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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180259
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/08 20060101AFI20241219BHJP
   H02M 3/28 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
H02M1/08 A
H02M3/28 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023223535
(22)【出願日】2023-12-28
(31)【優先権主張番号】P 2023097557
(32)【優先日】2023-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小岩 一広
【テーマコード(参考)】
5H730
5H740
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730BB27
5H730BB66
5H730DD03
5H730DD04
5H730DD16
5H730EE07
5H730EE13
5H730FD21
5H730FF01
5H730FF19
5H740BA12
5H740BB05
5H740BB07
5H740BC01
5H740BC02
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】同期整流素子の導通損失を低減する電力変換装置を提供する。
【解決手段】電力変換装置は、第1端子2vd及び第2端子2vsに接続される同期整流素子2vと、第1端子にカソードが電気的に接続されたダイオードDと、第2端子とダイオードDのアノードとの間に電気的に接続されたコンデンサCxと、コンデンサCXを充電する充電回路50と、コンデンサCxの電圧に基づいて、同期整流素子のゲートを駆動する駆動回路42と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端子及び第2端子に接続される第1整流素子と、前記第1整流素子にトランスの二次側巻線を介して直列に接続される第2同期整流素子とを含む整流回路と、
前記第1端子にカソードが電気的に接続されたダイオードと、
前記第2端子と前記ダイオードのアノードとの間に電気的に接続されたコンデンサと、
前記コンデンサを充電する充電回路と、
前記コンデンサの電圧に基づいて、前記第2同期整流素子のゲートを駆動する駆動回路と、を備える、電力変換装置。
【請求項2】
前記駆動回路は、前記コンデンサの電圧が低下すると、前記第2同期整流素子のゲートをオンする、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記駆動回路は、前記コンデンサの電圧が閾値電圧よりも低下すると、前記第2同期整流素子のゲートをオフからオンに切り替える、請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記整流回路は、第3端子及び第4端子に接続される第3整流素子と、前記第3整流素子に前記二次側巻線を介して直列に接続される第4同期整流素子とを含み、
前記第1整流素子と前記第4同期整流素子との間の接続点は、前記二次側巻線の第1端に電気的に接続され、前記第3整流素子と前記第2同期整流素子との間の接続点は、前記二次側巻線の第2端に電気的に接続され、
前記第3端子にカソードが電気的に接続された第2ダイオードと、
前記第4端子と前記第2ダイオードのアノードとの間に電気的に接続された第2コンデンサと、
前記第2コンデンサを充電する第2充電回路と、
前記第2コンデンサの電圧に基づいて、前記第4同期整流素子のゲートを駆動する第2駆動回路と、を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記整流回路は、前記第1整流素子に並列に接続された第1同期整流素子を含み、
前記駆動回路は、前記コンデンサの電圧に基づいて、前記第1同期整流素子及び前記第2同期整流素子の各ゲートを駆動する、請求項1から3のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記駆動回路は、前記コンデンサの電圧が低下すると、前記第1同期整流素子及び前記第2同期整流素子の各ゲートをオンし、前記各ゲートをオンした後、設定時間が経過すると、前記第1同期整流素子及び前記第2同期整流素子の各ゲートをオフする、請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記整流回路は、第3同期整流素子と、前記第3同期整流素子に前記二次側巻線を介して直列に接続される第4同期整流素子とを含み、
前記第1同期整流素子と前記第4同期整流素子との間の接続点は、前記二次側巻線の第1端に電気的に接続され、前記第3同期整流素子と前記第2同期整流素子との間の接続点は、前記二次側巻線の第2端に電気的に接続され、
前記駆動回路は、前記コンデンサの電圧に基づいて、前記第1同期整流素子、前記第2同期整流素子、前記第3同期整流素子及び前記第4同期整流素子の各ゲートを駆動する、請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記駆動回路は、前記コンデンサの電圧に基づいて、前記第1同期整流素子、前記第2同期整流素子、前記第3同期整流素子及び前記第4同期整流素子をオフするデッドタイムを挟んで、前記第1同期整流素子及び前記第2同期整流素子をオンしかつ前記第3同期整流素子及び前記第4同期整流素子をオフする期間と、前記第1同期整流素子及び前記第2同期整流素子をオフしかつ前記第3同期整流素子及び前記第4同期整流素子をオンする期間とを交互に繰り返す、請求項7に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記駆動回路は、
前記コンデンサの電圧低下を検出する検出回路と、
前記検出回路の出力信号を遅延させる遅延回路と、
前記遅延回路の出力信号を反転させる第1反転回路と、
前記検出回路の出力信号を反転させる第2反転回路と、
前記検出回路の出力信号と前記第1反転回路の出力信号に基づいて、前記第1同期整流素子のゲートを駆動する第1ゲート駆動回路と、
前記検出回路の出力信号と前記第1反転回路の出力信号に基づいて、前記第2同期整流素子のゲートを駆動する第2ゲート駆動回路と、
前記第2反転回路の出力信号と前記遅延回路の出力信号に基づいて、前記第3同期整流素子のゲートを駆動する第3ゲート駆動回路と、
前記第2反転回路の出力信号と前記遅延回路の出力信号に基づいて、前記第4同期整流素子のゲートを駆動する第4ゲート駆動回路と、を含む、請求項7に記載の電力変換装置。
【請求項10】
第1端子及び第2端子に接続される同期整流素子と、
前記第1端子にカソードが電気的に接続されたダイオードと、
前記第2端子と前記ダイオードのアノードとの間に電気的に接続されたコンデンサと、
前記コンデンサを充電する充電回路と、
前記コンデンサの電圧に基づいて、前記同期整流素子のゲートを駆動する駆動回路と、を備える、電力変換装置。
【請求項11】
前記駆動回路は、前記コンデンサの電圧が低下すると、前記同期整流素子のゲートをオンする、請求項10に記載の電力変換装置。
【請求項12】
前記駆動回路は、前記コンデンサの電圧が低下すると、前記同期整流素子のゲートをオンし、前記同期整流素子のゲートをオンした後、設定時間が経過すると、前記同期整流素子のゲートをオフする、請求項11に記載の電力変換装置。
【請求項13】
前記設定時間を調整する調整部を更に備える、請求項12に記載の電力変換装置。
【請求項14】
前記調整部は、前記コンデンサの電圧の変化に応じて、前記設定時間を調整する、請求項13に記載の電力変換装置。
