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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018018
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】ポリエステル樹脂、および接着剤
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/181 20060101AFI20240201BHJP
   C09J 167/02 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
C08G63/181
C09J167/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121053
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000228073
【氏名又は名称】日本エステル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鳥海 拓矢
(72)【発明者】
【氏名】北口 貴之
【テーマコード(参考)】
4J029
4J040
【Fターム(参考)】
4J029AA03
4J029AB01
4J029AB07
4J029AC02
4J029AD01
4J029AD05
4J029AD07
4J029AE13
4J029BA02
4J029BA03
4J029BA04
4J029BA05
4J029BA07
4J029BA08
4J029BA10
4J029BD05A
4J029BD07A
4J029BF26
4J029BH02
4J029CA02
4J029CA04
4J029CA06
4J029CB04A
4J029CB05A
4J029CB05B
4J029CB06A
4J029CB10A
4J029CC05A
4J029CH07
4J029DB02
4J029DB13
4J029FC03
4J029FC04
4J029FC05
4J029FC08
4J029HA01
4J029HB01
4J029KB02
4J040ED041
4J040KA23
4J040LA01
4J040LA02
4J040MA02
4J040MA10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】PETフィルムや金属箔などの基材に対し、優れた接着性を持つポリエステル樹脂を提供する。
【解決手段】酸成分中、芳香族ジカルボン酸成分を50~80モル%、脂肪族ジカルボン酸成分を20~50モル%含み、グリコール成分中、側鎖を1つ以上持つポリグリコール成分を35~75モル%含むポリステル樹脂であって、数平均分子量が15,000~25,000であり、熱機械分析装置の針入れ試験により得られる2つの軟化温度の差が5℃以下である、ポリエステル樹脂である。側鎖を1つ以上持つポリグリコール成分が、非対称の構造を有するポリグリコール成分であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸成分中、芳香族ジカルボン酸成分を50~80モル%、脂肪族ジカルボン酸成分を20~50モル%含み、
グリコール成分中、側鎖を1つ以上持つポリグリコール成分を35~75モル%含むポリステル樹脂であって、
数平均分子量が15,000~25,000であり、熱機械分析装置の針入れ試験により得られる2つの軟化温度の差が5℃以下である、ポリエステル樹脂。
【請求項2】
側鎖を1つ以上持つポリグリコール成分が、非対称の構造を有するポリグリコール成分である、請求項1記載のポリエステル樹脂。
【請求項3】
ガラス転移温度が-10~20℃である、請求項1または2記載のポリエステル樹脂。
【請求項4】
請求項1または2に記載のポリエステル樹脂を含む、接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル樹脂、および接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリエステル樹脂は、フィルム、繊維、接着剤、塗料など様々な用途で広く用いられているが、接着剤として使用する場合は、食品包装用途やフレキシブルフラットケーブルといった柔軟性を必要とする用途での使用が多く、低いガラス転移温度を持つ樹脂を要求されることが多い。
【0003】
例えば、特許文献1では、脂肪族ジカルボン酸成分や脂肪族グリコール成分と、特定のグリコール成分とを組み合わせることで、耐熱接着性を維持したままガラス転移温度を下げたポリエステル樹脂が得られることを提案している。
