(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180323
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】反射型光センサ
(51)【国際特許分類】
A61B 5/1455 20060101AFI20241219BHJP
H01L 31/12 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
A61B5/1455
H01L31/12 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024093906
(22)【出願日】2024-06-10
(31)【優先権主張番号】P 2023098321
(32)【優先日】2023-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】舘小路 章弘
(72)【発明者】
【氏名】柳ケ瀬 雅司
【テーマコード(参考)】
4C038
5F889
【Fターム(参考)】
4C038KK01
4C038KK10
4C038KL05
4C038KL07
4C038KM01
4C038KY01
5F889AB01
5F889AC11
5F889AC18
(57)【要約】
【課題】測定対象表面からの光によるノイズが低減された簡単な構造を有する反射型光センサの提供。
【解決手段】基材11と、基材11上に設けられた発光素子12及び受光素子13と、発光素子12及び受光素子13の間に設けられた遮光壁14と、を有する反射型光センサ10であって、発光素子12及び遮光壁14の距離d
eと、受光素子13及び遮光壁14の距離d
rと、遮光壁14の厚みtとの関係が、次式、d
e+d
r<tを満たし、発光素子12からの発光が測定対象に達しない領域、及び前記測定対象からの前記発光の反射光又は前記測定対象からの散乱光が受光素子13に入力されない領域の、いずれにも属さない領域と、反射型光センサ10と前記測定対象が接触するセンサ面との最短距離が、0.2mm以上0.3mm以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上に設けられた発光素子及び受光素子と、
前記発光素子及び前記受光素子の間に設けられた遮光壁と、を有する反射型光センサであって、
前記発光素子及び前記遮光壁の距離deと、前記受光素子及び前記遮光壁の距離drと、前記遮光壁の厚みtとの関係が、次式、de+dr<tを満たし、
前記発光素子からの発光が測定対象に達しない領域、及び前記測定対象からの前記発光の反射光又は前記測定対象からの散乱光が前記受光素子に入力されない領域の、いずれにも属さない領域と、前記反射型光センサと前記測定対象が接触するセンサ面との最短距離が、0.2mm以上0.3mm以下であることを特徴とする反射型光センサ。
【請求項2】
前記発光素子が、隣り合って設けられた2以上の発光素子であり、
前記2以上の発光素子における各発光波長が、互いに異なる請求項1に記載の反射型光センサ。
【請求項3】
前記基材上に、前記遮光壁とともに前記発光素子及び前記受光素子をそれぞれ区画する遮光枠を有し、
前記遮光壁及び前記遮光枠からなる区画の内側の形状が、面取り四角形の柱状である請求項1又は2に記載の反射型光センサ。
【請求項4】
前記遮光枠の厚みが、前記遮光壁の厚みよりも小さい請求項3に記載の反射型光センサ。
【請求項5】
前記基材が、前記基材の厚みでの光透過率が1%以下であるガラスエポキシ基板であり、
前記遮光壁が、前記遮光壁の厚みでの光透過率が1%以下であるガラスエポキシ基板であり、
前記遮光壁が、前記基材に遮光性接着剤を介して設けられた請求項1又は2に記載の反射型光センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射型光センサに関する。
【背景技術】
【0002】
反射型光センサを用いて生体情報などを光学的かつ非侵襲的に検出する装置として、例えば、血中酸素飽和度を測定するパルスオキシメーターや、血中グルコース濃度を測定する血糖測定器が知られている。
このような反射型光センサでは、発光ダイオード(LED)などの発光素子から指先などに光を照射し、測定対象としての生体(具体的には血管中の血液)からの反射光をフォトダイオードなどの受光素子で受光することにより、生体情報を受光量の変化として検出する。
【0003】
