(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180244
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】デスロラタジン固形製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4545 20060101AFI20241219BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20241219BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20241219BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20241219BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241219BHJP
C07D 401/04 20060101ALN20241219BHJP
【FI】
A61K31/4545
A61K47/18
A61K9/20
A61K47/38
A61P29/00
C07D401/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023194752
(22)【出願日】2023-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2023108866
(32)【優先日】2023-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000169880
【氏名又は名称】高田製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】清水 美幸
(72)【発明者】
【氏名】今野 竜太郎
(72)【発明者】
【氏名】田村 優樹
(72)【発明者】
【氏名】菊池 馨
(72)【発明者】
【氏名】高木 佑理子
(72)【発明者】
【氏名】清水 優里
【テーマコード(参考)】
4C063
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB01
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4C076FF01
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4C086BC21
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4C086MA52
4C086NA03
4C086NA11
4C086NA20
4C086ZB11
(57)【要約】
【課題】経時的な類縁物質の増加が抑制され、安定性に優れるデスロラタジン固形製剤の提供を課題とする。
【解決手段】デスロラタジンと、アルギニンとを含有することを特徴とするデスロラタジン固形製剤により、類縁物質、特にN-ホルミルデスロラタジンの経時的な増加を抑制できる。固形製剤として、口腔内崩壊錠であることが好適である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デスロラタジンと、アルギニンとを含有することを特徴とするデスロラタジン固形製剤。
【請求項2】
デスロラタジンとアルギニンとの質量比[アルギニン/デスロラタジン]が0.01~0.8である、請求項1に記載のデスロラタジン固形製剤。
【請求項3】
さらにヒプロメロースを含有する、請求項1または2に記載のデスロラタジン固形製剤。
【請求項4】
口腔内崩壊錠である、請求項1に記載のデスロラタジン固形製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デスロラタジン固形製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
デスロラタジン、すなわち、8-クロロ-6,11-ジヒドロ-11-(4-ピペリジリデン)-5H-ベンゾ[5,6]シクロヘプタ[1,2-b]ピリジンは抗ヒスタミン薬であり、これを含む錠剤が「デザレックス(登録商標)錠」という名称で販売されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】デザレックス(登録商標)錠5mg添付文書(2023年1月改訂(第3版)、2021年6月改訂(第2版))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者がデスロラタジンを含有する製剤について検討を進めていくなかで、当該製剤は経時的に類縁物質が増加しやすく、安定性に関する課題を有していることが判明した。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、経時的な類縁物質の増加が抑制され、安定性に優れるデスロラタジン固形製剤の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、アルギニンを配合することにより、類縁物質のなかでも特にN-ホルミルデスロラタジンの増加を抑制でき、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
