(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018012
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】界磁子、モータ、送風装置、冷凍サイクル装置、界磁子の製造方法、及びモータの製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 1/2788 20220101AFI20240201BHJP
【FI】
H02K1/2788
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121042
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】中増 伸
(72)【発明者】
【氏名】藤井 浩和
(72)【発明者】
【氏名】河合 良樹
(72)【発明者】
【氏名】瀬堂 統太
(72)【発明者】
【氏名】小川 翔平
(72)【発明者】
【氏名】浅野 能成
(72)【発明者】
【氏名】木戸 尚宏
(72)【発明者】
【氏名】浅利 司
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622CA01
5H622CA05
5H622CA10
5H622DD01
5H622DD02
5H622DD04
5H622PP01
5H622QA03
5H622QA04
(57)【要約】
【課題】磁石と、バックヨークとを一体成型する従来の技術では、バックヨークを付加しなくても磁石の磁束の強さが十分である場合であっても、バックヨークを付加しないという選択をすることができない、という課題がある。
【解決手段】回転子20は、ボンド磁石21と、バックヨーク23と、を備える。ボンド磁石21は、円筒状である。ボンド磁石21は、一体成型される。バックヨーク23は、ボンド磁石21の外周側に、一体成型後に取り付けられる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一体成型された円筒状のボンド磁石(21)と、
前記ボンド磁石の外周側に、一体成型後に取り付けられた軟磁性の部材(23)と、
を備える、
界磁子(20)。
【請求項2】
前記ボンド磁石は、極異方に配向されている、
請求項1に記載の界磁子(20)。
【請求項3】
前記界磁子は、固定子の径方向外側に配置される回転子(20)であり、
前記ボンド磁石の径方向の厚みLmと、前記ボンド磁石の1極当たりの径方向内側の磁極面の円弧長Lsとは、Lm<Ls/2、を満たす、
請求項2に記載の界磁子(20)。
【請求項4】
前記界磁子は、固定子の径方向外側に配置される回転子(20)であり、
前記ボンド磁石の径方向の厚みLmと、前記ボンド磁石の1極当たりの径方向内側の磁極面の円弧長Lsと、前記軟磁性の部材の径方向の厚みLyとは、Ly<Ls/2-Lm、を満たす、
請求項2に記載の界磁子(20)。
【請求項5】
前記軟磁性の部材は、軟磁性材テープであり、
前記軟磁性材テープは、前記ボンド磁石の外周面に接着することにより固定される、
請求項1から4のいずれか1項に記載の界磁子(20)。
【請求項6】
前記軟磁性材テープは、鉄を基材とする、
請求項5に記載の界磁子(20)。
【請求項7】
前記軟磁性材テープの厚みは、0.1mm以上1.0mm以下である、
請求項5に記載の界磁子(20)。
【請求項8】
前記軟磁性の部材は、SPCC(Steel Plate Cold Commercial)、又はSPCE(Steel Plate Cold Deep Drawn Extra)を基材とする、
請求項1から4のいずれか1項に記載の界磁子(20)。
【請求項9】
前記軟磁性の部材は、無方向性電磁鋼帯、又は方向性電磁鋼帯を基材とする、
請求項1から4のいずれか1項に記載の界磁子(20)。
【請求項10】
前記軟磁性の部材は、C字状、又は円筒状の部材である、
請求項1から4のいずれか1項に記載の界磁子(20)。
【請求項11】
前記C字状の前記軟磁性の部材は、前記ボンド磁石の外周側に、
復元力による締まり嵌めにより固定される、又は、
周方向の両端を接合した状態で、テープにより固定される、又は、
周方向の両端に設けられた引掛け部を、互いに引掛けることにより固定される、又は、
重ね合わせて溶接することにより固定される、又は、
重ね合わせて圧接することにより固定される、又は、
重ね合わせて超音波溶着することにより固定される、
請求項10に記載の界磁子(20)。
【請求項12】
前記C字状、又は前記円筒状の前記軟磁性の部材は、前記ボンド磁石の外周側に、
重ね合わせて接着することにより固定される、又は、
