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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180216
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】高容量リチウムイオン二次電池。
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0587 20100101AFI20241219BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20241219BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20241219BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20241219BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20241219BHJP
   H01M 50/417 20210101ALI20241219BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20241219BHJP
【FI】
H01M10/0587
H01M4/13
H01M4/62 Z
H01M4/66 A
H01M4/131
H01M50/417
H01M50/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023110335
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】599019719
【氏名又は名称】有限会社ケー・イー・イー
(72)【発明者】
【氏名】栗林 功
【テーマコード(参考)】
5H011
5H017
5H021
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H011AA13
5H011CC10
5H011KK01
5H011KK02
5H017AA03
5H017AS02
5H017CC01
5H017EE01
5H017EE04
5H017HH03
5H021CC02
5H021EE04
5H021HH01
5H029AJ03
5H029AJ12
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL11
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029BJ14
5H029CJ16
5H029DJ02
5H029DJ04
5H029DJ07
5H029HJ01
5H029HJ04
5H029HJ18
5H050AA08
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB11
5H050DA02
5H050DA03
5H050DA06
5H050DA07
5H050DA10
5H050DA19
5H050EA08
5H050FA05
5H050GA18
5H050HA01
5H050HA04
(57)【要約】
【課題】安全性を高めた且つ高電池容量とし、負極活物質に採用した酸化珪素類の充放電サイクルでの急激な容量劣化の主要因である珪素-リチウム合金になる過程での体積膨張を抑制できたリチウムイオン二次電池と常法の塗装法を利用できるリチウムイオン二次電池の製造方法を提供することにある。
【解決手段】正極集電体の爆発的燃焼をするアルミニウム箔から正極集電体としてステンレススチール316L箔等の不燃性薄箔に変更し電池安全性を高める。電池構成要素のセパレータ、銅箔、SUS316L箔を極力薄くし、放電特性改良にナノオーダーのグラフェン類を加えて無数の電子電導性回路を形成して、環境にやさしい水性の塗膜用スラリーを正極、負極に共通に使えるバインダーポリマーを使用する。リチウム源を正極に依存しないリチウム金属箔を用いて負極前駆体に貼り付けて電池構成物に巻回しておいて電解液を注入し、初期急速充電において電流値検出限界で電流値収束確認をして真の負極活物質の珪素―リチウム合金を生成させる製造方法にする。電気自動車用電源、太陽光、風力発電電力の定置型蓄電装置、トラック、トレーラーに搭載して移動型蓄電力装置の内蔵電池として使用する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極、正極、セパレータ、電解液からなるリチウムイオン二次電池において、負極は、銅箔厚み5ミクロン~8ミクロンに一酸化珪素、シリカ(二酸化珪素)、あるいはその混合物の92質量%~99質量%、グラフェン類、カーボンブラックを含む導電助剤6質量%~1質量%の負極前駆体膜にリチウム金属箔が張り付けておいて、正極にステンレススチールのモリブデン含有1.5%-3.5%含有し、厚み4~7ミクロンのステンレススチール箔にリチウム遷移金属複合酸化物93質量%~98質量%と導電助剤にグラフェン類、カーボンブラック、黒鉛粉砕品を含む導電助剤6質量%~2質量%からなる塗布膜と、セパレータにポリメチルペンテン樹脂と超高分子量ポリエチレン類とポリエチレン類と界面改質剤からなる厚さ4~10ミクロンの微多孔膜と電解液とにより構成されている巻回物をラミネートレトルトパックに封入後、初回の充電で負極電位0V~0.047Vにおいて真の負極活物質として珪素―リチウム合金の反応が完結したことを0.01mA~0.001mAの充電器電流検出下限で電流値が収れんするのを確認することを特徴とするリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項2】
負極が、請求項1の銅箔厚み5ミクロン~8ミクロンに一酸化珪素、シリカ(二酸化珪素)、あるいはその混合物92質量%~99.5質量%、グラフェン類、カーボンブラックを含む導電助剤6質量%~0.5質量%からなる負極前駆体膜と正極がステンレススチールのモリブデン含有1.5%-3.5%含有し、厚み4~7ミクロンのステンレススチール箔にリチウム遷移金属複合酸化物93質量%~98質量%とグラフェン類、カーボンブラック、黒鉛粉砕品を含む導電助剤6質量%~2質量%からなる正極膜を製造するにあたり、バインダーポリマーにフルオロエチレンとビニルアルキルエーテルの交互共重合体であり複数の官能基を有するラテックスに増粘剤、スラリー安定剤を用いることを特徴とする請求項1のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項3】
