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特開2024-180268ブロックポリマー、樹脂組成物、該樹脂組成物を用いて形成される積層シート、プリプレグ、硬化物、硬化物付基板および電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180268
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ブロックポリマー、樹脂組成物、該樹脂組成物を用いて形成される積層シート、プリプレグ、硬化物、硬化物付基板および電子機器
(51)【国際特許分類】
   C08F 293/00 20060101AFI20241219BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20241219BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20241219BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20241219BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20241219BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20241219BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C08F293/00
C08L53/00
C08K3/013
B05D7/24 302X
B32B27/34
C08J5/24 CER
C08J5/24 CEZ
H05K1/03 610N
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024022242
(22)【出願日】2024-02-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-08-14
(31)【優先権主張番号】P 2023097902
(32)【優先日】2023-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】曽根田 裕士
(72)【発明者】
【氏名】宇佐 勇貴
(72)【発明者】
【氏名】石川 崇
【テーマコード(参考)】
4D075
4F072
4F100
4J002
4J026
【Fターム(参考)】
4D075CA18
4D075DA04
4D075DA06
4D075DB04
4D075DB06
4D075DB07
4D075DB13
4D075DB14
4D075DB36
4D075DB46
4D075DB48
4D075DB53
4D075DC21
4D075EB20
4D075EB39
4F072AA04
4F072AA07
4F072AB02
4F072AB09
4F072AB28
4F072AD05
4F072AD09
4F072AD45
4F072AD52
4F072AE01
4F072AE02
4F072AF15
4F072AF23
4F072AF24
4F072AF29
4F072AG03
4F072AG17
4F072AG19
4F072AH02
4F072AJ04
4F072AJ22
4F072AK02
4F072AK14
4F072AL13
4F100AB17B
4F100AB33B
4F100AK24A
4F100AK49A
4F100AL02A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100DH01
4F100EH46A
4F100GB41
4F100JJ03
4J002BP031
4J002CD002
4J002CD012
4J002CD022
4J002CD052
4J002CD062
4J002CD102
4J002CD112
4J002CD122
4J002CD132
4J002CH072
4J002DA017
4J002DB017
4J002DE067
4J002DE077
4J002DE087
4J002DE097
4J002DE127
4J002DE137
4J002DE147
4J002DE187
4J002DE237
4J002DE247
4J002DE287
4J002DG047
4J002DH047
4J002DJ007
4J002DJ017
4J002DJ037
4J002DJ047
4J002DJ057
4J002DK007
4J002DL007
4J002ET006
4J002EU026
4J002FA017
4J002FA047
4J002FD017
4J002FD142
4J002FD146
4J002GQ01
4J026HA06
4J026HA07
4J026HA08
4J026HA11
4J026HA22
4J026HA35
4J026HA38
4J026HA46
4J026HE02
(57)【要約】
【課題】
誘電特性および耐熱性に優れ、更にヒートサイクル試験後のクラック耐性に優れる樹脂組成物を得るためのブロックポリマー、および該ブロックポリマーを含有する電子材料用樹脂組成物、並びに前記樹脂組成物を用いて形成される積層シート、プリプレグ、硬化物、硬化物付基板および電子機器の提供。
【解決手段】
特定の構造を有する繰り返し単位を有するポリイミドユニット(A1)と、特定の単量体を含有するエチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(A2)とを有するブロックポリマー(A)により解決される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミドユニット(A1)と、エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(A2)とを有するブロックポリマー(A)であって、
ポリイミドユニット(A1)は、一般式(1):
【化1】
(Xは、繰り返し単位毎にそれぞれ独立に4価のテトラカルボン酸残基であり、Xは繰り返し単位毎にそれぞれ独立に2価の有機基であり、前記Xとイミド結合が互いに結合して2つのイミド環を形成する。)
で表される構造の繰り返し単位を有し、
ポリイミドユニット(A1)は、ダイマージアミンおよび/またはダイマージイソシアネートに由来する残基Xdを有し、
エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(A2)は、(A2)を構成する単量体に一般式(2):
【化2】
(R1~R6はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1から18までの直鎖もしくは分岐骨格を有する炭化水素基、フッ素原子、または炭素数1から12までのフッ化アルキル基を表す。)
で表される単量体を含むことを特徴とする、ブロックポリマー(A)。
【請求項2】
エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(A2)のガラス転移温度が、ポリイミドユニット(A1)のガラス転移温度より高いことを特徴とする請求項1に記載のブロックポリマー(A)。
【請求項3】
ポリイミドユニット(A1)は、ポリイミドユニット(A1)を構成する前記X全体を100モル%としたときに、前記ダイマージアミンおよび/またはダイマージイソシアネートに由来する残基Xdを60~100モル%含有することを特徴とする請求項1に記載のブロックポリマー(A)。
【請求項4】
エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(A2)の含有率が、ブロックポリマー(A) の全質量を基準として、10~50質量%である請求項1に記載のブロックポリマー(A)。
【請求項5】
請求項1~4いずれか1項記載のブロックポリマー(A)と硬化性化合物(B)とを含み、更に任意で無機フィラーを含む樹脂組成物。
【請求項6】
硬化性化合物(B)が、エポキシ化合物(b1)、シアネートエステル化合物(b2)、マレイミド化合物(b3)、ポリフェニレンエーテル化合物(b4)およびナジイミド化合物(b5)からなる群より選択される少なくとも一種である請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
樹脂組成物から不揮発成分を除いた100質量%中に、ブロックポリマー(A)を1~40質量%含有することを特徴とする請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
基材と、前記基材上に設けられた、請求項5記載の樹脂組成物で形成された樹脂組成物層とを含む、積層シート。
【請求項9】
請求項5記載の樹脂組成物を基材に含浸させたプリプレグ。
【請求項10】
請求項5記載の樹脂組成物から得られる硬化物。
【請求項11】
基板上に請求項10に記載の硬化物を有する硬化物付基板。
【請求項12】
請求項11に記載の硬化物付基板を搭載した電子機器。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロックポリマー、樹脂組成物、該樹脂組成物を用いて形成される積層シート、プリプレグに関する。更に、前記樹脂組成物から得られる硬化物、前記樹脂組成物を硬化して形成される硬化物を含む硬化物付基板、前記硬化物付基板を搭載した電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品には、樹脂組成物を硬化させて得られた部材が様々な部位に用いられている。例えば、多層プリント配線板には、複数の導体層間に層間絶縁層が形成されている。また、樹脂組成物をガラスクロス等に含浸させたプリプレグが、プリント配線板の導体層を覆う絶縁層として用いられている。また、半導体パッケージに絶縁性の封止樹脂が用いられている。
【0003】
このような樹脂組成物として、樹脂成分、硬化成分、無機フィラー成分を含む組成物が開示されている。例えば、特許文献1には、エポキシ化合物、硬化剤、シリカおよびダイマー構造を有するポリイミドを含有する組成物が、特許文献2には、ダイマージアミンに由来する骨格を有する、特定量のN-アルキルビスマレイミド化合物等と、エポキシ化合物と、無機充填剤と、特定の硬化剤とを含む組成物が開示されている。また、特許文献3には、熱硬化性樹脂、無機充填剤、特定量の有機充填剤および粘着性柔軟化剤を含む樹脂組成物が開示されている。更に、特許文献4には、特定量のエポキシ樹脂、特定の構造を有する特定量のマレイミド化合物、特定量の活性エステル化合物および無機充填剤を含む絶縁層形成用樹脂組成物が開示されている。
【0004】
特許文献5には、芳香族テトラカルボン酸類およびダイマージアミンを特定量含むジアミン類を反応させてなるポリイミド樹脂、熱硬化性樹脂、難燃剤、並びに有機溶剤を含むポリイミド系接着剤組成物が開示されている。また、特許文献6には、シクロヘキサン環、ダイマー構造を有するマレイミド化合物、ダイマー構造を有するポリイミド樹脂、エポキシ化合物、活性エステル化合物および無機充填剤を含む樹脂材料が開示されている。更に、特許文献7には、熱硬化性樹脂、無機充填材、特定量の有機充填材および粘着性柔軟化剤を含む樹脂組成物が開示されている。また、特許文献8には、Bステージにおける損失弾性率が低く、耐熱接着性および低誘電特性が良好な接着層を与えるポリイミド系接着剤を提供することを課題として、末端変性ポリイミドと架橋剤と有機溶剤を含むポリイミド系接着剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2018/062404号
【特許文献2】国際公開第2019/189466号
【特許文献3】特開2020-158704号公報
【特許文献4】特開2020-186392号公報
【特許文献5】特開2013-199645号公報
【特許文献6】特開2021-25052号公報
【特許文献7】特開2020-158704号公報
【特許文献8】特開2016-191049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電子機器の高機能化が進み、機器に内蔵される電子部品の信頼性が益々求められている。樹脂組成物およびその硬化物においても、優れた耐熱性のみならず、ヒートサイクル試験後の優れたクラック耐性が得られる材料が求められている。更に、電子機器、通信機器等に用いられるプリント配線板に使用される信号の周波数帯としてギガHz帯にも対応可能な、低誘電率、低誘電正接の材料が必要とされている。市場では、誘電特性および耐熱性の両特性を満足しながら、ヒートサイクル試験後のクラック耐性の向上を図ることができる樹脂および樹脂組成物が求められている。
【0007】