【請求項15】
前記調整部は、前記コンデンサの電圧が低下してから上昇に転じるまでの時間に応じて、前記設定時間を調整する、請求項14に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
同期整流用MOSFETのソースからドレインに向かって電流が流れる期間に、MOSFETのゲート・ソース間にゲート電圧を印加するための同期整流用MOSFETの制御回路が知られている。この制御回路は、第1の電流供給手段と、この電流供給手段の出力側にアノードが接続され、かつ、カソードがMOSFETのドレインに接続された第1のダイオードと、このアノードとMOSFETのソースとの間に接続された抵抗と、この抵抗の両端電圧と第1の基準電圧とを比較する電圧比較手段と、この電圧比較手段の出力信号を増幅してMOSFETのゲート・ソース間にゲート電圧を印加するゲート駆動手段と、を備える。これにより、同期整流用MOSFETの導通損失の低減が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-32937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
同期整流用MOSFET等の同期整流素子の導通損失の低減効果を高めることは、例えば、同期整流素子を備える電力変換装置の電力変換効率の更なる向上に貢献する。
【0005】
本開示は、同期整流素子の導通損失を低減可能な電力変換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1態様の電力変換装置は、
第1端子と第2端子に接続される整流素子と、
前記第1端子にカソードが電気的に接続されたダイオードと、
前記第2端子と前記ダイオードのアノードとの間に電気的に接続されたコンデンサと、
前記コンデンサを充電する充電回路と、
前記コンデンサの電圧に基づいて、前記整流素子のゲートを駆動する駆動回路と、を備える。
【0007】
本開示の第2態様の電力変換装置は、
第1端子及び第2端子に接続される第1整流素子と、前記第1整流素子にトランスの二次側巻線を介して直列に接続される第2同期整流素子とを含む整流回路と、
前記第1端子にカソードが電気的に接続されたダイオードと、
前記第2端子と前記ダイオードのアノードとの間に電気的に接続されたコンデンサと、
前記コンデンサを充電する充電回路と、
前記コンデンサの電圧に基づいて、前記第2同期整流素子のゲートを駆動する駆動回路と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の第1態様又は第2態様によれば、同期整流素子の導通損失を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態の電力変換装置の一構成例を示す図である。
図2】第1実施形態の電力変換装置の一動作波形を示すタイミングチャートである。
図3】第1実施形態の電力変換装置の二次側整流回路の一構成例を示す図である。
図4】第1実施形態の二次側整流回路に含まれるV相駆動回路の一構成例を示す図である。
図5】第1実施形態の二次側整流回路に含まれるX相駆動回路の一構成例を示す図である。
図6】第1実施形態の二次側整流回路に含まれるU相またはY相駆動回路の一構成例を示す図である。
図7】第1実施形態の二次側整流回路の一動作波形を示すタイミングチャートである。
図8】V相同期整流素子のオン時の各電圧値を説明するための図である。
図9】V相同期整流素子のオン時の各電圧値の挙動を説明するための図である。
図10】V相同期整流素子のオフ時の各電圧値を説明するための図である。
図11】V相同期整流素子のオフ時の各電圧値の挙動を説明するための図である。
図12】閾値電圧Vthの設定範囲を説明するための図である。
図13】第2実施形態の電力変換装置の二次側整流回路の一構成例を示す図である。
図14】第2実施形態の二次側整流回路に含まれるX相駆動回路の一構成例を示す図である。
図15】第2実施形態の二次側整流回路に含まれるY相駆動回路の一構成例を示す図である。
図16】第2実施形態の二次側整流回路の一動作波形を示すタイミングチャートである。
図17】共振定数(C2及びL1)にばらつきがない場合の一動作波形を示すタイミングチャートである。
図18】共振定数(C2及びL1)にばらつきがある場合の一動作波形を示すタイミングチャートである。
図19】電力変換装置の二次側整流回路の一構成例を示す図である。
図20】二次側整流回路に含まれるV相駆動回路の一構成例を示す図である。
図21】遅延時間tdelayの調整前の電力変換装置の一動作波形を示すタイミングチャートである。
図22】遅延時間tdelayの調整後の電力変換装置の一動作波形を示すタイミングチャートである。
図23】遅延回路及び調整部の機能ブロック図である。
図24】遅延回路及び調整部のシーケンスブロック図である。
図25図24のシーケンスブロック図の動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、第1実施形態の電力変換装置の一構成例を示す図である。図1に示す電力変換装置1001は、直流を直流に変換するLLC共振型DC/DCコンバータである。DCは、Direct Currentの略語を表す。電力変換装置1001は、一次側のインバータ101とLLC共振回路300と二次側の整流回路201とを備える絶縁型DC/DCコンバータである。電力変換装置1001は、制御回路600を備える。インバータ101のスイッチングは、制御回路600により制御される。
【0012】
インバータ101は、入力コンデンサC1によって平滑化された直流電圧E1を、LLC共振回路300に印加する交流電圧V1に変換するフルブリッジ型のインバータである。インバータ101は、上アームのスイッチング素子1uと下アームのスイッチング素子1xとが直列に接続されたレグと、上アームのスイッチング素子1vと下アームのスイッチング素子1yとが直列に接続されたレグとを並列に備える。
【0013】
LLC共振回路300は、スイッチング素子1uとスイッチング素子1xとの間の接続点11と、スイッチング素子1vとスイッチング素子1yとの間の接続点12との間に接続されている。LLC共振回路300は、共振タンク素子(キャパシタC2及びインダクタL1)とトランス33を有する。LLC共振回路300は、トランス33の励磁インダクタンスLmを活用する。LLC共振回路300は、トランス33の漏れインダクタンスを共振用のインダクタL1として活用してもよい。
【0014】
トランス33は、一次側巻線31と二次側巻線32を有し、その巻線比は、n:1(nは任意の数)である。トランス33の二次側巻線32の両端は、整流回路201の入力側に接続される。
【0015】
整流回路201は、トランス33の二次側巻線32の両端に発生する交流電圧V2を、負荷Rに印加する直流電圧E2に変換する。整流回路201は、上アームの同期整流素子2uと下アームの同期整流素子2xとが直列に接続されたレグと、上アームの同期整流素子2vと下アームの同期整流素子2yとが直列に接続されたレグとを並列に備えるブリッジ回路である。トランス33の二次側巻線32は、一方の端部が同期整流素子2vと同期整流素子2yとの間の接続点22に接続され、他方の端部が同期整流素子2uと同期整流素子2xとの間の接続点21に接続される。交流電圧V2は、接続点21と接続点22との間に発生する。整流回路201は、トランス33の二次側巻線32から出力される交流を直流に整流し、整流後の出力電流Ioを出力する。整流回路201から出力される直流電圧E2は、出力コンデンサC3により平滑化されて、負荷Rに印加される。
【0016】
スイッチング素子1u,1x,1v,1y及び同期整流素子2u,2x,2v,2yは、半導体のスイッチング素子である。図1は、これらのスイッチング素子がMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)の場合を例示する。しかし、これらのスイッチング素子は、ダイオードが逆並列に接続されたIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの他の種類の半導体素子でもよい。