カルボキシ基を有するMWCNT、グラフェンオキサイド(GO)、SWCNT、MWCNT、カーボンブラックとからなる導電助剤混合物と複数の官能基を有するフルオロエチレンとビニルアルキルエーテルの交互共重合体のラテックスと一酸化珪素、シリカ(二酸化珪素)、あるいはその混合物からなる水性スラリーを負極前駆体塗膜形成に使用することを特徴とする請求項1~2のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項4】
カルボキシ基を有するグラフェンとSWCNT、MWCNT、カーボンブラックと必要に応じて粉砕黒鉛微粉からなる導電助剤混合物とリチウム遷移金属複合酸化物を疎水性にバインダーポリマーで表面被覆処理をしてから複数の官能基を有するフルオロエチレンとビニルアルキルエーテルの交互共重合体のラテックスとを混合して水性スラリーを正極塗膜の形成に使用することを特徴とする請求項1~3のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項5】
中心層にステンレススチール系金属箔と最外層にナイロンあるいはポリエステルと最内層にポリプロピレンないしポリエチレンからなる厚み20~70μmのレトルトパック用外装材を用いてレトルトパック型のシート電池セルをつくる。電池モジュール化するにあたり、初回の充電放電後に、減圧にして発生ガスと過剰な電解液を吸引除去し、第二回目以降の充電後に完全封口する。三回目の充電後にセル筐体を機械的方法で圧下しておく治具を電池モジュールに内蔵することを特徴とする請求項1~4のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項6】
電気自動車の電源とすることを特徴とする請求項1~5に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項7】
定置型自然エネルギーの電力の蓄電装置あるいはトラック、トレーラーで可搬可能な移動型蓄電電力装置の電源と使用することを特徴とする請求項1~5に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項8】
都市資源の廃リチウムイオン電池から回収した塩化リチウムを溶融電解法により金属リチウムを製造するにあたり電源とすることを特徴とする請求項1~5および請求項7~8のリチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池及びその製造方法に関する。
具体的には、リチウムイオン二次電池の安全性を高めた超高容量のリチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、近年、例えばノートブックパソコン、携帯電話、一体型カムコーダー等の携帯用電子機器の主電源として広範に普及している。EVシフトに向かって電池安全性が高く高容量の(電気自動車(EV)走行距離の伸びる)の大型リチウムイオン二次電池が市場で求められている。
【0003】
リチウムイオン二次電池容量を高めるのに負極活物質にシリコン金属ナノ粒子、一酸化珪素が提案されている。リチウムイオン二次電池として工業化するには、例えば、リチウム金属と酸化珪素(一酸化珪素、二酸化珪素)との電解液との接触後。充電により珪素-リチウム合金の負極活物質化は、ある程度に容量向上することが知られているが、初充電の急激な体積膨張と放電時の収縮により電池容量保持率の急激な低下が起きて実用化できないでいる。安定した電池容量の保持率が発現できず、工業的に難が見られ、問題解決にはなっていないのが現状である。一方。小型電子機器電源用リチウムイオン二次電池には、正極集電体にアルミニウム箔が使用されてきたが、誤用で400℃に温度が上昇すると爆発的燃焼が起こる。携帯電話、ノートブック型パンコンでの発火事故と近年、電気自動車に搭載した大型リチウムイオン二次電池では、自動車全体が、燃えてしまう激しい発熱発火事故が、先行している海外で起きている。可燃性のアルミニウム箔に代わる電解液に耐食性のある不燃性の正極集電体が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2013/168727 A1
【特許文献2】WO2012/144177 A1
特許文献1には、金属リチウムをリチウムドープ可能なSi系材料と特定の溶剤の存在下に混練・混合する方法が提案されている。スラリーをつくり集電体箔に塗布して負極を作ることが提案されている。電解液を注入し、初回充電を負極に電流が流れなくなるまで行いリチウムドープを完結する本発明と同じ確認が取れていないために、高容量を得ているものの、129mV(Li/Li)の電位は、本発明での0.047Vの珪素リチウムの電位より高く、珪素―リチウム合金の完結度が低いと推定できる。電子を強制的に流入させて電流が流れなくなるのを確認して合金の完結を確認する本発明とは異なる。
特許文献2には、負極活物質にSiOx(0.5≦x≦1.5)を第一の粒子として LiMgPO4を第二の粒子80:20~99:1とを混合した負極として充電時の体積膨張を抑制する目的は、同じであるが、本発明は、一酸化珪素単独、二酸化珪素(シリカ)単独、その混合物にリチウム金属によって負極に電流が流入しなくなる充電終点を規定して活物質である珪素―リチウム合金を作る本発明とは、別法である。
【特許文献3】2018-67518
負極にSiO(0.5≦x≦1.6)で表されるケイ素化合物を含有することに限定している。x=2の二酸化珪素、またはそれを主成分としている本発明とは異なる。
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】株式会社 大阪チタニウムテクノロジーズ 講演 木崎 信吾、2018年2月2日
【非特許文献2】産業技術総合研究所 新技術説明会資料2019年7月2日
【非特許文献4】Appl.Sci.2018,8,1245
非特許文献1には、一酸化珪素の熱処理の有無による容量劣化挙動が示されている。
非特許文献2には、カーボン被覆のアモルファス一酸化珪素の微粒子が、負極活物質として紹介されているが、充放電サイクルにおいて容量保持率を良好にできない原因としてリチウム吸蔵に伴う体積変化(膨張)に対処できていないことを指摘している。
非特許文献3には、一酸化珪素膜を集電体箔に蒸着させて一酸化珪素自体は、高容量を保持する負極活物質であることを示している。
非特許文献3には、酸化珪素(SiO)のリチウム珪素合金/酸化リチウムの研究結果が報告されている。1300mAh/gの容量まで50サイクルを超えて得られている。対リチウム金属での負極活物質の挙動の研究結果であり、大型リチウムイオン二次電池の挙動には言及していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
