(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180220
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】スーツケース成形用の雌型真空成形金型及びその応用
(51)【国際特許分類】
B29C 51/36 20060101AFI20241219BHJP
B29C 51/10 20060101ALI20241219BHJP
B29C 51/12 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B29C51/36
B29C51/10
B29C51/12
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023131717
(22)【出願日】2023-08-11
(31)【優先権主張番号】202310731692.6
(32)【優先日】2023-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】523308498
【氏名又は名称】▲ちょ▼州市預見旅游用品有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHUZHOU YUJIAN TRAVEL PRODUCT CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 102, Fuda Avenue, Shizi Town, Quanjiao County, Chuzhou City, Anhui Province,China
(74)【代理人】
【識別番号】100178434
【弁理士】
【氏名又は名称】李 じゅん
(72)【発明者】
【氏名】郭 昌軍
(72)【発明者】
【氏名】黄 長勇
【テーマコード(参考)】
4F202
4F208
【Fターム(参考)】
4F202AC03
4F202AF02
4F202AF14
4F202AG01
4F202AH56
4F202AM32
4F202AR13
4F202CA17
4F202CB01
4F202CB12
4F202CD22
4F202CD27
4F202CK90
4F202CN05
4F208AC03
4F208AG07
4F208AH56
4F208MA01
4F208MA03
4F208MB01
4F208MB11
4F208MC03
4F208MH06
4F208MK15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】外観面が設計の要求を満たし、ケースの厚さを均一にする、スーツケース成形用の雌型真空成形金型及びその応用を提供する。
【解決手段】金型は、上型フレーム11と、上型フレームに適応的に接続された凸型12と、下型フレーム21と、凹型22と、凹型の移動を駆動する昇降台23と、シートを挟持する素材フレーム31とを含み、上型フレームには凸型を貫通する第1の気体流路111が設けられ、凸型は駆動部を介して駆動されて移動する。吸着状態では、上型フレームが素材フレームに当接してシートの上方に第1の気体流路と連通する上部気体キャビティが形成され、第1の気体流路から下方に向けて気体を吹き付けてシートを延伸するとともに、凸型と凹型とをシートに近づく方向に移動させて成形空間を形成させることにより、延伸後のシートを第1の気体流路の気圧で凹型に密着させ、凸型の押圧により成形空間に沿って均一に分布させる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スーツケース成形用の雌型真空成形金型であって、上型モジュールと、下型モジュールと、素材フレームとを含み、
前記上型モジュールは、上型フレームと、前記上型フレームに適応的に接続された凸型とを備え、前記上型フレームには、前記凸型を貫通する第1の気体流路が設けられ、前記凸型は駆動部を介して駆動されて移動し、
前記下型モジュールは、下型フレームと、凹型と、前記凹型の移動を駆動する昇降台とを含み、
前記素材フレームは、前記下型フレームの上方に設置され、シートが下型フレームの上方にぶら下がるようにシートを挟持し、
前記凸型と凹型とは、吸着状態と型開き状態との間で切り替え可能に構成され、前記吸着状態では、前記上型フレームが前記素材フレームに当接してシートの上方に前記第1の気体流路と連通する前記上部気体キャビティが形成され、この場合、前記第1の気体流路から下方に向けて気体を吹き付けてシートを延伸するとともに、前記凸型と凹型とをシートに近づく方向に移動させて成形空間を形成させることにより、延伸後のシートを前記第1の気体流路の気圧で前記凹型に密着させ、前記凸型の押圧により成形空間に沿って均一に分布させ、前記型開き状態では、前記凸型と凹型との両方を前記素材フレームから離れる方向に移動させて、成形後のシートから分離させる
