(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180249
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】高周波モジュールおよび通信装置
(51)【国際特許分類】
H03H 9/25 20060101AFI20241219BHJP
H04B 1/38 20150101ALI20241219BHJP
H01L 25/04 20230101ALI20241219BHJP
【FI】
H03H9/25 A
H04B1/38
H01L25/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023201325
(22)【出願日】2023-11-29
(31)【優先権主張番号】P 2023099369
(32)【優先日】2023-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼瀬 祥吾
(72)【発明者】
【氏名】湯村 七海
(72)【発明者】
【氏名】多田 誠樹
(72)【発明者】
【氏名】岸 雄佑
(72)【発明者】
【氏名】塩見 涼陽
(72)【発明者】
【氏名】上嶋 孝紀
(72)【発明者】
【氏名】森戸 成
(72)【発明者】
【氏名】木村 正樹
(72)【発明者】
【氏名】永森 啓之
(72)【発明者】
【氏名】木下 瑞貴
(72)【発明者】
【氏名】岩永 穣
(72)【発明者】
【氏名】黒▲柳▼ 琢真
【テーマコード(参考)】
5J097
5K011
【Fターム(参考)】
5J097AA10
5J097BB15
5J097DD20
5J097JJ07
5J097KK09
5J097KK10
5K011DA01
5K011DA27
5K011JA01
5K011KA01
5K011KA18
(57)【要約】
【課題】高周波モジュールにおいて、部品間のアイソレーションを確保しつつ、モジュールの小型化を可能にする。
【解決手段】高周波モジュール(1)は、実装面(50a)を有する基板(50)と、実装面(50a)に配置される送信用部品(11,18,20)および送受信用部品(17)と、送信用部品(11,18,20)と送受信用部品(17)との間に配置される弾性波フィルタ(121~126)と、弾性波フィルタ(121~126)の側面に形成されるシールド電極(131~136)とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装面を有する基板と、
前記実装面に配置される第1部品および第2部品と、
前記実装面における前記第1部品と前記第2部品との間に配置される第1弾性波フィルタと、
前記第1弾性波フィルタの少なくとも1つの側面に形成される第1シールド電極とを備え、
前記第1シールド電極は、前記第1部品と前記第2部品とを結ぶ仮想線と交差する方向に延在する部分を有する、高周波モジュール。
【請求項2】
前記実装面における前記第1部品と前記第2部品との間に、前記第1弾性波フィルタと並べて配置される第2弾性波フィルタと、
前記第2弾性波フィルタの少なくとも1つの側面に形成される第2シールド電極とをさらに備え、
前記第2シールド電極は、前記第1部品と前記第2部品とを結ぶ仮想線と交差する方向に延在する部分を有する、請求項1に記載の高周波モジュール。
【請求項3】
前記実装面における前記第1弾性波フィルタと隣接する位置に配置されるインダクタをさらに備え、
前記インダクタは、前記第1弾性波フィルタと電気的に接続され、
前記第1弾性波フィルタは、前記インダクタと面する第1側面と、前記インダクタと面しない第2側面とを有し、
前記第1シールド電極は、前記第1側面には形成されず、前記第2側面に形成される、請求項1に記載の高周波モジュール。
【請求項4】
前記第1部品は、信号の送信に用いられる部品である、請求項1に記載の高周波モジュール。
【請求項5】
前記高周波モジュールの上面部に形成される上面電極をさらに備え、
前記第1シールド電極は、前記上面電極に電気的に接続される、請求項1に記載の高周波モジュール。
【請求項6】
前記第1弾性波フィルタは、バンプ電極を介して前記実装面に接続される下面を有し、
前記第1弾性波フィルタの前記下面には、前記第1弾性波フィルタの内部の回路とは電気的に接続されないグランド電極が配置され、
前記第1シールド電極は、前記グランド電極と電気的に接続されている、請求項1に記載の高周波モジュール。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の高周波モジュールと、
前記高周波モジュールに接続される外部回路とを備える、通信装置。
【請求項8】
前記第1弾性波フィルタの下面には、前記第1弾性波フィルタの内部の回路と電気的に接続される長尺状のバンプ電極が配置され、
前記長尺状のバンプ電極は、前記第1部品と前記第2部品とを結ぶ仮想線と交差する方向に延在する部分を有する、請求項1に記載の高周波モジュール。
【請求項9】
前記第1部品は、第1周波数の信号の送信に用いられる部品であり、
前記第2部品は、前記第1周波数とは異なる第2周波数の信号の送信あるいは受信に用いられる部品である、請求項1に記載の高周波モジュール。
【請求項10】
前記第1弾性波フィルタと並べて配置される第3部品と、
前記第3部品の少なくとも1つの側面に形成される第2シールド電極とをさらに備え、
前記第2シールド電極は、前記第1部品と前記第2部品とを結ぶ仮想線と交差する方向に延在する部分を有する、請求項1に記載の高周波モジュール。
【請求項11】
前記第1弾性波フィルタと前記第3部品とは、互いに積層配置される、請求項10に記載の高周波モジュール。
【請求項12】
前記第3部品は、電子部品である、請求項11に記載の高周波モジュール。
【請求項13】
前記第1弾性波フィルタと前記第3部品とを前記基板の法線方向から平面視したとき、前記第1弾性波フィルタと前記第3部品とのどちらか一方が他方と重ならない部分を有する、請求項11に記載の高周波モジュール。
【請求項14】
前記第1弾性波フィルタは、バンプ電極を介して前記実装面に接続される下面を有し、
前記第1弾性波フィルタの前記下面には、前記第1弾性波フィルタの内部の回路と電気的に接続されるグランド電極が配置され、
前記第1シールド電極と前記グランド電極とは、前記第1弾性波フィルタの側面に露出するグランド用の接続配線を介して接続される、請求項1に記載の高周波モジュール。
【請求項15】
前記第1弾性波フィルタの前記下面には、前記第1弾性波フィルタの内部の回路と電気的に接続される信号電極が配置され、
前記信号電極は、前記第1シールド電極が形成される側面とは異なる側面に露出する端部を有する信号用接続配線に接続されている、請求項14に記載の高周波モジュール。
【請求項16】
請求項8~15のいずれかに記載の高周波モジュールと、
