IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジーアンドティー セプテック アクティーゼルスカブの特許一覧

特開2024-180326高速液体クロマトグラフカラムハードウェア
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180326
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】高速液体クロマトグラフカラムハードウェア
(51)【国際特許分類】
   F16L 19/08 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
F16L19/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024094249
(22)【出願日】2024-06-11
(31)【優先権主張番号】23179311.8
(32)【優先日】2023-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】524221293
【氏名又は名称】ジーアンドティー セプテック アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敬
(72)【発明者】
【氏名】ロジャー トローネス
(72)【発明者】
【氏名】ライモン ケー. トローネス
(72)【発明者】
【氏名】トロン ロヴリ
【テーマコード(参考)】
3H014
【Fターム(参考)】
3H014GA13
(57)【要約】
【課題】高速液体クロマトグラフ(HPLC)装置において、チューブ4をねじ付きエンドフィッティング8に接続するためのハードウェアコネクタシステムを提供すること。
【解決手段】コネクタシステムは、円錐形フェルール3、ねじ付きナット2、およびねじ付きナット2と相互作用するためのねじ付き予備スウェージング工具5から構成される。予備スウェージング工程では、円錐形フェルール3の広端部12が把持され、チューブ4の外側に機械加工された予備機械加工済み凹溝1に向かって押しつけられ、フェルール3の狭端部11が変形して凹溝1に係合する。従って、フェルール3を、チューブ4に過大な半径方向の力を加えることなく、凹溝1の「所定の位置に係止」することができる。予備スウェージング工具5が取り外されると、ねじ付きエンドフィッティング8を、ねじ付きナット2または別のねじ付きナット2に連結することができる。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高速液体クロマトグラフカラム用のハードウェアを接続する方法であって、前記ハードウェアは、ねじ付きエンドフィッティングに接続されるチューブを含み、前記方法は、
前記チューブの遠位端に凹溝を設け、
テーパ付きフェルールを、前記テーパ付きフェルールの狭端部が前記チューブの前記遠位端にある状態で、前記チューブ上の前記凹溝の近くに配置し、
前記チューブの前記遠位端をねじ付き予備スウェージング工具に挿入し、
前記テーパ付きフェルールを前記ねじ付き予備スウェージング工具に向けて押すために、第1のねじ付きナットの肩部を前記テーパ付きフェルールの広端部に位置決めし、
前記第1のねじ付きナットを前記ねじ付き予備スウェージング工具に係合させ、得られたねじ接続を用いて、前記テーパ付きフェルールの前記狭端部を変形させて前記凹溝に係合させる予備スウェージング作業を行い、
前記ねじ付き予備スウェージング工具を取り外し、
前記チューブの前記遠位端を、前記チューブの前記遠位端を受け入れるためのシール面を有する前記ねじ付きエンドフィッティングに挿入し、
前記第1のねじ付きナットまたは第2のねじ付きナットを、前記ねじ付きエンドフィッティングに係合させ、前記ねじ付きナットから前記テーパ付きフェルールの前記広端部に軸方向の力を加え、これにより前記チューブの前記遠位端を前記ねじ付きエンドフィッティングの前記シール面に押し付けることを含む、方法。
【請求項2】
前記方法は、前記遠位端に平坦な端部を有する前記チューブを提供することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記チューブの前記遠位端と前記エンドフィッティングの前記シール面との間にワッシャおよび/またはフィルタ/スクリーンを配置することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
高速液体クロマトグラフカラム用のハードウェアコネクタ接続装置であって、前記装置は、
遠位端に凹溝を有するチューブと、
前記チューブ上に配置するためのテーパ付きフェルールと、
前記テーパ付きフェルールに軸方向の力を加えるために、前記テーパ付きフェルールの広端部に押し付けるための肩部を備える第1のねじ付きナットと、
前記チューブの前記遠位端に接続するためのねじ付きエンドフィッティングと、
ねじ付き予備スウェージング工具とを備え、
