(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180147
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】キャニスタ
(51)【国際特許分類】
F02M 25/08 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
F02M25/08 311A
F02M25/08 311E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099623
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177460
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 智子
(72)【発明者】
【氏名】永作 友一
【テーマコード(参考)】
3G144
【Fターム(参考)】
3G144BA06
3G144FA12
3G144GA20
(57)【要約】
【課題】吸着材に吸着した蒸発燃料の脱離を促進するとともに、吸着材から脱離した蒸発燃料を効率的にパージポートに導くことによって、蒸発燃料を効率的にパージできるキャニスタを提供する。
【解決手段】燃料タンクから蒸発する蒸発燃料を吸着する吸着材が収容されたケース体を有し、蒸発燃料を燃料タンクとエンジンとの間に配置されるキャニスタであって、ケース体は、燃料タンクに繋がるタンクポートが設けられる第1の空間と、外気側に繋がる大気ポートが設けられる第2の空間と、第1の空間と、第2の空間と、の間に配置される第3の空間と、を有し、第1の空間及び第2の空間に、吸着材を収容し、第3の空間に、吸着材に吸着された蒸発燃料をエンジン側に排出するパージポートと、ケース体の内部の温度を調節する温度調節装置と、を設けた。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクから蒸発する蒸発燃料を吸着する吸着材が収容されたケース体を有し、前記燃料タンクとエンジンとの間に配置されるキャニスタであって、
前記ケース体は、
前記燃料タンクに繋がるタンクポートが設けられる第1の空間と、
外気側に繋がる大気ポートが設けられる第2の空間と、
前記第1の空間と、前記第2の空間と、の間に配置される第3の空間と、
を有し、
前記第1の空間及び前記第2の空間に、前記吸着材を収容し、
前記第3の空間に、前記吸着材に吸着された前記蒸発燃料を前記エンジン側に排出するパージポートと、前記ケース体の内部の温度を調節する温度調節装置と、を設けた、
キャニスタ。
【請求項2】
前記ケース体は、前記第1の空間と、前記第3の空間と、前記第2の空間と、が幅方向に並べて配置され、
前記温度調節装置の幅方向を、前記第3の空間の幅方向と、略同一にする、
請求項1に記載のキャニスタ。
【請求項3】
前記第3の空間と前記第1の空間との間を仕切る第1仕切部と、
前記第3の空間と前記第2の空間との間を仕切る第2仕切部と、を設け、
前記第1仕切部及び前記第2仕切部を、伝熱性のある部材にする、
請求項1に記載のキャニスタ。
【請求項4】
前記温度調節装置に接続されるケーブル接続部を、前記ケース体の外面側に設けた、
請求項1~3の何れか1項に記載のキャニスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の燃料タンク内で蒸発した蒸発燃料を処理するキャニスタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料タンク内で蒸発した蒸発燃料の燃料成分が車外への漏出することを防止する蒸発燃料処理装置が知られている。蒸発燃料処理装置は、吸着材を内蔵したキャニスタによって燃料タンクから蒸発した蒸発燃料を一時的に回収し、キャニスタから脱離した蒸発燃料を含むパージガスをエンジンの筒内に導くことで、蒸発燃料を処理する。しかし、近年の自動車のハイブリッド化等により、吸着材に吸着した蒸発燃料の脱離が困難になる傾向にある。
【0003】
特許文献1には、キャニスタのケース本体を上層部と下層部との2層に区画し、上層部には大気取入口を設け、下層部には蒸散燃料導入用の流入口と蒸散燃料流出用の流出口とを設けた、キャニスタが開示されている。