本発明は以下の態様を有する。
〔1〕デスロラタジンと、アルギニンとを含有することを特徴とするデスロラタジン固形製剤。
〔2〕デスロラタジンとアルギニンとの質量比[アルギニン/デスロラタジン]が0.01~0.8である、〔1〕に記載のデスロラタジン固形製剤。
〔3〕さらにヒプロメロースを含有する、〔1〕または〔2〕に記載のデスロラタジン固形製剤。
〔4〕口腔内崩壊錠である、〔1〕に記載のデスロラタジン固形製剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、経時的な類縁物質の増加が抑制され、安定性に優れるデスロラタジン固形製剤を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のデスロラタジン固形製剤(以下、単に固形製剤という場合もある。)は、デスロラタジンと、アルギニンとを含有する。アルギニンを配合することにより、経時的な総類縁物質の増加、特にN-ホルミルデスロラタジンの増加が抑制され、安定性に優れる固形製剤とすることができる。すなわち、本発明においては、アルギニンを製剤の安定化剤として添加する。
【0009】
デスロラタジンとしては、特に制限はなく、市場より入手可能なものを使用でき、結晶形態でも、アモルファス形態でもよい。
アルギニンとしては、市場より医薬品用途として入手可能なL-アルギニンを使用できる。
【0010】
本発明の固形製剤は、類縁物質の増加抑制の点で、さらに酸化マグネシウムを含有してもよい。
酸化マグネシウムとしては、市場より医薬品用途として入手可能なもの(例えば銘柄が「重質」、「細粒状」等の酸化マグネシウム)を制限なく使用できるが、第十八改正日本薬局方粒度測定法第2法ふるい分け法(機械的振とう法)記載の方法において、日本薬局方によるふるい番号30の篩を通過し、日本薬局方によるふるい番号83の篩を通過しない粉末を酸化マグネシウム100質量%中、70質量%以上含むものが好ましく、さらには70~80質量%含むものが好ましい。ここで上記ふるい番号30の篩は目開き寸法が500μmであり、上記ふるい番号83の篩は目開き寸法が180μmである。
また、酸化マグネシウムとしては、5gの容積が5~20mLのものが好ましく、より好ましくは6.5~19.0mLのものが好ましく、さらには6.5mLのものが好ましい。
市販の酸化マグネシウムとしては、「細粒状」との銘柄で協和化学工業株式会社より販売されている日本薬局方酸化マグネシウムが上記条件に適合し好適に使用できる。
【0011】
本発明の固形製剤は、デスロラタジン、アルギニンおよび任意に配合される酸化マグネシウム以外に、医薬品分野で使用可能な賦形剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、着色剤、甘味剤、香料等の添加剤をいずれも必要に応じて含有することができる。
【0012】
賦形剤としては、例えば、D-マンニトール、結晶セルロース、乳糖水和物、無水乳糖、精製白糖、バレイショデンプン、アルファー化デンプン、β-シクロデキストリン等が挙げられ、これらのうちの1種以上を必要に応じて使用できるが、味や造粒等のしやすさの点でD-マンニトールを使用することが好ましい。また、他の成分との反応性が低い点、成形性に優れる点、崩壊性に優れた固形製剤が得られやすい点等で結晶セルロースを使用することも好ましい。より好ましくはこれらを併用する。
【0013】
結合剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ステアリルアルコール、アンモニオメタクリレート・コポリマー、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、デキストリン、水アメ等が挙げられ、これらのうちの1種以上を使用できるが、ヒプロメロースを使用すると、デスロラタジン固形製剤の安定性がより優れ、類縁物質の生成をより抑制できる点で好ましい。
【0014】
