(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180128
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ノズル状態検査装置、ノズル状態検査方法及びノズル状態検査プログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20241219BHJP
B41J 2/015 20060101ALI20241219BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B41J2/165 501
B41J2/015 101
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099598
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡野 宏昭
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EA24
2C056EB08
2C056EB39
2C056EB40
2C056EB58
2C056EC08
2C056EC42
2C056FA04
2C057AF72
2C057AG44
2C057AL34
2C057AL40
2C057AM16
2C057AR08
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】安価な構成で、高精度にノズルの残響波形を取得してノズル状態を検査する。
【解決手段】第1駆動出力と第2駆動出力とを含む駆動波形を生成して、インクジェットヘッドが有する複数のノズルに駆動波形を出力可能な駆動波形生成部212と、駆動波形に応じて測定対象であるノズルに発生する残響波形を取得して、ノズルの異常検査を行う検査部と、を備える。
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1駆動出力と第2駆動出力とを含む駆動波形を生成して、インクジェットヘッドが有する複数のノズルに前記駆動波形を出力可能な駆動波形生成部と、
前記駆動波形に応じて測定対象である前記ノズルに発生する残響波形を取得して、前記ノズルの異常検査を行う検査部と、を備える
ノズル状態検査装置。
【請求項2】
前記検査部は、複数の前記ノズルに対して、取得した前記残響波形の検知を行う共通の残響波形検知部を含む、
請求項1に記載のノズル状態検査装置。
【請求項3】
複数の前記ノズルのそれぞれに接続可能であって、前記検査部の制御により、前記駆動波形生成部、及び、前記検査部が有する前記残響波形を取得する信号受信部のいずれかを前記ノズルに接続させるように動作する2チャネルスイッチを備える
請求項2に記載のノズル状態検査装置。
【請求項4】
前記第1駆動出力は、前記ノズルに前記残響波形を起こすことが可能な電圧に対応し、前記第2駆動出力は、前記電圧より小さい電圧に対応する
請求項3に記載のノズル状態検査装置。
【請求項5】
前記検査部は、予め登録された画像に含まれる画像データの種類に応じて、前記ノズルに前記駆動波形を印加するか否かの制御として、前記2チャネルスイッチの動作を制御する
請求項4に記載のノズル状態検査装置。
【請求項6】
前記画像データは、前記測定対象である前記ノズルに対応する第1画像データ、前記画像の中、印字のない画像部分の画像データである第2画像データ、及び、前記測定対象でない前記ノズルに対応する第3画像データを含む
請求項5に記載のノズル状態検査装置。
【請求項7】
前記検査部は、
前記第1画像データが前記測定対象である前記ノズルに転送され、前記第2画像データが前記測定対象でない前記ノズルに転送された場合、前記駆動波形生成部を前記測定対象である前記ノズルに接続させ、前記信号受信部を前記測定対象でない前記ノズルに接続させるように前記2チャネルスイッチの動作を制御する
請求項6に記載のノズル状態検査装置。
【請求項8】
前記検査部は、
前記第1画像データが前記測定対象である前記ノズルに転送され、前記第3画像データが前記測定対象でない前記ノズルに転送された場合、
前記第1駆動出力が出力される際、前記駆動波形生成部を前記測定対象である前記ノズルに接続させ、前記信号受信部を前記測定対象でない前記ノズルに接続させるように前記2チャネルスイッチの動作を制御する
請求項6に記載のノズル状態検査装置。
【請求項9】
前記検査部は、
前記第1画像データが前記測定対象である前記ノズルに転送され、前記第3画像データが前記測定対象でない前記ノズルに転送された場合、
前記第2駆動出力が出力される際、前記信号受信部を前記測定対象である前記ノズルに接続させ、前記駆動波形生成部を前記測定対象でない前記ノズルに接続させるように前記2チャネルスイッチの動作を制御する
請求項8に記載のノズル状態検査装置。
【請求項10】
前記検査部は、前記インクジェットヘッドが有する複数の前記ノズルを順番に前記測定対象として前記残響波形を取得して前記異常検査を行う
請求項1~9のいずれか一項に記載のノズル状態検査装置。
【請求項11】
前記駆動波形生成部は、前記インクジェットヘッドの印刷時に、前記第1駆動出力と前記第2駆動出力の組み合わせにより複数期間で構成される複数種類の駆動波形のパターンを生成して出力し、前記ノズルが吐出する液滴の大きさをコントロールする
請求項3に記載のノズル状態検査装置。
【請求項12】
前記検査部は、前記駆動波形の各期間において、前記駆動波形生成部を前記ノズルに接続させるか、接続させないかの前記スイッチの動作を制御する、
請求項10に記載のノズル状態検査装置。
【請求項13】
複数のノズルを有するインクジェットヘッドのノズル状態検査方法であって、
第1駆動出力と第2駆動出力とを含む駆動波形を生成して、前記インクジェットヘッドが有する複数の前記ノズルに前記駆動波形を出力するステップと、
前記駆動波形に応じて測定対象である前記ノズルに発生する残響波形を取得して異常検査を行うステップと、を含む
ノズル状態検査方法。
【請求項14】
複数のノズルを有するインクジェットヘッドのノズル状態検査プログラムであって、
第1駆動出力と第2駆動出力とを含む駆動波形を生成して、前記インクジェットヘッドが有する複数の前記ノズルに前記駆動波形を出力する処理と、
前記駆動波形に応じて測定対象である前記ノズルに発生する残響波形を取得して異常検査を行う処理と、をコンピューターに実行させる
ノズル状態検査プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル状態検査装置、ノズル状態検査方法及びノズル状態検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット記録装置において、インクジェットヘッドのノズルが圧電素子を備え、圧電素子がノズルに対して圧力を付与して、インクを吐出させる。圧電素子が駆動された直後に残留振動が発生し、残留振動による残響波形を観測ことができる。この残響波形はノズルの状態に応じる特徴的な変化を示すため、残響波形を観測することにより、ノズルが正常に吐出しているか否かの状態を検査する技術、例えば、特許文献1に開示された技術が提案されている。
【0003】
特許文献1には、インクジェットヘッドの各ノズルを順次に切り替えて、残留振動検知部により、各ノズルの圧電素子の伸縮に基づいて残留振動を検知し、残留振動検知部の出力に基づいて残留振動の減衰比を算出し、各ノズル吐出異常を判定する技術が開示されている。
【0004】
