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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180114
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】電磁継電器
(51)【国際特許分類】
   H01H 50/00 20060101AFI20241219BHJP
   H01H 50/38 20060101ALI20241219BHJP
   H01H 50/54 20060101ALI20241219BHJP
   H01H 9/44 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
H01H50/00 D
H01H50/38 A
H01H50/38 H
H01H50/54 B
H01H9/44 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099573
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】390001812
【氏名又は名称】株式会社デンソーエレクトロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】山口 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】栗田 真吾
(72)【発明者】
【氏名】板倉 圭
【テーマコード(参考)】
5G027
【Fターム(参考)】
5G027AA03
5G027BB03
5G027BC11
(57)【要約】
【課題】アークを遮断する性能を向上させることができる電磁継電器を提供する。
【解決手段】電磁継電器(10)は、所定間隔で配置された一対の固定接触子(11,13)と、一対の固定接触子に対して近接及び離間して一対の固定接触子の間を導通及び遮断する可動接触子(15,17)と、一対の固定接触子と可動接触子との接触部(13,15)を収納し、固定接触子と可動接触子との間に生じたアークを引き伸ばす空間である消弧室(22)が形成された接触子ハウジング(20,21,31,32)と、アークを所定方向に引き伸ばして消弧室へ誘導する磁界を発生させる磁石と、を備える。接触子ハウジングにおいて、接触部よりも所定方向の位置に、消弧室を消弧室の外部と連通させる連通孔(40)が形成されている。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定間隔で配置された一対の固定接触子(11,12,13,14)と、前記一対の固定接触子に対して近接及び離間して前記一対の固定接触子の間を導通及び遮断する可動接触子(15,17,18)と、前記一対の固定接触子と前記可動接触子との接触部(13,14,17,18)を収納し、前記固定接触子と前記可動接触子との間に生じたアークを引き伸ばす空間である消弧室(22)が形成された接触子ハウジング(20,21,31,32)と、前記アークを所定方向に引き伸ばして前記消弧室へ誘導する磁界を発生させる磁石(51,52)と、を備える電磁継電器(10)であって、
前記接触子ハウジングにおいて、前記接触部よりも前記所定方向の位置に、前記消弧室を前記消弧室の外部と連通させる連通孔(40,140,240)が形成されている、電磁継電器。
【請求項2】
前記連通孔は、前記接触子ハウジングにおいて前記所定方向の端部に形成されている、請求項1に記載の電磁継電器。
【請求項3】
前記一対の固定接触子の一方から他方まで前記可動接触子が延びる方向において、前記連通孔の幅(W1,W1A)は前記固定接触子における前記所定方向の端部(11a,12a)の幅(W2,W2A)よりも広い、請求項1又は2に記載の電磁継電器。
【請求項4】
前記連通孔における前記消弧室側の開口(40a)は、前記連通孔における前記消弧室と反対側の開口(40b)よりも大きい、請求項1又は2に記載の電磁継電器。
【請求項5】
前記可動接触子を前記一対の固定接触子に対して近接させる電磁力を発生する電磁コイル(71)と、前記電磁コイルを収納するコイルハウジング(20,31,32)とを備え、