ことを特徴とするスーツケース成形用の雌型真空成形金型。
【請求項2】
前記凹型は下方に延びる成形面を有し、前記凸型の押圧面は前記成形面に倣って設けられ、前記吸着状態では、前記成形面と押圧面との間に前記成形空間が形成される
ことを特徴とする請求項1に記載のスーツケース成形用の雌型真空成形金型。
【請求項3】
前記成形面には、紋様部分及び/又は光沢部分が設けられている
ことを特徴とする請求項2に記載のスーツケース成形用の雌型真空成形金型。
【請求項4】
前記下型フレームには第2の気体流路が設けられており、前記吸着状態において、前記凹型と前記昇降台との間に前記第2の気体流路と連通する下部気体キャビティが形成され、この場合、前記第2の気体流路により下方へ気体を吸い込み、前記型開き状態において、前記第2の気体流路から上方に向けて気体を吹き付ける
ことを特徴とする請求項1に記載のスーツケース成形用の雌型真空成形金型。
【請求項5】
前記第1の気体流路は、前記凸型の中央に沿って設置されている
ことを特徴とする請求項1に記載のスーツケース成形用の雌型真空成形金型。
【請求項6】
前記凹型には複数の液体通路が設けられ、各液体通路は前記凹型の角部付近に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載のスーツケース成形用の雌型真空成形金型。
【請求項7】
請求項4に記載の雌型真空成形金型に適用されるスーツケースの雌型真空成形方法であって、
前記方法は、
吸着時における
シートを素材フレームに固定して、シートへの加熱が完了した後に、素材フレームを下型フレーム上に移動させる工程S1と、
上型フレームを素材フレームに当接させる工程S2と、
第1の気体流路から下方に気体を吹き付けてシートをバブル状に延伸する工程S3と、
第1の気体流路から気体を吹き付け続け、昇降台により凹型を上昇させるとともに、下型フレームに設けられた第2の気体流路により気体を吸い込み始める工程S4と、
凸型を下降させて前記凹型と成形空間を形成させ、シートを前記凹型に密着させて前記凸型の補助により成形する工程S5と、
型開き時における
上型フレームにより凸型を同期して上昇させる工程S6と、
凹型を下降させて、第2の気体流路から上方へ気体を吹き付けて、成形後のシートを凹型から離脱させる工程S7と
を含むことを特徴とするスーツケースの雌型真空成形方法。
【請求項8】
吸着時に、前記第1の気体流路の気体が凸型の中央部から外側に向かって下方へ拡散する
ことを特徴とする請求項7に記載のスーツケースの雌型真空成形方法。
【請求項9】
吸着前に、インサートを前記凹型に載置して、インサートを成形空間内でシートと一体成形させることができる
ことを特徴とする請求項7に記載のスーツケースの雌型真空成形方法。
【請求項10】
請求項4に記載の雌型真空成形金型に適用されるスーツケースの雌型真空成形方法であって、
前記方法は、
吸着時における
インサートを凹型上に載置する工程S1と、
シートを素材フレームに固定し、シートへの加熱が完了した後に、素材フレームを下型フレーム上に移動させる工程S2と、
上型フレームを素材フレームに当接させる工程S3と、
第1の気体流路から下方に気体を吹き付けてシートをバブル状に延伸する工程S4と、
第1の気体流路から気体を吹き付け続け、昇降台により凹型を上昇させるとともに、下型フレームに設けられた第2の気体流路により気体を吸い込み始めて、凹型上のインサートをシートと一体成形させる工程S5と、
型開き時における
凹型を下降させて、第2の気体流路から上方へ気体を吹き付けて、成形後のシートを凹型から離脱させる工程S6と
を含むことを特徴とするスーツケースの雌型真空成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空成形金型の技術分野に関し、具体的には、スーツケース成形用の雌型真空成形金型及びその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
真空成形のプロセスは、シート切断と、シート固定と、加熱と、成形と、離型と、トリミングと大まかになり、その中でも、成形は極めて重要な一環であり、加熱されたシートを真空吸着により金型に吸着させ、冷却すると成形が完了する。従来のスーツケース成形は、一般的には雄型による真空成形を採用しており、雄型による真空成形のケースの外観面は、金型成形面の反対側にあり、さらに、シートの厚さに影響されて、雄型による真空成形のプロセスで外観面の線、角などがはっきりしない問題が発生しやすい。また、雄型による真空成形時、ケース上の紋様、模様等はいずれもシート上に設ける必要があり、シートが延伸されると紋様、模様等もそれに応じて変形し、設計された要求を達成することが困難である。また、シートは、真空成形時に先にバブル状に延伸され、
