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特開2024-180098エンコーダ、サーボモータ、サーボシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180098
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】エンコーダ、サーボモータ、サーボシステム
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20241219BHJP
   H02K 11/215 20160101ALI20241219BHJP
【FI】
G01D5/245 110Z
H02K11/215
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099550
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】弁理士法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】貞包 健一
(72)【発明者】
【氏名】井ノ上 涼
(72)【発明者】
【氏名】柿原 正伸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】高田 裕司
【テーマコード(参考)】
2F077
5H611
【Fターム(参考)】
2F077AA21
2F077AA30
2F077AA46
2F077CC02
2F077NN02
2F077NN28
2F077PP11
2F077PP12
2F077PP19
2F077QQ15
2F077VV01
5H611QQ03
5H611RR02
(57)【要約】
【課題】小型化が可能なエンコーダ、サーボモータ及びサーボシステムを提供する。
【解決手段】エンコーダ7は、回転軸心Ax周りに回転可能なハブ17と、ハブ17に固定され、リング状のスケールSが形成されたディスク19と、ディスク19に対向するように配置され、スケールSを検出する光学モジュール25と、ディスク19よりも回転軸心Axの方向における負荷側に配置され、ハブ17に固定された磁石33と、ディスク19よりも回転軸心Axの方向における反負荷側に配置され、磁石33の磁気を検出するトリガ信号発生器31と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸心周りに回転可能な回転体と、
前記回転体に固定され、リング状のスケールが形成されたディスクと、
前記ディスクに対向するように配置され、前記スケールを検出する光学モジュールと、
前記ディスクよりも前記回転軸心の方向における一方側に配置され、前記回転体に固定された第1磁石と、
前記ディスクよりも前記回転軸心の方向における他方側に配置され、前記第1磁石の磁気を検出する第1磁気検出部と、
を有する、エンコーダ。
【請求項2】
前記回転体は、
磁性材料で構成され、
前記第1磁石の前記一方側を覆うように形成されている、
請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項3】
前記ディスクは、
非磁性材料で構成され、
前記回転体は、
前記ディスクが前記第1磁石の前記他方側を覆うように、前記ディスクを支持し、
前記第1磁気検出部は、
前記ディスクを透過した前記第1磁石の磁気を検出する、
請求項2に記載のエンコーダ。
【請求項4】
前記回転軸心の方向において前記ディスクと前記第1磁石との間に形成された隙間を有する、
請求項3に記載のエンコーダ。
【請求項5】
前記回転体は、
前記回転軸心を中心とする径方向の内周側に位置する内周部と、
前記内周部よりも前記径方向の外周側に位置し、前記回転軸心の方向の厚みが前記内周部よりも薄い外周部と、を有し、
前記ディスクは、
前記内周部の前記他方側に配置され、
前記第1磁石は、
前記外周部の前記他方側に配置される、
請求項3に記載のエンコーダ。
【請求項6】
前記回転体は、
前記内周部の前記他方側の表面が、前記外周部に配置された前記第1磁石の前記他方側の表面よりも、前記他方側に突出し、
前記ディスクは、
前記径方向において前記内周部よりも前記外周側に突出する、
請求項5に記載のエンコーダ。
【請求項7】
前記内周部の前記径方向における外径は、
前記スケールの前記径方向における内径よりも小さい、
請求項5又は6に記載のエンコーダ。
【請求項8】
前記第1磁石は、
それぞれ前記回転軸心方向に磁極を有し、隣接するもの同士の前記磁極が異なるように、前記回転軸心周りの周方向に沿って相互に隙間をあけて配置された複数の磁石を有する、
請求項2に記載のエンコーダ。
【請求項9】
前記第1磁石が有する前記複数の磁石は、
それぞれ円弧形状を有する、
請求項8に記載のエンコーダ。
【請求項10】
前記回転軸心上の位置で前記回転体に固定された第2磁石と、
前記第2磁石に対向するように配置され、前記第2磁石の磁気を検出する第2磁気検出部と、をさらに有し、
前記回転体は、
前記第1磁石が前記回転軸心を中心とする径方向において前記第2磁石よりも外周側に配置されるように、前記第1磁石を支持する、
請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項11】
前記回転体は、
磁性材料で構成され、
前記第2磁石の外周形状に沿って前記第2磁気検出部側に突出した壁部を備え前記第2磁石を収容する磁石収容部を有する、
請求項10に記載のエンコーダ。
【請求項12】
前記第1磁石は、
前記回転軸心周りの周方向における90度ごとにN極とS極が交互に切り替わるように構成され、
前記第2磁石は、
前記周方向における180度ごとにN極及びS極が交互に切り替わるように構成され、
前記第1磁石又は前記第2磁石は、
前記第2磁石における前記N極と前記S極の境界の角度位置が、前記第1磁石のいずれかの磁極の前記周方向における中心の角度位置と、略45度ずれるように配置される、
請求項10に記載のエンコーダ。
【請求項13】
前記回転軸心上の位置で前記回転体に固定された第2磁石と、
前記第2磁石に対向するように配置され、前記第2磁石の磁気を検出する第2磁気検出部と、をさらに有し、
前記第1磁気検出部は、
前記回転体が第1方向に回転する場合には前記第1磁石の磁気の検出に基づく第1位相角で第1電気信号を発生し、前記回転体が前記第1方向とは反対の第2方向に回転する場合には前記第1磁石の磁気の検出に基づく第2位相角で前記第1電気信号を発生し、
前記第2磁石及び前記第2磁気検出部は、
前記第1位相角及び前記第2位相角のそれぞれに対して所定の角度以上の位相差を有する第3位相角でハイとローが切り替わるパルス状の第2電気信号を前記第2磁気検出部が発生するように、配置される、
請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項14】
前記エンコーダに外部電力が供給されない場合に、前記第2磁気検出部に電力を供給する電池、をさらに有し、
前記第1磁気検出部は、
前記第1磁石の磁気の検出に基づいて、前記電池の電力を前記第2磁気検出部に供給するトリガとなる前記第1電気信号を発生する、
請求項13に記載のエンコーダ。
【請求項15】
前記第1磁気検出部が前記他方側の表面に配置された基板と、
前記基板の前記他方側の表面に配置され、前記エンコーダに外部電力が供給されない場合に前記基板の少なくとも一部の回路に電力を供給する電池と、
前記基板の前記他方側の表面に配置されたコネクタと、
前記コネクタに接続され、前記第1磁気検出部と前記電池との間のスペースを通過して配線されたケーブルと、
をさらに有する、請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項16】
回転子が固定子に対して回転するモータと、
前記回転子の位置、速度、加速度の少なくとも1つを検出する、請求項1に記載のエンコーダと、
を有する、サーボモータ。
【請求項17】
回転子が固定子に対して回転するモータと、
前記回転子の位置、速度、加速度の少なくとも1つを検出する、請求項1に記載のエンコーダと、
前記エンコーダの検出結果に基づいて前記モータを制御する制御装置と、
を有する、サーボシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、エンコーダ、サーボモータ、及びサーボシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、移動部の位置情報を検出する検出部を含む位置検出系と、移動部の移動によって電気信号が発生する電気信号発生部と、電気信号発生部で発生する電気信号に応じて、位置検出系で消費される電力の少なくとも一部を供給するバッテリーと、を備えるエンコーダ装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/126338号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エンコーダ装置においては、さらなる小型化が要望されている。
