(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180186
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 20/40 20160101AFI20241219BHJP
F16H 61/12 20100101ALI20241219BHJP
F16H 61/04 20060101ALI20241219BHJP
F16H 63/40 20060101ALI20241219BHJP
B60K 6/485 20071001ALI20241219BHJP
B60K 6/547 20071001ALI20241219BHJP
B60W 10/10 20120101ALI20241219BHJP
B60W 20/13 20160101ALI20241219BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20241219BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20241219BHJP
B60L 58/13 20190101ALI20241219BHJP
【FI】
B60W20/40
F16H61/12
F16H61/04
F16H63/40
B60K6/485
B60K6/547
B60W10/10 900
B60W20/13
B60L15/20 K
B60L50/16
B60L58/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099676
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 健
(72)【発明者】
【氏名】土山 牧男
(72)【発明者】
【氏名】三浦 岳
【テーマコード(参考)】
3D202
3J552
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA09
3D202BB19
3D202BB35
3D202CC59
3D202CC72
3D202DD01
3D202DD05
3D202DD45
3D202DD46
3D202DD47
3D202DD48
3J552MA01
3J552NA01
3J552NB01
3J552NB05
3J552NB08
3J552PA51
3J552QA13A
3J552SA07
3J552TA12
3J552TA13
3J552TB13
3J552VA78W
3J552VB10W
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BA00
5H125BC12
5H125BD17
5H125BE05
5H125CA02
5H125EE27
5H125EE51
(57)【要約】
【課題】バッテリから必要な電力を供給できない車両状態となることを抑制しつつ自動変速機の変速制御に係る学習を実施できる車両の制御装置を提供する。
【解決手段】(a)自動変速機18の変速制御の開始時点でのメインバッテリ52の状態値SOCstaと変速制御の開始時点以前に係合学習が実施され且つ変速制御が実行されたことによる充電状態値SOCの低下量ΔSOCとに基づいて、係合学習が実施され且つ変速制御が実行された場合には、変速制御の実行後の状態値SOCendが充電必須領域の範囲内となるか否かが判定され、(b)状態値SOCendが充電必須領域の範囲内となると判定された場合には、係合学習が実施されずに変速制御が実行される。なお、状態値SOCendが充電必須領域の範囲内となるか否かは、人工知能、機械学習が用いられて判定されても良い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンと一対の駆動輪との間の動力伝達経路に設けられた自動変速機と、前記エンジンにより駆動されてバッテリを充電する発電機と、を備える車両の、制御装置であって、
前記自動変速機の変速制御の開始時点での前記バッテリの充電状態値と前記開始時点以前に前記変速制御に係る学習が実施され且つ前記変速制御が実行されたことによる前記充電状態値の低下量とに基づいて、前記学習が実施され且つ前記変速制御が実行された場合には、前記変速制御の実行後の前記充電状態値が所定の充電必須領域の範囲内となるか否かを判定し、
前記変速制御の実行後の前記充電状態値が前記充電必須領域の範囲内となると判定した場合には、前記学習を実施せずに前記変速制御を実行する
ことを特徴とする車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
