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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180095
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
B41J2/01 207
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099543
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米田 至
(72)【発明者】
【氏名】内田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】清川 佑輔
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EB07
2C056EB40
2C056EC37
2C056EC77
2C056FA10
2C056KD06
(57)【要約】
【課題】記録ヘッドからの液滴の吐出状態の監視を効率的に行う技術を提供すること
【解決手段】記録ヘッドを搭載したキャリッジを記録媒体に対して相対的に移動させながら、記録ヘッドのノズルから記録媒体に液滴を吐出する記録装置は、ノズルから吐出された液滴を検出する検出手段と、検出手段の検出結果に基づいてノズルの吐出状態を判定する判定手段と、ノズルからの液滴の吐出を制御する吐出制御手段と、を備え、吐出制御手段は、複数の検査位置からノズルから液滴を吐出させ、判定手段は、複数の検査位置に対応する検出手段の検出結果に基づいて、検出手段での吐出状態の監視のためにノズルから液滴を吐出する監視位置を決定する。
【選択図】 図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ヘッドを搭載したキャリッジを記録媒体に対して相対的に移動させながら、前記記録ヘッドのノズルから前記記録媒体に液滴を吐出する記録装置であって、
前記ノズルから吐出された液滴を検出する検出手段と、
前記検出手段の検出結果に基づいて前記ノズルの吐出状態を判定する判定手段と、
前記ノズルからの液滴の吐出を制御する吐出制御手段と、
を備え、
前記吐出制御手段は、複数の検査位置から前記ノズルから液滴を吐出させ、
前記判定手段は、前記複数の検査位置に対応する前記検出手段の検出結果に基づいて、前記検出手段での吐出状態の監視のために前記ノズルから液滴を吐出する監視位置を決定することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記検出手段は、
光を照射する発光手段と、
前記発光手段から照射される光を受光し、受光光量に応じて信号を出力する受光手段と、
を備え、
前記判定手段は、前記液滴が前記光を遮ることにより前記受光手段から出力される信号の値を前記検出結果として取得することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記複数の検査位置のそれぞれについて、液滴を吐出した後の所定の期間における出力信号の積分値に基づいて前記監視位置を決定することを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記判定手段は、液滴を吐出した後の所定の期間における出力信号の積分値が最大となる位置を前記監視位置として決定することを特徴とする請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記積分値の閾値を記録する記憶手段を有し、
前記判定手段は、前記監視位置として決定した位置に対応する前記積分値の最大値と、前記記憶手段に記憶された前記閾値との差分が所定の閾値を上回った場合に、前記吐出状態が変化したと判定することを特徴とする請求項4に記載の記録装置。
【請求項6】
前記判定手段は、前記監視位置に対応する前記積分値を前記閾値として記録することを特徴とする請求項5に記載の記録装置。
【請求項7】
前記判定手段は、前記複数の検査位置のそれぞれについて、液滴を吐出した後の所定の期間における出力信号の極小値に基づいて前記監視位置を決定することを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項8】
前記判定手段は、前記複数の検査位置のそれぞれについて、液滴を吐出した後の所定の期間における出力信号の極小値が最小となる位置を前記監視位置として決定することを特徴とする請求項7に記載の記録装置。
【請求項9】
前記ノズルの吐出方向における前記ノズルから前記光までの距離を調整する調整手段をさらに有し、
前記判定手段は、前記ノズルから前記光までの前記距離と対応付けて前記監視位置を決定することを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項10】
前記記録ヘッドは、複数のノズルを備え、
前記判定手段は、前記複数のノズルのいずれかと対応付けて前記監視位置を決定することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項11】
前記記録ヘッドは、前記キャリッジの移動方向に対して交差する方向に配置された複数のノズル列を備え、
前記判定手段は、前記複数のノズル列のいずれかと対応付けて前記監視位置を決定することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項12】
前記記録ヘッドは、往復移動しながら液滴を吐出可能であり、
前記判定手段は、移動方向と対応付けて前記監視位置を決定することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項13】
前記キャリッジは、複数の異なる移動速度の何れかで移動し、
前記判定手段は、前記移動速度と対応付けて前記監視位置を決定することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項14】
前記記録ヘッドは、複数のインクタンクを備え、
前記判定手段は、前記複数のインクタンクのいずれかと対応付けて前記監視位置を決定することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項15】
複数の検出手段を備え、
前記複数の検出手段のいずれかと対応付けて前記監視位置を決定することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項16】
前記ノズルからの液滴は主滴とサテライトとを含む複数の液滴を含み、前記キャリッジが移動している間に前記ノズルから液滴を吐出した場合に前記主滴は前記サテライトと異なる軌跡で吐出されることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項17】
前記検出手段は、前記監視位置から吐出された前記主滴および前記サテライトの両方を検出可能であることを特徴とする請求項16に記載の記録装置。
【請求項18】
前記吐出状態が変化したと前記判定手段が判定した場合に、レジストレーション調整処理を実行する実行手段を有することを特徴とする請求項5に記載の記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドより液滴を吐出して記録する記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式の記録装置は、CAD(Computer Aided Design)線画、ポスター、アート作品など多様な出力物が想定されており、インクの種類を含め、様々な使用環境が想定されている。さらには、記録装置や記録ヘッドの個体差およびインク色ごとの物性、その使用状況や環境影響など、様々な要因によって吐出するインクの量や吐出速度が変化することがある。特に、記録ヘッドが往復移動(走査)しながら吐出可能(記録可能)な構成においてインク吐出速度が変化すると、記録ヘッドの往路方向で吐出したインク滴の付着位置とその復路方向で吐出したインク滴の付着位置に差が生じうる。その結果、形成画像の精細さや細線の再現性が劣化し、全体的な画質が劣化する場合があった。
【0003】
