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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180118
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】電力変換装置、プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
H02M3/155 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099580
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】小林 尚斗
(72)【発明者】
【氏名】半田 祐一
(72)【発明者】
【氏名】筒 雄樹
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA15
5H730BB27
5H730BB66
5H730BB81
5H730BB88
5H730DD04
5H730DD16
5H730EE04
5H730EE07
5H730EE12
5H730FD01
5H730FD11
5H730FD31
5H730FD41
5H730FG09
5H730FG10
(57)【要約】
【課題】共振回路の共振周波数の推定精度を高めることができる電力変換装置及びプログラムを提供する。
【解決手段】電力変換装置100は、第1,第2,第3フルブリッジ回路10,20,30と、第1,第2トランス60,70と、全体ECU140とを備えている。全体ECU140は、例えば、第1,第2フルブリッジ回路10,20のスイッチング制御により、第1トランス60を介して第1フルブリッジ回路10と第2フルブリッジ回路20との間で電力を伝達する電力伝達処理を行う。全体ECU140は、電力変換装置100に構成される第1,第2共振回路の共振周波数の推定処理を行う。全体ECU140は、第1フルブリッジ回路10からテスト電圧を出力する場合において、第2フルブリッジ回路20の下アームスイッチである第2BスイッチQB2及び第4BスイッチQB4をオンする短絡処理を行う。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1外部端子(CH1,CL1)に接続されたフルブリッジ回路である第1回路(10)と、
第2外部端子(CH2,CL2)に接続されたフルブリッジ回路である第2回路(20)と、
を備える電力変換装置(100,200,300)において、
前記第1回路の第1交流端子(CA1,CB1)及び前記第2回路の第2交流端子(CA2,CB2)を接続する第1インダクタンス要素(60,51,310)と、
前記第1インダクタンス要素に接続された共振キャパシタ(63,63A,63B,163,311)と、
前記第2交流端子又は前記第1交流端子に接続された第2インダクタンス要素(70,71)と、
制御装置(110,120,130,140)と、
を備え、
前記制御装置は、
前記第1回路及び前記第2回路の少なくとも一方のスイッチング制御により、前記第1インダクタンス要素を介して前記第1外部端子及び前記第2外部端子の間で電力を伝達する電力伝達処理と、
前記第1インダクタンス要素及び前記共振キャパシタを含む共振回路の共振周波数を推定する推定処理と、
を行い、
前記制御装置は、前記推定処理において、
前記第1回路及び前記第2回路の一方である対象回路を構成する全相の下アームスイッチ又は前記対象回路を構成する全相の上アームスイッチをオンする短絡処理を行った状態で、前記第1回路及び前記第2回路のうち前記対象回路以外の回路である出力回路のスイッチング制御により、前記出力回路から前記共振回路に対して、複数の周波数それぞれに対応したテスト電圧を出力し、
前記テスト電圧が出力されている場合において、前記第1外部端子及び前記第2外部端子のうち前記対象回路が接続された外部端子から前記対象回路を介して前記第1インダクタンス要素に至るまでの電流経路を流れる電流であって、複数の前記周波数それぞれに対応する電流に基づいて、前記共振周波数を推定する、電力変換装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記推定処理における前記テスト電圧の実効値を前記電力伝達処理における前記テスト電圧の実効値よりも小さくする、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記出力回路の入力電圧を調整する電圧調整回路(15)を備え、
前記制御装置は、前記推定処理における前記入力電圧を前記電力伝達処理における前記入力電圧よりも低くするように前記電圧調整回路を制御することにより、前記推定処理における前記テスト電圧の実効値を前記電力伝達処理における前記テスト電圧の実効値よりも小さくする、請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記推定処理における前記テスト電圧のパルス幅を、前記第1回路及び前記第2回路間の前記電力伝達処理における電圧のパルス幅よりも小さくするように前記出力回路のスイッチング制御を行うことにより、前記推定処理における前記テスト電圧の実効値を前記電力伝達処理における前記テスト電圧の実効値よりも小さくする、請求項2又は3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記電力伝達処理におけるスイッチング制御の周波数を、前記推定処理により推定した前記共振周波数よりも高い周波数に設定する、請求項1~3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記推定処理において、前記出力回路から正極性又は負極性の前記テスト電圧が出力されている期間において、前記共振周波数の推定に用いる前記電流を検出する、請求項1~3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記共振キャパシタの静電容量及び前記第1インダクタンス要素のインダクタンスの少なくとも一方を変更する変更回路(50,63A,63B,51,52)を備え、
前記制御装置は、
推定した前記共振周波数が所定範囲の上限値(fr2)よりも高い場合、前記共振キャパシタの静電容量及び前記第1インダクタンス要素のインダクタンスの少なくとも一方を増加させるように前記変更回路を制御し、
推定した前記共振周波数が前記所定範囲の下限値(fr1)よりも低い場合、前記共振キャパシタの静電容量及び前記第1インダクタンス要素のインダクタンスの少なくとも一方を減少させるように前記変更回路を制御する、請求項1~3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項8】
第3外部端子(CH3,CL3)に接続されたフルブリッジ回路である第3回路(30)と、
前記第1交流端子に接続された第1コイル(61)、及び前記第2交流端子に接続された第2コイル(62)を有する第1トランス(60)と、
を備え、
前記共振キャパシタは、前記第1コイル及び前記第2コイルの少なくとも一方に直列接続された第1共振キャパシタであり、
前記第2交流端子又は前記第1交流端子に接続された第3コイル(71)、及び前記第3回路の第3交流端子(CA3,CB3)に接続された第4コイル(72)を有する第2トランス(70)と、
前記第3コイル及び前記第4コイルの少なくとも一方に直列接続された第2共振キャパシタ(64)と、
を備え、
前記第1インダクタンス要素は、前記第1トランスの漏れインダクタンス、又は前記第1コイル及び前記第2コイルの少なくとも一方に直列接続されたコイルであり、
前記第2インダクタンス要素は、前記第2トランスの漏れインダクタンス、又は前記第3コイル及び前記第4コイルの少なくとも一方に直列接続されたコイルであり、
前記電力伝達処理は、前記第1回路、前記第2回路及び前記第3回路のうち少なくとも1つのスイッチング制御により、前記第1外部端子、前記第2外部端子及び前記第3外部端子のうち少なくとも2つの間で電力を伝達する処理である、請求項1~3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記共振回路は、前記第1インダクタンス要素及び前記第1共振キャパシタを含む第1共振回路であり、
前記第2インダクタンス要素及び前記第2共振キャパシタを含む第2共振回路が構成されており、
前記制御装置は、前記推定処理において、
前記第1共振回路及び前記第2共振回路の一方を共振周波数の推定対象となる対象共振回路として選択し、
前記第1回路、前記第2回路及び前記第3回路のうち、選択した前記対象共振回路を介して接続された2つの回路である前記出力回路及び前記対象回路と、前記第1回路、前記第2回路及び前記第3回路のうち、前記出力回路及び前記対象回路以外の回路である残余回路とを選択し、
選択した前記対象回路において前記短絡処理を行うとともに、選択した前記残余回路が有する全相の上,下アームスイッチをオフした状態で、選択した前記出力回路のスイッチング制御によって前記対象共振回路に対して、複数の前記周波数それぞれに対応する前記テスト電圧を出力し、
前記テスト電圧が出力されている場合における前記電流であって、複数の前記周波数それぞれに対応する電流に基づいて、前記対象共振回路の共振周波数を推定する、請求項8に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記制御装置は、前記第1共振回路を前記対象共振回路として選択した場合における前記第1共振回路の共振周波数の推定処理と、前記第2共振回路を前記対象共振回路として選択した場合における前記第2共振回路の共振周波数の推定処理と、を行う、請求項9に記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記制御装置は、前記電力伝達処理におけるスイッチング制御の周波数(fβ)を、推定した前記各共振周波数の最大値よりも高い周波数に設定する、請求項10に記載の電力変換装置。
【請求項12】
第1外部端子(CH1,CL1)に接続されたフルブリッジ回路である第1回路(10)と、
第2外部端子(CH2,CL2)に接続されたフルブリッジ回路である第2回路(20)と、
を備える電力変換装置(100,200,300)に適用されるプログラムにおいて、
前記電力変換装置は、
前記第1回路の第1交流端子(CA1,CB1)及び前記第2回路の第2交流端子(CA2,CB2)を接続する第1インダクタンス要素(60,51,310)と、
