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特開2024-180133冷凍食品セット、及び冷凍食品セットの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180133
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】冷凍食品セット、及び冷凍食品セットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/34 20060101AFI20241219BHJP
   A23L 3/36 20060101ALI20241219BHJP
   A23L 3/365 20060101ALI20241219BHJP
   A23L 5/10 20160101ALI20241219BHJP
   A23L 7/109 20160101ALN20241219BHJP
【FI】
B65D81/34 U
B65D81/34 W
A23L3/36 A
A23L3/365 A
A23L5/10 C
A23L5/10 F
A23L7/109 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099606
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】505126610
【氏名又は名称】株式会社ニチレイフーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100130719
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 卓
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】酒井 信一
(72)【発明者】
【氏名】富本 文
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 卓史
【テーマコード(参考)】
3E013
4B022
4B035
4B046
【Fターム(参考)】
3E013BA24
3E013BA28
3E013BB06
3E013BC04
3E013BD01
3E013BD13
3E013BE01
3E013BF73
3E013BF77
3E013BG12
4B022LA04
4B022LB03
4B022LJ06
4B022LQ07
4B022LT10
4B022LT11
4B035LC05
4B035LC12
4B035LE11
4B035LE16
4B035LG12
4B035LG21
4B035LG32
4B035LG42
4B035LK13
4B035LP16
4B035LP43
4B035LP46
4B046LA05
4B046LB10
4B046LC11
4B046LE19
4B046LP41
4B046LP69
(57)【要約】
【課題】複数の容器を備える冷凍食品セットを電子レンジで加熱する際に、食材の加熱ムラの発生を防止するのに有利な技術を提供する。
【解決手段】冷凍食品セットは、第1の固形具材含有食材が収容される第1容器と、第1容器に重ねられ、上方に向かって突出するテーパ凸部を有し、第2の固形具材含有食材が収容される第2容器と、を備え、テーパ凸部は、下方に向かうに従って徐々に広がる傾斜面を有する。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の固形具材含有食材が収容される第1容器と、
第1容器に重ねられ、上方に向かって突出するテーパ凸部を有し、第2の固形具材含有食材が収容される第2容器と、を備え、
テーパ凸部は、下方に向かうに従って徐々に広がる傾斜面を有する、冷凍食品セット。
【請求項2】
前記テーパ凸部における傾斜面は、放射方向に延びる凹面部を有する、請求項1に記載の冷凍食品セット。
【請求項3】
前記テーパ凸部の傾斜角は、10°~80°である、請求項1又は2に記載の冷凍食品セット。
【請求項4】
前記テーパ凸部は、第2容器の略中央部に設けられている、請求項1又は2に記載の冷凍食品セット。
【請求項5】
第2の容器の底部は、上方に向かって突出する複数の底面凸部と、底面凸部間に位置し且つ液体が流入可能な底面凹部とを有する、請求項1又は2に記載の冷凍食品セット。
【請求項6】