近年では、さらに接着性が向上した接着剤が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-203946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、PETのようなプラスチックフィルムや金属箔などの基材に対し、優れた接着性を持つポリエステル樹脂を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を有するポリエステル樹脂が、特定の物性を有することで、基材に対して優れた接着性を発現することを見出し、本発明に到達した。
【0007】
すなわち、本発明の要旨は下記のとおりである。
(1)酸成分中、芳香族ジカルボン酸成分を50~80モル%、脂肪族ジカルボン酸成分を20~50モル%含み、グリコール成分中、側鎖を1つ以上持つポリグリコール成分を35~75モル%含むポリステル樹脂であって、
数平均分子量が15,000~25,000であり、熱機械分析装置の針入れ試験により得られる2つの軟化温度の差が5℃以下である、ポリエステル樹脂。
(2)側鎖を1つ以上持つポリグリコール成分が、非対称の構造を有するポリグリコール成分である、(1)のポリエステル樹脂。
(3)ガラス転移温度が-10~20℃である、(1)または(2)のポリエステル樹脂。
(4)(1)~(3)の何れかのポリエステル樹脂を含む、接着剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポリエステル樹脂によれば、プラスチックフィルムや金属等の基材に対し、優れた接着性を持つ接着剤を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のポリエステル樹脂は、酸成分と、グリコール成分とを含む。酸成分中、芳香族ジカルボン酸成分を50~80モル%、脂肪族ジカルボン酸成分を20~50モル%含む。グリコール成分中、側鎖を1つ以上持つモノマーを含むポリグリコールを、35~75モル%含む。数平均分子量が15,000から25,000であり、熱機械分析装置の針入れ試験により得られる2つの軟化温度の差が5℃以下である。
【0010】
芳香族ジカルボン酸成分の全酸成分に対する含有割合としては、50~80モル%であり、55~75モル%であることが好ましく、60~70モル%であることがより好ましい。
【0011】
また、脂肪族ジカルボン酸成分の全酸成分に対する含有割合としては、20~50モル%であり、25~45モル%であることが好ましく、30~40モル%であることがより好ましい。つまり、酸成分として、芳香族ジカルボン酸成分を主成分とし、脂肪族ジカルボン酸成分を共重合成分として含有するものである。
【0012】
芳香族ジカルボン酸成分の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、3-tert-ブチルイソフタル酸、ジフェン酸等の芳香族ジカルボン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸等が挙げられる。これらの芳香族ジカルボン酸は2種以上の併用が可能である。
【0013】
脂肪族ジカルボン酸成分は、本発明のポリエステル樹脂に柔軟性を付与し、ガラス転移温度を低下させることに寄与する。脂肪族ジカルボン酸成分の全酸成分に対する割合が50モル%を超えて多くなると、樹脂の凝集力が低下し、接着力が低下する。20モル%未満では、樹脂のタックが低くなり、接着力が低下する。
【0014】
脂肪族ジカルボン酸成分の具体例としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ヘキサデカン二酸、エイコサン二酸等が挙げられる。これらの脂肪族ジカルボン酸は2種以上の併用が可能である。
【0015】
本発明のポリエステル樹脂は、全グリコール成分中、側鎖を1つ以上持つモノマーを含むポリグリコール成分を、35~75モル%含むものであり、35~65モル%であることが好ましく、35~55モル%であることがより好ましい。側鎖を1つ以上有するポリグリコール成分の全グリコール成分に対する含有割合が35モル%未満では、ポリエステル樹脂の有機溶剤に対する溶解性が低下する。75モル%を超えると、凝集力が低下し、接着力が低下する。このようなポリグリコール成分としては、1,2-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-2-ブチルプロパンジオールなどが挙げられる、
【0016】
本発明において用いられる、その他のグリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、等の脂肪族グリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロブタンジメタノール等の脂環族グリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3官能以上のアルコール等が挙げられる。さらに、2,2-ビス[4-(ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパンのようなビスフェノール類(ビスフェノールA)のアルキレンオキシド付加体やビス[4-(ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホンのようなビスフェノール類(ビスフェノールS)のアルキレンオキシド付加体等が挙げられる。これらのグリコール成分は2種以上の併用が可能である。
