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▶ 日本圧着端子製造株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180112
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/42 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
H01R13/42 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099567
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】390033318
【氏名又は名称】日本圧着端子製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢野 正芳
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087EE11
5E087FF02
5E087GG17
5E087MM03
5E087RR06
5E087RR25
(57)【要約】      (修正有)
【課題】端子取付孔による端子の保持力を損なわずに、端子をハウジングに簡単に取り付けることができるコネクタを提供する。
【解決手段】コネクタ1は、端子取付孔22を有するハウジング2と、端子取付孔22に保持される保持部3Hを有する端子3とを備える。保持部3Hは、端子3が挿入方向D11に移動する際に端子取付孔22の内面22aと接触して弾性変形するように構成され、端子3が取付位置に到達したときに、離脱方向D12へと端子3が移動することを規制するように、ハウジング2の第1被係合部231と係合可能な係合面31aを有する係合部と、端子3が取付位置に到達したときに、端子3が挿入方向D11へ移動することを規制するように、ハウジング2の第2被係合部232と係合可能な当接面32aを有する当接部とを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子取付孔を有するハウジングと、前記端子取付孔に保持される保持部を有する端子とを備えるコネクタであって、
前記保持部は、
前記端子が前記端子取付孔への挿入方向に移動する際に、前記端子取付孔の内面と接触して弾性変形するように構成され、前記端子が所定の取付位置に到達したときに、前記挿入方向と反対の離脱方向へと前記端子が移動することを規制するように、前記ハウジングの第1被係合部と係合可能な係合面を有する係合部と、
前記端子が前記取付位置に到達したときに、前記端子が前記挿入方向へ移動することを規制するように、前記ハウジングの第2被係合部と係合可能な当接面を有する当接部と
を備え、
前記係合面は、前記当接面に対して前記挿入方向側に設けられ、
前記端子が前記取付位置に位置する際に、前記係合面が前記第1被係合部と係合し、前記当接面が前記第2被係合部と係合することで、前記保持部が前記端子取付孔に保持される、コネクタ。
【請求項2】
前記端子は、前記端子の挿入・離脱方向である第1方向に延びる基部を備え、
前記当接部は、前記基部の側部から前記第1方向と交差する第2方向に延びるように突出し、
前記係合部は、前記基部の側部から前記挿入方向に沿って片持ち式に延びるように突出し、
前記当接面は、前記当接部の前記挿入方向を向く面であり、
前記係合面は、前記係合部の先端部における前記離脱方向を向く面である、
請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記係合部は、前記第2方向に弾性変形するように構成されている、
請求項2記載のコネクタ。
【請求項4】
前記当接面の前記第2方向の端縁は、前記係合面の前記第2方向の端縁よりも前記端子の中心軸から前記第2方向で離間している、
請求項3記載のコネクタ。
【請求項5】
前記端子は、金属板材から構成されており、曲げ加工されておらず、
前記基部は、前記金属板材の厚さ方向において、エンボス加工されている、
請求項3記載のコネクタ。
【請求項6】
前記係合部は、前記第1方向および前記第2方向と交差する第3方向に弾性変形するように構成されている、
請求項2記載のコネクタ。
【請求項7】
前記端子は、金属板材から構成されており、
前記基部および前記当接部は、曲げ加工されておらず、
前記係合部は、前記第3方向に屈曲するように曲げ加工されている、
請求項6記載のコネクタ。
【請求項8】
前記当接部は、前記基部の前記第2方向における両側部から突出し、
前記係合部は、前記基部の前記第2方向における両側部から延びる、
請求項2~7のいずれか1項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
コネクタは、概して、端子をハウジングに取り付けて使用される。端子をハウジングに取り付ける場合、たとえば、端子をハウジングに設けられた端子取付孔に圧入することにより、端子がハウジングに取り付けられる。たとえば、特許文献1には、複数の圧入突起を有する端子を用いて、端子をハウジングの端子取付孔に圧入したコネクタが開示されている。この端子は、ハウジングへの挿入方向に向かうにつれて、圧入突起の突出量を小さくしている。特許文献1のコネクタは、このような端子を用いることで、端子をハウジングの端子取付孔に圧入するときに、端子取付孔の内面に対する圧入突起の摺動距離が短くなるため、摺動による端子取付孔の内壁の切削量が小さくなる。これにより、圧入突起の端子取付孔の内壁への圧入量の減少が抑制されるので、端子取付孔による端子の保持力の低下もまた抑制される。
【0003】
また、圧入以外の手法によって、端子をハウジングに取り付ける場合もある。たとえば、特許文献2には、ハウジングに設けられた端子取付孔に端子を挿通した後に、ハウジングから端子が離脱しないように、端子を曲げ加工することで、端子をハウジングに取り付けたコネクタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-135794号公報