前記第1インダクタンス要素に接続された共振キャパシタ(63,63A,63B,163,311)と、
前記第2交流端子又は前記第1交流端子に接続された第2インダクタンス要素(70,71)と、
コンピュータ(111,121,131,141)と、
を備え、
前記コンピュータに、
前記第1回路及び前記第2回路の少なくとも一方のスイッチング制御により、前記第1インダクタンス要素を介して前記第1外部端子及び前記第2外部端子の間で電力を伝達する電力伝達処理と、
前記第1インダクタンス要素及び前記共振キャパシタを含む共振回路の共振周波数を推定する推定処理と、
を実行させ、
前記推定処理は、
前記第1回路及び前記第2回路の一方である対象回路を構成する全相の下アームスイッチ又は前記対象回路を構成する全相の上アームスイッチをオンする短絡処理を行った状態で、前記第1回路及び前記第2回路のうち前記対象回路以外の回路である出力回路のスイッチング制御により、前記出力回路から前記共振回路に対して、複数の周波数それぞれに対応したテスト電圧を出力処理と、
前記テスト電圧が出力されている場合において、前記第1外部端子及び前記第2外部端子のうち前記対象回路が接続された外部端子から前記対象回路を介して前記第1インダクタンス要素に至るまでの電流経路を流れる電流であって、複数の前記周波数それぞれに対応する電流に基づいて、前記共振周波数を推定する処理と、
を含む、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力変換装置として、第1外部端子に接続されたフルブリッジ回路である第1回路と、第2外部端子に接続されたフルブリッジ回路である第2回路と、第1回路の第1交流端子及び第2回路の第2交流端子を接続するインダクタンス要素と、インダクタンス要素に接続された共振キャパシタとを備えるものが知られている。なお、このような電力変換装置に関連する技術としては、例えば特許文献1に記載の技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6409750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
第1回路及び第2回路の少なくとも一方のスイッチング制御により、インダクタンス要素を介して第1外部端子及び第2外部端子の間で電力を適正に伝達するためには、インダクタンス要素及び共振キャパシタを含む共振回路の共振周波数の推定精度を高める必要がある。
【0005】
本開示は、共振回路の共振周波数の推定精度を高めることができる電力変換装置及びプログラムを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、第1外部端子に接続されたフルブリッジ回路である第1回路と、
第2外部端子に接続されたフルブリッジ回路である第2回路と、
を備える電力変換装置において、
前記第1回路の第1交流端子及び前記第2回路の第2交流端子を接続する第1インダクタンス要素と、
前記第1インダクタンス要素に接続された共振キャパシタと、
前記第2交流端子又は前記第1交流端子に接続された第2インダクタンス要素と、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記第1回路及び前記第2回路の少なくとも一方のスイッチング制御により、前記第1インダクタンス要素を介して前記第1外部端子及び前記第2外部端子の間で電力を伝達する電力伝達処理と、
前記第1インダクタンス要素及び前記共振キャパシタを含む共振回路の共振周波数を推定する推定処理と、
を行う。
【0007】
前記制御装置は、前記推定処理において、
前記第1回路及び前記第2回路の一方である対象回路を構成する全相の下アームスイッチ又は前記対象回路を構成する全相の上アームスイッチをオンする短絡処理を行った状態で、前記第1回路及び前記第2回路のうち前記対象回路以外の回路である出力回路のスイッチング制御により、前記出力回路から前記共振回路に対して、複数の周波数それぞれに対応したテスト電圧を出力し、
前記テスト電圧が出力されている場合において、前記第1外部端子及び前記第2外部端子のうち前記対象回路が接続された外部端子から前記対象回路を介して前記第1インダクタンス要素に至るまでの電流経路を流れる電流であって、複数の前記周波数それぞれに対応する電流に基づいて、前記共振周波数を推定する。
【0008】
電力変換装置は、第1インダクタンス要素に加え、第2交流端子又は第1交流端子に接続された第2インダクタンス要素を備えている。ここで、推定処理においてテスト電圧が出力される場合、共振回路に加え、第2インダクタンス要素にも電流が流れる。この場合、共振回路に流れる電流であって、複数の周波数それぞれに対応する電流に基づく共振周波数の推定精度が低下し得る。
【0009】
そこで、制御装置は、出力回路からテスト電圧を出力する場合において、上記短絡処理を行う。この場合、対象回路には、全相の下アームスイッチを含む閉回路、又は全相の上アームスイッチを含む閉回路が形成される。上記閉回路のインピーダンスは第2インダクタンス要素のインピーダンスよりも小さい。このため、推定処理においてテスト電圧が出力される場合において、第2インダクタンス要素に流れる電流を十分に小さくできる。その結果、第1,第2外部端子のうち対象回路が接続された外部端子から対象回路を介して第1インダクタンス要素に至るまでの電流経路を流れる電流であって、複数の周波数それぞれに対応する電流に基づく共振周波数の推定精度を高めることができる。
【0010】
また、本開示の電力変換装置では、第2インダクタンス要素に流れる電流を小さくするための構成として、対象回路の上アームスイッチ又は下アームスイッチを流用することができる。このため、例えば電力変換装置を構成する部品数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る電力変換装置の全体構成図。
図2】第1共振回路の共振周波数の推定処理における回路状態を示す図。
図3】スイッチング状態及びテスト電圧等の推移を示すタイムチャート。
図4】複数の周波数それぞれに対応するテスト電圧等の推移を示すタイムチャート。
図5】比較例に係る第1共振回路の共振周波数の推定処理における回路状態を示す図。
図6】第2共振回路の共振周波数の推定処理における回路状態を示す図。
図7】共振回路のインピーダンス周波数特性等を示す図。
図8】共振周波数の推定処理の手順を示すフローチャート。
図9】第1実施形態の変形例に係る電力変換装置の全体構成図。
図10】第2実施形態に係る電力変換装置の構成図。
図11】共振周波数の推定処理の手順を示すフローチャート。
図12】スイッチング状態及びテスト電圧等の推移を示すタイムチャート。
図13】第3実施形態に係る共振周波数及びスイッチング損失の関係を示す図。
図14】共振回路における静電容量変更回路の一例を示す図。
図15】共振回路におけるインダクタンス変更回路の一例を示す図。
図16】第4実施形態に係る電力変換装置の全体構成図。
図17】第4実施形態の変形例に係る電力変換装置の全体構成図。
図18】第4実施形態の変形例に係る電力変換装置の全体構成図。
図19】その他の実施形態に係る電力変換装置の全体構成図。
図20】その他の実施形態に係る電力変換装置の全体構成図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照しながら、複数の実施形態を説明する。複数の実施形態において、機能的に及び/又は構造的に対応する部分及び/又は関連付けられる部分には同一の参照符号、又は百以上の位が異なる参照符号が付される場合がある。対応する部分及び/又は関連付けられる部分については、他の実施形態の説明を参照することができる。
【0013】
<第1実施形態>
以下、本発明に係る電力変換装置を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態の電力変換装置は、マルチポート型のものである。電力変換装置は、例えば、車両、航空機又は船舶等の移動体に搭載される。車両は、例えば、ハイブリッド車、電気自動車又は鉄道車両である。
【0014】
図1に示すように、電力変換装置100は、複数の外部端子と、各外部端子に対応して設けられたフルブリッジ回路とを備えている。フルブリッジ回路のスイッチング制御により、各外部端子のうち少なくとも2つの外部端子の間で電力伝達が行われる。
【0015】
電力変換装置100は、第1外部端子、第2外部端子及び第3外部端子を備えている。第1外部端子、第2外部端子及び第3外部端子には、充放電可能な蓄電池、AC-DCコンバータ及び電気負荷等が接続される。充放電可能な蓄電池、AC-DCコンバータ及び電気負荷等と、電力変換装置100とによりシステムが構成されている。電力変換装置100は、第1外部端子である第1高電位側端子CH1及び第1低電位側端子CL1に対応するフルブリッジ回路として、第1フルブリッジ回路10を備えている。
【0016】
第1フルブリッジ回路10は、第1A~第4AスイッチQA1~QA4を備えている。本実施形態において、第1A~第4AスイッチQA1~QA4は、NチャネルMOSFETであり、ボディダイオードを有している。第1スイッチQA1及び第3AスイッチQA3の高電位側端子であるドレインには、第1高電位側端子CH1が接続されている。第1AスイッチQA1の低電位側端子であるソースには、第2AスイッチQA2のドレインが接続され、第3AスイッチQA3のソースには、第4AスイッチQA4のドレインが接続されている。第2AスイッチQA2及び第4AスイッチQA4のソースには、第1低電位側端子CL1が接続されている。第1高電位側端子CH1には、電力変換装置100が備える第1キャパシタ11の第1端が接続されている。第1キャパシタ11の第2端には、第1低電位側端子CL1が接続されている。第1キャパシタ11は、平滑キャパシタ及びノイズ除去の役割を果たす。なお、第1キャパシタ11は、第1フルブリッジ回路10に内蔵されていてもよい。
【0017】
電力変換装置100は、第2外部端子である第2高電位側端子CH2及び第2低電位側端子CL2に対応するフルブリッジ回路として、第2フルブリッジ回路20を備えている。第2フルブリッジ回路20は、第1B~第4BスイッチQB1~QB4を備えている。本実施形態において、第1B~第4BスイッチQB1~QB4は、NチャネルMOSFETであり、ボディダイオードを有している。本実施形態において、第2フルブリッジ回路20の構成は、第1フルブリッジ回路10の構成と同様であるため、第2フルブリッジ回路20の詳細な説明を省略する。