【0005】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、小型化することが可能なエンコーダ、サーボモータ、及びサーボシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一の観点によれば、回転軸心周りに回転可能な回転体と、前記回転体に固定され、リング状のスケールが形成されたディスクと、前記ディスクに対向するように配置され、前記スケールを検出する光学モジュールと、前記ディスクよりも前記回転軸心の方向における一方側に配置され、前記回転体に固定された第1磁石と、前記ディスクよりも前記回転軸心の方向における他方側に配置され、前記第1磁石の磁気を検出する第1磁気検出部と、を有する、エンコーダが適用される。
【0007】
また、本発明の別の観点によれば、回転子が固定子に対して回転するモータと、前記回転子の位置、速度、加速度の少なくとも1つを検出する、上記エンコーダと、を有する、サーボモータが適用される。
【0008】
また、本発明の別の観点によれば、回転子が固定子に対して回転するモータと、前記回転子の位置、速度、加速度の少なくとも1つを検出する、上記エンコーダと、前記エンコーダの検出結果に基づいて前記モータを制御する制御装置と、を有する、サーボシステムが適用される。
【発明の効果】
【0009】
本発明のエンコーダ等によれば、小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】サーボシステムの全体構成の一例を表す説明図である。
図2】エンコーダの全体構成の一例を表す、図3のII-II断面に相当する断面図である。
図3】エンコーダの全体構成の一例を基板側から見た上面図である。
図4】磁石の配置構成の一例を表す、ハブを基板側からみた平面図である。
図5図4のV-V断面に相当するハブの断面図である。
図6】磁石による磁束の流れの一例を説明するための平面図である。
図7】磁石による磁束の流れの一例を説明するための側面図である。
図8】磁気検出部と磁石、及び、トリガ信号発生器と磁石、の位置関係の一例を表す基板の平面図である。
図9】処理モジュールの機能構成の一例を表すブロック図である。
図10】ディスクが正転する場合におけるトリガ信号発生時の磁石の角度位置の一例を表す説明図である。
図11】ディスクが逆転する場合におけるトリガ信号発生時の磁石の角度位置の一例を表す説明図である。
図12】トリガ信号の位相角のヒステリシスが大きい場合における、トリガ信号、A相多回転信号、及びB相多回転信号の波形の一例を表す説明図である。
図13】トリガ信号の位相角のヒステリシスが小さい場合における、トリガ信号、A相多回転信号、及びB相多回転信号の波形の一例を表す説明図である。
図14】磁石間の隙間に非磁性材を充填する変形例における、磁石の配置構成の一例を表す、ハブを基板側からみた平面図である。
図15】ハブを非磁性材料で構成し、磁石を周方向に着磁する変形例における、磁石による磁束の流れの一例を説明するための平面図である。
図16】ハブを非磁性材料で構成し、磁石を周方向に着磁する変形例における、磁石による磁束の流れの一例を説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ実施形態について説明する。
【0012】
<1.サーボシステムの全体構成>
図1を参照しつつ、実施形態に係るサーボシステムの全体構成の一例について説明する。図1は、サーボシステムの全体構成の一例を表す説明図である。
【0013】
図1に示すように、サーボシステム1は、サーボモータ3と、制御装置5とを有する。サーボモータ3は、エンコーダ7と、モータ9とを有する。
【0014】
モータ9は、例えば回転子(図示省略)が固定子(図示省略)に対して回転する回転型のモータである。モータ9は、回転子に固定されたシャフト11を回転軸心Ax周りに回転させる。モータ9単体をサーボモータという場合もあるが、実施形態ではモータ9とエンコーダ7を含む構成をサーボモータ3という。
【0015】
エンコーダ7は、例えばモータ9の回転力を出力する側である負荷側(図1における左側)とは反対側の反負荷側(図1における右側)に連結される。但し、エンコーダ7はモータ9の負荷側に連結されてもよい。エンコーダ7は、モータ9のシャフト11(回転子)の1回転以内の角度位置を表す角度位置情報、及び、回転数を表す多回転情報の少なくとも一方を検出し、それらの情報に基づく位置データを出力する。エンコーダ7は、シャフト11の角度位置に加えて又は代えて、回転速度又は回転加速度の少なくとも一方を検出してもよい。
【0016】
制御装置5は、エンコーダ7から出力される位置データに基づいてモータ9に印加する電流又は電圧等を制御し、モータ9の回転を制御する。モータ9に印加する電流又は電圧等が制御信号の一例である。制御装置5は、上位制御装置から出力される上位制御信号に表された位置、速度、トルク等を実現するようにモータ9を制御する。
【0017】
<2.エンコーダの全体構成>
図2及び図3を参照しつつ、エンコーダ7の全体構成の一例について説明する。図2は、エンコーダ7の全体構成の一例を示す図3のII-II断面に相当する断面図である。図3は、エンコーダ7の全体構成の一例を基板側から見た上面図である。なお、図2ではケーブル45等の図示を適宜省略している。
【0018】
図2に示すように、サーボモータ3は、エンコーダ7とモータ9とを有する。モータ9は、シャフト11と、軸受13と、筐体15とを有する。軸受13は、筐体15に固定されており、シャフト11を回転軸心Ax周りに回転可能に支持する。モータ9はブレーキ装置(図示省略)を有してもよい。ブレーキ装置は、例えばモータ9とエンコーダ7との間に配置される。なお、ブレーキ装置はモータ9の負荷側に配置されてもよい。ブレーキ装置は、例えばブレーキコイルへの通電により作動する励磁作動型、あるいは、ブレーキコイルへの通電が途切れた場合に作動する無励磁作動型の電磁ブレーキでもよい。
【0019】
なお、図2において回転軸心Axの方向における下側、及び、図3において回転軸心Axの方向における紙面奥側が前述の負荷側、図2において回転軸心Axの方向における上側、及び、図3において回転軸心Axの方向における紙面手前側が前述の反負荷側に相当する。負荷側は回転軸心Axの方向における一方側の一例であり、反負荷側は回転軸心Axの方向における他方側の一例である。また、以下では適宜、回転軸心Axの方向を軸方向、回転軸心Axを中心とする半径方向を径方向、回転軸心Ax周りの円周方向を周方向という。
【0020】
図2及び図3に示すように、エンコーダ7は、ハブ17と、ディスク19と、基板21と、基板支持部材23と、光学モジュール25と、磁気検出部27と、磁石29と、トリガ信号発生器31と、磁石33と、電池35と、コネクタ37と、エンコーダカバー39とを有する。
【0021】
ハブ17(回転体の一例)は、シャフト11の反負荷側(図2における上側)の端部にボルト40により固定されており、シャフト11と共に回転軸心Ax周りに回転する。なお、ハブ17は、シャフト11そのものではなく、例えばシャフト11に連結された小径のエンコーダシャフトに固定されてもよい。ハブ17は、ディスク19、磁石29、及び磁石33を支持する支持部材である。ハブ17は、磁性材料で構成されており、磁石29及び磁石33の負荷側を覆うように形成されている。磁性材料は磁性を有する材質であれば特に限定されるものではないが、例えばフェライト系又はマルテンサイト系ステンレス(SUS416等)や鉄等である。ボルト40は非磁性材料で構成されている。
【0022】
ディスク19は、ハブ17の反負荷側の表面に固定されており、シャフト11と共に回転軸心Ax周りに回転する。ディスク19は非磁性材料で構成されており、中心部に円形の貫通孔が形成された円環状の部材である。一例として、ディスク19を所定の断面形状を回転軸心Ax周りに回転させることで形成される完全回転体形状としてもよい。この場合、寸法精度が高まると共にディスクを安価に製造できる。なお、ディスク19を貫通孔を有しない円板状の部材としてもよい。ディスク19は、磁石33の反負荷側を覆うようにハブ17により支持されている。非磁性材料は磁性を有しない材質であれば特に限定されるものではないが、例えばオーステナイト系ステンレス(SUS304等)、アルミ、ガラス等である。ディスク19の反負荷側の表面には、リング状のスケールSが形成されている。スケールSは、回転軸心Ax周りの周方向に沿ってリング状に配置された複数のスリット(図示省略)を有する。スリットは、ディスク19の表面に形成され、光学モジュール25の光源41(後述の図9参照)から出射された光に対し反射等の作用を与える領域である。スケールSは、例えばアブソリュートパターンを有するスケールSA及びインクリメンタルパターンを有するスケールSIを有する。なお、ディスク19の絶対位置を高精度に検出可能であれば、ディスク19に形成されるスケールSの数は単数でもよいし、3つ以上としてもよい。
【0023】
基板21は、絶縁材料で構成される板にプリント配線(図示省略)や複数の回路部品が実装されたプリント回路板である。基板21は、ディスク19の反負荷側にディスク19と対向するように配置されている。図3に示すように、基板21は略円板状である。基板21の径方向における外周側の複数箇所(例えば3箇所)には、固定ねじ(図示省略)を挿通するための貫通孔21aが形成されている。基板21は、固定ねじを貫通孔21aを介して基板支持部材23のねじ穴に締結させることで、基板支持部材23に固定されている。もしくは、基板21は、固定ねじを貫通孔21a及び基板支持部材23の貫通穴を通して筐体15のねじ穴に締結させることで、基板支持部材23と共に筐体15に固定されている。なお、基板21は単一の基板に限らず、複数の基板で構成されてもよい。