第2の固形具材含有食材は、第2の固形具材と、液状食材とを含み、該液状食材の粘度は、60℃において50~20000cpsである、請求項1又は2に記載の冷凍食品セット。
【請求項7】
前記第2の固形具材含有食材は乳化剤及び油脂を含む、請求項6に記載の冷凍食品セット。
【請求項8】
第1容器と、上方に向かって突出し且つ下方に向かうに従って徐々に広がる傾斜面を有するテーパ凸部を有する第2容器とを準備する工程(1)と、
前記第1容器に第1の固形具材含有食材を収容する工程(2)と、
前記第2容器に第2の固形具材含有食材を収容する工程(3)と、
前記第1容器及び前記第2容器を備える食品セットを冷凍する工程(4)と、
を含む冷凍食品セットの製造方法。
【請求項9】
工程(3)において、第2の固形具材含有食材は、第2の固形具材と、液状食材とを含み、第2の固形具材及び液状食材を、同時又は順次に、前記のテーパ凸部の略鉛直上方向から第2容器に添加する、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷凍食品セット、及び冷凍食品セットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子レンジで加熱等による調理を行い食することができる一食完結型の容器入り冷凍食品は、簡便に調理できることから幅広く普及しており、近年需要が高まっている。このような冷凍食品は、異なる性質を持った食品を同時に加熱した際に、均質な温度で調理できることが求められている。
【0003】
このような技術状況の下、容器の形状を工夫することで加熱ムラを改善する種々の研究が報告されている。例えば、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-245586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、複数の容器を備える冷凍食品セットを電子レンジで加熱する際に、食材の加熱ムラの発生を防止するのに有利な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、第1の固形食材が収容される第1容器と、第1容器に重ねられ、上方に向かって突出するテーパ凸部を有し、第2の固形食材が収容される第2容器と、を備え、テーパ凸部は、下方に向かうに従って徐々に広がる傾斜面を有する、冷凍食品セットに関する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、複数の容器を備える冷凍食品セットを電子レンジで加熱する際に、食材の加熱ムラの発生を防止するのに有利である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】冷凍食品セットが具備する第1容器(本容器)及び第2容器(中容器)の一例を示す斜視図である。
図2A図1に示される第1容器及び第2容器が重ねられた状態の冷凍食品セットの一例を示す斜視図である。
図2B】食材を収容し、図1に示される第1容器及び第2容器が重ねられた状態の冷凍食品セットの一例を示す斜視図である。
図3図1に示される第1容器及び第2容器が重ねられた状態の冷凍食品セットの一例を示す斜視図である。
図4】冷凍食品セットが具備する第2容器の上面の一例を示す図である。
図5】冷凍食品セットが具備する第2容器の断面の一例を示す図である。
図6】冷凍食品セットが具備する第2容器の別の断面の一例を示す図である。
図7】実施例で使用した第1容器及び第2容器が重ねられた状態の冷凍食品セットの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、質の高い食品を製造して、人々の生活の質的改善に貢献し、SDGsの観点に資する技術を提供するものである。以下、図面を参照して本開示の一実施形態を例示する。
【0010】
図1は、冷凍食品セット10が具備する本容器11及び中容器12の一例を示す斜視図である。図2Aは、図1に示される本容器11及び中容器12が重ねられた状態の冷凍食品セット10の一例を示す斜視図である。図2Bは、食材を収容し、図1に示される本容器11及び中容器12が重ねられた状態の冷凍食品セット10の一例を示す斜視図である。図3は、図2Bに示す冷凍食品セット10の断面の一例を示す図である。
【0011】
本実施形態の冷凍食品セット10は、電子レンジで加熱されて調理されることが意図されている。図1図3に示される冷凍食品セット10は、解凍されることで麺料理を提供するが、冷凍食品セット10は麺料理以外の調理済み食品を提供してもよい。