これまでに、2つの発光素子と、1つの受光素子を同じパッケージに有するフォトリフレクタとして、特許文献1には、
図8に示すように、基材(11)上に実装された発光素子(12)及び受光素子(13)、これらの素子を各々封止する透光性樹脂(15)、並びに遮光性樹脂(2)を有するフォトリフレクタを備えたフォトセンサであって、発光素子(12)と受光素子(13)との間に遮光性樹脂(2)で遮光壁(2a)を形成するとともに、遮光壁(2a)に連結し発光素子(12)上方の発光面を狭窄する庇(2b)を形成したフォトセンサが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の特許文献1に記載されたフォトリフレクタでは、発光素子からの光照射の出射角を庇によって制限することで、測定対象である生体の中の血管を流れる血液を効果的に照射するように工夫されているものの、受光素子への受光の入射角は制限されないため、生体の表面からの信号も検出してしまい、その信号分はノイズになるという問題がある。
【0006】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、測定対象の表面からの光によるノイズが低減された簡単な構造を有する反射型光センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 基材と、
前記基材上に設けられた発光素子及び受光素子と、
前記発光素子及び前記受光素子の間に設けられた遮光壁と、を有する反射型光センサであって、
前記発光素子及び前記遮光壁の距離deと、前記受光素子及び前記遮光壁の距離drと、前記遮光壁の厚みtとの関係が、次式、de+dr<tを満たし、
前記発光素子からの発光が測定対象に達しない領域、及び前記測定対象からの前記発光の反射光又は前記測定対象からの散乱光が前記受光素子に入力されない領域の、いずれにも属さない領域と、前記反射型光センサと前記測定対象が接触するセンサ面との最短距離が、0.2mm以上0.3mm以下であることを特徴とする反射型光センサである。
<2> 前記発光素子が、隣り合って設けられた2以上の発光素子であり、
前記2以上の発光素子における各発光波長が、互いに異なる前記<1>に記載の反射型光センサである。
<3> 前記基材上に、前記遮光壁とともに前記発光素子及び前記受光素子をそれぞれ区画する遮光枠を有し、
前記遮光壁及び前記遮光枠からなる区画の内側の形状が、面取り四角形の柱状である前記<1>又は<2>に記載の反射型光センサである。
<4> 前記遮光枠の厚みが、前記遮光壁の厚みよりも小さい前記<3>に記載の反射型光センサである。
<5> 前記基材が、前記基材の厚みでの光透過率が1%以下であるガラスエポキシ基板であり、
前記遮光壁が、前記遮光壁の厚みでの光透過率が1%以下であるガラスエポキシ基板であり、
前記遮光壁が、前記基材に遮光性接着剤を介して設けられた前記<1>から<4>のいずれかに記載の反射型光センサである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、測定対象表面からの光によるノイズが低減された簡単な構造を有する反射型光センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態の反射型光センサの一例を示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の反射型光センサの一例を示す概略上面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態の反射型光センサの非感知距離を示す概略断面図である。
【
図4】
図4は、従来技術の反射型光センサの非感知距離を示す概略断面図である。
【
図5】
図5は、本実施形態の反射型光センサの他の例を示す概略上面図である。
【
図6】
図6は、本実施形態の反射型光センサの他の例を示す概略上面図である。
【
図7】
図7は、本実施形態の反射型光センサの他の例を示す概略上面図である。
【
図8】
図8は、従来技術の反射型光センサの一例を示す概略図である。
【
図9】
図9は、従来技術の反射型光センサの他の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(反射型光センサ)