前記高周波モジュールに接続される外部回路とを備える、通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高周波モジュールおよび通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許公開2018/0098418号(特許文献1)には、基板上に複数の部品を実装した高周波モジュールが記載されている。この高周波モジュールにおいては、部品と部品との間での互いの信号による干渉を低減するために、部品と部品との間に、シールド用部材が配置されている。このシールド用部材は、少なくとも一方端が基板のグランド電極に接続されることでシールドとして機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許公開2018/0098418号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、高周波モジュールが搭載される通信装置の小型化に伴い、高周波モジュールの小型化も要求されている。これにより、特許文献1のようなシールド専用の部材を配置するスペースも少なくなり、高周波モジュール内でのアイソレーション特性が悪化することが懸念される。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、高周波モジュールにおいて、部品間のアイソレーションを確保しつつ、モジュールの小型化を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示による高周波モジュールは、実装面を有する基板と、実装面に配置される第1部品および第2部品と、実装面における第1部品と第2部品との間に配置される第1弾性波フィルタと、第1弾性波フィルタの少なくとも1つの側面に形成される第1シールド電極とを備える。第1シールド電極は、第1部品と第2部品とを結ぶ仮想線と交差する方向に延在する部分を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、第1部品と第2部品との間に第1弾性波フィルタが配置され、その第1弾性波フィルタの側面に第1シールド電極が形成される。これにより、シールド専用の部材を配置しなくても、第1弾性波フィルタの側面に形成される第1シールド電極によって、第1部品と第2部品との間での互いの信号による干渉を低減することができる。その結果、高周波モジュールにおいて、部品間のアイソレーションを確保しつつ、モジュールを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】高周波モジュールの回路構成の一例を模式的に示す図である。
【
図2】高周波モジュールの内部構造の一例を模式的に示す平面図(その1)である。
【
図3】高周波モジュールの内部構造の一例を模式的に示す平面図(その2)である。
【
図4】高周波モジュールの内部構造の一例を模式的に示す平面図(その3)である。
【
図5】高周波モジュールの内部構造の一例を模式的に示す断面図である。
【
図6】弾性波フィルタの下面を示す平面図(その1)である。
【
図7】弾性波フィルタの下面を示す平面図(その2)である。
【
図8】弾性波フィルタの下面を示す平面図(その3)である。
【
図9】高周波モジュールの内部構造の一例を模式的に示す平面図(その4)である。
【
図11】高周波モジュールの内部構造の一例を模式的に示す平面図(その5)である。
【
図12】高周波モジュールの内部構造の一例を模式的に示す平面図(その6)である。
【
図13】高周波モジュールの内部構造の一例を模式的に示す平面図(その7)である。
【
図14】高周波モジュールの内部構造の一例を模式的に示す平面図(その8)である。
【
図15】高周波モジュールの内部構造の一例を模式的に示す平面図(その9)である。
【
図16】弾性波フィルタの積層構造のパターン例を模式的に示す平面図(その1)である。
【
図17】弾性波フィルタの積層構造のパターン例を模式的に示す平面図(その2)である。
【
図18】弾性波フィルタの下面(実装面)の電極パターン例を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0010】
(高周波モジュールの回路構成)
図1は、本実施の形態による高周波モジュール1の回路構成の一例を模式的に示す図である。
【0011】
高周波モジュール1は、例えば、通信装置9に用いられる。通信装置9は、例えば、スマートフォンのような携帯電話である。なお、通信装置9は、携帯電話であることに限定されず、例えば、スマートウォッチのようなウェアラブル端末等であってもよい。高周波モジュール1は、例えば、4G(第4世代移動通信)規格、5G(第5世代移動通信)規格等に対応可能なモジュールである。
【0012】
通信装置9は、複数の通信バンドの通信を行う。より詳細には、通信装置9は、複数の通信バンドの送信信号の送信、及び、複数の通信バンドの受信信号の受信を行う。
【0013】
複数の通信バンドの送信信号及び受信信号の一部は、FDD(Frequency Division Duplex)の信号である。なお、複数の通信バンドの送信信号及び受信信号は、FDDの信号に限定されず、TDD(Time Division Duplex)の信号であってもよい。FDDは、無線通信における送信と受信とに異なる周波数帯域を割り当てて、送信及び受信を行う無線通信技術である。TDDは、無線通信における送信と受信とに同一の周波数帯域を割り当てて、送信と受信とを時間ごとに切り替えて行う無線通信技術である。
【0014】
高周波モジュール1は、パワーアンプ(PA)11と、パワーアンプコントローラ(PAC)20と、複数(図示例では3つ)の送信用の弾性波フィルタ(SAW)121~123と、複数(図示例では3つ)の受信用の弾性波フィルタ(SAW)124~126と、ローノイズアンプ(LNA)14と、送信用の整合回路(L)15と、受信用の整合回路(L)16と、アンテナスイッチ(ASW)17と、送信用のバンドセレクトスイッチ(BSSW)18と、受信用の束ねスイッチ19と、を備える。また、高周波モジュール1は、複数(図示例では4つ)の外部接続端子10を更に備える。
【0015】
パワーアンプ11は、送信信号を増幅する増幅器である。パワーアンプ11は、後述のアンテナ端子101と信号入力端子102とを結ぶ送信経路T1のうちの、信号入力端子102と弾性波フィルタ121~123との間に設けられている。パワーアンプ11は、入力端子(図示せず)及び出力端子(図示せず)を有する。パワーアンプ11の入力端子は、信号入力端子102を介して外部回路(例えば、信号処理回路92)に接続される。パワーアンプ11の出力端子は、弾性波フィルタ121~123に接続されている。なお、パワーアンプ11の出力端子は、直接又は間接的に、弾性波フィルタ121~123に接続されていればよい。
図1の例では、パワーアンプ11の出力端子が、送信用の整合回路15およびバンドセレクトスイッチ18を介して弾性波フィルタ121~123に接続されている。
【0016】
パワーアンプコントローラ20は、パワーアンプ11の出力を制御する。
送信用の弾性波フィルタ121~123は、互いに異なる通信バンドの送信信号を通過させるフィルタである。弾性波フィルタ121~123は、送信経路T1のうちパワーアンプ11とアンテナスイッチ17との間に設けられている。弾性波フィルタ121~123は、パワーアンプ11で増幅された高周波信号のうち、対応する通信バンドの送信帯域の送信信号を通過させる。