【特許文献2】特開2005-285654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のコネクタでは、端子の端子取付孔への圧入時に、端子取付孔の内面に対する圧入突起の摺動距離が短くなるものの、端子取付孔の内壁は、依然として切削される。そのため、端子取付孔による端子の保持力の低下は、期待するほど抑制されない場合がある。
【0006】
また、特許文献2の記載のコネクタでは、圧入によって、端子をハウジングに取り付けていないので、端子の摺動による端子取付孔の内壁の切削を回避することができる。しかし、特許文献2に記載のコネクタでは、端子の端子取付孔への挿通後に、端子を曲げ加工する必要があるため、端子のハウジングへの取り付けが煩雑になってしまう。
【0007】
そこで、本発明はかかる問題点に鑑みて、端子取付孔による端子の保持力を損なわずに、端子をハウジングに簡単に取り付けることができるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係るコネクタは、端子取付孔を有するハウジングと、前記端子取付孔に保持される保持部を有する端子とを備えるコネクタであって、前記保持部は、前記端子が前記端子取付孔への挿入方向に移動する際に、前記端子取付孔の内面と接触して弾性変形するように構成され、前記端子が所定の取付位置に到達したときに、前記挿入方向と反対の離脱方向へと前記端子が移動することを規制するように、前記ハウジングの第1被係合部と係合可能な係合面を有する係合部と、前記端子が前記取付位置に到達したときに、前記端子が前記挿入方向へ移動することを規制するように、前記ハウジングの第2被係合部と係合可能な当接面を有する当接部とを備え、前記係合面は、前記当接面に対して前記挿入方向側に設けられ、前記端子が前記取付位置に位置する際に、前記係合面が前記第1被係合部と係合し、前記当接面が前記第2被係合部と係合することで、前記保持部が前記端子取付孔に保持される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施形態に係るコネクタによれば、端子取付孔による端子の保持力を損なわずに、端子をハウジングに簡単に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係るコネクタと、コネクタと接続される基板および相手方コネクタを示す斜視図である。
図2】第1実施形態に係るコネクタを示す断面図である。
図3図2の領域Aの拡大図である。
図4A】第1実施形態に係るコネクタの端子を示す正面図である。
図4B】第1実施形態の変形例に係るコネクタの端子を示す正面図である。
図5A】第1実施形態に係るコネクタを示す、図2におけるVA-VA線で切断した断面図である。
図5B】第1実施形態の変形例に係るコネクタの端子を示す、図5Aに対応する断面図である。
図6】第1実施形態に係るコネクタの端子が挿入方向から外れた方向から端子取付孔に挿入されたとき様子を示す、端子の厚さ方向に垂直な面で切断した部分拡大断面図である。
図7A】第1実施形態に係るコネクタにおける端子のハウジングへの取付方法を示す、端子の厚さ方向に垂直な面で切断した拡大断面図(その1)である。
図7B】第1実施形態に係るコネクタにおける端子のハウジングへの取付方法を示す、端子の厚さ方向に垂直な面で切断した拡大断面図(その2)である。
図8】第2実施形態に係るコネクタの端子を示す斜視図である。
図9A】第2実施形態に係るコネクタを示す平面図である。
図9B】第2実施形態に係るコネクタを示す断面図である。
図10A図9BにおけるXA-XA線で切断した拡大断面図である。
図10B図9BにおけるXB-XB線で切断した拡大断面図である。
図10C図9BにおけるXC-XC線で切断した拡大断面図である。
図11A】第1実施形態に係るコネクタにおける端子のハウジングへの取付方法を示す、図10Bに対応する拡大断面図(その1)である。
図11B】第1実施形態に係るコネクタにおける端子のハウジングへの取付方法を示す、図10Bに対応する拡大断面図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態に係るコネクタを説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまで一例であり、本発明のコネクタは、以下の実施形態に限定されない。なお、本明細書において、「Aに垂直」およびこれに類する表現は、Aに対して完全に垂直な方向のみを指すのではなく、Aに対して略垂直であることを含んで指すものとする。また、本明細書において、「Bに平行」およびこれに類する表現は、Bに対して完全に平行な方向のみを指すのではなく、Bに対して略平行であることを含んで指すものとする。また、本明細書において、「C形状」およびこれに類する表現は、完全なC形状のみを指すのではなく、C形状の角部が面取りされた形状など、見た目にC形状を連想させる形状(略C形状)を含んで指すものとする。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るコネクタ1を示している。図1に示されるように、本実施形態に係るコネクタ1は、ハウジング2と、ハウジング2に保持される端子3とを備えている。たとえば、コネクタ1は、一方で、基板Bに搭載されて、端子3が基板Bの配線(図示せず)と電気的に接続され、他方で、ハウジング2が相手方コネクタC1の相手方ハウジングC2と所定の方向(図1の例では、後述する第1方向D1)で嵌合して、端子3が相手方コネクタC1の相手方端子C3と電気的に接続されるように構成されている。図1の例では、コネクタ1は、基板Bの貫通孔Bhに端子3が挿入されて基板Bと電気的に接続される挿入実装型コネクタである。ただし、コネクタ1は、基板Bの表面Baに端子3が取り付けられて基板Bと電気的に接続される表面実装型コネクタであってもよい。また、図1の例では、端子3はオス端子であり、相手方端子C3はメス端子である。ただし、端子3がメス端子であり、相手方端子C3がオス端子であってもよい。
【0013】