【0012】
本容器11(第1容器)は、電子レンジによる加熱調理に耐え得る素材で作られており、食材スペースS1を有する。食材スペースS1には、冷凍される第1の固形具材含有食材が収容され、図1図3に示す例では、第1の固形具材含有食材として麺食材F1が収容される。
【0013】
第1の固形具材含有食材は、麺食材F1に限定されないが、食材スペースS1に収容される場合には、後述する電子レンジによる加熱調理後に食材スペースS1において、好ましい喫食状態になり得る食材である。
【0014】
中容器12(第2容器)は、電子レンジによる加熱調理に耐え得る素材で作られており、第2の固形具材含有食材の一例である具材を収容するための、具材スペース(第2の固形具材含有食材スペース)S2を有する。第2の固形具材含有食材は、本容器11内の第1の固形具材含有食材(麺食材F1)と一緒に食されると好ましいものである。例えば、具材スペースS2には、第2の固形具材含有食材として固形具材F2と液状食材F3の組み合わせが収容される。
【0015】
固形具材F2としては、特に限定されないが、例えば肉、魚、野菜等が挙げられる。
【0016】
液状食材F3としては、特に限定されないが、例えば調味液に澱粉を溶かして粘度を付けたもの(餡)や、ペースト状又は半固体状のソース等の流動性の液状食材が挙げられる。液状食材F3の粘度は、特に限定されないが、中容器12への充填時の良好な広がりや流動性を確保する観点から、60℃において、例えば50~20000cps、好ましくは200~10000cpsである。粘度はB型粘度計により測定することができる。
【0017】
本開示のより具体的な実施形態においては、麺食材F1は焼成麺であり、第2の固形具材F2と液状食材F3の組み合わせは具材入りの餡であり、冷凍食品セット10は餡かけ焼きそばを形成してもよい。
【0018】
本開示の実施形態によれば、液状食材F3は乳化剤及び油脂を含んでいてもよい。乳化剤で乳化された油脂を添加することは、電子レンジ調理においてマイクロ波の吸収性を向上させ、効率的に加熱処理を行う上で好ましい。好ましい実施形態によれば、固形具材F2を調理するとき、乳化剤及び油脂を含ませる。この結果、固形具材F2が含有する水分と、乳化剤及び油脂が混ざり、固形具材F2の個々の食材には油脂がコーティングされるので、複数の固形具材F2同士が結着するのを防ぎ、加熱ムラを抑制することができる。
【0019】
油脂としては、特段限定されるものではないが、例えば、鶏脂、豚脂、牛脂、魚油油等の動物性油脂;サラダ油、白絞油、コーン油、大豆油、菜種油(キャノーラ油)、ごま油等の植物性油脂;これらを混合ないし加工等した食用加工油脂等が挙げられる。油脂の量は具液状食材F3全量に対して、例えば3%以上、好ましくは3%~10%である。
【0020】
乳化剤としては、特に限定されないが、乳化剤と油脂を混合して液状食材に添加することを勘案すれば、グリセリン脂肪酸エステル等のW/O型の乳化剤であることが好ましい。乳化剤の使用量としては、液状食材に添加する油脂の全量に対して、例えば0.5%以上、好ましくは0.5%~1.5%である。
【0021】
中容器12は、本容器11に対して着脱自在に重ねられる。
【0022】
本容器11及び中容器12が重ねられた状態で、本容器11の底部は下段側トレイ(本皿)として働き、中容器12の底部は、本容器11の底部の上方に位置する上段側トレイ(中皿)として働く。このように本実施形態の冷凍食品セット10は、多段的に構成可能な複数のトレイを備える。
【0023】
図1図3に示す中容器12は、本容器11によって下方から支持された状態で、本容器11に重ねられる。具体的には、中容器12の水平方向に延びる縁部分が、本容器11の水平方向に延びる縁部分に載せられることで、中容器12は本容器11によって支持される。
【0024】
本実施形態の中容器12は、本容器11の一部のみを覆う形で、本容器11に載せられる。すなわち中容器12は、本容器11の内部(すなわち食材スペースS1)を部分的に露出させるように、本容器11に重ねられる。
【0025】
本容器11内の麺食材F1が冷凍処理及び解凍処理を受ける際、麺食材F1が中容器12により覆われていると、冷凍効率及び解凍効率が落ちる。そのため本容器11の食材スペースS1のうち中容器12により覆われない部分を設けることで、麺食材F1は、冷凍時には効率的に冷凍され、解凍時には効率的に解凍され、その結果、冷凍に伴う麺食材F1の品質劣化が抑えられる。したがって、中容器12は、本容器11の底部を部分的に覆うことが好ましい。中容器12に覆われる本容器11の底部の面積は、特に限定されないが、本容器11の底部の面積全体に対して、例えば、50%以上、好ましくは80%以上である。