【0018】
第2高電位側端子CH2には、電力変換装置100が備える第2キャパシタ21の第1端が接続されている。第2キャパシタ21の第2端には、第2低電位側端子CL2が接続されている。第2キャパシタ21は、平滑キャパシタ及びノイズ除去の役割を果たす。なお、第2キャパシタ21は、第2フルブリッジ回路20に内蔵されていてもよい。
【0019】
電力変換装置100は、第3外部端子である第3高電位側端子CH3及び第3低電位側端子CL3に対応するフルブリッジ回路として、第3フルブリッジ回路30を備えている。第3フルブリッジ回路30は、第1C~第4CスイッチQC1~QC4を備えている。本実施形態において、第1C~第4CスイッチQC1~QC4は、NチャネルMOSFETであり、ボディダイオードを有している。本実施形態において、第3フルブリッジ回路30の構成は、第1フルブリッジ回路10の構成と同様であるため、第3フルブリッジ回路30の詳細な説明を省略する。
【0020】
第3高電位側端子CH3には、電力変換装置100が備える第3キャパシタ31の第1端が接続されている。第3キャパシタ31の第2端には、第3低電位側端子CL3が接続されている。第3キャパシタ31は、平滑キャパシタ及びノイズ除去の役割を果たす。なお、第3キャパシタ31は、第3フルブリッジ回路30に内蔵されていてもよい。
【0021】
電力変換装置100は、第1フルブリッジ回路10と第2フルブリッジ回路20との間の電力伝達を行うための第1トランス60を備えている。第1トランス60は、第1コイル61と、第2コイル62と、第1コイル61及び第2コイル62が巻回されたコアとを備えている。第1コイル61及び第2コイル62は、コアを介して磁気結合する。
【0022】
第1コイル61の第1端には、第1フルブリッジ回路10の第1A交流端子CA1が接続されている。第1A交流端子CA1には、第1AスイッチQA1のソース及び第2AスイッチQA2のドレインが接続されている。第1コイル61の第2端には、第1フルブリッジ回路10の第1B交流端子CB1が接続されている。第1B交流端子CB1には、第3AスイッチQA3のソース及び第4AスイッチQA4のドレインが接続されている。
【0023】
第2コイル62の第1端には、電力変換装置100が備える第1共振キャパシタ63の第1端が接続されている。第1共振キャパシタ63の第2端には、第2フルブリッジ回路20の第2A交流端子CA2が接続されている。第2コイル62の第2端には、第2フルブリッジ回路20の第2B交流端子CB2が接続されている。図1には、第1,第2コイル61,62の漏れインダクタンス61a,62aも合わせて示す。
【0024】
第1コイル61において第2端に対する第1端の電位が高くなる場合、第2コイル62には、その第2端よりも第1端の電位が高くなるような誘起電圧が発生する。一方、第1コイル61において第1端に対する第2端の電位が高くなる場合、第2コイル62には、その第1端よりも第2端の電位が高くなるような誘起電圧が発生する。
【0025】
電力変換装置100は、第2フルブリッジ回路20と第3フルブリッジ回路30との間の電力伝達を行うための第2トランス70を備えている。第2トランス70は、第1コイル71(「第3コイル」に相当)と、第2コイル72(「第4コイル」に相当)と、第1コイル71及び第2コイル72が巻回されたコアとを備えている。第1コイル71及び第2コイル72は、コアを介して磁気結合する。
【0026】
第1コイル71の第1端には、第2A交流端子CA2が接続されている。第1コイル71の第2端には、第2B交流端子CB2が接続されている。つまり、第2トランス70の第1コイル71は、第1トランス60の第2コイル62及び第1共振キャパシタ63の直列接続体に並列接続されている。
【0027】
第2トランス70の第2コイル72の第1端には、電力変換装置100が備える第2共振キャパシタ64の第1端が接続されている。第2共振キャパシタ64の第2端には、第3フルブリッジ回路30の第3A交流端子CA3が接続されている。第2コイル72の第2端には、第3フルブリッジ回路30の第3B交流端子CB3が接続されている。図1には、第1,第2コイル71,72の漏れインダクタンス71a,72aも合わせて示す。
【0028】
第1コイル71において第2端に対する第1端の電位が高くなる場合、第2コイル72には、その第2端よりも第1端の電位が高くなるような誘起電圧が発生する。一方、第1コイル71において第1端に対する第2端の電位が高くなる場合、第2コイル72には、その第1端よりも第2端の電位が高くなるような誘起電圧が発生する。
【0029】
電力変換装置100は、第1電圧センサ12、第2電圧センサ22及び第3電圧センサ32を備えている。第1電圧センサ12は、第1キャパシタ11の電圧を検出し、第2電圧センサ22は、第2キャパシタ21の電圧を検出し、第3電圧センサ32は、第3キャパシタ31の電圧を検出する。
【0030】
電力変換装置100は、第1電流センサ13、第2電流センサ23及び第3電流センサ33を備えている。第1電流センサ13は、第1フルブリッジ回路10と第1低電位側端子CL1との間を流れる電流を検出する。第2電流センサ23は、第2フルブリッジ回路20と第2低電位側端子CL2との間を流れる電流を検出する。第3電流センサ33は、第3フルブリッジ回路30と第3低電位側端子CL3との間を流れる電流を検出する。
【0031】
なお、第1電流センサ13を例にして説明すると、第1電流センサ13は、例えば、第1フルブリッジ回路10と第1高電位側端子CH1との間を流れる電流を検出してもよい。
【0032】
電力変換装置100は、第1フルブリッジ回路10を制御対象とする第1ECU110、第2フルブリッジ回路20を制御対象とする第2ECU120、第3フルブリッジ回路30を制御対象とる第3ECU130、及び全体ECU140を備えている。第1,第2,第3ECU110,120,130は、第1,第2,第3マイコン111,121,131を主体として構成される電子制御装置(Electronic Control Unit)である。全体ECU140は、マイコン141を主体として構成される電子制御装置であり、各ECU110,120,130よりも上位の制御装置である。各ECU110,120,130は、全体ECU140を介して情報のやり取りが可能になっている。
【0033】
各マイコン111,121,131,141は、CPU(Central Processing Unit)を備えている。各マイコン111,121,131,141が提供する機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェア及びそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、各マイコン111,121,131,141がハードウェアである電子回路によって提供される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路によって提供することができる。例えば、各マイコン111,121,131,141は、自身が備える記憶部としての非遷移的実体的記録媒体(non-transitory tangible storage medium)に格納されたプログラムを実行する。プログラムには、例えば、後述する図8等に示す処理のプログラムが含まれる。プログラムを構成するインストラクションのセットが実行されることにより、プログラムに対応する方法が実行される。記憶部は、例えば不揮発性メモリである。なお、記憶部に記憶されたプログラムは、例えばOTA(Over The Air)等、インターネット等の通信ネットワークを介して更新可能である。
【0034】
第1ECU110には、第1電圧センサ12の検出値Vdc1及び第1電流センサ13の検出値I1が入力される。第2ECU120には、第2電圧センサ22の検出値Vdc2及び第2電流センサ23の検出値I2が入力される。第3ECU130には、第3電圧センサ32の検出値Vdc3及び第3電流センサ33の検出値I3が入力される。各ECU110,120,130に入力された各検出値は、全体ECU140に送信される。
【0035】
続いて、各ECU110,120,130,140の協働によって実行される電力伝達処理について説明する。
【0036】
電力伝達処理は、第1~第3外部端子のうち少なくとも2つの間で電力伝達を行う処理である。電力伝達が行われる2つのフルブリッジ回路と、2つのフルブリッジ回路を接続するトランスとは、DAB(Dual Active Bridge)方式の絶縁型DCDCコンバータを構成する。電力伝達処理では、共振キャパシタ及び漏れインダクタンスからなるLC直列共振回路が利用される。
【0037】
第1フルブリッジ回路10、第1トランス60、第1共振キャパシタ63及び第2フルブリッジ回路20を含む閉ループ回路を第1閉ループ回路と称す。第1閉ループ回路において、第1共振キャパシタ63及び第1トランス60の漏れインダクタンス61a,62aを含むLC直列共振回路(以下、第1共振回路)が形成されている。本実施形態では、漏れインダクタンス61a,62aの設計値は等しい。
【0038】
第2フルブリッジ回路20、第2トランス70、第2共振キャパシタ64及び第3フルブリッジ回路30を含む閉ループ回路を第2閉ループ回路と称す。第2閉ループ回路において、第2共振キャパシタ64及び第2トランス70の漏れインダクタンス71a,72aを含むLC直列共振回路(以下、第2共振回路)が形成されている。本実施形態では、漏れインダクタンス71a,72aの設計値は等しい。また、本実施形態では、各トランス60,70の漏れインダクタンス61a,62a,71a,72aの設計値は等しい。
【0039】
なお、第1,第2閉ループ回路において、第1,第2共振回路を構成するインダクタンスとして、漏れインダクタンスに代えて又は漏れインダクタンスに加えて、受動素子部品である追加のコイルが設けられてもよい。
【0040】
第1外部端子及び第2外部端子の間で電力伝達を行う場合について説明する。電力伝達の制御方法は、例えば特開2021-145407号公報に記載の方法を採用することができる。
【0041】
全体ECU140は、第1AスイッチQA1及び第4AスイッチQA4の組と、第2AスイッチQA2及び第3AスイッチQA3の組とを交互にオンさせる指令を第1ECU110に送信する。また、全体ECU140は、第1BスイッチQB1及び第4BスイッチQB4の組と、第2BスイッチQB2及び第3BスイッチQB3の組とを交互にオンさせる指令値を第2ECU120に送信する。全体ECU140は、第1AスイッチQA1のオフへの切り替えタイミングと、第1BスイッチQB1のオフへの切り替えタイミングとの位相差を調整することにより、電力伝達方向及び電力伝達量を制御することができる。
