(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180245
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ポリエステル含有リサイクレートの処理方法
(51)【国際特許分類】
C08J 11/24 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
C08J11/24
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023197317
(22)【出願日】2023-11-21
(31)【優先権主張番号】112122111
(32)【優先日】2023-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100204490
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 葉子
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲徳▼超
(72)【発明者】
【氏名】莊 榮仁
(72)【発明者】
【氏名】黄 章鑑
(72)【発明者】
【氏名】張 夢臣
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA22
4F401AD20
4F401BA06
4F401CA67
4F401CA68
4F401CA75
4F401CB01
4F401CB10
4F401CB18
4F401EA20
4F401EA60
4F401EA63
4F401EA77
4F401FA01Z
4F401FA06Z
4F401FA07Z
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ポリエステルを含有するリサイクル材(リサイクレート)の処理方法を提供する。
【解決手段】リサイクレートの処理方法は、ポリエステルを含有するリサイクル材を提供することと、前記リサイクル材とオリゴ-ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(о-BHET)とを混合して反応及び押出解重合を行い、少なくともポリ-ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(p-BHET)を取得又は生成することを含む、第1解重合ステップを実行することと、前記p-BHETと解重合溶液とを混合して化学解重合を行い、少なくともモノマー-ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(m-BHET)を取得又は生成することを含む、第2解重合ステップを実行することとを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルを含有するリサイクル材を提供することと、
前記リサイクル材とオリゴ-ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(о-BHET)とを混合して反応及び押出解重合を行い、少なくともポリ-ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(p-BHET)を取得又は生成することを含む、第1解重合ステップを実行することと、
前記p-BHETと解重合溶液とを混合して化学解重合を行い、少なくともモノマー-ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(m-BHET)を取得又は生成することを含む、第2解重合ステップを実行することと
を含む、リサイクレートの処理方法。
【請求項2】
前記第1解重合ステップにおける混合物の総重量に対する前記о-BHETの重量比は、5重量%~20重量%である、請求項1に記載のリサイクレートの処理方法。
【請求項3】
前記第1解重合ステップは、前記リサイクル材と前記о-BHETと触媒とを混合することを更に含む、請求項1に記載のリサイクレートの処理方法。
【請求項4】
前記第1解重合ステップにおける混合物の総重量に対する前記触媒の重量比は、0.2重量%~8重量%である、請求項3に記載のリサイクレートの処理方法。
【請求項5】
前記第1解重合ステップは、200℃~280℃に加熱することを更に含む、請求項1に記載のリサイクレートの処理方法。
【請求項6】
前記第1解重合ステップは1分~10分実行される、請求項1に記載のリサイクレートの処理方法。
【請求項7】
前記解重合溶液はエチレングリコールを含み、前記第2解重合ステップにおける混合物の総重量に対する前記エチレングリコールの重量比は30重量%~80重量%である、請求項1に記載のリサイクレートの処理方法。
【請求項8】
