IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧 ▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社ミライズテクノロジーズの特許一覧

特開2024-180281対象物の位置を推定する方法、プログラム、および、対象物位置推定装置
<>
  • 特開-対象物の位置を推定する方法、プログラム、および、対象物位置推定装置 図1
  • 特開-対象物の位置を推定する方法、プログラム、および、対象物位置推定装置 図2
  • 特開-対象物の位置を推定する方法、プログラム、および、対象物位置推定装置 図3
  • 特開-対象物の位置を推定する方法、プログラム、および、対象物位置推定装置 図4
  • 特開-対象物の位置を推定する方法、プログラム、および、対象物位置推定装置 図5
  • 特開-対象物の位置を推定する方法、プログラム、および、対象物位置推定装置 図6
  • 特開-対象物の位置を推定する方法、プログラム、および、対象物位置推定装置 図7
  • 特開-対象物の位置を推定する方法、プログラム、および、対象物位置推定装置 図8
  • 特開-対象物の位置を推定する方法、プログラム、および、対象物位置推定装置 図9
  • 特開-対象物の位置を推定する方法、プログラム、および、対象物位置推定装置 図10
  • 特開-対象物の位置を推定する方法、プログラム、および、対象物位置推定装置 図11
  • 特開-対象物の位置を推定する方法、プログラム、および、対象物位置推定装置 図12
  • 特開-対象物の位置を推定する方法、プログラム、および、対象物位置推定装置 図13
  • 特開-対象物の位置を推定する方法、プログラム、および、対象物位置推定装置 図14
  • 特開-対象物の位置を推定する方法、プログラム、および、対象物位置推定装置 図15
  • 特開-対象物の位置を推定する方法、プログラム、および、対象物位置推定装置 図16
  • 特開-対象物の位置を推定する方法、プログラム、および、対象物位置推定装置 図17
  • 特開-対象物の位置を推定する方法、プログラム、および、対象物位置推定装置 図18
  • 特開-対象物の位置を推定する方法、プログラム、および、対象物位置推定装置 図19
  • 特開-対象物の位置を推定する方法、プログラム、および、対象物位置推定装置 図20
  • 特開-対象物の位置を推定する方法、プログラム、および、対象物位置推定装置 図21
  • 特開-対象物の位置を推定する方法、プログラム、および、対象物位置推定装置 図22
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180281
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】対象物の位置を推定する方法、プログラム、および、対象物位置推定装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/931 20200101AFI20241219BHJP
   G01S 13/86 20060101ALI20241219BHJP
   G01S 7/32 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
G01S13/931
G01S13/86
G01S7/32 220
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024064338
(22)【出願日】2024-04-12
(31)【優先権主張番号】P 2023098261
(32)【優先日】2023-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北山 敦史
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB17
5J070AC02
5J070AC06
5J070AC13
5J070AC19
5J070AD02
5J070AE01
5J070AE09
5J070AF03
5J070AH12
5J070AH14
5J070AH31
5J070AH35
5J070BA01
5J070BB04
5J070BB05
5J070BD08
5J070BF21
(57)【要約】
【課題】対象物の位置の変更の影響を受けない、対象物の検知の技術の提供。
【解決手段】周波数と強度が表された分布である周波数分布を、連続する二回の送信波の分得る第1周波数処理工程と、ミリ波レーダ10の位置を基準とする距離と速度の組み合わせのセルに対して強度が表された分布である強度分布を得る工程と、強度分布において予め定められた閾値よりも大きい強度を有する一つ以上のセルを抽出し一つ以上の測距点APFを生成する第1検出工程と、測距点が属する対象物の種別を予測する予測工程と、対象領域TAにおいて変更閾値を設定する閾値変更工程と、対象領域において変更閾値よりも大きい強度が表された複数のセルを抽出し、複数のセルに基づいてミリ波レーダの位置を基準とする位置が表された複数の測距点を生成する第2検出工程と、ミリ波レーダの位置を基準とした対象物の位置を推定する対象物位置推定工程とを備える。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の位置を推定する方法であって、
ミリ波レーダ(10)から変調された送信波(TW)を送信し、前記送信波が対象物に反射して生じる反射波(RW)を受信して得られた信号に基づいて得られるデジタル信号をFFTすることで、周波数と強度が表された分布である周波数分布を、連続する少なくとも二回の前記送信波の分得る、第1周波数処理工程と、
前記連続する少なくとも二回の前記送信波に対応する少なくとも二つの周波数分布に対してドップラーFFTすることで、前記ミリ波レーダの位置を基準とする距離と速度の組み合わせのセルに対して、強度が表された分布である強度分布を得る第2周波数処理工程と、
前記強度分布において、予め定められた閾値よりも大きい強度を有する一つ以上のセルを抽出し、前記セルに基づいて、前記ミリ波レーダの位置を基準とする位置が表された一つ以上の測距点(APF)を生成する第1検出工程と、
画像生成装置(20)によって取得された、前記対象物を含む画像データに基づいて、前記測距点が属する対象物の種別を予測する予測工程と、
抽出された前記セルのそれぞれについて、前記強度分布の前記セルを包含する前記予測された前記対象物の種別に基づいて定められる範囲を有する対象領域(TA)において、変更閾値を設定する閾値変更工程と、
前記対象領域において、前記変更閾値よりも大きい強度が表された複数のセルを抽出し、前記複数のセルに基づいて、前記ミリ波レーダの位置を基準とする位置が表された複数の測距点を生成する第2検出工程と、
前記複数の測距点に基づいて、前記ミリ波レーダの位置を基準とした前記対象物の位置を推定する対象物位置推定工程と、を備える、対象物の位置を推定する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の対象物の位置を推定する方法であって、
前記対象物位置推定工程において、さらに、推定された前記対象物の位置、および画像生成装置によって取得された前記対象物を含む画像データに基づいて、前記対象物の大きさ、種別、向き、および速度と、のうち、一つ以上を推定し、
さらに、前記推定した情報を記憶装置(300)が記憶する工程を備える、対象物の位置を推定する方法。
【請求項3】
請求項1に記載の対象物の位置を推定する方法であって、
前記第1検出工程において、
前記強度分布に対して、一定誤警報確率処理を行って、予め定められた閾値よりも大きい強度を有する前記セルを抽出する、対象物の位置を推定する方法。
【請求項4】
請求項2に記載の対象物の位置を推定する方法であって、
前記対象物位置推定工程において、少なくとも前記対象物の種別が推測され、
一回目の前記予測工程において、
前記測距点の前記ミリ波レーダの位置を基準とする位置と、前記画像データと、に基づいて、前記対象物の種別を予測し、
二回目以降の前記予測工程において、
前記測距点の前記ミリ波レーダの位置を基準とする位置と、前回の処理において推定された前記対象物の位置と、が予め定められた距離よりも近い位置にいる場合に、前回の処理において推定された前記対象物の種別を、前記測距点が属する前記対象物の種別であると予測し、
前記測距点の前記ミリ波レーダの位置を基準とする位置と、前回の処理において推定された前記対象物の位置と、が予め定められた距離よりも近い位置にいない場合に、処理を終了する、対象物の位置を推定する方法。
【請求項5】
請求項1に記載の対象物の位置を推定する方法であって、
前記閾値変更工程において、
【数7】
の式に従って求められる前記反射波の電力の強度を、前記変更閾値として算出し、
式で用いるレーダ反射断面積は、前記対象物の種別に応じて予め定められた値に対して変更された値であり、
前記変更された値は、
前記対象物が車両の場合、-5dBsmから+5dBsmの範囲内の値であり、
前記対象物が生物の場合、-15dBsmから-5dBsmの範囲内の値である、対象物の位置を推定する方法。
【請求項6】
請求項1に記載の対象物の位置を推定する方法であって、
前記第2検出工程において生成された前記複数の測距点のそれぞれの、前記ミリ波レーダを基準とする位置と、速度と、前記反射波の受信電力の強度と、の情報のうち、一つ以上を、記憶部(141)が記憶する、対象物の位置を推定する方法。
【請求項7】
請求項1に記載の対象物の位置を推定する方法であって、
前記第2検出工程において、
前記複数の測距点からなる測距点群(RPC)の、前記ミリ波レーダを基準とする三次元における位置と、向きと、大きさと、速度と、のうち、一つ以上を演算する、対象物の位置を推定する方法。
【請求項8】
請求項1に記載の対象物の位置を推定する方法であって、
前記対象物位置推定工程において、
クラスタリングと、トラッキング処理と、HOGと、SIFTと、のいずれか、または2以上の組み合わせのアルゴリズム、または、機械学習によるアルゴリズムを用いる、対象物の位置を推定する方法。
【請求項9】
請求項1に記載の対象物の位置を推定する方法であって、
前記予測工程の実行後に実行される工程であって、
