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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180120
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】膜分離システム、及び膜分離方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/22 20060101AFI20241219BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20241219BHJP
   B01D 71/02 20060101ALI20241219BHJP
   B01D 71/06 20060101ALI20241219BHJP
   B01D 53/26 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B01D53/22
B01D61/58
B01D71/02 500
B01D71/06
B01D53/26 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099584
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】春山 晃寿
【テーマコード(参考)】
4D006
4D052
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006HA41
4D006JA51Z
4D006JA53Z
4D006JA66Z
4D006KA16
4D006KA52
4D006KA53
4D006KA54
4D006KA55
4D006KA56
4D006KA57
4D006KA82
4D006KB30
4D006KE16P
4D006KE22Q
4D006KE24Q
4D006KE30Q
4D006MA03
4D006MC01
4D006MC03
4D006MC09
4D006PA01
4D006PB19
4D006PB64
4D052AA02
4D052BA01
4D052BA03
4D052BB04
4D052GA01
4D052GA03
4D052GB02
4D052GB08
(57)【要約】
【課題】分離膜の性能低下を防止し、処理性能を安定的に維持できる膜分離システムを提供する。
【解決手段】分離対象ガスから特定ガス成分を分離する膜分離システムであって、互いに並列に配設され且つそれぞれ分離膜を有する分離装置を2以上備え、前記分離装置がそれぞれ、分離運転状態と休止状態とで切り替え可能であり、前記分離運転状態の分離装置の少なくとも1つからのガスが、冷却機構を経由して、前記休止状態の分離装置の少なくとも1つへ流れるよう構成されている、膜分離システム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離対象ガスから特定ガス成分を分離する膜分離システムであって、
互いに並列に配設され且つそれぞれ分離膜を有する分離装置を2以上備え、
前記分離装置がそれぞれ、分離運転状態と休止状態とで切り替え可能であり、
前記分離運転状態の分離装置の少なくとも1つからのガスが、冷却機構を経由して、前記休止状態の分離装置の少なくとも1つへ流れるよう構成されている、膜分離システム。
【請求項2】
前記分離運転状態の分離装置の少なくとも1つの未透過側からのガスが、前記休止状態の分離膜の少なくとも1つへ流れるよう構成されている、請求項1に記載の膜分離システム。
【請求項3】
前記分離装置の未透過側が互いに接続され、
前記分離運転状態の分離装置の少なくとも1つの未透過側からのガスが、前記休止状態の分離膜の少なくとも1つの未透過側へ流れるよう構成されている、請求項2に記載の膜分離システム。
【請求項4】
前記分離装置の透過側からのガス中の水分を冷却により凝縮する凝縮器をさらに備え、
前記冷却機構が前記凝縮器を含む、請求項1又は2に記載の膜分離システム。
【請求項5】
前記分離装置の少なくとも1つの未透過側からのガスが前記凝縮器を経由することによって、前記凝縮器に含まれる冷却要素により冷却される、請求項4に記載の膜分離システム。
【請求項6】
前記冷却機構が、前記凝縮器と別体の熱交換器をさらに備え、
前記分離運転状態の分離装置の少なくとも1つの未透過側のガスが、前記凝縮器を経由せず、前記熱交換器において、前記分離装置の透過側からの前記凝縮器を経由した後のガスと熱交換される、請求項4に記載の膜分離システム。
【請求項7】
前記分離装置がそれぞれ、前記分離膜の温度を検知する温度検知器を備えており、
前記分離運転状態と前記休止状態との切り替えを、前記温度検知器により検知された温度に基づき行う、請求項1又は2に記載の膜分離システム。
【請求項8】
前記分離運転状態の分離装置の少なくとも1つから前記休止状態の分離装置の少なくとも1つへと流れる経路の途中に、当該経路を中断可能な切替弁を備え、
前記休止状態の前記分離装置の少なくとも1つにおける前記分離膜の温度が所定下限以下となった場合に、前記切替弁が、前記経路を中断して、前記分離運転状態の分離装置から前記休止状態の分離装置へとガスが流れないように切り替えられる、請求項1又は2に記載の膜分離システム。
【請求項9】
前記分離装置の上流で前記分離対象ガスを予め加圧する加圧ポンプを備えるか、又は
前記分離装置の下流で前記分離装置の透過側からのガスを減圧する減圧ポンプを備える、請求項1又は2に記載の膜分離システム。
【請求項10】
前記冷却機構を、前記分離運転状態の前記分離装置の少なくとも1つにおける前記分離膜の昇温速度が、前記休止状態の前記分離装置の少なくとも1つにおける前記分離膜の降温速度以下となるように構成する、請求項1又は2に記載の膜分離システム。
【請求項11】
前記分離運転状態の分離装置の数と前記休止状態の分離装置の数とが等しくなるように、前記分離装置の切り替えが行われる、請求項1又は2に記載の膜分離システム。
【請求項12】
前記分離膜が有機膜又は無機膜である、請求項1又は2に記載の膜分離システム。
【請求項13】
請求項1又は2に記載の膜分離システムと、当該膜分離システムに後置された、分離膜を有する分離装置を少なくとも1つ備えた後置システムとを含む、多段膜分離システム。
【請求項14】
前記後置システムにおける前記分離装置の少なくとも1つの未透過側のガスが、前記膜分離システムに流入する、請求項13に記載の多段膜分離システム。
【請求項15】
分離対象ガスから特定ガス成分を分離する膜分離方法であって、
互いに並列に接続され且つそれぞれ分離膜を有する分離装置を2以上備え、前記分離装置がそれぞれ、分離運転状態と休止状態とで切り替え可能であるシステムを用いて、
前記分離運転状態の分離装置の少なくとも1つからのガスを、冷却機構を経由して、前記休止状態の分離装置の少なくとも1つへ流すことを含む、膜分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜分離システム、及び膜分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、分離膜を利用して、分離処理対象であるガス混合物から特定ガス成分を分離する膜分離システムが知られている。このような膜分離システムにおいて安定した運転を継続するためには、分離運転中の分離膜を適切な状態(温度、湿度等)に維持することが重要であり、そのために様々な構成が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、分離膜が多孔質の支持体上に形成されてなる分離膜複合体に混合ガスを供給して二酸化炭素を分離するガス分離装置において、支持体を冷却部によって冷却して、支持体の透過側表面の少なくとも一部における温度が混合ガスの温度よりも10℃以上低い状態で分離を行うようにする技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2023-26609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術では、分離膜複合体の支持体の冷却は、冷却部(冷却ジャケット)によって分離膜複合体の分離運転中にも行われる。そのため、凝縮した水分が分離膜に付着してしまうことがあり、これによって膜の性能が低下して、ガス分離装置(膜分離システム)としての処理性能が低下する可能性がある。
【0006】
