(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180096
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】複合体
(51)【国際特許分類】
B32B 15/098 20060101AFI20241219BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20241219BHJP
B32B 15/095 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B32B15/098
B32B5/18
B32B15/095
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099546
(22)【出願日】2023-06-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】523069625
【氏名又は名称】Nicoldsystem株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】509010263
【氏名又は名称】多摩防水技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】石村 憲之
(72)【発明者】
【氏名】藤本 幸一
(72)【発明者】
【氏名】木村 大原
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 純
(72)【発明者】
【氏名】三堀 寿
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AB01B
4F100AB02B
4F100AB10B
4F100AB31B
4F100AK01A
4F100AK33A
4F100AK36C
4F100AK51C
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100DA16B
4F100DB02B
4F100DJ01A
4F100JA13
4F100JA13A
4F100JD04
4F100YY00A
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】樹脂発泡体の軽量性を有し、防水性と優れた強度を有し、長期使用時の反りも抑制可能な複合体を提供すること。
【解決手段】第1の樹脂発泡体と、金属部材と、ポリウレア層またはポリウレアウレタン層、を含む複合体であって、前記第1の樹脂発泡体及び前記複合体は略柱体であり、前記金属部材が、前記第1の樹脂発泡体の外側の少なくとも一部に配置されており、前記ポリウレア層またはポリウレアウレタン層が、前記第1の樹脂発泡体の外側の少なくとも一部に配置されており、前記ポリウレア層は、ウレタン結合を有さず、前記ポリウレアウレタン層のウレア結合とウレタン結合の合計数に対するウレタン結合の数の割合が、0%より多く30%以下である、複合体。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の樹脂発泡体と、
金属部材と、
ポリウレア層またはポリウレアウレタン層、
を含む複合体であって、
前記第1の樹脂発泡体及び前記複合体は略柱体であり、
前記金属部材が、前記第1の樹脂発泡体の外側の少なくとも一部に配置されており、
前記ポリウレア層またはポリウレアウレタン層が、前記第1の樹脂発泡体の外側の少なくとも一部に配置されており、
前記ポリウレア層は、ウレタン結合を有さず、
前記ポリウレアウレタン層のウレア結合とウレタン結合の合計数に対するウレタン結合の数の割合が、0%より多く30%以下である、複合体。
【請求項2】
前記ポリウレア層またはポリウレアウレタン層が、前記第1の樹脂発泡体および前記金属部材の外側の周囲を実質的に全て覆っている、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
前記金属部材が、棒状である、請求項1に記載の複合体。
【請求項4】
前記第1の樹脂発泡体および前記複合体が、略角柱である、請求項1に記載の複合体。
【請求項5】
前記金属部材が、前記第1の樹脂発泡体の少なくとも1つの辺の外側に配置された枠である、請求項1に記載の複合体。
【請求項6】
前記金属部材が、前記第1の樹脂発泡体の全ての辺の外側に配置された枠である、請求項1に記載の複合体。
【請求項7】
前記第1の樹脂発泡体および前記複合体が、略角柱であり;
前記金属部材が、前記第1の樹脂発泡体の全ての辺の外側に配置された枠であり;
前記第1の樹脂発泡体の少なくとも一面の外側であり、かつ、前記枠の間に、第2の樹脂発泡体が配置されている、請求項1に記載の複合体。
【請求項8】
前記第2の樹脂発泡体が、前記第1の樹脂発泡体の全ての面の外側に配置されている、請求項7に記載の複合体。
【請求項9】
前記複合体の密度が、80~500kg/m3である、請求項1に記載の複合体。
【請求項10】
前記複合体の透湿度が、2~10g/(m2・24h)である、請求項1に記載の複合体。
【請求項11】
前記第1の樹脂発泡体の密度が、15~60kg/m3である、請求項1に記載の複合体。
【請求項12】
前記金属部材が、アルミニウム合金製である、請求項1に記載の複合体。
【請求項13】
前記金属部材が、鉄製である、請求項1に記載の複合体。
【請求項14】