特許文献1は、インクの吐出速度を計測する測定手段を備え、計測結果に基づき往復記録の移動速度と吐出速度とから吐出タイミングを適切に設定するためのレジストレーション調整方法を提供することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-152853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術によれば、ヘッドから吐出される液滴は、吐出条件によって、主滴とサテライトとの、サイズの異なる複数の液滴に分かれて吐出される。吐出時には、主滴とサテライトは同じ位置から吐出されるが、吐出速度の違いから、検出タイミングが異なる。このため、従来の方式では吐出タイミングをずらし、主滴とサテライトとを別々に検出している。このような方式では、液滴の吐出状態の監視のために吐出回数を増やす必要があり、監視に必要な時間が増加することが課題であった。
【0006】
本発明では上記課題に鑑みてなされたものであり、記録ヘッドからの液滴の吐出状態の監視を効率的に行う技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述目的を達成するため、本発明に係る記録装置は、
記録ヘッドを搭載したキャリッジを記録媒体に対して相対的に移動させながら、前記記録ヘッドのノズルから前記記録媒体に液滴を吐出する記録装置であって、
前記ノズルから吐出された液滴を検出する検出手段と、
前記検出手段の検出結果に基づいて前記ノズルの吐出状態を判定する判定手段と、
前記ノズルからの液滴の吐出を制御する吐出制御手段と、
を備え、
前記吐出制御手段は、複数の検査位置から前記ノズルから液滴を吐出させ、
前記判定手段は、前記複数の検査位置に対応する前記検出手段の検出結果に基づいて、前記検出手段での吐出状態の監視のために前記ノズルから液滴を吐出する監視位置を決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、記録ヘッドからの液滴の吐出状態の監視を効率的に行う技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る記録装置の外観を示す図
図2】本実施形態に係る記録装置の内部構成を示す斜視図
図3】本実施形態に係る記録装置の制御構成を示すブロック図
図4】(a)は正常な吐出状態における吐出の例を示す図、(b)は不吐出状態における吐出の例を示す図
図5】(a)~(d)は記録ヘッドの高さの変化に対応した検出時間の変化を示す図
図6】本実施形態に係る記録装置が実行する吐出状態監視処理の一例を示すフローチャート
図7】CRを駆動しながら、吐出検出を行なう概念図
図8】(a)~(d)は受光光量に基づいて吐出速度および吐出量を推定する模式図
図9】(a)~(c)は飛翔状態変化前の吐出位置と検出波形の概念図
図10】(a)~(c)は飛翔状態変化後の吐出位置と検出波形の概念図
図11】第1の実施形態に係る監視位置決定処理を示すフローチャート
図12】第2の実施形態に係る監視位置決定処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
なお、この明細書において、「記録」(「プリント」という場合もある)とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わない。また人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する場合も表すものとする。
【0012】
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等の、インクを受容可能なものも表すものとする。以下の実施形態では、記録媒体は記録用紙であるものとして説明を行うが、上述したように他の種類の記録媒体にも適用することができ、記録用紙に限定されない。また、「記録装置」とは、上述した記録媒体上に記録を行う装置を指す。
【0013】
さらに、「インク」(「液体」と言う場合もある)とは、上記「記録(プリント)」の定義と同様広く解釈されるべきものである。従って、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成または記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体(液滴)を表すものとする。
【0014】
以下、図を参照して本発明を適用可能な一実施形態について詳細を記載する。
【0015】
<記録装置の全体概要>
図1は、本実施形態に係る、10~60インチサイズの記録用紙を記録媒体として用いるインクジェット式の記録装置(以下、記録装置)100の外観図である。なお、本実施形態は上述したようにいずれかの記録媒体に対してインクを吐出して記録を行う記録装置に適用可能であり、記録媒体の種類やサイズを限定するものではないことに留意されたい。
【0016】
図1に示す記録装置100は、出力された記録用紙を積載する排紙ガイド101、記録モードや記録紙などの設定をするための操作を受け付ける操作パネル部102、および種々の記録情報や設定結果などを表示するための表示パネル103を備える。さらに記録装置100には、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローなどの1つ以上のインクタンクを収容して記録ヘッドにインクを供給するためのインクタンクユニット104を備える。
【0017】
図2は、記録装置100の内部構成の一例を示す斜視図である。記録ヘッド201はキャリッジ(以下、CRとも称する)202に搭載される。また、記録ヘッド201は、記録用紙203と記録ヘッド201との間の距離を検出するための用紙検出センサ204を備える。また、CR202または記録ヘッド201には、1つ以上のインクタンクを備えるインクタンクユニット104が搭載される。また、記録装置100は、記録ヘッド201から吐出されるインク滴を検出するための液滴検出センサ205を備える。メインレール206は、キャリッジ202を支持するとともに、キャリッジ202の移動方向を水平方向(記録用紙の搬送方向に対して交差する方向)に制限することで、キャリッジを往復走査させる。
【0018】
キャリッジ202は、キャリッジ搬送ベルト207を介してキャリッジモータ208により駆動され、水平方向に往復走査される。これによって、記録ヘッド201は記録用紙に対して相対的に移動することができる。本実施形態では、記録用紙が搬送される方向を搬送方向(図2のY方向)と参照し、キャリッジが往復移動する方向を走査方向(X方向)と参照する。なお、本実施形態では、記録ヘッド201は往復移動しながら吐出可能であるものとする。キャリッジ202に搭載されたエンコーダセンサ210は、走査方向に配設したリニアスケール209を検出することで、キャリッジ202の位置情報を読み出す。また、記録装置100は、キャリッジ202の高さを段階的に可変するためのリフトモータ211を備える。リフトモータ211は、キャリッジ202の高さを変動させることで、記録ヘッド201を記録用紙203に対して接近させたり離間させたりすることができる。また、記録用紙203は、プラテン212によって支持され、用紙搬送ローラ213によって搬送方向に搬送される。ここでの記録用紙203は、ロール紙を例に挙げて説明するが、これに限定するものではなく、例えば、カット紙が用いられてもよい。また、記録用紙203の幅についても、複数の用紙幅に対応できるように構成されてよい。
【0019】
図3は、記録装置100の内部構成の一例を示す図である。記録装置100は、(Central Processing Unit)301、制御インタフェース(I/F)302、およびメモリ303を備える。CPU301は、メモリ303に格納されたプログラムを実行することで装置全体の制御処理を実行する。制御I/F302は、CPU301によって制御され、用紙検出センサ204、液滴検出センサ205、およびエンコーダセンサ210を含む検出部や、キャリッジモータ208、およびリフトモータ211を含む駆動部の制御を行う。メモリ303は、CPU301によって実行されるプログラムや、プログラムによって使用される吐出速度や記録用紙の厚さなどの各種情報を記憶する。CPU301、制御I/F302、メモリ303は、バス304によって通信可能に接続される。
【0020】
