明における「リュウガン」はロンガンとも呼ばれ、中国南方原産の亜熱帯植物であるムクロジ科ユーフォリア属の植物(Euphoria longana Lamarck)を意味する。本発明におけるリュウガンの使用部位としては、限定されるわけではないが、仮種皮、種子等を使用することができ、好ましくは、仮種皮である。リュウガンの仮種皮はリュウガンニクとも呼ばれる。リュウガンニクを乾燥させたものは、特に中国や日本において一般的に生薬として使用されるものであり、ブドウ糖、有機酸、ビタミンA、ビタミンB1、α-カンフェンおよびα-ピネンの精油成分やミリスチン酸およびミリスチシンの脂肪成分等が含まれ、滋養強壮、鎮静効果、不眠症に対する作用等が報告されている。本発明においてはリュウガンをリュウガンニクの乾燥物の形態にして用いてもよく、また、リュウガンニクの乾燥物を適切な方法により抽出してエキスとして用いてもよい。
【0016】
本発明におけるリュウガンニクのエキスの製造方法は、特に制限されず、当該技術分野において通常使用される方法に応じて製造することができ、例えば、エキスの原料を抽出することにより行ってもよい。前記抽出方法としては、限定されるわけではないが、例えば、熱水抽出法、超音波抽出法、ろ過法、還流抽出法、溶媒(例えばエタノール)抽出法等が挙げられる。これらは単独で実行、または2種以上の方法を併用して行ってもよい。また、高純度の抽出物を得るために抽出物を同様の方法で1回以上ずつさらに抽出してもよい。
【0017】
本発明におけるリュウガンニクのエキスの製造のために使用される溶媒の種類は特に制限されず、本発明の目的効果を有するエキスが得られるものであれば、当該技術分野において公知となっている任意の溶媒を使用してもよい。そのような溶媒の例としては、限定されるわけではないが、例えば、水、炭素数1~4のアルコール、酢酸エチル、アセトン、クロロホルム等が挙げられ、これらは2つ以上組み合わせて使用してもよい。
【0018】
本発明における「NMN」は、ニコチンアミドモノヌクレオチド(Nicotinamide mononucleotide、CAS登録番号1094-61-7)を意味し、補酵素ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドの生合成における中間代謝産物として知られるものである。NMNの生体内への取り込み機序および作用機序に関してはまだ不明な点も多く、現在でも様々な研究が進められており、例えば、老化に伴うミトコンドリアの機能低下の改善、加齢に伴う疾患、抗老化作用等に影響することが知られている。
【0019】
本発明の好ましい実施態様によれば、本発明の組成物は、皮膚の美白のための組成物とされる。本発明において「皮膚の美白」は、メラニン等の色素の過多によって明度が減少した皮膚の明度を増加させるまたは皮膚の明度を一定のレベルに維持することを意味する。本発明における「皮膚の美白」は、限定されるわけではないが、メラニンの生成を阻害することにより達成してもよく、例えば、メラニンの増加から始まる症状(シミ、ソバカス等)を改善することにより達成してもよい。
【0020】
本発明の組成物は、生体内(in vivo)および生体外(in vitro)のいずれにおいて適用してもよい。本発明の組成物を対象に適用する場合、適用される対象としては、限定されるわけではないが、例えば、ヒト、チンパンジーを含む霊長類、イヌ、ネコなどのペット動物、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギなどの家畜動物、マウス、ラットなどの齧歯類等の哺乳動物等が挙げられる。
【0021】
本発明の好ましい実施態様によれば、本発明の組成物は、NAMPT産生促進のための組成物とされる。本発明における「NAMPT」は、ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ(Nicotinamide phosphoribosyltransferase)とも呼ばれ、ニコチンアミドおよび5-ホスホリボシル-1-ピロリン酸(PRPP)からNMNを生成する反応を可逆的に触媒する酵素を意味する。本発明におけるNAMPTの産生の促進は、生体内(in vivo)および生体外(in vitro)のいずれにおいて行われてもよい。
