(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180088
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】可搬型放射線測定器
(51)【国際特許分類】
G01T 7/00 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
G01T7/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099529
(22)【出願日】2023-06-16
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成31年度、原子力規制庁、放射線安全規制研究戦略的推進事業費「原子力事故時における近隣住民の確実な初期内部被ばく線量の把握に向けた包括的個人被ばくモニタリングの確立」事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】301032942
【氏名又は名称】国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
(71)【出願人】
【識別番号】593136904
【氏名又は名称】クリアパルス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】栗原 治
(72)【発明者】
【氏名】金 ウンジュ
(72)【発明者】
【氏名】高島 良生
(72)【発明者】
【氏名】矢島 千秋
(72)【発明者】
【氏名】谷 幸太郎
(72)【発明者】
【氏名】根本 龍男
【テーマコード(参考)】
2G188
【Fターム(参考)】
2G188AA13
2G188BB04
2G188CC20
2G188DD10
2G188DD14
(57)【要約】
【課題】可搬型放射線測定器の取扱性を高めること。
【解決手段】可搬型放射線測定器(10)は、先端面が被検者の頸部の前面に接触可能であってかつ凹状に湾曲するように形成されたプローブ(14)と、プローブ(14)の後端面に直結された持ち手部(16)と、被検者の甲状腺から放出された放射線を検出する検出素子(20)と、検出素子(20)から出力された電気信号を処理する回路基板(22)とを備え、持ち手部(16)は、回路基板(22)を収容するように構成され、持ち手部(16)の厚み方向に沿った断面外形は、楕円形状であり、持ち手部(16)の外径は、プローブ(14)との接続部から最大外径部まで漸次的に大きくなっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端面が被検者の頸部の前面に接触可能であってかつ凹状に湾曲するように形成された中空状のプローブと、
前記プローブの後端面に直結され、内部が前記プローブの内部に連通した中空状の持ち手部と、
前記プローブ内における前記先端面側に設けられ、被検者の甲状腺から放出された放射線を検出する検出素子と、
前記検出素子から出力された電気信号を処理する回路基板と、を備え、
前記持ち手部は、前記回路基板を収容するように構成され、
前記持ち手部の厚み方向に沿った断面外形は、楕円形状であり、
前記持ち手部の外径は、前記プローブとの接続部から最大外径部まで漸次的に大きくなっていることを特徴とする可搬型放射線測定器。
【請求項2】
前記持ち手部は、連接部とグリップ部とを備え、
前記連接部は、前記プローブと前記グリップ部とを接続するように構成され、
前記プローブの長さ方向と前記連接部の長さ方向との角度は175度以上180度以下であり、
前記連接部の長さ方向と前記グリップ部の長さ方向との角度は150度以上170度以下であることを特徴とする請求項1に記載の可搬型放射線測定器。
【請求項3】
測定の開始と中断とを切り替えるスイッチをさらに備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の可搬型放射線測定器。
【請求項4】
測定中に点灯するランプをさらに備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の可搬型放射線測定器。
【請求項5】
前記プローブの厚み寸法は、標準的な乳児の頸部の高さ寸法よりも小さく設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の可搬型放射線測定器。
【請求項6】
前記プローブの厚み寸法は、前記標準的な乳児の頸部の高さ寸法の0.8倍以上に設定されていることを特徴とする請求項5に記載の可搬型放射線測定器。
【請求項7】
