(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180109
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】半導体ウェハの温度測定方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20241219BHJP
H01L 21/265 20060101ALI20241219BHJP
H01L 21/22 20060101ALI20241219BHJP
G01K 7/42 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
H01L21/66 P
H01L21/265 Q
H01L21/265 W
H01L21/22 501N
H01L21/66 T
G01K7/42 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099563
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100213654
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 晃樹
(72)【発明者】
【氏名】岡田 俊祐
(72)【発明者】
【氏名】西尾 吉史
【テーマコード(参考)】
4M106
【Fターム(参考)】
4M106AA01
4M106AA10
4M106BA02
4M106BA04
4M106CA31
4M106CA48
4M106DH44
4M106DJ20
(57)【要約】
【課題】半導体ウェハの温度をより適切に測定することができる半導体ウェハの温度測定方法を提供する。
【解決手段】本実施形態による半導体ウェハの温度測定方法は、第1面を有するウェハの第1面側にアモルファス層を形成するように、ウェハの第1面に不純物を導入することを具備する。本温度測定方法は、アモルファス層の膜厚である第1膜厚を測定することを具備する。本温度測定方法は、アモルファス層の一部が再結晶化するように、ウェハを熱処理することを具備する。本温度測定方法は、熱処理後のアモルファス層の膜厚である第2膜厚を測定することを具備する。本温度測定方法は、第1膜厚と第2膜厚との膜厚差に基づいて、熱処理時におけるウェハの温度を測定することを具備する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面を有するウェハの前記第1面側にアモルファス層を形成するように、前記ウェハの前記第1面に不純物を導入し、
前記アモルファス層の膜厚である第1膜厚を測定し、
前記アモルファス層の一部が再結晶化するように、前記ウェハを熱処理し、
熱処理後の前記アモルファス層の膜厚である第2膜厚を測定し、
前記第1膜厚と前記第2膜厚との膜厚差に基づいて、熱処理時における前記ウェハの温度を測定する、
ことを具備する、半導体ウェハの温度測定方法。
【請求項2】
再結晶化する前記アモルファス層の結晶成長速度が所望の速度となるように、前記ウェハの前記第1面に前記不純物を導入する、ことをさらに具備する、請求項1に記載の半導体ウェハの温度測定方法。
【請求項3】
熱処理時における温度に応じた前記不純物の元素または濃度で、前記ウェハの前記第1面に前記不純物を導入する、ことをさらに具備する、請求項2に記載の半導体ウェハの温度測定方法。
【請求項4】
前記不純物の元素は、Si、Ge、P、As、Ar、および、Sbのうち少なくとも1つを含む、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の半導体ウェハの温度測定方法。
【請求項5】
前記第1面を覆うカバー膜を形成することなく、前記ウェハに前記不純物を導入する、ことをさらに具備する、請求項1に記載の半導体ウェハの温度測定方法。
【請求項6】
前記ウェハを、所定時間以上、熱処理することをさらに具備する、請求項1に記載の半導体ウェハの温度測定方法。
【請求項7】
前記膜厚差に基づいて、熱処理時における前記ウェハの温度を測定することは、
前記膜厚差と、熱処理時における前記ウェハの温度と、の間の予め設定された関係に基づいて、前記膜厚差を熱処理時における前記ウェハの温度に換算する、
ことを具備する、請求項1に記載の半導体ウェハの温度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、半導体ウェハの温度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バッチアニール炉等の炉を用いたアニール工程では、炉内の位置による半導体ウェハの温度差が、歩留まりまたは特性劣化に影響を与える要因となる。炉内の温度は、炉内の位置に応じた温度プロファイルで制御される。しかし、温度プロファイル上では同等に見えていても、半導体ウェハの実温度に差が発生する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-232142号公報
【特許文献2】特開2010-129773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体ウェハの温度をより適切に測定することができる半導体ウェハの温度測定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態による半導体ウェハの温度測定方法は、第1面を有するウェハの第1面側にアモルファス層を形成するように、ウェハの第1面に不純物を導入することを具備する。本温度測定方法は、アモルファス層の膜厚である第1膜厚を測定することを具備する。本温度測定方法は、アモルファス層の一部が再結晶化するように、ウェハを熱処理することを具備する。本温度測定方法は、熱処理後のアモルファス層の膜厚である第2膜厚を測定することを具備する。本温度測定方法は、第1膜厚と第2膜厚との膜厚差に基づいて、熱処理時におけるウェハの温度を測定することを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態による半導体ウェハの温度測定方法の一例を示すフロー図。