制御I/F302は、用紙検出センサ204や液滴検出センサ205にて検出された結果を読み出す。また、制御I/F302は、キャリッジ202を走査するキャリッジモータ208を制御する。さらに、制御I/F302は、エンコーダセンサ210で検出した位置情報に基づきヘッド制御回路305を駆動する。上記構成において、ホスト装置(不図示)からの記録データは、ヘッド制御信号に変換され、記録ヘッド201による記録用紙203への印刷が行われる。
【0021】
CPU301は、メモリ303に格納された各種プログラムを読み出して実行することで、ドライバ部306、シーケンス制御部307、画像処理部308、タイミング制御部309、およびヘッド制御部310として機能する。以下の説明では、ドライバ部306、シーケンス制御部307、画像処理部308、タイミング制御部309、およびヘッド制御部310を区別せず機能ブロックと参照する場合がある。
【0022】
シーケンス制御部307は、記録制御全般、具体的には、各機能ブロックの起動および停止、記録用紙の搬送制御、キャリッジ202の走査制御等を行う。
【0023】
ドライバ部306は、バス304を介してシーケンス制御部307からの指令に基づき各制御信号を制御インタフェース302に出力することで検出部や駆動部を制御する。また、ドライバ部306は、検出部や駆動部からの入力信号を制御インタフェース302およびバス304を介して取得し、シーケンス制御部307へ伝達する。
【0024】
画像処理部308は、ホスト装置からの入力画像データを色分解・変換する画像処理を行う。ここで、ホスト装置からの入力画像データは、バス304に接続された通信部(不図示)や、ユニバーサルシリアルバス(USB)などの入力インタフェースを介してドライバ部306に受け渡され、画像処理部308に送信される。タイミング制御部309は、キャリッジ202または記録ヘッド201の位置と連動して、画像処理部308で変換・生成された記録データをヘッド制御部310に送信する。また、タイミング制御部309は、用紙検出センサ204で検出した記録ヘッド201と記録用紙203間の距離に基づいて、記録ヘッド201による記録データの吐出のタイミングの制御も行う。さらに液滴検出センサ205で検出した各インク滴のタイミングに基づいて判定した液滴の吐出速度情報に基づいて、記録ヘッド201による記録データの吐出のタイミングの制御も行う。ヘッド制御部310は、タイミング制御部309から入力された記録データをヘッド制御信号に変換して記録ヘッド201に出力したり、シーケンス制御部307の指令に基づいて記録ヘッド201の温度制御を行う。すなわち、ヘッド制御部310は、記録ヘッド201の吐出を制御する吐出制御部として機能する。
【0025】
次に、図4(a)、図4(b)を用いて本実施形態における、記録ヘッド201から吐出されるインク滴の吐出状態の検出方法を説明する。図4(a)は正常な吐出状態における吐出の例を示し、図4(b)は不吐出状態、すなわち正常に吐出が行われない状態における吐出の例を示す。図4(a)の上部および図4(b)の上部は記録装置100をYZ平面における記録ヘッド201と液滴検出センサ205の断面図を示す。YZ平面は、記録用紙の搬送方向であるY方向と鉛直方向であるZ方向とを通る平面である。図4(a)、および図4(b)の上部に示すように、記録ヘッド201の吐出口面201a上には、画像形成のために、インク色毎にインク滴を吐出するための吐出口(以下、ノズルとも記載する)216を有している。液滴検出センサ205は、発光素子401、受光素子402、制御回路基板403、吐出エリア405を含む。発光素子401は、ノズル216から吐出方向に吐出されたインク滴が光線404を通過するように配置され、受光素子402は発光素子401から照射された光線404を受光する位置に配置される。発光素子401から受光素子402に入射する光線404を絞り込んでS/N比を向上させるために、各素子の近傍にそれぞれアパーチャが構成され、発光素子401から受光素子402に入射する光線404の光量を受光素子402で読み取る。
【0026】
図4(a)、図4(b)の下部には、記録ヘッド201に駆動パルスを印加することで吐出を指示する吐出信号(指示信号)の送信タイミングと、液滴検出センサ205が液滴を検知したときに変化する受光素子402の検出信号のタイミングチャートを示す。液滴検出センサ205は発光素子401、受光素子402、制御回路基板403などから構成されている。発光素子401は光線404を発し、受光素子402は発光素子401が発光した光線404を受光する。本実施形態では、発光素子401と受光素子402とはY方向に配置されるものとして記載しているが、X方向でもよい。すなわち、発光素子401は、ノズル216の吐出方向(Z方向)と交差する方向に光線404を発し、受光素子402は発光素子401から送出された光線404を受光可能な位置に配置されればよく、図4の例に限定されない。受光素子402は、受光した受光量に応じた出力信号を制御回路基板403に出力することで、制御回路基板403は受光素子402が受光した受光量を検出する。
【0027】
制御回路基板403上には、受光素子402が受光した光量により流れる電流を電圧信号に変換して出力する電流・電圧変換回路やインク滴の検出信号のレベルの増幅回路が設けられている。さらに、制御回路基板403は、吐出検出を行うまで増幅回路から出力される信号のレベルを所定の値(クランプ電圧)に保持するためのクランプ回路を備える。これによって、外乱の影響により受光素子402の検出信号のレベルが変動することで出力の飽和やS/Nが低下することを避けることができる。これらの回路によりインク滴の吐出のような微小な変化分を検出するための、所望の吐出による検出信号のレベルを確保している。すなわち、制御回路基板403は、インク滴の吐出によって変化する受光素子402の出力信号を検出するための回路素子を備える。その結果、液滴検出センサ205の光線404をインク滴が通過したとき、受光素子402が受ける受光量が変化し、出力された検出信号のレベルと所定の基準電圧との比較結果により、検出対象となるノズルの吐出状態の判定を行う。
【0028】
また、液滴検出センサ205は、光線404の光軸がプラテン212の記録用紙203を支持する側の表面とZ方向に同じ位置になるように設置されている。発光素子401および受光素子402の近傍にはそれぞれスリットが設けられ、入射する光線404を絞り込んでS/N比を向上させる。光線404の中をインク滴が通過するようにインク滴を吐出できるX方向の記録ヘッド201の位置を検出位置とする。インク滴の吐出状態を判定するためにインク滴を検出する際には、シーケンス制御部307によって制御I/F302を介してキャリッジモータ208が制御され、記録ヘッド201は検出位置に移動する。検出位置は、記録ヘッド201が液滴検出センサ205の鉛直方向上方に位置する位置である。
【0029】
本実施形態では、図2に示すように、検出位置はキャリッジ202の移動方向(X方向)において記録用紙が搬送される範囲外に配置される。しかしながら、記録用紙が搬送される範囲内に検出位置が設けられてもよい。このような場合、記録装置100は、記録用紙のカット・搬送・排出処理などを行い、検出位置の鉛直方向上方(X方向)に記録用紙が配置されない状態においてインク滴の吐出を行うことで、本実施形態と同様にインク的の吐出状態を判定することができる。
【0030】
本実施形態における光線404は、XZ面における断面積は2mm×2mm程度とする。そして、インク滴が光線404を通過した場合のインク滴の平行光射影面積は2-3[mm2]程度とする。吐出口列と光線404は互いに平行となる関係に配置され、その高さ方向(Z方向)における沿面距離は2~10mmとしている。各吐出口と光線404との沿面距離を近接させた場合は、吐出したインク滴の飛翔距離に対して、光線404が近い位置でインク滴の通過を検出できるため、吐出状態の検出も安定的に行うことができる。しかしながら、吐出口列と光線404が近接することにより、発光素子401から発光した拡散光成分が記録ヘッド201の吐出口面201aに反射して受光素子402に受光する光量成分が発生する。その結果、吐出状態の検出に対してノイズ成分として検出信号に重畳し、検出精度が低下する可能性が生じる。そのため、液滴検出センサ205の光線404と記録ヘッド201の吐出口列との沿面距離は、これらの相関関係を考慮して決定される。また、液滴検出センサ205によりインク滴を検出する条件と、画像形成時に記録用紙203へのインク滴の吐出状態を合わせるために、光線404と記録用紙203を支えるプラテン212とは鉛直方向(Z方向)において略同等の位置(高さ)に配置される。