前記プローブ及び前記持ち手部は、それぞれ、合成樹脂からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の可搬型放射線測定器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者の甲状腺から放出される放射線を測定する可搬型放射線測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力・放射線事故によって環境中に放出された放射性物質を摂取すると、人体に内部被ばくがもたされる。放射性物質である放射性ヨウ素の摂取による人体の内部被ばくを評価するために、放射性ヨウ素が蓄積され易い甲状腺から放出される放射線を測定することが有効である。そのため、被検者の甲状腺から放出される放射線を測定する可搬型放射線測定器が開発されている(非特許文献1及び非特許文献2参照)。先行技術に係る放射線測定器の構成について簡単に説明すると、次のようになる。
【0003】
先行技術に係る放射線測定器は、金属からなる角パイプ状の測定器本体を備えており、測定器本体は、その上面側に、持ち手部を有している。測定器本体の先端部には、金属からなるアーム部材が設けられており、アーム部材は、測定器本体に対して回動調節可能に構成されている。アーム部材の先端部には、中空状のプローブが設けられており、プローブの後端側の部分は、金属からなる。プローブの先端面は、被検者の頸部の前面に接触可能であって、凹状に湾曲するように形成されている。
【0004】
プローブ内における先端面側には、被検者の甲状腺から放出される放射線を検出する複数の検出素子が設けられている。測定器本体内には、複数の検出素子から出力された電気信号を処理する回路基板が設けられている。複数の検出素子と回路基板を接続する複数の配線ケーブルは、アーム部材とプローブとの間において外部に露出した状態で配置されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】多重を用いた新しい携帯型甲状腺モニターの開発 原子力事故後の幼児用GAGG検出器 検索日:2022/03/08 https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1350448721001918
【非特許文献2】Development of a new hand-held type thyroid monitor using multipl GAGG detectors for young children following a nuclear accident 検索日:2022/03/08 https://www.nsr.go.jp/data/000334921.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、プローブが測定器本体の先端側にアーム部材を介して設けられているため、可搬型放射線測定器はプローブの長さ方向(幅方向及び厚み方向に直交する方向)に延伸する傾向にある。そのため、可搬型放射線測定器の大型化及び重量増大を招いて、可搬型放射線測定器の取扱性が低下するという問題がある。
【0007】
特に、複数の配線ケーブルがアーム部材とプローブとの間において外部に露出しているため、被検者の甲状腺からの放射線を測定する際に、配線ケーブルが被検者周辺の物体と干渉しないようする必要があり、可搬型放射線測定器の取扱性が更に低下するという問題がある。
【0008】
そこで、本発明の一態様は、可搬型放射線測定器の取扱性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の課題を解決するため、本発明の一態様に係る可搬型放射線測定器は、先端面が被検者の頸部の前面に接触可能であってかつ凹状に湾曲するように形成された中空状のプローブと、前記プローブの後端面に直結され、内部が前記プローブの内部に連通した中空状の持ち手部と、前記プローブ内における前記先端面側に設けられ、被検者の甲状腺から放出された放射線を検出する検出素子と、前記検出素子から出力された電気信号を処理する回路基板とを備え、前記持ち手部は、前記回路基板を収容するように構成され、前記持ち手部の厚み方向に沿った断面外形は、楕円形状であり、前記持ち手部の外径は、前記プローブとの接続部から最大外径部まで漸次的に大きくなっている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、可搬型放射線測定器の取扱性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る可搬型放射線測定器の斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