図1に示すように、延伸後のシートは両側が厚く、中央が薄い状態となり、その後の成形プロセスでは、
図2及び
図3に示すようにケースの厚さが不均一になったり、縁や角が局所的に過度に薄くなったりすることが起こりやすいため、ケースの落下試験時に不合格となることが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、従来のスーツケースの外観面が設計の要求を満たすことが困難で、ケースの厚さが不均一であるという問題を改善することを目的としたスーツケース成形用の雌型真空成形金型を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は以下のような技術案を採用する。
【0005】
スーツケース成形用の雌型真空成形金型は、上型モジュールと、下型モジュールと、素材フレームとを含み、前記上型モジュールは、上型フレームと、前記上型フレームに適応的に接続された凸型とを備え、前記上型フレームには、前記凸型を貫通する第1の気体流路が設けられ、前記凸型は駆動部を介して駆動されて移動し、前記下型モジュールは、下型フレームと、凹型と、前記凹型の移動を駆動する昇降台とを含み、前記素材フレームは、前記下型フレーム上に設置され、シートが下型フレームの上方にぶら下がるようにシートを挟持する。さらに、前記凸型と凹型とは、吸着状態と型開き状態との間で切り替え可能に構成され、前記吸着状態では、前記上型フレームが前記素材フレームに当接してシートの上方に前記第1の気体流路と連通する前記上部気体キャビティが形成され、この場合、前記第1の気体流路から下方に向けて気体を吹き付けてシートを延伸するとともに、前記凸型と凹型とをシートに近づく方向に移動させて成形空間を形成させることにより、延伸後のシートを前記第1の気体流路の気圧で前記凹型に密着させ、前記凸型の押圧により成形空間に沿って均一に分布させ、前記型開き状態では、前記凸型と凹型との両方を前記素材フレームから離れる方向に移動させて、成形後のシートから分離させる。
【0006】
さらなる改善として、前記凹型は下方に延びる成形面を有し、前記凸型の押圧面は前記成形面に倣って設けられ、前記吸着状態では、前記成形面と押圧面との間に前記成形空間が形成される。
【0007】
さらなる改善として、前記成形面には、紋様部分及び/又は光沢部分が設けられている。
【0008】
さらなる改善として、前記下型フレームには第2の気体流路が設けられており、前記吸着状態において、前記凹型と前記昇降台との間に前記第2の気体流路と連通する下部気体キャビティが形成され、この場合、前記第2の気体流路により下方へ気体を吸い込み、前記型開き状態において、前記第2の気体流路から上方に向けて気体を吹き付ける。
【0009】
さらなる改善として、前記第1の気体流路は、前記凸型の中央に沿って設置されている。
【0010】
さらなる改善として、前記凹型には複数の液体通路が設けられ、各液体通路は前記凹型の角部付近に配置されている。
【0011】
また、上記のような雌型真空成形金型に適用されるスーツケースの雌型真空成形方法を提供し、前記方法は、
吸着時における
シートを素材フレームに固定して、シートへの加熱が完了した後に、素材フレームを下型フレーム上に移動させる工程S1と、
上型フレームを素材フレームに当接させる工程S2と、
第1の気体流路から下方に気体を吹き付けてシートをバブル状に延伸する工程S3と、
第1の気体流路から気体を吹き付け続け、昇降台により凹型を上昇させるとともに、下型フレームに設けられた第2の気体流路により気体を吸い込み始める工程S4と、
凸型を下降させて前記凹型と成形空間を形成させ、シートを前記凹型に密着させて前記凸型の補助により成形する工程S5と、
型開き時における
上型フレームにより凸型を同期して上昇させる工程S6と、
凹型を下降させて、第2の気体流路から上方へ気体を吹き付けて、成形後のシートを凹型から離脱させる工程S7とを含む。
【0012】
さらなる改善として、吸着時に、前記第1の気体流路の気体が凸型の中央部から外側に向かって下方へ拡散する。
【0013】
さらなる改善として、吸着前に、インサートを前記凹型に載置して、インサートを成形空間内でシートと一体成形させることができる。
【0014】
さらに、上記のような雌型真空成形金型に適用されるスーツケースの雌型真空成形方法を提供し、前記方法は、
吸着時における
インサートを凹型上に載置する工程S1と、
シートを素材フレームに固定し、シートへの加熱が完了した後に、素材フレームを下型フレーム上に移動させる工程S2と、
上型フレームを素材フレームに当接させる工程S3と、