【0031】
次に、吐出するインク滴の吐出状態および不吐出の判定を行う構成について説明する。図4(a)で図示する構成では、液滴検出センサ205により、記録ヘッド201の吐出状態の検出対象となる吐出口216(本図面での説明はN番ノズルとする)が正常に吐出できている場合の検出結果を示した模式図になる。液滴検出センサ205に向かって、CPU301内のヘッド制御部310およびヘッド制御回路305を介し、吐出信号に基づきインク滴が吐出される。インク滴の吐出に同期した制御信号により前述したクランプ回路を動作させ、インク滴の吐出を検出する直前、出力される信号レベルを所定のクランプ電圧値にて保持する。
【0032】
CPU301は、インク滴の吐出が開始され、光線404に向かって吐出したインク滴が遮光する直前にクランプ回路による動作を解除する。さらに、インク滴が光線404を遮光したときの変化量に応じて定められた基準電圧値より、吐出されたインク滴が液滴検出センサ205の光線404を通過することで変化した光量の方が小さいことを検出した場合に正常な吐出状態であると判定する。その結果、検出対象となるノズル(N番ノズル)は正常に吐出されたと判定される。ここでは、液滴検出センサ205による吐出状態の検出結果についてより信頼性の高い結果を得るために、検出対象となるN番ノズルからの吐出を複数回実施している結果を図示している。
【0033】
図4(b)は、図4(a)で説明した、記録ヘッド201の吐出状態の検出対象となるノズル(ここでも仮にN番とする)が正常に吐出できていない、つまり不吐状態となった場合の検出結果を示している模式図になる。図4(a)で示した図と同様に、液滴検出センサ205に向かって、CPU301内のヘッド制御部310およびヘッド制御回路305を介し、吐出信号に基づきインク滴が吐出される。ただし、ここではインク滴の吐出が正しく行えず、インク滴が不十分に吐出されない状態となる。その結果、インク滴が光線404を遮光することができず、予め吐出が正しく行われた場合に発生する光量低下が得られないことになる。これによって、検出信号がクランプ電圧を上回ったあと、インク滴の吐出を指示しても基準電圧未満にならない。このような場合、CPU301は検出対象となるN番ノズルは正常に吐出されず、不吐状態と判定される。
【0034】
図5(a)は、記録ヘッド201から吐出されるインク滴の吐出速度を検出するための、液滴検出センサ205の内部構成の一例を示す図である。CPU301は、リフトモータ211を駆動し、記録ヘッド201と液滴検出センサ205の距離を所定の量(第一の距離)離間させた状態で、インク滴の吐出を行い、吐出されたインク滴の検出を行う。
【0035】
吐出されるインク滴の検出およびその速度を算出する構成について詳細に説明する。ここで図示する構成では、記録ヘッド201から液滴検出センサ205に向かって、CPU301内のヘッド制御部310およびヘッド制御回路305を介し、吐出信号に基づきインク滴が吐出される。インク滴が液滴検出センサ205から入射する光線404を通過したときの光量変化したタイミングが検出信号として出力される。このとき、記録ヘッド201から液滴検出センサ205までの距離H1に対する吐出信号が発せられてから検出信号が出力されるまでの第一の検出時間T1が検出される。
【0036】
次に、図5(b)は、図5(a)に対して、リフトモータ211を駆動し、記録ヘッド201と液滴検出センサ205の距離をさらに離間させ(第二の距離)、インク滴の吐出速度を検出するための内部構成の一例を示す図である。図5(a)と同様に、インク滴が液滴検出センサ205から入射する光線404を通過したときの光量変化したタイミングが検出信号として出力される。このとき、記録ヘッド201から液滴検出センサ205までの距離H2に対する吐出信号が発せられてから検出信号が出力されるまでの第二の検出時間T2が検出される。
【0037】
ここで、図5(a)および図5(b)に関して、第一の距離から第二の距離の区間における距離差と、第一および第二の検出時間の差に基づき、インク滴の第一の吐出速度V1が算出される。
V1=(H2-H1)/(T2-T1)
次に、図5(c)は、図5(a)および図5(b)に対して、リフトモータ211を駆動し、記録ヘッド201と液滴検出センサ205の距離をさらに離間させ、インク滴の吐出速度を検出するための内部構成の一例を示す図である。図5(a)および図5(b)と同様に、インク滴が液滴検出センサ205から入射する光線404を通過したときの光量変化したタイミングが検出信号として出力される。このとき、記録ヘッド201から液滴検出センサ205までの第三の距離H3に対する吐出信号が発せられてから検出信号が出力されるまでの第三の検出時間T3が検出される。
【0038】
ここで、第一、第二の距離と同様に、図5(b)および図5(c)に関して、第二の距離から第三の距離の区間における距離差と、第二および第三の検出時間の差に基づき、インク滴の第二の吐出速度V2が算出される。
V2=(H3-H2)/(T3-T2)
さらに、次に図5(d)は、図5(a)、図5(b)および図5(c)に対して、リフトモータ211を駆動し、記録ヘッド201と液滴検出センサ205の距離をさらに離間させ、インク滴の吐出速度を検出するための内部構成の一例を示す図である。図5(a)、図5(b)および図5(c)と同様に、インク滴が発光素子401から送出される光線404を通過したときの光量変化したタイミングが検出信号として出力される。このとき、記録ヘッド201から液滴検出センサ205までの第四の距離H4に対する吐出信号が発せられてから検出信号が出力されるまでの第四の検出時間T4が検出される。
【0039】
ここで、第一、第二、第三の距離と同様に、図5(c)および図5(d)に関して、第三の距離から第四の距離の区間における距離差と、第三および第四の検出時間の差に基づき、インク滴の第三の吐出速度V3が算出される。つまり、
V3=(H4-H3)/(T4-T3)
以上説明したように、記録ヘッド201と液滴検出センサ205との間の距離を変化させた場合におけるインク滴の検出時間の変化に基づいてインク滴の吐出速度が判定される。
【0040】
また、上記記載の構成に従い、記録ヘッド201と液滴検出センサ205の距離をさらにリフトモータ211で離間させることも可能である。この構成により、さらに多くの離間した距離とそれぞれのインク滴の検出時間を測定でき、より精度よくインク滴の吐出速度を算出することが可能である。一方で、上記記載の構成に従い、記録ヘッド201と液滴検出センサ205の距離をリフトモータ211で離間させる距離および区間を減少させ、インク滴の吐出速度の検出にかかる時間を短縮することも可能である。
【0041】
以上、示したように、記録ヘッド201から記録用紙までの距離を複数の段階に可変するための昇降手段と、それぞれの段階におけるインク吐出速度変動を検出することで高精度のインク吐出検出手段を提供することができる。
【0042】
吐出状態は、ノズル216から液滴を吐出することで変化する可能がある。一方で、数回程度の液滴の吐出による変化は小さい。このため、目安としては、数ページに一度吐出状態の監視を行なえばよい。一例では、ヘッド制御部310は、記録ヘッド201の各ノズル216の吐出回数をドットカウントとしてカウントし、ドットカウントが所定の閾値を超えたノズル216について、記録用紙への記録を行う前に吐出状態を判定してもよい。なお、吐出状態の判定は、記録処理の指示を受け付けた後であって記録用紙への記録を行う前に実行されうる。別の例では、複数ページにまたがる記録処理が行われる場合にはページ間の記録媒体の搬送中、または、記録ヘッド201のスキャン間に実施することで、記録媒体への記録処理への影響を少なくすることができる。なお、処理タイミングについては、ここに限定するものではない。
【0043】
図6に本実施形態に係る記録装置100が実行する処理の一例を示す。図6に示す処理は、CPU301がメモリ303に格納されたプログラムを実行することで実現される。
【0044】
処理ステップS601(S601と称する。後続の処理ステップも同様)において、CPU301は記録処理と同条件でCR202を走査し、液滴検出センサ205上を通過させ、光線404をインク滴が通過するように液滴検出センサ205への吐出を行う(S602)。