る可搬型放射線測定器の内部の様子を示す模式図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る可搬型放射線測定器の平面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る可搬型放射線測定器の底面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る可搬型放射線測定器の右側面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る可搬型放射線測定器の左側面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る可搬型放射線測定器の正面図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る可搬型放射線測定器の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。可搬型放射線測定器について、幅方向、厚み方向、及び長さ方向を規定し、図面中、「WD」は幅方向、「TD」は厚み方向、「LD」は長さ方向を表している。「LDa」は先端側又は先端方向、「LDb」は後端側又は後端方向をそれぞれ指している。プローブについても、可搬型放射線測定器における幅方向に沿った方向をプローブの幅方向、可搬型放射線測定器における厚さ方向に沿った方向をプローブの厚さ方向、可搬型放射線測定器における長さ方向に沿った方向をプローブの長さ方向と規定する。また、持ち手部についても、可搬型放射線測定器における幅方向に沿った方向を持ち手部の幅方向、可搬型放射線測定器における厚さ方向に沿った方向を持ち手部の厚さ方向、可搬型放射線測定器における長さ方向に沿った方向を持ち手部の長さ方向と規定する。プローブ及び持ち手部以外の各部分についても同様である。
【0013】
図1から
図8を参照して、本実施形態に係る可搬型放射線測定器10の構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る可搬型放射線測定器10の斜視図である。
図2は、本実施形態に係る可搬型放射線測定器の内部の様子を示す模式図である。
図3は、本実施形態に係る可搬型放射線測定器10の平面図である。
図4は、本実施形態に係る可搬型放射線測定器10の底面図である。
図5は、本実施形態に係る可搬型放射線測定器10の右側面図である。
図6は、本実施形態に係る可搬型放射線測定器10の左側面図である。
図7は、本実施形態に係る可搬型放射線測定器10の正面図である。
図8は、本実施形態に係る可搬型放射線測定器10の背面図である。
【0014】
(可搬型放射線測定器10の概要、測定器本体12)
図1に示すように、本実施形態に係る可搬型放射線測定器10は、被検者の甲状腺から放出される放射線を測定する測定器である。可搬型放射線測定器10の測定対象は、放射線のうちの例えばγ線である。可搬型放射線測定器10は、中空状の測定器本体12を備えている。測定器本体12の長さ方向の寸法は、測定器本体12の幅方向の最大寸法よりも大きく設定されており、測定器本体12の長さ方向が測定器本体12の長手方向になっている。
【0015】
(プローブ14、先端面14a)
図1から
図8に示すように、測定器本体12は、中空状のプローブ14を備えており、プローブ14は、例えばポリエチレンテレフタレート又はポリエチレン等の合成樹脂からなる。プローブ14の先端面14aは、被検者の頸部の前面に接触可能である。プローブ14の先端面14aは、後端面14b側に向かって凹状に湾曲するように形成されている。具体的には、プローブ14の先端面14aは、1つの曲率半径を有した湾曲形状の一例である円弧形状に形成されている。なお、プローブ14の先端面14aを円弧形状に形成する代わりに、複数の曲率半径を有した湾曲形状に形成してもよい。
【0016】
(後端面14b、湾曲部14e)
図1から
図6、
図8に示すように、プローブ14の後端面14bは、先端面14aに沿って凹状に湾曲するように形成されている。具体的には、プローブ14の後端面14bは、1つの曲率半径を有した湾曲形状の一例である円弧形状に形成されており、プローブ14の後端面14bの曲率中心は、プローブ14の先端面14aの曲率中心に一致している。プローブ14の後端面14bの曲率半径は、プローブ14の先端面14aの曲率半径よりも大きくなっている。プローブ14の後端面14bにおける幅方向の両側には、それぞれ、プローブ14の先端面14aの曲率半径よりも小さい曲率半径を有した湾曲部14eが形成されている。なお、プローブ14の後端面14bを円弧形状に形成する代わりに、複数の曲率半径を有した湾曲形状に形成してもよい。プローブ14の後端面14bの曲率中心は、プローブ14の先端面14aの曲率中心に対してずれてもよい。
