(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180254
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】振蕩撹拌機およびPET用核種の処理方法
(51)【国際特許分類】
A61K 51/00 20060101AFI20241219BHJP
G01T 1/161 20060101ALI20241219BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241219BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20241219BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20241219BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20241219BHJP
A61K 47/66 20170101ALI20241219BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20241219BHJP
【FI】
A61K51/00 100
G01T1/161 Z
G01T1/161 A
A61K51/00
A61P35/00
A61K9/08
A61K47/54
A61K47/26
A61K47/66
A61K47/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023212473
(22)【出願日】2023-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2023098743
(32)【優先日】2023-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】519328970
【氏名又は名称】AMS企画株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】菅原 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】世利 重実
(72)【発明者】
【氏名】平野 圭市
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C188
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA95
4C076BB11
4C076CC27
4C076CC41
4C076DD33
4C076DD66
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF11
4C076FF34
4C084AA12
4C084MA16
4C084NA05
4C084NA13
4C084ZB26
4C085HH03
4C085JJ01
4C085KA29
4C085KB07
4C085KB15
4C085KB20
4C085KB37
4C085KB38
4C085KB78
4C085KB82
4C085LL18
4C188EE02
4C188EE30
4C188FF07
4C188HH06
(57)【要約】
【課題】放射性核種と標識薬とを安全に撹拌できる振蕩撹拌機を提供すること。
【解決手段】振蕩撹拌機10は、PET用核種と、標識薬とが入ったバイアル20を振蕩させる。振蕩撹拌機10は、モータ軸を上に向けた状態でモータを保持する台座12と、一方の端面に前記モータ軸が挿入される軸穴を有し、他方の端面に突起143を有する樹脂製の柱体14と、前記台座12から、前記突起の先端よりも遠くまで前記モータ軸と同軸に延びる樹脂製の円筒体11とを備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PET(Positron Emission Tomography)用核種と、標識薬とが入ったバイアルを振蕩させる振蕩撹拌機。
【請求項2】
モータ軸を上に向けた状態でモータを保持する台座と、
一方の端面に前記モータ軸が挿入される軸穴を有し、他方の端面に突起を有する樹脂製の柱体と、
前記台座から、前記突起の先端よりも遠くまで前記モータ軸と同軸に延びる樹脂製の円筒体と
を備える請求項1に記載の振蕩撹拌機。
【請求項3】
前記突起は、前記軸穴の中心軸から離れた位置に配置されている
請求項2に記載の振蕩撹拌機。
【請求項4】
前記バイアルは、前記突起の上に載置した状態で使用される
請求項2に記載の振蕩撹拌機。
【請求項5】
前記バイアルは、前記円筒体の中心軸に対して斜めに載置される
請求項4に記載の振蕩撹拌機。
【請求項6】
モータ軸を上に向けた状態でモータを保持する台座と、
一方の端面に前記モータ軸が挿入される軸穴を有し、他方の端面に突起を有する樹脂製の柱体と、
前記台座から、前記突起の先端よりも遠くまで前記モータ軸と同軸に延びる円筒体と
前記円筒体を加熱するヒータとを備える
を備える請求項1に記載の振蕩撹拌機。
【請求項7】
前記円筒体は、内筒と外筒とを備え、
前記ヒータは、前記内筒と前記外筒とに挟まれている
請求項6に記載の振蕩撹拌機。
【請求項8】
前記外筒に接触せずに該外筒を囲むフィン板を備える
請求項7に記載の振蕩撹拌機。
【請求項9】
前記円筒体の外周を覆う放射線遮蔽体を備える
請求項2から請求項8のいずれか一つに記載の振蕩撹拌機。