前記ねじ付き予備スウェージング工具は、前記テーパ付きフェルールと共に前記チューブの前記遠位端を受け入れるように、且つ、前記テーパ付きフェルールの狭端部が変形して前記凹溝に係合した状態で前記テーパ付きフェルールを前記チューブにスウェージングするために前記第1のねじ付きナットのねじ山に係合するように構成され、
前記ねじ付きエンドフィッティングは、前記ねじ付き予備スウェージング工具を取り外した後、スウェージングされた前記フェルールとともに前記チューブの前記遠位端を受け入れるように構成され、
前記ねじ付きエンドフィッティングのねじ山は、前記第1のねじ付きナット、または、第2のねじ付きナットと係合して前記テーパ付きフェルールの前記広端部に軸方向の力を加え、これにより前記チューブの前記遠位端を前記ねじ付きエンドフィッティングのシール面に押し付けるように構成される、装置。
【請求項5】
前記装置は、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法とともに用いるように構成される、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記チューブは、内径が2mm未満の、オプションとして内径が0.050~1mmの範囲のガラスライニングチューブである、請求項4または5に記載の装置。
【請求項7】
前記チューブは、内径が1mm超の、オプションとして内径が1.5~25mmの範囲の鋼製チューブである、請求項4または5に記載の装置。
【請求項8】
前記凹溝は前記チューブを完全に取り囲み、前記チューブの外周にわたって均一な断面を持つ、請求項4または5に記載の装置。
【請求項9】
前記凹溝は、前記凹溝の断面が正方形または長方形である、矩形の形状を有する、請求項4または5に記載の装置。
【請求項10】
前記凹溝は円錐形を有する、請求項4または5に記載の装置。
【請求項11】
前記凹溝は、前記チューブの利用可能な材料深さの75%の最大深さ、および/または、0.8~3mmの幅を有する、請求項4または5に記載の装置。
【請求項12】
前記テーパ付きフェルールの前記狭端部の端面は、前記フェルールを前記狭端部に向かってさらにテーパ状にする角度ωを有して設計されている、請求項4または5に記載の装置。
【請求項13】
前記角度ωは5°~30°である、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
遠位端に凹溝を有するチューブと、前記凹溝において前記チューブとのスウェージング係合を形成するためのテーパ付きフェルールとを含む、高速液体クロマトグラフカラム用のチューブを形成するためのキット。
【請求項15】
前記チューブは、内径が0.05~1mmの範囲のガラスライニングチューブである、請求項14に記載のキット。
【請求項16】
前記テーパ付きフェルールの狭端部を変形させて前記凹溝とスウェージング係合させるためのねじ付き予備スウェージング工具を用いることにより、請求項14または15のキットから形成される、高速液体クロマトグラフチューブのサブアセンブリ。
【請求項17】
ねじ付きナットおよびねじ付きエンドフィッティングとともに請求項16のサブアセンブリを含む高速液体クロマトグラフ装置であって、前記ねじ付きナットは、前記テーパ付きフェルールの広端部に軸方向の力を加え、それにより前記チューブの前記遠位端と前記ねじ付きエンドフィッティングのシール面との間にシールを形成するために、前記ねじ付きエンドフィッティングのねじ山と係合する、高速液体クロマトグラフ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高速液体クロマトグラフ(HPLC)カラム用のハードウェアに関する。より詳細には、本発明は、HPLCカラムのチューブを接続するための方法および接続装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧高性能液体クロマトグラフ(High Pressure Performance Liquid Chromatography)、すなわち高速液体クロマトグラフ(High Performance Liquid Chromatography)(どちらもHPLCと略される)は、混合物の成分を分離、同定、定量するために化学において用いられる技術である。吸着剤で満たされた、あるいは、吸着剤が詰め込まれたカラムを通して少量の混合物を運ぶために、溶媒液が用いられる。混合物の異なる成分は吸着剤との異なった相互作用を示す。このことは、カラムを通過する流量の相違による成分の分離をもたらす。カラムから流出する液体を異なる時点でサンプリングすることにより、混合物の成分を同定し定量することができる。必要とされるカラムのサイズが小さいことにより、また、カラム材料や内表面の特性がHPLCプロセスに与え得る影響のために、HPLC産業には課題がある。
【0003】
HPLC産業において、金属製またはPEEKシールド付きガラスライニングチューブ(GLT)が、内径(ID)が0.050~1.0mmの小寸法カラムをパッキングするためのハードウェアとして用いられる優れた材料であることはよく知られている。0.5mmのIDと1.0mmのIDについては、鋼製チューブを用いた製品など、市販のねじ式ハードウェアがある。0.3mm以下のIDについては、市販のねじ式代替品はない。