前記ミリ波レーダおよび前記画像生成装置についてあらかじめ決められた検出方向において、前記ミリ波レーダおよび前記画像生成装置が搭載された移動体が走行する路面の傾斜を表す傾斜情報を取得する傾斜取得工程と、
前記傾斜情報と、前記路面の前記傾斜の角度と前記反射波の強度との対応付けを予め定義した定義テーブル(Tbl)または関数と、を用いて、前記検出方向における距離ごとに、前記路面の前記傾斜が考慮された補正量(σ2)を取得する補正量取得工程と、
前記閾値変更工程において、前記補正量を用いて前記変更閾値を設定する、前記対象物の位置を推定する方法。
【請求項10】
請求項9に記載の対象物の位置を推定する方法であって、
前記傾斜取得工程において、前記一つ以上の測距点と、前記画像生成装置によって取得された前記画像データとの少なくとも一方を用いて前記傾斜情報を取得する、対象物の位置を推定する方法。
【請求項11】
請求項10に記載の対象物の位置を推定する方法であって、
前記傾斜取得工程において、前記距離ごとの、前記移動体を基準とする前記路面の高低差を前記傾斜情報として取得する、対象物の位置を推定する方法。
【請求項12】
請求項11に記載の対象物の位置を推定する方法であって、
前記補正量取得工程において、
前記対象物の種別に応じて予め定められた前記レーダ反射断面積である第1レーダ反射断面積(σ1)と、前記傾斜に応じた前記路面の前記レーダ反射断面積である第2レーダ反射断面積(σ2)と、を取得し、
前記第1レーダ反射断面積と、前記第2レーダ反射断面積とを用いて、前記距離ごとの補正レーダ反射断面積を取得する、
対象物の位置を推定する方法。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項14】
対象物位置推定装置(1)であって、
変調された送信波を送信するミリ波レーダであって、
前記送信波が対象物に反射して生じる反射波を受信して得られた信号に基づいて得られるデジタル信号をFFTすることで、周波数と強度が表された分布である周波数分布を、連続する少なくとも二回の前記送信波の分、得る演算処理部であって、前記連続する少なくとも二回の前記送信波に対応する少なくとも二つの周波数分布に対してドップラーFFTすることで、前記ミリ波レーダの位置を基準とする距離と速度の組み合わせのセルに対して、強度が表された分布である強度分布を得る、演算処理部(143)と、
前記強度分布において予め定められた閾値よりも大きい強度を有する前記セルに基づいて、前記ミリ波レーダの位置を基準とする位置が表された一つ以上の測距点を生成する第1検出部(146a)と、
画像生成装置によって取得された、前記対象物を含む画像データに基づいて、前記測距点が属する対象物の種別を予測する予測部(146b)と、
抽出された前記セルのそれぞれについて、前記強度分布において、前記セルを包含する、前記予測された前記対象物の種別に基づいて定められる範囲を有する対象領域において、変更閾値を設定する閾値変更部(146c)と、
前記対象領域において、前記変更閾値よりも大きい強度が表された複数のセルを抽出し、前記複数のセルに基づいて、前記ミリ波レーダの位置を基準とする位置が表された複数の測距点を生成する第2検出部(146d)と、
前記複数の測距点に基づいて、前記ミリ波レーダの位置を基準とした前記対象物の位置を推定する位置推定部(331)と、を備える、
対象物位置推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、対象物の位置を推定する方法、プログラム、および対象物位置推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1において、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)レーダ装置を用いて物標の検知を行うとともに、カメラを用いて、物標の種別や、材質や、大きさ等の属性情報を求めることで、物標の識別を行う物標識別方法が開示されている。この物標識別方法において、カメラを用いて取得された、処理の前サイクルにおける物標の位置や属性の情報をもとに、今サイクルにおける物標の位置が前サイクルの物標の位置と一致するかが判断される。一致した場合、今サイクルの測定でピークが存在すると考えらえる周波数である予測周波数を求める。そして、予測周波数付近の周波数成分の抽出しきい値を、属性に基づいて変更する。
【0003】
物標が車両である場合、車両からの反射波に基づくピークが検出されることが予測される周波数領域では、抽出しきい値が高く設定される。これにより、ノイズにより生じた抽出する必要のないピークを抽出することを防止することができる。物標が非車両である場合、非車両からの反射波に基づくピークが検出されることが予測される周波数領域では、抽出しきい値が低く設定される。反射波の信号強度が小さくても、抽出すべきピークを確実に抽出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-191131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1においては、前サイクルの認識物標の位置と、対象物標情報から特定される物標の位置とが一致しなければ、処理が終了される。そのため、物標の位置の変更の影響を受けない物標の検知が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
本開示の一形態によれば対象物の位置を推定する方法が提供される。この対象物の位置を推定する方法において、ミリ波レーダ(10)から変調された送信波(TW)を送信し、前記送信波が対象物に反射して生じる反射波(RW)を受信して得られた信号に基づいて得られるデジタル信号をFFTすることで、周波数と強度が表された分布である周波数分布を、連続する少なくとも二回の前記送信波の分得る、第1周波数処理工程と、前記連続する少なくとも二回の前記送信波に対応する少なくとも二つの周波数分布に対してドップラーFFTすることで、前記ミリ波レーダの位置を基準とする距離と速度の組み合わせのセルに対して、強度が表された分布である強度分布を得る第2周波数処理工程と、前記強度分布において、予め定められた閾値よりも大きい強度を有する一つ以上のセルを抽出し、前記セルに基づいて、前記ミリ波レーダの位置を基準とする位置が表された一つ以上の測距点(APF)を生成する第1検出工程と、画像生成装置(20)によって取得された、前記対象物を含む画像データに基づいて、前記測距点が属する対象物の種別を予測する予測工程と、抽出された前記セルのそれぞれについて、前記強度分布の前記セルを包含する前記予測された前記対象物の種別に基づいて定められる範囲を有する対象領域(TA)において、変更閾値を設定する閾値変更工程と、前記対象領域において、前記変更閾値よりも大きい強度が表された複数のセルを抽出し、前記複数のセルに基づいて、前記ミリ波レーダの位置を基準とする位置が表された複数の測距点を生成する第2検出工程と、前記複数の測距点に基づいて、前記ミリ波レーダの位置を基準とした前記対象物の位置を推定する対象物位置推定工程と、を備える。
【0008】
この形態の対象物の位置を推定する方法によれば、予測される対象物の種別に基づいて定められる範囲を有する対象領域TAにおいて、変更閾値が設定されるため、予測される対象物の位置に基づいて変更閾値が設定される態様と比較して正確に対象物の位置を推定することができる。また、対象物の大きさと、種別と、向きと、速度と、のうち一つ以上が推定されることで、それらが推定されない態様と比較して、対象物の位置を正確に推定することができる。
【0009】
本開示の他の形態によれば、対象物位置推定装置が提供される。この対象物位置推定装置において、変調された送信波を送信するミリ波レーダであって、前記送信波が対象物に反射して生じる反射波を受信して得られた信号に基づいて得られるデジタル信号をFFTすることで、周波数と強度が表された分布である周波数分布を、連続する少なくとも二回の前記送信波の分、得る演算処理部(143)であって、前記連続する少なくとも二回の前記送信波に対応する少なくとも二つの周波数分布に対してドップラーFFTすることで、前記ミリ波レーダの位置を基準とする距離と速度の組み合わせのセルに対して、強度が表された分布である強度分布を得る、演算処理部と、前記強度分布において予め定められた閾値よりも大きい強度を有する前記セルに基づいて、前記ミリ波レーダの位置を基準とする位置が表された一つ以上の測距点を生成する第1検出部(146a)と、画像生成装置によって取得された、前記対象物を含む画像データに基づいて、前記測距点が属する対象物の種別を予測する予測部(146b)と、抽出された前記セルのそれぞれについて、前記強度分布において、前記セルを包含する、前記予測された前記対象物の種別に基づいて定められる範囲を有する対象領域(TA)において、変更閾値を設定する閾値変更部(146c)と、前記対象領域において、前記変更閾値よりも大きい強度が表された複数のセルを抽出し、前記複数のセルに基づいて、前記ミリ波レーダの位置を基準とする位置が表された複数の測距点を生成する第2検出部(146d)と、前記複数の測距点に基づいて、前記ミリ波レーダの位置を基準とした前記対象物の位置を推定する位置推定部(331)と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態の対象物位置推定装置が搭載される車両を示した図。
図2】対象物位置推定装置を説明する図。
図3】信号処理部と中央演算装置を説明するブロック図。
図4】強度分布の一例を説明する図。
図5】二次元の一定誤警報確率処理を説明する図。
図6】一定誤警報確率処理により抽出されたセルを表した図。
図7図4の強度分布の、ミリ波レーダを基準とする速度が0Km/hの、各セルの距離と強度と、を表した分布。
図8】変更閾値が設定されることにより抽出されたセルを説明する図。
図9】対象物の位置を推定する方法の一例を示すフローチャート。
図10】ミリ波レーダを基準とする測距点の位置を表した図。
図11】変更閾値の設定により抽出されたセルを表した図。
図12】第2検出工程により生成された複数の測距点からなる測距点群を表した図。
図13】物標までの距離に応じた反射波の受信電力を物標の種別ごとに表す説明図。
図14】車両および傾斜が-15度の路面それぞれの反射波の受信電力の分布を示す説明図。
図15】路面の傾斜に応じたレーダ反射断面積の変化を示す説明図。
