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特開2024-180309コーティング方法及びペインティング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180309
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】コーティング方法及びペインティング方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 5/00 20060101AFI20241219BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B05D5/00 Z
C09D201/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024087594
(22)【出願日】2024-05-30
(31)【優先権主張番号】P 2023099265
(32)【優先日】2023-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】516218384
【氏名又は名称】ハドラスホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108442
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義孝
(72)【発明者】
【氏名】内藤 孝
(72)【発明者】
【氏名】池田 正範
(72)【発明者】
【氏名】安藤 務
(72)【発明者】
【氏名】俵 千鶴子
(72)【発明者】
【氏名】山本 英明
(72)【発明者】
【氏名】野々下 大輝
【テーマコード(参考)】
4D075
4J038
【Fターム(参考)】
4D075CA50
4D075DA06
4D075DB01
4D075DB12
4D075DB13
4D075DB14
4D075DB31
4D075DC01
4D075DC05
4D075EA06
4D075EA07
4D075EA14
4D075EB43
4D075EB56
4J038CD101
4J038CG001
4J038DG051
4J038DG261
4J038DL031
4J038DL171
4J038KA08
4J038NA27
4J038PA06
(57)【要約】
【課題】被覆対象である物品の面に対するコーティング液のコーティング量やコーティング膜の被覆量を低減させることができ、物品を廉価にコーティングすることができるコーティング方法を提供する。
【解決手段】コーティング方法は、コーティング液にナノバブルを分散混入させてナノバブル含有コーティング液10を作るナノバブル含有コーティング液製造工程と、ナノバブル含有コーティング液製造工程によって製造されたナノバブル含有コーティング液10を被覆対象である物品11の面12にコーティングするコーティング工程と、コーティング工程によって物品11の面12にコーティングされたナノバブル含有コーティング液10を乾燥(化学反応)させてナノバブルが分散混在したナノバブル含有コーティング膜13を形成するナノバブル含有コーティング膜形成工程とを有する。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆対象にコーティング液をコーティングし、前記被覆対象にコーティング膜を形成するコーティング方法において、
前記コーティング方法が、前記コーティング液にナノバブルを分散混入させてナノバブル含有コーティング液を作るナノバブル含有コーティング液製造工程と、前記ナノバブル含有コーティング液製造工程によって製造されたナノバブル含有コーティング液を前記被覆対象にコーティングするコーティング工程と、前記コーティング工程によって前記被覆対象にコーティングされたナノバブル含有コーティング液を乾燥させて前記ナノバブルが分散混在したナノバブル含有コーティング膜を形成するナノバブル含有コーティング膜形成工程とを有することを特徴とするコーティング方法。
【請求項2】
前記ナノバブル含有コーティング液製造工程が、前記コーティング工程を実施する直近に実施される請求項1に記載のコーティング方法。
【請求項3】
前記ナノバブル含有コーティング液製造工程が、前記コーティング工程を実施するコーティング現場において実施される請求項2に記載のコーティング方法。
【請求項4】
前記ナノバブル含有コーティング液製造工程によって製造されたナノバブル含有コーティング液に分散混入するナノバブルの平均粒径D90が、1μm未満であり、前記平均粒径D90のナノバブルが、前記ナノバブル含有コーティング液の内部に所定の濃度で分散混入し、前記ナノバブル含有コーティング膜形成工程によって形成されたナノバブル含有コーティング膜に分散混在するナノバブルの平均粒径D90が、1μm未満であり、前記平均粒径D90のナノバブルが、前記ナノバブル含有コーティング膜の内部に所定の濃度で分散混在している請求項3に記載のコーティング方法。
【請求項5】
前記ナノバブル含有コーティング液に分散混入するナノバブルの平均粒径D50が、1nm以上500nm未満の範囲にあり、前記平均粒径D50のナノバブルが、前記ナノバブル含有コーティング液の内部に所定の濃度で分散混入し、前記ナノバブル含有コーティング膜に分散混在するナノバブルの平均粒径D50が、1nm以上500nm未満の範囲にあり、前記平均粒径D50のナノバブルが、前記ナノバブル含有コーティング膜の内部に所定の濃度で分散混在している請求項4に記載のコーティング方法。
【請求項6】
前記ナノバブル含有コーティング液製造工程によって製造されたナノバブル含有コーティング液における前記ナノバブルの含有率が、10~95vol.%の範囲にあり、前記ナノバブル含有コーティング膜形成工程によって形成されたナノバブル含有コーティング膜における前記ナノバブルの含有率が、10~95vol.%の範囲にある請求項5に記載のコーティング方法。
【請求項7】
前記ナノバブル含有コーティング膜形成工程によって形成されたナノバブル含有コーティング膜が、ナノバブル含有無機コーティング膜又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜である請求項6に記載のコーティング方法。
【請求項8】
塗装対象に塗料をペインティングし、前記塗装対象に塗膜を形成するペインティング方法において、
前記ペインティング方法が、前記塗料にナノバブルを分散混入させてナノバブル含有塗料を作るナノバブル含有塗料製造工程と、前記ナノバブル含有塗料製造工程によって製造されたナノバブル含有塗料を前記塗装対象にペインティングするペインティング工程と、前記ペインティング工程によって前記塗装対象にペインティングされたナノバブル含有塗料を乾燥させて前記ナノバブルが分散混在したナノバブル含有塗膜を形成するナノバブル含有塗膜形成工程とを有することを特徴とするペインティング方法。
【請求項9】
前記ナノバブル含有塗料製造工程が、前記ペインティング工程を実施する直近に実施される請求項8に記載のペインティング法。
【請求項10】
前記ナノバブル含有塗料製造工程が、前記ペインティング工程を実施するペインティング現場において実施される請求項9に記載のペインティング方法。
【請求項11】
前記ナノバブル含有塗料製造工程によって製造されたナノバブル含有塗料に分散混入するナノバブルの平均粒径D90が、1μm未満であり、前記平均粒径D90のナノバブルが、前記ナノバブル含有塗料の内部に所定の濃度で分散混入し、前記ナノバブル含有塗膜形成工程によって形成されたナノバブル含有塗膜に分散混在するナノバブルの平均粒径D90が、1μm未満であり、前記平均粒径D90のナノバブルが、前記ナノバブル含有塗膜の内部に所定の濃度で分散混在している請求項10に記載のペインティング方法。
【請求項12】
前記ナノバブル含有塗料に分散混入するナノバブルの平均粒径D50が、1nm以上500nm未満の範囲にあり、前記平均粒径D50のナノバブルが、前記ナノバブル含有塗料の内部に所定の濃度で分散混入し、前記ナノバブル含有塗膜に分散混在するナノバブルの平均粒径D50が、1nm以上500nm未満の範囲にあり、前記平均粒径D50のナノバブルが、前記ナノバブル含有塗膜の内部に所定の濃度で分散混在している請求項4に記載のペインティング方法。
【請求項13】
前記ナノバブル含有塗料製造工程によって製造されたナノバブル含有塗料における前記ナノバブルの含有率が、10~95vol.%の範囲にあり、前記ナノバブル含有塗膜形成工程によって形成されたナノバブル含有塗膜における前記ナノバブルの含有率が、10~95vol.%の範囲にある請求項12に記載のペインティング方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆対象にコーティング液をコーティングしてその被覆対象にコーティング膜を形成するコーティング方法に関するとともに、塗装対象に塗料をペインティングしてその塗装対象に塗膜を形成するペインティング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ポリシラザンを20~60wt%、アルキルシリケート縮合物を5~15wt%、有機溶剤を0~80wt%の割合で含有し、有機ポリシラザンにおけるメチル基の含有率が50%以上であるコーティング液が開示されている(特許文献1参照)。このコーティング液は、有機ポリシラザンが水分と反応することで、シロキサン結合による主鎖の一部に有機官能基が側鎖として結びついた無機有機複合構造の被覆層が形成されるとともに、アルキルシリケート縮合物が架橋剤として作用し、被覆層に架橋構造が形成されることにより、コーティング膜の弾性率を低下させ、一定以上の膜厚であっても柔軟性を維持することができる。
【0003】
又、含フッ素重合体と、第1の架橋性基を有して動粘度が30~150mm/sのポリジメチルシリコーンと、第2の架橋性基を有するアクリルシリコーンと、第1の架橋性基及び第2の架橋性基と反応し得る反応性基を有する硬化剤とを含む塗料が開示されている(特許文献2参照)。この塗料を利用することで、耐温水性に優れた防汚塗膜を作ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-14514号公報
【特許文献2】特開2023-52716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
有機ポリシラザンを含むコーティング液は、高価であるため、被覆対象の面(表面、裏面)に対するコーティング液の塗布量を低減させ、コーティング液を廉価に使用することが望まれる。しかし、被覆対象の面を所定の膜厚で被覆することでコーティング膜がその効果を発現する以上、塗布されたコーティング液が硬化した後のコーティング膜に所定厚みの膜厚が確保される必要があり、無条件にその塗布量を少なくすることができない。コーティング液を塗布する被覆対象の比表面積が大きい場合であってその全体にコーティング液を塗布した場合、コーティング液が硬化したコーティング膜の膜厚が小さいとはいえ、コーティング膜を含む被覆対象の重量が増加する。
【0006】
又、塗料は、塗装対象に対する塗布量を低減させ、塗料を廉価に塗布できることが好ましい。しかし、予想対象の面に所定の膜厚で塗布することで塗膜が基材の面を保護し得る以上、塗布された塗料が硬化した後の塗膜に所定厚みの膜厚が確保される必要があり、無条件に塗料の塗布量を少なくすることができない。
【0007】
本発明の目的は、被覆対象に対するコーティング液のコーティング量やコーティング膜の被覆量を低減させることができ、被覆対象を廉価にコーティングすることができるコーティング方法を提供することにある。本発明の他の目的は、被覆対象を被覆した場合においてコーティング膜を含む被覆対象の重量の増加を最小限にすることができるコーティング方法を提供することにある。本発明の他の目的は、塗装対象に対する塗料のペインティング量や塗膜の塗装量を低減させることができ、塗装対象を廉価にペインティングすることができるペインティング方法を提供することにある。本発明の他の目的は、塗装対象を塗装した場合において塗膜を含む塗装対象の重量の増加を最小限にすることができるペインティング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための本発明の第1の前提は、被覆対象にコーティング液をコーティングし、被覆対象にコーティング膜を形成するコーティング方法である。
【0009】
前記第1の前提における本発明の第1の特徴としては、コーティング方法が、コーティング液にナノバブルを分散混入させてナノバブル含有コーティング液を作るナノバブル含有コーティング液製造工程と、ナノバブル含有コーティング液製造工程によって製造されたナノバブル含有コーティング液を被覆対象にコーティングするコーティング工程と、コーティング工程によって被覆対象にコーティングされたナノバブル含有コーティング液を乾燥させてナノバブルが分散混在したナノバブル含有コーティング膜を形成するナノバブル含有コーティング膜形成工程とを有することにある。
【0010】
前記第1の特徴を有する本発明の一例としては、ナノバブル含有コーティング液製造工程が、コーティング工程を実施する直近に実施される。
【0011】
前記第1の特徴を有する本発明の他の一例としては、ナノバブル含有コーティング液製造工程が、コーティング工程を実施するコーティング現場において実施される。
【0012】
前記第1の特徴を有する本発明の他の一例としては、ナノバブル含有コーティング液製造工程によって製造されたナノバブル含有コーティング液に分散混入するナノバブルの平均粒径D90が、1μm未満であり、平均粒径D90のナノバブルが、ナノバブル含有コーティング液の内部に所定の濃度で分散混入し、ナノバブル含有コーティング膜形成工程によって形成されたナノバブル含有コーティング膜に分散混在するナノバブルの平均粒径D90が、1μm未満であり、平均粒径D90のナノバブルが、ナノバブル含有コーティング膜の内部に所定の濃度で分散混在している。
【0013】
前記第1の特徴を有する本発明の他の一例としては、ナノバブル含有コーティング液に分散混入するナノバブルの平均粒径D50が、1nm以上500nm未満の範囲にあり、平均粒径D50のナノバブルが、ナノバブル含有コーティング液の内部に所定の濃度で分散混入し、ナノバブル含有コーティング膜に分散混在するナノバブルの平均粒径D50が、1nm以上500nm未満の範囲にあり、平均粒径D50のナノバブルが、ナノバブル含有コーティング膜の内部に所定の濃度で分散混在している。
【0014】
前記第1の特徴を有する本発明の他の一例としては、ナノバブル含有コーティング液製造工程によって製造されたナノバブル含有コーティング液におけるナノバブルの含有率が、10~95vol.%の範囲にあり、ナノバブル含有コーティング膜形成工程によって形成されたナノバブル含有コーティング膜におけるナノバブルの含有率が、10~95vol.%の範囲にある。
【0015】
前記第1の特徴を有する本発明の他の一例としては、ナノバブル含有コーティング膜形成工程によって形成されたナノバブル含有コーティング膜が、ナノバブル含有無機コーティング膜又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜である。
【0016】
前記課題を解決するための本発明の第2の前提は、塗装対象に塗料をペインティングし、塗装対象に塗膜を形成するペインティング方法である。
【0017】
前記第2の前提における本発明の第2の特徴としては、ペインティング方法が、塗料にナノバブルを分散混入させてナノバブル含有塗料を作るナノバブル含有塗料製造工程と、ナノバブル含有塗料製造工程によって製造されたナノバブル含有塗料を塗装対象にペインティングするペインティング工程と、ペインティング工程によって塗装対象にペインティングされたナノバブル含有塗料を乾燥させてナノバブルが分散混在したナノバブル含有塗膜を形成するナノバブル含有塗膜形成工程とを有することにある。
【0018】
前記第2の特徴を有する本発明の一例としては、ナノバブル含有塗料製造工程が、ペインティング工程を実施する直近に実施される。
【0019】
前記第2の特徴を有する本発明の他の一例としては、ナノバブル含有塗料製造工程が、ペインティング工程を実施するペインティング現場において実施される。
【0020】
前記第2の特徴を有する本発明の他の一例としては、ナノバブル含有塗料製造工程によって製造されたナノバブル含有塗料に分散混入するナノバブルの平均粒径D90が、1μm未満であり、平均粒径D90のナノバブルが、ナノバブル含有塗料の内部に所定の濃度で分散混入し、ナノバブル含有塗膜形成工程によって形成されたナノバブル含有塗膜に分散混在するナノバブルの平均粒径D90が、1μm未満であり、平均粒径D90のナノバブルが、ナノバブル含有塗膜の内部に所定の濃度で分散混在している。
【0021】
前記第2の特徴を有する本発明の他の一例としては、ナノバブル含有塗料に分散混入するナノバブルの平均粒径D50が、1nm以上500nm未満の範囲にあり、平均粒径D50のナノバブルが、ナノバブル含有塗料の内部に所定の濃度で分散混入し、ナノバブル含有塗膜に分散混在するナノバブルの平均粒径D50が、1nm以上500nm未満の範囲にあり、平均粒径D50のナノバブルが、ナノバブル含有塗膜の内部に所定の濃度で分散混在している。
【0022】
前記第2の特徴を有する本発明の他の一例としては、ナノバブル含有塗料製造工程によって製造されたナノバブル含有塗料におけるナノバブルの含有率が、10~95vol.%の範囲にあり、ナノバブル含有塗膜形成工程によって形成されたナノバブル含有塗膜におけるナノバブルの含有率が、10~95vol.%の範囲にある。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係るコーティング方法によれば、コーティング液にナノバブルを分散混入させてナノバブル含有コーティング液を作り、そのナノバブル含有コーティング液を被覆対象にコーティングするとともに、被覆対象にコーティングされたナノバブル含有コーティング液を乾燥(化学反応)させてナノバブルが分散混在したナノバブル含有コーティング膜を形成するから、ナノバブル含有コーティング液やナノバブル含有コーティング膜が超微細気泡であるナノバブルを含有することによって、ナノバブル含有コーティング液の単位体積当たりのコーティング液自体の割合が少なくなるとともに、ナノバブル含有コーティング液膜の単位面積当たりのコーティング膜自体の割合が少なくなり、コーティング液やコーティング膜がナノバブルを含有しない場合と比較し、被覆対象に対するナノバブル含有コーティング液のコーティング量やナノバブル含有コーティング液膜の被覆量を低減させることができ、ナノバブル含有コーティング液によって被覆対象を廉価にコーティングすることができるとともに、ナノバブル含有コーティング膜によって被覆対象を廉価に被覆することができる。コーティング方法は、コーティング膜がナノバブルを含有しない場合と比較してナノバブル含有コーティング膜の単位面積当たりの質量が減少するから、ナノバブル含有コーティング膜が被覆対象を被覆した場合においてナノバブル含有コーティング膜を含む被覆対象の重量の増加を最小限にすることができる。
【0024】
ナノバブル含有コーティング液製造工程がコーティング工程を実施する直近に実施されるコーティング方法は、ナノバブル含有コーティング液製造工程をコーティング工程の直近に実施することで、ナノバブル含有コーティング液製造工程からコーティング工程までに長時間を要する場合と比較し、ナノバブル含有コーティング液からナノバブルが揮発することはなく、ナノバブルが分散混入したナノバブル含有コーティング液を被覆対象にコーティングすることができ、ナノバブルが分散混在したナノバブル含有コーティング膜を被覆対象の面に確実に作ることができる。