前記金属部材を複数備え、
金属部材の端部に連結部材が設置されており、2以上の前記金属部材が角度90°でボルトによって固定されている、請求項1に記載の複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂発泡体と金属部材とポリウレア層またはポリウレアウレタン層とを含む複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂発泡体は、その軽量性から一般産業用材料として広く使用されているが、一般的に樹脂発泡体は強度が高いとは言えず、使用用途が一般産業用材料に限定されている。
【0003】
特許文献1においては、樹脂発泡体の基材表面にポリウレア樹脂のコーティング層を備える樹脂成形体が提案されている。
【0004】
特許文献2においては、発泡層の表面に補強防水層を設ける試みがなされている。
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では樹脂発泡体よりも強度は向上しているものの、積載物の重量が大きい場合には成形体が破断するおそれがあった。
【0006】
特許文献2では発泡層および補強防水層の種類ならびにその複合体としての構造が何ら具体的に開示されておらず、十分な圧縮強度を発現する複合体を得ることはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2017/056341号公報
【特許文献2】特開2009-264093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
樹脂発泡体の軽量性を有し、更に、優れた強度を併せ持つ材料が望まれている。また、産業材料用途に加えて、様々な用途に適用するために、防水性を有し、長期使用時の反りを抑制可能な材料も望まれている。
【0009】
そこで、本発明は、樹脂発泡体の軽量性を有し、防水性と優れた強度を有し、長期使用時の反りも抑制可能な複合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1]即ち、本発明は、以下のとおりである。
第1の樹脂発泡体と、
金属部材と、
ポリウレア層またはポリウレアウレタン層、
を含む複合体であって、
前記第1の樹脂発泡体及び前記複合体は略柱体であり、
前記金属部材が、前記第1の樹脂発泡体の外側の少なくとも一部に配置されており、
前記ポリウレア層またはポリウレアウレタン層が、前記第1の樹脂発泡体の外側の少なくとも一部に配置されており、
前記ポリウレア層は、ウレタン結合を有さず、
前記ポリウレアウレタン層のウレア結合とウレタン結合の合計数に対するウレタン結合の数の割合が、0%より多く30%以下である、複合体。
[2]前記ポリウレア層またはポリウレアウレタン層が、前記第1の樹脂発泡体および前記金属部材の外側の周囲を実質的に全て覆っている[1]に記載の複合体。
[3]前記金属部材が、棒状である[1]に記載の複合体。
[4]前記第1の樹脂発泡体および前記複合体が、略角柱である、[1]に記載の複合体。
[5]前記金属部材が、前記第1の樹脂発泡体の少なくとも1つの辺の外側に配置された枠である、[1]に記載の複合体。
[6]前記金属部材が、前記第1の樹脂発泡体の全ての辺の外側に配置された枠である、[1]に記載の複合体。
[7]前記第1の樹脂発泡体および前記複合体が略角柱であり;
前記金属部材が、前記第1の樹脂発泡体の全ての辺の外側に配置された枠であり;
前記第1の樹脂発泡体の少なくとも一面の外側であり、かつ、前記枠の間に、第2の樹脂発泡体が配置されている、[1]に記載の複合体。
[8]前記第2の樹脂発泡体が、前記第1の樹脂発泡体の全ての面の外側に配置されている、[7]に記載の複合体。
[9]前記複合体の密度が、80~500kg/m3である[1]に記載の複合体。
[10]前記複合体の透湿度が、2~10g/(m2・24h)である[1]に記載の複合体。
[11]前記第1の樹脂発泡体の密度が、15~60kg/m3である[1]に記載の複合体。
[12]前記金属部材が、アルミニウム合金製である、[1]に記載の複合体。
[13]前記金属部材が、鉄製である、[1]に記載の複合体。
[14]前記金属部材を複数備え、前記金属部材の端部に連結ブラケットが設置されており、2以上の前記金属部材が角度90°でボルト固定されている[1]に記載の複合体。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、樹脂発泡体の軽量性を有し、防水性と優れた強度を有し、長期使用時の反りも抑制可能な複合体を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本実施形態の複合体の一例を模式的に示した斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1の複合体1からポリウレア層またはポリウレアウレタン層10を除いた状態を模式的に示した斜視図である。
【
図4】
図4は、
図2のA-A断面を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、第1の樹脂発泡体の一例を模式的に示した斜視図である。
【
図6】
図6は、第1の樹脂発泡体の端面の一例を模式的に示した平面図である。
【
図7】
図7は、金属部材の配置の一例を模式的に示した斜視図である。
【
図8】
図8は、金属部材の配置の別の一例を模式的に示した斜視図である。