【請求項10】
PET用核種を生成するジェネレータから延びるチューブを標識薬が入ったバイアルに接続し、
前記バイアルを振蕩撹拌機により振蕩させながら、前記チューブを介して前記バイアル内にPET用核種を供給する
PET用核種の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振蕩撹拌機およびPET用核種の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
患者の血管に放射性核種を含むPET(Positron Emission Tomography:陽電子放出断層撮影)用薬剤を投与し、しばらく安静にした後に体内での放射性核種の分布を撮影するPET検査が行われている。患者は、投与されたPET用薬剤の放射能が十分に減衰するまで、放射線管理区域に留まる必要がある。したがって、PET用薬剤には半減期の短い放射性核種を用いることが望ましい。
【0003】
半減期の短い核種を使用したPET用薬剤は、製造後の使用可能期間が短い。したがって、必要の都度医療機関の内部でPET用薬剤を製造することが望ましい。比較的半減期の長い親核種から、半減期の短いPET検査用の放射性核種を生成させるジェネレータが提案されている(特許文献1)。サイクロトロン等の大型装置を使用しないため、たとえば医療機関内でPET用薬剤の製造に必要な放射性核種を製造できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のジェネレータで製造された放射性核種を、病変部に蓄積しやすい標的分子に結合させることにより、PET用薬剤を製造できる。しかしながら、放射性核種と標的分子を含む標識薬とを撹拌する工程を手作業で行なう場合、作業担当者の被曝リスクがある。
【0006】
一つの側面では、放射性核種と標識薬とを安全に撹拌できる振蕩撹拌機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
振蕩撹拌機は、PET用核種と、標識薬とが入ったバイアルを振蕩させる。
【発明の効果】
【0008】
一つの側面では、放射性核種と標識薬とを安全に撹拌できる振蕩撹拌機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】PET用薬剤の製造手順を説明する説明図である。
【
図3】
図2におけるIII部拡大部分断面図である。
【
図5】撹拌中のバイアルの状態を説明する説明図である。
【
図6】撹拌中のバイアルの状態を説明する説明図である。
【
図10】実施の形態3の振蕩撹拌機の正面図である。
【
図11】実施の形態3の振蕩撹拌機の縦断面図である。
【
図12】
図10におけるXII-XII線による断面図である。
【
図13】円筒体、上保持板および下保持板の半断面図および下面図である。
【
図14】実施の形態3の振蕩撹拌機の構成を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態1]
図1は、PET用薬剤の製造手順を説明する説明図である。標的分子を含む標識薬が、滅菌状態でバイアル20に収容されている。バイアル20は、ゴム栓で封止された小型のガラス瓶である。ゴム栓には、複数回の針刺しが可能である。
【0011】
本実施の形態では、標的分子は放射性核種である68Ga(ガリウム68)と反応して、PET用薬剤である68Ga-PSMA(Prostate Specific Membrane Antigen:前立腺特異的膜抗原)特異的リガンドを生成する分子である場合を例にして説明する。68Gaは、本実施の形態のPET用核種の例示である。
【0012】
PSMAは、前立腺がん細胞をはじめとする複数の種類のがん細胞の表面に過剰発現する分子である。PSMA特異的リガンドは、PSMAを過剰発現しているがん細胞の表面に特異的に結合する物質である。患者に68Ga-PSMA特異的リガンドを投与して、しばらく安静にさせることにより、PSMAが過剰発現しているがん細胞の表面に68Ga-PSMA特異的リガンドが集積する。この状態でPET検査装置を使用して撮像することにより、68Gaから放射線が発生している場所の分布、すなわち、PSMAが過剰発現しているがん細胞の分布を画像化できる。したがって、前立腺がん等の罹患の有無、病変の大きさ、および、転移している場所等を診断できる。
【0013】
振蕩撹拌機10は、机上または作業台上等に水平に載置される本体15と、本体15の上面に配置された台座12と、台座12の上面に配置された円筒体11とを有する。ユーザは、円筒体11にバイアル20を挿入する。円筒体11に透光性の素材を使用することにより、ユーザは後述する撹拌の様子を目視で確認できる。円筒体11の内側の構成については後述する。
【0014】
本体15の一面は上面に対して傾斜しており、ON-OFF操作用のON/OFFスイッチ18が配置されている。傾斜した部分に、たとえば振蕩撹拌機10の動作状況を表示する液晶表示パネルが配置されていてもよい。傾斜した部分に、ON/OFFスイッチ18の機能を有するボタン等を表示するタッチパネルが配置されていてもよい。
【0015】
ジェネレータ30は、PET用薬剤に適した放射性核種を生成する機器である。ジェネレータ30には比較的半減期が長い放射性核種である親核種が収容されている。親核種の崩壊により、半減期が短い娘核種が生成される。具体例を挙げて説明する。親核種は半減期が271日である68Ge(ゲルマニウム68)である。68Geの崩壊により、半減期が68分である68Gaが生成される。
