(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180107
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】銀含有ペースト、半導体装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/52 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
H01L21/52 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099561
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】林 凌太郎
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 諒太
(72)【発明者】
【氏名】駒田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】西 孝行
【テーマコード(参考)】
5F047
【Fターム(参考)】
5F047AA17
5F047BA15
5F047BA21
5F047CA00
(57)【要約】
【課題】複数の半導体素子を一括固定する場合における、半導体素子の割れを抑制する。
【解決手段】一面側に金属回路層11を備えるとともに反対面側に放熱用凸部12を備える基板10における、金属回路層11上に複数の半導体素子1を一括で固定するための銀含有ペースト20であって、銀含有ペースト20に熱処理が行われるとシンタリングを起こして粒子連結構造を形成する銀粒子と、銀粒子を分散させる分散媒と、を含み、銀粒子は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定された体積基準の累積度数分布曲線において累積度数が50%である粒子径D50が1μm以上20μm以下であり、分散媒の含有量が、5質量%以上20質量%未満である、銀含有ペースト。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面側に金属回路層を備えるとともに反対面側に放熱用凸部を備える基板における、前記金属回路層上に複数の半導体素子を一括で固定するための銀含有ペーストであって、
前記銀含有ペーストに熱処理が行われるとシンタリングを起こして粒子連結構造を形成する銀粒子と、前記銀粒子を分散させる分散媒と、を含み、
前記銀粒子は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定された体積基準の累積度数分布曲線において累積度数が50%である粒子径D50が0.1μm以上10μm以下であり、
前記分散媒の含有量が、5質量%以上20質量%未満である、銀含有ペースト。
【請求項2】
前記銀粒子は、
レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定された体積基準の粒度分布において、第1のピークおよび第2のピークを有し、
前記第1のピークに対応する粒子径よりも、前記第2のピークに対応する粒子径の方が大きい、
請求項1に記載の銀含有ペースト。
【請求項3】
前記第1のピークは、前記粒子径が1μm未満となる領域に位置し、
前記第2のピークは、前記粒子径が1μm以上20μm以下となる領域に位置する、
請求項2に記載の銀含有ペースト。
【請求項4】
以下の条件1に規定される、ブリード長が10μm以下である、
請求項1乃至3のいずれかに記載の銀含有ペースト。
[条件1]
・基板上に、2枚のテープを1cmの間隔を空けて平行に貼る。
・前記2枚のテープの間に当該銀含有ペーストを平均厚さ150μmで塗布する。
・10秒後に前記テープを剥がし、前記テープを剥がしてから60秒経過後に、当該銀含有ペーストを塗布した領域から、前記テープを貼っていた領域へ当該銀含有ペースト又は前記分散媒がはみ出した長さの最大値をブリード長とする。
【請求項5】
前記分散媒は、官能基を有さないアクリレート化合物または官能基を一つ有するアクリレート化合物を含む、
請求項1乃至3のいずれかに記載の銀含有ペースト。
【請求項6】
前記分散媒は、水酸基を有するアクリレート化合物を含む、
請求項1乃至3のいずれかに記載の銀含有ペースト。
【請求項7】
一面側に金属回路層を備えるとともに反対面側に放熱用凸部を備える基板と、複数の半導体素子と、を有し、
前記金属回路層上に、前記複数の半導体素子が、請求項1乃至3のいずれかの銀含有ペーストによって固定されている、半導体装置。
【請求項8】
一面側に金属回路層を備えるとともに反対面側に放熱用凸部を備える基板を準備する準備工程と、
前記金属回路層上に複数の半導体素子を、請求項1乃至3のいずれかに記載の銀含有ペーストを用いて一括固定する実装工程と、を有し、
前記実装工程は、
前記金属回路層のうち前記複数の半導体素子を固定する位置に、前記銀含有ペーストを配置し、