崩壊剤としては、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、カルメロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、トウモロコシデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ等が挙げられ、これらのうち1種以上を使用できるが、崩壊性がより優れる点で少なくとも低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを使用することが好ましく、さらにトウモロコシデンプンも併用することが好ましい。
【0015】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80等が挙げられ、これらのうち1種以上を使用できる。
着色剤としては、例えば黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、食用黄色4号、食用黄色5号、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号等が挙げられ、これらのうちの1種以上を使用できる。
【0016】
甘味剤としては、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、スクラロース、ソーマチン、スクロース、サッカリン又はその塩、グリチルリチン酸又はその塩、ステビア又はその塩等が挙げられ、これらのうちの1種以上を使用できるが、デスロラタジン固形製剤においては、スクラロースとステビアを併用することが味の点で好ましい。
香料としては、オレンジエッセンス、オレンジ油、カラメル、カンフル、ケイヒ油、スペアミント油、ストロベリーエッセンス、チョコレートエッセンス、チェリーフレーバー、トウヒ油、パインオイル、ハッカ油、バニラフレーバー、ビターエッセンス、フルーツフレーバー、ペパーミントエッセンス、ミックスフレーバー、ミントフレーバー、l-メントール、レモンパウダー、レモン油、ローズ油等が挙げられ、これらのうちの1種以上を使用できる。
【0017】
その他の添加剤としては、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等のステアリン酸金属塩、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル類、フマル酸ステアリルナトリウム,タルク等)、コーティング基剤(ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルメロースナトリウム等)、コーティング可塑剤(クエン酸トリエチル等)、軽質無水ケイ酸、酸化チタン、カルナウバロウ等が挙げられ、これらのうち1種以上を使用できる。
【0018】
なお、添加剤としては、複数種の添加剤があらかじめ造粒された造粒物を使用してもよく、たとえば、D-マンニトール(賦形剤)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(崩壊剤)およびポリビニルアルコール完全けん化物(結合剤)が造粒された市販の造粒物(SmartEx(登録商標)、信越化学工業株式会社製)等を使用してもよい。
SmartEx(登録商標)は、D-マンニトール90.0~95.0質量%、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース5.0~7.0質量%、ポリビニルアルコール完全けん化物0.1~0.3質量%からなる造粒物であり、粒子径が異なる「QD-50」または「QD-100」をいずれも使用できる。
【0019】
本発明の固形製剤は、デスロラタジンおよびアルギニンを含有する限り、その態様には制限はなく、顆粒状製剤(顆粒剤、ドライシロップ剤、細粒剤等)、錠剤(即放性錠剤、口腔内崩壊錠等)等が挙げられるが、デスロラタジンは苦味を有することから、デスロラタジンを含有する核粒子にコーティング層が設けられた顆粒を含む顆粒状製剤や錠剤が好ましい。
具体的には、コーティング層を有する顆粒に、必要に応じて添加剤を添加した顆粒状製剤や、コーティング層を有する顆粒に必要に応じて添加剤を混合し、得られた打錠用組成物を打錠した錠剤が好ましい。錠剤の表面には任意の材料を用いたコーティングを行って最外コーティング層を設けることもできる。
【0020】
このように顆粒を含む態様である場合、アルギニンはデスロラタジンと共に核粒子に含まれることが好ましい。
デスロラタジンを含有する核粒子の形態としては、デスロラタジンとアルギニンと任意に添加される添加剤とを含む造粒物、添加剤粒子の表面にデスロラタジンおよびアルギニンを含む原薬層が形成されたレイヤリング粒子等が挙げられるが、デスロラタジンとアルギニンと任意に添加される添加剤とを含む造粒物であることが好ましい。