【0026】
中容器12が本容器11に重ねられた状態で、中容器12の底部は本容器11の底部から浮いており、中容器12の底部と本容器11の底部との間にはスペース(クリアランス)が形成されてよい。
【0027】
本実施形態のように中容器12の底部と本容器11の底部との間にスペースが設けられる場合、当該スペースがクッション領域(緩衝領域)として働き、本容器11の底部から中容器12に伝えられる衝撃等の外力が低減される。
【0028】
一例として、本容器11の底部と、本容器11に重ねられた状態の中容器12の底部との間のクリアランスは、麺食材F1よりも大きい。すなわち、本容器11の底部と中容器12の底部との間のクリアランスは、冷凍状態の麺食材F1の全体の高さよりも大きい。
【0029】
中容器12は、図1図3に示す例では単一の具材スペースS2のみを有するが、相互に分離される複数の具材スペースを有していてもよい。
【0030】
各具材スペースS2は、中容器12の底面部Pb及び側面部Psにより区画され、底面部Pbと反対側に位置する(すなわち底面部Pbと対面する)開口部Ptを有する。側面部Psの一方の端部(すなわち下方端部)は底面部Pbに接続され、他方の端部(すなわち上方端部)は開口部Ptを区画する。
【0031】
各具材スペースS2の開口部Ptの面積(すなわち水平方向断面積)は底面部Pbの面積よりも広い。
【0032】
これにより、開口部Ptが固形具材F2よりも十分に大きなサイズを有しつつ、底面部Pb側における具材スペースS2が固形具材F2に適合したサイズを有することができる。開口部Ptが固形具材F2よりも大きなサイズを有することで、開口部Ptを介して行われる「具材スペースS2への固形具材F2の収容」及び「具材スペースS2からの具材F2の取り出し」が容易に行われる。一方、底面部Pb側における具材スペースS2のサイズ及び体積が固形具材F2に適合するように調整されることによって、固形具材F2が、具材スペースS2において中容器12により安定的に支持されることができる。
【0033】
また、図2B及び図3に示される通り、固形具材F2は、液状食材F3と共に、具材スペースS2に収容されることが好ましい。
【0034】
中容器12の形状は、液状食材F3を含む第2の固形具材含有食材が充填できるよう深皿形状になっていれば、丸形や、角型など限定はされない。
【0035】
また、中容器12の容量及び厚みについても液状食材F3を含む第2の固形具材含有食材が充填できる容量であれば限定はされない。中容器12の全容積は、例えば、食品の充填質量を基準として1.0cm/g~2.0cm/gとすることが好ましい。
【0036】
また、中容器12の厚みについては、加熱ムラを軽減する観点からは、薄い方が好ましく、30mm以下のであることが好ましい。
【0037】
また、本実施形態において、中容器12は、上方に向かって突出するテーパ凸部13を有しており、且つテーパ凸部13は下方に向かうに従って徐々に広がる傾斜面を有する。本実施形態の中容器12のテーパ凸部13の鉛直上方向から固形具材F2と液状食材F3を中容器12に添加すると、複数の固形具材F2は、中容器12の端部に向かって分散して移動しうることから、加熱調理の際には、複数の固形具材F2における加熱ムラが抑制され、食味を損なわないようにする上で有利である。
【0038】
別の角度から述べると、中容器12の中央部は、加熱されにくい。液状食材F3と比べて加熱効率の低い固形具材F2を、中容器12の中央部に配置すると、液状食材F3と固形具材F2との加熱ムラが大きくなる。本実施形態のごとく、加熱効率の低い固形具材F2を、中容器12の周辺部(加熱されやすい部分)に分散すると、液状食材F3と固形具材F2の加熱ムラを小さくできる。
【0039】
また、テーパ凸部13における傾斜面は、平滑面であってもよいが、放射方向に延びる凹面部14を有していることが好ましい。放射方向に延びる凹面部14は、例えば、溝状であってよい。凹面部14を設けることは、凹面部中の空間で液状食材F3を流動させ、流動する液状食材F3を介して第2固形具材F2を中容器12の端部に移動させ、中容器12中に第2固形具材F2を分散配置するうえで有利である。
【0040】