【0025】
ナノバブル含有コーティング液製造工程がコーティング工程を実施するコーティング現場において実施されるコーティング方法は、ナノバブル含有コーティング液製造工程をコーティング工程のコーティング現場で実施し、ナノバブル含有コーティング液を作ったその場で被覆対象に対するナノバブル含有コーティング液のコーティングが行われることで、ナノバブル含有コーティング液製造工程からコーティング工程までを短時間に行うことができ、ナノバブル含有コーティング液製造工程からコーティング工程までに長時間を要する場合と比較し、ナノバブル含有コーティング液からナノバブルが揮発することはなく、ナノバブルが分散混入したナノバブル含有コーティング液を被覆対象にコーティングすることができ、ナノバブルが分散混在したナノバブル含有コーティング膜を被覆対象の面に確実に作ることができる。
【0026】
ナノバブル含有コーティング液製造工程によって製造されたナノバブル含有コーティング液に分散混入するナノバブルの平均粒径D90が1μm未満であり、その平均粒径D90のナノバブルがナノバブル含有コーティング液の内部に所定の濃度で分散混入し、ナノバブル含有コーティング膜形成工程によって形成されたナノバブル含有コーティング膜に分散混在するナノバブルの平均粒径D90が1μm未満であり、その平均粒径D90のナノバブルがナノバブル含有コーティング膜の内部に所定の濃度で分散混在しているコーティング方法は、平均粒径D90が1μm未満のナノバブルがナノバブル含有コーティング液やナノバブル含有コーティング膜の内部に所定の濃度で含まれることによって、ナノバブル含有コーティング液の単位体積当たりのコーティング液自体の割合が少なくなるとともに、ナノバブル含有コーティング膜の単位面積当たりのコーティング膜自体の割合が少なくなり、コーティング液やコーティング膜が前記平均粒径D90のナノバブルを含有しない場合と比較し、被覆対象に対するナノバブル含有コーティング液のコーティング量やナノバブル含有コーティング膜の被覆量を低減させることができ、ナノバブル含有コーティング液によって被覆対象を廉価にコーティングすることができるとともに、ナノバブル含有コーティング膜によって被覆対象を廉価に被覆することができる。コーティング方法は、コーティング膜が前記平均粒径D90のナノバブルを含有しない場合と比較してナノバブル含有コーティング膜の単位面積当たりの質量が減少するから、ナノバブル含有コーティング膜が被覆対象を被覆した場合においてナノバブル含有コーティング膜を含む被覆対象の重量の増加を最小限にすることができる。
【0027】
ナノバブル含有コーティング液に分散混入するナノバブルの平均粒径D50が1nm以上500nm未満の範囲にあり、平均粒径D50のナノバブルがナノバブル含有コーティング液の内部に所定の濃度で分散混入し、ナノバブル含有コーティング膜に分散混在するナノバブルの平均粒径D50が1nm以上500nm未満の範囲にあり、平均粒径D50のナノバブルがナノバブル含有コーティング膜の内部に所定の濃度で分散混在しているコーティング方法は、平均粒径D50が1nm以上500nm未満の範囲のナノバブルがナノバブル含有コーティング液やナノバブル含有コーティング膜の内部に所定の濃度で含まれることによって、ナノバブル含有コーティング液の単位体積当たりのコーティング液自体の割合が少なくなるとともに、ナノバブル含有コーティング膜の単位面積当たりのコーティング膜自体の割合が少なくなり、コーティング液やコーティング膜が前記平均粒径D50のナノバブルを含有しない場合と比較し、被覆対象に対するナノバブル含有コーティング液のコーティング量やナノバブル含有コーティング膜の被覆量を低減させることができ、ナノバブル含有コーティング液によって被覆対象を廉価にコーティングすることができるとともに、ナノバブル含有コーティング膜によって被覆対象を廉価に被覆することができる。コーティング方法は、コーティング膜が前記平均粒径D50のナノバブルを含有しない場合と比較してナノバブル含有コーティング膜の単位面積当たりの質量が減少するから、ナノバブル含有コーティング膜が被覆対象を被覆した場合においてナノバブル含有コーティング膜を含む被覆対象の重量の増加を最小限にすることができる。
【0028】
ナノバブル含有コーティング液製造工程によって製造されたナノバブル含有コーティング液におけるナノバブルの含有率が10~95vol.%の範囲にあり、ナノバブル含有コーティング膜形成工程によって形成されたナノバブル含有コーティング膜におけるナノバブルの含有率が10~95vol.%の範囲にあるコーティング方法は、ナノバブルを含有するナノバブル含有コーティング液やナノバブル含有コーティング膜におけるナノバブルの含有率が前記範囲にあるから、ナノバブル含有コーティング液やナノバブル含有コーティング膜がその内部に超微細気泡のナノバブルを濃度で多量に含有し、ナノバブル含有コーティング液の単位体積当たりのコーティング液自体の割合が少なくなるとともに、ナノバブル含有コーティング膜の単位面積当たりのコーティング膜自体の割合が少なくなり、コーティング液やコーティング膜がナノバブルを含有しない場合と比較し、被覆対象に対するナノバブル含有コーティング液のコーティング量やナノバブル含有コーティング膜の被覆量を低減させることができ、ナノバブル含有コーティング液によって被覆対象を廉価にコーティングすることができるとともに、ナノバブル含有コーティング膜によって被覆対象を廉価に被覆することができる。コーティング方法は、コーティング膜がナノバブルを含有しない場合と比較してナノバブル含有コーティング膜の単位面積当たりの質量が減少するから、ナノバブル含有コーティング膜が被覆対象を被覆した場合においてナノバブル含有コーティング膜を含む被覆対象の重量の増加を最小限にすることができる。
【0029】
ナノバブル含有コーティング膜形成工程によって形成されたナノバブル含有コーティング膜がナノバブル含有無機コーティング膜又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜であるコーティング方法は、ナノバブル含有無機コーティング膜やナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜がその内部に超微細気泡のナノバブルを濃度で多量に含有し、ナノバブル含有無機コーティング膜やナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜の単位面積当たりのコーティング膜自体の割合が少なくなり、コーティング膜がナノバブルを含有しない場合と比較し、被覆対象に対するナノバブル含有無機コーティング膜やナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜の被覆量を低減させることができ、ナノバブル含有無機コーティング膜やナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜によって被覆対象を廉価に被覆することができる。コーティング方法は、コーティング膜がナノバブルを含有しない場合と比較してナノバブル含有無機コーティング膜やナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜の単位面積当たりの質量が減少するから、ナノバブル含有無機コーティング膜やナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜が被覆対象を被覆した場合においてナノバブル含有無機コーティング膜やナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜を含む被覆対象の重量の増加を最小限にすることができる。コーティング方法は、ナノバブル含有無機コーティング膜やナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜にガラス成分が含まれるから、優れた耐衝撃性及び耐腐蝕性を有し、被覆対象の面に対する被覆状態を長期間維持することができ、ナノバブル含有無機コーティング膜やナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜によって被覆対象の面を保護することができる。コーティング方法は、ナノバブル含有無機コーティング膜やナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜を被覆した被覆対象が各種ダメージを受けたとしても、ナノバブル含有無機コーティング膜やナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜によって各種ダメージから被覆対象を保護することができ、それらダメージによる被覆対象の劣化を防ぐことができる。
【0030】
本発明に係るペインティング方法によれば、塗料にナノバブルを分散混入させてナノバブル含有塗料を作り、そのナノバブル含有塗料を塗装対象にペインティングするとともに、塗装対象にペインティングされたナノバブル含有塗料を乾燥させてナノバブルが分散混在したナノバブル含有塗膜を形成するから、ナノバブル含有塗料やナノバブル含有塗膜が超微細気泡であるナノバブルを含有することによって、ナノバブル含有塗料の単位体積当たりの塗料自体の割合が少なくなるとともに、ナノバブル含有塗膜の単位面積当たりの塗膜自体の割合が少なくなり、塗料や塗膜がナノバブルを含有しない場合と比較し、塗装対象に対するナノバブル含有塗料の塗布量やナノバブル含有塗膜の塗装量を低減させることができ、ナノバブル含有塗料によって塗装対象を廉価にペインティングすることができるとともに、ナノバブル含有塗膜によって塗装対象を廉価に塗装することができる。ペインティング方法は、塗膜がナノバブルを含有しない場合と比較してナノバブル含有塗膜の単位面積当たりの質量が減少するから、ナノバブル含有塗膜が塗装対象を塗装した場合においてナノバブル含有塗膜を含む塗装対象の重量の増加を最小限にすることができる。ペインティング方法は、塗膜を塗装した塗装対象の面が各種ダメージを受けたとしても、塗膜によって各種ダメージから塗装対象を保護することができ、それらダメージによる塗装対象の面の劣化を防ぐことができる。
【0031】
ナノバブル含有塗料製造工程がペインティング工程を実施する直近に実施されるペインティング法は、ナノバブル含有塗料製造工程をペインティング工程の直近に実施することで、ナノバブル含有塗料製造工程からコーティング工程までに長時間を要する場合と比較し、ナノバブル含有塗料からナノバブルが揮発することはなく、ナノバブルが分散混入したナノバブル含有塗料を塗装対象にペインティングすることができ、ナノバブルが分散混在したナノバブル含有塗膜を塗装対象の面に確実に作ることができる。
【0032】
ナノバブル含有塗料製造工程がペインティング工程を実施するペインティング現場において実施されるペインティング方法は、ナノバブル含有塗料製造工程をペインティング工程のペインティング現場で実施し、ナノバブル含有塗料を作ったその場で塗装対象に対するナノバブル含有塗料のペインティングが行われることで、ナノバブル含有塗料製造工程からペインティング工程までを短時間に行うことができ、ナノバブル含有塗料製造工程からペインティング工程までに長時間を要する場合と比較し、ナノバブル含有塗料からナノバブルが揮発することはなく、ナノバブルが分散混入したナノバブル含有塗料を塗装対象にペインティングすることができ、ナノバブルが分散混在したナノバブル含有塗膜を塗装対象の面に確実に作ることができる。
【0033】
ナノバブル含有塗料製造工程によって製造されたナノバブル含有塗料に分散混入するナノバブルの平均粒径D90が1μm未満であり、その平均粒径D90のナノバブルがナノバブル含有塗料の内部に所定の濃度で分散混入し、ナノバブル含有塗膜形成工程によって形成されたナノバブル含有塗膜に分散混在するナノバブルの平均粒径D90が1μm未満であり、その平均粒径D90のナノバブルがナノバブル含有塗膜の内部に所定の濃度で分散混在しているペインティング方法は、平均粒径D90が1μm未満のナノバブルがナノバブル含有塗料やナノバブル含有塗膜の内部に所定の濃度で含まれることによって、ナノバブル含有塗料の単位体積当たりの塗料自体の割合が少なくなるとともに、ナノバブル含有塗膜の単位面積当たりの塗膜自体の割合が少なくなり、塗料や塗膜が前記平均粒径D90のナノバブルを含有しない場合と比較し、塗装対象に対するナノバブル含有塗料のペインティング量やナノバブル含有塗膜の塗装量を低減させることができ、ナノバブル含有塗料によって塗装対象を廉価にペインティングすることができるとともに、ナノバブル含有塗膜によって塗装対象を廉価に塗装することができる。ペインティング方法は、塗膜が前記平均粒径D90のナノバブルを含有しない場合と比較してナノバブル含有塗膜の単位面積当たりの質量が減少するから、ナノバブル含有塗膜が塗装対象を塗装した場合においてナノバブル含有塗膜を含む塗装対象の重量の増加を最小限にすることができる。
【0034】
ナノバブル含有塗料に分散混入するナノバブルの平均粒径D50が1nm以上500nm未満の範囲にあり、その平均粒径D50のナノバブルがナノバブル含有塗料の内部に所定の濃度で分散混入し、ナノバブル含有塗膜に分散混在するナノバブルの平均粒径D50が1nm以上500nm未満の範囲にあり、その平均粒径D50のナノバブルがナノバブル含有塗膜の内部に所定の濃度で分散混在しているペインティング方法は、平均粒径D50が1nm以上500nm未満の範囲のナノバブルがナノバブル含有塗料やナノバブル含有塗膜の内部に所定の濃度で含まれることによって、ナノバブル含有塗料の単位体積当たりの塗料自体の割合が少なくなるとともに、ナノバブル含有塗膜の単位面積当たりの塗膜自体の割合が少なくなり、塗料や塗膜が前記平均粒径D50のナノバブルを含有しない場合と比較し、被覆対象に対するナノバブル含有塗料のペインティング量やナノバブル含有塗膜の塗装量を低減させることができ、ナノバブル含有塗料によって塗装対象を廉価にコーティングすることができるとともに、ナノバブル含有塗膜によって塗装対象を廉価に塗装することができる。ペインティング方法は、塗膜が平均粒径D50のナノバブルを含有しない場合と比較してナノバブル含有塗膜の単位面積当たりの質量が減少するから、ナノバブル含有塗膜が塗装対象を塗装した場合においてナノバブル含有塗膜を含む塗装対象の重量の増加を最小限にすることができる。
【0035】
ナノバブル含有塗料製造工程によって製造されたナノバブル含有塗料におけるナノバブルの含有率が10~95vol.%の範囲にあり、ナノバブル含有塗膜形成工程によって形成されたナノバブル含有塗膜におけるナノバブルの含有率が10~95vol.%の範囲にあるペインティング方法は、ナノバブルを含有するナノバブル含有塗料やナノバブル含有塗膜におけるナノバブルの含有率が前記範囲にあるから、ナノバブル含有塗料やナノバブル含有塗膜がその内部に超微細気泡のナノバブルを濃度で多量に含有し、ナノバブル含有塗料の単位体積当たりの塗料自体の割合が少なくなるとともに、ナノバブル含有塗膜の単位面積当たりの塗膜自体の割合が少なくなり、塗料や塗膜がナノバブルを含有しない場合と比較し、被覆対象に対するナノバブル含有塗料のペインティング量やナノバブル含有塗膜の塗装量を低減させることができ、ナノバブル含有塗料によって塗装対象を廉価にペインティングすることができるとともに、ナノバブル含有塗膜によって塗装対象を廉価に塗装することができる。ペインティング方法は、塗膜がナノバブルを含有しない場合と比較してナノバブル含有塗膜の単位面積当たりの質量が減少するから、ナノバブル含有塗膜が塗装対象を塗装した場合においてナノバブル含有塗膜を含む塗装対象の重量の増加を最小限にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】コーティング液又は塗料にナノバブルを混入させるナノバブル発生装置を積載したトラックの一例を示す図。
図2】コーティング液又は塗料にナノバブルを混入させるナノバブル発生装置の一例を示す構成図。
図3】ナノバブル含有コーティング液をコーティングした物品の面にナノバブル含有コーティング液からナノバブル含有無機コーティング膜又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜が形成されるメカニズムを時系列で説明する断面図。
図4】ナノバブル含有無機コーティング膜の構造の一例を示すイメージ図。
図5】ナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜の構造の一例を示すイメージ図。
図6】ナノバブル含有無機コーティング膜又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜の内部に分散混在(分散溶存)するナノバブルのイメージを図示した図。
図7】ナノバブル含有フッ素樹脂塗膜(ナノバブル含有塗膜)の構造の一例を示すイメージ図。
図8】ナノバブル含有シリコン樹脂塗膜(ナノバブル含有塗膜)の構造の一例を示すイメージ図。
図9】エマルジョン系のナノバブル含有塗料の乾燥工程を説明する図。
図10】溶剤系のナノバブル含有塗料の乾燥工程を説明する図。
図11】ナノバブル含有塗膜の内部に分散混在(分散溶存)するナノバブルのイメージを図示した図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
添付の図面を参照し、本発明に係るコーティング方法及びペインティング方法の詳細を説明すると、以下のとおりである。図1は、コーティング液又は塗料にナノバブル14を混入させるナノバブル発生装置17を積載したトラック37の一例を示す図であり、図2は、コーティング液又は塗料にナノバブル14を混入させるナノバブル発生装置17の一例を示す構成図である。
【0038】
コーティング方法の一例は、所定の物品11(被覆対象)の面12(表面、裏面)にナノバブル含有コーティング液10をコーティング(塗布)し、その物品11の面12にナノバブル含有無機コーティング膜13又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13を形成する。コーティング方法は、ナノバブル含有コーティング液製造工程とコーティング工程とナノバブル含有コーティング膜形成工程とを実施することで、ナノバブル含有無機コーティング膜13又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13で物品11の面12を被覆する。尚、ナノバブル含有コーティング液製造工程は、コーティング工程を実施するコーティング現場であって、コーティング工程を実施する直近に実施される。コーティング工程を実施する直近とは、コーティング工程を実施する前、12時間~48時間である。
【0039】
コーティング液を形成するケイ素材料は、ポリシラザン(無機ポリシラザン、有機ポリシラザン)とシロキサン(高分子シラン)とのうちのいずれか一方が使用される場合、又は、それらの双方を混合した混合液が使用される場合がある。そのケイ素材料とアルキルシリケート縮合物と不活性有機溶剤とが所定の配合割合で混合・攪拌されることからコーティング液が作られている。又、コーティング液が低分子シランを主成分とするケイ素材料とアルキルシリケート縮合物と不活性有機溶剤とが所定の配合割合で混合・攪拌されることから作られている。コーティング液では、有機ケイ素材料とアルキルシリケート縮合物とが不活性有機溶剤によって希釈されている。
【0040】
無機ポリシラザンには、Si-N系のペルヒドロポリシラザン(パーヒドロポリシラザン)が使用されている。尚、ポリシラザンとしては、Si-C-N系のオルガノポリシラザン、Si-C系のポリカルボシランを使用することができ、更に、SiC-O系、Si-B-C-N系、Si-Ti-N系のそれを使用することもできる。又、オルガノポリシロキサンを使用することもできる。
