IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルトリスト株式会社の特許一覧

特開2024-18011フィルム取扱い用ノズル及びフィルム取扱い装置
<>
  • 特開-フィルム取扱い用ノズル及びフィルム取扱い装置 図1
  • 特開-フィルム取扱い用ノズル及びフィルム取扱い装置 図2
  • 特開-フィルム取扱い用ノズル及びフィルム取扱い装置 図3
  • 特開-フィルム取扱い用ノズル及びフィルム取扱い装置 図4
  • 特開-フィルム取扱い用ノズル及びフィルム取扱い装置 図5
  • 特開-フィルム取扱い用ノズル及びフィルム取扱い装置 図6
  • 特開-フィルム取扱い用ノズル及びフィルム取扱い装置 図7
  • 特開-フィルム取扱い用ノズル及びフィルム取扱い装置 図8
  • 特開-フィルム取扱い用ノズル及びフィルム取扱い装置 図9
  • 特開-フィルム取扱い用ノズル及びフィルム取扱い装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018011
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】フィルム取扱い用ノズル及びフィルム取扱い装置
(51)【国際特許分類】
   B65B 69/00 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
B65B69/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121040
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】511087372
【氏名又は名称】アルトリスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144509
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 洋三
(74)【代理人】
【識別番号】100158023
【弁理士】
【氏名又は名称】牛田 竜太
(72)【発明者】
【氏名】天野 光明
【テーマコード(参考)】
3E058
【Fターム(参考)】
3E058AA04
3E058CB02
3E058FA08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】フィルムを吸引した状態で、フィルム表面を円滑に移動することができるフィルム取扱い用ノズルと、それを有するフィルム取扱い装置を提供する。
【解決手段】フィルム取扱い用ノズル1は、フィルムを吸引するための吸引口2aが設けられた本体部2と、吸引口2aの周縁に吸引口2aを囲むように設けられ、吸引口2aから空気が吸い込まれる吸引方向と反対の延出方向に突出する周囲壁3と、周囲壁3に囲まれた領域内であって吸引口2aが形成された底面23と、を有しており、周囲壁3と底面23とで囲まれた空間によってフィルム保持空間3aが規定されている。フィルム取扱い用ノズル1によってフィルムを吸引するとき、フィルムがフィルム保持空間3aに湾曲するように入り込むため、フィルムを確実に保持することができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムを吸引することにより前記フィルムを保持するフィルム取扱い用ノズルであって、
前記フィルムを吸引するための吸引口が形成された本体部と、
前記吸引口の周縁に前記吸引口を囲むように設けられ、前記吸引口から空気が吸い込まれる吸引方向と反対の延出方向に突出する周囲壁と、
前記周囲壁に囲まれた領域内であって前記吸引口が形成された底面と、を有し、
前記周囲壁と、前記底面と、で囲まれた空間によってフィルム保持空間が規定されていることを特徴とするフィルム取扱い用ノズル。
【請求項2】
前記周囲壁の前記延出方向の端部は、平滑な仮想平面上に位置していることを特徴とする請求項1に記載のフィルム取扱い用ノズル。
【請求項3】
前記周囲壁において、前記本体部に接続される基部から前記延出方向の端部までの高さは、いずれの場所においても同一であることを特徴とする請求項1に記載のフィルム取扱い用ノズル。
【請求項4】
前記周囲壁は、前記吸引方向から見て円弧形状をなす円弧部が設けられることにより前記前記吸引口を囲んでいることを特徴とする請求項1に記載のフィルム取扱い用ノズル。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のフィルム取扱い用ノズルと、