【0022】
また、体内中のNAMPTが産生増加することにより身体的機能を活性化させ寿命を延長させる、いわゆるアンチエイジング効果を発揮する事が知られている(Yoshida et al., 2019, Cell Metabolism 30, 329-342等参照)。したがって、本発明の別の好ましい実施態様によれば、本発明の組成物は、抗老化のための組成物とされる。
【0023】
本発明の好ましい実施態様によれば、本発明の組成物は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(nicotinamide adenine dinucleotide、CAS登録番号53-84-9)産生促進のための組成物とされる。本発明におけるニコチンアミドアデニンジヌクレオチドは、酸化型(NAD+)および還元型(NADH)のいずれか、または両方であってもよいが、好ましくはNAD+である。本発明におけるNAD+はNADとも表記されるものである。本発明におけるニコチンアミドアデニンジヌクレオチドの産生の促進は、生体内(in vivo)および生体外(in vitro)のいずれにおいて行われてもよい。
【0024】
一般的に、NAD+は、細胞膜透過性がなく、ヒトを含めた哺乳類ではトランスポーターも存在しないことから、栄養素として直接的な吸収、取り込みはできない。そのため、トリプトファンやナイアシン等を材料としたNAD+の生合成は生体内で行われている。NAD+の生合成経路としては,トリプトファンを出発物質としたde novo経路(キヌレニン(kynurenine)経路とも呼ばれる)、ビタミンB3(ナイアシン)等を利用するサルベージ経路等があり、このようにして生合成されるNAD+は、生体内の解糖系およびクレブス回路において電子受容体として作用する。本発明におけるNAD+は、このように一般的に知られるNAD+と同義である。
【0025】
一方、NADHは、生体内で解糖系およびクレブス回路において生合成され、電子伝達系において酸化的リン酸化によりATPを生成するために作用する。本発明におけるNADHは、このように一般的に知られるNADHと同義である。
【0026】
本発明の組成物におけるNMNおよびリュウガンの使用量は、用途に応じて適宜決定できるが、好ましくは、組成物中のNMNの乾燥重量をCA、リュウガンの乾燥重量をCBとした場合、CA/CBが0.2~20であり、より好ましくは、CA/CBが0.4~10であり、より好ましくは0.66~6.66である。
【0027】
NMNまたはリュウガンが市販されている場合、本発明の目的効果を有する組成物が得られるのであれば、それを使用してもよい。
【0028】
本発明の組成物は、経口用組成物、局所用組成物のいずれであってもよい。本発明におけるNMNおよびリュウガンは、好ましくは、経口摂取により消化管より吸収されて、その有効成分が体内で作用すると考えられる。したがって、本発明の1つの好ましい実施態様によれば、本発明の組成物は、経口用組成物である。
【0029】
本発明の組成物を経口用組成物とする場合、経口用組成物に配合される公知の成分(添加剤)をさらに配合することができる。このような成分としては、特に限定されるわけではないが、例えば、乳化剤、水和剤、溶媒、エモリエント、安定剤、増粘剤、保存剤、滑沢剤、キレート剤、充填剤、賦形剤、粉末、芳香剤、香料、吸収剤、染料、乳白剤、抗酸化剤、防腐剤、ビタミン、アミノ酸、栄養剤、鉱物(電解質)、合成風味剤および天然風味剤等の風味剤、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、pH調節剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に用いられる炭酸化剤等が挙げられる。
【0030】
本発明における経口用組成物は、液体、半固体、固体のいずれであってもよい。
【0031】
本発明の組成物を局所用組成物とする場合、局所用組成物に配合される公知の成分(添加剤)をさらに配合することができる。このような成分としては、限定されるわけではないが、例えば、乳化剤、水和剤、溶媒、エモリエント、安定剤、増粘剤、保存剤、滑沢剤、キレート剤、充填剤、賦形剤、粉末、芳香剤、香料、吸収剤、染料、乳白剤、抗酸化剤、ビタミン、アミノ酸等が挙げられる。