前記軟磁性の部材の内周面に設けられた凸部と、前記ボンド磁石の外周面に設けられた凹部とを勘合することにより固定される、又は、
冷却された前記ボンド磁石に、常温の前記軟磁性の部材を被せる冷やし嵌めにより固定される、又は、
常温の前記ボンド磁石に、加熱された前記軟磁性の部材を被せる焼き嵌めにより固定される、又は、
前記ボンド磁石の磁力により固定される、
請求項10に記載の界磁子(20)。
【請求項13】
請求項1から4のいずれか1項に記載の界磁子(20)と、
前記界磁子の径方向内側に配置される固定子(10)と、
を備える、
モータ(50)。
【請求項14】
請求項13に記載のモータ(50)と、
前記モータによって駆動されるファン(60)と、
を備える、
送風装置(70)。
【請求項15】
請求項14に記載の送風装置(70)、
を備える、
冷凍サイクル装置(100)。
【請求項16】
一体成型された円筒状のボンド磁石(21)と、
軟磁性の部材(23)と、
を用意し、
前記軟磁性の部材を、前記ボンド磁石の外周側に取り付ける、
界磁子(20)の製造方法。
【請求項17】
一体成型された円筒状のボンド磁石(21)と、
軟磁性の部材(23)と、
を用意し、
所定の磁束の強さが得られるときは、前記ボンド磁石を取り付け、
所定の磁束の強さが得られないときは、前記軟磁性の部材を外周側に取り付けた前記ボンド磁石、を取り付ける、
モータ(50)。
【請求項18】
一体成型された円筒状のボンド磁石(21)と、
軟磁性の部材(23)と、
を用意し、
所定の磁束の強さが得られるときは、前記ボンド磁石を取り付け、
所定の磁束の強さが得られないときは、前記軟磁性の部材を外周側に取り付けた前記ボンド磁石、を取り付ける、
モータ(50)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
界磁子、モータ、送風装置、冷凍サイクル装置、界磁子の製造方法、及びモータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特許第3306059号公報)に示されているように、界磁子の漏れ磁束を抑制するために、磁石と、軟磁性の部材とを一体成型する技術がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1では、界磁子の製造工程内に、軟磁性の部材を付加する工程を組み込むことが必須となる。そのため、軟磁性の部材を付加しなくても磁石の磁束の強さが十分である場合であっても、軟磁性の部材を付加しないという選択をすることができない、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1観点の界磁子は、ボンド磁石と、軟磁性の部材と、を備える。ボンド磁石は、円筒状である。ボンド磁石は、一体成型される。軟磁性の部材は、ボンド磁石の外周側に、一体成型後に取り付けられる。
【0005】
第1観点の界磁子は、軟磁性の部材を、一体成型後に取り付けることにより、ボンド磁石の磁束の強さに応じて、軟磁性の部材を付加するか否かを選択することができる。
【0006】
第2観点の界磁子は、第1観点の界磁子であって、ボンド磁石は、極異方に配向されている。
【0007】
第2観点の界磁子は、このような構成により、トルクリプルを低減することができる。
【0008】
第3観点の界磁子は、第2観点の界磁子であって、界磁子は、回転子である。界磁子は、固定子の径方向外側に配置される。ボンド磁石の径方向の厚みLmと、ボンド磁石の1極当たりの径方向内側の磁極面の円弧長Lsとは、Lm<Ls/2、を満たす。
【0009】
第4観点の界磁子は、第2観点の界磁子であって、界磁子は、回転子である。界磁子は、固定子の径方向外側に配置される。ボンド磁石の径方向の厚みLmと、ボンド磁石の1極当たりの径方向内側の磁極面の円弧長Lsと、軟磁性の部材の径方向の厚みLyとは、Ly<Ls/2-Lm、を満たす。
【0010】
第5観点の界磁子は、第1観点から第4観点のいずれかの界磁子であって、軟磁性の部材は、軟磁性材テープである。軟磁性材テープは、ボンド磁石の外周面に接着することにより固定される。
【0011】
第6観点の界磁子は、第5観点の界磁子であって、軟磁性材テープは、鉄を基材とする。
【0012】
第7観点の界磁子は、第5観点の界磁子であって、軟磁性材テープの厚みは、0.1mm以上1.0mm以下である。
【0013】
第8観点の界磁子は、第1観点から第4観点のいずれかの界磁子であって、軟磁性の部材は、SPCC(Steel Plate Cold Commercial)、又はSPCE(Steel Plate Cold Deep Drawn Extra)を基材とする。