本発明の反射型光センサは、基材と、前記基材上に設けられた発光素子及び受光素子と、前記発光素子及び前記受光素子の間に設けられた遮光壁と、を有する反射型光センサであって、前記発光素子及び前記遮光壁の距離deと、前記受光素子及び前記遮光壁の距離drと、前記遮光壁の厚みtとの関係が、次式、de+dr<tを満たし、前記発光素子からの発光が測定対象に達しない領域、及び前記測定対象からの前記発光の反射光又は前記測定対象からの散乱光が前記受光素子に入力されない領域の、いずれにも属さない領域と、前記反射型光センサと前記測定対象が接触するセンサ面との最短距離が、0.2mm以上0.3mm以下である。
【0011】
ここで、本実施形態の反射型光センサの一例を、図を用いて説明する。
図1は、本実施形態の反射型光センサの一例を示す概略断面図であり、
図2は、
図1の概略上面図である。
図1~2に示すように、反射型光センサ10は、基材11と、基材11上に設けられた発光素子12及び受光素子13と、発光素子12及び受光素子13の間に設けられた遮光壁14と、を有する。本実施形態においては、1つの発光素子12を有する態様を示すが、後述する
図5等に示す通り、2以上の発光素子を有してもよい。
【0012】
反射型光センサ10は、発光素子12の電極12eに外部から電力を供給するための導電ワイヤ22a、及び導電部23aと、受光素子13の電極13eから外部に光電流を出力するための導電ワイヤ22b、及び導電部23bを有する。発光素子12及び受光素子13は、電力の供給、光電流の出力が可能なように、これらの導電ワイヤ22、及び導電部23に電気的に接続される。発光素子12及び受光素子13が遮光壁14に隣接して設けられる一方で、各導電ワイヤ22a、22bが接続される各導電部23a、23bは、遮光壁14に対して遠位に配置及び接続される。
【0013】
反射型光センサ10は、更に、基材11上に、遮光壁14とともに発光素子12及び受光素子13をそれぞれ区画する遮光枠21を有する。遮光壁14、及び遮光枠21は、遮光性の接着層24を介して基材11に設けられる。発光素子12を収容する区画、及び受光素子13を収容する区画にはそれぞれ、透明樹脂25が充填される。透明樹脂25は、発光素子12の照射光、及び測定対象からの反射光又は散乱光に対して透過性を備えた透明樹脂であり、例えば、エポキシ樹脂である。透明樹脂25は、例えば、衝撃、水分等から保護するために発光素子12及び受光素子13をそれぞれ封止する。透明樹脂25の表面(上面)は、遮光壁14及び遮光枠21と同じ高さで平坦に形成され、測定対象が接触するセンサ面を形成する。なお、発光素子12、及び受光素子13は、任意の接着層26を介して基材11に設けられる。
【0014】
図1~2に示すように、反射型光センサ10は、発光素子12及び遮光壁14の距離d
eと、受光素子13及び遮光壁14の距離d
rと、遮光壁14の厚みtとしたときに、これらの関係が、次式、d
e+d
r<tを満たす。言い換えると、発光素子12及び受光素子13は、d
e+d
r<tを満たすように、遮光壁14を介して隣接する。発光素子12及び受光素子13は、遮光壁14に近い位置に配置されるとともに、距離d
eと距離d
rとに対して相対的に厚い厚みtを有する遮光壁14が、発光素子12及び受光素子13の間に設けられることを意味する。
【0015】
図3は、本実施形態の反射型光センサの非感知距離を示す概略断面図であり、
図4は、従来技術の反射型光センサの非感知距離を示す概略断面図である。
図3に示すように、発光素子12からの発光が測定対象に達しない領域A1、及び前記測定対象からの前記発光の反射光又は前記測定対象からの散乱光が受光素子13に入力されない領域A2は、反射型光センサが感知しない領域(非感知領域)ということができる。非感知領域A1及びA2のいずれにも属さない領域(領域A3と称する)と、反射型光センサ10と前記測定対象が接触するセンサ面との最短距離(非感知距離とも称する)dが、0.2mm以上0.3mm以下である。
ここで、前記領域A3と前記センサ面との最短距離dとは、前記領域A3と前記センサ面とが最も近くなる部位同士の長さ(最短距離)であり、
図3中、遮光壁14の側面とθ2の角度をなす領域A1の境界線と遮光壁14の側面とθ4の角度をなす領域A2の境界線との交点と、反射型光センサのセンサ面とのdで示す距離である。
【0016】
図3に示すように、反射型光センサ10がd
e+d
r<tを満たすことにより、
図4に示すd
e+d
r<tを満たさない従来技術の反射型光センサと比べた場合に、領域A1及び領域A2で表される非感知領域の重なりを広くすることができ、したがって、非感知距離dを0.2mm以上0.3mm以下の範囲に設定することができる。