【0017】
制御回路600は、スイッチング素子1u,1yとスイッチング素子1v,1xを相補的にスイッチングさせる。これにより、直流電圧E1は、交流電圧V1に変換される。制御回路600は、LLC共振回路300の共振周波数に略等しいスイッチング周波数で、かつ、固定のデューティ比で、インバータ101をオープンループ駆動する。
【0018】
制御回路600は、インバータ101へ入力される直流電圧E1が変動した時に、整流回路201から出力される直流電圧E2を一定に制御するために、LLC共振回路300の共振周波数に対してインバータ101のスイッチング周波数を微調整してもよい。制御回路600は、直流電圧E2が目標値より低い時は、スイッチング周波数を共振周波数よりも低い値に変化させて直流電圧E2を上昇させる。一方、制御回路600は、直流電圧E2が目標値より高い時は、スイッチング周波数を共振周波数よりも高い値に変化させて直流電圧E2を低下させる。スイッチング周波数をこのように制御することにより、直流電圧E2を目標値に保つことができる。
【0019】
図2は、第1実施形態の電力変換装置の一動作波形を示すタイミングチャートである。方形波状の交流電圧V1がインバータ101のスイッチングによりLLC共振回路300に印加されると、共振タンク素子(キャパシタC2及びインダクタL1)の共振により、正弦波状の共振電流I1がトランス33の一次側に流れる。共振電流I1の共振半周期ts(=π×√(C2×L1))は、一次側の共振パラメータ(キャパシタC2のキャパシタンス及びインダクタL1のインダクタンス)により決まる。一方、トランス33の二次側には、方形波状の交流電圧V2が発生し、整流回路201により整流された出力電流Ioが生成される。
【0020】
図3は、第1実施形態の電力変換装置の二次側整流回路の一構成例を示す図である。図3に示す二次側整流回路501は、トランス33の二次側から整流回路201に流れる入力電流Iinを同期整流する。トランス33の二次側巻線32の両端に発生する入力電圧Vinは、接続点21と接続点22との間に発生する上記の交流電圧V2に相当する。二次側整流回路501は、整流回路201、ダイオードD及び駆動回路401を備える。
【0021】
整流回路201は、交流の入力電流Iinを直流電流に整流する。整流回路201は、U相の同期整流素子2u、X相の同期整流素子2x、V相の同期整流素子2vおよびY相の同期整流素子2yを含む。同期整流素子2vと同期整流素子2yとの間の接続点22は、二次側巻線32の端部32bに電気的に接続され、同期整流素子2uと同期整流素子2xとの間の接続点21は、二次側巻線32の端部32aに電気的に接続される。端部32bは、二次側巻線の第1端の一例である。端部32aは、二次側巻線の第2端の一例である。同期整流素子2u,2x,2v,2yは、いずれも、ダイオードが並列に接続されたスイッチ素子である。
【0022】
V相の同期整流素子2vは、ダイオード2vbが並列に接続されたトランジスタ2vaである。トランジスタ2vaがMOSFETの場合、ダイオード2vbは、トランジスタ2vaのボディダイオードでもよい。同期整流素子2vは、第1主端子2vd及び第2主端子2vsを有する。第1主端子2vdは、ドレイン端子(または、コレクタ端子)に相当する。第2主端子2vsは、ソース端子(または、エミッタ端子)に相当する。同期整流素子2vは、第1端子及び第2端子を有する第1同期整流素子の一例である。ダイオード2vbは、第1端子及び第2端子に接続される第1整流素子の一例である。第1主端子2vdは、第1端子の一例である。第2主端子2vsは、第2端子の一例である。
【0023】
X相の同期整流素子2xは、ダイオード2xbが並列に接続されたトランジスタ2xaである。トランジスタ2xaがMOSFETの場合、ダイオード2xbは、トランジスタ2xaのボディダイオードでもよい。同期整流素子2xは、同期整流素子2vにトランス33の二次側巻線32を介して直列に接続される。同期整流素子2xは、第2同期整流素子の一例である。ダイオード2xbは、第2整流素子の一例である。
【0024】
U相の同期整流素子2uは、ダイオード2ubが並列に接続されたトランジスタ2uaである。トランジスタ2uaがMOSFETの場合、ダイオード2ubは、トランジスタ2uaのボディダイオードでもよい。同期整流素子2uは、第3同期整流素子の一例である。ダイオード2ubは、第3整流素子の一例である。
【0025】
Y相の同期整流素子2yは、ダイオード2ybが並列に接続されたトランジスタ2yaである。トランジスタ2yaがMOSFETの場合、ダイオード2ybは、トランジスタ2yaのボディダイオードでもよい。同期整流素子2yは、同期整流素子2uにトランス33の二次側巻線32を介して直列に接続される。同期整流素子2yは、第4同期整流素子の一例である。ダイオード2ybは、第4整流素子の一例である。
【0026】
ダイオードDは、V相の同期整流素子2vの第1主端子2vdにカソードkが電気的に接続された整流素子である。ダイオードDのアノードaは、駆動回路401に接続されている。
【0027】
駆動回路401は、同期整流素子2u,2x,2v,2yのトランジスタ2ua,2xa,2va,2yaの各ゲートを駆動する。駆動回路401は、ゲート信号生成回路41及びゲート駆動回路42を有する。
【0028】
ゲート信号生成回路41は、ダイオードDのアノードaの電位に基づいて、同期整流素子2u,2x,2v,2yのトランジスタ2ua,2xa,2va,2yaの各ゲートを駆動するための4つのゲート信号を生成する。ゲート駆動回路42は、当該4つのゲート信号に従って、同期整流素子2u,2x,2v,2yのトランジスタ2ua,2xa,2va,2yaの各ゲートを駆動する。
【0029】
図4は、第1実施形態の二次側整流回路に含まれるV相駆動回路の一構成例を示す図である。ゲート信号生成回路41は、V相用のゲート信号生成回路41vを含み、ゲート駆動回路42は、V相用のゲート駆動回路42vを含む。ゲート信号生成回路41v及びゲート駆動回路42vは、駆動回路401に含まれるV相駆動回路である。
【0030】
ゲート信号生成回路41v及びゲート駆動回路42vは、ダイオード2vbに電流Ivが流れる期間にトランジスタ2vaをオンすることでダイオード2vbに発生する導通損失を低減する第1駆動回路である。
【0031】
ゲート信号生成回路41vは、V相の同期整流素子2vのトランジスタ2vaのゲートを駆動するためのV相用のゲート信号Vsvを生成する。ゲート信号生成回路41vは、コンデンサCx、充電回路50、検出回路43、遅延回路44、反転回路45v、論理積回路46v及びトランジスタ47vを含む。
【0032】
コンデンサCxは、基準電位VGとダイオードDのアノードaとの間に電気的に接続された蓄電素子である。基準電位VGは、同期整流素子2vの第2主端子2vsに電気的に接続された箇所の電位なので、コンデンサCxは、第2主端子2vsとアノードaとの間に電気的に接続されている。
【0033】
充電回路50は、電源51の一定の電源電圧VBでコンデンサCxを充電する定電圧源である。図1に示す充電回路50は、電源51の出力側とコンデンサCxの一端との間に接続された抵抗52を含む。充電回路50は、図1に示す構成に限られず、例えば、コンデンサCx及びダイオードDに電流を供給する電流源でもよい。
【0034】
検出回路43は、V相の同期整流素子2vに同期整流させるタイミング(トランジスタ2vaをオンさせるタイミング)を検知するため、コンデンサCxの電圧低下を検出する。同期整流素子2vに同期整流させるタイミングは、同期整流素子2vのインピーダンスにより調整される。電流Ivが同期整流素子2vを経由して流れる期間は、第1主端子2vdと第2主端子2vsとの間の電圧Vdsが低下するので、コンデンサCxの電荷がダイオードDを介して放電される。コンデンサCxの電荷が放電されると、コンデンサCxの電圧(コンデンサ電圧Vc)は低下する。したがって、検出回路43は、コンデンサCxの電圧低下を検出することで、V相の同期整流素子2vに同期整流させるタイミング(トランジスタ2vaをオンさせるタイミング)を検知できる。