エンジンと一対の駆動輪との間の動力伝達経路に設けられた自動変速機と、エンジンにより駆動されてバッテリを充電する発電機と、を備える車両の、制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンと一対の駆動輪との間の動力伝達経路に設けられた自動変速機を備える車両の、制御装置が知られている。例えば、特許文献1に記載のものがそれである。特許文献1に記載の車両の制御装置では、自動変速機の変速制御に係る係合装置の油圧制御における係合学習(以下、単に「係合学習」と記す。)が実施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エンジンにより駆動されてバッテリを充電する発電機を備える車両では、発電機の発電量が変動するとエンジンの回転速度が変動する。そのため、このような車両においては、係合学習の学習精度を向上させるために、係合学習の実施期間中は発電機の発電量を制限して発電量の変動を抑制し、ひいてはエンジン回転速度の変動を抑制することが考えられる。しかし、発電機の発電量を抑制すると、バッテリの充電状態値が低下してバッテリから必要な電力を供給できない車両状態となるおそれがある。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、バッテリから必要な電力を供給できない車両状態となることを抑制しつつ自動変速機の変速制御に係る学習を実施できる車両の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨とするところは、エンジンと、前記エンジンと一対の駆動輪との間の動力伝達経路に設けられた自動変速機と、前記エンジンにより駆動されてバッテリを充電する発電機と、を備える車両の、制御装置であって、(a)前記自動変速機の変速制御の開始時点での前記バッテリの充電状態値と前記開始時点以前に前記変速制御に係る学習が実施され且つ前記変速制御が実行されたことによる前記充電状態値の低下量とに基づいて、前記学習が実施され且つ前記変速制御が実行された場合には、前記変速制御の実行後の前記充電状態値が所定の充電必須領域の範囲内となるか否かを判定し、(b)前記変速制御の実行後の前記充電状態値が前記充電必須領域の範囲内となると判定した場合には、前記学習を実施せずに前記変速制御を実行することにある。
【発明の効果】
【0007】
本発明の車両の制御装置によれば、(a)前記自動変速機の変速制御の開始時点での前記バッテリの充電状態値と前記開始時点以前に前記変速制御に係る学習が実施され且つ前記変速制御が実行されたことによる前記充電状態値の低下量とに基づいて、前記学習が実施され且つ前記変速制御が実行された場合には、前記変速制御の実行後の前記充電状態値が所定の充電必須領域の範囲内となるか否かが判定され、(b)前記変速制御の実行後の前記充電状態値が前記充電必須領域の範囲内となると判定された場合には、前記学習が実施されずに前記変速制御が実行される。これにより、学習が実施され且つ変速制御が実行されることにより充電状態値が充電必須領域の範囲内となる事態が事前に回避されやすくなる。したがって、バッテリから必要な電力を供給できない車両状態となることが抑制されつつ自動変速機の変速制御に係る学習が実施される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施例に係る電子制御装置が搭載される車両の概略構成図である。
【
図2】
図1に示す電子制御装置の制御作動を説明するフローチャートの一例である。
【
図3】
図2のフローチャートが実行された場合におけるタイムチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比及び形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例0010】
図1は、本発明の実施例に係る電子制御装置80が搭載される車両10の概略構成図である。車両10は、例えば走行用の動力源としてエンジン12及び第2電動機MG2を備えるハイブリッド車両である。車両10は、エンジン12と一対の駆動輪14との間の動力伝達経路PTに、エンジン12側から順に連結軸22、動力分割機構34、入力軸26、自動変速機18、出力軸28、デフ40、及び一対の車軸30を備え、これらは周知の構成である。また、車両10は、油圧制御回路44、インバータ50、メインバッテリ52、補機バッテリ54、DCDCコンバータ56、電気負荷58、及び電子制御装置80を備える。
【0011】