【0017】
受信用の弾性波フィルタ124~126は、互いに異なる通信バンドの受信信号を通過させるフィルタである。受信用の弾性波フィルタ124~126は、後述のアンテナ端子101と信号出力端子103とを結ぶ受信経路R1のうちアンテナスイッチ17とローノイズアンプ14との間に設けられている。受信用の弾性波フィルタ124~126は、アンテナ端子101から入力された高周波信号のうち、対応する通信バンドの受信帯域の受信信号を通過させる。
【0018】
ローノイズアンプ14は、受信信号を低雑音で増幅する増幅器である。ローノイズアンプ14は、受信経路R1のうちの、受信用の弾性波フィルタ124~126と信号出力端子103との間に設けられている。ローノイズアンプ14は、入力端子(図示せず)及び出力端子(図示せず)を有する。ローノイズアンプ14の入力端子は、受信用の整合回路16に接続されている。ローノイズアンプ14の出力端子は、信号出力端子103を介して外部回路(例えば、信号処理回路92)に接続される。
【0019】
送信用の整合回路15は、送信経路T1のうちの、パワーアンプ11と送信用の弾性波フィルタ121~123との間に設けられている。送信用の整合回路15は、パワーアンプ11と送信用の弾性波フィルタ121~123とのインピーダンス整合をとるためのインダクタを含む。
【0020】
受信用の整合回路16は、受信経路R1のうちの、受信用の弾性波フィルタ124~126とローノイズアンプ14との間に設けられている。受信用の整合回路16は、受信用の弾性波フィルタ124~126とローノイズアンプ14とのインピーダンス整合をとるためのインダクタを含む。
【0021】
アンテナスイッチ17は、送信用の弾性波フィルタ121~123の中からアンテナ端子101に接続される弾性波フィルタを切り替える。また、アンテナスイッチ17は、受信用の弾性波フィルタ124~126の中からアンテナ端子101に接続される弾性波フィルタを切り替える。アンテナスイッチ17は、共通端子171と、複数(図示例では3つ)の選択端子172~174と、を有する。共通端子171は、アンテナ端子101に接続されている。複数の選択端子172~174のうち、選択端子172は弾性波フィルタ121,124に接続され、選択端子173は弾性波フィルタ122,125に接続され、選択端子174は弾性波フィルタ123,126に接続されている。アンテナスイッチ17は、例えば信号処理回路92のRF信号処理回路93からの制御信号に従って、共通端子171と複数の選択端子172~174のうちのいずれか1つとを電気的に接続させる。
【0022】
送信用のバンドセレクトスイッチ18は、送信用の弾性波フィルタ121~123の中からパワーアンプ11に接続される弾性波フィルタを切り替える。バンドセレクトスイッチ18は、共通端子181と、複数(図示例では3つ)の選択端子182~184と、を有する。共通端子181は、パワーアンプ11に接続されている。複数の選択端子182~184のうち、選択端子182は弾性波フィルタ121に接続され、選択端子183は弾性波フィルタ122に接続され、選択端子184は弾性波フィルタ123に接続されている。バンドセレクトスイッチ18は、例えば信号処理回路92のRF信号処理回路93からの制御信号に従って、共通端子181と複数の選択端子182~184のうちのいずれか1つとを電気的に接続させる。
【0023】
受信用の束ねスイッチ19は、受信用の弾性波フィルタ124~126の中からローノイズアンプ14に接続される弾性波フィルタを切り替える。束ねスイッチ19は、共通端子191と、複数(図示例では3つ)の選択端子192~194と、を有する。共通端子191は、ローノイズアンプ14に接続されている。複数の選択端子192~194のうち、選択端子192は弾性波フィルタ124に接続され、選択端子193は弾性波フィルタ125に接続され、選択端子194は弾性波フィルタ126に接続されている。束ねスイッチ19は、例えば信号処理回路92のRF信号処理回路93からの制御信号に従って、共通端子191と複数の選択端子192~194のうちのいずれか1つとを電気的に接続させる。
【0024】
複数の外部接続端子10は、外部回路(例えば、信号処理回路92)と電気的に接続させるための端子である。複数の外部接続端子10は、アンテナ端子101と、信号入力端子102と、信号出力端子103と、制御端子104と、グランド電極(図示せず)と、を含む。
【0025】
アンテナ端子101は、アンテナ91に接続される。高周波モジュール1内において、アンテナ端子101は、アンテナスイッチ17に接続されている。また、アンテナ端子101は、アンテナスイッチ17を介して、送信用の弾性波フィルタ121~123及び受信用の弾性波フィルタ124~126に接続されている。
【0026】
信号入力端子102は、外部回路(例えば、信号処理回路92)からの送信信号を高周波モジュール1に入力するための端子である。高周波モジュール1内において、信号入力端子102は、パワーアンプ11に接続されている。
【0027】
信号出力端子103は、ローノイズアンプ14からの受信信号を外部回路(例えば、信号処理回路92)へ出力するための端子である。高周波モジュール1内において、信号出力端子103は、ローノイズアンプ14に接続されている。
【0028】
制御端子104は、外部回路(例えば、信号処理回路92)からの制御信号を高周波モジュール1に入力するための端子である。高周波モジュール1内において、制御端子104は、パワーアンプコントローラ20に接続されている。
【0029】
以上のように、高周波モジュール1には、パワーアンプ(PA)11、パワーアンプコントローラ(PAC)20、バンドセレクトスイッチ(BSSW)18などの、信号の送信に用いられ、信号の受信には用いられない送信用部品と、ローノイズアンプ(LNA)14などの、信号の受信に用いられ、信号の送信に用いられない受信用部品と、信号の送信および受信の双方に用いられる送受信用部品とが含まれる。
【0030】
(高周波モジュールの構造)
図2は、高周波モジュール1の内部構造の一例を模式的に示す平面図である。高周波モジュール1は、平板状の基板50を備える。基板50は、上述のパワーアンプ(PA)11等の電子部品が実装される矩形状の実装面50aを有する。なお、以下では、実装面50aの法線方向を「Z軸方向」、実装面50aの長辺に沿う方向を「X軸方向」、実装面50aの短辺に沿う方向を「Y軸方向」とも称する。また、以下では、各図におけるZ軸の正方向(実装面50aから各電子部品に向かう方向)を上側、Z軸の負方向(各電子部品から実装面50aに向かう方向)を下側として説明する場合がある。
【0031】
送信用部品であるパワーアンプ(PA)11、パワーアンプコントローラ(PAC)20、およびバンドセレクトスイッチ(BSSW)18は、実装面50aの図中左側の領域に配置されている。なお、
図2では、パワーアンプ11が2つに分割され、バンドセレクトスイッチ18も2つに分割されて配置される例が示されている。
