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特開2024-180306水分測定方法および水分測定装置、石炭の調湿方法ならびにコークスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180306
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】水分測定方法および水分測定装置、石炭の調湿方法ならびにコークスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 22/04 20060101AFI20241219BHJP
   G01N 22/00 20060101ALI20241219BHJP
   C10B 57/08 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
G01N22/04 C
G01N22/00 W
G01N22/00 X
C10B57/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024086337
(22)【出願日】2024-05-28
(31)【優先権主張番号】P 2023099054
(32)【優先日】2023-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】梅垣 嘉之
(72)【発明者】
【氏名】宮本 康平
(72)【発明者】
【氏名】山平 尚史
【テーマコード(参考)】
4H012
【Fターム(参考)】
4H012QA00
(57)【要約】
【課題】コンベア上を搬送される石炭に対してマイクロ波を用いて水分測定を行う際に、高精度かつ安定した水分測定が可能な技術を提供する。
【解決手段】コンベヤ上を搬送される石炭の水分を測定する水分測定方法は、コンベヤ上の石炭を鎮圧して石炭の表面を均すとともに石炭を圧縮する石炭鎮圧工程と、石炭鎮圧工程により鎮圧を行った後の石炭の層厚を測定する層厚測定工程と、石炭鎮圧工程によって鎮圧された後の石炭に向けてマイクロ波を送信波として送信するマイクロ波送信工程と、マイクロ波送信工程で送信され、石炭を透過した後のマイクロ波を受信波として受信するマイクロ波受信工程と、送信波と受信波とを比較して変化量を算出するマイクロ波変化量算出工程と、マイクロ波変化量算出工程で算出した変化量と、層厚測定工程で測定した石炭の層厚に基づいて石炭の含水率を算出する含水率算出工程とを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンベヤ上を搬送される石炭の水分を測定する水分測定方法であって、
前記コンベヤ上の石炭を鎮圧して前記石炭の表面を均すとともに前記石炭を圧縮する石炭鎮圧工程と、
前記石炭鎮圧工程により鎮圧を行った後の前記石炭の層厚を測定する層厚測定工程と、
前記石炭鎮圧工程によって鎮圧された後の前記石炭に向けてマイクロ波を送信波として送信するマイクロ波送信工程と、
前記マイクロ波送信工程で送信され、前記石炭を透過した後の前記マイクロ波を受信波として受信するマイクロ波受信工程と、
前記送信波と前記受信波とを比較して変化量を算出するマイクロ波変化量算出工程と、
前記マイクロ波変化量算出工程で算出した変化量と、前記層厚測定工程で測定した前記石炭の層厚に基づいて前記石炭の含水率を算出する含水率算出工程と、
を備える、水分測定方法。
【請求項2】
前記石炭鎮圧工程は、回転軸が前記コンベヤの幅方向に平行に設置され、かつ前記コンベヤの高さ方向に可動なローラーにより前記石炭を鎮圧する、請求項1に記載の水分測定方法。
【請求項3】
前記石炭鎮圧工程は、前記コンベヤ上の前記石炭に接触する面が前記コンベヤと平行に保たれた平面である底面と、前記コンベアの進行方向上流側で前記底面から上方に反り返るような傾斜面と、を有し、前記コンベヤの高さ方向に可動な重りにより前記石炭を鎮圧する、請求項1に記載の水分測定方法。
【請求項4】
前記マイクロ波変化量算出工程で算出した変化量が、位相差および減衰率の一方または両方を含む、請求項1に記載の水分測定方法。
【請求項5】