エンジン12は、周知の内燃機関であり、電子制御装置80によってエンジン12の出力トルクであるエンジントルクTe[Nm]が制御される。なお、本明細書では、特に区別しない場合には、トルク、駆動力、及び動力は同意である。第1電動機MG1及び第2電動機MG2は、所謂モータジェネレータであって、例えば三相同期モータジェネレータである。動力分割機構34は、エンジン12から出力される動力を第1電動機MG1及び入力軸26に機械的に分割する、周知の動力分割機構である。
【0012】
自動変速機18は、例えば複数の油圧式摩擦係合装置(以下、「係合装置CB」と記す。)を有し、複数の係合装置CBのいずれかの掴み替えによる所謂クラッチツゥクラッチ変速が実行される有段変速機である。自動変速機18では、例えばアクセル開度θacc[%]や車速V[km/h]等に応じて所定の変速段が形成させられる。油圧制御回路44は、不図示のオイルポンプが吐出した作動油を元圧にして、係合装置CBの断接状態(係合状態、半係合状態、解放状態)を制御するアクチュエータに、各々調圧した油圧を供給する。
【0013】
インバータ50は、直流を交流に変換したり交流を直流に変換したりする電源回路である。第1電動機MG1の出力トルクであるMG1トルクTmg1[Nm]及び第2電動機MG2の出力トルクであるMG2トルクTmg2[Nm]は、電子制御装置80で制御されたインバータ50によってそれぞれ制御される。メインバッテリ52は、二次電池であって、第1電動機MG1及び第2電動機MG2の駆動用のバッテリである。補機バッテリ54は、二次電池であって、例えばメインバッテリ52よりも低い充電電圧である。DCDCコンバータ56は、メインバッテリ52の電圧を補機バッテリ54と同等の電圧に降圧して補機バッテリ54を充電する充電装置として機能する。補機バッテリ54は、車両10に備えられた電気負荷58(例えば補機等を含む)を作動させるための電力を供給する。
【0014】
電子制御装置80は、複数のECU(エンジン制御ECU82、電動機制御ECU84、変速制御ECU86、コンバータ制御ECU88、及び学習制御ECU90)を含む。なお、ECUとは、Electronic Control Unit(電子制御装置)の略である。例えば、電子制御装置80内の複数のECUは、CAN(Controller AreaNetwork)通信回路を用いて通信するネットワークにそれぞれ接続されており、互いにデータの入出力が可能である。各ECUは、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含み、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各部の制御を実行する。なお、電子制御装置80は、本発明における「制御装置」に相当する。
【0015】
電子制御装置80には、車両10に備えられた各種センサ等(アクセル開度センサ70、出力軸回転速度センサ72、バッテリセンサ74など)による検出値に基づく各種信号等(運転者による加速操作の大きさを表すアクセル開度θacc[%]、車速Vに対応する出力軸28の回転速度である出力軸回転速度Nout[rpm]、メインバッテリ52のバッテリ温度THbat[℃]やバッテリ電流Ibat[A]やバッテリ電圧Vbat[V]など)が、それぞれ入力される。電子制御装置80からは、車両10の各装置(エンジン12、インバータ50、油圧制御回路44、DCDCコンバータ56など)に各種指令信号(エンジン制御信号Se、インバータ50を介して第1電動機MG1及び第2電動機MG2を回転制御するMG1制御信号Smg1,MG2制御信号Smg2、自動変速機18を変速制御する油圧制御信号Sp、DCDCコンバータ56を電圧変換制御するコンバータ制御信号Sconなど)が、それぞれ出力される。
【0016】
車両10は、走行用の動力源のうち少なくともエンジン12から動力を出力させて走行するエンジン走行が可能である。エンジン走行中において、エンジン制御ECU82は、駆動要求量に応じてエンジントルクTeを制御する。電動機制御ECU84は、第1電動機MG1がエンジン12により駆動されることで発電するように、MG1トルクTmg1を負トルク(=反力トルク)に制御する。第1電動機MG1で発電された電力は、インバータ50を介してメインバッテリ52に充電される。この場合、エンジントルクTeは第1電動機MG1を駆動可能なものとされる。電動機制御ECU84は、駆動要求量に対してエンジントルクTeのうち動力分割機構34により入力軸26に分割されたトルクでは不足する場合には、その不足するトルク分を補うようにMG2トルクTmg2を制御する。なお、第1電動機MG1及びメインバッテリ52は、本発明における「発電機」及び「バッテリ」にそれぞれ相当する。