【0004】
0.050mm~1.0mmの範囲の、代表的には0.3mm、0.5mm、1.0mmの範囲のIDを持つ小寸法HPLCカラムをパッキングするために、ガラスライニングチューブ(GLT)が数十年にわたり業界標準となっている。GLT製品は現在、オーストラリアのTrajan Scientific and Medical社(Trajan Scientific Australia Pty Ltdに所有されている)によりSGEブランドで販売されている。
【0005】
これまでのところ、GLT表面を用いた場合と同等の高品質の滑らかな表面を、小寸法カラムハードウェア内部に設けることは、その他の材料/材料構造/組み合わせではできなかった。滑らかな表面は、高密度にパッキングされた小寸法HPLCカラムを高効率で得るための重要なパラメータである。しかしながら、後述するように、ガラスライニングの損傷リスクのために、GLTカラムの接続には問題がある。
【0006】
他の選択肢もある。
【0007】
PEEKSilはGLTと同様な構造に大いに基づいており、最大耐圧は15,000psi(約103MPa)であり得るが、「柔らかい」(PEEK)外表面のため、デッドボリュームを生じることなく、または、ガラスライニング層を損傷して圧力下での不具合をもたらすことなく、チューブをエンドフィッティングに固定し続けるナット/フェルールシステムを見つけることは難しい。
【0008】
ポリイミド被覆溶融石英管は、ポリイミド(保護用)を被覆した石英管である。ポリイミド被覆のもとでの石英管は、いったん表面被覆に切れ目が入ると非常に壊れやすい。同様に、HPLC粒子をこの形式でパッキングするために用いられ得る安価な市販のフィッティング(ナットとフェルール)は、我々の知る限り存在しない。
【0009】
PEEKライニング鋼製カラムハードウェアはよく知られたねじ式ハードウェアだが、PEEKにより提供される表面はガラスライニングほど滑らかではない。それでも広く用いられているのは、生体不活性であると考えられているからである。
【0010】
圧縮原理に基づくエンドフィッティングに用いたときに、ガラスライニングが破損する傾向があるため、長年にわたり、代替材料を見出そうとする試みがなされてきた。一般に、この種のフィッティングは、潰れてガラスライニングを取り囲む金属製またはPEEKチューブの表面に「食い込む」コーン/フェルールに基づく。したがってコーン/フェルールを締めつけすぎると、ガラスライニングが破砕されてしまう。ガラスを破砕することなくエンドフィッティングが十分しっかりと取り付けられると同時に、HPLC用途に十分な高圧に耐え得るシールを与えるようにコネクタを「十分に」締め付けることは、高度に熟練した技術者を必要とする。主要な問題は、エンドフィッティング(特にフェルール/コーン)の製造とGLTの外径(OD)によりもたらされる公差の違いである。これら2つの公差が互いに一致していない場合、ガラスを破損する危険性なしにGLTをエンドフィッティングに取り付けることは困難である。
【0011】
可能な解決策のひとつは、圧縮フィッティングからねじ式フィッティングに切り替えることであり、SGE/Trajanは0.5mmおよび1.0mmのGLT用の市販製品を提供している。これは、特定の長さのカラムチューブと、エンドフィッティングと、フィルタとを備えた完成品である。
【0012】
しかしながら、IDが0.5mm未満のGLTにはこの解決策を提供できない。世界的には、0.3mmが、IDが0.5mmのカラムよりもはるかに、最も人気のある小寸法IDのHPLCカラムである。その理由は、ねじ接続の原理を採用するのに十分な大きさのODを持つ鋼製チューブ内に、0.3mmのガラスライニングを形成することができないからである。SGE/Trajanは、ODが1/8インチの鋼製ハウジングを備えたIDが0.3mmのGLTチューブを提供できるが、このODは、チューブのコアを傷つけることなく高圧に耐え得るねじ山をつけるに十分なだけ大きくはない。このハードウェアは、ODが1/16インチの鋼製ハウジングを備えた標準的なIDが0.3mmのGLTから構成され、IDが1/16インチでODが1/8インチの鋼製チューブが外側に引き出され、最後に両端において適所に溶接される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本開示は、添付の特許請求の範囲に定義され、以下に述べるような方法、装置および製品によって、HPLCハードウェアを接続する際の課題に対処することに向けられている。技術者の技能への依存を少なくして小口径GLTチューブを効果的に結合できるという接続システムの利点が生じる。このようなシステムは、大口径の鋼製チューブを含む、HPLC用のその他の種類のチューブについても利点を有する。本開示は、IDが0.050~1mmであるような、小口径カラム用のGLTを破損するリスクを低減する解決策を提供する。また、IDが1.5~25mmであるチューブなどの鋼製チューブに対して費用効果の高い解決策をも提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の態様によれば、本発明は、高速液体クロマトグラフカラム用のハードウェアを接続する方法を提供し、前記ハードウェアは、ねじ式エンドフィッティングに接続されるチューブを含み、前記方法は、