前記銀含有ペーストの上に、前記複数の半導体素子を搭載し、
前記銀含有ペーストを熱処理することにより、前記複数の半導体素子を前記金属回路層に固定することを含む、
半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記半導体素子及び前記金属回路層を樹脂で封止する封止工程を含む、
請求項8に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀含有ペースト、半導体装置および半導体装置の製造方法に関する。
【0002】
半導体素子を含む半導体装置の製造において、銀含有ペーストを用いて基板に半導体素子を固定する方法が用いられている。基板上に半導体素子を固定する技術としては、特許文献1に記載の技術が挙げられる。
【0003】
特許文献1には、ダイアタッチ材として、金粉とエステルアルコールとを用い、これを加熱・加圧条件にて焼結することにより、比較的低温で金粉を焼結できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の半導体素子、例えば複数の電力制御用の半導体素子を同一の基板上に載置した半導体装置を製造する場合、基板上に複数の半導体素子を一括で固定することが検討されている。複数の半導体素子を一括で固定する場合、半導体素子に割れが生じる可能性がでてくる。また、一括で固定する場合、後述するブリードの発生が問題になる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下に示す銀含有ペースト、半導体装置および半導体装置の製造方法が提供される。
【0007】
[1]
一面側に金属回路層を備えるとともに反対面側に放熱用凸部を備える基板における、前記金属回路層上に複数の半導体素子を一括で固定するための銀含有ペーストであって、
前記銀含有ペーストに熱処理が行われるとシンタリングを起こして粒子連結構造を形成する銀粒子と、前記銀粒子を分散させる分散媒と、を含み、
前記銀粒子は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定された体積基準の累積度数分布曲線において累積度数が50%である粒子径D50が0.1μm以上10μm以下であり、
前記分散媒の含有量が、5質量%以上20質量%未満である、銀含有ペースト。
[2]
前記銀粒子は、
レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定された体積基準の粒度分布において、第1のピークおよび第2のピークを有し、
前記第1のピークに対応する粒子径よりも、前記第2のピークに対応する粒子径の方が大きい、
[1]に記載の銀含有ペースト。
[3]
前記第1のピークは、前記粒子径が1μm未満となる領域に位置し、
前記第2のピークは、前記粒子径が1μm以上20μm以下となる領域に位置する、
[2]に記載の銀含有ペースト。
[4]
以下の条件1に規定される、ブリード長が10μm以下である、
[1]乃至[3]のいずれかに記載の銀含有ペースト。
[条件1]
・基板上に、2枚のテープを1cmの間隔を空けて平行に貼る。
・前記2枚のテープの間に当該銀含有ペーストを平均厚さ150μmで塗布する。
・10秒後に前記テープを剥がし、前記テープを剥がしてから60秒経過後に、当該銀含有ペーストを塗布した領域から、前記テープを貼っていた領域へ当該銀含有ペースト又は前記分散媒がはみ出した長さの最大値をブリード長とする。
[5]
前記分散媒は、官能基を有さないアクリレート化合物または官能基を一つ有するアクリレート化合物を含む、
[1]乃至[4]のいずれかに記載の銀含有ペースト。
[6]
前記分散媒は、水酸基を有するアクリレート化合物を含む、
[1]乃至[5]のいずれかに記載の銀含有ペースト。
[7]
一面側に金属回路層を備えるとともに反対面側に放熱用凸部を備える基板と、複数の半導体素子と、を有し、
前記金属回路層上に、前記複数の半導体素子が、[1]乃至[6]のいずれかの銀含有ペーストによって固定されている、半導体装置。
[8]
一面側に金属回路層を備えるとともに反対面側に放熱用凸部を備える基板を準備する準備工程と、
前記金属回路層上に複数の半導体素子を、[1]乃至[6]のいずれかに記載の銀含有ペーストを用いて一括固定する実装工程と、を有し、
前記実装工程は、
前記金属回路層のうち前記複数の半導体素子を固定する位置に、前記銀含有ペーストを配置し、
前記銀含有ペーストの上に、前記複数の半導体素子を搭載し、
前記銀含有ペーストを熱処理することにより、前記複数の半導体素子を前記金属回路層に固定することを含む、
半導体装置の製造方法。
[9]
前記半導体素子及び前記金属回路層を樹脂で封止する封止工程を含む、
[8]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数の半導体素子を一括固定する場合における、半導体素子の割れおよびブリードの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】第1のピークおよび第2のピークについて説明する図である。