ところで、インクジェットヘッドは、数百~数千個のノズルを有する。数百~数千個のノズルの間の切り替えを実現するための多チャネルスイッチを備えることは、より高いコストがかかる。この状況に対して、各ノズルに対して、ノズルを駆動する駆動波形を印加するか否かを切り替える二チャンネルのスイッチを利用することにより、コストを削減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、従来、インクジェットヘッドのノズルが駆動された直後の残響波形を観測することにより、ノズルの異常を検出する技術が提案されている。しかしながら、特許文献1に記載された技術では、個数が膨大のノズルの間の切り替えを実現する多チャネルスイッチを備えることで、コストが高くなるという問題がある。一方、二チャンネルスイッチを切り替え手段として利用することによりコストを削減することができる。しかし、このような構成では、残響波形の測定対象以外のノズルが駆動されないため、それに接続する二チャンネルスイッチはOFF側にセットされ、並列に接続される。電気的にコンデンサと等価な各ノズルが並列に接続されることにより大きな容量が形成する。この大きな容量により、測定対象ノズルにおける残響波形の減衰問題が発生して、残響波形を検査する精度が低下する問題がある。
【0007】
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、安価な構成で、高精度にノズルの残響波形を取得してノズル状態を検査することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のノズル状態検査装置は、第1駆動出力と第2駆動出力とを含む駆動波形を生成して、インクジェットヘッドが有する複数のノズルに駆動波形を出力可能な駆動波形生成部と、駆動波形に応じて測定対象であるノズルに発生する残響波形を取得して、ノズルの異常検査を行う検査部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
上記構成の本発明によれば、安価な構成で、高精度にノズルの残響波形を取得してノズル状態を検査することができる。
上記以外の課題、構成及び効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】多チャネルスイッチを用いるノズル状態検査装置の構成例を示す図である。
【
図2】2チャネルスイッチを用いるノズル状態検査装置の構成例を示す図である。
【
図3】2チャネルスイッチを用いるノズル状態検査装置において利用される画像データの例1を示す図である。
【
図4】2チャネルスイッチを用いるノズル状態検査装置の第1の動作例におけるスイッチ動作を説明するための図である。
【
図5】2チャネルスイッチを用いるノズル状態検査装置の第1の動作例におけるノズル状態検査時のスイッチ状態を示す図である。
【
図6】2チャネルスイッチを用いるノズル状態検査装置の第1の動作例における残響波形の減衰を説明するための図である。
【
図7】2チャネルスイッチを用いるノズル状態検査装置において利用される画像データの例2を示す図である。
【
図8】2チャネルスイッチを用いるノズル状態検査装置の第2の動作例におけるスイッチ動作を説明するための図である。
【
図9】2チャネルスイッチを用いるノズル状態検査装置の第2の動作例におけるノズル状態検査時のスイッチ状態を示す図である。
【
図10】2チャネルスイッチを用いるノズル状態検査装置の第2の動作例におけるクロストークを説明するための図である。
【
図11】本発明の第1実施形態に係るノズル状態検査装置において利用される画像データの例を示す図である。
【
図12】本発明の第1実施形態に係るノズル状態検査装置において利用される駆動波形の一例を示す図である。
【
図13】本発明の第1実施形態に係るノズル状態検査装置における、画像データと波形切り替え信号と駆動波形との対応関係を説明するための図である。
【
図14】本発明の第1実施形態に係るノズル状態検査装置におけるスイッチ動作を説明するための図である。
【
図15】本発明の第1実施形態に係るノズル状態検査装置におけるノズル状態検査時のスイッチ状態を示す図である。
【
図16】本発明の第1実施形態に係るノズル状態検査装置において、残響波形測定時にノズルに印加される信号波形を説明するための図である。
【
図17】本発明の第1実施形態に係るノズル状態検査装置の信号受信部の受信信号を説明するための図である。
【
図18】本発明の第1実施形態に係るノズル状態検査装置の検査部におけるノズル状態検査処理の手順を示すフローチャートである。
【
図19】本発明の第1実施形態に係るノズル状態検査装置の検査部のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図20】本発明の第2実施形態に係るノズル状態検査装置において利用される駆動波形のパターンを示す図である。
【
図21】本発明の第2実施形態に係るノズル状態検査装置において、駆動波形のパターンとノズルの吐出液滴の大きさとの対応関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態を説明する前に、まず、多チャネルスイッチを用いるノズル状態検査装置、及び、2チャネルスイッチを用いるノズル状態検査装置のそれぞれに存在する問題について説明する。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0012】
図1は、多チャネルスイッチを用いるノズル状態検査装置100の構成例を示す図である。ノズル状態検査装置100は、
図1に示すように、圧電素子駆動回路11と、各ノズルが有する圧電素子12と、多チャネルスイッチ13と、波形処理回路14とを備える。圧電素子12は、各ノズルがそれぞれ有する圧電素子、例えば、圧電素子12a~圧電素子12xを含む。
【0013】
圧電素子駆動回路11は、駆動波形を入力して、駆動波形により各圧電素子(圧電素子12a~圧電素子12x)を駆動する。圧電素子駆動回路11は、複数のスイッチング素子を含み、圧電素子駆動回路11のON/OFFは、各圧電素子に対応して形成されるスイッチング素子のON/OFFにより制御される。インク液滴の吐出後、すなわち、圧電素子駆動回路11がONからOFFに切り替えた後、圧電素子12が、多チャネルスイッチ13を介して波形処理回路14に接続される。波形処理回路14は、圧電素子12の残響波形に対して、ノイズ除去、増幅等の処理を行って残響波形を出力する。波形処理回路14により出力された残響波形を観測することによりノズル状態を検査することができる。
【0014】
しかしながら、
図1に示すノズル状態検査装置100では、多チャネルスイッチ13は、数百~数千個ノズルの圧電素子を切り替えるための、数百~数千のチャネルを有するスイッチである。このような多チャネルスイッチ13を備えることには、コストがかかる問題がある。
【0015】
図2は、2チャネルスイッチを用いるノズル状態検査装置200の構成例を示す図である。ノズル状態検査装置200は、
図2に示すように、駆動ボード20と、インクジェットヘッド30とを備える。なお、ノズル状態検査装置200は、後述する本発明の第1実施形態に係るノズル状態検査装置500と同じ構成としている。
【0016】
駆動ボード20は、FPGA(Field Programmable Gate Array)等で構成され、インクジェットヘッド30を駆動して、インクジェットヘッド30のインク吐出動作に関する各種制御を行う。駆動ボード20は、ヘッド制御部21と、駆動回路22と、信号受信部23とを有する。ヘッド制御部21は、駆動回路22及び信号受信部23のそれぞれに接続される。また、ヘッド制御部21は、インクジェットヘッド30の後述のスイッチ制御部31に接続する。駆動回路22及び信号受信部23は、それぞれ、インクジェットヘッド30の後述の駆動IC32に接続される。
【0017】
ヘッド制御部21は、インクジェットヘッド30の各ノズルから液体(例えば、インク)を適正に吐出させるために、図示しない圧電素子を駆動する駆動信号を生成して出力する。ヘッド制御部21は、
図2に示すように、データ出力部211と、駆動波形生成部212と、複数のノズルに対して共通の残響波形検知部213とを有する。以下の説明では、「駆動信号」を「駆動波形」とも称する。
【0018】
データ出力部211は、予め登録された画像データを選択してインクジェットヘッド30の後述のスイッチ制御部31に出力する。また、データ出力部211は、駆動波形の出力タイミングを指示する波形切り替え信号をインクジェットヘッド30の後述のスイッチ制御部31に出力する。
【0019】