【0014】
第9観点の界磁子は、第1観点から第4観点のいずれかの界磁子であって、軟磁性の部材は、無方向性電磁鋼帯、又は方向性電磁鋼帯を基材とする。
【0015】
第10観点の界磁子は、第1観点から第4観点のいずれかの界磁子であって、軟磁性の部材は、C字状、又は円筒状の部材である。
【0016】
第11観点の界磁子は、第10観点の界磁子であって、C字状の軟磁性の部材は、ボンド磁石の外周側に、復元力による締まり嵌めにより固定される。又は、C字状の軟磁性の部材は、ボンド磁石の外周側に、周方向の両端を接合した状態で、テープにより固定される。又は、C字状の軟磁性の部材は、ボンド磁石の外周側に、周方向の両端に設けられた引掛け部を、互いに引掛けることにより固定される。又は、C字状の軟磁性の部材は、ボンド磁石の外周側に、重ね合わせて溶接することにより固定される。又は、C字状の軟磁性の部材は、ボンド磁石の外周側に、重ね合わせて圧接することにより固定される。又は、C字状の軟磁性の部材は、ボンド磁石の外周側に、重ね合わせて超音波溶着することにより固定される。
【0017】
第12観点の界磁子は、第10観点の界磁子であって、C字状、又は円筒状の軟磁性の部材は、ボンド磁石の外周側に、重ね合わせて接着することにより固定される。又は、C字状、又は円筒状の軟磁性の部材は、ボンド磁石の外周側に、軟磁性の部材の内周面に設けられた凸部と、ボンド磁石の外周面に設けられた凹部とを勘合することにより固定される。又は、C字状、又は円筒状の軟磁性の部材は、ボンド磁石の外周側に、冷却されたボンド磁石に、常温の軟磁性の部材を被せる冷やし嵌めにより固定される。又は、C字状、又は円筒状の軟磁性の部材は、ボンド磁石の外周側に、常温のボンド磁石に、加熱された軟磁性の部材を被せる焼き嵌めにより固定される。又は、C字状、又は円筒状の軟磁性の部材は、ボンド磁石の外周側に、ボンド磁石の磁力により固定される。
【0018】
第13観点のモータは、界磁子と、固定子と、を備える。界磁子は、第1観点から第12観点のいずれかの界磁子である。固定子は、界磁子の径方向内側に配置される。
【0019】
第14観点の送風装置は、第13観点のモータと、ファンと、を備える。ファンは、モータによって駆動される。
【0020】
第15観点の冷凍サイクル装置は、第14観点の送風装置、を備える。
【0021】
第16観点の界磁子の製造方法は、ボンド磁石と、軟磁性の部材と、を用意する。ボンド磁石は、円筒状である。ボンド磁石は、一体成型される。界磁子の製造方法は、軟磁性の部材を、ボンド磁石の外周側に取り付ける。
【0022】
第17観点のモータは、ボンド磁石と、軟磁性の部材と、を用意する。ボンド磁石は、円筒状である。ボンド磁石は、一体成型される。モータは、所定の磁束の強さが得られるときは、ボンド磁石を取り付ける。モータは、所定の磁束の強さが得られないときは、軟磁性の部材を外周側に取り付けたボンド磁石、を取り付ける。
【0023】
第17観点のモータは、このような構成により、ボンド磁石の磁束の強さに応じて、軟磁性の部材を付加するか否かを選択することができる。
【0024】
第18観点のモータの製造方法は、ボンド磁石と、軟磁性の部材と、を用意する。ボンド磁石は、円筒状である。ボンド磁石は、一体成型される。モータの製造方法は、所定の磁束の強さが得られるときは、ボンド磁石を取り付ける。モータの製造方法は、所定の磁束の強さが得られないときは、軟磁性の部材を外周側に取り付けたボンド磁石、を取り付ける。
【0025】
第18観点のモータの製造方法は、このような構成により、ボンド磁石の磁束の強さに応じて、軟磁性の部材を付加するか否かを選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図4】ボンド磁石を射出成型する様子を示す図である。
【
図5】1極当たりのボンド磁石とバックヨークとを示す断面図である。
【
図6】C字状のバックヨークの一例を示す図である。
【
図7】C字状のバックヨークの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(1)冷凍サイクル装置の構成
冷凍サイクル装置100は、蒸気圧縮式冷凍サイクルを利用して、温度調整対象を冷却したり、加熱したりする装置である。本実施形態では、冷凍サイクル装置100は、温度調整対象としての空調対象空間の空気を冷却したり加熱したりする空気調和装置100である。冷凍サイクル装置100の種類は、空気調和装置100に限定されるものではなく、給湯装置、床暖房装置、冷蔵装置等であってもよい。
【0028】
図1は、空気調和装置100の外観図である。
