(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180228
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 25/08 20060101AFI20241219BHJP
C08F 212/02 20060101ALI20241219BHJP
C08L 71/12 20060101ALI20241219BHJP
C08K 5/03 20060101ALI20241219BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20241219BHJP
C08K 5/5415 20060101ALI20241219BHJP
C08L 9/06 20060101ALI20241219BHJP
C08K 9/04 20060101ALI20241219BHJP
C08G 65/333 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C08L25/08
C08F212/02
C08L71/12
C08K5/03
C08K3/36
C08K5/5415
C08L9/06
C08K9/04
C08G65/333
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023149751
(22)【出願日】2023-09-15
(31)【優先権主張番号】112122109
(32)【優先日】2023-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100204490
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 葉子
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲徳▼超
(72)【発明者】
【氏名】黄 威儒
(72)【発明者】
【氏名】張 宏毅
(72)【発明者】
【氏名】劉 家霖
【テーマコード(参考)】
4J002
4J005
4J100
【Fターム(参考)】
4J002AC08X
4J002BB02W
4J002BC01W
4J002BC02W
4J002CH07X
4J002DJ016
4J002EA048
4J002EU189
4J002EW049
4J002EW159
4J002EX037
4J002FB086
4J002FD139
4J002GQ00
4J002GQ01
4J005AA26
4J005BC00
4J005BD05
4J100AA02R
4J100AB02P
4J100AB16Q
4J100CA03
4J100CA23
4J100DA01
4J100JA43
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、低誘電率の電気的仕様を維持しながらガラス転移温度を効果的に上昇させることができる樹脂組成物を提供する。
【解決手段】樹脂組成物は、スチレンと、ジビニルベンゼンと、エチレンと、を含むモノマー混合物により重合された第1の樹脂と、ビスマレイミド変性ポリフェニレンエーテル樹脂を含む第2の樹脂と、ジビニルベンゼン架橋剤と、ノンハロゲン難燃剤と、球状シリカと、シロキサンカップリング剤と、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレンと、ジビニルベンゼンと、エチレンと、を含む第1のモノマー混合物により重合される第1の樹脂と、ビスマレイミド変性ポリフェニレンエーテル樹脂を含む第2の樹脂と、ジビニルベンゼン系架橋剤と、を含む樹脂基材と、
ノンハロゲン難燃剤と、
球状シリカと、
シロキサンカップリング剤と、を含む樹脂組成物。
【請求項2】
前記樹脂基材100重量部に対して、前記第1の樹脂の含有量が、30重量部~60重量部であり、前記第2の樹脂の含有量が、20重量部~40重量部であり、前記ジビニルベンゼン系架橋剤の含有量が、10重量部~30重量部である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記樹脂基材100重量部に対して、前記ノンハロゲン難燃剤の添加量が、20phr~50phrである、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記樹脂基材と前記ノンハロゲン難燃剤との合計100重量部に対して、前記球状シリカの添加量が、20重量部~50重量部である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記第1のモノマー混合物中のスチレン:ジビニルベンゼン:エチレンのモル比が、1:1:1~2:2:1である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記第1の樹脂の数平均分子量が、4500~6500である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記樹脂基材が、スチレン、1,2-ブタジエン、及び1,4-ブタジエンを含む第2のモノマー混合物から重合されるSBS樹脂をさらに含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記第2のモノマー混合物中のスチレン:1,2-ブタジエン:1,4-ブタジエンのモル比が、1:6:4~4:9:3.である、請求項7に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記樹脂基材100重量部に対して、前記SBS樹脂の含有量が、0重量部~30重量部である、請求項7に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記SBS樹脂の重量平均分子量が、3500~5500である、請求項7に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記球状シリカは、アクリル又はビニル表面修飾されており、平均粒径が2.0μm~3.0μmである、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
前記樹脂組成物の電気的仕様は、誘電率が3.0~3.1であり、誘電正接が0.0015未満であり、前記樹脂組成物の耐熱仕様は、ガラス転移温度が210℃を超える、請求項1に記載の樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂、特に、低誘電率樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、5G通信の発展に伴い、低誘電率(low-k)化を目的とした銅張積層板材料の開発が進められている。現在の基板の誘電率(Dk)は、3.2~5.0前後であり、将来の高周波や高速伝送の用途には適していない。現在の低誘電率方式では、誘電正接(Df)が0.0015未満になるまで電気的特性を低下させるために、一定の割合の新しい低誘電率樹脂(ポリDVB、以下第1の樹脂という)を添加することができる。しかしながら、低い電気的仕様を達成する一方で、ガラス転移温度(Tg)が低くなったり、流動性が低下したりして、全体的な加工性が低下する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、樹脂組成物の良好な加工性を達成するために、低誘電率の電気的仕様を維持しながらガラス転移温度を上昇させ、及び/又は流動性を改善することができる樹脂組成物の開発は、産業界が達成しようとしている課題である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、低誘電率の電気的仕様を維持しながらガラス転移温度を上昇させる効果を有する樹脂組成物を提供する。
【0005】
本発明の樹脂組成物は、樹脂基材と、ノンハロゲン難燃剤と、球状シリカと、シロキサンカップリング剤と、を含む。樹脂基材は、第1の樹脂と、第2の樹脂と、ジビニルベンゼン系架橋剤と、を含む、第1の樹脂は、スチレンと、ジビニルベンゼンと、エチレンと、を含むモノマー混合物により重合される。第2の樹脂は、ビスマレイミド変性ポリフェニレンエーテル樹脂を含む。
【0006】
本発明の一実施形態では、樹脂基材100重量部に対して、第1の樹脂の含有量は、30重量部~60重量部であり、第2の樹脂の含有量は、20重量部~40重量部であり、ジビニルベンゼン系架橋剤の含有量は、10重量部~30重量部である。
【0007】
本発明の一実施形態では、樹脂基材100重量部に対して、ノンハロゲン難燃剤の添加量は、20phr~50phrである。
【0008】
本発明の一実施形態では、樹脂基剤とノンハロゲン難燃剤との合計100重量部に対して、球状シリカの添加量は、20重量部~50重量部である。
【0009】
本発明の一実施形態では、第1のモノマー混合物中のスチレン:ジビニルベンゼン:エチレンのモル比は、1:1:1~2:2:1である。
【0010】
本発明の一実施形態では、第1の樹脂の数平均分子量が、4500~6500である。
【0011】
本発明の一実施形態では、樹脂基材は、スチレン、1,2-ブタジエン、及び1,4-ブタジエンを含む第2のモノマー混合物から重合されたSBS樹脂をさらに含む。