【0032】
本発明における局所用組成物は、液体、半固体、固体のいずれであってもよい。
【0033】
本発明の組成物は、医薬組成物、化粧用組成物、食品組成物のいずれであってもよく、好ましくは食品組成物である。
【実施例0034】
以下の例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。含有量は特記しない限り、質量%で示す。
【0035】
単独で皮膚モデルに適用する薬剤の調製
被験物質として、β-NMN(オリエンタル酵母社製)およびリュウガンニクエキス末(松浦薬業社製)をそれぞれ、培養液における濃度が300μg/mL、100μg/mL、30μg/mLとなるように調製した。また、対照物質として、L-(―)アスコルビン酸(関東化学社製)を、培養液における濃度が100μg/mLとなるように調製した。
【0036】
併用で皮膚モデルに適用する薬剤の調製
β-NMNおよびリュウガンニクエキス末をいずれも、培養液における濃度が50μg/mLとなるように調製した。また、β-NMNおよびL-(―)アスコルビン酸をいずれも、培養液における濃度が50μg/mLとなるように調製した。
【0037】
皮膚モデルの培養
メラニン細胞含有三次元皮膚モデル(MEL-300、クラボウ株式会社製)を購入し、定法に従って37℃5%CO2インキュベーターで培養した。各条件につき4ウェル(n=4)を設計した。培養液としてはEPI-100NMM113を用い、メラニン刺激因子としてbFGF、α-MSH、KGFをそれぞれ適量添加した。培養液の交換は隔日で行い、薬剤(被験物質または対照物質)は、培養液の交換の都度、所定の濃度になるように溶解させた。培養は、各薬剤が皮膚モデルの底面側から適用されるように行った。培養は培養開始後3週間行った。
【0038】
NMNおよびリュウガンが皮膚モデルに与える影響の評価
まず、培養開始10~12日後に回収した培養液に含まれるNAMPTの分泌量を、CircuLex Human NAMPT/PBEF ELISA Kit(MBL社)を用いて測定した。
【0039】
次に、皮膚モデルの培養終了後、PBS(―)で洗浄後に2等分し、片方を用いて皮膚モデルにおけるメラニンの量の測定を行い、もう片方を用いて皮膚モデルにおける、NAD+の量の測定およびNAMPTの量の測定を行った。
【0040】
皮膚モデル中のメラニンの量の測定は以下の手順により行った。回収した皮膚モデルを0.1NのNaOHを用いて60℃で一晩浸潤抽出した後、遠沈して皮膚モデルのフィルムや不溶物画分を沈殿として除去し、溶液画分の405nmの吸光度を測定し、測定結果をもとにメラニンの量を算出した。各群のメラニンの抑制率を、コントロール群のメラニンの量を100%として、以下の式により算出した。
【数1】
【0041】
皮膚モデル中のNAMPTの量の測定は以下の手順により行った。回収した皮膚モデルをT-PER(商標)Tissue Protein Extraction Reagent buffer(Thermo Scientific社製)250μLを用いて4℃で粉砕抽出し、Lysateを調製した。粉砕抽出は、ポリプロピレン製チューブに皮膚モデル、ジルコニアボール1個、およびT-PER Bufferを加え、粉砕抽出器(ビーズ式細胞破砕装置 Micro Smash MS-100R(トミー精工社製))を用いて、4℃、2000rpm、5分の条件で行った。Lysateの1部(20μL)を用いて、BCA protein assayの定法(OD562nmで計測)によりBSA(ウシ血清アルブミン)との相対比較により全タンパク質の濃度を算出した。100μLのLysateに含まれるNAMPTタンパク質量をCircuLex Human NAMPT/PBEF ELISA Kit(MBL社)を用いて測定した。測定結果は単位タンパク質量当たりの値に補正した。
【0042】