【
図9】
図9は、複合体の別の一例を模式的に示した斜視図である。
【
図10】
図10は、複合体の断面の別の一例を示した模式図である。
【
図11】
図11は、複合体の断面の別の一例を示した模式図である。
【
図12】
図12は、比較例2の複合体の断面を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、樹脂発泡体を金属部材で補強し、更にポリウレア層またはポリウレアウレタン層で周囲が被覆されることで、樹脂発泡体の軽量性を有し、これまで実現し得なかった、優れた強度と防水性を有し、長期使用時の反りを抑制可能な複合体を見出したものである。
【0014】
本実施形態の複合体について、強度、密度および透湿度は、実施例に記載の方法によって求める。
【0015】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。
【0016】
本発明において、2以上の実施形態を任意に組み合わせることができる。
【0017】
本発明において、樹脂発泡体とは、樹脂中に微細な独立気泡が分散している物体を指す。
【0018】
本発明において、「辺」とは、物体の「頂点または頂点と想定される点」間を結ぶ線分および円の円周を指す。「頂点と想定される点」は、物体を多面体と近似ないし仮定した場合に合理的に頂点と想定される点を指す。
【0019】
添付の図面は、本発明の理解を優先して描かれており、各構成の寸法、縮尺および配置は必ずしも正確ではない。
【0020】
本明細書において、数値範囲は、別段の記載がない限り、その範囲の下限値および上限値を含むことを意図している。例えば、80~500kg/m3は、80kg/m3以上500kg/m3以下の範囲を意味する。
【0021】
本明細書に記載の材料、成分、化合物、樹脂および触媒は、別段の記載がない限り、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
・複合体
本実施形態の複合体は、第1の樹脂発泡体と、金属部材と、ポリウレア層またはポリウレアウレタン層を含む複合体であって、第1の樹脂発泡体及び複合体は略柱体であり、金属部材が、第1の樹脂発泡体の外側の少なくとも一部に配置されており、ポリウレア層またはポリウレアウレタン層が、第1の樹脂発泡体の外側の少なくとも一部に配置されている。
【0023】
図1~2は、本実施形態の複合体を説明するための図面である。
図1は、本実施形態の複合体の一例を模式的に示した斜視図である。
図2は、
図1の複合体1の正面図である。この
図1~2の例では、複合体1は、四角柱(直方体)の形状を有する第1の樹脂発泡体と、その全ての辺上に配置された金属部材と、第1の樹脂発泡体と金属部材の外側の周囲を全て覆うポリウレア層またはポリウレアウレタン層10からなる。この
図1~2の例では、ポリウレア層またはポリウレアウレタン層10に覆われているため、第1の樹脂発泡体と金属部材は表されていない。
【0024】
図3は、
図1の複合体1からポリウレア層またはポリウレアウレタン層10を除いた状態を模式的に示した斜視図である。この
図3の例では、四角柱(直方体)の形状を有する第1の樹脂発泡体20と、その全ての辺上に配置された金属部材30が描かれている。
【0025】
図4は、
図2のA-A断面を模式的に示す断面図である。この
図4では、第1の樹脂発泡体20の4辺(面と面の接触部分で形成される辺)上にそれぞれ、金属部材30が配置されている。そして、ポリウレア層またはポリウレアウレタン層10が、第1の樹脂発泡体20と金属部材30の外側の周囲を全て覆っている。
【0026】
以下、複合体を構成する第1の樹脂発泡体、金属部材およびポリウレア層またはポリウレアウレタン層ならびに任意の部材を説明する。
【0027】
・第1の樹脂発泡体
第1の樹脂発泡体は、複合体において金属部材よりも内側に位置する樹脂発泡体である。第1の樹脂発泡体は、複合体に強度を付与する働きと、複合体の作製時に平滑な面を容易に形成する働きを有する。また、後述する第2の樹脂発泡体を用いる場合、複合体の長期使用時の第2の樹脂発泡体の反りを抑制する働きも有する。
【0028】
第1の樹脂発泡体は、公知の樹脂発泡体から適宜選択することができる。第1の樹脂発泡体としては、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、フェノール樹脂などが挙げられる。第1の樹脂発泡体は、単一の樹脂からなるものであってもよいし、複数の樹脂からなるものであってもよい。
【0029】
第1の樹脂発泡体の密度は、特に限定されず、適宜調節すればよい。第1の樹脂発泡体の密度は、例えば、15~60kg/m3であり、好ましくは20~55kg/m3であり、より好ましくは25~50kg/m3である。第1の樹脂発泡体の密度が15kg/m3以上であると樹脂発泡体の取り扱い時の破損を低減することができる。一方、第1の樹脂発泡体の密度が60kg/m3以下であると、複合体を形成した際に軽量性を維持することができる。第1の樹脂発泡体の密度は、樹脂発泡体の作成条件により所望の値に調整できる。
【0030】
一実施形態では、第1の樹脂発泡体は、フェノール樹脂フォーム(例えば、製品名「ネオマ(登録商標)フォーム」)である。
【0031】
第1の樹脂発泡体の厚さは、特に限定されず、適宜設定することができる。
【0032】
図5は、第1の樹脂発泡体の一例を模式的に示した斜視図である。