【0045】
ここで、記録処理と同条件とは、CR202や記録ヘッド201の駆動に、記録処理における駆動と同じパラメータを使用することを含む。CR202の駆動には、CR202の高さ、駆動速度および制御が含まれる。例えば、キャリッジ駆動速度は、キャリッジが加速移動する加速領域と、等速移動する等速領域と、減速しながら移動する減速領域とが存在するが、大部分の印刷は等速領域で行なわれる。このため、吐出監視も等速領域で行なわれる。減速領域はCR202の加速度が負の所定の値a1未満の領域であり、加速領域とはCR202の加速度が正の所定の値a2以上の領域であり、等速領域とは、CR202の加速度がa1以上a2未満の領域である。すなわち、等速領域とはCR202の速度が所定の範囲内であればよい。また、ヘッド駆動には、ブロック駆動および吐出パルス幅のパラメータに、記録処理におけるパラメータと同じものを使用することを含む。
【0046】
記録用紙上に形成する吐出液滴の着弾状態の変化を監視するために、記録処理における条件と同じ条件で、CR202を駆動させる。ここでの条件は、CR202と記録用紙との間の距離(キャリッジの高さ)、およびCR202の走査速度が含まれる。
【0047】
図7にCRを駆動しながら、吐出検出を行なう概念図を示す。記録ヘッド201から吐出されるインク滴は、吐出条件によっては、主滴と主滴以外の小液滴(以降サテライトまたはサテと称する)に分かれて吐出される。吐出時には、主滴とサテライトは同じ吐出口216から吐出されるが、吐出速度の違いから、記録用紙上の着弾位置が異なることがある。記録用紙上の着弾位置および着弾ドット形状の変化を検出するために、記録処理と同じ条件での吐出監視を行なう。なお、本実施形態では、記録処理と同一の条件を使用するものとして説明するが、インク滴の吐出状態の変化を検出するためには、必ずしも一致する必要はなく、実際の記録処理と異なる条件の駆動条件が使用されてもよい。
【0048】
図6のS603において、CPU301は、受光素子402の検出波形から主滴およびサテの吐出速度および液滴サイズを算出する。
【0049】
図4(a)を参照して上述したように、光線404を液滴が通過すると、受光素子402が受信する光量が変化するため、受光素子402が受光光量に応じて出力する信号が変化する。図8(a)および図8(b)に本実施形態の吐出速度および吐出量を算出する模式図を示す。図8(a)は、受光素子402が検出した受光光量に応じて出力する検出信号901を示す。主滴およびサテライトが光線404を通過する際に変化する信号は、光線404を通過する液滴の分布に影響する。吐出速度の変化は、ノズル216ごとに記録のために吐出した回数と相関関係がある。そのため、複数のノズル216から吐出された液滴を検出に使用する場合、同程度の吐出回数のノズル216を選択することで、吐出速度の分布の偏りが少なくなる。
【0050】
図8(b)に示す例では、主滴およびサテライトの吐出速度は正規分布に従うものとして、関数近似を行なう。主滴は、必ずサテライトよりも同等以上の吐出速度を有するため、2つの正規分布結果のうち、時間軸上で、先頭にある波形を主滴の波形とし、もう一方をサテライトの波形とする。一例では、CPU301は、吐出開始信号を送信したあとの所定の期間における極小値を検出し、時間軸上で先頭にある極小値が主滴の波形に対応し、時間軸上で二番目にある極小値がサテライトの波形に対応すると判定してもよい。別の例では、時間軸上で所定の範囲における検出量を主滴に対応する波形であると判定してもよい。これは、主滴は所定のサイズ以上の液的であるため、所定の時間内に検出されるためである。
【0051】
以上説明した方法によって、CPU301は検出信号801に基づいて主滴の検出量を近似した正規分布811とサテライトの検出量を近似した正規分布812とを分離することができる。しかしながら、関数近似は、必ずしも正規分布で行なう必要はなく、多項式を用いてもよい。このような場合、正規分布811、812のように関数近似を行った結果を、それぞれ主滴の近似関数811およびサテライトの近似関数812と呼ぶ。
【0052】
なお、検出信号を分離する方法として、ピークフィッティング法が知られている。これは、ガウス関数やローレンツ関数にピーク値や半値幅を与え、各関数で計算された波形の合成スペクトルと実スペクトルが一致するまで繰り返し計算する方法である。たとえば、主滴単体またはサテライト単体の検出信号がガウス関数で近似できるとき、ガウス関数によるピークフィッティングで図8(b)のように波形を分離することができる。波形分離後は、主滴の検出信号とサテライトの検出信号に対して、それぞれ吐出開始信号からピークに達するまでの時間差とピーク値から、吐出速度と吐出量を算出することができる。なお、検出信号の近似関数はガウス関数に限らず、ローレンツ関数や多項式関数などでもよい。また、検出信号を近似して分離する方法はピークフィッティング法に限らず、非線形最小二乗法などでもよい。
【0053】
図8(c)は分離した主滴から吐出速度と吐出量を算出する概念図である。CPU301は、図8(b)を参照して説明した近似関数811、812に基づいて、インク滴の吐出開始から、検出までの時間を算出する。CR202と液滴検出センサ205との間の距離は、既知のため、吐出速度を算出できる。なお、吐出監視は、前回算出したインク滴の吐出開始から検出までの時間の差分を検出する。このため、CPU301は、CR202と液滴検出センサ205との間の距離が前回の検出時と同じであれば、距離の絶対値を正確に把握する必要はない。例えば、初期の吐出速度が18m/sである場合、18m/sの検出精度が高いことが必要ではなく、使用後の変化量として、0.5m/s変化したことを検出できればよい。また、CPU301は、検出信号の変化量から、吐出量を判定してもよい。この吐出量は、あらかじめ定義された受光素子402の検出信号の変化量と吐出量との対応関係に基づいて判定されることができる。図8(d)は分離したサテライトから吐出速度と吐出量を算出する概念図である。CPU301は、主滴と同様にサテライトの吐出速度、吐出量が判定できる。ここで、ノズル216からの吐出速度が変化した場合、液滴の記録用紙上の着弾位置がずれる。その場合、例えば、一本の縦線を記録する場合に、線が太くなったり、一本の線が二本の線になったり、線の位置がずれるなどの記録不良が発生しうる。同様に、液滴のサイズが変化すると、記録用紙上に形成されるドットの濃度が変化する。例えば、マゼンタとシアンを重ねて、画像を形成する場合、一方のノズルの液滴サイズが変化することによって、色の濃度バランスが変化し、記録不良が発生しうる。吐出速度および吐出量の算出は、液滴検出センサ205の検出値に基づき、CPU301が行なう。
【0054】
S604では液滴の吐出量および吐出速度が所定の範囲内であるか否かを判定する。例えば、S604では液滴の吐出量が吐出量に関連付けられた第一の閾値以上であるか否かを判定する。また、吐出速度が吐出速度に関連付けられた第二の閾値以上であるか否かを判定する。吐出量および吐出速度がそれぞれ第一の閾値および第二の閾値以上である場合(S604でYes)、CPU301は吐出状態に変化がないと判定して図6に示す処理を終了する。一方、液滴の吐出量が第一の閾値未満である、または吐出速度が第二の閾値未満(S504でNo)であると判定した場合、CPU301は吐出状態に変化が生じたと判定して処理をS605に進める。なお、吐出量および吐出速度の一方のみについて閾値と比較してもよい。
【0055】
また、S604では、過去の検出結果と比較した場合の液滴の吐出量の変化量および吐出速度の変化量がそれぞれ吐出量の変化量に関連付けられた第三の閾値および吐出速度の変化量に関連付けられた第四の閾値以下であるか否かを判定してもよい。この場合、メモリ303には過去の検出結果が記録される。吐出量の変化量が第三の閾値以下であり、吐出速度の変化量が第四の閾値以下である場合(S504でYes)、CPU301は吐出状態の変化は生じていないと判定して図6に示す処理を終了する。CPU301は、初期または過去の吐出状態と、現在の吐出状態とを比較することで、変化を判断することができる。一方、過去の検出結果と比較して吐出量および吐出速度の変化量が第三の閾値または第四の閾値より大きい場合(S604でNo)、CPU301は吐出状態の変化が生じたと判定して処理をS605に進める。
【0056】