なお、本明細書において、端子3をハウジング2に保持させるために、端子3をハウジング2に向かって挿入する方向を挿入方向D11と呼び、挿入方向D11の反対方向であり、端子3をハウジング2から抜き出す方向を離脱方向D12と呼び、挿入方向D11および離脱方向D12の両方向をまとめて第1方向D1と呼ぶ。本実施形態では、第1方向D1は、コネクタ1および相手方コネクタC1が互いに嵌合および離脱して電気的に互いに接続および接続解除される方向と一致する。また、本実施形態では、第1方向D1は、長尺な形状を有する端子3が延在する方向でもある(以下では、「延在方向D1」とも呼ぶ)。本明細書において、第1方向D1と交差する一の方向を第2方向D2と呼ぶ。本実施形態では、第2方向D2は、第1方向D1に垂直な一の方向である。また、本実施形態では、第2方向D2は、長尺な形状を有する端子3の幅方向である(以下では、「幅方向D2」とも呼ぶ)。本明細書において、第1方向D1および第2方向D2と交差する方向を第3方向D3と呼ぶ。本実施形態では、第3方向D3は、第1方向D1および第2方向D2に垂直な方向である。また、本実施形態では、第3方向D3は、板状の形状を有する端子3の厚さ方向である(以下では、「厚さ方向D3」とも呼ぶ)。
【0014】
図2に示されるように、ハウジング2は、端子3を保護し、コネクタ1が端子3を複数有する場合には、端子3間を絶縁する。ハウジング2は、相手方コネクタC1の相手方ハウジングC2(図1参照)と嵌合する(具体的には、相手方ハウジングC2を外嵌する)ように設けられた嵌合孔21を有している。また、ハウジング2は、端子3を保持する端子取付孔22を有している。端子取付孔22は、嵌合孔21を画定するハウジング2の内面のうち、挿入方向D11側の内壁である底部21aと、ハウジング2の外面のうち、挿入方向D11を向く端面2bとの間を第1方向D1で貫通するように設けられている。つまり、本実施形態では、端子取付孔22および嵌合孔21から構成される貫通孔20が、ハウジング2の外面のうち離脱方向D12を向く端面2aと挿入方向D11を向く端面2bとの間を第1方向D1で貫通している。
【0015】
端子取付孔22および端子3の数は、コネクタ1の用途に応じて適宜変更され得る。本実施形態では、ハウジング2は、コネクタ1が複数の端子3を有することに対応して、複数の端子取付孔22を有している(図2の例では、ハウジング2は、コネクタ1が3つの端子3を有することに対応して、3つの端子取付孔22を有している)。ただし、ハウジング2は、コネクタ1が端子3を1つのみ有することに対応して、1つの端子取付孔22のみを有していてもよい。
【0016】
図2の領域Aの拡大図である図3に示されるように、ハウジング2は、端子取付孔22の内面22aに、後述する端子3の係合部31と係合可能な第1被係合部231と、後述する端子3の当接部32と係合可能な第2被係合部232とを備えている。本実施形態では、ハウジング2は、端子取付孔22の内面22aから第2方向D2に突出する凸部23を有しており、凸部23の挿入方向D11を向く面が第1被係合部231を構成し、凸部23の離脱方向D12を向く面が第2被係合部232を構成する。また、本実施形態では、凸部23の第2方向D2を向く面は、端子3を端子取付孔22に挿入する際に、端子3の係合部31と接触する接触部233を構成する。図3の例では、ハウジング2は、内面22aのうち、第2方向D2で互いに対向する2つの面から突出する2つの凸部23を有している。そして、後述するように、端子3は、第2方向D2の両側の凸部23と対応するように、凸部23と係合する保持部3Hを第2方向D2の両側に備えている。そうすることで、第2方向D2の両側において、端子3の保持部3Hがハウジング2の凸部23に保持されるので、ハウジング2による端子3の保持力が向上する。ただし、ハウジング2は、図3の例で示される2つの凸部23のうちの一方のみを有していてもよい。
【0017】
凸部23の形状は、第1被係合部231、第2被係合部232、および接触部233を有していれば、特に限定されることはない。本実施形態では、図3に示されるように、凸部23は、矩形形状で端子取付孔22の内面22aから第2方向D2に突出している。換言すれば、第1被係合部231および第2被係合部232は、第1方向D1に垂直な平面から構成され、接触部233は、第2方向D2に垂直な平面から構成されている。そして、第1被係合部231と接触部233とが交差する角部234は、面取りされておらず、第2被係合部232と接触部233とが交差する角部235は、面取りされている。そうすることで、角部235が面取りされていない第1被係合部231において、端子3の離脱方向D12への抜けを規制するように作用する挿入方向D11を向く面の面積が大きくなるので、端子3の離脱方向D12への抜けを抑制する効果が向上する。また、端子取付孔22の離脱方向D12側から挿入方向D11側に挿入される端子3が、面取りされた角部235によって端子取付孔22の内部に案内され易くなるので、端子3をハウジング2に取り付け易くなる。ただし、角部234、235はいずれも、面取りされていてもよく、面取りされていなくてよい。
【0018】
端子3は、基板Bと相手方コネクタC1とを電気的に接続する(図1参照)。端子3の形状は、特に限定されることはないが、本実施形態では、図3に示されるように、端子3は、第1方向(延在方向)D1に所定の長さで延び、第2方向(幅方向)D2に所定の幅を有し、第3方向(厚さ方向)D3に所定の厚さを有する板状の形状を有している(第1方向D1が最も長く、第3方向D3が最も短い)。具体的には、図4Aおよび図5Aに示されるように、端子3は、金属板材から構成されており、曲げ加工されていない。そうすることで、金属板材の打ち抜き加工などによって、端子3を容易に形成することができる。また、端子3の薄型化、ひいては、コネクタ1の薄型化を図ることができる。ただし、端子3は、延在方向(第1方向)D1に所定の長さで延びる棒形状などのその他の形状を有していてもよい。また、端子3は、曲げ加工されていてもよい。
【0019】
図4Aに示されるように、端子3の延在方向D1の一端部(挿入方向D11側の端部)3mおよび他端部(離脱方向D12側の端部)3nは、打ち抜き加工などによって、幅方向(第2方向)D2で先細りするように形成されてもよく、図5Aに示されるように、切削加工やエッチング加工などによって、厚さ方向(第3方向)D3で先細りするように形成されてもよい。この場合、先細りする端子3の端部3mが基板Bの貫通孔Bh(図1参照)に案内されることで、端子3を貫通孔Bhに挿入しやすくなる。また、先細りする端子3の端部3nがメス端子である相手方コネクタC1の相手方端子C3(図1参照)の内部に案内されることで、端子3を相手方端子C3に挿入し易くなる。