図5のAは、四角柱の第1の樹脂発泡体を示している。
図5のBは、円柱の第1の樹脂発泡体を示している。
【0033】
図6は、第1の樹脂発泡体の端面の一例を模式的に示した平面図である。
図6のA、B、C、DおよびEは、それぞれ、略柱体の端面が、四角形、円形、角の丸い四角形、六角形およびL字型の形状の例を示している。
【0034】
第1の樹脂発泡体の形状は、略柱体であり、好ましくは略角柱である。略柱体であると金属部材との複合体を容易に作成することができる。略角柱としては、例えば、四角柱、六角柱などが挙げられる。
【0035】
本発明の第1の樹脂発泡体と複合体は、産業用材料として使用される物品であることから、略柱体は、数学的な概念での正確な柱体(直方体、立方体、円柱)、ならびに当該正確な柱体の角が丸まったものまたは欠けたもの、当該正確な柱体の面が製造上または使用上不可避的に僅かに歪んだもの、2つの端面の形状または大きさが異なるものを含むものとする。
【0036】
第1の樹脂発泡体は、一体成形品でもよいし、複数の樹脂発泡体または端材を組み合わせたものでもよい。端材は、樹脂発泡体の加工などによって生じた余分な樹脂発泡体を指す。
【0037】
複合体において、例えば、ポリウレア層またはポリウレアウレタン層によって第1の樹脂発泡体が覆われる場合など、第1の樹脂発泡体は、1個でもよいし、2個以上であってもよい。
【0038】
第1の樹脂発泡体は、1種単独で用いてもよいし、密度、形状または厚さの異なる2以上の樹脂発泡体を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
・金属部材
金属部材は、第1の樹脂発泡体の外側の少なくとも一部に配置されている。金属部材は、第1の樹脂発泡体に強度を付与する。
【0040】
金属部材は、第1の樹脂発泡体の外側に配置されていればよく、金属部材と第1の樹脂発泡体は、接していてもよいし、接していなくてもよい。例えば、金属部材が箱型の枠状であり、連結部材を介して金属部材と第1の樹脂発泡体が連結している場合、金属部材間の第2の樹脂発泡体に第1の樹脂発泡体が接している場合などは、金属部材と第1の樹脂発泡体は接していなくてもよい。
【0041】
金属部材を第1の樹脂発泡体と接触させて固定する場合、固定手段は特に限定されず、公知の固定手段を用いることができる。金属部材と第1の樹脂発泡体を固定する手段としては、例えば、接着剤、接着テープ、ボルト、釘などが挙げられる。
【0042】
金属部材の材料は、特に限定されず、公知の金属材料から適宜選択することができる。金属部材の材料は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、ステンレスなどが挙げられる。軽量性、強度および価格の観点から、金属部材は、アルミニウム合金製または鉄製であることが好ましい。
【0043】
金属部材の形状は、特に限定されず、棒状、板状、円盤状、枠状(例えば、四角い枠)、H形、I形、山形、コの字形などが挙げられる。複合体の作成の容易性から、金属部材は棒状が好ましい。
【0044】
棒状の金属部材は、特に限定されず、例えば、四角棒(断面が中実かつ四角形)、丸棒(断面が中実かつ円形)、円パイプ(断面が中空かつ円形)、角パイプ(断面が中空かつ四角形)などが挙げられる。
【0045】
金属部材の幅は、特に限定されず、用途および第1の樹脂発泡体の寸法などに応じて適宜調節すればよい。金属部材の幅は、例えば、10~100mmであり、好ましくは20~40mmである。金属部材の幅が10mm以上であると複合体の強度を高めやすく、100mm以下であると複合体の軽量性を維持しやすい。
【0046】
金属部材は、複合体の軽量化の観点から、中空、すなわち、中心部が空洞であることが好ましい。
【0047】
金属部材は、端部または中間など任意の位置に金属部材を連結するための公知の連結部材を備えていてもよい。連結部材としては、例えば、キューブブラケットなどが挙げられる。例えば、穴のあいたキューブブラケットを用いることでボルトを通して金属部材を固定することが可能である。
【0048】
一実施形態では、複合体は、金属部材を複数備え、金属部材の端部に連結部材が設置されており、2以上の金属部材が角度90°でボルトによって固定されている。
【0049】
金属部材の数は、少なくとも1であり、第1の樹脂発泡体の形状、所望の強度などに応じて適宜調節すればよい。金属部材の数は、例えば、1~50であり、第1の樹脂発泡体の辺の数と同じまたはそれ以上でもよい。一実施形態では、金属部材の数は、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20である。
【0050】
図7は、金属部材の配置の一例を模式的に示した斜視図である。
図7のA~Dでは、第1の樹脂発泡体の形状は、
図5のAと同じく四角柱である。
図7のAでは、第1の樹脂発泡体の長手方向の1つの辺上に棒状の金属部材が配置されている。
図7のBでは、第1の樹脂発泡体の長手方向の4つの辺上に棒状の金属部材が配置されている。
図7のCでは、第1の樹脂発泡体の全ての辺上に棒状の金属部材が配置されている。
図7のDでは、Cの金属部材に加えて、長手方向の金属部材の途中にも金属部材同士を結ぶ金属部材が配置されている。
【0051】
図8は、金属部材の配置の別の一例を模式的に示した斜視図である。
図8のA~Bでは、第1の樹脂発泡体の形状は、
図5のAと同じく四角柱である。
図8のCでは、第1の樹脂発泡体の形状は、