【0042】
続いて、第2外部端子及び第3外部端子の間で電力伝達を行う場合について説明する。全体ECU140は、第1BスイッチQB1及び第4BスイッチQB4の組と、第2BスイッチQB2及び第3BスイッチQB3の組とを交互にオンさせる指令を第2ECU120に送信する。また、全体ECU140は、第1CスイッチQC1及び第4CスイッチQC4の組と、第2CスイッチQC2及び第3CスイッチQC3の組とを交互にオンさせる指令を第3ECU130に送信する。全体ECU140は、第1BスイッチQB1のオフへの切り替えタイミングと、第1CスイッチQC1のオフへの切り替えタイミングとの位相差を調整することにより、電力伝達方向及び電力伝達量を制御することができる。
【0043】
電力伝達処理における各スイッチQA1~QA4,QB1~QB4,QC1~QC4のスイッチング周波数fβは、第1,第2共振回路の共振周波数のうち高い方よりも高周波側の周波数(例えば、100kHz)に設定されている。例えば、第1共振キャパシタ63の静電容量と第2共振キャパシタ64の静電容量とが等しい場合、第1,第2共振回路の共振周波数は、基本的には等しい値になる。本実施形態において、各スイッチQA1~QA4,QB1~QB4,QC1~QC4のスイッチング周期Tβ(=1/fβ:スイッチング周波数)は等しい値に設定されている。
【0044】
続いて、全体ECU140により実行される共振周波数の推定処理について説明する。
【0045】
まず、図2を用いて、第1共振回路の共振周波数の推定方法について説明する。図2では、各交流端子等の図示を省略している。
【0046】
全体ECU140は、各フルブリッジ回路10,20,30のうち、テスト電圧Vtestの出力元となるフルブリッジ回路である出力回路と、共振周波数の推定対象となる共振回路(以下、対象共振回路)を介して接続されたフルブリッジ回路である対象回路とを選択する。また、全体ECU140は、各フルブリッジ回路10,20,30のうち、出力回路及び対象回路以外の回路を残余回路として選択する。図2に示す例では、出力回路が第1フルブリッジ回路10であり、対象共振回路が第1共振回路であり、対象回路が第2フルブリッジ回路20であり、残余回路が第3フルブリッジ回路30である。
【0047】
全体ECU140は、対象回路である第2フルブリッジ回路20において、上アームスイッチである第1BスイッチQB1及び第3BスイッチQB3をオフし、下アームスイッチである第2BスイッチQB2及び第4BスイッチQB4をオンする短絡処理の指令を、第2ECU120に送信する。
【0048】
全体ECU140は、残余回路である第3フルブリッジ回路30を構成する各スイッチQC1~QC4を全てオフする全オフ処理を、第3ECU130に送信する。
【0049】
全体ECU140は、短絡処理及び全オフ処理を行っている状態において、図3に示すように、第1AスイッチQA1及び第4AスイッチQA4の組と、第2AスイッチQA2及び第3AスイッチQA3の組とを交互にオンする。これにより、第1フルブリッジ回路10から第1トランス60の第1コイル61に対して、正極性のテスト電圧Vtestと負極性のテスト電圧Vtestとが交互に出力される。テスト電圧Vtestは、振幅Vaを有するとともに第i周波数(i=1,2,3,…,N)を有する交流電圧であり、具体的には矩形波電圧である。Vaは、第1キャパシタ11の端子電圧と同等の電圧である。図3において、Tswは、推定処理における第1フルブリッジ回路10の各スイッチQA1~QA4のスイッチング周期を示す。
【0050】
第1コイル61にテスト電圧Vtestが印加されると、第1コイル61に電流が流れる。ここで、全体ECU140は、第1オン期間及び第2オン期間の少なくとも一方の期間における第1電流センサ13の検出値I1(Itest)を、A/D変換等の電流サンプリング処理によって取得する。第1オン期間は、図3に示すように、第1AスイッチQA1及び第4AスイッチQA4のオン期間である。第2オン期間は、第2AスイッチQA2及び第3AスイッチQA3のオン期間である。全体ECU140は、具体的には、第1オン期間の最終タイミングtsp及び第2オン期間の最終タイミングtspのうち少なくとも一方における第1電流センサ13の検出値I1を取得する。第1,第2オン期間において最終タイミングtspに近くなるほど、共振電流のピーク値に近い電流を検出でき、共振周波数の推定精度の向上を図ることができる。第1電流センサ13の検出値I1は、第1ECU110を介して全体ECU140に送信される。なお、テスト電圧Vtestの極性によらず第1電流センサ13の検出値I1の符号が正になっているのは、第1フルブリッジ回路10により整流されているためである。
【0051】
第1オン期間及び第2オン期間における第1電流センサ13の検出値I1は、第1共振回路に流れる共振電流のピーク値付近の大きさとなる。パルス状のテスト電圧Vtestの出力期間中に共振電流のピーク付近の大きさとなるのは、印加電圧に対する共振電流の位相遅れ成分であるリアクタンスがLC共振によって十分に小さくなり、テスト電圧Vtestと共振電流との位相が概ね等しくなっているためである。
【0052】
全体ECU140は、第1周波数を有するテスト電圧Vtestの出力処理及び電流検出処理を完了すると、第2,3,…,N周波数を有するテスト電圧Vtestの出力処理を順次行い、各出力処理時において第1電流センサ13の検出値I1を取得する。全体ECU140は、第1周波数から第N周波数に向かうにつれて周波数が高くなるように周波数を走査してもよいし、第1周波数から第N周波数に向かうにつれて周波数が低くなるように周波数を走査してもよい。
【0053】
全体ECU140は、第1~第N周波数それぞれに対応するテスト電圧Vtestを出力した場合における第1電流センサ13の検出値I1(1)~I1(N)を取得し、取得した検出値I1(1)~I1(N)のうち最も大きい検出値に対応する周波数を第1共振回路の共振周波数frez1として推定する。この推定方法は、共振回路のインピーダンスが共振周波数frezにおいて最小となり、流れる電流が最大になることに基づくものである。
【0054】
図4には、第1フルブリッジ回路10からテスト電圧Vtestを出力した場合における第1コイル61に流れる電流Ibr1及び第1電流センサ13の検出値I1(Itest)の推移を示す。図4に示す例では、実効値が同じテスト電圧Vtestを、89kHzから94kHzまで1kHz刻みで順に走査した場合におけるIbr1,I1を1つのグラフに重ねて示している。この例では、第1共振回路の共振周波数は91.2kHzであるとする。
【0055】
全体ECU140は、6つの周波数それぞれに対応するテスト電圧Vtestを出力した場合における第1電流センサ13の検出値I1(1)~I1(6)のうち、91kHzの検出値が最も大きいと判定する。このため、全体ECU140は、第1共振回路の共振周波数が91kHzであると推定する。
【0056】
推定処理において、上述した短絡処理が実行されることが、共振周波数の推定精度の向上に寄与している。つまり、図2の第2フルブリッジ回路20の部分に破線矢印にて示すように、第2BスイッチQB2、第4BスイッチQB4、第1共振キャパシタ63及び第2コイル62を含む閉回路のインピーダンスが、第1BスイッチQB1のボディダイオード、第2キャパシタ21、第2BスイッチQB2のボディダイオード、第1コイル61及び第1共振キャパシタ63を含む閉回路(図5参照)のインピーダンスよりも十分に小さい。このため、第2キャパシタ21に流れる電流を十分小さくできる。第1共振回路の推定処理における電流流通経路に、第2キャパシタ21等、第1共振回路の構成要素以外の要素が含まれると、第1共振回路の共振周波数の推定精度が低下し得る。本実施形態の短絡処理によれば、第1共振回路の推定処理における電流流通経路から、第1共振回路の構成要素以外の要素を極力除くことができるため、共振周波数の推定精度を向上できる。
【0057】
なお、図5に示すように、第2フルブリッジ回路20の各スイッチQB1~QB4が全てオフされる場合、第1BスイッチQB1のボディダイオード、第2キャパシタ21、第2BスイッチQB2のボディダイオード、第1コイル61及び第1共振キャパシタ63を含む閉回路に電流が多く流れてしまい、共振周波数の推定精度が低下し得る。
【0058】
本実施形態とは異なり、例えば、第2コイル62及び第1共振キャパシタ63の並列接続体に短絡用スイッチが並列接続され、推定処理時に短絡用スイッチをオンし、第2キャパシタ21に電流が流れないようにして共振周波数の推定精度を向上させる手法も考えられる。しかしながら、この場合、追加部品が必要となり、電力変換装置100の体格が増大する懸念がある。
【0059】
推定処理において、上述した全オフ処理が実行されることも、共振周波数の推定精度の向上に寄与している。第3フルブリッジ回路30において全オフ処理が実行されることにより、第2コイル72、第2共振キャパシタ64、第1CスイッチQC1のボディダイオード、第3キャパシタ31及び第4CスイッチQC4のボディダイオードを含む閉回路に電流が流れる。この閉回路のインピーダンスは、仮に第3フルブリッジ回路30において短絡処理が実行されることにより形成される、第2コイル72、第2共振キャパシタ64、第2CスイッチQC2及び第4CスイッチQC4を含む閉回路のインピーダンスよりも大きい。このため、推定処理時において第2トランス70及び第3フルブリッジ回路30に流れる電流を低減でき、共振周波数の推定精度を向上できる。
【0060】
続いて、図6を用いて、第2共振回路の共振周波数の推定方法について説明する。
【0061】
全体ECU140は、テスト電圧Vtestの出力元となる出力回路として第2フルブリッジ回路20を選択し、短絡処理が実行される対象回路として第3フルブリッジ回路30を選択し、全オフ処理が実行される残余回路として第1フルブリッジ回路10を選択する。
【0062】
全体ECU140は、対象回路である第3フルブリッジ回路30において、上アームスイッチである第1CスイッチQC1及び第3CスイッチQC3をオフし、下アームスイッチである第2CスイッチQC2及び第4CスイッチQC4をオンする短絡処理の指令を第3ECU130に送信する。全体ECU140は、残余回路である第1フルブリッジ回路10を構成する各スイッチQA1~QA4を全てオフする全オフ処理の指令を、第1ECU110に送信する。