前記フィルム取扱い用ノズルに接続され、前記吸引口から空気を吸引する吸引装置と、
前記フィルム取扱い用ノズルに接続され、前記フィルム取扱い用ノズルを操作する制御アームと、を有することを特徴とするフィルム取扱い装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフィルム取扱い用ノズル及びフィルム取扱い装置に関し、特に箱体の内袋等としてのフィルムを取扱う場合に適したフィルム取扱い用ノズル及びフィルム取扱い装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、合成樹脂製の可塑袋に物品を蓄積し、口部付近を多重に巻き返して幅方向の両端部を互いに接近するように折り返した状態で函体に収納する方法が知られている(特許文献1)。この函体から物品を取り出すときは、パイプ形状の吸引ポートで可塑体を吸引しながら上方に引き上げることにより可塑袋の口部を開き、物品にアクセスする。これにより、可塑袋が口部付近で多重に巻き返されている場合であっても、吸引ポートで吸引しながら上方に上昇させ、口部を開くことができる。
【0003】
また、ケース体内に物品が収納された袋体を開口させる袋体開口装置が知られている(特許文献2)。この袋体開口装置は、筒状の吸着手段が袋体を吸着保持した状態のまま上昇して袋体を開口し、折返手段が開口の内側に位置して開口を広げるとともに下方に移動して袋体をケース体の外側に折り返す。折返手段が開口を広げて袋体を折り返すため、袋体が破損し難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-204048号公報
【特許文献2】特開2009-137652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のパイプ状の吸引ポートが可塑袋を吸引した状態で可塑袋上を移動するとき、可塑袋の皺や折れ等によって吸引ポートの吸込口と可塑袋とが離間するという問題があった。特許文献2においても同様に、筒状の吸着手段が袋体を吸着したまま上昇するとき、皺等によって吸着手段と袋体とが離間することがあった。
【0006】
合成樹脂製のフィルム等の可塑性を有する素材を吸着する吸引ホースの先端に取り付けられるフィルム取扱い用ノズルとしては、特許文献1及び2に記載の形状の他に、図9に示すようなフィルム取扱い用ノズル221が知られている。かかるフィルム取扱い用ノズル221は、上部に斜め前下方向に傾斜した当接面223が設けられ、当接面223に複数の吸引口202aが形成されている。フィルム取扱い用ノズル221の下部に、空気を吸い込む図示せぬ吸引ホースが接続され、フィルム取扱い用ノズル221内を減圧することによって吸引口202aからフィルムを吸引し、当接面223でフィルムを保持する。
【0007】
フィルム取扱い用ノズル221でフィルム12を吸引した際にフィルム12が離間する場合について、図10を参照して説明する。
図10(a)に示すように、フィルム取扱い用ノズル221でフィルム12を吸引して、当接面223をフィルム12の表面に当接させつつ滑らせながら図中の矢印の方向に移動する際、フィルム12に存在する皺12等によって、図10(b)に示すようにフィルム取扱い用ノズル221の吸引孔202aが形成された当接面223と、フィルム12とが部分的に離間してしまうことがある。これにより、その離間した空間から矢印で示すように空気が吸い込まれることで、フィルム12と当接面223との吸着力が下がってしまうため、図10(c)に示すように、フィルム取扱い用ノズル221とフィルム12とが完全に離間するという問題が生ずる。
【0008】
そこで、本発明は、フィルムを吸引した状態でフィルムの表面を円滑に移動することができるフィルム取扱い用ノズルを提供することを目的とする。さらに、かかるフィルム取扱い用ノズルを有するフィルム取扱い装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために第1の発明は、フィルムを吸引することにより前記フィルムを保持するフィルム取扱い用ノズルであって、前記フィルムを吸引するための吸引口が設けられた本体部と、前記吸引口の周縁に前記吸引口を囲むように設けられ、前記吸引口から空気が吸い込まれる吸引方向と反対の延出方向に突出する周囲壁と、前記周囲壁に囲まれた領域内であって前記吸引口が形成された底面と、を有し、前記周囲壁と、前記底面と、で囲まれた空間によってフィルム保持空間が規定されていることを特徴とするフィルム取扱い用ノズルを提供している。