本開示は上記背景に鑑みてなされたものであり、誘電特性および耐熱性に優れ、更にヒートサイクル試験後のクラック耐性に優れる樹脂組成物を得るためのブロックポリマー、および該ブロックポリマーを含有する樹脂組成物、並びに前記樹脂組成物を用いて形成される積層シート、プリプレグ、硬化物、硬化物付基板および電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが鋭意検討を重ねたところ、以下の態様において、本発明の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
[1]ポリイミドユニット(A1)と、エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(A2)とを有するブロックポリマー(A)であって、
ポリイミドユニット(A1)は、一般式(1):
【化1】

(Xは、繰り返し単位毎にそれぞれ独立に4価のテトラカルボン酸残基であり、Xは繰り返し単位毎にそれぞれ独立に2価の有機基であり、前記Xとイミド結合が互いに結合して2つのイミド環を形成する。)
で表される構造の繰り返し単位を有し、
ポリイミドユニット(A1)は、ダイマージアミンおよび/またはダイマージイソシアネートに由来する残基Xdを有し、
エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(A2)は、(A2)を構成する単量体に一般式(2):
【化2】

(R1~R6はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1から18までの直鎖もしくは分岐骨格を有する炭化水素基、フッ素原子、または炭素数1から12までのフッ化アルキル基を表す。)
で表される単量体を含むことを特徴とする、ブロックポリマー(A)。
【0010】
[2]:エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(A2)のガラス転移温度が、ポリイミドユニット(A1)のガラス転移温度より高いことを特徴とする[1]記載のブロックポリマー(A)。
【0011】
[3]:ポリイミドユニット(A1)は、ポリイミドユニット(A1)を構成する前記X全体を100モル%としたときに、前記ダイマージアミンおよび/またはダイマージイソシアネートに由来する残基Xdを60~100モル%含有することを特徴とする[1]または[2]記載のブロックポリマー(A)。
【0012】
[4]:エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(A2)の含有率が、ブロックポリマー(A) の全質量を基準として、10~50質量%である[1]~[3]いずれか記載
のブロックポリマー(A)。
【0013】
[5]:[1]~[4]いずれか記載のブロックポリマー(A)と硬化性化合物(B)とを含み、更に任意で無機フィラーを含む樹脂組成物。
【0014】
[6]:硬化性化合物(B)が、エポキシ化合物(b1)、シアネートエステル化合物(
b2)、マレイミド化合物(b3)、ポリフェニレンエーテル化合物(b4)およびナジ
イミド化合物(b5)からなる群より選択される少なくとも一種である[5]記載の樹脂組成物。
【0015】
[7]:樹脂組成物から不揮発成分を除いた100質量%中に、ブロックポリマー(A)を1~40質量%含有することを特徴とする[5]または[6]記載の樹脂組成物。
【0016】
[8]:基材と、前記基材上に設けられた、[5]~[7]いずれか記載の樹脂組成物で形成された樹脂組成物層とを含む、積層シート。
【0017】
[9]:[5]~[7]いずれか記載の樹脂組成物を基材に含浸させたプリプレグ。
【0018】
[10]:[5]~[7]いずれか記載の樹脂組成物から得られる硬化物。
【0019】
[11]:基板上に[10]記載の硬化物を有する硬化物付基板。
【0020】
[12]:[11]記載の硬化物付基板を搭載した電子機器。
【発明の効果】
【0021】
本開示によれば、誘電特性および耐熱性に優れ、更にヒートサイクル試験後のクラック耐性に優れるブロックポリマー、樹脂組成物、並びに前記樹脂組成物を用いて形成される積層シート、プリプレグ、硬化物、硬化物付基板および電子機器を提供できるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示について詳細に説明する。なお、本開示の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本開示の範疇に含まれることは言うまでもない。また、本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値の範囲として含むものとする。また、本明細書において「フィルム」や「シート」は同義であり、厚みによって区別されない。また、本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に一種単独でも二種以上を併用してもよい。本明細書に記載する数値は、後述する[実施例]に記載の方法にて得られる値をいう。
本明細書において、単量体をモノマーと記載する場合がある。また、(メタ)アクリレートはアクリレートおよびメタクリレートを含む。
【0023】
≪ブロックポリマー(A)≫
本発明のブロックポリマー(A)はポリイミドユニット(A1)とエチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(A2)と有する。
【0024】
ブロックポリマーの様式としては、ジブロックポリマーやトリブロックポリマーの他、マルチブロックポリマーであっても構わないが、反応を容易に制御できるためトリブロックポリマーが好ましい。
特に、クラック耐性を良化する効果を得やすい点で、(A2)-(A1)-(A2)のトリブロックポリマーが好ましい。
【0025】
ブロックポリマー(A)を構成するポリイミドユニット(A1)は、例えば公知のポリアミック酸およびポリイミド合成に用いられるジアミン、酸二無水物、ジイソシアネート等を用いて合成できる。また、エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(A2)は、例えば公知のビニル重合に用いられる(メタ)アクリルモノマーやスチレンなどのビニルモノマー等を用いて合成できる。
【0026】
ポリイミドユニット(A1)と、エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(A2)の連結方法としては特に制限はないが、エステル結合などと比較して化学的に安定となるため、好ましくはアミド結合および/またはイミド結合による連結方法である。さらに好ま
しくは、ポリイミドユニット(A1)の末端の酸無水物基に対して、アミノ基を有するチオール化合物のアミノ基を反応させ、連鎖移動剤となる末端チオールを起点としてエチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(A2)をラジカル重合して形成されるものになる。アミノ基を有するチオールとしては、2-アミノエタンチオールが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0027】
ブロックポリマー(A)は、ブロックポリマー(A) の全質量を基準として、エチレ
ン性不飽和単量体の重合体ユニット(A2)を10~50質量%含むことが好ましく、30~50質量%含むことが更に好ましい。この範囲であることで、耐熱性を維持しながら、誘電特性と、クラック耐性を向上させるこ
とができる。
【0028】
ブロックポリマー(A)は、硬化性化合物(B)に対する反応性官能基を有していても有していなくてもよい。反応性官能基として、前述したアミノ基、酸無水物基、カルボキシ基、マレイミド基の他、フェノール性水酸基が挙げられる。反応性官能基を有しないブロックポリマー(A)を用いた場合、硬化性化合物(B)との架橋構造は形成されないが、硬化物としたときに比較的高いガラス転移温度となる樹脂組成物の配合成分に、柔軟性が高く且つ特定範囲の重量平均分子量(以下Mw)を有するブロックポリマー(A)を配合することにより、硬化前の流動性を高めると共に、硬化後の応力緩和効果を引き出すことができると考えられる。
ブロックポリマー(A)のMwは、耐熱性、誘電特性の観点で、5,000~100,000が好ましく、より好ましくは10,000~70,000であり、更に好ましくは40,000~70,000である。
【0029】
本発明のブロックポリマー(A)のガラス転移温度は、ポリイミドユニット(A1)と、エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(A2)にそれぞれ使用するモノマーで制御することが可能である。また、この種のブロックポリマーは塗膜を形成した際に、相分離構造を形成する。分離した層のそれぞれのガラス転移温度が低い部分(ソフト)と、高い部分(ハード)が存在することにより、界面密着性と凝集力を両立して、強い基材密着性を与えることができる。本発明においても、それが適用され、例えば、ポリイミドユニット(A1)のガラス転移温度を低くして、エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(A2)のガラス転移温度を高くすることで、ポリイミドユニット(A1)で構成されるソフト部と、エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(A2)で構成されるハード部が分離した相分離構造を形成することが可能である。本発明では、エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(A2)のガラス転移温度が、ポリイミドユニット(A1)のガラス転移温度よりも高いことが好ましい。すなわち、ブロックポリマー(A)において、エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(A2)がハードセグメント、ポリイミドユニット(A1)がソフトセグメントとなることが好ましい。(A2)のハードセグメントが物理架橋し、物理架橋に関与しない(A2)を(A1)のソフトセグメントが橋掛けすることで、エラストマーとしての機能を発現し、クラック耐性への好影響を与えると考えられる。
具体的には、ポリイミドユニット(A1)のガラス転移温度と、エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(A2)のガラス転移温度の差が30℃~150℃であることが好ましい。より好ましくは、40℃~100℃の範囲である。また、ポリイミドユニット(A1)のガラス転移温度は60℃以下、エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(A2)のガラス転移温度は90℃以上であることが好ましい。
【0030】
<ポリイミドユニット(A1)>
本発明で用いられるポリイミドユニット(A1)は、一般式(1):
【化3】
(Xは、繰り返し単位毎にそれぞれ独立に4価のテトラカルボン酸残基であり、Xは繰り返し単位毎にそれぞれ独立に2価の有機基であり、前記Xとイミド結合が互いに結合して2つのイミド環を形成する。)
で表される構造の繰り返し単位を有する。また、ポリイミドユニット(A1)は、ダイマージアミンおよび/またはダイマージイソシアネートに由来する残基Xdを有する。
ポリイミドユニット(A1)は、後述の方法で得ることができる。
【0031】
ダイマージアミンは、例えば、ダイマー酸のカルボキシ基をアミノ基に転化することにより得られる。ダイマージイソシアネートは、例えば、ダイマー酸のカルボキシ基をイソシアネート基に転化することにより得られる。ここでダイマー酸とは、不飽和脂肪族カルボン酸の二量体またはその水添物をいう。例えば、大豆油脂肪酸、トール油脂肪酸、菜種油脂肪酸等の天然の脂肪酸、或いはリノレン酸、リノール酸、オレイン酸、エルカ酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、エライジン酸、ステアロール酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、ブラシジン酸、ネルボン酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、ミード酸、ジホモ-γ-リノレン酸、エイコサトリエン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサテトラエン酸、セトレイン酸、アドレン酸、ボセオペンタエン酸、オズボンド酸、イワシ酸、テトラコサペンタエン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸およびニシン酸等の不飽和脂肪酸を二量化してダイマー酸を得ることができる。不飽和結合を必要に応じて水添し、不飽和度を低下させてもよい。不飽和度を下げたダイマージアミンおよびダイマージイソシアネートは、耐酸化性(特に高温域における着色)や合成時のゲル化抑制の点で好適である。