前記第2解重合ステップは、190℃~240℃に加熱することを更に含む、請求項1に記載のリサイクレートの処理方法。
【請求項9】
前記第2解重合ステップは0.5時間~5時間実行される、請求項1に記載のリサイクレートの処理方法。
【請求項10】
前記第1解重合ステップは少なくともM回又はMサイクル実行され、前記第2解重合ステップは少なくともN回又はNサイクル実行され、M及びNはいずれも自然数であり、MはNよりも大きく、
前記第1解重合ステップの第M回目又は第Mサイクルにおける混合に用いられる前記о-BHETは、前記第2解重合ステップの第N回目又は第Nサイクルで取得又は生成された前記о-BHETを含む、請求項1に記載のリサイクレートの処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリサイクレートの処理方法に関するものであり、特に、ポリエステルを含有するリサイクレートの処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル繊維は市場や日常生活において一般的に目にする生地である。例えば、ポリエステル繊維はナイロン繊維やスパンデックス繊維と共に織られ、生地業界や縫製業界における従来の手法を用いて、衣服、シャツ、カバー、カバン、キルト、帽子、スカート、マットレス、ズボン、靴下といったあらゆる種類の生地とされる。最近の環境意識の目覚めに伴い、これらの生地中のポリエステルをリサイクルする、及び/又は、ポリエステル廃棄物を処理する研究が進められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、本発明はポリエステルを含有するリサイクレートの処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
1つの実施形態において、本発明はリサイクレートの処理方法を提供し、該方法は、ポリエステルを含有するリサイクル材を提供することと、再生可能物とオリゴ-ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(oligo-bis(2-hydroxyethyl) terephthalate, о-BHET)とを混合して反応及び押出解重合を行い、少なくともポリ-ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(poly-bis(2-hydroxyethyl) terephthalate, p-BHET)を取得又は生成することを含む、第1の解重合ステップを実行することと、p-BHETと解重合溶液とを混合して化学解重合を行い、少なくともモノマー-ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(monomer Bis(2-HydroxyEthyl) Terephthalate, m-BHET)を取得又は生成することを含む、第2の解重合ステップを実行することとを含む。
【発明の効果】
【0005】
上記に基づき、本発明はポリエステルの総合的なリサイクル効率及び/又はリサイクル率を向上させることができ、これにより更にはリサイクルコストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本発明の更なる理解を提供するために添付図面が含まれ、本明細書に組み込まれてその一部を構成する。図面は、本発明の例示的な実施形態を表し、明細書と共に本発明の原理を説明するのに役立つ。
【0007】
【
図1】本発明の1つの実施形態によるポリエステルを含有するリサイクレートの処理方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の詳細な説明において、本発明の様々な原理の徹底した理解を提供するために、特定の詳細を表す例示的な実施形態を、限定ではなく説明のために述べる。ただし、本発明の恩恵を受ける当業者にとって、本発明がここで説明する特定の詳細から逸脱する他の実施形態で実施され得ることは明らかであろう。加えて、本発明の様々な原理の説明を曖昧にしないよう、周知の装置、方法、及び材料の説明は省略する。
【0009】
本明細書において、非限定的用語(例えば、約、実質的に、基本的に、本質的に、可能である、することができる、又は他の類似の用語)は、必須でないか任意の実装、包含、添加、又は存在を指す。
【0010】
ある範囲はここで、「約」1つの特定の値~「約」もう1つの特定の値として表現される場合があり、また、1つの特定の値及び/又はもう1つの特定の値と直線表現される場合がある。該範囲を表現するとき、もう1つの実施形態は、1つの特定の値から及び/又はもう1つの特定の値までを含む。同様に、ある値が先行する「約」を用いて近似として表現されるとき、該特定の値はもう1つの実施形態を形成すると理解される。更には、各範囲の端点はもう1つの端点に明らかに関係するか、もう1つの端点とは独立していると理解される。