【0032】
受信用部品であるローノイズアンプ(LNA)14は、実装面50aの図中右下側の領域に配置される。送受信用部品であるアンテナスイッチ(ASW)17は、実装面50aの図中右上側の領域に配置される。
【0033】
以上のような配置において、送信用部品と受信用部品との間、送信用部品と送受信用部品との間、および受信用部品と送受信用部品との間で、互いの信号による干渉を低減することが望ましい。しかしながら、近年、高周波モジュール1の小型化が要求されており、これらの部品間のすべてにシールド専用の部材を配置するスペースを確保することは難しいことが想定される。
【0034】
そこで、本実施の形態による高周波モジュール1においては、送信用部品の配置領域と送受信用部品の配置領域との間、および受信用部品の配置領域と送受信用部品の配置領域との間に、弾性波フィルタ(SAW)121~126がL字状に並べて配置される。
【0035】
さらに、弾性波フィルタ121~126の側面には、それぞれシールド電極131~136が形成されている。なお、弾性波フィルタ121~126の側面とは、弾性波フィルタ121~126の外表面のうち、実装面50aと交差する方向に延在する面である。
図2に示す例では、各弾性波フィルタ121~126はZ軸方向から視て矩形状を有しており、各弾性波フィルタ121~126は4つの側面を有している。各シールド電極131~136は、対応する弾性波フィルタの4つの側面のすべてに形成されている。
【0036】
シールド電極131は、送信用部品と送受信用部品とを結ぶ仮想線と交差する方向に延在する部分を有する。同様に、シールド電極132,133も、送信用部品と送受信用部品とを結ぶ仮想線と交差する方向に延在する部分を有する。そのため、送信用部品および送受信用部品の一方から放射される電磁波ノイズは、他方に到達することなく、シールド電極131~133によって遮断される。これにより、送信用部品と送受信用部品との間にシールド専用の部品を配置しなくても、送信用部品と送受信用部品との間のアイソレーション特性を向上させることができる。
【0037】
また、シールド電極134は、受信用部品と送受信用部品とを結ぶ仮想線と交差する方向に延在する部分を有する。同様に、シールド電極135,136も、受信用部品と送受信用部品とを結ぶ仮想線と交差する方向に延在する部分を有する。そのため、受信用部品および送受信用部品の一方から放射される電磁波ノイズは、他方に到達することなく、シールド電極131~133によって遮断される。これにより、受信用部品と送受信用部品との間にシールド専用の部品を配置しなくても、受信用部品と送受信用部品との間のアイソレーション特性を向上させることができる。
【0038】
このように、本実施の形態による高周波モジュール1においては、アイソレーションを確保したい部品間(送信用部品と送受信用部品と間、および受信用部品と送受信用部品との間)に、側面にシールド電極131~136がそれぞれ形成された弾性波フィルタ121~126が、断続的に並べて配置される。そのため、シールド専用の部材を配置しなくても、送信用部品と送受信用部品との間、および受信用部品と送受信用部品との間で、互いの信号による干渉を低減することができる。その結果、高周波モジュールにおいて、部品間のアイソレーションを確保しつつ、モジュールを小型化することができる。
【0039】
特に、送信用部品および送受信用部品には大電力の送信信号を扱う部品が含まれているところ、本実施の形態による高周波モジュール1においては、信号送信時に送信用部品あるいは送受信用部品から放射されるノイズ信号が、弾性波フィルタ121~126のシールド電極131~136によって遮断される。そのため、効果的にアイソレーション特性を向上させることができる。
【0040】
なお、
図2に示す例においては、送信用部品(パワーアンプ11等)と受信用部品(ローノイズアンプ14)との間の領域に比較的スペースの余裕があるため、シールド専用部材30が配置される。このように、スペースに余裕がある場合には、一部の領域にシールド専用の部品が配置されていてもよい。
【0041】
[変形例1]
図3は、本変形例1による高周波モジュール1Aの内部構造の一例を模式的に示す平面図である。本変形例1による高周波モジュール1Aにおいては、弾性波フィルタ121,122と隣接する位置(弾性波フィルタ121,122とアンテナスイッチ17との間の位置)に、インダクタを含む整合回路15、16が配置されている。
【0042】
整合回路15、16と弾性波フィルタ121~126との間にシールド電極が介在すると、整合回路15、16のインダクタから発生する磁界がシールド電極によって歪んでしまい、整合回路15、16のインダクタンス値などの電気特性が所望の値から変動し、インピーダンス整合がとれなくなることが想定される。
【0043】
この点に鑑み、本変形例1によるシールド電極131A~136Aは、弾性波フィルタ121~126の側面のうちの、整合回路15、16と面する側面には形成されず、整合回路15、16と面しない残りの側面に形成される。これにより、整合回路15、16に含まれるインダクタで発生する磁界が、シールド電極131A~136Aによって妨げられることが抑制される。その結果、整合回路15、16のインピーダンス整合機能がシールド電極によって低下することを抑制することができる。また、整合回路15、16と弾性波フィルタ121~126に含まれるインダクタとが適切に磁気結合されることによって、弾性波フィルタ121~126の減衰特性が向上するという効果を奏することも期待できる。
【0044】
[変形例2]
図4は、本変形例2による高周波モジュール1Bの内部構造の一例を模式的に示す平面図である。本変形例2による高周波モジュール1Bは、本変形例2による高周波モジュール1Aのシールド電極131A~136Aを、シールド電極131B~136Bに変更したものである。
【0045】
本変形例2によるシールド電極131B~136Bは、弾性波フィルタ121~126の側面のうちの、送信用部品および受信用部品と面する1つまたは2つの側面のみに形成され、残りの側面には形成されない。
【0046】
このようにすることで、シールド電極を形成する面積を小さくすることができ、コストを低減することができる。
【0047】
[変形例3]
図5は、本変形例3による高周波モジュール1Cの内部構造の一例を模式的に示す断面図である。なお、以下では、上述の弾性波フィルタ121~126を区別することなく「弾性波フィルタ120」とも記載する。
【0048】
本変形例3による高周波モジュール1Cの上面部分は、上面電極70で覆われている。上面電極70は、図示しない箇所において接地(グランド)されており、高周波モジュール1Cのシールド電極として機能する。この上面電極70は、高周波モジュール1Cの側面に形成される電極とも電気的に導通接続されており、上面電極70とその側面に形成される電極とで、外部から高周波モジュール1Cへの不要な信号の流入を防いだり、高周波モジュール1C内部の電子部品で発生する磁界や高周波信号が高周波モジュール1Cの外部へ漏洩することを防ぐことができる。
【0049】