【0021】
核粒子に設けられるコーティング層には、公知のコーティング基剤を使用できるが、少なくともアミノアルキルメタクリレートコポリマーを用いることが好ましい。アミノアルキルメタクリレートコポリマーを用いると、デスロラタジンの苦味を効果的に抑制でき、デスロラタジンの安定性、溶出挙動等にも影響を与えにくく好ましい。コーティング層は、必要に応じて他のコーティング基剤やコーティング可塑剤等の添加剤を含むことができる。また、コーティング層の外側には、目的に応じたオーバーコート層を設けてもよい。オーバーコート層を設けることにより、例えば顆粒同士の固着を防止する等、特定の機能を付与することができる。
【0022】
アミノアルキルメタクリレートコポリマーとしては、市場より医薬品用途として入手可能なアミノアルキルメタクリレートコポリマーEタイプを使用できる。アミノアルキルメタクリレートコポリマーEタイプとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル及びメタクリル酸ジメチルアミノエチルの共重合体である、市販のオイドラギット(登録商標)E100、オイドラギット(登録商標)EPO、コリコート(登録商標)スマートシール30D、コリコート(登録商標)スマートシール100P等を使用できる。
【0023】
本発明の固形製剤中のデスロラタジンの含有量は適宜設定でき、固形製剤100質量%中、例えば0.5~10質量%とすることができ、好ましくは1~8質量%、より好ましくは1~4質量%である。
顆粒を100質量%とした場合、顆粒中のデスロラタジンの含有量は例えば1~13質量%とすることができ、好ましくは4~10質量%、より好ましくは6~9質量%である。
核粒子を100質量%とした場合、核粒子中のデスロラタジンの含有量は例えば3~15質量%とすることができ、好ましくは5~11質量%、より好ましくは7~9質量%である。
【0024】
アルギニンの含有量も適宜設定でき、固形製剤100質量%中、例えば0.1~10質量%とすることができ、好ましくは0.1~8質量%、より好ましくは0.1~3質量%であり、特に0.1~2質量%が好ましい。
顆粒を100質量%とした場合、顆粒中のアルギニンの含有量は、例えば0.1~15質量%とすることができ、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.2~8質量%である。
核粒子を100質量%とした場合、核粒子中のアルギニンの含有量は、例えば0.1~15質量%とすることができ、好ましくは0.2~12質量%、より好ましく0.3~9質量%である。
アルギニンの含有量が上記範囲であると、経時的な類縁物質の増加、特にN-ホルミルデスロラタジンの増加をより抑制でき、溶出挙動も良好な範囲に維持でき、崩壊性にも優れる固形製剤とすることができる。
【0025】
また、アルギニンのデスロラタジンに対する質量割合、すなわち質量比[アルギニン/デスロラタジン]は、0.8以下であることが好ましい。また、0.01以上であることが好ましく、0.05以上であることがより好ましく、0.1以上であることがさらに好ましい。
質量比[アルギニン/デスロラタジン]が上記範囲であると、経時的な類縁物質の増加、特にN-ホルミルデスロラタジンの増加をより抑制でき、溶出挙動も良好な範囲に維持でき、崩壊性にも優れる固形製剤とすることができる。特に崩壊性に鑑みれば、0.5以下が好ましい。
【0026】
固形製剤が酸化マグネシウムを含有する場合、その含有量も適宜設定でき、類縁物質の増加抑制の点で、固形製剤100質量%中、例えば1~20質量%とすることができ、好ましくは3~20質量%、より好ましくは5~15質量%であり、特に5~10質量%が好ましい。
顆粒を100質量%とした場合、顆粒中の酸化マグネシウムの含有量は例えば2~45質量%とすることができ、好ましくは6~45質量%、より好ましくは8~35質量%である。
核粒子を100質量%とした場合、核粒子中の酸化マグネシウムの含有量は例えば3~55質量%とすることができ、好ましくは9~55質量%、より好ましく12~40質量%である。
また、酸化マグネシウムのデスロラタジンに対する質量割合、すなわち質量比[酸化マグネシウム/デスロラタジン]が1~10であることが好ましく、より好ましくは2~5、さらに好ましくは2~3である。
【0027】
本発明の固形製剤が、デスロラタジンとアルギニンと任意に添加される添加剤を含有する核粒子に、アミノアルキルメタクリレートコポリマーを含有するコーティング層が設けられた顆粒を含有するものである場合、核粒子に設けるコーティング層中のアミノアルキルメタクリレートコポリマーの含有量は適宜設定できるが、固形製剤を100質量%とした場合、コーティング層中のアミノアルキルメタクリレートコポリマーの含有量は例えば1~12質量%とすることができ、好ましくは1~10質量%、より好ましくは2~8質量%である。