【0017】
ここで、例えば反射型光センサ10で血中酸素飽和度や血中グルコース濃度などの血液中の生体情報を検出しようとする場合には、反射型光センサ10のセンサ面と測定対象としての生体が接触する。生体の皮膚の構造は、表面から、「表皮」、「真皮」、「皮下組織」と3層構造に分かれている。0.2mm程度の厚みを有する表皮には、血管が少ない。真皮と皮下組織は合わせて2mm前後の厚みがあり、そこには血管が多い。表皮等の皮膚表面からの反射光や散乱光を検知してしまうと、ノイズにつながる。本実施形態の反射型光センサによれば、非感知距離dが0.2mm以上に設定されるため、このような測定対象表面からの光によるノイズを検知することなく、また、非感知距離dが0.3mm以下に設定されているため、目的とする測定部位(血管中の血液)からの信号を効率的に検知することができる。
【0018】
なお、
図3中、n1は透明樹脂25の屈折率を示し、n2は測定対象の屈折率を示す。θ1及びθ2は、非感知領域A1を決める角度であり、発光側の最大入射角θ1及び発光側の最大出射角度θ2を示し、θ3及びθ4は非感知領域A2を決める角度であり、受光側の最大入射角θ4及び受光側の最大受入角度θ3を示す。θ1及びθ3は、発光素子及び受光素子の寸法、発光領域及び受光領域の形状、遮光壁の高さ、並びに各素子と遮光壁の距離によって定まり、θ2及びθ4は、θ1又はθ3とn1及びn2とから定まる。θ2及びθ4と遮光壁の厚さtから非感知距離dが定まる。
【0019】
基材11、遮光壁14、及び遮光枠21の材料としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、少なくともいずれかの部材が、ガラスエポキシであることが好ましく、全ての部材がガラスエポキシであることがより好ましい。
ガラスエポキシを用いることにより、反射型光センサの製造において、切削での加工が可能となる。樹脂成型のための金型を用いる必要がないため、特に、少量生産時において、製造加工面、及びコスト面で有利である。
【0020】
基材11は、基材11の厚みでの光透過率が1%以下であるガラスエポキシ基板であることが好ましい。また、遮光壁14は、遮光壁14の厚みでの光透過率が1%以下であるガラスエポキシ基板であることが好ましい。
特に、遮光壁14の厚みでの光透過率が1%以下であると、発光素子12から受光素子13への遮光壁14を介した光の透過を防ぐことができ、検出ノイズを低減することができる。
ここで、「基材の厚みでの光透過率」とは、特定の厚みを有する基材における、前記特定の厚みでの、厚み方向の光透過率を意味する。
「遮光壁の厚みでの光透過率」とは、特定の厚みを有する遮光壁における、前記特定の厚みでの、厚み方向の光透過率を意味し、前記遮光壁の厚みは、前記基材の厚み方向に対し垂直方向である。遮光枠についても同様に、特定の厚みを有する遮光枠について定義する。
【0021】
ガラスエポキシ基板は、厚み方向(積層方向)と面内方向の光学特性が異なり、一般的なガラスエポキシ基板では、面内方向の遮光性が低いことがある。
遮光性が高く、厚み方向及び面内方向の光透過性が低いガラスエポキシ基板としては、例えば、遮光性の黒色プリント配線板材料CS-3667B(利昌工業株式会社製)などが挙げられる。
前記光透過率としては、測定の対象となる発光及び受光の波長において光透過率が1%以下であれば適宜選択することができるが、650nm~1,310nmの波長における光透過率が1%以下であることが好ましく、250nm~2,000nmの波長における光透過率が1%以下であることがより好ましい。
【0022】
遮光壁14、及び遮光枠21は、基材11に遮光性接着剤を用いて形成された接着層24を介して設けられることが好ましい。
前記遮光性接着剤としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、接着シートAD-7006B(利昌工業株式会社製、平均厚み:0.05mm)などが挙げられる。
【0023】
図2に示すように、前記反射型光センサは、1つの発光素子を有する態様であってもよい。他の実施形態として、
図5に示すように、隣り合って設けられた2以上の発光素子を有する態様であってもよい。いずれの態様も好適に実施することができる。
例えば、パルスオキシメーターのように、検出する対象によって発光素子を複数用いて検出する用途が増えており、小型化を図るために同一の反射型光センサのパッケージに複数の発光素子と受光素子を実装したものが知られている。