弾性波フィルタ120は、上面電極70と基板50の実装面50aとに囲まれた領域に配置される。弾性波フィルタ120の下面は、基板50の実装面50aにはんだバンプ141、142を介して接続される。なお、上面電極70と基板50の実装面50aとに囲まれた領域は、樹脂60でモールドされている。
【0050】
シールド電極130は、弾性波フィルタ120の側面および上面に形成されている。シールド電極130は、弾性波フィルタ120の上面付近で上面電極70に電気的に接続されている。
【0051】
このように、弾性波フィルタ120の側面に形成されるシールド電極130を高周波モジュール1Cの上面電極70に電気的に接続することによって、シールド電極130を上面電極70を介して接地することができる。これにより、シールド電極130をシールドとして適切に機能させることができる。
【0052】
[変形例4]
図6は、本変形例4の一例による弾性波フィルタ120Aの下面を示す平面図である。弾性波フィルタ120Aの下面の四隅付近には、内部の電気部品に接続される入力電極151、グランド電極152,153、出力電極154がそれぞれ配置される。これらの端子151~154は、はんだバンプを介して基板50の実装面50aに接続される。
【0053】
さらに、弾性波フィルタ120Aの下面の中央付近には、内部の電気部品に接続されない円状のグランド電極155が配置される。グランド電極155は、はんだバンプを介して基板50の実装面50aに形成されるグランド電極に接続される。
【0054】
弾性波フィルタ120Aの側面に形成されるシールド電極130Aは、弾性波フィルタ120Aの下面を延在してグランド電極155に電気的に接続される接続部分130a,130bを有する。これにより、シールド電極130は、弾性波フィルタ120Aの下面のグランド電極155を介して接地されることになる。
【0055】
上述の変形例3による弾性波フィルタ120においては、側面に形成されるシールド電極130が、弾性波フィルタ120の上面付近で高周波モジュール1Cの上面電極70に接続されることによって接地される。
【0056】
これに対し、本変形例4による弾性波フィルタ120Aにおいては、側面に形成されるシールド電極130Aが、下面に配置されるグランド電極155に接続されることによって接地される。これにより、シールド電極130を接地するための電極あるいは加工(ビア等)を弾性波フィルタ120Aあるいは高周波モジュール1の内部に追加しなくても、シールド電極130Aを接地させることができる。そのため、高周波モジュール1の専有面積を変更することなく、かつ、高周波モジュール1の製造工数を増やすことなく、シールド電極130Aを接地させることができる。
【0057】
また、シールド電極130A用のグランド電極155は、弾性波フィルタ120Aの内部の電気部品には接続されない。そのため、弾性波フィルタ120Aの下面を形成するカバー層の形状を変更することなく、グランド電極155を配置することができる。
【0058】
また、弾性波フィルタ120Aの内部の電気部品に接続されるグランド電極152,153はインダクタンス成分を持たせる場合も多いことに鑑み、シールド電極130A用のグランド電極155は、グランド電極152,153とは別に設けられている。これにより、グランド電極152,153のインダクタンス成分を極力変えることなく、グランド電極155を配置することができる。
【0059】
なお、
図6に示されるシールド電極130A用のグランド電極155の数は1つであるが、シールド電極130A用のグランド電極は2つ以上であってもよい。
【0060】
図7は、本変形例4の他の例による弾性波フィルタ120Bの下面を示す平面図である。弾性波フィルタ120Bにおいては、シールド電極130B用の2つのグランド電極156,157が左右に分けて配置される。そして、シールド電極130Bの接続部分130c,130dが、2つのグランド電極156,157にそれぞれ接続される。このように、弾性波フィルタ120Bの下面に、シールド電極130A用の2つのグランド電極156,157を配置するようにしてもよい。
【0061】
また、
図6に示されるシールド電極130A用のグランド電極155の形状は円状であるが、シールド電極130A用のグランド電極の形状は必ずしも円状であることに限定されない。
【0062】
図8は、本変形例4の他の例による弾性波フィルタ120Cの下面を示す平面図である。弾性波フィルタ120Cにおいては、シールド電極130用のグランド電極158が、X軸方向を長軸とする楕円形状に形成される。そして、シールド電極130Cの接続部分130e,130fが、このグランド電極158に接続される。このように、弾性波フィルタ120Bの下面に、シールド電極130C用の楕円状のグランド電極158を配置するようにしてもよい。
【0063】
なお、いずれの場合であっても、弾性波フィルタの信頼性を確保する観点から、弾性波フィルタの下面に配置される電極は、点対称の位置であることが望ましい。上述の
図6~8に示す例においては、弾性波フィルタの下面の中心を対称点として、各電極が点対称の位置に配置されている。これにより、弾性波フィルタの信頼性が確保される。
【0064】
[変形例5]
図9は、本変形例5による高周波モジュール1Dの内部構造の一例を模式的に示す平面図である。
図10は、
図9におけるX-X断面図である。
【0065】
本変形例5による高周波モジュール1Dにおいては、弾性波フィルタ121~126の下面(実装面)に、長尺状のストライプバンプ(線状バンプ)141~146がそれぞれ配置される。
【0066】
ストライプバンプ141~146は、アイソレーションを確保したい部品間(送信用部品と送受信用部品と間、および受信用部品と送受信用部品との間)を分離するようにそれぞれ配置される。具体的には、ストライプバンプ141,142は、送信用部品(PA11等)と送受信用部品(ASW17)とを結ぶ仮想線と交差するY軸方向に延在する。ストライプバンプ143~146は、受信用部品(LNA14)と送受信用部品(ASW17)とを結ぶ仮想線と交差するX軸方向に延在する。これにより、シールド電極131~136に加えて、ストライプバンプ143~146によっても、送信用部品と送受信用部品と間、および受信用部品と送受信用部品との間で、互いの信号による干渉を低減することができる。たとえば
図10に示されるように、ASW17からLNA14に向かう方向に放射される電磁波ノイズは、弾性波フィルタ125の側面に配置されるシールド電極135によって遮断されることに加えて、弾性波フィルタ125の下面に配置されるストライプバンプ145によっても遮断される。その結果、ストライプバンプ145を配置することによって、ASW17とLNA14との間のアイソレーションを強化することができる。
【0067】
ストライプバンプ141~146の下面は、基板50の実装面50aに形成されるグランド電極に接続される。シールド電極131~136は、弾性波フィルタ121~126の下面の周縁において、ストライプバンプ141~146の両端にそれぞれ接続される。これにより、シールド電極131~136をストライプバンプ141~146を介して接地することができるので、シールド電極131~136のシールド性を強化することができる。