【0017】
(持ち手部16)
図1から
図8に示すように、測定器本体12は、プローブ14の後端面14bにおける幅方向の中央部に直結された中空状の持ち手部16を備えている。持ち手部16の内部は、プローブ14の内部に連通している。持ち手部16は、プローブ14と同様に、例えばポリエチレンテレフタレート又はポリエチレン等の合成樹脂からなる。持ち手部16の厚み方向に沿った(すなわち、長さ方向に直交する平面で切断した)断面外形は、楕円形状である。持ち手部16は、連接部16aとグリップ部16bとを備えている。連接部16aは、プローブ14とグリップ部16bとを接続するように構成されている。
【0018】
(シールド膜12c)
図2に示すように、測定器本体12の内面(プローブ14の内面及び持ち手部16の内面)には、外部から電磁波を遮蔽するシールド膜12cが形成されている。シールド膜12cは、例えば導電性塗料からなる。
【0019】
(検出素子20)
図2に示すように、プローブ14内における先端面14a側には、被検者の甲状腺から放出された放射線を検出する複数の検出素子20が設けられている。各検出素子20は、放射線の光量に応じた電気信号を出力する。各検出素子20は、GAGG(ガドリニウム・アルミニウム・ガリウム・ガーネット)シンチレータ、CsI(ヨウ化セシウム)シンチレータ、NaI(ヨウ化ナトリウム)シンチレータ、BGO(Bismuth Germanium Oxide)シンチレータ、GSO(Gadolinium Silicon Oxide)シンチレータ、SrI(ヨウ化ストロンチウム)シンチレータ、LaBr3(臭化ランタン)シンチレータ、CeBr3(臭化セリウム)シンチレータ、LYSO(Lutetium Yttrium Oxyorthosilicate)シンチレータ、LSO(Lutetium Oxyorthosilicate)シンチレータ等のシンチレータを有している。各検出素子20は、その検出面を除いて、シールド膜12cによって外部からの電磁波に対して遮蔽されている。
【0020】
(回路基板22、配線ケーブル24)
図2に示すように、持ち手部16内には、複数の検出素子20から出力された電気信号を処理するリジットタイプの回路基板22が設けられている。換言すれば、中空状の持ち手部16は、リジットタイプの回路基板22を収容する。また、可搬型放射線測定器10は、複数の検出素子20と回路基板22とを接続する複数の配線ケーブル24を備えている。複数の配線ケーブル24は、プローブ14内から持ち手部16内に亘って配置されている。換言すれば、プローブ14及び持ち手部16は、複数の配線ケーブル24を収容するように構成されている。
【0021】
(スイッチ30)
図1から
図3、
図5、
図6、
図8に示すように、測定器本体12は、持ち手部16の上面に測定の開始と中断とを切り替えるスイッチ30を備えている。測定者がスイッチ30を押すと、可搬型放射線測定器10は測定を開始する。測定中に測定者がスイッチ30を再度押すと、可搬型放射線測定器10は測定を中断する。中断中に測定者がスイッチ30を再度押すと、可搬型放射線測定器10は測定を再開する。可搬型放射線測定器10がスイッチ30を備えていることにより、被験者が測定中にぐずる可能性のある乳幼児であっても、乳幼児の状態に応じて、測定者が測定の開始と中断とを切り替えることができる。
【0022】
(ランプ32)
図1に示すように、測定器本体12は、測定中に点灯するランプ32を備えている。ランプ32は、測定中には点灯し、測定の中断中には消灯する。なお、ランプ32は、測定の中断中に、測定中に点灯する色とは異なる色を点灯してもよい。可搬型放射線測定器10がランプ32を備えていることにより、測定者が測定中であるか測定の中断中であるかを目視で確認し易くすることができる。
【0023】
(USBケーブル36)
図1から
図8に示すように、可搬型放射線測定器10は、USBコネクタ34及びUSBケーブル36を備えている。USBケーブル36は、USBコネクタ34に着脱可能に接続されている。可搬型放射線測定器10は、パーソナルコンピュータ又はタブレット端末等からなる解析装置(不図示)にUSBケーブル36を介して接続可能である。解析装置は、回路基板22から出力される波高データを取り込んで、専用のソフトウェアで解析し、その解析結果を表示する。回路基板22への電力供給は、USBケーブル36を介して解析装置によって行われる。又は、回路基板22への電力供給は、外付けバッテリー(不図示)によって行われる。