駆動波形生成部212は、予め登録された駆動波形のパターンを選択し、駆動波形を生成して駆動回路22に出力する。
【0020】
残響波形検知部213は、複数のノズルに対して共通であり、信号受信部23により出力された残響波形を取得し、ノズルの異常検査に関する解析を行う。なお、残響波形検知部213による残響波形の解析結果は、外部の不図示の表示装置、信号波形測定器等に出力される。
【0021】
駆動回路22は、駆動波形生成部212により生成された駆動波形を入力し、駆動波形をインクジェットヘッド30の後述の駆動IC32を介して各ノズルに印加し、各ノズルを駆動する。
【0022】
信号受信部23は、インクジェットヘッド30のノズルに発生した残響波形を取得してヘッド制御部21の残響波形検知部213に出力する。
【0023】
インクジェットヘッド30は、
図2に示すように、スイッチ制御部31と、駆動IC(Integrated Circuit)32と、液体を吐出する複数のノズル(ノズル1~ノズルn)とを有する。駆動IC32は、ノズルと同じ個数の2チャネルスイッチ(スイッチ32-1~スイッチ32-n)を有する。各スイッチ(スイッチ32-1~スイッチ32-n)の出力側は、それぞれ、各ノズルに接続する。各スイッチのON側の入力端子は、駆動ボード20の駆動回路22の出力側に接続する。各スイッチのOFF側の入力端子は、駆動ボード20の信号受信部23の入力側に接続する。各スイッチが、ON側にセットされた場合、接続するノズルが駆動波形により駆動される。各スイッチが、OFF側にセットされた場合、接続するノズルに発生した残響波形は、信号受信部23により取得される。
【0024】
スイッチ制御部31は、ヘッド制御部21のデータ出力部211から画像データ及び波形切り替え信号を入力する。また、スイッチ制御部31は、各スイッチに接続し、画像データ及び波形切り替え信号に従い、各スイッチのON/OFF動作を制御する。
【0025】
従来、ノズル状態検査装置200は、残響波形の測定準備として、測定対象であるノズルに接続するスイッチをONにセットし、測定対象でないノズルに接続するスイッチをOFF側にセットする。以下の説明では、測定対象であるノズルを「測定対象ノズル」と称し、測定対象でないノズルを「測定対象以外のノズル」と称する。残響波形の測定時には、測定対象ノズルに接続するスイッチがONからOFFに切り替えられて、測定対象以外のノズルに接続するスイッチはOFFに維持される。このような動作(以下では、「第1の動作例」と称する)により、信号受信部23は、測定対象のノズルの駆動波形がOFFにされた後に発生した残響波形を取得することができる。
【0026】
ここで、
図3~
図6を用いて、ノズル状態検査装置200の第1の動作例について詳述する。
図3は、2チャネルスイッチを用いるノズル状態検査装置200において利用される画像データの例1を示す図である。
図3に示す画像F1では、図面上の幅方向は、画像形成時の主走査方向を表し、主走査方向(幅方向)と交差する下から上への方向は、画像形成時の副走査方向を表す。画像F1中の黒い画像部分の主走査方向における位置は、測定対象ノズルに対応する位置である。ここで、測定対象ノズルに対応する黒い画像部分の画像データを「画像データD1」とし、白い画像部分の画像データを「画像データD0」とする。なお、画像データD1は、印字が要る画像部分の画像データであり、画像データD0は、印字のない画像部分の画像データである。
【0027】
画像データD1の副走査方向における長さは、例えば、図に示すように、10ラインである。インクジェットヘッド30が、副走査方向に沿って、画像データD1の1ライン目から10ライン目まで液体を吐出して走査する期間、すなわち、測定対象ノズルの駆動期間には、測定対象ノズルに接続するスイッチがONにセットされる。この期間において、測定対象以外のノズルに対応する画像データは、画像データD0であり、測定対象以外のノズルの駆動しない期間であるため、測定対象以外のノズルに接続するスイッチがOFFにセットされる。
【0028】
11ライン目では、測定対象ノズルに対応する画像データが画像データD1から画像データD0に変更される。すなわち、測定対象ノズルが駆動期間から駆動されない期間に切り替え、測定対象ノズルに接続するスイッチがONからOFFに切り替える。このタイミングにおいて、測定対象ノズルに残響波形が発生する。12ライン目以降では、全てのノズルに対応する画像データは画像データD0である。このため、全てのノズルに接続するスイッチがOFFに維持される。
【0029】
なお、ノズル状態検査装置200のヘッド制御部21のデータ出力部211は、予め記憶された画像F1、及び波形切り替え信号をインクジェットヘッド30のスイッチ制御部31に出力する。そして、スイッチ制御部31は、波形切り替え信号に指示された駆動波形の出力タイミング、及び画像F1に含まれる各種画像データ(画像データD1及び画像データD0)に応じて各ノズルに接続する各スイッチのON/OFF動作を制御する。
【0030】
図4は、ノズル状態検査装置200の第1の動作例におけるスイッチ動作を説明するための図である。
図4では、測定対象ノズルに対応する画像データ及びスイッチ動作、測定対象以外のノズルに対応する画像データ及びスイッチ動作が示されている。
【0031】
図4では、「ライン」の欄は、画像F1の副走査方向に沿う各ラインの番号、例えば、「1」~「12」を示す。なお、「12」ライン以降のライン番号は省略する。「測定対象ノズル」の欄は、測定対象ノズルに対応する画像データを示す「画像データ」の欄、及び、「画像データ」に対応するスイッチ動作を示す「スイッチ動作」の欄を含む。「測定対象以外のノズル」の欄は、「測定対象ノズル」の欄と同様に、「画像データ」の欄、及び「スイッチ動作」の欄を含む。「画像データ」として、例えば、「D0」、「D1」、すなわち、
図3で説明した画像データD0、及び、画像データD1の識別子が示されている。「スイッチ動作」として、ON側にセットされていることを表す「ON」、及び、OFF側にセットされていることを表す「OFF」が示されている。
【0032】
図4に示すように、「1」ライン~「10」ラインでは、「測定対象ノズル」の「画像データ」は「D1」であるため、画像データD1に応じて、測定対象ノズルに対応する「スイッチ動作」は「ON」である。また、「1」ライン~「10」ラインでは、「測定対象以外のノズル」の「画像データ」は「D0」であるため、画像データD0に応じて、測定対象以外のノズルに対応する「スイッチ動作」は「OFF」である。なお、「1」ライン~「10」ラインは、測定対象ノズルの吐出動作を安定化させるため、測定前の準備として10ラインの予備吐出期間として設けられている。
【0033】
「11」ラインでは、「測定対象ノズル」の「画像データ」は「D0」になったため、画像データD0に応じて、測定対象ノズルに対応する「スイッチ動作」は「OFF」に切り替える。また、「11」ラインでは、「測定対象以外のノズル」の「画像データ」は「D0」であるため、画像データD0に応じて、測定対象以外のノズルに対応する「スイッチ動作」は「OFF」に維持する。「11」ラインにおいて、測定対象ノズルに対応するスイッチ動作が「ON」から「OFF」に切り替えたので、このタイミングで、測定対象ノズルに残響波形が発生し、その残響波形が信号受信部23により取得される。
【0034】
「12」ラインから最後のラインまでは、「測定対象ノズル」の「画像データ」は「D0」であるため、画像データD0に応じて、測定対象ノズルに対応する「スイッチ動作」は「OFF」に維持する。同様に、「12」ラインから最後のラインまでは、「測定対象以外のノズル」の「画像データ」も「D0」であるため、画像データD0に応じて、測定対象以外のノズルに対応する「スイッチ動作」も「OFF」状態に維持する。
【0035】
次に、ノズル状態検査装置200の第1の動作例において、測定対象ノズルの残響波形測定時、すなわち、
図4で説明した「11」ラインのタイミングにおける各スイッチの状態について説明する。
図5は、ノズル状態検査装置200の第1の動作例におけるノズル状態検査時のスイッチ状態を示す図である。
図5に示すノズル状態検査装置200は、