図1に示すように、空気調和装置100は、主として、室内の壁面等に取り付けられる室内機110と、室外に設置される室外機120とを有する。室内機110及び室外機120は、冷媒配管130を介して互いに接続され、これにより、空気調和装置100の冷媒回路が構成される。空気調和装置100は、室内機110が設置される空間において、冷房運転及び暖房運転等を行う。
【0029】
図2は、室内機110の断面図である。
図1及び
図2に示すように、室内機110は、主として、フレーム81と、熱交換器82と、フラップ83と、前面パネル84aと、本体カバー84bと、送風装置70と、を有する。熱交換器82及び送風装置70は、フレーム81に支持され、前面パネル84a及び本体カバー84bによって覆われている。本体カバー84bの上面には吸込口86aが形成され、本体カバー84bの下面には吹出口86bが形成されている。フラップ83は、吹出口86bに配置されている。
【0030】
(2)送風装置の構成
図3は、モータ50の断面図である。
図2及び
図3に示すように、送風装置70は、主として、モータ50と、ファン60とを備える。ファン60は、モータ50によって駆動される。本実施形態では、ファン60は、クロスフローファンである。
【0031】
送風装置70は、熱交換器82による熱交換を促進するための空気流を形成する。送風装置70によって、吸込口86aから吸い込まれた空気は、熱交換器82の伝熱管の内部を流れる冷媒と熱交換を行う。熱交換が行われた空気は、ファン60を通り、吹出口86bから室内機110の外に吹き出される。吹き出される空気の向きは、フラップ83の位置によって変更することができる。
【0032】
(3)モータの構成
図3に示すように、モータ50は、ファン60の右端に配置される。モータ50は、主として、固定子10と、回転子20(界磁子)と、シャフト30と、を有する。モータ50は、アウターロータ型のモータである。
【0033】
図3に示すように、モータ50は、固定子10の取付け足部19にシール部材87が巻かれた状態で、フレーム81に固定されている。また、モータ50は、封止部材88によって封止されている。
【0034】
以下の説明において、「軸方向」は、回転子20の回転軸31の方向である。「径方向」は、回転子20の回転軸31を中心とする径方向である。「周方向」は、回転子20の回転軸31を中心とする周方向である。
【0035】
(3-1)固定子
図3に示すように、固定子10は、回転子20の径方向内側に配置される。固定子10は、主として、固定子コア11と、コイル12と、インシュレータ13と、結線板14と、を有する。固定子10は、樹脂モールド加工により一体成型される。固定子10の内周部とシャフト30との間には、ベアリング15が配置されている。固定子10は、ベアリング15を介して、シャフト30を支持している。
【0036】
固定子コア11は、導電性を有する軟磁性体である鋼板が積層されて形成されている。固定子コア11は、複数のティースを有する。コイル12は、エナメル樹脂等の絶縁材料で被覆された銅線が、固定子コア11のティースに巻かれて形成されている。インシュレータ13は、絶縁性の樹脂材料により形成されている。インシュレータ13は、固定子コア11とコイル12との間に設けられている。インシュレータ13は、コイル12を流れる電流が固定子コア11に伝わらないように、固定子コア11とコイル12との間を絶縁している。固定子コア11は、軸方向に沿ってシャフト30が貫通するための貫通孔を有する。結線板14は、コイル12の巻始め、及び巻終わりの引出線に接続される。結線板14は、リード線を介して、外部電源等に接続される。
【0037】
(3-2)回転子
図3に示すように、回転子20は、主として、ボンド磁石21と、連結部22と、バックヨーク23(軟磁性の部材)と、を有する。回転子20は、固定子10の径方向外側に配置される。
【0038】
ボンド磁石21は、円筒状である。ボンド磁石21は、10極の極異方に配向されている。連結部22は、シャフト30と係合し、ボンド磁石21とシャフト30とを連結する。これにより、回転子20は、シャフト30と一体になって、固定子10の径方向外側を、回転軸31周りに回転する。ボンド磁石21と、連結部22とは、金型に、希土類系やフェライトの磁石粉末をプラスチックやゴム等のバインダーと混ぜた樹脂、を射出することにより、一体成型される。
図4は、ボンド磁石21を射出成型する様子を示す図である。
図4に示すように、ボンド磁石21を形成するための円筒状の金型21aに樹脂が射出される前に、円筒状の金型21aの径方向内側には、磁場配向用の永久磁石24が配置される。
図4では、10個の永久磁石24が配置されている。また、