前記マイクロ波として複数の周波数を用いる、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の水分測定方法。
【請求項6】
前記石炭鎮圧工程は、前記コンベヤの上り勾配部で行う、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の水分測定方法。
【請求項7】
コンベヤ上を搬送される石炭の水分を測定する水分測定装置であって、
前記コンベヤ上の石炭を鎮圧して前記石炭の表面を均すとともに前記石炭を圧縮する石炭鎮圧機構と、
前記石炭鎮圧機構により鎮圧された後の前記石炭の層厚を測定する層厚測定部と、
前記石炭鎮圧機構によって鎮圧された前記石炭に向けてマイクロ波を送信波として送信するマイクロ波送信部と、
前記マイクロ波送信部から送信され前記石炭を透過した前記マイクロ波を受信波として受信するマイクロ波受信部と、
前記送信波と前記受信波とを比較して変化量を算出するマイクロ波変化量算出部と、
前記マイクロ波変化量算出部で算出した変化量と、前記層厚測定部で測定した前記石炭の層厚に基づいて前記石炭の含水率を算出する含水率算出部と、
を備える、水分測定装置。
【請求項8】
前記層厚測定部は、
前記石炭鎮圧機構により鎮圧された後の前記石炭の表面までの距離を測定する距離計と、
前記距離計で測定した距離値に基づいて鎮圧された後の前記石炭の層厚を算出する層厚算出部と、
を有する、請求項7に記載の水分測定装置。
【請求項9】
前記石炭鎮圧機構が、回転軸が前記コンベヤの幅方向に平行に設置され、かつ前記コンベヤの高さ方向に可動なローラーである、請求項7に記載の水分測定装置。
【請求項10】
前記石炭鎮圧機構が、前記コンベヤ上の石炭に接触する面がコンベヤと平行に保たれた平面である底面と、前記コンベアの進行方向上流側で前記底面から上方に反り返るような傾斜面と、を有し、前記コンベヤの高さ方向に可動な重りである、請求項7に記載の水分測定装置。
【請求項11】
前記石炭鎮圧機構が、前記コンベヤの上り勾配部に設置される、請求項7から請求項10のいずれか一項に記載の水分測定装置。
【請求項12】
請求項1に記載された水分測定方法によって石炭の含水率を測定し、測定した含水率に基づいて、前記石炭の含水率が設定範囲内に収まるように乾燥または加水による調湿を行う、石炭の調湿方法。
【請求項13】
請求項12に記載された石炭の調湿方法によって調湿された石炭をコークス炉に装入してコークスを製造する、コークスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分測定方法および水分測定装置、石炭の調湿方法ならびにコークスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄工場において、コークスの原料となる石炭は、ベルトコンベアで運搬され、調湿機によって乾燥された後にコークス炉に投入される。一般的には原料石炭の含水率が低いほど、コークスの品質は向上する。しかし含水率が低すぎる場合には、運搬中の石炭の粉塵発生量の増加や、発火の危険性、コークス炉の押し詰まりといった問題を発生させる。このため、水分を所定範囲に制御することが必要である。
【0003】
そこで、石炭の含水率を測定する技術として、マイクロ波を用いるものが存在する。例えば、特許文献1~3には、ベルトコンベア上の石炭にマイクロ波を照射し、石炭におけるマイクロ波の伝播特性の変化から、石炭の含水率を測定する技術が提案されている。
【0004】
具体的には、特許文献1には、均し板(スクレーパー)を使ってベルトコンベア上の石炭の表面を均し、嵩密度(バルク密度)を物理的に均一にした状態でマイクロ波により水分測定を行う技術が提案されている。特許文献2には、層厚を測定するための距離計と重量を測定するための秤量機を設けて、マイクロ波水分計の測定したデータに、層厚に基づく補正と、層厚と重量から求めた嵩密度に基づく補正を行う水分測定装置が提案されている。特許文献3には、石炭層内にマイクロ波式水分計を埋め込むことで、嵩密度の変動の影響を受けることなく含水量を測定する方法が提案されている。
【0005】