【0020】
図3に示されるように、端子3は、端子取付孔22に保持される保持部3Hを備えている。本実施形態では、端子3は、保持部3Hが接続される基部3Bをさらに備えている。
【0021】
図3に示されるように、基部3Bは、保持部3Hを支持する部分である。本実施形態では、基部3Bは、延在方向(第1方向)D1に延びる長尺な形状を有しており、端子3の延在方向D1の一方側(挿入方向D11側)に一方側基部31Bを、端子3の延在方向D1の他方側(離脱方向D12側)に他方側基部32Bを備えている。図3の例では、他方側基部32Bの幅方向(第2方向)D2の長さは、一方側基部31Bの幅方向(第2方向)D2の長さより長くなるように設定されている。本実施形態では、一方側基部31Bは、基板Bの配線と電気的に接続され(図1参照)、他方側基部32Bは、相手方コネクタC1の相手方端子C3と電気的に接続される(図1参照)。
【0022】
図4Bおよび図5Bに示されるように、基部3Bは、厚さ方向(第3方向)D3において、エンボス加工されていてもよい。基部3Bがエンボス加工されると、図5Bに示されるように、端子3の一方の面3aに凸部分30aが形成され、他方の面3bには凸部分30aに対応して凹部分30bが形成される。この場合、端子取付孔22や端子3の寸法公差によって生じ得る、端子取付孔22の内面22aと端子3との間の第3方向D3での隙間Gが、凸部分30aによって埋められる。そのため、端子3は、端子取付孔22の内面22aに第3方向D3で挟持されることで、ハウジング2に対して第3方向D3で移動することが規制される。これにより、ハウジング2による端子3の保持が安定するとともに、第3方向D3での端子3のハウジング2に対する位置ずれが抑制される。
【0023】
図4Bおよび図5Bの例では、凸部分30aおよび凹部分30bは、端子3の延在方向(第1方向)D1において、保持部3Hの形成領域(後述する係合部31と当接部32の間の領域)内であって、端子3の幅方向(第2方向)D2の中央部分に形成されている。そうすることで、第1方向D1において、保持部3Hおよび凸部分30aの位置が重なるので、保持部3Hおよび凸部分30aの両方と対向させるべき端子取付孔22の第1方向D1での長さを短くすることができる。これにより、コネクタ1全体としての第1方向D1での長さを短くすることができるので、コネクタ1を小型化し易くなる。ただし、凸部分30aおよび凹部分30bの形成位置は、端子3がハウジング2に取り付けられたときに、端子取付孔22の内面22aと対向する位置であれば、特に限定されることはない。
【0024】
図3に示されるように、保持部3Hは、端子3をハウジング2に取り付ける部位である。保持部3Hは、ハウジング2の第1被係合部231と係合可能な係合部31と、ハウジング2の第2被係合部232と係合可能な当接部32とを備えている。後述するように、保持部3Hは、端子3が所定の取付位置に位置する際に、係合部31の係合面31aが第1被係合部231と係合し、当接部32の当接面32aが第2被係合部232と係合することで、端子取付孔22に保持される。
【0025】
図7Bに示されるように、係合部31は、端子3が端子取付孔22への挿入方向D11に移動する際に、端子取付孔22の内面22aと接触して弾性変形するように構成されている。本実施形態では、係合部31は、第2方向D2に弾性変形するように構成されている。係合部31の形状は、特に限定されることはないが、本実施形態では、図3に示されるように、係合部31は、基部3Bの側部から延在方向D1の一方向(挿入方向D11)に沿って片持ち式に延びるように突出している。そうすることで、打ち抜き加工などによって、弾性変形可能な係合部31を簡単に形成することができる。具体的には、係合部31は、基部3Bの側部から延在方向D1の一方向(挿入方向D11)に沿って延びるアーム部31Sと、アーム部31Sの延在方向D1の一方向(挿入方向D11)側の先端部に設けられた爪部31Tとを備えている。そして、係合部31(アーム部31S)と基部3B(一方側基部31B)との間には、幅方向(第2方向)D2で隙間3Cが生じている。ただし、係合部31は、基部3Bの側部に薄板ばねが取り付けられることなどによって形成されてもよい。また、本実施形態では、係合部31は、基部3Bの幅方向(第2方向)D2における両側部から延びるように構成されている。すなわち、係合部31は、幅方向(第2方向)D2で離間して設けられている。ただし、係合部31は、基部3Bの幅方向(第2方向)D2における片側の側部のみから延びるように構成されていてもよい。
【0026】
本実施形態では、図3に示されるように、端子3が取付位置に位置する際に、端子取付孔22の内面22aを向く係合部31のアーム部31Sの側部31dが、端子取付孔22の接触部233と第2方向D2で接触するように形成されている。そうすることで、端子3が取付位置に位置する際に、アーム部31Sの側部31dと接触部233との接触によって、端子3が、ハウジング2に対して第2方向D2で移動することが規制される。これにより、ハウジング2による端子3の保持が安定するとともに、第2方向D2での端子3のハウジング2に対する位置ずれが抑制される。本実施形態では、アーム部31Sの側部31dと接触部233とは、係合部31が弾性変形から復元している状態で接触している。この場合、端子3が取付位置に位置する際に、係合部31の弾性変形に起因する応力が、コネクタ1の内部に残存しない状態で、端子3が端子取付孔22に取り付けられるので、残存する内部応力によるコネクタ1の劣化が抑制される。ただし、アーム部31Sの側部31dと接触部233とは、係合部31が弾性変形から完全に復元しておらず、係合部31の弾性変形の復元力が働いている状態(換言すれば、アーム部31Sの側部31dが接触部233を弾性的に押圧している状態)で接触していてもよい。この場合、端子3が取付位置に位置する際に、弾性変形の復元力によって、接触部233がアーム部31Sの側部31dに押圧されることで、ハウジング2による端子3の保持がさらに安定する。