【0016】
ジェネレータ30には、生成された68Gaを含む液体を外部に供給する供給チューブ31が接続されている。供給チューブ31の先端には、図示を省略する針が取り付けられている。ユーザは、供給チューブ31の針をバイアル20のゴム栓に穿刺する。
【0017】
さらにユーザは、通気針36をバイアル20のゴム栓に穿刺する。通気針36の先端は、バイアル20内の標識薬および導入する68Ga溶液が加算された液面よりも上側になるように配置される。なお、バイアル20の内部が陰圧に調整されている場合には、通気針36を使用する必要はない。
【0018】
ユーザは、ON/OFFスイッチ18を操作して振蕩撹拌機10をON状態にする。バイアル20の振蕩が開始される。バイアル20を振蕩させる構成については後述する。さらにユーザはジェネレータ30に設けられたスタートスイッチを操作して、供給チューブ31先端からバイアル20内部への68Gaの供給を開始する。供給チューブ31を介してバイアル20の内部に供給された液体の体積に相当する空気が通気針36によりバイアル20の外に押し出される。
【0019】
バイアル20内部の標識薬と、68Gaとが振蕩撹拌されて、PET用薬剤である68Ga-PSMA特異的リガンドが生成される。生成されたPET用薬剤は、速やかにPET検査を受ける患者に投与される。
【0020】
本実施の形態の振蕩撹拌機10を使用することにより、振蕩撹拌時にユーザがバイアル20に触れる必要がないため、ユーザの被曝を防止できる。供給チューブ31を接続したままバイアル20を振蕩させるため、放射性核種を少しずつバイアル20に供給しながら振蕩撹拌できる。したがって、68Gaと標識薬とを確実に反応させる振蕩撹拌機10を提供できる。
【0021】
なお、供給チューブ31および通気針36をバイアル20のゴム栓に穿刺および抜去する作業は、ロボットまたは自動機を用いて実施されてもよい。放射性核種にユーザが接触する機会を低減することにより、ユーザの被曝を防止できる。
【0022】
図2は、振蕩撹拌機10の三面図である。以下の説明では、
図2の左下の図を正面図、左上の図を平面図、右下の図を右側面図と記載する。正面図においては、円筒体11の一部を破断して、円筒体11の内部構造を図示している。
【0023】
図3は、
図2におけるIII部拡大部分断面図である。
図3においては、柱体14を断面で示す。
図3に示すように、台座12にモータ13がモータ軸131を上に向けて保持されている。台座12とモータ13とを固定する構造については、図示を省略する。モータ軸131と、円筒体11とは、略同軸に配置されている。モータ13は、たとえば所定の速度で定速回転する直流モータである。
【0024】
モータ軸131に柱体14が固定されている。柱体14は、円柱の端部を中心軸に対して斜めに切り落とした形状である。柱体14の形状の詳細については後述する。モータ軸131と柱体14とは、同軸に固定されている。したがって、
図2の平面図に示すように、円筒体11と柱体14とは、同軸に配置されている。
【0025】
円筒体11の端部は、柱体14の先端よりも高い位置にある。すなわち円筒体11は、台座12から柱体14の先端よりも遠くまで延びている。円筒体11とモータ軸131とは同軸である。柱体14の先端は、モータ軸131の中心軸から離れた位置に配置されている。
【0026】
図4は、柱体14の三面図である。柱体14は、円柱形状の145の端面に、円柱部145と同一の直径を有する円柱を傾斜面142により斜めに切り落とした形状を有する突起143が接続された形状を有する。円柱部145の他方の端面には、円柱部145と同軸の軸穴141が設けられている。軸穴141は、柱体14を貫通していない。突起143の先端は、軸穴141の中心軸から離れた位置に配置されている。
【0027】
軸穴141の内径は、モータ軸131の外形よりも若干細くなっており、軸穴141にモータ軸131を押し込むことにより柱体14とモータ軸131とは固定される。したがって、モータ軸131を回転させた場合、柱体14はモータ軸131と一体に回転する。
【0028】
なお、軸穴141およびモータ軸131には、たとえばキーとキー溝のような回転止め構造が設けられていてもよい。軸穴141とモータ軸131との間は、接着剤または粘着剤により固定されていてもよい。
【0029】
円筒体11および柱体14は、たとえば硬質ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK:Polyetheretherketone)またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE:Polytetrafluoroethylene)等の、摺動性の高い樹脂材料製である。円筒体11の素材と、柱体14の素材とは、異なっていてもよい。
【0030】
図5および
図6は、撹拌中のバイアル20の状態を説明する説明図である。柱体14が突起143を有するため、バイアル20は柱体14の上に傾いた状態で載置される。傾き角度は、5度程度である。A部に示すように、バイアル20の底は突起143の先端と接触する。B部に示すように、バイアル20の側面は円筒体11の端面内側と接触する。傾きの状態によっては、C部に示すようにバイアル20の底部の縁が円筒体11の内面と接触する場合がある。
【0031】