【0024】
基板支持部材23は、例えば円筒状の部材であり、内側にハブ17及びディスク19等を収容すると共に、基板21をディスク19と略平行に支持する。基板支持部材23には、基板21の貫通孔21aに対応する位置にねじ穴もしくは貫通穴が形成されている。基板支持部材23は、モータ9の筐体15の反負荷側の端部に固定されている。なお、基板支持部材23を例えば複数の円柱状の部材としてもよい。
【0025】
光学モジュール25は、ディスク19の反負荷側においてディスク19と対向するように配置されている。光学モジュール25は、例えば基板21のディスク19と対向する表面、すなわち基板21の負荷側の表面に配置されている。図3に示すように、光学モジュール25は、ディスク19のスケールSA,SIと対向するように配置されている。光学モジュール25は、スケールSA,SIを検出することで、ディスク19の1回転以内の角度位置を表す角度位置情報を検出する。光学モジュール25の構成は、角度位置情報を光学的に検出可能であれば特に限定されるものではない。例えば後述の図9に示すように、光学モジュール25はディスク19と対向する面上に光源41と受光アレイPA,PIとを有してもよい。受光アレイPAは、ディスク19のスケールSAで反射された光を受光してアブソリュート信号を出力する。受光アレイPIは、ディスク19のスケールSIで反射された光を受光してインクリメンタル信号を出力する。光学モジュール25は、光源41と受光アレイPA,PIとがディスク19に対して同じ側(例えば反負荷側)に配置された、いわゆる反射型の光学モジュールである。
【0026】
磁気検出部27(第2磁気検出部の一例)は、磁石29の磁気を検出することで、ディスク19の回転数を表す多回転情報を検出する。磁気検出部27は、例えば基板21のディスク19と対向する表面、すなわち基板21の負荷側の表面に配置されている。磁気検出部27は、磁石29に対向するように、例えば回転軸心Ax上に配置されている。磁気検出部27の構成は、ディスク19の多回転情報を磁気的に検出可能であれば特に限定されるものではない。例えば磁気検出部27として、MR素子、GMR素子、TMR素子等の磁気抵抗素子、ホール素子、磁気インピーダンス素子等を使用してもよい。磁気検出部27は、例えば所定の位相差(例えば90度)を有する2相の多回転信号を出力可能な単一の素子で構成されてもよい。また、各々が1相の多回転信号を出力する複数の素子を、所定の位相差となるような角度で配置した構成としてもよい。
【0027】
磁石29(第2磁石の一例)は、ハブ17の磁気検出部27と対向する表面、すなわちハブ17の反負荷側の表面に固定されている。磁石29は、例えば回転軸心Ax上に配置されている。なお、「回転軸心Ax上に配置」とは、磁石29の一部が回転軸心Ax上に位置する場合のみでなく、例えば磁石29がリング状である場合には回転軸心Axが磁石29の中空部を通る場合を含む。磁石29の構成は、磁気検出部27により検出される磁束の向きが、ディスク19が略180度回転する毎に反転する構成であれば特に限定されるものではない。例えば後述の図4に示すように、磁石29をディスク19の直径方向にN極とS極が形成されるように着磁した構成としてもよい。図4では、磁石29のうち反負荷側の磁極がN極の部分を29N、反負荷側の磁極がS極の部分を29Sとして図示している。磁石29は例えばリング状に形成されている。なお、磁石29を例えば円板状に形成してもよいし、磁石29を例えばN極のS極の2つの磁石としてもよい。磁気検出部27は磁石29の磁束の向きを検出し、ディスク19が1回転すると1周期変化する多回転信号を、互いに位相が90度異なる2つのA相信号及びB相信号として出力する。
【0028】
トリガ信号発生器31(第1磁気検出部の一例)は、磁石33の磁気を検出し、当該磁石33の磁気の検出に基づいて、電池35の電力を磁気検出部27に供給するトリガとなるトリガ信号(第1電気信号の一例)を発生する。図2に示すように、トリガ信号発生器31は、ディスク19よりも反負荷側に配置されている。トリガ信号発生器31は、例えば基板21のディスク19とは反対側の表面、すなわち基板21の反負荷側の表面に配置されている。トリガ信号発生器31は、ディスク19及び基板21を透過した磁石33の磁気を検出する。トリガ信号発生器31の構成は、ディスク19の回転によって周期的にトリガ信号を発生することが可能であれば特に限定されるものではない。例えばトリガ信号発生器31は、大バルクハウゼン効果を生じる磁性素子31a(後述の図7参照)とコイル31b(後述の図7参照)とを有する構成としてもよい。「大バルクハウゼン効果」とは、磁性素子31aの磁化方向が、付与される外部磁界の強度がある強度を超えた時点で急激に反転する現象であり、大バルクハウゼンジャンプとも呼ばれる。この構成とする場合、トリガ信号発生器31は、大バルクハウゼン効果が発生した際にコイル31bから例えばパルス信号であるトリガ信号を出力する。トリガ信号発生器31は、軸方向の反負荷側から見て、少なくとも一部が磁石33の回転軌跡上に位置するように配置されている(後述の図8参照)。
【0029】
磁石33(第1磁石の一例)は、ディスク19よりも負荷側に配置され、ハブ17に固定されている。磁石33は、例えばハブ17のトリガ信号発生器31と対向する表面、すなわちハブ17の反負荷側の表面に固定されている。磁石33の構成は、トリガ信号発生器31の磁性素子31aに付与される磁界がディスク19の回転によって周期的に反転する構成であれば特に限定されるものではない。例えば後述の図4に示すように、4つの磁石33N1,33S1,33N2,33S2を磁極が交互に異なるように周方向に略90度間隔で配置した構成としてもよい。図4では、反負荷側の磁極がN極の磁石33を33N1,33N2、反負荷側の磁極がS極の磁石33を33S1,33S2として図示している。トリガ信号発生器31は、4つの磁石33N1,33S1,33N2,33S2によってディスク19が1回転する毎に4回のトリガ信号を発生する。なお、磁石33の数は4個に限るものではなく、4以外の偶数個としてもよい。
【0030】
電池35は、エンコーダ7に外部電力が供給されない場合に、磁気検出部27(基板の少なくとも一部の回路の一例)に電力を供給する。なお、磁気検出部27に加えて基板21の他の回路に電力を供給してもよい。電池35は、磁気検出部27に対して直接電力を供給するのではなく、処理モジュール43(後述の図9参照)を介して電力を供給する。つまり電池35は、エンコーダ7に外部電力が供給されない場合に磁気検出部27に電力を供給するための供給源である。電池35は、充電を行うことにより繰り返し使用することが可能な二次電池としてもよい。電池35は、例えば固体電解質を有する全固体電池としてもよい。電池35は、例えば基板21のディスク19とは反対側の表面、すなわち基板21の反負荷側の表面に配置されている。電池35は、基板21に対して例えばはんだにより電気的に接続及び機械的に固定されている。
【0031】
処理モジュール43は、エンコーダ7に外部電力が供給される場合に、角度位置情報及び多回転情報に基づいてディスク19の位置データを生成する。処理モジュール43は、エンコーダ7に外部電力が供給されない場合に、磁気検出部27に対して、電池35からの電力の供給又は停止の切り替えを制御する。処理モジュール43は、例えば基板21のディスク19とは反対側の表面、すなわち基板21の反負荷側の表面に配置されている(図2及び図3では図示省略)。なお、処理モジュール43を基板21の負荷側の表面に配置してもよい。処理モジュール43の構成は特に限定されるものではないが、例えばCPUやメモリ等の複数の回路素子を有するプロセッサとして構成されてもよい。
【0032】
コネクタ37は、例えば基板21のディスク19とは反対側の表面、すなわち基板21の反負荷側の表面に配置されている。コネクタ37にはケーブル45が接続されており、エンコーダ7は生成した位置データをケーブル45を介して外部に出力する。ケーブル45は例えばリード線である。図3に示すように、ケーブル45はトリガ信号発生器31と電池35との間のスペースを通過して配線される。ケーブル45は、例えば回転軸心Ax上を通過するように配線されている。トリガ信号発生器31と電池35は、互いの間にケーブル45の配線スペースが形成されるように配置されている。例えば、トリガ信号発生器31は回転軸心Axの一方側、電池35は回転軸心Axの他方側に配置されている。トリガ信号発生器31及び電池35の少なくとも一方は、ケーブル45の配線方向に略平行となるように配置されてもよい。図3に示す例では、例えばトリガ信号発生器31がケーブル45の配線方向と略平行となるように配置されている。
【0033】
エンコーダカバー39は、上述したエンコーダ7の各部品を収容する。エンコーダカバー39は、モータ9の筐体15の反負荷側の端部に固定されている。エンコーダカバー39は、外部コネクタ(図示省略)を有している。ケーブル45は、一端が基板21のコネクタ37に接続され、他端がエンコーダカバー39の外部コネクタに接続されている。
【0034】