【0024】
なお、回路基板22はリジットタイプに限るものでなく、フレキシブルタイプであってもよい。回路基板22がフレキシブルタイプである場合には、回路基板22を持ち手部16又はプローブ14に収容してもよい。
【0025】
(プローブ14の厚み寸法)
プローブ14の厚み寸法は、標準的な乳児の頸部の高さ寸法よりも小さく設定されている。これは、プローブ14の厚み寸法が標準的な乳児の頸部の高さ寸法以上になると、プローブ14の先端面14aを乳児の頸部の前面に接触させ難くなるからである。また、プローブ14の厚み寸法は、標準的な乳児の頸部の高さ寸法の0.8倍以上に設定されている。これは、プローブの厚み寸法が標準的な乳児の頸部の高さ寸法の0.8倍未満であると、各検出素子20の検出面が小さくなって、可搬型放射線測定器10の測定精度が低下することが懸念されるからである。
【0026】
なお、標準的な乳児の頸部の高さ寸法は、公共又は民間の調査機関が調査した高さ寸法を用いてもよい。
【0027】
プローブ14の厚み寸法は、プローブ14の先端面14aの曲率半径の0.5倍以下に設定されている。これは、プローブ14の厚み寸法がプローブ14の先端面14aの曲率半径の0.5倍を超えると、プローブ14の厚み寸法が大きくなって、プローブ14の先端面14aを乳児の頸部の前面に接触させ難くなるからである。また、プローブ14の厚み寸法は、プローブ14の先端面14aの曲率半径の0.4倍以上に設定されている。これは、プローブ14の先端面14aの曲率半径の0.4倍未満であると、各検出素子20の検出面が小さくなって、可搬型放射線測定器10の測定精度が低下することが懸念されるからである。なお、プローブ14の先端面14aが複数の曲率半径を有している場合には、プローブ14の先端面14aの曲率半径とは、複数の曲率半径の平均値のことである。
【0028】
(持ち手部16の外径)
持ち手部16の外径は、プローブ14との接続部から最大外径部まで漸次的に大きくなっている。また、持ち手部16の外径は、最大外径部から後端まで漸次的に小さくなっている。換言すれば、持ち手部16は、略雫形状になっている。持ち手部16がこのような構成であることにより、被検者とは別の測定者が測定する場合であっても、被検者自身が測定する場合であっても、測定者が持ち手部16を片方の手で持ち易くなり、可搬型放射線測定器10の取扱性を高めることができる。
【0029】
連接部16aのプローブ14との接合部の長径(幅方向の外径)は、2.0cm以上であることが好ましく、2.5cm以上であることがより好ましく、3.0cm以上であることがさらに好ましい。また、連接部16aのプローブ14との接合部の長径は、10.0cm以下であることが好ましく、4.5cm以下であることがより好ましく、2.5cm以下であることがさらに好ましい。
【0030】
連接部16aのプローブ14との接合部の短径(厚さ方向の外径)は、2.0cm以上であることが好ましく、3.8cm以上であることがより好ましい。また、連接部16aのプローブ14との接合部の短径は、2.0cm以下であることが好ましい。
【0031】
グリップ部16bの連接部16aとの接合部の長径(幅方向の外径)は、2.5cm以上であることが好ましい。また、グリップ部16bの連接部16aとの接合部の長径は、3.5cm以下であることが好ましい。
【0032】
グリップ部16bの連接部16aとの接合部の短径(厚さ方向の外径)は、2.5cm以上であることが好ましい。また、グリップ部16bの連接部16aとの接合部の短径は、3.5cm以下であることが好ましい。
【0033】
グリップ部16bの最大外径部の長径(幅方向の外径)は、2.5cm以上であることが好ましい。また、グリップ部16bの最大外径部の長径は、4.5cm以下であることが好ましい。
【0034】
グリップ部16bの最大外径部の短径(厚さ方向の外径)は、2.5cm以上であることが好ましい。また、グリップ部16bの最大外径部の短径は、4.0cm以下であることが好ましい。
【0035】
持ち手部16の各径が上述した範囲であることにより、測定者が持ち手部16を片方の手でより持ち易くなり、可搬型放射線測定器10の取扱性をより高めることができる。
【0036】
(連接部16a及びグリップ部16bの中心軸の長さ)
連接部16aの中心軸の長さは、1.0cm以上であることが好ましい。また、連接部16aの中心軸の長さは、5.0cm以下であることが好ましい。
【0037】
グリップ部16bの中心軸の長さは、10.0cm以上であることが好ましい。また、グリップ部16bの中心軸の長さは、15.0cm以下であることが好ましい。