また、特許文献4には、被測定物を透過していないマイクロ波と被測定物を透過した後のマイクロ波との間の減衰量と位相量から、被測定物の密度および含水率の双方を測定する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7-55726号公報
【特許文献2】特開平6-129980号公報
【特許文献3】特開2014-112053号公報
【特許文献4】特開2019-70535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
マイクロ波を利用した水分測定技術では、嵩密度の情報が必要になる。通常、嵩密度は、放射線の一種であるガンマ線が物質中を通過する際に弱められるという性質を利用して測定される。しかしながら、ガンマ線は取扱いが厳しく規制されており、ガンマ線を用いて嵩密度を測定する方法は管理コストがかかる。
【0008】
一方、特許文献1~4に記載の技術は、ガンマ線による嵩密度の測定を用いないので上記のような不都合は生じないが、以下のような課題がある。すなわち、特許文献1の技術では、嵩密度を測定せずに均し板(スクレーパー)でベルトコンベア上の石炭の表面を均し、嵩密度を物理的に均一にするが、その場合、被測定物の搬送量の変動による層厚の変動が大きく、被測定物の表面が均し板(スクレーパー)の可動域よりも下にある場合には、補正が不可能になってしまう。また、均し板(スクレーパー)によって被測定物が跳ね飛ばされるため、ベルトコンベアから被測定物が落下する課題がある。特許文献3に開示されている技術においても、内部にマイクロ波水分計が設けられたボックスによって被測定物が跳ね飛ばされてベルトコンベアから落下するという同様の課題がある。特許文献2に記載の技術では、層厚と嵩密度を測定して水分計の補正に用いているものの、マイクロ波を照射している範囲の石炭層表面の形状が平らでない場合は、測定した層厚や嵩密度自体に誤差を生じてしまう。さらに、特許文献4のように減衰量と位相量から被測定物の密度を測定する技術では、高精度な嵩密度の測定は困難である。
【0009】
本発明は、コンベア上を搬送される石炭に対してマイクロ波を用いて水分測定を行う際に、高精度かつ安定した水分測定が可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は以下の[1]~[13]の手段を提供する。
【0011】
[1]コンベヤ上を搬送される石炭の水分を測定する水分測定方法であって、
前記コンベヤ上の石炭を鎮圧して前記石炭の表面を均すとともに前記石炭を圧縮する石炭鎮圧工程と、
前記石炭鎮圧工程により鎮圧を行った後の前記石炭の層厚を測定する層厚測定工程と、
前記石炭鎮圧工程によって鎮圧された後の前記石炭に向けてマイクロ波を送信波として送信するマイクロ波送信工程と、
前記マイクロ波送信工程で送信され、前記石炭を透過した後の前記マイクロ波を受信波として受信するマイクロ波受信工程と、
前記送信波と前記受信波とを比較して変化量を算出するマイクロ波変化量算出工程と、
前記マイクロ波変化量算出工程で算出した変化量と、前記層厚測定工程で測定した前記石炭の層厚に基づいて前記石炭の含水率を算出する含水率算出工程と、
を備える、水分測定方法。
【0012】
[2]前記石炭鎮圧工程は、回転軸が前記コンベヤの幅方向に平行に設置され、かつ前記コンベヤの高さ方向に可動なローラーにより前記石炭を鎮圧する、[1]に記載の水分測定方法。
【0013】
[3]前記石炭鎮圧工程は、前記コンベヤ上の前記石炭に接触する面が前記コンベヤと平行に保たれた平面である底面と、前記コンベアの進行方向上流側で前記底面から上方に反り返るような傾斜面と、を有し、前記コンベヤの高さ方向に可動な重りにより前記石炭を鎮圧する、[1]に記載の水分測定方法。
【0014】
[4]前記マイクロ波変化量算出工程で算出した変化量が、位相差および減衰率の一方または両方を含む、[1]に記載の水分測定方法。
【0015】
[5]前記マイクロ波として複数の周波数を用いる、[1]から[4]のいずれかに記載の水分測定方法。
【0016】
[6]前記石炭鎮圧工程は、前記コンベヤの上り勾配部で行う、[1]から[4]のいずれかに記載の水分測定方法。
【0017】
[7]コンベヤ上を搬送される石炭の水分を測定する水分測定装置であって、