【0035】
検出回路43は、例えば図4に示すように、コンデンサ電圧Vcを所定の閾値電圧Vthと比較するコンパレータによって、コンデンサ電圧Vcの低下を検出してもよい。検出回路43は、コンデンサ電圧Vcが閾値電圧Vthよりも高いとき、ローレベルの出力信号Sig0を出力し、コンデンサ電圧Vcが閾値電圧Vthよりも低いとき、ハイレベルの出力信号Sig0を出力する。
【0036】
なお、検出回路43がコンデンサCxの電圧低下を検出する方式は、これに限られない。例えば、検出回路43は、コンデンサCxの電圧低下をCMOSインバータにより検出してもよい。
【0037】
コンデンサCxが放電されている期間は、V相の同期整流素子2vが導通している期間なので、ゲート信号生成回路41vは、同期整流素子2vのトランジスタ2vaのゲートをオンさせる論理のゲート信号Vsvを生成する。しかし、トランジスタ2vaがオンした状態では、コンデンサCxは常に放電状態となる。このため、トランジスタ2vaを強制的にオフさせる論理にゲート信号Vsvを変化させるため、ゲート信号生成回路41vは、遅延回路44を有する。
【0038】
遅延回路44は、検出回路43の出力信号Sig0を所定の遅延時間tdelayだけ遅延させた出力信号Sigdを生成する。反転回路45vは、遅延回路の出力信号を反転させる第1反転回路の一例である。反転回路45vは、出力信号Sigdの論理を反転させた信号を出力する。
【0039】
論理積回路46vは、検出回路43の出力信号Sig0と反転回路45vの出力信号との論理積を出力する。トランジスタ47vは、論理積回路46vの出力信号に従って、オン又はオフとなる。論理積回路46vの出力信号がハイレベルのとき、ゲート信号Vsvがトランジスタ47vのオンによりローレベルとなり電流信号Isigが流れるので、ゲート駆動回路42vは、トランジスタ2vaをオンさせる。一方、論理積回路46vの出力信号がローレベルのとき、ゲート信号Vsfがトランジスタ47vのオフによりハイレベルとなり電流信号Isigが流れないので、ゲート駆動回路42vはトランジスタ2vaをオフさせる。
【0040】
ゲート駆動回路42vは、検出回路43の出力信号Sig0と反転回路45vの出力信号に基づいて、V相の同期整流素子2vのゲートを駆動する第1ゲート駆動回路である。ゲート駆動回路42vは、V相用のゲート信号Vsvに従って、同期整流素子2vのトランジスタ2vaのゲートを駆動する。ゲート駆動回路42vは、ゲート信号Vsvがローレベルのとき、トランジスタ2vaのゲートをV相用の正電源VVPに接続することで、トランジスタ2vaをオンさせる電圧値にトランジスタ2vaのゲート電圧Vgsvを切り替える。一方、ゲート駆動回路42vは、ゲート信号Vsvがハイレベルのとき、トランジスタ2vaのゲートをV相用の負電源VVNに接続することで、トランジスタ2vaをオフさせる電圧値にトランジスタ2vaのゲート電圧Vgsvを切り替える。
【0041】
図5は、第1実施形態の二次側整流回路に含まれるX相駆動回路の一構成例を示す図である。ゲート信号生成回路41は、X相用のゲート信号生成回路41xを含み、ゲート駆動回路42は、X相用のゲート駆動回路42xを含む。ゲート信号生成回路41x及びゲート駆動回路42xは、駆動回路401に含まれるX相駆動回路である。
【0042】
ゲート信号生成回路41x及びゲート駆動回路42xは、ダイオード2xbに電流Ixが流れる期間にトランジスタ2xaをオンすることでダイオード2xbに発生する導通損失を低減する第2駆動回路である。
【0043】
ゲート信号生成回路41xは、X相の同期整流素子2xのトランジスタ2xaのゲートを駆動するためのX相用のゲート信号Vsxを生成する。ゲート信号生成回路41xは、反転回路45x、論理積回路46x及びトランジスタ47xを含む。X相のゲート信号生成回路41xは、V相のゲート信号生成回路41v(図4)により生成された出力信号Sig0,Sigdを共用する。出力信号Sig0,Sigdの共用により、X相のゲート信号生成回路41xを小型化できる。
【0044】
X相のゲート信号生成回路41xは、V相のゲート信号生成回路41vと同じ基準電位VGで動作する。X相の反転回路45xは、V相の反転回路45vと同様に、遅延回路の出力信号を反転させる第1反転回路の一例である。X相の論理積回路46xは、V相の論理積回路46vと同様に、検出回路43の出力信号Sig0と反転回路45xの出力信号との論理積を出力する。X相のトランジスタ47xは、V相のトランジスタ47vと同様に、論理積回路46xの出力信号に従って、オン又はオフとなる。
【0045】
ゲート駆動回路42xは、検出回路43の出力信号Sig0と反転回路45vの出力信号に基づいて、X相の同期整流素子2xのゲートを駆動する第2ゲート駆動回路である。ゲート駆動回路42xは、ゲート駆動回路42vと同様に、X相用のゲート信号Vsxに従って、同期整流素子2xのトランジスタ2xaのゲートを駆動する。
【0046】
ゲート駆動回路42xは、ゲート信号Vsxがローレベルのとき、トランジスタ2xaのゲートをX相用の正電源VXPに接続することで、トランジスタ2xaをオンさせる電圧値にトランジスタ2xaのゲート電圧Vgsxを切り替える。一方、ゲート駆動回路42xは、ゲート信号Vsxがハイレベルのとき、トランジスタ2xaのゲートをX相用の負電源VXNに接続することで、トランジスタ2xaをオフさせる電圧値にトランジスタ2xaのゲート電圧Vgsxを切り替える。
【0047】
図6は、第1実施形態の二次側整流回路に含まれるU相またはY相駆動回路の一構成例を示す図である。ゲート信号生成回路41は、U相用のゲート信号生成回路41u及びY相用のゲート信号生成回路41yを含み、ゲート駆動回路42は、U相用のゲート駆動回路42u及びY相用のゲート駆動回路42yを含む。ゲート信号生成回路41u及びゲート駆動回路42uは、駆動回路401に含まれるU相駆動回路である。ゲート信号生成回路41y及びゲート駆動回路42yは、駆動回路401に含まれるY相駆動回路である。
【0048】
ゲート信号生成回路41u及びゲート駆動回路42uは、ダイオード2ubに電流Iuが流れる期間にトランジスタ2uaをオンすることでダイオード2ubに発生する導通損失を低減する第3駆動回路である。ゲート信号生成回路41y及びゲート駆動回路42yは、ダイオード2ybに電流Iyが流れる期間にトランジスタ2yaをオンすることでダイオード2ybに発生する導通損失を低減する第4駆動回路である。
【0049】
Y相駆動回路(ゲート信号生成回路41y及びゲート駆動回路42y)は、U相駆動回路(ゲート信号生成回路41u及びゲート駆動回路42u)と同じ構成を有する。
【0050】
ゲート信号生成回路41u(41y)は、U相(Y相)の同期整流素子2u(2y)のトランジスタ2ua(2ya)のゲートを駆動するためのU相(Y相)用のゲート信号Vsu(Vsy)を生成する。ゲート信号生成回路41u(41y)は、反転回路45u(45y)、論理積回路46u(46y)及びトランジスタ47u(47y)を含む。U相(Y相)のゲート信号生成回路41u(41y)は、V相のゲート信号生成回路41v(図4)により生成された出力信号Sig0,Sigdを共用する。出力信号Sig0,Sigdの共用により、U相(Y相)のゲート信号生成回路41u(41y)を小型化できる。
【0051】
U相(Y相)のゲート信号生成回路41u(41y)は、V相のゲート信号生成回路41vと同じ基準電位VGで動作する。U相(Y相)の反転回路45u(45y)は、検出回路43の出力信号Sig0を反転させる第2反転回路の一例である。U相(Y相)の論理積回路46u(46y)は、反転回路45u(45y)の出力信号と遅延回路44の出力信号Sigdとの論理積を出力する。U相(Y相)のトランジスタ47u(47y)は、論理積回路46u(46y)の出力信号に従って、オン又はオフとなる。