図16】定義テーブルの一例を示す説明図。
図17】レーダ反射断面積σ2の決定方法についての説明図。
図18】レーダ反射断面積σ2の決定方法についての説明図。
図19】第2実施形態にかかる対象物の位置を推定する方法の一例を示すフローチャート。
図20】設定された変更域値を示す説明図。
図21】第2実施形態における変更域値の設定方法の利点を説明する図。
図22】路面の傾斜を考慮することのメリットについての説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
A.第1実施形態:
A1.第1実施形態の構成:
図1に示す対象物位置推定装置1は、周囲の対象物の位置を推定する。本実施形態において、対象物位置推定装置1は、図1に示すように車両VWに設置され、車両VWの周囲の対象物の位置を推定する。本実施形態においては、対象物位置推定装置1は、対象物の位置に加えて、対象物の大きさや、種別や、進行の向きや、速度等を推定する。図1において、車両VWの前後方向をY軸、原点Oを通り車両VWの幅の方向をX軸とし、原点Oを通り鉛直の方向をZ軸として表している。なお、図を見やすくするために、原点Oを通っていない位置に軸を表している。車両VWの前方を+Y方向、車両VWの右方向を+X方向、鉛直情報を+Z方向とする。原点Oについては後に説明する。図1に示すように、対象物位置推定装置1は、ミリ波レーダ10と、画像生成装置20と、中央演算装置30と、を備える。ミリ波レーダ10と、画像生成装置20は、それぞれ中央演算装置30と電気的に接続しており、信号やデータの送受信が可能である。
【0012】
ミリ波レーダ10は、周波数が変調されたミリ波帯の電磁波を送受信することにより、車両VWの周囲の物体を認識し、ミリ波レーダ10を基準とする物体の位置を検出する。本実施形態における物体とは、例えば他の車両や、歩行者や、自転車や、建物や植物等である。本明細書における「対象物」も同様である。ミリ波レーダ10は、ある一定の時間ごとに電磁波を繰り返し送信する。図2に示すように、ミリ波レーダ10は、送信信号生成部100と、送信部110と、受信部120と、デジタル信号生成部130と、信号処理部140と、を備えている。
【0013】
送信信号生成部100は、変調されたミリ波帯の電磁波を生成する。具体的には、送信信号生成部100は、周波数が時間に対して線形なチャープ信号である送信信号を生成する。送信部110は、送信信号を電磁波として空間に放射する。以下において、送信信号によって送信された電磁波のことを、「送信波TW」と表記する。また、以下において、送信波TWが放射される位置を図1に示すように「原点O」と表記する。図2に示す送信部110は、アンテナである。送信部110が送信波TWを送信することができる領域は、図1に示す車両VWの前方、側方、斜め後方を含む、車両VWの周囲に存在する物体を含む領域である。図2に示す受信部120は、送信波TWが対象物に反射して生じる電磁波を受信信号として受信する。以下において、物体によって反射された電磁波のことを、「反射波RW」と表記する。受信部120は、アンテナである。
【0014】
デジタル信号生成部130は、受信信号に基づいて、デジタル信号を生成する。デジタル信号生成部130は、ミキサ131と、図示しないフィルタ部132と、アナログデジタル変換器133(ADC:Analog-to-Digital Converter)と、を備える。ミキサ131は、受信信号と、送信信号とをミキシングすることで、時間領域の複素信号として表されたビート信号を出力する。フィルタ部132は、ミキサ131の出力した信号から高周波成分を減衰させ、アナログデジタル変換器133におけるエイリアシングを抑制する。アナログデジタル変換器133は、フィルタ部132によって処理された信号を、時間領域のデジタル信号に変換して出力する。
【0015】
信号処理部140は、アナログデジタル変換器133が出力したデジタル信号に基づいて、送信波TWを反射した物体に関する情報を生成する処理を行う。図3に示すように、信号処理部140は、記憶部141と、インターフェイス142と、演算処理部143と、ROM144とRAM145と、CPU146と、と、を備えるコンピュータとして構成されている。記憶部141は、CPU146によって生成された複数の測距点APFのそれぞれの、ミリ波レーダ10を基準とする位置と、速度と、反射波RWの受信電力の強度等の情報を記憶する。測距点APFは、ミリ波レーダ10の位置を基準とする位置が表されている点である。より具体的には、測距点APFとは、対象物位置推定装置1が測距可能な範囲において、反射波RWによって特定される物体の、少なくとも一部が存在し得る位置を示す点を意味している。測距点APFの生成については後に説明する。インターフェイス142は、外部との信号の入出力を行う。
【0016】
演算処理部143は、FFT(Fast Fourier Transform)や、ドップラーFFTや、一定誤警報確率(CFAR:Constant False Alarm Rate)等の処理を行う。まず、FFTについて説明する。演算処理部143は、FFT処理において、反射波RWを受信して得られた受信信号に基づいて得られる、時間領域のデジタル信号を、周波数領域のデジタル信号へと変換して、周波数と信号の強度が表された周波数分布を得る。演算処理部143は、周波数分布から、物体の送信波TWが反射した部分と、ミリ波レーダ10との距離を算出可能である。演算処理部143は、周波数分布を、連続する少なくとも二回の送信波TWの分、得る。本実施形態においては、上述したように送信波TWが一定の間隔で繰り返し送信されるため、少なくとも二回以上の送信波TWのそれぞれに対応する周波数分布が生成される。本実施形態において、演算処理部143は、車両VWの走行の開始から終了までの間に送信された送信波TWの分、周波数分布を生成する。
【0017】
演算処理部143は、連続する少なくとも二回の送信波TWに対応する少なくとも二つの周波数分布に対してドップラーFFTする。具体的には、演算処理部143は、繰り返す送信波TWのそれぞれのFFT処理の出力に対してさらにFFT処理を行うことで、物体の送信波TWが反射した部分の速度の情報を得ることができる。これにより、演算処理部143は、ミリ波レーダ10の位置を基準とする距離と速度の組み合わせのセルに対して、強度が表された分布である強度分布を得る。
【0018】
図4は、後に説明する、対象物の位置を推定する方法において得られる強度分布であるが、一例として図4を用いて、強度分布について説明する。図4の横軸は、ミリ波レーダ10に対するセルの相対速度を表している。図4の縦軸は、ミリ波レーダ10の位置を基準とする、セルの距離を表している。本実施形態において、セルは、距離方向のサイズが33cm、速度方向のサイズが0.5km/hである。セルの距離方向および速度方向のサイズは、送信波の波形によって変更されることが可能である。セルのサイズは、距離方向において3、3cmから330cmの範囲で変更されることが可能であり、速度方向において0.05km/hから5km/hの範囲で変更されることが可能である。図4に示すように、それぞれのセルにおいて、受信信号の電力の強度が表されている。セルに付されたハッチングの濃さに比例して、強度が大きくなる。図4の強度分布においては、相対速度が0Km/h、距離が50m付近のセルにおいて、最も強度が大きくなっている。
【0019】
また、演算処理部143は、強度分布の強度に対して、一定誤警報確率処理を行って、予め定められた閾値よりも大きい強度を有するセルを抽出する。一定誤警報確率処理は、雨や雪等によって反射されて発生する、不要なノイズを誤って対象物であると検出する確率である誤警報確率が一定値になるように閾値を定めて、対象物を検出する手法である。本実施形態においては、歩行者や動物等の生物と、他車両や建物や信号機等の無生物と、の両方を検出することが可能な閾値が定められる。
【0020】
本実施形態においては、二次元の一定誤警報確率処理が実行される。二次元の一定誤警報確率処理について説明する。まず、演算処理部143が、下記の式1と式2によって、第1閾値を算出する。
【0021】
【数1】
【0022】
【数2】
【0023】
式1のPfaは、誤警報確率であり、予め定められる。本実施形態においては、誤警報確率は10-5である。NTcは、図5に示すセルTC(Training Cells)の総数である。セルTCは、試験セルCUT(Cell Under Tst)の周囲の複数のセル(Guard Cells)を除いた残りのセルである。式2のThresholdが、第1閾値である。
【0024】
次に、図5の工程PAに示すように、セルTCの領域の強度の平均値を算出する。試験セルCUTは、演算処理部143によって第1閾値よりも高いか否かの判定が行われているセルである。試験セルCUTは、図5においては、中央に位置するセルである。試験セルCUTの周囲の複数のセルGCの数は、変更されることが可能である。図5に示すセルの区画のサイズは、図4に示すセルと同じである。演算処理部143は、図5の矢印DAと矢印DBに示すように、試験セルCUTの全ての電力の総和の平均と、試験セルCUTの周囲の複数のセルGCを除いた残りのセルTCの電力の総和の平均と、から、式3によってSN値を算出する。本実施形態においては、試験セルCUTは1個であり、一つの試験セルCUTの電力と、セルTCの電力の総和の平均と、から、SN値を算出する。なお、例えば図5の試験セルCUTと、試験セルCUTと隣り合う8個のセルを合わせた9個のセルを、試験セルCUTとしてもよい。
【0025】
【数3】
【0026】
式3で算出したSN値が、式2で算出した閾値である第1閾値以上である場合、演算処理部143によって、その試験セルCUTが抽出される。演算処理部143は、全てのセルを、試験セルとして上述の処理を実行する。演算処理部143は、二次元の一定誤警報確率処理を図4に示す強度分布に対して行うことで、図6に示すように、セルを抽出している。なお、図6は、後に説明する対処物の位置を推定する方法において得られる強度分布であるが、一例として図6を用いて、抽出されたセルについて説明している。
【0027】
下記式4によって、SN値から、セルを抽出するために必要な電力の強度である、第1電力閾値が算出される。
【0028】
【数4】
【0029】