特許文献2には、吸着材である活性炭が充填されている吸着材室内に電気ヒーターを配置し、活性炭を直接加熱するとともに、パージエアによる熱伝達によりキャニスタ内全体の活性炭を加熱するキャニスタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】日本国特開2010-186634号公報
【特許文献2】日本国特開2010-144590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、燃料タンク内で発生した蒸散燃料が、流入口から大気取入口までの経路を長くし、吸着材を有効に活用して脱離性能の向上を図ったものであるが、流出口に作用する強い負圧により、上層部の吸着材に吸着された蒸散燃料が再び下層部に再吸着されるため、蒸散燃料のパージ効率に問題がある。
上記特許文献2では、吸着材を電気ヒーターで直接加熱することによりキャニスタのパージ効率の向上を図ったものであるが、活性体の熱伝導率が低く、温度上昇に長い時間がかかるという問題がある。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、吸着材に吸着した蒸発燃料の脱離を促進するとともに、吸着材から脱離した蒸発燃料を効率的にパージポートに導くことによって、蒸発燃料を効率的にパージできるキャニスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
[1] 燃料タンクから蒸発する蒸発燃料を吸着する吸着材が収容されたケース体を有し、前記燃料タンクとエンジンとの間に配置されるキャニスタであって、
前記ケース体は、
前記燃料タンクに繋がるタンクポートが設けられる第1の空間と、
外気側に繋がる大気ポートが設けられる第2の空間と、
前記第1の空間と、前記第2の空間と、の間に配置される第3の空間と、
を有し、
前記第1の空間及び前記第2の空間に、前記吸着材を収容し、
前記第3の空間に、前記吸着材に吸着された前記蒸発燃料を前記エンジン側に排出するパージポートと、前記ケース体の内部の温度を調節する温度調節装置と、を設けた、
キャニスタ。
[2] 前記ケース体は、前記第1の空間と、前記第3の空間と、前記第2の空間と、が幅方向に並べて配置され、
前記温度調節装置の幅方向を、前記第3の空間の幅方向と、略同一にする、
[1]に記載のキャニスタ。
[3] 前記第3の空間と前記第1の空間との間を仕切る第1仕切部と、
前記第3の空間と前記第2の空間との間を仕切る第2仕切部と、を設け、
前記第1仕切部及び前記第2仕切部を、伝熱性のある部材にする、
[1]に記載のキャニスタ。
[4] 前記温度調節装置に接続されるケーブル接続部を、前記ケース体の外面側に設けた、
[1]~[3]の何れか1つに記載のキャニスタ。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第1の空間内の前記吸着材から脱離した前記蒸発燃料と、前記第2の空間内の前記吸着材から脱離した前記蒸発燃料と、を同時にパージポートから排出できるため、蒸発燃料を効率的にパージできる。また、前記第3の空間に設けた前記温度調節装置で前記ケース体の内部を効率的に加熱することで、前記吸着材に吸着された前記蒸発燃料の脱離を促進できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、蒸発燃料処理装置を示したモデル図である。
【
図2】
図2は、キャニスタの内部を示した平断面図である。
【
図3】
図3は、第3の空間を示した
図2のA-A断面図である。
【
図4】
図4は、パージ弁が閉じた状態の蒸発燃料の流れを示した図である。
【
図5】
図5は、パージ弁から負圧が導入された状態の蒸発燃料の流れを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態に係るキャニスタについて、図面を参照して説明する。また、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。また、本実施形態には種々の変更又は改良を加えることが可能であり、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。
【0011】
本実施例において、キャニスタが設けられる車両の進行方向を「前」、車両の後進後方を「後」と称する。車両の進行方向左側を「左」、車両の進行方向右側を「右」と称する。また、左右方向と、幅方向とは同義である。
【0012】
(全体構成)