【0010】
第2の発明では、第1の発明に記載されたフィルム取扱い用ノズルであって、前記周囲壁の前記延出方向の端部は、平滑な仮想平面上に位置していることを特徴としている。
【0011】
第3の発明では、第1の発明に記載されたフィルム取扱い用ノズルであって、前記周囲壁において、前記本体部に接続される基部から前記延出方向の端部までの高さは、いずれの場所においても同一であることを特徴としている。
【0012】
第4の発明では、第1の発明に記載されたフィルム取扱い用ノズルであって、前記周囲壁は、前記吸引方向から見て円弧形状をなす円弧部が設けられることにより前記吸引口を囲んでいることを特徴としている。
【0013】
第5の発明では、第1の発明から第4の発明のいずれか記載のフィルム取扱い用ノズルと、前記フィルム取扱い用ノズルに接続され、前記吸引口から空気を吸引する吸引装置と、前記フィルム取扱い用ノズルに接続され、前記フィルム取扱い用ノズルを操作する制御アームと、を有することを特徴とするフィルム取扱い装置を提供している。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明によると、吸引口を囲むように周囲壁が設けられ周囲壁と底面とによってフィルム保持空間が規定されるため、吸引口から吸引されたフィルムが湾曲するようにフィルム保持空間内に位置することとなり、フィルム取扱い用ノズルがフィルムを吸引する領域が増加する。具体的には、周囲壁の内面と底面とによって囲まれたフィルム保持空間に断面形状が略U字状に湾曲するようにフィルムが入り込むため、フィルムの表面におけるフィルム取扱い用ノズルによって吸引される領域が増加する。これにより、フィルムの一部がフィルム取扱い用ノズルから離間したとしても、フィルムのフィルム保持空間に入り込んだ他の領域によってフィルム取扱い用ノズルに保持され続けるため、フィルム取扱い用ノズルがフィルムから完全に離間してしまうという問題の発生を防ぐことができる。
また、周囲壁が吸引方向と反対の延出方向に突出しているため、フィルム保持空間を広く確保することができ、さらに、周囲壁が吸引口を囲むように設けられているため、吸引口に部分的に壁が設けられている場合と比較して、閉じられたフィルム保持空間を確保することができる。これにより、フィルム取扱い用ノズルが一定以上の保持力でフィルムを保持することができ、フィルム取扱い用ノズルがフィルムから離間することを抑制できる。
また、周囲壁の高さ等の設定を変更してフィルム保持空間の容積を調整することで、フィルム取扱い用ノズルのフィルムに対する保持力を適宜に変更することができるため、フィルム取扱い用ノズルがフィルム表面を円滑に移動できるように最適化することができる。
さらに、フィルム保持空間に底面が存在しているため、吸引されたフィルムが過剰にフィルム取扱い用ノズルの内部に入り込むことを防ぐことができる。
【0015】
第2の発明によると、周囲壁の端部が平滑な仮想平面上に位置しているため、フィルム取扱い用ノズルがフィルムを吸引する際、端部をフィルムの表面に平行に押し当てることができる。これにより、フィルム取扱い用ノズルでフィルムを吸引する際にフィルム保持空間がフィルムによって確実に閉じられるため、フィルム取扱い用ノズルからフィルムをより離間し難くすることができる。
【0016】
第3の発明によると、周囲壁の基部から端部までの高さは同一であるため、フィルム取扱い用ノズルがフィルムを吸引する際、端部をフィルムに平行に押し当てることができる。これにより、フィルム取扱い用ノズルでフィルムを吸引する際にフィルム保持空間がフィルムによって確実に閉じられるため、フィルム取扱い用ノズルからフィルムをより離間し難くすることができる。
【0017】
第4の発明によると、周囲壁には円弧状の円弧部が設けられているため、フィルム取扱い用ノズルがフィルムに接触した際に引っ掛かりが生じ難く、フィルムの損傷や破損を防ぐことができる。これにより、フィルムによって包装されている内容物の漏れや損傷も防ぐことができる。
【0018】
第5の発明によると、フィルム取扱い装置が周囲壁によってフィルム保持空間が規定されたフィルム取扱い用ノズルを有しているため、箱体の内袋の開梱や梱包を行う際に、内袋がフィルム取扱い用ノズルから離間して落下するという問題の発生を防ぐことができる。これにより、フィルム取扱い装置の稼働時の開梱ミスや梱包ミスを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態によるフィルム取扱い装置の概略図。