顆粒を100質量%とした場合、コーティング層中のアミノアルキルメタクリレートコポリマーの含有量は例えば6~20質量%とすることができ、好ましくは8~18質量%、より好ましくは10~16質量%である。
コーティング層を100質量%とした場合、コーティング層中のアミノアルキルメタクリレートコポリマーの含有量は80質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上であり、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは100質量%である。
【0028】
顆粒における核粒子とコーティング層の質量比率は、核粒子を100質量部とした場合、コーティング層は5~25質量部とすることができ、10~20質量部が好ましく、12~18質量部がより好ましい。
【0029】
固形製剤を100質量%とした場合、固形製剤中の賦形剤の含有量は例えば35~75質量%とすることができ、好ましくは40~70質量%、より好ましくは45~65質量%である。
顆粒を100質量%とした場合、顆粒中の賦形剤の含有量は例えば40~80質量%とすることができ、好ましくは45~75質量%、より好ましくは50~70質量%である。
核粒子を100質量%とした場合、核粒子中の賦形剤の含有量は例えば50~90質量%とすることができ、好ましくは55~85質量%、より好ましくは60~80質量%である。
【0030】
ここで固形製剤が錠剤であって、該錠剤が顆粒に添加剤を混合して得られた打錠用組成物を打錠した錠剤である場合、賦形剤は、顆粒(好ましくは核粒子)と、顆粒に加えられる添加剤との両方に含まれることが好ましく、両方にD-マンニトールが含まれることが固形製剤の味、安定性の点で好ましい。その場合、顆粒に加えられる添加剤100質量%中の賦形剤の含有量は、40~60質量%が好ましく、45~55質量%がより好ましい。
【0031】
固形製剤を100質量%とした場合、固形製剤中の結合剤の含有量は例えば0.1~5質量%とすることができ、好ましくは0.1~3質量%、より好ましくは0.5~3質量%である。
顆粒を100質量%とした場合、顆粒中の結合剤の含有量は例えば1~10質量%とすることができ、好ましくは1~8質量%、より好ましくは1~5質量%である。
核粒子を100質量%とした場合、核粒子中の結合剤の含有量は例えば1~10質量%とすることができ、好ましくは1~8質量%、より好ましくは1~5質量%である。
ここで結合剤としては、上述のとおり固形製剤の安定性の点でヒプロメロースが好ましく、固形製剤が錠剤であって、該錠剤が顆粒に添加剤を混合して得られた打錠用組成物を打錠した錠剤である場合、結合剤は少なくとも顆粒の核粒子に含まれることが安定性に加えて成形面でも好ましい。
【0032】
固形製剤を100質量%とした場合、固形製剤中の崩壊剤の含有量は例えば10~50質量%とすることができ、好ましくは15~45質量%、より好ましくは20~40質量%である。
顆粒を100質量%とした場合、崩壊剤の含有量は例えば1~20質量%とすることができ、好ましくは5~20質量%、より好ましくは7~15質量%である。
核粒子を100質量%とした場合、核粒子中の崩壊剤の含有量は例えば1~20質量%とすることができ、好ましくは5~20質量%、より好ましくは8~18質量%である。
【0033】
ここで固形製剤が錠剤であって、該錠剤が顆粒に添加剤を混合して得られた打錠用組成物を打錠した錠剤である場合、崩壊剤は、顆粒と、顆粒に加えられる添加剤との両方に含まれることが好ましく、顆粒を構成する核粒子に低置換度ヒドロキシプロピルセルロースが含まれ、顆粒に加えられる添加剤には低置換度ヒドロキシプロピルセルロースおよびトウモロコシデンプンの少なくとも一方が含まれること好ましい。これにより固形製剤の崩壊性をより高めることができる。その場合、顆粒に加えられる添加剤100質量%中の崩壊剤の含有量は、35~55質量%が好ましく、40~50質量%がより好ましい。
【0034】
甘味剤は、固形製剤を100質量%とした場合、0.1~1質量%の範囲で含まれることが好ましく、滑沢剤は、固形製剤を100質量%とした場合、0.1~3質量%の範囲で含まれることが好ましい。
【0035】
本発明の固形製剤は、デスロラタジンとアルギニンを含有する限り、公知の方法で製造できるが、顆粒を含む製剤である場合、まずは次のような方法で顆粒を製造することが好適である。