図1は、蒸発燃料処理装置を示したモデル図である。図示されるように、本実施形態に係る蒸発燃料処理装置100は、キャニスタ1と、燃料タンク2と、エンジン3と、を有する。
蒸発燃料処理装置100は、キャニスタ1により燃料タンク2内で蒸発した蒸発燃料(燃料ガス)を一時的に回収し、エンジン3の負圧が導入されたときにキャニスタ1により回収された蒸発燃料をエンジン側に供給して処理する。
キャニスタ1は、燃料タンク2及びエンジン3の間に設けられる。キャニスタ1と燃料タンク2とはベーパ通路4を介して連通される。キャニスタ1と、エンジン3の吸気通路3aとは、パージ通路5を介して連通される。
【0013】
キャニスタ1は、タンクポート24と、パージポート25と、大気ポート26と、ケース体10と、を有する。
タンクポート24は、ベーパ通路4に接続される。パージポート25は、パージ通路5に接続される。大気ポート26は、大気(外気)に開放されている。各ポート24、25、26は、箱状に形成されたケース体10に設けられている。
ケース体10の内部には、蒸発燃料を吸着する吸着材20が充填されている。
吸着材20は、表面積の大きい多孔質材料であって、例えば、活性炭やケイ素系材料等である。燃料タンク2内で蒸発した蒸発燃料は、ベーパ通路4を通ってキャニスタ1に流入し、吸着材20に吸着されることで回収される。
【0014】
キャニスタ1とエンジン3とを接続するパージ通路5上には、エンジン3の運転状態に応じて開度制御されるパージ弁6が設けられる。パージ弁6が閉じた状態では、パージ通路5の連通状態が遮断されるため、パージ通路5内にはガスの流れが発生しない。その一方で、パージ弁6が開いた状態では、エンジン3の吸気通路3aの負圧がキャニスタ1内に導入されるため、キャニスタ1内に大気ポート26を通じて空気が流入し、キャニスタ1で回収された蒸発燃料が脱離される。
この蒸発燃料は空気と混合し、パージガス(蒸散ガス)としてエンジン3側に吸引されて、エンジン3の筒内で燃焼されて処理される。
【0015】
次に、
図2及び
図3に基づいて、キャニスタ1を構成するケース体10について説明する。
図2は、キャニスタの内部を示した平断面図であり、
図3は、第3の空間を示した
図2のA-A断面図である。
【0016】
ケース体10は、吸着材20と、温度調節装置30と、が収容可能に形成される。
ケース体10は、前壁部10aと、右壁部10bと、左壁部10cと、上壁部10dと、下壁部10eと、開口部10fと、によって後端が開放された箱状に形成されている。
ケース体10の後端には、開口部10fを閉じるカバー体16が設けられている。ケース体10の前壁部10aの上部側には、各ポート24、25、26が配置され、ケース体10の内部に接続されている。
【0017】
ケース体10の内部には、第1仕切部17と、第2仕切部18と、が設けられている。これにより、ケース体10の内部には、第1の空間11と、第2の空間12と、第3の空間13と、連通部14と、が形成される。第1の空間11を主室、第2の空間12を副室と称してもよい。
第1の空間11及び第2の空間12は、平面視で左右両側に配置され、第1の空間11及び第2の空間12の間に、第3の空間13が配置される。すなわち、ケース体10の内部には、第1の空間11、第3の空間13、第2の空間12、幅方向(左右方向)に並べて配置されている。連通部14は、左右方向に延在する空間であり、第1の空間11、第2の空間12及び第3の空間13の後方に配置される。この構成は、
図2を参照するとよい。
【0018】
第1仕切部17は、タンクポート24と、パージポート25と、の間を仕切るように配置される。
第2仕切部18は、パージポート25と、大気ポート26と、の間を仕切るように配置される。
第1仕切部17及び第2仕切部18は、右壁部10b及び左壁部10cに沿って、前後方向及び上下方向に延在する平面を有する板状に形成される。また、第1仕切部17及び第2仕切部18の後端部は、カバー体16との間にスペースが形成されるように右壁部10b及び左壁部10cよりも短く形成されている。この構成は、
図2を参照するとよい。
【0019】
第1の空間11は、第1仕切部17と、前壁部10aと、右壁部10bと、上壁部10dと、下壁部10eと、第1後部仕切板15Aと、で区画される。
第1の空間11は、前壁部10aの上部側にタンクポート24が接続され、空間全体に吸着材20が充填・収容される。すなわち、第1の空間11は、タンクポート24から漏れ出る蒸発燃料を一時的に吸着・回収する吸着層になる。