図5のBと同じく円柱の形状である。
図8のAでは、第1の樹脂発泡体の側面の4面上にそれぞれ、板状の金属部材が1枚ずつ配置されている。
図8のBでは、第1の樹脂発泡体の側面の1面の表面全てに板状の金属部材が配置されている。
図8のCでは、第1の樹脂発泡体の両方の端面(円)の辺上と、側面上に4本の棒状の金属部材が配置されている。
【0052】
また、金属部材は、第1の樹脂発泡体の少なくとも1つの辺の外側に配置された枠であってもよい(例えば、
図10のA、C、
図11のC)。金属部材を第1の樹脂発泡体の辺の外側に配置することで、複合体の強度が向上する。一実施形態では、金属部材は、第1の樹脂発泡体の少なくとも4辺の外側に配置された枠である。別の実施形態では、金属部材は、第1の樹脂発泡体の全ての辺の外側に配置された枠である(例えば、
図7のC)。
【0053】
・ポリウレア層またはポリウレアウレタン層
ポリウレア層またはポリウレアウレタン層は、第1の樹脂発泡体の外側の少なくとも一部に配置されている。ポリウレア層またはポリウレアウレタン層は、複合体に強度と防水性を付与する。
【0054】
本明細書では、ポリウレア層またはポリウレアウレタン層の層中にウレア結合が存在し、ウレタン結合が存在しない場合を「ポリウレア層」と称する。
【0055】
ポリウレアウレタン層は、ウレア結合とウレタン結合を有し、ウレア結合とウレタン結合の合計数に対するウレタン結合の数の割合(以下、単に「ウレタン結合の割合」という。)が0%より多く30%以下である。ウレタン結合の割合が30%以下であると、複合体の圧縮強度が向上する。ウレア結合の数とウレタン結合の数の比は、例えば、後述する第2剤におけるアミノ基と水酸基の合計数に対する水酸基の数の割合によって調整できる。
【0056】
ポリウレアウレタン層のウレタン結合の割合は、0%より多く30%以下であり、好ましくは5~25%であり、より好ましくは10~20%である。
【0057】
ポリウレア層またはポリウレアウレタン層のウレタン結合の割合は、ポリウレア層またはポリウレアウレタン層をフェノール樹脂発泡体から剥離した後、固体13C核磁気共鳴法(NMR)等の公知の方法により測定することができる。
【0058】
ポリウレア層またはポリウレアウレタン層の厚さは、適宜調節すればよく、例えば、0.2~5.0mmである。ポリウレア層またはポリウレアウレタン層の厚さが0.2mm以上であれば、圧縮強度が高まることに加えて、ポリウレア層またはポリウレアウレタン層の塗膜を形成しやすい。ポリウレア層またはポリウレアウレタン層の厚さが5.0mm以下であれば、熱伝導率が良好となりコスト的にも有利となる。一実施形態では、ポリウレア層またはポリウレアウレタン層の厚さは、0.2mm以上、0.5mm以上、1.0mm以上、1.5mm以上、2.0mm以上、2.5mm以上、3.0mm以上、3.5mm以上、4.0mm以上または4.5mm以上である。別の実施形態では、ポリウレア層またはポリウレアウレタン層の厚さは、5.0mm以下、4.5mm以下、4.0mm以下、3.5mm以下、3.0mm以下、2.5mm以下、2.0mm以下、1.5mm以下、1.0mm以下または0.5mm以下である。さらに別の実施形態では、ポリウレア層またはポリウレアウレタン層の厚さは、0.5~3.0mmである。
【0059】
ポリウレア層またはポリウレアウレタン層の厚さは、複合体のポリウレア層またはポリウレアウレタン層を有する面に対して垂直に切断し、更に切断面からポリウレア層またはポリウレアウレタン層のみを剥離し、ノギスを用いて測定することで求められる。
【0060】
ポリウレア層またはポリウレアウレタン層は、第1の樹脂発泡体の外側の少なくとも一部に配置されていればよい。外部環境に露出している複合体の面または部分の外側にポリウレア層またはポリウレアウレタン層が配置されることで、または外部環境に露出している複合体の面または部分をポリウレア層またはポリウレアウレタン層が被覆することで、複合体の防水性が高まる。一実施形態では、ポリウレア層またはポリウレアウレタン層は、第1の樹脂発泡体および金属部材の外側の周囲を実質的に全て覆っている(例えば、
図1および
図4。)。
【0061】
ポリウレア層またはポリウレアウレタン層の形成方法としては、例えば、ポリイソシアネートプレポリマーを含む第1剤と、ポリアミンおよびポリオールを含む第2剤とを用いて形成する方法が挙げられる。
【0062】
・第1剤
第1剤が含むポリイソシアネートプレポリマーの市販品としては、例えば、製品名:リムクイック15主剤(多摩防水技研社製)などが挙げられる。
【0063】
・第2剤
第2剤の市販品としては、例えば、製品名:リムクイック15硬化剤(多摩防水技研社製)などが挙げられる。
【0064】
第1剤と第2剤の配合比率は、例えば、容積比で1:1である。
【0065】
例えば、第1剤と第2剤は、別々に約60℃に加温して粘度を100mP・sに下げ、同じ温度に加温されたホースにて10MPaで吹付するガンまで圧送され、ガンの先端で混合されスプレー塗工する。
【0066】
ポリウレア層またはポリウレアウレタン層は、例えば、第1剤と第2剤を攪拌しながら加温して反応させることによって得られる。そして、第1剤は、イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネートと水酸基を2個以上有するポリオールとの反応によって得られるポリイソシアネートプレポリマーを含む。第2剤は、アミノ(-NH2)基を2個以上有するポリアミンと、任意に、水酸基を2個以上有するポリオールとを含み、ポリアミンのアミノ基の数と、ポリオールの水酸基の数の合計数に対する水酸基の数の割合が、0~30%である。得られるポリウレア層またはポリウレアウレタン層の、ウレタン結合の数の割合は、第2剤におけるアミノ基と水酸基の合計量に対する水酸基の数の割合よって調整することができる。