【0017】
また、上記ポリグリコール成分の中でも、側鎖を1つ以上持つ非対称の構造を有するポリグリコール成分(1,2-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-2-ブチルプロパンジオールなど)が好ましい。非対称の構造を有するポリグリコール成分を用いた場合、ネオペンチルグリコールのような対称性の高いグリコールを用いた場合と比較して、脂肪族ジカルボン酸成分との相互作用が強くなるため、樹脂の凝集力が向上して、接着性にいっそう優れる。
【0018】
ポリエステル樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で、モノカルボン酸、モノアルコールを含有することもできるが、モノカルボン酸、モノアルコールを過剰に用いることは、後述するポリエステル樹脂の製造時に、分子鎖の延長を阻害し、重縮合が進まずに、結果として必要な分子量が得られず、得られるポリエステル樹脂は、接着力が不足することがある。本発明においては、モノカルボン酸、モノアルコールの含有量は、ポリエステル樹脂を構成する酸成分またはアルコール成分のうち、各々1モル%未満であることが好ましく、0.1モル%未満であることがより好ましく、0モル%であることがさらに好ましい。
【0019】
また、本発明のポリエステル樹脂は酸化防止剤を含有してもよい。
酸化防止剤としては、リン酸、リン酸エステル、2,2-チオ-ジエチレン-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3′,5′-ジ-tert-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]、3-(3′,5′-ジ-tert-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n-オクタデシル、3,3′,3″,5,5′,5″-ヘキサ-tert-ブチル-a,a′,a″-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9-ビス{2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、1,3,5-トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンゼン)イソフタル酸、トリエチルグリコール-ビス[3-(3-tert-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ジエチル[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフェート、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、ジオクチルチオジプロピオネート、ジドデシルチオジプロピオネート、ジドデシルステアリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジデシルチオジプロピオネート、ジドデシル-β,β′-チオジブチレート、ジステアリル-β,β′-チオジブチレート、ペンタエリスリトール-テトラキス(ドデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール-テトラキス(ドデシルチオアセテート)、ペンタエリスリトール-テトラキス(ドデシルチオブチレート)、ペンタエリスリトール-テトラキス(オクタデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール-テトラキス(ラウリルチオプロピオネート)、ジラウリル-3,3′-チオジプロピオネート、ジステアリル-3,3′-チオジプロピオネート、ジトリデシル3,3′-チオジプロピオネート、テトラキス[メチレン-3-(ドデシルチオ)プロピオネート]等のリン系化合物、硫黄系化合物、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物等が挙げられる。
【0020】
ポリエステル樹脂のGPC法で測定される数平均分子量は15,000~25,000の範囲にあり、17,500~22,500であることが好ましい。数平均分子量が15,000未満であると接着剤層としての凝集力を発現しにくく、接着性に劣る。一方で数平均分子量が25,000を超えると接着剤の流動性が低下し、基材への濡れ性が低下するので、接着性に劣る。
【0021】