前記連通孔は、前記消弧室と前記コイルハウジングの内部とを連通させている、請求項1又は2に記載の電磁継電器。
【請求項6】
前記コイルハウジングには、前記コイルハウジングの内部を外気と連通させる通気孔(47)が形成されている、請求項5に記載の電磁継電器。
【請求項7】
前記コイルハウジングにおいて、前記所定方向の端部が前記連通孔により前記消弧室と連通しており、前記所定方向と反対側の端部が前記通気孔により前記外気と連通している、請求項6に記載の電磁継電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁継電器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、第1固定部材と第2固定部材とに両端が接離する可動部材を備え、接触子ハウジングには、第1,第2固定部材と可動部材との接触部にそれぞれ形成された第1,第2接点対の側方に消弧室が形成されており、接点対に生じたアークを磁石の磁界により消弧室へ誘導する電磁継電器がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-73352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、電気自動車等では電磁継電器に大電流が流れるため、電磁継電器でアークを遮断しにくくなっている。このため、電磁継電器において、アークを遮断する性能を向上させることが望まれている。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、アークを遮断する性能を向上させることができる電磁継電器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の手段は、
所定間隔で配置された一対の固定接触子(11,12,13,14)と、前記一対の固定接触子に対して近接及び離間して前記一対の固定接触子の間を導通及び遮断する可動接触子(15,17,18)と、前記一対の固定接触子と前記可動接触子との接触部(13,14,17,18)を収納し、前記固定接触子と前記可動接触子との間に生じたアークを引き伸ばす空間である消弧室(22)が形成された接触子ハウジング(20,21,31,32)と、前記アークを所定方向に引き伸ばして前記消弧室へ誘導する磁界を発生させる磁石(51,52)と、を備える電磁継電器(10)であって、
前記接触子ハウジングにおいて、前記接触部よりも前記所定方向の位置に、前記消弧室を前記消弧室の外部と連通させる連通孔(40,140,240)が形成されている。
【0007】
上記構成によれば、一対の固定接触子は所定間隔で配置されている。可動接触子は、前記一対の固定接触子に対して近接及び離間して、前記一対の固定接触子の間を導通及び遮断する。このため、可動接触子が一対の固定接触子に近接して一対の固定接触子の間を導通させた状態から、可動接触子が一対の固定接触子から離間して一対の固定接触子の間を遮断する際に、固定接触子と可動接触子との間にアークが生じることがある。
【0008】
この点、接触子ハウジングは、前記一対の固定接触子と前記可動接触子との接触部を収納し、前記固定接触子と前記可動接触子との間に生じたアークを引き伸ばす空間である消弧室が形成されている。そして、磁石は、前記アークを所定方向に引き伸ばして前記消弧室へ誘導する磁界を発生させる。このため、固定接触子と可動接触子との間に生じたアークを、磁石の磁界により所定方向に引き伸ばして消弧室へ誘導することができ、アークを冷却して遮断することができる。しかし、電磁継電器に大電流が流れる場合は、電磁継電器でアークを遮断しにくくなる。
【0009】
そこで、前記接触子ハウジングにおいて、前記接触部よりも前記所定方向の位置に、前記消弧室を前記消弧室の外部と連通させる連通孔が形成されている。このため、アークを連通孔に近付ける方向に引き伸ばすことができる。そして、アークにより発生した熱と、アークにより上昇した圧力とを、連通孔から消弧室の外部へ逃がすことができる。したがって、アークを効率的に冷却することができ、アークを遮断する性能を向上させることができる。
【0010】