【0012】
本発明の一実施形態では、第2モノマー混合物中のスチレン:1,2-ブタジエン:1,4-ブタジエンのモル比は、1:6:4~4:9:3である。
【0013】
本発明の一実施形態では、樹脂基材100重量部に対して、SBS樹脂の含有量は、0重量部~30重量部である。
【0014】
本発明の一実施形態では、SBS樹脂の重量平均分子量は3500~5500である。
【0015】
本発明の一実施形態では、球状シリカは、アクリル又はビニル表面修飾されており、2.0μm~3.0μmの平均粒径D50を有する。
【0016】
本発明の一実施形態では、樹脂組成物の電気的仕様は、誘電率が3.0~3.1であり、誘電正接が0.0015未満であり、樹脂組成物の耐熱仕様はガラス転移温度が210℃を超える。
【発明の効果】
【0017】
以上に基づいて、本発明の樹脂組成物は、第1の樹脂(スチレンと、ジビニルベンゼンと、エチレンと、を含むモノマー混合物から重合される)と、第2の樹脂(ビスマレイミド変性ポリフェニレンエーテル樹脂を含む)との組み合わせによって、低誘電率の電気的仕様を有するように作製され得る。さらに、ジビニルベンゼンを含む架橋剤を導入することにより、低誘電率の電気的仕様を維持することができると同時に、ガラス転移温度が上昇し、流動性が改善され、それによって全体的な加工性が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、これらの実施形態は例示であり、本発明の開示はこれに限定されるものではない。
【0019】
ここで、本明細書において「ある値~他の値」で示される範囲は、その範囲内の全ての値を列挙することを避けるための一般的な表現である。したがって、特定の数値範囲の記載は、あたかもそのような任意の数値及びそのようなより小さな数値範囲が明細書に明示的に記載されているかのように、この数値範囲内の任意の数値及びその数値範囲内の任意の数値によって境界付けられる任意のより小さな数値範囲を網羅する。
【0020】
本発明の樹脂組成物は、樹脂基材と、ノンハロゲン難燃剤と、球状シリカと、シロキサンカップリング剤と、を含む。具体的には、樹脂基材は、第1の樹脂と、第2の樹脂と、架橋剤と、を含む。第1の樹脂は、スチレンと、ジビニルベンゼンと、エチレンと、を含むモノマー混合物により重合される。さらに、第2の樹脂は、ビスマレイミド変性ポリフェニレンエーテル樹脂を含む。架橋剤は、ジビニルベンゼンである。以下、上記各構成要素について詳細に説明する。
【0021】
樹脂基材
【0022】
本発明において、樹脂基材とは、樹脂組成物中の樹脂成分であり、第1の樹脂、第2の樹脂、SBS樹脂、及び重合樹脂間の架橋剤を含む。以下、上記各構成要素について説明する。
【0023】
[第1の樹脂]
【0024】
本実施形態において、第1の樹脂は、スチレンと、ジビニルベンゼンと、エチレンと、を含む第1のモノマー混合物により重合される。第1のモノマー混合物において、スチレン:ジビニルベンゼン:エチレンのモル比は、1:1:1~2:2:1である。つまり、第1の樹脂は、スチレン基比率が10%~40%であり、ジビニルベンゼン基比率が10%~40%であり、ビニル基比率が10%~20%である。いくつかの実施形態において、第1の樹脂の数平均分子量(Mn)は、約4500~6500であって良い。いくつかの実施形態において、第1の樹脂の含有量は、樹脂基剤100重量部に対して、例えば、30重量部~60重量部であり、好ましくは、例えば、35重量部~45重量部である。樹脂組成物に第1の樹脂を添加すると、樹脂組成物の誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)を効果的に低減して、低誘電率の電気的仕様を達成することができる。
【0025】
[第2の樹脂]
【0026】
本実施形態において、第2の樹脂は、ビスマレイミド(bismaleimide,BMI)変性ポリフェニレンエーテル(polyphenylene ether,PPE)樹脂を含んでも良い。例えば、本発明の第2の樹脂は、台湾特許公開第1774559号に公開されているビスマレイミド変性ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE-BMI)であっても良い。台湾特許公報第1774559号の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0027】
例えば、ビスマレイミド変性ポリフェニレンエーテル樹脂の化学構造は、次の化学式で表すことができる。
【化1】
式中、Rは、例えば、直接結合、メチレン、エチレン、イソプロピレン、1-メチルプロピレン、ピレニレン、又はフルオレニレンであり、