図2】本発明の実施の形態によるフィルム取扱い装置の概略図。
図3】本発明の実施の形態によるフィルム取扱い用ノズルの斜視図。
図4】本発明の実施の形態によるフィルム取扱い用ノズルの側面図。
図5】本発明の実施の形態によるフィルム取扱い用ノズルを周囲壁の図4に示す吸引方向から見た図。
図6】本発明の実施の形態によるフィルム取扱い用ノズルの吸引部と接続部との着脱状態を示す斜視図。
図7】本発明の実施の形態によるフィルム取扱い用ノズルでフィルムを吸引したときの周囲壁の断面図。
図8】本発明の実施の形態によるフィルム取扱い用ノズルでフィルムを吸引したときの断面図であって、図8(a)はフィルムがフィルム保持空間に吸引されたときの図、図8(b)はフィルムが周囲壁の端部と離間したときの図、図8(c)はフィルムが再び周囲壁の端部と当接したときの図。
図9】従来のフィルム取扱い用ノズルの斜視図。
図10】従来のフィルム取扱い用ノズルでフィルムを吸引したときの断面図であって、図10(a)はフィルムが当接面に吸引されたときの図、図10(b)はフィルムが当接面と部分的に離間したときの図、図10(c)はフィルムと当接面とが完全に離間したときの図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
フィルム取扱い用ノズル1の実施の形態を、図1から図8に基づき説明する。図中に示すように、前後上下左右方向を定義する。フィルム取扱い用ノズル1は、フィルム内袋を備えた段ボールの開梱装置、箱詰め装置、梱包装置、包装機、上包機等のフィルム取扱い装置に用いられるノズルである。
【0021】
図1に示すフィルム取扱い装置の一例である開梱装置10は、箱体11に内袋であるフィルム12に収納された内容物13を取り出すための装置である。開梱装置10は、搬送されてきた箱体11の内袋であるフィルム12をフィルム取扱い用ノズル1で吸引し、フィルム12を開くことにより内容物13を取り出す。フィルム取扱い用ノズル1は、真空ポンプ15の起動により吸込み動作を開始し、マニピュレータ14の動作によってフィルム12に当接及び吸着し、フィルム取扱い用ノズル1がフィルム12上を矢印の方向に移動しながらフィルム12を開き、次工程で内容物13を取り出す。
【0022】
図2に示すフィルム取扱い装置の一例である梱包装置100は、フィルム12に包まれた内容物13を収納する箱体11を梱包する装置である。梱包装置100は、搬送されてきた箱体11の開口から外側に折り返されたフィルム12をフィルム取扱い用ノズル1で吸引し、フィルム12を上方に持ち上げながら矢印の方向に折り畳む。フィルム取扱い用ノズル1は、真空ポンプ15の起動により吸込み動作を開始し、マニピュレータ14の動作によってフィルム12に当接及び吸着し、フィルム取扱い用ノズル1がフィルム12上を矢印の方向に移動しながら内容物13を包むようにフィルム12を閉じ、次工程で箱体11を閉じる。
【0023】
フィルム取扱い用ノズル1は、本体部2と、周囲壁3と、を有している。本体部2は、上方に向かうにつれて左右方向にひろがる正面視略しゃもじ形状をなしており、吸引部21と、吸引部21に着脱可能に接続される接続部22と、を有している。吸引部21にフィルム12を吸引するための吸引口2aが形成され、接続部22に接続口2bが形成されている。吸引口2aは吸引部21の上部に複数形成され、四隅にアールが形成された略矩形をなし、左右方向に等間隔に配置されている。接続口2bは略楕円形をなし、接続部22の下端に形成され、図示せぬ吸引ホースが接続される。吸引口2aの数及び形状はこれに限定されず、フィルム12の厚さ等に応じて任意のものを選択することができる。
【0024】
周囲壁3は、吸引口2aの周縁に吸引口2aを取り囲むように配置され、吸引部21から図4に矢印で示す吸引口2aからの空気の吸引方向Sと反対の延出方向Eに突出している。換言すると、周囲壁3は、吸引口2aの周縁をクローズドに囲み、吸引部21の上部から斜め上前方向に突出している。周囲壁3は、内面31と、基部32と、端部33と、を有していて、吸引部21に接続される基部32から端部33までの高さは、いずれの場所においても同一である。これにより、端部33が図4に一点鎖線で示す仮想平面P上に位置することとなり、フィルム取扱い用ノズル1の端部33の全面がフィルム12に当接する。
【0025】