テーパ凸部13における傾斜面の傾斜角度は、固形具材F2と液状食材F3をテーパ凸部13の頂部から中容器12の端部に効率的に分散させる観点から、例えば10°~80°、好ましくは20°~40°、より好ましくは25°~35°である。ここで、傾斜面の傾斜角度とは、テーパ凸部13の頂部と底面の端部とをつなぐ直線と、テーパ凸部の底面における頂部から鉛直下の地点と底面の端部とをつなぐ直線との間の角度を意味する。
【0041】
また、テーパ凸部13の底面部の面積の割合は、固形具材F2と液状食材F3を効率的に分散させる観点から、中容器12の底面部の全面積を基準として、例えば10%~60%、好ましくは10%~30%である。
【0042】
また、テーパ凸部13の高さは、固形具材F2と液状食材F3を効率的に分散させる観点から、中容器12の高さに対して、例えば50%以上、好ましくは60%~100%である。より具体的には、テーパ凸部13の高さは、例えば10mm以上、好ましくは15mm以上である。また、さらに具体的実施形態によれば、テーパ凸部13の高さは10~20mmである。
【0043】
本開示の実施形態によれば、テーパ凸部13は、中容器12の略中央部に設けられている。ここで、略中央部とは、中容器12の底面部の端部を除いた中央寄りの部分であり一定の幅を有する領域を指すものであり、厳密に中容器12の底面部の中央位置を指すものではない。しかしながら、テーパ凸部13の底面部は、中容器12の底面部を中心軸線に沿って三等分に区画したときの中央領域内であるか又は当該中央領域を含むことが好ましい。テーパ凸部13が中容器12の略中央部に設けられている場合、固形具材F2と液状食材F3をテーパ凸部13上から中容器12に添加すると、複数の固形具材F2は、中容器12の中央部から端部に向かって均等に分散しやすいことから、固形具材F2における加熱ムラを抑制し、食味を損なわないようにする上で有利である。
る。
【0044】
また、本開示のより具体的実施形態によれば、中容器12は、図4図6に示される通り、上方に向かって突出する複数の底面凸部15と、底面凸部15間に位置し且つ液体が流入可能な底面凹部16とを有していてもよい。ここで、図4は、複数の底面凸部と、底面凸部間に位置し且つ液体が流入可能な底面凹部を有する中容器の上面図の一例を示す。また、図5は、複数の底面凸部と、底面凸部間に位置し且つ液体が流入可能な底面凹部を有する第2容器の断面(図4におけるX方向)の一例を示す。また、図6は、複数の底面凸部と、底面凸部間に位置し且つ液体が流入可能な底面凹部を有する第2容器の別の断面(図4におけるY方向)の一例を示す。
【0045】
底面凸部及び底面凹部を設けることは、液状食材F3を底面凹部内で流動させ、さらに液状食材F3を介して固形具材F2を中容器12内で移動させ、効率的な加熱を実現するうえで有利である。
【0046】
なお、図4~6に示される通り、中容器12の底面中央部17は、中央から端部に向かう傾斜を設けてもよい。このような傾斜を設けることは、固形具材F2を中容器12内で端部に向かって分散させながら移動させ、効率的な加熱を実現するうえで有利である。
【0047】
また、中容器12の側面部Psの内面においても傾斜部分があってもよく、このような傾斜部分を設けることにより滑らかに傾斜面を形成させることができる。これにより、具材スペースS2内の固形具材F2及び液状食材F3が開口部Ptに向かって移動しやすく、中容器12からの固形具材F2及び液状食材F3の取り出し性が更に向上する。
【0048】
また、側面部Psの傾斜部分の内面は、一定の傾きを有する平面であってもよいし、傾きが連続的に変化する滑らかな曲面であってもよいし、平面及び曲面の両方を含んでもよい。
【0049】
また側面部Psの全体が傾斜部分として設けられてもよいが、側面部Psの一部のみに傾斜部分が設けられてもよい。この場合、本容器11からの中容器12の取り出し動作と、中容器12から食材スペースS1への具材F2の投入動作とが、同時的又は連続的に実施可能である。
【0050】
具材スペースS2のサイズ及び体積は、収容される固形具材F2及びに液状食材F3に応じて決められることが好ましい。
【0051】
例えば、相対的に量の少ない固形具材F2及びに液状食材F3が収容される具材スペースS2の体積は、相対的に量の多い固形具材F2及びに液状食材F3が収容される具材スペースS2の体積よりも小さくされてもよい。
【0052】
また、具材スペースS2に収容されている固形具材F2及びに液状食材F3の開口部Ptからの距離が大きいほど、固形具材F2及びに液状食材F3を具材スペースS2から取り出しにくくなる傾向がある。そのため固形具材F2及びに液状食材F3が具材スペースS2において開口部Ptの近くの適切な位置に配置されるように、開口部Ptに対する底面部Pbの高さ位置(すなわち開口部Ptと底面部Pbとの間の距離)が決められてもよい。