【0011】
ここで用いられる全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、別途定義しない限り、本発明が属する技術分野における一般知識での意味又は一般的に理解される意味と同じ意味を有する。用語(一般的に使用される辞書で定義されている用語等)は、関連する技術的文脈における意味と一致する意味を持つとして説明されるべきであり、ここで明確に定義される場合を除き、理想化や過度に形式的な意味で解釈されるべきではないことを理解されたい。
【0012】
[ポリエステルを含有するリサイクル材]
ポリエステルを含有するリサイクル材(リサイクレートとも呼称)が提供される。1つの実施形態において、ポリエステルを含有するリサイクル材は、ポリエステル含有リサイクレートと呼称されてよい。
【0013】
1つの実施形態において、リサイクル材を取得する方法は、ポリエステルを含有する様々な種類のリサイクル材又は廃棄物を収集することと、上述したリサイクル材の書類、色、及び/又は目的による対応する分類を実行することとを含む。上述したリサイクル材は、例えば、衣服、シャツ、カバー、カバン、キルト、帽子、スカート、マットレス、ズボン、靴下を含むが、本発明はこれに限定されない。一般的に、通常の衣服のラベルは使用されている繊維成分を示している。
【0014】
1つの実施形態において、ポリエステルを含有するリサイクル材には前処理(即ち、後続の処理の前の処理、本質的にまだリサイクル材)が更に行われてよく、前処理には、リサイクル材上の物体(例えば、クリップ、ファスナー、飾り、ラベル、及び/又は、他のポリエステルを明らかに含んでいない物体)を除去すること、リサイクル材の予備洗浄を実行する(例えば、シミを洗浄する、不純物を落とす等であるが、本発明はこれに限定されない)こと、リサイクル材を単一のサイズに縮小するために物理的方法を用いる(例えば、剪断、裁断、切断、又は断割を含むが、本発明はこれに限定されない)こと、及び/又は、リサイクル材を乾燥させることとを含んでよい。
【0015】
1つの実施形態において、リサイクル材を取得する方法は、例えば、処理済みポリエステル含有リサイクル材を直接購入することを含んでよい。
【0016】
本明細書における用語「ポリエステル」は、一般的にポリエステルと呼ばれるポリマー、特に芳香族ポリエステルを含み、特に精製テレフタル酸(purified terephthalic acid, PTA)とエチレングリコール(ethylene glycol, EG)由来のポリエステル(即ち、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate, PET))を指すことに注意されたい。
【0017】
加えて、本明細書中のポリエステルは、例えば、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、又は上記材料の組合せであってよい。実施形態において、ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、又はそれらの組合せであることが好ましい。加えて、共重合体が用いられてよく、これは2つ以上のジカルボン酸及び/又は2つ以上のジオール成分を用いて取得される共重合体を特に指す。
【0018】
1つの実施形態において、生地に用いられている染料はほとんどが有機染料である。例えば、ポリエステルを染めるにはアゾ染料(例えば、モノアゾ染料又はジスアゾ染料)が一般的に用いられる。有機染料のポリマーへの付着は一般的に比較的良好である。本発明は有機染料の種類を限定しないことに注意されたい。
【0019】
1つの実施形態において、ほとんどの無機染料は人体にアレルギーや不快をもたらしやすい重金属元素を含むことから、生地に使用されている染料は無機染料を含んでいない。
【0020】
1つの実施形態において、生地の総重量に基づき、生地全体に対する染料の重量比は実質的に10重量%未満である。
【0021】
1つの実施形態において、生地の総重量に基づき、生地全体に対するポリエステルの重量比は90重量%より高いか、実質的に90重量%に等しい。
【0022】
[ポリエステルを含有するリサイクレートの前処理]
1つの実施形態において、リサイクレートの適切なサイズは、後続の再生ステップのための適切な方法によって選択されてよい(例えば、篩による篩い分け又は風力分級機による分級であるが、本発明はこれに限定されない)。
【0023】
1つの実施形態において、リサイクレートの適切なサイズは、適切な方法によって判断又は確認されてよい(例えば天秤といった計量方法等)。
【0024】
1つの実施形態において、リサイクレートの適切なサイズを判断又は確認するための計量方法は、例えば、2グラムを単位として用いることを含んでよく、リサイクレートの粒子数が50以上である場合、適切なサイズのリサイクレートと判断又は確認されてよい。