第2の手段では、前記連通孔は、前記接触子ハウジングにおいて前記所定方向の端部に形成されている。こうした構成によれば、アークが前記所定方向へ接触子ハウジングの端部まで引き伸ばされた状態において、アークを連通孔に最も近付けることができる。したがって、アークが遮断されずに接触子ハウジングにおいて前記所定方向の端部まで引き伸ばされた場合に、アークを遮断しやすくなる。
【0011】
前記一対の固定接触子の一方から他方まで前記可動接触子が延びる方向において、前記固定接触子における前記所定方向の端部の幅の範囲内でアークの起点が移動することがある。
【0012】
この点、第3の手段では、前記一対の固定接触子の一方から他方まで前記可動接触子が延びる方向において、前記連通孔の幅(W1,W1A)は前記固定接触子における前記所定方向の端部(11a,12a)の幅(W2,W2A)よりも広い。こうした構成によれば、前記固定接触子における前記所定方向の端部の幅の範囲内でアークの起点が移動したとしても、アークの起点が連通孔の幅の範囲内から外れることを抑制することができる。したがって、前記所定方向に引き伸ばされたアークが連通孔の幅の範囲から外れることを抑制することができ、アークを効率的に冷却することができる。
【0013】
第4の手段では、前記連通孔における前記消弧室側の開口(40a)は、前記連通孔における前記消弧室と反対側の開口(40b)よりも大きい。こうした構成によれば、アークや、アークにより発生した熱、アークにより上昇した圧力を、消弧室から連通孔の内部へ導きやすくなる。したがって、アークを効率的に冷却することができ、アークを遮断する性能を向上させることができる。
【0014】
第5の手段では、前記可動接触子を前記一対の固定接触子に対して近接させる電磁力を発生する電磁コイル(71)と、前記電磁コイルを収納するコイルハウジング(20,31,32)とを備え、前記連通孔は、前記消弧室と前記コイルハウジングの内部とを連通させている。
【0015】
上記構成によれば、前記連通孔は、前記消弧室と前記コイルハウジングの内部とを連通させている。このため、アークによる熱及び圧力を、消弧室から連通孔を通じてコイルハウジングの内部へ逃がすことができる。したがって、コイルハウジングの内部を、消弧室内の熱及び圧力を逃がす空間として利用することができる。
【0016】
第6の手段では、前記コイルハウジングには、前記コイルハウジングの内部を外気と連通させる通気孔(47)が形成されている。こうした構成によれば、コイルハウジングの内部へ逃がされた熱及び圧力を、通気孔を通じて外気へ逃がすことができる。したがって、コイルハウジングの内部、ひいては消弧室の内部を効率的に冷却することができ、アークを遮断する性能を向上させることができる。さらに、消弧室はコイルハウジングの内部を介して外気と連通しているため、消弧室内の熱及び圧力が勢いよく外気へ排出されることを抑制することができる。
【0017】
第7の手段では、前記コイルハウジングにおいて、前記所定方向の端部が前記連通孔により前記消弧室と連通しており、前記所定方向と反対側の端部が前記通気孔により前記外気と連通している。こうした構成によれば、コイルハウジングの両端に連通孔と通気孔とがそれぞれ配置されているため、コイルハウジングの内部へ逃がされた熱及び圧力が連通孔から通気孔へ直ちに排出されることを抑制することができる。したがって、消弧室内の熱及び圧力が勢いよく外気へ排出されることを、効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】電磁継電器の縦断面図。
図2】ケースを外した状態の電磁継電器を示す斜視図。
図3】ケース及び収納部材を外した状態の電磁継電器を示す平面図。
図4図3のIV-IV線断面図。
図5】電磁継電器の背面図。
図6】アークが引き伸ばされた状態を示す縦断面図。
図7】固定部材及び連通孔の変更例を示す平面図。
図8】連通孔の変更例を示す平面図。
図9】連通孔の他の変更例を示す平面図。
図10】連通孔の他の変更例を示す平面図。
図11図10のXI-XI線断面図。
図12】連通孔の他の変更例を示す縦平面図。
図13】連通孔の他の変更例を示す縦平面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、ハイブリッド車両や電気自動車において電源とインバータとの間に接続される電磁継電器に具現化した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