【0027】
本実施形態では、図3に示されるように、係合部31が基部3Bから分岐する根本部(係合部31の接続端)と、当接部32が基部3Bから分岐する根本部とは、一体的に形成されている。そうすることで、係合部31および当接部32をコンパクトに形成することができる。また、本実施形態では、係合部31の根本部と基部3Bの根本部との接続部分に、幅方向(第2方向)D2に窪む切欠部3Haが形成されている。切欠部3Haが形成されることで、係合部31(具体的には、アーム部31S)の接続端の近傍が弾性変形し易くなり、ひいては、係合部31が全体として弾性変形し易くなる。
【0028】
図3に示されるように、係合部31は、端子3が所定の取付位置に到達したときに、離脱方向D12に端子3が移動することを規制するように、ハウジング2の第1被係合部231と係合可能な係合面31aを有している。係合部31の係合面31aは、後述する当接部32の当接面32aに対して延在方向D1の一方向(挿入方向D11)側に設けられている。本実施形態では、係合面31aは、係合部31の爪部31Tにおける延在方向D1の他方向(離脱方向D12)を向く面である。具体的には、係合部31の爪部31Tは、アーム部31Sから幅方向(第2方向)D2に突出するくさび形状を有しており、アーム部31Sに対して、幅方向(第2方向)D2で内面22aに向かって突出して、アーム部31Sの側部31dとの間に段差を生じることで、その段差部分が、係合面31aを構成している。そして、係合面31aは、くさび形状における延在方向D1の他方向(離脱方向D12)を向く平面であり、係合面31aは、端子3が取付位置に位置する際に、第1被係合部231と面接触する。係合面31aが第1被係合部231と面接触することで、端子3の離脱方向D12への移動に対する規制力が強くなる。ただし、係合面31aの爪部31Tは、L字形状やC字形状などのその他の形状を有していてもよく、係合面31aは、必ずしも第1被係合部231と面接触する必要はなく、線接触や点接触によって第1被係合部231と係合してもよい。
【0029】
図3に示されるように、係合部31の爪部31Tはさらに、延在方向D1の一方向(挿入方向D11)側で係合面31aと接続され、延在方向D1の一方向(挿入方向D11)側を向くように、延在方向D1(挿入方向D11)に対して傾斜する傾斜面31bを有していてもよい。そうすることで、端子3を端子取付孔22に挿入する際に、傾斜面31bが第2被係合部232(より詳細には、角部235)と当接して端子3を挿入方向D11に案内するので、端子3を端子取付孔22に挿入し易くなる(図7Aも参照)。また、係合面31aと傾斜面31bとを接続する接続面31cは、曲面で形成されていてもよい。そうすることで、端子3を端子取付孔22に挿入する際に、保持部3Hにおいて、端子取付孔22の内面22aに最近接することとなる接続面31cが、端子取付孔22の接触部233に対して摺動しながら挿入方向D11に移動しても、接触部233を切削し難くなる(図7Bも参照)。
【0030】
図3に示されるように、当接部32は、端子3が取付位置に到達したときに、端子3が挿入方向D11へ移動することを規制するように構成されている。当接部32の形状は、特に限定されることはないが、本実施形態では、当接部32は、基部3Bの側部から幅方向(第2方向)D2に延びるように突出している。具体的には、当接部32は、基部3Bの側部から幅方向(第2方向)D2に向かって突出する直方体形状を有している。ただし、当接部32は、円柱形状などのその他の形状を有していてもよい。また、本実施形態では、当接部32は、基部3Bの幅方向(第2方向)D2における両側部から延びるように構成されている。すなわち、当接部32は、幅方向(第2方向)D2で離間して設けられている。ただし、当接部32は、基部3Bの幅方向(第2方向)D2における片側の側部のみから延びるように構成されていてもよい。
【0031】
図3に示されるように、当接部32は、ハウジング2の第2被係合部232と係合可能な当接面32aを有している。本実施形態では、当接面32aは、当接部32の延在方向D1の一方向(挿入方向D11)を向く面である。具体的には、当接面32aは、直方体形状を有する当接部32における延在方向D1の一方向(挿入方向D11)を向く平面であり、当接面32aは、端子3が取付位置に位置する際に、第2被係合部232と面接触する。当接面32aが第2被係合部232と面接触することで、端子3の挿入方向D11への移動に対する規制力が強くなる。ただし、当接面32aは、必ずしも第2被係合部232と面接触する必要はなく、線接触や点接触によって第2被係合部232と係合してもよい。
【0032】
本実施形態において、図3に示されるように、当接面32aの幅方向(第2方向)D2の端縁32eは、係合面31aの幅方向(第2方向)D2の端縁(図3の例では、接続面31c)よりも端子3の中心軸CLに対して幅方向(第2方向)D2で離間している。端子3のハウジング2への挿入の際には、自動挿入機などが用いられることがあり、図6に示されるように、意図せずに、端子3の中心軸CLが正規の挿入方向D11から若干外れた角度αとなった状態で、端子3が端子取付孔22に挿入されることがある。この場合、ハウジング2の端子取付孔22と端子3の保持部3Hとが完全に係合していない状態で、端子3がハウジング2に取り付けられることがある。これに対して、上述のように、当接面32aの端縁32eが係合面31aの端縁(接続面31c)よりも端子3の中心軸CLに対して幅方向(第2方向)D2で離間していると、端子3の中心軸CLが挿入方向D11から若干外れた角度αで、端子3が端子取付孔22に挿入されたときに、係合面31aが第1被係合部231と係合する前に、当接面32aの端縁32eが第2被係合部232と当接する。その際に、当接部32が離脱方向D12側に当接の反力Rを受けて、端子3の中心軸CLが挿入方向D11となる向きに、端子3に対して回転モーメントMが発生し、端子3の挿入角度のずれが矯正される。これにより、端子3が正規の挿入方向D11から外れた状態のままで、端子取付孔22に挿入されることで、ハウジング2の端子取付孔22と端子3の保持部3Hとが完全に係合していない状態で、端子3がハウジング2に取り付けられることが抑制される。