第1の気体流路から下方に気体を吹き付けてシートをバブル状に延伸する工程S4と、
第1の気体流路から気体を吹き付け続け、昇降台により凹型を上昇させるとともに、下型フレームに設けられた第2の気体流路により気体を吸い込み始めて、凹型上のインサートをシートと一体成形させる工程S5と、
型開き時における
凹型を下降させて、第2の気体流路から上方へ気体を吹き付けて、成形後のシートを凹型から離脱させる工程S6とを含む。
【発明の効果】
【0015】
上記技術案を採用することにより、本発明は以下の技術効果を得ることが可能である。
【0016】
1.シート材は凹型に吸着して成形されるため、ケースの外観面が凹型に密着するようにして、外観面の線、紋様、角などが外観面の設計要求を満たすように保証する。上型フレームに凸型を設け、凸型を凹型と協働させてシート成形用の成形空間を形成させ、シート成形時に、一方の面を凹型に密着させ、他方の面を凸型で押圧することにより、成形空間内に均一に分布させ、ケースの厚さを均一にし、ケース本体の強度を保証し、コーナーガード等の装飾物を減らし、コストを低減し、市場競争力を向上させることができる。
【0017】
2.従来のスーツケース真空成形金型は、雄型であることが多く、シートに紋様を設ける必要があり、シートが延伸されると紋様が異なる程度の変形を示し、局部の光沢面又はマット面を成形することもできない。本願は、凹型の成形面に紋様部分及び/又は光沢部分を設ける。例えば、成形面の平面部分に紋様を設け、凸部又は凹部を光沢部として設け、又はその逆であってもよく、具体的に限定をしない。したがって、局所の紋様又は光沢を実現する。また、凹型の成形面により紋様を成形することにより、紋様がシート材の延伸により変形しないことを保証し、紋様が鮮明で綺麗であることを保証することができる。
【0018】
3.吸着前に、インサートを凹型に載置して、インサートを成形空間内でシートと一体成形させることができるため、組み立てのステップを減らす。インサートはキャリーバー収納部であってもよく、ケースのうちの上ケースを成形する際に、キャリーバー収納部を載置する必要がなく、ケースのうちの下ケースを成形する際にキャリーバー収納部の位置にキャリーバー収納部を載置して、インサートと下ケースとを一体成形することで、上ケースと下ケースとの金型の共通化を実現し、金型のコストを低減することができる。また、キャリーバー収納部を下ケースと一体成形することにより、キャリーバーが下ケースの表面からはみ出すことを回避し、ケース全体の組立一体性及びケース全体の表面品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明の実施態様の技術案をより明確に説明するため、以下では、実施態様で使用する必要のある添付図面を簡単に紹介する。下記添付図面は本発明の一部の実施例を示すだけなので、範囲に対する限定として見なすべきではないことは、理解しておく必要がある。当業者にとって、創造的な労働を行わないことを前提に、これらの添付図面に基づいて他の関連する添付図面を得ることができる。
【
図2】延伸後のシートの、雄型での成形時の構造模式図である。
【
図4】吸着状態にある本発明の一実施形態の構造模式図である。
【
図5】本発明の一実施例にかかる、上型フレームが素材フレームに当接した際の構造模式図である。
【
図6】本発明の一例にかかる、成形されたシートの構造模式図である。
【
図10】本発明の一実施例にかかる、インサートが凹型に載置された状態の構造概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施態様の目的、技術案及び長所をより明らかにするために、以下では、本発明の実施態様における添付図面を組み合わせ、本発明の実施態様における技術案を明確且つ完全に説明する。説明される実施態様は本発明の全ての実施態様ではなく、一部の実施態様に過ぎないことは、明らかである。本発明における実施形態に基づいて、当業者が創造的な労働を行うことなく得る全ての他の実施形態は、本発明の保護の範囲に属す。したがって、以下の図面で提供される本発明の実施形態の詳細な説明は、保護を求めようとする本発明の範囲を限定することを目的とするものではなく、単に本発明の選択された実施形態を示すものである。本発明における実施形態に基づいて、当業者が創造的な労働を行うことなく得る全ての他の実施形態は、本発明の保護の範囲に属す。
【実施例0021】
図4~