図1,2に示すように、電磁継電器10は、ベース30、磁気ヨーク74、プレート75、補助ヨーク76、電磁コイル71、シャフト72、スプリング73、可動コア77、収納部材21、可動接触子15、固定接触子11,12、絶縁部材85、第1磁石51、第2磁石52、ケース20等を備えている。
【0021】
ベース30は、絶縁材料により形成され、背板部31、仕切部32等を備えている。背板部31は、矩形板状に形成されている。仕切部32は、背板部31における上下方向(長手方向)の中間から前方(背板部31に垂直な方向)へ張り出している。
【0022】
ベース30の仕切部32よりも下方には、磁気ヨーク74、プレート75、電磁コイル71、スプリング73、補助ヨーク76、及び可動コア77等が配置されている。
【0023】
磁気ヨーク74は、溝形(側面視において「U」字状)に形成されている。磁気ヨーク74の開放端には、プレート75が固定されている。プレート75の中央には、円筒状部75aが形成されている。磁気ヨーク74の底部の中央には、円筒状(円柱状)の補助ヨーク76が固定されている。円筒状部75aの内部に、可動コア77が上下方向(第1方向D1)に往復動可能に収納されている。可動コア77及び補助ヨーク76の外周に電磁コイル71が設けられている。磁気ヨーク74、プレート75、補助ヨーク76、及び可動コア77により磁気回路が構成されている。スプリング73は、可動コア77を補助ヨーク76から離す方向へ付勢している。
【0024】
可動コア77には、円柱状のシャフト72が接続されている。シャフト72は、第1方向D1に延びている。シャフト72及び可動コア77は、プレート75を貫通している。シャフト72には、絶縁部材85を介して可動接触子15が接続(連結)されている。可動接触子15は、導電性の材料により矩形板状に形成されている。可動接触子15における長手方向の両端には、可動接点17,18がそれぞれ取り付けられ(設けられ)ている。可動接点17,18は、導電性の材料により円柱状に形成されている。可動接点17,18は、可動接触子15において固定接触子11側へ突出している。なお、可動接触子15は可動接点17,18を含んでいる。
【0025】
ベース30の仕切部32よりも上方には、収納部材21、可動接触子15、可動接点17,18、固定接触子11,12、固定接点13,14、第1磁石51、第2磁石52等が配置されている。
【0026】
収納部材21は、絶縁性且つ透磁性の材料(例えば樹脂やセラミック)により、溝形(側面視において「U」字状)に形成されている。ベース30の背板部31を貫通して仕切部32には、一対の固定接触子11,12が取り付けられている。
【0027】
固定接触子11,12は、導電性の材料により形成され、所定間隔で配置されている。固定接触子11,12の並ぶ方向と、可動接触子15の長手方向(固定接触子11,12の一方から他方まで可動接触子15が延びる方向)とが一致している。固定接触子11,12は、「L」字状(屈曲した矩形板状)に形成されており、ベース30の仕切部32及び背板部31に沿っている。固定接触子11,12の前方側の端部に、固定接点13,14がそれぞれ取り付けられ(設けられ)ている。固定接点13,14は、導電性の材料により円柱状に形成されている。固定接点13,14は、固定接触子11,12において可動接触子15側へ突出している。可動接触子15に取り付けられた可動接点17,18に、固定接触子11,12に取り付けられた固定接点13,14がそれぞれ対向している。なお、固定接触子11,12はそれぞれ固定接点13,14を含んでいる。
【0028】
収納部材21の外縁部には、第1磁石51及び第2磁石52が取り付けられている。第1磁石51(磁石)は、可動接触子15の長手方向において固定接点13及び可動接点17の側方に配置されている。第2磁石52(磁石)は、可動接触子15の長手方向において固定接点14及び可動接点18の側方に配置されている。
【0029】
ベース30には、ケース20が取り付けられている。ケース20は、有底四角筒状に形成されている(図3,4参照)。ケース20の背面側の開口が、ベース30の背板部31により塞がれている(覆われている)。
【0030】
背板部31におけるベース30の仕切部32よりも下方の部分、仕切部32、及びケース20における仕切部32よりも下方の部分により、コイルハウジングが構成されている。コイルハウジングは電磁コイル71を収納しており、コイルハウジングの内部がコイル室になっている。