【0068】
[変形例6]
近年、互いに異なるバンド(周波数帯)の信号を同時に送信したり同時に受信したりすることで、単位時間あたりの通信容量を増加させて通信速度を向上させるCA(Carrier Aggregation)技術が実用化されている。互いに異なるバンドの信号を同時に送受信する場合には、側面にシールド電極130が形成された弾性波フィルタ120を、互いに異なるバンドの整合回路(インダクタ)同士を結ぶ仮想線と交差する位置に配置するようにすればよい。
【0069】
たとえば、互いに異なるバンドの電波を同時送信する場合には、側面にシールド電極130が形成された弾性波フィルタ120を、互いに異なるバンドの送信用部品同士を結ぶ仮想線と交差する位置に配置するようにすればよい。
【0070】
図11は、本変形例6による高周波モジュール1Eの内部構造の一例を模式的に示す平面図である。高周波モジュール1Eにおいては、互いに異なるバンドA,Bの電波を同時送信するように構成されている。高周波モジュール1Eは、バンドAの電波送信用のパワーアンプ11Aおよびパワーアンプ11Aの出力整合用のインダクタ15Aと、バンドBの電波送信用のパワーアンプ11Bおよびパワーアンプ11Bの出力整合用のインダクタ15Bと、シールド電極130付き弾性波フィルタ120とを備える。
【0071】
シールド電極130付き弾性波フィルタ120は、パワーアンプ11Aの出力整合用のインダクタ15Aと、パワーアンプ11Bの出力整合用のインダクタ15Bとを結ぶ仮想線と交差する位置に配置される。これにより、バンドAの電波とバンドBの電波とを同時送信する時に、互いに異なるバンドの電波同士が干渉することで発生する相互変調歪み(IMD:Inter Modulation Distortion)を抑制することができる。
【0072】
また、たとえば、バンドAの電波の送信とバンドCの電波の受信とを同時に行う場合には、シールド電極130が側面に配置された弾性波フィルタ120を、バンドAの電波の送信用部品とバンドCの電波の受信用部品とを結ぶ仮想線と交差する位置に配置すればよい。
【0073】
図12は、本変形例6の他の例による高周波モジュール1Fの内部構造の一例を模式的に示す平面図である。高周波モジュール1Fにおいては、バンドAの電波の送信とバンドCの電波の受信とを同時に行うように構成されている。高周波モジュール1Fは、バンドAの電波送信用のパワーアンプ11Aおよびパワーアンプ11Aの出力整合用のインダクタ15Aと、バンドCの電波受信用のローノイズアンプ14Cおよびローノイズアンプ14Cの入力整合用のインダクタ16Cと、各々がシールド電極130を有する複数の弾性波フィルタ120とを備える。
【0074】
シールド電極130付き弾性波フィルタ120は、パワーアンプ11Aの出力整合用のインダクタ15Aと、ローノイズアンプ14Cの入力整合用のインダクタ16Cとを結ぶ仮想線と交差する位置に配置される。これにより、バンドAの電波の送信とバンドCの電波の受信とを同時に行う時の信号同士の干渉を抑制することができる。
【0075】
図13は、本変形例6の他の例による高周波モジュール1Gの内部構造の一例を模式的に示す平面図である。高周波モジュール1Gにおいては、互いに異なる4つのバンドA,B,C,Dの電波のうち、バンドAの電波とバンドDの電波とを同時受信可能に構成され、かつ、バンドBの電波とバンドCの電波とを同時受信可能に構成されている。
【0076】
高周波モジュール1Gは、バンドAの電波受信用のローノイズアンプの入力整合素子群40Aと、バンドBの電波受信用のローノイズアンプの入力整合素子群40Bと、バンドCの電波受信用のローノイズアンプの入力整合素子群40Cと、バンドDの電波受信用のローノイズアンプの入力整合素子群40Dと、弾性波フィルタ120用の入力整合回路素子群110と、各々がシールド電極130を有する複数の弾性波フィルタ120とを備える。
【0077】
高周波モジュール1Gにおいては、基板50のY軸方向中央に弾性波フィルタ用の入力整合回路素子群110がX軸方向に沿って複数配置され、各々がシールド電極130を有する複数の弾性波フィルタ120が、入力整合回路素子群110を挟み込むように入力整合回路素子群110の両側に配置される。さらに、弾性波フィルタ120よりもY軸正方向の外周側には互いに同時受信されない入力整合素子群40A,40Bが配置され、弾性波フィルタ120よりもY軸負方向の外周側には互いに同時受信されない入力整合素子群40C,40Dが配置される。
【0078】
図14は、本変形例6の他の例による高周波モジュール1Hの内部構造の一例を模式的に示す平面図である。高周波モジュール1Hにおいては、上述の高周波モジュール1Gと同様、互いに異なる4つのバンドA,B,C,Dの電波のうち、バンドAの電波とバンドDの電波とを同時受信可能に構成され、かつ、バンドBの電波とバンドCの電波とを同時受信可能に構成されている。
【0079】
高周波モジュール1Hにおいては、ローノイズアンプ用の入力整合素子群40A~40Dと、各々がシールド電極130を有する複数の弾性波フィルタ120と、弾性波フィルタ用の入力整合回路素子群110とが、格子状に配置される。
【0080】
高周波モジュール1G,1Hのどちらにおいても、同時受信される入力整合素子群40A,40D間を結ぶ仮想線と交差する位置、および、同時受信される入力整合素子群40B,40C間を結ぶ仮想線と交差する位置には、各々がシールド電極130を有する複数の弾性波フィルタ120が配置される。これにより、同時受信する一方のバンドの受信用部品と他方のバンドの受信用部品との間のアイソレーション特性を向上することができる。その結果、同時受信する一方のバンドの受信感度が他のバンドの信号によって劣化することを低減することができる。
【0081】
図15は、本変形例6の他の例による高周波モジュール1Iの内部構造の一例を模式的に示す平面図である。高周波モジュール1Iにおいては、Low(低)、Mid(中)、High(高)のいずれの周波数帯にも対応している。具体的には、高周波モジュール1Iは、Low、Mid、High帯用の送信用部品81(パワーアンプ、あるいはパワーアンプの出力整合素子など)と、Low帯用の送信用部品(フロントエンドモジュールなど)82と、Low、Mid帯用のローノイズアンプ14Iおよびアンテナスイッチ17Iと、Mid、High帯用のアンテナ整合素子(インダクタなど)100とを備える。
【0082】
Low、Mid、High帯用の送信用部品81、あるいはLow帯用の送信用部品82で発生するLow帯の送信信号の高調波(2倍波あるいは3倍波)HDがMid、High帯と重なり、かつLow帯の送信信号の高調波HDがアンテナ整合素子100に漏洩すると、Mid、High帯の受信感度が劣化してしまうことが懸念される。
【0083】
そこで、高周波モジュール1Iにおいては、各々がシールド電極130を有する複数の弾性波フィルタ120が、Mid、High帯用のアンテナ整合素子100を取り囲むように配置される。これにより、送信用部品81,82で発生するLow帯の送信信号の高調波HDがアンテナ整合素子100に漏洩することが防止される。その結果、Mid、High帯の受信感度の劣化を低減することができる。