【
図3】本実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【
図4】実施例における各半導体素子の配置位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。なお、図面はあくまで説明用のものである。図面中の各部材の形状や寸法比などは、必ずしも現実の物品と対応するものではない。
【0011】
本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。例えば、「1~5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」を意味する。
【0012】
[銀含有ペースト]
本実施形態に係る銀含有ペーストは、一面側に金属回路層を備える基板における、前記金属回路層上に複数の半導体素子を一括で固定するための銀含有ペーストである。なお、複数の半導体素子を一括で固定するとは、銀含有ペースト上に配置された複数の半導体素子を同時に加圧プレスし、銀含有ペーストを硬化させ、半導体素子を固定することである。この方法は、従来のはんだ接合による半導体素子の固定方法と比較して、複数の半導体素子を同時に固定できるため、半導体素子毎の固定の安定性を均一にできる。例えば、固定後の半導体素子毎の高さが均一となり、ワイヤーボンディングの接続不良等の発生を抑制できる。なお、半導体素子とは、例えば、パワーモジュールで用いられる電力制御用の半導体素子である。
【0013】
銀含有ペーストは、熱処理によりシンタリングを起こして粒子連結構造を形成する銀粒子と、金属粒子を分散させる分散媒と、を含む。なお、基板は、金属回路層と反対側の面に放熱用凸部を備えるものでもよい。
【0014】
複数の半導体素子を一括固定する場合、半導体素子に割れが生じる可能性が出てくる。本発明者は、半導体素子を基板に向けて加圧する際に、複数の半導体素子の間で圧力にばらつきが生じ、このばらつきに起因して半導体素子に割れが発生することを見出した。そして、さらに検討したところ、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定された体積基準の累積度数分布曲線において累積度数が50%である粒子径D50を0.1μm以上10μm以下とし、分散媒の含有量を、5質量%以上20質量%未満とすることで、割れの発生を抑制できることを見出した。
【0015】
詳細なメカニズムは定かでないが、次のようなものが推察される。銀含有ペーストは、硬化する際に分散媒が揮発して接着層となるが、銀粒子の粒子径D50が大きい場合や、揮発する分散媒の量が多い場合には、接着層になる途中又はなった後の銀含有ペーストの表面に凹凸が発生する、と考えられる。そして、この凹凸により、複数の半導体素子の間で圧力のばらつきが生じると考えられる。本実施形態に係る銀含有ペーストは、銀粒子の粒子径D50および分散媒の含有量を調整することで、上記した凹凸の発生を抑制し、その結果、半導体素子の割れの発生を抑制できると考えられる。
【0016】
また、複数の半導体素子を一括固定する場合、銀含有ペーストが所定の塗布領域からはみ出すこと(以下の説明では、「ブリード」とも記載する。)の発生が、複数の半導体素子を有する半導体装置の信頼性の低下の原因となる。これは、塗布領域からはみ出した銀含有ペーストにより、基板の状態が変化し、封止樹脂との密着性が低下することや、はみ出した銀含有ペーストが揮発して、半導体素子を汚染または浸食するためである。
【0017】
上述した、ブリードを抑制するために、以下の手順1により測定されるブリード長が、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることがさらにより好ましい。ブリード長が上記範囲内であることにより、ブリードの発生を抑制できる。なお、ブリード長は、例えば、顕微鏡により測定できる。
[条件1]
・基板上に、2枚のテープを1cmの間隔を空けて平行に貼る。
・前記2枚のテープの間に当該銀含有ペーストを平均厚さ150μmで塗布する。
・10秒後に前記テープを剥がし、前記テープを剥がしてから60秒経過後に、当該銀含有ペーストを塗布した領域から、前記テープを貼っていた領域へ当該銀含有ペースト又は前記分散媒がはみ出した長さの最大値をブリード長とする。
【0018】
図1を用いて、上記の条件1について説明する。まず、基板10に、テープ2を、幅T1が1cmとなるように貼る(S11)。次に、テープ2の間に、銀含有ペースト20を平均厚さ150μm、長さT2が1cmになるように塗布する(S12)。その後10秒経過したときにテープ2を剥がし、さらに60秒経過したときの銀含有ペースト20を塗布した領域から、テープ2を貼っていた領域へ銀含有ペースト20又は分散媒がはみ出した長さの最大値(T3)をブリード長として測定する(S13)。
