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特開2024-180113エネルギー管理システム、エネルギー管理方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180113
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】エネルギー管理システム、エネルギー管理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20241219BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20241219BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099570
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】爰島 快行
(72)【発明者】
【氏名】杉森 洋一
(72)【発明者】
【氏名】山根 翔太郎
(72)【発明者】
【氏名】兼平 祐己朗
(72)【発明者】
【氏名】薬師 宏治
(72)【発明者】
【氏名】小田 奎
【テーマコード(参考)】
3C100
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
3C100AA01
3C100AA29
3C100AA38
3C100AA56
3C100BB13
3C100BB33
5L049CC04
5L050CC04
(57)【要約】
【課題】利用者にとって有用な情報を導出することができるエネルギー管理システム、エネルギー管理方法、およびプログラムを提供すること。
【解決手段】実施形態のエネルギー管理システムは、生産計画作成部と、動力計画生成部と、導出部とを持つ。生産計画作成部は、与えられた数量の製品を生産するための生産計画を生成する生産計画作成部であって、生成した生産計画の内容を変更することで熱エネルギーおよび電気エネルギーであるエネルギーを利用するタイミングの変更が伴う生産計画を生成する。動力計画生成部は、前記生産計画における前記エネルギーの需要を満たすように動力設備が前記エネルギーを前記生産計画に対応する生産設備に供給する動力計画を生成する。導出部は、前記動力計画生成部により生成された動力計画に基づいて、前記生産計画における生産単位ごとのCO2の排出量を導出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
与えられた数量の製品を生産するための生産計画を生成する生産計画作成部であって、生成した生産計画の内容を変更することで熱エネルギーおよび電気エネルギーであるエネルギーを利用するタイミングの変更が伴う生産計画を生成する生産計画作成部と、
前記生産計画における前記エネルギーの需要を満たすように動力設備が前記エネルギーを前記生産計画に対応する生産設備に供給する動力計画を生成する動力計画生成部と、
前記動力計画生成部により生成された動力計画に基づいて、前記生産計画における生産単位ごとのCO2の排出量を導出する導出部と、
を備えるエネルギー管理システム。
【請求項2】
前記動力計画生成部は、前記熱エネルギーを供給および利用する際に生じる損失を計算し、
前記導出部は、前記計算された熱エネルギーの損失を生産単位ごとに割り振る、
請求項1に記載のエネルギー管理システム。
【請求項3】
前記生産単位に割り振った前記熱エネルギーの損失と、前記生産単位に必要なエネルギーとを関連付けて表示部に表示させる表示制御部と、を備える、
請求項2に記載のエネルギー管理システム。
【請求項4】
前記導出部は、割り振られた前記熱エネルギーの損失を加味して、生産単位ごとのCO2排出量を計算する、
請求項2または3に記載のエネルギー管理システム。
【請求項5】
前記生産単位に割り振った前記熱エネルギーの損失と、前記生産単位に必要なエネルギーと、生産単位のCO2排出量とを関連づけて表示部に表示させる表示制御部と、を備える、
請求項4に記載のエネルギー管理システム。
【請求項6】
第1の生産計画の前記生産単位に割り振った前記熱エネルギーの損失と前記生産単位に必要なエネルギーとを関連付けた情報と、前記第1の生産計画の内容を変更した第2の生産計画の前記生産単位に割り振った前記熱エネルギーの損失と前記生産単位に必要なエネルギーとを関連付けた情報とを比較可能に表示部に表示させる表示制御部と、を備える、