リチウムイオン二次電池の高容量化に正極集電体のアルミニウム箔が爆発的燃焼を起こすので電電解液に対する耐食性のある不燃性の代替品を探す。負極集電体を極力薄くしながら、負極活物質を形成する際の酸化珪素類(一酸化珪素、二酸化珪素およびこれらの混合物)のリチウムドープの際の体積膨張による電池容量保持率の急激な低下をなくする。薄くしたセパレータにおいて、セラミックスを塗付しないで耐熱性を保持し、薄くしても、電解液が熱分解で失活する温度まで破膜しないノンメルトの特性と低収縮性でありながら、シャットダウン特性を兼ね備えた微多孔膜をつくる。複数の高容量化を図るための操作因子を取り入れて、安全性の高く、良好な電池容量とその電池容量を保持ができる大型リチウムイオン二次電池とその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、現行リチウムイオン二次電池の正極集電体を400℃付近で正極活物質のリチウム遷移金属酸化物から酸素を奪い、高温を発しながら燃焼するするアルミニウム箔を使用せずに4.4V付近まで電気化学的に安定なステンレススチール316L箔あるいは、鉄系ステンレスの金属箔に変更する。
またオリビン系のリン酸鉄でも、アルミニウム箔の発火点660℃付近まで大容量になった電池の持つエネルギーが短絡(ショート)により発熱すると燃焼してしまうのでいずれにせよ不燃性の4.4V付近まで電気化学的に安定なステンレススチール316L箔あるいは鉄系の金属箔に変更する。負極は、一酸化珪素(SiO),シリカ(二酸化珪素、SiO)、それらの混合物の負極前駆体膜にリチウム金属箔を貼り付けてプレドープする操作にナノレベルの導電性のカーボンネットワークを構築して、強制的に電子を流入させて真の負極活物質の珪素―リチウム合金を電圧0-0.047Vにおいて0.1mA以下0.001mAの充電器電流検出感度限界の収斂電流値で管理する。そのために微量の添加で導電性を発現する単層グラフェンナノチューブ(SWCNT)、多層グラフェン(MWCNT、VGCF-H)、グラフェンオキサイド(GO)、アセチレンブラック等のナノレベルの導電助剤によりカーボンネットワークを形成するように添加し、バインダーに多官能基を有するフルオロエチレン・ビニルエーテル交互共重合体を使用する。ポリマーの側鎖のエーテル基は、ポリマーの側鎖にあるものを用いて、主鎖のエーテル基の切断よるポリーマー劣化のないものを選択する。エーテル基付近にリチウムイオンを配位してリチウムイオンの高導電性を付与する。金属リチウム箔による収斂電流管理の下でプレドープ前処理を施し、珪素-リチウム合金を完成する際に発生したガスを吸引・除去し、電池全体を圧下操作を施して封口する。第三回目の充電を行い、約3.5Vの中間電位まで充電し、電池モジュール製作工程に付す。充放電サイクル寿命をさらに向上するのに、貫通孔の微細孔を施してもよい。。この電気化学的前処理と以降の充放電サイクルで収縮・膨張による厚み方向の寸法変化を極力小さくする目的で固定治具を用意し、機械的な圧下処理を加える。外部冷却を容易にできるレトルトパック型電池形状にしておくのがよい。(モジュールにする際にこの治具を組み入れる。)複合的な操作因子を組み合わせて超高容量リチウムイオン二次電池とその製造方法を見出して本発明に到達した。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電池及び製造方法により、黒鉛負極の現行電池に対して電池容量が約2倍以上、大型電池に出来るように電池構成要素の薄膜化と同時に電極の広幅化を工業的生産規模で施すことにより巻回法・積層法のいずれの方法でも20倍(60倍)までにすることができる。電池のみで駆動する電気自動車(BEV)の走行距離を大幅に伸ばすことができる。特殊用途には、不燃性箔の量産幅次第であるが、更に電極面積を大きくすることにより60倍程度まで大容量化が可能になる。電池のみで稼働する電池電気自動車(BEV)に最適の電池となる。従来の正極集電体のアルミニウム箔にくらべても充電時の耐高電圧性が十分あるモリブデンを2-3%含有するステンレススチール316L箔、あるいはハイクロム・鉄系の4.4Vまで電解液に対する耐蝕性のあるNSSCFW2の正極集電体に置換すると、アルミニウム箔の熱暴走時に起きる400℃で始まる爆発的燃焼がなく、車両火災を防ぎ、電池安全性を高めることができる。一方、負極活物質に珪素-リチウム合金を用いて導電助剤として導電助剤グラフェン類、例えばVGCF-H、アセチレンブラック、微粉砕黒鉛粉末に加えてSWCNT、MWCNT等からなるナノカーボンネットワークを形成して、放電特性を高めることができる。特にシリカ(二酸化珪素)を真の珪素―リチウム合金にするにあたりリチウム金属箔からのリチウムイオンの移動を実用的な時間内で操作するのに大電流を流す(急速充電する)ことが出来るようにする上で重要である。集電体金属と電極活物質と密着性の高い多官能基を有するフルオロエチレン・ビニルエーテル交互共重合体を使用する。ラテックスを使用すると水性の電極塗布処方をつくると有機溶剤をしない環境にやさしい電極塗布方法にできた。
正極の活物質中のリチウム源を従来のように負極に利用せずに、充電時の膨張する体積分を吸収できる嵩高なリチウム金属を貼り付けることにより充電における体積変化を吸収し、容量劣化の課題を解決して超高電池容量の工業的製造が可能となった。両極の集電体に微細孔の貫通孔を施しておき、充放電サイクル寿命を更に延ばしてもよい。電池モジュール内に電池の厚み方向の寸法変化を極力抑えるために機械的に常時圧下状態を保持できる制御・工夫を施しておくと良い。またレトルトパック型電池外装筐体に圧下方向に固定する治具をつけることによって再度体積膨張が始まることを防止できる。。ナノ粒子の多い電池系での電池容量の保持率を高く維持することが可能になる。ここにあげた発明の各項目をすべて同時に取り込むことによって発明効果は、最大限に発揮されることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に本発明リチウムイオン二次電池及びその製造方法について詳細に説明する。はじめに使用する主要物質について述べる。
[1]酸化珪素
【0010】
珪素源としてナノレベルの二酸化珪素、一酸化珪素として珪素粉末の表面が二酸化珪素で被覆された粉末を使用する。所望の粒子径に粉砕機により調製してもよい。好ましくは、ナノレベルの一次粒子のであり、表面が炭素質で被覆されていればよく、粒子径は、特に限定されない。二酸化珪素では、炭素含有のヒュームドシリカが、水性の塗布液を調整するのに適しているので好ましい。。
[2]正極用集電体
【0011】