モータ13を動作させてモータ軸131を回転させることにより、柱体14も回転する。表1は、モータ13の回転速度と、振蕩撹拌効果との関係に関する実験結果を示す表である。回転速度の単位は、rpm(rotations per minute:回転/分)である。振蕩撹拌結果の「良好」は、バイアル20自体の回転運動は殆ど発生せずに、バイアル20の内容物が十分に浸透撹拌されたことを示す。「不良」はバイアル20の回転運動の有無にかかわらず、バイアル20の内容物の振蕩撹拌が不十分であることを示す。
【0032】
【0033】
表1に示す実験で使用したバイアル20は、外径24ミリメートル、高さ60ミリメートル、満容量19ミリリットルのISO規格バイアル(15R)である。柱体14の半径、すなわちモータ軸131の中心軸とバイアル20と軸穴141との接触点までの距離は、4ミリメートルである。
【0034】
円筒体11は内径28ミリメートルである。したがって、モータ軸131の中心軸と、バイアル20と円筒体11との接触点までの距離は、
図5に示すB部、C部ともに14ミリメートルである。
【0035】
表1に示す実験は、バイアル20の八分目まで水を入れた状態で実施した。表1の実験は、バイアル20に供給チューブ31を接続しない状態で実施した。
【0036】
表1に示すように、適切な回転速度で柱体14を回転させることにより、良好な振蕩撹拌効果を得ることができる。回転速度が速すぎても、遅すぎても、振蕩撹拌効果は得られない。したがって、たとえばバイアル20に収容する液体の量が変動する場合には、振蕩撹拌機10に回転速度を調整するダイヤル等を設けておき、事前検討により適切な回転速度を定めておくことが望ましい。
【0037】
以下に本実施の形態の振蕩撹拌機10が振蕩撹拌効果を発揮する機序の概要を説明する。たとえば、
図5中のA部においてバイアル20と突起143との間の静摩擦力が十分に大きい場合には、バイアル20と突起143との間で滑りを生じずにバイアル20が回転する。この場合、B部およびC部ではバイアル20と円筒体11との間で滑りまたは転がりが生じる。すなわち、B部およびC部では、バイアル20に対して滑り摩擦力または転がり摩擦力が働く。
【0038】
しかしながら、バイアル20の表面および円筒体11の端面内側には僅かながら凸凹が存在するため、バイアル20と円筒体11との間で発生する滑り摩擦力または転がり摩擦力は一定ではない。バイアル20と円筒体11との間の摩擦力が大きい場所では、バイアル20と突起143との間の摩擦力の方が小さくなる。したがって、バイアル20と突起143との間で滑りが生じる。
【0039】
バイアル20の底面にも僅かながら凸凹が存在するため、突起143とバイアル20との間の滑り摩擦力も一定ではない。バイアル20と突起143との間の滑り摩擦力が大きい場所では、ふたたび突起143とバイアル20との間で滑りが生じない状態になり、滑り摩擦力に比べて大きい静摩擦力が働く状態になる。
【0040】
突起143とバイアル20との間で滑りの生じる状態と生じない状態とを繰り返しすことにより、バイアル20は円筒体11の内部でほとんど回転しない状態で
図5および
図6に示すように揺れ動き、内部の液体が振蕩撹拌される。
【0041】
さらに、バイアル20の蓋に接続されている供給チューブ31も、バイアル20が柱体14とともに回転運動することを妨げる。以上により、供給チューブ31とバイアル20とを接続したまま、バイアル20内の液体を振蕩撹拌する振蕩撹拌機10を提供できる。なおユーザは、バイアル20から供給チューブ31を外してからモータ13を動作させてもよい。供給チューブ31を外すことにより、バイアル20が回転する条件であっても、振蕩撹拌機10を使用可能である。
【0042】
前述のとおり円筒体11および柱体14は樹脂製であるため、バイアル20との間で滑りが生じた場合であってもバイアル20の表面に傷をつけることがない。したがって、振蕩撹拌時にバイアル20の傷、および傷に起因するバイアル20の割れを防止できる。
【0043】
バイアル20は、円筒体11に支えられて5度程度の傾きで揺れ動くため、たとえばバイアル20を上下に振って撹拌する場合に比べてバイアル20内の液面の揺れが少ない。したがって、バイアル20内の液体に気泡を発生させにくい振蕩撹拌機10を提供できる。
【0044】
モータ13を一方向に回転させるだけでバイアル20の振蕩撹拌を実現する単純な構造であるため、安価な直流モータと、直流モータを定電圧駆動する簡易な制御回路とを使用して、安価で故障しにくい振蕩撹拌機10を提供できる。
【0045】
ON/OFFスイッチ18の近傍に、モータ13の回転を反転させるスイッチが設けられていてもよい。ユーザは、たとえばモータ13を時計回りさせて振蕩撹拌した後に、反時計回りさせて再度振蕩撹拌してもよい。
【0046】
ON/OFFスイッチ18の近傍に、モータ13の動作時間を設定するタイマースイッチが設けられていてもよい。振蕩撹拌機10は、ユーザによるON/OFFスイッチ18の操作を受け付けてモータ13の回転を開始した後、所定の時間が経過したときに自動的にモータ13を停止させる機能を有してもよい。
【0047】
円筒体11は交換可能であってもよい。ユーザは、たとえば使用するバイアル20の高さに応じて円筒体11を交換して使用できる。
【0048】
樹脂製のバイアル20を使用する場合には、円筒体11および柱体14は金属、ガラスまたはセラミックス等の硬い素材製であってもよい。撹拌振蕩中にバイアル20の表面に擦り傷が発生する可能性があるが、撹拌振蕩後のバイアル20からはPET用薬剤が速やかに取り出されて患者に投与されるため、擦り傷による問題は特に発生しない。