【0041】
有機ポリシラザンとしては、メチルポリシラザン、ジメチルポリシラザン、フェニルポリシラザン、ビニルポリシラザン等の変性ポリシラザンを使用することもできる。又、ポリシラザンと化学的に反応して架橋構造を生成するヒドロキシル基、ビニル基、アミノ基、シリル基等の反応基を有する炭化水素化合物、環状飽和炭化水素化合物、環状不飽和炭化水素化合物、飽和複素環化合物、不飽和複素環化合物、シリコーン化合物等の化合物で化学的に架橋された架橋ポリシラザンを使用することもできる。
【0042】
その他として、ポリボロシラザン、無機シラザン高重合体や改質ポリシラザン、共重合シラザン、ポリシラザンにセラミックス化を促進するための触媒的化合物を付加又は添加した低温セラミックス化ポリシラザン、ケイ素アルコキシド付加ポリシラザン、グリシドール付加ポリシラザン、アセチルアセトナト錯体付加ポリシラザン、金属カルボン酸塩付加ポリシラザン、上記種々のポリシラザン又は変性物にアミン類及び/又は酸類を添加したポリシラザン組成物を使用することもできる。
【0043】
ポリシラザンは、1種類の単独ポリシラザン、又は、各種ポリシラザンから選択された2種類以上のポリシラザン混合物、或いは、2種以上のポリシラザン構造からなるポリシラザン共重合体を使用することができ、1分子中にケイ素原子に直接結合した水素原子を少なくとも1つ以上含む。コーティング液10を形成するポリシラザンは、溶剤への溶解性や塗布時の作業性の観点から重量平均分子量が100~100,000,000、好ましくは1,000~1,000,000、より好ましくは2,000~500,000の範囲にある。重量平均分子量が100以上であると揮発性が低く、溶剤の揮発及び硬化工程時にポリシラザンそのものが揮発することで塗膜の膜質が劣化する場合がある。
【0044】
無機ポリシラザンとしては、一般式(化1)で表される。
【0045】
【化1】
無機ポリシラザンは、構造単位を有する直鎖状構造を包含し、690~2,000の分子量を有し、一分子中に3~10個のSiH基を有し、化学分析による元素比率がSi:59~61、N:31~34及びH:6.5~7.5の各重量%であるペルヒドロポリシラザン、ポリスチレン換算平均分子量が3,000~20,000の範囲にあるペルヒドロポリシラザンを挙げることができる。
【0046】
ペルヒドロポリシラザンは、分子内に鎖状部分と環状部分を含み、下記の化学式(化2)で表される。
【0047】
【化2】
尚、ペルヒドロポリシラザンの構造の一例は、下記の化学式(化3)で表される。
【0048】
【化3】
ペルヒドロポリシラザン化合物群の他の一例は、下記の一般式(化4)で表され、Si-N結合と官能基(R~R)を有し、-(SiR-NR)-ユニットから形成されるポリマーであり、Siと直接結びつく官能基R,Rの少なくともいずれかが炭素(C)を有するアルキル基等の有機官能基から形成される有機のポリマーである。
【0049】
【化4】
尚、ペルヒドロポリシラザンは、炭素原子が3つの水素原子によって置換された構造を持つ有機化合物の官能基(R~R)の1つであるメチル基(CH)の含有率が50%以上である。又、ペルヒドロポリシラザンは、1種類の-(SiR-NR)-ユニットから形成されるポリマーのみならず、官能基(R~R)の組成が異なる複数種類の-(SiR-NR)-ユニットから形成されるポリマーであってもよい。更に、ペルヒドロポリシラザンは、鎖状又は環状或いは架橋構造を有するポリマーであってもよく、それらの構造を複合的に有するポリマーであってもよい。R、R、Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シク ロ アルキル基、アリール基、又は、それらの基以外でケイ素に直結する基が炭素である基 、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、アルコキシ基を表わす。但し、R、R、Rの少なくとも1つは水素原子である。
【0050】
一例としてのペルヒドロポリシラザン(A)は、下記の一般式(化5)で表される-(SiH(CH)-NH)-ユニット、-(Si(CH)2-NH)-ユニット、-(SiR(CH)-NR)-ユニットを含むポリマーである。-(SiR(CH)-NR)-ユニットにおける官能基R1は、H又はCHであり、Nと直接結びつく官能基R3が反応を促進させる有機官能基となっている。コーティング液13にペルヒドロポリシラザン(A)が含まれることで、コーティング液10を物品11の面12にコーティングした後の反応を促進させ、物品11の面12に早期に有機/無機ハイブリッドコーティング膜13を形成することができる。
【0051】
【化5】
他の一例としてのペルヒドロポリシラザン(B)は、下記の一般式(化6)で表される-(SiH(CH)-NH)-ユニット、-(SiR(CH)-NH)-ユニットを含むポリマーであり、-(SiR(CH)-NH)-ユニットの官能基Rが高耐熱を実現させる有機官能基となっている。コーティング液10にペルヒドロポリシラザン(B)が含まれることで、物品11の面12を被覆した有機/無機ハイブリッドコーティング膜13の耐熱性を高めることができる。
【0052】
【化6】
コーティング液10に含まれるペルヒドロポリシラザンは、含有するポリマーの構造が異なる複数種類のペルヒドロポリシラザンが混合されたものであってもよい。例えば、ペルヒドロポリシラザン(A)とペルヒドロポリシラザン(B)とが混合されたペルヒドロポリシラザンであってもよい。それらのペルヒドロポリシラザン(A)及びペルヒドロポリシラザン(B)の混合実験によれば、ペルヒドロポリシラザン(A)が50質量%とペルヒドロポリシラザン(B)が50質量%との配合割合により、ペルヒドロポリシラザン(A)単体と同等以上の防錆性を示すとともに、ペルヒドロポリシラザン(B)単体と比較して硬化時間(ナノバブル含有無機コーティング膜13やナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13の生成時間)の短縮が確認された。
【0053】
オルガノポリシラザンは、上記一般式(化4)においてR及びRに水素原子、Rに有機基を有する。-(RSiHNH)-を繰り返し単位として、重合度が3~5の環状構造を有するポリシラザン、(RSiHNH)〔(RSiH)1.5N〕1-X(0.4<X<1)の化学式で示される分子内に鎖状構造と環状構造を同時に有するポリシラザン、上記一般式(化4)においてRに水素原子、R、Rに有機基を有するポリシラザン、R及びRに有機基、Rに水素原子を有し-(RSiNR)-を繰り返し単位として、主に重合度が3~5の環状構造を有しているポリシラザンがある。
【0054】
例えば上記一般式(化4)以外の架橋構造を分子内に有するオルガノポリシラザンが下記の一般式(化7)で表される。
【0055】
【化7】
又、例えばRSiX(X:ハロゲン)のアンモニア分解によって得られる架橋構造を有するポリシラザンRSi(NH)、RSiX及びR SiXの共アンモニア分解によって得られる構造のポリシラザンが下記の一般式(化8)で表される。
【0056】
【化8】
オルガノポリシロキサンとしては、例えば、平均単位式(A):(R1 3SiO1/2a(R1 2SiO2/2b(R1SiO3/2c(SiO4/2dを有するポリマーがある。平均単位式(A)のうちのRは、それぞれ独立な一価の有機基であり、好ましくは、一価のエチレン性不飽和基、一価の炭化水素基(但し、エチレン性不飽和基を除く)、又は、一価の置換炭化水素基(但し、エチレン性不飽和基を除く)である。R1の炭素数は、好ましくは1以上8以下、より好ましくは1以上6以下である。一価の置換炭化水素基は、炭化水素基を基本骨格とし、例えば、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、イソチオシアネート基、ニトロ基及びカルボニル基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を含む。R1は、好ましくは一価のエチレン性不飽和基又は一価の炭化水素基であり、より好ましくは一価のエチレン性不飽和基である。
【0057】
一価のエチレン性不飽和基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基が挙げられる。アルケニル基の炭素数は、好ましくは2以上8以下、より好ましくは2以上6以下、更に好ましくは2以上3以下である。一価のエチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基、すなわち式(B):-R12-OC(=O)-CR11=CH2で表される基もある。具体的には、アクリロイルオキシプロピル基、メタクリロイルオキシプロピル基がある。式(B)のうちのR11は水素原子又はメチル基であり、R12はアルカンジイル基であり、好ましくは炭素数1以上5以下のアルカンジイル基である。尚、(メタ)アクリルは、アクリル及びメタクリルを総称する意味で用いられ、(メタ)アクリロイルは、アクリロイル及びメタクリロイルを総称する意味で用いられる。
【0058】
一価のエチレン性不飽和基では、アルケニル基が好ましく、ビニル基及びアリル基が好ましく、ビニル基がより好ましい。一価の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基及びヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基及びキシリル基等のアリール基;並びにベンジル基及びフェネチル基等のアラルキル基がある。一価の炭化水素基の炭素数は、好ましくは1以上8以下、より好ましくは1以上5以下、更に好ましくは1以上3以下である。
【0059】
一価の置換炭化水素基としては、例えば、3-メルカプトプロピル基(-(CH23-SH)及び3-アミノプロピル基(-(CH23-NH2)がある。R1は、微粒子化の観点から、好ましくは、それぞれ独立にアルキル基又はアルケニル基であり、より好ましくは、それぞれ独立に炭素数1以上3以下のアルキル基、ビニル基又はアリル基であり、更に好ましくは、メチル基又はビニル基である。
【0060】
平均単位式(A)を有するオルガノポリシロキサン1分子中において、少なくとも一部のR1は、一価のエチレン性不飽和基、アリール基又はアラルキル基等の官能基(L)を含む基であり、好ましくは一価のエチレン性不飽和基であり、より好ましくはアルケニル基である。一価のエチレン性不飽和基、アリール基又はアラルキル基の合計割合は、オルガノポリシロキサン1分子中の全R1を基準として、好ましくは50モル%以上、より好ましくは60モル%以上、更に好ましくは70モル%以上、より更に好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上である。一価のエチレン性不飽和基、アリール基又はアラルキル基は、金属イオンに配位可能な非イオン性官能基を含む疎水性基である。
【0061】
平均単位式(A)におけるa、b、c、dは、それぞれ各構成単位(R1 3SiO1/2)、(R1 2SiO2/2)、(R1SiO3/2)及び(SiO4/2)のモル分率の平均値を表す。各構成単位のモル分率の和である、a、b、c、dの合計は、1である。aは、R1 3SiO1/2(M単位)で表されるシロキサン単位のモル分率である。aは、0以上0.5以下であり、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.3以下、更に好ましくは0.2以下、特に好ましくは0.1以下である。
【0062】
bは、R1 2SiO2/2(D単位)で表されるシロキサン単位のモル分率である。bは、0以上0.5以下であり、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.3以下、更に好ましくは0.2以下、特に好ましくは0.1以下である。cは、R1SiO3/2(T単位)で表されるシロキサン単位のモル分率である。cは、0.3以上1以下であり、好ましくは0.4以上、0.5以上又は0.6以上、より好ましくは0.7以上、更に好ましくは0.8以上、特に好ましくは0.9以上である。
【0063】
dは、SiO4/2(Q単位)で表されるシロキサン単位のモル分率である。dは、0以上0.7以下であり、好ましくは0.6以下、0.5以下又は0.4以下、より好ましくは0.3以下、更に好ましくは0.2以下、特に好ましくは0.1以下である。分岐した構成単位の総和を示すc及びdの合計は、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上、更に好ましくは0.8以上、特に好ましくは0.9以上である。
【0064】
オルガノポリシロキサンは、平均単位式(A)における構成単位(R1 3SiO1/2)を有する場合、その構成単位を1種のみ有していてもよく、2種以上有していてもよい。平均単位式(A)における構成単位(R1 2SiO2/2)及び(R1SiO3/2)についても同様である。オルガノポリシロキサンは、前記各構成単位におけるR1の少なくとも一部がR2Oに置き換えられた構成単位を有していてもよい。平均単位式(A)のうちのR2は、水素原子又はアルキル基である。R2Oは、オルガノポリシロキサン骨格中に含まれるケイ素原子に結合したヒドロキシ基又はアルコキシ基を意味する。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基及びプロピル基が挙げられる。アルキル基の炭素数は、好ましくは1以上3以下である。
【0065】
上記各構成単位における上記R1の少なくとも一部がR2Oに置き換えられた構成単位の量は、前記構成単位のモル分率の和である、a、b、c、dの合計1に対して、好ましくは0以上0.10以下であり、より好ましくは0以上0.05以下、更に好ましくは0以上0.03以下である。前記構成単位におけるアルコキシ基は、例えば、後述するアルコキシシランに含まれる加水分解性基であるアルコキシ基であって、加水分解・重縮合せずに分子内に残存したものである。本構成単位におけるヒドロキシ基は、例えば、アルコキシ基が加水分解後、重縮合せずに分子内に残存したヒドロキシ基である。
【0066】
オルガノポリシロキサンは、好ましくはシルセスキオキサンである。シルセスキオキサンとは、主鎖骨格がSi-O結合からなり、主構成単位として(R1SiO3/2)単位を含み、前記cが0.7以上であるオルガノポリシロキサンである。シルセスキオキサンの構造としては、例えば、ランダム構造、完全カゴ型構造、不完全カゴ型構造、ハシゴ型構造が挙げられるが、これらの中でも、製造容易性という観点から、ランダム構造を有するシルセスキオキサンが好ましい。
【0067】
前記構成単位(R1 3SiO1/2)を形成するアルコキシシランとしては、R1 3Si(OR2)で表される化合物が挙げられる。その具体例として、例えば、メトキシジメチルビニルシラン、エトキシジメチルビニルシラン、メトキシジメチルフェニルシラン及びエトキシジメチルフェニルシラン;並びにメトキシトリメチルシラン及びエトキシトリメチルシランがある。
【0068】
前記構成単位(R1 2SiO2/2)を形成するアルコキシシランとしては、R1 2Si(OR22で表される化合物が挙げられる。その具体例として、例えば、ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン及びジメトキシベンジルメチルシラン;並びにジメトキシジメチルシラン、ジメトキシジエチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジエトキシジエチルシラン、ジプロポキシジメチルシラン及びジプロポキシジエチルシランがある。
【0069】
前記構成単位(R1SiO3/2)を形成するアルコキシシランとしては、R1Si(OR23で表される化合物が挙げられる。その具体例として、例えば、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、トリメトキシアリルシラン、トリエトキシアリルシラン、(3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン及び(3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル)トリエトキシシラン;並びにメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン及びブチルトリメトキシシランがある。前記構成単位(SiO4/2)を形成するアルコキシシランとしては、Si(OR24で表される化合物が挙げられる。その具体例として、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン及びテトラプロポキシシランがある。
【0070】
ナノバブル含有コーティング液10に含まれるシロキサンは、鎖状骨格を有する鎖状シロキサン、環状骨格を有する環状シロキサンのうちのいずれか1種類又はそれらを2種類以上混合した混合液であってもよい。環状シロキサンとしては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(C18Si)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(C24Si)、デカメチルシクロペンタシロキサン(C1030Si)の中から選択される1種類又はそれらを2種類以上混合した混合液を使用することができる。有機ポリシラザン及びシロキサンの数平均分子量は、3000~150000g /molの範囲にある。
【0071】
アルキルシリケート縮合物は、テトラメチルオルトシリケート、テトラエチルオルトシリケート、テトラ-n-プロピルオルトシリケート、テトラ-i-プロピルオルトシリケート、テトラ-n-ブチルオルトシリケート、テトラ-sec-ブチルオルトシリケート、メチルポリシリケート、エチルポリシリケートの中から選択される1種類又はそれらを2種類以上混合した縮合物(混合液)である。不活性有機溶剤は、有機ポリシラザン及びシロキサン並びにアルキルシリケート縮合物に対して不活性であり、ジブチルエーテル、テレピン油、ベンゼン、トルエンの中から選択される。
【0072】
ナノバブル含有コーティング液10は、ポリシラザン(ペルヒドロポリシラザンやオルガノポリシラザン、オルガノポリシロキサン等)やシロキサンの数平均分子量が前記範囲にあるから、ポリシラザン及び/又はシロキサンを含むナノバブル含有コーティング液10が所定の粘度を保持することができ、そのコーティング液10から初期する膜厚のナノバブル含有無機コーティング膜13やナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13を作ることができる。ナノバブル含有コーティング液10は、所定の粘度を保持した状態で被覆対象となる物品11の面12にコーティングされるから、微小な孔や網目が形成された物品11の面12にコーティングしたとしても、ナノバブル含有コーティング液10が物品11の内部に滲入することはなく、物品11の面12に略均一の膜厚のナノバブル含有無機コーティング膜13やナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13を作ることができる。
【0073】