【0019】
以下、銀含有ペーストの各成分の詳細について説明する。
【0020】
(銀粒子)
本実施形態に係る銀含有ペーストに含まれる銀粒子は、銀含有ペーストに対して熱処理することによりシンタリングを起こして、粒子連結構造を形成する。すなわち、銀含有ペーストを加熱して得られる接着層において、隣接する銀粒子同士は互いに融着して存在することとなる。これにより、銀含有ペーストを加熱して得られる接着層について、その熱伝導性や導電性、基材や半導体素子、放熱板等への密着性を向上させることができる。
【0021】
本実施形態に係る銀粒子は、全体が銀により構成されている粒子と、表面が銀に被膜されている粒子の両方を含む。表面が銀に被膜されている粒子とは、例えば、シリコーン樹脂粒子等の樹脂粒子の表面に銀が被覆された、銀被覆樹脂粒子である。
【0022】
上記した、銀被膜樹脂粒子は、例えば、メチルクロロシラン、トリメチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン等のオルガノクロロシランを重合させることにより得られるオルガノポリシロキサンにより構成されている粒子(シリコーン樹脂粒子)を銀で被覆したものである。または、上記のオルガノポリシロキサンをさらに三次元架橋した構造を基本骨格としたシリコーン樹脂により構成されるシリコーン樹脂粒子の表面を銀で被覆したものである。
【0023】
また、シリコーン樹脂粒子は、各種官能基を含むものでもよい。官能基としてはエポキシ基、アミノ基、メトキシ基、フェニル基、カルボキシル基、水酸基、アルキル基、ビニル基、メルカプト基等があげられるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
なお、「シリコーン樹脂粒子の表面に銀が被覆された」とは、シリコーン樹脂粒子の表面の少なくとも一部の領域を銀が覆っていることをいう。このため、シリコーン樹脂粒子の表面の全面を覆っている態様には限られず、たとえば特定の断面から見たときに表面全面を覆っている態様や、表面の特定の領域を覆っている態様(例えば、シリコーン樹脂粒子の表面に銀からなる金属層が形成されている態様)も含む。
【0025】
銀粒子の形状は、特に限定されないが、例えば、球状、樹状、紐状、フレーク状、凝集状、および多面体形状等である。銀粒子の焼結性を向上させる観点、およびシンタリングの均一性を向上させる観点から、球状の銀粒子が含まれることが好ましい。また、コストを低減させる観点からは、フレーク状の銀粒子が含まれることが好ましい。
【0026】
銀粒子は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定された体積基準の累積度数分布曲線において累積度数が50%である粒子径D50が、0.1μm以上であることが好ましく、1.0μm以上であることがより好ましく、2.0μm以上であることがさらにより好ましい。また、銀粒子は、粒子径D50が、10μm以下であることが好ましく、8.0μm以下であることがより好ましく、5.0μm以下であることがさらにより好ましく、5.0μm以下であることが特により好ましく、3.0μm以下であることが最もより好ましい。
【0027】
図2に示すように、銀粒子は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定された体積基準の粒度分布において、第1のピークおよび第2のピークを有することが好ましい。なお、第1のピークが位置する粒径よりも、第2のピークが位置する粒径の方が大きいものとする。
【0028】
また、第1のピークは、1μm未満に位置し、第2のピークは1μm以上20μm以下に位置する、ことが好ましい。
【0029】
銀含有ペースト中における銀粒子の含有量は、たとえば銀含有ペースト全体に対して70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。これにより、銀粒子の焼結性を向上させ、熱伝導性と導電性を向上させることができる。一方で、銀含有ペースト中における銀粒子の含有量の割合は、例えば、銀含有ペースト全体に対して98重量%以下であることが好ましく、95重量%以下であることがとくに好ましい。これにより、銀含有ペースト全体の塗布作業性や、接着剤層の機械強度等を向上できる。
【0030】
[分散媒]
本実施形態に係る銀含有ペーストに含まれる分散媒は、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、メチルメトキシブタノール、α-ターピネオール、β-ターピネオール、へキシレングリコール、ベンジルアルコール、2-フェニルエチルアルコール、イゾパルミチルアルコール、イソステアリルアルコール、ラウリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチルプロピレントリグリコール、グリセリン等のアルコール類;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール(4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン)、2-オクタノン、イソホロン(3、5、5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オン)、ジイソブチルケトン(2、6-ジメチル-4-ヘプタノン)等のケトン類;
酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、アセトキシエタン、酪酸メチル、ヘキサン酸メチル、オクタン酸メチル、デカン酸メチル、メチルセロソルブアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、1,2-ジアセトキシエタン、リン酸トリブチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリペンチル等のエステル類;
テトラヒドロフラン、ジプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、エトキシエチルエーテル、1,2-ビス(2-ジエトキシ)エタン、1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタン、トリプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル等のエーテル類;
酢酸2-(2ブトキシエトキシ)エタン等のエステルエーテル類;
2-(2-メトキシエトキシ)エタノール等のエーテルアルコール類;
トルエン、キシレン、n-パラフィン、イソパラフィン、ドデシルベンゼン、テレピン油、ケロシン、軽油等の炭化水素類;
アセトニトリルもしくはプロピオニトリル等のニトリル類;
アセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド類;
低分子量の揮発性シリコンオイル、揮発性有機変成シリコンオイル等のシリコンオイル類等からなる群から選択される1種または2種以上の組み合わせを用いることができる。
分散媒としては、特に、水酸基を有するトリプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、およびエチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテルを用いることが好ましい。
【0031】
銀含有ペースト中における分散媒の含有量は、たとえば銀含有ペースト全体に対して3質量%以上であることが好ましく5質量%以上であることがより好ましい。これにより、銀含有ペーストの塗布性を向上させることができる。一方で、銀含有ペースト中における分散媒の含有量の割合は、例えば、銀含有ペースト全体に対して20質量%未満であることが好ましく、16質量%未満であることがより好ましく、11質量%未満であることがさらにより好ましい。これにより、半導体素子の割れの発生、およびブリードの発生を抑制できる。
【0032】
本実施形態に係る分散媒は、熱分解性樹脂を含んでもよい。ここで、熱分解性とは銀含有ペーストの焼結温度(例えば、230~260℃)で分解し消失することを意味し、分解後に消失する(炭化物などの残渣を残さない)ことが好ましい。分散媒中に熱分解性樹脂を含むことにより、さらに接続信頼性により優れた接合体(半導体装置)を提供することができる。なお、分散媒が、熱分解性樹脂を含む場合、上述した分散媒の含有量は、熱分解性樹脂を含めての含有量を意味する。
【0033】
熱分解性樹脂としては、エチルセルロース、アクリレート化合物を用いることができる。アクリレート化合物は、官能基を含むアクリレート化合物と、官能基を含まないアクリレート化合物の両方を含む。官能基は、例えば、エポキシ基、アミノ基、メトキシ基、フェニル基、カルボキシル基、水酸基、アルキル基、ビニル基、メルカプト基等である。
【0034】
銀含有ペースト中における熱分解性樹脂の含有量は、たとえば銀含有ペースト全体に対して0.3質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。これにより、銀粒子の焼結性を向上させ、熱伝導性と導電性を向上させることができる。一方で、銀含有ペースト中における熱分解性樹脂の含有量の割合は、例えば、銀含有ペースト全体に対して1質量%以下であることが好ましく、0.8質量%以下であることがさらに好ましい。これにより、銀含有ペースト全体の塗布作業性や、接着剤層の機械強度等を向上できる。
【0035】
[半導体装置の製造方法]
本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、金属回路層を備える基板を準備する準備工程と、金属回路層上に複数の半導体素子を、銀含有ペーストを用いて一括固定する実装工程と、を含む。また、半導体素子及び金属回路層を封止樹脂にて封止する、封止工程をさらに含んでもよい。
【0036】