nは3~25の整数であり、好ましくは、10~18の整数である。
【0028】
ビスマレイミド変性ポリフェニレンエーテル樹脂は、台湾特許公開第1774559号に公開された製造方法によって形成することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。ビスマレイミド変性ポリフェニレンエーテル樹脂は、例えば他の適切な変性方法によって形成されても良い。
【0029】
いくつかの実施形態において、第2の樹脂の含有量は、樹脂基材100重量部に対して、例えば、20重量部~40重量部であり、好ましくは、例えば、30重量部~40重量部であるが、これに限定されない。第2の樹脂の化学構造は、主鎖がポリフェニレンエーテルであり、末端が耐熱性の高い反応性基(つまり、ビスマレイミド)で修飾されているため、第2の樹脂は、比較的低い誘電率と比較的低い誘電正接を有する。
【0030】
[SBS樹脂]
【0031】
本実施形態において、SBS樹脂は、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(styrene-butadiene-styrene block copolymer,SBS)を指す。SBS樹脂は、スチレンと、1,2-ブタジエンと、1,4-ブタジエンと、を含む第2のモノマー混合物により重合されて良い。第2のモノマー混合物において、スチレン:1,2-ブタジエン:1,4-ブタジエンのモル比は、1:6:1~4:9:3であって良い。つまり、SBS樹脂は、スチレン基比率が10%~40%、1,2-ブタジエン基比率が60%~90%、1,4-ブタジエン基比率が10%~30%である。SBS樹脂は、約3500~5500の重量平均分子量(Mw)を有する。いくつかの実施形態では、SBS樹脂の含有量は、樹脂基材100重量部に対して、例えば、0重量部~30重量部であるが、これに限定されない。樹脂組成物にSBS樹脂を添加すると、樹脂間の相分離が緩和され、流動性及び充填特性が改善され、それによって低誘電率特性を維持しながら全体の加工性を向上できる。
【0032】
[架橋剤]
【0033】
架橋剤は、熱硬化性樹脂の架橋度を高め、基材の剛性や靱性を調整し、加工性を調整するために使用される。一般的な架橋剤は、例えば、1,3,5-トリアリルシアヌレート(triallyl cyanurate,TAC)、トリアリルイソシアヌレート(triallyl isocyanurate,TAIC)、トリメタリルイソシアヌレート(trimethallyl isocyanurate,TMAIC)、ジアリルフタレート、ジビニルベンゼン、又は1,2,4-トリアリルトリメリテート(1,2,4-Triallyl trimellitate)等の1種以上の組み合わせである。本発明において、架橋剤は、少なくともジビニルベンゼン(DVB)系架橋剤を含む。いくつかの実施形態において、ジビニルベンゼン架橋剤の含有量は、樹脂基剤100重量部に対して、例えば、10重量部~40重量部であり、好ましくは、例えば、10重量部~30重量部である。ジ樹脂組成物にビニルベンゼン架橋剤を導入することにより、低低誘電率の電気的仕様を維持することができると同時に、ガラス転移温度が上昇し、樹脂の流動性が改善され、それによって全体的な加工性が向上する。
【0034】
ノンハロゲン難燃剤
【0035】
本実施形態において、ノンハロゲン難燃剤の具体例としては、トリフェニルホスフェート(TPP)、レゾルシノール二リン酸(RDP)、ビスフェノールAビス(ジフェニル)ホスフェート(BPAPP)、ビスフェノールAビス(ジメチル)ホスフェート(BBC)、レゾルシノール二リン酸(CR-733S)、レゾルシノール-ビス(ジ-2,6-ジメチルフェニルホスフェート)(PX-200);等から選択されるリン酸エステル、又は、ポリジ(フェノキシ)ホスファゼン(SPB-100)、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミン(MPP、即ち、Melamine Polyphosphate)、シアヌル酸メラミン(Melamine cyanurate)等から選択されるホスファゼン(phosphazene)、又は、DOPO(構造式C等)、DOPO-HQ(構造式D等)、ビスDOPO由来構造(構造式E等)等のDOPO難燃剤から選択される1つ以上の組み合わせ、アルミニウム含有次亜リン酸脂質(構造式F等)から選択されるリン系難燃剤であって良い。いくつかの実施形態では、樹脂ベース100重量部に基づいて、ハロゲンフリー難燃剤の量は、例えば20phr~50phrである。
【化2】
【0036】
球状シリカ
【0037】