【0053】
なお麺食材F1、固形具材F2及びに液状食材F3を収容する中容器12が本容器11の内部に配置されている状態で、本容器11の開口部は、蓋体(図示省略)によって覆われる。
【0054】
蓋体は限定されず、麺食材F1、固形具材F2及びに液状食材F3の本容器11からの飛散を抑えるのに有効な任意のサイズ、形状及び材料を蓋体は有することができる。蓋体は、基本的に一定の形状を維持する非柔軟材料(例えば可塑性プラスチック)により構成されてもよいし、外力によって形状が容易に変わりうる柔軟材料(例えば可撓性ビニール)により構成されてもよい。本実施形態では、本容器11及び中容器12の全体が収納される外袋(図示省略)が蓋体として働くが、そのような外袋とは別体の蓋体が設けられてもよい。
【0055】
[冷凍食品セットの製造方法]
次に、冷凍食品セット10の製造方法の一例を説明する。
まず、本容器11及び中容器12を準備する(工程(1))。
【0056】
次に、調理済みの麺食材F1が本容器11の食材スペースS1に収容される(工程(2))。
【0057】
次に、調理済みの固形具材F2及び液状食材F3が中容器12の具材スペースS2に収容される(工程(3))。中容器12は、上述のとおり、上方に向かって突出し且つ下方に向かうに従って徐々に広がる傾斜面を有するテーパ凸部13を有しており、固形具材F2及び液状食材F3は上記テーパ凸部13の略鉛直上方向から第2容器に添加される。固形具材F2及び液状食材F3が添加される順序は、同時又は順次のいずれであってもよいが、中容器12内で固形具材F2を均等に分散して配置する観点からは、固形具材F2、液状食材F3の順で添加することが好ましい。
【0058】
次に、中容器12が本容器11に重ねられる(冷凍準備工程)。
【0059】
本容器11における麺食材F1の具体的な収容方法、中容器12における具材F2の具体的な収容方法、及び中容器12を本容器11に重ねる具体的な方法は、当業者であれば、さらに適宜調整することができる。
【0060】
例えば茹でられた麺食材F1は、十分に冷まされた後に、本容器11の食材スペースS1に入れられてもよい。同様に、固形具材F2及び液状食材F3も十分に冷まされた後に、中容器12の具材スペースS2に入れられてもよい。
【0061】
また本容器11に麺食材F1が収容されている状態で、中容器12が本容器11に載せられてもよい。或いは、中容器12が本容器11に載せられた後に、本容器11の食材スペースS1に麺食材F1が入れられてもよい。
【0062】
また中容器12に固形具材F2及び液状食材F3が収容されている状態で、中容器12が本容器11に載せられてもよい。或いは、中容器12が本容器11に載せられた後に、中容器12の具材スペースS2に固形具材F2及び液状食材F3が入れられてもよい。
【0063】
その後、本容器11及び中容器12は、麺食材F1、固形具材F2及び液状食材F3を収容した状態で、冷凍室に運ばれ、冷凍室で麺食材F1及び具材F2が冷凍される(冷凍工程)。
【0064】
本容器11内の麺食材F1は、上述のように、中容器12により覆われずに一部露出した状態で、冷凍処理を受ける。そのため、本容器11内の麺食材F1は、効率良く冷凍され、短時間で均質的に凍結することができる。
【0065】
同様に、中容器12内の具材F2も、露出した状態で冷凍処理を受けるため、効率良く冷凍され、短時間で均質的に凍結することができる。また中容器12内の固形具材F2及び液状食材F3は、麺食材F1とは分離した状態で冷凍処理を受ける。そのため本容器11内の麺食材F1及び中容器12内の具材F2は、お互いに混ざり合うことなく、品質の劣化が抑えられた状態で凍結することができる。
【0066】
その後、一体的な構造を有する「麺食材F1を収容している本容器11、並びに固形具材F2及び液状食材F3を収容している中容器12」が外袋(図示省略)に収納されて、冷凍食品セット10の製品が作られる(外袋収納工程)。
【0067】
そして、冷凍食品セット10(製品)は冷凍環境下で搬送及び保管される(搬送保管工程)。
【0068】
冷凍食品セット10(特に凍結した麺食材F1、固形具材F2及び液状食材F3)の解凍を防ぐ観点からは、上述の冷凍工程~搬送保管工程は、麺食材F1及び具材F2の融点よりも低い温度を有する冷凍環境下で行われることが好ましい。