図3は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。まず、金属回路層11を備える基板10を準備する(S21)。基板10は、金属回路層11の反対側の面に放熱用凸部12を備えるものでもよい。
【0037】
次に、基板10の金属回路層11のうち、複数の半導体素子1を固定する位置に、銀含有ペースト20を配置する(S22)。銀含有ペースト20は、例えば、スクリーン印刷法により配置される。銀含有ペースト20は、例えば、120μm~180μmの厚さで配置される。
【0038】
次に、銀含有ペースト20の上に、複数の半導体素子1をそれぞれ搭載し、銀含有ペースト20を熱処理することにより、複数の半導体素子1を金属回路11に固定する(S23)。
【0039】
次に、半導体素子1を封止樹脂30にて封止する(S24)。封止樹脂30としては、一般的な封止用エポキシ樹脂を用いることができる。
【実施例0040】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0041】
各実施例・比較例の各原料成分の、銀含有ペースト100質量%に対する質量%の値を表1に示す。
・熱分解性樹脂(1):メタクリル系樹脂粒子
・分散媒(1):トリプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル
・分散媒(2):エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル
・銀粉(1):フレーク状、平均粒径(D50)0.8μm
・銀粉(2):フレーク状、平均粒径(D50)25.0μm
・銀粉(3):フレーク状、平均粒径(D50)8.0μm
・銀粉(4):フレーク状、平均粒径(D50)2.0μm
【0042】
【0043】
[銀含有ペーストの作製]
各実施例・比較例について、表1に示す配合量の各原料成分を、常温で、3本ロールミルで混練することで銀含有ペーストを得た。
【0044】
[測定]
<D50>
各実施例・比較例について、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定された体積基準の累積度数分布曲線において累積度数が50%である粒子径D50を測定した。測定したD50の値を表1に示す。
【0045】
<ブリード長>
各実施例・比較例について、以下の手順1により、ブリード長を測定した。測定したブリード長の結果を、表1に示す。なお、ブリード長は、顕微鏡により測定した。
[条件1]
・基板上に、2枚のテープを1cmの間隔を空けて平行に貼る。
・前記2枚のテープの間に当該銀含有ペーストを平均厚さ150μmで塗布する。
・10秒後に前記テープを剥がし、前記テープを剥がしてから60秒経過後に、当該銀含有ペーストを塗布した領域から、前記テープを貼っていた領域へ当該銀含有ペースト又は前記分散媒がはみ出した長さの最大値をブリード長とする。
【0046】
[評価]
各実施例・比較例の銀含有ペーストを用いて、それぞれ計12個の半導体素子を基板上に一括固定した。
(半導体素子)
・シリコンチップ大(10.6mm×10.6mm×0.09mm) 6個
・シリコンチップ小(10.6mm×6.2mm×0.09mm) 6個
(基板)
・銅張積層板(住友ベークライト社製LAZ-4785TH-G、厚み0.15mm、銅箔12μm)
【0047】
図4に各半導体素子の配置位置を示す。
図4に示すように、基板10における、20mm×36mmの2つの領域に銀含有ペースト20をスクリーン印刷法により配置した。そして、シリコンチップ大1aと、シリコンチップ小1bを交互に一つずつ配置した。その後、下記条件にて加圧プレスすることにより、半導体素子を固定した。
・温度条件:260℃
・圧力条件:10.0MPa
・加圧時間:5min
【0048】
<表面凹凸>
加圧プレス後の、半導体素子の表面の凹凸を、目視により測定した。測定した結果を表1に示す。「Good」は、表面に一切の凹凸が見られなかったことを示し、「Bad」は、表面に一部凹凸が見られたことを示す。
【0049】
<半導体素子の割れ>
12個の半導体素子のうち、加圧プレス後に割れた個数を測定した。測定した結果を表1に示す。
【0050】
<ブリード有無>
加圧プレス後、24時間経過時のブリードの有無を測定した。測定した結果を表1に示す。「Good」は、ブリードの長さが10μm未満であることを示し、「Average」は、ブリードの長さが10μm以上30μm以下であることを示し、「Bad」は、ブリードの長さが30μmを超えることを示す。
【0051】
表1に示す結果から、実施例に係る銀含有ペーストによれば、銀粒子の粒子径D50が1μm以上20μm以下であり、分散媒の含有量が、5質量%以上20質量%未満であることにより、半導体素子の割れおよびブリードの発生を抑制できる。さらに、ブリード長が10μm以下の実施例の場合は、封止後のブリードの発生を抑制し、半導体装置の信頼性をより向上させることができる。