【0033】
以上のような構成を備える本実施形態に係るコネクタ1が奏する効果について、図7Aおよび図7Bなどを参照し、端子3のハウジング2への取付方法とともに、より詳細に説明する。
【0034】
図7Aに示されるように、端子3がハウジング2の端子取付孔22に挿入されると、まず、端子3の係合部31の爪部31T(より詳細には、傾斜面31b)が、ハウジング2の端子取付孔22の第2被係合部232(より詳細には、角部235)と当接することで、係合部31(具体的には、アーム部31S)が、第2方向D2の内側に弾性変形し始める。その際に、本実施形態では、角部235が面取りされており、傾斜面31bが延在方向D1の一方向(挿入方向D11)側を向くように挿入方向D11に対して傾斜しているので、傾斜面31bおよび角部235の両方が、係合部31の第2方向D2の内側への弾性変形を誘導する役割を果たすとともに、端子3を端子取付孔22の内部に案内する役割を果たす。そのため、係合部31は、第2方向D2の内側に容易に弾性変形するとともに、端子3は、端子取付孔22に容易に挿入される。
【0035】
図7Bに示されるように、端子3がハウジング2の端子取付孔22にさらに挿入されると、端子3の係合部31が、端子取付孔22の内部に挿入され始める。具体的には、端子3の係合部31の接続面31cが、ハウジング2の端子取付孔22の内面22a(より詳細には、接触部233)と接触し始める。その際に、本実施形態では、係合部31が端子取付孔22の内面22a(接触部233)の形状に応じて弾性変形しながら端子取付孔22の内部に挿入されることで、係合部31から端子取付孔22の内面22a(接触部233)に過度な応力が加わることが抑制されるので、端子取付孔22の内面22a(接触部233)を切削し難くなる。さらに、本実施形態では、接続面31cが曲面で形成されているので、端子取付孔22の接触部233に対して摺動しながら挿入方向D11に移動しても、端子取付孔22の内面22a(接触部233)を切削し難くなる。
【0036】
端子3がハウジング2の端子取付孔22にさらに挿入されると、端子3は、取付位置に到達する(図3参照)。図3に示されるように、取付位置では、係合部31は、弾性変形(図7B参照)から復元し、係合部31の係合面31aは、離脱方向D12に端子3が移動することを規制するように、端子取付孔22の第1被係合部231と係合する。また、当接部32の当接面32aは、端子3が挿入方向D11へ移動することを規制するように、端子取付孔22の第2被係合部232と係合する。
【0037】
このように、本実施形態では、端子3が所定の取付位置に到達すると、端子3の保持部3H(より詳細には、係合部31の係合面31aおよび当接部32の当接面32a)がハウジング2の凸部23を第1方向D1で挟持するように、係合部31が弾性変形から復元することで、端子3がハウジング2の端子取付孔22に保持される。換言すれば、本実施形態では、圧入ではなく第1方向D1での挟持によって、端子3がハウジング2の端子取付孔22に保持される。そのため、圧入による保持のように、端子取付孔22の内面22aが過度に切削されることがないので、端子取付孔22による端子3の保持力を損なうことが抑制される。また、本実施形態では、端子3の端子取付孔22への挿通後に、端子3を曲げ加工せずに、係合部31の弾性変形からの復元によって、端子3がハウジング2の端子取付孔22に保持されるので、端子3をハウジング2に簡単に取り付けることができる。
【0038】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るコネクタ1について、図8図11Bを用いて説明する。本実施形態では、端子3の一部が曲げ加工され、端子3の曲げ加工に応じて、端子取付孔22の形状を変更している点において、第1実施形態と異なる。なお、以下の説明において、上述した実施形態と共通する事項についての説明は省略し、相違点を中心に説明する。なお、第2実施形態に係るコネクタ1において、第1実施形態に係るコネクタ1と同じ機能を有する部位には、同じ符号が付されている。本実施形態の構成と、第1実施形態で説明した内容とは適宜組み合わせて用いることができる。
【0039】
本実施形態では、図8に示されるように、第1実施形態と同様に、保持部3Hは、ハウジング2の第1被係合部231(図10B参照)と係合可能な係合部31と、ハウジング2の第2被係合部232(図10C参照)と係合可能な当接部32とを備えている。後述するように、保持部3Hは、端子3が取付位置に位置する際に、係合部31の係合面31aが第1被係合部231と係合し(図10B参照)、当接部32の当接面32aが第2被係合部232と係合することで(図10C参照)、端子取付孔22に保持される(図10Bおよび図10C参照)。
【0040】
本実施形態では、図8に示されるように、第1実施形態と同様に、基部3Bは、延在方向D1に延びる長尺な形状を有しており、端子3の延在方向D1の一方側(挿入方向D11側)に一方側基部31Bを、端子3の延在方向D1の他方側(離脱方向D12側)に他方側基部32Bを備えている。そして、他方側基部32Bの幅方向(第2方向)D2の長さは、一方側基部31Bの幅方向(第2方向)D2の長さより長くなるように設定されている。本実施形態においても、一方側基部31Bは、基板Bの配線と電気的に接続され(図1参照)、他方側基部32Bは、相手方コネクタC1の相手方端子C3と電気的に接続される(図1参照)。
【0041】
本実施形態では、図8に示されるように、係合部31は、第1方向D1から見たときに、基部3Bから端子3の厚さ方向(第3方向)D3に延びている(図9Bも参照)。具体的には、係合部31は、基部3Bの側部から幅方向(第2方向)D2、厚さ方向(第3方向)D3、延在方向D1の一方(挿入方向D11)の順に湾曲して延びるアーム部31Sと、アーム部31Sの延在方向D1の一方側(挿入方向D11側)の先端部に設けられた爪部31Tとを備えている。そして、係合部31(アーム部31S)と基部3B(一方側基部31B)との間には、隙間3Cが生じている。また、本実施形態では、端子3は、金属板材から構成されており、基部3Bおよび当接部32は、曲げ加工されていない。一方、係合部31は、厚さ方向(第3方向)D3に屈曲するように曲げ加工されている。そして、係合部31は、厚さ方向(第3方向)D3に弾性変形するように構成されている。具体的には、係合部31は、曲げ加工前に、基部3Bの側部から幅方向(第2方向)D2、延在方向D1の一方(挿入方向)D11の順に延びるL字形状を有しており(図8の二点鎖線参照)、幅方向(第2方向)D2に延びる部分が曲げ加工されることで、厚さ方向(第3方向)D3に屈曲している(図8の実線参照)。