【0032】
ダイマー酸は、炭素数20~60の化合物が好ましく、炭素数24~56の化合物がより好ましく、炭素数28~48の化合物が更に好ましく、炭素数36~44の化合物が更に好ましい。脂肪酸をディールス-アルダー反応させた分岐構造を有するジカルボン酸化合物が好ましい。前記分岐構造は、脂肪鎖および環構造が好ましく、環構造がより好ましい。前記環構造は、1または2以上の芳香環や脂環構造が好ましく、脂環構造がより好ましい。環構造が2つの場合、2つの環が独立していても、連続していてもよい。ダイマージアミンおよびダイマージイソシアネートは一種または複数種の化合物を用いることができる。脂環構造は、環内に二重結合を1つまたは複数有する場合、二重結合を有さない場合などがある。ダイマー酸のカルボキシ基をアミノ基に転化する方法は、例えば、カルボン酸をアミド化させ、ホフマン転位によりアミン化させ、更に蒸留・精製を行う方法が挙げられる。また、ダイマー酸のカルボキシ基をジイソシアネート基に転化する方法は、例えば、カルボン酸からクルチウス転移によりイソシアネート化させる方法が挙げられる。
【0033】
ダイマージアミン中のアミノ基、或いはダイマージイソシアネート中のイソシアネート基は、環構造に直接結合していてもよいが、溶解性向上、柔軟性向上の観点から、当該アミノ基は脂肪族鎖を介して環構造と結合していることが好ましい。アミノ基またはイソシアネート基と環構造との間の炭素数は2~25であることが好ましい。脂肪族鎖の好適例として、アルキレン基等の鎖状炭化水素基が例示できる。好適な例として、当該2つのアミノ基またはイソシアネート基が、それぞれアルキレン基を介して環構造と結合している化合物が例示できる。
【0034】
なお、ダイマージアミン或いはダイマージイソシアネートを得るためのダイマー酸(多塩基酸)の具体例として、下記化学式(d1)~(d4)が挙げられる。これらは一例であり、ダイマー酸は下記構造に限定されない。
【0035】
【化4】

【0036】
ダイマージアミンおよびダイマージイソシアネートは、炭素数20~60の化合物が好ましく、炭素数24~56の化合物がより好ましく、炭素数28~48の化合物が更に好ましく、炭素数36~44の化合物が更に好ましい。かかる炭素数は、入手し易さの観点で好ましい。
【0037】
ダイマージアミンの市販品は、例えば、クローダジャパン社製の「プリアミン1071」、「プリアミン1073」、「プリアミン1074」、「プリアミン1075」や、BASFジャパン社製の「バーサミン551」等が挙げられる。ダイマージアミンは、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0038】
一般式(1)中のXは、前述したように、繰り返し単位毎にそれぞれ独立の構造を有していてもよい2価の有機基である。Xを得るための重合に用いる有機化合物の好適例として、前述したようにジアミン、ジイソシアネートが例示できる。Xの少なくとも一部は、ダイマージアミンおよび/またはダイマージイソシアネートに由来する残基Xdである。
【0039】
ダイマー構造を有するX2dの割合は、ポリイミドユニット(A1)を構成するX全体を100モル%としたときに60~100モル%が好ましい。この範囲とすることにより、耐熱性、誘電特性、クラック耐性をバランスよく兼ね備えることができる。より好ましい範囲は80~100モル%であり、更に好ましい範囲は90~100モル%である。ダイマー構造を有するXdの割合は、ポリイミドユニット(A1)を合成する際に使用する原料モノマーのうち、X残基となる全単量体100モル%中に対する、ダイマー構造を有するXdが残基となる単量体の含有率(モル%)より求めることができる。
【0040】
ポリイミドユニット(A1)の一般式(1)中のXにおいて、上述したダイマー構造を有する残基Xdを形成する単量体以外のXの単量体となるその他のジアミンは、特に限定されない。具体的には、置換基を有していてもよい、脂肪族基(不飽和結合が含まれていてもよい、鎖状炭化水素構造および/または脂環式炭化水素構造)、芳香環およびこれらを任意に組み合わせたジアミン化合物がある。
【0041】
ダイマー構造以外のジアミン化合物としては、以下に例示される脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン、脂環族ジアミン等を併用しても良い。特に、耐熱性の観点から芳香族ジアミンやフェノール性水酸基を有するジアミンが好ましい。
【0042】
【化5】
【0043】
【化6】
(lは1~3の整数である)
【0044】
【化7】
【0045】
【化8】
【0046】
【化9】
【0047】
フェノール性水酸基を有するジアミンの好適例として、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)メチレン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシ)ビフェニル、2,2’-ジトリフルオロメチル-5,5’-ジヒドロキシル-4,4’-ジアミノビフェニル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-5,5’-ジヒドロキシベンジジンなどが挙げられる。また、これらの化合物の任意の位置に置換基が導入されていてもよい。
【0048】
一般式(1)中のXは、前述したように、繰り返し単位毎にそれぞれ独立の構造を有していてよい4価のテトラカルボン酸残基である。Xを得るための重合に用いるテトラカルボン酸類は特に限定されない。テトラカルボン酸類として、芳香族基を含む芳香族テトラカルボン酸類、脂肪族基を含む脂肪族テトラカルボン酸類、および芳香族基と脂肪族基を含むテトラカルボン酸類が好適に用いられる。なお、脂肪族基とは、炭化水素基であって、鎖状、分岐鎖状、環状(脂環式構造)またはこれらの組み合わせをいう。脂肪族基は不飽和結合を含んでいてもよい。また、脂肪族基は、窒素、酸素、硫黄、セレン、フッ素、塩素、臭素などのヘテロ原子を含んでいてもよい。テトラカルボン酸類は単独で用いても二種以上を併用してもよい。また、上記単量体の例は、適宜、置換基を有していてもよい。置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基等が例示できる。
【0049】
本発明に用いられるテトラカルボン酸二無水物として、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、4,4’-[プロパン-2,2-ジイルビス(1,4-フェニレンオキシ)]ジフタル酸二無水物、2,2-ビス(3,3’,4,4’-テトラカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシフェニル)スルホン二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ピロメリット酸二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸無水物、9,9’-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン酸二無
水物、9,9’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フルオレン酸二無水物、1’,2’-二無水物;4,4’-[4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ジフェノキシ]ジフタル酸二無水物、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸2、3:5,6-二無水物、ジシクロヘキシル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、7-メチル-4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物、7-ターシャリブチル-4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物、7-ターシャリブトキシ-4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物等が例示される。
テトラカルボン酸二無水物は、上記に限定されるものではなく、単独で、または2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0050】
テトラカルボン酸二無水物は、硬化助剤(B)との相溶性、接着性、及び誘電特性に優れることから、フッ素または脂環構造を含有することが好ましい。具体的には、2,2-ビス(3,3’,4,4’-テトラカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、9,9-ビス(トリフルオロメチル)-9H-キサンテン2,3,6,7-テトラカルボン酸2,3:6,7-二無水物、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、7-メチル-4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物、7-ターシャリブチル-4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物、7-ターシャリブトキシ-4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物等が挙げられる。その中でも2,2-ビス(3,3’,4,4’-テトラカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物等が接着力向上と誘電特性の点でより好ましい。
【0051】
ポリイミドユニット(A1)は、各種公知の方法により製造できる。
具体例として、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸、またはポリアミド酸エステル樹脂を熱イミド化または化学イミド化により環化してイミド基に変換する方法が挙げられる。ポリアミック酸の合成法は、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを反応させる方法がある。より具体的には、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを含む単量体を溶媒に溶解させて10~80℃程度の比較的低温で重合させることで製造できる。
あるいは、ポリアミック酸とする工程を省略して、有機溶媒中例えば130℃~250℃程度の比較的高温で重合かつイミド化する一段反応によって得ることもできる。
【0052】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応は、非プロトン性極性溶媒中で公知の方法で行うことができる。非プロトン性極性溶媒としては、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、メチルジグライム、シクロヘキサノン、1,4-ジオキサンなどが例示できる。非プロトン性極性溶媒は、一種類のみ用いてもよいし、二種類以上を混合して用いてもよい。この時、上記非プロトン性極性溶媒と相溶性がある非極性溶媒を混合して使用しても問題なく、例えばトルエン、キシレン、メシチレン、ソルベントナフサなどの芳香族炭化水素が良く使用される。混合溶媒における非極性溶媒の割合は、30質量%以下であることが好ましい。これは非極性溶媒が30質量%以上では溶媒の溶解力が向上しポリアミック酸が析出しにくくなるためである。テトラカルボン酸二無水物とジアミン成分との反応は、良く乾燥したジアミン成分を脱水精製した前述反応溶媒に溶解し、これに良く乾燥したテトラカルボン酸二無水物を添加して反応を進める方法が好ましい。
【0053】
前記テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応は、ランダム反応及びブロック反応のいずれでも構わない。反応物は、例えば、ジアミン成分毎別々に反応したホモ反応物を混合しても構わないし、場合により反応物をさらに再結合反応させても構わない。例えば、予めポリカルボン酸二無水物過剰で調製した酸末端オリゴマーとジアミン過剰で調整したアミン末端オリゴマーを混合して更に反応しても構わない。
【0054】