図2に示すものと同じであるため、重複説明は省略する。ここで、ノズル1は測定対象ノズルであり、ノズル2~ノズルnは測定対象以外のノズルであることを想定する。
【0036】
図5に示すように、ノズル1(測定対象ノズル)の残響波形測定時に、ノズル1に接続されるスイッチ32-1は、「OFF」にセットされている。ノズル2~ノズルn(測定対象以外のノズル)のそれぞれに接続されるスイッチ32-2~スイッチ32-nは、OFF側にセットされている。なお、スイッチ32-1の1つ前の状態、すなわち、
図4で説明した「10」ライン目のタイミングにおける状態は、「ON」にセットされた状態である。スイッチ32-2~スイッチ32-nの1つ前の状態は、「OFF」にセットされた状態である。
【0037】
次に、ノズル状態検査装置200の第1の動作例における問題について説明する。
図6は、ノズル状態検査装置200の第1の動作例における残響波形の減衰を説明するための図である。
図6Aは、測定対象ノズル(ノズル1)に発生した残響波形、すなわち、減衰されていない残響波形のイメージを示す図である。
図6Bは、ノズル状態検査装置200の第1の動作例で測定された測定対象ノズル(ノズル1)の残響波形のイメージを示す図である。
【0038】
図6Aに示す駆動波形W10は、駆動波形を表し、波形W20は、ノズル1に接続されるスイッチ32-1が、「ON」から「OFF」に切り替えられた際に、ノズル1に発生した残響波形を表す。
図6Aに示すように、駆動波形W10がOFFにされた後、残響波形(波形W20)が発生する。
【0039】
図6Bに示す駆動波形W10は、
図6Aに示す駆動波形W10と同じであるため、重複説明を省略する。
図6Bに示す波形W21は、ノズル状態検査装置200の第1の動作例において測定されたノズル1の残響波形を表す。
図6Aに示す波形W20と、
図6Bに示す波形W21とを比較して分かるように、波形W21は、波形W20が減衰したものである。これは、ノズル2~ノズルn(測定対象以外のノズル)のそれぞれに接続されるスイッチ32-2~スイッチ32-nがOFF側にセットされ、電気的にコンデンサと等価である各ノズルが並列に接続されることにより大きな容量が形成されるためである。この大きな容量により、測定対象ノズルにおける残響波形の減衰問題が発生する。この問題を解決する方法として、残響波形測定時に、スイッチ32-2~スイッチ32-nをONにセットすることが考えられる。このような動作は、第2の動作例として説明する。
【0040】
次に、
図7~
図10を用いて、ノズル状態検査装置200の第2の動作例について詳述する。
図7は、ノズル状態検査装置200において利用される画像データの例2を示す図である。
図7に示す主走査方向及び副走査方向は、
図3で説明した各方向と同じであるため、重複説明を省略する。また、
図7に示す画像F2の黒い画像部分及びそれに対応する画像データD1、並びに、白い画像部分及びそれに対応する画像データD0も、
図3で説明したこれらと同じであるため、重複説明を省略する。
【0041】
図7と
図3を比較して分かるように、測定対象ノズルの駆動期間(1ライン~10ライン)において、測定対象以外のノズルの位置に対応する画像データが、
図3と同じであり、画像データD0である。すなわち、この期間において、各スイッチは、第1の動作例と同様に動作する。
【0042】
残響波形測定時(11ライン目)に、測定対象ノズルに対応する画像データが画像データD1から画像データD0に変更される。すなわち、測定対象ノズルが駆動期間から駆動されない期間に切り替え、測定対象ノズルに接続するスイッチがONからOFFに切り替える。一方、測定対象以外のノズルの位置に対応する画像データが、
図7に示すように、第1の動作例における画像データD0と異なり、第2の動作例では、画像データD0から画像データD1に変更される。すなわち、残響波形測定時(11ライン目)に、測定対象以外のノズルに接続するスイッチがOFFからONに切り替え、測定対象以外のノズルが駆動される。
【0043】
11ライン目以降の期間には、測定対象ノズルに対応する画像データが画像データD0であり、測定対象ノズルに接続するスイッチがOFFに維持される。測定対象以外のノズルの位置に対応する画像データが画像データD1であり、測定対象以外のノズルが、画像データD1を印字するために吐出動作するので、測定対象以外のノズルに接続するスイッチがONに維持される。
【0044】
図8は、ノズル状態検査装置200の第2の動作例におけるスイッチ動作を説明するための図である。
図8に示すテーブルの構成は、
図4に示すテーブルの構成と同じであるため、重複説明は省略する。
【0045】
図8に示すように、「1」ライン~「10」ラインにおいて、「測定対象ノズル」の「画像データ」及び「スイッチ動作」、「測定対象以外のノズル」の「画像データ」及び「スイッチ動作」は、
図4に示すものと同じである。
【0046】
「11」ライン(残響波形測定時)では、「測定対象ノズル」の「画像データ」は「D0」になったため、画像データD0に応じて、測定対象ノズルに対応する「スイッチ動作」は「OFF」に切り替える。また、「11」ラインでは、「測定対象以外のノズル」の「画像データ」は「D1」になったため、画像データD1に応じて、測定対象以外のノズルに対応する「スイッチ動作」は「ON」に切り替える。
【0047】
「12」ラインから最後のラインまでは、「測定対象ノズル」の「画像データ」は「D0」であるため、画像データD0に応じて、測定対象ノズルに対応する「スイッチ動作」は「OFF」に維持する。また、「12」ラインから最後のラインまでは、「測定対象以外のノズル」の「画像データ」は「D1」であるため、画像データD1に応じて、測定対象以外のノズルに対応する「スイッチ動作」は「ON」状態に維持する。
【0048】
次に、第2の動作例において、測定対象ノズルの残響波形測定時、すなわち、「11」ラインのタイミングに、ノズル状態検査装置200の各スイッチの状態について説明する。
図9は、ノズル状態検査装置200の第2の動作例におけるノズル状態検査時のスイッチ状態を示す図である。
図9に示すノズル状態検査装置200は、
図2に示すものと同じであるため、重複説明は省略する。また、第1の動作例と同様に、ノズル1は測定対象ノズルであり、ノズル2~ノズルnは測定対象以外のノズルであることを想定する。
【0049】
図9に示すように、ノズル1(測定対象ノズル)の残響波形測定時に、ノズル1に接続するスイッチ32-1は、「OFF」にセットされている。ノズル2~ノズルn(測定対象以外のノズル)のそれぞれに接続するスイッチ32-2~スイッチ32-nは、「ON」にセットされている。なお、スイッチ32-1の1つ前の状態、すなわち、10ライン目のタイミングにおける状態は、「ON」にセットされた状態である。スイッチ32-2~スイッチ32-nの1つ前の状態は、「OFF」にセットされた状態である。
【0050】
次に、ノズル状態検査装置200の第2の動作例における問題について説明する。
図10は、ノズル状態検査装置200の第2の動作例におけるクロストークを説明するための図である。
図10には、10ライン目~12ライン目の期間の駆動出力W10、測定対象ノズルにおける残響波形である波形W20、及び測定対象以外のノズルにおける波形W30が上から順に示されている。
【0051】
駆動波形W10は、常に、画像F2のライン毎に出力されるので、
図10に示すように、10ライン目~12ライン目のそれぞれに対応する駆動波形W10は同じである。すなわち、駆動波形W10の駆動周期は、インクジェットヘッド30が画像F2の1ラインを走査する時間と同じである。
【0052】
測定対象ノズルにおける波形W20は、10ライン目において、駆動波形W10と同じである。これは、10ライン目において、測定対象ノズルに対応する画像データが画像データD1であり、測定対象ノズルに接続するスイッチがONにセットされているためである。11ライン目及び12ライン目において、測定対象ノズルに対応する画像データが画像データD0であり、測定対象ノズルが駆動期間から駆動されない期間に切り替え、測定対象ノズルに接続するスイッチがONからOFFに切り替えられた(信号受信部23に接続される)。このため、この期間において、測定対象ノズルに残響波形(波形W20)が発生する。