ポリエステル樹脂の熱機械分析の針入れ試験により測定される軟化温度(観測される2つのピークのうち、温度が低いものをTs1、高いものをTs2)の差ΔTs(ΔTs=Ts2-Ts1)はラミネート時のシャープメルト性の点から、5℃以下であり、4℃以下であることが好ましい。5℃を超えると、シャープメルト性が低下し、基材への濡れ性が低下することから、接着力に劣るものとなる。
軟化温度の差を上記範囲とするために、ポリエステル樹脂の数平均分子量は25,000以下としたり、酸成分やグリコール成分の組成を特定範囲としたり、ガラス転移温度を特定範囲としたりすることができる。
【0022】
ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、-10~20℃であり、-5~15℃であることが好ましい。ガラス転移温度が-10℃未満であると、凝集力が低くなりすぎ、接着力が低下する。20℃を超えると、樹脂のタックが低くなり、接着力が低下する。
【0023】
ポリエステル樹脂は、メチルエチルケトンに対する溶解性が30質量%以上であることが好ましい。ポリエステル樹脂の溶解性が30質量%以上であることで、樹脂を溶液として取り扱うことが可能となり、より薄い被膜を得ることが可能となる。
【0024】
ポリエステル樹脂を溶解する有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ、ソルベッソなどの芳香族系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコールなどのアルコール系溶剤、酢酸エチル、酢酸ノルマルブチルなどのエステル系溶剤、セロソルブアセテート、メトキシアセテートなどのアセテート系溶剤、またはこれらの2種類以上からなる混合溶剤(たとえば、トルエンとメチルエチルケトンの混合溶剤)などが挙げられる。取り扱い性と環境面から、有機溶剤は、沸点の低いメチルエチルケトン、酢酸エチルが好ましい。
【0025】
次に、ポリエステル樹脂の製造方法について説明する。
ポリエステル樹脂は、前記のモノマーを組み合わせて、公知の方法で製造することができる。前記の芳香族ジカルボン酸成分の1種類以上と、脂肪族ジカルボン酸成分の1種類以上と、側鎖を1つ以上持つ非対称のポリグリコール成分を含むジオール成分とを、公知の方法により、重縮合反応に付する方法が挙げられる。例えば、全モノマー成分および/またはその低重合体を、不活性雰囲気下で反応させてエステル化反応を行い、引き続いて重縮合触媒の存在下、減圧下で、所望の分子量に達するまで重縮合反応を進めて、ポリエステル樹脂を得る方法等を挙げることができる。
【0026】
エステル化反応における反応温度は、180~260℃であることが好ましく、反応時間は、2.5~10時間であることが好ましく、4~6時間であることがより好ましい。
【0027】
重縮合反応における反応温度は、220~280℃であることが好ましく、減圧度は、130Pa以下であることが好ましい。減圧度が130Paを超えると、重縮合時間が長くなる場合がある。大気圧から130Pa以下に達するまで、60~180分かけて徐々に減圧することが好ましい。
【0028】
重縮合触媒は、特に限定されないが、二酸化ゲルマニウム、酢酸亜鉛、三酸化アンチモン、テトラ-n-ブチルチタネート、n-ブチルヒドロキシオキソスズ等の公知の化合物を用いることができる。
また、重縮合触媒として、有機スルホン酸系化合物を用いることができる。
有機スルホン酸系化合物としては、例えば、ベンゼンスルホン酸、m-またはp-ベンゼンジスルホン酸、1,3,5-ベンゼントリスルホン酸、o-、m-またはp-スルホ安息香酸、ベンズアルデヒド-o-スルホン酸、アセトフェノン-p-スルホン酸、アセトフェノン-3,5-ジスルホン酸、o-、m-またはp-アミノベンゼンスルホン酸、スルファニル酸、2-アミノトルエン-3-スルホン酸、フェニルヒドロキシルアミン-3-スルホン酸、フェニルヒドラジン-3-スルホン酸、1-ニトロナフタレン-3-スルホン酸、チオフェノール-4-スルホン酸、アニソール-o-スルホン酸、1,5-ナフタレンジスルホン酸、o-、m-またはp-クロルベンゼンスルホン酸、o-、m-またはp-ブロモベンゼンスルホン酸、o-、m-またはp-ニトロベンゼンスルホン酸、ニトロベンゼン-2,4-ジスルホン酸、ニトロベンゼン-3,5-ジスルホン酸、ニトロベンゼン-2,5-ジスルホン酸、2-ニトロトルエン-5-スルホン酸、2-ニトロトルエン-4-スルホン酸、2-ニトロトルエン-6-スルホン酸、3-ニトロトルエン-5-スルホン酸、4-ニトロトルエン-2-スルホン酸、3-ニトロ-o-キシレン-4-スルホン酸、5-ニトロ-o-キシレン-4-スルホン酸、2-ニトロ-m-キシレン-4-スルホン酸、5-ニトロ-m-キシレン-4-スルホン酸、3-ニトロ-p-キシレン-2-スルホン酸、5-ニトロ-p-キシレン-2-スルホン酸、6-ニトロ-p-キシレン-2-スルホン酸、2,4-ジニトロベンゼンスルホン酸、3,5-ジニトロベンゼンスルホン酸、o-、m-またはp-フルオロベンゼンスルホン酸、4-クロロ-3-メチルベンゼンスルホン酸、2-クロロ-4