請求項2に記載のエネルギー管理システム。
【請求項7】
前記導出部は、前記生産計画において同じ時間帯に生産される第1製品のエネルギー需要量および第2製品のエネルギー需要量と、前記時間帯におけるエネルギーの損失とに基づいて、前記時間帯における前記エネルギーの損失を前記第1製品と前記第2製品とに割り振り、
前記第1製品に前記割り振られた前記エネルギーの損失と前記第1製品のエネルギー需要量とに基づくCO2排出量と、
前記第2製品に前記割り振られた前記エネルギーの損失と前記第2製品のエネルギー需要量とに基づくCO2排出量と、を比較可能に表示部に表示させる表示制御部を更に備える、
請求項4に記載のエネルギー管理システム。
【請求項8】
生産計画を生成する生産計画作成部であって、生成した生産計画の内容を変更することで熱エネルギーおよび電気エネルギーであるエネルギーを利用するタイミングの変更が伴う生産計画を生成する生産計画作成部と、
前記生産計画作成部が生成した前記エネルギーを利用するタイミングの変更が伴う生産計画における前記エネルギーの需要を満たすように動力設備が前記エネルギーを前記生産計画に対応する生産設備に供給する動力計画を生成すると共に、前記熱エネルギーを供給および利用する際に生じる前記エネルギーの損失を計算する動力計画生成部と、
前記動力計画生成部により計算された熱エネルギーの損失を生産単位ごとに割り振る導出部と、
を備えるエネルギー管理システム。
【請求項9】
前記生産単位に割り振った前記熱エネルギーの損失と、前記生産単位に必要なエネルギーとを関連付けて表示部に表示させる表示制御部と、を備える、
請求項8に記載のエネルギー管理システム。
【請求項10】
コンピュータが、
与えられた数量の製品を生産するための生産計画を生成し、生成した生産計画の内容を変更することで熱エネルギーおよび電気エネルギーであるエネルギーを利用するタイミングの変更が伴う生産計画を生成し、
前記生産計画における前記エネルギーの需要を満たすように動力設備が前記エネルギーを前記生産計画に対応する生産設備に供給する動力計画を生成し、
生成された動力計画に基づいて、前記生産計画における生産単位ごとのCO2の排出量を導出する、
エネルギー管理方法。
【請求項11】
コンピュータに、
与えられた数量の製品を生産するための生産計画を生成させ、生成した生産計画の内容を変更することで熱エネルギーおよび電気エネルギーであるエネルギーを利用するタイミングの変更が伴う生産計画を生成させ、
前記生産計画における前記エネルギーの需要を満たすように動力設備が前記エネルギーを前記生産計画に対応する生産設備に供給する動力計画を生成させ、
生成された動力計画に基づいて、前記生産計画における生産単位ごとのCO2の排出量を導出させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エネルギー管理システム、エネルギー管理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外部からの受電電力,受入冷温熱量,自家発設備運転実績,冷温熱設備運転実績を記録管理するユーティリティ管理装置と、資材及び原料使用実績を記録管理する資材管理装置と、製造期間中のファシリティ設備の使用エネルギーを管理記録するファシリティ管理装置と、製品の生産実績を管理する製造実行管理装置と、ユーティリティ管理装置、資材管理装置、ファシリティ管理装置、製造実行管理装置に記録管理された各実績から温室効果ガス排出量を計算する排出量算出手段と、排出量算出手段で算出した温室効果ガス排出量を製品一単位量に配賦する排出量配賦手段と、製造ロットに対して配賦した温室効果ガス排出量データを、ロットの固有データとして管理する排出量管理装置を備えたカーボントレーサビリティ管理システムが開示されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、上記の従来技術では、利用者にとって有用な情報を導出することができないことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2010/095687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は、利用者にとって有用な情報を導出することができるエネルギー管理システム、エネルギー管理方法、およびプログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のエネルギー管理システムは、生産計画作成部と、動力計画生成部と、導出部とを持つ。