皮膚モデル中のNAD+の量の測定は以下の手順により行った。回収した皮膚モデルのLysateを、10kD Spin Columns(ab93349、abcam社製)のスピンカラム処理により徐タンパクし、低分子画分の溶出液を回収した。回収した低分子画分に含まれるNAD+の量を、NAD/NADH Assay Kit(Colorimetric)(ab65348、abcam社製)を用いて測定した。
【0043】
統計処理は以下の手順により行った。メラニン抑制率の評価においては多重比較検定として、Bonferroni multiple comparisonsを採用し、NAMPTの量の評価およびNAD+の量の評価においてはDunnett testを採用した。いずれもvsコントロール群において有意な改善を示すか否かを判断した。p<0.05の場合を*、p<0.01の場合を**とした。また0.05≦p<0.1においては有意傾向があると判断し、p値を表記した。
【0044】
薬剤を単独で適用した場合の測定結果を基にして薬剤を併用で適用した場合の理論値を算出し、得られた値を、薬剤を併用で適用した場合の実測値と比較することで、薬剤の併用による相乗効果があるかを判断した。まず、β-NMNおよびリュウガンニクをそれぞれ300μg/mL、100μg/mL、30μg/mLの添加群で評価した(アスコルビン酸は100μg/mLのみで評価した)。上記の3点での測定結果の濃度依存性を確認した後、測定結果を対数関数または2次関数の近似式にフィッティングし、得られた近似式から、β-NMNおよびリュウガンニクをそれぞれ50μg/mL添加した場合に予測される値(理論値)を算出した。各試験において、この「β-NMN50μg/mLを単独で添加した場合の理論値」および「リュウガンニク50μg/mLを単独で添加した場合の理論値」の合計値を、「β-NMN50μg/mLおよびリュウガンニク50μg/mLを併用で添加した場合の実測値」と比較し、実測値が10%以上優れた値を示した場合に、β-NMNおよびリュウガンニクの相乗効果が発揮されたと評価した。なお、アスコルビン酸は100μg/mLの測定値の1/2を「アスコルビン酸50μg/mLを単独で添加した場合の理論値」として、「アスコルビン酸50μg/mLおよびβ-NMN50μg/mLを併用で添加した場合の実測値」との比較を行った。
【0045】
培養液に含まれるNAMPTの分泌量の評価結果を
図1(アスコルビン酸およびβ-NMNの併用による効果の比較)および
図2(β-NMNおよびリュウガンニクの併用による効果の比較)に示す。アスコルビン酸およびβ-NMNにおいては実測値が理論値を下回っている一方、β-NMNおよびリュウガンニクにおいては、実測値が理論値を大きく上回っており、したがって、β-NMNおよびリュウガンニクの組み合わせの、NAMPTの分泌促進に対する相乗効果が示された。
【0046】
皮膚モデル中のメラニンの抑制率の評価結果を
図3(アスコルビン酸およびβ-NMNの併用による効果の比較)および
図4(β-NMNおよびリュウガンニクの併用による効果の比較)に示す。アスコルビン酸およびβ-NMN、ならびにβ-NMNおよびリュウガンニクのいずれにおいても、実測値が理論値を大きく上回っており、したがって、アスコルビン酸およびβ-NMN、ならびにβ-NMNおよびリュウガンニクの組み合わせの、メラニンの抑制に対する相乗効果が示された。
【0047】
皮膚モデル中のNAMPTの量の評価結果を
図5(アスコルビン酸およびβ-NMNの併用による効果の比較)および
図6(β-NMNおよびリュウガンニクの併用による効果の比較)に示す。アスコルビン酸およびβ-NMNにおいては実測値が理論値を下回っている一方、β-NMNおよびリュウガンニクにおいては、実測値が理論値を大きく上回っており、したがって、β-NMNおよびリュウガンニクの組み合わせの、NAMPTの産生促進に対する相乗効果が示された。
【0048】
皮膚モデル中のNAD+の量の評価結果を
図7(アスコルビン酸およびβ-NMNの併用による効果の比較)および
図8(β-NMNおよびリュウガンニクの併用による効果の比較)に示す。アスコルビン酸およびβ-NMNにおいては実測値が理論値を下回っている一方、β-NMNおよびリュウガンニクにおいては、実測値が理論値を大きく上回っており、したがって、β-NMNおよびリュウガンニクの組み合わせの、NAD+の産生促進に対する相乗効果が示された。