以上説明したエンコーダ7の構成は一例であり、上述の内容に限定されるものではない。例えば、ハブ17を非磁性材料で構成し、磁石33の負荷側を覆わないように形成してもよい。その場合、例えば磁石33をハブ17の負荷側の表面や径方向外側の側面に配置してもよい。また、ディスク19を磁性材料で構成し、磁石33の反負荷側を覆わないように形成してもよい。その場合、例えば磁石33をディスク19の外径よりも外周側に位置するようにハブ17に固定してもよい。また、磁気検出部27を基板21の反負荷側の表面に配置してもよいし、トリガ信号発生器31や電池35等を、基板21の負荷側の表面に配置してもよい。
【0035】
<3.磁石の構成>
図4図8を参照しつつ、磁石29,33の構成の一例について説明する。図4は、磁石29,33の配置構成の一例を表す、ハブ17を基板21側からみた平面図、図5は、図4のV-V断面に相当するハブ17の断面図、図6は、磁石29,33による磁束の流れの一例を説明するための平面図、図7は、磁石29,33による磁束の流れの一例を説明するための側面図、図8は、磁気検出部27と磁石29及びトリガ信号発生器31と磁石33の位置関係の一例を表す基板21の平面図である。なお、図4ではディスク19の図示を省略し、図8ではコネクタ37及びケーブル45等の図示を適宜省略している。
【0036】
図4及び図5に示すように、ハブ17は、磁石33が径方向において磁石29よりも外周側に配置されるように、磁石33,29をそれぞれ支持している。一例として、ハブ17は、径方向の内周側に位置する内周部17aと、内周部17aよりも径方向の外周側に位置し、軸方向の厚みが内周部17aよりも薄い外周部17bと、を有する。ハブ17は、内周部17aと外周部17bの負荷側の表面が面一となるように形成されており、反負荷側の表面には内周部17aと外周部17bとの間に段差が形成されている。ディスク19は内周部17aの反負荷側に配置され、磁石33は外周部17bの反負荷側に配置されている。ディスク19は内周部17aの反負荷側の表面に例えば接着剤により固定され、磁石33は外周部17bの反負荷側の表面に例えば接着剤により固定されている。磁石33の内周側の側面はハブ17の段差に当接もしくは近接している。ハブ17は、内周部17aの反負荷側の表面が、外周部17bに配置された磁石33の反負荷側の表面よりも、反負荷側に突出している。ディスク19は、径方向において内周部17aよりも外周側に突出している。上記構成により、図5に示すように、軸方向においてディスク19と磁石33との間には隙間Gが形成されている。また、内周部17aの径方向における外径D1は、ディスク19のスケールSの径方向における内径D2よりも小さい。
【0037】
上記構成により、ハブ17は、磁石33の負荷側をバックヨークのように覆い、且つ、ディスク19が磁石33の反負荷側を覆うようにディスク19を支持する。つまりハブ17は、磁石33の反負荷側をバックヨークのように覆わないで、言い換えると、ディスク19の外周部(スケールSが形成されている部分を含む)の負荷側をハブ自身で覆わないで、磁石33の反負荷側の面とディスク19の負荷側の面とを対向させるように、内周部17aによりディスク19を支持する。具体的には、ハブ17は、内周部17aの外径が外周部17bの外径よりも小さく、内周部17aが外周部17bよりも軸方向に長く形成され、外周部17bと内周部17aの軸方向の段差に当接するように磁石33が配置され、磁石33を覆い被さるようにディスク19を内周部17aで支持する。なお、磁石33の反負荷側の面とディスク19の負荷側の面の間の隙間Gに、磁束を透過しやすい材質の部品(非磁性体等)が挟まれてもよい。また、磁石33の反負荷側の面とディスク19の負荷側の面を当接させてもよい。
【0038】
磁石33は、周方向における90度ごとにN極とS極が交互に切り替わるように構成されている。一例として、図4に示すように、磁石33は、それぞれが軸方向に着磁されることにより軸方向に磁極を有し、隣接するもの同士の磁極が異なるように、周方向に沿って相互に隙間をあけて配置された複数(例えば4個)の磁石を有する。複数の磁石は、反負荷側がN極で負荷側がS極に着磁された2個の磁石33N1,33N2と、反負荷側がS極で負荷側がN極に着磁された2個の磁石33S1,33S2と、の計4個の磁石を有する。これら磁石33N1,33S1,33N2,33S2は、周方向における90度ごとに反負荷側の磁極がN極とS極に交互に切り替わるように配置されている。磁石33が有する複数の磁石33N1,33S1,33N2,33S2は、それぞれ円弧形状を有する。なお、磁石33を、例えば円形、楕円形、正方形又は長方形等の四角形、四角形以外の多角形等、円弧形状以外の形状としてもよい。また、磁石33が有する複数の磁石33N1,33S1,33N2,33S2を隙間なく配置してもよいし、磁石33を反負荷側の磁極が90度ごとにN極とS極に交互に切り替わるように軸方向に着磁された単一のリング形状の磁石としてもよい。
【0039】
磁石29は、周方向における180度ごとにN極及びS極が交互に切り替わるように構成されている。一例として、図4に示すように、磁石29はリング形状の磁石であり、軸方向に着磁されており、周方向における180度ごとに反負荷側の磁極がN極及びS極に交互に切り替わるように構成されている。磁石29は、反負荷側がN極で負荷側がS極に着磁された磁極29Nと、反負荷側がS極で負荷側がN極に着磁された磁極29Sと、を有する。なお、磁石29を、例えば円板形状、正方形や長方形等の四角形、四角形以外の多角形等、リング形状以外の形状としてもよい。また、磁石29を例えばN極のS極の2つの磁石としてもよい。図4及び図5に示すように、ハブ17は磁石29の外周形状に沿って磁気検出部27側(反負荷側)に突出した壁部を備えた磁石収容部17cを有する。磁石29は、壁部に嵌合するように磁石収容部17cに収容され、磁石収容部17cの底部及び壁部に例えば接着剤により固定されている。磁石収容部17cは、内周部17aのさらに径方向内側に設けられている。ディスク19の中心部には、磁石収容部17cに対応した円形の貫通孔19aが形成されており、当該貫通孔19aが磁石収容部17cの壁部に当接することにより、ディスク19が位置決めされている。磁石収容部17cの壁部の軸方向の高さは特に限定されないが、図5に示す例では磁石29よりも低くなっている。なお、壁部の高さを磁石29と同等又は磁石29よりも高くしてもよい。
【0040】
図4に示すように、磁石33を構成する磁石33N1,33S1,33N2,33S2及び磁石29の少なくとも一方は、磁石29における磁極29Nと磁極29Sの境界の角度位置Ap1が、磁石33のいずれかの磁石33N1,33S1,33N2,33S2の周方向における中心の角度位置Ap2と、略45度ずれるように、周方向の角度を調整されて配置されている。なお、角度位置Ap1と角度位置Ap2との角度差は45度に限るものではなく、0度より大きい角度(但し45度に近い方が好ましい)であればよい。
【0041】
図6及び図7に示すように、磁石29の磁束Mf1は、ハブ17の反負荷側の径方向内側において、磁極29Nから出て磁気検出部27を通過し磁極29Sへ入る円弧状の磁束である。磁束Mf1は、磁極29Nの中心部近傍から磁極29Sの中心部近傍へ向かう、所定の幅を有する磁束である。なお、磁束は磁気、磁界または磁場ともいうことができる。磁石29が軸方向に着磁されていることと、磁性材料で構成されたハブ17がバックヨークとなることの相乗効果により、磁束Mf1の強度が増大され、磁気検出部27を通過する磁束量を増大できる。また、磁石収容部17cの壁部により、磁束Mf1の径方向外側への拡散を抑制して磁気検出部27側へ集中させることができるので、外周側の磁石33との磁気干渉を低減できる。
【0042】
磁石33の磁束Mf2は、ハブ17の反負荷側の径方向外側において、磁石33N1から出て磁石33S1又は磁石33S2へ入る2つの円弧状の磁束と、磁石33N2から出て磁石33S1又は磁石33S2へ入る2つの円弧状の磁束と、の計4つの磁束である。磁束Mf2は、磁石33N1の中心部近傍から磁石33S1又は磁石33S2の中心部近傍へ向かうと共に、磁石33N2の中心部近傍から磁石33S1又は磁石33S2の中心部近傍へ向かう、所定の幅を有する磁束である。ハブ17の回転によりいずれかの磁束Mf2がトリガ信号発生器31を通過し、磁性素子31aの磁化方向を反転させる大バルクハウゼン効果を発生させる。磁石33N1,33S1,33N2,33S2が軸方向に着磁されていることと、磁性材料で構成されたハブ17の外周部17bがバックヨークとなることの相乗効果により、磁束Mf2の強度が増大され、トリガ信号発生器31を通過する磁束量を増大できる。また、磁石33N1,33S1,33N2,33S2がそれぞれ相互に隙間をあけて配置されることにより、各磁石同士の間に形成される磁束Mf2のアーチ形状を大きくしてトリガ信号発生器31に届きやすくすることができる。
【0043】
上記磁石29の磁束Mf1及び磁石33の磁束Mf2に対応して、磁気検出部27及びトリガ信号発生器31の配置が最適化されている。一例として、図8に示すように、磁気検出部27は、基板21の負荷側の表面において、磁石29に対向し且つ磁束Mf1の略中心に位置するように、回転軸心Ax上に配置されている。トリガ信号発生器31は、基板21の反負荷側の表面において、径方向において磁束Mf2の略中心に位置するように配置されている。具体的には、トリガ信号発生器31の中心が、磁石33N1,33S1,33N2,33S2の回転軌跡よりも若干径方向内側に位置するように配置されている。なお、磁気検出部27及び磁石29の周方向の取付角度は、トリガ信号発生器31により発生されるトリガ信号の位相角と、処理モジュール43により生成されるA相多回転信号Ma及びB相多回転信号Mbの位相角と、に基づいて、トリガ信号の位相角のヒステリシスを考慮して設定されている。当該内容については後述する。