上記に鑑み、本発明の一態様は、分離膜の性能低下を防止し、膜分離システムの処理性能を安定的に維持することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、分離対象ガスから特定ガス成分を分離する膜分離システムであって、互いに並列に配設され且つそれぞれ分離膜を有する分離装置を2以上備え、前記分離装置がそれぞれ、分離運転状態と休止状態とで切り替え可能であり、前記分離運転状態の分離装置の少なくとも1つからのガスが、冷却機構を経由して、前記休止状態の分離装置の少なくとも1つへ流れるよう構成されている、膜分離システムである。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、分離膜の性能低下を防止し、膜分離システムの処理性能を安定的に維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態による膜分離システムの構成例を示す図である。
図2A】第1実施形態による膜分離システムの運転モードの一例を示す図である。
図2B】第1実施形態による膜分離システムの運転モードの一例を示す図である。
図2C】第1実施形態による膜分離システムの運転モードの一例を示す図である。
図2D】第1実施形態による膜分離システムの運転モードの一例を示す図である。
図3】第1実施形態による膜分離システムの動作例を示すフローチャートである。
図4】第1実施形態による膜分離システムの別の動作例を示すフローチャートである。
図5】第2実施形態による膜分離システムの構成例を示す図である。
図6A】第3実施形態による膜分離システムの運転モードの一例を示す図である。
図6B】第3実施形態による膜分離システムの運転モードの一例を示す図である。
図6C】第3実施形態による膜分離システムの運転モードの一例を示す図である。
図6D】第3実施形態による膜分離システムの運転モードの一例を示す図である。
図7A】第4実施形態による膜分離システムの運転モードの一例を示す図である。
図7B】第4実施形態による膜分離システムの運転モードの一例を示す図である。
図7C】第4実施形態による膜分離システムの運転モードの一例を示す図である。
図7D】第4実施形態による膜分離システムの運転モードの一例を示す図である。
図7E】第4実施形態による膜分離システムの運転モードの一例を示す図である。
図7F】第4実施形態による膜分離システムの運転モードの一例を示す図である。
図8】変形例としての多段膜分離システムの例を示す図である。
図9】変形例としての多段膜分離システムの別の例を示す図である。
図10】第1実施形態による膜分離システムの変形例を示す図である。
図11】第5実施形態による膜分離システムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図面において、特に説明がない限り、同一の又は対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0011】
[第1実施形態]
<膜分離システムの構成の概略>
図1に、本開示の第1実施形態による膜分離システム100の構成例を概略的に示す。膜分離システム100は、分離処理の対象であるガス混合物(分離対象ガス、若しくは分離処理対象ガスともいう)から、特定ガス成分を透過ガスとして分離し、回収するシステムである。
【0012】
本開示の膜分離システムによって処理される分離対象ガスは、燃焼により発生する排ガス(燃焼排ガス)、例えば、発電施設における火力発電、バイオマス発電等の発電により発生する排ガス、自動車、船舶等の移動体のエンジンから発生する排ガス、ごみ焼却設備で発生する排ガスであってよい。近年、カーボンニュートラルという観点から、各国でカーボンプライシングや炭素税等が検討・導入されており、日本でも2050年までにカーボンニュートラルを達成する目標が掲げられ、各業界で二酸化炭素排出削減のための規制が年々強化されている。このため、排ガス中の二酸化炭素を削減する技術に対するニーズが増しており、排ガスから二酸化炭素を効率良く分離及び回収するシステムが求められている。本開示による膜分離システムは、二酸化炭素の分離・回収システムとして好適に利用できる。
【0013】
図1に示すように、膜分離システム100は、第1分離装置11及び第2分離装置12を有し、これらは並列に配設されている。本明細書において、2以上の分離装置が「並列に配設されている」とは、2以上の分離装置にガスが並列に流れ得る配置となっていること、或いは2以上の分離装置が装置として並列に接続されていることを指す。すなわち、膜分離システム100の流入口から分離装置11、12のそれぞれへと流路が枝分かれしており、いずれの分離装置11、12にも分離対象ガスが直接的に流入可能となっている。なお、分離対象ガスの処理中(膜分離システムの稼働中)、ガスは、2以上の分離装置に必ずしも並列に流れていなくてもよく、2以上の分離装置の一部のみに流れるようになっている、例えば第1分離装置11及び第2分離装置12のいずれかに流れるようになっていてよい。或いは、第1分離装置11と第2分離装置12とが直列に接続される経路が形成されていて、ガスが第1分離装置11及び第2分離装置12に直列に流れるようになっていてもよい(図6A等)。
【0014】
ガスが第1分離装置11及び第2分離装置12のいずれかに流れるようになっているということは、すなわち、第1分離装置11及び第2分離装置12のうち、一方が分離運転状態となり且つ他方が休止状態となるように切替え可能に構成されているということである。より具体的には、切替弁v0の切替えによって、第1分離装置11が分離運転状態にある時には第2分離装置12が休止状態となり、第2分離装置12が分離運転状態にある時には第1分離装置11が休止状態となるようにできる。切替弁v0は、分離対象ガスが膜分離システム内に流入する流入路と、第1分離装置11への流路と、第2分離装置12への流路とにそれぞれ接続する3つのポートを備えた三方弁であってよい。
【0015】
第1分離装置11及び第2分離装置12(合わせて単に分離装置ともいう)はそれぞれ、第1分離膜11a及び第2分離膜12a(合わせて単に分離膜ともいう)備えている。分離膜はいずれも、導入された分離対象ガスから1以上の特定ガス成分を選択的に分離できる膜である。分離装置の内部は、分離膜を介して、分離膜を透過していないガスの側である未透過側と、分離膜を透過した後のガスの側である透過側とに分けられている。本明細書では、分離装置から出て行くガスのうち、未透過側からのガスを未透過ガス、透過側からのガスを透過ガスともいう。すなわち、分離装置において、導入された分離対象ガスは、分離膜を透過していない未透過ガスと分離膜を透過した透過ガスとに分離され、それぞれ分離装置から分離装置の外部に流出する。
【0016】
本形態による膜分離システムは、上述のような燃焼排ガスの処理のためのシステムとして好適である。燃焼排ガスは高温であり、その温度は100℃以上、場合によっては300℃以上になることもある。本形態による膜分離システム100で処理される分離対象ガスは、このような燃焼排ガス、或いは燃焼排ガスに前処理(除塵、除熱、脱硫、脱水等の処理)が施されたガスであってよい。膜分離システム100に導入されるガスの温度は、前処理の段階で、分離膜の耐熱温度等、膜分離システム全体の構成等に応じて調整でき、例えば60~80℃に調整される。分離対象ガスは、温度調整によって温度が低下されていても常温より高温であれば、分離膜はある程度の期間にわたって使用することで昇温し得る。ここで、分離膜の温度が高くなり過ぎると、特に回収目的の特定ガス成分が二酸化炭素である場合には、分離膜の選択性能(他のガス成分に対する相対的な透過性能)が低下し、特定ガス成分の回収率が低下し得る。一方、分離膜の温度は低すぎても、透過性能自体が低下し得るため、特定ガス成分の回収量が低くなってしまう。よって、膜分離システムの安定した運転を継続するためには、分離運転中の分離膜を適切な状態、特に適切な温度領域に維持することが重要である。本形態では、第1分離装置11と第2分離装置12とを交互に使用できることで、連続的な使用によって適切な温度領域外の温度となってしまった一方の分離膜を一旦休ませて冷却しつつ、その間に他方の適切な温度の分離膜を利用できる。そのため、システム全体として膜分離動作を中断せずに、しかも適正な温度領域内で継続できるので、膜分離システムの処理性能が安定的に維持される。
【0017】
第1分離装置11の未透過側には第1未透過側流路21Aが接続されており、第1分離装置11の透過側には第1透過側流路21Bが接続されている。第1分離装置11が分離運転状態にある場合、第1分離装置11からの未透過ガスは第1未透過側流路21Aを通って流出し、透過ガスは第1透過側流路21Bを通って流出する。但し、第1分離装置11が休止状態(分離運転をしていない状態)である場合、ガスが第1未透過側流路21A内を流れる方向は、第1分離装置11へと向かう方向になり得るし(図2Cを参照して後述)、ガスが第1透過側流路21B内を流れる方向も、第1分離装置11へと向かう方向になる場合がある。
【0018】