【0053】
測定対象以外のノズルには、10ライン目において、波形がない。これは、10ライン目において、測定対象以外のノズルに対応する画像データが画像データD0であり、測定対象以外のノズルが駆動されなく、対応するスイッチがOFFに維持されている(信号受信部23に接続される)ためである。11ライン目及び12ライン目において、測定対象以外のノズルにおける波形W30は、駆動波形W10と同じである。これは、11ライン目及び12ライン目において、測定対象以外のノズルに対応する画像データが画像データD1であり、測定対象以外のノズルが駆動され、それに接続するスイッチがONにセットされているためである。
【0054】
図10に示すように、測定対象ノズルの残響波形測定時、すなわち、11ライン目において、測定対象以外のノズルが駆動されているため、測定対象以外のノズルにおける駆動波形と測定対象ノズルにおける残響波形とのクロストークが発生する。残響波形(波形W20)は、微弱な信号であるため、クロストークにより影響されやすい。
【0055】
<第1実施形態>
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照して説明する。本発明は、上述したノズル状態検査装置200の第1の動作例及び第2の動作例における問題を解決するためになされたものである。本実施形態に係るノズル状態検査装置500は、
図2に示すノズル状態検査装置200の各構成部を有する。以下では、ノズル状態検査装置500とノズル状態検査装置200と相違する構成及び動作のみを説明し、ノズル状態検査装置200と同じ構成及び動作の説明は省略する。
【0056】
ノズル状態検査装置500では、駆動波形生成部212は、後述の第1駆動出力(後述の
図12に示すW51参照)と後述の第2駆動出力と(後述の
図12に示すW52参照)を含む駆動波形を生成して、インクジェットヘッド30の駆動IC32に出力して各ノズルに印加する。
【0057】
また、ノズル状態検査装置500では、データ出力部211、駆動波形生成部212、及び残響波形検知部213を有するヘッド制御部21、並びに、信号受信部23(
図2参照)を「検査部」と総称する。検査部は、駆動波形に応じて、各ノズルに駆動波形を印加するか否かを制御し、測定対象ノズルに発生する残響波形を取得して異常検査(解析)を行うノズル状態検査処理を実行する。なお、検査部におけるノズル状態検査処理について、後述の
図18で詳述する。
【0058】
また、インクジェットヘッド30が有する複数のノズルのそれぞれに接続する各2チャネルスイッチは、検査部の制御により、駆動波形生成部212、及び、検査部が有する残響波形を取得する信号受信部23のいずれかをノズルに接続させるように動作する。
【0059】
まず、本実施形態に係るノズル状態検査装置500において利用される画像データについて説明する。
図11は、本実施形態に係るノズル状態検査装置500において利用される画像データの例を示す図である。
図11に示す主走査方向及び副走査方向は、
図3で説明した各方向と同じであるため、重複説明を省略する。
【0060】
図11に示す画像F5は、画像データD1(第1画像データ)、画像データD0(第2画像データ)、及び画像データD2(第3画像データ)を含む。第1画像データ(画像データD1)は、測定対象ノズルに対応する画像データである。第2画像データ(画像データD0)は、画像F5の中、印字のない画像部分(白い画像部分)の画像データである。第3画像データ(画像データD2)は、測定対象以外のノズルに対応する画像データである。
図11では、例として、第1画像データ(画像データD1)は、副走査方向において長さが11ラインの黒い画像部分の画像データである。第3画像データ(画像データD2)は、10ライン以降における灰色の画像部分の画像データである。なお、画像F5は、予め後述の記憶装置504等に登録されたものである。また、第1画像データ及び第3画像データのそれぞれの画像は、黒い画像及び灰色の画像に限定されず、第1画像データ及び第3画像データを区別できる画像であれば、任意色の画像であってもよい。
【0061】
ノズル状態検査装置500の検査部は、予め登録された画像F5に含まれる画像データの種類に応じて、各ノズルに駆動波形を印加するか否かの制御として、各2チャネルスイッチの動作を制御する。具体的には、検査部は、第1画像データが測定対象ノズルに転送され、第2画像データが測定対象以外のノズルに転送された場合、駆動波形生成部212を測定対象ノズルに接続させ、信号受信部23を測定対象以外のノズルに接続させるように各2チャネルスイッチの動作を制御する。
【0062】
また、検査部は、第1画像データが測定対象ノズルに転送され、第3画像データが測定対象以外のノズルに転送された場合、第1駆動出力が出力される際、駆動波形生成部212を測定対象ノズルに接続させ、信号受信部23を測定対象以外のノズルに接続させるように各2チャネルスイッチの動作を制御する。また、検査部は、第1画像データが測定対象ノズルに転送され、第3画像データが測定対象以外のノズルに転送された場合、第2駆動出力が出力される際、信号受信部23を測定対象ノズルに接続させ、駆動波形生成部212を測定対象以外のノズルに接続させるように各2チャネルスイッチの動作を制御する。
【0063】
次に、ノズル状態検査装置500において利用される駆動波形について説明する。
図12は、本実施形態に係るノズル状態検査装置500において利用される駆動波形の一例を示す図である。
図12に示す駆動波形W50は、駆動波形生成部212により生成され、画像F5のライン毎に駆動回路22により各ノズルに印加される。駆動波形W50は、第1駆動出力である一発目の駆動出力W51と、第2駆動出力である二発目の駆動出力W52とを有する。第1駆動出力(駆動出力W51)は、ノズルに残響波形を起こすことが可能な電圧に対応し、第2駆動出力(駆動出力W52)は、ノズルに残響波形を起こすことが可能な電圧より小さい電圧(例えば、0ボルト)に対応する。
【0064】
インクジェットヘッド30の駆動IC32(
図2参照)は、ヘッド制御部21のデータ出力部211から入力した画像F5に含まれる各種画像データ及び波形切り替え信号P50に応じて、各スイッチ(32-1~32-n)のON/OFF切り替えを制御する。
図13は、本実施形態に係るノズル状態検査装置500における、画像データと波形切り替え信号P50と駆動波形W50との対応関係を説明するための図である。
【0065】
図13には、画像データ、波形切り替え信号P50及び駆動波形W50が上から順に示されている。印刷時に画像データの各ラインの転送期間は、駆動波形W50の駆動周期として設定されるので、
図13に示す駆動周期は、画像データの各ラインに対応している。1ライン目の画像データの転送期間には、波形切り替え信号P50及び駆動波形W50は出力されない。2ライン目の画像データの転送期間には、1ライン目の画像データを印字するための駆動波形W50が出力される。同様に3ライン目の画像データの転送期間には、2ライン目の画像データを印字するための駆動波形W50が出力される。なお、
図13には、1ライン~3ラインの画像データ、画像データに対応する波形切り替え信号P50及び駆動波形W50のみが示され、4ライン目以降の画像データ、波形切り替え信号P50及び駆動波形W50は、2ライン及び3ラインと同様であるため、図示及び説明は省略する。
【0066】
波形切り替え信号P50は、パルス信号であり、一発目の駆動出力W51を出力させるための波形切り替え信号P51、及び、二発目の駆動出力W52を出力させるための波形切り替え信号P52を有する。波形切り替え信号P50は、駆動波形W50と同様に、画像データのライン毎に、すなわち、駆動周期毎に出力される。駆動波形生成部212は、波形切り替え信号P51を検知したら、一発目の駆動出力W51を出力し、波形切り替え信号P52を検知したら、二発目の駆動出力W52を出力する。
【0067】