【0044】
<4.処理モジュールの機能構成>
図9を参照しつつ、処理モジュール43の機能構成の一例について説明する。図9は、処理モジュール43の機能構成の一例を表すブロック図である。
【0045】
処理モジュール43は、エンコーダ7に外部電力が供給される場合の、角度位置情報及び多回転情報の両方に基づいたディスク19の位置データの生成と、エンコーダ7に外部電力が供給されない場合の、電池35から供給される電力を用いて磁気検出部27により検出される多回転情報に基づいた、ディスク19の多回転量の生成とを実行する。処理モジュール43のこのような機能を実現するための機能構成の一例について説明する。
【0046】
図9に示すように、処理モジュール43は、角度位置信号生成部47と、A相多回転信号生成部49と、B相多回転信号生成部51と、カウンタ53と、位置データ生成部55と、記録部57とを有する。
【0047】
角度位置信号生成部47は、受光アレイPAの出力に基づいてディスク19の1回転以内の絶対位置を特定する。絶対位置の特定手法は特に限定されるものではない。例えば、受光アレイPAが有する複数の受光素子が、アブソリュートパターンを有するスケールSAの検出の有無に基づいて1つ1つの受光又は非受光をビットとして扱い、複数ビットのアブソリュート信号を出力してもよい。この場合、角度位置信号生成部47は、アブソリュート信号に基づいてシリアルなビットパターンに暗号化(コード化)されていた絶対位置を復号し、絶対位置を特定する。
【0048】
角度位置信号生成部47は、受光アレイPIの出力に基づいてディスク19の1回転以内の相対位置を特定する。例えば、受光アレイPIが有する複数の受光素子が、インクリメンタルパターンを有するスケールSIの検出結果に基づいて、インクリメンタル信号を出力してもよい。この場合、角度位置信号生成部47は、インクリメンタル信号に基づいてインクリメンタルパターンの1ピッチ内の位置を特定する。
【0049】
角度位置信号生成部47は、アブソリュート信号に基づいて特定した絶対位置に、インクリメンタル信号に基づいて特定した1ピッチ内の位置を重畳することにより、ディスク19の1回転以内の高精度な角度位置を表す角度位置信号Asを生成する。
【0050】
A相多回転信号生成部49は、磁気検出部27からのA相信号を矩形波状の信号に変換してA相多回転信号Ma(第2電気信号の一例。後述の図12及び図13参照)を生成する。前述のように、磁石29は磁束の向きが略180度の回転角度範囲毎に反転するので、A相多回転信号Maはデューティ比50%、ディスク19の1回転毎に1パルスの信号となる。A相多回転信号生成部49は例えばコンパレータである。なお、「第2磁気検出部が発生する第2電気信号」には、磁気検出部27から出力されたアナログ信号であるA相信号をA相多回転信号生成部49で2値化して生成したパルス信号であるA相多回転信号Maが含まれる。
【0051】
B相多回転信号生成部51は、磁気検出部27からのB相信号を矩形波状の信号に変換してB相多回転信号Mb(第2電気信号の一例。後述の図12及び図13参照)を生成する。B相多回転信号Mbは、A相多回転信号Maと同様にデューティ比50%、ディスク19の1回転毎に1パルスの信号となる。B相多回転信号MbはA相多回転信号Maと位相が90度異なる。B相多回転信号生成部51は例えばコンパレータである。なお、「第2磁気検出部が発生する第2電気信号」には、磁気検出部27から出力されたアナログ信号であるB相信号をB相多回転信号生成部51で2値化して生成したパルス信号であるB相多回転信号Mbが含まれる。
【0052】
カウンタ53は、A相多回転信号Ma及びB相多回転信号Mbに基づいてディスク19の回転数を表す多回転量をカウントするカウント演算処理を実行し、多回転信号Rnを生成する。カウンタ53は、カウント演算処理の結果である多回転信号Rnを位置データ生成部55に出力する。
【0053】
処理モジュール43は、エンコーダ7に外部電力が供給される場合には、アクティブモードとなる。外部電力によるアクティブモードでは、処理モジュール43は磁気検出部27に電力を供給する。位置データ生成部55は、角度位置信号Asと多回転信号Rnとを合成して位置データを生成し、制御装置5に出力する。処理モジュール43は、エンコーダ7に外部電力が供給されない場合には、スリープモードに切り替わる。スリープモードでは、処理モジュール43は磁気検出部27への電力供給を停止する。スリープモードでは、処理モジュール43は位置データの生成を含む各種の演算処理を停止するが、完全な停止状態とはならずに、電池35から供給される電力により起動状態が維持される。
【0054】
前述のように、トリガ信号発生器31はディスク19の回転によってトリガ信号を発生する。処理モジュール43は、スリープモードにおいてトリガ信号発生器31からトリガ信号を受信した場合、電池35から供給される電力によりスリープモードから復帰してアクティブモードとなる。電池35によるアクティブモードでは、処理モジュール43は磁気検出部27へ電力を供給し、磁気検出部27からA相信号及びB相信号を取得する。カウンタ53は、A相多回転信号生成部49からのA相多回転信号Ma及びB相多回転信号生成部51からのB相多回転信号Mbを受けて、カウント演算処理を実行する。カウンタ53は、カウント演算処理の結果である多回転信号Rnを記録部57に記録する。処理モジュール43は、磁気検出部27からのA相信号及びB相信号の取得後に、電池35から磁気検出部27への電力の供給を停止する。例えば、カウント演算処理の開始前に、磁気検出部27への電力の供給を停止してもよい。
【0055】
記録部57は、カウンタ53からの多回転信号Rnを記録する。記録部57は、データの読み書きが可能で、且つ、非通電時にも記録内容を保持可能な不揮発性メモリであれば、特に限定されるものではない。例えば記録部57として強誘電体メモリ等を使用してもよい。記録部57は、処理モジュール43に内蔵されている。なお、記録部57は処理モジュール43の外部に設置されてもよい。
【0056】
エンコーダ7に外部電力が供給されない状態から外部電力が供給される状態に復帰した場合には、位置データ生成部55は、記録部57に記録された多回転信号Rnを読み出し、角度位置信号生成部47から出力された角度位置信号Asと合成して位置データの初期値を生成する。その後処理モジュール43は、エンコーダ7に外部電力が供給される場合の通常の位置データ生成処理を実行する。
【0057】
上述した角度位置信号生成部47、A相多回転信号生成部49、B相多回転信号生成部51、カウンタ53、位置データ生成部55、記録部57等における処理等は、これらの処理の分担の例に限定されるものではない。例えば、更に少ない数の処理部(例えば1つの処理部)で処理されてもよく、更に細分化された処理部により処理されてもよい。処理モジュール43は、磁気検出部27に電力を供給する部分のみ実際の装置により実装され、その他の上記各処理部による機能はCPU(図示省略)が実行するプログラムにより実装されてもよい。各処理部による機能の一部又は全部がASICやFPGA、その他の電気回路等の実際の装置により実装されてもよい。
【0058】
<5.トリガ信号と多回転信号の位相角に基づく磁気検出部及び磁石の取付角度>
実施形態のエンコーダ7では、磁気検出部27及び磁石29の周方向の取付角度は、トリガ信号発生器31により発生されるトリガ信号の位相角と、処理モジュール43により生成されるA相多回転信号Ma及びB相多回転信号Mbの位相角と、に基づいて、トリガ信号の位相角のヒステリシスを考慮して設定されている。図10図13を参照しつつ、この詳細内容について説明する。図10は、ディスク19が正転する場合における、トリガ信号発生時の磁石33の角度位置の一例を表す説明図である。図11は、ディスク19が逆転する場合における、トリガ信号発生時の磁石33の角度位置の一例を表す説明図である。図12は、トリガ信号の位相角のヒステリシスが大きい場合における、トリガ信号、A相多回転信号Ma、及びB相多回転信号Mbの波形の一例を表す説明図である。図13は、トリガ信号の位相角のヒステリシスが小さい場合における、トリガ信号、A相多回転信号Ma、及びB相多回転信号Mbの波形の一例を表す説明図である。なお、図10及び図11では磁石29等の図示を省略している。また、軸方向における反負荷側から見た場合に、例えば磁石33(ハブ17、ディスク19)が時計回り方向(第1方向の一例)に回転する場合を正転、磁石33が反時計回り方向(第2方向の一例)に回転する場合を逆転とする。また、例えば磁石33N1と磁石33S2の間の隙間の周方向中心位置(図10及び図11において黒丸で図示)が所定の基準角度である原点OPに位置する場合を基準とし、磁石33N1と磁石33S2の間の隙間の周方向中心位置の原点OPに対する正転方向の回転角度(位相角)をθとする。
【0059】