【0031】
背板部31におけるベース30の仕切部32よりも上方の部分、仕切部32、収納部材21、及びケース20における仕切部32よりも上方の前面部により、接触子ハウジングが構成されている。接触子ハウジングは、固定接触子11,12、可動接触子15、並びに、固定接点13,14及び可動接点17,18(一対の固定接触子11,12と可動接触子15との接触部)を収納している。接触子ハウジングの内部が接点室になっている。
【0032】
電磁コイル71に電流が流れていない状態において、固定接点13,14と可動接点17,18とはスプリング73の付勢力により離間している。電磁コイル71に電流が流れると、可動コア77に補助ヨーク76へ近付ける方向の電磁力が作用する。これにより、シャフト72及び絶縁部材85を介して可動コア77に接続された可動接触子15が、スプリング73の付勢力に抗して固定接触子11,12へ近付く方向へ移動して固定接触子11,12に接触する。すなわち、電磁コイル71は、可動接点17,18(可動接触子15)を一対の固定接点13,14(一対の固定接触子11,12)に対して近接させる電磁力を発生する。これにより、固定接触子11と、固定接触子12とが、可動接触子15により導通させられる。すなわち、可動接触子15は、一対の固定接触子11,12に対して近接及び離間して、一対の固定接触子11,12の間を導通及び遮断する。詳しくは、可動接点17,18が、一対の固定接点13,14に対してそれぞれ近接及び離間する。
【0033】
固定接点13,14と可動接点17,18とが、接触した状態から離れた状態に移行する際に、固定接点13,14と可動接点17,18との間にアークが生じることがある。これに対して、接触子ハウジングの内部には、アークを引き伸ばして遮断するための空間である消弧室22が形成されている(図3,4参照)。消弧室22は、可動接触子15の短手方向(固定接触子11,12の長手方向)において固定接点13,14及び可動接点17,18の側方(図1では紙面に垂直な方向)に形成されている。第1磁石51は、固定接点13と可動接点17との間に生じたアークを、消弧室22の方向へ引き伸ばす(消弧室22へ誘導する)磁界を発生させる。第2磁石52は、固定接点14と可動接点18との間に生じたアークを、消弧室22の方向へ引き伸ばす(消弧室22へ誘導する)磁界を発生させる。
【0034】
このため、固定接点13,14と可動接点17,18との間に生じたアークを、磁石51,52の磁界により前方(背板部31と反対方向、所定方向)に引き伸ばして消弧室22へ誘導することができ、アークを冷却して遮断することができる。しかし、電磁継電器10に大電流が流れるハイブリッド車両や電気自動車では、電磁継電器10でアークを遮断しにくくなる。
【0035】
そこで、図4に示すように、接触子ハウジングの仕切部32において、固定接点13(14)及び可動接点17(18)よりも前方(背板部31と反対方向、所定方向)の位置に、仕切部32よりも上方(固定接触子11,12及び可動接触子15の側)と下方(電磁コイル71側)とを連通させる連通孔40が形成されている。連通孔40は、消弧室22(接点室)をコイル室(コイルハウジングの内部、消弧室22の外部)と連通させている。連通孔40は、仕切部32(接触子ハウジング)において前方の端部に形成されている。換言すれば、連通孔40は、仕切部32の前端とケース20との間に形成された所定幅の隙間である。図3に示すように、一対の固定接触子11,12の一方から他方まで可動接触子15が延びる方向(可動接触子15の長手方向)において、連通孔40の幅W1は固定接触子11,12における前方の端部11a,12aの幅W2よりも広い。詳しくは、可動接触子15の長手方向において、連通孔40の幅W1は固定接触子11,12の全体にわたって固定接触子11,12の幅W2よりも広い。
【0036】