生産計画作成部は、与えられた数量の製品を生産するための生産計画を生成する生産計画作成部であって、生成した生産計画の内容を変更することで熱エネルギーおよび電気エネルギーであるエネルギーを利用するタイミングの変更が伴う生産計画を生成する。動力計画生成部は、前記生産計画における前記エネルギーの需要を満たすように動力設備が前記エネルギーを前記生産計画に対応する生産設備に供給する動力計画を生成する。導出部は、前記動力計画生成部により生成された動力計画に基づいて、前記生産計画における生産単位ごとのCO2の排出量を導出する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】エネルギー管理システム1の構成の一例を示す図である。
図2】生産計画の一例を示す図である。
図3】設備情報40について説明するための図である。
図4】生産計画に対応する動力計画において製品ごとの蒸気需要および電力需要を示す図である。
図5】生産計画1に対応する動力計画において製品ごとの蒸気需要およびエネルギーロスを示す図である。
図6】生産計画2に対応する動力計画において製品ごとの蒸気需要およびエネルギーロスを示す図である。
図7】生産計画のエネルギーロスについて説明するための図である。
図8】表示制御部30が表示部に表示させる画像の一例を示す図である。図8は、生産計画1に対応する画像である。
図9】表示制御部30が表示部に表示させる画像の他の一例を示す図である。
図10】表示制御部30が表示部に表示させる画像の他の一例を示す図である。
図11】表示制御部30が表示部に表示させる画像の他の一例を示す図である。
図12】エネルギー管理システム1により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照し、本発明のエネルギー管理システム、エネルギー管理方法、およびプログラムの実施形態について説明する。
【0009】
[全体構成]
図1は、エネルギー管理システム1の構成の一例を示す図である。エネルギー管理システム1は、例えば、生産計画作成部10と、エネルギー計算部20と、表示制御部30と、設備情報40と、動力計画60と、表示部70とを備える。これらの任意の構成は、一つの装置として構成されていてもよいし、分散した構成とされてネットワークを介して通信可能とされていてもよい。ネットワークは、例えば、インターネット、WAN(Wide Area Network)、LAN(Local Area Network)、電話回線、公衆回線、専用回線、プロバイダ装置、無線基地局等を含む。
【0010】
生産計画作成部10と、エネルギー計算部20と、表示制御部30とは、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等のハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ等の記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROM等の着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることで記憶装置にインストールされてもよい。生産計画作成部10と、エネルギー計算部20と、表示制御部30とは、一つの機能部であってもよいし、任意の機能が他の機能部に搭載されていてもよい。
【0011】
設備情報40と、動力計画60とは、異なる記憶部に記憶されていてもよいし、一つの記憶部に記憶されていてもよい。記憶部は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはRAM(Random Access Memory)等により構成される。
【0012】
[各構成の説明]
(生産計画作成部)