【0052】
ゲート駆動回路42u(42y)は、反転回路45u(45y)の出力信号と遅延回路44の出力信号Sigdに基づいて、U相(Y相)の同期整流素子2u(2y)のゲートを駆動する第3ゲート駆動回路(第4ゲート駆動回路)である。ゲート駆動回路42u(42y)は、ゲート駆動回路42vと同様に、U相(Y相)用のゲート信号Vsu(Vsy)に従って、同期整流素子2u(2y)のトランジスタ2ua(2ya)のゲートを駆動する。
【0053】
ゲート駆動回路42u(42y)は、ゲート信号Vsu(Vsy)がローレベルのとき、トランジスタ2ua(2ya)のゲートをU相(Y相)用の正電源VUP(VYP)に接続することで、トランジスタ2ua(2ya)をオンさせる電圧値にトランジスタ2ua(2ya)のゲート電圧Vgsu(Vgsy)を切り替える。一方、ゲート駆動回路42u(42y)は、ゲート信号Vsu(Vsy)がハイレベルのとき、トランジスタ2ua(2ya)のゲートをU相(Y相)用の負電源VUN(VYN)に接続することで、トランジスタ2ua(2ya)をオフさせる電圧値にトランジスタ2ua(2ya)のゲート電圧Vgsu(Vgsy)を切り替える。
【0054】
図7は、第1実施形態の二次側整流回路の一動作波形を示すタイミングチャートである。図3図6を参照して、図7について以下説明する。
【0055】
タイミングt1において、電流Ivが同期整流素子2vのダイオード2vbを経由して流れ始める。電流Ivが流れ始めると、同期整流素子2vの両端の電圧Vdsが低下し始める。
【0056】
タイミングt2において、コンデンサCxの電荷がダイオードDを経由して放電されるので、コンデンサ電圧Vcが電源電圧VBから漸減する。
【0057】
タイミングt3において、コンデンサ電圧Vcが閾値電圧Vthよりも低下すると、検出回路43の出力信号Sig0がローレベルからハイレベルに切り替わる。これにより、ゲート電圧Vgsvがローレベルからハイレベルに切り替わるので、同期整流素子2vのトランジスタ2vaはオンし、かつ、ゲート電圧Vgsxがローレベルからハイレベルに切り替わるので、同期整流素子2xのトランジスタ2xaはオンする。このように、同期整流素子2v,2xの各ゲートがオフからオンに切り替わるので、同期整流素子2v,2xの導通損失が同期整流により低減する。
【0058】
タイミングt4において、出力信号Sig0がローレベルからハイレベルに切り替わるってから設定時間(この例では、遅延時間tdelay)が経過すると、遅延回路44の出力信号Sigdがローレベルからハイレベルに切り替わる。これにより、ゲート電圧Vgsvがハイレベルからローレベルに切り替わるので、同期整流素子2vのトランジスタ2vaはオフし、かつ、ゲート電圧Vgsxがハイレベルからローレベルに切り替わるので、同期整流素子2xのトランジスタ2xaはオフする。
【0059】
トランジスタ2va,2xaのオフにより、ダイオード2vb,2xbを流れる電流Ivがゼロまで低下すると、転流が生じる。これにより、電流Iyが同期整流素子2yのダイオード2ybを経由して流れ始めるとともに、電流Iuが同期整流素子2uのダイオード2ubを経由して流れ始める。
【0060】
一方、同期整流素子2vのトランジスタ2vaのオフにより、同期整流素子2vの両端の電圧Vdsは上昇するので、ダイオードDを介してのコンデンサCxの放電は、停止する。よって、コンデンサCxの充電が充電回路50により開始し、コンデンサ電圧Vcが上昇し始める。
【0061】
タイミングt5において、コンデンサ電圧Vcが閾値電圧Vthよりも上昇すると、検出回路43の出力信号Sig0がハイレベルからローレベルに切り替わる。これにより、ゲート電圧Vgsuがローレベルからハイレベルに切り替わるので、同期整流素子2uのトランジスタ2uaはオンし、かつ、ゲート電圧Vgsyがローレベルからハイレベルに切り替わるので、同期整流素子2yのトランジスタ2yaはオンする。このように、同期整流素子2u,2yの各ゲートがオフからオンに切り替わるので、同期整流素子2u,2yの導通損失が同期整流により低減する。
【0062】
このように、第1実施形態によれば、駆動回路401は、コンデンサCxの電圧に基づいて、同期整流素子2u,2x,2v,2yの各ゲートを駆動する。駆動回路401は、コンデンサCxの電圧を利用することで、電流Ivの流れ始めを速やかに検知できる。電流Ivが流れ始めると、コンデンサCxがダイオードDを経由して速やかに放電されるからである。よって、駆動回路401は、同期整流素子2v,2xの各ゲートを速やかにオンできる。同様に、駆動回路401は、コンデンサCxの電圧を利用することで、電流Ivから電流Iu,Iyへの転流をコンデンサ電圧Vcの上昇検出により速やかに検知できる。よって、駆動回路401は、同期整流素子2u,2yの各ゲートを速やかにオンできる。したがって、同期整流素子2u,2x,2v,2yの各ダイオードに電流が流れる時間を短縮できるので、同期整流素子2u,2x,2v,2yの導通損失を低減できる。
【0063】
図7に示すように、駆動回路401は、コンデンサ電圧Vcに基づいて、デッドタイムtdeadを挟んで、X,Y相同期整流期間とU,Y相同期整流期間とを交互に繰り返す。デッドタイムtdead(=入力電流Iinの共振半周期ts-遅延時間tdelay)は、同期整流素子2u,2x,2v,2yを全てオフする期間である。X,Y相同期整流期間は、同期整流素子2v,2xをオンしかつ同期整流素子2u,2yをオフする期間である。U,Y相同期整流期間は、同期整流素子2v,2xをオフしかつ同期整流素子2u,2yをオンする期間である。
【0064】
次に、図8-12を参照して、閾値電圧Vthの設定について説明する。
【0065】
図8は、V相同期整流素子のオン時の各電圧値を説明するための図である。同期整流素子2vがオン状態の期間では、電流Ivが通流し、同期整流素子2vは低インピーダンス状態となる。コンデンサCxの電荷がダイオードDを介して放電されるので、コンデンサ電圧Vcは、同期整流素子2vの両端の電圧VdsにダイオードDの順方向電圧を加算した電圧となる。電圧Vdsは、同期整流素子2vのオン抵抗Rdsと電流Ivとの積、または、ダイオード2vbの順方向電圧Vf(fet)に相当する。したがって、V相の同期整流素子2vのオン時のコンデンサ電圧Vcは、図9に示すように、例えば1ボルト程度の順方向電圧Vf以下となる(Vc≦Vf)。
【0066】
図10は、V相同期整流素子のオフ時の各電圧値を説明するための図である。同期整流素子2vがオフ状態の期間では、電流Ivの通流は停止し、同期整流素子2vは高インピーダンス状態となる。同期整流素子2vの両端の電圧Vdsは、整流回路201の出力側の直流電圧E2にクランプされる。直流電圧E2は電源電圧VBよりも十分に高いため、ダイオードDを経由してのコンデンサCxの放電は停止し、コンデンサ電圧Vxは電源電圧VBにクランプされる。したがって、V相の同期整流素子2vのオフ時のコンデンサ電圧Vcは、図11に示すように、例えば15ボルト程度の電源電圧VBに略等しくなる(Vc≒VB)。
【0067】
したがって、図12に示すように、コンデンサ電圧Vcは、1ボルト程度の順方向電圧Vfから15ボルト程度の電源電圧VBまでの範囲を変動するので、閾値電圧Vthを設定可能な範囲が広くなる。その結果、コンデンサCxの電圧低下を検出する検出回路43のノイズ耐性が向上する。
【0068】
図13は、第2実施形態の電力変換装置の二次側整流回路の一構成例を示す図である。第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成、作用及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで、省略又は簡略する。第2実施形態の電力変換装置は、V相及びU相の同期整流素子が整流ダイオードに置換されている点で、第1実施形態の電力変換装置と相違する。