図4,5に示すように、ベース30の背板部31における上下方向の中間部分(コイルハウジング)には、コイル室(コイルハウジングの内部)とコイル室の外部(外気)と連通させる通気孔47が形成されている。詳しくは、電磁コイル71の一対の端子部71aが、背板部31を貫通して後方へ突出している。通気孔47は、背板部31において電磁コイル71の各端子部71aの直下(下方)に形成されている。すなわち、消弧室22は、コイル室を介して外気と連通している。通気孔47は、背板部31において左右の両端寄りの部分にそれぞれ形成されている。通気孔47は、上下方向(電磁コイル71及びシャフト72の軸線方向)において、仕切部32から所定距離の位置(コイル室の中間部)に形成されている。コイルハウジングにおいて、前方(所定方向)の端部が連通孔40により消弧室22と連通しており、後方(所定方向と反対側)の端部が通気孔47により外気と連通している。なお、貫通孔46,48は、電磁継電器10の組立時に部品を固定する接着剤を流し込む孔である。
【0037】
以上の構成を備える電磁継電器10において、例えば固定接点13と可動接点17との間にアークが生じたとする。図6に示すように、アークAcは、第1磁石51が発生する磁界により、ケース20の前方(図6では右方向)へ引き伸ばされ、消弧室22へ誘導される。アークAcは、消弧室22において、さらに前方へ引き伸ばされて、ケース20に到達する。このとき、アークAcにおける前方の端部は、連通孔40の上方に位置することとなる。すなわち、アークAcは、固定接点13と可動接点17との間から、連通孔40に近付く方向に引き伸ばされる。
【0038】
ここで、アークAcは、多量の熱を発生し、消弧室22内の空気の温度及び消弧室22内の圧力が上昇する。アークAcにより発生した熱、及びアークAcにより上昇した圧力は、連通孔40を通じてコイル室(コイルハウジングの内部)へ排出される(逃がされる)。これにより、消弧室22内のアークAcが効率的に冷却される。
【0039】
また、可動接触子15の長手方向において、固定接触子11における前方(所定方向)の端部11aの幅W2の範囲内でアークAcの起点が移動することがある。この点、図3に示すように、可動接触子15の長手方向において、連通孔40の幅W1は固定接触子11における前方の端部11aの幅W2よりも広い。このため、アークAcが発生してから遮断されるまでにアークAcの起点が、可動接触子15の長手方向に移動したとしても、前方に引き伸ばされたアークAcが連通孔40の幅W1の範囲から外れることを抑制することができる。
【0040】
消弧室22からアークAcによる熱及び圧力がコイル室に逃がされると、コイル室内の温度及び圧力が上昇する。そして、コイル室内の熱及び圧力は、ベース30の背板部31に形成された通気孔47を通じて外気(コイル室の外部)へ逃がされる。このとき、コイルハウジングにおいて、前方の端部に連通孔40が配置され、後方の端部に通気孔47が配置されている。このため、連通孔40からコイル室へ排出された熱及び圧力は、コイル室の前方から後方までコイル室内を通過した後に、通気孔47から大気へ排出される。
【0041】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。
【0042】
・接触子ハウジング(背板部31の上部、仕切部32、収納部材21、及びケース20の前面部の上部)において、固定接点13,14及び可動接点17,18(接触部)よりも前方(所定方向)の位置に、消弧室22を消弧室22の外部と連通させる連通孔40が形成されている。このため、アークAcを連通孔40に近付ける方向に引き伸ばすことができる。そして、アークAcにより発生した熱と、アークAcにより上昇した圧力とを、連通孔40から消弧室22の外部へ逃がすことができる。したがって、アークAcを効率的に冷却することができ、アークAcを遮断する性能を向上させることができる。
【0043】
・連通孔40は、接触子ハウジングにおいて仕切部32の前方の端部に形成されている。こうした構成によれば、アークAcが前方へ接触子ハウジングの端部まで引き伸ばされた状態において、アークAcを連通孔40に最も近付けることができる。したがって、アークAcが遮断されずに接触子ハウジングにおいて前方の端部まで引き伸ばされた場合に、アークAcを遮断しやすくなる。
【0044】
・可動接触子15の長手方向(左右方向)において、連通孔40の幅W1は固定接触子11,12における前方の端部11a,12aの幅W2よりも広い。こうした構成によれば、固定接触子11,12における前方の端部11a,12aの幅W2の範囲内でアークAcの起点が移動したとしても、アークAcの起点が連通孔40の幅W1の範囲内から外れることを抑制することができる。したがって、前方に引き伸ばされたアークAcが連通孔40の幅W1の範囲から外れることを抑制することができ、アークAcを効率的に冷却することができる。