生産計画作成部10は、与えられた数量の製品を生産するための生産計画を作成する。生産計画作成部10は、同じ製品または製品群を生産する際に、異なる生産計画を作成可能である。生産計画作成部10は、作成した生産計画の内容を変更することで熱エネルギーおよび電気エネルギーであるエネルギーを利用するタイミングの変更が伴う生産計画を作成する。
【0013】
生産計画作成部10は、利用者が入力した生産する製品や数、納期、条件などの情報と、所定のアルゴリズムとに基づいて生産計画を作成してもよい。所定のアルゴリズムとは、複数の製品の生産を効率的且つ条件を満たすように生産することが可能な生産計画を導出する最適化アルゴリズムである。また、生産計画作成部10は、利用者が生産期間など必要な情報を入力することで生産計画を設定したり、作成したりしてもよい。また、生産計画作成部10は、自動または手動で作成された生産計画を編集する機能を有していてもよい。例えば、生産計画は、変更可能(「ずらす」ことが可能)である。
【0014】
図2は、生産計画の一例を示す図である。図2の横軸は、時間を示している。生産計画1は、製品A-Cの生産時期が重複せず、製品Dの生産時期と製品Eの生産時期とが重複する生産計画である。生産計画2は、製品A-Eの生産時期が重複する生産計画である。このような生産計画が作成される。
【0015】
(エネルギー計算部)
エネルギー計算部20は、例えば、動力計画生成部22と、導出部24を含む。動力計画生成部22は、生産計画作成部10が作成したエネルギーを利用するタイミングの変更が伴う生産計画におけるエネルギー需要を満たすように設備(動力設備、動力部)がエネルギーを生産計画に対応する生産設備に供給する動力計画を生成する。
【0016】
例えば、動力計画生成部22は、設備情報40、および生産計画に基づいて、動力計画60を生成する。動力計画60とは、各設備の稼働計画である。設備とは、ボイラや、タービン(高圧タービン、中圧タービン、低圧タービン)、発電機、蓄電池など種々の設備を含む。動力計画生成部22は、例えば、記憶部(不図示)に記憶されたまたは生産計画に含まれる各製品を生産するために必要なエネルギーや、各製品を生産するために稼働させる機器に必要なエネルギーを供給可能な動力計画を生成する。
【0017】
図3は、設備情報40について説明するための図である。設備情報40は、熱エネルギーおよび電気エネルギーを生成する設備に関する情報であって、設備の構成や、設備間の関係、設備の仕様、各設備が生成可能な熱エネルギーまたは電気エネルギー、設備の状態(稼働状況)に応じた各設備で発生する損失、設備の状態に応じた各設備で発生するCO2の排出量などの情報である。例えば、図示するように、設備情報40は、各設備の接続形態が含まれている。更に設備情報40は、この接続形態において設備を稼働させたときの設備に関する情報が含まれている。
【0018】
動力計画生成部22は、設備情報40に基づいて定義された最適化の数式(目的関数と制約条件とを定義する数式)に基づいて、各設備を利用して生産計画において与えられた数量の製品の生産を行うために必要な熱エネルギーおよび電気エネルギーの最適解を求める。例えば、上記の最適解を求める数式が、動力計画生成部22に含まれる最適化ソルバに入力されて、最適解が求められる。動力計画生成部22は、例えば網羅的に各設備の稼働状況を仮想的に変更して(燃料などの入力や設備の出力などの変動要因を変動させて)生産計画を達成することができる動力計画を効率的に導出する。また、動力計画生成部22は、予め定められた制約条件を満たす動力計画を導出する。例えば、動力計画生成部22は、エネルギー需要を満たした上で熱量が最小となる動力計画を生成する。
【0019】
動力計画生成部22は、動力計画において発生するエネルギーロスを導出する。エネルギーロスは、生成または取得されたエネルギーのうち損失となるエネルギーである。エネルギーロスは、例えば、動力計画において生成または取得されるエネルギーから製品の生産に利用されるエネルギーを差し引いたエネルギーである。
【0020】
エネルギーロスは、例えば、排ガス熱による排ガス損失、配管における熱損失である配管損失(放熱損失、漏洩損失、圧力損失)、冷却水によって失われる損失である循水器放熱損失、大気放出による損失である。これらの損失は、公知の手法、各設備の仕様、および動力計画によって求められる。例えば、動力計画生成部22は、動力計画における各設備の稼働態様や、効率、エネルギーのパス、損失を算出するための係数などを利用して各設備におけるエネルギーロスを求める。動力計画生成部22は、上記の熱エネルギーロスに加え、電気エネルギーロスを導出してもよい。