【0069】
図13に示す二次側整流回路502は、トランス33の二次側から整流回路202に流れる入力電流Iinを整流する。トランス33の二次側巻線32の両端に発生する入力電圧Vinは、接続点21と接続点22との間に発生する上記の交流電圧V2に相当する。二次側整流回路502は、整流回路202、ダイオードD1,D2及び駆動回路402を備える。
【0070】
整流回路202は、交流の入力電流Iinを直流電流に整流する。整流回路202は、U相の整流素子であるダイオード6u、X相の同期整流素子2x、V相の整流素子であるダイオード6vおよびY相の同期整流素子2yを含む。ダイオード6vと同期整流素子2yとの間の接続点22は、二次側巻線32の端部32bに電気的に接続され、ダイオード6uと同期整流素子2xとの間の接続点21は、二次側巻線32の端部32aに電気的に接続される。端部32bは、二次側巻線の第1端の一例である。端部32aは、二次側巻線の第2端の一例である。
【0071】
V相のダイオード6vは、第1主端子6vk及び第2主端子6vaを有する。第1主端子6vkは、カソード端子に相当する。第2主端子6vaは、アノード端子に相当する。ダイオード6vは、第1端子及び第2端子に接続される第1整流素子の一例である。第1主端子6vkは、第1端子の一例である。第2主端子6vaは、第2端子の一例である。
【0072】
X相の同期整流素子2xは、整流素子であるダイオード2xbが並列に接続されたトランジスタ2xaである。同期整流素子2xは、ダイオード6vにトランス33の二次側巻線32を介して直列に接続される。同期整流素子2xは、第2同期整流素子の一例である。
【0073】
U相のダイオード6uは、第3主端子6uk及び第4主端子6uaを有する。第3主端子6ukは、カソード端子に相当する。第4主端子6uaは、アノード端子に相当する。ダイオード6uは、第3端子及び第4端子に接続される第3整流素子の一例である。第3主端子6ukは、第3端子の一例である。第4主端子6uaは、第4端子の一例である。
【0074】
Y相の同期整流素子2yは、整流素子であるダイオード2ybが並列に接続されたトランジスタ2yaである。同期整流素子2yは、ダイオード6uにトランス33の二次側巻線32を介して直列に接続される。同期整流素子2yは、第4同期整流素子の一例である。
【0075】
ダイオードD1は、第1ダイオードの一例であり、V相のダイオード6vの第1主端子6vkにカソードk1が電気的に接続された整流素子である。ダイオードD1のアノードa1は、駆動回路402に接続されている。
【0076】
ダイオードD2は、第2ダイオードの一例であり、U相のダイオード6vの第3主端子6ukにカソードk2が電気的に接続された整流素子である。ダイオードD2のアノードa2は、駆動回路402に接続されている。
【0077】
駆動回路402は、同期整流素子2x,2yのトランジスタ2xa,2yaの各ゲートを駆動する。駆動回路402は、ゲート信号生成回路48及びゲート駆動回路49を有する。
【0078】
ゲート信号生成回路48は、ダイオードD1のアノードa1の電位に基づいて、同期整流素子2xのトランジスタ2xaのゲートを駆動するための1つのゲート信号を生成する。ゲート信号生成回路48は、ダイオードD2のアノードa2の電位に基づいて、同期整流素子2yのトランジスタ2yaのゲートを駆動するための1つのゲート信号を生成する。ゲート駆動回路49は、それらの2つのゲート信号のうち、一方のゲート信号に従って、同期整流素子2xのトランジスタ2xaのゲートを駆動し、他方のゲート信号に従って、同期整流素子2yのトランジスタ2yaのゲートを駆動する。
【0079】
図14は、第2実施形態の二次側整流回路に含まれるX相駆動回路の一構成例を示す図である。ゲート信号生成回路48は、X相用のゲート信号生成回路48xを含み、ゲート駆動回路49は、X相用のゲート駆動回路49xを含む。ゲート信号生成回路48x及びゲート駆動回路49xは、駆動回路402に含まれるX相駆動回路である。
【0080】
ゲート信号生成回路48x及びゲート駆動回路49xは、ダイオード6vに電流Ivが流れる期間にトランジスタ2xaをオンすることでダイオード2xbに発生する導通損失を低減する第1駆動回路である。
【0081】
ゲート信号生成回路48xは、X相の同期整流素子2xのトランジスタ2xaのゲートを駆動するためのX相用のゲート信号Vsxを生成する。ゲート信号生成回路48xは、コンデンサCv、充電回路50v、検出回路43x及びトランジスタ47xを含む。X相のゲート信号生成回路48xは、V相の整流ダイオード6vの第2主端子6vaと同じ基準電位VGで動作する。
【0082】
コンデンサCvは、第1コンデンサの一例であり、基準電位VGとダイオードD1のアノードa1との間に電気的に接続された蓄電素子である。基準電位VGは、整流ダイオード6vの第2主端子6vaに電気的に接続された箇所の電位なので、コンデンサCvは、第2主端子6vaとアノードa1との間に電気的に接続されている。
【0083】
充電回路50vは、第1充電回路の一例であり、電源51vの一定の電源電圧VBvでコンデンサCvを充電する定電圧源である。図14に示す充電回路50vは、電源51vの出力側とコンデンサCvの一端との間に接続された抵抗52vを含む。充電回路50vは、図14に示す構成に限られず、例えば、コンデンサCv及びダイオードD1に電流を供給する電流源でもよい。
【0084】
検出回路43xは、X相の同期整流素子2xに同期整流させるタイミング(トランジスタ2xaをオンさせるタイミング)を検知するため、コンデンサCvの電圧低下を検出する。同期整流素子2xに同期整流させるタイミングは、整流ダイオード6vのインピーダンスにより調整される。電流Ivが整流ダイオード6vを経由して流れる期間は、第1主端子6vkの電位が低下するので、コンデンサCvの電荷がダイオードD1を介して放電される。コンデンサCvの電荷が放電されると、コンデンサCvの電圧(コンデンサ電圧Vcv)は低下する。したがって、検出回路43xは、コンデンサCvの電圧低下を検出することで、X相の同期整流素子2xに同期整流させるタイミング(トランジスタ2xaをオンさせるタイミング)を検知できる。
【0085】
検出回路43xは、例えば図14に示すように、コンデンサ電圧Vcvを所定の閾値電圧Vthと比較するコンパレータによって、コンデンサ電圧Vcvの低下を検出してもよい。検出回路43xは、コンデンサ電圧Vcvが閾値電圧Vthよりも高いとき、ローレベルの出力信号を出力し、コンデンサ電圧Vcvが閾値電圧Vthよりも低いとき、ハイレベルの出力信号を出力する。
【0086】
なお、検出回路43xがコンデンサCvの電圧低下を検出する方式は、これに限られない。例えば、検出回路43xは、コンデンサCvの電圧低下をCMOSインバータにより検出してもよい。
【0087】
ゲート駆動回路49xは、コンデンサCvの電圧に基づいて(詳しくは、検出回路43xの出力信号に基づいて)、X相の同期整流素子2xのゲートを駆動する第1ゲート駆動回路である。ゲート駆動回路49xは、上記のゲート駆動回路42xと同じ構成を有する。
【0088】
図15は、第2実施形態の二次側整流回路に含まれるY相駆動回路の一構成例を示す図である。ゲート信号生成回路48は、Y相用のゲート信号生成回路48yを含み、ゲート駆動回路49は、Y相用のゲート駆動回路49yを含む。ゲート信号生成回路48y及びゲート駆動回路49yは、駆動回路402に含まれるY相駆動回路である。
【0089】
ゲート信号生成回路48y及びゲート駆動回路49yは、ダイオード6uに電流Iuが流れる期間にトランジスタ2yaをオンすることでダイオード2ybに発生する導通損失を低減する第2駆動回路である。
【0090】
Y相駆動回路(ゲート信号生成回路48y及びゲート駆動回路49y)は、X相駆動回路(ゲート信号生成回路48x及びゲート駆動回路49x)と同じ構成を有する。