前記コンベヤ上の石炭を鎮圧して前記石炭の表面を均すとともに前記石炭を圧縮する石炭鎮圧機構と、
前記石炭鎮圧機構により鎮圧された後の前記石炭の層厚を測定する層厚測定部と、
前記石炭鎮圧機構によって鎮圧された前記石炭に向けてマイクロ波を送信波として送信するマイクロ波送信部と、
前記マイクロ波送信部から送信され前記石炭を透過した前記マイクロ波を受信波として受信するマイクロ波受信部と、
前記送信波と前記受信波とを比較して変化量を算出するマイクロ波変化量算出部と、
前記マイクロ波変化量算出部で算出した変化量と、前記層厚測定部で測定した前記石炭の層厚に基づいて前記石炭の含水率を算出する含水率算出部と、
を備える、水分測定装置。
【0018】
[8]前記層厚測定部は、
前記石炭鎮圧機構により鎮圧された後の前記石炭の表面までの距離を測定する距離計と、
前記距離計で測定した距離値に基づいて前記鎮圧を行った後の前記石炭の層厚を算出する層厚算出部と、
を有する、[7]に記載の水分測定装置。
【0019】
[9]前記石炭鎮圧機構が、回転軸が前記コンベヤの幅方向に平行に設置され、かつ前記コンベヤの高さ方向に可動なローラーである、[7]に記載の水分測定装置。
【0020】
[10]前記石炭鎮圧機構が、前記コンベヤ上の石炭に接触する面がコンベヤと平行に保たれた平面である底面と、前記コンベアの進行方向上流側で前記底面から上方に反り返るような傾斜面と、を有し、前記コンベヤの高さ方向に可動な重りである、[7]に記載の水分測定装置。
【0021】
[11]前記石炭鎮圧機構が、前記コンベヤの上り勾配部に設置される、[7]から[10]のいずれかに記載の水分測定装置。
【0022】
[12]上記[1]に記載された水分測定方法によって石炭の含水率を測定し、測定した含水率に基づいて、前記石炭の含水率が設定範囲内に収まるように乾燥または加水による調湿を行う、石炭の調湿方法。
【0023】
[13]上記[12]に記載された石炭の調湿方法によって調湿された石炭をコークス炉に装入してコークスを製造する、コークスの製造方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、コンベヤ上の石炭を鎮圧して石炭の表面を均すとともに石炭を圧縮することで、石炭の嵩密度の変動を小さくすると同時に、石炭のマイクロ波が透過する範囲の層厚変動も小さくした状態で、層厚測定とマイクロ波の送信波と受信波の変化量の算出を行い、これらに基づいて石炭の含水率を算出するようにしたので、高精度かつ安定した水分測定が可能となる。また、石炭を上から押さえつけて鎮圧しているため、コンベヤ上の石炭がコンベヤ外に跳ね飛ばされることもない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第1の実施形態に係る水分測定装置を模式的に示す側面図である。
図2図1の水分測定装置に含まれる石炭鎮圧機構をベルトコンベヤの搬送方向下流側から見た断面図である。
図3図1の水分測定装置による水分測定方法を示すフローチャートである。
図4】本発明の第2の実施形態に係る水分測定装置を模式的に示す側面図である。
図5図4の水分測定装置に含まれる石炭鎮圧機構をベルトコンベヤの搬送方向下流側から見た断面図である。
図6】本発明の第3の実施形態に係る水分測定装置に含まれる石炭鎮圧機構を模式的に示す側面図である。
図7図6の石炭鎮圧機構をベルトコンベヤの搬送方向下流側から見た断面図である。
図8】第3の実施形態に係る水分測定装置に含まれる石炭鎮圧機構を水平方向から角度θを有する上り勾配のベルトコンベヤ上に設置した様子を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
【0027】
<第1の実施形態>
図1は本発明の第1の実施形態に係る水分測定装置を模式的に示す側面図、図2図1の水分測定装置に含まれる石炭鎮圧機構をベルトコンベヤの搬送方向下流側から見た断面図である。
【0028】