【
図2】第1実施形態による半導体ウェハの温度測定方法の一例を示す断面図。
【
図3】第1実施形態による温度換算表の一例を示すグラフ。
【
図4】第1実施形態による温度測定結果の一例を示すグラフ。
【
図5】第2実施形態による再結晶化するアモルファス層の結晶成長速度の一例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。明細書と図面において、既出の図面に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態による半導体ウェハWの温度測定方法の一例を示すフロー図である。
図2は、第1実施形態による半導体ウェハWの温度測定方法の一例を示す断面図である。バッチアニール炉等の炉内における、アニール時の半導体ウェハWの実温度が、
図1および
図2に従って測定される。
【0009】
まず、半導体ウェハWにイオン注入を行う(S10)。より詳細には、面Fを有する半導体ウェハWの面F側にアモルファス層20を形成するように、半導体ウェハWの面Fに不純物を導入(注入)する。
【0010】
半導体ウェハWは、半導体基板10を有する。半導体基板10は、例えば、単結晶のシリコン(Si)基板である。注入ダメージによって、半導体基板10の一部にアモルファス層20が形成される。
図2に示すように、Pを含む、膜厚Ini
aSiのアモルファスSi層(アモルファス層20)が半導体ウェハWの面F(上面)側に形成される。膜厚Ini
aSiは、イオン注入後、アニール前におけるアモルファス層20の膜厚である。
【0011】
イオン注入のドーパント(不純物)は、例えば、P+である。しかし、ドーパントは、P+に限られない。イオン注入のエネルギーは、例えば、20keVである。例えば、アモルファス層20の膜厚が6nm以上となる注入条件で行われる。イオン注入のドーズ量は、例えば、1×1015ions/cm2である。尚、アモルファス層20における不純物の濃度は、例えば、1×1019atoms/cm3以上である。
【0012】
次に、アモルファス層20の膜厚IniaSiを測定する(S20)。膜厚の測定は、例えば、分光エリプソメトリにより行われる。しかし、これに限られず、膜厚の測定は、TEM(Transmission Electron Microscope)観察またはSEM(Scanning Electron Microscope)観察等により行われてもよい。
【0013】
次に、半導体ウェハWを炉内でアニールする(S30)。より詳細には、アモルファス層20の一部が再結晶化するように、半導体ウェハWを熱処理する。
【0014】
アニールにより、単結晶の半導体基板10と接するアモルファス層20が再結晶化される。
図2に示すように、アモルファス層20の膜厚が膜厚Aft
aSiに変化する。膜厚Aft
aSiは、アニール後におけるアモルファス層20の膜厚である。アモルファス層20の膜厚の変化量は、処理時間が固定される場合、結晶成長(固相エピタキシャル成長)の速度に依存する。
【0015】
アニールは、不活性雰囲気中で、任意の処理温度および処理時間で行われる。アニールは、例えば、N2雰囲気中で、400℃および240分の条件で行われる。
【0016】
次に、アモルファス層20の膜厚AftaSiを測定する(S40)。ステップS40における膜厚の測定は、ステップS20と同じ方法により行われる。測定された膜厚IniaSiおよび膜厚AftaSiから、膜厚差Δ(IniaSi-AftaSi)が算出される。
【0017】
次に、膜厚差Δを温度に換算する(S50)。すなわち、膜厚差Δに基づいて、熱処理時における半導体ウェハWの温度を測定する。より詳細には、膜厚差Δと、熱処理時における半導体ウェハWの温度と、の間の予め設定された関係に基づいて、膜厚差Δを熱処理時における半導体ウェハWの温度に換算する。
【0018】
図3は、第1実施形態による温度換算表の一例を示すグラフである。グラフの縦軸は、温度(炉の設定温度)を示す。グラフの横軸は、膜厚差Δを示す。
【0019】
図3に示す4つのデータ点は、予め実行される、膜厚差Δと温度との関係(膜厚の変動量の温度感度)の測定結果を示す。炉の設定温度を400℃でアニールを行う場合、温度と膜厚差Δとの関係の測定では、400℃を含む温度範囲から複数の設定温度が選択される。
図3に示す例では、394℃、397℃、400℃、および、403℃の4つの温度が設定温度として選択されている。
【0020】
図3に示す点線は、4つのデータ点をフィッティングした結果を示す。フィッティングによって、多項式が得られる。フィッティングにより得られた多項式に、ステップS40で算出される膜厚差Δを代入することにより、膜厚差Δを温度に換算することができる。
【0021】
図4は、第1実施形態による温度測定結果の一例を示すグラフである。グラフの縦軸は、温度(実温度、または、ステップS50における換算後の温度)を示す。グラフの横軸は、炉内位置を示す。
図4に示す例では、複数の半導体ウェハWを熱処理するバッチアニール炉の最上部から底部までの5つの炉内位置(TOP、C-T、CNT、C-B、BTM)が示されている。
【0022】
図4に示すように、5つの炉内位置における半導体ウェハWの温度が測定される。これにより、400℃の設定温度に対する、バッチアニール炉内の温度分布を得ることができる。