【0024】
図5に示すように、反射型光センサが、2以上の発光素子12a、12bを有する場合、各発光素子は、d
e+d
r<t、及び非感知距離dの規定をそれぞれ満たすよう、隣り合って設けられる。言い換えると、各発光素子12a、12bが遮光壁14に近い位置に配置されるとともに、各発光素子12a、12bが遮光壁14に対して横並びで配置され、他の部材が間に配置されない。前記構成を満たすことにより、各発光素子について、光照射特性及び受光特性の場所依存性を小さくすることができるとともに、2以上の発光素子間で、測定対象に対する光照射及び受光の場所依存的な特性の均一性を高めることができる。
【0025】
2以上の発光素子を有する場合、例えば、従来の特許文献1に記載されたフォトリフレクタでは、2つの発光素子(12)がそれぞれ異なる区画に設けられ、フォトダイオードの両側に設置されるため、一方の発光素子からの光照射の照射条件と、もう一方の発光素子からの光照射の照射条件とが大きく異なる。したがって、2つの発光素子間で、測定対象に対する光照射特性及び受光特性の場所依存的な特性が異なるという問題がある。
言い換えると、2以上の発光素子が基材上に配置される場所の違いによって、受光素子に対する各発光素子の光学特性が異なったり、それに起因して測定対象の異なる部位(例えば、血液密度の異なる部位)を感知したりすることにより、各発光素子間での測定の均一性が劣るという問題がある。
【0026】
また、同じ区画に2つの発光素子を有する反射型フォトセンサとして、特開2009-038322号公報が報告されている。
図9に示すように、前記反射型フォトセンサでは、発光部(18a、18b)及び受光部(20)の投受光面が、該投受光面に対し平行に移動する被検出物の移動方向(H)に垂直な方向に配置される。発光部(18a、18b)の出力光に基づく上記被検出物からの反射光を受光部(20)で受光する。そして、受光部(20)の検出出力が、上記被検出物の移動量に応じて直線的に変化するように、発光部(18a、18b)には、上記被検出物の移動方向(H)の中心部よりも両端部の発光量が高くなる発光領域が設けられる。
【0027】
前記反射型フォトセンサでは、1つの区画に2つの発光素子を有するものの、ボンディングパターン(17c)を挟んで設けられており、2つの発光素子が互いに間隔を隔てて設けられている。そのため、特許文献1に記載されたフォトリフレクタと同様に、1の発光素子からの光照射、及び受光素子への受光の方向と、他の発光素子からの光照射、及び受光素子への受光の方向が互いに異なり、複数の発光素子間で、測定対象に対する光照射特性及び受光特性の場所が異なるという問題がある。
一方、本実施形態における、隣り合って設けられた2以上の発光素子を有する反射型光センサによれば、従来の問題を解決でき、2以上の発光素子間で、測定対象に対する光照射特性及び受光特性の場所の均一性を高めることができる。
【0028】
前記2以上の発光素子における各発光波長が、互いに異なることが好ましい。これにより、2以上の波長、例えば、波長の大きく異なる2以上の波長の反射光を検出することができ、複数の情報の検出、波長の異なる反射光の差分に基づいた情報の検出や、情報の補正を行うことができる。
【0029】
前記波長としては、測定する情報に応じて適宜選択することができる。
具体的には、血中酸素飽和度を測定するパルスオキシメーターでは、赤色光(例えば、波長660nm)と赤外光(例えば、940nm)を交互にパルス照射して、各反射光の差分から、酸素化ヘモグロビン(HbO2)の濃度を検出することができる。また、血糖測定器では、例えば、グルコースの吸収波長(ピーク吸収波長1,600nm)の反射光を、水の吸収波長(1,450nm)の反射光により補正することで、血中グルコース濃度を測定することができる。
【0030】
また、他の実施形態として、
図6に示すように、基材11上に、遮光壁14とともに発光素子12及び受光素子13をそれぞれ区画する遮光枠21を有し、遮光壁14及び遮光枠21からなる区画の内側の形状が、面取り四角形の柱状である態様も好適に実施できる。
前記区画の内側の形状が、面取り四角形の柱状であると、開口を小さくできる。開口が小さくなると、発光及び受光の迷光成分が減るため、ノイズを低減することができる。
また、遮光壁14及び遮光枠21として、ガラスエポキシ基板などの基材を用いた場合の切削加工が容易となるため、加工面、コスト面で好ましい。
【0031】