【0038】
連接部16a及びグリップ部16bがこのような構成であることにより、測定者が持ち手部16を片方の手で持ち易くなり、可搬型放射線測定器10の取扱性を高めることができる。
【0039】
(プローブ14の長さ方向と連接部16aの長さ方向との角度α)
プローブ14の長さ方向と連接部16aの長さ方向との角度αは、175度以上であることが好ましい。また、角度αは、180度以下であることが好ましい。角度αが当該範囲であることにより、測定者が持ち手部16を片方の手で把持したとき手首及び腕に掛かる負担を低減することができる。これにより、測定者が持ち手部16を片方の手でより持ち易くなり、可搬型放射線測定器10の取扱性をより高めることができる。
【0040】
(連接部16aの長さ方向とグリップ部16bの長さ方向との角度β)
連接部16aの長さ方向とグリップ部16bの長さ方向との角度βは、150.0度以上であることが好ましく、160.0度以上であることがより好ましい。また、角度βは、170.0度以下であることが好ましく、165.0度以下であることがより好ましい。角度βが当該範囲であることにより、測定者が持ち手部16を片方の手で把持したとき手首及び腕に掛かる負担を低減することができる。これにより、測定者が持ち手部16を片方の手でより持ち易くなり、可搬型放射線測定器10の取扱性をより高めることができる。
【0041】
(可搬型放射線測定器10の先端から後端までの長さ方向の寸法A)
図5に示す、可搬型放射線測定器10の先端から後端までの長さ方向における長さ方向の寸法Aは、13.0cm以上であることが好ましい。また、可搬型放射線測定器10の先端から後端までの長さ方向の寸法Aは、23.0cm以下であることが好ましい。可搬型放射線測定器10の先端から後端までの長さ方向における長さ方向の寸法Aが当該範囲であることにより、測定者が持ち手部16を片方の手でより持ち易くなり、可搬型放射線測定器10の取扱性をより高めることができる。
【0042】
(可搬型放射線測定器10の上端から底端までの厚み方向の寸法B)
図5に示す、可搬型放射線測定器10の上端から底端までの厚み方向の寸法Bは、7.0cm以上であることが好ましい。また、可搬型放射線測定器10の上端から底端までの厚み方向の寸法Bは、10.0cm以下であることが好ましい。可搬型放射線測定器10の上端から底端までの厚み方向の寸法Bが当該範囲であることにより、測定者が持ち手部16を片方の手でより持ち易くなり、可搬型放射線測定器10の取扱性をより高めることができる。
【0043】
(プローブ14の幅方向の最大寸法C)
図7に示す、プローブ14の幅方向の最大寸法Cは、10.0cm以上であることが好ましい。また、プローブ14の幅方向の最大寸法Cは、11.0cm以下であることが好ましい。プローブ14の幅方向の最大寸法Cが当該範囲であることにより、被検者が乳幼児であっても、乳幼児の頸部の前面にプローブ14の先端面14aを容易に接触させることができる。
【0044】
(プローブ14の厚さ方向の寸法D)
図7に示す、プローブ14の厚さ方向の寸法Dは、1.5cm以上であることが好ましい。また、プローブ14の厚さ方向の寸法Dは、2.5cm以下であることが好ましく、2.2cm以下であることがより好ましく、2.0cm以下であることがさらに好ましい。プローブ14の厚さ方向の寸法Dが当該範囲であることにより、被検者が乳幼児であっても、乳幼児の頸部の前面にプローブ14の先端面14aを容易に接触させることができる。
【0045】
(作用効果)
続いて、本実施形態の作用効果について説明する。
【0046】
可搬型放射線測定器10の構成においては、前述のように、持ち手部の厚み方向に沿った断面外形は、楕円形状であり、持ち手部16の外径は、プローブ14との接続部から最大外径部まで漸次的に大きくなっている。そのため、例えば、以下の3パターンのいずれであっても、測定者が持ち手部16を片方の手で持ち易くなる。
(1)被検者の正面から測定者が被検者の頸部に可搬型放射線測定器10を当てて測定するパターン。
(2)被検者自身が測定者として自身の頸部に可搬型放射線測定器10を当てて測定するパターン。
(3)被検者が5歳未満の乳幼児であり、測定者が片方の腕と片方の手とで被検者を抱きかかえた状態で、もう片方の手で可搬型放射線測定器10を被検者の頸部に当てて測定するパターン。
したがって、本実施形態によれば、どのような測定者であっても、持ち手部16を片方の手で持ち易くなり、可搬型放射線測定器10の取扱性を高めることができる。
【0047】