ナノバブル含有コーティング液10では、ナノバブル14を混入する以前のコーティング液10の全質量に対する有機ケイ素材料(有機ポリシラザン及び/又はシロキサン)の配合割合が30~60質量%の範囲、ナノバブル14を混入する以前のコーティング液10の全質量に対するアルキルシリケート縮合物の配合割合が10~15質量%の範囲、ナノバブル14を混入する以前のコーティング液10の全質量に対する不活性有機溶剤の配合割合が30~60質量%の範囲にある。有機ケイ素材料(有機ポリシラザン、シロキサン)の配合割合が30質量%未満では、有機ケイ素材料の含有量が少なく、物品11の面12に優れた柔軟性、耐衝撃性、耐腐蝕性を有する所定の膜厚のナノバブル含有無機コーティング膜13やナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13を形成することができない。有機ケイ素材料(有機ポリシラザン、シロキサン)の配合割合が60質量%を超過すると、ナノバブル含有コーティング液10の粘度が増加し、後記するナノバブル14をコーティング液10の内部に所定の濃度で分散混入(分散溶解)させることができない。ナノバブル含有コーティング液10は、ナノバブル14を混入する以前の全質量に対する有機ケイ素材料(有機ポリシラザン、シロキサン)の配合割合が前記範囲にあるから、ナノバブル14を混入した後のコーティング液10を使用し、ナノバブル14が所定の密度で分散混在(溶解)するとともに、優れた柔軟性、耐衝撃性、耐腐蝕性を有する適正な膜厚のナノバブル含有無機コーティング膜13やナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13を作ることができる。
【0074】
アルキルシリケート縮合物の配合割合が10質量%未満では、アルキルシリケート縮合物の架橋剤として作用が弱く、ナノバブル含有無機コーティング膜13やナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13に十分な架橋構造が形成されない。アルキルシリケート縮合物の配合割合が15質量%を超過すると、ナノバブル含有無機コーティング膜13やナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13に不要な架橋構造が形成され、ナノバブル含有無機コーティング膜13やナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13の柔軟性が必要以上に大きくなる。ナノバブル含有コーティング液10は、ナノバブルを混入する以前の全質量に対するアルキルシリケート縮合物の配合割合が前記範囲にあるから、ナノバブルを混入した後のコーティング液10を使用し、適正な架橋構造及び適正な柔軟性を有するとともにナノバブルが所定の密度で分散混在したナノバブル含有無機コーティング膜13やナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13を作ることができる。
【0075】
不活性有機溶剤の配合割合が30質量%未満では、ナノバブル含有コーティング液10の粘度が高くなり、ナノバブル14をコーティング液10の内部に所定の濃度で分散混入(分散溶解)させることができない。不活性有機溶剤の配合割合が60質量%を超過すると、ナノバブル含有コーティング液10の粘度が必要以上に低くなり、物品11の面12に優れた柔軟性、耐衝撃性、耐腐蝕性を有する所定の膜厚のナノバブル含有無機コーティング膜13やナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13を形成することができない。ナノバブル含有コーティング液10は、ナノバブル14を混入する以前のコーティング液の全質量に対する不活性有機溶剤の配合割合が前記範囲にあるから、ナノバブル14を混入した後のナノバブル含有コーティング液10を使用し、ナノバブル14が所定の密度で分散混在(分散溶解)するとともに、優れた柔軟性、耐衝撃性、耐腐蝕性を有する適正な粘度のナノバブル含有無機コーティング膜13やナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13を作ることができる。
【0076】
ナノバブル含有コーティング液10は、ナノバブル14を混入する以前のコーティング液の全質量に対して有機ケイ素材料(ポリシラザン及び/又はシロキサン)を30~60質量%の範囲で含有し、アルキルシリケート縮合物を10~15質量%の範囲で含有しているから、ナノバブル含有コーティング液10から作られるナノバブル含有無機コーティング膜13やナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13の形成速度を適正に制御することができる。具体的にアルキルシリケート縮合物の加水分解は、ポリシラザン及び/又はシロキサンの縮合よりも速く進行するから、アルキルシリケート縮合物の加水分解に一部の水分(HO)が先に消費されることにより、ポリシラザン及び/又はシロキサンの縮合反応の進行を遅らせることができ、ナノバブル含有無機コーティング膜13やナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13の形成速度を制御することができる。又、アルキルシリケート縮合物の加水分解が先に起こるため、ナノバブル含有無機コーティング膜13やナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13に架橋構造を確実に形成して柔軟性を付与することができる。
【0077】
又、有機溶剤がポリシラザンやシロキサン、アルキルシリケート縮合物に対して不活性なジブチルエーテル、テレピン油、ベンゼン、トルエンのいずれかから選択されるから、特にポリシラザン及び/又はシロキサンの縮合反応が急激に進行することがなく、ナノバブル含有無機コーティング膜13やナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13の形成速度を適正に制御することができる。ナノバブル含有無機コーティング膜13やナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13の形成速度を制御することができるナノバブル含有コーティング液10は、物品11の面12に対するコーティング作業を容易に行うことができる。
【0078】
低分子シランは、クロロシランを出発原料とし、ひとつの分子内に複数の有機官能基と加水分解性のアルコキシ基を同時に含有し、脱水架橋により非晶質(アモルファス)ガラス被膜を形成する。低分子シランは、有機物と強力に化学結合する多官能基と、無機物と強力に化学結合する加水分解性アルコキシ基を有する。低分子シランは、100%機能部化による低分子量液体が構成可能である(高濃度ガラス化成分含有、無溶剤化が可能)。更に、揮発性のシラノール基を含有しないため保存性・安定性が高い。低分子シランは、硬化速度を調整可能であり、手塗りが可能である。低分子シランは、無溶剤(ガラス化成分最高濃度)であっても低分子であるから手塗りが可能である。更に、低分子であるから濡れ性及びレベリング性が高く、仕上りの光沢美観品質が安定する。
【0079】
ペインティング方法の一例は、所定の物品11(被覆対象)の面12(表面、裏面)にナノバブル含有塗料15をペインティング(塗布)し、その物品11の面12にナノバブル含有塗膜16を形成する。ペインティング方法は、ナノバブル含有塗料製造工程とペインティング工程とナノバブル含有塗膜形成工程とを実施することで、ナノバブル含有塗膜16で物品11の面12を塗装する。尚、ナノバブル含有塗料製造工程は、ペインティング工程を実施するペインティング現場であってペインティング工程を実施する直近に実施される。ペインティング工程を実施する直近とは、ペインティング工程を実施する前、12時間~48時間である。塗料としては、フッ素樹脂塗料、シリコン樹脂塗料(シリコーンレジン)、アクリル樹脂塗料、ウレタン樹脂塗料のいずれかが使用される。
【0080】
フッ素樹脂塗料を使用した場合、ナノバブル含有フッ素樹脂塗料15を物品11の面12にペインティング(塗布)した後、それが乾燥硬化することで所定の厚みを有するナノバブル含有フッ素樹脂塗膜16を形成する。シリコン樹脂塗料を使用した場合、ナノバブル含有シリコン樹脂塗料15を物品11の面12にペインティング(塗布)した後、それが乾燥硬化することで所定の厚みを有するナノバブル含有シリコン樹脂塗膜16を形成する。アクリル樹脂塗料を使用した場合、ナノバブル含有アクリル樹脂塗料15を物品11の面12にペインティング(塗布)した後、それが乾燥硬化することで所定の厚みを有するナノバブル含有アクリル樹脂塗膜16を形成する。ウレタン樹脂塗料を使用した場合、ナノバブル含有ウレタン樹脂塗料15を物品11の面12にペインティング(塗布)した後、それが乾燥硬化することで所定の厚みを有するナノバブル含有ウレタン樹脂塗膜16を形成する。
【0081】
フッ素樹脂塗料は、フッ素樹脂を主成分とした塗料である。フッ素樹脂塗料の主成分となるフッ素樹脂には、PTFT(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカンポリマー)、FEP(パーフルオロエチレンプロペンコポリマー)、ETFE(エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー)のうちのいずれか1種類又はそれらの2樹類以上をブレンドした溶液が使用されている。尚、フッ素樹脂として、その耐熱性を下げることなく、物品の面との密着力を増加させるとともに、耐摩耗性を向上させた高温型変成タイプを使用することもでき、フッ素樹脂が有する低摩擦性や非粘着性を生かしつつ、低温で加工可能な低温型変成タイプを使用することもできる。
【0082】
PTFT(ポリテトラフルオロエチレン)の分子構造は、下記の一般式(化1)で表される。
【0083】
【化1】
PTFTは、炭素原子(C)及びフッ素原子(F)が結合したものが直鎖的につながった分子構造になっており、炭素原子どうしの結合部がフッ素原子で隙間なく覆われることで、フッ素原子によって保護されている。PTFTは、分子内の原子の配列は緊密で対称的になっており、電荷の分極がとても小さい。更に、分子量が100万~数千万と非常に長い分子鎖でできている高分子である。そのような特徴的な分子構造によって安定しているPTFTは、優れた非粘着性、撥水・撥油性、低摩擦性、耐熱性、耐薬品性、電気特性、難燃性、耐候性を有する塗膜13を形成する。PTFTは、その密度が2.13~2.20g/cmの範囲、その室温硬度がF~2Hであり、その撥水角(゜)水/油(nHD)が110-115/45-50である。
【0084】
PFA(パーフルオロアルコキシアルカンポリマー)の分子構造は、下記の一般式(化2)で表される。
【0085】
【化2】
PFAは、テトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロアルキルビニルエーテル(PFVE)との共重合体であり、その大きな特徴としては溶融時の粘度の低さとPTFTEに匹敵する性質にある。PTFTと同様に、連続使用温度が260℃と耐熱性に優れており、耐薬品性においても強酸や強アルカリ、有機溶剤等のほとんどの薬品に対して侵されることがない。PFAは、優れた非粘着性、耐熱性、耐寒性、撥水性、耐薬品性、電気特性、、難燃性、耐候性を有する有機コーティング膜を形成する。PFAは、その室温硬度がF~Hであり、その撥水角(゜)水/油(nHD)が110-115/45-50である。
【0086】
FEP(パーフルオロエチレンプロペンコポリマー)の分子構造は、下記の一般式(化3)で表される。
【0087】
【化3】
FEPは、テトラフルオロエチレン(TFE)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)との共重合体であり、分子鎖中にトリフルオロメチル基CFが存在しPTFEと同等の非粘着性、耐薬品性を有しつつ、融点が低いという特徴を有する。FEPは、溶融粘度が低いため、コーティングで使用した場合、ピンホールのない連続した膜を作ることができる。FEPは、その密度が2.15~2.17g/cmの範囲、その室温硬度がF~Hであり、その撥水角(゜)水/油(nHD)が110-115/45-50である。
【0088】
ETFE(エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー)の分子構造は、下記の一般式(化4)で表される。
【0089】
【化4】
ETFEは、テトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体であり、分子構造中に水素原子(H)を含む。そのため、PTFE及びFEPと比較して耐薬品性や耐熱性が低く、連続使用温度が150℃である。一方、その機械的強度が高く、低融点で加工することができる。は、その密度が1.73~1.75g/cmの範囲にある。
【0090】
シリコン樹脂塗料は、シリコン樹脂を主成分とした塗料である。シリコン樹脂塗料の主成分となるシリコン樹脂(シリコーンレジン)の分子構造は、下記の一般式(化5)で表される。
【0091】
【化5】
シリコン樹脂塗料は、優れた耐久性、耐水性、耐薬品性、柔軟性を有し、物品11(基材)の面12への密着度が高い塗膜(3次元ガラス骨格被膜)を形成する。シリコン樹脂塗料から作られたシリコン樹脂塗膜は、シロキサン結合(Si-O、ケイ素-酸素)から構成され、いくつかのシリケート(SiO4/2)、又は、シルセスキオキサン(R-SiO3/2)を含む。Rは各種アルキル基、若しくはアリル基であり、代表的な官能基はメチル基、若しくはフェニル基である。炭素結合(C-C) から溝成される有機レジンと比較すると、熱や放射線による分解に対して一層強い耐性を示す。シリコン樹脂塗膜の耐性は、酸素-水素結合の強さ(炭素-炭素結合が82.6Kcal/moleであるのに対し、ケイ素-酸素結合は108Kcal/mole)、可視光及び紫外線を透過する性質並びに元来部分的に酸化された構造であることにある。
【0092】
有機官能基を付加させることにより、シロキサンポリマーはよりリニア溝造となり、有機官能基由来の物理特性(例えば柔軟性)、性能が付与される。シロキサン骨格へのフェニル基の導入は、種有機樹脂との相溶性を高める、靱性を高める、中温(250℃)での熱安定性を持続させるという効果を与える。
一方、メチル基は、硬化性の向上、熱衝撃に対する耐性、湿度限界下での重量損失の軽減という特性を与える。シリコーンポリマーコーティング溶液(シリコーンレジン)は、クロロシラン若しくはアルコキシシランを加水分解することから生成され、その過程で高い反応性を持つシラノール基(Si-OH)が形成される。RSiC13 + 3H2 O RSi(OH)3 + 3HCl、RSi(OR’)3 + 3H2 O RSi(OH)3 + 3R’OH、
反応初期の縮合反応では、シロキサンのオリゴマー構造が形成る。2 RSi(OH)3 RSi(OH)2 - O - SiR(OH)2 + H2 O、更に縮合反応が進むと、シロキサンの三次元架橋樺造が形成される。 縮合反応時に熱及び触媒を取り入れることで、 分子量が高くなり、物性が改良される。一方、ポリマーの粘度が高くなり、溶剤中への希釈溶解が必要となる。同様に、用途特性が要求されるケースでは、有機レジンの水酸基(例えば、ポリエステル)とシラノール基及びアルコキシキ基を反応させることで、シリコン-有機樹脂の複合レジンを形成し、シロキサン変性の度合いに応じて性能を改良することが可能となる。レジン中間体と有機レジンとのコールドブレンドは少ない溶剤使用量で実施可能である。しかし、反応を進め確実に硬化させるためには、より高く、かつ長時間の熱硬化工程が必要となる。最適なシリコンレジンの選定に加えて、処方に含まれる他の成分が、コーティングの性能に重要な役割を与える。
【0093】
プロトタイプのシリコン樹脂塗料を試作する場合、最初に対象用途での要求特性を明らかにし、使用可能なレジンバインダーを決定する。 硬化時にシリコン樹脂塗料が受ける熱や化学薬品、紫外線及び必要な物理的特性もレジンパインダーの選択に影響を与える。シリコン樹脂塗料(シリコーンレジン)は、シリコン樹脂塗膜の耐熱性、耐化学薬品性及び紫外線に対する耐久性向上に貢献するが、そのほかの性能、物理特性は、シリコンと特定の有機パインダーの組み合わせ(塗膜硬度:フェノール類とメラミン樹脂、常温乾燥性:アクリル樹脂、耐食性: エポキシ樹脂、強靱性:アルキッド樹脂)によっても付与可能である。尚、コーティング処方中のシリコン配合量は、その用途での性能要求レベルに応じて決定する。
【0094】
シリコン樹脂塗料には、触媒、硬化条件、溶媒及びシンナーの処方成分が含まれる。シラノール官能性レジンは触媒を添加することなく熱硬化する。しかし、金属ドライヤー(例、亜鉛、鉄、コバルトオクトエート)の添加により硬化性が加速する。通常の触媒添加量は、樹脂固形分に対し金属量で0.1~0.2%である。シラノール官能性シリコンレジンで処方されたシリコン樹脂塗料は、最適な塗膜性能を発揮するため加熱硬化が必要であるが、その硬化性はシリコンの含有量及び他の主要成分の硬化条件によって変動する。100%シリコンレジン系の硬化方法は、232℃(450°F)で30分、又は、204°(400°F)で60分である。シリコン樹脂塗料(シリコンレジン)は、芳香族炭化水素(例えば、トルエン、キシレン)、ケトン類、エステル類、酢酸塩、塩素系溶剤を溶媒として使用することができる。グリコールエーテル類およびアルコール類(例えば、ブタノール)の少量添加 (5%未満)により、シリコンレジンの安定性が向上する。
【0095】
アクリル樹脂塗料は、アクリル樹脂を主成分とした塗料である。アクリル樹脂塗料は、優れた耐候性・光沢性・透明性・耐水性・密着性・防食性を有するアクリル樹脂塗膜を形成する。アクリル樹脂には、水性アクリル樹脂、溶剤系アクリル樹脂を使用することができる。水性アクリル樹脂には、アクリル系エマルジョン、アクリル-スチレン系エマルジョン、水酸基含有アクリルエマルジョン、常温乾燥型水溶性アクリル樹脂、焼付型アクリルディスパージョン、水酸基含有アクリルディスパージョン等を使用することができる。溶剤系アクリル樹脂には、イソシアネート硬化型アクリル樹脂、常温・強制乾燥型アクリル樹脂、メラミン焼付用アクリル樹脂、湿気硬化型シリコン・アクリル樹脂等を使用することができる。有機溶剤には、ジブチルエーテル、テレピン油、ベンゼン、トルエン等が使用される。
【0096】
ウレタン樹脂塗料は、主剤として複数の水酸基を有するポリオールとポリイソシアネートとから構成されている。尚、ウレタン樹脂塗料がアクリルポリオールを主剤とするアクリルウレタン塗料であってもよい。又、ウレタン樹脂塗料には、アクリルポリオール、セルロースアセテートブチレートが含まれていてもよい。ウレタン樹脂塗料は、優れた塗膜性能、仕上がり、耐候性、密着性、柔軟性、耐薬品性を有するウレタン樹脂塗膜を形成する。ウレタン樹脂塗料は、有機溶媒で希釈することができる。有機溶媒としては、アルコール系、カルボン酸エステル系、ケトン系、アミド系、脂肪族系及び芳香族炭化水素系の溶媒等を使用する。
【0097】
ポリオールには、1,6-ヘキサンジオール、シクロヘキシルジメタノール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルプロパンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ポリカプロラクトントリオール、ジトリメリロールプロパン、ペンタエリスリトール、ポリカプロラクトンテトラオール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール及びマンニトール等を使用する。又、それらうちの少なくとも2種類以上を混合したものを使用する。
【0098】