【0063】
全体ECU140は、短絡処理及び全オフ処理を行っている状態において、第1BスイッチQB1及び第4BスイッチQB4の組と、第2BスイッチQB2及び第3BスイッチQABの組とを交互にオンする。これにより、第2フルブリッジ回路20から第2トランス70の第1コイル71に対して、正極性のテスト電圧Vtestと負極性のテスト電圧Vtestとが交互に出力される。この場合におけるテスト電圧Vtestは、第i周波数(i=1,2,3,…,N)を有する交流電圧であり、具体的には矩形波電圧である。
【0064】
第2トランス70の第1コイル71にテスト電圧Vtestが印加されると、第1コイル71に電流が流れる。ここで、全体ECU140は、第1共振回路の共振周波数の推定時と同様に、第1オン期間及び第2オン期間の少なくとも一方の期間における第2電流センサ23の検出値I2(Itest)を、A/D変換等の電流サンプリング処理によって取得する。第1オン期間は、第1BスイッチQB1及び第4BスイッチQB4のオン期間である。第2オン期間は、第2BスイッチQB2及び第3BスイッチQB3のオン期間である。全体ECU140は、具体的には、第1オン期間の最終タイミングtsp及び第2オン期間の最終タイミングtspのうち少なくとも一方における第2電流センサ23の検出値I2を取得する。第2電流センサ23の検出値I2は、第2ECU120を介して全体ECU140に送信される。
【0065】
全体ECU140は、第1周波数を有するテスト電圧Vtestの出力処理及び電流検出処理を完了すると、第2,3,…,N周波数を有するテスト電圧Vtestの出力処理を順次行い、各出力処理時において第2電流センサ23の検出値I2を取得する。全体ECU140は、第1~第N周波数それぞれに対応するテスト電圧Vtestを出力した場合における第2電流センサ23の検出値I2(1)~I2(N)を取得し、取得した検出値I2(1)~I2(N)のうち最も大きい検出値に対応する周波数を第2共振回路の共振周波数frez2として推定する。
【0066】
全体ECU140は、推定した第1,第2共振回路の共振周波数frez1,frez2のうち、高い方の周波数よりも高い周波数を、電力伝達処理で用いるスイッチング周波数fβに設定する。この設定方法を採用する理由について説明する。
【0067】
図7に、LC直列共振回路のインピーダンス周波数特性を示す。図7のfrezは、共振回路の共振周波数である。共振周波数frezよりもスイッチング周波数fβが低い領域が容量性領域であり、共振周波数frezよりもスイッチング周波数fβが高い領域が誘導性領域である。
【0068】
1次側フルブリッジ回路と2次側フルブリッジ回路との間の位相差を制御することにより伝達電力を制御する方式の電力変換装置においては、容量性領域において電力伝達処理を行うことが困難である。これは、スイッチング周波数fβよりも共振周波数frezの方が高いためである。この場合、短い周期で大きく揺れる共振電流を、共振電流よりも長いスイッチング周期fβを用いて制御することができず、電流が発散し、過電流が流れてしまうおそれがある。なお、共振周波数とスイッチング周波数とが等しい完全共振状態となる場合においても、電力伝達処理を行うことが困難である。これは、共振電流が最大となることに起因して、電流制御ができないためである。
【0069】
そこで、本実施形態において、全体ECU140は、電力伝達処理で用いるスイッチング周波数fβを、第1,第2共振回路の共振周波数frez1,frez2のうち、高い方の周波数よりも高い周波数に設定する。例えば、全体ECU140は、スイッチング周波数fβを、誘導性領域における上限値frh未満の周波数であって、かつ、「共振周波数×1.2≦fβ≦共振周波数×2」の周波数に設定すればよい。この場合、部分共振状態となり、共振回路に流れる電流波形が、矩形波に正弦波が加わったような波形となる。その結果、フルブリッジ回路を構成するスイッチのターンオフ時の電流を低減でき、電力伝達処理におけるスイッチング損失を効果的に低減できる。
【0070】
図8に、全体ECU140により実行される共振周波数の推定処理のフローチャートを示す。
【0071】
ステップS10では、第1,第2共振回路の中から推定対象となる対象共振回路を選択する。本実施形態では、まず、第1共振回路を対象推定回路として選択する。また、第1フルブリッジ回路10を出力回路として選択し、第2フルブリッジ回路20を対象回路として選択し、第3フルブリッジ回路30を残余回路として選択する。
【0072】
ステップS11では、短絡処理を行う。詳しくは、対象回路である第2フルブリッジ回路20において、第1BスイッチQB1及び第3BスイッチQB3をオフし、下アームスイッチである第2BスイッチQB2及び第4BスイッチQB4をオンする指令を、第2ECU120に送信する。
【0073】
ステップS12では、全オフ処理を行う。詳しくは、残余回路である第3フルブリッジ回路30を構成する各スイッチQC1~QC4を全てオフする指令を、第3ECU130に送信する。
【0074】
ステップS13では、第1AスイッチQA1及び第4AスイッチQA4の組と、第2AスイッチQA2及び第3AスイッチQA3の組とを交互にオンする指令を、第1ECU110に送信する。これにより、第1フルブリッジ回路10から第1トランス60の第1コイル61に対して、第1周波数を有するテスト電圧Vtestが出力される。
【0075】
ステップS14では、テスト電圧Vtestが出力されている場合における第1電流センサ13の検出値I1を取得する。
【0076】
ステップS15では、第1~第N周波数それぞれのテスト電圧Vtestを出力した場合における第1電流センサ13の検出値I1の取得が完了したか否かを判定する。ステップS15において否定判定した場合には、ステップS13に移行し、第2周波数を有するテスト電圧の出力処理を行う。
【0077】
ステップS15において第N周波数を有するテスト電圧Vtestを出力した場合における第1電流センサ13の検出値I1の取得が完了したと判定した場合には、ステップS16に進む。ステップS16では、取得した各検出値I1(i)(i=1,2,3,…,N)のうち最も大きい検出値に対応する周波数を第1共振回路の共振周波数frez1として推定する。
【0078】
ステップS17では、第1,第2共振回路の双方の共振周波数frez1,frez2の推定が完了したか否かを判定する。ステップS17において否定判定した場合、ステップS10に移行し、第2共振回路を対象推定回路として選択する。そして、第1共振回路の共振周波数の推定処理の場合と同様に、ステップS11~S16の処理を行う。
【0079】
ステップS17において肯定判定した場合には、ステップS18に進み、推定した第1,第2共振回路の共振周波数frez1,frez2のうち、高い方よりも高い周波数を、電力伝達処理で用いるスイッチング周波数fβに設定する。そして、ステップS19では、電力伝達処理を実行するモードに移行する。
【0080】
なお、共振周波数の推定対象となる第1,第2共振回路の選択順序は、第1共振回路を選択した後に第2共振回路を選択する等、特定順序であることに限らず、適宜変更されてもよい。
【0081】
以上詳述した本実施形態によれば、共振回路の共振周波数の推定精度を高めることができる。また、推定精度を高めるための構成として、各フルブリッジ回路10,20,30の上アームスイッチ又は下アームスイッチを流用することができる。これにより、例えば、第1共振回路の共振周波数を推定する場合において、第1トランス60の第2コイル62及び第1共振キャパシタ63の直列接続体に短絡用のスイッチを追加で並列接続する必要がなくなる。これにより、電力変換装置100の部品数を削減できる。
【0082】
<第1実施形態の変形例>
・短絡処理は、対象回路を構成する全相の下アームスイッチをオンする処理に限らず、対象回路を構成する全相の上アームスイッチをオンする処理であってもよい。
【0083】
・全体ECU140は、推定処理において、全オフ処理に代えて、以下に説明する処理を行ってもよい。第1共振回路の共振周波数の推定を例にして説明すると、全体ECU140は、第1AスイッチQA1及び第4AスイッチQA4のオン期間(第1オン期間)において、第1CスイッチQC1及び第4CスイッチQC4をオンするとともに第2CスイッチQC2及び第3CスイッチQC3をオフする。また、全体ECU140は、第3AスイッチQA3及び第2AスイッチQA2のオン期間(第2オン期間)において、第2CスイッチQC2及び第3CスイッチQC3をオンするとともに、第1CスイッチQC1及び第4CスイッチQC4をオンする。このように、第2CスイッチQC2及び第4CスイッチQC4の同時オン、又は第1CスイッチQC1及び第3CスイッチQC3の同時オンが実行されなければ、共振周波数の推定精度の向上に寄与する。
【0084】
・第1電流センサ13の設置位置は、第1AスイッチQA1及び第2AスイッチQA2の接続点から第1コイル61までの電気経路、又は第3AスイッチQA3及び第4AスイッチQA4の接続点から第1コイル61までの電気経路であってもよい。なお、第2電流センサ23及び第3電流センサ33についても同様である。
【0085】
・電流のサンプリング方法は、上述した方法に限らず、例えば、電流ピークホールド回路によって共振電流のピーク値を検出したり、ローパスフィルタ等によって共振電流の実効値を検出したりしてもよい。
【0086】
・全体ECU140は、推定処理において、第1オン期間のうち最終タイミングよりも前のタイミング、及び第2オン期間のうち最終タイミングよりも前のタイミングにおいて第1,第2電流センサ13,23の検出値I1,I2を取得してもよい。
【0087】
・全体ECU140は、電力伝達処理が行われる場合における各スイッチQA1~QA4,QB1~QB4,QC1~QC4のスイッチング周波数fβを、推定した第1,第2共振周波数frez1,frez2のうち低い方よりも低い周波数に設定してもよい。この設定は、例えば、第1フルブリッジ回路10から第1トランス60を介して第2フルブリッジ回路20に電力を伝達する場合において、第2フルブリッジ回路20を構成する各スイッチQB1~QB4がオフに維持される制御が実行される構成に適用される。
【0088】
・第1共振キャパシタ63は、第1トランス60の第2コイル62ではなく第1コイル61に直列接続されていてもよい。
【0089】
・第2共振キャパシタ64は、第2トランス70の第2コイル72ではなく第1コイル71に直列接続されていてもよい。
【0090】