熱イミド化は例えば200~400℃程度の温度で行う事ができ、化学イミド化する方法は、例えば、ピリジンやトリエチルアミンなどの有機塩基と、無水酢酸などの存在下で行うことができる。このときの温度としては-20~200℃の任意の温度を選択することができる。
【0055】
ポリアミック酸を熱イミド化または化学イミド化して得られたポリイミドユニット(A1)を重合溶液のまま、次のビニル重合工程に使用することもできる。また、メタノール、エタノールなどの貧溶媒を加えて樹脂を沈殿させ、これを単離・回収し粉末として、次のビニル重合工程使用することもできる。
【0056】
<エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(A2)>
エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(A2)は、(A2)を構成する単量体に一般式(2):
【化10】
(R1~R6はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1から18までの直鎖もしくは分岐骨格を有する炭化水素基、フッ素原子、または炭素数1から12までのフッ化アルキル基を表す。)
で表される単量体を含む。
このような単量体として具体的には、スチレン、ターシャリーブチルスチレン、4-メチルスチレン、α―メチルスチレン、4-フルオロスチレン、4-トリフルオロメチルスチレン、ジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼンなどが挙げられる。
(A2)が一般式(2)で表される単量体を含むと、ブロックポリマー(A)の誘電特性に優れる。より具体的には、エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(A2)を構成する単量体100質量%中に、一般式(2)で表される単量体を80質量%以上含むことが好ましい。更に好ましくは90%以上である。
【0057】
エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(A2)は、エチレン性不飽和単量体のラジカル重合により合成される。例えば(メタ)アクリルモノマーと連鎖移動剤の存在下、ラジカル重合開始剤を加え、60~150℃程度の反応温度でラジカル重合反応を行うことで、連鎖移動剤残基を末端に有するエチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(A2)を得ることができる。
前記ポリイミドユニット(A1)が、末端チオール基を有していると、これが連鎖移動剤となって、ポリイミドユニット(A1)に連結したエチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(A2)が形成する。ラジカル重合反応は無溶剤下で行っても構わないが、粘度の制御が容易となることから溶剤を使用することが好ましい。
【0058】
一般式(2)で表される単量体以外の(メタ)アクリルモノマーとしては、以下の例には限定されないが、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート類;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等のアミノアルキル(メタ)アクリルアミド類;
ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートモノアルキルエーテル等のアルキレンオキサイド鎖を有する(メタ)アクリレート類;
製品名で、サイラプレーンFM-0711、サイラプレーンFM-0721((以上、チッソ株式会社製)等のポリジメチルシロキサン(メタ)アクリレート類;
製品名で、ケミノックスFAAC-4、ケミノックスFAAC-6、ケミノックスFAMAC-4、ケミノックスFAMAC-6(以上、ユニマテック社製)、R-1110、R-1210、R-1420、R-1620、R-5210、R-5410、R-5610、M-1110、M-1210、M-1420、M-1620、M-5210、M-5410、M-5610(以上、ダイキン社製)、ライトアクリレートFA-108(共栄社化学社製)、ビスコート-3F、ビスコート-3FM、ビスコート-4F、ビスコート-8F、ビスコート-8FM(以上、大阪有機化学工業社製)等のフッ素含有(メタ)アクリレート類;製品名で、マクロモノマーAA-6(メチルメタクリレート系マクロモノマー)、マクロモノマーAB-6(ブチル(メタ)アクリレート系マクロモノマー)、マクロモノマーAW-6S(イソブチル(メタ)アクリレート系マクロモノマー)、マクロモノマーAS-6(スチレン系マクロモノマー)、マクロモノマーAN-6S(スチレン/アクリロニトリル系マクロモノマー)、マクロモノマーAK-5(ジメチルシロキサン系マクロモノマー)(以上、東亞合成社製)等のビニル共重合系マクロモノマー類;製品名で、ビスコート#150D(テトラヒドロフルフリルアルコールオリゴアクリレート)、ビスコート#190D(エトキシジエチレングリコールオリゴアクリレート)(以上、大阪有機化学工業社製)等の(メタ)アクリル酸多量体型(メタ)アクリレート類; ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート等の各種(メタ)アクリレート類が挙げられ、
これらの他に、ラジカル重合可能なスチレン、酢酸ビニル等のビニルモノマーも用いることができる。これらのエチレン性不飽和単量体は、使用する目的に合わせて適宜選択することができ、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルパーベンゾエート、クメンヒドロパーオキシドやジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシネオデカノエート、tert-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等の有機過酸化物や、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2’-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]等のアゾ系化合物が挙げられる。これらの重合開始剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
溶剤としては、以下の例には限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、トルエン、キシレン、アニソール、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N-ビニルピロリドン、N-メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、m-クレゾール、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等が挙げられる。これらの溶剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
≪樹脂組成物≫
本実施形態に係る樹脂組成物(以下、本組成物ともいう)は、ブロックポリマー(A)と硬化性化合物(B)とを含み、更に任意で無機フィラーを含む。
無機フィラーを含むことにより、ヒートサイクル試験後のクラック耐性(応力緩和性)がより優れたものとなる。無機フィラーを含まないことも可能である。
本発明の樹脂組成物は、電子材料用途に好適に用いることができる。
【0062】
樹脂組成物から不揮発成分を除いた100質量%中に、ブロックポリマー(A)を1~40質量%含有することが好ましい。より好ましくは、5~30質量%である。樹脂組成物中にブロックポリマー(A)を1~40質量%含有することで、低誘電性、応力緩和性を付与することができる。
【0063】
<硬化性化合物(B)>
硬化性化合物は、加熱、光照射、電子線照射などにより架橋、硬化する化合物をいい、その種類は特に限定されない。硬化性化合物は、一種単独で用いる他、同種および異種を問わず、二種以上を組み合わせることができる。
【0064】
硬化性化合物の好適例として、エポキシ化合物(b1)、シアネートエステル化合物(
b2)、マレイミド化合物(b3)、ポリフェニレンエーテル化合物(b4)およびナジ
イミド化合物(b5)が例示できる(以下、成分(b1)~(b5)ともいう)。本発明の樹脂組成物は、硬化性化合物として、成分(b1)~(b5)からなる群より選択される一種以上を有することが好ましい。
【0065】
本組成物中のフィラーおよび溶剤を除く成分100質量%中、硬化性化合物を60~99質量%用いることが好ましく、70~95質量%用いることがより好ましい。この範囲であることで、耐熱性を維持しながら、ヒートサイクル試験後のクラック耐性を向上させることができる。
【0066】
耐熱性の観点から、硬化性化合物の分子量が100以上、10,000未満であることが好ましい。
【0067】
なお、硬化性化合物の分子量とは、低分子化合物の場合はその分子量であり、単量体を重合して得られる化合物の場合には数平均分子量をいう。硬化性化合物を2種以上用いる場合の硬化性化合物の分子量は、それぞれの硬化性化合物の分子量×その硬化性化合物の含有率(質量%)の総和をいう。
【0068】
エポキシ化合物(b1)は、エポキシ基を有する硬化性化合物をいう。エポキシ化合物(b1)は、活性エステル化合物を併用して用いることが好ましい。活性エステル化合物とは、エポキシ基と反応するエステル基を1分子中に1個以上有し、エポキシ樹脂を硬化せしめる化合物をいう。活性エステル化合物の市販品として、DIC社製「HPC-8000-65T」、「EXB9416-70BK」および「EXB8100-65T」等が例示できる。
【0069】
活性エステル化合物を用いることにより、エポキシ化合物(b1)と活性エステル化合物との反応によりエステル基が生じる。このため、フェノール系硬化剤を用いる場合に比べて極性を低くできる。その結果、誘電特性をより効果的に高めることができる。
【0070】
エポキシ化合物(b1)の具体例として、グリジシルエーテル型エポキシ樹脂;テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルパラアミノフェノール、トリグリシジルメタアミノフェノール、またはテトラグリシジルメタキシリレンジアミン、ソルビトールポリグリシジルエーテル等のグリジシルアミン型エポキシ樹脂;ジグリシジルフタレート、ジグリシジルヘキサヒドロフタレート、またはジグリシジルテトラヒドロフタレート等のグリシジルエステル型エポキシ樹脂、;エポキシシクロヘキシルメチル-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、またはビス(エポキシシクロヘキシル)アジペートなどの環状脂肪族(脂環型)エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂が例示できる。また、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、α-ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂が例示できる。
【0071】
シアネートエステル化合物(b2)は、シアネート基を有する硬化性樹脂をいう。シアネ
ートエステル化合物(b2)として、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールA型シアン酸エステル、ビスフェノールF型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールS型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールスルフィド型シアネートエステル樹脂、フェニレンエーテル型シアネートエステル樹脂、ナフチレンエーテル型シアネートエステル樹脂、ビフェニル型シアネートエステル樹脂、テトラメチルビフェニル型シアネートエステル樹脂、ポリヒドロキシナフタレン型シアネートエステル樹脂、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂、クレゾールノボラック型シアネートエステル樹脂、トリフェニルメタン型シアネートエステル樹脂、テトラフェニルエタン型シアネートエステル樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型シアネートエステル樹脂、フェノールアラルキル型シアネートエステル樹脂、ナフトールノボラック型シアネートエステル樹脂、ナフトールアラルキル型シアネートエステル樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック型シアネートエステル樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック型シアネートエステル樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型シアネートエステル樹脂、ビフェニル変性ノボラック型シアネートエステル樹脂、アントラセン型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。