【0042】
本実施形態では、図8に示されるように、係合部31は、基部3Bの幅方向(第2方向)D2における両側部に設けられている。すなわち、係合部31は、幅方向(第2方向)D2で離間して設けられている。ただし、係合部31は、基部3Bの幅方向(第2方向)D2における一側部のみに設けられてもよい。
【0043】
本実施形態では、図8に示されるように、係合部31および当接部32は、別々に基部3Bに接続されており、係合部31が基部3Bから分岐する根本部(係合部31の接続端)と、当接部32が基部3Bから分岐する根本部との間には、延在方向(第1方向)D1で隙間3Dが生じている。そうすることで、係合部31の接続端の近傍が弾性変形し易くなり、ひいては、係合部31が全体として弾性変形し易くなる。
【0044】
本実施形態においても、図8に示されるように、係合部31は、ハウジング2の第1被係合部231(図10B参照)と係合可能な係合面31aを有している。本実施形態では、係合部31の係合面31aは、当接部32の当接面32aに対して延在方向D1の一方向(挿入方向D11)側に設けられており、係合面31aと当接面32aとは、厚さ方向(第3方向)D3でオフセットしている。具体的には、係合部31の爪部31Tは、アーム部31Sの先端部から厚さ方向(第3方向)D3のうちの一方向に突出するくさび形状を有しており、アーム部31Sに対して、厚さ方向(第3方向)D3で内面22aに向かって突出しており、アーム部31Sの側部31dとの間に段差を生じることで、その段差部分が、係合面31aを構成している。そして、係合面31aは、くさび形状における延在方向D1の他方向(離脱方向D12)を向く平面であり、係合面31aは、端子3が取付位置に位置する際に、第1被係合部231と面接触する(図10B参照)。
【0045】
本実施形態においても、図8に示されるように、係合部31の爪部31Tはさらに、延在方向D1の一方向(挿入方向D11)側で係合面31aと接続され、延在方向D1の一方向(挿入方向D11)側を向くように、延在方向D1(挿入方向D11)に対して傾斜する傾斜面31bを有している。また、係合面31aと傾斜面31bとを接続する接続面31cは、曲面で形成されている。
【0046】
本実施形態においても、図8に示されるように、当接部32は、基部3Bの側部から幅方向(第2方向)D2に延びるように突出している。そして、当接部32は、基部3Bの幅方向(第2方向)D2における両側部に設けられている。すなわち、当接部32は、幅方向(第2方向)D2で離間して設けられている。ただし、当接部32は、基部3Bの幅方向(第2方向)D2における一側部のみに設けられてもよい。本実施形態においても、当接部32は、基部3Bの側部から幅方向(第2方向)D2に向かって突出する直方体形状を有している。
【0047】
本実施形態においても、図8に示されるように、当接部32は、ハウジング2の第2被係合部232と係合可能な当接面32aを有している。本実施形態においても、当接面32aは、当接部32の延在方向D1の一方向(挿入方向D11)を向く面である。具体的には、当接面32aは、直方体形状を有する当接部32における延在方向D1の一方向(挿入方向D11)を向く平面であり、当接面32aは、端子3が取付位置に位置する際に、第2被係合部232と面接触する(図10C参照)。そして、当接面32aの幅方向(第2方向)D2の端縁32eは、係合面31aの幅方向(第2方向)D2の端縁31eよりも端子3の中心軸CLに対して幅方向(第2方向)D2で離間している。
【0048】
本実施形態においても、図9A図9BにおけるIXA-IXA線の断面図である)に示されるように、ハウジング2は、相手方コネクタC1の相手方ハウジングC2(図1参照)と嵌合する(具体的には、相手方ハウジングC2を外嵌する)ように設けられた嵌合孔21を有している。そして、ハウジング2は、端子3を保持する端子取付孔22を有している。なお、本実施形態では、ハウジング2は、コネクタ1が複数の端子3を有することに対応して、複数(図9Aの例では、3つ)の端子取付孔22を有しているが、コネクタ1が端子3を1つのみ有することに対応して、1つのみの端子取付孔22を有していてもよい。本実施形態においても、端子取付孔22および嵌合孔21から構成される貫通孔20が、ハウジング2の外面のうち離脱方向D12を向く端面2aと挿入方向D11を向く端面2bとの間を第1方向D1で貫通している。
【0049】
本実施形態では、図9Bに示されるように、端子取付孔22は、端子3の基部3B(具体的には、一方側基部31B(図8参照))を挿通可能であるように、第1方向D1から見て、第2方向D2に延びる端子挿通孔220(図9BのXA-XA線の断面図である図10Aも参照)と、第3方向D3に湾曲する端子3の係合部31と係合可能であるように、端子挿通孔220の第2方向D2における端部から第2方向D2に延びる第1端子取付孔221(図9BのXB-XB線の断面図である図10Bも参照)と、当接部32と係合可能であるように、第1方向D1から見て、端子挿通孔220の第2方向D2における端部からさらに第2方向D2に延びる第2端子取付孔222(図9BのXC-XC線の断面図である図10Cも参照)とを備えている。
【0050】