トリガ信号発生器31は、トリガ信号発生器31の真下にN極とS極の間の中央位置が来たときに磁界が最大値になり、ハブ17が45度回転して、トリガ信号発生器31の真下にN極又はS極の磁極の中央位置が来たときに磁界がゼロになり、そこから少し角度が進み、トリガ信号発生器31へ掛かる反対方向の磁界がある強度を超えた時点でトリガ信号を発生する。実施形態では、トリガ信号発生器31は、ハブ17が正転する場合には磁石33の磁気の検出に基づく所定の第1位相角でトリガ信号を発生する。一例として、例えば図10及び図12に示す例では、磁石33が正転する場合、トリガ信号発生器31は例えばθが50度、140度、230度、320度(第1位相角の一例)となる各々のタイミングでトリガ信号を発生する。また、トリガ信号発生器31は、磁石33が逆転する場合には磁石33の磁気の検出に基づく第2位相角でトリガ信号を発生する。一例として、例えば図11及び図12に示す例では、磁石33が逆転する場合、トリガ信号発生器31は例えばθが310度、220度、130度、40度(第2位相角の一例)となる各々のタイミングでトリガ信号を発生する。図10図12に示す例では、正転ではN極とS極の間の中央位置が原点OPに対して-40度の位相角となったタイミングでトリガ信号が発生し、逆転ではN極とS極の間の中央位置が原点OPに対して+40度の位相角となったタイミングでトリガ信号が発生する。すなわち、図10図12はトリガ信号の位相角のヒステリシスが±40度の場合に相当する。
【0060】
A相多回転信号Ma及びB相多回転信号Mbは互いに位相が90度異なっており、それぞれが第3位相角でハイとローが切り替わるパルス状の信号である。一例として、例えば図12に示す例では、A相多回転信号Maは例えば位相角が0度及び180度(第3位相角の一例)でハイとローが切り替わり、B相多回転信号Mbは例えば位相角が90度及び270度(第3位相角の一例)でハイとローが切り替わる。磁石29及び磁気検出部27の少なくとも一方は、上記第3位相角が上記第1位相角及び第2位相角のそれぞれに対して所定の角度以上の位相差を有するように、周方向の取り付け角度を調整されて配置される。所定の角度以上の位相差を設けるのは次の理由による。
【0061】
処理モジュール43がトリガ信号を受信してスリープモードからアクティブモードに移行した後、実際にカウンタ53がA相多回転信号生成部49からのA相多回転信号Ma及びB相多回転信号生成部51からのB相多回転信号Mbを読み取るまでには、若干の時間遅れが発生する。この時間遅れ内に回転角度が進み、トリガ信号が発生した時点のA相多回転信号Ma及びB相多回転信号Mbの値と、カウンタ53が読み取った時点でのA相多回転信号Ma及びB相多回転信号Mbの値が変化する場合がある。値の変動は、回転速度が高い場合に発生する可能性が高くなる。そのため、トリガ信号発生のタイミング(第1位相角および第2位相角)と、A相多回転信号Ma及びB相多回転信号Mbのハイ、ローが切り替わるタイミング(第3位相角)との間には、所定の角度以上の位相差を設けて、ハイとローが切り替わるタイミング近傍で読み取ることによる不安定な検出となることを回避することが望ましい。例えば、最も厳しい条件であるモータの最高回転速度における上記の時間遅れを考慮して、所定の角度以上の位相差を決定してもよい。具体的には、最高回転速度(例えば毎分6000回転の回転速度)において、トリガ発生からカウンタ53がA相多回転信号Ma及びB相多回転信号Mbの値の読み取りを完了するまではおよそ0.5ミリ秒かかり、それを角度に換算すると約20度になるため、「所定の角度以上」は20度以上とするのが好ましい。30度以上に出来ればより望ましい。
【0062】
図12に示す例では、第3位相角(0度、90度、180度、270度)が上記第1位相角(50度、140度、230度、320度)及び第2位相角(40度、130度、220度、310度)のそれぞれに対して所定の角度以上の位相差(この例では40度)を有するように、磁石29及び磁気検出部27の少なくとも一方の取り付け角度が調整されて配置されている。理想的には、第3位相角(0度、90度、180度、270度)が、互いに対応する第1位相角と第2位相角(320度と40度、50度と130度、140度と220度、230度と310度)の中間に位置するように、磁石29及び磁気検出部27の少なくとも一方の取り付け角度が調整されることが望ましい。
【0063】
図12のハッチング部分は、処理モジュール43のカウンタ53がA相多回転信号Ma及びB相多回転信号Mbの読み取りを行うタイミングの一例である。図12に示す例では、正転時においてθが50度のタイミングでトリガ信号が発生された後、θが例えば50度~90度の範囲でA相多回転信号Ma(ハイ)及びB相多回転信号Mb(ロー)が読み取られる。同様に、θが140度のタイミングでトリガ信号が発生された後、θが例えば140度~180度の範囲でA相多回転信号Ma(ハイ)及びB相多回転信号Mb(ハイ)が読み取られる。θが230度のタイミングでトリガ信号が発生された後、θが例えば230度~270度の範囲でA相多回転信号Ma(ロー)及びB相多回転信号Mb(ハイ)が読み取られる。θが320度のタイミングでトリガ信号が発生された後、θが例えば320度~0度(360度)の範囲でA相多回転信号Ma(ロー)及びB相多回転信号Mb(ロー)が読み取られる。一方、逆転時においてθが310度のタイミングでトリガ信号が発生された後、θが例えば310度~270度の範囲でA相多回転信号Ma(ロー)及びB相多回転信号Mb(ロー)が読み取られる。同様に、θが220度のタイミングでトリガ信号が発生された後、θが例えば220度~180度の範囲でA相多回転信号Ma(ロー)及びB相多回転信号Mb(ハイ)が読み取られる。θが130度のタイミングでトリガ信号が発生された後、θが例えば130度~90度の範囲でA相多回転信号Ma(ハイ)及びB相多回転信号Mb(ハイ)が読み取られる。θが40度のタイミングでトリガ信号が発生された後、θが例えば40度~0度の範囲でA相多回転信号Ma(ハイ)及びB相多回転信号Mb(ロー)が読み取られる。カウンタ53が、上記位相角の範囲でA相多回転信号Ma及びB相多回転信号Mbの読み取りを行うことにより、ハイとローが切り替わるタイミング近傍で読み取ることによる不安定な検出となることを回避でき、ディスク19の多回転量を安定してカウントすることができる。
【0064】
なお、上記ではトリガ信号の位相角のヒステリシスが比較的大きい場合(±40度)について説明したが、機器構成によってはヒステリシスが小さい場合も考えられる。一例として、例えば図13に示す例では、磁石33が正転する場合、トリガ信号発生器31は例えばθが80度、170度、260度、350度(第1位相角の一例)となる各々のタイミングでトリガ信号を発生する。また、磁石33が逆転する場合、トリガ信号発生器31は例えばθが280度、190度、100度、10度(第2位相角の一例)となる各々のタイミングでトリガ信号を発生する。図13に示す例では、正転ではN極とS極の間の中央位置が原点OPに対して-10度の位相角となったタイミングでトリガ信号が発生し、逆転ではN極とS極の間の中央位置が原点OPに対して+10度の位相角となったタイミングでトリガ信号が発生する。すなわち、図13はトリガ信号の位相角のヒステリシスが±10度の場合に相当する。
【0065】
図13に示す例では、A相多回転信号Maは例えば位相角が135度及び315度(第3位相角の一例)でハイとローが切り替わり、B相多回転信号Mbは例えば位相角が45度及び225度(第3位相角の一例)でハイとローが切り替わる。上述した理由により、磁石29及び磁気検出部27の少なくとも一方は、上記第3位相角が上記第1位相角及び第2位相角のそれぞれに対して所定の角度以上の位相差を有するように、周方向の取り付け角度を調整されて配置される。図13に示す例では、第3位相角(45度、135度、225度、315度)が上記第1位相角(80度、170度、260度、350度)及び第2位相角(10度、100度、190度、280度)のそれぞれに対して所定の角度以上の位相差(この例では35度)を有するように、磁石29及び磁気検出部27の少なくとも一方の取り付け角度が調整されて配置されている。理想的には、第3位相角(45度、135度、225度、315度)が、互いに対応する第1位相角と第2位相角(350度と100度、80度と190度、170度と280度、260度と10度)の中間に位置するように、磁石29及び磁気検出部27の少なくとも一方の取り付け角度が調整されることが望ましい。
【0066】
図13のハッチング部分は、処理モジュール43のカウンタ53がA相多回転信号Ma及びB相多回転信号Mbの読み取りを行うタイミングの一例である。図13に示す例では、正転時においてθが80度のタイミングでトリガ信号が発生された後、θが例えば80度~135度の範囲でA相多回転信号Ma(ハイ)及びB相多回転信号Mb(ハイ)が読み取られる。同様に、θが170度のタイミングでトリガ信号が発生された後、θが例えば170度~225度の範囲でA相多回転信号Ma(ロー)及びB相多回転信号Mb(ハイ)が読み取られる。θが260度のタイミングでトリガ信号が発生された後、θが例えば260度~315度の範囲でA相多回転信号Ma(ロー)及びB相多回転信号Mb(ロー)が読み取られる。θが350度のタイミングでトリガ信号が発生された後、θが例えば350度~45度の範囲でA相多回転信号Ma(ハイ)及びB相多回転信号Mb(ロー)が読み取られる。一方、逆転時においてθが280度のタイミングでトリガ信号が発生された後、θが例えば280度~225度の範囲でA相多回転信号Ma(ロー)及びB相多回転信号Mb(ロー)が読み取られる。同様に、θが190度のタイミングでトリガ信号が発生された後、θが例えば190度~135度の範囲でA相多回転信号Ma(ロー)及びB相多回転信号Mb(ハイ)が読み取られる。θが100度のタイミングでトリガ信号が発生された後、θが例えば100度~45度の範囲でA相多回転信号Ma(ハイ)及びB相多回転信号Mb(ハイ)が読み取られる。θが10度のタイミングでトリガ信号が発生された後、θが例えば10度~315度の範囲でA相多回転信号Ma(ハイ)及びB相多回転信号Mb(ロー)が読み取られる。カウンタ53が、上記位相角の範囲でA相多回転信号Ma及びB相多回転信号Mbの読み取りを行うことにより、ハイとローが切り替わるタイミング近傍で読み取ることによる不安定な検出となることを回避でき、ディスク19の多回転量を安定してカウントすることができる。