図7において、各セル同士の連なりを実線で表している。図7に示すように、演算処理部143は、予め定められた閾値である第1電力閾値よりも大きい強度を有するセルであるセルAとセルBと、を抽出する。第1電力閾値は、セルTCの電力の総和の平均に比例する。図7に示すセルBよりも距離が大きいセルにおいては、第1電力閾値の計算に、セルTCにセルAおよびセルBの電力が含まれるものがある。これにより、図7の実線枠Cに示すように、セルBよりも大きい距離における第1電力閾値が、セルAおよびセルBの距離における第1電力閾値の値よりも大きくなる。そのため、実線枠C内のセルは抽出されにくくなる。演算処理部143は、図4の強度分布の、ミリ波レーダ10を基準とする速度が0Km/h以外の速度の各セルに対しても、同様の処理を行う。
【0030】
図3に示すROM144は、信号処理部140の動作のためのプログラムを保持する。RAM145は、ROM144が記憶するプログラムを展開するメモリエリアを有している。CPU146は、ROM144に記憶されたプログラムをRAM145上に展開することで、種々の機能を実現する。本実施形態において、CPU146は、第1検出部146aと、予測部146bと、閾値変更部146cと、第2検出部146dとして機能する。
【0031】
第1検出部146aは、予め定められた閾値である第1電力閾値よりも大きい強度を有するセルに基づいて、ミリ波レーダ10の位置を基準とする位置が表された一つ以上の測距点APFを生成する。測距点APFには、さらに速度が表されている。本実施形態では、方位推定アルゴリズムであるMUSICを使用することで、ミリ波レーダ10を基準とした測距点APFの位置を推定する。
【0032】
予測部146bは、画像生成装置20によって取得された、対象物を含む画像データに基づいて、測距点APFが属する対象物の種別を予測する。本実施形態において、予測部146bによる対象物の種別の予測の方法は、二つある。一つ目の方法は、予測部146bが、測距点APFのミリ波レーダ10の位置を基準とする位置と、画像生成装置20が生成した画像データと、に基づいて、対象物の種別を予測する方法である。詳細には、予測部146bは、画像データ内の物体を、物体検出アルゴリズムを用いて検出する。そして、画像データに対して、測距点APFのミリ波レーダ10の位置を基準とした位置を当てはめて、その位置にある物体を、対象物であると予測する。画像データは、送信部110によって送信波TWが送信された時刻と同じ時刻か、または最も直近の時刻において画像生成装置20によって生成されたデータである。画像生成装置20の詳細は後に説明する。
【0033】
二つ目の方法は、予測部146bが、測距点APFのミリ波レーダ10の位置を基準とする位置と、以前の処理において推定された対象物の位置と、が予め定められた距離よりも近い位置にいる場合に、以前の処理において推定された対象物の種別を、測距点APFが属する対象物の種別であると予測する方法である。予測部146bは、中央演算装置30に対し、前回の処理において推定された対象物の種別の情報を要求する信号を送信し、中央演算装置30の記憶装置300に記憶される対象物の種別の情報を、中央演算装置30から受け取る。記憶装置300については後に説明する。本実施形態において、予め定められた距離は50cmであり、前回の処理とは、前回の対象物の位置を推定する方法において行われた処理である。対象物の位置を推定する方法と、一つ目の方法と二つ目の方法のいずれの方法によって対象物の種別を予測するかについては、後に説明する。
【0034】
閾値変更部146cは、それぞれの測距点APFについて、強度分布のセルを包含する予測された対象物の種別に基づいて定められる範囲を有する対象領域において、変更閾値を設定する。図8は、後に説明する、本実施形態の対象物の位置を推定する方法において得られる距離と強度の分布であるが、図8を用いて、セルAに基づいた変更閾値の設定について説明する。図8に示すように、対象物の種別に基づいて定められる範囲とは、セルAの中心を中心とした、ミリ波レーダ10を基準とした距離方向における、対象物の種別の寸法分の範囲である。対象物の種別の寸法は、メーカーによって予め信号処理部140に入力されることにより、記憶部141に記憶されている。例えば種別が車である場合、複数の種類の車の全長の平均が、車の寸法として記憶部141に記憶されている。
【0035】
閾値変更部146cは、まず、式5を用いて、図8に示すように、対象物の種別に応じて予め定められた閾値である第2電力閾値を算出する。
【0036】
【数5】
【0037】
式5は、公知のミリ波レーダの受信電力理論式である。Prはミリ波レーダ10の受信電力、Ptはミリ波レーダ10の尖頭電力、Gはアンテナの利得、λは波長、σはレーダ反射断面積、Rは対象物とミリ波レーダ10との距離である。レーダ反射断面積は、ミリ波レーダ10の電波が対象物に照射されたとき、受信部120に向かって対象物から反射される電磁波の強度の度合いを表した値であり、対象物の種別に応じて予め定められる。閾値変更部146cはレーダ反射断面積を用いて、反射波RWの受信電力の強度を算出し、図8の破線BLAによって表される、対象物の種別に基づいて予め定められた閾値である第2電力閾値として設定する。レーダ反射断面積の単位は平方メートルである。本実施形態においては、予め定められた、dBsm(dB square meter)を単位とするレーダ反射断面積を、平方メートルに変換して、式5に当てはめる。本実施形態においては、dBsmを単位とする、対象物の種別に応じて予め定められるレーダ反射断面積は、対象物が車両を含む無生物の場合、20dBsmであり、対象物が生物の場合、0dBsmである。
【0038】
次に、閾値変更部146cは、セルAの中心を中心として、対象物の種別に基づいて定められるWmの範囲であるRsm地点からRem地点の範囲を有する対象領域TAにおいて、式5を用いて変更閾値を設定する。変更閾値の設定に用いられるレーダ反射断面積は、対象物の種別に応じて予め定められた値に対して変更された値である。変更された値は、対象物が車両を含む無生物の場合、-5dBsmから+5dBsmの範囲内の値であり、対象物が生物の場合、-15dBsmから-5dBsmの範囲内の値である。本実施形態においては、変更された値は、対象物が車両の場合、0dBsmであり、対象物が生物の場合、-10dBsmである。図8において、破線BLBにおいて変更閾値を表している。式5に示すように、受信電力の強度はレーダ反射断面積に比例するため、対象物の種別に応じて予め定められるレーダ反射断面積が小さく設定されることで、変更閾値が、第2電力閾値よりも小さくなる。閾値変更部146cは、図8の実線SLCで表したように、対象領域TAにおける閾値を、算出した変更閾値で設定し、対象領域TA以外の閾値を第2電力閾値で設定する。
【0039】
第2検出部146dは、対象領域TAにおいて、変更閾値よりも大きい強度が表された複数のセルを抽出し、抽出した複数のセルに基づいて、ミリ波レーダ10の位置を基準とする位置が表された複数の測距点APFを生成する。複数の測距点APFは、さらに速度が表されている。図8の分布においては、6つのセルが抽出される。図4に示す強度分布の、0km/h以外の、異なる速度の各セルについても、同様にセルの抽出が行われる。本実施形態では、方位推定アルゴリズムであるMUSICを使用することで、ミリ波レーダ10を基準としたセルの位置を推定する。本実施形態において、第2検出部146dは、測距点APFのそれぞれの、三次元における位置と、向きと、大きさと、速度と、を演算する。測距点APFのそれぞれの、三次元における大きさと速度とは、測距点をアルゴリズムによってクラスタリングおよびトラッキングすることで求められる。
【0040】
さらに、本実施形態において、第2検出部146dは、複数の測距点APFからなる測距点群RPCを生成し、測距点群RPCの、ミリ波レーダ10を基準とする三次元における位置と、向きと、大きさと、速度を演算する。測距点群RPCとは、ある一定の期間における測距点APFの集合を意味し、対象物の測距点APFの三次元座標によって表される。ある一定の期間において、複数の測距点群RPCが生成されることがある。測距点群RPCの生成は、点群をグループ分けするアルゴリズムを用いて行われる。
【0041】
図1に示す画像生成装置20は、対象物を含む画像データを生成する。画像生成装置20は、生成した画像データを中央演算装置30に送信する。本実施形態において、画像生成装置20は、予め定められた時間差で、連続して画像データを生成する。本実施形態において、画像生成装置20はカメラである。
【0042】
中央演算装置30は、対象物の位置を含む情報を推定する。図3に示すように、中央演算装置30は、記憶装置300と、ROM310と、RAM320と、プロセッサとしてのCPU330とを備える。記憶装置300は、推定された対象物の情報を記憶する。本実施形態において、記憶装置300は、推定された対象物の位置と、大きさと、種別と、向きと、速度を記憶する。ROM310は、中央演算装置30の動作のためのプログラムを保持する。RAM320は、ROM310が記憶するプログラムを展開するメモリエリアを有している。CPU330は、ROM310に記憶されたプログラムをRAM320上に展開することで、種々の機能を実現する。本実施形態において、CPU330は、位置推定部331として機能する。
【0043】
位置推定部331は、第2検出部146dが生成した複数の測距点APFに基づいて、ミリ波レーダ10の位置を基準とした対象物の位置を推定する。本実施形態において、位置推定部331は、第2検出部146dが生成した複数の測距点APFからなる測距点群RPCに基づいて、ミリ波レーダ10の位置を基準とした対象物の位置を推定する。具体的には、位置推定部331は、測距点群RPCの位置と、画像生成装置20によって取得された、対象物を含む画像データに基づいて、対象物と、対象物の位置とを推定する。さらに、本実施形態において、位置推定部331は、推定された対象物の位置、および画像データに基づいて、対象物の大きさ、種別、向き、および速度を推定する。位置推定部331は、クラスタリングと、トラッキング処理と、HOGと、SIFTと、のいずれか、または2以上の組み合わせのアルゴリズム、または、機械学習によるアルゴリズムを用いて、対象物の情報の推定を行う。
【0044】
A2.対象物の位置を推定する方法:
前提として、図9に示す処理の開始前に、ユーザーによって車両VWの電源が入れられ、車両VWが走行を開始する。図9のステップS10において、ミリ波レーダ10が、変調された送信波TWを車両VWの周囲に送信し、送信波TWが対象物に反射して生じる反射波RWを受信して得られた信号に基づいてデジタル信号を得る。詳細には、まず、ミリ波レーダ10の送信信号生成部100が送信信号を生成して、送信部110が送信波TWを連続して放射する。受信部120が反射波RWを受信信号として受信して、受信信号をデジタル信号生成部130に送信する。そして、デジタル信号生成部130が、受信信号に基づいて、デジタル信号を生成する。なお、車両VWの電源が入れられた後、画像生成装置20が、予め定められた時間差で、連続して画像データを生成する。本実施形態において、予め定められた時間は、1秒である。
【0045】
ステップS20において、信号処理部140の演算処理部143が、デジタル信号をFFTすることで、周波数と強度が表された分布である周波数分布を、連続する少なくとも二回の送信波TWの分得る。ステップS10とステップS20の処理をあわせて、「第1周波数処理工程」とも表記する。
【0046】
ステップS30において、演算処理部143が、連続する少なくとも二回の送信波TWに対応する少なくとも二つの周波数分布に対してドップラーFFTする。本実施形態においては、連続する二回の送信波TWに対応する二つの周波数分布に対してドップラーFFTする。これにより、図4に示すように、ミリ波レーダ10の位置を基準とする距離と速度の組み合わせのセルに対して、強度が表された分布である強度分布を得る。ステップS30の工程を、「第2周波数処理工程」とも表記する。
【0047】
図9のステップS40において、図4の強度分布において、演算処理部143が、予め定められた閾値である第1閾値よりも大きい強度を有するセルを抽出する。本実施形態においては、上述した一定誤警報確率処理を行って、図6および図7に示すように、第1閾値よりも大きい強度を有する2つのセルA、セルBを抽出する。なお、ステップS40において、セルが抽出されなかった場合、処理は終了する。
【0048】
図9のステップS50において、第1検出部146aが、抽出したセルAおよびセルBのそれぞれに基づいて、ミリ波レーダ10の位置を基準とする位置が表された二つの測距点APFを生成する。図4図6に示すように、強度分布においては、ミリ波レーダ10を基準としたセルAとセルBのそれぞれの距離が表されているが、ミリ波レーダ10を基準とした位置は表されていない。測距点APFが生成されることで、図10に示すように、ミリ波レーダ10を基準とした位置が表される。図10の横軸は、ミリ波レーダ10の原点Oを基準とした左右方向の距離を表し、縦軸はミリ波レーダ10の原点Oを基準とした前方方向の距離を表している。図10において、セルAに基づく測距点APFが第1測距点APF1、セルBに基づく測距点APFが第2測距点APF2である。図9のステップS50においては、信号処理部140の記憶部141が、測距点APFのミリ波レーダ10を基準とする位置と、速度と、反射波RWの受信電力の強度を記憶する。ステップS40とステップS50の処理を、「第1検出工程」とも表記する。
【0049】
なお、強度分布で表される一つのセルが、ミリ波レーダ10を基準とする距離がそれぞれ同じであるものの、複数の位置で反射した複数の反射信号に基づくものである場合、第1検出部146aによる測距点APFの生成の際に、一つのセルに基づいて複数の測距点APFが生成される。複数の測距点APFは位置の情報を持っているので、互いに区別が可能である。
【0050】
図9のステップS60において、予測部146bにより、行われる予測工程が二回目以降であるかの判定が行われる。予測工程とは、画像生成装置20によって取得された、対象物を含む画像データに基づいて、測距点APFが属する対象物の種別が予測される工程をいう。本実施形態において、予測工程は、ステップS60から後に説明するステップS90までの処理をいう。予測工程の回数は、対象物位置推定装置1による対象物の位置を推定する方法が開始されてからカウントする。ユーザーによって車両VWの電源がOFFにされることで、予測工程の回数はリセットされる。予測部146bにより、予測工程が二回目以降ではないと判定された場合、つまり、ユーザーによって車両VWの電源が入れられてからの予測工程が一回目である場合、処理はステップS70に移行する。予測部146bにより、予測工程が二回目以降であると判定された場合、処理はステップS80に移行する。
【0051】
ステップS70において、予測部146bにより、一回目の予測工程が行われる。一回目の予測工程において、予測部146bは、上述した一つ目の方法を実行する。すなわち、予測部146bが、測距点APFのミリ波レーダ10の位置を基準とする位置と、画像生成装置20が生成した画像データと、に基づいて、対象物の種別を予測する方法である。その後、処理はステップS100に移行する。ステップS100については後に説明する。なお、ステップS60において、生成された第1測距点APF1と第2測距点APF2のうち、一方の測距点APFについて処理が実行される。他方の測距点APFの処理は、後に説明するステップS110の後に実行される。
【0052】
ステップS80において、予測部146bにより、二回目以降の予測工程が行われる。予測工程が二回目以降であるとは、ユーザーによって車両VWの電源が入れられてから少なくとも一度以上、ステップS10から後に説明するステップS140までの処理が実行されていることを意味する。二回目の予測工程において、予測部146bは、上述した二つ目の方法を実行する。まず、予測部146bは、測距点APFのミリ波レーダ10の位置を基準とする位置と、以前の処理において推定された対象物の位置と、が予め定められた距離よりも近い位置にいるか否かを判定する。なお、ステップS80において、生成された第1測距点APF1と第2測距点APF2のうち、一方の測距点APFについて処理が実行される。他方の測距点APFの処理は、後に説明するステップS110の後に実行される。
【0053】
測距点APFのミリ波レーダ10の位置を基準とする位置と、以前の処理において推定された対象物の位置と、が予め定められた距離よりも近い位置にいる場合、処理はステップS90に移行する。本実施形態においては、測距点APFのミリ波レーダ10の位置を基準とする位置と、対象物の部位のうち測距点APFの位置から最も近い部位の位置と、の距離が用いられる。なお、測距点APFが生成されるタイミングによっては、測距点APFの位置と対象物の位置とが重複し、測距点APFの位置と対象物の部位のうち測距点APFの位置から最も近い部位の位置との距離が0となる可能性がある。測距点APFの前記ミリ波レーダ10の位置を基準とする位置と、前回の処理において推定された対象物の位置と、が予め定められた距離よりも近い位置にない場合、処理はステップS110に移行する。
【0054】
ステップS90において、予測部146bは、以前の処理において推定された対象物の種別を、測距点APFが属する対象物の種別であると予測する。本実施形態においては、予測部146bによって予測された対象物の種別は、車両VWである。なお、前回の処理において、複数の対象物が推定されている場合であって、そのうちの二つ以上と、測距点APFの位置とが予め定められた距離よりも近い位置にいる場合は、最も距離が近い対象物の種別を、測距点APFが属する対象物の種別であると予測部146bによって予測される。
【0055】
ステップS100において、閾値変更部146cが、予測された対象物の種別に基づいて、図4の強度分布のセルを包含する予測された対象物の種別に基づいて定められる範囲を有する対象領域において、変更閾値を設定する。図8に示すように、セルAの中心の、ミリ波レーダ10を基準とした距離Rm地点を中心として、車両VWに対して定められた範囲であるWmを有する対象領域TAにおいて、変更閾値が設定される。なお、図4に示すように、対象領域TAは、ミリ波レーダ10に対する相対速度が異なるセルを含んでいる。ステップS100の処理を、「閾値変更工程」とも表記する。
【0056】
ステップS110において、第1検出工程において抽出された一つ以上のセルのそれぞれについて、ステップS60からステップS100の処理が実行されたかの判定が、予測部146bにより行われる。第1検出工程において抽出された全てのセルに対して、ステップS60からステップS100の処理が実行された場合、処理はステップS120に移行する。全てのセルに対してステップS60からステップS100の処理が実行されていない場合、処理は再度ステップS60に移行する。そして、ステップS60からステップS100の処理が実行されていないセルに対し、ステップS60からステップS100の処理が実行される。本実施形態において、少なくとも一回、処理が再度ステップS80に移行する。
【0057】
なお、ステップS110から再度ステップS60に移行した際は、予測工程が二回目以降かの判断が行われず、前回の測距点APFの処理と同様の処理に進んでもよい。すなわち、ステップS60の処理において予測工程が二回目以降であると判断され、ステップS80を経て再度のステップS60に移行した場合は、ステップS60の処理が行われずステップS80に移行し、他の測距点APFについての処理が行われてもよい。
【0058】
なお、ステップS80の処理が繰り返された結果、全ての測距点APFの位置と、以前の処理において推定された対象物の位置とが、予め定められた距離よりも近い位置にいないと予測部146bによって判定された場合、処理は終了する。
【0059】
ステップS120において、第2検出部146dが、対象領域TAにおいて、変更閾値よりも大きい強度が表された複数のセルを抽出する。ステップS120において、セルAとセルBのそれぞれに対して設定された変更閾値よりも大きい強度が表された複数のセルが抽出される。なお、この際に抽出されるセルの数が第1検出工程において抽出されたセルの数と同数である場合、処理は後に説明するステップS140に移行する。本実施形態においては、図11に示すように、第1検出工程において抽出されたセルの数よりも多い数のセルが抽出されている。図12に示すように、第2検出部146dが、抽出した複数のセルに基づいて、ミリ波レーダ10の位置を基準とする位置が表された複数の測距点APFを生成する。また、ステップS120において、記憶部141が、複数の測距点APFのそれぞれの、ミリ波レーダ10を基準とする位置と、速度と、反射波RWの受信電力の強度と、の情報を記憶する。