【0049】
なお、放射性核種は68Gaに限定しない。標的分子は、放射性核種である64Cu(銅64)と反応して、PET用薬剤である64Cu-PSMA特異的リガンドを生成する分子であってもよい。標的分子は、放射性核種である89Zr(ジルコニウム89)と反応して、PET用薬剤であるZr89-PSMA特異的リガンドを生成する分子であってもよい。
【0050】
放射線核種により標識される分子は、PSMA特異的リガンドに限定しない。たとえば標的分子は、放射性核種である18F(フッ素18)と反応して、PET用薬剤である18F-FDG(fluorodeoxyglucose F18:18F-フルオロデオキシグルコース)を生成する分子であってもよい。18F-FDGは、がん細胞をはじめとするブドウ糖消費量の多い組織に集積する。18F-FDGの集積場所を画像化するFDG-PETは、がんの発見および治療後の再発判定等に従来から使用されている。
【0051】
そのほか、任意の放射性核種と任意の標的分子とを組み合わせたPET用薬剤の製造に、本実施の形態の振蕩撹拌機10を使用できる。たとえば標的分子は、68Gaと反応してPET用薬剤である68Ga-DOTATOCを生成する分子である、DOTATOC酢酸塩であってもよい。ここでDOTATOCは、神経内分泌腫瘍で過剰発現するソマトスタチン受容体に結合する、合成ソマトスタチン類似体である。
【0052】
本実施の形態の振蕩撹拌機10を使用して製造されるPET用薬剤は、たとえば64Cu-ATSM(64Cu-diacetyl-bis (N4-methylthiosemicarbazone):64Cuジアセチル-ビス(N4-メチルチオセミカルバゾン)を生成する分子であってもよい。64Cu-ASTMは、がん細胞等の低酸素状態の細胞および組織に集積する。64Cu-ASTMには、集積した場所のがん細胞を殺生する効果もあることが知られている。
【0053】
PET用薬剤は、たとえば89Zr標識デフェロキサミン(89Zr-desferrioxamine B)であってもよい。PET用薬剤は、89Zr等の放射性核種で標識されたモノクローナル抗体であってもよい。
【0054】
振蕩撹拌機10は、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography:単一光子放射断層撮影)用薬剤の製造に使用されてもよい。たとえば放射線核種は、111In(インジウム111)であり、標的分子は111Inと反応してSPECT用薬剤であるインジウムペンテトレオチドを生成する分子であってもよい。
【0055】
振蕩撹拌機10は、骨シンチグラフィ検査用薬剤の製造に使用されてもよい。たとえば放射線核種は、99mTc(テクネチウム99m:テクネチウムの準安定核異性体)であり、標的分子は99mTcと反応して骨シンチグラフィ検査用薬剤であるヒドロキシメチレンジホスホン酸テクネチウムを生成する分子であってもよい。
【0056】
そのほか、振蕩撹拌機10は任意のRI(Radio Isotope:放射性同位体)検査用薬剤の製造に使用されてもよい。
【0057】
振蕩撹拌機10は、放射線療法用薬剤の製造に使用されてもよい。たとえば、放射性核種は177Lu(ルテチウム177)であり、標的分子は177Luと反応してルテチウム177標識PSMA特異的リガンドを生成する分子であってもよい。ルテチウム177標識PSMA特異的リガンドは、PSMAを過剰発現している前立腺がん細胞に集積して、細胞に対する殺生能力のあるγ線およびβ線を放出する。したがって、前立腺がんの局所的な放射線治療を実施できる。
【0058】
放射性核種は211At(アスタチン211)であり、標的分子は、211Atと反応して、アスタチン211標識PSMA特異的リガンドを生成する分子であってもよい。アスタチン211標識PSMA特異的リガンドは、PSMAを過剰発現している前立腺がん細胞に集積して、細胞に対する殺生能力のあるα線を放出する。したがって、前立腺がんの局所的な放射線治療を実施できる。
【0059】
放射性核種は255Ac(アクチニウム255)であり、標的分子は、255Acと反応して、アクチニウム255標識PSMA特異的リガンドを生成する分子であってもよい。アクチニウム255標識PSMA特異的リガンドは、PSMAを過剰発現している前立腺がん細胞に集積して、細胞に対する殺生能力のあるα線を放出する。したがって、前立腺がんの局所的な放射線治療を実施できる。
【0060】
[変形例1]
図7は、柱体14の変形例である。本変形例の柱体14は、円柱部145の一方の端面である天面144に円柱形状の突起143が配置されている。円柱部145と突起143とは、同軸ではない。円筒体11に挿入されたバイアル20が、突起143により傾斜した状態に保持される。
【0061】
[変形例2]
図8は、柱体14の変形例である。本変形例の柱体14は、円柱部145の天面144に半球形状の突起143が配置されている。円柱部145と突起143とは、同軸ではない。円筒体11に挿入されたバイアル20が、突起143により傾斜した状態に保持される。
【0062】
本実施の形態によると、ユーザの放射線被曝リスクを低減し、放射性核種と標識薬とを安全に撹拌できる振蕩撹拌機10を提供できる。
【0063】
本実施の形態によると、バイアル20に供給チューブ31を接続したまま使用できる振蕩撹拌機10を提供できる。たとえば、ジェネレータ30からバイアル20に放射性核種を少しずつ供給しながら撹拌することにより、安定した品質のPET用薬剤を製造する振蕩撹拌機10を提供できる。