【0072】
シアネートエステル化合物(b2)の市販品、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン社製「PT-30」および「PT-60」)、ビスフェノール型シアネートエステル樹脂が三量化されたプレポリマー(ロンザジャパン社製「BA-230S」、「BA-3000S」、「BTP-1000S」および「BTP-6020S」)等を用いてもよい。
【0073】
耐熱性とヒートサイクル試験後のクラック耐性を向上させる観点から、分子量が100以上、10,000未満のマレイミド化合物(b3)を含むことが好ましい。このような比較的分子量の低い、反応性の高いマレイミド化合物(b3)と、比較的分子量の高い、脂環構造を有するブロックポリマー(A)とを組み合わせることで、架橋構造の疎の部分と密な部分が生じやすく、効果的に耐熱性とヒートサイクル試験後のクラック耐性を向上させることができたと考えられる。
【0074】
マレイミド化合物(b3)は、多官能アミンと無水マレイン酸を反応させて得られる多官能マレイミドを挙げることができる。多官能アミンとしては、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4′-ジアミン、ハンツマン・コーポレーション社製の、末端アミノ化ポリプロピレングリコール骨格を有するジェファーミンD-230、HK-511、D-400、XTJ-582、D-2000、XTJ-578、XTJ-509、XTJ-510、T-403、T-5000、末端アミノ化エチレングリコール骨格を有するXTJ-500、XTJ-501、XTJ-502、XTJ-504、XTJ-511、XTJ-512、XTJ-590末端アミノ化ポリテトラメチレングリコール骨格を有するXTJ-542、XTJ-533、XTJ-536、XTJ-548、XTJ-559などが挙げられる。
【0075】
マレイミド化合物(b3)として、4,4'-ジフェニルメタンビスマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、p-フェニレンビスマレイミド、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス-(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、N,N'-エチレンジマレイミド、N,N'-ヘキサメチレンジマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド等の分子内に2つのマレイミド基を有する樹脂、ビフェニルアラルキル型マレイミド、ポリフェニルメタンマレイミド(CASNO:67784-74-1、ホルムアルデヒドとアニリンからなるポリマーと無水マレイン酸の反応物)、N,N’-(トルエン-2,6-ジイル)ビスマレイミド)、4,4’-ジフェニルエーテルビスマレイミド、4,4’-ジフェニルスルフォンビスマレイミド、1,3-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、N,N’-エチレンビスマレイミド、N,N’-トリメチレンビスマレイミド、N,N’-プロピレンビスマレイミド、N,N’-テトラメチレンビスマレイミド、N,N’-ペンタメチレンビスマレイミド、N,N’-(1,3-ペンタンジイル)ビス(マレインイミド)、N,N’-ヘキサメチレンビスマレイミド、N,N’-(1,7-ヘプタンジイル)ビスマレイミド、N,N’-(1,8-オクタンジイル)ビスマレイミド、N,N’-(1,9-ノタンジイル)ビスマレイミド、N,N’-(1,10-デカンジイル)ビスマレイミド、N,N’-(1,11-ウンデカンジイル)ビスマレイミド、N,N’-(1,12-ドデカンジイル)ビスマレイミド、N,N’-[(1,4-フェニレン)ビスメチレン]ビスマレイミド、N,N’-[(1,2-フェニレン)ビスメチレン]ビスマレイミド、N,N’-[(1,3-フェニレン)ビスメチレン]ビスマレイミド、1,6’-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン、N,N’ -[(メチルイミノ)ビス(4,1-フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’ -(2-ヒドロキシプロパン-1,3-ジイルビスイミノビスカルボニルビスエチレン)ビスマレイミド、N,N’ -(ジチオビスエチレン)ビスマレイミド、N,N’-[ヘキサメチレンビス(イミノカルボニルメチレン)]ビスマレイミド、N,N’ -カルボニルビス(1,4-フェニレン)ビスマレイミド、N,N’,N’ ’ -[ニトリロトリス(エチレン)]トリスマレイミド、N,N’,N’’-[ニトリロトリス(4,1-フェニレン)]トリスマレイミド、N,N’ -[p-フェニレンビス(オキシ-p-フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’ -[メチレンビス(オキシ)ビス(2-メチル-1,4-フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’-[メチレンビス(オキシ-p-フェニレン)]ビス(マレインイミド)N,N’ -[ジメチルシリレンビス[(4,1-フェニレン)(1,3,4,-オキサジアゾール-5,2-ジイル)(4,1-フェニレン)]]ビスマレイミド、N,N’-[(1,3-フェニレン)ビスオキシビス(3,1-フェニレン)]ビスマレイミド、1,1’-[3’-オキソスピロ[9H-キサンテン-9,1’(3’H)-イソベンゾフラン]-3,6-ジイル]ビス(1H-ピロール-2,5-ジオン)、N,N’-(3,3’-ジクロロビフェニル-4,4’-ジイル)ビスマレイミド、N,N’-(3,3’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジイル)ビスマレイミド、N,N’-(3,3’-ジメトキシビフェニル-4,4’-ジイル)ビスマレイミド、N,N’-[メチレンビス(2-エチル-4,1-フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’-[メチレンビス(2,6-ジエチル-4,1-フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’-[メチレンビス(2-ブロモ-6-エチル-4,1-フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’-[メチレンビス(2-メチル-4,1-フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’-[エチレンビス(オキシエチレン)]ビスマレイミド、N,N’-[スルホニルビス(4,1-フェニレン)ビス(オキシ)ビス(4,1-フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’-[ナフタレン-2,7-ジイルビス(オキシ)ビス(4,1-フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’-[p-フェニレンビス(オキシ-p-フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’-[(1,3-フェニレン)ビスオキシビス(3,1-フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’-(3,6,9-トリオキサウンデカン-1,11-ジイル)ビスマレイミド、N,N’-[イソプロピリデンビス[p-フェニレンオキシカルボニル(m-フェニレン)]]ビスマレイミド、N,N’-[イソプロピリデンビス[p-フェニレンオキシカルボニル(p-フェニレン)]]ビスマレイミド、N,N’-[イソプロピリデンビス[(2,6-ジクロロベンゼン-4,1-ジイル)オキシカルボニル(p-フェニレン)]]ビスマレイミド、N,N’-[(フェニルイミノ)ビス(4,1-フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’-[アゾビス(4,1-フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’-[1,3,4-オキサジアゾール-2,5-ジイルビス(4,1-フェニレン)]ビスマレイミド、2,6-ビス[4-(マレインイミド-N-イル)フェノキシ]ベンゾニトリル、N,N’-[1,3,4-オキサジアゾール-2,5-ジイルビス(3,1-フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’-[ビス[9-オキソ-9H-9-ホスファ(V)-10-オキサフェナントレン-9-イル]メチレンビス(p-フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’-[ヘキサフルオロイソプロピリデンビス[p-フェニレンオキシカルボニル(m-フェニレン)]]ビスマレイミド、N,N’-[カルボニルビス[(4,1-フェニレン)チオ(4,1-フェニレン)]]ビスマレイミド、N,N’-カルボニルビス(p-フェニレンオキシp-フェニレン)ビスマレイミド、N,N’-[5-tert-ブチル-1,3-フェニレンビス[(1,3,4-オキサジアゾール-5,2-ジイル)(4,1-フェニレン)]]ビスマレイミド、N,N’-[シクロヘキシリデンビス(4,1-フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’-[メチレンビス(オキシ)ビス(2-メチル-1,4-フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’-[5-[2-[5-(ジメチルアミノ)-1-ナフチルスルホニルアミノ]エチルカルバモイル]-1,3-フェニレン]ビスマレイミド、N,N’-(オキシビスエチレン)ビスマレイミド、N,N’-[ジチオビス(m-フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’-(3,6,9-トリオキサウンデカン-1,11-ジイル)ビスマレイミド、N,N’-(エチレンビス-p-フェニレン)ビスマレイミド、DesignerMolecules社製のBMI-689、BMI-1500、BMI-1700、BMI-3000、BMI-5000、BMI-9000、JFEケミカル社製のODA-BMI、BAFBMIなどの多官能マレイミドを挙げることができる。
【0076】
マレイミド化合物(b3)をラジカルにより架橋させる場合には、ラジカル重合開始剤を添加ができる。具体的にはアゾ系化合物、有機過酸化物が例示できる。重合開始剤は一種もしくは二種以上を組み合わせて用いられる。
アゾ系化合物としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2’-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]が例示できる。
有機過酸化物としては、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシドが例示できる。
【0077】
ポリフェニレンエーテル化合物(b4)は、下記一般式(9)で表される構造の繰り返し単位を有し、硬化性官能基を含有するものである。
【化11】
11、R12、R13およびR14は、繰り返し単位毎にそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、置換基を有していてもよいアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘプチル基等の炭素数1~6の直鎖状もしくは分岐状の化合物、シクロヘキシル基等の脂環式化合物)、置換基を有していてもよいアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、プロポキシ基等の炭素数1~6のアルコキシ基)、置換基を有していてもよいアリール基(フェニル基、ナフチル基等)、置換基を有していてもよいアミノ基、カルボキシ基、ニトロ基、シアノ基などが例示できる。