可搬型放射線測定器10の構成においては、前述のように、持ち手部16は、回路基板22を収容するように構成されている。そのため、本実施形態によれば、持ち手部16よりも後方に別途回路基板22を収容するための収容部が設けられている場合に比べて、複数の配線ケーブル24の長さを短くすることができる。これにより、持ち手部16よりも後方に別途回路基板22を収容するための収容部が設けられている場合に比べて、可搬型放射線測定器10の小型化及び軽量化を図ることができる。したがって、測定者が持ち手部16を片方の手で持ち易くなり、可搬型放射線測定器10の取扱性を高めることができる。
【0048】
可搬型放射線測定器10の構成においては、前述のように、プローブ14の長さ方向と連接部16aの長さ方向との角度αは175度以上180度以下であり、連接部16aの長さ方向とグリップ部16bの長さ方向との角度βは150度以上170度以下である。そのため、本実施形態によれば、角度α及び角度βが上記範囲外(例えば、180度)である場合に比べて、測定者が持ち手部16を片方の手で把持したとき手首及び腕に掛かる負担を低減することができる。これにより、本実施形態によれば、測定者が持ち手部16を片方の手でより持ち易くなり、可搬型放射線測定器10の取扱性をより高めることができる。
【0049】
可搬型放射線測定器10の構成においては、前述のように、測定の開始と中断とを切り替えるスイッチ30を備えている。そのため、本実施形態によれば、被験者が測定中にぐずる可能性のある乳幼児であっても、乳幼児の状態に応じて、測定者が測定の開始と中断とを切り替えることができる。
【0050】
可搬型放射線測定器10の構成においては、前述のように、測定中に点灯するランプ32を備えている。そのため、本実施形態によれば、測定者が測定中であるか測定の中断中であるかを目視で確認し易くすることができる。
【0051】
可搬型放射線測定器10の構成においては、前述のように、プローブ14の厚み寸法が標準的な乳児の頸部の高さ寸法よりも小さく設定されている。また、プローブ14の厚み寸法がプローブ14の先端面14aの曲率半径の0.5倍以下に設定されている。そのため、乳児を含む5歳以下の乳幼児の頸部の前面にプローブ14の先端面14aを容易に接触させることができる。これにより、本実施形態によれば、5歳以下の乳幼児の甲状腺から放出される放射線を容易に測定することができる。特に、前述のように、複数の配線ケーブル24が外部に露出することなく、可搬型放射線測定器10の小型化を図ることができるため、乳幼児の甲状腺から放出される放射線を測定する際に、乳幼児に与える圧迫感を十分に低減することができる。
【0052】
可搬型放射線測定器10の構成においては、前述のように、プローブ14の厚み寸法が標準的な乳児の頸部の高さ寸法の0.8倍以上に設定されている。プローブ14の厚み寸法がプローブ14の先端面14aの曲率半径の0.4倍以上に設定されている。そのため、本実施形態によれば、可搬型放射線測定器10の測定精度を十分に確保することができる。
【0053】
可搬型放射線測定器10の構成においては、前述のように、持ち手部16がプローブ14の後端面の幅方向の中央部に直結されている。そのため、可搬型放射線測定器10が長さ方向に延伸することを抑えることができる。これにより、本実施形態によれば、可搬型放射線測定器10の小型化及び軽量化を図って、可搬型放射線測定器10の取扱性を高めることができる。特に、プローブ14及び持ち手部16がそれぞれ合成樹脂からなるため、プローブ14及び持ち手部16が金属からなる場合に比べて、可搬型放射線測定器10の軽量化を促進することができる。
【0054】
可搬型放射線測定器10の構成においては、前述のように、プローブ14及び持ち手部16が複数の配線ケーブル24を収容するように構成されている。そのため、複数の配線ケーブル24が外部に露出しなくなると共に、被検者の甲状腺からの放射線を測定する際に、複数の配線ケーブル24が被検者周辺の物体と干渉することがない。これにより、本実施形態によれば、可搬型放射線測定器10の取扱性をより高めることができる。
【0055】
可搬型放射線測定器10の構成においては、前述のように、プローブ14の厚み寸法が標準的な乳児の頸部の高さ寸法よりも小さく設定されている。また、プローブ14の厚み寸法がプローブ14の先端面14aの曲率半径の0.5倍以下に設定されている。そのため、乳児を含む5歳以下の乳幼児の頸部の前面にプローブ14の先端面14aを容易に接触させることができる。これにより、本実施形態によれば、5歳以下の乳幼児の甲状腺から放出される放射線を容易に測定することができる。特に、前述のように、複数の配線ケーブル24が外部に露出することなく、可搬型放射線測定器10の小型化を図ることができるため、乳幼児の甲状腺から放出される放射線を測定する際に、乳幼児に与える圧迫感を十分に低減することができる。