水分測定装置1は、図1に示すベルトコンベヤB上を図中矢印Vの方向に搬送される石炭Cの含水率を測定するものである。石炭CはベルトコンベヤBによって調湿設備に運搬され、調湿設備において水分測定装置1が測定した含水率に基づいて、含水率が設定範囲内に収まるように乾燥(または加水)される。その後、含水率が調節された石炭がコークス炉に装入されてコークスが製造される。なお、図1は、水分測定装置1は調湿設備の前段に設けられている例を示しているが、水分測定装置1は調湿設備の後段に設置されてもよく、調湿設備の前段と後段の両方に設置されてもよい。水分測定装置1が調湿設備の後段のみに設置された場合でも、水分測定装置1が測定した含水率が設定範囲を逸脱する場合は、含水率が設定範囲に収まる方向に乾燥(または加水)の強度が調整される。
【0029】
水分測定装置1は、石炭鎮圧機構2と、層厚測定部3と、マイクロ波送信部41と、マイクロ波受信部42と、マイクロ波変化量算出部43と、含水率算出部5とを備える。
【0030】
石炭鎮圧機構2は、ベルトコンベヤB上の石炭Cを予め鎮圧するためのローラー21とそれを保持するアーム22からなる。図2に示すように、ローラー21はその回転軸21aがベルトコンベヤBの幅方向に平行に配置されている。ローラー21の回転軸21aはアーム22に保持されている。アーム22は、回転軸21aから斜め上方に延び、その上端部がシャフトSに回転可能に保持され、図1に示すようにシャフトSに対して揺動可能に構成されている。そして、アーム22が揺動されることにより、ローラー21が上下動可能となっている。ローラー21は、ベルトコンベヤB上で搬送される石炭Cを上から鎮圧して石炭Cの表面を均すとともに石炭Cを圧縮する。また、ローラー21は、石炭C表面高さの変動に倣って上下する。このローラー21による鎮圧はローラー21の自重により行われるため、ローラー21として、石炭Cを圧縮するのに十分な重量を有するものを用いる。さらに、ローラー21の跳ね上がりを抑制し、石炭C表面高さ変動への追従性を向上させるために、アーム22を下げる方向にばね等で追加的に荷重を加えるようにしてもよい。
【0031】
層厚測定部3は、距離計31と層厚算出部32とを有する。距離計31は、ベルトコンベヤB上で石炭鎮圧機構2の下流側に設置され、鎮圧された石炭Cの表面の高さ、すなわち石炭Cの層厚を測定する。距離計31は、例えば超音波式の距離計であって、超音波Uを石炭C表面に向かって送信し、その反射波を受信して、超音波Uを送信してから受信するまでの時間を計測して、音速に基づいて距離計31と石炭C表面間の距離に換算する。層厚算出部32は、距離計31の測定値に基づいてベルトコンベヤB上の石炭Cの層厚を算出する演算装置である。層厚算出部32にはベルトコンベヤB上に石炭Cがない状態での距離計31の値、すなわちベルトコンベヤB表面までの距離が予め保持されており、距離計31の測定値との差分をとることで石炭Cの層厚を算出する。
【0032】
距離計31として超音波式のものを用いることにより、粉塵が発生する場合にでも影響を受けることなく測定が可能であるという利点が得られる。なお、距離計31としては、超音波式に限定されるものではなく、測定環境に応じてレーザー式、TOF(Time of Flight)方式、ステレオカメラなどでもよい。
【0033】
層厚測定部3は、石炭Cの層厚測定を、石炭鎮圧機構2のロール21の高さを測定することで行うものであってもよい。例えばロール21の高さを接触式あるいは非接触式のセンサで測定する手法や、アーム22の回転角度をシャフトSに取り付けたポテンショメータで測定して、層厚算出部において層厚に換算する手法を採用してもよい。
【0034】
マイクロ波送信部41は、鎮圧された後の石炭層に向けてマイクロ波を送信波として送信する。具体的には所定のエネルギーおよび位相のマイクロ波を送信する。マイクロ波受信部42は、マイクロ波送信部41から送信され、石炭Cを透過した後のマイクロ波を受信波として受信する。マイクロ波送信部41とマイクロ波受信部42は、それぞれ例えばホーンアンテナからなっており、ベルトコンベヤB上の石炭Cの鎮圧が行われた後の位置であって、石炭Cを挟んで互いに対向する位置に位置決めされている。
【0035】