次に、検査部の制御指令、すなわち、画像F5に含まれる各種画像データ及び波形切り替え信号P52に基づく各スイッチの動作について説明する。なお、検査部は、各スイッチの動作を制御する指令(各種画像データ及び波形切り替え信号P52)をインクジェットヘッド30のスイッチ制御部31に出力する。そして、スイッチ制御部31は、検査部の制御指令に従い、画像データD1の主走査方向における位置に対応するノズル(測定対象ノズル)に接続するスイッチに対して、波形切り替え信号P51を入力した際、ONにセットし、波形切り替え信号P52を入力した際、OFFにセットする。また、スイッチ制御部31は、画像データD2の主走査方向における位置に対応するノズル(測定対象以外のノズル)に接続するスイッチに対して、波形切り替え信号P51を入力した場合、OFFにセットし、波形切り替え信号P52を入力した場合、ONにセットする。また、スイッチ制御部31は、画像データD0の主走査方向における位置に対応するノズルに接続するスイッチをOFFにセットする。
【0068】
図14は、本実施形態に係るノズル状態検査装置500におけるスイッチ動作を説明するための図である。
図14に示すテーブルの構成は、
図4に示すテーブルの構成と同じであるため、重複説明は省略する。
【0069】
図14に示すように、「1」ライン~「10」ラインにおいて、「測定対象ノズル」の「画像データ」は「D1」である。この期間において、測定対象ノズルに対応するスイッチの「スイッチ動作」は、波形切り替え信号P51が入力された際、ONにセットし、波形切り替え信号P52が入力された際、OFFにセットする。すなわち、この期間において、測定対象ノズルに対応するスイッチ動作は、波形切り替え信号P50に応じて、ONからOFFに切り替える(図示の「ON→OFF」)動作である。一方、この期間において、「測定対象以外のノズル」の「画像データ」は「D0」である。この期間において、測定対象以外のノズルに対応するスイッチの「スイッチ動作」は、OFFに維持される(図示の「OFF→OFF」)動作である。
【0070】
「11」ライン(残響波形測定時)では、「測定対象ノズル」の「画像データ」は「D1」であるため、「測定対象ノズル」に対応するスイッチの「スイッチ状態」は、「1」ライン~「10」ラインの「スイッチ状態」と同様であり、「ON→OFF」である。また、「11」ラインでは、「測定対象以外のノズル」の「画像データ」は「D2」であり、波形切り替え信号P51が入力された際、対応のスイッチがOFFにセットされ、波形切り替え信号P52が入力された際、対応のスイッチがONにセットされる。このため、「測定対象以外のノズル」に対応するスイッチの「スイッチ状態」は「OFF→ON」である。
【0071】
「12」ラインから最後のラインまでは、「測定対象ノズル」の「画像データ」は「D0」である。この期間において、測定対象ノズルに対応するスイッチの「スイッチ動作」は、OFFに維持される(図示の「OFF→OFF」)動作である。また、「12」ラインから最後のラインまでは、「測定対象以外のノズル」の「画像データ」は「D2」であるため、この期間において、「測定対象以外のノズル」に対応するスイッチの「スイッチ状態」は、「11」ラインと同様であり、「OFF→ON」である。
【0072】
次に、測定対象ノズルの残響波形測定時、すなわち、「11」ラインのタイミングに、ノズル状態検査装置500の各スイッチの状態について説明する。
図15は、ノズル状態検査装置500のノズル状態検査時のスイッチ状態を示す図である。
図15に示すノズル状態検査装置500は、
図2に示すものと同じであるため、重複説明は省略する。ここで、ノズル1を測定対象ノズルとし、ノズル2~ノズルnを測定対象以外のノズルとする。
【0073】
図15に示すように、ノズル1(測定対象ノズル)の残響波形測定時に、ノズル1に接続するスイッチ32-1は、ONからOFFに切り替える。ノズル2~ノズルn(測定対象以外のノズル)のそれぞれに接続するスイッチ32-2~スイッチ32-nは、OFFからONに切り替える。
【0074】
次に、
図15に示すノズル状態検査装置500の残響波形測定時の動作状態において、測定対象ノズル及び測定対象以外のノズルのそれぞれに印加される信号波形について説明する。
図16は、本実施形態に係るノズル状態検査装置500において、残響波形測定時にノズルに印加される信号波形を説明するための図である。
図16では、説明の便宜上、1つのノズル及びそれに接続するスイッチのみが示されている。スイッチのON側入力端子には、一発目の駆動出力W51と二発目の駆動出力W52とを有する駆動波形W50が入力される。スイッチのOFF側入力端子は、ノズル状態検査装置500の信号受信部23に接続する。
【0075】
まず、測定対象ノズルについて説明する。
図16に示すように、残響波形測定時(
図14の「11」ライン参照)、一発目の駆動出力W51が入力される際、スイッチはONにセットされ、測定対象ノズルに駆動出力W51が印加される。二発目の駆動出力W52が入力される際、スイッチはONからOFFに切り替えられ、測定対象ノズルに残響波形が発生し、その残響波形は、OFF側に接続される信号受信部23により取得される。
【0076】
次に、測定対象以外のノズルについて説明する。
図16に示すように、残響波形測定時、一発目の駆動出力W51が入力される際、スイッチはOFFにセットされ、すなわち、信号受信部23に接続されるため、測定対象以外のノズルには、駆動出力W51が印加されない。二発目の駆動出力W52が入力される際、スイッチはOFFからONに切り替えられ、測定対象以外のノズルには、0Vの駆動出力W52が印加される。
【0077】
次に、残響波形測定時に、ノズル状態検査装置500の信号受信部23の受信信号について説明する。
図17は、本実施形態に係るノズル状態検査装置500の信号受信部23の受信信号を説明するための図である。
図17には、10ライン目~12ライン目の駆動波形W50、測定対象ノズルにおける波形W60、及び測定対象以外のノズルにおける波形W70が上から順に示されている。駆動波形W50は、常に、画像F5のライン毎に出力されるので、10ライン目~12ライン目のそれぞれにおける駆動波形W50は同じである。
【0078】
10ライン目において、一発目の駆動出力W51が入力される際、測定対象ノズルに接続するスイッチはONにセットされるため、測定対象ノズルにおける波形W60は、駆動出力W51となる。二発目の駆動出力W52が入力される際、測定対象ノズルに接続するスイッチはOFFに切り替え、信号受信部23に接続される。なお、10ライン目は測定対象ノズルの残響波形を測定するタイミングでないため、測定対象ノズルに接続するスイッチが信号受信部23に接続されても、信号受信部23は信号取得処理を行わない。一方、10ライン目において、一発目の駆動出力W51及び二発目の駆動出力W52が入力される際、測定対象以外のノズルに接続するスイッチはOFFにセットされ、信号受信部23に接続される。
【0079】
11ライン目において、一発目の駆動出力W51が入力される際、測定対象ノズルに接続するスイッチはONにセットされるため、測定対象ノズルにおける波形W60は、駆動出力W51となる。二発目の駆動出力W52が入力される際、測定対象ノズルに接続するスイッチはOFFに切り替え、信号受信部23に接続される。なお、11ライン目は測定対象ノズルの残響波形を測定するタイミングであるため、信号受信部23は測定対象ノズルの残響波形を取得して、ヘッド制御部21の残響波形検知部213に出力する。一方、11ライン目において、一発目の駆動出力W51が入力される際、測定対象以外のノズルに接続するスイッチはOFFにセットされ、信号受信部23に接続される。二発目の駆動出力W52が入力される際、測定対象以外のノズルに接続するスイッチはONに切り替え、測定対象以外のノズルにおける波形W70は、0Vの駆動出力W52となる。
【0080】