デスロラタジンおよびアルギニンと、任意に添加される賦形剤、結合剤、崩壊剤等の添加剤とを混合して造粒用組成物とし、精製水等の溶媒を造粒用組成物に加え、流動層造粒、転動流動層造粒、攪拌造粒等の公知方法で造粒する。この際、結合剤等の添加剤の一部は溶媒に溶解してもよい。ついで、得られた造粒物(核粒子)に対して、好ましくはアミノアルキルメタクリレートコポリマーと必要に応じて使用される添加剤をエタノール等の溶媒に溶解した液を噴霧、乾燥し、造粒物の外側にコーティング層を形成する。このようにして顆粒を製造できる。
また、D-マンニトール、乳糖水和物等の賦形剤からなる粒子を用意し、その表面にデスロラタジンおよびアルギニンと、任意に添加される酸化マグネシウムを含む液を噴霧して原薬層を形成してレイヤリング粒子とし、これを核粒子としてその表面にコーティング層を形成して顆粒としてもよい。
【0036】
このようにして得られた顆粒に、必要に応じて添加剤を配合して顆粒状製剤(顆粒剤、ドライシロップ剤、細粒剤等)としてもよいし、得られた顆粒に対して必要に応じて添加剤を加え打錠することにより、錠剤(即放性錠剤、口腔内崩壊錠等)としてもよい。なお、得られた錠剤には、最外コーティング層を必要に応じて形成してもよい。顆粒に対して添加剤を加え打錠する場合、得られた錠剤100質量%中の顆粒の割合は、崩壊性等の点からは、25~55質量%が好ましく、30~50質量%がより好ましく、35~45質量%がさらに好ましい。
【0037】
以上説明したように、本発明の固形製剤は、デスロラタジンと、アルギニンとを含有するため、経時的な総類縁物質(特にN-ホルミルデスロラタジン)の増加が抑制され、安定性に優れる。また、溶出挙動も良好な範囲に維持でき、崩壊性も良好とすることができる。
【実施例0038】
[試験例]
デスロラタジンを含む固形製剤の処方を検討するにあたり、デスロラタジンと各種結合剤を混合して下記の方法にて純度試験を行った。具体的には、デスロラタジンと表1に示す結合剤とを質量比1:2で混合し、下記の条件1~4で保存した際の総類縁物質量を測定した。結果を表1に示す。
条件1:40℃、75%RHにおいて4週間保存
条件2:25℃、85%RHにおいて4週間保存
条件3:60℃開放系にて4週間保存
条件4:光苛酷条件で保存(積算照度120万lx・h)
【0039】
<純度試験(総類縁物質量)>
アセトニトリルと緩衝液(ラウリル硫酸ナトリウム0.865gに0.5mLのトリフルオロ酢酸と水とを加えて1000mLとした液)との43:57混液に、デスロラタジンと表1に記載の結合剤との混合物24mgを加えて100mLとし溶解液を得た。これを遠心して上澄み液を採取して試料溶液とし、高速液体クロマトグラフィーを用いた自動分析法で試料溶液を分析した。
表1に記載の総類縁物質量の数値は、デスロラタジン由来のピーク面積に対する、観測された類縁物質によるピーク面積の総和の割合を百分率で示したものである。
【0040】
【0041】
表1に示すように、デスロラタジンとヒプロメロースの混合物は、いずれの条件においても、固化が生じず、かつ、総類縁物質量が少なく、安定性に優れていた。
【0042】
[例1~例4]
上記試験例の結果に基づき、結合剤としてヒプロメロースを用い、下記の表2の処方の口腔内崩壊錠を製造した。
具体的には、まず、表2の造粒物の欄に記載の各成分を混合して造粒用組成物とし、精製水を造粒用組成物に噴霧して撹拌造粒し、造粒物(核粒子(顆粒))を得た。
その後、スクリーンを通過させて整粒した顆粒に表2の後添加物の欄に記載の成分を加えて打錠用組成物とし、これを打錠して例1~4の口腔内崩壊錠(質量180mg、直径8mm)を得た。
得られた口腔内崩壊錠について、以下の方法により、純度試験と溶出試験を行った。
【0043】
<純度試験>
各例で得られた口腔内崩壊錠について、無包装またはPTPシートで包装し、60℃開放系の条件下で保存したときの2週間後と1ヶ月後のN-ホルミルデスロラタジン量を測定することにより、純度試験を実施した。
具体的には、緩衝液(リン酸二水素カリウム2.72gに水を加えて2000mLとした液をろ過(セルロースアセテート)し、ろ液1000mLにトリエチルアミン10mLを加え、更にリン酸を加えてpH2.0に調製した液)、アセトニトリルとメタノールとの850:50:100混液に、口腔内崩壊錠2錠を加えて50mLとした溶解液を遠心して上澄み液を採取して試料溶液とし、高速液体クロマトグラフィーを用いた自動分析法で試料溶液を分析した。
結果を表3に示す。
なお、表3に記載のN-ホルミルデスロラタジン量の数値は、デスロラタジン由来のピーク面積に対する、N-ホルミルデスロラタジンによるピーク面積の割合を百分率で示したものである。
【0044】
<溶出試験>
得られた口腔内崩壊錠と試験液(pH6.8)を用い、パドル法により毎分75回転で溶出試験を行った。試験開始から所定時間後(30分後)に、溶出液10mL以上を採取し、孔径0.45μm以下のメンブランフィルターでろ過した。初めに採取されたろ液5mLを除き、次のろ液1mLを正確に量り、溶出試験第1液1mLを正確に加え、試料溶液とした。