【0017】
変速制御ECU86は、自動変速機18を変速制御する。コンバータ制御ECU88は、エンジン12を正常に作動させる補機、ワイパー、及び車室の空調装置等の電気負荷58に電力を供給する補機バッテリ54の電圧が所定電圧未満に低下した場合には、メインバッテリ52からDCDCコンバータ56を介して補機バッテリ54を充電するように制御する。所定電圧は、エンジン12や空調装置が正常に作動するように補機バッテリ54が電気負荷58に電力を供給できる、実験的に或いは設計的に予め定められた電圧値である。
【0018】
学習制御ECU90は、変速制御ECU86を介して係合学習を実施する。係合学習は、例えば係合装置CBのいずれかを解放状態から係合状態へ切り替える場合に、その断接状態を制御するアクチュエータへの供給油圧(急速充填圧や定圧待機圧の油圧値及びそれらの供給期間)の最適値の学習である。なお、係合学習は、本発明における「変速制御に係る学習」に相当する。
【0019】
ここから、学習制御ECU90の具体的な機能を説明する。
【0020】
エンジン走行中において、学習制御ECU90は、変速制御の開始の判断がされたか否かを判定する。学習制御ECU90は、変速制御の開始の判断がされたと判定すると、係合学習が実施され且つ変速制御が実行された場合に、変速制御後のメインバッテリ52の状態値SOCendが所定の充電必須領域の範囲内となるか否かを判定する。状態値SOCendは、変速制御後の充電状態値(メインバッテリ52の予め定められた満充電容量に対する実際に蓄電されている充電量の比)SOC[%]である。なお、充電状態値SOCは、例えばバッテリ温度THbat、バッテリ電流Ibat、及びバッテリ電圧Vbatのうち少なくともバッテリ電流Ibatに基づいて算出可能である。状態値SOCendが充電必須領域の範囲内となるか否かの判定は、状態値SOCendが所定の判定状態値SOC_jdg以下となるか否かの判定と同意である。判定状態値SOC_jdgは、メインバッテリ52から必要な電力を供給できない車両状態となるおそれがあり、充電を直ちにする必要がある充電状態値SOCの領域の上限値として、実験的に或いは設計的に予め定められた所定値である。
【0021】
学習制御ECU90は、変速制御の開始時点での状態値SOCstaと、変速制御の開始時点以前に係合学習が実施され且つ変速制御が実行されたことによる充電状態値SOCの低下量ΔSOC(後述の
図3に示す期間T1~T3のそれぞれにおける低下量ΔSOC1~ΔSOC3)と、を取得する。状態値SOCstaは、変速制御の開始時点での充電状態値SOCである。学習制御ECU90は、例えば状態値SOCsta及び低下量ΔSOCと、状態値SOCendと、の予め実験的に或いは設計的に定められた関係(例えばマップ)に基づいて、状態値SOCendを算出し、状態値SOCendが判定状態値SOC_jdg以下であるか否かを判定する。マップにおける低下量ΔSOCは、例えば変速制御の開始時点以前での複数回の取得データの平均値や最も絶対値が大きいものである。低下量ΔSOCは、例えばメインバッテリ52のバッテリ温度THbatや劣化度で変化する。
【0022】
学習制御ECU90は、状態値SOCendが充電必須領域の範囲内となると判定すると、第1電動機MG1での発電量である発電電力Wg[W]を制限せずに発電を継続させ、係合学習を不実施とし、且つ変速制御を実行させる。学習制御ECU90は、状態値SOCendが充電必須領域の範囲内とはならないと判定すると、発電電力Wgを所定量Wg1[W]以下に制限し、係合学習を実施とし、且つ変速制御を開始させる。所定量Wg1は、係合学習における学習精度への影響が許容範囲内となる、実験的に或いは設計的に予め定められた発電量の上限値である。学習制御ECU90は、変速制御の開始後に実際の充電状態値SOCが充電必須領域の範囲内となった場合には、直ちに発電電力Wgの制限を解除して係合学習を中止し且つ変速制御を実行させる。
【0023】
図2は、
図1に示す電子制御装置80の制御作動を説明するフローチャートの一例である。
図2のフローチャートは、エンジン走行中において繰り返し実行される。
【0024】