また、第2分離装置12の未透過側には第2未透過側流路22Aが接続されており、第2分離装置12の透過側には第2透過側流路22Bが接続されている。第2分離装置12が分離運転状態にある場合、第2分離装置12からの未透過ガスは第2未透過側流路22Aを通って流出し、透過ガスは第2透過側流路22Bを通って流出する。但し、第2分離装置12が休止状態(分離運転をしていない状態)である場合には、ガスが第2未透過側流路22A内を流れる方向は、第2分離装置12へと向かう方向になり得る(図2Aを参照して後述)、ガスが第2透過側流路22B内を流れる方向も、第1分離装置11へと向かう方向となる場合がある。
【0019】
なお、透過側流路21Bの途中には、三方弁である切替弁v1が配置されていて、当該切替弁v1を介して、第1透過側流路21Bは第1排気路25にも接続可能となっている。すなわち、切替弁v1の切替によって、第1透過側流路21Bの開放及び閉鎖の切替えと共に、第1透過側流路21Bから外部へのガスの排気及び非排気を切り替えることができる。同様に、第2透過側流路22Bの途中には三方弁である切替弁v2が配置され、当該切替弁v2を介して、第2透過側流路22Bは第2排気路26にも接続可能となっている。すなわち、切替弁v2の切替によって、第2透過側流路22Bの開放及び閉鎖の切替えと共に、第2透過側流路22Bから外部へのガスの排気及び非排気を切り替えることができる。
【0020】
図1に示すように、第1分離装置11の未透過側に接続された第1未透過側流路21Aと、第2分離装置12の未透過側に接続された第2未透過側流路22Aとは、切替弁v4を介して接続されていてよい。別の言い方をすると、切替弁v4は、第1未透過側流路21Aと第2未透過側流路22Aとの連通経路の途中に形成されている、当該経路を中断可能な切替弁である。切替弁v4は三方弁であってよく、当該切替弁v4を介して、第1未透過側流路21Aと、第2未透過側流路22Aと、未透過ガス合流路24とが任意の組合せで連通可能に接続されていてよい。よって、切替弁v4の切替えによって、未透過ガス合流路24からは、未透過ガスを膜分離システム100の外部へと排出させることができる。
【0021】
また、第1分離装置11からの透過ガスが流れる第1透過側流路21Bと、第2分離装置12からの透過ガスが流れる第2透過側流路22Bとは、切替弁v3を介して接続されていてよい。切替弁v3は、切替弁v4と同様に三方弁であってよく、当該切替弁v3を介して、第1透過側流路21Bと、第2透過側流路22Bと、透過ガス合流路23とが任意の組合せで連通可能に接続されている。切替弁v3の切替えによって、透過ガスを、透過ガス合流路23を通じて流し、回収できる。
【0022】
第1分離装置11及び第2分離装置12の構成は、分離膜によって特定ガス成分を選択的に分離できるものであれば、特に限定されず、公知の形式による装置を利用できる。第1分離装置11及び第2分離装置12の構成は互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、分離膜の形態は特に限定されず、分子篩、溶解拡散、促進輸送等を利用するものであってよい。また、分離膜を構成する材料は、ゼオライト等の無機材料であっても、高分子等の有機材料であってもよい。
【0023】
さらに、膜分離システム100は、透過ガス中の水蒸気を凝縮して水分を除去可能な凝縮器30を備えている。図1に示すように、第1分離装置11の透過側及び第2分離装置12の透過側はいずれも、凝縮器30に接続されている。凝縮器30の形態は特に限定されず、当分野における公知の凝縮器を使用できる。凝縮器30は、熱媒体(冷却媒体)との熱交換による冷却によってガス中の水蒸気を凝縮可能な装置とすることが好ましい。具体的な構成としては、例えば、ガス中の水蒸気を凝縮させることで生じた凝縮水を排出するように構成された凝縮器本体(ガス中の水蒸気を凝縮して回収・排出する構成要素)と、管内を流れる熱媒体が凝縮器本体の内外を循環するように構成された循環ユニットを備えた熱交換装置とを備えていてよい。或いは、凝縮器30は、熱媒体が流れる管を含む循環ユニットを、凝縮器本体内に配置させずに凝縮器本体と熱的に接触させた構成としてもよい。
【0024】
第1分離装置11の透過側からのガス(第1透過側流路21Bを流れてきたガス)、及び第2分離装置12の透過側からのガス(第2透過側流路22Bを流れてきたガス)はいずれも、凝縮器30を経由する。本明細書において「凝縮器を経由する」との語には、ガスが凝縮器本体を通って水蒸気凝縮作用を享受することのみならず、ガスが凝縮器本体を通過しないが、凝縮器30で利用されている熱媒体と熱交換することが含まれる。図1に示す形態では、第1分離装置11の透過側からのガス及び第2分離装置12の透過側からのガスは、前者の意味で凝縮器30を経由する、すなわち、凝縮器30を経由することで、凝縮器30の水蒸気凝縮作用を享受する。
【0025】
分離膜透過後の透過ガス中の水蒸気の割合は通常高くなっているが、上記のように透過ガスを凝縮器30に通して水蒸気凝縮作用を享受することで、ガス中の水蒸気量(水分量)を減らし、回収ガス中の特定ガス成分の割合を高めることができ、特定ガス成分の回収率を向上できる。また、後続の工程において水蒸気が凝縮して装置内の要素に付着してシステムの分離性能の妨げとなることを防止する。また、凝縮器30では透過ガス(第1分離装置11からの透過ガス又は第2分離装置12からの透過ガス)は、水分除去されると共に冷却されるため、凝縮器30を通った後のガス(凝縮処理後のガス)は、通過前(処理前)よりも低温となっている。
【0026】
さらに、図1に示すように、第1分離装置11の未透過側からのガス及び第2分離装置12の未透過側からのガスも、凝縮器30を経由するようになっている。図1に示す例では、これらの第1分離装置11の未透過側からのガス及び第2分離装置12の未透過側からのガスは、凝縮器30内を通って凝縮器30の水蒸気凝縮作用を享受するのではなく、凝縮器30で利用されている熱媒体と熱交換するという意味で凝縮器30を経由する。例えば、第1未透過側流路21A及び第2未透過側流路22Aがそれぞれ凝縮器30内へと延びていて、凝縮器30で利用される熱媒体と熱交換可能に配置されていてよい。より具体的には、第1未透過側流路21Aである管及び第2未透過側流路22Aである管がそれぞれ、凝縮器本体内を通過するように構成されていてよい。或いは、第1未透過側流路21Aである管及び第2未透過側流路22Aである管がそれぞれ凝縮器本体内は通過せずに、透過ガスと熱交換するための熱媒体が流れる管を備えた循環ユニットに隣接して、熱媒体と熱的に接触されていてもよい。但し、上記の未透過側からのガスは、水蒸気凝縮作用を享受する目的で凝縮器30を経由してもよい。
【0027】
このように、第1分離装置11の未透過側からのガス及び第2分離装置12の未透過側からのガスは、凝縮器30を経由する(具体的には、凝縮器30で利用されている熱媒体と熱交換する)ことで冷却され得る。また、上述のように、第1分離装置11の透過側からのガス及び第2分離装置12の透過側からのガスも、凝縮器30を経由する(具体的には、凝縮器30による水蒸気凝縮の作用を享受する)ことで冷却され得る。すなわち、膜分離システム100において、凝縮器30は、当該凝縮器30を経由するガスを冷却できる冷却機構CLとなっている。
【0028】
このような冷却機構CLがあることで、膜分離システム100内で、運転状態にある分離装置の未透過側からのガス及び/又は透過側からのガスを冷却できる。そして、本形態では、その冷却されたガスを、休止状態にある分離装置における分離膜を冷却するための熱媒体(冷却媒体)として利用する。上述のように第1分離装置11の未透過側と第2分離装置12の未透過側とは連通可能になっているので、例えば、第1分離装置11の未透過側から流出して冷却機構CLにより冷却されたガスを、第2分離装置12の未透過側へと送り込むことができる。また、逆に、第2分離装置12の未透過側から流出して冷却機構CLにより冷却されたガスを、第1分離装置11の未透過側へと送り込むことができる。さらに、休止状態の分離装置の冷却のために、運転状態の分離装置の未透過側のガスは、休止状態の分離装置の透過側へと送り込むような経路を形成してもよい。
【0029】
運転状態にある分離装置の未透過側からのガスは、通常は膜分離システム100外に放出されていたものであるが、本形態では、そのようなガスを分離膜の冷却のために利用できるので、分離膜の冷却のために専用の要素(冷却器等)を別途設ける必要がなく、設備をコンパクトに構成でき且つ設備コストも抑えることができる。
【0030】
さらに、本開示による膜分離システム100では、運転状態にある分離装置の透過側からのガスも、休止状態の分離装置の冷却のために利用してもよい。その場合、運転状態の分離装置の透過側からのガスを、休止状態の分離装置の未透過側に送り込む流路を形成してもよいし、休止状態の分離装置の透過側に送り込む流路を形成してもよい。