周囲壁3は、図5に示すように、吸引方向Sから見て長方形の角にアールが形成された形状をなし、左右方向の両端に円弧形状の円弧部34を有している。換言すると、周囲壁3は、矩形の角にアールが形成されている。周囲壁3の厚みは、本実施の形態では約1mmであるが、これに限定されず任意の値を設定することができる。周囲壁3が厚くなることにより、端部33におけるフィルム12との接触面積が増えるため、フィルム12の保持力を向上させることができる。
【0026】
吸引部21は、周囲壁3で囲まれた空間内であって吸引口2aが形成された底面23を備えている。図4及び図5の斜線で示すように、周囲壁3の内面31と、底面23と、仮想平面Pと、によって囲まれた空間として、フィルム保持空間3aが規定される。フィルム保持空間3aは、フィルム取扱い用ノズル1の動作時にフィルム12を吸引し保持する空間として機能する。フィルム保持空間3aは、端部33とフィルム12とが当接すると、周囲壁3と、底面23と、フィルム12と、によって閉じられた空間となる。吸引口2aによってフィルム保持空間3a内の空気が吸引されることで、図7に示すように、フィルム12がフィルム保持空間3a内に湾曲するように入り込む。
【0027】
図6に示すように、吸引部21は接続部22に対して着脱可能であるため、用途に応じて最適な吸引部21の形状を選択することができる。吸引部121は、吸引部21と比較して周囲壁103が高いため、フィルム保持空間3aの容積が大きくなる。周囲壁3を高くすることによりフィルム保持力を向上させることができるが、保持力が高いとフィルム取扱い用ノズル1のフィルム12上の円滑な移動が妨げられる可能性がある。よって、周囲壁3の高さは、フィルム12の厚みや種類等に応じて適切に設定する必要がある。吸引部21と接続部22とは嵌め合いにより固定されるが、吸引部21が接続部22から落下しないようにロック機構を設けてもよい。
【0028】
次に、フィルム取扱い用ノズル1の動作について、図1図7及び図8を参照して説明する。真空ポンプ15が起動した状態でフィルム取扱い用ノズル1の端部33がフィルム12に当接すると、周囲壁3の開口がフィルム12によって塞がれてフィルム保持空間3aが負圧となり、フィルム12が断面視略U字状に湾曲するようにフィルム保持空間3aに吸引される。このとき、底面23とフィルム12とが部分的に当接するため、フィルム12が過剰にフィルム保持空間3aに入り込むことを抑制することができる。
【0029】
図10(a)に示す従来のフィルム取扱い用ノズル221では当接面223に当たっている長さ分のフィルム12が保持されていたが、本発明の実施の形態によるフィルム取扱い用ノズル1では端部33に当接する部分及びフィルム保持空間3aに位置している長さ分のフィルム12が保持されるため、より高いフィルム保持力を得ることができる。
従来のフィルム取扱い用ノズル221においては、フィルム保持力を向上させるために真空ポンプ15の圧力を下げると、移動時の抵抗が大きくなり、フィルム12上の円滑な移動が妨げられる可能性があった。これに対し、本発明のフィルム取扱い用ノズル1では、周囲壁3によってフィルム保持空間3aを形成することによりフィルム12を保持するため、真空ポンプ15の圧力を下げることなく、フィルム12との離間を抑制しつつ円滑な移動が可能となる。
【0030】
図8を参照して、フィルム取扱い用ノズル1ではフィルム12が離間し難い理由を説明する。図8(a)に示すように、フィルム取扱い用ノズル1がフィルム12の表面を矢印の方向に移動しているとき、フィルム12に皺12Aがあると図8(b)に示すように皺12Aと端部33とが当接して両者の間に隙間ができ、矢印に示す時計回り方向にフィルム12が離れて当該隙間に空気が吸い込まれる。このとき、フィルム12はフィルム保持空間3a内に存在しているフィルム12によって吸引方向Sに引っ張られるため、図8(c)に示すように、フィルム12が半時計回りに回転して再び端部33と当接し、フィルム取扱い用ノズル1がフィルム12の表面を移動する。
【0031】
本実施形態のフィルム取扱い用ノズル1によると、吸引口2aを囲むように周囲壁3が設けられ周囲壁3と底面23とによってフィルム保持空間3aが規定されるため、吸引口2aから吸引されたフィルム12が湾曲するようにフィルム保持空間3a内に位置することとなり、フィルム取扱い用ノズル1がフィルム12を吸引する領域が増加する。具体的には、周囲壁3の内面31と底面23とによって囲まれたフィルム保持空間3aに断面形状が略U字状に湾曲するようにフィルム12が入り込むため、フィルム12の表面におけるフィルム取扱い用ノズル1によって吸引される領域が増加する。これにより、フィルム12の一部がフィルム取扱い用ノズル1から離間したとしても、フィルム保持空間3aに入り込んだフィルム12の他の領域によってフィルム取扱い用ノズル1に保持され続けるため、フィルム取扱い用ノズル1がフィルム12から完全に離間してしまうという問題の発生を防ぐことができる。