【0056】
可搬型放射線測定器10の構成においては、前述のように、プローブ14の厚み寸法が標準的な乳児の頸部の高さ寸法の0、8倍以上に設定されている。プローブ14の厚み寸法がプローブ14の先端面14aの曲率半径の0.4倍以上に設定されている。そのため、本実施形態によれば、可搬型放射線測定器10の測定精度を十分に確保することができる。
【0057】
可搬型放射線測定器10の構成において、前述のように、持ち手部16の厚み寸法がプローブ14の厚み寸法と同じに設定されている。そのため、プローブ14の先端面14aを被検者の頸部の前面に接触させる際に、持ち手部16が被検者の頸部周辺に当たることがない。これにより、本実施形態によれば、被検者に不快感を与えないで、被検者の甲状腺からの放射線を測定することができる。
【0058】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る可搬型放射線測定器は、先端面が被検者の頸部の前面に接触可能であってかつ凹状に湾曲するように形成された中空状のプローブと、前記プローブの後端面に直結され、内部が前記プローブの内部に連通した中空状の持ち手部と、前記プローブ内における前記先端面側に設けられ、被検者の甲状腺から放出された放射線を検出する検出素子と、前記検出素子から出力された電気信号を処理する回路基板とを備え、前記持ち手部は、前記回路基板を収容するように構成され、前記持ち手部の厚み方向に沿った断面外形は、楕円形状であり、前記持ち手部の外径は、前記プローブとの接続部から最大外径部まで漸次的に大きくなっている。
【0059】
前記の構成によれば、測定者が前記持ち手部を片方の手で持ち易くすることができる。これにより、前記可搬型放射線測定器の取扱性を高めることができる。
【0060】
本発明の態様2に係る可搬型放射線測定器は、前記態様1において、前記持ち手部は、連接部とグリップ部とを備え、前記連接部は、前記プローブと前記グリップ部とを接続するように構成され、前記プローブの長さ方向と前記連接部の長さ方向との角度は175度以上180度以下であり、前記連接部の長さ方向と前記グリップ部の長さ方向との角度は150度以上170度以下であってもよい。
【0061】
前記の構成によれば、測定者が前記持ち手部を片方の手でより持ち易くなり、前記可搬型放射線測定器の取扱性をより高めることができる。
【0062】
本発明の態様3に係る可搬型放射線測定器は、前記態様1又は2において、測定の開始と中断とを切り替えるスイッチをさらに備えていてもよい。
【0063】
前記の構成によれば、被験者が測定中にぐずる可能性のある乳幼児であっても、乳幼児の状態に応じて、測定者が測定の開始と中断とを切り替えることができる。
【0064】
本発明の態様4に係る可搬型放射線測定器は、前記態様1から3のいずれかにおいて、測定中に点灯するランプをさらに備えていてもよい。
【0065】
前記の構成によれば、測定者が測定中であるか測定の中断中であるかを目視で確認し易くすることができる。
【0066】
本発明の態様5に係る可搬型放射線測定器は、前記態様1から4のいずれかにおいて、前記プローブの厚み寸法は、標準的な乳児の頸部の高さ寸法よりも小さく設定されていてもよい。
【0067】
前記構成によれば、乳児を含む5歳以下の乳幼児の頸部の前面に前記プローブの前記先端面を容易に接触させることができ、5歳以下の乳幼児の甲状腺から放出される放射線を容易に測定することができる。
【0068】
本発明の態様6に係る可搬型放射線測定器は、前記態様1から5のいずれかにおいて、前記プローブの厚み寸法は、前記標準的な乳児の頸部の高さ寸法の0.8倍以上に設定されていてもよい。
【0069】
前記の構成によれば、前記可搬型放射線測定器の測定精度を十分に確保することができる。
【0070】
本発明の態様7に係る可搬型放射線測定器は、前記態様1から6のいずれかにおいて、前記プローブ及び前記持ち手部は、それぞれ、合成樹脂からなってもよい。
【0071】
前記の構成によれば、前記プローブ等が金属からなる場合に比べて、前記可搬型放射線測定器の軽量化を促進することができる。
【0072】
〔付記事項〕
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0073】
10 可搬型放射線測定器
12 測定器本体
12c シールド膜
14 プローブ
14a 先端面
14b 後端面
14e 湾曲部
16 持ち手部
20 検出素子
22 回路基板
24 配線ケーブル
30 スイッチ
32 ランプ
34 USBコネクタ
36 USBケーブル