第1後部仕切板15Aは、パンチングメタル等、複数の孔が形成された板状部材であって、第1の空間11の後端を仕切る部材である。第1後部仕切板15Aは、カバー体16との間に設けた第1弾性部材19Aによって、前方の第1の空間11に収容された吸着材20に向けて付勢されている。なお、第1後部仕切板15Aは、第1の空間11の吸着材20の全体と当接してもよいし、少なくとも一部と当接してもよい。この構成は、
図2を参照するとよい。
【0020】
第2の空間12は、第2仕切部18と、前壁部10aと、左壁部10cと、上壁部10dと、下壁部10eと、第2後部仕切板15Bと、で区画される。
第2の空間12は、前壁部10aの上部に大気ポート26が接続され、空間全体に吸着材20が充填・収容される。すなわち、第2の空間12は、第1の空間11の吸着材20後端から漏れ出た蒸発燃料を一時的に吸着・回収する吸着層になる。
第2後部仕切板15Bは、パンチングメタル等、複数の孔が形成された板状部材であって、第2の空間12の後端を仕切る部材である。第2後部仕切板15Bは、カバー体16との間に設けた第2弾性部材19Bによって、前方の第2の空間12に収容された吸着材20に向けて付勢されている。なお、第2後部仕切板15Bは、第2の空間12の吸着材20の全体と当接してもよいし、少なくとも一部と当接してもよい。この構成は、
図2を参照するとよい。
【0021】
第3の空間13は、第1仕切部17と、第2仕切部18と、前壁部10aと、上壁部10dと、下壁部10eと、第3後部仕切板15Cと、で区画される。
第3の空間13は、前壁部10aの上部にパージポート25が接続され、温度調節装置30が内蔵される。図示する例では、第3の空間13を、吸着材20が配置されない空間層にする。
【0022】
第3後部仕切板15Cは、少なくとも温度調節装置30に接続された電線等であるハーネス31が挿通される挿通孔を有し、第3の空間13の後端を仕切る部材である。この構成は、
図2を参照するとよい。
【0023】
温度調節装置30は、ケース体10を加熱する装置である。具体的には、温度調節装置30は、ケース体10内部の空気と、第3の空間13を区画する部材、言い換えると、第1仕切部17と、第2仕切部18と、前壁部10aと、上壁部10dと、下壁部10eと、第3後部仕切板15Cと、を加熱するヒーターである。
すなわち、温度調節装置30は、第1の空間11及び第2の空間に充填した吸着材20を加熱できる。このため、吸着材20に吸着した蒸発燃料の脱離を促進できる。
また、温度調節装置30により、第3の空間13及び連通部14の空間層も加熱されるため、第1の空間11及び第2の空間12の吸着材20から脱離した蒸発燃料が、再び吸着材20に再吸着されることが防止される。このため、脱離した蒸発燃料がパージポートからスムーズにパージされる。
【0024】
また、温度調節装置30は、第3の空間13の幅方向と略同程度の左右幅を有する。すなわち、温度調節装置30は、第1仕切部17及び第2仕切部18に密着するか、若干隙間が形成される程度の左右幅を有する。同様に、温度調節装置30は、第3の空間13の前後幅と略同程度の前後幅を有する。すなわち、温度調節装置30は、前壁部10a及び第3後部仕切板15Cに密着するか、若干隙間が形成される程度の前後幅と、を有する。この構成は、
図2を参照するとよい。
また、温度調節装置30は、第3の空間13の上部側に30%程度の空間が形成される上下幅を有する。この構成は、
図3を参照するとよい。これにより、第3の空間13内で出来るだけ出力の大きい温度調節装置30を設置できるため、ケース体10の内部をより効率的に加熱できる。なお、より大型の温度調節装置30を設けて、第3の空間の上部側の空間をより小さくしてもよい。
その一方で、パージポート25が接続される第3の空間13の上部には、吸着材20も温度調節装置30も配置されない空間層が設けられる。このため、第1の空間11及び第2の空間12の吸着材20から脱離した蒸発燃料が、連通部14と、第3の空間13の空間層と、を経由してパージポート25からスムーズにパージされる。
【0025】
また、温度調節装置30によって加熱されるケース体10、言い換えると、第1仕切部17と、第2仕切部18と、前壁部10aと、右壁部10bと、左壁部10cと、上壁部10dと、下壁部10eと、は伝熱性の高い部材で一体成形される。具体的には、ケース体10を構成する部材として、樹脂、ガラス繊維が含有された材料、金属等が用いられる。これにより、温度調節装置30によってケース体10を効率的に加熱できるため、吸着材20からの蒸発燃料の脱離を効率的に促進できる。