【0084】
[変形例7]
シールド電極130付き弾性波フィルタ120と他の電子部品とを互いに積層配置するようにしてもよい。
【0085】
図16および
図17は、本変形例7による弾性波フィルタ120の積層構造のパターン例を模式的に示す平面図である。
【0086】
図16のパターン(A),(B),(C)にそれぞれ示されるように、弾性波フィルタ121を他の弾性波フィルタ122の上に積層したものを、送信用部品80と受信用部品90との間に配置するようにしてもよい。
【0087】
パターン(A),(B),(C)にそれぞれ示される高周波モジュール1J,1K,1Lにおいては、弾性波フィルタ121が他の弾性波フィルタ122の上に積層され、弾性波フィルタ121,122におけるY軸負方向側の側面にシールド電極131,132がそれぞれ形成されている。シールド電極132は、弾性波フィルタ122の底面の電極を介して基板50のグランド電極に電気的に接続されている。
【0088】
高周波モジュール1J,1K,1Lは、シールド電極131の接地経路が互いに異なる。
【0089】
パターン(A)に示される高周波モジュール1Jにおいては、シールド電極131が、弾性波フィルタ121の底面の電極、弾性波フィルタ122の天面の電極、側面のシールド電極132および底面の電極を介して、基板50のグランド電極に電気的に接続されている。
【0090】
パターン(B)に示される高周波モジュール1Kにおいては、シールド電極131がワイヤW1によって上面電極70に接続されているため、シールド電極131は、ワイヤW1および上面電極70を介して、基板50のグランド電極に電気的に接続されている。
【0091】
パターン(C)に示される高周波モジュール1Lにおいては、シールド電極131がワイヤW2を介して基板50のグランド電極G1に接続されている。
【0092】
また、
図16のパターン(D),(E)にそれぞれ示されるように、弾性波フィルタ121を弾性波フィルタ以外の他の電子回路140の上に積層したものを、送信用部品80と受信用部品90との間に配置するようにしてもよい。
【0093】
パターン(D)に示される高周波モジュール1Mにおいては、シールド電極131の上端が上面電極70に接続されているため、シールド電極131は上面電極70を介して基板50のグランド電極に電気的に接続されている。
【0094】
パターン(E)に示される高周波モジュール1Nにおいては、弾性波フィルタ121と他の電子回路140とが樹脂150で一体的にモールドされており、その樹脂150のY軸負方向側の側面にシールド電極151が形成されている。
【0095】
また、
図17のパターン(F),(G)にそれぞれ示されるように、高周波モジュールをZ軸方向から平面視したときに、弾性波フィルタ121と、弾性波フィルタ121が積層される他の部品とのどちらか一方が他方と重ならない部分を有していてもよい。
【0096】
パターン(F)に示される高周波モジュール1Pにおいては、弾性波フィルタ121が弾性波フィルタ122の上に積層され、かつ、上側の弾性波フィルタ121のY軸負方向側の端部が、下側の弾性波フィルタ122と送信用部品80との間の領域にまで突出している。シールド電極131,132は、弾性波フィルタ121,122のY軸負方向側の側面にそれぞれ形成されている。
【0097】
パターン(G)に示される高周波モジュール1Qにおいては、弾性波フィルタ121が弾性波フィルタ122の上に積層され、かつ、上側の弾性波フィルタ121のY軸負方向側の端部が、送信用部品80の上方の領域にまで突出している。シールド電極132は弾性波フィルタ122のY軸負方向側の側面に形成されているが、シールド電極131は弾性波フィルタ121のY軸正方向側の側面に形成されている。
【0098】
パターン(A)~(G)にそれぞれ示される高周波モジュール1J~1Qにおいては、弾性波フィルタ121が他の部品(弾性波フィルタ122あるいは他の電子回路140)の上にZ軸方向に積層され、弾性波フィルタ120の側面および他の部品の側面にシールド電極131,132がそれぞれ形成される。これにより、シールド電極131,132がZ軸方向に配列されてシールド電極の高さが確保されるため、送信用部品80と受信用部品90との間のアイソレーション特性をさらに向上させることができる。さらに、弾性波フィルタ121と他の部品とを積層配置することによって、高周波モジュールを小型化することができる。
【0099】
なお、
図17のパターン(H)に示される高周波モジュール1Rのように、送信用部品80と受信用部品90との間の領域に、シールド電極131付きの弾性波フィルタ121とシールド電極132付きの弾性波フィルタ122とを、Y軸方向に並べて配置するようにしてもよい。このような構成においても、送信用部品80と受信用部品90との間のアイソレーション特性をさらに向上させることができる。
【0100】
[変形例8]
図18は、本変形例8による弾性波フィルタの下面(実装面)の電極パターン例を模式的に示す平面図である。一般的に、弾性波フィルタ下面のランド電極が電解メッキにより形成される場合、通電されている電極にのみメッキ電極が形成されるため、ランド電極を外部とを導通させるためにはランド電極と外部とを接続するための配線を弾性波フィルタ下面に形成する必要がある。
【0101】
図18のパターン(A),(B),(C)にそれぞれ示される弾性波フィルタ120D,120E,120Fの各々の下面には、電解メッキにより形成される信号電極161,166およびグランド電極162~165が配列されている。信号電極161,166は、弾性波フィルタ内部の回路と電気的に接続された、信号入出力用のランド電極である。グランド電極162~165は、弾性波フィルタ内部の回路と電気的に接続された、グランド用のランド電極である。
【0102】
弾性波フィルタ120D,120E,120Fの各々の下面には、信号電極161,166およびグランド電極162~165に加えて、配線201~206が形成されている。配線201,206は、信号電極161,166をそれぞれ外部と導通させるための配線である。配線202~205は、グランド電極162~165をそれぞれ外部と導通させるための配線である。
【0103】
パターン(A)に示される弾性波フィルタ120Dにおいては、X軸正方向に位置する側面とX軸負方向に位置する側面とにそれぞれシールド電極130が形成されている。信号電極161用の配線201の端部は、シールド電極130が形成されていない、Y軸負方向に位置する側面に露出している。同様に、信号電極166用の配線206の他端は、シールド電極130が形成されていない、Y軸正方向に位置する側面に露出している。グランド電極162,163用の配線202,203の端部は、X軸正方向に位置する側面に露出してシールド電極130に接続されている。同様に、グランド電極164,165用の配線204,205の端部は、X軸負方向に位置する側面に露出してシールド電極130に接続されている。
【0104】