主滴またはサテライトの吐出速度および吐出量のそれぞれを上述した第一および第二の閾値と比較し、いずれか一つでも下回った場合、記録処理に影響が発生する可能性がある。また、主滴またはサテライトの吐出速度の変化量および吐出量の変化量が第三の閾値および第四の閾値より大きい場合にも記録処理に影響が発生する可能性がある。このため、CPU301はS605において、メモリ303に格納された検出NGフラグをONにし、処理を終了する。検出NGフラグは、記録ヘッド201の吐出状態が正常状態であることが検出されなかったことを示すフラグである。
【0057】
なお、S605では、記録ヘッド201の回復処理を自動で行ってもよい。回復処理は、1000回以上、例えば10000回、などの複数回連続して、キャップ(不図示)に連続吐出することを含む。回復処理は、キャップ(不図示)によってノズル216の吸引を行うことを含んでもよいし、ノズル216のワイピングなどのクリーニング処理、電位による異物除去処理の実行を含んでもよい。これらの回復処理を実行した後に、同様に吐出状態の検出を行うことで、回復処理によって吐出状態が回復したか否かを判定することができる。
【0058】
なお、本実施形態では、吐出状態の基準値として使用される第一~第四の閾値は、製品製造時に予め登録された値であるものとして説明を行う。しかしながら、第一~第四の閾値は、一例では液滴検出センサ205の検出結果に基づいて更新されてもよい。例えば、S603で検出された吐出速度および吐出量のうち、閾値以上であると判定された吐出量または吐出速度を新たな第一~第四の閾値としてメモリ303に格納してもよい。
【0059】
なお、メモリ303に格納される吐出速度および吐出量の基準値(第一~第四の閾値)は、プリンタ調整時、具体的にはレジ調整(着弾位置調整とも称する)または濃度調整(カラーキャリブレーションと称する)後の吐出速度および吐出量を用いてもよい。調整を実施したときの吐出速度および吐出量を検出し、メモリ303に格納する。以降は、吐出監視として検出したタイミングで、上記起点との比較を行なう。レジ調整または濃度調整を実施したタイミングで起点が更新される。
【0060】
また、S605では、CPU301はユーザに吐出状態の変化を通知してもよい。このような場合、CPU301は吐出の調整を指示するメッセージをネットワークを介してユーザまたは管理者に送信してもよいし、当該メッセージを記録装置100の表示パネル103に表示してもよい。
【0061】
また、S605では、CPU301は検出結果に基づいてレジストレーション調整処理(レジ調整)を自動実行してもよい。例えば、吐出量に変化がなく、吐出速度に変化が生じた場合には、CPU301は記録用紙上の着弾位置が変化しただけのため、吐出タイミングを変更することで吐出状態の変化に対応可能である場合がある。このため、着弾位置に吐出を行う吐出タイミングを決定するためのレジストレーションを調整する。また、記録装置100の記録処理における濃度調整を実行してもよい。また、記録装置100の記録処理における記録ヘッド201と記録媒体との間の距離を変更する処理を実行することで吐出タイミングのずれ量を調整してもよい。すなわち、S605では、変化した吐出状態に応じて異なる処理が実行されれよく、上記調整に限定されない。
【0062】
なお、吐出変動を検出した際に、自動調整を行なう方法としては、吐出着弾位置調整処理を行なう方法が考えられる。これは、記録媒体に記録を行い、記録したパターンを検出することで実現可能ある。また、別の方法として、吐出変動量が、吐出タイミングを演算する方法も可能である。吐出速度が変動することにより、着弾位置のずれ量は、ヘッド紙間とキャリッジ操作速度および吐出速度により、演算可能である。この方法を用いることで、印字をすることによる損紙を削減することができる。
【0063】
図6のS601に示す画像形成と同条件でCR202を走査し、吐出監視センサ上を通過させる動作について追加で説明する。
【0064】
吐出監視センサは、不吐を検出する液滴検出センサ205と光学系の構成、実現する目的機能は異なるが、図2に記載の液滴検出センサ205と兼用することが、ハードウェアの部品点数の観点では好ましい。そのため実施例の一つとしては、記録媒体に記録が行われる記録領域の外に配置される液滴検出センサ205で検出を行なう。
【0065】
一方で、本吐出監視は、記録動作中に実施することも可能である。このような場合、記録領域より外に配置された液滴検出センサ205までのCR202の移動は、記録処理のスループットの低下の原因となり得る。そのため、吐出監視センサを記録領域直近に配置された予備吐口と兼用してもよい。記録時も通過する領域に吐出監視センサを配置することで、印刷スループットを低下することなく、吐出監視ができる。
【0066】
図6のS603に示す、検出波形から主滴およびサテの吐出速度、または液滴サイズ(吐出量)を算出する処理について補足説明を加える。
【0067】
液滴検出センサ205の検出範囲を液滴が通過するとき、液滴が主滴とサテライトに分裂しているケースでは、主滴のみが光束を遮った微小時間後に、主滴とサテライトが光束を遮る状態となる。その結果、吐出監視センサの検出信号は、図8(a)に示したように2つのピーク値(極小値)を持つ波形となる。これは、主滴の検出信号とサテライトの検出信号を合成したものだと捉えることができる。主滴とサテライトそれぞれの吐出速度、液滴サイズを算出するためには、主滴の検出信号とサテライトの検出信号に分離する必要がある。
【0068】
図6のS604に示す吐出状態の変化の判定について補足説明を加える。吐出監視の目的は、正しいと判断された吐出状態からの変化を検出することを目的としている。正しいと判断される起点としては、記録装置100の初期設置または出荷時の状態が考えられる。他の起点としては、記録ヘッド201を交換した直後の状態、吐出着弾位置調整(レジ調整)後の状態が考えられる。それぞれの状態において、吐出状態を検出し、この値を既定の吐出状態として記憶する。この既定時の吐出状態からの変化量が一定以上になったときに吐出状態が変化したと判定する。
【0069】
また、吐出状態が変化したと判定された場合は、記録装置100は、吐出速度または吐出量を回復する処理(回復処理)として、記録ヘッド201のクリーニングまたは、電位による異物除去を実行してもよい。記録装置100は、回復処理の実行後、図6に示す処理を再度実行することで、吐出速度または吐出量が回復しているか否か、すなわち記録ヘッド201の回復が成功したか否かを判定することが可能である。
【0070】
<吐出状態監視のための監視位置決定方法>
吐出状態監視のための吐出を行う監視位置の決定方法について説明する。主滴とサテライトは吐出速度の違いから、キャリッジ走査中に液滴検出センサ205の光線404をインク滴が通過するように液滴検出センサ205への吐出を行うと、飛翔時の軌道が異なるため、主滴とサテライトとで最適な検出位置が異なりうる。さらに、インク液滴の飛翔状態は記録装置100の経年使用による変化に加え、インク、記録ヘッド、液滴検出センサ205など吐出状態監視の検出に関わる構成における経年変化によりインク滴の飛翔状態が変化する。このため、本実施形態に係る記録装置100は、吐出状態の監視のために液滴検出センサ205へノズルからの吐出を行う、または吐出を指示する位置(監視位置)を決定する。
【0071】
図9(a)~図9(c)に液滴の飛翔状態の変化前における吐出位置と検出信号の関係の一例を示す。また、図10(a)~図10(c)はそれぞれ図9(a)~図9(c)と対応する吐出位置から吐出し、液滴の飛翔状態が変化した後の吐出位置と検出信号の関係の一例を示す。
【0072】
図9(a)は主滴にとって最適な吐出位置で吐出した場合の検出波形の概念図となる。主滴が検出範囲の中心を通過することで主滴検出期間の信号の変化量が最も大きくなる一方、サテライトが検出領域を通過する時間が短いため、サテライト検出期間における液滴検出センサ205の受光素子402から出力される受光量の変化量が少なくなる。さらに、図10(a)において飛翔状態が変化すると、吐出速度の低下により、サテライトが検出領域を通過しない軌跡で飛翔する。
【0073】
図9(c)はサテライトにとって最適な吐出位置で吐出した場合の検出波形の概念図となる。サテライトが検出範囲の中心を通過することでサテライト検出期間の変化量が最も大きくなる一方、主滴が検出領域を通過しない軌跡で飛翔する。図10(c)において飛翔状態が変化すると、吐出速度の低下により、主滴とサテライトが共に検出領域に入る。