本実施形態において、球状シリカは、電気的特性を低減し、流動性及び充填性を維持するために、合成法によって調製されることが好ましい。球状シリカは、アクリル又はビニル表面修飾されており、純度は99.0%以上であり、平均粒径(D50)は約2.0μm~3.0μmである。いくつかの実施形態において、球状シリカの添加量は、樹脂基剤とノンハロゲン難燃剤との合計重量100重量部に対して、例えば、20重量部~50重量部である。
【0038】
シロキサンカップリング剤
【0039】
本実施形態において、シロキサンカップリング剤としては、シロキサンが挙げられるが、これに限定されない。また、官能基の種類により、アミノシラン化合物(アミノシラン)、エポキシシラン化合物(エポキシドシラン)、ビニルシラン化合物、エステルシラン化合物、ヒドロキシシラン化合物、イソシアネートシラン化合物、メタクリロキシシラン化合物、及びアクリルオキシシラン化合物に分けることができる。いくつかの実施形態において、シロキサンカップリング剤の添加量は、樹脂組成物100重量部に対して、例えば、0.1phr~5phrである。樹脂組成物にシロキサンカップリング剤を添加することにより、ガラス繊維クロスやパウダーとの相溶性や架橋度が向上する。
【0040】
添加剤
【0041】
本発明の樹脂組成物は、上記成分に加えて、過酸化物開始剤等の他の添加剤を含有しても良い。
【0042】
なお、本発明の樹脂組成物は、実際の設計要件に従ってプリプレグ及び/又は銅張積層板(CCL)に加工できることに留意されたい。したがって、本発明の樹脂組成物を用いて製造されるプリプレグ及び銅張積層板も、より優れた信頼性を有する(所望の電気特性を維持することができる)。いくつかの好ましい実施形態では、樹脂組成物で作製された基板(又はプリプレグ)の誘電率は約3.0~3.1であり、誘電正接は約0.0015未満であり、したがって、超低誘電率の電気的仕様を達成し、ガラス転移温度は210℃を超えるなど、さらに高り得る。
【0043】
以下、実施例を挙げて本発明の樹脂組成物を詳細に説明する。ただし、以下の実施例は本発明を限定するものではない。
【0044】
実施例
【0045】
本発明によって提案される樹脂組成物が、樹脂組成物の流動性及びガラス転移温度を改善しつつ、低い誘電率及び/又は低い誘電正接を維持し、低誘電率の電気的仕様を達成できることを証明するために、以下、実施例を示し具体的に説明する。
【0046】
第2の樹脂の作製
【0047】
数平均分子量(Mn)が12,000以下、又は10,000以下(例えば、Mn=500、1400、1600、又は1800)の低分子量ポリフェニレンエーテル樹脂材料を、ジメチルアセトアミドに溶解し、次に炭酸カリウムとテトラフルオロニトロベンゼンを加えた。上記反応溶液を140℃まで加熱して8時間反応させた後、室温まで冷却し、濾過して固体を除去した。濾液をメタノール/水で沈殿させ、その沈殿物をニトロ化ポリフェニレンエーテル樹脂とした。次に、ニトロ化ポリフェニレンエーテル樹脂をジメチルアセトアミドに溶解し、90℃で8時間水素添加してアミノ化ポリフェニレンエーテル樹脂を得た。次に、アミノ化ポリフェニレンエーテル樹脂をトルエン中に投入し、無水マレイン酸及びp−トルエンスルホン酸を加え、120℃に昇温して還流させ、8時間反応させて第2の樹脂を調製した。第2の樹脂は、ビスマレイミド変性ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE-BMI)である。
【0048】
樹脂組成物の作製
【0049】
表1に示される樹脂組成物をトルエンと混合して、熱硬化性樹脂組成物のワニスを形成し、上記ワニスをナンヤグラスファイバークロス(ナンヤプラスチック社製、クロスタイプ1078LD)に室温で含浸させた後、170℃で数分間乾燥し(含浸機)、樹脂含有量が79重量%のプリプレグを得た。最後に、厚さ35ミクロンの2枚の銅箔の間に4つのプリプレグを層状に積層した。圧力25kg/cm2、温度85℃で20分間一定温度を保持した後、昇温速度3℃/minで210℃まで昇温し、その後120分一定温度を保持した。その後、130℃まで徐冷して、厚さ0.59mmの銅張積層板を得て、各種特性を評価した。
【0050】
評価方法
【0051】
各実施例及び比較例で作製した銅張積層板を以下の方法で評価し、その結果を表1に示した。
【0052】
ガラス転移温度(℃):動的機械分析装置(DMA)で試験した。
【0053】
吸水率(%):サンプルを圧力鍋にて120℃、2気圧で120分間加熱後、加熱前後の重量変化を算出した。
【0054】
288℃におけるはんだ耐熱性(秒):サンプルを圧力鍋にて120℃、2気圧で120分間加熱後、288℃のはんだ炉に浸漬し、サンプルが爆発して剥離するまでに要した時間を記録した。