図6によれば、本実施例は、上型モジュールと、下型モジュールと、素材フレーム31とを含むスーツケース成形用の雌型真空成形金型を提供する。上型モジュールは、上型フレーム11と、上型フレーム11に適応的に接続された凸型12とを備え、上型フレーム11には、凸型12を貫通して設けられた第1の気体流路111が設けられ、凸型12は、上型フレーム11に設けられた駆動部を介して駆動されて移動する。下型モジュールは、下型フレーム21と、凹型22と、凹型22の移動を駆動する昇降台23とを含む。素材フレーム31は、下型フレーム21上に設置され、シート41が下型フレーム21の上方にぶら下がるようにシート41を挟持する。さらに、凸型12と凹型22とは、吸着状態と型開き状態との間で切り替え可能に構成され、吸着状態では、上型フレーム11が素材フレーム31に当接してシート41の上方に第1の気体流路と連通する上部気体キャビティ112が形成され、この場合、第1の気体流路111から下方に向けて気体を吹き付けてシート41を延伸するとともに、凸型12と凹型22とをシート41に近づく方向に移動させて成形空間を形成させることにより、延伸後のシート41を第1の気体流路111の気圧で凹型22に密着させ、凸型12の押圧により成形空間に沿って均一に分布させ、型開き状態では、凸型12と凹型22との両方を素材フレーム31から離れる方向に移動させて、成形後のシート41から分離させる。
【0022】
なお、本実施例において、上型フレーム11に凸型12を設け、該凸型12を凹型22と協働させてシート41成形用の成形空間を形成させ、シート41成形時に、一方の面を凹型22に密着させ、他方の面を凸型12で押圧することにより、成形空間内に均一に分布させ、ケースの厚さを均一にし、ケース本体の強度を保証し、コーナーガード等の装飾物を減らし、コストを低減し、市場競争力を向上させることができる。
【0023】
具体的には、凹型22は下方に延びる成形面を有し、凸型12の押圧面は成形面に倣って設けられ、吸着状態では、成形面と押圧面との間に前記成形空間が形成される。好ましくは、成形面には、紋様部分及び/又は光沢部分が設けられる。例えば、成形面の平面部分を紋様として設け、凸部又は凹部を光沢部として設けて、マット面412と光沢面411とを成形し、又はその逆で、具体的に限定することなく、凸部又は凹部を紋様として設け、平面部分を光沢部として設けることで、局所の紋様又は光沢を実現する。また、従来のスーツケース真空成形金型は、雄型であることが多く、紋様を形成するには、シートに紋様を設ける必要があり、シートが延伸されると紋様が異なる程度の変形を示し、局部の光沢面又はマット面を成形することもできない。本実施例において、凹型22の成形面に紋様を設けることにより、紋様がシート41の延伸により変形しないことを保証し、紋様が鮮明で綺麗であることを保証することができる。
【0024】
上述した実施形態に基づいて、本発明の一つの可能な実施例において、下型フレーム21には第2の気体流路211が設けられており、吸着状態において、凹型22と昇降台23との間に第2の気体流路211と連通する下部気体キャビティ212が形成され、この場合、第2の気体流路211により下方へ気体を吸い込み、型開き状態において、第2の気体流路211から上方に向けて気体を吹き付ける。凹型22の両側を下型フレーム21に密着させて位置を制限することで、凹型22が移動中にずれないように保証することができる。なお、本実施例において、第1の気体流路111は上部気体弁に接続される。具体的には、上部気体弁がホース又はスプリングチューブを介して凸型12上の気体取り入れ口に接続され、第2の気体流路211が下部気体弁に接続されてもよい。気体弁の制御原理は従来技術であり、ここでは説明を省く。第2の気体流路211により離型や吸着を補助することで、成形時にシート41が均一に力を受けて、凹型22により良好に密着できるようにする。型開き時に第2の流路211から上方に気体を吹き付けることで、凹型22と成形後のシート41との円滑な離型を保証することができる。
【0025】
一つの実施例において、駆動部は好ましくはエアシリンダであり、凸型12は上型フレーム11上の取付板113に固定的に連結され、取付板113はエアシリンダを介して駆動されて、凸型12を上昇又は下降させるが、これに限らず、他の実施例において、駆動部も他の構造により駆動される。好ましくは、第1の気体流路111は、凸型12の中央に沿って設置され、過大な気孔がシート41による成形への影響を避けるために、複数の小さな気孔からなってもよい。通常ではケースの体積が大きいので、凹型22に複数の液体通路223を設けて、各液体通路223を凹型22の角部付近に配置することにより、成形後のシート41を素早く冷却して成形させて、生産効率を向上させることができる。
【0026】
また、上記のような雌型真空成形金型のスーツケースの製造での応用に応用されるスーツケースの雌型真空成形方法を提供し、この方法は、
吸着時における
シート41を素材フレーム31に固定し、下型フレーム21の上方にぶら下げて、シート41への加熱が完了した後に、素材フレーム31を下型フレーム21上に移動させる工程S1と、