【0031】
膜分離システム100内には複数箇所に温度検知器が設けられている。例えば、膜分離システム100には、第1分離装置11の透過側に温度検知器ts1、及び第2分離装置12の透過側に温度検知器ts2が設けられている。図1に示す形態では、温度検知器ts1は、第1分離装置11の透過側のガスの温度を、第1分離膜11aの温度として測定する。また、温度検知器ts2は、第2分離装置12の透過側のガス温度を、第2分離膜12aの温度として測定する。但し、分離膜の温度は、接触式の温度検知器により分離膜に直接接触させて測定してもよい。さらに、膜分離システム00には、分離装置からの未透過ガスが冷却機構CLによって熱交換された後(冷却された後)のガスの温度を測定する温度検知器ts4、及び回収される透過ガスの温度を測定する温度検知器ts3が設けられていてよい。図1に示すように温度検知器を分離膜から離して設置する形式は、分離膜の分離性能への影響を低減できるという観点で好ましい。
【0032】
膜分離システム100の動作は、制御部50によって制御されている。制御部50は、図1に示す形態では、少なくとも温度検知器ts1~ts4、切替弁v0~v4、及びポンプp3と電気的に接続されている。そして、例えば、温度検知器からの信号を取得し、動作指令を生成して、例えば切替弁に動作指令を送信することができる。制御部50は、信号を入力する入力部、信号を出力する出力部、演算処理部、記憶部等(図示せず)を備えた構成とすることができる。
【0033】
<膜分離システムの動作>
以下、図2A図2D及び図3を参照して、第1実施形態による膜分離システム100の動作について説明する。図2A図2Dにはそれぞれ、図1に示した膜分離システム100の異なる運転モードの例を示す。このような膜分離システム100の異なる運転モードは、制御部50による制御によって得ることができる。また、図3には、膜分離システム100の動作の一例をフローチャートで示す。
【0034】
上述のように、膜分離システム100は、第1分離装置11と第2分離装置12とを交互に運転できるように構成されている。図2A図2Dに示すモードのうち、図2Aに示すモードI及び図2Bに示すモードIIは、第1分離装置11が運転状態にある運転モードであり、図2Cに示すモードIII及び図2Dに示すモードIVは、第2分離装置12が運転状態にある運転モードである。より具体的には、モードI(図2A)は、第1分離装置11を運転状態、第2分離装置12を休止状態とし、且つ第2分離装置12が冷却されているモードであり、モードII(図2B)は、第1分離装置11を運転状態、第2分離装置12を休止状態としているが、第2分離装置12の冷却が停止されているモードであり、モードIII(図2C)は、第1分離装置11を休止状態、第2分離装置12を運転状態とし、且つ第1分離装置11が冷却されているモードであり、モードIV(図2D)は、第1分離装置11を休止状態、第2分離装置12を運転状態としているが、第1分離装置11の冷却が停止されているモードである。なお、膜分離システム100の稼働中の運転モードは図示のものに限られず、システム内の構成要素の特性、状況に応じた様々な運転モードがあってよい。
【0035】
膜分離システム100の稼働は、制御部50が、例えばシステム稼働開始の指令を受け付け(図示せず)、モードの選択及びモードに応じた要素(弁、ポンプ等)を制御することで開示される。膜分離システム100の稼働は、例えば、図3に示すようにモードIから開始できる(S10)。モードI(図2A)では、制御部50は、分離対象ガスが第1分離装置11に流入し且つ第2分離装置12には流入しないよう切替弁v0を切り替える。具体的には、切替弁v0の、第2分離装置12に向かうポートが閉鎖され且つそれ以外の2つのポートが開放される。そして、第1分離装置11に流入した分離対象ガスは、当該第1分離装置11内の第1分離膜11aを通った透過ガスと、第1分離膜11aを通らなかった未透過ガスとに分離され、第1分離装置11から流出する。
【0036】
モードIでは、切替弁v0の上記切替えと共に又は切替弁v0の切替えの信号を受信して、制御部50が、切替弁v1を、排気路に接続されたポートが閉鎖され且つそれ以外の2つのポートが開放されるように切り替える。これにより、第1分離装置11からの透過ガスが、第1透過側流路21Bを通って、凝縮器30へと流入できる。さらに、切替弁v3も、第2透過側流路22Bへ向かうポートが閉鎖され且つそれ以外の2つのポートが開放されるよう切り替えられる。このため、第1分離装置11の透過側からのガスは、第2透過側流路22Bには流入することなく、透過ガス合流路23へ流入する経路が形成される。これにより、第1分離装置11からの透過ガスが透過ガス合流路23を経由して回収される。
【0037】
また、制御部50は、切替弁v0の上記切替えと共に又は切替弁v0の切替えの信号を受信して、切替弁v4を、未透過ガス合流路24へのポートが閉鎖され且つそれ以外の2つのポートが開放されるように切り替える。これにより、第1未透過側流路21Aと第2未透過側流路22Aとが連通する、すなわち第1分離装置11の未透過側と第2分離装置12の未透過側とが接続する。これにより、第1分離装置11の未透過側からのガスは、第1未透過側流路21Aを通り、凝縮器30を経由して(凝縮器30における熱媒体と熱交換されて)冷却された後、第2未透過側流路22Aに流入して、第2分離装置12の未透過側に向かうことができる。なお、図示の構成では、第1未透過側流路21A及び第2未透過側流路22Aはそれぞれが凝縮器30を経由するようになっているので、第1分離装置11の未透過側からのガスが第2分離装置12に達するまでに凝縮器30を2回経由可能になっている。しかしながら、第1分離装置11の未透過側と第2分離装置12の未透過側とを繋ぐ経路の途中で凝縮器30への経由が1回になるように構成してもよい。
【0038】
また、第2透過側流路22Bに設置されている切替弁v2は、切替弁v2から凝縮器30に向かう流路に接続されたポートが閉鎖され且つそれ以外の2つのポートが開放されるように切り替えられる。この際、切替弁v2は、切替弁v0の上記切替えと共に又は切替弁v0の切替えの信号を受信して、制御部50によって切り替えられる。これにより、第2分離装置12の透過側からのガスは、第2排気路26へと流れ、排気される。
【0039】
このように、モードIでは、運転状態にある第1分離装置11の未透過側からのガスを、凝縮器30へ経由させて冷却させた後に、休止状態にある第2分離装置12の未透過側へと送ることができるので、休止状態の第2分離装置12の第2分離膜12aを冷却できる。運転状態の分離装置の未透過側からのガスは、従来の構成では、膜分離システムの外部へと排気させていたガスであるが、本形態では、このようなガスを膜分離システム内で冷却して、休止状態にある分離装置のための冷却媒体として利用している。
【0040】
モードI(図2A、S10)を継続していくと、第2分離膜12aの温度T2は冷却の作用により徐々に低下していくが、温度が過度に低くなった場合、特定ガス成分の透過性能が低下する場合がある。そのため、制御部50は、温度検知器ts2により測定された第2分離膜12aの温度T2が所定下限温度T以下であるかどうかを判定し(S20)、T2≦Tと判定した場合には、運転モードをモードIIへ切り替える(S30)。
【0041】
モードII(図2B)では、第2分離膜12aの冷却が停止される。このために、制御部50は、切替弁v4を、第2未透過側流路22Aへのポートが閉鎖され且つそれ以外の2つのポートが開放されるように切り替える。すなわち、第1未透過側流路21Aと第2未透過側流路22Aとの接続は中断され、第1分離装置11の未透過側からのガスは、凝縮器30を経由した(凝縮器30における熱媒体と熱交換された)後、未透過ガス合流路24へと流れるので、第2分離装置12には向かわない。
【0042】
モードII(図2B、S30)の継続中、制御部50は、運転状態にある第1分離膜11aの温度T1が所定温度上限T未満であるかどうかを判定する(S40a)。この判定において、T1<Tであると判定された場合には、第1分離膜11aの適切な温度が維持されているので、引き続きモードII(図2B)を続ける。そして、判定S40aにおいて、T1<Tと判定されなかった場合、すなわち第1分離膜11aの温度T1が所望温度上限以上になった場合には、制御部50は、運転モードをモードIIIに切り替える(S50)。
【0043】