【0045】
・連通孔40は、消弧室22とコイルハウジング(背板部31の下部、仕切部32、及びケース20の下部)の内部とを連通させている。このため、アークAcによる熱及び圧力を、消弧室22から連通孔40を通じてコイルハウジングの内部へ逃がすことができる。したがって、コイルハウジングの内部を、消弧室22内の熱及び圧力を逃がす空間として利用することができる。
【0046】
・コイルハウジングには、コイルハウジングの内部を外気と連通させる通気孔47が形成されている。こうした構成によれば、コイルハウジングの内部へ逃がされた熱及び圧力を、通気孔47を通じて外気へ逃がすことができる。したがって、コイルハウジングの内部、ひいては消弧室22の内部を効率的に冷却することができ、アークAcを遮断する性能を向上させることができる。さらに、消弧室22はコイルハウジングの内部を介して外気と連通しているため、消弧室22内の熱及び圧力が勢いよく外気へ排出されることを抑制することができる。
【0047】
・コイルハウジングにおいて、前方の端部が連通孔40により消弧室22と連通しており、後方(所定方向と反対側)の端部が通気孔47により外気と連通している。こうした構成によれば、前後方向においてコイルハウジングの両端に連通孔40と通気孔47とがそれぞれ配置されているため、コイルハウジングの内部へ逃がされた熱及び圧力が連通孔40から通気孔47へ直ちに排出されることを抑制することができる。したがって、消弧室22内の熱及び圧力が勢いよく外気へ排出されることを、効果的に抑制することができる。
【0048】
なお、上記実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。上記実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0049】
図7に可動接触子15及び可動接点17,18の表示を省略して示すように、固定接触子11,12における前方の端部11a,12aの幅W2Aが、固定接触子11,12の他の部分の幅W2よりも狭くなっていてもよい。これにより、可動接触子15の長手方向(左右方向)において、連通孔40の幅W1Aは固定接触子11,12における前方の端部11a,12aの幅W2Aよりも広くなっていてもよい。こうした構成によっても、固定接触子11,12における前方の端部11a,12aの幅W2Aの範囲内でアークの起点が移動したとしても、アークの起点が連通孔40の幅W1Aの範囲内から外れることを抑制することができる。したがって、前方に引き伸ばされたアークが連通孔40の幅W1Aの範囲から外れることを抑制することができ、アークを効率的に冷却することができる。
【0050】
・可動接触子15の長手方向(左右方向)において、連通孔40の幅W1を固定接触子11,12における前方の端部11a,12aの幅W2と等しくすることもできる。また、図8に示すように、可動接触子15の長手方向(左右方向)において、連通孔40の幅W1Bを固定接触子11,12における前方の端部11a,12aの幅W2よりも狭くすることもできる。
【0051】
図9に示すように、固定接触子11(12)における前方の端部11a(12a)の幅W2の範囲内において、複数の連通孔140が形成されていてもよい。この場合は、可動接触子15の長手方向(左右方向)において、連通孔140の幅W1Cが固定接触子11(12)における前方の端部11a(12a)の幅W2よりも狭くなっている。こうした構成によれば、複数の連通孔140を区切る区切部140aにアークを当てることにより、アークを遮断しやすくなる。
【0052】
図10,11に示すように、前後方向(固定接触子11,12の長手方向)において、ベース30の仕切部32に複数の連通孔240が形成されていてもよい。こうした構成によれば、アークにより発生した熱と、アークにより上昇した圧力とを、複数の連通孔240から消弧室22の外部へ効率的に逃がすことができる。したがって、アークを効率的に冷却することができ、アークを遮断する性能を向上させることができる。さらに、複数の連通孔240を区切る区切部240aにアークを当てることにより、アークを遮断しやすくなる。