ポリイソシアネートには、2官能以上のイソシアネート化合物を使用する。2官能のイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、4,4-ジシクロヘキシルジイソシアネート等を使用する。3官能以上のイソシアネート化合物としては、ジイソシアネート化合物を出発原料として合成されたものであって、ビュレット体、トリメチロールプロパンアダクト体、イソシアヌレート体、アロファネート体等を使用する。ウレタン樹脂塗料から作られたウレタン樹脂塗膜の架橋密度を増加させ、塗膜の耐候性、耐汚染性を向上させるため、ポリイソシアネートが3官能以上のイソシアネート化合物であることが好ましい。
【0099】
3官能以上のイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体、ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ブロック型イソシアネート体、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのトリメチロールプロパンアダクト体、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート体等を使用する。又、それらイソシアネート化合物のうちの少なくとも2種類以上を混合したものを使用する。
【0100】
フッ素樹脂塗料やシリコン樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、ウレタン樹脂塗料には、必要に応じて各種の添加剤や顔料が含まれる。添加剤としては、塗膜の光沢度を下げる艶消し剤、表面張力の低下を防止する界面活性剤、塗料の流れ落ちを防止するたれ防止剤、顔料混合で生じる色むらを防止する色別れ防止剤、塗膜の腐食などを防止する防腐剤・防カビ剤、塗料の柔軟性・付着力を向上させる可塑剤、塗料貯蔵中に表面に発生する皮を防止する皮張り防止剤、塗膜の流動性を確保するレベリング剤がある。添加剤には、塗膜を硬化させ、耐候性、耐水性、耐薬品性、耐熱性等を向上させる硬化剤が含まれる。硬化剤には、ヘキサメチレンイソシアネート三量体等のブロックイソシアネートまたはその乳化分散体、メチル化メラミン、メチロール化メラミン、ブチロール化メラミン等のメラミン樹脂、メチル化尿素、ブチル化尿素等の尿素樹脂等がある。顔料としては、無機系着色顔料、有機系着色顔料、体質顔料がある。フッ素樹脂塗料やシリコン樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、ウレタン樹脂塗料には、水性又は油性のいずれもが含まれるとともに、1液型又は2液型のいずれもが含まれる。
【0101】
又、その他の添加剤として、造膜助剤、増粘剤、光安定剤、意匠剤、表面調整剤、水性媒体を加える場合もある。水性媒体は、水性分散液を希釈するために用いられる。増粘剤としては、ウレタン系増粘剤、ポリアクリル系増粘剤、ポリアマイド系増粘剤、セルロース系増粘剤、ベントナイト等の粘土鉱物の増粘剤を使用する。フッ素樹脂塗料から作られるフッ素樹脂塗膜やシリコン樹脂塗料から作られるシリコン樹脂塗膜、アクリル樹脂塗料から作られるアクリル樹脂塗膜、ウレタン樹脂塗料から作られるウレタン樹脂塗膜は、その水接触角が60°以下である。水接触角の測定方法としては、塗膜上に直径1~2mmの水滴を落とし、30秒後の水滴をビデオカメラで撮影し画像解析を行う。水滴の頂点と端点を結ぶ線と塗膜との角度の2倍を水接触角とする。
【0102】
ナノバブル含有コーティング液製造工程は、図2のナノバブル発生装置17を利用し、コーティング液にナノバブル14を分散混入させてナノバブル含有コーティング液10を作る。ナノバブル含有塗料製造工程は、ナノバブル発生装置17を利用し、塗料にナノバブル14を分散混入させてナノバブル含有塗料15を作る。ナノバブル発生装置17は、図1に示すように、トラック37(車両)(移動手段)の荷台38に設置固定されている。トラック37の荷台38には、アルミ製の箱型コンテナの荷室39が施設されている。荷室39の側面パネル及び天井パネルがアーム式パワーゲート(登録商標)によって上下方向へ旋回する。側面パネル及び天井パネルが上方へすると、荷室39が開放され、ナノバブル発生装置17が露出し、側面パネル及び天井パネルが下方へすると、荷室39が閉鎖され、ナノバブル発生装置17が荷室39に収納される。
【0103】
ナノバブル発生装置17は、トラック37によって各所(コーティング現場、ペインティング現場)へ移動可能である。例えば、コーティング工程を実施するコーティング現場(被服現場)がコーティングを請け負った請負会社から離れた地にある場合、トラック37を利用してナノバブル発生装置17をそのコーティング現場に搬送し、コーティング現場においてナノバブル含有コーティング液製造工程を実施することができる。又、ペインティング工程を実施するペインティング現場(塗装現場)がペインティングを請け負った請負会社から離れた地にある場合、トラック37を利用してナノバブル発生装置17をそのペインティング現場に搬送し、ペインティング現場においてナノバブル含有塗料製造工程を実施することができる。
【0104】
又、コーティング現場やペインティング現場以外の箇所においてナノバブル含有コーティング液製造工程やナノバブル含有塗料製造工程を実施し、ナノバブル含有コーティング液やナノバブル含有塗料を製造し、製造したナノバブル含有コーティング液やナノバブル含有塗料をトラックを利用してコーティング現場やペインティング現場に搬送する場合、ナノバブルによって体積が膨張した多量のナノバブル含有コーティング液やナノバブル含有塗料を搬送しなければならず、ナノバブル含有コーティング液やナノバブル含有塗料の搬送に支障が生じす場合がある。しかし、ナノバブル発生装置17をトラック37によってコーティング現場やペインティング現場に移動させた後、コーティング現場やペインティング現場においてナノバブル含有コーティング液製造工程やナノバブル含有塗料製造工程を実施するから、ナノバブルによって体積が膨張する前のコーティング液や塗料を搬送することができ、通常の輸送手段によって支障なくコーティング液や塗料を搬送することができる。
【0105】
ナノバブル混入装置17の一例は、図2に示すように、所定容積を有する貯水タンク18と、気体給気タンク19と、給水ポンプ20及び給気ポンプ21と、静止型流体混合装置22(ナノバブル発生装置)と、所定容積を有してナノバブル14が分散混入したナノバブル含有コーティング液10又はナノバブル含有塗料15を収容する収容槽23と、冷却装置(図示せず)と、コントローラ(図示せず)とから形成されている。ナノバブル混入装置17には、トラックのバッテリー(図示せず)又は外部電源(図示せず)から電力が供給されている。貯水タンク18には、ポリシラザン、シロキサンのうちの少なくとも一方からなる液体状のケイ素材料とアルキルシリケート縮合物と不活性有機溶剤とを所定の配合割合で混同・攪拌したコーティング液(ナノバブルを分散混入する前のコーティング液)が貯水され、又は、低分子シランを主成分とするコーティング液(ナノバブルを分散混入する前のコーティング液)が貯水され、或いは、塗料(ナノバブルを分散混入する前の塗料)が貯水されている。
【0106】
貯水タンク18には、レベル計(図示せず)が設置されている。レベル計は、信号線を介してコントローラに接続され、貯水タンク18に貯水されたコーティング液や塗料のレベル(貯水量)を計測し、計測した測定レベルをコントローラに送信する。貯水タンク18は、給水管路24(給水パイプ)を介して給水ポンプ20に連結されている。給水管路24には、図示はしていないが、流量計、逆止弁、給水電磁弁が設置されている。流量計は、信号線を介してコントローラに接続され、給水管路24を流動するコーティング液又は塗料の流量を計測し、計測した測定流量をコントローラに送信する。給水電磁弁は、その制御部が信号線を介してコントローラに接続され、その発停(開閉)がコントローラによって制御される。
【0107】
気体給気タンク19には、コーティング液又は塗料に分散混入させる気体が所定の圧力で収容されている。コーティング液又は塗料に分散混入させる気体としては、空気、窒素、アルゴン、ヘリウム、キセノン、ネオン、クリプトン、ラドン、水素、酸素、オゾン、メタン、エチレン、プロパン、ブタン、アセチレン、エタノール、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アンモニア、硫化水素、二酸化硫黄、一酸化炭素、二酸化炭素のうちのいずれか又はそれらを2種類以上混合した混合ガスが使用される。気体給気タンク19は、給気管路25(給気パイプ)を介して混合管路26(混合パイプ)に連結されている。給気管路25には、図示はしていないが、気圧計、逆止弁、給気電磁弁が設置されている。気圧計は、信号線を介してコントローラに接続され、気体給気タンク19に収容された気体の気圧を計測し、計測した測定気圧をコントローラに送信する。給気電磁弁は、その制御部が信号線を介してコントローラに接続され、その発停(開閉)がコントローラによって制御される。給気管路25には、給気ポンプ21が設置されている。給気ポンプ21は、その制御部が信号線を介してコントローラに接続されている。給気ポンプ21は、その発停や出力がコントローラによって制御される。
【0108】
給水ポンプ20は、給水管路24に設置され、その制御部が信号線を介してコントローラに接続されている。給水ポンプ20は、その発停や出力がコントローラによって制御される。給水ポンプ20は、混合管路26を介して静止型流体混合装置22に連結されている。静止型流体混合装置22は、供給管路27を介して所定容積の収容槽23に連結されている。収容槽23には、レベル計(図示せず)が設置されている。レベル計は、信号線を介してコントローラに接続され、収容槽に収容されたナノバブル14が分散混入されたナノバブル含有コーティング液10のレベル(貯水量)又はナノバブル14が分散混入されたナノバブル含有塗料15のレベル(貯水量)を計測し、計測した測定レベルをコントローラに送信する。
【0109】
静止型流体混合装置22(ナノバブル発生装置)は、流入口と流出口とを備えた円筒状ユニット28と、円筒状ユニット28の内部に配置された複数のハニカム構造エレメント(撹拌翼)(図示せず)とから形成されている。それらハニカム構造エレメントは、円筒状ユニット28の内部に直列(前後方向)に連結された状態で配置されている。静止型流体混合装置22は、ハニカム構造エレメントの内部にコーティング液又は塗料及び気体を高速回転によって生じる遠心力で通過させることにより、気体をナノレベルに超微細化してナノバブル14を生成しつつ、生成したナノバブル14をコーティング液又は塗料に満遍なく均一に混入(溶解)し、ナノバブル14が満遍なく均一に分散混入(分散溶解)したナノバブル含有コーティング液10又はナノバブル含有コーティング塗料15を作る。尚、静止型流体混合装置22では、コーティング液又は塗料及び気体がハニカム構造エレメントの内部を何度も通過することによって気体の超微細化(ナノレベル化)及び超微細化した気体のコーティング液又は塗料への混入(溶解)が進む。冷却装置は、冷媒(例えば、ハイドロフルオロカーボン)の循環によって静止型流体混合装置22の円筒状ユニット28を設定温度に冷却する。冷却装置は、その制御部が信号線を介してコントローラに接続されている。冷却装置は、その発停や出力がコントローラによって制御される。
【0110】
コントローラは、中央処理部(CPU又はMPU)とメモリ(メインメモリおよびキャッシュメモリ)とを有して独立したオペレーティングシステム(OS)によって動作する物理的なコンピュータであり、大容量記憶領域を実装している。コントローラには、キーボードやマウス等の入力装置、ディスプレイやプリンタ等の出力装置がインターフェイスを介して接続されている。コントローラの中央処理部は、オペレーティングシステム(OS)による制御に基づいて、メモリに記憶されたナノバブル混入アプリケーションを起動し、そのアプリケーションに従ってコーティング液又は塗料にナノバブル14を分散混入(分散溶解)する混入操作を実施する。
【0111】
ナノバブル含有コーティング液製造工程又はナノバブル含有塗料製造工程におけるナノバブル混入操作は、以下のとおりである。ナノバブル混入装置17のスイッチをONにすると、貯水タンク18に貯水されたコーティング液又は塗料にナノバブル14を混入する混入操作が開始される。尚、貯水タンク18には所定量のコーティング液又は塗料が注入されているとともに、気体給気タンク19には所定の圧力で気体(空気、オゾン、水素、ヘリウム、酸素、窒素、二酸化炭素、アルゴンのうちのいずれか1種類又はそれらを2種類以上混合した混合ガス)が収容されている。ナノバブル混入装置17のスイッチがONになると、コントローラは、給水ポンプ20の制御部に給水信号を送信するとともに給気ポンプ21の制御部に給気信号を送信し、冷却装置の制御部に冷却信号を送信する。更に、コントローラは、給水電磁弁の制御部に開信号を送信するとともに給気電磁弁の制御部に開信号を送信し、レベル計、流量計、気圧計に測定信号を送信する。
【0112】
給水信号を受信した給水ポンプ20の制御部は、給水ポンプ20を所定の出力(設定出力)で起動し、給気信号を受信した給気ポンプ21の制御部は、給気ポンプ21を所定の出力(設定出力)で起動する。冷却信号を受信した冷却装置の制御部は、冷却装置を所定の出力(設定出力)で起動する。開信号を受信した給水電磁弁の制御部は、給水電磁弁を開放し、開信号を受信した給気電磁弁の制御部は、給気電磁弁を開放する。測定信号を受信したレベル計は、貯水タンクに貯水されたコーティング液又は塗料のレベル計測を開始し、測定信号を受信した流量計は、給水管路24を流動するコーティング液又は塗料の流量計測を開始する。測定信号を受信した気圧計は、給気管路25を流動する気体の気圧計測を開始する。
【0113】
貯水タンク18に貯水されたコーティング液又は塗料は、給水ポンプ20の起動によって貯水タンク18から強制的に静止型流体混合装置22に給水される(給水工程)。コーティング液又は塗料は、給水管路24から給水ポンプ20を通って混合管路26に流入し、混合管路26を通って静止型流体混合装置22に流入する。気体給気タンク19に収容された気体は、給気ポンプ21の起動によって気体給気タンク19から強制的に静止型流体混合装置22に給気される(給気工程)。気体は、給気管路25から給気ポンプ21を通って混合管路26に流入する。混合管路26では、給水ポンプ20によって給水されたコーティング液又は塗料と給気ポンプ21によって給気された気体とが混合され、気体混合液が作られる(混合工程)。気体混合液は、静止型流体混合装置22に流入する。
【0114】
貯水タンク18のレベル計が計測した測定レベルを受信したコントローラは、測定レベルが注水レベルに低下した場合、注入メッセージをディスプレイに出力(表示)する。注入メッセージによって貯水タンク18へのコーティング液又は塗料の注入要を知ることができる。流量計が計測した測定流量を受信したコントローラは、測定流量が目標流量になるように給水ポンプ20の出力を調整する。気圧計が計測した測定気圧を受信したコントローラは、測定気圧が目標気圧になるように給気ポンプ21の出力を調整する。
【0115】
冷却装置は、ナノバブル混入装置17の起動中に冷媒を利用して静止型流体混合装置22の円筒状ユニット28を連続的に冷却する(冷却工程)。冷却装置によって円筒状ユニット28の温度が設定温度(例えば、10~20℃)に保持される。静止型流体混合装置22では、その流入口から気体が混合された気体混合コーティング液又は気体混合塗料が流入し、気体混合コーティング液又は気体混合塗料が複数のハニカム構造エレメント(撹拌翼)によって連続相の流体及び分散相の流体になり、気体混合コーティング液又は気体混合塗料の連続相及び分散相の流体がハニカム構造エレメントを蛇行しながら流動する。その時に受けるせん断力によって分散相としての流体(気体)が微細化されて微細化混合流体が生成される。
【0116】
次に、生成された微細化混合流体の流動が整流化された後、整流化された微細化混合流体が後流側に配置されたハニカム構造エレメントを蛇行しながら流動し、その時に受けるせん断力によって分散相としての微細化混合流体(気体)が更に微細化される。最終的にコーティング液又は塗料に混合された気体がナノレベルに超微細化され、ナノレベルの気泡(ナノバブル14)がコーティング液又は塗料に分散混入(分散溶解)し、その内部にナノバブル14が所定の濃度で満遍なく均一に分散混入したナノバブル含有コーティング液10又はナノバブル含有塗料15が作られる(ナノバブル含有コーティング液製造工程、ナノバブル含有塗料製造工程)。
【0117】
尚、ナノバブル14のコーティング液又は塗料への混入時に、コーティング液とナノバブル14又は塗料との摩擦によってナノバブルが分散混入された円筒状ユニット28内のナノバブル含有コーティング液10又はナノバブル含有塗料15の温度が上昇するが、冷却装置によって円筒状ユニット28が冷却されることで、円筒状ユニット28内のナノバブル含有コーティング液10又はナノバブル含有塗料15が10~20℃の温度に保持される。ナノバブル含有コーティング液製造工程によって製造されたナノバブル含有コーティング液10又はナノバブル含有塗料製造工程によって製造されたナノバブル含有塗料15に分散混入するナノバブル14は、その平均粒径D90が1μm未満、好ましくは、平均粒径D50が1nm以上500nmの範囲、より好ましくは、平均粒径D50が1nm以上300nm未満の範囲にある。ナノバブル含有コーティング液10には、前記平均粒径D90好ましくは前記平均粒径D50のナノバブル14が所定の濃度で分散混入している。ナノバブル含有塗料15には、前記平均粒径D90好ましくは前記平均粒径D50のナノバブル14が所定の濃度で分散混入している。
【0118】
ナノバブル14が分散混入(分散溶解)したナノバブル含有コーティング液10又はナノバブル含有塗料15は、供給管路27を通って収容槽23に収容される。収容槽23のレベル計が計測した測定レベルを受信したコントローラは、その測定レベルをディスプレイに出力(表示)する。ディスプレイに出力された測定レベルによってナノバブルが分散混入したナノバブル含有コーティング液10又はナノバブル含有塗料15の貯水量を知ることができる。
【0119】
コーティング液又は塗料に対するナノバブルの分散混入方式(ナノバブル発生方式)については、旋回液流式、スタティックミキサー式、エジャクター式ベンチュリー式、加圧溶解式のコーティング液又は塗料の流動を伴う方式のいずれかを使用することもでき、細孔式、回転式、超音波式、蒸気凝縮式、電気分解式のコーティング液又は塗料の流動を伴わない方式のいずれかを使用することもできる。
【0120】
ナノバブル含有コーティング液10は、ポリシラザン及びシロキサンのうちの少なくとも一方からなる液状のケイ素材料とアルキルシリケート縮合物と不活性有機溶剤とを所定の配合割合で混合したコーティング液の内部又は低分子シランを主成分とする液状のケイ素材料とアルキルシリケート縮合物と不活性有機溶剤とを所定の配合割合で混合したコーティング液の内部に、平均粒径D90が1μm未満、好ましくは、平均粒径D50が1nm以上500nmの範囲、より好ましくは、平均粒径D50が1nm以上300nm未満の範囲のナノバブル14が分散混入(分散溶解)しているから、それらナノバブル14によってナノバブル含有コーティング液10の単位体積当たりにおけるコーティング液自体の割合を少なくすることができ、ナノバブル含有コーティング液10を被覆対象となる物品11の面12にコーティングしたときのコーティング液自体のコーティング量(塗布量)が減り、物品11に対するコーティング液のコーティング量を低減させることができるとともに、コーティング液にナノバブル14が分散混入していない場合と比較し、そのコーティング量が減ることで物品11の面12の単位面積当たりのナノバブル含有コーティング液10の単価が低下し、ナノバブル含有コーティング液10を廉価にコーティング(使用)することができる。ナノバブル含有コーティング液10は、コーティング液にナノバブル14が分散混入(分散溶解)していない場合と比較し、単位体積当たりの質量が減少するから、それを被覆対象となる物品11の面12にコーティングした場合においてナノバブル含有コーティング液10から形成されたナノバブル含有無機コーティング膜13やナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13を含む物品11の重量の増加を最小限にすることができる。