図4では、それぞれの永久磁石24が発生させている磁場を示す磁力線25が描かれている。この状態で、約300℃の樹脂が円筒状の金型21aに(
図4の手前から奥に向けて)射出される。その後、冷却によって樹脂が硬化することにより、10極の極異方に配向されたボンド磁石21が成型される。
【0039】
バックヨーク23は、回転子20の漏れ磁束を抑制する。バックヨーク23は、鉄を基材とする軟磁性材テープである。軟磁性材テープの厚みは、0.1mm以上1.0mm以下である。バックヨーク23は、ボンド磁石21と、連結部22とを一体成型した後、ボンド磁石21の外周面に接着することにより固定される。
図5は、1極当たりのボンド磁石21とバックヨーク23とを示す断面図である。
図5に示すように、ボンド磁石の径方向の厚みLmと、ボンド磁石の1極当たりの径方向内側の磁極面の円弧長Lsとは、Lm<Ls/2、を満たすように設計される。さらに条件を加えて、ボンド磁石21の径方向の厚みLmと、ボンド磁石21の1極当たりの径方向内側の磁極面の円弧長Lsと、バックヨーク23の径方向の厚みLyとが、Ly<Ls/2-Lm、を満たすように設計してもよい。
【0040】
(3-3)シャフト
シャフト30は、金属製の円柱状の部材である。
図3に示すように、シャフト30は、軸方向の一方の端部においてファン60と連結され、軸方向の他方の端部において、回転子20と連結されている。
【0041】
固定子10は、結線板14を介して外部からコイル12に供給される電力によって、回転子20を回転させるための磁場を発生させる。回転子20は、固定子10から発生する磁場によって回転する。回転子20に連結されるシャフト30は、軸方向に沿っている回転軸31を中心に回転する。モータ50は、シャフト30を支持しつつ、シャフト30を介して回転力をファン60に伝達する。これにより、モータ50は、回転軸31周りにファン60を回転させる。
【0042】
(4)特徴
(4-1)
従来、回転子の漏れ磁束を抑制するために、磁石と、バックヨークとを一体成型する技術がある。
【0043】
従来の技術では、回転子の製造工程内に、バックヨークを付加する工程を組み込むことが必須となる。そのため、バックヨークを付加しなくても磁石の磁束の強さが十分である場合であっても、バックヨークを付加しないという選択をすることができない、という課題がある。
【0044】
本実施形態の回転子20は、ボンド磁石21と、バックヨーク23と、を備える。ボンド磁石21は、円筒状である。ボンド磁石21は、一体成型される。
図3に示すように、バックヨーク23は、ボンド磁石21の外周側に、一体成型後に取り付けられる。
【0045】
本実施形態の回転子20は、バックヨーク23を一体成型後に取り付けることにより、ボンド磁石21の磁束の強さに応じて、バックヨーク23を付加するか否かを選択することができる。また、回転子20は、バックヨーク23を一体成型後に取り付けることにより、極異方配向が上手く実現できない(ラジアル配向となる)等のボンド磁石21とバックヨーク23とを一体成型することによる弊害を、回避することができる。
【0046】
(4-2)
本実施形態の回転子20では、ボンド磁石21は、極異方に配向されている。その結果、回転子20は、トルクリプルを低減することができる。
【0047】
(4-3)
本実施形態の界磁子20は、回転子20である。回転子20は、固定子10の径方向外側に配置される。ボンド磁石21の径方向の厚みLmと、ボンド磁石21の1極当たりの径方向内側の磁極面の円弧長Lsとは、Lm<Ls/2、を満たす。
【0048】
(4-4)
本実施形態の界磁子20は、回転子20である。回転子20は、固定子10の径方向外側に配置される。ボンド磁石21の径方向の厚みLmと、ボンド磁石21の1極当たりの径方向内側の磁極面の円弧長Lsと、バックヨーク23の径方向の厚みLyとは、Ly<Ls/2-Lm、を満たす。
【0049】
(4-5)
本実施形態の回転子20では、バックヨーク23は、軟磁性材テープである。軟磁性材テープは、ボンド磁石21の外周面に接着することにより固定される。
【0050】
(4-6)
本実施形態の回転子20では、軟磁性材テープは、鉄を基材とする。
【0051】
(4-7)
本実施形態の回転子20では、軟磁性材テープの厚みは、0.1mm以上1.0mm以下である。
【0052】
(4-8)
本実施形態のモータ50は、回転子20と、固定子10と、を備える。固定子10は、回転子20の径方向内側に配置される。
【0053】
(4-9)
本実施形態の送風装置70は、モータ50と、ファン60と、を備える。ファン60は、モータ50によって駆動される。
【0054】