【0026】
連通部14は、第1の空間11の後方に配置される第1連通部14Aと、第2の空間12の後方に配置される第2連通部14Bと、第3の空間13の後方に配置される第3連通部14Cと、を有する。
第3連通部14Cは、第3後部仕切板15Cとカバー体16との間に、温度調節装置30に接続されるハーネス31が配設されている。
第1連通部14Aは、第1後部仕切板15Aとカバー体16との間に、第1弾性部材19Aが配置される。第1連通部14Aと、第3連通部14Cと、の間は第1仕切部17の後端部に形成されたスペースによって連通している。
第2連通部14Bは、第2後部仕切板15Bとカバー体16との間に、第2弾性部材19Bが配置される。第2連通部14Bと、第3連通部14Cと、の間は第2仕切部18の後端部に形成されたスペースによって連通している。
【0027】
以上により、連通部14は、第1の空間11、第2の空間12及び第3の空間13の後端側同士を繋ぐ左右方向の空間である。すなわち、ケース体10の内部の蒸発燃料は、連通部14を介して、第1の空間11と、第2の空間12と、第3の空間13と、の間を自由に移動できる。
【0028】
カバー体16は、電源ケーブル35の先端に設けたコネクタ36が着脱可能な接続部33が設けられている。接続部33は、ケース体10に内蔵された温度調節装置30に接続されるハーネス31が接続されている。すなわち、電源ケーブル35のコネクタ36を、ケース体10(カバー体16)の外面側に設けた接続部33に接続することにより、電源ケーブル35を温度調節装置30に接続できる。この構成は、
図2を参照するとよい。
これにより、作業者はカバー体16を取り外すことなく、ケース体10に収容された温度調節装置30への電源ケーブル35の接続と、温度調節装置30に接続された電源ケーブル35の接続解除と、実行できる。このため、温度調節装置30が収容されたキャニスタ1のメンテナンス作業が容易になる。
【0029】
なお、上述の例では、キャニスタ1に設けられた各ポート24、25、26は、箱状のケース体10の側面、具体的には前面側に配置されているが、これには限られない。すなわち、各ポート24、25、26は、ケース体10の上面に配置してもよく、ケース体10の下面に配置してもよく、ケース体10のその他側面に配置してもよい。
また、キャニスタ1は、ケース体10内部に、上述の第1の空間11と、第2の空間12と、第3の空間13と、を有していればよく、その外形形状は箱状には限られない。例えば、円筒状や、多角形柱状に形成されてもよい。
【0030】
(作用効果)
上述のキャニスタ1は、パージ弁6が閉じて、パージ通路5の連通状態が遮断された場合、燃料タンク2から蒸発した蒸発燃料は、ベーパ通路4と、タンクポート24と、を介してキャニスタ1の第1の空間11に導入され、第1の空間11の吸着材20に吸着される。第1の空間11の吸着材20を通過した蒸発燃料は、連通部14を介して、第2の空間12に移動し、第2の空間12に収容された吸着材20に吸着される。第2の空間12の吸着材20を通過し、燃料成分の大半が取り除かれた蒸散ガスが、大気ポート26から外気へと排出される。
すなわち、上述のキャニスタ1によれば、タンクポート24から導入される蒸発燃料が大気ポート26に排出されるまでの経路を長くとることができる。このため、第1の空間11及び第2の空間12に充填される吸着材20による蒸発燃料の吸着性能を最大限に発揮できる。この構成は、
図4を参照するとよい。
【0031】
その一方で、上述のキャニスタ1は、パージ弁6が開いて、エンジン3の吸気通路3aの負圧がキャニスタ1内に導入された場合、第1の空間11に充填された吸着材20から脱離した蒸発燃料と、第2の空間12に充填された吸着材20から脱離した蒸発燃料と、が連通部14(空間層)と、第3の空間13(空間層)と、を介して、パージポート25に移動する。各吸着材20から脱離した蒸発燃料は、空気と混合されたパージガス(蒸散ガス)として、パージポート25からパージされ、エンジン3側に供給される。この構成は、
図5を参照するとよい。
【0032】