【0021】
(導出部)
導出部24は、動力計画生成部22が求めた動力計画ごとの設備に入力されるエネルギーおよび設備が出力するエネルギーを取得する。更に、導出部24は、生産計画に対応する動力計画において生産単位ごと(例えば生産ロットごとや、製品ごとなど)に必要なエネルギーを取得する。上記の必要なエネルギー(エネルギー需要)の情報は、生産計画に応じて予め定義された生産単位ごとに必要なエネルギーであって、生産計画作成部10から提供される。また、導出部24は、動力計画生成部22により計算された熱エネルギーの損失を生産単位ごとに割り振る。
【0022】
導出部24は、動力計画生成部22により生成された動力計画に基づいて、生産計画における生産単位ごとのCO2の排出量を導出する。導出部24は、動力計画の設備の稼働状況と、設備情報40の設備の稼働状況に対応するCO2の排出量とに基づいて、CO2排出量を導出する。このCO2排出量を求める際に、熱エネルギーの損失が加味される。設備情報40の設備の稼働状況に対応するCO2の排出量は、予め規定されたCO2の排出量である。例えば、導出部24は、CO2排出量に対して、動力計画において生成または取得されたエネルギーに対応する係数や関数を適用してCO2排出量を導出する。この際、導出部24は、エネルギーロスに対応するエネルギーの生成方法を加味してもよい。例えば、導出部24は、エネルギーロスに対応するエネルギーが生成された生成手法に応じた係数や関数を適用してCO2排出量を導出する。
【0023】
図4は、生産計画に対応する動力計画において製品ごとの蒸気需要および電力需要を示す図である。図4の左図は生産計画1に対応する図であり、図4の右図は生産計画2に対応する図である。図4の上から、高圧蒸気需要、中圧蒸気需要、低圧蒸気需要、電力需要を示している。縦軸は需要量を示し、横軸は時間を示している。生産計画1は、製品A~Cの生産が重複しないように生産を行い、その後、製品DおよびEを生産する計画である。生産計画1は、生産計画2よりも長い時間を掛けて製品A~Eを生成するため、その生産の期間においてエネルギーおよび電力が必要である。生産計画2は、製品A~Eの生産を重複して行うため、生産計画1よりも短い期間において生産計画1よりも大きいエネルギーおよび大きい電力が必要である。
【0024】
図5は、生産計画1に対応する動力計画において製品ごとのエネルギー需要およびエネルギーロスを示す図である。図6は、生産計画2に対応する動力計画において製品ごとのエネルギー需要およびエネルギーロスを示す図である。図5に示す生産計画1のエネルギーロスは、図6に示す生産計画2のエネルギーロスよりも大きい。製品ごとのエネルギーロスは、導出部24が、動力計画生成部22が生成した情報を用いて導出した情報である。なお、エネルギーロスは、熱エネルギーロスと、電気エネルギーロスとが区別されてもよい。
【0025】
図7は、生産計画のエネルギーロスについて説明するための図である。生産計画1では、製品Dおよび製品Eを生産する期間の初期において蒸気需要が大きい、その後、蒸気需要は急減する。更に、蒸気需要が減少したときには、電力需要が高止まりしている。電力を生成するための蒸気は不要となり、生成済の蒸気は余剰な蒸気となる。このように生産計画1では、製品Dおよび製品Eを生産する期間においてエネルギーロスが比較的多くなる。
【0026】
表示制御部30は、生産単位に割り振った熱エネルギーの損失と、生産単位に必要なエネルギーとを関連付けて表示部70に表示させる。表示制御部30は、生産単位に割り振った熱エネルギーの損失と、生産単位に必要なエネルギーと、生産単位のCO2排出量とを関連づけて表示部70に表示させる。
【0027】
(表示態様1)
表示制御部30は、生産計画1の生産単位に割り振った熱エネルギーの損失と生産単位に必要なエネルギーとを関連付けた情報と、生産計画1の内容を変更した生産計画2の生産単位に割り振った熱エネルギーの損失と生産単位に必要なエネルギーとを関連付けた情報とを比較可能に表示部に表示させる。表示制御部30は、生産計画において所定の時間帯に生産される第1製品(例えば製品D)に割り振られたエネルギー損失と第1製品のエネルギー需要量とに基づくCO2排出量と、上記所定の時間帯に生産される第2製品(例えば製品E)に割り振られたエネルギー損失と第2製品のエネルギー需要量とに基づくCO2排出量と、を比較可能に表示部に表示させる。上記の割り振りは、上述したように導出部24により行われる。導出部24は、第1製品のエネルギー需要量および第2製品のエネルギー需要量と、所定の時間帯におけるエネルギーの損失とに基づいて、所定の時間帯におけるエネルギーの損失を第1製品と第2製品とに割り振る。