シート41を加熱し、上型フレーム11を素材フレーム31に当接させて、上型フレーム11とシート41の上方とで上部気体キャビティ112を形成させる工程S2と、
第1の気体流路111から下方に気体を吹き付けてシート41をバブル状に延伸する工程S3と、
第1の気体流路111から気体を吹き付け続け、昇降台23により凹型22を上昇させるとともに、下型フレーム21に設けられた第2の気体流路211により気体を吸い込み始め、シート41の両面に圧力を加えることで、力のバランスを保つ工程S4と、
凸型12を下降させて凹型22と成形空間を形成させ、シート41を凹型22に密着させて凸型12の補助により成形する工程S5と、
型開き時における
上型フレーム11により凸型12を同期して上昇させる工程S6と、
凹型22を下降させて、第2の気体流路211から上方へ気体を吹き付けて、成形後のシート41を凹型22から離脱させる工程S7とを含む。
【0027】
なお、吸着時に、第1の気体流路111の気体が凸型12の中央部から外側に向かって下方へ拡散するため、シート41の受ける力のバランスをさらに保証する。
【0028】
一つの好ましい実施例において、吸着前に、インサート51を凹型22に載置して、インサート51を成形空間内でシートと41一体成形させることができるため、組み立てのステップを減らす。インサート51はキャリーバー収納部であってもよく、
図7を参照し、ケースのうちの上ケースを成形する際に、キャリーバー収納部を載置する必要がなく、ケースのうちの下ケースを成形する際にキャリーバー収納部の位置611にキャリーバー収納部を載置して、インサート51と下ケースとを一体成形することで、上ケースと下ケースとの金型の共通化を実現することができる。また、キャリーバー収納部を下ケースと一体成形することにより、キャリーバーが下ケース61の表面からはみ出すことを回避し、表面品質を向上させることができる。インサート51は、装飾リングや装飾ストリップ等であってもよく、
図8及び
図9を参照し、従来のケース61の成形において、ケース61に装飾部材を増設する必要がある場合、成形後の機械加工によりケース61に載置スロット612を加工する必要があるが、本実施例において、
図10を参照し、所望の装飾材を凹型22の成形面に載置するだけで、シート41と一体成形することができるので、ケース61の強度を強化し、ケース61を美しくすることができる。また、インサート51の形状や位置が固定されていないので、より多様な外観の成形が可能となり、金型の汎用性が向上する。他の実施例において、金属箔を凹型22上に載置して金箔押し効果を得ることもできる。模様付きのフィルムを凹型22上に載置することで、模様をケースの表面に正確に位置決め吸着させることを実現することもできる。従来のケースの真空成形において、模様はシートの表面に印刷されるので、シートが延伸されて変形すると、印刷された模様もそれに応じて著しく変形する。一方、本実施例において、フィルム模様を凹型の成形面に直接載置することができ、フィルム模様が吸着・延伸されないので、模様が延伸されて変形することのないように保証することができる。
【0029】
別のスーツケースの雌型真空成形方法は、
吸着時における
インサート51を凹型22上に載置する工程S1と、
シート41を素材フレーム31に固定し、下型フレーム21の上方にぶら下げて、シート41への加熱が完了した後に、素材フレーム31を下型フレーム21上に移動させる工程S2と、
上型フレーム11を素材フレーム31に当接させて、上型フレーム11とシート41の上方とで上部気体キャビティ112を形成させる工程S3と、
第1の気体流路111から下方に気体を吹き付けてシート41をバブル状に延伸する工程S4と、
第1の気体流路111から気体を吹き付け続け、昇降台23により凹型22を上昇させるとともに、下型フレーム21に設けられた第2の気体流路211により気体を吸い込み始め、シート41の両面に圧力を加えて、吸着力を保ちながら、凹型22上のインサート51とシート41とを一体成形させる工程S5と、
型開き時における
凹型22を下降させて、第2の気体流路211から上方へ気体を吹き付けて、成形後のシート41を凹型22から離脱させる工程S6とを含む。
【0030】
なお、本実施例において、インサート51の出し入れを容易にし、厚すぎるインサート51と凸型12との干渉を回避するために、凸型12が下降しないように制御してもよく、必要に応じて凸型12を取り外してもよい。これに限らず、具体的に限定しない。
【0031】
以上は本発明の好ましい実施形態に過ぎず、本発明の保護範囲は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の構想に属する技術的案は全て本発明の保護範囲に属する。