マイクロ波変化量算出部43は、ケーブルを介してマイクロ波送信部41およびマイクロ波受信部42にそれぞれ接続され、マイクロ波送信部41から送信された送信波と、マイクロ波受信部42で受信された受信波とを比較して変化量を算出する。変化量としては、位相差および減衰率(エネルギー比)の一方または両方を含んでいてよい。マイクロ波変化量算出部43は、マイクロ波の変化量の算出の他、マイクロ波送信部41およびマイクロ波受信部42の動作の制御も行う。
【0036】
なお、使用するマイクロ波の波長や、マイクロ波送信部41とマイクロ波受信部42との距離等の条件は、石炭Cの銘柄・種類などに応じて適宜設定することができる。さらに複数の周波数(波長)のマイクロ波で送受信波の比較を行って、周波数毎の変化量(すなわち周波数特性)を求めるようにしてもよい。
【0037】
含水率算出部5は、マイクロ波変化量算出部43により算出されたマイクロ波Wの送信波と受信波の変化量と、層厚算出部で算出した石炭Cの層厚を用いて、石炭Cの含水率を算出する。具体的には、含水率算出部5は、位相差をΦ(deg)、減衰率をA(dB)、層厚をD(mm)としたとき、下記の(1)式により石炭Cの含水率M(%)を算出する。
M=(KΦ×Φ/D)+(K×A/D)+K ・・・(1)
ここで、KΦ、K、Kは、石炭Cの銘柄・種類、マイクロ波送信部41およびマイクロ波受信部42の距離、ベルトコンベアBの材質および厚さ等に応じて予め設定される係数である。
【0038】
また、係数KΦ、K、Kは、事前に用意された多くの石炭Cのサンプルを用いて予め決定された係数であってもよい。具体的には、以下のような手順で係数KΦ、K、Kを予め決定することができる。すなわち、事前に用意された複数のサンプル(少なくとも3サンプル以上の石炭C)について、JIS規格(分析水分)JIS M 8811 : 2000 石炭類及びコークス類 - ロットの全水分測定方法 に基づき含水率Mを算出しておく。加えて、これらのサンプルについて、位相差Φと、減衰率Aと、層厚Dとについても測定しておく。そして、これらのサンプルに関する含水率Mと、位相差Φと、減衰率Aと、層厚Dとに基づいて、上記(1)式の係数KΦ、K、Kを決定する。
【0039】
次に、このように構成される水分測定装置1による水分測定方法について説明する。
図3は、図1の水分測定装置による水分測定方法を示すフローチャートである。
まず、コンベヤB上の石炭Cを上から鎮圧して石炭Cの表面を均すとともに石炭Cを圧縮する(石炭鎮圧工程;ステップST1)。本実施形態では、この石炭鎮圧工程を石炭鎮圧機構2のローラー21により行う。
【0040】
次いで、コンベヤB上の鎮圧された後の石炭Cの層厚を測定する(層厚測定工程;ステップST2)。石炭Cの層厚の測定は、例えば、距離計31により石炭Cの表面の高さを測定し、層厚算出部32により演算することによって行うことができる。上述したように距離計31としては、超音波式の距離計を好適に用いることができる。
【0041】
次いで、コンベヤB上のステップST1の鎮圧された後の石炭Cに向けてマイクロ波を送信波として送信する(マイクロ波送信工程;ステップST3)。マイクロ波の送信は、例えばホーンアンテナからなるマイクロ波送信部41により行われる。マイクロ波送信部41は所定のエネルギーおよび位相のマイクロ波Wを送信する。
【0042】
そして、送信され、石炭層を透過した後のマイクロ波を受信波として受信する(マイクロ波受信工程;ステップST4)。マイクロ波の受信は、例えばホーンアンテナからなるマイクロ波受信部42により行われる。
【0043】
次いで、送信波と受信波とを比較して変化量を算出する(マイクロ波変化量算出工程;ステップST5)。この工程は、マイクロ波変化量算出部43で行われる。変化量としては、位相差および減衰率(エネルギー比)の一方または両方を含んでいてよい。
【0044】
次いで、ステップST5で算出したマイクロ波の変化量と、ステップST2で測定した石炭Cの層厚とに基づいて、石炭Cの含水率を算出する(含水率算出工程;ステップST6)。この工程は、含水率算出部5で行われる。このときの含水率の算出は、上述した(1)式に基づいて行われる。
【0045】
このように、本実施形態では、コンベヤB上の石炭Cの水分を測定するにあたり、以上のステップST1~ステップST6を実施することにより、以下のような効果を得ることができる。
【0046】