【0055】
誘電率Dk:誘電率アナライザHP Agilent E4991Aを使用して、10GHzの周波数における誘電率Dkが試験された。
【0056】
誘電正接Df:誘電率アナライザHP Agilent E4991を使用して、10GHzの周波数における誘電損失Dfが試験された。
【0057】
樹脂流量:170℃±2.8℃のプレスを使用し、200±25PSIで10分間プレスした。溶融及び冷却後、ディスクを打ち抜いた。ディスクの重量を正確に計量し、樹脂の流出量を算出した。
【0058】
樹脂相分離(スライス解析):
工程1:銅張積層板を1cm×1cmのサイズに切断し、樹脂グラウト用の型に配置した。
工程2:樹脂が完全に乾燥及び硬化した後、サンプルを研削及び研磨した。
工程3:OM/SEMなどの高解像度顕微鏡を使用してサンプルを分析し、サンプル内に樹脂相分離があるかどうかを確認した。
【0059】
表1において、各成分の詳細は次の通りである。
第1の樹脂:LDM-03(デンカ株式会社より購入)
第2の樹脂:調製した第2樹脂を使用
SBS樹脂: 1,2-SBS Type-C(日本曹達株式会社より購入)
架橋剤 DVB: ジビニルベンゼン架橋剤
架橋剤 TAIC: トリアリルイソシアヌル酸架橋剤
ノンハロゲン難燃剤: PQ-60(Chin Yee Chemical Companyより購入)
二酸化ケイ素:EQ2410-SMC(Third Age Technology Companyより購入)
過酸化物:ルペロックスF(アルケマ株式会社より購入)
シロキサンカップリング剤:Z-6030(ダウコーニング株式会社より購入)
【0060】
表1 比較例1~3及び実施例1~3の樹脂組成物の組成及び物性評価
【0061】
【0062】
表1において、比較例1~3では、架橋剤としてトリアリルイソシアヌル酸(TAIC)を採用し、実施例1~3では、架橋剤としてジビニルベンゼン(DVB)を採用した。その結果、TAIC架橋剤を採用した比較例1~3に比べ、DVB架橋剤を採用した実施例1~3(実施例1と比較例1との比較、実施例2と比較例2との比較、実施例3と比較例3との比較)では、同様の低誘電率の電気的仕様を維持しながら、ガラス転移温度が上昇し、樹脂の流動性が改善され、誘電正接(Df)が低減した。
【0063】
以上のことから、本発明の樹脂組成物では、第1の樹脂(スチレンと、ジビニルベンゼンと、エチレンと、を含むモノマー混合物から重合)と第2の樹脂(ビスマレイミド変性ポリフェニレンエーテル樹脂を含む)とが配合される。その結果、本願の樹脂組成物は、l低誘電率の電気的仕様(低誘電率、低誘電正接など)を有することができ、ジビニルベンゼンを含む架橋剤を導入することにより、基板の電気的特性を維持しながら、ガラス転移温度を上昇させ、流動性を改善する効果が得られ、それによって全体的な加工性が向上する。
【0064】
本発明を上記の実施形態を参照して説明したが、本発明の精神から逸脱することなく説明した実施形態に修正を加えることができることは当業者には明らかである。したがって、本発明の範囲は、上記の詳細な説明ではなく、添付の特許請求の範囲によって定義される。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の樹脂組成物は、任意の形態の樹脂に適用することができる。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0047
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0047】
数平均分子量(Mn)が12,000以下、又は10,000以下(例えば、Mn=500、1400、1600、又は1800)の低分子量ポリフェニレンエーテル樹脂材料を、ジメチルアセトアミドに溶解し、次に炭酸カリウムとテトラフルオロニトロベンゼンを加えた。上記反応溶液を140℃まで加熱して8時間反応させた後、室温まで冷却し、濾過して固体を除去した。濾液をメタノール/水で沈殿させ、その沈殿物をニトロ化ポリフェニレンエーテル樹脂とした。次に、ニトロ化ポリフェニレンエーテル樹脂をジメチルアセトアミドに溶解し、90℃で8時間水素添加してアミノ化ポリフェニレンエーテル樹脂を得た。次に、アミノ化ポリフェニレンエーテル樹脂をトルエン中に投入し、無水マレイン酸及びp-トルエンスルホン酸を加え、120℃に昇温して還流させ、8時間反応させて第2の樹脂を調製した。第2の樹脂は、ビスマレイミド変性ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE-BMI)である。
【外国語明細書】