【0074】
ここで、吐出状態の監視では、飛翔状態の変化前、変化後で主滴とサテライトを同時に検出することで、主滴とサテライトとを個別に検出する必要がなくなり、吐出状態の判定に係る時間を短縮することができる。このため、本実施形態では、主滴とサテライトとのそれぞれの最適な吐出位置でなく、図9(b)で示したように主滴とサテライトとの両方が検出領域を通過するように飛翔状態の変化前に監視位置を決定する。この監視位置は、飛翔状態の変化後も図10(b)に示すように主滴とサテライトを同時に検出可能な位置である。
【0075】
なお、上記一例に記載されている構成要素の配置、形状、現象等は、あくまで例示であり、これらに限定されない。
【0076】
(第一の実施形態)
図11は、第一の実施形態に係る記録装置100によって実行される、吐出状態の監視のために記録ヘッド201から吐出する監視位置を決定する処理(監視位置決定処理)を示すフローチャートである。図11に示す処理は、CPU301がメモリ303に格納されたプログラムを実行することで実現される。また、図11の処理は、記録装置100の起動時や、記録ヘッド201の交換時に行われうる。別の例では、記録装置100が操作インタフェース(不図示)を介して図11に示す処理の実行指示を受け付けてもよいし、印刷前や、所定の時間経過後等、任意のタイミングで実行されてもよい。
【0077】
S1101では、CPU301は吐出位置決定処理に使用するパラメータ(検査条件)をメモリ303から読み出して、選択する。一例では、検査条件は、監視位置の候補である検査位置を指定する情報を含みうる。また、検査条件は、検査回数や、基準ノズル列、使用ノズル数といった吐出条件や、本体の駆動条件および記録ヘッドの高さや駆動条件に関連付けられうる。例えば、検査条件として、検査回数を1回とし、ノズル列をm番目とし、先頭(1番)ノズルから30番目の(30番)ノズルまでの隣接する30個のノズルを使用し、ヘッド高さをk番目の高さと設定されうる。
【0078】
また、検査条件は、記録ヘッドの高さや駆動条件に関連付けられうる。この場合、ノズルから光線404までの距離を調整可能な場合に、ノズルから光線404までの距離と対応付けて監視位置を決定することができる。
【0079】
また、検査条件は、インクタンクの識別子に関連付けられうる。この場合、記録ヘッドまたはキャリッジに搭載された複数のインクタンクのいずれかと対応付けて監視位置を決定することができる。
【0080】
また、検査条件として、キャリッジの移動速度として35ips(Inch Per Second)が設定され、キャリッジの移動方向として往方向と復方向のいずれかが設定されうる。すなわち、検査条件は、記録ヘッドまたはキャリッジの移動方向および移動速度の少なくとも何れかと関連付けられうる。これによって、記録ヘッドまたはキャリッジの移動方向及び移動速度の少なくとも何れかと対応付けて監視位置を決定することができる。
【0081】
また、検査前の予備吐出回数として150発、検査前のクリーニング処理の有無など記録装置100に記録されている設定から検査条件を読み出す。
【0082】
なお、上記一例はこれらに限定されるものではなく、本体の駆動条件には、キャリッジの高さ、キャリッジの駆動速度および制御方法、ヘッド駆動条件には吐出のパルス条件なども含まれる。また、それぞれの条件ごとに、監視位置を決定し、吐出状態監視に使用することができる。
【0083】
S1102にてCPU301は監視位置の候補となる検査位置を選択する。検査位置は、メモリ303に記録されている所定の位置、または前回の監視位置決定処理によって記録された監視位置を検査位置として読み出してもよい。
【0084】
一例としてエンコーダセンサの分解能が600dpi(Dots Per Inch)のエンコーダセンサにおいて、エンコーダパルス数が0の位置に対し、基準位置のエンコーダパルス数を140、検査範囲をエンコーダパルス数が120から159までを検査範囲とし、4パルス毎に検査を実施した場合、4パルス/600dpi=約0.17mmでキャリッジを走査し、0.17mm*40パルス/4パルス=約1.7mm分の検査範囲に対して検査を実施する。
【0085】
なお、上記例では基準位置を1つに設定し、検査順をエンコーダパルス数の最小値を始点とし、検査を実施する間隔を分解能に依存しているが、センサ構成、駆動条件についてはこれらにここに限定されるものではない。例えば、監視位置の候補となる複数の検査位置をメモリ303に記憶し、記憶された検査位置についてのみ監視位置になりうるかを判定してもよい。
【0086】
S1103にてCPU301は制御インタフェース(I/F)を制御して吐出状態の判定処理を開始し、検査条件に従い、検査位置において検査対象のノズル216からの吐出を行う。
【0087】
S1104では、S1103の検出結果である、時間ごとの受光素子402の検出した光量またはその変化量を示すアナログデータ(検出結果)を制御I/F302からCPU301が受け取り、記憶部に取得する。この結果は、受光素子402の出力を関数近似した値でも良い。また、吐出状態の判定において主滴とサテライトとの検出が可能なサンプリング数であればよく、受光素子402の出力信号を加工したものであってよい。
【0088】
S1105では、S1104で取得した検出結果に基づき、CPU301は主滴検出期間とサテライト検出期間との変化量の時間積分値を演算する。一例として図9(b)に示すAD(Analog-to-Digital)変換値がS1104で取得した検出結果であるとすると、S1105ではCPU301は時間積分値として斜線部分の面積を特定する。例えば、主滴検出期間およびサテライト検出期間はそれぞれ10msとし、1msごとにAD値の変化量を取得した場合、1msごとの変化量の足し合わせが積分値となる。また、検出結果を関数近似した場合、二重数値型数値積分などの数値積分法を使用してもよい。なお、積分値の演算方法はこれらの演算方法に限らず、また、積分値の演算は主滴とサテライトに対して、それぞれ積分区間を設け、積分値の合計を演算しても良く、また、液滴の飛翔状態によっては、積分区間を1区間としてもよい。
【0089】
S1106にてCPU301は全ての候補位置に対し、検査を終了したかを判定する。検査を終了している場合(S1106でYes)は、CPU301は処理をS1107に進める。検査を終了していない場合(S1106でNo)はCPU301は処理をS1102に進み、図11に示す処理を開始して後に吐出状態を判定していない検査位置(未検査位置)について、S1103~S1105の処理を実行する。
【0090】
S1107にてCPU301は、全ての検査位置についてS1105で演算した変化量の積分値のうちの最大値および最大となる位置を判定する。
【0091】
S1108では、CPU301は、S1107における最大値をメモリに記憶されている閾値と比較し、正常か判定する。一例として積分値の閾値を100と設定し、複数の検査位置で測定した複数の積分値の最大値が100以上で正常と判定、100以下で異常と判定する。上記例では閾値を1つ設定し、閾値よりも大きいかを判定し、正常であるか否かと判定したが、閾値は上限および下限を有する値の範囲であってもよく、積分値の最大値が基準値の範囲内であるか判定してもよい。また、基準値はこれらの値に限定されるものではない。
【0092】
別の例では、前回の積分値の最大値とS1107で演算した積分値の最大値との差分が所定の値の範囲内にあるか否かに応じて吐出状態が正常であるか以上であるかを判定してもよい。
【0093】
積分値の最大値が正常である判定された場合(S1108でYes)、CPU301は処理をS1109に進め、最大値が正常と判定されなかった場合(S1108でNo)、CPU301はS1101にて別条件を設定し、再度、検査を実施する。一例では、S1109では、積分値の最大値および最大値となる位置を監視位置として記録して処理を終了する。一例では、S1109では、CPU301は、主滴検出期間に対応する第一の閾値を上回る積分値の最大値と、サテライト検出期間に対応する第二の閾値を上回る積分値の最大値とを有する検出位置を監視位置として記録してもよい。
【0094】