石炭Cは、通常、ホッパーから切り出されたり、別のベルトコンベヤから乗り継いだりした状態でベルトコンベヤB上を搬送されている。すなわち、石炭Cはベルトコンベヤ上に落とされただけの状態であるため、石炭粒間には空隙が多く存在し、嵩密度が低くかつ嵩密度のばらつきが大きい状態である。
【0047】
これに対し、本実施形態では、コンベヤB上の石炭Cを石炭鎮圧機構2によって鎮圧するので、石炭Cは圧縮され、石炭Cの粒間の空隙が減少して嵩密度が高まり、粒度分布などが一定であれば鎮圧後の嵩密度の変動は小さく、嵩密度はほぼ一定となる。マイクロ波変化量算出部43で算出され、(1)式に含まれる位相差や減衰率は、石炭Cの嵩密度と石炭Cの層厚に依存する量であるため、嵩密度が鎮圧によりほぼ一定となり、かつ、マイクロ波が透過する範囲の層厚が既知となることで、(1)式で算出される含水率の測定精度が向上する。また、石炭Cが鎮圧されて石炭Cの表面が平坦に均されることにより、マイクロ波Wが透過する範囲(マイクロ波送信部41とマイクロ波受信部42で挟まれた範囲)の層厚のばらつきが小さくなり、含水率の測定精度を一層高めることができる。
【0048】
さらに、コンベヤB上の石炭Cを圧縮するため、石炭CがコンベヤBからコンベヤ外へ跳ね飛ばされることも抑制することができる。
【0049】
さらにまた、石炭Cを鎮圧して嵩密度をほぼ一定にできるため、特許文献1にも記載されているように、石炭Cの含水率を算出する式中に変数として嵩密度を含む必要がなく、ガンマ線による嵩密度の測定は不要である。
【0050】
<第2の実施形態>
図4は、本発明の第2の実施形態に係る水分測定装置を模式的に示す側面図、図5図4の水分測定装置に含まれる石炭鎮圧機構をベルトコンベヤの搬送方向下流側から見た断面図である。第2の実施形態は、第1の実施形態の石炭鎮圧機構2の代わりに石炭鎮圧機構2′を設けている点を除き、第1の実施形態と同じであるから、他の構成については第1の実施形態と同じ符号を付し、説明を省略する。
【0051】
第2の実施形態において、石炭鎮圧機構2′は、ベルトコンベヤB上の石炭Cを予め鎮圧するための重り23と、それを保持する一対の第1アーム24a(一方のみ図示)および一対の第2アーム24b(一方のみ図示)とからなる。
【0052】
重り23は、ベルトコンベヤB上の石炭Cに接触する面が、ベルトコンベヤBと平行に保たれた平面である底面と、ベルトコンベヤBの進行方向(図中矢印Vの方向)上流側で底面から上方に反り返るような傾斜面である面取り部23aとを有し、面取り部23aにより、搬送されてくる石炭Cを重り23の下部に誘導するようになっている。
【0053】
一対の第1アーム24aは、その下端部が軸25aを介して重り23に回転可能に接続されており、一対の第2アーム24bは、その下端部が軸25bにより重り23に回転可能に接続されている。第1アーム24aおよび第2アーム24bは、軸25aおよび軸25bで接続された下端部から、互いに平行に斜め上方に延びている。一対の第1アーム24aの上端部はシャフトS1で保持され、一対の第2アーム24bの上端部はシャフトS2で保持されている。第1アーム24aおよび第2アーム24bは、シャフトS1およびシャフトS2に対して揺動可能に構成されており、第1アーム24aおよび第2アーム24bが揺動されることにより、重り23の底面をベルトコンベヤBと平行に保ったまま重り23の上下動を可能となっている。重り23はベルトコンベヤB上で搬送される石炭Cを上から押さえつけて圧縮しながら石炭Cの表面を均す鎮圧を行いつつ、石炭C表面高さの変動に倣って上下する。この重り23による鎮圧は重り23の自重により行われるため、重り23として、石炭Cを圧縮するのに十分な重量を有するものを用いる。さらに、重り23の跳ね上がりを抑制し、石炭C表面高さ変動への追従性を向上させるために、第1アーム24aおよび第2アーム24bを下げる方向にばね等で追加的に荷重を加えるようにしてもよい。
【0054】
本実施形態でも、石炭Cの鎮圧を石炭鎮圧機構2′の重り23により行う以外、第1の実施形態のステップST1~ステップST6と同様に行うことができ、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0055】
<第3の実施形態>