また、周囲壁3が吸引方向Sと反対の延出方向Eに突出しているため、フィルム保持空間3aを広く確保することができ、さらに、周囲壁3が吸引口2aを囲むように設けられているため、吸引口2aに部分的に壁が設けられている場合と比較して、閉じられたフィルム保持空間を確保することができる。これにより、フィルム取扱い用ノズル1が一定以上の保持力でフィルム12を保持することができ、フィルム取扱い用ノズル1がフィルム12から離間することを抑制できる。
また、周囲壁3の高さ等の設定を変更してフィルム保持空間3aの容積を調整することで、フィルム取扱い用ノズル1のフィルム12に対する保持力を適宜に変更することができるため、フィルム取扱い用ノズル1がフィルム12の表面を円滑に移動できるように最適化することができる。
さらに、フィルム保持空間3aに底面23が存在しているため、吸引されたフィルム12が過剰にフィルム取扱い用ノズル1の内部に入り込むことを防ぐことができる。
【0032】
また、本実施形態のフィルム取扱い用ノズル1によると、周囲壁3の端部33が平滑な仮想平面P上に位置しているため、フィルム取扱い用ノズル1がフィルム12を吸引する際、端部33をフィルム12に平行に押し当てることができる。これにより、フィルム取扱い用ノズル1でフィルム12を吸引する際にフィルム保持空間3aがフィルム12によって確実に閉じられるため、フィルム取扱い用ノズル1からフィルム12をより離間し難くすることができる。
【0033】
さらに、本実施形態のフィルム取扱い用ノズル1によると、周囲壁3の基部32から端部33までの高さは同一であるため、フィルム取扱い用ノズル1がフィルム12を吸引する際、端部33をフィルム12に平行に押し当てることができる。これにより、フィルム取扱い用ノズル1でフィルム12を吸引する際にフィルム保持空間3aがフィルム12によって確実に閉じられるため、フィルム取扱い用ノズル1からフィルム12をより離間し難くすることができる。
【0034】
また、本実施形態のフィルム取扱い用ノズル1によると、周囲壁3には円弧状の円弧部34が設けられているため、フィルム取扱い用ノズル1がフィルム12に接触した際に引っ掛かりが生じ難く、フィルム12の損傷や破損を防ぐことができる。これにより、フィルム12によって包装されている内容物13の漏れや損傷も防ぐことができる。
【0035】
本実施形態のフィルム取扱い装置である開梱装置10や梱包装置100によると、これらの装置が、周囲壁3によってフィルム保持空間3aが規定されたフィルム取扱い用ノズル1を有しているため、箱体11の内袋であるフィルム12の開梱や梱包を行う際に、フィルム12がフィルム取扱い用ノズル1から離間して落下するという問題の発生を防ぐことができる。これにより、開梱装置10や梱包装置100の稼働時の開梱ミスや梱包ミスを低減できる。
【0036】
なお、本発明によるフィルム取扱い用ノズル及びフィルム取扱い装置は、上記の実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。
【0037】
例えば、上記の実施の形態では、周囲壁3は吸引方向Sから見て長方形の角にアールが形成された形状であったが、これに限定されない。例えば、矩形、角が直線状に面取りされた矩形、楕円形、円形、他の任意の幾何学的図形であってもよい。なお、フィルムの損傷等を抑制するために、角に面取りやアールが形成されていることが好ましい。
【0038】
また、上記の実施の形態では、本体部2は吸引部21と接続部22とにより構成されたが、これに限定されず吸引部21と接続部22とが一体的に構成されてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 フィルム取扱い用ノズル
2 本体部
2a 吸引口
3 周囲壁
3a フィルム保持空間
10 開梱装置
11 箱体
12 フィルム
13 内容物
21、121 吸引部
22 接続部
23 底面
31 内面
32 基部
33 端部


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10