【0121】
ナノバブル含有塗料15(ナノバブル含有フッ素樹脂塗料、ナノバブル含有シリコン樹脂塗料、ナノバブル含有アクリル樹脂塗料、ナノバブル含有ウレタン樹脂塗料)は、その内部にナノバブル14が分散混入(分散溶解)しているから、それらナノバブル14によってナノバブル含有塗料15の単位体積当たりにおける塗料自体の割合を少なくすることができ、ナノバブル含有塗料15を塗装対象となる物品11の面12に塗布したときの塗料自体のペインティング(塗布)量が減り、物品11に対する塗料のペインティング量を低減させることができるとともに、塗料にナノバブル14が分散混入していない場合と比較し、そのペインティング量が減ることで物品11の面12の単位面積当たりのナノバブル含有塗料15の単価が低下し、ナノバブル含有塗料15を廉価にペインティング(使用)することができる。ナノバブル含有塗料15は、塗料にナノバブル14が分散混入(分散溶解)していない場合と比較して単位体積当たりの質量が減少するから、それを塗装対象となる物品11の面12に塗布した場合においてナノバブル含有塗料15から形成されたナノバブル含有塗膜16を含む物品11の重量の増加を最小限にすることができる。
【0122】
ナノバブル14が分散混入するナノバブル含有コーティング液10におけるナノバブルの含有率は、10~95vol.%の範囲、好ましくは、30~95vol.%の範囲、より好ましくは、50~90vol.%の範囲にある。ナノバブル含有コーティング液10の1ml当たりのナノバブルの総数は、10~1012個の範囲にある。ナノバブル14が分散混入するナノバブル含有塗料15におけるナノバブル14の含有率は、10~95vol.%の範囲、好ましくは、30~95vol.%の範囲、より好ましくは、50~90vol.%の範囲にある。ナノバブル含有塗料15の1ml当たりのナノバブル14の総数は、10~1012個の範囲にある。ナノバブル含有コーティング液10中及びナノバブル含有塗料15中のナノバブル14の粒径及び粒度分布、含有率、ナノバブル14の総数は、ナノ粒子トラッキング解析法(NTA)によって測定した。ナノ粒子トラッキング解析法では、ナノバブル含有コーティング液10中及びナノバブル含有塗料15中のナノバブル14の粒度分布、粒子数濃度、凝集状態を高い分解能で測定することができる。
【0123】
ナノ粒子トラッキング解析法では、サンプルチャンバーにナノバブル14が分散混入したナノバブル含有コーティング液10又はナノバブル含有塗料15を収容し、そのサンプルチャンバーにレーザー光を照射する。ナノ粒子トラッキング解析法は、レーザー光を照射された各ナノバブル14の90°の散乱光を高感度のCMOSカメラで検出する。検出された粒子のブラウン運動がカメラ画像上の輝点の動きとして観察されてトラッキングされる。この動きを追跡することによって拡散計数を求め、ストークス・アインシュタイン式によりナノバブル14の粒子サイズを決定する。粒子部分布(濃度)は、容量が既知であるカメラ視野内の全ての粒子カウントから1ml当たりのナノバブル14の粒子数を求め、ナノバブル含有コーティング液10又はナノバブル含有塗料15の含有率を求めるとともに、ナノバブル含有コーティング液10又はナノバブル含有塗料15の1ml当たりのナノバブル14の総数を算出する。ナノ粒子トラッキング解析法では、セルに一定電圧をかけたときの電気泳動度を測定することで粒子のゼータ電位を決定する。
【0124】
ナノバブル混入装置17によってナノバブル14が分散混入したナノバブル含有コーティング液10又はナノバブル含有塗料15は、水素イオンH濃度と水酸化物イオンOH濃度が略等しい酸塩基性に関する性質が略中性又はアルカリ性である。ナノバブル含有コーティング液10又はナノバブル含有塗料15の内部に分散混入するナノバブル14は、高い気泡内圧を有する球体の状態でナノバブル含有コーティング液10又はナノバブル含有塗料15に混入し、負に帯電している。
【0125】
ナノバブル14は、ナノバブル含有コーティング液10中又はナノバブル含有塗料15中において直径が1μm未満でレイノルズ数Reが略1になって球形気泡となる。ナノバブル14の形状(球体)は、アトムプローブ電界イオン顕微鏡(Atom Probe Field Ion Microscope, APFIM)によって観察した。アトムプローブ電界イオン顕微鏡は、電界イオン顕微鏡(FIM)に飛行時間型質量分析器を取付けたものであり、電界イオン顕微鏡によって個々のナノバブル14を観察し、飛行時間質量分析によってそれらナノバブル14を同定する。グラフィックワークステーションにおいて三次元的に表示することにより、ナノバブル含有コーティング液10中又はナノバブル含有塗料15中のナノバブル14の形状(球体)を略ナノスケールのレベルの分解能で再現する。
【0126】
ナノバブル含有コーティング液10又はナノバブル含有塗料15の内部に混入しているナノバブル14は、ナノバブル含有コーティング液10又はナノバブル含有塗料15の内部における上昇速度が遅い。ナノバブル14の上昇速度は、コーティング液や塗料の液物性に依存するが、水中では直径が約100μmでレイノルズ数Reが略1になり、球形気泡となる。直径dの球形気泡の上昇速度Uは、Stokesの式:U=pgd/18μに従う。ここで、pは、液密度、gは、重力加速度、μは、液粘度である。
【0127】
ナノバブル含有コーティング液10又はナノバブル含有塗料15の内部に混入(溶解)しているナノバブル14は、その気泡内圧(気泡内圧力)が高い(自己加圧効果)。気泡内圧力は、表面張力σの影響でYoung-Laplaceの式 :ΔP =4σ/dによって気泡周囲の圧力よりΔPだけ高くなる。ナノバブル含有コーティング液10中又はナノバブル含有塗料15中における気泡の直径dと気泡内圧力との関係としては、気泡が小さくなるほど気泡内部の圧力が高くなる(1μmで3.87「atm」、100nmで29.7「atm」、水の表面張力σ:72.8mN/m(20℃)、気泡周囲の圧力は1「atm」とする)。 従って、気泡が収縮すると気体溶解成分の分圧、すなわち溶解の推進力が増大し、気体をナノサイズにすることで気体がコーティング液や塗料に溶解し易くなり、多量のナノバブルがコーティング液や塗料に溶解する。
【0128】
ナノバブル含有コーティング液10やナノバブル含有塗料15の内部に混入(溶解)しているナノバブル14は、その気液界面積が大きい。単位体積当たりの気液界面積A/Vは、式:A/V=6dで表される。気泡径dの減少とともにA/Vが増大し、ナノバブル含有コーティング液10中やナノバブル含有塗料15中における気体の混入量(溶解量)に大きく寄与している。ナノバブル14の気体は、その混入量(溶解量)が極めて大きい。ナノバブル含有コーティング液10又はナノバブル含有塗料15の内部への気泡の物質移動速度N「mol/s」は、式:N=KA(p-p*)によって求められる。ここで、KGは、気相基準総括物質移動係数「mol/msPa」、Aは、気泡の表面積[m]、pは、気泡内の溶解成分の分圧「Pa」、p*は、液相中の溶解成分と平衡な気相分圧「Pa」を示す。
【0129】
気泡内の気体がコーティング液や塗料の内部に溶解(混入)する場合、気液界面をはさんで気体境膜と液境膜からなる2重境膜説から、総括物質移動抵抗1/K又は1/KHは、液相抵抗1/kと気相抵抗1/kHとの和として電気抵抗のオームの法則のように式:1/K=1/KH=1/k+1/kHとなる。ここで、Kは、液相基準総括物質移動係数、Hは、ヘンリー 定数(p=HC)、式:1/K=1/KH=1/k+1/kHにおいて気体側物質移動抵抗1/kGHが略無視できるとすれば、液相基準総括物質移動係数KLと液側物質移動係数kLとが略等しくなる。
【0130】
球形気泡でレイノルズ数Re<1、上昇速度が前記Stokesの 式:U=pgd/18μで表される場合の液側物質移動係数kは、式:k=D/d[l+(1+dU/D1/3]で表される。ここで、Dは、液相中の気体の拡散係数、dは、気泡径、Uは、気泡の上昇速度である。例えば、式:k=D+dl+[(1+dU/D1/3]によって気泡径と酸素MB-水系の液側物質移動係数kとの関係を求めると、気泡径dが100μmのときのkは1.817・10-4「m/s」、気泡径dが10μmのときのkは5.37・10-4「m/s」、気泡径dが1μmのときのkは5.20・10-3「m/s」である。尚、コーティング液や塗料の内部の酸素の拡散係数Dは2.60・10-9「m/s」を用いた。
【0131】
前記気泡径dに対するkの値及び前記気泡径dに対する気泡内圧力「atm」を用いて式:N=KA(p-p*)によって物質移動速度Nを求め、整理した結果、気泡径dが10μmにおいて、上昇速度Uが3.26・10-3「m/min」、圧力差ΔPが2.91・10、気泡個数比が1.0・10、面積比が100、物質移動速度比が6.15・10「mol/s」及び1.0・10「mol/mm」であり、気泡径dが100nmにおいて、上昇速度Uが3.15・10-7「m/min」、圧力差ΔPが2.91・10、気泡個数比が1.0・1012、面積比が1.0・10、物質移動速度比が5.95・1010「mol/s」及び1.0・1018「mol/mm」である。
【0132】
直径1mmの球形気泡を直径10μmの気泡に分割させると、個数が10個に増加し、直径1mmの気泡の表面積を1とした場合に表面積が100倍になる。直径1mmの球形気泡を直径100nmの気泡に分割させると、個数が1012個に増加し、直径1mmの気泡の表面積を1とした場合に表面積が10倍になる。従って、直径1mmの気泡の単位時間当たりの物質移動速度(溶解速度)を1としたときに直径10μmの気泡では、その物質移動速度(溶解速度)が6・10倍になり、直径1mmの気泡の単位時間当たりの物質移動速度(溶解速度)を1としたときに直径100nmの気泡では、その物質移動速度(溶解速度)が6・1010倍になる。このように,計算上は気泡がナノサイズになることで、表面積及び気泡内分圧の増加、上昇速度の低下によってコーティング液や塗料に対する物質移動速度(溶解速度)が急激に増加する。
【0133】
電気泳動実験装置を使用し、ナノバブル14の表面電位を測定した。容器内で発生させたナノバブル14は、電気泳動セル(暑さ1mm、高さ23.0mm、幅75.0mm)に導入された電極の電場方向を1s毎に切り替えることにより、負に帯電したナノバブル14がジグザグ運動をする。上昇速度の測定によって前記Stokes式で気泡径を、水平方向の速度によってSmoluchowskiの式:ζ=μu/εを用いて気泡のゼータ電位を求めた。ここで、ζは、ゼータ電位「V」、μは、ナノバブル含有コーティング液10又はナノバブル含有塗料15の粘度「kg/ms」、uは、気泡の移動度「m/sV」、εは、ナノバブル含有コーティング液10又はナノバブル含有塗料15の誘電率「s/kgm」である。
【0134】
ナノバブル14は、その粒径(気泡径)によらず-30~-40「mV」で負に帯電している。ナノバブル含有コーティング液10又はナノバブル含有塗料15のクラスター構造がナノバブル含有コーティング液10やナノバブル含有塗料15の分子と電離した+イオンと-イオンとから形成され、その構造中に+イオン及び-イオンが収まり易いが、特に-イオンが界面に集積し易く、そのため負に帯電している。ナノバブル14が負に帯電することで、ナノバブル含有コーティング液10中やナノバブル含有塗料15中のナノバブル14どうしが反発しあい、静電的な反発によってそれらナノバブル14どうしが結合(合一)することはない。
【0135】
ナノバブル含有コーティング液10又はナノバブル含有塗料15は、その内部に混入(溶解)するナノバブル14が負に帯電していることで、ナノバブル含有コーティング液10やナノバブル含有塗料15の内部に分散混入したナノバブル14どうしが反発しあい、ナノバブル14どうしが結合(合一)することはなく、ナノバブル14どうしが結合することによるナノバブル14の大気泡化を防ぐことができ、ナノバブル含有コーティング液10又はナノバブル含有塗料15における超微細気泡のナノバブル14の分散混入状態を維持することができる。ナノバブル含有コーティング液10又はナノバブル含有塗料15は、ナノバブル14どうしが結合(合一)することなく、超微細気泡のナノバブル14がナノバブル含有コーティング液10中やナノバブル含有塗料15中に分散混入(分散溶解)しているから、ナノバブル14がナノバブル含有コーティング液10又はナノバブル含有塗料15から揮発し難く、ナノバブル14をナノバブル含有コーティング液10中やナノバブル含有塗料15中に長期間留まらせることができる。
【0136】
ナノバブル含有コーティング液10又はナノバブル含有塗料15は、ナノバブル14が柱状に結合した状態ではなく、高い気泡内圧を有する球体の状態でナノバブル含有コーティング液10やナノバブル含有塗料15の内部に所定の濃度で多量に分散混入(分散溶解)しているとともに、平均粒径D90が1μm未満、好ましくは、平均粒径D50が1nm以上500nm未満の範囲、より好ましくは、平均粒径D50が1nm以上300nm未満の範囲のナノバブル14がナノバブル含有コーティング液10やナノバブル含有塗料15の内部に所定の濃度で多量に分散混入し、ナノバブル含有コーティング液10又はナノバブル含有塗料15におけるナノバブル14の含有率が10~95vol.%の範囲の範囲、好ましくは、30~95vol.%の範囲、より好ましくは、50~95vol.%の範囲にあり、ナノバブル含有コーティング液10又はナノバブル含有塗料15の1ml当たりのナノバブル14の総数が10~1012個/1mlの範囲にあるから、超微細気泡であるナノバブル14によってナノバブル含有コーティング液10やナノバブル含有塗料15における単位体積当たりのコーティング液自体又は塗料自体の割合を少なくすることができ、被覆対象となる物品11の面12にナノバブル含有コーティング液10をコーティング(塗布)する場合におけるコーティング液自体のコーティング(塗布)量を確実に低減させることができるとともに、物品11の面12にナノバブル含有コーティング塗料15をペインティング(塗布)する場合における塗料自体のペインティング(塗布)量を確実に低減させることができる。
【0137】
ナノバブル14が分散混入した後のナノバブル含有コーティング液10は、その20℃における粘度が0.98~1.008mPa・sの範囲にある。ナノバブル14が分散混入した後の20℃の前記粘度範囲のナノバブル含有コーティング液10の内部におけるナノバブル14の上昇速度が0・000015~0.00005mm/minの範囲にある。ナノバブル14は、体積が極めて小さいため、ナノバブル含有コーティング液10中における上昇速度が極めて遅い。ナノバブル含有コーティング液10の内部におけるナノバブル14の上昇速度が0.00005mm/minを超過すると、ナノバブル含有コーティング液10中にナノバブル14を長時間留めておくことが難しく、ナノバブル含有コーティング液10からナノバブル14が目標滞留時間以内に揮発してしまう場合がある。
【0138】
ナノバブル14が分散混入した後のナノバブル含有塗料15は、その動粘度が50~200mm/sの範囲にある。ナノバブル14が分散混入した後の20℃のナノバブル含有塗料15の内部におけるナノバブル14の上昇速度が0・000015~0.00005mm/minの範囲にある。ナノバブル14は、体積が極めて小さいため、ナノバブル含有塗料15の内部における上昇速度が極めて遅い。ナノバブル含有塗料15の内部におけるナノバブル14の上昇速度が0.00005mm/minを超過すると、ナノバブル含有塗料15中にナノバブル14を長時間留めておくことが難しく、ナノバブル含有塗料15からナノバブル14が目標滞留時間以内に揮発してしまう場合がある。
【0139】
ナノバブル含有コーティング液10の内部又はナノバブル含有塗料15の内部のナノバブル14に働く力としては、浮力及び抗力がある。浮力は、ナノバブル14の体積に比例(ナノバブル14の半径の3乗に比例)する。抗力は、ナノバブル14の断面積に比例(ナノバブル14の半径の2乗に比例)し、ナノバブル14の上昇速度の2乗に比例する。具体的に、ナノバブル14の半径をr、ナノバブル含有コーティング液10又はナノバブル含有塗料15の密度をρ、重力加速度をg、ナノバブル含有コーティング液10又はナノバブル含有塗料15の粘度をη、ナノバブル14の移動速度をuとした場合、ナノバブル14にはたらく浮力(ナノバブル14の密度は無視する)は、アルキメデスの原理により式(1):F=4πr3ρg/3によって表される。
【0140】
又、ナノバブル14にはたらく抵抗力は、ストークスの定理により、式(2):F=6πηruによって表される。式(1)及び式(2)から、ナノバブル14のナノバブル含有コーティング液10又はナノバブル含有塗料15の内部における移動速度uは、式(3):u=(2/9)r2ρg/ηによって表される。ナノバブル含有コーティング液10中又はナノバブル含有塗料15中におけるナノバブル14の上昇速度は、式(3)から求めた。式(3)から明らかなように、ナノバブル14の半径r(粒径)が大きいほど、ナノバブル14のナノバブル含有コーティング液10中又はナノバブル含有塗料15中における移動速度uが高くなる。
【0141】
1気圧下におけるナノバブル14の半径rをaとした場合、半径rと水深hは、式(4):r=a×{101325/(ρgh+101325)}1/3によって表される。式(3)及び式(4)から明らかなように、ナノバブル14は、ナノバブル含有コーティング液10又はナノバブル含有塗料15の水深が浅くなるとその粒径が大きくなって、上昇速度が高くなる。
【0142】
仮説として、直径が1.0μm未満のナノバブル14(ウルトラファインバブル)は、塩析現象(Salting-Out現象)により溶解度が低下し、長期間安定して、ナノバブル含有コーティング液10の内部又はナノバブル含有塗料15の内部に存在することになる。塩析現象により、ナノバブル14が長期間安定的に存在し続けるならば、pHが7に近いナノバブル14を含有するナノバブル含有コーティング液10又はナノバブル含有塗料15が存在しないことになるが、中性液でも、安定的なナノバブル14が存在する事例がある。
【0143】
一般に、ナノバブル14とそれより大きなマイクロバブルとが混在した状態では、後者の大きなマイクロバブルの影響によってナノバブル14が浮上したり、外圧によるキャビテーション破壊の影響を受けたりすることにより、ナノバブル14の寿命が短くなる。しかしながら、ナノバブル混入装置17におけるナノバブル14の生成時には、直径が1.0μm以上の大きなマイクロバブルが生成されないため、生成されたナノバブル14の寿命をより長くすることができる。
【0144】
図3の(a)~(c)は、ナノバブル含有コーティング液10をコーティングした物品11の面12にナノバブル含有コーティング液10からナノバブル含有無機コーティング膜13又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13が形成されるメカニズムを時系列で説明する断面図であり、図4は、ナノバブル含有無機コーティング膜13の構造の一例を示すイメージ図である。図5は、ナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13の構造の一例を示すイメージ図であり、図6は、ナノバブル含有無機コーティング膜13又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13の内部に分散混在(分散溶存)するナノバブル14のイメージを図示した図である。