図6は、本発明の第3の実施形態に係る水分測定装置に含まれる石炭鎮圧機構を模式的に示す側面図、図7図6の石炭鎮圧機構をベルトコンベヤの搬送方向下流側から見た断面図である。第3の実施形態は、第2の実施形態の石炭鎮圧機構2′の代わりに、その重り23をそり状板23′に変更した石炭鎮圧機構2″を設けている点を除き、第2の実施形態と同じであるから、他の構成については第2の実施形態と同じ符号を付し、説明を省略する。
【0056】
そり状板23′は、第2の実施形態の重り23と同じく、ベルトコンベヤB上の石炭Cを鎮圧するために必要な重量を有しており、ベルトコンベヤB上の石炭Cに接触する面が、ベルトコンベヤBと平行に保たれた平面である底面と、ベルトコンベヤBの進行方向(図中矢印Vの方向)上流側で底面から上方に反り返るような傾斜面23′aとを有している。このように、そり状板23′は、石炭を鎮圧するための重りとして機能するとともに、そのベルトコンベヤB上の石炭Cに接触する面が、ベルトコンベヤBと平行に保たれた底面と、ベルトコンベヤBの進行方向上流側で底面から上方に反り返る傾斜面23′aとからなる形状を有しているため、第2の実施形態の重り23と同様の機能を有する。このため、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0057】
本実施形態において、石炭鎮圧機構2″は、ベルトコンベヤBの上り勾配部に設置されていてよい。図8は、第3の実施形態に係る水分測定装置に含まれる石炭鎮圧機構2″を水平方向から角度θを有する上り勾配のベルトコンベヤB上に設置した様子を模式的に示す側面図である。石炭鎮圧機構2″を上り勾配を有するベルトコンベヤB上に設置すると、そり状板23′に作用する重力の分力としてベルトコンベヤBの進行方向Vと逆方向の力Fが作用する。結果として、傾斜面23′aにぶつかる石炭Cを上流方向(Vと逆方向)に押し戻す力が働き、石炭Cの表面凹凸を均す効果が大きくなる。すなわち、石炭Cがそり状板23′により鎮圧されて嵩密度がほぼ一定に安定化される効果に加えて、石炭Cの層厚の短周期変動が抑制されるという効果も得られる。層厚の短周期変動が抑制されることで、マイクロ波透過時の変化量(位相差、減衰)の測定のばらつきも抑制され、結果として石炭Cの水分率の測定精度が向上する。ベルトコンベヤBの上り勾配の角度θは10~15°が好適である。θが10°未満では層厚変動抑制の効果が小さくなる。15°より大きな勾配は、一般的に平ベルト式のコンベヤで石炭を搬送する場合の限界勾配を超えるため適用困難である。
【0058】
なお、上記第1の実施形態の石炭鎮圧機構2および上記第2の実施形態の石炭鎮圧機構2′も同様にベルトコンベヤBの上り勾配部に設置されていてよく、本実施形態と同様の効果が得られる。また、第1の実施形態および第2の実施形態においても、本実施形態と同様、ベルトコンベヤBの上り勾配の角度θは10~15°が好適である。
【0059】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらはあくまで例示に過ぎず、制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、本発明の要旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0060】
例えば、上記実施形態では、石炭を鎮圧する工程を、ローラー21(第1の実施形態)、重り23(第2の実施形態)、およびそり状板23′(第3の実施形態)で行う例を示したが、石炭を上から押さえつけて圧縮しながら石炭の表面を均すことができれば、これらに限るものではない。
【符号の説明】
【0061】
1 水分測定装置
2、2′、2″ 石炭鎮圧機構
3 層厚測定部
5 含水率算出部
21 ローラー
21a 回転軸
22、24a、24b アーム
23 重り
23′ そり状板
25a、25b 軸
31 距離計
32 層厚算出部
41 マイクロ波送信部
42 マイクロ波受信部
43 マイクロ波変化量算出部
B ベルトコンベヤ
C 石炭
S、S1、S2 シャフト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8