一方、温度検知器ts2により測定された第2分離膜12aの温度T2が所定下限温度T以下であるかどうかの判定(S20)において、T2≦Tでなかった場合には、制御部50は、モードIIへの切替えはせずに、運転状態にある第1分離膜11aの温度T1が所定上限温度T未満であるかどうかを判定する(S40b)。当該判定(S40b)においてT1<Tと判定された場合には、第1分離膜11aの適切な温度が維持されているので、引き続きモードI(図2A、S10)で第1分離装置11の運転が継続される。そして、その後、再び、冷却中の第2分離膜12aの温度T2が所定下限T以下であるかが判定される(S20)。一方、上記温度判定(S40b)で、T1<Tと判定されなかった場合、すなわち第1分離膜11aの温度T1が所望温度上限以上となった場合には、制御部50は、運転モードをモードIIIへ切り替える(S50)。
【0044】
モードIII(図2C)では、モードI(図2A)とは逆の分離装置を利用する、すなわち、分離対象ガスが第2分離装置12に流入し且つ第1分離装置11には流入しないよう切替弁v0が切り替えられる。具体的には、切替弁v0の、第1分離装置11に向かうポートが閉鎖され且つそれ以外の2つのポートが開放される。第2分離装置12に流入した分離対象ガスは、当該第2分離装置12内の第2分離膜12aを通った透過ガスと、第2分離膜12aを通らなかった未透過ガスとに分離され、第2分離装置12から流出する。
【0045】
モードIII(図2C)では、制御部50が、切替弁v0の上記切替えと共に又は切替弁v0の切替えの信号を受信して、切替弁v2を、第2排気路26に接続されたポートが閉鎖され且つそれ以外の2つのポートが開放されるように切り替える。これにより、第2分離装置12からの透過ガスが、第2透過側流路22Bを通って、凝縮器30へと流入できる。さらに、凝縮器30通過後に配置されている切替弁v3が、第1透過側流路21Bへ向かうポートが閉鎖され且つそれ以外の2つのポートが開放されるよう切り替えられる。このため、第2分離装置12の透過側からのガスは、第1透過側流路21Bに流入することなく、透過ガス合流路23へと流入する経路が形成される。これにより、第2分離装置12からの透過ガスが、透過ガス合流路23を経由して回収される。
【0046】
また、切替弁v4も、切替弁v0の上記切替えと共に又は切替弁v0の切替えの信号を受信した制御部50によって、未透過ガス合流路24に接続されるポートが閉鎖され且つそれ以外の2つのポートが開放されるように切り替えられる。これにより、第1未透過側流路21Aと第2未透過側流路22Aとが連通する、すなわち第1分離装置11の未透過側と第2分離装置12の未透過側とが接続する。モードIIIでの切替弁v4の状態はモードI(図2A)での状態と同じである。但し、第2分離装置12の未透過側からのガスは、第2未透過側流路22Aを通り、凝縮器30を経由して(凝縮器30における熱媒体と熱交換されて)冷却された後、第1未透過側流路21Aに流入して、第1分離装置11の未透過側に向かう。
【0047】
また、第1透過側流路21Bに設置されている切替弁v1は、切替弁v1から凝縮器30に向かう流路に接続されたポートが閉鎖され且つそれ以外の2つのポートが開放されるように切り替えられる。これにより、第1分離装置11の透過側からのガスは、第1排気路25へと流れ、排気される。
【0048】
さらに、モードIII(図2C)での稼働(S50)が継続されていくと、第1分離膜11aの温度T1は冷却の作用により徐々に低下していく。膜温度が過度に低くなった場合、特定ガス成分の透過性能が低下する場合があるため、制御部50は、温度検知器ts1により測定された第1分離膜11aの温度T1が所定下限温度T以下であるかどうかを判定する(S60)。T1≦Tと判定した場合には、運転モードをモードIVへ切り替える(S70)。
【0049】
モードIV(図2D)では、これまで冷却されていた第1分離膜11aの冷却が停止される。このために、制御部50は、切替弁v4を、第1未透過側流路21Aへのポートが閉鎖され且つそれ以外の2つのポートが開放されるように切り替える。これにより、第1未透過側流路21Aと第2未透過側流路22Aとの接続は中断され、第2分離装置12の未透過側からのガスは、凝縮器30を経由した(凝縮器30における熱媒体と熱交換された)後、未透過ガス合流路24へと流れるので、第1分離装置11には向かわない。
【0050】
モードIV(図2D、S70)の継続中、制御部50は、運転状態にある第2分離膜12aの温度T2が所定温度上限T未満であるかどうかを判定する(S80a)。この判定において、T2<Tであると判定された場合には、第2分離膜12aの適切な温度が維持されているので、引き続きモードIV(S70)を続ける。そして、判定S80aにて、T2<Tと判定されなかった場合、すなわち第2分離膜12aの温度T2が所望温度上限以上となった場合には、制御部50は、システム停止の指示があったか否かを確認する(S90)。
【0051】
一方、温度検知器ts1により測定された第1分離膜11aの温度T1が所定下限温度T以下であるかどうかの判定(S60)において、T1≦Tと判定されなかった場合には、制御部50は、制御部50は、モードIVへの切替え(S70)はせずに、運転状態にある第2分離膜12aの温度T2が所定上限温度T未満であるかどうかを判定する(S80b)。当該判定(S80b)においてT2<Tと判定された場合、第2分離膜12aの適切な温度が維持されているので、引き続きモードIII(図2C)にて第2分離膜12の運転が継続される。一方、上記温度判定(S80b)で、T2<Tと判定されなかった場合には、制御部50は、システム停止の指示があったか否かを確認する(S90)。
【0052】
システム停止の指示(S90)がある場合、制御部50は、膜分離システム100全体の稼働を停止するための信号を各要素に送信し、稼働を停止させる。一方、システム停止の指示がなければ(S90)、膜分離システム100の稼働は継続され、所定上限温度Tを超えた第2分離膜12aを休止・冷却するために、モードIに切り替えられる(S10)。
【0053】
なお、上記の所定下限温度T及び所定上限温度Tは、分離・回収される特定ガス成分、使用される分離膜の特性に応じて決められる。特定ガス成分が二酸化炭素である場合、使用される分離膜の適切な温度領域は40~80℃となり得るので、このような適切な温度領域に基づき、例えば、所定下限温度Tを40℃、所定上限温度Tを80℃と設定できる。
【0054】
図3を参照して説明した上記の動作フローは一例であって、膜分離システム100の構成要素の特性、条件によっては別のフローも可能である。例えば、休止状態の冷却中の分離装置における分離膜の温度が所定下限T以下となる前に、運転状態の分離装置における分離膜の温度が所定上限Tを超えないように調整しておくことで、図3に示すモードII及びモードIVは省略できる。図4に、モードII及びモードIVが省かれた一連動作のフローチャートを示す。
【0055】
なお、休止状態の冷却中の分離装置における分離膜の温度が所定下限T以下となる前に運転状態の分離装置における分離膜の温度が所定上限Tを超えないようにするという上記調整は、冷却機構CLの冷却能、分離膜の構成、その他の構成要素(分離装置の壁部、管等)の材質等を調整し、休止状態の分離装置の分離膜の降温速度(冷却速度、VELCL)を、分離運転状態の分離装置における分離膜の昇温速度(VELHT)以上となるようにする(VELCL≧VELHT)ことで可能となる。このような調整は、調整が容易であることから、特に冷却機構CLにおける熱媒体の選定により行うことが好ましい。また、休止状態の冷却中の分離装置における分離膜の温度が所定下限Tに達するタイミングと、運転状態の分離装置における分離膜の温度が所定上限Tに達するタイミングとが同時になるように、調整することが好ましい。
【0056】
[第2実施形態]
図5に、第2実施形態による膜分離システム200を示す。膜分離システム200の基本的な構成は、第1実施形態の膜分離システム100と同様(図1)であり、基本的な動作も、第1実施形態の膜分離システム100と同様(図2A図4)に可能である。しかしながら、膜分離システム200においては、膜分離システム100においては冷却機構CLとして凝縮器30のみを利用していたのに対し、膜分離システム200においては冷却機構CLとして、凝縮器30、及び凝縮器30と別体の熱交換器40が利用されている。
【0057】
図5に示すように、第1分離装置11の透過側からのガス、及び第2分離装置12の透過側からのガスは、凝縮器30を経由して、水蒸気凝縮作用を享受するように構成されている点は第1実施形態(図1)と同様である。しかしながら、第2実施形態では、第1分離装置11の未透過側からのガス、及び第2分離装置12の未透過側からのガスが、凝縮器30を経由しておらず、その代わりに、別体の熱交換器40を経由して、熱交換によって冷却されている。熱交換器40には、凝縮器30を経由することで冷却された第1分離装置11の透過側からのガス、及び第2分離装置12の透過側からのガスが、熱媒体(冷却媒体)として流れるようになっている。そして、第1分離装置11の未透過側からのガス、及び第2分離装置12の未透過側からのガスが、第1分離装置11の未透過側からのガス及び第2分離装置12の未透過側からのガスと熱交換するように構成されている。本形態の場合、凝縮器30及び熱交換器40を冷却機構CLと呼ぶ。