【0145】
図6では、ナノバブル14を目視可能な球体イメージとして図示しているが、実際にはナノバブル14を目視することはできない。ナノバブル含有コーティング液製造工程によってナノバブル含有コーティング液10を製造した後、コーティング工程が実施される。既述のように、コーティング工程は、ナノバブル含有コーティング液製造工程の後、直ち(直近)に行われる。
【0146】
ナノバブル含有コーティング液10の被覆対象となる物品11及びナノバブル含有塗料15の塗装対象(塗布対象)となる物品11は、金属成形品、プラスチック成形品、ガラス成形品、ゴム成形品、革成形品、木成形品、紙製成形品、織布成形品、不織布成形品である。尚、ナノバブル含有塗料の塗装対象となる物品には、建造物が含まれる。建築物やそれら成形品の形状は任意(自由)である。金属成形品の材料としては、鉄、アルミニウム、ジュラルミン、ステンレススチール、銅、金、銀、チタン、ニッケル、合金等がある。それら材料からなる金属成形品の形状は、板、棒、その他の各種の立体形状がある。プラスチック成形品の材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアミド(ナイロン)、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスルホン樹脂等の公知の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂がある。それら材料からなるプラスチック成形品の形状は、フィルム状、シート状、板状、その他の各種の立体形状がある。ナノバブル含有塗料の塗装対象となる建造物には、あらゆる建造物が含まれるとともに、モルタル、コンクリート、ALC、サイディングボード、押出成形セメント板、石膏ボード、スレート、木部、PC板等の建築資材も含まれる。
【0147】
コーティング工程においてナノバブル含有コーティング液10は、被覆対象となる物品11の面12にコーティングされることにより、水分と化学反応して単層又は複層の超薄膜のナノバブル含有無機コーティング膜13又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13を形成する。尚、ナノバブル含有無機コーティング膜13又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13の膜厚は、5nm~1μmの範囲、好ましくは、50nm~500nmの範囲の被膜として成膜される。
【0148】
各種物品11の面12に対するナノバブル含有コーティング液10のコーティング方法には特に限定がなく、被覆対象の物品11の形状に適したコーティング方法によってコーティングされる。例えば、スプレー法、ディッピング法、刷毛塗り法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ法、インクジェット法等によってコーティングする。ナノバブル含有コーティング液10のコーティング量(塗布量)について特に限定はなく、被覆対象となる物品11に要求される表面性能に対応してコーティング量を決定する。一般的には、固形分換算にて0.1~20g/m2である。コーティング量が0.1g/m2未満では、所望の特性を有するナノバブル含有無機コーティング膜13又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13が形成されず、一方、コーティング量が20g/m2を超えるとナノバブル含有無機コーティング膜13又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13の膜厚が必要以上に増加し、ナノバブル含有無機コーティング膜13又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13の柔軟性が失われる。
【0149】
尚、ナノバブル含有コーティング液10のコーティング工程よりも前段となる前処理工程として、物品11の面12に精製水等の水(HO)を噴霧し、物品11の面12に水を付着させてもよい。このようにすることで、物品11の面12に付着させた水分とナノバブル含有コーティング液10に含まれる成分との化学反応を促進させ、物品11の面12に迅速にナノバブル含有無機コーティング膜13又は有機/ナノバブル含有無機ハイブリッドコーティング膜13を形成することができ、物品11の面12に強固なナノバブル含有無機コーティング膜13又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13を形成することができる。
【0150】
又、ナノバブル含有コーティング液10のコーティング工程よりも前段となる前処理工程として、物品11の面12にプライマーとして無機ポリシラザンを主成分とするコーティング液をコーティングすることもできる。例えば、無機ポリシラザンの溶液(1wt%溶液)をコーティングした後にナノバブル含有コーティング液10をコーティングした場合、単にナノバブル含有コーティング液10のみをコーティングした場合と比較して、ナノバブル含有無機コーティング膜13又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13の防錆性(耐久性)が向上する。
【0151】
コーティング工程の後、ナノバブル含有コーティング膜形成工程が実施される。ナノバブル含有コーティング液10をコーティングした物品11の面12にナノバブル含有コーティング膜形成工程によってナノバブル含有無機コーティング膜13を形成するには、ナノバブル含有コーティング液10を物品11の面12のコーティングした後、物品11の面12に紫外線を照射しつつ、赤外線を照射して物品11の面12の温度を400℃以上に加熱する。
【0152】
ナノバブル含有コーティング液10をコーティングした物品11の面12にナノバブル含有コーティング膜形成工程によってナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13を形成するには、コーティング工程によって物品11の面12にナノバブル含有コーティング液10をコーティングした後、物品11の面12を加熱することなく、室温(常温)のまま放置する。又は、物品11の面12にナノバブル含有コーティング液10をコーティングした後、室温(常温)のまま放置しつつ、物品11の面12に紫外線を照射する。或いは、物品11の面12にナノバブル含有コーティング液10をコーティングした後、物品11の面12に紫外線を照射しつつ、赤外線を照射して物品11の面12の温度を400℃未満に加熱する。
【0153】
物品11の面12には、図3(a)に示すように、結露や空気中の湿気によってわずかな水分(水滴)が付着している(水(HO)を噴霧する場合を含む)。物品11の面12にコーティング工程によってナノバブル含有コーティング液10を薄膜状にコーティングすると、ナノバブル含有コーティング液10に含まれる有機ポリシラザンを構成する-(SiR-NR)-ユニット成分及び/又はシロキサンを構成する-(SiR-NR)-ユニット成分が空気中の水分(H0)と化学反応することで、物品11の面12にシロキサン結合(Si-O-Si)による主鎖の一部に有機官能基が側鎖として結びついた有機複合構造(ナノバブル含有無機コーティング膜13又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13の構造イメージの一例における-(Si(CH-O-Si(CH)-ユニット)を有するナノバブル含有無機コーティング膜13(ガラス被覆層(非晶質(アモルファス)ガラス被膜))又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13が形成(生成)される。ナノバブル含有無機コーティング膜13は、略100%ガラス化(無機化)し、ナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13は、100%未満でガラス化(無機化)する。尚、上記の化学反応で微量の気体(NH,H)が副次的に生成される。それらの気体は、物品11の面12に残らず大気中に揮発(放出)する。
【0154】
図3(b)に示すように、ポリシラザン及び/又はシロキサンを含むナノバブル含有コーティング液10は、空気に接する表面層29において、空気中に含まれる水分と化学反応(脱アンモニア架橋)することで、ナノバブル含有無機コーティング膜13又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13の副生成物である水素やアンモニア等のガスが表面層29から外気に揮発するとともに、ナノバブル含有無機コーティング膜13又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13の面側の被覆層30が形成(生成)される。
【0155】
物品11の面12にコーティングされたナノバブル含有コーティング液10は、物品11の面12に接する背面層31において面12に付着した水分(水滴)又は面12に終端として存在しているヒドロキシル基-OHと化学反応(脱アンモニア架橋)することで、水素やアンモニア等のガスが背面層31内を上昇し、面12から外気に揮発するとともに、ナノバブル含有無機コーティング膜13又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13の背面側の被覆層32が形成(生成)される。
【0156】
最初にナノバブル含有コーティング液10の表面層29及び背面層31において被覆層30,32(ガラス被覆層又はガラス化(無機化)した部分と有機化した部分)が生成される。次に、表面層29側から背面層31側に向かって被覆層30(ガラス被覆層又はガラス化(無機化)した部分と有機化した部分)が形成拡大するとともに、背面層31側から表面層29側に向かって被覆層32(ガラス被覆層又はガラス化(無機化)した部分と有機化した部分)が拡大することで、順次中間層33の被覆層34(ガラス被覆層又はガラス化(無機化)した部分と有機化した部分)が形成(生成)され、最終的に外気に接する表面層29と物品11の面12に接する背面層31と表面層29及び背面層31の間の中間層33とにナノバブル含有無機コーティング膜13又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13が形成(生成)される。
【0157】
尚、ポリシラザン及び/又はシロキサンから作られたナノバブル含有無機コーティング膜13は、略100%のガラス被覆層である。有機ポリシラザン及び/又はシロキサンから作られたナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13は、ガラス被覆層(非晶質(アモルファス)ガラス被膜層)と有機被覆層とから形成されている。ナノバブル含有無機コーティング膜13又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13は、有機ポリシラザン及び/又はシロキサンを反応させて生成したSiO2を主成分とすることで、平面的に広がり易く、密度の高く高い硬度(鉛直硬度6H~9H程度)のガラス被膜層が形成され、ナノレベルの超薄膜構造になる。
【0158】
ナノバブル含有コーティング液10に含まれる低分子シランは、脱水架橋によってナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13(非晶質(アモルファス)ガラス被膜を形成(生成)する。尚、低分子シランから作られたナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13は、ガラス被覆層(非晶質(アモルファス)ガラス被膜層)と有機被覆層とから形成されている。
【0159】
ナノバブル含有無機コーティング膜13又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13は、ナノバブル含有コーティング液10が有機ポリシラザン及び/又はシロキサン又は低分子シランを含むことにより、ナノレベルの超薄膜に形成される。その膜厚は、5nm~1μmの範囲、好ましくは、50nm~500nmの範囲にある。ナノバブル含有無機コーティング膜13又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13は、SiO2を主成分とする被覆膜であるにも関わらず、優れた柔軟性を有し、アンカー部35によるアンカー効果とも相俟って物品11の面12が布材等の変形を生じるものであったとしても剥離することはなく、物品11の面12の変形に追従してナノバブル含有無機コーティング膜13又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13の被覆状態を維持することができる。
【0160】
物品11の面12においてナノバブル含有コーティング液10が硬化して作られたナノバブル含有無機コーティング膜13又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13の内部には、平均粒径D90が1μm未満、好ましくは、平均粒径D50が1nm以上500nmの範囲、より好ましくは、平均粒径D50が1nm以上300nm未満の範囲のナノバブル14がそのまま残存してナノバブル含有無機コーティング膜13又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13に閉じ込められ、ナノバブル14が所定の濃度で分散混在(分散溶存)している。
【0161】
ナノバブル含有無機コーティング膜13又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13の内部に分散混在するナノバブル14は、ナノバブル含有コーティング液10中に分散混入していた状態と同様に、高い気泡内圧を有する球体であり、ナノバブル14の平均粒径D90が1μm未満、好ましくは、平均粒径D50が1nm以上500nmの範囲、より好ましくは、平均粒径D50が1nm以上300nm未満の範囲にある。ナノバブル含有無機コーティング膜13又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13の内部におけるナノバブル14の最大粒度分布50nm~500mの範囲、好ましくは、10nm~300nmの範囲にある。ナノバブル含有無機コーティング膜13又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13におけるナノバブルの含有率は、10~95vol.%の範囲、好ましくは、30~95vol.%の範囲、より好ましくは、50~95vol.%の範囲にある。ナノバブル含有無機コーティング膜13又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13の1mm当たりのナノバブル14の総数は、10~1012個の範囲にある。
【0162】
所定の膜厚(5nm~1μm、好ましくは、50nm~500nm)にコーティングされたナノバブル含有コーティング液10の内部に混入(溶解)するナノバブル14は、その粒径が前記範囲においてナノバブル含有コーティング液10の背面層31(底部)から表面層29(頂部)に向かうにつれて次第に大きくなっている。従って、ナノバブル含有コーティング液10の背面層31(底部)に位置するナノバブル14の粒径が1番小さく、ナノバブル含有コーティング液10の表面層29(頂部)に位置するナノバブル14の粒径が1番大きく、ナノバブル含有コーティング液10の中間層33(中間部)に位置するナノバブル14の粒径が背面層31(底部)及び表面層29(頂部)に位置するナノバブル14のそれの中間の大きさである。
【0163】
尚、図4のナノバブル含有無機コーティング膜13の構造イメージ又は図5のナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13の構造イメージの一例に示すように、アルキルシリケート縮合物が水分と化学反応することで生成される-(Si(OH)-O-Si(OH))-ユニットを有する加水分解生成物によって各被覆層30,32,34(表面層29、中間層33、背面層31)におけるシロキサン結合(Si-O-Si)による主鎖の一部との間で架橋反応が起こり、架橋構造が形成されることにより、ナノバブル含有無機コーティング膜13又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13は緻密かつ柔軟な構造となるものと想定される。又、架橋構造が形成されることにより、ナノバブル含有無機コーティング膜13又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13の表面に有機ポリシラザン及び/又はシロキサンに由来する疎水性のメチル基(CH)と、アルキルシリケート縮合物の加水分解生成物に由来する親水性のヒドロキシル基(OH)を配位可能であると想定される。
【0164】
図3(c)に示すように、ナノバブル含有無機コーティング膜13又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13によって被覆される前の物品11の面12には、鏡面加工等の特段の表層処理を行わない限り、製造工程等で生じる小傷等によってマイクロレベルの微細な多数の凹凸部36が形成されている。ナノバブル含有コーティング液10が物品11の面12にコーティングされるとともに凹凸部36の内部に入り込んだ状態で硬化することにより、それらの凹凸部36の内部に入り込んで硬化したナノバブル含有無機コーティング膜13又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13のアンカー部35がアンカー効果を発揮し、ナノバブル含有無機コーティング膜13又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13が物品11の面12に対して一層強固に接着する。低分子シランから作られたナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13は、低分子であるから、物品11の面12の凹凸部36の内部全域に入り込み(滲入し)、凹凸部36の内部全域において硬化することで、強固なアンカー効果を発揮する。
【0165】
物品11の面12に凹凸部36が略ない平滑面である場合、ナノバブル含有コーティング液10をコーティングする前処理として、物品11の面12を目粗し処理を行うことによって物品11の面12に平均粗さ1~500μm程度の凹凸部36を形成してもよい。このように目粗し処理をすることで、ナノバブル含有無機コーティング膜13又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13のアンカー部35によるアンカー効果を得ることができる。目粗し処理の後、エアガン等の空気噴射手段を用いて物品11の面12に発生した金属粉やプラスチック粉等を吹き飛ばす清浄処理を行う。清浄処理の後、所定時間を置くことで物品11の面12に結露等を生じさせ、自然由来の水分を付着させる。
【0166】