【0064】
なお、ジェネレータ30の代わりに、たとえば放射性核種を含む溶液が入った容器が供給チューブ31に接続されていてもよい。
【0065】
[実施の形態2]
本実施の形態は、放射線を遮蔽する構造を有する振蕩撹拌機10に関する。実施の形態1と共通する部分については、説明を省略する。
【0066】
図9は、実施の形態2の振蕩撹拌機10の三面図である。円筒体11の外周が、放射線遮蔽体40により覆われている。放射線遮蔽体40は、円柱形状の貫通穴を中央に有する直方体形状である。放射線遮蔽体40は、たとえばタングステン製、鉛製または鉄製である。
【0067】
なお放射線遮蔽体40は、円筒形状であってもよい。そのほか、任意の外形形状の放射線遮蔽体40を使用できる。
【0068】
本実施の形態によると、振蕩撹拌中に放射線を遮蔽して、ユーザの被曝リスクをさらに低減する振蕩撹拌機10を提供できる。
【0069】
[実施の形態3]
本実施の形態は、撹拌中にバイアル20を加熱する振蕩撹拌機10に関する。実施の形態1と共通する部分については、説明を省略する。標的分子がキレート環を有する場合、80度から95度程度の温度に加熱することで、標的分子と放射性核種との反応が効率良く進むことが知られている。
【0070】
図10は、実施の形態3の振蕩撹拌機10の正面図である。
図10においては、供給チューブ31および通気針36については図示を省略する。本実施の形態の振蕩撹拌機10は、略直方体形状を有する本体15と、本体15の天面側に取り付けられた円筒体11とを備える。
【0071】
図10に示すように本体15の一つの側面に、温度表示部521、表示器55、表示切替スイッチ551、速度調整ダイヤル561、速度切替スイッチ562、方向スイッチ563およびON/OFFスイッチ18が配置されている。これらのスイッチ等は、複数の側面に分散して配置されていてもよい。
【0072】
図示を省略する他の側面には、電源の供給に使用されるインレット、および、インレットから振蕩撹拌機10への電源供給のON-OFF操作に使用される主電源スイッチ等が配置されている。
【0073】
図11は、実施の形態3の振蕩撹拌機10の縦断面図である。
図12は、
図10におけるXII-XII線による断面図である。
図11においては、本体15の内部構造、供給チューブ31および通気針36については図示を省略する。
【0074】
図11に示すように、本体15の上部にモータ13が固定されている。すなわち、本実施の形態の本体15の上部は、実施の形態1で説明した台座12の機能を兼ね備えている。モータ13は、実施の形態1と同様にモータ軸131を上に向けて配置されている。モータ軸131に柱体14が固定されている。本体15には、モータ軸131を中心にして約90度間隔でネジ穴が設けられている。
【0075】
円筒体11は、内側から順に内筒111、外筒112および保護筒113の三本の筒により構成されている。内筒111、外筒112および保護筒113の両端は、上保持板431および下保持板432により保持されてる。上保持板431および下保持板432には、約90度間隔で四個の貫通孔が設けられている。外筒112に温度センサ51が埋設されている。温度センサ51は、たとえば熱電対である。円筒体11の構成の詳細については後述する。
【0076】
円筒体11の上側に、環状の蓋42が配置されている。蓋42の中央部には、上向きに広がるテーパ状の孔が設けられている。蓋42の外縁は、下向きに約90度屈曲している。蓋42には、約90度間隔で四個の貫通孔が設けられている。それぞれの貫通孔の上部は、深ザグリ形状になっている。
【0077】
円筒体11の周囲に、環状のフィン板45が配置されてている。
図11においては、フィン板45が9枚である場合を例示するが、フィン板45の数は8枚以下または10枚以上であってもよい。フィン板45には、約90度間隔で四個の貫通孔が設けられている。フィン板45は、たとえばアルミニウム、銅、または、熱伝導性フィラーが配合された高熱伝導性グレードの樹脂等の、熱伝導性の高い材料製である。
【0078】
フィン板45同士の間、一番上側のフィン板45と上保持板431との間、上保持板431と蓋42との間、一番下側のフィン板45と下保持板432との間、および下保持板432と本体15の上面との間には、それぞれ円筒状のスペーサ44が配置されている。
【0079】
蓋42、上保持板431、下保持板432およびスペーサ44を、4本の固定ネジ46が貫通している。固定ネジ46は、本体15に設けられたネジ穴にねじ込まれている。以上の構成により、フィン板45は互いに間隔を空けた状態で本体15の上部に略平行に固定されている。
【0080】
図13は、円筒体11、上保持板431および下保持板432の半断面図および下面図である。内筒111は、内径が下側から上側に向けて2段階に大きくなる段付き円筒形である。一番下側の部分の内壁は、柱体14の外径よりも大きい柱体孔115を形成している。中央の部分の内壁は、バイアル20の外径よりも大きい保持壁116を形成している。上側の部分の内径は、保持壁116の内径よりもさらに大きくなっている。内筒111は、上端に薄い鍔状の部分を有する。
【0081】
保持壁116の表面は、滑らかに仕上げられていることが望ましい。図示を省略するが、保持壁116の上端部分は滑らかな曲面に仕上げられていることが望ましい。以上により、撹拌中に保持壁116とバイアル20とが擦れ合うことによる、バイアル20の擦過傷を防止できる。