12ライン目において、一発目の駆動出力W51が入力される際、測定対象ノズルに接続するスイッチはOFFにセットされるため、測定対象ノズルに接続するスイッチは、信号受信部23に接続される。二発目の駆動出力W52が入力される際、測定対象ノズルに接続するスイッチはOFFに維持され、信号受信部23に接続される。それゆえ、12ライン目では、信号受信部23は、続いて測定対象ノズルの残響波形を取得して、ヘッド制御部21の残響波形検知部213に出力する。一方、12ライン目において、一発目の駆動出力W51が入力される際、測定対象以外のノズルに接続するスイッチはOFFにセットされ、信号受信部23に接続される。二発目の駆動出力W52が入力される際、測定対象以外のノズルに接続するスイッチはONに切り替え、測定対象以外のノズルにおける波形W70は、0Vの駆動出力W52となる。
【0081】
上述したように、ノズル状態検査装置500において、測定対象ノズルの残響波形測定時に、すなわち、
図17に示す11ライン目において、二発目の駆動出力W52が入力される際、測定対象以外のノズルに接続する各スイッチは、ONにセットされる。測定対象以外のノズルが並列に接続されないので、ノズルの並列接続で形成される大きな容量による、測定対象ノズルの残響波形の減衰は発生しない。また、測定対象ノズルの残響波形測定時に、測定対象以外のノズルに接続する各スイッチはONにセットされるが、測定対象以外のノズルに印加される駆動波形は0Vの駆動出力W52であるため、測定対象以外のノズルが駆動されず、クロストークも発生しない。
【0082】
[ノズル状態検査処理の手順]
次に、ノズル状態検査装置500の検査部におけるノズル状態検査処理の手順について説明する。
図18は、本実施形態に係るノズル状態検査装置500の検査部におけるノズル状態検査処理の手順を示すフローチャートである。本実施形態では、検査部は、インクジェットヘッド30が有する複数のノズル(例えばN個のノズル)を順番に測定対象として残響波形を取得して異常検査(解析)を行う。なお、本発明は、これに限定されず、例えば、ノズル1~ノズルNの一部を測定対象とし、その中のノズルを1つずつ検査してもよい。以下に説明する処理は、ノズル状態検査装置500が設置されるインクジェット記録装置がノズル検査モードで起動されると開始する。
【0083】
まず、検査部は、測定対象ノズルの番号mを1に設定する(ステップS10)。
【0084】
次いで、検査部のデータ出力部211は、測定対象ノズルmに画像データD1を転送し、測定対象以外のノズルに画像データD0を転送する(ステップS11)。この処理において、データ出力部211は、測定対象ノズルmへの画像データD1(
図11参照)及び測定対象以外のノズルへの画像データD0(
図11参照)をインクジェットヘッド30のスイッチ制御部31に出力する。そして、スイッチ制御部31は、測定対象ノズルmに接続するスイッチ32-mに画像データD1を出力し、測定対象以外のノズルに接続するスイッチに画像データD0を出力する。
【0085】
次いで、データ出力部211は、波形切り替え信号P50(
図13参照)をインクジェットヘッド30のスイッチ制御部31に出力する(ステップS12)。
【0086】
次いで、検査部の駆動波形生成部212は、駆動波形W50(
図13参照)を生成して駆動回路22に出力する(ステップS13)。また、この処理では、駆動回路22は、駆動波形W50をインクジェットヘッド30の駆動IC32のON側、すなわち、各ノズルに接続する各スイッチのON側に印加する。そして、インクジェットヘッド30のスイッチ制御部31は、波形切り替え信号P50及び画像データD1に応じて、測定対象ノズルmに接続するスイッチ32-mのON/OFF動作を制御する(
図14に示すライン「0」~「10」ライン参照)。また、スイッチ制御部31は、画像データD0に応じて、測定対象以外のノズルに接続するスイッチをOFFにセットする。なお、ステップS11~ステップS13の処理は、画像データの所定ライン数(例えば、
図14に示す「10」ライン)まで実行される。この所定ライン数は、「10」に限定されず、測定対象ノズルmの吐出動作を安定させるライン数であれば、任意のライン数であってもよい。
【0087】
次いで、データ出力部211は、測定対象ノズルmに画像データD1を転送し、測定対象以外のノズルに画像データD2を転送する(ステップS14)。この処理において、データ出力部211は、測定対象ノズルmへの画像データD1(
図11参照)及び測定対象以外のノズルへの画像データD2(
図11参照)をインクジェットヘッド30のスイッチ制御部31に出力する。そして、スイッチ制御部31は、測定対象ノズルmに接続するスイッチ32-mに画像データD1を出力し、測定対象以外のノズルに接続するスイッチに画像データD2を出力する。
【0088】
次いで、データ出力部211は、一発目の波形切り替え信号P51(
図13参照)をインクジェットヘッド30のスイッチ制御部31に出力する(ステップS15)。
【0089】
次いで、検査部の駆動波形生成部212は、一発目の駆動信号、すなわち、駆動出力W51(
図12参照)を出力する(ステップS16)。この処理では、駆動回路22は、駆動波形生成部212から一発目の駆動出力W51を入力して、インクジェットヘッド30の駆動IC32のON側に印加する。そして、スイッチ制御部31は、一発目の波形切り替え信号P51及び画像データD1に応じて、測定対象ノズルmに接続するスイッチ32-mをONにセットする。また、スイッチ制御部31は、測定対象以外のノズルに接続するスイッチをOFFにセットする。
【0090】
次いで、データ出力部211は、二発目の波形切り替え信号P52(
図13参照)をインクジェットヘッド30のスイッチ制御部31に出力する(ステップS17)。
【0091】
次いで、検査部の駆動波形生成部212は、二発目の駆動信号、すなわち、駆動出力W52(
図12参照)を出力する(ステップS18)。この処理では、駆動回路22は、駆動波形生成部212から二発目の駆動出力W52を入力して、インクジェットヘッド30の駆動IC32のON側に印加する。そして、スイッチ制御部31は、二発目の波形切り替え信号P52に応じて、測定対象ノズルmに接続するスイッチ32-mをONからOFFに切り替える(
図15参照)。また、スイッチ制御部31は、二発目の波形切り替え信号P52及び画像データD2に応じて、測定対象以外のノズルに接続するスイッチをOFFからONに切り替える(
図15参照)。
【0092】
次いで、検査部の信号受信部23は、接続された測定対象ノズルmから残響波形を取得して検査部の残響波形検知部213に出力する(ステップS19)。また、この処理において、残響波形検知部213は、信号受信部23から測定対象ノズルmの残響波形を入力してノズル状態に関する各種解析、すなわち、異常検査を行う。
【0093】
次いで、検査部は、全てのノズルに対して処理完了したか否かを判定する(ステップS20)。この処理において、測定対象ノズルの番号mが全ノズルの数「N」である場合、ヘッド制御部21は、全てのノズルに対して処理完了したと判定し、ステップS20はYES判定となる。また、測定対象ノズルの番号mが全ノズルの数「N」でない場合、ヘッド制御部21は、全てのノズルに対して処理完了していないと判定し、ステップS20はNO判定となる。
【0094】
ステップS20の処理において、ヘッド制御部21は、全てのノズルに対して処理完了していないと判定した場合(ステップS20のNO判定)、測定対象ノズルの番号mに「1」を加算する(ステップS21)。
【0095】
次いで、ヘッド制御部21は、ステップS11の処理に戻して、ステップS11~ステップS20の処理を繰り返して実行する。
【0096】
一方、ステップS20の処理において、ヘッド制御部21は、全てのノズルに対して処理完了したと判定した場合(ステップS20のYES判定)、ノズル状態検査処理が終了する。
【0097】
なお、上記説明では、ノズル状態検査装置500の検査部がFPGAで構成される駆動ボード20に配置される例、すなわち、検査部がFPGAで構成される例を説明したが、本発明はこれに限定されない。ノズル状態検査装置500の検査部は、例えば、
図19に示す情報処理装置で構成されてもよい。
【0098】
図19に示す情報処理装置は、CPU501(Central Processing Unit)と、ROM502(Read Only Memory)と、RAM503(Random Access Memory)と、記憶装置504と、通信インターフェース505とを備える。CPU501、ROM502、RAM503、記憶装置504及び通信インターフェース505は、バス506により、互いに情報データの送受信ができるように接続される。