まず、ステップS10(以下、「ステップ」を省略する。)において、変速制御の開始の判断がされたか否かが判定される。S10の判定がYESの場合、S20において、係合学習が実施され且つ変速制御が実行された場合に、状態値SOCendが充電必須領域の範囲内となるか否かが判定される。S20の判定がYESの場合、S30において、発電電力Wgを制限せずに発電が継続され、係合学習が不実施とされ、且つ変速制御が実行される。これにより、第1電動機MG1での発電が継続されて充電状態値SOCの回復が図られる。S20の判定がNOの場合、S40において、発電電力Wgが所定量Wg1以下に制限され、係合学習が実施とされ、且つ変速制御が開始される。S40の実行後、S50において、実際の充電状態値SOCが充電必須領域の範囲内となったか否かが判定される。S50の判定がNOの場合、S60において、変速制御が終了したか否かが判定される。S60の判定がNOの場合、再度S50が実行される。S50の判定がYESの場合、S70において、直ちに発電電力Wgの制限が解除されて係合学習が中止され且つ変速制御が実行される。S10の判定がNOの場合、S30の実行後、S60の判定がYESの場合、及びS70の実行後は、リターンとなる。
【0025】
図3は、
図2のフローチャートが実行された場合におけるタイムチャートの一例である。
図3の横軸は、時間t[sec]である。
【0026】
時刻t7は、変速制御の開始時点である。時刻t7での状態値SOCstaと、時刻t7以前に係合学習が実施され且つ変速制御が実行された場合における低下量ΔSOC(例えば低下量ΔSOC1~ΔSOC3)と、に基づいて、状態値SOCendが判定状態値SOC_jdg以下となるか否かが判定される。時刻t7において、状態値SOCendが判定状態値SOC_jdg以下となると判定された場合には、係合学習が実施されずに変速制御が実行される。この場合には、係合学習の実施により実際の充電状態値SOCが例えば一点鎖線のように推移すると予測されるところ、係合学習の不実施により例えば破線のように推移することとなる。時刻t7で状態値SOCendが判定状態値SOC_jdg以下とはならないと判定された場合には、時刻t7以降において係合学習が実施され且つ変速制御が実行される。
【0027】
本実施例によれば、(a)変速制御の開始時点(時刻t7)での状態値SOCstaと開始時点以前に係合学習が実施され且つ変速制御が実行されたことによる低下量ΔSOCとに基づいて、係合学習が実施され且つ変速制御が実行された場合には、変速制御の実行後の状態値SOCendが充電必須領域の範囲内となるか否かが判定され、(b)状態値SOCendが充電必須領域の範囲内となると判定された場合には、係合学習が実施されずに変速制御が実行される。これにより、係合学習が実施され且つ変速制御が実行されることにより充電状態値SOCが充電必須領域の範囲内となる事態が事前に回避されやすくなる。したがって、メインバッテリ52から補機バッテリ54を経由して電気負荷58に必要な電力を供給できない車両状態となることが抑制されつつ係合学習が実施される。
【0028】
なお、上述したのは本発明の実施例であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【0029】
前述の実施例では、車両10は補機バッテリ54を有する態様であったが、これに限らない。例えば、補機バッテリ54を有さず、メインバッテリ52が直接電気負荷58に電力を供給するとともに、DCDCコンバータがインバータ50とメインバッテリ52との間に設けられた態様であっても良い。この態様においては、電気負荷58に応じてメインバッテリ52の充電電圧は低く設定される。
【0030】
前述の実施例では、第1電動機MG1はモータジェネレータであったが、発電機機能を有していれば電動機機能を有さない回転電気機械であっても良い。
【0031】
前述の実施例では、車両10は走行用の動力源として第2電動機MG2を有するハイブリッド車両であったが、例えば動力源として第1電動機MG1又は第2電動機MG2のいずれも有さずエンジン12のみを有する車両であって、エンジン12により駆動されるオルタネータを発電機とする態様にも、本発明は適用可能である。
【0032】
前述の実施例では、電子制御装置80は、複数のECUに分割された構成であったが、必要に応じてこれらの全部又は一部が共通のECUにそれぞれまとめられた構成であっても良い。
【0033】
前述の実施例では、状態値SOCsta及び低下量ΔSOCと、状態値SOCendと、の予め定められた関係(例えばマップ)に基づいて、状態値SOCendが算出される態様であったが、例えば状態値SOCendは、状態値SOCsta及び低下量ΔSOCに基づいて人工知能、機械学習が用いられて算出されても良い。
10:車両、12:エンジン、14:一対の駆動輪、18:自動変速機、52:メインバッテリ(バッテリ)、80:電子制御装置(制御装置)、MG1:第1電動機(発電機)、PT:動力伝達経路、SOC:充電状態値、SOCsta:状態値(変速制御の開始時点でのバッテリの充電状態値)、SOCend:状態値(変速制御の実行後の充電状態値)、ΔSOC:低下量