【0067】
ポリイソシアネートプレポリマーを形成するポリイソシアネートは、イソシアネート基を2個以上有する。イソシアネート基の数は、例えば2~5個であり、好ましくは、2~3個である。
【0068】
ポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族系イソシアネート、脂肪族系イソシアネートなどが挙げられる。
【0069】
芳香族系イソシアネートは、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)などが挙げられる。
【0070】
脂肪族イソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)などが挙げられる。
【0071】
ポリイソシアネートプレポリマーを形成するポリオールは、水酸基を2個以上有する。水酸基の数は、例えば2~5個であり、好ましくは、2~3個である。
【0072】
水酸基を2個以上有するポリオールとしては、例えば、ポリプロピレングリコールなどのポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリマーポリオールなどが挙げられる。水酸基を2個以上有するポリオールの市販品としては、例えば、日油社製の製品名ユニオール D-1000、D-1500、D-2000、D-3000、D-4000、T-1500、T-3000、T-4000、T-5000などが挙げられる。
【0073】
ポリイソシアネートプレポリマーは、ポリイソシアネートのイソシアネート基の一部とポリオールの反応させることで得られる。
【0074】
ポリイソシアネートプレポリマーにおける分子量42のイソシアネート基の割合(NCO濃度)は、例えば、8重量%以上かつ16重量%以下である。
【0075】
また、第1剤には、ポリイソシアネートプレポリマーおよび可塑剤の合計量に対して、0~10%程度の可塑剤を添加することもできる。
【0076】
可塑剤としては、特に限定されず、公知の可塑剤を使用することができる。可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル系可塑剤、エーテル系可塑剤などを使用することができる。
【0077】
フタル酸エステル系可塑剤としては、例えば、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチルなどが挙げられる。また、特開2020-133168号公報に記載の可塑剤も挙げられる。
【0078】
また、ハロゲンリン酸エステル、ハロゲン縮合リン酸エステル、非ハロゲンリン酸エステル、非ハロゲン縮合リン酸エステルなどの難燃性可塑剤を使用することができる。難燃性可塑剤を用いることでポリウレア層またはポリウレアウレタン層の酸素指数を上げて自己消火性を付与することもできる。
【0079】
第2剤のアミノ基を2個以上有するポリアミンのアミノ基の数は、例えば、2~5個であり、好ましくは、2~3個である。
【0080】
ポリアミンとしては、例えば、芳香族系ジアミン、脂肪族系ジアミンなどが挙げられる。
【0081】
芳香族系ジアミンとしては、例えば、2,4-ジエチル-6-メチル-1,3-ベンゼンジアミン、2,6-ジエチル-4-メチル-1,3-ベンゼンジアミン、4,6-ジエチル-2-メチル-1,3-ベンゼンジアミン、2,5-ジエチル-4-メチル-1,3-ベンゼンジアミン、などが挙げられる。
【0082】
脂肪族系ジアミンとしては、例えば、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシトリメチレンジアミン(別名:ポリトリメチレンエーテルジアミン)、ポリオキシテトラメチレンジアミン(別名:ポリテトラメチレンエーテルジアミン)などが挙げられる。
【0083】
ポリアミンは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0084】
第2剤のポリオールは、水酸基を2個以上有する。ポリオールの水酸基の数は、例えば、2~5個であり、好ましくは、2~3個である。
【0085】
水酸基を2個以上有するポリオールとしては、例えば、第1剤で例示したポリオールが挙げられる。また、第2剤のポリオールは、第1剤のポリオールと同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0086】
第2剤のポリオールは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0087】
また、第2剤には、ポリアミン、ポリオールおよび可塑剤の合計量に対して、0~10%程度の可塑剤を添加することもできる。
【0088】
可塑剤としては、特に限定されず、公知の可塑剤を使用することができる。可塑剤としては、例えば、第1剤で例示した可塑剤が挙げられる。第1剤と第2剤の可塑剤は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0089】
第2剤は、老化防止剤、反応触媒、消泡剤および顔料などをさらに含んでいてもよい。