【0060】
ステップS130において、第2検出部146dが、生成した複数の測距点APFから、図12に示すように測距点群RPCを生成する。図12において、測距点群RPCを実線の箱で囲み、測距点群RPCの向きを実線の矢印で表している。なお、図12においては測距点群RPCを二次元で表しているが、位置推定部331は、ミリ波レーダ10を基準とした高さが表された三次元の測距点群RPCを生成する。さらに、記憶部141が、測距点群RPCの三次元における位置と、向きと、大きさと、速度と、のうち一つ以上を記憶する。本実施形態においては、記憶部141は、測距点群RPCの三次元における位置と、向きと、大きさと、速度の全てを記憶する。ステップS120とステップS130の処理を、「第2検出工程」とも表記する。
【0061】
ステップS140において、位置推定部331は、複数の測距点APFに基づいて、ミリ波レーダ10の位置を基準とした対象物の位置を推定する。詳細には、位置推定部331は、生成された測距点群RPCと、画像データと、に基づいて、対象物と、対象物の位置を推定する。本実施形態においては、さらに、位置推定部331は、対象物の大きさと、種別と、向きと、速度を推定する。また、記憶装置300が、推定した対象物の情報を記憶する。ステップS140の処理を、「対象物位置推定工程」とも表記する。その後、処理は終了する。なお、ユーザーによって車両VWの電源がOFFにされるまで、一定の間隔でステップS10からステップS140の処理が繰り返し行われる。本実施形態において、一定の間隔とは3秒である。
【0062】
なお、対象物位置推定工程によって、例えばミリ波レーダ10を基準とした、予め設定された距離間に対象物が存在すると判断された場合に、中央演算装置30が図示しない車両VWの制御部に車両VWを停止すべき信号を送信する。信号を受信した制御部は、音声やモニターへの画像表示等によって、車両VWを停止すべき情報を出力する。
【0063】
本実施形態において、予測される対象物の種別に基づいて定められる範囲を有する対象領域TAにおいて、変更閾値が設定されるため、例えば予測される対象物の位置に基づいて変更閾値が設定される態様と比較して正確に対象物の位置を推定することができる。また、対象物の大きさと、種別と、向きと、速度と、のうち一つ以上が推定されることで、それらが推定されない態様と比較して、対象物の位置を正確に推定することができる。
【0064】
一定誤警報確率処理による強度分布のセルの抽出は、周囲のセルの電力の影響を受ける。試験セルCUTの周囲のセルTCの電力が大きいと、試験セルCUTが抽出されない可能性がある。本実施形態において、対象領域TAにおいて変更閾値が設定されることで、周囲のセルの電力の影響を受けずに、セルが抽出される。
【0065】
B.第2実施形態:
第2実施形態においては、上記の第1実施形態と異なる構成を中心に説明する。上記の第1実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0066】
上記の第1実施形態においては、物標の検知において、路面で反射した反射波の影響が考慮されていない。路面が平坦であれば、路面での反射波RWの受信電力はごく小さいと考えられる。しかし、車両VWが走行している道路の前方に傾斜がある場合には、路面の傾斜で反射した反射波RWにより物標の誤検知が増加するおそれがある。
【0067】
このため、第2実施形態においては、路面の傾斜を考慮されたレーダ反射断面積である補正レーダ反射断面積を用いて第2電力閾値が設定される。本実施形態にかかる構成においては、物標の検知において路面の傾斜を考慮しているため、物標の誤検知の発生を抑制することができる。
【0068】
図13に、物標までの距離Rに応じた反射波RWの受信電力を物標の種別ごとに表す。図13では、物標が、車両、人、傾斜が15度の路面、傾斜が0度の路面それぞれで反射した反射波の受信電力を実線で表す。
【0069】
さらに、図13では、物標ごとの反射波の受信電力の分布の推定範囲をハッチングした領域として表す。物標までの距離を距離rとした場合の反射波の受信電力は、物標の種別に応じたレーダの反射断面積と距離rとを用いて式5のミリ波レーダの受信電力理論式により求められる。測距点の受信電力の分布は、例えば、シミュレーションにより求められる。ここでは、測距点の受信電力の分布は、物標までの距離rである場合における受信電力の値を中心としたガウス分布に従っているものとする。推定範囲Svw2は、他の車両で反射した反射波の受信電力として取り得ると推定される範囲を表す。推定範囲Svw2は、車両のレーダ反射断面積σvw2を0dBsmとして求められている。推定範囲Shmは、人で反射した反射波の受信電力として取り得ると推定される範囲を表す。推定範囲Shmは、人のレーダ反射断面積σhmを-10dBsmとして求められている。推定範囲Ssr15は、傾斜が15度の路面で反射した反射波の受信電力として取り得ると推定される範囲を表す。推定範囲Ssr15は、傾斜が15度の路面のレーダ反射断面積σsr15を-20dBsmとして求められている。推定範囲Ssr0は、傾斜が0度である路面で反射した反射波の受信電力として取り得ると推定される範囲を表す。推定範囲Ssr0は、傾斜が0度の路面のレーダ反射断面積σsr0を-30dBsmとして求められている。
【0070】
図14に、図13に示した車両についての推定範囲Svw2および傾斜が-15度の路面についての推定範囲Ssr15を抜き出して表示する。第1実施形態においては、式5を用いて第2電力閾値を算出する際に、レーダ反射断面積を表すσとして対象物の種別に応じて予め定められる一定値を用いた。例えば、対象物の種別が車両である場合、第2電力閾値が0dBsmと設定されていた。路面の傾斜が0度または0度に近い場合、即ち、路面に傾斜がほぼない場合には、路面で反射した電波の受信電力が低いため、路面での反射の影響は小さいと考えられる。しかしながら、路面にある程度の傾斜がある場合には、路面での反射の影響により誤検知が増加するおそれがある。
【0071】
図14に示すように、対象物の種別が車両である場合には、車両での反射波に基づく測距点群を抽出することが望まれる。例えば、推定範囲Svw2と推定範囲Ssr15との境界を変更閾値と設定することが望ましいと考えられる。第2実施形態においては、車両での反射波の受信電力の分布の範囲を検出できるように路面での反射波を考慮して第2電力閾値が設定される。
【0072】
上記の実施形態では、第2電力閾値を算出する際に、式5において、レーダ反射断面積を表すσとして、対象物の種別に応じて予め定められる一定値を用いた。
【0073】
第2実施形態においては、レーダ反射断面積を表すσは以下の式6で表される。式6で表されるレーダ反射断面積を「補正レーダ反射断面積」とも表記する。式6におけるσ1を「第1レーダ反射断面積」とも表記する。式6におけるσ2を「第2レーダ反射断面積」とも表記する。
【数6】
【0074】
式6において、αは、0<α<1の範囲の値をとる任意の係数である。例えば、αを0.5とする。対象物の種別が車両である場合には、σ1として車両のレーダ反射断面積σvw2を用いる。σ2として路面のレーダ反射断面積σsrを用いる。例えば、α=0.5と設定されるとする。σ1=σvw2=0[dBsm]、σ2=σsr=-20[dBsm]である場合、式6を用いて求められたレーダ反射断面積は、σ=-10[dBsm]となる。
【0075】
図15に、路面の傾斜と路面のレーダ反射断面積との関係を簡易なモデルとして表した説明図を示す。路面の傾斜に応じて路面のレーダ反射断面積は異なり、路面の傾斜が大きくなるに従って路面のレーダ反射断面積は大きくなる傾向がある。本実施形態において、図16に示すような、路面の傾斜に応じたレーダ反射断面積のオフセット値が定義された定義テーブルTblがあらかじめ準備される。定義テーブルTblにおいて、路面の傾斜が0度の場合の路面のレーダ反射断面積の絶対値を基準値とした場合の、路面の傾斜ごとの路面のレーダ反射断面積と基準値との差である相対値がオフセット値として設定されている。路面の傾斜が0度の場合であれば、路面での反射を考慮する必要がないためである。オフセット値は、路面での反射波の反射率を表す。本実施形態において、路面の傾斜とは、車両VWが現在いる路面に対する相対的な傾きをいう。このため、車両VWを基準とした座標系(車両座標系)に基づいて、路面の傾斜、対象物の位置等が検出される。
【0076】
図17にレーダ反射断面積σ2の決定方法についての説明図を示す。図17の上段には、走行中の車両VWの前方の路面が傾斜している例を示す。車両VWの現在位置から地点p1まで路面は平らである、即ち、路面の傾斜は0度である。地点p1は、車両VWの現在位置から距離r1離れている。地点p1以降地点p2までは、路面が一定の角度θで傾斜している。路面の傾斜角θは、例えば、15度である。地点p2は、車両VWの現在位置から距離r2離れている。距離r2は、例えば、ミリ波レーダ10の検知可能な距離と一致する。ミリ波レーダ10の検知可能な距離が限定されているため、現在位置から地点p2までを考慮する。
【0077】
図17の下段に、σ2として用いられるレーダ反射断面積についての説明図を示す。図17に示すように、地点p1までは、傾斜が0度である場合のオフセット値をテーブルTblから取得し、式6のσ2として用いる。地点p1を超えて地点p2までは傾斜が15度である場合のオフセット値をテーブルTblから取得して、式6のσ2として用いる。なお、図17の下段においては、縦軸を路面の反射率と表記しているが、ここでは、レーダ反射断面積のオフセット値が設定される例を示す。このように、傾斜が始まる地点p1以降については、傾斜を考慮した変更閾値が設定される。変更閾値は距離ごとに設定される。ここで、距離ごととは、車両VWの現在位置から地点P2までの範囲を決められた区間で区切った場合における各区間を示す。例えば、1つの区間は1センチメートルである。あるいは、1つの区間は5センチメートルであってもよい。また、車両VWの走行速度に応じて、各区間の長さが決定されてもよい。各区間において変更閾値を算出する際には、当該区間の路面の傾斜に応じたσ2が用いられる。路面の傾斜を考慮するため、物標の誤検知の発生を抑制することができる。
【0078】