【0082】
外筒112は、一様な横断面を有する円筒形である。外筒112の外径は、内筒111の鍔状の部分の外径と同一である。外筒112の内径は、内筒111の外径よりも大きく、内筒111と外筒112との間には隙間がある。外筒112には、下側の端面から高さ方向の中央部付近まで延びるセンサ孔117が設けられている。
図11に示すようにセンサ孔117の内部に温度センサ51が取り付けられている。
【0083】
保護筒113は、一様な横断面を有する円筒形である。保護筒113の内径は、外筒112の外径よりも大きい。保護筒113は、たとえばパイレックス(登録商標)のような耐熱ガラス製である。保護筒113は、アクリル樹脂またはポリカーボネート樹脂のような樹脂製であってもよい。
【0084】
内筒111と外筒112との間に、ヒータ53が配置されている。ヒータ53は、たとえば細い導体線または薄い導電膜をポリイミドフィルムのような絶縁性フィルムで挟んだ抵抗加熱方式のフィルムヒータを、筒状に丸めて形成されている。なおヒータ53は誘電加熱方式または誘導加熱方式等の、任意の方式であってもよい。
【0085】
ヒータ53と内筒111と外筒112とは、密着していることが望ましい。内筒111および外筒112は、たとえばアルミニウム、銅、または、熱伝導性フィラーが配合された高熱伝導性グレードの樹脂等の、熱伝導性が高い材料製であり、ヒータ53の加熱により速やかに、かつ、均一に暖まることが望ましい。
【0086】
さらに内筒111は、バイアル20に比べてモース硬度が低く、バイアル20に擦過傷をつけない材質であることが望ましい。たとえばバイアル20がホウケイ酸ガラス製である場合、モース硬度は5程度である。前述のアルミニウムおよび銅であれば、モース硬度は2から3程度であり、バイアル20よりもモース硬度は低い。
【0087】
上保持板431に約90度間隔で設けられた四個の貫通孔の上部は、深ザグリ形状になっている。下保持板432に約90度間隔で設けられた四個の貫通孔の下部は、深ザグリ形状になっている。いずれの深ザグリもスペーサ44の外径よりも僅かに大きい内径を有する。
【0088】
下保持板432の中央部には、柱体孔115と略同一内径の中央孔433が設けられている。
図13の下面図に示すように、中央孔433と、四個の貫通孔との中間に中間孔435が設けられている。なお中間孔435はセンサ孔117に対応する位置に一個のみ配置されていてもよい。
【0089】
上保持板431の下面には、環状の上リブ437が設けられている。下保持板432の上面には、下リブ436が設けられている。上リブ437と下リブ436とは、同一の内径および外形を有して、対向している。上リブ437の内側に、内筒111、および外筒112が保持されている。上リブ437の外側に、保護筒113が保持されている。
【0090】
図11に戻って説明を続ける。温度センサ51のケーブルは、中間孔435を介して本体15の内部に引き回されている。柱体14は、中央孔433および柱体孔115に挿通されている。柱体14の先端は、保持壁116の内側に位置している。
【0091】
図14は、実施の形態3の振蕩撹拌機10の構成を説明する説明図である。温度センサ51およびヒータ53は、温調器52に接続されている。温調器52は、温度センサ51により測定された温度があらかじめ設定された温度になるようにヒータ53を制御するフィードバック制御機能を有する。
【0092】
本体15の内部に放射線検出器54およびモータ制御部56が配置されている。放射線検出器54は、γ線を検出するセンサである。モータ制御部56は、モータ13に接続されている。放射線検出器54およびモータ制御部56は、表示器55に接続されている。
【0093】
表示器55は表示切替スイッチ551を備える。表示切替スイッチ551の切り替え状況に応じて、表示器55には放射線のカウント数、または、モータ13の回転速度が表示される。放射線のカウント数の単位は、CPS(count per second)である。モータ13の回転数の単位はHzである。なお表示器55は、常に放射線のカウント数を表示する表示部と、常にモータ13の回転速度を表示する表示部との2つの表示部を備えてもよい。
【0094】
モータ制御部56は、速度調整ダイヤル561、速度切替スイッチ562、方向スイッチ563およびON/OFFスイッチ18を有する。ON/OFFスイッチ18は、モータ13の回転のONとOFFとの切り替えに使用されるトグルスイッチである。方向スイッチ563は、モータ13の回転方向をCW(ClockWise:時計回り)またはCCW(Counter Clock Wise:反時計回り)との間で切り替えるトグルスイッチである。
【0095】
速度切替スイッチ562は、モータ13の回転速度を高速モードと低速モードとの間で切り替えるトグルスイッチである。速度調整ダイヤル561は、モータ13の回転速度を微調整するダイヤルである。たとえば、モータ13が直流モータである場合、速度切替スイッチ562はモータ13に直列に接続された可変抵抗の抵抗値調整用ダイヤルである。モータ制御部56は、可変抵抗の値、または、モータ13に印加される直流電圧に基づいて定まるモータ13の回転速度を、表示器55に対して出力する。
【0096】
速度切替スイッチ562が高速に設定されている場合に速度調整ダイヤル561により調整可能なモータ13の回転速度の範囲と、速度切替スイッチ562が低速に設定されている場合に速度調整ダイヤル561により調整可能なモータ13の回転速度の範囲とは、重複していても、重複していなくてもよい。