【0090】
第2剤のポリアミンのアミノ基の数と、ポリオールの水酸基の数と合計数に対する水酸基の数の割合は、0~30%である。水酸基の割合が30%を超える場合、ポリウレアウレタン層中のウレア結合の割合が少なくなり、ポリウレアウレタン層の十分な強度が得られない。一方、水酸基の割合が30%以下であると、ポリウレアウレタン層中にウレア結合が一定量存在するため、強度の点で性能が高まる。一実施形態では、第2剤のポリアミンのアミノ基の数と、ポリオールの水酸基の数と合計数に対する水酸基の数の割合は、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上または25%以上である。別の実施形態では、第2剤のポリアミンのアミノ基の数と、ポリオールの水酸基の数と合計数に対する水酸基の数の割合は、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下または5%以下である。
【0091】
・任意の部材
複合体は、第1の樹脂発泡体、金属部材およびポリウレア層またはポリウレアウレタン層に加えて、その他の部材を含んでいてもよい。その他の部材としては、例えば、第1の樹脂発泡体と異なる樹脂発泡体(例えば、第2の樹脂発泡体)および金属部材で説明した連結部材などが挙げられる。
【0092】
・第2の樹脂発泡体
第2の樹脂発泡体は、複合体において、金属部材間の樹脂発泡体または金属部材よりも外側の樹脂発泡体である。
【0093】
第2の樹脂発泡体としては、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、フェノール樹脂などが挙げられる。第2の樹脂発泡体の材料、密度、厚さおよび形状は、第1の樹脂発泡体の材料、密度、厚さおよび形状と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0094】
第2の樹脂発泡体は、例えば、金属部材間の1以上の箇所に配置されてもよい。第2の樹脂発泡体を第1の樹脂発泡体の外側かつ金属部材の枠の間に配置することで、複合体全体を平滑にすることができる(例えば、
図10のA)。
【0095】
第2の樹脂発泡体の密度は、特に限定されず、例えば、15~140kg/m3であり、好ましくは20~130kg/m3であり、より好ましくは25~120kg/m3である。樹脂発泡体2の密度が15kg/m3以上であると樹脂発泡体の取り扱い時の破損を低減することができる。一方、樹脂発泡体の密度が140kg/m3以下であると、複合体を形成した際に軽量性を維持しつつ強度を向上させることができる。
【0096】
第2の樹脂発泡体の厚さおよび形状は、特に限定されず、適宜設定することができる。
【0097】
第2の樹脂発泡体は、1種単独で用いてもよいし、密度、形状または厚さの異なる2以上の樹脂発泡体を組み合わせて用いてもよい。
【0098】
ここで図面を参照しながらさらに複合体を説明する。
図9は、複合体の別の一例を模式的に示した斜視図である。
図9のAでは、
図3の第1の樹脂発泡体20と金属部材30の側面4面をポリウレア層またはポリウレアウレタン層10が覆っている。すなわち、上面と下面では、第1の樹脂発泡体20と金属部材30が露出している。
図9のBでは、複合体は、円柱形状であり、ポリウレア層またはポリウレアウレタン層10が、第1の樹脂発泡体20と金属部材30の外側の周囲を全て覆っている。
【0099】
図10~11は、複合体の断面の別の一例を示した模式図である。
図10~11では、
図2と同様の位置と方向で、別の複合体1の断面を示している。
図10のAでは、第1の樹脂発泡体20の外側の位置、かつ、金属部材30間に第2の樹脂発泡体40が配置されている。
図10のBでは、第1の樹脂発泡体20の4隅が凹んでおり、その凹み部分に金属部材30が配置されている。
図11のAでは、第1の樹脂発泡体が、密度の異なる2種類の第1の樹脂発泡体20、21の組合せである点以外は、
図10のAの複合体1と同じである。
図11のBでは、4つの第2の樹脂発泡体を、2つの第2の樹脂発泡体40、41に変更した点以外は、
図10のAの複合体1と同じである。第2の樹脂発泡体40および41は、材料が異なる。
図11のCでは、金属部材が2種類の金属部材30、31であり、金属部材30、31が第1の樹脂発泡体の対向する1組の辺上に配置されていること以外は、
図10のAの複合体1と同じである。
【0100】
複合体の形状は、略柱体であるが、略角柱であることが好ましい。略角柱としては、例えば、四角柱、六角柱などが挙げられる。略角柱であると、用途として例えば、枕木など、平面を利用した使用が容易になる。
【0101】
複合体の一実施形態では、第1の樹脂発泡体および複合体が、略角柱であり;金属部材が、第1の樹脂発泡体の全ての辺の外側に配置された枠であり;第1の樹脂発泡体の少なくとも一面の外側であり、かつ、枠の間に、第2の樹脂発泡体が配置されている。複合体の別の実施形態では、第1の樹脂発泡体および複合体が、略角柱であり;金属部材が、第1の樹脂発泡体の全ての辺の外側に配置された枠であり;第1の樹脂発泡体の全ての面の外側であり、かつ、枠の間に、第2の樹脂発泡体が配置されている(例えば、
図10のA)。
【0102】
複合体の強度は、4トンの面荷重で変形がないことが好ましい。4トン面荷重で変形がある場合は強度が不十分で使用用途が限定される。複合体の強度は、例えば、複合体の構造、金属フレームの材質や幅等により調整できる。一実施形態では、複合体は、0.2kg/mm2の荷重で変形しない。