【0078】
長期耐熱性の観点からポリフェニレンエーテル化合物(b4)の平均硬化性官能基数は1~10であることが好ましく、2以上であることがより好ましい。
【0079】
ポリフェニレンエーテル化合物(b4)のMwは特に限定されないが、曲げ強度の観点から200以上であることが好ましく、500以上であることがより好ましい。Mwの上限値は特に限定されないが、入手容易性等を考慮すると1万以下である。
【0080】
ポリフェニレンエーテル化合物(b4)の具体例としては、ポリ(2-メチル-6-エチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-フェニル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジクロロ-1,4-フェニレンエーテル)、2,6-ジメチルフェノールと他のフェノール類(例えば、2,3,6-トリメチルフェノール、2-メチル-6-ブチルフェノール等)との共重合体が挙げられる。また、2,6-ジメチルフェノールとビフェノール類またはビスフェノール類とをカップリングさせて得られるポリフェニレンエーテル共重合体およびポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)等をビスフェノール類やトリスフェノール類のようなフェノール化合物と有機過酸化物の存在下でトルエン等の溶媒中で加熱し、再分配反応させて得られる、直鎖構造もしくは分岐構造を有するポリフェニレンエーテルが挙げられる。
【0081】
ナジイミド化合物(b5)は、分子内にナジイミド基を2個以上有するものであれば、特に限定されない。ナジイミド化合物(b5)の好適例として、下記一般式(10)で表される構造を有する化合物が挙げられる。
【化12】
21は、炭素数1~20の置換基を有していてもよいアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へプチレン基等のアルキレン基)、シクロヘキシレン基等の脂環式基、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基およびこれらの任意の組合せからなる基である。R22およびR23は、アリル基または(メタ)アクリレート基等の硬化性官能基である。
【0082】
市販品としては、丸善石油化学社製品の「BANI-M」、および「BANI-X」が挙げられる。
【0083】
硬化性化合物(B)は、官能基当量が100~1000g/eqの範囲であることが好ましい。この範囲にある事で、クラック耐性を維持しながら、耐熱性を向上させることができる。
【0084】
<無機フィラー>
本発明の樹脂組成物は、更に任意で無機フィラーを含むことができる。無機フィラーの種類は特に限定されない。無機フィラーを用いることにより、ヒートサイクル試験後のクラック耐性がより優れたものとなる。
【0085】
無機フィラーの具体例としては、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化ジルコニウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、硫酸マグネシウム、酸化チタン、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化アンチモン、酸化ニッケル、ケイ酸カルシウム、ベリリア、チタン酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、チタンホワイト、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アルミニウムなどの金属化合物;タルク;クレー;マイカ;ガラス繊維、カオリン、ハイドロタルサイト、ウォラストナイト、ゾノトライト、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、ガラスフレーク、水和ガラス、セピオライトなどの金属酸化物や金属窒化物;水和金属化合物;溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ、結晶性シリカ、非結晶性シリカ、2次凝集シリカ、微粉シリカ、中空シリカ、多孔質シリカなどのシリカ系;炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化チタン、ダイヤモンドなどの窒化系や炭素系フィラーが例示できる。
これらの中でもアルミナ、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素がより好ましく、アルミナ、窒化ホウ素がクラック耐性を効果的に高める観点から特に好ましい。
【0086】
<硬化助剤(C)>
ラジカル反応性の非共役炭素-炭素不飽和結合の架橋反応を促進する目的で、硬化助剤(C)を添加してもよい。硬化助剤としては、ラジカル重合開始剤、触媒が挙げられる。
触媒の好適例として、イミダゾール系、アミン系、リン系が例示できる。
【0087】
ラジカル重合開始剤は公知の化合物を用いることができる。例えば、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキシイソフタレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)オクタン、ジ-t-アミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジ(トリメチルシリル)パーオキサイド、トリメチルシリルトリフェニルシリルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の過酸化物が例示できる。また、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタンもラジカル重合開始剤として好適である。
【0088】
触媒は公知の化合物を用いることができる。例えば、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4 ,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-(2 ’-ウンデシルイミダゾリル)-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-〔2’-エチル-4-メチルイミダゾリル-(1’)〕-エチル-s-トリアジン等のイミダゾール系硬化剤; コバルト、亜鉛、銅、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属塩または金属錯体
などが挙げられる。
【0089】
ラジカル重合開始剤の配合量は、本ブロックポリマー(A)100質量部に対し、0.01~10質量部の範囲、好ましくは0.1~8質量部の範囲である。この範囲であれば、硬化反応を阻害することなく良好に反応が進行する。
【0090】
硬化助剤として触媒を使用する場合、その配合量は限定されるものではないが、高いガラス転移温度を得る観点からは、前記エポキシ化合物(b1)及び、シアネートエステル化合物(b2) の合計量に対して、触媒の比率を0.01~2質量%とするのが好ましく
、0.1~1質量%とするのがより好ましい。2種以上の硬化促進剤を併用する場合には、これらの合計量が上記比率を満たすことが好ましい。
【0091】
<その他成分>
更に本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、樹脂組成物はその他成分を含むことができる。例えば、本ブロックポリマー(A)に該当しない硬化性化合物を用いてもよい。また、任意の熱可塑性樹脂を用いてもよい。
【0092】
その他成分として、熱安定剤、染料、顔料(例えば、カーボンブラック)、重合禁止剤、消泡剤、レベリング剤、イオン捕集剤、保湿剤、粘度調整剤、防腐剤、抗菌剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、電磁波シールド剤等が挙げられる。
【0093】
本組成物は、無溶剤であっても溶剤を含んでいてもよい。溶剤としては、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、N-メチル-ピロリドン、アセトン、メタノール、エタノール、ブタノール、2-プロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、1-メトキシ-2- プ
ロパノール、2-アセトキシ-1-メトキシプロパン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノンおよびこれらの混合物が例示できる。
【0094】
1.樹脂組成物および硬化物の特性
本組成物を硬化せしめることにより硬化物が得られる。ここで、硬化物とは、硬化処理により三次元架橋構造を形成して硬化することをいい、更に硬化処理しても実質的に硬化反応が進行しない程度に硬化された状態をいう。硬化処理により、硬化性化合物同士が架橋する態様、硬化性化合物と本ブロックポリマー(A)とが架橋する態様、および硬化性化合物と他の成分とが架橋する態様、並びにこれらを任意に組み合わせた態様が挙げられる。硬化処理は、ラジカル反応により行う。必要に応じて加熱してもよい。なお、本組成物をシート等の所望の形状に成形する際に、その一部が硬化反応し得るが、更に硬化処理すれば硬化し得る状態は、ここでいう硬化物には含まない。樹脂組成物の段階で、成分の一部が半硬化したBステージの状態であってもよい。
【0095】
2.樹脂組成物の製造方法
本組成物は、各配合成分を配合することにより得られる。配合に際して、適宜、溶媒を用いることができる。固形分濃度は、例えば20~60質量%である。本組成物は、例えば粉末状、フィルム状、シート状、板状、ペレット状、ペースト状または液状である。液状またはペースト状の樹脂組成物は、溶剤を用いて粘度を調整することにより容易に得ることができる。また、フィルム状、シート状、板状の樹脂組成物は、例えば、液状またはペースト状の樹脂組成物を塗工して乾燥することにより形成できる。また、粉末状、ペレット状の樹脂組成物は、例えば、前記フィルム状等の樹脂組成物を所望のサイズに粉砕または分断することにより得られる。
【0096】
3.樹脂組成物層、積層シートおよびプリプレグ
本組成物は、樹脂組成物層として好適に用いることができる。また、本組成物は、基材と、この基材上に設けられた本組成物で形成された樹脂組成物層とを含む、積層シート用途に好適に用いることができる。樹脂組成物層は、硬化処理後に優れた接着性を示すので、各種材料(樹脂層、金属層、ITO等の無機層、複合層など)との接合用途として好適である。例えば、銅張積層板(CCL:Copper Clad Laminate)の接着シート、電子回路基板と電子部品等との部品同士の接合材料に好適である。
【0097】
例えば、溶剤を含む本組成物の塗布液(ワニス)を剥離フィルムの片面に塗布し、有機溶剤等の液状媒体を例えば40~150℃で除去・乾燥することにより、樹脂組成物層(接着シート)を有する積層シートが得られる。得られた接着シートの表面に別の剥離フィルムを積層することにより、両面剥離フィルム付き接着シートである積層シートが得られる。両面を剥離フィルムで積層することにより、接着シートの表面汚染を予防できる。剥離フィルムを剥がすことによって、接着シートを単離できる。2つの剥離フィルムは、同種または異種のいずれも用いることができる。剥離性の異なる剥離フィルムを用いることによって、剥離力に強弱をつけることができるので順番に剥がしやすくなる。また、剥離性基材以外の基材に塗布液を塗工して接着シート(樹脂組成物層)を有する積層シートを得てもよい。
【0098】
基材は、ポリイミドフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリカーボネート、ポリエチレン、液晶ポリマー、フェノール樹脂、アラミド樹脂などの樹脂材料;銅、アルミニウム、ステンレス等の金属材料;ITO、ガラス、シリコン、シリコンカーバイト等の無機材料およびこれらを任意に組み合わせた複合材料が例示できる。
【0099】
塗布方法としては、例えば、コンマコート、ナイフコート、ダイコート、リップコート、ロールコート、カーテンコート、バーコート、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、ディップコート、スプレーコート、スピンコート等、公知の方法を選択できる。接着シートの乾燥後の厚みは十分な接着性を発揮させるため、また、取り扱い易さの点から、5~500μmであることが好ましく、10~100μmであることが更に好ましい。