図10Aに示されるように、端子挿通孔220は、嵌合孔21を画定するハウジング2の内面のうち、挿入方向D11側の内壁である底部21aと、ハウジング2の外面のうち、挿入方向D11を向く端面2bとの間を第1方向D1で貫通している。本実施形態では、端子挿通孔220は、端子3の基部3B(一方側基部31B)より若干大きい直方体形状でハウジング2を貫通している。図10Bに示されるように、第1端子取付孔221は、底部21aと端面2bとの間を第1方向D1で貫通している。本実施形態では、第1端子取付孔221は、挿入方向D11側において、端子3の係合部31の厚さ方向D3の長さよりも若干長い厚さ方向の寸法を有する直方体形状であり、離脱方向D12側において、端子3の係合部31の厚さ方向D3の長さよりも若干短い厚さ方向の寸法を有する直方体形状である。換言すれば、ハウジング2は、端子取付孔22の離脱方向D12側の内面22aから第3方向D3に突出する凸部23を有している。図10Cに示されるように、第2端子取付孔222は、底部21aから挿入方向D11に窪む有底形状を有している。本実施形態では、第2端子取付孔222は、端子3の当接部32より若干大きい直方体形状で底部21aから窪んでいる。
【0051】
本実施形態では、図10Bに示されるように、凸部23の挿入方向D11を向く面は、第1被係合部231を構成する。また、本実施形態では、凸部23の第3方向D3を向く面は、端子3を端子取付孔22に挿入する際に、端子3の係合部31と接触する接触部233を構成する。凸部23の形状は、特に限定されることはないが、本実施形態では、端子取付孔22の内面22aから第3方向D3に矩形形状で突出している。そして、図3の例の凸部23と同様に、第1被係合部231と接触部233とが交差する角部234は、端子3の離脱方向D12への抜けを抑制する効果が向上させるために面取りされていない。また、図3の例の凸部23と同様に、凸部23の離脱方向D12を向く面236と接触部233とが交差する角部237は、端子3が端子取付孔22の内部に案内され易いように面取りされている。
【0052】
本実施形態では、図10Cに示されるように、第2被係合部232は、第2端子取付孔222の離脱方向D12を向く面である。
【0053】
図11Aに示されるように、本実施形態において、端子3がハウジング2の端子取付孔22に挿入されると、まず、端子3の係合部31の爪部31T(より詳細には、傾斜面31b)が、ハウジング2の凸部23の離脱方向D12を向く面236(より詳細には、角部237)と当接することで、係合部31(具体的には、アーム部31S)が、第3方向D3の内側に弾性変形し始める。その際に、本実施形態では、第1実施形態と同様に、端子3の傾斜面31bおよびハウジング2の角部237によって、係合部31は、第3方向D3の内側に容易に弾性変形するとともに、端子3は、端子取付孔22に容易に挿入される。
【0054】
図11Bに示されるように、端子3がハウジング2の端子取付孔22にさらに挿入されると、端子3の係合部31が、端子取付孔22(具体的には、第1端子取付孔221)の内部に挿入され始める。具体的には、端子3の係合部31の接続面31cが、ハウジング2の端子取付孔22の内面22a(より詳細には、接触部233)と接触し始める。その際に、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、係合部31が端子取付孔22の内面22a(接触部233)の形状に応じて弾性変形しながら端子取付孔22の内部に挿入されることで、係合部31から端子取付孔22の接触部233に過度な応力が加わることが抑制されるので、端子取付孔22の内面22a(接触部233)を切削し難くなる。さらに、本実施形態においても、接続面31cが曲面で形成されているので、端子取付孔22の接触部233に対して摺動しながら挿入方向D11に移動しても、端子取付孔22の内面22a(接触部233)を切削し難くなる。
【0055】
端子3がハウジング2の端子取付孔22にさらに挿入されると、端子3は、所定の取付位置に到達する(図10A図10C参照)。図10Bに示されるように、取付位置では、係合部31は、弾性変形(図11B参照)から復元し、係合部31の係合面31aは、離脱方向D12に端子3が移動することを規制するように、ハウジング2の第1被係合部231と係合する。また、図10Cに示されるように、当接部32の当接面32aは、端子3が挿入方向D11へ移動することを規制するように、ハウジング2の第2被係合部232と係合する。
【0056】
このように、本実施形態では、第1実施形態と同様に、圧入による保持のように、端子取付孔22の内面22aが過度に切削されることがないので、端子取付孔22による端子3の保持力を損なうことが抑制される。なお、本実施形態において、取付位置においても、係合部31が、接触部233との当接によって、ある程度、第3方向D3に弾性変形した状態で、ハウジング2の第1被係合部231と係合するように構成されてもよい。この場合、端子3は、係合部31が弾性変形によって端子取付孔22の内面22aの間で挟持された状態で、端子取付孔22に保持されるので、端子3が、ハウジング2に対して第3方向D3で移動することが規制される。これにより、ハウジング2による端子3の保持が安定するとともに、第3方向D3での端子3のハウジング2に対する位置ずれが抑制される。
【符号の説明】
【0057】
1 コネクタ
2 ハウジング
20 貫通孔
21 嵌合孔
21a 底部
22 端子取付孔
220 端子挿通孔
221 第1端子取付孔
222 第2端子取付孔
22a 内面
23 凸部
231 第1被係合部
232 第2被係合部
233 接触部
234、235、237 角部
236 離脱方向を向く面
2a 離脱方向を向く端面
2b 挿入方向を向く端面
3 端子
3C、3D 隙間
30a 凸部分
30b 凹部分
31 係合部
31a 係合面
31b 傾斜面
31c 接続面
31d 側部
31e 端縁
31S アーム部
31T 爪部
32 当接部
32a 当接面
32e 端縁
3a 一方の面
3B 基部
31B 一方側基部
32B 他方側基部
3b 他方の面
3H 保持部
3Ha 切欠部
3m 端部
3n 端部
A 領域
B 基板
Ba 表面
Bh 貫通孔
C1 相手方コネクタ
C2 相手方ハウジング
C3 相手方端子
CL 中心軸
D1 第1方向(端子の延在方向)
D11 挿入方向
D12 離脱方向
D2 第2方向(端子の幅方向)
D3 第3方向(端子の厚さ方向)
G 隙間
M 回転モーメント
R 反力
α 角度
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B