【0097】
重複している場合、速度調整ダイヤル561を使用して連続的にモータ13の回転速度を調整できる範囲が広い振蕩撹拌機10を提供できる。重複していない場合、高速、低速それぞれの回転速度の中央値付近で回転速度を細かく調整できる振蕩撹拌機10を提供できる。
【0098】
本実施の形態の振蕩撹拌機10の使用方法の概要について説明する。以下の説明では、標的分子がキレート環を有しており、加熱により反応が促進される場合を例にして説明する。
【0099】
実施の形態1と同様に、ユーザはバイアル20を柱体14の上に載置する。
図11に示す例では、バイアル20と内筒111の隙間は実施の形態1に比べて小さく、バイアル20は内筒111の内部で1度から2度程度傾くことができる。ユーザはバイアル20のゴム栓に供給チューブ31および通気針36を穿刺する。ユーザは、ON/OFFスイッチ18をON状態にして、柱体14を回転させる。ユーザは、バイアル20自体が殆ど回転せずに、バイアル20内部の液体が撹拌されるように、速度調整ダイヤル561、速度切替スイッチ562および方向スイッチ563を調整する。
【0100】
ユーザは図示を省略する温調器52のスイッチをON状態にする。温調器52は、ヒータ53を制御して円筒体11を所定の温度に加熱する。内筒111および外筒112は、熱伝導性が高いため、ヒータ53によりほぼ均一な温度に加熱される。温度センサ51により測定された温度は、温度表示部521に表示される。内筒111を介して、バイアル20も加熱される。
【0101】
なお
図10に示す例では、温度表示部521の上側に大きく表示されている数値が、測定された温度を示す。温度表示部521の下側に小さく表示されている数値が目標温度を示す。単位はいずれも℃である。
【0102】
バイアル20が十分に暖まったのち、ユーザはジェネレータ30からバイアル20への放射性核種の供給を開始する。バイアル20内で、標的分子と放射性核種との反応が進行し、PET用薬剤が生成される。
【0103】
外筒112と保護筒113との間には空間があるため、外筒112から保護筒113に伝わる熱は少なく、保護筒113の温度は外筒112に比べて上昇しにくい。下保持板432および上保持板431に、たとえばステンレスまたは気泡含有樹脂等の熱伝導性の低い材料を使用した場合、保護筒113に伝わる熱をさらに少なくできる。
【0104】
保護筒113から空気を介してフィン板45に伝達した熱は、空中に放熱される。すなわち、保護筒113は、フィン板45により冷却される。フィン板45は、保護筒113よりもさらに温度が上昇しにくい。蓋42および本体15も、ヒータ53からの熱伝達経路が細いため、温度は上昇しにくい。
【0105】
したがって、ユーザが容易に触れられる部分の温度上昇は少なく、火傷などの事故を起こしにくい振蕩撹拌機10を提供できる。
【0106】
本実施の形態によると、バイアル20を加熱する振蕩撹拌機10を提供できる。バイアル20を加熱するにも関わらず、ユーザが火傷する等の事故を発生させにくい振蕩撹拌機10を提供できる。
【0107】
本実施の形態によると、モータ13の回転速度が表示器55に表示されるため、ユーザが適切な回転速度に調整しやすい振蕩撹拌機10を提供できる。放射線検出器54により検出されたγ線の量が表示器55に表示されるため、ジェネレータ30から放射線核種が供給されていることをユーザが容易に確認できる振蕩撹拌機10を提供できる。
【0108】
たとえば、保護筒113を透光性の高い材料で作成し、外筒112およびフィン板45の色を適切に選択することにより、インテリア性が高くユーザが快適に使用できる振蕩撹拌機10を提供できる。
【0109】
各実施例で記載されている技術的特徴(構成要件)はお互いに組合せ可能であり、組み合わせすることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものでは無いと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味では無く、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0110】
特許請求の範囲に記載した独立請求項および従属請求項は、引用形式に関わらずあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。さらに、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載しても良い。
【符号の説明】
【0111】
10 振蕩撹拌機
11 円筒体
111 内筒
112 外筒
113 保護筒
115 柱体孔
116 保持壁
117 センサ孔
12 台座
13 モータ
131 モータ軸
14 柱体
141 軸穴
142 傾斜面
143 突起
144 天面
145 円柱部
15 本体
18 ON/OFFスイッチ
20 バイアル
30 ジェネレータ
31 供給チューブ
36 通気針
40 放射線遮蔽体
42 蓋
431 上保持板
432 下保持板
433 中央孔
435 中間孔
436 下リブ
437 上リブ
44 スペーサ
45 フィン板
46 固定ネジ
51 温度センサ
52 温調器
521 温度表示部
53 ヒータ
54 放射線検出器
55 表示器
551 表示切替スイッチ
56 モータ制御部
561 速度調整ダイヤル
562 速度切替スイッチ
563 方向スイッチ