【0058】
膜分離システム200では、凝縮器30に、分離装置の未透過側からのガスを経由させず、未透過側からのガスを冷却するための専用の熱交換器40が設けられている。そのため、凝縮器30が冷却するガスは透過ガスのみとなるので、透過ガスと未透過ガスの両方を冷却する第1実施形態による分離膜システム100等と比較して、動力コストを削減でき、省エネルギーが可能となる。また、凝縮器30の構成が複雑化しないという利点もある。
【0059】
[第3実施形態]
第3実施形態による膜分離システム300について、図6A図6Dを参照して説明する。膜分離システム300も、第1実施形態の膜分離システム100(図1)等と同様、第1分離膜11aを備えた第1分離装置11と、第2分離膜12aを備えた第2分離装置12とを備えている。また、これらの分離装置は並列に配設されていて、一方の分離装置に分離対象ガスを流入させ且つ他方の分離装置には流入させないように、切替弁v0によって切り替え可能に構成されている。しかしながら、膜分離システム300では、一方の分離装置から他方の分離装置へと直列的なガスの流れが形成可能となっている。このために、第1分離装置11の透過側と第2分離装置12の未透過側とが接続可能であり、且つ第2分離装置12の透過側と第1分離装置11の未透過側とが接続可能になっている。より具体的には、第1未透過側流路21Aと第2透過側流路22Bとが連通可能になっており、且つ第1透過側流路21Bと第2未透過側流路22Aとが連通可能になっている。そして、第1実施形態の膜分離システム100(図1)とは異なり、第1分離装置11の未透過側と第2分離装置12の未透過側とは接続されていない。さらに、第1未透過側流路21Aと第2透過側流路22Bとの合流路27と、第1透過側流路21Bと第2未透過側流路22Aとの合流路28と、回収路23'とが、三方弁である切替弁v3によって任意に切替可能に接続されており、合流路27には切替弁v31が、合流路28においては切替弁v32が設けられている。
【0060】
図6A図6Dには、第3実施形態の膜分離システム300の運転モードの例(運転モードI~IV)をそれぞれ示す。当該運転モードI~IVは、第1実施形態の膜分離システム100の運転モードI~IVに対応している。すなわち、モードI(図6A)は、第1分離装置11を運転状態、第2分離装置12を休止状態とし、且つ第2分離装置12が冷却されているモードであり、モードII(図6B)は、第1分離装置11を運転状態、第2分離装置12を休止状態としているが、第2分離装置12の冷却が停止されているモードであり、モードIII(図6C)は、第1分離装置11を休止状態、第2分離装置12を運転状態とし、且つ第1分離装置11が冷却されているモードであり、モードIV(図6D)は、第1分離装置11を休止状態、第2分離装置12を運転状態としているが、第1分離装置11の冷却が停止されているモードである。第3実施形態の膜分離システム300においても、第1実施形態の膜分離システム100と同様の制御を行うことができる。また、膜分離システム100の稼働中の運転モードは図示のものに限られず、システム内の構成要素の特性、状況に応じた様々な運転モードがあってよい。
【0061】
モードI(図6A)では、分離対象ガスが第1分離装置11に流入するよう切替弁v0が切り替えられている。そして、第1分離装置11からの透過ガスは第1透過側流路21Bを通って、凝縮器30を経由した後、さらに第2未透過側流路22Aを通って第2分離装置12の未透過側に到達して、第2分離膜12aを通る。よって、第1分離装置11及び第2分離装置12の順に二段で分離を行うことができると共に、凝縮器30を経由して冷却されたガスが、第2分離装置12の第2分離膜12aを冷却できる。
【0062】
第3実施形態の膜分離システム300においては、第1分離装置11の未透過側の第1未透過側流路21A上に切替弁v12が、第1未透過側流路21Aからの枝分かれ位置には切替弁v11が設けられている。第2分離装置12の未透過側の第2未透過側流路22A上には切替弁v22が、第2未透過側流路22Aからの枝分かれ位置には切替弁v21が設けられている。モードI(図6A)では、切替弁v11が開放、切替弁v12が閉鎖されていることで、第1分離装置11の未透過側のガスが、第2分離装置12に向かうことなく排気される。また、切替弁v21が閉鎖、切替弁v22が開放されていることで、第1分離装置11の透過側のガスが凝縮器30を経由して、第2未透過側流路22Aを通って第2分離装置12の未透過側に流入できる。
【0063】
例えば、モードI(図6A)からモードII(図6B)に切り替えた場合、第2分離膜12aの冷却が停止される。このために、制御部50は、切替弁v22を第2未透過側流路22Aへのポートが閉鎖されるように切り替え、切替弁v32を合流路28へのポートが開放されるように切り替える。さらに、切替弁v3も、第1未透過側流路21A(または合流路27)へ向かうポートが閉鎖され且つそれ以外の2つのポートが開放されるよう切り替えられる。すなわち、第1透過側流路21Bと第2未透過側流路22Aとの接続は中断され、第1分離装置11の透過側からのガスは、凝縮器30を経由した後、第2未透過側流路22Aには流入することなく、合流路28へ流入する経路が形成される。これにより、第1分離装置11からの透過ガスが、回収路23'を経由して回収される。
【0064】
モードIII(図6C)では、分離対象ガスが第2分離装置12に流入するよう切替弁v0が切り替えられる。そして、第2分離装置12からの透過ガスが第2透過側流路22Bを通って、凝縮器30を経由した後、さらに第1未透過側流路21Aを通って第1分離装置11の未透過側に到達して、第1分離膜11aを通る。よって、この運転モードでは、第2分離装置12及び第1分離装置11の順に二段で分離を行うことができると共に、凝縮器30を経由して冷却されたガスが、第1分離装置11の第1分離膜11aを冷却できる。
【0065】
なお、モードIII(図6C)では、切替弁v11が閉鎖、切替弁v12が開放されていることで、第2分離装置12の透過側のガスが凝縮器30を経由して、第1未透過側流路21Aを通って第1分離装置11の未透過側に流入できる。また、切替弁v21が開放、切替弁v22が閉鎖されていることで、また、第2分離装置12の未透過側のガスが、第1分離装置11に向かうことなく排気される。
【0066】
例えば、モードIII(図6C)からモードIV(図6D)に切り替えた場合、これまで冷却されていた第1分離膜11aの冷却が停止される。このために、制御部50は、切替弁v12を第1未透過側流路21Aへのポートが閉鎖されるように切り替え、切替弁v31を合流路27へのポートが開放されるように切り替える。さらに、切替弁v3も、第2未透過側流路22A(または合流路28)へ向かうポートが閉鎖され且つそれ以外の2つのポートが開放されるよう切り替えられる。すなわち、第2透過側流路22Bと第1未透過側流路21Aとの接続は中断され、第2分離装置12の透過側からのガスは、第1未透過側流路21Aには流入することなく、合流路27へ流入する経路が形成される。これにより、第2分離装置12からの透過ガスが、回収路23'を経由して回収される。なお、第2分離装置12の透過側からのガスが、回収される前に通る凝縮器が設けられていてもよい。
【0067】
このように、少なくとも1つの分離装置から他の分離装置へと直列的なガスの流れが形成されている膜分離システム300によれば、分離が多段式に行われることになるので、回収される特定ガス成分の濃度を高くできる。また、通常の多段式の直列構成と比較した場合、複数の分離装置からのガスの水蒸気凝縮を1つの凝縮器30によって行うことができるので、省エネルギー、省スペース等の利点が得られる。
【0068】
なお、膜分離システム300の場合には、運転モードによってガスが凝縮器30を経由する回数が異なる。例えば、図6Bに示すモードでは、第1分離装置11の透過側のガスが1回凝縮器30を経由して、第2分離装置12を通った後、凝縮器30を経由することなく回収路23'へと流れる。すなわち、膜分離システム300に導入された分離対象ガスが凝縮器30を経由する回数は1回である。一方、図6Cに示すモードでは、第2分離装置12の透過側のガスが凝縮器30を経由し、第2分離装置12を通った後、再び凝縮器30を経由するようになっている。
【0069】
[第4実施形態]