電池が誤用により万一、400℃まで電池温度が上昇した場合、正極活物質のリチウム遷移金属酸化物の酸素を奪って急激な発熱(挙動は爆発的燃焼)をもたらすアルミニウム箔は、使用はしない。かかる爆発的燃焼の心配のない薄い金属箔にモリブデン含有1.5%から3.5%含有し、好ましくは2.5%から3%含有し、厚み4~7ミクロンの110mm幅以上の正極集電体用箔である。4.4V付近まで電解液との電気化学的腐食がほとんどない2-3%モリブデン含有のステンレススチール316あるいは316L箔を集電体材料として使用するのが好ましい。また高クロム含有のNSSCFW2の薄箔を用いてもよい。例えば電極膜を形成後に0.001mmから0.5mmの細孔を剣山、レーザー照射等により突き刺し孔をあける。電飾かレーザーにより、ステンレススチール316L箔の4μm~7μm厚みの箔にあらかじめ微細孔をつけておくか、電極塗布膜を作ってから箔に貫通微細孔を施してもよい。15μmアルミニウム箔と同じ質量の5μmかそれ以下の厚みが好ましい。13-20段の連続式多段圧延ロールで作られた200mm幅から600mm幅の4~7μm厚みの広幅箔を所望の幅に裁断して使用する。また110mm幅の5μm厚みのステンレススチール316L箔を2から4枚を抵抗スポット溶接、レーザー等により接合し、所望の幅にして使用する。巻回法で大容量電池を製造する上で塗布膜幅を200mmから300mmにできる長尺ロール巻回物が好ましい。
[3]負極用集電体
【0012】
8~4μmの圧延銅箔を使用する。好ましくはリチウムを1200ppm含有する抗張力が改良された6ミクロン品を使用する。貫通微細孔を施すのが好ましい。電解銅箔は、粒界があり箔強度の点で7~」8ミクロンを使用してもよい。
[4]バインダー(結着剤)
【0013】
従来から使用されているバインダーも使用することができるが、ナノ粒子の多い本発明に。最も好ましいのは、正極、負極に共通してバインダーとして使用できる密着性、架橋性、屈曲性等の多官能基を有するフルオロアルキルエチレンとフルオロビニルエーテルの交互共重合体である。ラテックスを使用する水性塗布スラリーを作ることができる。フレークは、トルエン、キシレン等の芳香族炭素と溶媒に高濃度溶液に出来るので膀胱がん発生の疑いを否定できていないN―メチルピロリドンを使用しない。
活物質粒子と金属集電体との密着力、結着力を発現するバインダー(結着剤)となることを見出したので本発明に使用する。水性の正極塗布液を調整するに当り、水と接触するとリチウムを溶出して劣化するニッケル含有量の高いNCA,NCMを疎水化した表面にするために、NMPを使用せずにキシレン、トルエン等の芳香族溶剤に当該ポリマーフレークを溶解した溶液と混合して溶媒を除去し、乾燥粉末を前述の水性塗料とする。
導電助剤と正極材粒子と当該フレークのトルエン、キシレン等に溶解した有機溶媒溶液と混合し。乾燥して、いったん粉末としてから水性塗料化するのが好ましい。正極塗布スラリーも水を揮発させるだけの環境にやさしい塗工ができるようになる。正極には、活物質粒度と導電助剤の添加量にもよるが、活物質粒子と金属集電体との結着に5質量%~20質量%で使用する。電池容量に影響する正極材含有量を高く保持し、正極集電体箔および正極粒子との密着性を保持する上で、12質量%から15質量%を使用するのが好ましい。また負極には、ナノ粒子の酸化珪素類とナノレベルの導電助剤類を使用するので、当該バインダーポリマーは、活物質粒度と導電助剤の種類、添加量にもよるが、30質量%~38質量%で使用する。例えばAGC製ルミフロンラッテクスの4300、4400、有機溶媒により溶液にして使用するフレーク状のLF200F、LF916Fがある。ラテックスは、有機溶剤を使用しないので塗工液として環境にやさしい特徴を有している。ポリマーのエーテル結合部分に電解液の解離したリチウムカチオンが局在化して高いリチウムイオン電導性が期待されることとラテックスから電極塗工することにより水が乾燥・除去された空隙が電解液の含浸・保液を容易にする。フレークは、非水系有機溶媒に溶かして溶液にしておき不活性雰囲気中で電極集電体箔に塗布し、非水系有機溶媒を除去して電極塗工膜を製造することも従来の有機溶媒を使用している塗工装置では出来る。
正極、負極に共通して使用できるバインダーであり乾燥するとポリマーが、塗布膜を乾燥する際に架橋するために3次元で空隙とナノレベルの導電性のナノカーボンネットワークが固定されて充放電を繰り返している間の膨張・収縮による正極と負極の塗布膜の寸法変化に対応して電子電導性ネットワークとしての電導回路の断絶が多少発生しても無数のナノオーダーの電子電導回路が存在しており、電池容量の充放電サイクル中に起こる突然の低下はなくなり、良好な電池容量保持ができる。乾燥時に架橋するポリマーラテックスを使用してもよい。例えば、フルオロアルキルポリマーに2から4官能基のアクリル基を有するアクリレート、2から4官能基のメタル基を有するアクリレート、ポリフッ化ビニリデンポリマーに無水マレイン酸、アクリル酸のついたラテックス、イカルボキシル基が付加された4フッ化エチレンラテックス、カルボキシル基が付加されたエチレン・4フッ化エチレンコポリマーラテックス、カルボキシル基が付加されたエチレン・クロロトリフルオロエチレン(ECTFE)コポリマーラテックス、4フッ化エチレン・6フッ化プロピレン(FEP)コポリマーラテックス、カルボキシル基が付加されたペルフルオロアルコキシフッ素ポリマーラテックス等のカルボキシル基が付加されたラテックスを併用することもできる。カルボキシ変性SBRラテックスとCMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム)の併用系、カルボキシ変性ポリブタジエンラテックスとCMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム塩の併用系も使用しても構わない。絶縁性のCMCより導電性もあり、増粘効果も得られる水分散した酸化グラフェン、還元型酸化グラフェンは、水性塗布スラリー調整に好んで使用できる。
[5]負極活物質
【0014】
本発明では、負極活物質としてLiSi(3.5≦x≦4.4)を用いるが、蒸着(スパッタリング)装置をリチウムイオン二次電池負極の製造に新規な設備投資をすることなく、既設の塗布・乾燥設備を用いて従来の塗工法で、一酸化珪素のみならず、二酸化珪素を出発原料とする負極を製造できるようにする。従来のプレドープ法と異なり、負極シートにリチウム金属箔を貼り付けた後、電池構造に巻回して、レトルトパック型筐体に挿入して電解液を注液して封口してから負極活物質にするのが特徴である。
初回の充電を前処理とみなし、酸化珪素類の元来保有する約3Vのポテンシャルと0Vのリチウム金属箔を負極塗布面に貼り付けて、電池に組み立てておいてから初回の前処理の第1回の充電において0-0.047Vの過電圧のない電位において珪素―リチウム合金が出来上がるのを確認するために0.1mAから0.001mA、好ましくは0.01mAから0.001mA、の充電機電流検出下限で電流値が収れんし、電流が流れなくなることをもって当該合金の反応完了終点とする。収れんするとは、まったく同じ電流値を示したままか、電流値がほとんど電流検出下限値に近く変化が微小であることを意味する。負極電位0V~0.047Vとは。電池の過電圧を差し引いた負極電位とする。常法の電池系において酸化珪素類とリチウム金属箔のポテンシャル電位差がなくなるのに360時間を要しているのを通常の0.1-1Cレートで充電する上で、ナノレベルの無数の電子電導回路を形成するナノレベルの導電助剤によるカーボンネットワークを必須とする点も、従来のプレドープ法と異なる。ポテンシャル差で成り行き360時間かかるということは、1/360=0.00278C相当の電流が流れるということであり、導電性カーボンネットワークにより珪素酸化物粒子を覆うことにより、急速充電(通常の電池の充電レート)にすることができてプレドープに要する時間を短縮できることが本発明の効果である。シリカ(二酸化珪素)は、絶縁物であり、プレドープ初期にいかに円滑に粒子へ電子を送り込むか(円滑な充電をする)にかかる。