【0103】
複合体の密度は、例えば、80~500kg/m3であり、好ましくは90~400kg/m3、好ましくは100~300kg/m3、さらに好ましくは110~200kg/m3である。密度が80kg/m3以上であれば複合体の強度が向上し、密度が500kg/m3以下であれば、複合体の軽量性を維持できる。複合体の密度は、例えば、発泡体の種類または製造時の条件、ポリウレア層またはポリウレアウレタン層の厚さ、金属部材の材質または幅により調整できる。
【0104】
複合体の透湿度は、例えば、2~10g/(m2・24h)であり、好ましくは3~9g/(m2・24h)である。透湿度が10g/(m2・24h)以下であると複合体の防水性に優れ、金属部材の錆びおよび樹脂発泡体の反りを抑制しやすい。透湿度が小さいほど防水性は良好である。透湿度は、ポリウレア層またはポリウレアウレタン層の厚さまたは組成により調整でき、ポリウレア層またはポリウレアウレタン層の透湿度を複合体の透湿度として扱うことができる。
【実施例0105】
以下に、実施例及び比較例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0106】
実施例で使用した材料の詳細は以下のとおりである。
第1の樹脂発泡体:フェノール樹脂フォーム、旭化成建材社製、製品名「ネオマ(登録商標)フォーム」
第1剤:多摩防水技研社製、製品名「リムクイック15主剤」
第2剤:多摩防水技研社製、製品名「リムクイック15硬化剤」、アミノ基と水酸基の比率=80:20
【0107】
(実施例1)
<複合体の製造>
第1の樹脂発泡体の端材を複数用いて180mm×180mm×980mmの四角柱(
図5のAを参照。)を形成した。次いで、幅20mmのアルミニウム合金製の金属部材を第1の樹脂発泡体の外側に設置し、第1の樹脂発泡体の端部が金属部材に10mmずつかかるように、金属部材同士をボルトで接合して固定した。設置した金属部材を補強するために、
図7のDに示すように、第1の樹脂発泡体の側面の向かい合う2面(
図7のDの左右の側面)に金属部材を上下に対して306.6mm間隔で2本配置した。さらに、
図7のDに示すように、第1の樹脂発泡体の残りの側面の2面(
図7のDの手前と奥の側面)に上下に対して225mm間隔で金属部材を3本配置しボルトで接合して固定した。さらに複合体の全ての面が平滑になるように金属部材間に第2の樹脂発泡体として厚さ10mmのフェノールフォームを埋め込んだ。次に、第1剤を、第2剤を別々に約60℃に加温して粘度を100mP・sに下げ、容積比1:1で60℃に加温されたホースにてスプレー塗工して第1の樹脂発泡体及び金属部材の外側全てにポリウレアウレタン層を厚さ2.0±0.2mmで形成して複合体(
図1参照。)を作製した。
【0108】
(実施例2)
図3に示すように、金属部材の配置を変更したこと以外は、実施例1と同様にして複合体を作製した。
【0109】
(実施例3)
実施例1において、金属部材をアルミニウム合金製から鉄製に変更したこと以外は、実施例1と同様にして複合体を作製した。
【0110】
(比較例1)
金属部材を用いず、第1の樹脂発泡体の表面全体にポリウレアウレタン層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして複合体を作製した。
【0111】
(比較例2)
図12に示すように、中央部分の四角柱の第1の樹脂発泡体を用いず、ポリウレアウレタン層形成時に、金属部材の枠の間にフェノール樹脂フォームを、接着剤を用いて金属部材に接着したこと以外は、実施例1と同様にして複合体を作製した。比較例2の複合体の中央部分は、四角柱の第1の樹脂発泡体が存在せず、中空である。
【0112】
実施例及び比較例の複合体について、以下のように複合体の密度、強度、透湿度および反りの測定を行った。その結果を表1に示す。
【0113】
<複合体の密度>
複合体の幅、奥行及び高さを、JIS K 7248又はJIS B 7507に規定する方法によって測定した。そして、複合体の重量と体積から密度を算出した。
【0114】
<複合体の強度>
複合体(
図1の側面のうち、右側の面と左側の面)に0.2kg/mm
2の圧力をかけ、以下の基準で強度を評価した。
合格:圧力をかけた部分の変形量が10mm未満
不合格:圧力をかけた部分の変形量が10mm以上
【0115】
<複合体の透湿度>
JIS Z 0208:1976「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」に規定する方法により25℃、90%RHの環境下におけるポリウレアウレタン層の透湿度を測定した。その透湿度を複合体の透湿度とした。
【0116】
<複合体の反り>
複合体を25℃、90%RH環境下で30日間保持した際の複合体の表面の反りを計測し、保持前の複合体の測定箇所の表面と比べて、以下の基準で評価した。
合格:複合体の反りが5mm以下
不合格:複合体の反りが5mmより大きい
【0117】
【0118】
実施例の複合体では、樹脂発泡体の軽量性を有し、防水性と優れた強度を有し、高湿度下で長期経過後にも反りが抑制されていた。
【0119】
一方、比較例1の金属部材のない複合体では、密度が小さく軽量だったが、実施例の複合体に比べて強度が劣っていた。また、比較例2の金属部材内部の四角柱の第1の樹脂発泡体がない複合体では、実施例の複合体に比べて強度が劣り、反りも抑制できなかった。