【0028】
図8は、表示制御部30が表示部に表示させる画像の一例を示す図である。図8は、生産計画1に対応する画像である。図8および後述する図9は、前述した時系列ごとのエネルギー需要およびエネルギーロスを表した図5および図6を、時系列を考慮せずに表した図である。図8は、図5の各時間のエネルギーを足し合わせた結果を示している。図9は、図6の各時間のエネルギーを足し合わせた結果を示している。
【0029】
画像は、領域A~Eを含み、領域A~Eが、この順に並んでいる画像である。領域Aは、動力部が供給するエネルギーの大きさを示している。領域Bは、エネルギーの種別の内訳であって、エネルギーロスの大きさ、電力の大きさ、高圧蒸気の大きさ、中圧蒸気の大きさ、および低圧蒸気の大きさを示している。領域Bは、他のエネルギーの種別を含んでいてもよい。領域Cは、エネルギーロスの大きさと、生産部のエネルギー需要の大きさとを示している。領域Dは、製品ごとのエネルギーロスとエネルギー需要とを示している。製品ごとのエネルギー需要とは、その製品の生産に必要なエネルギーの大きさである。製品ごとのエネルギーロスとは、その製品の生産に必要なエネルギーの生成または利用に対するエネルギーロスである。領域Eは、製品ごとのCO2排出量の大きさである。製品ごとのCO2排出量とは、対象の製品の生産において排出されたCO2排出量であり、対象の製品に対応するエネルギーロスとエネルギー需要とによって生じるCO2排出量である。
【0030】
図9は、表示制御部30が表示部に表示させる画像の他の一例を示す図である。図9は、生産計画2に対応する画像である。領域A~Eに示される情報は、生産計画2に対応する情報であって、上記で説明した領域A~Eの種別の画像である。領域A~Eが並ぶ順番は、図8図9とは異なる順番であってもよいし、利用者の操作によって順番が変更されてもよい。また、領域A~Eの任意の領域の情報は省略されてもよい。なお、図8図9とは、同じ画面に比較可能に表示されてもよい。また、図8または図9のエネルギーロスを示す値や、エネルギー需要、CO2排出量を示す値が具体的に示されてもよい。
【0031】
ここで、エネルギーロスは、例えば、製品の生産に必要なエネルギー需要に応じて按分される。たとえば、同じ時間帯において製品Dおよび製品Eを生成するものとする。この際、製品Dのエネルギー需要と、製品Eのエネルギー需要との比が「7:3」である場合、エネルギーロスについても「7:3」でエネルギーロスが按分される。例えば、製品Dに「7」のエネルギーロスが付与され、製品Eに「3」のエネルギーロスが付与される。
【0032】
なお、この按分は、上記とは異なる基準で行われてもよい。例えば、所定期間において生産される製品のエネルギー需要に基づいて按分されてもよい。例えば、製品A-製品Eを生産する生産計画では、製品A-製品Eのそれぞれのエネルギー需要の割合に応じてエネルギーロスが按分されてもよい。また、利用者の操作に基づいて、按分が決定されてもよいし、按分後に修正がされてもよい。更に、製品の種別に基づいて、補正がされてもよい。製品ごとに付与された補正情報に基づいて、按分が決定されてもよい。例えば、導出部24は、補正情報に基づいて、按分した値を補正してもよい。
【0033】
(表示態様2)
図10は、表示制御部30が表示部に表示させる画像の他の一例を示す図である。図10の画像は、エネルギーなどの内訳を棒グラフで示した画像である。この画像は、棒グラフA1~G1を含む。棒グラフA1は、例えば、エネルギーの内訳を示している。内訳は、例えば、エネルギーが生成された種別に対応するエネルギー量であって、ボイラの燃焼のトータルのエネルギー量、購入電力、およびPV(Photovoltaic)電力である。棒グラフB1は、例えば、棒グラフA1よりもより詳細なエネルギーの内訳を示している。内訳は、例えば、ボイラの種別(例えば都市ガスボイラ、水素ボイラ)に対応するエネルギー量、購入電力の種別(再生エネルギー由来、化石燃料由来)に対応するエネルギー量、PV電力、および蓄電池に蓄電されたエネルギーである。棒グラフC1は、例えば、上記の棒グラフB1の内訳におけるエネルギーロスを、棒グラフB1の内訳に追加した棒グラフである。棒グラフD1は、例えば、棒グラフC1の内訳において、ボイラから出力される蒸気の種別ごとのエネルギーおよび各ボイラにより生成される電力が細分化された棒グラフである。