ナノ粒子のSWCNT,MTCNTのナノレベルの導電助剤の導入により、無数の(密な)導電性回路生成との相乗効果として電池内で珪素―リチウム金属の真負極活物質への転換が容易になる。
またこの負極電位の確認でリチウム金属の完全な消滅を確認したことになる。負極内におきる珪素―リチウム合金(LixSi)を正確に所望の4.125から4.25のx値を形成させるのとリチウム金属を珪素―リチウム合金に完全に変化させるプレドープを迅速に終えるために負極に強制的に電子を流し込む(充電装置で急速充電する)のが本発明の特徴である。従来の平衡電位でなく、珪素に対してリチウム比が理論値の二酸化珪素のx=4.125、一酸化珪素のX=4.25になるように嵩高なリチウム箔を添付して、負極への充電(電子の送り込み)の収斂していく電流値を管理する。なお、スパッタ法で得られた一酸化珪素の負極では、x=4.4と報告されているのは承知しているが、本発明では。これらの数値を理論値として用いた。
この電流の流し込みをする強制プレドープ法で消えたリチウム金属の体積分が、珪素―リチウム合金に変化して膨張する体積分を吸収する目的で本発明がなされた。実際は、完全な珪素―リチウム合金を生成するリチウム金属量では、合金になると電池系全体を貼り合わせ時より体積が収縮する。前処理充電で発生するガスを吸引除去する際に、再封口すると同時に厚み方向を圧下して収縮分の厚みを減らしておいて固定する治具設置も考案した。ビス止めするか、圧下方向に常に爪が効いており、移動するときに爪を起こしてロックを解除できる爪付きスライド等がある。ナノレベルの酸化珪素では、電池容量保持の上で、過度な空隙を生じないようにし、ナノカーボンネットワークを緻密に保持する上で有効である。扁平状の薄いシャフトを用いて通常のように正極、セパレータを介して原料の酸化珪素類の負極前駆体とリチウム金属貼り合わせた電池前駆体の扁平型巻回物を得て、レトルトパックに挿入して、電解液を注入してから活物質の珪素-リチウム合金にするのが本発明の高容量電池の製造方法の特徴である。
[6]正極活物質
【0015】
本発明には、コバルト酸リチウム、3元系のマンガン、ニッケル、コバルトのリチウム遷移金属複合酸化物等が使用される。リン酸第一鉄等のオリビン型も使用できるが、高容量電池とするには、コバルト酸リチウムはじめ遷移金属リチウム複合酸化物を使用することが好ましい。正極活物質としては、リチウムイオン二次電池の正極活物質として用いることができる材料であれば特に限定されないが、例えば
LiNi1/3Mn1/3Co1/3、LiCoO、LiNiMgMO、LiNiAlMgMO、Li(MnM)、Li(NiMnCo)O等のリチウム金属酸化物、又はLiFePO、LiMnPO、LiNiPO、LiCoPO、LiFe(PO、及びLi(PO等のリン酸金属リチウムがある。正極活物質の形態は、好ましくは粉体である。正極活物質の平均粒径としては、例えば1μm~20μm、好ましくは1μm~10μm、より好ましくは1μm~6μmの範囲である。また、特にマグネシウムを添加したNCA,NCMタイプの高ニッケルのリチウム遷移金属複合酸化物を使用するのが、電池寿命の観点から好ましい。
[7]電解液
【0016】
本発明には、リチウムイオン二次電池に使用されている電解液を使用することができる。電池容量保持率の観点から1.5Mから0.8MのLiBFの電解液、好ましくは1.5Mから1.0Mのγ-ブチロラクトンを主成分とするポリエチレンカーボーネート、プロピレンカーボネート、メチルエチルカーボネートを含有する組成が好ましい(例えば富山薬品工業社製)。あるいは、1.5Mから1.0MのLiPFのγ-ブチロラクトンを主成分とするポリエチレンカーボーネート、プロピレンカーボネート、メチルエチルカーボネートを含有する組成が好ましい(例えば富山薬品工業社製)。有機固体電解質化できるイオン液体とゲル化を促進できるポリマーを電解液成分のγ―ブチロラクトンないしプロピレンカーボネートの溶液にして当該電解液に添加するか、独立して追加添加してもよい。電気自動車のEV電池振動テストあるいは液漏れ対策となり好ましい。当該フルオロアルキルエチレンとフルオロビニルエーテルの交互共重合体は、電解液と有機固体電解質を形成するので、バインダー量以外に増量添加を単独あるいはフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとのブロック共重合体との混合物をセパレータに塗布乾燥しておいてもよい。本発明の多官能基を有するフルオロアルキルエチレンとフルオロビニルエーテルの交互共重合体は、架橋したポリマーになっており、当該電解液を吸収し膨潤していわゆるポリマー電解質(ゲル化電解質)に変わる。
[8]金属リチウム箔
【0017】
正極のリチウム源を使用しないで本電池の負極の可逆的生成物の珪素-リチウム合金、LixSi(3.5≦x≦4.4)のリチウム源とするために金属リチウム金属箔を使用する。99.9%から99.0%のリチウム金属純度の箔の厚さ10μmから55μmを使用する。幅は、広いものを得るには、絶乾の空気中かアルゴンガス雰囲気下で、ポリアセタール製シートに挟んでロールプレスで圧下して膜厚、箔幅を調節するとよい。またポリアセタール製かポリプロピレン製の大口径ロール間で圧延するとよい。負極前駆体膜上にガスデポジション法で金属リチウムを直接所望の厚み(質量)にするか、ポリプロピレンフィルム上にガスデポジションしておいて負極前駆体膜欧に転写してもよい。
[9]導電助剤
【0018】