【0100】
本組成物は、基材に本組成物を含浸させることにより得たプリプレグ形成用として好適に用いることができる。プリプレグは、例えば、繊維基材に本組成物を含浸させ、続いて、樹脂組成物を加熱乾燥せしめて半硬化(Bステージ化)することにより製造できる。樹脂組成物の繊維基材に対する固形分付着量は、プリプレグに対する乾燥後の樹脂組成物の含有率において20~90質量%とすることが好ましい。より好ましくは、30~80質量%であり、さらに好ましくは40~70質量%である。例えば、プリプレグ中の樹脂組成物の固形分付着量が20~90質量%となるように、本組成物を繊維基材に含浸または塗工した後、例えば40~250℃の温度で1~30分加熱乾燥し、半硬化(Bステージ化)させることにより製造できる。
【0101】
繊維基材としては、公知の材料を制限なく利用できるが、有機繊維、無機繊維およびガラス繊維が例示できる。有機繊維としては、ポリイミド、ポリエステル、テトラフルオロエチレン、全芳香族ポリアミドなどが例示できる。無機繊維としては、炭素繊維が例示できる。ガラス繊維としては、Eガラスクロス、Dガラスクロス、Sガラスクロス、Qガラスクロス、NEガラスクロス、Lガラスクロス、Tガラスクロス、球状ガラスクロス、低誘電ガラスクロスなどが例示できる。これらのなかでも低熱膨張率の観点からは、Eガラスクロス、Tガラスクロス、Sガラスクロス、Qガラスクロスおよび有機繊維が好適である。繊維基材は一種単独でも二種以上を併用してもよい。
【0102】
繊維基材の形状は、目的とする用途および性能に応じて適宜選択できる。具体例としては、織布、不織布、ロービンク、チョップドストランドマットおよびサーフェシングマットが例示できる。織布の織り方としては、平織り、ななこ織り、綾織りが例示できる。所望の特性に応じて、任意に選択・設計できる。繊維基材の厚さは、例えば、約0.01~1.0mmの範囲である。薄膜化の観点からは500μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましい。
【0103】
繊維基材は、必要に応じて、所望の特性を引き出すためにシランカップリング剤などで表面処理を施したり、機械的に開繊処理を施したりしてもよい。その他、コロナ処理やプラズマ処理を行ってもよい。シランカップリング剤の表面処理は、アミノシランカップリング処理、ビニルシランカップリング処理、カチオニックシランカップリング処理、エポキシシランカップリング処理等がある。
【0104】
繊維基材に樹脂組成物を含浸させる方法は特に限定されないが、例えば、アルコール類、エーテル類、アセタール類、ケトン類、エステル類、アルコールエステル類、ケトンアルコール類、エーテルアルコール類、ケトンエーテル類、ケトンエステル類、或いはエステルエーテル類などの有機溶媒を用いて樹脂組成物のワニスを調製し、ワニス中に繊維基材を浸漬する方法、繊維基材にワニスを塗布またはスプレー等により散布する方法、繊維基材の両面を樹脂組成物からなる膜でラミネートする方法が挙げられる。
【0105】
更に、本組成物より形成されてなる樹脂組成物層、その硬化物層等は、半導体チップパッケージの絶縁層、アンダーフィル材、接着材等に好適である。また、銅張積層板用の組成物、配線板形成用ボンディングシート、フレキシブル基板のカバーコートにも好適である。
【0106】
4.硬化物の製造方法
本組成物を硬化処理することにより硬化物が得られる。熱硬化性化合物を含む場合には熱硬化処理を、光硬化性化合物を含む場合には光照射処理により硬化する。例えば、樹脂組成物をシート等の所望の形状に成形し、硬化処理する方法が例示できる。溶剤を含む樹脂組成物を塗布、乾燥することにより簡便に樹脂組成物のシートなどの成形体を得、硬化することにより硬化物を形成してもよい。硬化のタイミングは成形後でも成形後でもよい。なお、硬化物のうちシート状のものを硬化層ともいう。
【0107】
熱硬化処理する場合の温度は、硬化性化合物の種類に応じて適宜選定すればよい。例えば、150~300℃の温度で30~180分加熱処理する方法が例示できる。光硬化処理する場合、活性光線を硬化が行われる強度で照射すればよい。硬化時に、必要に応じて圧をかけて熱圧着(例えば、2MPa)できる。硬化処理により、本組成物に架橋構造が形成され、3次元架橋した硬化物が得られる。
【0108】
5.硬化物および硬化物付基板
本組成物から得られる硬化物は、耐熱性に優れると共にヒートサイクル試験後のクラック耐性に優れ、製造工程中の基板加工適性にも優れるので、金属張積層板、プリント配線板をはじめとする各種部品の硬化物、或いはこの硬化物を含む硬化物付基板として好適である。
【0109】
金属張積層板は、例えば、本組成物を用いて絶縁層を形成し、絶縁層と金属層を積層するプロセス等を経て得られる。この絶縁層には、本組成物から形成された接着シート、プリプレグが好適に用いられる。例えば、金属層と本組成物を用いて形成したプリプレグを積層した後、加熱圧着により硬化処理工程を行うことにより、金属張積層板が得られる。加熱圧着工程は、公知の方法を利用できる。例えば、120~250℃の温度で0.5~10MPaの圧力で、0.5~5時間熱プレスすることにより行われる。
【0110】
金属張積層板の積層構成としては、金属層/硬化層の2層の積層体、金属層/硬化層/金属層の複層からなる積層体、或いは金属層/硬化層/金属層/硬化層/金属層等の交互に積層された多層構造を有する金属張積層板が例示できる。また、本組成物より形成した硬化層以外の絶縁層が積層体に含まれていてもよい。また、硬化層の厚みを調整するためにプリプレグ等を複数枚重ねて硬化させてもよい。また、金属層以外の導電層が積層されていてもよい。
【0111】
例えば、金属層/硬化層/金属層の層構成を有する金属張積層板は、硬化層の両主面上に形成された金属層に回路パターンを形成することにより、回路パターン層を有する回路基板を得ることができる。硬化層には、レーザー等によりスルーホールやビアを形成してもよい。コア基板にビルドアッププロセスによって、絶縁硬化層を重ね合わせてビアを形成し、多層化してもよい。回路基板は、例えば、サブトラクティブ法により金属張積層板の金属層を所望の回路パターンに形成する方法や、アディティブ法により絶縁層の片面または両面に所望の回路パターンを形成することにより得ることができる。
【0112】
金属層としては銅箔などが用いられる。銅張積層板では、銅箔面に電解銅めっきを行い、レジスト層を除去した後にアルカリ性等のめっき液でエッチングする工程がある。本組成物は、めっき液耐性等の基板加工適性に優れるので銅張積層板用途に好適である。更に、本硬化物は硬化物のヒートサイクル試験後のクラック耐性および耐熱性に優れるので、本組成物を硬化して形成される硬化物を含む硬化物付基板は様々な環境下で幅広い用途に利用できる。
【0113】
プリント配線板は、例えば、銅張積層板における銅箔をエッチング等によって加工し、信号回路等を形成して得た基板とカバーフィルムとを接着シートを介して貼り合わせ、硬化処理工程等を経て製造できる。また、例えば、絶縁性のフレキシブルフィルム上に導体パターンを形成し、その上に本接着シートを介して保護膜を形成し、熱圧着する工程等を経てフレキシブルプリント配線板を製造できる。前記フレキシブルフィルムとしては、ポ
リエステル、ポリイミド、液晶ポリマー、PTFEフィルムが例示できる。導体パターンは、プリント技術により形成する方法、スパッタリングおよびめっきによる方法が例示できる。
【0114】
プリント配線板の片面または両面に形成された本組成物の硬化層に対し、ドリル加工あるいはレーザー加工などにより開口部を設け、導電剤を充填してビアを形成してもよい。また、本組成物の硬化層上に回路層を形成することもできる。本組成物の硬化物はめっき液耐性に優れるので多層プリント配線板の製造に好適である。本組成物を用いて形成されたプリント配線板は、優れた加工適性を有し、耐熱性およびヒートサイクル試験後のクラック耐性に優れるので、スマートフォンやタブレット端末等の各種電子機器に好適である。
【0115】
本組成物のブロックポリマー(A)は電気絶縁性に優れるので、硬化性化合物に絶縁性材料を用いることで絶縁性に優れた硬化物を提供できる。例えば、回路基板上の絶縁層形成材料(プリント配線板のカバーレイ層、ビルトアップ基板等の層間絶縁層、ボンディングシート等を含む)等として好適に用いられる。また、熱伝導性フィラーなどのフィラーにおいて導電性材料を用いることにより、電子部品の導電性部材に利用することも可能である。電子部品は、例えば、パワー半導体装置、LED、インバーター装置等のパワーモジュールが例示できる。
【0116】
更に、本組成物の硬化物に、無機フィラーとして例えば熱伝導性フィラーを配合することにより、放熱性が求められる用途全般に適用できる。例えば、樹脂組成物の成形性を利用して、所望の形状の放熱部品として好適に利用できる。特に、軽薄短小化のために、ファンやヒートシンクを設置できない電子機器(スマートフォン、ダブレット端末等)、電池用外装材の放熱性接着材や放熱性シートとして有用である。また、本組成物の硬化物は、発熱体とヒートシンクとの接着層、或いはヒートスプレッダーとして好適である。また、基板上に搭載された一種または複数の電子部品を被覆する放熱層として適用できる。
【実施例0117】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。実施例及び比較例中の部、%は、特に指定がない場合は質量部、質量%を意味し、RHは相対湿度を意味する。
【0118】
<重量平均分子量(Mw)の測定方法>
Mwの測定は東ソー株式会社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「HPC-8020」を用いた。GPCは溶媒(THF;テトラヒドロフラン)に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーである。本発明における測定は、カラムに「LF-604」(昭和電工株式会社製:迅速分析用GPCカラム:6mmID×150mmサイズ)を直列に2本接続して用い、流量0.6ml/分、カラム温度40℃の条件で行い、重量平均分子量(Mw)の決定はポリスチレン換算で行った。
【0119】
<ガラス転移温度(Tg)の測定>
得られた接着シートについて、株式会社島津製作所製「示差走査熱量計DSC-60 PLUS」を用いて、開始温度25℃、終了温度250℃、昇温速度10.0℃/分の条件にて、試料10mgを用いて、1回目の昇温後に開始温度まで急冷し、同条件で2サイクル目に測定した時のピーク値から測定行った。ブロックポリマーの(A1)(A2)それぞれの成分由来のTgが2つ観測され、Tg1はポリイミドユニット(A1)由来のガラス転移点、Tg2はエチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(A2)由来のガラス転移点を示している。なお、ポリイミドユニット(A1)で同様の測定を行ってポリイミドユニット(A1)のTgを確認し、ブロックポリマー(A)の2つのTgのうち、ポリイミドユニット(A1)のTgと同温度の方をTg1であると判断した。
【0120】
実施例中で使用する化合物の略称は、次の通りである。
DDA:製品名 プリアミン1075(クローダジャパン社製)
DABPAF:2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(セイカ化学社製)
6FDA:2,2-ビス(3,3’,4,4’-テトラカルボキシフェニル)(セイカ社製)
MCTC:5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物(東京化成社製)
BISDA:4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物(SABIC製)
St:スチレン(東京化成社製)
t-BuSt:ターシャリーブチルスチレン(東京化成社製)
4-MeSt:4-メチルスチレン(東京化成社製)
α-MeSt:α―メチルスチレン(東京化成社製)
4-FSt:4-フルオロスチレン(東京化成社製)
CF3St:4-トリフルオロメチルスチレン(東京化成社製)
DVB:ジビニルベンゼン(東京化成社製)
MMA:メチルメタクリレート(東京化成社製)
BA:n-ブチルアクリレート(東京化成社製)
タフテックM1913:水添スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS)(旭化成社製)
【0121】
(合成例1)ポリイミドユニット(A1-1)の合成