【0067】
なお、以上の波形は一例であり、トリガ信号の位相角のヒステリシスは上記以外の角度でもよいし、A相多回転信号Ma及びB相多回転信号Mbの読み取りを行うタイミングも上記の範囲以外としてもよい。
【0068】
<6.実施形態の効果>
以上説明したように、実施形態のエンコーダ7では、ディスク19及び磁石33は回転可能なハブ17に固定されており、ハブ17と共に回転軸心Ax周りに回転する。磁石33は、ディスク19よりも軸方向における負荷側に配置されている。磁石33の磁気を検出するトリガ信号発生器31は、ディスク19よりも軸方向における反負荷側に配置されている。実施形態のエンコーダ7によれば、磁石33とトリガ信号発生器31の両方が、ディスク19に対して軸方向における負荷側又は反負荷側のいずれか一方に配置される場合に比べて、エンコーダ7の軸方向寸法を小型化できる。
【0069】
実施形態において、ハブ17は磁性材料で構成されてもよく、ハブ17は磁石33の負荷側を覆うように形成されてもよい。この場合、ハブ17をバックヨークとして機能させ、磁石33からトリガ信号発生器31側に発生する磁界の強度を増大することができる。また、ハブ17を磁気シールドとして機能させ、エンコーダ7の負荷側に配置されるモータやブレーキ装置からの漏れ磁束を遮断し、トリガ信号発生器31及び磁気検出部27による磁気の検出精度の低下を防止できる。また、漏れ磁束が光学モジュール25等の基板21に実装された電子部品に影響を及ぼすことも防止できる。
【0070】
実施形態において、ディスク19は非磁性材料で構成されてもよく、ハブ17はディスク19が磁石33の反負荷側を覆うようにディスク19を支持してもよく、トリガ信号発生器31は、ディスク19を透過した磁石33の磁気を検出してもよい。この場合、ディスク19を非磁性材料で構成するので、磁石33の磁気をディスク19を透過させてトリガ信号発生器31により検出することができる。これにより、ディスク19の径方向外側に磁石33及びトリガ信号発生器31を配置する場合に比べて、エンコーダ7の径方向寸法を小型化できる。
【0071】
実施形態において、エンコーダ7は、軸方向においてディスク19と磁石33との間に形成された隙間Gを有してもよい。仮に、ディスク19と磁石33とが接触する場合、磁石33の表面の凹凸や、ディスク19と磁石33との間に介在する接着剤の影響により、ディスク19のスケールSと光学モジュール25との距離がディスク19の回転に伴って変動する可能性がある。実施形態のエンコーダ7によれば、ディスク19と磁石33との間に隙間Gを設けることで、上記に起因してディスク19のスケールSと光学モジュール25との距離が変動することを防止でき、光学モジュール25によるスケールSの検出精度を確保できる。
【0072】
実施形態において、ハブ17は、径方向の内周側に位置する内周部17aと、内周部17aよりも径方向の外周側に位置し、軸方向の厚みが内周部17aよりも薄い外周部17bと、を有してもよく、ディスク19は内周部17aの反負荷側に配置され、磁石33は外周部17bの反負荷側に配置されてもよい。この場合、簡易な構造で磁石33の反負荷側にディスク19を配置した構成を実現できる。また、内周部17aと外周部17bとの間の段差を利用して磁石33を位置決めできる。
【0073】
実施形態において、ハブ17は、内周部17aの反負荷側の表面が、外周部17bに配置された磁石33の反負荷側の表面よりも、反負荷側に突出してもよく、ディスク19は、径方向において内周部17aよりも外周側に突出してもよい。この場合、簡易な構造でディスク19と磁石33との間に隙間を有する構成を実現できる。
【0074】
実施形態において、内周部17aの径方向における外径D1は、スケールSの径方向における内径D2よりも小さくしてもよい。実施形態のエンコーダ7によれば、ハブ17の内周部17aに固定されるディスク19の固定領域を、スケールSよりも内周側の領域とすることができる。したがって、ディスク19と内周部17aとを接着する接着剤の影響を無くすことができるので、光学モジュール25によるスケールSの検出精度を確保できる。特に、ディスク19と磁石33との間に隙間Gを形成する場合には、隙間Gで磁石33の表面の凹凸によるスケールSと光学モジュール25との距離の変動を防止しつつ、接着剤の影響を無くすことができるので、検出精度を大幅に向上できる。
【0075】
実施形態において、磁石33は、それぞれ軸方向に磁極を有し、隣接するもの同士の磁極が異なるように、周方向に沿って相互に隙間をあけて配置された複数の磁石33N1,33S1,33N2,33S2を有してもよい。この場合、磁石間に隙間を形成しない場合に比べて、磁石同士の間に形成される磁束Mf2のアーチ形状を大きくしてトリガ信号発生器31に届きやすくすることができる。したがって、トリガ信号発生器31の配置の自由度が向上し、設計が容易となる。
【0076】
実施形態において、磁石33が有する複数の磁石33N1,33S1,33N2,33S2は、それぞれ円弧形状を有してもよい。この場合、磁石33を円弧形状とし、且つ、隙間をあけて配置することで、両者の相乗効果により、トリガ信号発生器31までより多くの磁束を到達させることができる。
【0077】
実施形態において、エンコーダ7は、回転軸心Ax上の位置でハブ17に固定された磁石29と、磁石29に対向するように配置され、磁石29の磁気を検出する磁気検出部27と、を有してもよく、ハブ17は、磁石33が径方向において磁石29よりも外周側に配置されるように、磁石33を支持してもよい。この場合、磁石33の磁路と磁石29の磁路を径方向に分離して磁気干渉を抑制できる。
【0078】
実施形態において、ハブ17は、磁性材料で構成されてもよく、磁石29の外周形状に沿って磁気検出部27側に突出した壁部を備え磁石29を収容する磁石収容部17cを有してもよい。この場合、磁石収容部17cの壁部で磁石29を嵌合させることで、磁石29を容易に位置決めできると共に強固に固定できる。また、壁部により磁石29の磁束を磁気検出部27に届きやすくすることができるので、磁気検出部27の配置の自由度が向上し、設計が容易となる。さらに、壁部により磁石29の磁界が外周側に拡がることを抑制できるので、外周側の磁石33との磁気干渉をさらに低減できる。
【0079】
実施形態において、磁石33は、回転軸心Ax周りの周方向における90度ごとにN極とS極が交互に切り替わるように構成されてもよく、磁石29は、周方向における180度ごとにN極及びS極が交互に切り替わるように構成されてもよく、磁石33又は磁石29は、磁石29におけるN極とS極の境界の角度位置Ap1が、磁石33のいずれかの磁極の周方向における中心の角度位置Ap2と、略45度ずれるように配置されてもよい。
【0080】
仮に、磁石29のN極とS極の境界の角度位置Ap1が磁石33のいずれかの磁極の周方向における中心の角度位置Ap2と一致又は近傍となる配置構成とした場合、磁石29のN極及びS極のうちの一方が同極の磁石33と対向すると共に、他方が反対の極の磁石33と対向することになる。この場合、磁石33と磁石29との間で同極が対向する箇所では斥力が作用し、反対の極が対向する箇所では引力が作用することとなり、磁気干渉が生じる可能性がある。実施形態のエンコーダ7によれば、磁石29のN極とS極の境界の角度位置Ap1が磁石33のいずれかの磁極の周方向における中心の角度位置Ap2と略45度ずれた配置構成とすることで、磁石33と磁石29との間に作用する斥力及び引力を低減でき、磁気干渉を低減できる。
【0081】
実施形態において、エンコーダ7は、回転軸心Ax上の位置でハブ17に固定された磁石29と、磁石29に対向するように配置され、磁石29の磁気を検出する磁気検出部27と、を有してもよく、トリガ信号発生器31は、ハブ17が正転する場合には磁石33の磁気の検出に基づく第1位相角でトリガ信号を発生し、ハブ17が逆転する場合には磁石33の磁気の検出に基づく第2位相角でトリガ信号を発生してもよく、磁石29及び磁気検出部27は、第1位相角及び第2位相角のそれぞれに対して所定の角度以上の位相差を有する第3位相角でハイとローが切り替わるパルス状のA相多回転信号Ma及びB相多回転信号Mbを磁気検出部27(詳細には処理モジュール43のA相多回転信号生成部49及びB相多回転信号生成部51)が発生するように、配置されてもよい。この場合、トリガ信号に基づいてA相多回転信号Ma及びB相多回転信号Mbを取得する場合に、A相多回転信号Ma及びB相多回転信号Mbのハイとローが切り替わるタイミング近傍で取得することによる不安定な信号となることを回避でき、A相多回転信号Ma及びB相多回転信号Mbを安定した状態で取得することができる。
【0082】