負極活物質に使用する酸化珪素は、電子電導性の悪く、珪素粒子に電子とリチウムカチオンの伝導をいかに効率よく出来るかにかかっており、使用する導電助剤はかかる観点で選定される。ナノオーダーのカーボンネットワークに無数の電子電導回路となるように、電極内での回路切断が少々生じても全体の電子電導性に影響が極力出ないようにする。本発明のグラフェン類とは、極細の単層グラフェンチューブ(SWCNT)は、酸化珪素類と導電助剤の混合物中に0.05%から0.5%の範囲で使用される。好ましくは、0.1%から0.2%である。天然黒鉛由来の灰分が0.5重量%以下の多層グラフェン(MWCNT)および/あるいは両面に酸化剤処理でカルボキシル基を付与した水分散してあるものの併用が好ましい。カルボキシル基を有する水分散の酸化グラフェン(GO)、アセチレンブラックを含む。正極で10ミクロン以上の粒度には、微粉砕された黒鉛粉末を併用仕手もよい。CVD法でつくられたMWCNTも使用することができる。導電助剤は、酸化珪素類と導電助剤の混合物中に導電助剤として5%質量%~1質量%、好ましくは、4質量%~1質量%使用する。負極の寸法変化を小さくするのに厚み方向の厚さ変化を抑制する手段としてレトルトパック外筐から機械的手段により常時圧下状態にしておくこともナノ―ボンネッツワークの構造保持に有効であり、電池容量保持率を高く保持できる。
[10]セパレータ
【0019】
電解液を含浸し、電子絶縁性を有しており且つリチウムイオン電導性もあることが、必須要件である。セラミックスを表面に塗布したポリエチレン系セパレータは、塗装をしていない無垢の微多孔膜と比べて一桁インピーダンスが悪いことが知られており、本発明に使用するセパレータは、セラミックス塗布による耐熱性をポリメチルペンテン樹脂(PMP)垢の微多孔膜にした5-7μm厚みの耐熱性ポリオレフィンセパレータを使用する。7μmを超えた厚みのせぱれーたは、使用か野であるが、本発明の目的の高容量電池には、好ましくない。
セラミック塗布ポリエチレンセパレータも7μmくらいに膜厚を低減することは、商品改良技術として可能と思われるがしかしながら基材がポリエチレンセパレータであり、バインダーのポリイミドとセラミック塗布膜が、ポリエチレンの耐熱性改善の目的に使用されており、塗布膜全体の厚みを小さくしようとすると耐熱性の低下を招くことになり、インピーダンスを低下させるセラミック粒子を増やさなければならない。全体の塗膜厚みを下げるのにも限界がある。本発明に使用される耐熱性ポリオレフィンセパレータは、無塗装(無垢の)であり、PMP含有量が27%~48%で、厚み4~7μm、好ましくは、5μmの厚みで、適宜使用できる。本発明の高電池容量と繰り返して使用するための充放電サイクルにおいて適度に良好な容量保持率を有する。
本発明のイオン二次電池は、下記の工程を含む製造方法により好適に製造される。以下各工程を順次詳しく説明する。
本発明は、電池容量を高めるために使用部品の厚さを薄くするという一般論のある中、電池のみで稼働する電気自動車(BEV)の電源として大容量で安全な電池とするために、複合的にリチウムイオン二次電池の構成部品の選定をするとともに負極に使用する酸化珪素類(シリカ(二酸化珪素)、一酸化珪素、およびその混合物)の初期充電時の珪素―リチウム合金(LixSi 3.5≦x≦4.4)に変化させる際に体積膨張を起こし、電子回路の断線による電池容量の低下を抑制ないし解消するために複合的な工夫を行い効果の最大範囲を見出して本発明に至った
負極が、銅箔厚み5ミクロン~8ミクロンに一酸化珪素、シリカ(二酸化珪素)、あるいはその混合物92質量%~99.5質量%、好ましくは、94質量%~98質量%、導電助剤にグラフェン類、カーボンブラックを含む導電助剤混合物8質量%~0.5質量%、好ましくは5質量%~2質量%の負極前駆体をポリマーバインダーリチウム金属箔と貼り合わせる。正極にステンレススチールのモリブデン含有1.5%-3.5%(好ましくは2.5%-3.0%)含有し、厚み4~7ミクロンのステンレススチール箔にリチウム遷移金属複合酸化物93質量%~99質量%、好ましくは95~98質量%とグラフェン類、カーボンブラック、黒鉛粉砕品を含む導電助剤混合物7質量%~1質量%、好ましくは5質量%~3質量%にバインダーポリマーとしてフルオロエチレンとビニルアルキルエーテルの交互共重合体であり複数の官能基を有するラテックスに増粘剤、スラリー安定剤を加えて当該ステンレススチール箔に塗布し、乾燥して、正極を得る。正極活物質粒子表面を疎水性にするために有機ポリマー、好ましくは、芳香族有機溶剤に溶解するフルオロエチレンとビニルアルキルエーテルの交互共重合体であり複数の官能基を有するポリマーフレークを用いて、粒子表面を被覆し、乾燥後に水性塗料化する。。ポリメチルペンテンと超高分子量ポリエチレンを主成分とする4~7μmのセパレータを巻回してラミネート筐体に入れて、電解液を注入したのちに、充電と放電操作を少なくとも1回以上繰り返して、リチウム金属を酸化珪素類とを電気化学的に珪素とリチウムとの合金にする前処理充電をすることを特徴とするリチウムイオン二次電池とその製造方法。
(工程1)酸化珪素類(SiO,SiO,その混合物)を負極原料として活物質のLixSi(3.5≦x≦4.4)の負極活物質にするための負極前駆体膜を形成する工程。
(工程2)リチウム遷移金属複合酸化物粒子粉末を導電助剤粉末との混合物を正極にする工程。
(工程3)工程1と工程2で得られた電極間に4-メチルペンテン-1(PMP)を27質量%以上48質量%範囲の無塗装(無垢)の耐熱性ポリオレフィンセパレータを7μmから4μmの厚みから適宜選択し、当該セパレータを挟み、扁平ないし薄い長円形の巻き芯を用いて巻回し、電池を組み立てる工程あるいは、負極、正極にあらかじめ貼り付けておいて扁平ないし薄い長円形の巻き芯を用いて巻回し、電池を組み立てる工程
(工程4)工程3で得られた巻回物をレトルトパック外装袋に挿入する。ステンレススチール箔等の金属箔薄膜と最外装がナイロン、ポリエステルフィルムと最内装がポリプロピレンからなる多層ラミネートのレトルトパックの外装袋を使用する工程。
(工程5)レトルトパックの液注入孔以外を熱シールする。液注入孔を再度開孔できるように仮封口以外は完全な気密を保持できるように完全に熱シール封口する工程。
(工程6)電解液を注入し、使用した正極の所定の充電電位に到達し、定電圧に保持して減衰していく電流値を検出可能な下限の電流値に達する収れんを以て珪素―リチウム合金の反応完結として充電監視する工程。
(工程7)前処理のリチウム金属のプレドープの充放電を1回ないし2回繰り返す際に、発生ガスを吸引。除去して液注入孔を完全封口する工程。
(工程8)電池モジュールの組み立て工程。電池セル(単セル)を金属板の4角に蝶ねじをつけておきねじを締めるか爪をつけてた板で膨張方向を固定しておく。あるいは、篏合性の高く厚み方向の変化を押さえることのできる剛性のあるモジュール筐体に入れておく工程。
本発明では、通常行われるリチウムイオン二次電池製造工程に対して工程6と工程8に変更するとともにバインダーに側鎖にエーテル基を有する多官能性のフッ素系ポリマーを使用し、乾燥時にポリマーが自己架橋し、塗布膜が3次元的に固定され、電解液が膨潤しているのが特徴である。また当該電池の負極活物質の珪素―リチウム合金を0.047V(対Li/Li)以下になる電池充電電圧に設定して、定電流定電圧(CCCV)充電において、電流値が減衰し、充電器電流下限値に収れするまでを厳密に監視する前処理充電等の複合的な総合的な工程を構成しているのが、本発明の特徴である。
【0020】