-スルホ安息香酸、5-スルホサリチル酸、4-スルホフタル酸、2-スルホ安息香酸無水物、3,4-ジメチル-2-スルホ安息香酸無水物、4-メチル-2-スルホ安息香酸無水物、5-メトキシ-2-スルホ安息香酸無水物、1-スルホナフトエ酸無水物、8-スルホナフトエ酸無水物、3,6-ジスルホフタル酸無水物、4,6-ジスルホイソフタル酸無水物、2,5-ジスルホテレフタル酸無水物、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、メチオン酸、シクロペンタンスルホン酸、1,1-エタンジスルホン酸、1,2-エタンジスルホン酸、1,2-エタンジスルホン酸無水物、3-プロパンジスルホン酸、β-スルホプロピオン酸、イセチオン酸、ニチオン酸、ニチオン酸無水物、3-オキシ-1-プロパンスルホン酸、2-クロルエタンスルホン酸、フェニルメタンスルホン酸、β-フェニルエタンスルホン酸、α-フェニルエタンスルホン酸、クロルスルホン酸アンモニウム、ベンゼンスルホン酸メチル、p-トルエンスルホン酸エチル、メタンスルホン酸エチル、5-スルホサリチル酸ジメチル、4-スルホフタル酸トリメチル等、およびこれらの塩が挙げられる。
【0029】
重縮合触媒の使用量は、酸成分1モルに対し、0.1~20×10-4モルであることが好ましい。
【0030】
また、前述の重縮合反応の終了後に、多塩基酸成分やその無水物等を所定量添加して反応させることで、末端水酸基をカルボキシル基に変性したり、エステル交換反応により分子鎖中にカルボキシル基を導入することで、ポリエステル樹脂に適度の酸価を付与することができる。
【0031】
本発明のポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂の水酸基またはカルボン酸と反応しうる官能基を含有するイソシアネート化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物などの硬化剤を含有すると、密着性や耐熱性等の向上が期待できるが、接着力が低下することがある。したがって、硬化剤は、含有しないか、あるいは本発明の効果に影響がない程度に含有することが好ましく、硬化剤の含有量は、ポリエステル樹脂100質量部に対して、0~5質量部であることが好ましく、0~3質量部であることがより好ましく、0~2質量部であることがさらに好ましい。
【0032】
本発明のポリエステル樹脂を用いることで積層体を得ることができる。
本発明のポリエステル樹脂を使用して、樹脂からなる層(以下、接着剤層と略することがある)を有する積層体を作製する方法として、樹脂を有機溶剤に溶解した溶液(以下、接着剤溶液と略することがある)を、基材に公知の塗布法で塗布、乾燥する方法が挙げられる。コーターとしては、例えば、バーコーター、コンマコーター、ダイコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、グラビアリバースコーター、フローコーターなどを用いることができる。これらのコーターを使用した塗布法では、接着剤層の厚さを任意に制御することができる。また、複数回の塗布法で、基材に塗布してもよい。
【0033】
本発明のポリエステル樹脂は、接着剤用途に好適であるが、有機溶剤に可溶であり、接着性に優れることから、ドライラミネート用接着剤において、特に好ましく用いられる。また、ドライラミネート用接着剤に用いられる場合は、耐熱性が求められることもあるため、上述した、イソシアネート化合物、エポキシ化合物などの硬化剤を含有することが好ましい。
【実施例0034】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。
1.原料
(1)ポリエステル樹脂の原料
IPA:イソフタル酸
TPA:テレフタル酸
AD:アジピン酸
SE:セバシン酸
MPD:2-メチル-1,3-プロパンジオール
NPG:ネオペンチルグリコール
EG:エチレングリコール
【0035】
2.測定方法
(1)ポリエステル樹脂の組成
NMR測定装置(日本電子社製 JNM-LA400型)を用いて、H-NMR測定を行い、それぞれの共重合成分のピーク強度から組成を求めた。測定溶媒としては、重水素化トリフルオロ酢酸を用いた。
【0036】
(2)ポリエステル樹脂の数平均分子量
GPC分析装置(島津製作所社製 送液ユニットLC-10ADvp型および紫外-可視分光光度計SPD-6AV型、検出波長:254nm、溶媒:テトラヒドロフラン、ポリスチレン換算)により、数平均分子量を求めた。
【0037】
(3)ポリエステル樹脂のガラス転移温度
示差走査熱量計(日立ハイテクサイエンス社製 DSC7020、試料 8.5mg)を用い、窒素気流中、温度範囲-50~100℃、昇温速度10℃/分で測定した。
【0038】
(4)ポリエステル樹脂の軟化温度
熱機械分析装置(島津製作所社製 TMA-60、荷重-50g、圧子φ0.5×1.0mm、温度範囲-50~120℃、昇温速度10℃/分)を用い、針入れ試験により得られる軟化温度を測定した。