【0069】
冷凍食品セット10の典型的な搬送保管方法の一例は、以下の工程を含む。第1工程は、本容器11に、中容器12を重ねる。第2工程は、調理済みの麺食材F1を、本容器11の食材スペースS1に収容する。また、第2工程は、調理済みの固形具材F2及び液状食材F3を、中容器12の具材スペースS2に収容する。第3工程は、本容器11及び中容器12を備える食品セット10を冷凍する。第4工程は、一体的な構造を有する「麺食材F1を収容している本容器11、並びに固形具材F2及び液状食材F3を収容している中容器12」を外袋(図示省略)に収納して、冷凍食品セット10の製品を作り、搬送保管する。
【0070】
[冷凍食品セットの調理方法]
次に、冷凍食品セット10の調理方法の一例を説明する。
【0071】
まず、外袋から、一体的な構造を有する「麺食材F1を収容している本容器11、並びに固形具材F2及び液状食材F3を収容している中容器12」が取り出される(調理準備工程)。
【0072】
これにより本容器11の食材スペースS1には、固形具材F2及び液状食材F3を収容している中容器12と、中容器12により一部覆われずに露出した麺食材F1と、が配置される。
【0073】
その後、本容器11及び中容器12がお互いに重ねられた状態のまま電子レンジに入れられ、本容器11及び中容器12に収容されている固形具材F2及び液状食材F3が加熱されて解凍される(加熱調理工程)。
【0074】
上述の加熱調理工程が行われた後、本容器11及び中容器12は電子レンジから取り出され、中容器12は本容器11から取り外される(容器取出工程)。
【0075】
その後、固形具材F2及び液状食材F3が中容器12から本容器11内に入れられ、食材スペースS1において麺食材F1上に固形具材F2及び液状食材F3が盛り付けられる(具材投入工程)。このように具材投入工程を食材冷却工程後に行うことで、固形具材F2及び液状食材F3は麺食材F1上に綺麗に盛り付けられることができる。
【0076】
以上説明したように本実施形態の冷凍食品セット10によれば、本容器11に中容器12が重ねられている状態で、本容器11に収容される麺食材F1と、中容器12に収容される固形具材F2及び液状食材F3と、が冷凍される。
【0077】
また、開口部Ptを有する中容器12の具材スペースS2に固形具材F2及び液状食材F3が収容されるため、袋に固形具材F2及び液状食材F3が収容される場合に比べ、中容器12からの固形具材F2及び液状食材F3の取り出しや本容器11内への具材F2の投入が簡単に実施可能である。
【0078】
[変形例]
本容器11の食材スペースS1には、麺食材F1以外の任意の食材が収容されてもよい。
【0079】
固形具材F2及び液状食材F3は、上述の実施形態のように麺食材F1に載せられた状態で食されることが意図されていてもよいし、麺食材F1に載せられずに食されることが意図されていてもよい。
【0080】
本開示は、上述の実施形態及び変形例には限定されない。上述の実施形態及び変形例の各要素に各種の変形が加えられてもよい。また上述の実施形態及び変形例の構成が、全体的に又は部分的に組み合わせられてもよい。
【0081】
上述の技術的思想を具現化する技術的カテゴリーは限定されない。例えば上述の方法に含まれる1又は複数の手順(ステップ)をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムによって、上述の技術的思想が具現化されてもよい。またそのようなコンピュータプログラムが記録されたコンピュータが読み取り可能な非一時的(non-transitory)な記録媒体によって、上述の技術的思想が具現化されてもよい。
【0082】
[付記]
上述からも明らかなように、本開示は以下の態様を含む。
【0083】
[態様1]
第1の固形具材含有食材が収容される第1容器と、
第1容器に重ねられ、上方に向かって突出するテーパ凸部を有し、第2の固形具材含有食材が収容される第2容器と、を備え、
テーパ凸部は、下方に向かうに従って徐々に広がる傾斜面を有する、冷凍食品セット。
【0084】
[態様2]
前記テーパ凸部における傾斜面は、放射方向に延びる凹面部を有する態様1に記載の冷凍食品セット。
【0085】
[態様3]
前記テーパ凸部の傾斜角は、25~35°である態様1又は2に記載の冷凍食品セット。
【0086】
[態様4]
前記テーパ凸部の高さは、10~20mmである態様1~3のいずれかに記載の冷凍食品セット。
【0087】
[態様5]