・第2トランス70の第1コイル71は、第2フルブリッジ回路20の第2A交流端子CA2及び第2B交流端子CB2ではなく、第1フルブリッジ回路10の第1A交流端子CA1及び第1B交流端子CB1に接続されていてもよい。
【0091】
図9に示すように、電力変換装置は、第1トランス60の第1コイル61と第1A交流端子CA1とを電気的に接続する共振キャパシタ163と、第2トランス70の第1コイル71と第2A交流端子CA2とを電気的に接続する共振キャパシタ164とを備えていてもよい。この場合、第1共振回路は、第1共振キャパシタ63、共振キャパシタ163及び漏れインダクタンス61a,62aにより構成され、第2共振回路は、第2共振キャパシタ64、共振キャパシタ164及び漏れインダクタンス71a,72aにより構成される。
【0092】
図8に示す推定処理は、各ECU110,120,130,140の起動直後に実行されてもよいし、電力伝達処理の実行期間以外の期間であれば起動直後以外の期間に実行されてもよい。
【0093】
・例えば各ECU110,120,130,140の起動直後に実行される推定処理において、共振周波数の推定対象となる共振回路は、電力変換装置100が備える全ての共振回路に限らず、一部の共振回路であってもよい。この場合、推定対象となる一部の共振経路は、各ECU110,120,130,140の起動毎に変更されてもよい。
【0094】
・全体ECU140は、推定した共振周波数がその正常範囲から外れていると判定した場合、正常範囲から外れている共振周波数に対応する共振回路に異常が発生していると判定してもよい。この場合、全体ECU140は、電力伝達処理の実行を禁止したり、異常が発生している旨をユーザに通知する処理を行ったりしてもよい。ここで、通知処理は、例えば、システムが備える通知部(例えば、ブザー等の音生成部、電灯等の光生成部)を制御することによりユーザに通知する処理とすればよい。
【0095】
・全体ECU140は、推定処理の実行に先立ち、各外部端子に接続された電気負荷と各外部端子との電気的な接続を遮断してもよい。
【0096】
・推定処理におけるフルブリッジ回路のスイッチング制御や、推定処理時にフルブリッジ回路等に電流が流れることに伴い発生する損失エネルギが、フルブリッジ回路の外部端子側のキャパシタ(例えば、図2の回路状態における第1キャパシタ11)に蓄積されている静電エネルギに対して大きいことがある。この場合、全体ECU140は、外部端子に接続された電圧源からキャパシタに、推定処理時に必要な電力を供給する制御を行ってもよい。
【0097】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、図10に示すように、電力変換装置100は、第1電圧調整回路15及び第2電圧調整回路25を備えている。なお、図10では、便宜上、第3フルブリッジ回路30等の図示を省略している。
【0098】
本実施形態において、第1電圧調整回路15は、第1放電抵抗体15a及び第1放電スイッチ15bの直列接続体を備え、第1キャパシタ11の放電回路である。第2電圧調整回路25も、第2放電抵抗体25a及び第2放電スイッチ25bの直列接続体を備え、第2キャパシタ21の放電回路である。第1電圧調整回路15は、第1キャパシタ11に並列接続され、第2電圧調整回路25は、第2キャパシタ21に並列接続されている。本実施形態において、各電圧調整回路15,25は、推定処理時において共振回路に過電流が流れる事態の発生を抑制するために用いられる。
【0099】
電力変換装置100は、第1高電位側端子CH1及び第1低電位側端子CL1と第1電圧調整回路15との間を電気的に接続又は遮断するための第1遮断スイッチSMR1(例えばリレー)を備えている。また、電力変換装置100は、第2高電位側端子CH2及び第2低電位側端子CL2と第2電圧調整回路25との間を電気的に接続又は遮断するための第2遮断スイッチSMR2(例えばリレー)を備えている。図10には、第1高電位側端子CH1及び第1低電位側端子CL1に第1蓄電池B1が接続され、第2高電位側端子CH2及び第2低電位側端子CL2に第2蓄電池B2が接続される例を示す。
【0100】
第1ECU110は、第1遮断スイッチSMR1をオフした状態で第1放電スイッチ15bの制御により第1キャパシタ11から電荷を放電させる。これにより、第1共振回路の共振周波数の推定処理時における第1キャパシタ11の端子電圧を、電力伝達処理時における第1キャパシタ11の端子電圧(具体的には定格電圧)よりも低くする。その結果、推定処理時におけるテスト電圧Vtestの1周期における実効値(例えば、基本波成分の実効値)が、電力伝達処理時において第1フルブリッジ回路10から出力される電圧の1周期における実効値(例えば、基本波成分の実効値)よりも小さくなる。推定処理時においては、短絡処理が行われているため、2次側のフルブリッジ回路のインピーダンスが小さくなっており、電流が流れやすい。このため、テスト電圧Vtestの実効値を小さくすることにより、過電流が流れる事態の発生を抑制する。
【0101】
同様に、全体ECU140は、第2遮断スイッチSMR2をオフした状態で第2放電スイッチ25bの制御により第2キャパシタ21から電荷を放電させる。これにより、第2共振回路の共振周波数の推定処理時における第2キャパシタ21の端子電圧を、電力伝達処理時における第2キャパシタ21の端子電圧よりも低くする。
【0102】
なお、推定処理時において第1,第2キャパシタ11,21の端子電圧を下げすぎると、共振回路に流れる電流の変化が小さくなり、共振周波数の推定精度が低下し得る。このため、推定処理時において第1,第2キャパシタ11,21の端子電圧は、過電流の抑制と共振周波数の推定精度の確保とを考慮した値に設定されることが望ましい。
【0103】
図11に、全体ECU140により実行される共振周波数の推定処理のフローチャートを示す。なお、図11において、先の図8に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付している。
【0104】
ステップS10の処理の完了後、ステップS20に進む。第1共振回路を対象推定回路として選択している場合、ステップS20では、第1遮断スイッチSMR1をオフした状態で、第1放電スイッチ15bの制御により第1キャパシタ11から電荷を放電させる指令を、第1ECU110に送信する。これにより、ステップS13において、テスト電圧Vtestの1周期における実効値を、電力伝達処理時において第1フルブリッジ回路10から出力される電圧の1周期における実効値よりも小さくする。
【0105】
図12に、推定処理時におけるテスト電圧Vtestの振幅Veが、電力伝達制御時における第1フルブリッジ回路10の出力電圧の振幅Vsよりも小さくされることにより、上記実効値の設定が実現される場合の例を示す。ここで、推定処理時におけるテスト電圧Vtestの振幅Veは、電力伝達制御時における第1フルブリッジ回路10の出力電圧の振幅VsのK倍の値に設定されていればよい。Kは、例えば、「1/3≦K<1/2」、「1/4≦K<1/3」、「1/5≦K<1/4」、「1/8≦K<1/5」、「1/10≦K<1/8」又は「1/15≦K<1/10」に設定されていればよい。
【0106】
続くステップS21では、図12に示すように、推定処理におけるテスト電圧Vtestのパルス幅を、電力伝達処理における第1フルブリッジ回路10の出力電圧のパルス幅よりも小さくするように第1フルブリッジ回路10のスイッチング制御を行う指令を、第1ECU110に送信する。これにより、テスト電圧Vtestの1周期における実効値を、電力伝達処理時において第1フルブリッジ回路10から出力される電圧の1周期における実効値よりも小さくする。ここで、全体ECU140は、第4AスイッチQA4のオンへの切り替えタイミングを遅らせることにより、パルス幅を小さくすればよい。また、推定処理におけるテスト電圧Vtestのパルス幅は、電力伝達処理における第1フルブリッジ回路10の出力電圧のパルス幅のM倍に設定されていればよい。Mは、例えば、「1/5≦M<1/3」、「1/7≦M<1/5」、「1/10≦M<1/7」、「1/15≦M<1/10」、「1/20≦K<1/15」又は「1/25≦K<1/20」に設定されていればよい。
【0107】
先の図11の説明に戻り、第2共振回路を対象推定回路として選択している場合、ステップS20では、第2遮断スイッチSMR2をオフした状態で、第2放電スイッチ25bの制御により第2キャパシタ21から電荷を放電させる指令を、第2ECU120に送信する。これにより、ステップS13において、テスト電圧Vtestの1周期における実効値を、電力伝達処理時において第2フルブリッジ回路20から出力される電圧の1周期における実効値よりも小さくする。
【0108】
続くステップS21では、推定処理におけるテスト電圧Vtestのパルス幅を、電力伝達処理における第2フルブリッジ回路20の出力電圧のパルス幅よりも小さくするように第2フルブリッジ回路20のスイッチング制御を行う指令を、第2ECU120に送信する。
【0109】
以上説明した本実施形態によれば、推定処理時において過電流が流れる事態の発生を抑制することができる。
【0110】
<第2実施形態の変形例>
図11のステップS20又はS21のいずれかの処理が実行されなくてもよい。
【0111】
<第3実施形態>
以下、第3実施形態について、第1,第2実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、共振回路の共振周波数のばらつきに起因した不都合の発生を抑制する。
【0112】
図13に、共振回路を構成する共振キャパシタ及び漏れインダクタンスのばらつきや温度依存性等に起因した共振回路の共振周波数のばらつき範囲と、スイッチング損失との関係を示す。図13に示す例では、電力伝達処理時におけるスイッチング周波数fβが100kHzに設定されている。図13に示す例では、共振周波数のばらつき範囲が77kHzから92kHzまでの範囲である。ばらつき範囲の上限周波数がfrHであり、ばらつき範囲の下限周波数がfrLである。目標周波数範囲の下限値がfr1(80kHzを例示)であり、目標周波数範囲の上限値がfr2(88kHzを例示)である。共振周波数が目標周波数範囲内であれば、電力伝達処理時において電力変換装置100で発生するスイッチング損失がその上限値Tlim以下となる。
【0113】