観測される2つの軟化温度のピークのうち、温度が低いものをTs1、高いものをTs2とし、これらの差ΔTs(ΔTs=Ts2-Ts1)を求めた。
【0039】
(5)ポリエステル樹脂の溶解性
ポリエステル樹脂を、メチルエチルケトン(MEK)を用いて、固形分濃度が30質量%になるように溶解したものを、ポリエステル樹脂の試料とした。
試料を、透明なガラス瓶の中で25℃雰囲気下、1週間静置し、目視で均一性を確認し、以下の基準で溶解性を評価した。
○:不溶物、固化などがなく、層分離もしておらず、均一である。
△:不溶物、固化などがないが、やや濁っている。実用上は問題なし。
×:不溶物がある、または固化している、あるいは層分離している。実用に供することができない。
【0040】
(6)接着性
樹脂溶液を、PETフィルム(ユニチカ社製S-38、厚み38μm)、および圧延銅箔(厚み30μm)に、それぞれ塗工機(井元製作所社製 IMC-70F0-C型)を用いてコーティングした後、100℃に設定された熱風乾燥機中で1分間乾燥をすることにより、膜厚が20μmの樹脂からなる被膜が形成された積層体を得た。
得られた積層体の樹脂の被膜上にPETフィルムを重ね、上下ロール120℃、線圧20N/cm、速度1m/分の条件でラミネートして、ラミネートシートを作成した。
得られたラミネートシートから25mm巾の試料を作成し、20℃でT型剥離試験を行い、剥離強度を測定して接着性を評価した。
なお、PETフィルム/樹脂/PETフィルムで構成される積層体の剥離強度が8N/25mm以上であれば実用上問題ない接着性であり、剥離強度は、10N/25mm以上であることが好ましい。また、銅箔/樹脂/PETフィルムで構成される積層体の剥離強度が12N/25mm以上であれば実用上問題ない接着性であり、剥離強度は、14N/25mm以上であることが好ましい。
【0041】
実施例1
ジカルボン酸成分が、テレフタル酸(TPA)58モル%、イソフタル酸(IPA)10モル%、アジピン酸(AD)26モル%、セバシン酸(SE)6モル%になるように、またグリコール成分が、エチレングリコール(EG)60モル%、2-メチル-1,3-プロパンジオール(MPD)40モル%になるように、原料をエステル化反応容器に投入し、アンカー翼の撹拌機で250rpmの回転数で撹拌しながら、常圧下で、250℃で6時間エステル化を行い、エステル化物を作製した。その後、重縮合反応容器へ移液し、重合触媒を投入して、90分かけて徐々に1.3hPaになるまで減圧し、所定の分子量に到達するまで270℃で重縮合反応を行い、ポリエステル樹脂を得た。
得られたポリエステル樹脂は、数平均分子量が20,000、2つの軟化温度の差(ΔTs)が4℃、ガラス転移温度が7℃であった。
ポリエステル樹脂を、メチルエチルケトン(MEK)に、固形分濃度が30質量%になるように溶解して、樹脂溶液を作製した。
【0042】
実施例2~7、比較例1~7
ポリエステル樹脂の組成を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂および、ポリエステル樹脂の溶液を得た。
【0043】
実施例、比較例で得られたポリエステル樹脂の構成と特性を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
実施例1~7で得られたポリエステル樹脂は、本発明で規定する構成を満足するものであるため、基材への接着性に優れていた。
【0046】
比較例1のポリエステル樹脂は、脂肪族ジカルボン酸成分の含有量が20モル%未満であるため、ガラス転移温度が20℃を超え、樹脂のタックが低くなり、接着性に劣るものとなった。
【0047】
比較例2のポリエステル樹脂は、脂肪族ジカルボン酸成分の含有量が50モル%を超えたため、ガラス転移温度が-10℃未満であり、樹脂の凝集力が低下し、接着性に劣るものとなった。
【0048】
比較例3のポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂の数平均分子量が15,000未満であるため、樹脂の凝集力が低下し、接着性に劣るものとなった。
【0049】
比較例4のポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂の数平均分子量が25,000を超えるため、ポリエステル樹脂の2つの軟化温度の差が5℃を超え、ラミネート時の樹脂組成物の基材への濡れ性が低下し、接着性に劣るものとなった。
【0050】
比較例5のポリエステル樹脂は、1つ以上の側鎖を持つポリグリコール成分が75モル%を超えるため、樹脂の凝集力が低下し、接着性に劣るものとなった。
【0051】
比較例6のポリエステル樹脂は、1つ以上の側鎖を持つポリグリコール成分が35モル%未満であるため、樹脂の凝集力が高く、溶解性が低下し、接着性の評価には至らなかった。
【0052】
比較例7のポリエステル樹脂は、脂肪族ジカルボン酸成分を含有していないため、樹脂の溶解性が低下し、接着性の評価には至らなかった。