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、ジメチルホルムアミド(DMF)240部、6FDA46.8部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら100℃まで昇温した。DDA53.2部を1時間かけて滴下した後140℃に昇温して14時間脱水反応を行い、さらに、180℃まで加温して溶剤を除去して、重量平均分子量約39,300のポリイミドユニット(A-1)を得た。樹脂固形分濃度は60%であった。
【0122】
(合成例2~7)ポリイミドユニット(A1-2)~(A1-7)の合成
表1に記載の単量体を用いた以外は、合成例1と同様の方法によりポリイミドユニット(A1-2)~(A1-7)を得た。得られたポリイミドユニットのMwおよびTgを表1に示す。
【0123】
【表1】
【0124】
[実施例1]ブロックポリマー(A-1)の合成
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、ポリイミドユニット(A1-1)100部、2-アミノエタンチオール0.75部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら100℃まで昇温した。2時間後、140℃に昇温して14時間脱水反応を行い、室温まで冷却した。その後、スチレン36部を仕込み100℃まで昇温した。昇温後、AIBN0.36部を添加して、7時間反応させた。その後溶剤を適宜添加して、重量平均分子量約46,800の(A2)-(A1)-(A2)型トリブロックポリマーである、ブロックポリマー(A-1)を得た。樹脂固形分濃度は50%であった。
【0125】
[実施例2~15、比較例1、2]ブロックポリマー(A-2)~(A-15)、(A’-1)、(A’-2)の合成
表2に記載のポリイミドユニット、単量体を用いた以外は、合成例4と同様の方法により(A-2)~(A-15)、(A’-1)、(A’-2)を得た。得られたブロックポリマーのMwおよびTg1、Tg2を表2に示す。
【0126】
【表2】
【0127】
[実施例16]樹脂組成物(ワニス)の調製
固形分換算で実施例1のブロックポリマー(A-1)を100部、硬化性化合物(B-3)を400部、硬化助剤としてC-1を1部、容器に仕込み、不揮発分濃度が25%になるように混合溶剤(トルエン:メチルエチルケトン(MEK)=1:1(質量比))を加え、ディスパーで10分攪拌して実施例16に係るワニスを調製した。
【0128】
[実施例17~38、比較例3~7]
表3、4に記載の配合成分および配合量に変更する以外は実施例16と同様の方法により、実施例17~38、比較例3~7に係るワニスを調製した。
【0129】
実施例および比較例で使用した材料を以下に示す。
(硬化性化合物)
B-1:エポキシ化合物(b1)、XD-1000(日本化薬社製、ジシクロペンタジエン型エポキシ、多官能、官能基当量:252g/eq)
B-2:シアネートエステル化合物(b2)、BAD(三菱ガス化学社製、ビスフェノールA型シアン酸エステル、2官能、官能基当量:139g/eq、分子量278)
B-3:マレイミド化合物(b3)、BMI‐3000(大和化成工業社製、ビスフェノール A ジフェニルエーテルビスマレイミド、2官能、官能基当量:285.3g/eq、分子量570.6)
B-4:ポリフェニレンエーテル化合物(b4)、Noryl(登録商標)SA9000(SABIC社製、メタクリレート基含有ポリフェニレンエーテル、2官能、官能基当量:850g/eq)
B-5:ナジイミド化合物(b5)、BANI―M(丸善石油化学社製、ビスアリルナジイミド、2官能、官能基当量:286g/eq)
B-6:フェノール樹脂、H-4(明和化成社製、官能基当量107g/eq)
B-7:ドデカン二酸ジヒドラジド(東京化成社製)
(硬化助剤C)
C-1:パーミクルD(日油社製、ジクミルペルオキシド、ラジカル開始剤)
C-2:2-フェニル-4-メチルイミダゾール(東京化成社製、触媒)
(無機フィラー)
無機フィラー1:AO-509(アドマテックス社製、アルミナ)
【0130】
<評価サンプルの作製>
1.接着シートの作製
各例の樹脂組成物(ワニス)を、ドクターブレードを使用して乾燥後の厚さが50μmとなるように、厚さ50μmの重剥離フィルム(重離型剤がコーティングされたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム)上に均一塗工して100℃で2分乾燥させた。その後、室温まで冷却し、片面剥離フィルム付き接着シートを得た。次いで、得られた片面剥離フィルム付き接着シートの接着シート面を厚さ50μmの軽剥離フィルム(軽離型剤がコーティングされたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム)に重ね合わせ、重剥離フィルム/接着シート/軽剥離フィルムからなる両面剥離フィルム付き接着シートを得た。
【0131】
2.銅張り積層板の製造
上記方法で得た両面剥離フィルム付き接着シートから軽剥離フィルムを剥がし、露出した接着シート面を、50μmのポリイミドフィルムと12μmの銅箔とが積層されてなる片面銅張積層板の銅箔側に真空ラミネーター(ニチゴーモートン社製、小型加圧式真空ラミネーターV-130)で仮接着した。なお、真空ラミネート条件は加熱温度100℃、真空時間60秒、真空到達圧2hPa、圧力0.4MPa、加圧時間60秒とした。
次いで、重剥離フィルムを剥がし、露出した接着シート面に、2枚目の片面銅張積層板のポリイミド側を同様に真空ラミネーターにて仮接着した後、真空熱プレスにて200℃、2時間、2MPaで、接着シートを熱硬化させ、ポリイミドフィルム/銅箔/接着シートの硬化物/ポリイミドフィルム/銅箔フィルムという積層構成の評価用サンプルを作製した。
【0132】
<評価>
α.耐熱性
各例で作製した銅張り積層板を、幅10mm、長さ65mmに切り出してから、試験片を各種条件で保管し、その後、各種温度にて溶融半田に銅箔面を接触させて1分間浮かべた。その後、試験片の外観を目視で観察し、硬化後接着層の発泡、浮き、剥がれ等の接着異常の有無を評価した。この試験は、半田接触時における硬化後接着層の熱安定性を外観で評価するものである。耐熱性の良好なものは外観が変化しないのに対して、耐熱性の悪いものは、半田処理後に発泡や剥がれが発生する。これらの評価結果を次の基準で判断した。
A:40℃90%RHの雰囲気下で24時間保管した試験片を、280℃の溶融半田に浮かべた際には外観変化なし。
B:上記Aを満たさない。23℃50%RHの雰囲気下で24時間保管した試験片を、280℃の溶融半田に浮かべた際には外観変化なし。
C:上記A、Bを満たさない。23℃50%RHの雰囲気下で24時間保管した試験片を、260℃の溶融半田に浮かべた際には外観変化なし。
D:上記A~Cを満たさない。23℃50%RHの雰囲気下で24時間保管した試験片を、240℃の溶融半田に浮かべた際には外観変化なし。
E:23℃50%RHの雰囲気下で24時間保管した試験片を、240℃の溶融半田に浮かべたときに外観変化がある。実用上問題がある。
【0133】
β.誘電特性
両面剥離フィルム付き接着シートを、23℃50%RHの雰囲気下で24時間以上保管後、剥離フィルムを剥がし同温湿度環境下、エー・イー・ティー社製の誘電率測定装置を用い、空洞共振器法により、測定周波数10GHzにおける誘電正接(Df)を求めた。A:Dfが0.0015未満
B:Dfが0.0015以上、0.0020未満
C:Dfが0.0020以上、0.0030未満
D:Dfが0.0030以上、0.0040未満
E:Dfが0.0040以上、0.0045未満
F:Dfが0.0045以上。実用上問題がある。
【0134】
γ.応力緩和性(クラック耐性)の特性評価
L/S=25μm/25μmであり、銅の厚みがそれぞれ25μmと50μmである回路パターンが形成されたガラス布基材エポキシ樹脂銅張積層板を内層回路基板として用意した。その両面に、上記方法により作製した各例の樹脂シートを200℃、3.0MPa、2時間の条件で真空加熱プレスし、最後に両側の最外層に銅箔を配置することで評価用プリント配線板を得た。
そして、評価用プリント配線板を冷熱衝撃装置(「TSE‐11‐A」、エスペック社製)に投入し、高温さらし:125℃、15分、低温さらし:-50℃、15分の曝露条件にて交互曝露を所定回数実施した。評価用プリント配線板を切断し、露出した断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により5000倍の倍率でクラックの有無を観察した。なお、クラックとは0.1μm以上のサイズの罅をいうものとする。評価基準は以下の通りである。
A:3000回のヒートサイクル試験後、クラックが発生しない。極めて良好な結果である。
B:上記Aを満たさない。1000回のヒートサイクル試験後、クラックが発生しない。とても良好な結果である。
C:上記A、Bを満たさない。200回のヒートサイクル試験後、クラックが発生しない。良好な結果である。
D:上記A~Cを満たさない。100回のヒートサイクル試験後、クラックが発生しない
。ある程度良好な結果である。
E:100回のヒートサイクル試験後にクラックが観察される。実用上問題がある。
【0135】
【表3】
【0136】
【表4】
【手続補正書】
【提出日】2024-04-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミドユニット(A1)と、エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(A2)とを有するブロックポリマー(A)と硬化性化合物(B)とを含み、更に任意で無機フィラーを含む樹脂組成物であって、
ポリイミドユニット(A1)は、一般式(1):
【化1】

(Xは、繰り返し単位毎にそれぞれ独立に4価のテトラカルボン酸残基であり、Xは繰り返し単位毎にそれぞれ独立に2価の有機基であり、前記Xとイミド結合が互いに結合して2つのイミド環を形成する。)
で表される構造の繰り返し単位を有し、
ポリイミドユニット(A1)は、ダイマージアミンおよび/またはダイマージイソシアネートに由来する残基Xdを有し、
エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(A2)は、(A2)を構成する単量体に一般式(2):
【化2】
(R1~R6はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1から18までの直鎖もしくは分岐骨格を有する炭化水素基、フッ素原子、または炭素数1から12までのフッ化アルキル基を表す。)
で表される単量体を含み、
硬化性化合物(B)が、エポキシ化合物(b1)、シアネートエステル化合物(b2)、マレイミド化合物(b3)、ポリフェニレンエーテル化合物(b4)およびナジイミド化合物(b5)からなる群より選択される少なくとも一種であることを特徴とする、樹脂組成物
ただし、ブロックポリマー(A)は、エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(A2)が分子内に水酸基、カルボキシ基、エポキシ基、イソシアネート基およびそのブロック体から選択される架橋基を1つ以上有するものを除く。
【請求項2】
エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(A2)のガラス転移温度が、ポリイミドユニット(A1)のガラス転移温度より高いことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物
【請求項3】
ポリイミドユニット(A1)は、ポリイミドユニット(A1)を構成する前記X2全体を100モル%としたときに、前記ダイマージアミンおよび/またはダイマージイソシアネートに由来する残基X2dを60~100モル%含有することを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物
【請求項4】
エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(A2)の含有率が、ブロックポリマー(A) の全質量を基準として、10~50質量%である請求項1に記載の樹脂組成物
【請求項5】
樹脂組成物から不揮発成分を除いた100質量%中に、ブロックポリマー(A)を1~40質量%含有することを特徴とする請求項1~4いずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
基材と、前記基材上に設けられた、請求項5記載の樹脂組成物で形成された樹脂組成物層とを含む、積層シート。
【請求項7】
請求項5記載の樹脂組成物を基材に含浸させたプリプレグ。
【請求項8】
請求項5記載の樹脂組成物から得られる硬化物。
【請求項9】
基板上に請求項に記載の硬化物を有する硬化物付基板。
【請求項10】
請求項に記載の硬化物付基板を搭載した電子機器。