(4-10)
本実施形態の空気調和装置100は、送風装置70を備える。
【0055】
(4-11)
本実施形態の回転子20の製造方法は、ボンド磁石21と、バックヨーク23と、を用意する。ボンド磁石21は、円筒状である。ボンド磁石21は、一体成型される。回転子20の製造方法は、バックヨーク23を、ボンド磁石21の外周側に取り付ける。
【0056】
(5)変形例
(5-1)変形例1A
本実施形態では、バックヨーク23は、鉄を基材とする軟磁性材テープであった。しかし、バックヨーク23は、SPCC(Steel Plate Cold Commercial)、又はSPCE(Steel Plate Cold Deep Drawn Extra)を基材としてもよい。このとき、バックヨーク23は、円筒状に絞り加工して、ボンド磁石21の外周側に取り付けられる。
【0057】
また、バックヨーク23は、無方向性電磁鋼帯、又は方向性電磁鋼帯を基材としてもよい。このとき、バックヨーク23は、C字状に曲げ加工して、ボンド磁石21の外周側に取り付けられる。
【0058】
図6及び
図7は、C字状のバックヨーク23の一例を示す図である。
図6及び
図7は、ボンド磁石21をファン60の端部に設けたモータ50の例であり、そのボンド磁石21にC字状のバックヨーク23を固定している。
図6に示すように、C字状のバックヨーク23は、自然長でボンド磁石21の外径よりもわずかに小さい内径とし、C字形状が拡がるときのスプリング復元力による締まり嵌めにより固定してもよい。このとき、
図7に示すように、C字状のバックヨーク23は、ボンド磁石21の外周側に、固定されることになる。また、C字状のバックヨーク23は、ボンド磁石21の外周側に、周方向の両端を接合した状態で、テープにより固定してもよい。また、C字状のバックヨーク23は、ボンド磁石21の外周側に、周方向の両端に設けられた引掛け部を、互いに引掛けることにより固定してもよい。また、C字状のバックヨーク23は、ボンド磁石21の外周側に、重ね合わせて溶接することにより固定してもよい。また、C字状のバックヨーク23は、ボンド磁石21の外周側に、重ね合わせて圧接することにより固定してもよい。また、C字状のバックヨーク23は、ボンド磁石21の外周側に、重ね合わせて超音波溶着することにより固定してもよい。
【0059】
C字状、又は円筒状のバックヨーク23は、ボンド磁石21の外周側に、重ね合わせて接着することにより固定してもよい。また、C字状、又は円筒状のバックヨーク23は、ボンド磁石21の外周側に、バックヨーク23の内周面に設けられた凸部と、ボンド磁石21の外周面に設けられた凹部とを勘合することにより固定してもよい。また、C字状、又は円筒状のバックヨーク23は、ボンド磁石21の外周側に、冷却されたボンド磁石21に、常温のバックヨーク23を被せる冷やし嵌めにより固定してもよい。また、C字状、又は円筒状のバックヨーク23は、ボンド磁石21の外周側に、常温のボンド磁石21に、加熱されたバックヨーク23を被せる焼き嵌めにより固定してもよい。また、C字状、又は円筒状のバックヨーク23は、ボンド磁石21の外周側に、ボンド磁石21の磁力により固定してもよい。
【0060】
(5-2)変形例1B
本実施形態のモータ50の製造方法は、一体成型された円筒状のボンド磁石21と、バックヨーク23と、を用意した。バックヨーク23は、ボンド磁石21の外周側に取り付けた。しかし、モータ50の製造方法は、所定の磁束の強さが得られるときは、ボンド磁石21を取り付け、所定の磁束の強さが得られないときは、バックヨーク23を外周側に取り付けたボンド磁石21、を取り付けてもよい。
【0061】
その結果、モータ50の製造方法は、ボンド磁石21の磁束の強さに応じて、バックヨーク23を付加するか否かを選択することができる。
【0062】
(5-3)変形例1C
本実施形態では、回転子20は、アウターロータ型のモータが採用される、室内機110の送風装置70において、ファン60を駆動するために用いられた。しかし、回転子20は、アウターロータ型のモータが採用される、室外機120の送風装置、空気清浄機の送風装置、及び扇風機等において、ファンを駆動するために用いられてもよい。
【0063】
(5-4)
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0064】
10 固定子
20 回転子(界磁子)
21 ボンド磁石
23 バックヨーク(軟磁性の部材)
50 モータ
60 ファン
70 送風装置
100 空気調和装置(冷凍サイクル装置)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0065】