【0034】
棒グラフE1は、例えば、エネルギーの需要の内訳を示す棒グラフである。エネルギーの需要の内訳は、例えば、エネルギーロスと、製品Aを生産するためのエネルギー需要と、製品Bを生産するためのエネルギー需要と、施設におけるエネルギー需要である。施設におけるエネルギー需要とは、例えば、施設の空調や食堂で必要とされるエネルギー需要や、その他の動力需要である。棒グラフF1は、棒グラフE1の内訳を更に細分化した棒グラであって、施設におけるエネルギー需要を製品Aと製品Bとに振り分けた態様の棒グラフである。棒グラフG1は、棒グラフF1の内訳を更に細分化した棒グラフであって、エネルギーロスを製品Aと製品Bとに振り分けた態様の棒グラフである。
【0035】
(表示態様3)
図11は、表示制御部30が表示部に表示させる画像の他の一例を示す図である。図11では、エネルギーが、生産プロセスの各工程でどのように利用されるかを示している。具体的には、エネルギーが帯状に示され、帯状のエネルギーが、どの地点を通過しているかを示すことによりどのように利用されるかを示している。
【0036】
例えば、図11の左側のスタート地点(分岐点1)は、生成されたエネルギーを示している。分岐点2は、分岐点1で分岐されたエネルギーの種別を示している。エネルギーの種別は、グリーンエネルギー、ブルーエネルギー、およびグレーエネルギーである。
【0037】
グリーンエネルギーは、再生可能エネルギーを利用して生成されたエネルギーである。グレーエネルギーは、化石燃料が利用されて生成されたエネルギーである。グレーエネルギーは、Scope Aの直接排出量を伴うエネルギーである。ブルーエネルギーは、化石燃料が利用されて生成されたエネルギーであるが、CO2回収技術によりCO2の排出が抑制されたり、回収されたCO2が貯留されたりして、他の工程において利用可能とした排出を伴うエネルギーである。
【0038】
分岐点3では、分岐点2のエネルギーの種別ごとの利用形態を示している。例えば、グリーンエネルギー、ブルーエネルギー、およびグレーエネルギー(各種エネルギー)は、エネルギーロスがあり、各種エネルギーは、熱エネルギーおよび電気エネルギーに利用される。
【0039】
分岐点4では、更に詳細なエネルギーの種別ごとの利用態様を示している。分岐点4では、図示するように、各種エネルギーが高圧タービン(HP)、中圧タービン(IP)、低圧タービン(LP)、電気エネルギーに利用されることが示されている。
【0040】
分岐点5では、エネルギーがどの製品に利用されるかを示している。例えば、高圧タービンの出力は、製品Aおよび製品Bの生産に利用され、その生産において熱エネルギーと電気エネルギーが利用されることを示している。中圧タービンおよび低圧タービンについても同様である。
【0041】
分岐点6では、各タービンの出力を利用した熱エネルギーおよび電気エネルギーが利用されて、製品Aが生産され、各タービンの出力を利用した熱エネルギーおよび電気エネルギーが利用されて、製品Bが生産されることを示している。本図を参照することで、製品Aおよび製品Bの生産において、各エネルギーの種別のエネルギーロスが発生すること、エネルギーの一部は、製品Aおよび製品Bに利用されない電気エネルギーとなることが認識可能である。
【0042】
[フローチャート]
図12は、エネルギー管理システム1により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。エネルギー管理システム1において、生産計画を作成する担当者が、例えば手動で生産計画を入力すると、動力計画生成部22は、生産計画作成部10から生産計画を取得する(ステップS100)。次に、動力計画生成部22は、設備情報40、および生産計画に基づいて、動力計画を生成する(ステップS102)。次に、動力計画生成部22は、動力計画において発生するエネルギーロスを導出する(ステップS104)。次に、導出部24は、エネルギーロスを加味したCO2を導出する(ステップS106)。