図7に示すように、遮光枠21の厚みt
1が、遮光壁14の厚みtよりも小さい態様も好適に実施できる。
前記態様は、素子分離時に太めのダイシングブレードでカットする等の加工により、容易に製造することができる。遮光枠21の厚みt
1を薄くすることができ、反射型光センサ10のパッケージサイズを小さくできる。
【実施例0032】
(実施例1)
図5に示す2つの発光素子を有する反射型光センサの実施例として、血中酸素飽和度を測定するパルスオキシメーターを作製した。
具体的には、赤色光(波長660nm)と赤外光(940nm)を発光する2つの発光素子として、赤色LEDチップ(PR7A、DOWAホールディングス株式会社製)と赤外LEDチップ(FP6E、DOWAホールディングス株式会社製)、受光素子として検出波長400nm~1,100nmの大面積フォトダイオード(KPD31S、株式会社京都セミコンダクター製)に使われているPDチップのサイズと受光領域を小さくしたものを用いた。また、遮光壁及び遮光枠として、光透過率が1%以下であるガラスエポキシ基板(黒色プリント配線板材料、CS-3667B、利昌工業株式会社製)、遮光性接着剤として遮光性の接着シート(AD-7006B、利昌工業株式会社製)を用いて、実施例1のパルスオキシメーターを作製した。
【0033】
発光素子は、大きさ0.24mm×0.24mm~0.28mm×0.28mm、厚み0.15mmであった。受光素子は、大きさ2.0mm×0.7mm、厚み0.3mm、受光エリア1.8mm×0.5mmであった。遮光壁は、厚みt=0.8mm、高さ0.8mmであった。遮光壁と各素子との距離de=dr=0.2mmであり、de+dr<tを満たす。透明樹脂の屈折率1.5、及び測定対象である人体の屈折率1.4で計算した場合、非感知距離dはおよそ0.24mmであった。
【0034】
実施例1のパルスオキシメーターでは、2つの発光素子を交互にパルス照射して、各反射光の差分から、酸素化ヘモグロビン(HbO2)の濃度を検出することができる。
【0035】
(実施例2)
図5に示す2つの発光素子を有する反射型光センサの実施例として、血中グルコース濃度を測定する血糖測定器を作製した。
具体的には、グルコースの吸収波長(ピーク吸収波長1,600nm)を発光する1の発光素子として赤外LED(KEDE1652H、株式会社京都セミコンダクター製、ピーク発光波長1,650nm)に使われている赤外LEDチップ、水の吸収波長(1,450nm)を発光する他の発光素子として赤外LED(KEDE1452H、株式会社京都セミコンダクター製、ピーク発光波長1,450nm)に使われている赤外LEDチップ、受光素子として波長1,200nm~1,700nmを80%以上検出可能なフォトダイオード(KPDE300 InGaAsフォトダイオード、株式会社京都セミコンダクター製)に使われているチップを用いた。また、遮光壁及び遮光枠として、光透過率が1%以下であるガラスエポキシ基板(黒色プリント配線板材料、CS-3667B、利昌工業株式会社製)、遮光性接着剤として遮光性の接着シート(AD-7006B、利昌工業株式会社製)を用いて、実施例2の血糖測定器を作製した。
【0036】
発光素子は、大きさ0.35mm×0.35mm、厚み0.33mmであった。受光素子は、大きさ0.44mm×0.44mm、厚み0.15mm、受光エリア直径0.3mmであった。遮光壁は、厚みt=0.8mm、高さ0.8mmであった。遮光壁と各素子との距離de=dr=0.3mmであり、de+dr<tを満たす。透明樹脂の屈折率1.5、及び測定対象である人体の屈折率1.4で計算した場合、非感知距離dはおよそ0.27mmであった。
【0037】
実施例2の血糖測定器では、グルコースの吸収波長(ピーク吸収波長1,600nm)の反射光を、水の吸収波長(1,450nm)の反射光により補正することで、水分の影響を受けずにグルコースを高精度に検知することができ、したがって、血中グルコース濃度を測定することができる。
【0038】
実施例1~2の反射型光センサはいずれも、製造において樹脂成型のための金型を用いる必要がなく、簡単な構造を有する。発光素子からの光照射の出射角と、受光素子への受光の入射角とのなす角度を小さくすることができ、したがって、光照射特性及び受光特性の場所依存性を小さくすることができる。また、非感知距離dが0.2mm以上0.3mm以下の範囲に設定されるため、測定対象としての生体の、表面からの光によるノイズが低減されると同時に、生体中の血液からの光による信号を強く検出できる。