【0091】
ゲート信号生成回路48yは、Y相の同期整流素子2yのトランジスタ2yaのゲートを駆動するためのY相用のゲート信号Vsyを生成する。ゲート信号生成回路48yは、コンデンサCu、充電回路50u、検出回路43y及びトランジスタ47yを含む。Y相のゲート信号生成回路48yは、U相の整流ダイオード6uの第4主端子6uaと同じ基準電位UGで動作する。
【0092】
コンデンサCuは、第2コンデンサの一例であり、基準電位UGとダイオードD2のアノードa2との間に電気的に接続された蓄電素子である。基準電位UGは、整流ダイオード6uの第4主端子6uaに電気的に接続された箇所の電位なので、コンデンサCuは、第4主端子6uaとアノードa2との間に電気的に接続されている。
【0093】
充電回路50uは、第2充電回路の一例であり、電源51uの一定の電源電圧VBuでコンデンサCuを充電する定電圧源である。図15に示す充電回路50uは、電源51uの出力側とコンデンサCuの一端との間に接続された抵抗52uを含む。充電回路50uは、図15に示す構成に限られず、例えば、コンデンサCu及びダイオードD2に電流を供給する電流源でもよい。
【0094】
検出回路43yは、Y相の同期整流素子2yに同期整流させるタイミング(トランジスタ2yaをオンさせるタイミング)を検知するため、コンデンサCuの電圧低下を検出する。同期整流素子2yに同期整流させるタイミングは、整流ダイオード6uのインピーダンスにより調整される。電流Iuが整流ダイオード6uを経由して流れる期間は、第3主端子6ukの電位が低下するので、コンデンサCuの電荷がダイオードD2を介して放電される。コンデンサCuの電荷が放電されると、コンデンサCuの電圧(コンデンサ電圧Vcu)は低下する。したがって、検出回路43yは、コンデンサCuの電圧低下を検出することで、Y相の同期整流素子2yに同期整流させるタイミング(トランジスタ2yaをオンさせるタイミング)を検知できる。
【0095】
検出回路43yは、例えば図15に示すように、コンデンサ電圧Vcuを所定の閾値電圧Vthと比較するコンパレータによって、コンデンサ電圧Vcuの低下を検出してもよい。検出回路43yは、コンデンサ電圧Vcuが閾値電圧Vthよりも高いとき、ローレベルの出力信号を出力し、コンデンサ電圧Vcuが閾値電圧Vthよりも低いとき、ハイレベルの出力信号を出力する。
【0096】
なお、検出回路43uがコンデンサCuの電圧低下を検出する方式は、これに限られない。例えば、検出回路43uは、コンデンサCuの電圧低下をCMOSインバータにより検出してもよい。
【0097】
ゲート駆動回路49yは、コンデンサCuの電圧に基づいて(詳しくは、検出回路43yの出力信号に基づいて)、Y相の同期整流素子2yのゲートを駆動する第2ゲート駆動回路である。ゲート駆動回路49yは、上記のゲート駆動回路42yと同じ構成を有する。
【0098】
図16は、第2実施形態の二次側整流回路の一動作波形を示すタイミングチャートである。図13図15を参照して、図16について以下説明する。
【0099】
整流ダイオード6uを経由する電流Iuが流れ終わると、電流Ivが整流ダイオード6vを経由して流れ始める。電流Iuが流れ終わると、整流ダイオード6uの第3主端子6ukの電位が上昇し始める。これにより、コンデンサCuが充電回路50uにより充電されるので、コンデンサ電圧Vcuがゼロから漸増する。一方、電流Ivが流れ始めると、整流ダイオード6vの第1主端子6vkの電位が低下し始める。これにより、コンデンサCvの電荷がダイオードD1を経由して放電されるので、コンデンサ電圧Vcvが電源電圧VBvから漸減する。
【0100】
コンデンサ電圧Vcuが閾値電圧Vthよりも上昇すると、検出回路43yの出力信号がハイレベルからローレベルに切り替わる。これにより、ゲート電圧Vgsyがハイレベルからローレベルに切り替わるので、同期整流素子2yのトランジスタ2yaはオフする。一方、コンデンサ電圧Vcvが閾値電圧Vthよりも低下すると、検出回路43xの出力信号がローレベルからハイレベルに切り替わる。これにより、ゲート電圧Vgsxがローレベルからハイレベルに切り替わるので、同期整流素子2xのトランジスタ2xaはオンする。このように、同期整流素子2xのゲートがオフからオンに切り替わるので、同期整流素子2xの導通損失が同期整流により低減する。
【0101】
整流ダイオード6vを経由する電流Ivが流れ終わると、電流Iuが整流ダイオード6uを経由して流れ始める。電流Ivが流れ終わると、整流ダイオード6vの第1主端子6vkの電位が上昇し始める。これにより、コンデンサCvが充電回路50vにより充電されるので、コンデンサ電圧Vcvがゼロから漸増する。一方、電流Iuが流れ始めると、整流ダイオード6uの第3主端子6ukの電位が低下し始める。これにより、コンデンサCuの電荷がダイオードD2を経由して放電されるので、コンデンサ電圧Vcuが電源電圧VBuから漸減する。
【0102】
コンデンサ電圧Vcvが閾値電圧Vthよりも上昇すると、検出回路43xの出力信号がハイレベルからローレベルに切り替わる。これにより、ゲート電圧Vgsxがハイレベルからローレベルに切り替わるので、同期整流素子2xのトランジスタ2xaはオフする。一方、コンデンサ電圧Vcuが閾値電圧Vthよりも低下すると、検出回路43yの出力信号がローレベルからハイレベルに切り替わる。これにより、ゲート電圧Vgsyがローレベルからハイレベルに切り替わるので、同期整流素子2yのトランジスタ2yaはオンする。このように、同期整流素子2yのゲートがオフからオンに切り替わるので、同期整流素子2yの導通損失が同期整流により低減する。
【0103】
図17は、共振定数(C2及びL1)にばらつきがない場合の一動作波形を示すタイミングチャートである。図17は、第1実施形態の電力変換装置1001(図1)の一動作波形を示す。トランス33の一次側に流れる共振電流I1及びトランス33の二次側に流れる電流Isの共振周期は、一次側の共振定数(キャパシタC2のキャパスタンス及びインダクタL1のインダクタンス)によって決まる。一次側の共振定数に誤差があると、その共振周期が変化する。
【0104】
図18は、共振定数(C2及びL1)にばらつきがある場合の一動作波形を示すタイミングチャートであり、共振周期の半分が(π×√(C2×L1))から(π×√(C2×L1×1.1))に変化した場合を例示する。
【0105】
同期整流素子2u,2yのターンオンからターンオフまでの遅延時間tdelayが固定の場合、電流Isが大きいタイミングで同期整流素子2u,2yはターンオフするので、同期整流素子2u,2yのターンオフ損失Ptoffが増大する。同様に、同期整流素子2v,2xのターンオンからターンオフまでの遅延時間tdelayが固定の場合、電流Isが大きいタイミングで同期整流素子2v,2xはターンオフするので、同期整流素子2v,2xのターンオフ損失Ptoffが増大する。
【0106】
電力変換装置1001ごとに遅延時間tdelayを手動で調整すると、その調整作業に手間がかかる場合がある。
【0107】
図19は、電力変換装置の二次側整流回路の一構成例を示す図である。図19に示す電力変換装置は、上記の遅延時間tdelayを調整する調整部60を備える点で、図3に示す電力変換装置と相違する。図19は、調整部60が第1実施形態の電力変換装置に備えられる場合を例示する。調整部60は、他の実施形態の電力変換装置に備えられてもよい。
【0108】
遅延時間tdelayを調整可能な調整部60が設けられることで、共振定数(C2及びL1)にばらつきがあっても、二次側整流回路の同期整流を精度良く行うことができる。
【0109】
図20は、二次側整流回路に含まれるV相駆動回路の一構成例を示す図である。図20に示すV相駆動回路は、遅延時間tdelayを調整する調整部60を備える点で、図4に示すV相駆動回路と相違する。図20は、調整部60が、V相駆動回路に対して設けられる場合を例示する。調整部60は、V相、X相、U相およびY相の駆動回路に対して、個別に設けられてもよいし、一括で設けられてもよい。