別に定量用デスロラタジン約28mgを精密に量り、溶出試験第1液に溶かして正確に50mLとする。この液5mLを正確に量り、溶出試験第1液を加えて正確に50mLとする。さらに、この液5mLを正確に量り、溶出試験第1液を加えて正確に50mLとする。この液1mLを正確に量り、試験液1mLを正確に加え、標準溶液とした。
試料溶液及び標準溶液について、HPLC法により試験を行い、波長258nmにおける紫外吸収を測定しクロマトグラムを得た。試料溶液の溶出試験開始後30分における溶出率(%)を標準溶液のピーク面積を基準として求めた。
以上の試験を口腔内崩壊錠1錠について2回(n=2)行い、平均(平均溶出率)を算出した。
なお、上記の移動相は、リン酸二水素カリウム6.8gを水に溶かして1000mLとした液600mLに、液体クロマトグラフィー用アセトニトリル:メタノール=4:1の混液400mLを加えて調製した。
【0045】
【0046】
【0047】
表3に示すように、L-アルギニンを添加した例1の口腔内崩壊錠は、無包装、PTP包装のいずれの場合においても、N-ホルミルデスロラタジンの増加が抑制されていた。
また、例1の口腔内崩壊錠を無包装で40℃、75%RHの条件で2週間保存した後の平均溶出率は98.0%であった。保存前の平均溶出率(100.5%)と同程度であり溶出遅延は抑制されていた。
【0048】
[処方例A、B]
以下のように処方例AおよびBの口腔内崩壊錠を製造した。
表4の造粒物の欄に記載の各成分のうち、ヒプロメロース以外の成分を混合して造粒用組成物とし、ヒプロメロースを水に溶解させた液を造粒用組成物に噴霧して転動流動層にて造粒し、造粒物(核粒子)を得た。ついで、得られた造粒物に対して、表4のコーティング層の欄に記載の各成分を溶媒(エタノール)に溶解させた液を噴霧、乾燥してコーティング層を形成し、顆粒を得た。
その後、流動化剤を加え、スクリーンを通過させた顆粒に表4の後添加物の欄に記載の成分を加えて打錠用組成物とし、これを打錠して処方例A、Bの口腔内崩壊錠(質量180mg、直径8mm)を得た。
得られた口腔内崩壊錠について、上記した方法により、純度試験と溶出試験を行った。
ただし、純度試験においては、N-ホルミルデスロラタジン量と、総類縁物質量をそれぞれ求めた。総類縁物質量の数値は、デスロラタジン由来のピーク面積に対する、観測された類縁物質によるピーク面積の総和の割合を百分率で示したものである。
【0049】
【0050】
【0051】
表5に示すように、アルギニンを添加した例Aの口腔内崩壊錠は、無包装、PTP包装のいずれの場合においても、N-ホルミルデスロラタジンの増加が抑制され、総類縁物質量の増加も抑制されていた。
また、例Aの口腔内崩壊錠の平均溶出率は99.9%であり溶出挙動は良好であった。
【0052】
[処方例C~F]
以下のようにL-アルギニンの量を変化させた処方例C~Fの口腔内崩壊錠を製造した。
表6の造粒物の欄に記載の各成分のうち、ヒプロメロース以外の成分を混合して造粒用組成物とし、ヒプロメロースを水に溶解させた液を造粒用組成物に噴霧して転動流動層にて造粒し、造粒物(核粒子)を得た。ついで、得られた造粒物に対して、表6のコーティング層の欄に記載の各成分を溶媒(エタノール)に溶解させた液を噴霧、乾燥してコーティング層を形成し、顆粒を得た。
その後、流動化剤を加え、スクリーンを通過させた顆粒に表6の後添加物の欄に記載の成分を加えて打錠用組成物とし、これを打錠して処方例C~Fの口腔内崩壊錠(質量180mg、直径8mm)を得た。
得られた口腔内崩壊錠について、上記した方法による純度試験と、下記の方法による崩壊性の評価を行った。
ただし、純度試験においては、N-ホルミルデスロラタジン量と、総類縁物質量をそれぞれ求めた。総類縁物質量の数値は、デスロラタジン由来のピーク面積に対する、観測された類縁物質によるピーク面積の総和の割合を百分率で示したものである。
【0053】
<崩壊性(崩壊時間)>
崩壊試験器(NT-400、富山産業社製)を用い、日本薬局方の崩壊試験法に則して、各例について6錠ずつ崩壊時間を測定し(n=6)、6錠の崩壊時間の平均値を求めた。
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
表7に示すように、L-アルギニンを含む例C~Eの口腔内崩壊錠は、無包装、PTP包装のいずれの場合においても、N-ホルミルデスロラタジンの増加が抑制され、総類縁物質量の増加も抑制されていた。
また、例C~Eの口腔内崩壊錠はいずれも崩壊性が良好であったが、特に例DおよびEの口腔内崩壊錠は崩壊性に優れていた。