これにより、タンクポート24からパージポート25に導かれる蒸発燃料は、必ず第1の空間11の吸着材20と、連通部14と、第3の空間13と、を通過するため、タンクポート24からパージポート25までの経路を長くとることができる。このため、タンクポート24からキャニスタ1に導入されてすぐの燃料成分の濃い状態の蒸発燃料がパージポート25に導入され、エンジン3の駆動が不安定になることを防止できる。
【0033】
また、第1の空間11の吸着材20に吸着された蒸発燃料と、第2の空間12の吸着材20に吸着された蒸発燃料と、を同時にパージポート25からパージできる。また、第2の空間12の吸着材20から脱離した蒸発燃料を、再び第1の空間11の吸着材20に吸着させることなく、パージポート25に導くことができる。このため、キャニスタ1に保持した蒸発燃料のパージ効率が向上する。
【0034】
さらに、上述のキャニスタ1は、温度調節装置30によってケース体10内部を所定温度以上に温めることができるため、蒸発燃料の吸着材20からの脱離を促進できる。これにより、パージポート25から排出される蒸散ガス内に含まれる蒸発燃料を増やすことができるため、パージ効率が向上する。
【0035】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものでなく、適宜、変更、改良などが可能である。
【0036】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 燃料タンクから蒸発する蒸発燃料を吸着する吸着材が収容されたケース体を有し、前記燃料タンクとエンジンとの間に配置されるキャニスタであって、
前記ケース体は、
前記燃料タンクに繋がるタンクポートが設けられる第1の空間と、
外気側に繋がる大気ポートが設けられる第2の空間と、
前記第1の空間と、前記第2の空間と、の間に配置される第3の空間と、
を有し、
前記第1の空間及び前記第2の空間に、前記吸着材を収容し、
前記第3の空間に、前記吸着材に吸着された前記蒸発燃料を前記エンジン側に排出するパージポートと、前記ケース体の内部の温度を調節する温度調節装置と、を設けた、
キャニスタ。
本構成によれば、前記パージポートが、前記第1の空間と、前記第2の空間と、の間に配置される前記第3の空間に設けられるため、第1の空間内の前記吸着材から脱離した前記蒸発燃料と、前記第2の空間内の前記吸着材から脱離した前記蒸発燃料と、を同時にパージできる。また、前記第2の空間の前記吸着材に吸着された蒸発燃料が、前記第1の空間の前記吸着材に再吸着されることを防止できる。また、前記パージポートは、さらに、前記第3の空間に設けた前記温度調節装置で前記ケース体の内部を効率的に加熱することで、前記吸着材に吸着された前記蒸発燃料の脱離を促進できる。
【0037】
(2) 前記ケース体は、前記第1の空間と、前記第3の空間と、前記第2の空間と、が幅方向に並べて配置され、
前記温度調節装置の幅方向を、前記第3の空間の幅方向と、略同一にする、
(1)に記載のキャニスタ。
本構成によれば、前記温度調節装置を、第1の空間及び第2の空間に近い位置に配置できるため、吸着材を効率的に加熱して、脱離を促進できる。
【0038】
(3) 前記第3の空間と前記第1の空間との間を仕切る第1仕切部と、
前記第3の空間と前記第2の空間との間を仕切る第2仕切部と、を設け、
前記第1仕切部及び前記第2仕切部を、伝熱性のある部材にする、
(1)に記載のキャニスタ。
本構成によれば、前記第1の空間及び前記第2の空間に収容される前記吸着材を効率的に加熱できる。
【0039】
(4) 前記温度調節装置に接続されるケーブル接続部を、前記ケース体の外面側に設けた、
(1)~(3)の何れか1つに記載のキャニスタ。
本構成によれば、前記ケース体に内蔵された前記温度調節装置への配線作業が容易になる。
【符号の説明】
【0040】
1 キャニスタ
2 燃料タンク
3 エンジン
3a 吸気通路
4 ベーパ通路
5 パージ通路
6 パージ弁
10 ケース体
10a 前壁部
10b 右壁部
10c 左壁部
10d 上壁部
10e 下壁部
10f 開口部
11 第1の空間
12 第2の空間
13 第3の空間
14 連通部
14A 第1連通部
14B 第2連通部
14C 第3連通部
15A 第1後部仕切板
15B 第2後部仕切板
15C 第3後部仕切板
16 カバー体
17 第1仕切部
18 第2仕切部
19A 第1弾性部材
19B 第2弾性部材
20 吸着材
24 タンクポート
25 パージポート
26 大気ポート
30 温度調節装置
31 ハーネス
100 蒸発燃料処理装置