【0110】
調整部60は、例えば、コンデンサ電圧Vcの変化のタイミングに応じて、遅延時間tdelayを調整する。これにより、共振定数(C2及びL1)にばらつきがあっても、二次側整流回路の同期整流の精度が向上する。この例では、調整部60は、検出回路43の出力信号Sig0に応じてコンデンサ電圧Vcの低下及び上昇のタイミングを検出し、コンデンサ電圧Vcが低下してから上昇に転じるまでの時間に応じて、遅延時間tdelayを調整する。遅延回路44は、調整部60による調整後の遅延時間tdelayだけ、出力信号Sig0を遅延させた出力信号Sigdを生成する。
【0111】
図21は、遅延時間tdelayの調整前の電力変換装置の一動作波形を示すタイミングチャートである。出力信号Sigdは、出力信号Sig0に対して遅延時間tdelayだけ遅れた信号である。
【0112】
図22は、遅延時間tdelayの調整後の電力変換装置の一動作波形を示すタイミングチャートである。調整部60は、デッドタイムtdead(=入力電流Iinの共振半周期ts-遅延時間tdelay)が短縮するように、遅延時間tdelayを延長するように調整する。これにより、各相の同期整流素子2u,2y(2v,2x)がターンオフするタイミングは、入力電流Iinが零となるタイミングに近づくので、各相の同期整流素子のターンオフ損失Ptoffが低減する。
【0113】
調整部60は、検出回路43の出力信号Sig0がローレベルからハイレベルに遷移するタイミングを、コンデンサ電圧Vcが低下し始めるタイミングとして検出する。調整部60は、検出回路43の出力信号Sig0がハイレベルからローレベルに遷移するタイミングを、コンデンサ電圧Vcが上昇し始めるタイミングとして検出する。調整部60は、遅延時間tdelayを、出力信号Sig0がハイレベルに遷移してからローレベルに遷移するまで延長する。
【0114】
このように、コンデンサ電圧Vcが低下してから上昇に転じるまでの時間に応じて遅延時間tdelayが調整されることで、入力電流Iinがほぼ零のタイミングで各相の同期整流素子2u,2y(2v,2x)はターンオフする。これにより、各相の同期整流素子のターンオフ損失Ptoffが低減する。調整部60により遅延時間tdelayが自動で調整されることで、遅延時間tdelayの調整作業の簡素化またはメンテナンスフリーが実現される。
【0115】
図23は、遅延回路44及び調整部60の機能ブロック図である。カウントアップ部68は、出力信号Sig0の立ち上がりからカウントセット値csをカウントアップする。セット時間計算部66は、セット時間を生成するための閾値Vthsを生成する。コンパレータ62は、カウントセット値csと閾値Vthsとを比較する。カウントアップ部69は、出力信号Sig0の論理を反転させた信号の立ち上がりからカウントディレイ値cdをカウントアップする。リセット時間計算部67は、リセット時間を生成するための閾値Vthrを生成する。コンパレータ65は、カウントディレイ値cdと閾値Vthrとを比較する。ゲート信号生成部70は、コンパレータ62,65の比較結果に基づいて、ゲート信号gate_v,gate_uを生成する。
【0116】
図24は、遅延回路44及び調整部60のシーケンスブロック図である。図24は、図23の機能ブロックを実現するための一構成例を示す。図25は、図24のシーケンスブロック図の動作を示すタイミングチャートである。図24及び図25を参照して、遅延回路44及び調整部60の動作を以下説明する。
【0117】
ステップS1において、コンデンサ電圧Vcの低下により出力信号Sig0が立ち上がると、カウントセット値csのカウントアップがカウンタ61により開始する。カウントセット値csは、コンパレータ62により閾値Vthsと比較される。
【0118】
セット時間計算部66は、カウントセット値csをサンプリングホールドするサンプリングホールド部と、積分部とを有する。カウントセット値csのサンプルホールド値と積分部の出力値との差が積分部により積分されることで、閾値Vthsが生成される。
【0119】
ステップS2において、カウントセット値csが閾値Vths(初期値は、0)を超過すると、セットフラグsfが立つので、出力信号Sigdはフリップフロップ63によりハイレベルとなる。これにより、V相及びX相用のゲート信号gate_vはオンし、ゲート信号gate_uはオフする。ゲート信号gate_vは、V相及びX相の同期整流素子2v,2xのトランジスタ2va,2xaのゲートを駆動するための信号である。ゲート信号gate_uは、U相及びY相の同期整流素子2u,2yのトランジスタ2ua,2uaのゲートを駆動するための信号である。ゲート信号gate_vのオンにより、トランジスタ2va,2xaがオンする。ゲート信号gate_uのオフにより、トランジスタ2ua,2yaがオフする。
【0120】
ステップS3において、ゲート信号gate_vは、ローレベルに立ち下がる。これにより、トランジスタ2va,2xaがゲートオフする。
【0121】
ステップS4において、入力電流Iinが他相に転流すると、コンデンサ電圧Vcが変化し、出力信号Sig0が立ち下がる。
【0122】
ステップS5において、出力信号Sig0が立ち下がると、カウントディレイ値cdのカウントアップがカウンタ64により開始する。カウントディレイ値cdは、コンパレータ65により閾値Vthrと比較される。
【0123】
リセット時間計算部67は、カウントディレイ値cdをサンプリングホールドするサンプリングホールド部と、積分部とを有する。カウントディレイ値cdのサンプルホールド値と積分部の出力値との差が積分部により積分されることで、閾値Vthrが生成される。
【0124】
ステップS6において、カウントディレイ値cdが閾値Vthr(初期値は、0)を超過すると、リセットフラグrfが立つので、出力信号Sigdはフリップフロップ63によりローレベルとなる。
【0125】
ステップS7において、ゲート信号gate_uは、ローレベルに立ち下がる。これにより、トランジスタ2ua,2yaがゲートオフする。
【0126】
ステップS8において、入力電流Iinが他相に転流すると、コンデンサ電圧Vcが変化する。
【0127】
ステップS9以降、ステップS1~S8が繰り返される。
【0128】
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更などを行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0129】
例えば、電力変換装置の構成は、図1に示す形態に限られない。例えば、一次側のインバータは、ハーフブリッジ型でもよい。また、LLC共振型DC/DCコンバータに限られず、電流共振型のコンバータでもよい。
【0130】
例えば、上記実施形態で説明した電力変換装置は、産業用の電源装置に使用されてもよいし、自動車、船舶、鉄道車両等の移動体用の電源装置に使用されてもよい。
【符号の説明】
【0131】
2u,2v,2x,2y 同期整流素子
2vd 第1主端子
2vs 第2主端子
6u,6v ダイオード
21,22 接続点
30 トランス
31 一次側巻線
32 二次側巻線
32a,32b 端部
33 トランス
41,48 ゲート信号生成回路
42,49 ゲート駆動回路
43 検出回路
44 遅延回路
45v,45x,45u,45y 反転回路
50 充電回路
60 調整部
101 インバータ
201,202 整流回路
300 LLC共振回路
401,402 駆動回路
501,502 二次側整流回路
600 制御回路
1001 電力変換装置
Cx,Cv,Cu コンデンサ
D,D1,D2 ダイオード
図1
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図3
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