【0025】
1つの実施形態において、後続の再生ステップに進む前に、リサイクレートは物理的方法(例えば、剪断、裁断、切断、又は断割であるが、本発明はこれに限定されない)により適切なサイズとされてよい。
【0026】
[ポリエステルを含有するリサイクレートの再生ステップ]
図1は、本発明の1つの実施形態によるポリエステルを含有するリサイクレートの処理方法のフロー図である。
図1に示すように、ポリエステルを含有するリサイクレートを処理するための方法のプロセスは下記ステップを含んでよい。
【0027】
ステップS11:ポリエステル含有リサイクレート又はリサイクルポリエステルを提供する。
【0028】
ステップS12:オリゴ-ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(о-BHET)を提供する。
【0029】
ステップS20:第1解重合ステップを実行する。第1段階は、ポリエステル含有リサイクレート又はリサイクルポリエステルをо-BHETと混合して反応及び押出解重合を行うプロセスを含む。
【0030】
ステップS30:少なくともポリ-ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(p-BHET)が取得又は生成される。
【0031】
ステップS40:第2解重合ステップを実行する。第1段階は、ポリ-ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(p-BHET)の化学解重合を実行するプロセスを含む。
【0032】
ステップS51:モノマー-ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(m-BHET)が取得又は生成される。
【0033】
ステップS52:オリゴ-ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(о-BHET)が取得又は生成される。
【0034】
1つの実施形態において、ステップS52にて取得又は生成されるо-BHETは、ステップS12と同一又は類似の後続ステップのために更に用いられてよい。
【0035】
具体的には、ポリエステルを含有するリサイクレートを処理するための方法のプロセスは、続いて第1解重合ステップ及び第2解重合ステップを含んでよく、その詳細な説明は下記のとおりである。
【0036】
[第1解重合ステップ]
ポリエステル含有リサイクレート又はリサイクルポリエステルの押出しのため押出機に送入することで、そのうちのポリエステルが押出しの間の反応により解重合される。このように、解重合は反応押出解重合(reaction and extrusion depolymerization)と呼ばれてよい。
【0037】
押出機は、例えば、市販のシングルスクリュー押出機(single screw extruder, SSE)、ツインスクリュー押出機(twin screw extruder, TSE)、又は他の類似のスクリュー押出機であってよいが、本発明はこれに限定されない。加えて、本発明は市販のスクリュー押出機の構造及び/又は動作を詳細に説明しない。
【0038】
1つの実施形態において、о-BHETを押出機に供給することで、押出機に供給されるポリエステルの解重合及び/又は品質を向上させてよい。
【0039】
1つの実施形態において、上述したо-BHETは、例えば、2つ~5つのビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)モノマーの重合体であってよい。о-BHETの対応するモノマー単位の数は、適切な方法により算出又は推定されてよい(例えば、対応する分子量から算出又は推定)。
【0040】
1つの実施形態において、BHETは、ポリエステルの原材料のうちの1つであってよい(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET))。このため、BHET又はそのオリゴマーの添加は、基本的にポリエステルを含有するリサイクレートからリサイクルされたポリエステルに影響しない(例えば、副反応物及び/又は不純物)、又は、副反応物及び/又は不純物を減少させることができる。
【0041】
1つの実施形態において、о-BHETは、他の又は対応する再生ステップから取得又は生成されてよい。
【0042】
1つの実施形態において、BHET又はそのオリゴマーは、テレフタル酸(PTA)及びエチレングリコール(EG)のエステル化反応から取得又は生成されてよい。
【0043】
1つの実施形態において、押出しの間の反応によりポリエステルを解重合するプロセスの間、基本的にエチレングリコール(EG)は押出機に添加又は供給されない。