前記テーパ凸部の底面部の面積は、第2容器の底面部の全面積を基準として、10~30%である態様1~4のいずれかに記載の冷凍食品セット。
【0088】
[態様6]
前記テーパ凸部は、第2容器の略中央部に設けられている態様1~5のいずれかに記載の冷凍食品セット。
【0089】
[態様7]
第1の固形具材含有食材は、第1の固形具材からなる態様1~6のいずれかに記載の冷凍食品セット。
【0090】
[態様8]
第1の固形具材は麺である態様1~7のいずれかに記載の冷凍食品セット。
【0091】
[態様9]
第2の容器の底部は、上方に向かって突出する複数の底面凸部と、底面凸部間に位置し且つ液体が流入可能な底面凹部とを有する態様1~8のいずれかに記載の冷凍食品セット。
【0092】
[態様10]
第2容器は、第1の固形具材含有食材が載せられる第1容器の底部を部分的に覆う態様1~9のいずれかに記載の冷凍食品セット。
【0093】
[態様11]
第2の固形具材含有食材は、第2の固形具材と、液状食材とを含む態様1~10のいずれかに記載の冷凍食品セット。
【0094】
[態様12]
前記液状食材の粘度は、60℃において200~10000cpsである態様1~11のいずれかに記載の冷凍食品セット。
【0095】
[態様13]
前記液状食材は乳化剤及び油脂を含む態様1~12のいずれかに記載の冷凍食品セット。
【0096】
[態様14]
第1容器と、上方に向かって突出し且つ下方に向かうに従って徐々に広がる傾斜面を有するテーパ凸部を有する第2容器とを準備する工程(1)と、
前記第1容器に第1の固形具材含有食材を収容する工程(2)と、
前記第2容器に第2の固形具材含有食材を収容する工程(3)と、
前記第1容器及び前記第2容器を備える食品セットを冷凍する工程(4)と、
を含む冷凍食品セットの製造方法。
【0097】
[態様15]
前記第2の固形具材含有食材は、第2の固形具材と、液状食材とを含む、態様14に記載の方法。
【0098】
[態様16]
工程(3)において、第2の固形具材及び液状食材は、同時又は順次に、前記のテーパ凸部の略鉛直上方向から第2容器に添加する、態様15に記載の方法。
【実施例0099】
以下、実施例を用いて本開示の方法をより詳細に説明する。但し、以下の実施例は、本開示の方法を何ら限定することを意図するものではない。なお、特段の記載がない限り、本明細書中に記載のパーセンテージや比率は、質量による。また、特段の記載がない限り、本明細書中に記載の単位や測定方法は、日本工業規格(JIS)の規定による。
【0100】
例1
(第1の固形具材含有食材の調製)
小麦粉、かん水、食塩、水等から公知の方法で製麺した中華生麺110gを沸騰したお湯で3分間茹で、4℃の冷水に30秒間浸漬した後に水を切り、加水処理済みの麺を得た。
【0101】
(第2の固形具材含有食材の調製)
以下の表1に記載の配合割合で各原料を鍋に投入し、75℃まで加熱し、固形具材(野菜、肉)と、液状具材(あん)とを含む第2の固形具材含有食材を得た。
【0102】
【表1】
【0103】
(冷凍食品セットの調製)
以下の手順に従い、第1の固形具材含有食材及び第2の固形具材含有食材を、図7の写真に示される、第1容器(本体容器)と第1容器に重ねられ、上方に向かって突出するテーパ凸部を有する第2容器(上段トレー)を備えた容器に収容した。
具体的には、まず、第1容器と、第2容器を分離した状態とし、第1容器に第1の固形具材含有食材(麺)160gを充填した。
次に、第2容器に第1固形具材を74g充填し、さらに第2容器のテーパ凸部に向かって鉛直上方向から液状食品120gを加えることにより第2容器中に液状食品を充填した。
次に、第1容器に第2容器を取り付け、-35℃のフリーザー80分で凍結させた。
次に、凍結させた容器を-18℃の冷凍庫で1日間調温し、電子レンジ(600W 6分30秒又は500W 7分00秒)加熱調理した。
【0104】
上記加熱調理の結果、第2容器中の第2の固形具材含有食材における固形具材の温度と、第1容器中の第1の固形具材含有食材の温度は、いずれもほとんどムラがないことが確認された。
【符号の説明】
【0105】
10 冷凍食品セット
11 本容器
12 中容器
13 テーパ凸部
14 凹面部
15 底面凸部
16 底面凹部
17 底面中央部
F1 麺食材
F2 固形具材
F3 液状食材
Pb 底面部
Ps 側面部
Pt 開口部
S1 食材スペース
S2 具材スペース
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7