本発明の機械的圧下拘束手段とは、電池の厚み方向に圧下する手段であり、膨張に対して拘束することができればよい。例えば、簡便な方法としてレトルトパック電池を剛性のあるプラスチック板か金属板で固定して4角に蝶ねじをつけて締めておき厚み方向に圧下する。あるいは、篏合性の高い厚み方向に押さえつけておける容器に入れる。あるいは金属板にゲージ圧検知できるようにしておいて厚み方向の変化をプレス等の圧下操作で調整・制御を機械的に行う。前処理第2回目の放電での電池厚みからそれ以降、充放電時の寸法変動は、小さいと期待される。またLiSiOは、負極活物質原料に酸化珪素を使用した物質の証拠マーカーとして検出できる。
【0021】
本発明でのリチウムイオン二次電池の充放電方法には、従来採用されているリチウムイオン二次電池の方法が使用される。特に本発明にはレトルトパック型電池構成の電池を充放電するのが好ましい。正極活物質が塗布された正極と負極活物質を塗布した負極と対峙させて、その間にセパレータを挟み電解液を含浸する。正極寸法よりやや大きい負極寸法、電子絶縁性を確保するためにさらに大きい寸法のセパレータとする。正極に正確に重なるようにセパレータと負極を重ねて両最外側の正極には、セパレータを介して片面塗布の負極があるように積層しておく。正極、負極とも金属端面は、絶縁性ポリマーにより被覆しておき、いかなる内部短絡(ショート)を防止しておくのがこのましい。本発明に使用する金属の集電体は、切断端面と縁は、絶対に負極と正極が接触しないように金属箔切断面と端面には0.5mm好ましくは1mm-2mmの絶縁性塗膜を施すことが推奨される。大容量のBEV電池でのショートの事故の起こりうる因子として、裸金属端面同士の接触は回避すべきと考える。
本発明では、負極活物質に酸化珪素の超高電池容量にするために、リチウム金属を貼り付けておきプレドープする前処理を行い、充放電を少なくとも一度、好ましくは二度の充放電を工場内で行う。本発明では、電池容量の基準は、第2回目の前処理フル充電の電池容量を公称の電池容量とし、本発明の電池容量とする。正極活物質のリチウム源を使用せずにリチウム金属をリチウム源として前処理工程として初充電時に不活性な不可逆的副生成物のLiSiOを生成しながら活物質の珪素-リチウム合金粒子を形成させる。保護膜としての電解液からできたパシベーション膜により覆う前処理を採用する。また機械的操作を充放電時に電池の体積変化を極力強制的に抑制する工夫として施す。
【実施例0022】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【実施例0023】
正極ブレンド処方:
98.9質量% NCM,Li1.03Ni0.55Mg0.05Co0.10Mn0.30にルミフロンフレーク3.0重量部のトルエン溶液によって粒子表面を被覆して乾燥して疎水性の正極粒子としておく。
0.3質量% アセチレンブラック(DENKA BLACKTM)400Li
0.3質量% 微粉砕黒鉛
0.3質量% 黒鉛の水性剥離品の表面酸化MWCNT(カルボキシル化MWCNT)
0.2質量% SWCNT(Single walled CNT)
小計100質量部 (0.86806)
11 質量部 (0.095486)ルミフロンラテックス(固形分)
1.2 質量部 (0.010414)分散材兼スラリー安定剤
合計115.2質量部(100.0)
正極集電体の5μm厚みの箔に塗布して乾燥する。両面塗布品の集電体込みの厚みは159μmであった。
負極前駆体ブレンド処方:
98.8質量%(1/3SiO+2/3SiO混合物)
0.5質量% アセチレンブラック(DENKA BLACKTM
0.5質量% 酸化グラフェン
0.2質量% SWCNT(Single walled CNT)
小計100質量部 (0.71429)
38 質量部 (0.27143) バインダーラテックス(固形分)ルミフロンTM4300
2.0 質量部 (0.01428) CMC等の分散材兼スラリー安定剤類
合計140質量部 (1.0000)
負極集電体の6μm厚みのLi1200ppm含有のJX金属社製銅箔に塗布して乾燥する。
35μmの片面塗布厚みにリチウム金属箔、厚み20μmを貼り付けて5μm厚みのPMP46%含有の5μm厚みの負極塗布面よりやや大きいセパレータをリチウム金属面上に重ねた。
長円形のシャフトで反物を巻き上げると同じようにしてBEV電池巻回構成物にしました。
半径R=0.2(cm)Lw:73.0.(cm)深さLd:31.5(cm)SUS316L箔5μm正極塗工部:30.0(cm)セパレータ:
正極活物質にはNCMを使用します。
10回巻回物の電池容量=401Ah。従来品と本発明品の電池容量比400.7/40x100=10倍。負極の最内層と最外層は、正極の対極がないので無塗装の銅箔面となる。パウチ電池容器の外装シートのない電池構成材料の体積=(厚さ)x(幅)×(奥行)=1438.7(cm)=1.439(L)。4mmのシャフトの厚みは、プレドープ終了後、厚み方向にプレスするので消失する。電池出力(Wh/L)=401Ahx3.6V/1.439=1002Wh/L、厚さ6.5mm。水性塗料化したが、塗装ラインは、水分だけが蒸発する点で有機溶剤を使用しないので環境にやさしい電極塗布法によりBEV電池が得られる。
【実施例0024】
正極ブレンド処方:
98.7質量% NCA,LiNi0.75Co0.15Al0.05Mg0.05にルミフロンフレーク3.0(0.02604)をキシレンに溶解し、正極粒子の表面に付着して置き乾燥して正極粒子を疎水化しておく。
0.6質量% アセチレンブラック(DENKABLACKTM
0.3質量% 微粉砕黒鉛(日本黒鉛 270SP)
0.2質量% 黒鉛水中剥離MWCNTの表面酸化物
0.1質量% 酸化グラフェン
0.1質量% SWCNT(Single Walled Carbon Nano Tube)
小計100質量部(0.86806)
11 質量部 (0.09549)ルミフロン4400ラテックス(固形分)
1.2質量部 (0.01041)CMCを含む分散材兼スラリー安定剤類
Total115.2 質量部(100.0)
SUS316Lの5μm厚みの箔に塗布乾燥する。両面塗布の集電体込みの膜厚みは、159μm。片面塗布膜厚み33.7μmにリチウム金属箔19.5μmを貼り付けて5μm厚みのPMP46%含有の5μm厚みのセパレータをリチウム金属面上に負極塗布面よりやや大きくして重ねた。
負極前駆体ブレンド処方
99.3 質量% 酸化珪素混合物(1/3SiO+2/3SiO
0.3 質量% DENKABLACK
0.1 重量% 酸化グラフェン
0.1 質量% CVD法MWCNT
0.2 質量% SWCNT
小計 100 質量部 (0.72202)
37 重量部 (0.26715) バインダーラテックス(固形分) ルミフロンTM 4300
1.5 重量部 (0.01083) CMCを含む分散材兼スラリー安定剤類.