実施形態において、エンコーダ7は、外部電力が供給されない場合に磁気検出部27に電力を供給する電池35を有してもよく、トリガ信号発生器31は、磁石33の磁気の検出に基づいて、電池35の電力を磁気検出部27に供給するトリガとなるトリガ信号を発生してもよい。この場合、エンコーダの外部に電池を設置する必要がなく、外部電池交換のメンテナンスが不要なエンコーダを実現できる。
【0083】
実施形態において、エンコーダ7は、トリガ信号発生器31が反負荷側の表面に配置された基板21と、基板21の反負荷側の表面に配置され、エンコーダ7に外部電力が供給されない場合に基板21の少なくとも一部の回路に電力を供給する電池35と、基板21の反負荷側の表面に配置されたコネクタ37と、コネクタ37に接続され、トリガ信号発生器31と電池35との間のスペースを通過して配線されたケーブル45と、を有してもよい。この場合、ケーブル45をトリガ信号発生器31と電池35との間のスペースを通過して配線することで、基板21に配置される回路部品の中で比較的高さのあるトリガ信号発生器31と電池35の間のスペースを有効活用でき、エンコーダ7をコンパクト化できる。また、ケーブル45のケーブル長を短縮できる。
【0084】
<7.変形例>
なお、開示の実施形態は、上記に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を説明する。
【0085】
(7-1.磁石間の隙間に非磁性材を充填する場合)
実施形態では、磁石33が有する複数の磁石33N1,33S1,33N2,33S2を周方向に沿って相互に隙間をあけて配置したが、磁石33N1,33S1,33N2,33S2の配置形態は上記に限られない。例えば図14に示すように、磁石33N1,33S1,33N2,33S2の相互の隙間を埋めるようにスペーサ59を充填してもよい。スペーサ59は非磁性材料で構成されている。
【0086】
本変形例によれば、磁石33N1,33S1,33N2,33S2の相互間に隙間を設ける場合に比べて、スペーサ59によりハブ17の周方向の重量バランスを向上でき、ハブ17の回転時に軸振れや振動等を生じにくくすることができる。
【0087】
(7-2.ハブを非磁性材料で構成し、磁石を周方向に着磁する場合)
実施形態では、ハブ17を磁性材料で構成すると共に、磁石29,33を軸方向に着磁して軸方向に磁極を有する構成としたが、磁石29,33の着磁方向は軸方向に限られない。例えば図15及び図16に示すように、ハブ17を非磁性材料で構成すると共に、磁石61,63を周方向に着磁して周方向に磁極を有する構成としてもよい。図15は、磁石61,63による磁束の流れの一例を説明するための平面図、図16は、磁石61,63による磁束の流れの一例を説明するための側面図である。
【0088】
図15及び図16に示すように、磁石61は、周方向に着磁されており、周方向における180度ごとに磁極がN極及びS極に交互に切り替わるように構成されている。磁石61は、N極に着磁された磁極61Nと、S極に着磁された磁極61Sと、を有する。磁石61の磁束Mf3は、ハブ17の反負荷側の径方向内側において、磁極61Nから出て磁気検出部27を通過し磁極61Sへ入る円弧状の磁束である。磁束Mf3は、磁極61Nの中心部近傍から磁極61Sの中心部近傍へ向かう、所定の幅を有する磁束である。磁石61を周方向に着磁する場合、ハブ17を磁性材料で構成すると磁路の短絡により磁束Mf3のアーチ形状が小さくなるが、ハブ17を非磁性材料で構成することで磁束Mf3のアーチ形状を大きくでき、磁束Mf3を磁気検出部27に届きやすくすることができる。
【0089】
図15及び図16に示すように、磁石63は、それぞれが周方向に着磁されることにより周方向の両端に磁極を有し、隣接するもの同士の磁極の向きが反対となるように、周方向に沿って相互に隙間をあけて配置された複数(例えば4個)の磁石を有する。複数の磁石は、周方向一方側がN極で周方向他方側がS極に着磁された2個の磁石63A,63Cと、周方向一方側がS極で周方向他方側がN極に着磁された2個の磁石63B,63Dと、の計4個の磁石を有する。磁石63が有する複数の磁石63A,63B,63C,63Dは、それぞれ円弧形状を有する。
【0090】
磁石63の磁束Mf4は、ハブ17の反負荷側の径方向外側において、磁石63A,63B,63C,63Dの各々においてN極から出てS極へ入る4つの円弧状の磁束である。各磁束Mf4は、各磁石63A,63B,63C,63DのN極側の端部近傍からS極側の端部近傍へ向かう、所定の幅を有する磁束である。ハブ17の回転によりいずれかの磁束Mf4がトリガ信号発生器31を通過し、磁性素子31aの磁化方向を反転させる大バルクハウゼン効果を発生させる。磁石63を周方向に着磁する場合、ハブ17を磁性材料で構成すると磁路の短絡により磁束Mf4のアーチ形状が小さくなるが、ハブ17を非磁性材料で構成することで磁束Mf4のアーチ形状を大きくでき、磁束Mf4をトリガ信号発生器31に届きやすくすることができる。
【0091】
本変形例においても、磁気検出部27により磁石61の磁気を良好に検出でき、トリガ信号発生器31により磁石63の磁気を良好に検出することができる。
【0092】
(7-3.その他)
実施形態では、エンコーダ7が電池35を有する場合について説明したが、上記実施形態で説明した各種効果は、場合によっては電池35がなくても発揮され得る。したがって、得たい効果によっては、エンコーダ7が電池35を有さない場合も権利範囲に含まれることは言うまでもない。更に、実施形態では、エンコーダ7に電源供給がない場合に多回転量を検出する場合について説明したが、同様に、上記実施形態で説明した各種効果は、場合によっては電源供給がない場合の多回転量を検出しないエンコーダであっても発揮され得る。したがって、得たい効果によっては、エンコーダ7に電源供給がない場合に多回転量を検出しない場合も権利範囲に含まれることは言うまでもない。なお、電池35を有さないエンコーダ7の例としては、例えば、エンコーダの外部の電池から電力が供給される場合、複数のトリガ信号発生器31を有してそれらの信号を記録しておいてその信号から多回転量を演算する場合、トリガ信号発生器31で発生した信号を電力として磁気検出部27等を駆動する場合などが挙げられるが、これらの例に限定されるものではない。
【0093】
実施形態では、光学モジュール25が反射型の光学モジュールである場合について説明したが、光学モジュール25を透過型の光学モジュールとしてもよい。この場合、例えば光源41と受光アレイPA,PIとをディスク19を挟んで反対側に配置し、ディスク19においてスケールSA,SIの各スリットを透過スリット(例えば孔)として形成してもよい。
【0094】
実施形態では、ディスク19に1種類のインクリメンタルパターンを設ける場合について説明したが、ディスク19にピッチの異なる複数種類のインクリメンタルパターンを設けてもよい。この場合、分解能の異なる複数のインクリメンタル信号に基づいてさらに高分解能な角度位置信号を生成することが可能となる。
【0095】
実施形態が解決しようとする課題や実施形態の効果は、前記した内容に限定されるものではない。すなわち、実施形態によって、上述されていない課題を解決したり、上述されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0096】
なお、以上の説明において、「垂直」「平行」「平面」等の記載がある場合には、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「垂直」「平行」「平面」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に垂直」「実質的に平行」「実質的に平面」という意味である。
【0097】
また、以上の説明において、外観上の寸法や大きさ、形状、位置等が「同一」「同じ」「等しい」「異なる」等の記載がある場合は、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「同一」「同じ」「等しい」「異なる」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同一」「実質的に同じ」「実質的に等しい」「実質的に異なる」という意味である。
【0098】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。その他、一々例示はしないが、上記実施形態や各変形例は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0099】
1 サーボシステム
3 サーボモータ
5 制御装置
7 エンコーダ
9 モータ
17 ハブ(回転体)
17a 内周部
17b 外周部
17c 磁石収容部
19 ディスク
21 基板
25 光学モジュール
27 磁気検出部(第2磁気検出部)
29 磁石(第2磁石)
31 トリガ信号発生器(第1磁気検出部)
33 磁石(第1磁石)
33N1 磁石
33N2 磁石
33S1 磁石
33S2 磁石
35 電池
37 コネクタ
43 処理モジュール
45 ケーブル
61 磁石(第2磁石)
63 磁石(第1磁石)
Ap1 角度位置
Ap2 角度位置
Ax 回転軸心
D1 外径
D2 内径
G 隙間
S スケール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16