【0044】
о-BHETの沸点は、BHET及びEGの沸点よりも高い(約摂氏197度又は華氏387度)。このため、1つの実施形態において、m-BHET又はEGを押出機に供給することと比較し、о-BHETを押出機に供給することは、より安全及び/又は再生プロセス(例えば、押出しプロセス)に対応する機器(例えば、押出機)にとっは単純であり得る。例えば、m-BHET又はEGを供給する方法と比較し、о-BHETを押出機に供給することは、追加的な背圧を提供することを要さず、又は押出機の背圧を低下させて行われ得る。
【0045】
1つの実施形態において、о-BHETの沸点は、約摂氏250度又は華氏482度以上であってよい。
【0046】
1つの実施形態において、押出機に供給される材料の総重量に基づき、押出機に供給される材料中のо-BHETの重量比は、基本的に約5重量%~20重量%であり、約10重量%~15重量%であることが好ましい。
【0047】
1つの実施形態において、押出機に供給されるポリエステルの解重合率を向上させるため、対応する触媒が押出機に供給されてよい。
【0048】
1つの実施形態において、上述した触媒は、有機金属化合物を含んでよい。
【0049】
1つの実施形態において、上述した触媒としての有機金属化合物は、有機亜鉛(例えば、酢酸亜鉛)、有機コバルト(例えば、酢酸コバルト)、有機チタン(例えば、アルコキシドチタン塩)、有機アンチモン(例えば、酢酸アンチモン)、有機アルミニウム(例えば、ギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、及び他の有機酸アルミニウム化合物)、又はそれらの組合せを含んでよい。
【0050】
1つの実施形態において、押出機に供給される材料の総重量に基づき、押出機に供給される材料中の触媒の重量比は約0.2重量%~8重量%であり、約0.5量%~5重量%であることが好ましい。
【0051】
1つの実施形態において、押出機に供給されるポリエステルを含有するリサイクレートとо-BHETと触媒の総重量に基づき、押出機に供給される上述した3つの材料中のо-BHETの重量比は基本的に約5重量%~20重量%であり、約10重量%~15重量%であることが好ましい。
【0052】
1つの実施形態において、押出機に供給されるポリエステルを含有するリサイクレートとо-BHETと触媒の総重量に基づき、押出機に供給される上述した3つの材料中の触媒の重量比は基本的に約0.2重量%~8重量%であり、約0.5重量%~5重量%であることが好ましい。
【0053】
上述したо-BHETの相対量が過度に低い(例えば、5重量%未満)、及び/又は、触媒の相対量が過度に低い(例えば、0.2重量%未満)場合、解重合効率及び/又は解重合量を低下させ、これにより後続の処理効率が低下する可能性がある、及び/又は、最終的な相対再生量が減少する可能性がある。
【0054】
上述したо-BHETの相対量が過度に多い(例えば、20重量%より多い)場合、対象解重合材料の解重合率が僅かに増加するとはいえ、逆に全体的な解重合量を低下させ、これによりリサイクルコストが増加する可能性がある。
【0055】
上述した触媒の相対量が過度に多い(例えば、8重量%より多い)場合、対象解重合材料の解重合率が僅かに増加するとはいえ、より多くの触媒を必要とし、全体的な解重合量を低下させる可能性がある、及び/又は、逆に後続の触媒処理(例えば、触媒分離)の難易度を高め、これによりリサイクルコストが増加する可能性がある。
【0056】
1つの実施形態において、少なくとも1つのフィーダー(例えば、サイドフィーダー)が押出機に取り付けられてよい。上述したフィーダーは、減量計量器を備えたロスインウェイト式フィーダーであってよい。上述したフィーダーも一般的な市販のモジュール及び/又はオプションの付属品であってよい。換言すれば、様々な材料(例えば、ポリエステルを含有するリサイクレート、そして更にо-BHET及び/又は触媒)は供給前に混合されてよい、又はこれらは異なるフィーダーを通じて押出機に供給されて押出機内で混合されてよい。
【0057】
1つの実施形態において、押出機内の混合物には基本的に対応する均一系反応(homogeneous reaction)が行われる。このようにして、対応する物質移動(mass transfer)により引き起こされるプロセス又は反応のボトルネックを軽減することができる。
【0058】
1つの実施形態において、押出機は加熱ゾーンを有してよい。このようにして、ポリエステルを含有するリサイクレートが押出機に供給された後、押出機内のポリエステル含有混合物が対応して押出されて加熱されることで熱押出又は熱圧反応を通じて解重合され、その後に搾り出されるか押出されてよい。1つの実施形態において、加熱ゾーンの加熱温度は約200~280℃であり、約220~260℃が好ましい。
【0059】