第4実施形態による膜分離システム400を、図7A図7Dを参照して説明する。膜分離システム400も、第1分離膜11aを備えた第1分離装置11と、第2分離膜12aを備えた第2分離装置12とを備えている。また、2つの分離装置が並列に配設されていて、一方の分離装置に分離対象ガスを流入させ且つ他方の分離装置には流入させないように、切替弁v0によって切り替え可能に構成されている。また、第1分離装置11の未透過側と第2分離装置12の未透過側とは接続されておらず、第1分離装置11に接続する第1未透過側流路21Aと第2分離装置12に接続する第2透過側流路22Bとが連通可能に、且つ第1分離装置11に接続する第1透過側流路21Bと第2分離装置12に接続する第2未透過側流路22Aとが連通可能になっている点でも、第3実施形態の膜分離システム300(図6A)と同様であり、切替弁の基本的な機能も同様である。しかしながら、第4実施形態による膜分離システム400では、少なくとも第1未透過側流路21Aと第2透過側流路22Bとの合流位置が、第3実施形態の膜分離システム300(図6A)とは異なっていることで、第3実施形態の膜分離システム300(図6A)と比べて、より多くの異なる運転モードが可能となっている。
【0070】
図7A図7Dには、第3実施形態の膜分離システム400の運転モードの例がそれぞれ示されている。図7A図7Dには、運転モードI~IVがそれぞれ示されていて、当該運転モードI~IVは、第1実施形態の膜分離システム100の運転モードI~IVに対応している。すなわち、モードI(図7A)は、第1分離装置11を運転状態、第2分離装置12を休止状態とし、且つ第2分離装置12が冷却されているモードであり、モードII(図7B)は、第1分離装置11を運転状態、第2分離装置12を休止状態としているが、第2分離装置12の冷却が停止されているモードであり、モードIII(図7C)は、第1分離装置11を休止状態、第2分離装置12を運転状態とし、且つ第1分離装置11が冷却されているモードであり、モードIV(図7D)は、第1分離装置11を休止状態、第2分離装置12を運転状態としているが、第1分離装置11の冷却が停止されているモードである。第3実施形態の膜分離システム300においても、第1実施形態の膜分離システム100と同様の制御を行うことができる。また、膜分離システム100の稼働中の運転モードは図示のものに限られず、システム内の構成要素の特性、状況に応じた様々な運転モードがあってよい。
【0071】
モードI(図7A)では、分離対象ガスが第1分離装置11に流入するよう切替弁v0が切り替えられている。そして、第1分離装置11の透過ガスは第1透過側流路21Bを通って、凝縮器30を経由して冷却された後、第2分離装置12の未透過側の第2未透過側流路22Aを通って、第2分離装置12に達する。第2分離装置12に達したガスは、第2分離装置12が備えている第2分離膜12aを通る。第2分離膜12aを通るガスは、凝縮器30を経由した後の冷却されたガスであるため、これにより、第2分離膜12aが冷却される。その後、第2分離装置12の透過側から出たガスは、凝縮器30を経由して、第1未透過側流路21Aと第2透過側流路22Bとの合流路27を通って、回収路23'へと向かう。
【0072】
例えば、モードI(図7A)からモードII(図7B)に切り替えた場合、第2分離膜12aの冷却が停止される。このために、制御部50は、切替弁v22を第2未透過側流路22Aへのポートが閉鎖されるように切り替え、切替弁v32を合流路28へのポートが開放されるように切り替える。さらに、切替弁v3も、合流路27へ向かうポートが閉鎖され且つそれ以外の2つのポートが開放されるよう切り替えられる。すなわち、第1透過側流路21Bと第2未透過側流路22Aとの接続は中断され、第1分離装置11の透過側からのガスは、凝縮器30を経由した後、第2未透過側流路22Aには流入することなく、合流路28へ流入する経路が形成される。これにより、第1分離装置11からの透過ガスが、回収路23'を経由して回収される。
【0073】
モードIII(図7C)では、分離対象ガスが第2分離装置12に流入するよう切替弁v0が切り替えられている。そして、第2分離装置12を通った透過ガスは、第2透過側流路22Bを通って、凝縮器30を経由して冷却された後、第1分離装置11の未透過側の第1未透過側流路21Aを通って、第1分離装置11に入る。第1分離装置11に達したガスは、第1分離装置11が備えている第1分離膜11aを通り、この際、第1分離膜11aが冷却される。その後、第1分離装置11の透過側から出たガスは、凝縮器30を経由して、第1透過側流路21Bと第2未透過側流路22Aとの合流路28を通って、回収路23'へと向かう。
【0074】
例えば、モードIII(図7C)からモードIV(図7D)に切り替えた場合、これまで冷却されていた第1分離膜11aの冷却が停止される。このために、制御部50は、切替弁v12を第1未透過側流路21Aへのポートが閉鎖されるように切り替え、切替弁v31を合流路27へのポートが開放されるように切り替える。さらに、切替弁v3も、合流路28へ向かうポートが閉鎖され且つそれ以外の2つのポートが開放されるよう切り替えられる。すなわち、第2透過側流路22Bと第1未透過側流路21Aとの接続は中断され、第2分離装置12の透過側からのガスは、凝縮器30を経由した後、第1未透過側流路21Aには流入することなく、合流路27へ流入する経路が形成される。これにより、第2分離装置12からの透過ガスが、回収路23'を経由して回収される。
【0075】
図7A及び図7Cに示す運転モードの場合、いずれも、ガスは膜分離システム内で2回凝縮器を経由するようになっている。一方、図7B及び図7Dに示す運転モードでは、ガスが凝縮器を経由する回数は1回である。
【0076】
さらに、膜分離システム400では、さらに別の運転モードも可能である。上述の図7B及び図7Cの運転モードは、運転状態の分離装置の透過側からのガスが、休止状態の分離装置の未透過側に供給されるようになっていた。これに対し、例えば、図7E及び図7Fに示すように、運転状態の分離装置の透過側からのガスが、休止状態の分離装置の透過側に供給される経路も可能である。
【0077】
図7Eに示す運転モードでは、第1分離装置11の透過側のガスが、第1透過側流路21Bを通って、凝縮器30を経由し、合流路28及び回収路23'を通って回収される。一方、第1分離装置11の未透過側のガスは凝縮器30を経由して冷却された後、第2分離装置12へと流れるが、この際、第2透過側流路22Bを通って第2分離装置12の透過側に到達するようになっている。そして、ガスは第2分離装置12における第2分離膜12aを通って未透過側へと流れ、この際、第2分離膜12aが冷却される。なお、図7Eの運転モードでは、第2分離装置12の未透過側からのガスは、切替弁v21を介して排出される。
【0078】
図7Fに示す運転モードでは、第2分離装置12の透過側のガスが、第2透過側流路22Bを通って、凝縮器30を経由し、合流路27及び回収路23'を通って回収される。第2分離装置12の未透過側のガスは凝縮器30を経由して冷却された後、第1分離装置11へと流れるが、この際、第1透過側流路21Bを通って第1分離装置11の透過側に到達するようになっている。そして、ガスは第1分離装置11における第1分離膜11aを通って未透過側へと流れ、この際、第1分離膜11aが冷却される。図7Eの運転モードでは、第1分離装置11の未透過側からのガスは、切替弁v11を介して排出される。
【0079】
このように、第4実施形態によれば、同じ膜分離システム400を用いて、一方の分離装置の透過側から他方の分離装置の未透過側へガスを供給して、当該他方の分離装置の分離膜を冷却する運転モード(図7A図7D)が可能であるし、一方の分離装置の未透過側から他方の分離装置の透過側へガスを供給して、当該他方の分離装置の分離膜を冷却する運転モード(図7E及び図7F)も可能である。
【0080】
[変形例]
さらに、図8及び図9に、本開示の構成の変形例を示す。図8及び図9に示す構成は、図1に示す膜分離システム100に、第3分離膜13aを備えた第3分離装置13が後置されてなる多段膜分離システム110として示されている。より具体的には、膜分離システム100の透過ガスの放出口に、さらに第3分離装置13が配設されている。図8及び図9には、膜分離システム100に後置されている要素は、第3分離装置13単独であるが、第3分離装置13とその他の膜分離システムとしての他の構成要素とを含む後置システムを構成して、膜分離システム100に後置してもよい。
【0081】
図8に示す例では、膜分離システム100から放出された透過ガスが、第3分離装置13の未透過側に流入し、第3分離膜13aによってさらに分離される。このような多段の分離を行うことで、特定ガス成分の回収率をさらに上げることが可能となる。なお、第3分離膜13aは、第1分離膜11a及び第2分離膜12aよりも性能(透過性能及び/又は選択性能)の高い分離膜であると好ましい。
【0082】