【0043】
次に、導出部24は、生産計画において生産される製品に対してCO2を対応付ける(ステップS108)。次に、表示制御部30は、上述した各処理の結果を利用して表示部70に表示させる情報を生成する(ステップS110)。次に、表示制御部30は、上記の生成した情報を表示部70に表示させる(ステップS112)。これにより、本フローチャートの1ルーチンの処理が終了する。なお、ステップS112の後、生産計画が変更されると(ずらされると)、ステップS100および以降の処理が行われ、その生産計画に応じた情報が表示部70に表示される。
【0044】
上記の処理により、表示制御部30は、例えば、エネルギーロスや、製品ごとのCO2排出量などの情報を表示態様1-3の態様で表示部に表示させることができる。これにより、利用者に有益な情報を提供することができる。また、上記の処理において、情報が表示された後、生産計画をずらした場合(変更した場合)、エネルギー管理システム1は、ずらした生産計画に応じたエネルギーロスや、製品ごとのCO2排出量などの情報を表示態様1-3の態様で表示部に表示させることができる。このため、利用者は、生産計画に応じた情報を容易に認識することができる。
【0045】
例えば、カーボンニュートラルに向けて工場などの施設から排出されるCO2を減少させることが期待されている。これを実現するために、施設の動力部(例えばボイラーやタービン)の運転を最適化していることがある。CO2を減少するためには、更に、CO2排出量を可視化して、CO2排出量をより容易に管理したり、認識したりすることが求められている。
【0046】
上記のように、CO2排出量の管理、認識を、エネルギーを作る側の動力部と、エネルギーを使う側の生産部との双方が行い、これらが連携してCO2を減らすことを実現することが重要である。そこで、本実施形態では、以下の(1)から(4)が繰り返し行われることで、エネルギーの需要と供給の双方によるCO2排出量の削減を支援することができる。
【0047】
(1)生産計画を「ずらす」ことでエネルギーを必要とするタイミングを変更することができる。
(2)変更されたタイミングに合わせてエネルギーを供給する動力計画を作成すると共に、エネルギーを供給または利用する際に生じる損失を導出する。
(3)エネルギー損失を製品単位に割り振り、そのエネルギー損失を加味して製品単位のCO2排出量を導出する。
(4)製品単位の損失とCO2排出量とを関連付けて可視化を可能にする。
【0048】
上記の実施によって、例えば、エネルギーを使うタイミングをどのようにずらす(生産計画をずらす)とCO2排出量が減少するかを容易に可視化することができる。例えば、生産計画におけるプロセスのどのプロセスで(タイミングで/どの製品を生産するときに/どの工程を行うときに)、熱エネルギーの損失(余計なCO2を排出)を可視化でき、容易にこれらを把握することができる。熱エネルギーの損失が大きい製品の生産タイミングの変更またはCO2排出量が比較的少ない生産計画の生成を支援することができるため、エネルギー損失を減らし、CO2排出量の削減に寄与することができる。
【0049】
上記のように、エネルギー管理システム1は、与えられた数量の製品を生産するための生産計画を生成し、生成した生産計画の内容を変更することで熱エネルギーおよび電気エネルギーであるエネルギーを利用するタイミングの変更が伴う生産計画を生成する生産計画作成部と、前記生産計画における前記エネルギーの需要を満たすように動力設備が前記エネルギーを前記生産計画に対応する生産設備に供給する動力計画を生成し、動力計画に基づいて、前記生産計画における生産単位ごとのCO2の排出量を導出することにより、利用者にとって有用な情報を導出することができる。例えば、この情報が利用者に提供されることで、より適切なエネルギーの管理を支援することができる。
【0050】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0051】
1‥エネルギー管理システム、10‥生産計画作成部、20‥エネルギー計算部、22‥動力計画生成部、24‥導出部、30‥表示制御部、40‥設備情報、60‥動力計画、70‥表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
図12