配線201~206をパターン(A)のように配置することによって、信号電極161,166への信号の入出力を可能にするとともに、シールド電極130を接地してシールド電極130にシールド特性を持たせることができる。
【0105】
パターン(B)に示される弾性波フィルタ120Eは、パターン(A)に示される弾性波フィルタ120Dに対して、X軸負方向に位置するシールド電極130が取り除かれ、かつ、信号電極166用の配線206の端部がX軸負方向に位置する側面に露出している点が異なる。
【0106】
配線201~206をパターン(B)のように配置することによっても、信号電極161,166への信号の入出力を可能にするとともに、シールド電極130を接地してシールド電極130にシールド特性を持たせることができる。
【0107】
パターン(C)に示される弾性波フィルタ120Fは、パターン(B)に示される弾性波フィルタ120Eに対して、グランド電極162,163用の配線202,203の幅(Y軸方向の寸法)を広くした点が異なる。このようにグランド電極162,163用の配線202,203の幅を広くすることで、シールド電極130の接地性を向上させてシールド電極130のシールド特性を向上することができる。
【0108】
今回開示された実施の形態およびその変形例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0109】
上述した実施の形態およびその変形例は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0110】
(第1項) 本開示による高周波モジュールは、実装面を有する基板と、実装面に配置される第1部品および第2部品と、実装面における第1部品と第2部品との間に配置される第1弾性波フィルタと、第1弾性波フィルタの少なくとも1つの側面に形成される第1シールド電極とを備える。第1シールド電極は、第1部品と第2部品とを結ぶ仮想線と交差する方向に延在する部分を有する。
【0111】
(第2項) 第1項に記載の高周波モジュールは、実装面における第1部品と第2部品との間に、第1弾性波フィルタと並べて配置される第2弾性波フィルタと、第2弾性波フィルタの少なくとも1つの側面に形成される第2シールド電極とをさらに備える。第2シールド電極は、第1部品と第2部品とを結ぶ仮想線と交差する方向に延在する部分を有する。
【0112】
(第3項) 第1項に記載の高周波モジュールは、実装面における第1弾性波フィルタと隣接する位置に配置されるインダクタをさらに備える。インダクタは、第1弾性波フィルタと電気的に接続される。第1弾性波フィルタは、インダクタと面する第1側面と、インダクタと面しない第2側面とを有する。第1シールド電極は、第1側面には形成されず、第2側面に形成される。
【0113】
(第4項) 第1項に記載の高周波モジュールにおいて、第1部品は、信号の送信に用いられる部品である。
【0114】
(第5項) 第1項に記載の高周波モジュールは、高周波モジュールの上面部に形成される上面電極をさらに備える。第1シールド電極は、上面電極に電気的に接続される。
【0115】
(第6項) 第1項に記載の高周波モジュールにおいて、第1弾性波フィルタは、バンプ電極を介して実装面に接続される下面を有する。第1弾性波フィルタの下面には、第1弾性波フィルタの内部の回路とは電気的に接続されないグランド電極が配置される。第1シールド電極は、グランド電極と電気的に接続されている。
【0116】
(第7項) 本開示による通信装置は、第1~6項のいずれかに記載の高周波モジュールと、高周波モジュールに接続される外部回路とを備える。
【0117】
(第8項) 第1項に記載の高周波モジュールにおいて、第1弾性波フィルタの下面には、第1弾性波フィルタの内部の回路と電気的に接続される長尺状のバンプ電極が配置される。長尺状のバンプ電極は、第1部品と第2部品とを結ぶ仮想線と交差する方向に延在する部分を有する。
【0118】
(第9項) 第1項に記載の高周波モジュールにおいて、第1部品は、第1周波数の信号の送信に用いられる部品である。第2部品は、第1周波数とは異なる第2周波数の信号の送信あるいは受信に用いられる部品である。
【0119】
(第10項) 第1項に記載の高周波モジュールにおいて、第1弾性波フィルタと並べて配置される第3部品と、第3部品の少なくとも1つの側面に形成される第2シールド電極とをさらに備える。第2シールド電極は、第1部品と第2部品とを結ぶ仮想線と交差する方向に延在する部分を有する。
【0120】
(第11項) 第10項に記載の高周波モジュールにおいて、第1弾性波フィルタと第3部品とは、互いに積層配置される。
【0121】
(第12項) 第11項に記載の高周波モジュールにおいて、第3部品は、電子部品である。
【0122】
(第13項) 第11項に記載の高周波モジュールにおいて、第1弾性波フィルタと第3部品とを基板の法線方向から平面視したとき、第1弾性波フィルタと第3部品とのどちらか一方が他方と重ならない部分を有する。
【0123】
(第14項) 第1項に記載の高周波モジュールにおいて、第1弾性波フィルタは、バンプ電極を介して実装面に接続される下面を有する。第1弾性波フィルタの下面には、第1弾性波フィルタの内部の回路と電気的に接続されるグランド電極が配置される。第1シールド電極とグランド電極とは、第1弾性波フィルタの側面に露出するグランド用の接続配線を介して接続される。
【0124】
(第15項) 第14項に記載の高周波モジュールにおいて、第1弾性波フィルタの下面には、第1弾性波フィルタの内部の回路と電気的に接続される信号電極が配置される。信号電極は、第1シールド電極が形成される側面とは異なる側面に露出する端部を有する信号用接続配線に接続されている。
【0125】
(第16項) 本開示による通信装置は、第9~15項のいずれかに記載の高周波モジュールと、高周波モジュールに接続される外部回路とを備える。
【符号の説明】
【0126】
1,1A~1R 高周波モジュール、9 通信装置、10 外部接続端子、11,11A,11B パワーアンプ、14,14C,14I ローノイズアンプ、15,16 整合回路、15A,15B,16C インダクタ、17,17I アンテナスイッチ、18 バンドセレクトスイッチ、19 束ねスイッチ、20 パワーアンプコントローラ、30 シールド専用部材、40A,40B,40C,40D 入力整合素子群、50 基板、50a 実装面、60,150 樹脂、70 上面電極、80,81,82 送信用部品、90 受信用部品、91 アンテナ、92,93 信号処理回路、100 アンテナ整合素子、101 アンテナ端子、102 信号入力端子、103 信号出力端子、104 制御端子、110 入力整合回路素子群、120,120A~120F,121~126 弾性波フィルタ、130,130A~130C,131~136,131A~136A,131B~136B シールド電極、130a~130f 接続部分、140 電子回路、141~146 ストライプバンプ、141,142 バンプ、152,153,155~158,162~165,G1 グランド電極、151 入力電極、154 出力電極、161,166 信号電極、201~206 配線、W1,W2 ワイヤ。