この場合、物品11の面12の目粗し処理及び清浄処理をした後、目粗しによって凹凸部36が形成された物品11の面12に霧吹き等の水分付与手段によって水分を積極的に付着させ、その後、ナノバブル含有コーティング液10をコーティングする。このようにすることで、物品11の面12に付着させた水分と、物品11の面12に接するナノバブル含有コーティング液10との化学反応を促進することができる。尚、物品11の面12に目粗し処理を施すことなく、水分付与手段によって水分を付着させてもよい。
【0167】
コーティング方法は、コーティング液にナノバブル14を分散混入させてナノバブル含有コーティング液10を作り、そのナノバブル含有コーティング液10を被覆対象である物品11の面12にコーティングするとともに、物品11の面12にコーティングされたナノバブル含有コーティング液10を乾燥(化学反応)させ、平均粒径D90が1μm未満、好ましくは、平均粒径D50が1nm以上500nmの範囲、より好ましくは、平均粒径D50が1nm以上300nm未満の範囲のナノバブル14が分散混在したナノバブル含有無機コーティング膜13又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13を形成し、ナノバブル含有無機コーティング膜13又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13におけるナノバブル14の含有率が10~95vol.%の範囲、好ましくは、30~95vol.%の範囲、より好ましくは、50~95vol.%の範囲にあり、ナノバブル含有コーティング液10やナノバブル含有無機コーティング膜13又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13がその内部に超微細気泡のナノバブル14を高濃度で多量に含有するから、ナノバブル含有コーティング液10の単位体積当たりのコーティング液自体の割合が少なくなるとともに、ナノバブル含有無機コーティング膜13又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13の単位面積当たりのコーティング膜自体の割合が少なくなり、コーティング液やコーティング膜がナノバブルを含有しない場合と比較し、被覆対象である物品11に対するナノバブル含有コーティング液10のコーティング量やナノバブル含有無機コーティング膜13又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13の被覆量を低減させることができ、ナノバブル含有コーティング液10によって物品11を廉価にコーティングすることができるとともに、ナノバブル含有無機コーティング膜13又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13によって物品11を廉価に被覆することができる。
【0168】
コーティング方法は、コーティング膜がナノバブルを含有しない場合と比較し、ナノバブル含有無機コーティング膜13又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13の単位面積当たりの質量が減少するから、ナノバブル含有無機コーティング膜13又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13が被覆対象である物品11の面12を被覆した場合においてナノバブル含有無機コーティング膜13又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13を含む物品11の重量の増加を最小限にすることができる。コーティング方法は、ナノバブル含有コーティング液製造工程をコーティング工程の直近であってコーティング現場において実施することで、ナノバブル含有コーティング液製造工程からコーティング工程までに長時間を要する場合と比較し、ナノバブル含有コーティング液10からナノバブル14が揮発することはなく、ナノバブル14が高濃度で分散混入したナノバブル含有コーティング液10を被覆対象である物品11の面12にコーティングすることができ、ナノバブル14が高濃度で分散混在したナノバブル含有無機コーティング膜13又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13を物品11の面12に確実に作ることができる。
【0169】
コーティング方法は、ナノバブル含有無機コーティング膜13又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13にガラス成分が含まれるから、優れた耐衝撃性及び耐腐蝕性を有し、被覆対象である物品11の面12に対する被覆状態を長期間維持することができ、ナノバブル含有無機コーティング膜13やナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13によって物品11の面12を保護することができる。コーティング方法は、ナノバブル含有無機コーティング膜13又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13を被覆した被覆対象である物品11が各種ダメージを受けたとしても、ナノバブル含有無機コーティング膜13やナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜13によって各種ダメージから物品11象を保護することができ、それらダメージによる物品11の劣化を防ぐことができる。
【0170】
図7は、ナノバブル含有フッ素樹脂塗膜16(ナノバブル含有塗膜16)の構造の一例を示すイメージ図であり、図8は、ナノバブル含有シリコン樹脂塗膜16(ナノバブル含有塗膜16)の構造の一例を示すイメージ図である。図9は、エマルジョン系のナノバブル含有塗料15の乾燥工程を説明する図であり、図10は、溶剤系のナノバブル含有塗料15の乾燥工程を説明する図である。図11は、ナノバブル含有塗膜16の内部に分散混在(分散溶存)するナノバブル14のイメージを図示した図である。図11は、ナノバブル14を目視可能な球体イメージとして図示しているが、実際にはナノバブル14を目視することはできない。ナノバブル含有塗料製造工程によってナノバブル含有塗料15を製造した後、ペインティング工程が実施される。既述のように、ペインティング工程は、ナノバブル含有塗料製造工程の後、直ち(直近)に行われる。
【0171】
ペインティング工程においてナノバブル含有塗料15(ナノバブル含有フッ素樹脂塗料15、ナノバブル含有シリコン樹脂塗料15、ナノバブル含有アクリル樹脂塗料15、ナノバブル含有ウレタン樹脂塗料15)は、塗装対象となる物品11の面12(表面、裏面)にペインティング(塗布)される。ナノバブル含有フッ素樹脂塗料15の塗布方法の一例として、最初に物品11(基材)に対して脱脂処理が行われる。脱脂処理としては、物品11を炉中で加熱し、焼成温度よりも高い温度で油脂や汚れを熱分解する空焼きを行う。又は、空焼きに適さない素材や形状物の基材の汚れや油分を溶剤で洗浄する溶剤洗浄を行う。
【0172】
次に、下地処理(前処理)を行う。下地処理では、物品11の面12(塗装面)をモランダム、グリッドの砥粒と空気によってブラストし、錆や汚れ等を除去するとともに、3~6ミクロン程度に粗面化する(ブラスト)。又は、ブラストが行えない場合や使用される機能に合せてエッチングや化学被膜処理の下地処理を行う。下地処理の後、物品とナノバブル含有フッ素樹脂15の密着をよくするために物品11の面12にプライマーを塗装する(プライマー塗装)。次に、炉を利用してプライマーの焼付を行う(焼成)。
【0173】
焼成の後、刷毛、ローラー、ディッピング、スプレー、ロールコーター、ダイコーター、アプリケーター、スピンコーター等の塗装装置を利用してナノバブル含有フッ素樹脂塗料15を物品11の面12にペインティング(塗布)する。ナノバブル含有フッ素樹脂塗料15を塗布した後、ナノバブル含有フッ素樹脂塗料15を乾燥させて塗膜化し、ナノバブル含有フッ素樹脂塗膜16(ナノバブル含有塗膜16)を作る。ナノバブル含有フッ素樹脂塗料15の乾燥温度は、常温~300℃程度である。ナノバブル含有フッ素樹脂塗料15を加熱して乾燥させる場合は、焼成炉において焼成する。
【0174】
ナノバブル含有シリコン樹脂塗料15やナノバブル含有アクリル樹脂塗料15、ナノバブル含有ウレタン樹脂塗料15は、物品11の形状に適した塗布方法によって塗布される。例えば、スプレー法、ディッピング法、刷毛塗り法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ法、インクジェット法等によって塗布する。ナノバブル含有シリコン樹脂塗料15の乾燥温度は、常温~50℃程度である。ナノバブル含有アクリル樹脂塗料15の乾燥温度は、常温~120℃程度である。ナノバブル含有ウレタン樹脂塗料15の乾燥温度は、常温~100℃程度である。ナノバブル含有シリコン樹脂塗料15やナノバブル含有アクリル樹脂塗料15、ナノバブル含有ウレタン樹脂塗料15の塗布においてナノバブル含有フッ素樹脂塗料15と同様に、グリッドの砥粒と空気によってブラストし、錆や汚れ等を除去するとともに、3~6ミクロン程度に粗面化する下地処理を行う場合がある。
【0175】
ナノバブル含有フッ素樹脂塗料15、ナノバブル含有シリコン樹脂塗料15、ナノバブル含有アクリル樹脂塗料15、ナノバブル含有ウレタン樹脂塗料15は、単層塗りの他、複層塗りされる場合がある。ナノバブル含有フッ素樹脂塗料15、ナノバブル含有シリコン樹脂塗料15、ナノバブル含有アクリル樹脂塗料15、ナノバブル含有ウレタン樹脂塗料15のペインティング(塗布)量について特に限定はなく、塗装対象となる物品11に要求される表面性能に対応してペインティング量を決定する。ナノバブル含有フッ素樹脂塗料15、ナノバブル含有シリコン樹脂塗料15、ナノバブル含有アクリル樹脂塗料15、ナノバブル含有ウレタン樹脂塗料15が乾燥することによって作られたナノバブル含有塗膜16(ナノバブル含有フッ素樹脂塗膜16、ナノバブル含有シリコン樹脂塗膜16、ナノバブル含有アクリル樹脂塗膜16、ナノバブル含有ウレタン樹脂塗膜16)は、その塗膜厚さが60~300μm、好ましくは、90~270μmの範囲にある。尚、ナノバブル含有塗膜16の塗布厚さの測定は、電磁式膜厚計や渦電流式膜厚計、外側マイクロメーターによって行った。
【0176】
所定の膜厚(60~300μm、好ましくは、90~270μm)にペインティングされたナノバブル含有塗料15の内部に混入(溶解)するナノバブル14は、その粒径が前記範囲においてナノバブル含有塗料15の底部から頂部に向かうにつれて次第に大きくなっている。従って、ナノバブル含有塗料15の底部に位置するナノバブル14の粒径が1番小さく、ナノバブル含有塗料15の頂部に位置するナノバブル14の粒径が1番大きく、ナノバブル含有塗料15の中間部に位置するナノバブル14の粒径が背底部及び頂部に位置するナノバブル14のそれの中間の大きさである。
【0177】
ペインティング工程の後、ナノバブル含有塗膜形成工程が実施される。ナノバブル含有フッ素樹脂塗料15をペインティングした物品11の面12にナノバブル含有塗膜形成工程を実施することによってナノバブル含有フッ素樹脂塗膜16(ナノバブル含有塗膜16)を形成し、ナノバブル含有シリコン樹脂塗料15をペインティングした物品11の面12にナノバブル含有塗膜形成工程を実施することによってナノバブル含有シリコン樹脂塗膜16(ナノバブル含有塗膜16)を形成する。ナノバブル含有アクリル樹脂塗料15をペインティングした物品11の面12にナノバブル含有塗膜形成工程を実施することによってナノバブル含有アクリル樹脂塗膜16(ナノバブル含有塗膜16)を形成し、ナノバブル含有ウレタン樹脂塗料15をペインティングした物品11の面12にナノバブル含有塗膜形成工程を実施することによってナノバブル含有ウレタン樹脂塗膜16(ナノバブル含有塗膜16)を形成する。
【0178】
エマルジョン系(水系)のナノバブル含有塗料15を物品11の面12(塗装面)に塗布した後のナノバブル含有塗膜形成工程(乾燥工程)では、図6に示すように、溶媒(水分)が次第に蒸発するとともに、溶媒(水分)に溶けたポリマー粒子の変形が起こり、ポリマー粒子どうしが融着する。その後、ポリマー鎖の相互拡散が起こり、造膜が完了することで、物品11の面12を塗装するナノバブル含有塗膜16が形成される。エマルジョン系のナノバブル含有塗料15から形成されたナノバブル含有塗膜16は、その膜厚が20~110μm、好ましくは、30~90μmの範囲にある。
【0179】
物品11の面12においてエマルジョン系のナノバブル含有塗料15が乾燥硬化して作られたナノバブル含有塗膜16の内部には、平均粒径D90が1μm未満、好ましくは、平均粒径D50が1nm以上500nmの範囲、より好ましくは、平均粒径D50が1nm以上300nm未満の範囲のナノバブル14が外気に放出されることなくそのまま残存して閉じ込められ、ナノバブル14が所定の濃度(高濃度)で分散混在(分散溶存)している。エマルジョン系のナノバブル含有塗料15から作られたナノバブル含有塗膜16の内部に分散混在するナノバブル14は、ナノバブル含有塗料15中に分散混入していた状態と同様に、高い気泡内圧を有する球体であり、ナノバブル14の平均粒径D90が1μm未満、好ましくは、平均粒径D50が1nm以上500nmの範囲、より好ましくは、平均粒径D50が1nm以上300nm未満の範囲にある。エマルジョン系のナノバブル含有塗料15から作られたナノバブル含有塗膜16の内部におけるナノバブル14の最大粒度分布は、50nm~500mの範囲、好ましくは、10nm~300nmの範囲にある。ナノバブル14が分散混在するエマルジョン系のナノバブル含有塗料15から作られたナノバブル含有塗膜16におけるナノバブル14の含有率は、10~95vol.%の範囲、好ましくは、30~95vol.%の範囲、より好ましくは、50~95vol.%の範囲にあり、ナノバブル含有塗膜16の1mm当たりのナノバブル14の総数は、10~1012個の範囲にある。
【0180】
溶剤系のナノバブル含有塗料15を物品11の面12(塗装面)にペインティング(塗布)した後のナノバブル含有塗膜形成工程(乾燥工程)では、図7に示すように、溶媒(溶剤)が次第に揮発し、溶媒(溶剤)に溶けたポリマー鎖が次第に収縮してポリマー鎖の相互拡散が起こり、造膜が完了することで、物品11の面12を塗装するナノバブル含有塗膜16が形成される。溶剤系のナノバブル含有塗料15の内部に分散混入(分残溶解)されたナノバブル14は、外気に放出されることなく、ナノバブル含有塗膜16の内部に分散混在(分散溶存)し、ナノバブル含有塗膜16中に閉じ込められる。溶剤系のナノバブル含有塗料15から形成されたナノバブル含有塗膜16は、その膜厚が20~110μm、好ましくは、30~90μmの範囲にある。
【0181】
物品11の面12において溶剤系のナノバブル含有塗料15が乾燥硬化して作られたナノバブル含有塗膜16の内部には、平均粒径D90が1μm未満、好ましくは、平均粒径D50が1nm以上500nmの範囲、より好ましくは、平均粒径D50が1nm以上300nm未満の範囲のナノバブル14が外気に放出されることなくそのまま残存して閉じ込められ、ナノバブル14が所定の濃度(高濃度)で分散混在(分散溶存)している。溶剤系のナノバブル含有塗料15から作られたナノバブル含有塗膜16の内部に分散混在するナノバブル14は、ナノバブル含有塗料15中に分散混入していた状態と同様に、高い気泡内圧を有する球体であり、ナノバブル14の平均粒径D90が1μm未満、好ましくは、平均粒径D50が1nm以上500nmの範囲、より好ましくは、平均粒径D50が1nm以上300nm未満の範囲にある。溶剤系のナノバブル含有塗料15から作られたナノバブル含有塗膜16の内部におけるナノバブルの最大粒度分布は、50nm~500mの範囲、好ましくは、10nm~300nmの範囲にある。ナノバブル14が分散混在する溶剤系のナノバブル含有塗料15から作られたナノバブル含有塗膜16のナノバブル14の含有率は、10~95vol.%の範囲、好ましくは、30~95vol.%の範囲、より好ましくは、50~95vol.%の範囲にあり、ナノバブル含有塗膜16の1mm当たりのナノバブル14の総数は、10~1012個の範囲にある。
【0182】
ペインティング方法は、塗料にナノバブル14を分散混入させてナノバブル含有塗料15を作り、そのナノバブル含有塗料15を塗装対象である物品11の面12にペインティングするとともに、塗装対象の物品11にペインティングされたナノバブル含有塗料15を乾燥させ、平均粒径D90が1μm未満、好ましくは、平均粒径D50が1nm以上500nmの範囲、より好ましくは、平均粒径D50が1nm以上300nm未満の範囲のナノバブル14が分散混在したナノバブル含有塗膜16を形成し、ナノバブル含有塗膜16におけるナノバブルの含有率が10~95vol.%の範囲、好ましくは、30~95vol.%の範囲、より好ましくは、50~95vol.%の範囲にあり、ナノバブル含有塗料15やナノバブル含有塗膜16がその内部に超微細気泡のナノバブルを所定の濃度(高濃度)で多量に含有するから、ナノバブル含有塗料15の単位体積当たりの塗料自体の割合が少なくなるとともに、ナノバブル含有塗膜16の単位面積当たりの塗膜自体の割合が少なくなり、塗料や塗膜がナノバブル14を含有しない場合と比較し、塗装対象の物品11に対するナノバブル含有塗料15の塗布量やナノバブル含有塗膜16の塗装量を低減させることができ、ナノバブル含有塗料15によって塗装対象の物品11を廉価にペインティングすることができるとともに、ナノバブル含有塗膜16によって塗装対象の物品11を廉価に塗装することができる。
【0183】
ペインティング方法は、塗膜がナノバブルを含有しない場合と比較してナノバブル含有塗膜16の単位面積当たりの質量が減少するから、ナノバブル含有塗膜16が塗装対象である物品11の面12を塗装した場合においてナノバブル含有塗膜16を含む塗装対象の物品11の重量の増加を最小限にすることができる。ペインティング法は、ナノバブル含有塗料製造工程をペインティング工程の直近であってペインティング工程のペインティング現場で実施することで、ナノバブル含有塗料製造工程からコーティング工程までに長時間を要する場合と比較し、ナノバブル含有塗料15からナノバブル14が揮発することはなく、ナノバブル14が所定の濃度(高濃度)で分散混入したナノバブル含有塗料15を塗装対象である物品11の面12にペインティングすることができ、ナノバブル14が高濃度で分散混在したナノバブル含有塗膜16を塗装対象の物品11の面12に確実に作ることができる。ペインティング方法は、ナノバブル含有塗膜16を塗装した塗装対象の物品11の面12が各種ダメージを受けたとしても、ナノバブル含有塗膜16によって各種ダメージから塗装対象の物品11を保護することができ、それらダメージによる塗装対象の物品11の面12の劣化を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0184】
10 ナノバブル含有コーティング液
11 物品
12 表面
13 ナノバブル含有無機コーティング膜又はナノバブル含有有機/無機ハイブリッドコーティング膜
14 ナノバブル
15 ナノバブル含有塗料
16 ナノバブル含有塗膜
17 ナノバブル混入装置
18 コーティング液貯水タンク
19 気体給気タンク
20 給水ポンプ
21 給気ポンプ
22 静止型流体混合装置(ナノバブル発生装置)
23 コーティング液収容槽
24 給水管路
25 給気管路
26 混合管路
27 供給管路
28 円筒状ユニット
29 表面層
30 被覆層
31 背面層
32 被覆層
33 中間層
34 被覆層
35 アンカー部
36 凹凸部
37 トラック
38 荷台
39 荷室

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11