1つの実施形態において、押出しの間のポリエステル解重合反応時間(押出時間とも呼称される)は約1分~10分であってよく、約2分~5分が好ましい。
【0060】
1つの実施形態において、押出しの間の熱によるポリエステル解重合反応時間(押出時間とも呼称される)は約1分~10分であってよく、約2分~5分が好ましく、加熱温度は約200℃~280℃の間であってよく、約220℃~260℃が好ましい。
【0061】
上述した押出時間が過度に短い場合(例えば、1分未満)、及び/又は、加熱温度が過度に低い場合(例えば、200℃未満)、解重合効率及び/又は相対解重合率が低下し、これにより後続処理効率が低下する可能性がある、及び/又は、最終的な相対再生量が減少する可能性がある。
【0062】
上述した解重合時間が過度に長い場合(例えば、10分より長い)、及び/又は、加熱温度が過度に高い場合(例えば、280℃より高い)、副反応生成物又は不純物の相対比率が増加し、これにより後続処理効率が低下する可能性がある、及び/又は、最終的な相対再生量が減少する可能性がある。
【0063】
1つの実施形態において、第1解重合ステップはリサイクル材中のほとんどのポリエステルをポリ-ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(p-BHET)に解重合することができる。о-BHETと比較し、p-BHETは多くのBHETモノマーを含むが、p-BHETは適切な応用に適する繊維又は重合物を形成するには実質的に不十分である。
【0064】
1つの実施形態において、上述したp-BHETは、例えば、約10~100BHETモノマー(例えば、10~100BHETモノマー単位)の重合である。対応するp-BHETのモノマー単位の数は、適切な方法により算出又は推定されてよい(例えば、対応する分子量から算出又は推定)。
【0065】
[第2解重合ステップ]
第1解重合ステップの後に第2解重合ステップを実行する。
【0066】
第2解重合ステップは、化学解重合プロセスを含んでよい。例えば、第1解重合ステップで取得されたp-BHETが、化学解重合のための解重合溶液と共に解重合槽に導入されてよい。
【0067】
化学解重合溶液は、基本的に、p-BHETのポリマー鎖を破壊することで、更なる解重合を行うことができる。このように、より短いポリエステル鎖を有する化合物(例えば、о-BHET)及びジカルボン酸ユニットとジオールから成るエステルモノマー(例えば、m-BHET)を取得可能である。換言すれば、化学解重合後の混合物の平均分子量は、基本的に第1解重合ステップで得られる混合物(大部分がp-BHET)の平均分子量よりも低い。
【0068】
本発明は、解重合溶液のタイプを限定しない。例えば、加水分解(hydrolysis)は、水を用いて行われてよい。例えば、アルコール分解(alcoholysis)は、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、又はそれらの混合物)を用いることにより実行されてよい。1つの実施形態において、解重合溶液はアルコールであることが好ましい。解重合溶液は、EGであることが更に好ましく、理由は、EGが未加工ポリエステルチップ(virgin PET chips)を生成するための反応モノマーとしての役割を果たすことができるためである。
【0069】
1つの実施形態において、解重合反応に関わる反応物質(例えば、第1解重合ステップで得られたp-BHET及び化学解重合ステップのためのエチレングリコール)の総重量に基づき、EGの重量比は基本的に約30重量%~80重量%であり、約40重量%~70重量%が好ましい。
【0070】
エチレングリコールの相対量が過度に低い場合(例えば、30重量%未満)、解重合効率及び/又は解重合量が低下し、これにより後続処理効率が低下する可能性がある、及び/又は、最終的な相対再生量が減少する可能性がある。
【0071】
エチレングリコールの相対量が過度に多い場合(例えば、80重量%よりも多い)、対象解重合材料の解重合率が僅かに増加するとはいえ、より多くのエチレングリコールを必要とする可能性がある、及び/又は、逆に全体的な解重合量を低下させ、これによりリサイクルコストが増加する可能性がある。
【0072】
化学解重合反応の間、適切な加熱ステップが実行されてよい。温度の上昇は、典型的に化学反応の速度を速める。例えば、第1解重合ステップで得られたp-BHETとエチレングリコールを解重合槽に導入した後、190℃~240℃の温度で約0.5時間~5時間、アルコール分解が実行されてよい。アルコール分解は、200℃~230℃の温度で1時間~3時間実行されることが好ましい。
【0073】
上述した化学解重合時間が過度に短い場合(例えば、0.5時間未満)、及び/又は、加熱温度が過度に低い場合(例えば、190℃未満)、解重合効率及び/又は解重合量が低下し、これにより後続処理効率が低下する可能性がある、及び/又は、最終的な相対再生量が減少する可能性がある。