【0053】
図12に示すように、連通孔40における消弧室22側の開口40aを、連通孔40におけるコイル室側(消弧室22と反対側)の開口40bよりも大きくしてもよい。詳しくは、電磁継電器10の前後方向(固定接触子11,12の長手方向)において、消弧室22側の開口40aの幅W3は、コイル室側の開口40bの幅W4よりも広い。開口40aから開口40bまで、連通孔40の内面が傾斜することより幅が縮小している。この場合も、開口40a,40bは、仕切部32における前方の端部に形成されている。こうした構成によれば、アークや、アークにより発生した熱、アークにより上昇した圧力を、消弧室22から開口40aを介して連通孔40の内部へ導きやすくなる。したがって、アークを効率的に冷却することができ、アークを遮断する性能を向上させることができる。
【0054】
図13に示すように、連通孔40の開口40aから開口40bまで、連通孔40の内面が階段状に形成されることより幅が縮小していてもよい。この場合も、開口40a,40bは、仕切部32における前方の端部に形成されている。こうした構成によっても、アークや、アークにより発生した熱、アークにより上昇した圧力を、消弧室22から開口40aを介して連通孔40の内部へ導きやすくなる。
【0055】
なお、開口40a,40bを、仕切部32における前方の端部よりも固定接点13及び可動接点17(接触部)側に形成することもできる。また、連通孔40における消弧室22側の開口40aを、連通孔40におけるコイル室側の開口40bと等しい大きさ、あるいは開口40bよりも小さくすることもできる。
【0056】
・通気孔47は、背板部31において左右方向の中間部にそれぞれ1つ形成されていてもよい。
【0057】
・コイルハウジングにおいて、前方の端部が連通孔40,140,240により消弧室22と連通しており、前後方向の中間部が通気孔により外気(コイル室の外部)と連通していてもよい。
【0058】
・2つの通気孔47の一方を省略することもできる。また、2つの通気孔47の双方を省略することもできる。その場合であっても、アークによる熱及び圧力を連通孔40,140,240からコイル室(消弧室22の外部)へ逃がすことができため、アークを効率的に冷却することができる。したがって、接触子ハウジングに連通孔40,140,240が形成されていない場合と比較して、アークを遮断する性能を向上させることができる。
【0059】
・固定接触子11,12及び可動接触子15を収納する接触子ハウジングに、消弧室22(接点室)を外気(消弧室22の外部)と連通させる通気孔(連通孔)を形成することもできる。例えば、ケース20(接触子ハウジング)の前面部(固定接点13,14及び可動接点17,18よりも前方の位置)に、通気孔を形成することができる。こうした構成によっても、アークによる熱及び圧力を通気孔から消弧室22の外部へ逃がすことができため、アークを効率的に冷却することができる。
【0060】
・固定接触子11及び固定接点13が一部材(一体)で形成されていてもよい。固定接触子12及び固定接点14が一部材(一体)で形成されていてもよい。可動接触子15及び可動接点17,18が一部材(一体)で形成されていてもよい。
【0061】
・固定接触子11,12の長手方向(前後方向)にそれぞれ磁石を配置し、可動接触子15の長手方向(左右方向)の左側と右側とにそれぞれ消弧室を形成することもできる。この場合、接触子ハウジングにおいて、一対の固定接触子と可動接触子との接触部よりも左方向(所定方向)の位置と右方向(所定方向)の位置とに、消弧室を消弧室の外部と連通させる連通孔をそれぞれ形成すればよい。
【0062】
なお、上記実施形態及びその変更例を、組み合わせ可能な範囲で組み合わせて実施することもできる。
【符号の説明】
【0063】
10…電磁継電器、11…固定接触子、12…固定接触子、13…固定接点、14…固定接点、15…可動接触子、17…可動接点、18…可動接点、20…ケース、21…収納部材、22…消弧室、30…ベース、31…背板部、32…仕切部、40…連通孔、51…第1磁石、52…第2磁石、71…電磁コイル、140…連通孔、240…連通孔。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13