共振周波数が目標周波数範囲の上限値fr2よりも高くなり、共振周波数がスイッチング周波数fβに近くなる場合、電流制御の安定性が低下し得る。そこで、電力変換装置100は、共振回路の静電容量及びインダクタンスの少なくとも一方を変更する変更回路を備えている。全体ECU140は、推定処理において第1共振回路を対象推定回路として選択している場合、推定した第1共振回路の共振周波数frez1が目標周波数範囲の上限値fr2よりも高いと判定した場合、第1共振回路の静電容量及びインダクタンスの少なくとも一方を増加させ、第1共振回路の共振周波数を目標周波数範囲内にするように変更回路を制御する。
【0114】
一方、共振周波数が目標周波数範囲の下限値fr1よりも低くなり、共振周波数がスイッチング周波数fβから離れる場合、電流波形が矩形状になり、ターンオフ時におけるスイッチング損失が増大し得る。そこで、全体ECU140は、推定処理において第1共振回路を対象推定回路として選択している場合、推定した第1共振回路の共振周波数frez1が目標周波数範囲の下限値fr1よりも低いと判定した場合、第1共振回路の静電容量及びインダクタンスの少なくとも一方を減少させ、第1共振回路の共振周波数を目標周波数範囲内にするように変更回路を制御する。
【0115】
なお、上述した変更回路の制御は、第2共振回路が対象推定回路として選択されている場合にも同様に適用できる。
【0116】
また、全体ECU140は、推定した共振周波数が上限周波数frhよりも高い又は下限周波数frLよりも低いと判定した場合、電力変換装置100に異常が発生していると判定し、電力伝達処理の実行を禁止したり、異常が発生している旨をユーザに通知する処理を行ったりしてもよい。
【0117】
図14に共振回路の静電容量を変更する変更回路の一例を示す。変更回路は、第A共振キャパシタ63Aと、第B共振キャパシタ63Bと、切替スイッチ50とを備えている。第A共振キャパシタ63Aは、第B共振キャパシタ63Bよりも静電容量が大きい。第A共振キャパシタ63Aは、複数(例えば11個)のキャパシタの並列接続体であり、第B共振キャパシタ63Bは、複数(例えば2個)のキャパシタの並列接続体であり、第B共振キャパシタ63Bを構成するキャパシタ数は、第A共振キャパシタ63Aを構成するキャパシタ数よりも少ない。なお、第B共振キャパシタ63Bは1個のキャパシタであってもよい。
【0118】
第A共振キャパシタ63Aの第1端は、第2コイル62の一端に接続されている。第B共振キャパシタ63Bの第1端は、切替スイッチ50を介して第2コイル62の一端に接続されている。第A共振キャパシタ63A及び第B共振キャパシタ63Bの第2端は、第2A交流端子CA2に接続されている。
【0119】
全体ECU140は、切替スイッチ50をオフすることにより、第1共振回路の静電容量を減少させる。一方、全体ECU140は、切替スイッチ50をオンすることにより、第1共振回路の静電容量を増加させる。
【0120】
図15に共振回路のインダクタンスを変更する変更回路の一例を示す。変更回路は、第2コイル62と第1共振キャパシタ63とを接続する電気経路に並列接続されたコイル51及び切替スイッチ52の直列接続体を備えている。
【0121】
全体ECU140は、切替スイッチ52をオフすることにより、第1共振回路のインダクタンスを増加させる。一方、全体ECU140は、切替スイッチ52をオンすることにより、第1共振回路のインダクタンスを減少させる。
【0122】
以上説明した本実施形態によれば、共振周波数がばらつく場合であっても、電力変換装置100の安定動作を実現することができる。
【0123】
<第3実施形態の変形例>
キャパシタの端子電圧を調整する電圧調整回路としては、放電回路に限らず、例えば、チョッパ回路等で構成されるDCDCコンバータであってもよい。
【0124】
<第4実施形態>
以下、第4実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。電力変換装置100のポート数は、3つに限らず、図16に示すように4つであってもよい。なお、図16では、便宜上、ECU等の図示を省略している。
【0125】
電力変換装置100は、第4外部端子として、第4高電位側端子CH4及び第4低電位側端子CL4を備えている。また、電力変換装置100は、第4フルブリッジ回路40及び第4キャパシタ41を備えている。第4フルブリッジ回路40は、第1D~第4DスイッチQD1~QD4を備えている。本実施形態において、第1D~第4DスイッチQD1~QD4は、NチャネルMOSFETであり、ボディダイオードを有している。本実施形態において、第4フルブリッジ回路40の構成は、第1フルブリッジ回路10の構成と同様であるため、第4フルブリッジ回路40の詳細な説明を省略する。
【0126】
なお、本実施形態では、第2共振キャパシタ64が第2トランス70の第1コイル71に直列接続されている。
【0127】
電力変換装置100は、第3フルブリッジ回路30と第4フルブリッジ回路40との間の電力伝達を行うための構成として、第3トランス80と、第3共振キャパシタ65とを備えている。第3トランス80は、第1コイル81と、第2コイル82と、第1コイル81及び第2コイル82が巻回されたコアとを備えている。第1コイル81及び第2コイル82は、コアを介して磁気結合する。
【0128】
第1コイル81の第1端には、第3共振キャパシタ65を介して第3A交流端子CA3が接続されている。第1コイル81の第2端には、第3B交流端子CB3が接続されている。第2コイル82の第1端には、第4フルブリッジ回路40の第4A交流端子CA4が接続されている。第2コイル82の第2端には、第4フルブリッジ回路40の第4B交流端子CB4が接続されている。なお、図16には、第1,第2コイル81,82の漏れインダクタンス81a,82aも合わせて示す。
【0129】
電力変換装置100は、第4電圧センサ42及び第4電流センサ43を備えている。第4電圧センサ42は、第4キャパシタ41の電圧を検出する。第4電流センサ43は、第4フルブリッジ回路40と第4低電位側端子CL4との間を流れる電流を検出する。第4電圧センサ42の検出値Vdc4及び第4電流センサ43の検出値I4は、第4フルブリッジ回路40を制御対象とする図示しない第4ECUに入力される。第4ECUは、全体ECU140を介して第1~第3ECU110,120,130と情報をやり取りする。
【0130】
図16に示す構成では、第3共振キャパシタ65及び第3トランス80の漏れインダクタンス81a,82aを含む第3共振回路が形成されている。
【0131】
なお、図17に示すように、電力変換装置100のポート数は5つ以上であってもよい。この場合、電力変換装置100は、少なくとも、第1コイル91及び第2コイル92を有する第4トランス90と、第4共振キャパシタ66とを備えていればよい。なお、図17には、第1,第2コイル91,92の漏れインダクタンス91a,92aも合わせて示す。
【0132】
また、図17に示した構成を図18のように変更することもできる。電力変換装置100は、第1モジュール18、第2モジュール28、第3モジュール38及び第4モジュール48を備えている。第1モジュール18は、第1フルブリッジ回路10と、第1キャパシタ11と、第1トランス60の第1コイル61及びコアの一部と、第1電圧センサ12と、第1電流センサ13とが第1筐体に収容されてモジュール化された機器である。第2モジュール28は、第2フルブリッジ回路20と、第2キャパシタ21と、第1トランス60の第2コイル62及びコアの一部と、第2トランス70の第1コイル71及びコアの一部と、第2共振キャパシタ64と、第2電圧センサ22と、第2電流センサ23とが第2筐体に収容されてモジュール化された機器である。
【0133】
第1モジュール18の第1筐体のうち第2モジュール28の第2筐体との当接面からは、第1トランス60の第1コイル61が巻回されたコアの一部が露出している。また、第2モジュール28の第2筐体のうち第1モジュール18の第1筐体との当接面からは、第1トランス60の第2コイル62が巻回されたコアの一部が露出している。第1筐体の当接面と第2筐体の当接面とが当接して第1,第2筐体が一体化されることにより、第1トランス60の第1コイル61が巻回されたコアの一部と、第1トランス60の第2コイル62が巻回されたコアの一部とが当接する。これにより、第1トランス60において第1コイル61と第2コイル62とが磁気結合する。
【0134】
第3モジュール38は、第3フルブリッジ回路30と、第3キャパシタ31と、第2トランス70の第2コイル72及びコアの一部と、第3トランス80の第1コイル81及びコアの一部と、第3共振キャパシタ65と、第3電圧センサ32と、第3電流センサ33とが第3筐体に収容されてモジュール化された機器である。
【0135】
第2モジュール28の第2筐体のうち第3モジュール38の第3筐体との当接面からは、第2トランス70の第1コイル71が巻回されたコアの一部が露出している。また、第3モジュール38の第3筐体のうち第2モジュール28の第2筐体との当接面からは、第2トランス70の第2コイル72が巻回されたコアの一部が露出している。第2筐体の当接面と第3筐体の当接面とが当接して第2,第3筐体が一体化されることにより、第2トランス70の第1コイル71が巻回されたコアの一部と、第2トランス70の第2コイル72が巻回されたコアの一部とが当接する。これにより、第2トランス70において第1コイル71と第2コイル72とが磁気結合する。
【0136】
第4モジュール48は、第4フルブリッジ回路40と、第4キャパシタ41と、第3トランス80の第2コイル82及びコアの一部と、第4トランス90の第1コイル91及びコアの一部と、第4共振キャパシタ66と、第4電圧センサ42と、第4電流センサ43とが第4筐体に収容されてモジュール化された機器である。
【0137】
第3モジュール38の第3筐体のうち第4モジュール48の第4筐体との当接面からは、第3トランス80の第1コイル81が巻回されたコアの一部が露出している。また、第4モジュール48の第4筐体のうち第3モジュール38の第3筐体との当接面からは、第3トランス80の第2コイル82が巻回されたコアの一部が露出している。第3筐体の当接面と第4筐体の当接面とが当接して第3,第4筐体が一体化されることにより、第3トランス80の第1コイル81が巻回されたコアの一部と、第3トランス80の第2コイル82が巻回されたコアの一部とが当接する。これにより、第3トランス80において第1コイル81と第2コイル82とが磁気結合する。
【0138】
図18に示す構成によれば、ユーザが望むポート数等に応じた電力変換装置100を実現することができる。なお、図18に示す構成において、各モジュール18,28,38,48のうちいずれかのモジュールが、共振回路の共振周波数の推定順序等を決めるマスターモジュールとされることが望ましい。