【0074】
上述した化学解重合時間が過度に長い場合(例えば、5時間よりも長い)、及び/又は、加熱温度が過度に高い場合(例えば、240℃よりも高い)、解重合率が僅かに増加するとはいえ、p-BHETの大部分はm-BHETに解重合されていることから、より多くの時間又はコスト(例えば、熱エネルギー)を要する。
【0075】
[上述した解重合ステップの生成物の分離]
第2解重合ステップを実行した後の解重合生成物は、より短いポリエステル鎖を有する化合物(例えば、о-BHET)及びジカルボン酸ユニットとジオールから成るエステルモノマー(例えば、m-BHET)を含んでよい。エステルモノマー及びより短いポリエステル鎖を有する化合物は、適切な精製方法(例えば、結晶化、活性炭吸着、濾過、及び/又は乾燥)により分離されてよい。
【0076】
[実施例と比較例]
以下に、本発明を説明するための実施例と比較例を示すが、本発明を限定するものではない。
【0077】
<実施例1>
【0078】
約90キログラム(kg)のポリエステル含有リサイクレート(例えば、廃棄PET生地、表1における「PET」)を提供する。上述したポリエステル含有リサイクレートを、約10kgのо-BHET及び約0.3kgの酢酸亜鉛(触媒として呼ばれてよい)と混合し、次いで押出し及び予備解重合のためにツインスクリュー押出機に供給する。押出機の加熱温度は約260℃である。次いで押出されたp-BHET(表1における「押出生成物」)を撹拌槽に進入させ、追加的な約400kgのEG及び約0.2kgの酢酸亜鉛(触媒と呼ばれてよい)を添加し、粗生成物に解重合するため、約190℃~200℃(例えば、約195℃~198℃)で約180分、反応を続ける。粗生成物は、о-BHET及びm-BHETを含む。
【0079】
解重合の後、粗生成物をおよそ室温まで冷却し(例えば、198→25℃と表す)、о-BHET及びm-BHETを結晶化させて濾過させる。続いて、上述した濾過された結晶を90℃の温水と混合させる。о-BHETは基本的に不溶性であって、押出及び予備解重合による再利用のため濾過される。基本的に90℃の温水に可溶であるm-BHETは、活性炭又は他の適切な吸着材を用いて不純物を除去することにより精製される。その後、m-BHETを含む精製された90℃の溶液を約5℃まで冷却し、m-BHETを結晶化させて沈殿させるため溶解させ、濾過及び乾燥の後、対応するm-BHETを得る。
【0080】
最後に、原ポリエステル含有リサイクレートの重量に基づき、m-BHET生成物の重量比は約80.6重量%である。即ち、ポリエステルのリサイクル率は約80.6重量%である。
【0081】
上述した方法において、ポリエステルを含有するリサイクレートとо-BHETの押出しの間の解重合反応(即ち、第1解重合ステップ、予備解重合ステップと呼ばれてよい)は、ほぼ溶融状態での均一系反応である。加えて、上述した予備解重合ステップの後、押出されたp-BHETは基本的に約190℃~200℃(例えば、約195℃~198℃)でEGに可溶であり、よって、p-BHETとEGの化学解重合プロセス(即ち、第2解重合ステップ)は液体の均一系反応である。対応する均一系反応下での対応する反応により、ポリエステルの総合的な総リサイクル効率及び/又はリサイクル率を増加させることができる。
【0082】
<実施例2>、<実施例3>、<実施例4>
【0083】
実施例2、実施例3、実施例4を実施例1と類似の方法で実行した。明らかな差異は、予備解重合ステップのо-BHETの量の比率、対応する解重合ステップの酢酸亜鉛の量の比率(表1における「ZnAc」)、対応する反応温度(表1における「温度」)、及び/又は、対応する反応時間(表1における「時間」)である。
【0084】
実施例2、実施例3、実施例4の対応する条件/パラメータ及び結果を表1に示す。
【0085】
【0086】
<比較例1>
【0087】
約100キログラム(kg)のポリエステルを含有するリサイクレート(例えば、廃棄PET生地、表2における「PET」)を提供する。上述したポリエステルを含有するリサイクレートを撹拌槽に進入させ、追加的な約400kgのEG及び約0.5kgの酢酸亜鉛を添加し、粗生成物に解重合するため、約190℃~200℃(例えば、約195℃~198℃)で約180分、反応を続ける。粗生成物は、о-BHET及びm-BHETを含む。
【0088】
解重合の後、粗生成物をおよそ室温まで冷却し(例えば、198→25℃と表す)、о-BHET及びm-BHETを結晶化させて濾過させる。続いて、上述した濾過された結晶を90℃の温水と混合させる。о-BHETは基本的に不溶性であって濾過される。基本的に90℃の温水に可溶であるm-BHETは、活性炭又は他の適切な吸着材を用いて不純物を除去することにより精製される。その後、m-BHETを含む精製された90℃の溶液を約5℃まで冷却し、m-BHETを結晶化させて沈殿させるため溶解させ、濾過及び乾燥の後、対応するm-BHETを得る。