図8に示す例では、第3分離装置13の未透過側からのガスは、膜分離システム100の未透過側からのガスと同様に、排気される。一方、図9に示す例では、第3分離装置13の未透過側からのガスを、リサイクル流路29を介して、システムの流入口へと戻す。これにより、第3分離装置13の未透過側からのガスがリサイクルされる。このようなリサイクル形式の膜分離システムは、目的の特定ガス成分の回収量を増加できるという点で好ましい。
【0083】
なお、多段膜分離システム110、120の場合、多段膜分離システム110、120に後置されてなる分離装置の数は1に限られない。膜分離システム100の下流には、2~5の分離装置が多段に(直列に)配設されていてもよい。
【0084】
さらに、図10に、本開示の構成のさらに別の変形例を示す。図10に示す膜分離システム100では、図1に示す膜分離システム100における透過ガスの放出位置に配置されていたポンプp3がなく、それに代えて、膜分離システム100の流入口にポンプp0が配置されている。ポンプp3は減圧ポンプであったが、p0は加圧ポンプである。このように、図1に示す膜分離システム100は減圧方式であったが、図10に示す膜分離システム100は加圧方式のシステムとなっている。このように、本開示による膜分離システムは加圧方式及び減圧方式のいずれであってもよいが、分離された透過ガスを減圧することによる減圧方式(図1)の方が、消費電力を抑えることができる。
【0085】
以上、本開示の技術の説明を、主として、2つの分離装置を備えた膜分離システムを例として行った。よって、本開示の一形態は、分離対象ガスから特定ガス成分を分離する膜分離システムであって、互いに並列に配設された第1分離装置及び第2分離装置を備え、前記第1分離装置が分離運転状態であり且つ前記第2分離装置が休止状態となるモードと、前記第1分離装置が休止状態であり且つ前記第2分離装置が分離運転状態となるモードとで切替え可能であり、前記第1分離装置及び前記第2分離装置のうち分離運転状態の分離装置からのガスが、冷却機構を経由して、休止状態の分離装置の少なくとも1つへ流れるよう構成されているものであってよい。
【0086】
但し、膜分離システムにおける分離装置の数は2つに限られず、膜分離システム100には複数の分離装置、例えば3~6の分離装置が並列に配設されていてもよい。その場合であっても、複数の分離装置のうち、少なくとも1つの分離装置を運転状態とし、少なくとも1つの分離装置を休止状態とすることができる。そして、運転状態の分離装置からのガスを一旦冷却機構CLにより冷却して、その冷却されたガスを、休止状態の分離装置における分離膜の冷却のために利用する。膜分離システム100に含まれる分離装置の数が2以上である場合、運転状態となる分離装置の数と、休止状態の分離装置の数とが同じように切替えを行うことが好ましい。これにより、膜分離システム100の稼働中の分離性能が大きく変動することを防止でき、特定ガス成分の回収量をできるだけ一定に維持できる。
【0087】
[第5実施形態]
図11に、2以上の分離装置を備えた膜分離システムの構成例を示す。図11に示す膜分離システム500は、分離膜111aを備えた分離装置111、分離膜112aを備えた分離装置112、分離膜121aを備えた分離装置121、分離膜122aを備えた分離装置122の計4つの分離装置を備えている。図11に示すように、これらの分離装置111、112、121、122は互いに並列に配設されている、すなわち、1つの流入口からの流路が枝分かれし、分離装置111、112、121、122のそれぞれに達するようになっている。各分離装置には、弁v01、v02、v03、v04が設けられており、分離対象ガスの流入の有無を制御できる。すなわち、分離装置111、112、121、122はそれぞれ独立して、運転状態と休止状態との間で切替え可能となっている。これにより、膜分離システム500の稼働中、分離装置111、112、121、122のうち少なくとも1つを運転状態とし、少なくとも別の1つを休止状態とすることができる。
【0088】
図11に示す形態では、分離装置111、112を合わせて第1組U1と呼ぶ。第1組U1からの未透過側のガス及び透過側のガスはそれぞれ一旦集められている。すなわち、分離装置111の未透過側からのガスと分離装置112の未透過側からのガスとが合流して1つの流路21A内を流れるようになっており、分離装置111の透過側からのガスと分離装置112の透過側からのガスとが合流して1つの流路21B内を流れるようになっている。また、分離装置121、122を合わせて第2組U2と呼ぶ。第2組U2からの未透過側のガス及び透過側のガスもそれぞれ一旦集められている。すなわち、分離装置121の未透過側からのガスと分離装置122の未透過側からのガスとが合流して1つの流路22A内を流れるようになっており、分離装置121の透過側からのガスと分離装置122の透過側からのガスとが合流して1つの流路22B内を流れるようになっている。
【0089】
第1組U1及び第2組U2よりも下流の構成は、図1に示す膜分離システム100の構成と同様となっている。膜分離システム500においても、運転状態の分離装置からのガスを、凝縮器30(冷却機構CL)を経由させて冷却し、休止状態の分離装置へと送り込み、休止状態の分離装置の冷却に使用できる。
【0090】
膜分離システム500では、第1組U1の分離装置111、112を同時に運転状態とした場合、第2組U2の分離装置121、122を同時に休止状態とすることが好ましい。その場合、分離性能の同じ分離装置を使用することで、膜分離システム500の稼働中通して、特定ガス成分の安定した回収量及び回収率を得ることができる。
【0091】
膜分離システム500は、分離膜111aの温度を測定する温度検知器ts1a、分離膜112aの温度を測定する温度検知器ts1b、分離膜121aの温度を測定する温度検知器ts2a、及び分離膜122aの温度を測定する温度検知器ts2bを備えている。よって、各分離膜の温度を個別に測定して、その温度に基づいた制御が可能となっている。また、膜分離システム500においても、上記温度検知器ts1a、ts1b、ts2a、ts2b、弁v01、v02、v03、v04、v1、v2、v3、v4、温度検知器ts1a、ts1b、ts2a、ts2b、及びポンプp3は、制御部(図示は省略)によって制御されている。
【0092】
なお、膜分離システムが3以上の分離装置を備えている場合、任意の数の分離装置を運転状態とし且つ残りの数の分離装置を休止状態とすることができる。例えば、1つの分離装置を運転状態とし且つそれ以外の分離装置を休止状態とするよう動作させてもよいし、1つの分離装置を休止状態とし且つそれ以外の分離装置を運転状態とするように動作させてもよい。
【0093】
[膜分離方法]
さらに、本開示の一形態は、分離対象ガスから特定ガス成分を分離する膜分離方法であって、互いに並列に接続され且つそれぞれ分離膜を有する分離装置を2以上備え、前記分離装置がそれぞれ、分離運転状態と休止状態とで切り替え可能であるシステムを用いて、前記分離運転状態の分離装置の少なくとも1つからのガスを、冷却機構を経由して、前記休止状態の分離装置の少なくとも1つへ流すことを含むものであってよい。
【0094】
また、別の一形態は、上記膜分離方法であって、前記分離運転状態の分離装置の少なくとも1つの未透過側からのガスを、冷却機構を経由して、前記休止状態の分離装置の少なくとも1つへ、好ましくは休止状態の分離装置の少なくとも1つの未透過側へ、流すものであってよい。
【0095】
以上、本発明を実施形態に基づき説明したが、本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。また、上記実施形態は、特許請求の範囲に記載された範囲内において、様々な変更、修正、置換、付加、削除、及び組合せ等が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に属する。本明細書で説明された実施形態の技術は任意に組み合わせ可能であり、例えば、第2実施形態及び第3実施形態において図8図9、又は図10の構成を適用すること、第5実施形態において図5図10の構成を組み合わせること等が可能である。
【符号の説明】
【0096】
11 第1分離装置
11a 第1分離膜
12 第2分離装置
12a 第2分離膜
13 第3分離装置
13a 第3分離膜
21A 第1未透過側流路
21B 第1透過側流路
22A 第2未透過側流路
22B 第2透過側流路
23 透過ガス合流路
23' 回収路
24 未透過ガス合流路
25 第1排気路
26 第2排気路
27、28 合流路
29 リサイクル流路
30 凝縮器
40 熱交換器
50 制御部
100、200、300、400、500 膜分離システム
110、120 多段膜分離システム
CL 冷却機構
p0、p3 ポンプ
ts1、ts2、ts3、ts4 温度検知器
v0、v1、v2、v3、v4 切替弁
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図8
図9
図10
図11