以上説明したように、本実施形態では、複数の位置から吐出を行い、複数の位置のそれぞれについて液滴検出センサの出力信号の積分値を計算し、複数の積分値に基づいて吐出監視において監視位置を決定する。これによって、吐出状態の監視処理において液滴の検出精度が高い位置で吐出を行うことができる。
【0095】
(第二の実施形態)
第一の実施形態では、監視位置決定方法として主滴検出期間とサテライト検出期間との時間積分値を演算する方法を説明した。本実施形態では主滴検出期間とサテライト検出期間における受光素子402の出力信号の極小値を使用する場合について説明する。
【0096】
図12に本発明の第二の実施形態を説明するフローチャートを示す。なお、上記第一の実施形態と同様の部分に関しては一部説明を省略する。図12の示す処理のうち、S1201からS1204までの処理、およびS1206とS1210における処理を第一の実施形態と同様の処理とし省略する。
【0097】
S1205にて主滴検出期間とサテライト検出期間との極小値を演算する。この極小値の演算は主滴とサテライトに対して、それぞれ検出期間を設け、受光素子402の出力信号の極小値の合計を演算しても良く、また、液滴の飛翔状態によって、極小かつ最小である値を演算しても良い。極小値の演算は、記録装置100のCPU301がS1204の検出結果を取得して実行する。
【0098】
S1207にて全検査範囲分のS1205で演算したデータに対し、記録装置100のCPU301にて最小値を演算する。
【0099】
S1208にてS1207における最小値を閾値と比較し、正常か判定する。閾値はメモリ303に記録されている所定の値、または前回の監視位置決定処理においてメモリ303に記録された値を閾値と使用しても良い。最小値が正常と判定された場合、S1209に進み、最小値が正常と判定されなかった場合、S1201にて別条件を設定し、再度、検査を実施する。
【0100】
S1209にて主滴とサテライトの極小値および最小値となる位置を監視位置として記録して処理を終了する。
【0101】
以上説明したように、本実施形態では、複数の検査位置において、記録ヘッドから液滴の吐出を行い、液滴の吐出の検出結果の極値に基づいて吐出状態の監視において記録ヘッドから吐出を行う監視位置を決定する。これによって、吐出状態の監視処理において液滴の検出精度が高い位置で吐出を行うことができる。
【0102】
本実施形態は、記録装置の吐出状態の変化の検出に関する技術であり、インク滴の飛翔状態の変化前、変化後における主滴とサテライト滴を同時に検出する位置を監視位置として決定する。本実施形態を用いることで、経年や意図しない吐出変化のインク滴の飛翔状態の検出を可能とし、画像不良を発生することを未然に抑制することができる。その結果、画像不良を抑制することができる記録装置を提供することができる。
【0103】
<その他の実施形態>
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0104】
<実施形態のまとめ>
本実施形態の開示は、以下の通りである。
【0105】
(項目1)
記録ヘッドを搭載したキャリッジを記録媒体に対して相対的に移動させながら、前記記録ヘッドのノズルから前記記録媒体に液滴を吐出する記録装置であって、
前記ノズルから吐出された液滴を検出する検出手段と、
前記検出手段の検出結果に基づいて前記ノズルの吐出状態を判定する判定手段と、
前記ノズルからの液滴の吐出を制御する吐出制御手段と、
を備え、
前記吐出制御手段は、複数の検査位置から前記ノズルから液滴を吐出させ、
前記判定手段は、前記複数の検査位置に対応する前記検出手段の検出結果に基づいて、前記検出手段での吐出状態の監視のために前記ノズルから液滴を吐出する監視位置を決定することを特徴とする記録装置。
【0106】
(項目2)
前記検出手段は、
光を照射する発光手段と、
前記発光手段から照射される光を受光し、受光光量に応じて信号を出力する受光手段と、
を備え、
前記判定手段は、前記液滴が前記光を遮ることにより前記受光手段から出力される信号の値を前記検出結果として取得することを特徴とする項目1に記載の記録装置。
【0107】
(項目3)
前記判定手段は、前記複数の検査位置のそれぞれについて、液滴を吐出した後の所定の期間における出力信号の積分値に基づいて前記監視位置を決定することを特徴とする項目2に記載の記録装置。
【0108】
(項目4)
前記判定手段は、液滴を吐出した後の所定の期間における出力信号の積分値が最大となる位置を前記監視位置として決定することを特徴とする項目3に記載の記録装置。
【0109】
(項目5)
前記積分値の閾値を記録する記憶手段を有し、
前記判定手段は、前記監視位置として決定した位置に対応する前記積分値の最大値と、前記記憶手段に記憶された前記閾値との差分が所定の閾値を上回った場合に、前記吐出状態が変化したと判定することを特徴とする項目4に記載の記録装置。
【0110】
(項目6)
前記判定手段は、前記監視位置に対応する前記積分値を前記閾値として記録することを特徴とする項目5に記載の記録装置。
【0111】
(項目7)
前記判定手段は、前記複数の検査位置のそれぞれについて、液滴を吐出した後の所定の期間における出力信号の極小値に基づいて前記監視位置を決定することを特徴とする項目2から6のいずれか1項目に記載の記録装置。
【0112】
(項目8)
前記判定手段は、前記複数の検査位置のそれぞれについて、液滴を吐出した後の所定の期間における出力信号の極小値が最小となる位置を前記監視位置として決定することを特徴とする項目7に記載の記録装置。
【0113】
(項目9)
前記ノズルの吐出方向における前記ノズルから前記光までの距離を調整する調整手段をさらに有し、
前記判定手段は、前記ノズルから前記光までの前記距離と対応付けて前記監視位置を決定することを特徴とする項目2から8のいずれか1項目に記載の記録装置。
【0114】
(項目10)
前記記録ヘッドは、複数のノズルを備え、
前記判定手段は、前記複数のノズルのいずれかと対応付けて前記監視位置を決定することを特徴とする項目1から9のいずれか1項目に記載の記録装置。
【0115】
(項目11)
前記記録ヘッドは、前記キャリッジの移動方向に対して交差する方向に配置された複数のノズル列を備え、
前記判定手段は、前記複数のノズル列のいずれかと対応付けて前記監視位置を決定することを特徴とする項目1から10のいずれか1項目に記載の記録装置。
【0116】
(項目12)
前記記録ヘッドは、往復移動しながら液滴を吐出可能であり、
前記判定手段は、移動方向と対応付けて前記監視位置を決定することを特徴とする項目1から11のいずれか1項目に記載の記録装置。
【0117】
(項目13)
前記キャリッジは、複数の異なる移動速度の何れかで移動し、
前記判定手段は、前記移動速度と対応付けて前記監視位置を決定することを特徴とする項目1から12のいずれか1項目に記載の記録装置。
【0118】
(項目14)
前記記録ヘッドは、複数のインクタンクを備え、
前記判定手段は、前記複数のインクタンクのいずれかと対応付けて前記監視位置を決定することを特徴とする項目1から13のいずれか1項目に記載の記録装置。
【0119】
(項目15)
複数の検出手段を備え、
前記複数の検出手段のいずれかと対応付けて前記監視位置を決定することを特徴とする項目1から14のいずれか1項目に記載の記録装置。
【0120】
(項目16)
前記ノズルからの液滴は主滴とサテライトとを含む複数の液滴を含み、前記キャリッジが移動している間に前記ノズルから液滴を吐出した場合に前記主滴は前記サテライトと異なる軌跡で吐出されることを特徴とする項目1から15のいずれか1項目に記載の記録装置。
【0121】
(項目17)
前記検出手段は、前記監視位置から吐出された前記主滴および前記サテライトの両方を検出可能であることを特徴とする項目16に記載の記録装置。
【0122】
(項目18)
前記吐出状態が変化したと前記判定手段が判定した場合に、レジストレーション調整処理を実行する実行手段を有することを特徴とする項目5に記載の記録装置。
【0123】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0124】
100 記録装置、 201 記録ヘッド、 203 記録用紙、 205 液滴検出センサ、 301 CPU、 302 制御I/F、303 メモリ、401 発光素子、 402 受光素子、 403 制御基板、 404 光線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12