【0099】
CPU501は、検査部の各構成部の動作を制御する。例えば、CPU501は、
図18に示す検査部におけるノズル状態検査処理を制御する。なお、CPU501に代えてGPU(Graphics Processing Unit)を用いてもよく、CPU501とGPU(Graphics Processing Unit)を併用してもよい。
【0100】
ROM502は、例えば不揮発性メモリ等の記憶媒体で構成され、CPU501が実行及び参照するプログラムやデータ等を記憶する。
【0101】
RAM503は、例えば揮発性メモリ等の記憶媒体で構成され、CPU501が行う各処理に必要な情報(データ)を一時的に記憶する。
【0102】
記憶装置504は、CPU501によって実行されるプログラムを格納したコンピューター読取可能な非一過性の記録媒体で構成され、例えばHDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置で構成される。記憶装置504は、CPU501が各部を制御するためのプログラム、OS(Operating System)、コントローラー等のプログラム、データを記憶する。また、記憶装置504は、予め用意された画像F5、波形切り替え信号P50のパターン、駆動波形W50のパターン等を記憶する。なお、記憶装置504に記憶されるプログラム、データの一部は、ROM502に記憶されてもよい。また、CPU501によって実行されるプログラムを格納したコンピューター読取可能な非一過性の記録媒体は、HDDに限定されず、例えば、SSD(Solid State Drive)、CD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM等の記録媒体であってもよい。
【0103】
通信インターフェース505は、CPU501の制御により、インクジェットヘッド30(
図2参照)との情報データの送受信を行う。
【0104】
[効果]
上述したように、本実施形態に係るノズル状態検査装置500は、測定対象ノズルの残響波形測定時に、測定対象以外のノズルに接続する2チャネルスイッチをONにセットし、測定対象以外のノズルに0Vの駆動波形(二発目の駆動出力W52)を印加する。このため、ノズル状態検査装置500では、多チャネルのスイッチが利用されず、測定対象以外のノズルの並列接続により大きな容量を形成することはない。また、ノズル状態検査装置500では、測定対象以外のノズルに接続する2チャネルスイッチがONにセットされるが、駆動電圧が0Vであるため、クロストークは発生しない。それゆえ、本実施形態に係るノズル状態検査装置500によれば、安価な構成で、高精度にノズルの残響波形を取得してノズル状態を検査することができる。
【0105】
<第2実施形態>
ここで、本発明の第2実施形態に係るノズル状態検査装置について説明する。第2実施形態に係るノズル状態検査装置の構成は第1実施形態に係るノズル状態検査装置500と同じであるため、同じ符号を利用し、構成の重複説明を省略する。
【0106】
第1実施形態と異なり、本実施形態では、ノズル状態検査装置500が設置されるインクジェット記録装置の印刷時に、検査部の駆動波形生成部212は、第1駆動出力と第2駆動出力の組み合わせにより複数期間で構成される複数種類の駆動波形のパターンを生成して出力し、ノズルが吐出する液滴の大きさをコントロールする。なお、本実施形態において、ノズル状態検査装置500が設置されるインクジェット記録装置がノズル状態検査モードで動作する場合、ノズル状態検査装置500におけるノズル状態検査処理は、
図18で説明したこの処理と同じである。
【0107】
図20は、本実施形態に係るノズル状態検査装置500において利用される駆動波形のパターンを示す図である。
図20では、説明の便宜上、ノズル1及びそれに接続するスイッチ32-1のみが示されている。スイッチ32-1のON側の入力端子には、一発目(第1期間)の駆動波形W81、二発目(第2期間)の駆動波形W82及び三発目(第3期間)の駆動波形W83の複数期間で構成される駆動波形W80が入力される。
【0108】
一発目の駆動出力W81が入力される際、スイッチ32-1をONにセットし、二発目の駆動出力W82及び三発目の駆動出力W83が入力される際、スイッチ32-1をOFFにセットすること(第1のパターン)により、ノズル1に一発目の駆動出力W81のみが印加される。また、一発目の駆動出力W81及び二発目の駆動出力W82が入力される際、スイッチ32-1をONにセットし、三発目の駆動出力W83が入力される際、スイッチ32-1をOFFにセットすること(第2のパターン)により、ノズル1に一発目の駆動出力W81及び二発目の駆動出力W82が印加される。また、一発目の駆動出力W81、二発目の駆動出力W82及び三発目の駆動出力W83が入力される際、スイッチ32-1をONにセットすること(第3のパターン)により、ノズル1に一発目の駆動出力W81、二発目の駆動出力W82及び三発目の駆動出力W83が印加される。
【0109】
次に、駆動波形のパターンとノズルの吐出液滴の大きさとの対応関係について説明する。
図21は、本実施形態に係るノズル状態検査装置500において、駆動波形のパターンとノズルの吐出液滴の大きさとの対応関係を説明するための図である。
図21には、一発(第1のパターン)~三発(第3のパターン)の駆動波形がノズルに印加された場合の、駆動波形、吐出液滴数、及び形成されるドットの大きさ(ドット径)が上から順に示されている。
【0110】
図21に示すように、一発の駆動出力(駆動出力W81)がノズルに印加された場合、ノズルの吐出液滴数は1つとなり、形成されるドットの大きさが一番小さい。二発の駆動出力(駆動出力W81及び駆動出力W82)がノズルに印加された場合、ノズルの吐出液滴数は2つとなり、形成されるドットの大きさが一発の駆動波形がノズルに印加された場合より大きい。三発の駆動出力(駆動出力W81、駆動出力W82及び駆動出力W83)がノズルに印加された場合、ノズルの吐出液滴数は3つとなり、形成されるドットの大きさが二発の駆動出力がノズルに印加された場合より更に大きい。
【0111】
なお、本実施形態では、ノズル状態検査装置500において、3つの期間有する駆動波形W80を利用して、ノズルが吐出する液体の液滴大きさをコントロールする動作例を説明したが、本発明はこれに限定されない。ノズルが吐出する液滴大きさの変化に対する要求に応じて、任意期間数を有する駆動波形を利用してもよい。
【0112】
[効果]
上述したように、本実施形態に係るノズル状態検査装置500は、印刷モードにおいて、複数期間の駆動波形をノズルに印加する際、印加する駆動波形の期間数を制御することにより、ノズルの吐出液滴数をコントロールして、形成されるドットの大きさを変化させることができる。
【0113】
なお、本発明は上述した各実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りその他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。
例えば、上述した各実施形態は本発明を分かりやすく説明するためにノズル状態検査装置の構成を詳細かつ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、ここで説明した実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることは可能であり、さらにはある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0114】
1,2,n…ノズル、20…駆動ボード、21…ヘッド制御部、22…駆動回路、23…信号受信部、30…インクジェットヘッド、31…スイッチ制御部、32…駆動IC、211…データ出力部、212…駆動波形生成部、213…残響波形検知部、32-1,32-2,32-n…スイッチ、500…ノズル状態検査装置