合計 138.5重量部 (1.0000)0.00008
負極は、圧延銅箔 6μm(JX金属社製)に塗布・乾燥する。34μmの片面塗布厚みにリチウム金属箔19.5μm厚みを貼り付けて5μm厚みのPMP46%含有の5μm厚みのセパレータをリチウム金属面上に重ねた。
半径R=0.2(cm)Lw:73.0.(cm)深さLd:31.5(cm)SUS316L箔5μm正極塗工部:30.0(cm)
セパレータ:PMP46%含有5μポリオレフィン微多孔膜
5巻回の電池容量=553(cm)=0.553(L)。プレドープ前処理終了後の充電開始時に厚み方向に加圧しておき、巻軸の厚み分は、消失した。電池出力(Wh/L)=199Ahx3.5V/0.553=1260Wh/L。厚さ2.5mm。同じロットの10回目(前処理を入れると合計13回目の充電電池を0.2mmφの釘差し試験を行ったが、白いわずかな白煙と弱いガスの噴き出しがみられたが、発火は見られなかった。
【実施例0025】
正極活物質としてNCM,Li1.03Ni0.55Co0.10Al0.005Mg0.005Mn0.30を使用し、ルミフロンフレーク3重量部を導電助剤の一部と一緒に正極活物質粒子にコーティングして乾燥して疎水性の粉末にしてから水性の正極スラリーとした。ニッケル含有量の多い正極活物質のNCMは、水中で強いアルカリ性になるリチウムの溶出を防ぐために粒子表面を疎水化しておいた。
NCMの質量=4.1mAh/cmになるように5μm厚さのSUS316L箔に塗布乾燥する。両面塗装の集電体込みの厚みは、191μmであった。
正極:
98.3質量% NCM+ルミロンフレーク3.0質量部
1.0質量% アセチレンブラック(DENKABLACKTM
0.3質量% 微粉砕グラファイト
0.2質量% 酸化グラフェン(30% atom%酸素)
0.2質量% SWCNT(Single Walled Carbon Nano Tube)
小計100質量部 (0.85179)
13 質量部(0.11073) ルミフロンTM 4300ラテックス(固形分)
1.4質量部(0.01193) CMCを含む分散材兼安定剤類
合計117.4質量部 (100.0)
負極コンパウンド:ブレンド比率 1200ppm含有の6ミクロン銅箔(JX金属社製)に塗布乾燥する。
41.7μmの負極片面厚みにリチウム金属箔の厚み42.0μmを貼り付ける。
98.8質量% シリカ(二酸化珪素、SiO)のみ
0.7 質量% アセチレンブラック(DENKABLACKTM
0.3 質量% 酸化グラフェン
0.2 質量% SWCNT
小計100質量部(0.71685)
38質量部(0.27240) ルミフロンTM 4300ラテックス(固形分)
1.5質量部(0.01075) CMCを含む分散材兼安定剤類(g)
合計139.5(1.0000)
正極塗布部分奥行長さ(Ld)30.0cm、幅(Lw)73.0cmを基準に長円形シャフトでBEV電池巻回物を得る。
半径R=0.2(cm)Lw:73.0(cm) 奥行Ld:31.5(cm)SUS316L箔5μm正極塗布部:30.0(cm)。
正極活物質にはNCMが用いられている。
巻き長さ7ターン:
電池容量は、255Ahであった。電池容量比較255/40=6.4倍。1回の充電での航続距離は400km×6.4=2560km。負極の最内層と最外層は間歇塗装で裸面の未塗装になっている。体積=(厚さ)x(幅)x(奥行)=1090cm=1.090(L)。プレドープ前処理完了後に厚み方向への圧下により巻軸の厚みも無くなると仮定している。電池出力(Wh/L)=255Ah×3.6V/1.090=843Wh/L.厚さ4.9mmであった。非常に実用的なBEV電池が安価な大量に市販されている国産のシリカ(SiO)から作ることができることに注目した。別途、同じ負極のICP発光分光分析法(ICP―AES)の元素分析により、リチウム:珪素=4.2:1のモル比が得られた。
4.20V-2.807VのCCCV(定電流-定電圧充放電)モードで検出下限電流値が0.01mAの充放電機で0.01mAに到達後、更に30分間保持する。15分間のレスト(充電と放電の切り替え時に充放電回路に電流が流れない時間)後、放電に付す。。第3回目の充電充放電を本発明の初回充放電と定義し、それ以降は、0.2Cの電流値でCCCVモードで充放電を繰り返す。
最内側がポリプロピレン層でSUS304の金属箔が中央の層で最外層がポリエステルのラミネートレトルトパックに封口されている同じロットの電池セルの10回目(前処理を入れると合計13回目の充電電池を0.2mmφの釘差し試験を行ったが、白い発煙と弱いガスの噴き出しがみられたが、発火・燃焼は見られなかった。
【比較例1】
【0026】
正極塗布膜は、平均粒子径(D(50)=5)LCO、コバルト酸リチウム(LiCoO)90.0質量部、導電助剤のSuperP 5質量部、フッ化ビニリデンのバインダーポリマー5質量部を溶剤N-メチルピロリドン溶剤で正極集電体箔の膜厚20μmの両面に塗布する。
1cmあたりの正極におけるコバルト酸リチウム(LiCoO)の質量あたりの体積は35%の空隙率に圧下して0.6426432(cm/g)であった。1cmあたり2.00mAhの正極に対峙する黒鉛量=2.00(mAh/cm)/300(mAh/g)=0.00667(g/cm)。。1cmあたりの片面塗布負極膜厚=44.17μm。集電体銅箔厚み13.0μm込み両面塗布負極の厚み=101.34m。片面塗布負極の厚み=57.17μm。黒鉛負極は、両面塗布品19枚と片面塗布2枚からなり、負極総厚み=0.20540cm。12μm厚みのセラミックス塗布PEセパレータ12μmx40=480μm=0.04800cm。黒鉛負極の現行電池総厚み=正極総厚み+セパレータ総厚み+負極総厚み=0.5314cm。縦25.0cm、横20.0cmの正極両面塗工膜20枚の電池容量=2x2x25.0x20.0x20=40000mAh=40.0Ah。正極500.0cmに重なる部分の電池体積=500.0(cm)x0.5314(cm)=266(cm)。この現行電池セルをモジュール化したEVが400km走行できた。電池出力(Wh/L)=40.0x3.6/0.266=541.Wh/Lであった。
最内側がポリプロピレン層でアルミニウム箔が中央の層で最外層がポリエステルのラミネートレトルトパックに封口されている同じ処方で作った同じロットの電池セルの10回目(前処理を入れると合計13回目の充電電池を0.2mmφの釘差し試験を行ったが、白煙吹き出しとともに激しく発火燃焼した。
【比較例2】
【0027】
イオウ系全固体電解質電池の開発会社の米国QuantumScopeからのニュース、当時の最高水準の開発中の電池の数値であった。比較したい他社の開発の状況が具体的数字で示された貴重な情報であった。和訳:2020年12月8日。セルレベルで1,000Wh/リットル(L)を超える体積エネルギー密度があり、これはトップレートの商用リチウムイオンパックの密度のほぼ2倍です。1000/2=500(Wh/L)の商用リチウムイオンパックとの比較になる。比較例1の541Wh/Lは、参照値とすることが妥当である。本発明が、国際的技術水準からみて、優れている点がわかる
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enable%20EVs%20to%20travel%20farther%20and%20charge%20faster%20-%20The%20Verge.html
なお、イオウ系全固体電解質電池の開発は。毒ガスの硫化水素発生対策が必要であり、電池容量が高くできたが開発中断した模様である。