図17では路面の傾斜が一定である例を説明した、実際の道路においては、図17に示すように、路面の傾斜が一定であることは少ない。各区間における路面の傾斜を、公知の勾配推定の技術を用いて求めることができる。例えば、以下の参考文献1~3に記載された勾配推定の技術を用いることができる。以下の参考文献1~3には、カメラにより取得された画像を用いて、路面の傾斜を推定する技術が記載されている。
【0079】
参考文献1:Li Chen, 他10名,“PersFormer: 3D Lane Detection via Perspective Transformer and the OpenLane Benchmark” ,[online], [2024年3月22日検索], インターネット URL: https://doi.org/10.48550/arXiv.2203.11089
【0080】
参考文献2:Fan Yan, 他9名,“ONCE-3DLanes: Building Monocular 3D Lane Detection” ,[online], [2024年3月22日検索], インターネット URL: https://doi.org/10.48550/arXiv.2205.00301
【0081】
参考文献3:Li Chen, 他10名,“PersFormer: 3D Lane Detection via Perspective Transformer and the OpenLane Benchmark” ,[online], [2024年3月22日検索], インターネット URL: https://doi.org/10.48550/arXiv.1811.10203
【0082】
図18にレーダ反射断面積σ2の決定方法についての説明図を示す。図18の上段には、走行中車両VW前方の路面の傾斜の例を示す。上記の公知の勾配推定の技術を用いることにより、車両VWから見た場合の任意の地点の路面の奥行きxiと高さziを推定することができる。奥行きxiは、車両VWの現在位置からの任意の地点までの距離を示す。高さziは、車両VWの現在位置の高さを基準とした場合の任意の地点の高さを示す。
【0083】
例えば、任意の2点についての奥行きxiおよび高さziを用いることにより、路面の傾斜を求めることができる。例えば、地点p3の奥行きx1および高さz1と、他の地点p4の奥行きx2および高さz2と、を用いて、地点p3から地点p4までの間の路面の傾斜を求めることができる。求めた傾斜と、テーブルTblとを用いて、地点p3から地点p4までに対応する区間についてのオフセット値を求めることができる。図18の下段に、推定された各区間の路面の傾斜に応じて設定されるオフセット値を示す。なお、図18の下段においては、縦軸を路面の反射率と表記しているが、ここでは、レーダ反射断面積のオフセット値が設定される例を示す。路面の傾斜が一定であることは少なため、路面の傾斜を公知の勾配推定の技術を用いて求めることにより、走行中の車両VWの、例えば、前方の一定の範囲について路面の傾斜を推定することが可能である。
【0084】
図19に第2実施形態にかかる対象物の位置を推定する方法の一例を示すフローチャートを示す。ステップS10~S70までの処理は、図9に示す例と同様である。
【0085】
ステップS75において、予測部146bは、路面の傾斜を予測する。予測部146bは、画像生成装置20により取得された画像データに基づいて上記の公知の勾配推定の技術を用いて路面の傾斜を推定する。予測された傾斜情報は、車両VWを基準とするミリ波レーダ10の検出方向における路面の高低差を表す。より具体的には、予測された傾斜情報は、ミリ波レーダ10の検出方向において一定の範囲内の距離ごとの路面の高低差を表す。なお、図1に示すように、ミリ波レーダ10の検出方向と、画像生成装置20の検出方向とは、ほぼ一致するものとする。例えば、車両VWの現在位置からミリ波レーダ10が検知可能な範囲において路面の傾斜を推定することができる。ステップS75の処理を「傾斜取得工程ステップ」とも表記する。S80~S90の処理は、第1実施形態(図9を参照)と同様である。
【0086】
ステップS100aにおいて、閾値変更部146cが変更閾値を設定する。閾値変更部146cは、対象領域TAにおいて変更閾値を設定する。対象領域TAは、図4に示すように、第1電力閾値よりも大きい強度を有するセルを中心とした範囲であって、対象物の種別に応じた寸法分の範囲である。
【0087】
閾値変更部146cは、求めた傾斜と、テーブルTblとを用いて、距離ごとのオフセット値を求める。ここで、距離ごとのオフセット値は、図4にグリッド状のセルを示したが、グリッドの距離方向の間隔に対応するオフセット値とされてもよい。求めたオフセット値を「補正量」とも表記する。オフセット値は、式6のσ2として用いられる。閾値変更部146cは、第2電力閾値を算出する際に用いるレーダ反射断面積σを上記の式6を用いて算出する。ここで、対象領域TA1の範囲における車両VWからの距離ごとにレーダ反射断面積σがそれぞれ算出される。σ1として車両のレーダ反射断面積σvw2を、σ2として路面のレーダ反射断面積σsrを用いる。車両のレーダ反射断面積σvw2は一定の値をとる。路面のレーダ反射断面積σsrは、傾斜に応じたオフセット値である。路面のレーダ反射断面積σsrは、ステップS75で推定された路面の傾斜に応じて決められる。図18の上段に示すように、一般的に車両VWが走行する路面の傾斜は一定ではないためである。距離の傾斜に応じた路面のレーダ反射断面積σsrとして、図18の下段に示す、距離ごとに推定された路面の傾斜に応じて設定されるオフセット値が用いられる。より具体的には、対象領域TAの範囲に対応する路面の範囲において、路面の傾斜に応じて設定されるオフセット値がレーダ反射断面積σsrとして用いられる。上記の式6を用いて算出されるレーダ反射断面積σは、対象物の種別に応じたレーダ反射断面積の変更値を、路面での反射波の反射率で調整した値となる。ステップS100aにおいて、算出されるレーダ反射断面積σは、複数の値を含む配列(以下、レーダ反射断面積群という)として構成される。
【0088】
次に、閾値変更部146cは、式5を用いてミリ波レーダ10の受信電力Prを第3電力域値として算出する。路面のレーダ反射断面積σsrは、車両VWの現在位置からの距離に応じて異なるため、ミリ波レーダ10の現在位置からの距離に応じた第3電力閾値が算出される。車両VW(ミリ波レーダ10)の現在位置から、車両VWの現在位置からの距離ごとに第3電力域値がそれぞれ算出される。ステップS100aにおいて、算出される第3電力域値は、複数の受信電力の値を含む配列(以下、第3電力域値群という)として構成される。閾値変更部146cは、第3電力域値群を用いて対象領域TAの範囲において変更域値を設定する。具体的には、対象領域TAの範囲において、第3電力域値群に含まれる受信電力の値を決められた値で増減させて得られる値が変更閾値として設定される。例えば、対象物が車両を含む無生物の場合、決められた値は-5dBsmから+5dBsmの範囲内の任意の値である。対象領域TAは、上記の実施形態で説明した一定誤警報確率処理により抽出されたセルAを中心とした範囲Wmである。対象領域TA以外の範囲の閾値については、第3電力域値で設定する。あるいは、対象領域TA以外の範囲の閾値については、第1実施形態と同様に第2電力閾値で設定してもよい。
【0089】
図20に、設定された変更域値を示す。図20において、変更域値を実線SLDで表す。破線BLAは上記の第1実施形態で説明した第2電力域値を表す。破線BLBは、一定の範囲で第2電力域値をシフトさせたものを表す。なお、図20において、セルを丸で表している。図20において、対象領域TA以外の範囲の閾値の図示を省略している。ステップS100aの処理を「補正量取得工程」とも表記する。ステップS100aの処理を「閾値変更工程」とも表記する。
【0090】
ステップS110以降の処理については上記の実施形態と同様である。
【0091】
図21は、第2実施形態における変更域値の設定方法の利点を説明する図である。図21では、上記の第1実施形態における方法により変更域値を設定した例を示す。図21において、セルを丸で表している。図21に示す例では、路面に傾斜がある場合の反射波の受信強度を表す。ハッチングされた丸で表されるセルは、路面の傾斜で反射した反射波を表す。図示する例では、路面の傾斜で反射した反射波の受信強度が変更域値を超えている。この結果、ハッチングされた丸で表されるセルに基づいて算出された位置に物標があると誤って検出されるおそれがある。
【0092】
図22に、車両VW(自車)が検出する測距点群の例を示す。図22では、車両VWを上空から見た様子を表す。車両VWが備えるミリ波レーダ10が検知可能な範囲を斜線のハッチングを付して表す。また、路面が一定の角度で傾斜している範囲をドットのハッチングを付して表す。測距点群を丸で表している。図22の左側には、上記の第1実施形態における方法により変更域値を設定した場合に検出される測距点群の例を示す。図22の左側に示するように、路面の傾斜の考慮をしない場合、即ち、上記の実施形態にかかる方法で変更閾値を設定した場合、車両の前方の範囲SS1において、複数の測距点群が検出される。車両VWの現在位置は平坦な路面であるが、車両VWの前方の路面の傾斜で反射した反射波に基づいて測距点群が検出されている。この場合、ハッチングされた丸で表されるセルに基づいて算出された位置に物標があると誤って検出されるおそれがある。
【0093】
一方、第2実施形態においては、図20に示すように、式6を用いて算出した、路面の傾斜が考慮されたレーダ反射断面積(補正レーダ反射断面積)を用いて、変更閾値が設定される。物標の検知において路面の傾斜を考慮しているため、物標の誤検知の発生を抑制することができる。
【0094】
図22の右側には、第2実施形態における方法により変更域値を設定した場合に検出される測距点群の例を示す。図22の右側に示すように、路面の傾斜を考慮するため第2実施形態にかかる方法で変更閾値を設定した場合、車両の前方の範囲SS1において、測距点群が検出されていない。このように、物標の検知において路面の傾斜を考慮しているため、物標の誤検知の発生を抑制することができる。
【0095】