【0139】
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0140】
図19に示すように、電力変換装置200のポート数が2つであってもよい。この場合であっても、第1フルブリッジ回路10が出力回路として選択され、第2フルブリッジ回路20が対象回路として選択される推定処理において、第2フルブリッジ回路20において短絡処理が実行されることにより、共振周波数の推定精度を向上できる。なお、図19に示す構成において、第1コイル71が「第2インダクタンス要素」に相当する。
【0141】
図20に示すように、電力変換装置300は、トランスを備えていない非絶縁型のものであってもよい。詳しくは、電力変換装置300は、第1共振回路を構成する第1インダクタ310(「第1インダクタンス要素」に相当)及び第1共振キャパシタ311の直列接続体と、第2共振回路を構成する第2インダクタ320(「第2インダクタンス要素」に相当)及び第2共振キャパシタ321の直列接続体とを備えている。第1インダクタ310及び第1共振キャパシタ311の直列接続体は、第1フルブリッジ回路10の第1A交流端子CA1と第2フルブリッジ回路20の第2A交流端子CA2とを接続する。第2共振回路を構成する第2インダクタ320及び第2共振キャパシタ321の直列接続体は、第2フルブリッジ回路20の第2A交流端子CA2と第3フルブリッジ回路30の第3A交流端子CA3とを接続する。
【0142】
なお、第1フルブリッジ回路10の第1B交流端子CB1と第2フルブリッジ回路20の第2B交流端子CB2とは短絡されている。また、第2フルブリッジ回路20の第2B交流端子CB2と第3フルブリッジ回路30の第3B交流端子CB3とは短絡されている。
【0143】
・上記各実施形態の推定処理は、例えば、電力変換装置の製造工程、又は電力変換装置のリユース時の検査工程において実行されてもよい。この場合における推定処理の実行主体は、電力変換装置に内蔵されるものに限らず、電力変換装置の外部に設けられたECU(例えば、整備工場で用いられるダイアグ用のECU)であってもよい。
【0144】
・フルブリッジ回路が有するスイッチは、NチャネルMOSFETに限らず、例えば、フリーホイールダイオードが逆並列接続されたIGBTであってもよい。この場合、スイッチの高電位側端子がコレクタであり、スイッチの低電位側端子がエミッタである。
【0145】
・上記各実施形態では、各ECU110,120,130,140の協働によって推定処理及び電力伝達処理が行われたがこれに限らず、単一の制御装置によって推定処理及び電力伝達処理が行われてもよい。
【0146】
・本開示に記載の制御装置及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御装置及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御装置及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0147】
・以下、上述した各実施形態から抽出される特徴的な構成を記載する。
[構成1]
第1外部端子(CH1,CL1)に接続されたフルブリッジ回路である第1回路(10)と、
第2外部端子(CH2,CL2)に接続されたフルブリッジ回路である第2回路(20)と、
を備える電力変換装置(100,200,300)において、
前記第1回路の第1交流端子(CA1,CB1)及び前記第2回路の第2交流端子(CA2,CB2)を接続する第1インダクタンス要素(60,51,310)と、
前記第1インダクタンス要素に接続された共振キャパシタ(63,63A,63B,163,311)と、
前記第2交流端子又は前記第1交流端子に接続された第2インダクタンス要素(70,71)と、
制御装置(110,120,130,140)と、
を備え、
前記制御装置は、
前記第1回路及び前記第2回路の少なくとも一方のスイッチング制御により、前記第1インダクタンス要素を介して前記第1外部端子及び前記第2外部端子の間で電力を伝達する電力伝達処理と、
前記第1インダクタンス要素及び前記共振キャパシタを含む共振回路の共振周波数を推定する推定処理と、
を行い、
前記制御装置は、前記推定処理において、
前記第1回路及び前記第2回路の一方である対象回路を構成する全相の下アームスイッチ又は前記対象回路を構成する全相の上アームスイッチをオンする短絡処理を行った状態で、前記第1回路及び前記第2回路のうち前記対象回路以外の回路である出力回路のスイッチング制御により、前記出力回路から前記共振回路に対して、複数の周波数それぞれに対応したテスト電圧を出力し、
前記テスト電圧が出力されている場合において、前記第1外部端子及び前記第2外部端子のうち前記対象回路が接続された外部端子から前記対象回路を介して前記第1インダクタンス要素に至るまでの電流経路を流れる電流であって、複数の前記周波数それぞれに対応する電流に基づいて、前記共振周波数を推定する、電力変換装置。
[構成2]
前記制御装置は、前記推定処理における前記テスト電圧の実効値を前記電力伝達処理における前記テスト電圧の実効値よりも小さくする、構成1に記載の電力変換装置。
[構成3]
前記出力回路の入力電圧を調整する電圧調整回路(15)を備え、
前記制御装置は、前記推定処理における前記入力電圧を前記電力伝達処理における前記入力電圧よりも低くするように前記電圧調整回路を制御することにより、前記推定処理における前記テスト電圧の実効値を前記電力伝達処理における前記テスト電圧の実効値よりも小さくする、構成2に記載の電力変換装置。
[構成4]
前記制御装置は、前記推定処理における前記テスト電圧のパルス幅を、前記第1回路及び前記第2回路間の前記電力伝達処理における電圧のパルス幅よりも小さくするように前記出力回路のスイッチング制御を行うことにより、前記推定処理における前記テスト電圧の実効値を前記電力伝達処理における前記テスト電圧の実効値よりも小さくする、構成2又は3に記載の電力変換装置。
[構成5]
前記制御装置は、前記電力伝達処理におけるスイッチング制御の周波数を、前記推定処理により推定した前記共振周波数よりも高い周波数に設定する、構成1~4のいずれか1つに記載の電力変換装置。
[構成6]
前記制御装置は、前記推定処理において、前記出力回路から正極性又は負極性の前記テスト電圧が出力されている期間において、前記共振周波数の推定に用いる前記電流を検出する、構成1~5のいずれか1つに記載の電力変換装置。
[構成7]
前記共振キャパシタの静電容量及び前記第1インダクタンス要素のインダクタンスの少なくとも一方を変更する変更回路(50,63A,63B,51,52)を備え、
前記制御装置は、
推定した前記共振周波数が所定範囲の上限値(fr2)よりも高い場合、前記共振キャパシタの静電容量及び前記第1インダクタンス要素のインダクタンスの少なくとも一方を増加させるように前記変更回路を制御し、
推定した前記共振周波数が前記所定範囲の下限値(fr1)よりも低い場合、前記共振キャパシタの静電容量及び前記第1インダクタンス要素のインダクタンスの少なくとも一方を減少させるように前記変更回路を制御する、構成1~6のいずれか1つに記載の電力変換装置。
[構成8]
第3外部端子(CH3,CL3)に接続されたフルブリッジ回路である第3回路(30)と、
前記第1交流端子に接続された第1コイル(61)、及び前記第2交流端子に接続された第2コイル(62)を有する第1トランス(60)と、
を備え、
前記共振キャパシタは、前記第1コイル及び前記第2コイルの少なくとも一方に直列接続された第1共振キャパシタであり、
前記第2交流端子又は前記第1交流端子に接続された第3コイル(71)、及び前記第3回路の第3交流端子(CA3,CB3)に接続された第4コイル(72)を有する第2トランス(70)と、
前記第3コイル及び前記第4コイルの少なくとも一方に直列接続された第2共振キャパシタ(64)と、
を備え、
前記第1インダクタンス要素は、前記第1トランスの漏れインダクタンス、又は前記第1コイル及び前記第2コイルの少なくとも一方に直列接続されたコイルであり、
前記第2インダクタンス要素は、前記第2トランスの漏れインダクタンス、又は前記第3コイル及び前記第4コイルの少なくとも一方に直列接続されたコイルであり、
前記電力伝達処理は、前記第1回路、前記第2回路及び前記第3回路のうち少なくとも1つのスイッチング制御により、前記第1外部端子、前記第2外部端子及び前記第3外部端子のうち少なくとも2つの間で電力を伝達する処理である、構成1~7のいずれか1つに記載の電力変換装置。
[構成9]
前記共振回路は、前記第1インダクタンス要素及び前記第1共振キャパシタを含む第1共振回路であり、
前記第2インダクタンス要素及び前記第2共振キャパシタを含む第2共振回路が構成されており、
前記制御装置は、前記推定処理において、
前記第1共振回路及び前記第2共振回路の一方を共振周波数の推定対象となる対象共振回路として選択し、
前記第1回路、前記第2回路及び前記第3回路のうち、選択した前記対象共振回路を介して接続された2つの回路である前記出力回路及び前記対象回路と、前記第1回路、前記第2回路及び前記第3回路のうち、前記出力回路及び前記対象回路以外の回路である残余回路とを選択し、
選択した前記対象回路において前記短絡処理を行うとともに、選択した前記残余回路が有する全相の上,下アームスイッチをオフした状態で、選択した前記出力回路のスイッチング制御によって前記対象共振回路に対して、複数の前記周波数それぞれに対応する前記テスト電圧を出力し、
前記テスト電圧が出力されている場合における前記電流であって、複数の前記周波数それぞれに対応する電流に基づいて、前記対象共振回路の共振周波数を推定する、構成8に記載の電力変換装置。
[構成10]
前記制御装置は、前記第1共振回路を前記対象共振回路として選択した場合における前記第1共振回路の共振周波数の推定処理と、前記第2共振回路を前記対象共振回路として選択した場合における前記第2共振回路の共振周波数の推定処理と、を行う、構成9に記載の電力変換装置。
[構成11]
前記制御装置は、前記電力伝達処理におけるスイッチング制御の周波数(fβ)を、推定した前記各共振周波数の最大値よりも高い周波数に設定する、構成10に記載の電力変換装置。
【符号の説明】
【0148】
10,20,30…第1,第2,第3フルブリッジ回路、60…第1トランス、63…第1共振キャパシタ、64…第2共振キャパシタ、70…第2トランス、100…電力変換装置。
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