【0089】
最後に、原ポリエステル含有リサイクレートの重量に基づき、m-BHET生成物の重量比は約67.4重量%である。即ち、ポリエステルのリサイクル率は約67.4重量%である。
【0090】
上述した方法において、ポリエステルを含有するリサイクレートは約190℃~200℃(例えば、約195℃~198℃)でEGに溶融することは難しく、不可能でさえある。このため、対応する解重合反応の初期反応状態は基本的に固体-液体の非均一系反応(heterogeneous reaction)である。その結果、総合的なリサイクル効率及び/又はリサイクル率は減少又は低下する。
【0091】
<比較例2>、<比較例3>、<比較例4>
【0092】
比較例2、比較例3、比較例4を比較例1と類似の方法で実行した。明らかな差異は、対応する解重合ステップの酢酸亜鉛の量の比率(表2における「ZnAc」)、対応する反応温度(表2における「温度」)、及び/又は、対応する反応時間(表2における「時間」)である。
【0093】
【0094】
[解重合後の生成物の利用]
上述した処理方法で得られるジカルボン酸ユニットとジオールとから成るエステルモノマー(例えば、m-BHET)から、一般的な合成方法(例えば、エステル化及び/又は重合反応)により、対応するリサイクルポリエステル(リサイクルPET、r-PET)を得ることができる。
【0095】
より短いポリエステル鎖の化合物(例えば、о-BHET)を、不純物(例えば、染料又はその誘導体、塩であるが、これに限定されない)を除去するため適切な方法(例えば、結晶化、活性炭吸着、濾過、及び/又は乾燥)で精製し、次いで、精製されたより短いポリエステル鎖の化合物を、ポリエステルを含有するリサイクレートの処理方法の後続の再生ステップ(例えば、上述した第1解重合ステップと同一又は類似)に用いることができる。
【0096】
[予測できない効果]
本発明の処理方法は、ポリエステル含有リサイクレートをp-BHETに解重合するための上述した第1解重合ステップ(押出しの間の反応を含む)と、上述したp-BHETをm-BHETに解重合するための上述した第2解重合ステップ(化学解重合反応を含む)とを含む。このようにして、ポリエステルの総合的なリサイクル効率及び/又はリサイクル率を増加させることができ、更に、これによりリサイクルコストを削減することができる。
【0097】
直接的処理方法(例えば、上述した比較例に示した化学解重合のみ)と比較し、本発明のポリエステルの総合的なリサイクル効率及び/又はリサイクル率は高く、更に、リサイクルコストを更に削減することができる。例えば、化学解重合のみによるポリエステルを含有するリサイクレートの処理方法は、より長い解重合時間を要する可能性があり、より多くの解重合溶液の量を要する可能性がある、及び/又は、より多くの不純物を生み出す可能性がある。理由は、リサイクレートのポリエステル鎖長がより長い、及び/又は、長鎖ポリエステルはEGに溶解しにくいためであり得る。
【0098】
加えて、本発明の処理方法が複数のサイクル又は複数回実行された場合、前回のサイクルで又は前回(前回のサイクル又は前回に限定されず、例えば、前回のサイクル又は前回、以前のサイクル又は以前、又は複数の以前のサイクル又は前回を含んでよい)、第2解重合ステップで生成又は取得されたо-BHETは、後続の処理(次のサイクル又は次回に限定されず、例えば、次のサイクル又は次回、後のサイクル又は後の回、又は複数の後のサイクル又は後の回を含んでよい)の第1解重合ステップにおいて利用することができる。このようにして、ポリエステルの総合的なリサイクル効率及び/又はリサイクル率を増加させることができ、更に、これにより総合的なリサイクルコストを削減することができる。
【0099】
当業者にとって、本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、説明した実施形態に様々な改変や変形を成すことができることは明らかであろう。上記を鑑み、本発明は、添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内にある限り、改変及び変形を包含することを意図している。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の処理方法を使用することにより、リサイクル材(例えば、リサイクル布地)中のポリエステルをリサイクルすることができる。更に、リサイクルポリエステルは再利用することができる。再利用方法には、布地、容器、シート、包装材料、フィルム、及び他のポリエステル含有物の製造が含まれるが、これらに限定されない。
【符号の説明】
【0101】
S11、S12、S20、S30、S40、S51、S52:ステップ
【外国語明細書】