式6のαとして任意の値を設定することができるが、例えば、天気に応じてαを変更してもよい。降雨によりレーダ波は減衰しやすい傾向がある。雨が降っている場合には路面での反射の影響は、雨が降っていない場合にくらべて小さいと考えられる。このため、上記の式6のσ2の係数(1-α)として、雨が降っている場合と雨が降っていない場合とで、異なる値を用いることができる。雨が降っている場合に用いる係数(1-α)の値を、雨が降っていない場合に用いる係数(1-α)の値より小さく設定してもよい。雨が降っているか否かは、例えば、車両VWに設けられている雨滴感知用のセンサの検出結果に基づいて判別することができる。
【0096】
C.他の実施形態:
C1.他の実施形態1:
(1)上記実施形態において、対象物位置推定装置1は車両VWに配置される。車両は、先進運転支援システムを搭載していてもよく、自動運転が可能であってもよい。この態様において、車両を停止すべき信号を受信した制御部が、自動で車両を停止させてもよい。なお、例えば対象物位置推定装置は船舶や航空機等、車両以外の移動体に配置されてもよい。
【0097】
(2)上記実施形態において、CPU146は、第1検出部146aと、予測部146bと、閾値変更部146cと、第2検出部146dとして機能する。なお、第1検出部と、予測部と、閾値変更部と、第2検出部の機能の一部または全部が、ハードウェア回路によって実現されてもよい。
【0098】
(3)上記実施形態において、予測部146bによって予測された対象物の種別が車である場合、複数の種類の車の全長の平均が、車の寸法として記憶部141に記憶されている。なお、例えば車の寸法が、複数の種類の車の全幅の平均でもよく、メーカーや作業者によって任意に設定可能である。
【0099】
(4)上記実施形態において、車両VWの電源が入れられた後、画像生成装置20が、予め定められた時間差である1秒差で、連続して画像データを生成する。なお、画像生成装置は0.1秒や5秒等、1秒以外の時間差で画像データを生成してもよい。また、処理が行われる間隔は、1秒や5秒等、3秒以外であってもよい。
【0100】
(5)上記実施形態において、第1検出工程において、二つのセルA、セルBが抽出され、それぞれのセルに基づいて、二つの測距点が生成される。なお、例えば第1検出工程において、一つのセルが抽出されてもよい。
【0101】
(6)例えば、再度の処理のステップS20における連続する二回の送信波のうち、送信部から放射された時刻が速い方の送信波は、前回の処理のステップS20において、連続する二回の送信波のうち、送信部から放射された時刻が遅い方の送信波であってもよい。つまり、再度の処理のステップS20において、信号処理部の演算処理部が、連続する二回の送信波のうち、送信部から放射された時刻が遅い方の送信波に基づいてデジタル信号を生成し、ドップラーFFTすることで、周波数と強度が表された分布である周波数分布を得る。そして、ステップS20において、前回の処理のステップS20で既に生成されている、送信部から放射された時刻が早い方の送信波に基づく周波数分布とあわせて、連続する二回の送信波の分、周波数分布を得てもよい。また、連続する二回以外の、例えば連続する五回の送信波に対応する五つの周波数分布に対してドップラーFFTが行われてもよい。
【0102】
(7)上記実施形態において、上記実施形態において、方位推定アルゴリズムであるMUSICを使用することで、ミリ波レーダ10を基準とした測距点APFの位置を推定する。なお、方位推定アルゴリズムとして、CAPONやDBFやESPRITが使用されてもよい。
【0103】
(8)上記実施形態において、第1検出工程において生成された第1測距点APF1と第2測距点APF2は、第2検出工程において生成された一つの測距点群RPCに共に含まれている。なお、例えば第1検出工程において生成された複数の測距点が、それぞれ異なる測距点群に属することもある。
【0104】
C2.他の実施形態2:
(1)上記実施形態において、対象物位置推定工程において、対象物の大きさと、種別と、向きと、速度と、を推定する。なお、例えば対象物位置推定工程において、対象物の大きさ、種別、向き、速度と、のうち、一つが推定されてもよく、二つ以上が推定されてもよい。また、対象物位置推定工程において、対象物の大きさと、種別と、向きと、速度と、が推定されなくてもよい。
【0105】
(2)上記実施形態において、対象物位置推定工程において推定された対象物の情報が、記憶装置によって記憶される。なお、例えば、記憶装置は、二回目以降の予測工程において利用するために、対象物の種類のみを記憶してもよい。また、記憶装置は、例えば予測工程において二回目以降も、上述した一つ目の方法が実行される態様において、対象物の種類を記憶しなくてもよい。
【0106】
C3.他の実施形態3:
(1)上記実施形態において、第1検出工程において、一定誤警報確率処理を行われることで、セルが抽出される。なお、例えば第1検出工程において、距離に対して変化しない予め定められた値の閾値を用いて、セルを抽出してもよい。この態様において、閾値は、生物と無生物のいずれにおいても、反射した受信信号に基づくセルが抽出される値が定められる。
【0107】
(2)上記実施形態において、第1検出工程において、二次元の一定誤警報確率処理が実行される。なお、第1検出工程において、一次元の一定誤警報確率処理が実行されてもよい。
【0108】
(3)上記実施形態において、第1検出工程において、歩行者や動物等の生物と、他車両や建物や信号機等の無生物と、の両方を検出することが可能な閾値が定められる。なお、例えば車両の走行の環境によって、演算処理部が第1検出工程における閾値を変更してもよい。例えば高速道路においては、他車両を検出することが可能な閾値が設定され、一般の道路においては、生物と無生物の両方を検出することが可能な閾値が設定されてもよい。
【0109】
C4.他の実施形態4:
上記実施形態において、一回目の予測工程において、上述した一つ目の方法が実行うされ、二回目以降の予測工程において、上述した二つ目の方法が実行される。なお、例えば二回目以降の予測工程においても、一つ目の方法が実行されてもよい。
【0110】
C5.他の実施形態5:
(1)上記実施形態において、閾値変更工程において、閾値変更部146cがミリ波レーダ10の受信電力理論式を用いて、第2電力閾値と変更閾値とを算出していた。なお、例えば閾値変更工程において、予め算出された、ミリ波レーダを基準とする距離ごとに期待される受信電力の強度が、変更閾値として設定されてもよい。
【0111】
(2)上記実施形態において、閾値変更工程において、対象領域TA以外の範囲に対して、第2電力閾値が設定されていた。なお、例えば閾値変更工程において、対象領域以外の範囲には、第1検出工程において設定した第1電力閾値が設定されてもよい。
【0112】
(3)上記実施形態において、式で用いるレーダ反射断面積は、対象物の種別に応じて予め定められた値に対して変更された値であり、変更された値は、対象物が車両を含む無生物の場合、-5dBsmから+5dBsmの範囲内の値であり、対象物が生物の場合、-15dBsmから-5dBsmの範囲内の値である。なお、変更された値は、対象物が車両の場合、-5dBsmから+5dBsmの範囲外、かつ、20dBsm以下、であってもよく、対象物が生物の場合、-15dBsmから-5dBsmの範囲外、かつ、0dBsm以下、の値であってもよい。
【0113】
C6.他の実施形態6:
(1)上記実施形態において、記憶部141が、第1検出工程と第2検出工程において生成された複数の測距点APFのそれぞれの、ミリ波レーダ10を基準とする位置と、速度と、反射波RWの受信電力の強度を記憶する。なお、例えば記憶部は、複数の測距点のそれぞれの、ミリ波レーダを基準とする位置と、速度と、反射波の受信電力の強度と、のうち、いずれか一つや、二つを記憶してもよい。
【0114】
(2)例えば、記憶部は、第1検出工程または第2検出工程のうち、いずれか一方の工程において生成された測距点の情報を記憶してもよい。
【0115】
C7.他の実施形態7:
(1)上記実施形態において、対象物位置推定工程において、複数の測距点APFからなる測距点群RPCの、ミリ波レーダ10を基準とする三次元における位置と、向きと、大きさと、速度と、が演算される。なお、対象物位置推定工程において、複数の測距点からなる測距点群の、ミリ波レーダを基準とする三次元における位置と、向きと、大きさと、速度と、のうち、いずれか一つや、二つが演算されてもよい。
【0116】
(2)上記実施形態において、第2検出部146dは、ミリ波レーダ10を基準とした高さが表された三次元の測距点群RPCを生成する。なお、第2検出部は、ミリ波レーダを基準とした、二次元の測距点群を生成してもよい。
【0117】
C8.他の実施形態8:
対象物位置推定工程において、クラスタリングと、トラッキング処理と、HOGと、SIFTと、のいずれか、または2以上の組み合わせのアルゴリズム、または、機械学習によるアルゴリズム以外の方法で、対象物の情報が推定されてもよい。例えば、試験場において、対象物位置推定装置を用いて試験を行う場合に、作業者によって対象物の情報が推定されてもよい。
【0118】
C9.他の実施形態9:
例えば、上述した対象物の位置を推定する方法を実行するプログラムによって、対象物の位置が推定されてもよい。
【0119】
C10.他の実施形態10:
第2実施形態において、定義テーブルTblにオフセット値が定義される例を説明したが、オフセット値ではなくレーダ反射断面積の絶対値が定義テーブルTblに定義されてもよい。また、定義テーブルTblの代わりに、路面の傾斜の角度と路面での反射波の強度との対応付けを定義した関数が用いられてもよい。
【0120】
C11.他の実施形態11:
第2実施形態においては画像データに基づいて公知の勾配推定の技術を用いて路面の傾斜を推定する例を説明した。または、ミリ波レーダ10の検出結果を用いて路面の傾斜を推定してもよい。この場合、ミリ波レーダ10として3次元レーダが用いられる。
【0121】
本開示は、上述の実施形態や変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0122】
1…対象物位置推定装置、10…ミリ波レーダ、20…画像生成装置、143…演算処理部、146a…第1検出部、146b…予測部、146c…閾値変更部、146d…第2検出部、331…位置推定部、APF…測距点、RW…反射波、TA…対象領域、TW…送信波、Tbl…定義テーブル、σ,σ1,σ2…レーダ反射断面積
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22