【0023】
以上のように、第1実施形態によれば、膜厚差Δに基づいて、熱処理時における半導体ウェハWの温度を測定する。これにより、半導体ウェハWの温度をより高精度に、また、より簡便に測定することができる。
【0024】
また、同じ半導体ウェハWでアニール前後の膜厚差Δを用いるため、炉内位置評価などの場合に、半導体ウェハWのサンプル間ばらつきの影響を抑制することができる。これにより、より高精度に半導体ウェハWの温度を測定することができる。
【0025】
また、第1実施形態では、不純物を導入する前に、面Fを覆うカバー膜は形成されない。カバー膜は、例えば、保護膜である。カバー膜は、例えば、酸化膜を含む。カバー膜は、例えば、導電性金属膜をさらに含む場合がある。
【0026】
尚、アニール温度(処理温度)は、400℃に限られず、100℃以上700℃以下であってもよい。
【0027】
炉内の温度をより高精度の測定する方法として、熱電対付きの温度測定用モニタウェハが用いられる場合がある。しかし、温度測定用モニタウェハは、高額であり、また、条件出し用途で使用することが難しい場合がある。
【0028】
これに対して、第1実施形態では、温度測定用モニタウェハを用いることなく、より簡便に炉内の温度を測定することができる。
【0029】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態による再結晶化するアモルファス層20の結晶成長速度の一例を示すグラフである。第2実施形態は、アニールの条件に応じてドーパントの元素(元素種)および濃度が変更される点で、第1実施形態とは異なっている。
【0030】
グラフの縦軸は、結晶成長速度(固相エピタキシャル成長速度)を示す。グラフの横軸は、アニール温度をTとした1000/Tを示す。
図5に示す例では、ドーパントとして、P
+、Ge、Si、および、Arが示されている。尚、P
+は、1×10
15ions/cm
2、3×10
15ions/cm
2、および、5×10
15ions/cm
2のドーズ量で行われている。また、SiおよびGeのデータ点と重なる直線は、Si(100)の文献値である。
【0031】
第2実施形態では、ステップS10において、再結晶化するアモルファス層20の結晶成長速度が所望の速度となるように、半導体ウェハWの面Fに不純物を導入する。より詳細には、熱処理時における温度に応じた不純物の元素または濃度で、半導体ウェハWの面Fに不純物を導入する。尚、アニールの処理時間は固定されている。
【0032】
図5に示すように、1000/Tと結晶成長速度(対数目盛)との間に、直線の関係が存在する。従って、アニール温度Tが高いほど結晶成長速度が高くなる。一方、アニール温度Tが低いほど結晶成長速度が低くなる。
【0033】
まず、結晶成長速度とドーパントの元素との関係について説明する。
【0034】
ドーパントの元素を変更することによって、アニール温度Tと結晶成長速度との関係を示す直線が平行移動する。Arは、Si(100)の文献値に対して、結晶成長速度を減速させる。Pは、Si(100)の文献値に対して、結晶成長速度を増速させる。
【0035】
結晶成長速度が速い場合、アニール中に結晶成長が半導体ウェハWの最表面まで進んでしまう可能性がある。この場合、膜厚差Δを温度換算に利用することができなくなってしまう。一方、結晶成長速度が遅い場合、膜厚測定の精度によっては、温度測定に十分な膜厚差Δを得ることが難しい可能性がある。
【0036】
そこで、結晶成長速度が所望の速度範囲内になるように、ドーパントの元素が変更される。これにより、温度評価が行われる温度帯に応じて、半導体ウェハWの温度をより適切に測定することができる。例えば、アニール温度Tが高いほど結晶成長速度が速くなるため、結晶成長速度を減速させるドーパントが選択される。結晶成長速度を減速させるドーパントは、例えば、Arである。一方、アニール温度Tが低いほど結晶成長速度が遅くなるため、結晶成長速度を増速させるドーパントが選択される。結晶成長速度を増速させるドーパントは、例えば、Pである。
【0037】
尚、ドーパントの元素は、例えば、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、リン(P)、ヒ素(As)、アルゴン(Ar)、および、アンチモン(Sb)のうち少なくとも1つ以上から選択されてもよい。
【0038】
次に、結晶成長速度とドーパントの濃度との関係について説明する。
【0039】
ドーパントの濃度(ドーズ量)を変化させることによっても、アニール温度Tと結晶成長速度との関係を示す直線が平行移動する。尚、ドーパントの濃度の変化による結晶成長速度の変化は、ドーパントの元素の変化による結晶成長速度の変化よりも小さい。
図5に示す例では、P
+のドーズ量(濃度)が高くなるほど、結晶成長速度が増速する。一方、P
+のドーズ量(濃度)が低くなるほど、結晶成長速度が減速する。
【0040】
結晶成長速度が所望の速度範囲内になるように、ドーパントの濃度が変更されてもよい。
【0041】
また、半導体ウェハWは、所定時間以上、熱処理される。バッチアニール炉では、例えば、数十分~数時間の比較的長時間の熱処理が行われる。Ar、Pといった元素種を用いる場合、比較的長時間の熱処理でも、半導体ウェハWの温度測定が可能である。
【0042】
第2実施形態のように、アニールの条件に応じてドーパントの元素(元素種)および濃度が変更されてもよい。第2実施形態による半導体ウェハWの温度測定方法は、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0044】
10 半導体基板、20 アモルファス層、F 面、W 半導体ウェハ、IniaSi 膜厚、AftaSi 膜厚、Δ 膜厚差