前記チューブの遠位端に凹溝を設け、
テーパ付きフェルールを、前記テーパ付きフェルールの狭端部が前記チューブの前記遠位端にある状態で、前記チューブ上の前記凹溝の近くに配置し、
前記チューブの前記遠位端をねじ付き予備スウェージング工具に挿入し、
前記テーパ付きフェルールを前記ねじ付き予備スウェージング工具に向けて押すために、第1のねじ付きナットの肩部を前記テーパ付きフェルールの広端部に位置決めし、
前記第1のねじ付きナットを前記ねじ付き予備スウェージング工具に係合させ、得られたねじ接続を用いて、前記テーパ付きフェルールの前記狭端部を変形させて前記凹溝に係合させる予備スウェージング作業を行い、
前記ねじ付き予備スウェージング工具を取り外し、
前記チューブの前記遠位端を、前記チューブの前記遠位端を受け入れるためのシール面を有する前記ねじ付きエンドフィッティングに挿入し、
前記第1のねじ付きナットまたは第2のねじ付きナットを、前記ねじ付きエンドフィッティングに係合させ、前記ねじ付きナットから前記テーパ付きフェルールの前記広端部に軸方向の力を加え、これにより前記チューブの前記遠位端を前記ねじ付きエンドフィッティングの前記シール面に押し付けることを含む。
【0015】
第2の態様によれば、本発明は、高速液体クロマトグラフカラム用のハードウェアコネクタ装置を提供し、この装置は、
遠位端に凹溝を有するチューブと、
前記チューブ上に配置するためのテーパ付きフェルールと、
前記テーパ付きフェルールに軸方向の力を加えるために、前記テーパ付きフェルールの広端部に押し付けるための肩部を備える第1のねじ付きナットと、
前記チューブの前記遠位端に接続するためのねじ付きエンドフィッティングと、
ねじ付き予備スウェージング工具とを備え、
前記ねじ付き予備スウェージング工具は、前記テーパ付きフェルールと共に前記チューブの前記遠位端を受け入れるように、且つ、前記テーパ付きフェルールの狭端部が変形して前記凹溝に係合した状態で前記テーパ付きフェルールを前記チューブにスウェージングするために前記第1のねじ付きナットのねじ山に係合するように構成され、
前記ねじ付きエンドフィッティングは、前記ねじ付き予備スウェージング工具を取り外した後、スウェージングされた前記フェルールとともに前記チューブの前記遠位端を受け入れるように構成され、
前記ねじ付きエンドフィッティングのねじ山は、前記第1のねじ付きナット、または、第2のねじ付きナットと係合して前記テーパ付きフェルールの前記広端部に軸方向の力を加え、これにより前記チューブの前記遠位端を前記ねじ付きエンドフィッティングのシール面に押し付けるように構成される。
【0016】
第1の態様の方法は、第2の態様の装置を用いてもよいこと、第2の態様の装置は、第1の態様の方法を実行するように構成され得ることが理解されよう。本発明のさらなる任意の特徴および他の態様については後述するが、これらは、上記の第1の態様または第2の態様のいずれかと組み合わせて使用することができる。
【0017】
本概念は、ハイブリッドエンドフィッティングと定義することができる。なぜなら、圧縮原理は、予備スウェージング工具を用いて、チューブの表面にあらかじめ作られた凹溝にフェルールを係止するためにのみ用いられるからである。次に、あらかじめスウェージングされたフェルールとねじ付きナットを備えたチューブを、エンドフィッティングと組み立てる。このことは、フィルタ/スクリーンに続いてワッシャを用いて、または一体型フィルタ/スクリーンを有するワッシャを用いて、行ってよい。これらが標準的なねじ付きエンドフィッティングにおいて用いられることが好適であり、その場合には、あらゆる市販のチューブ形状を接続することができる。
【0018】
このハイブリッド概念により、HPLC装置内のGLTや金属製チューブ(例えば鋼鉄)などのチューブに対して漏れ防止接続が可能になり、チューブの損傷リスクも低減され、組み立てが容易となる利点がある。提案された概念では、チューブに大きな半径方向荷重をかける必要が回避されるため、GLTの破損を確実に回避するために熟練した技術者を有することはもはや必要ない。代わりに、チューブの遠位端における軸方向の力によって必要なシールが形成される。ここで、チューブの遠位端は、好ましくは良好なシール性能を確保するために適切なワッシャを用いて、エンドフィッティングの内表面に押し付けられる。
【0019】
チューブは、遠位端に平坦な端部を備えていてもよい。従って、本方法は、遠位端における隆起や凹凸を機械加工で除去する工程を含んでもよい。本装置は、このような工程によって形成された平坦な端部を有するチューブを利用してよい。シールは遠位端における軸方向の力によって形成されるため、平坦な端部を設けることはシール性能を向上させ、より高圧での使用が可能になる。加えて、または代替的に、本方法は、例えば外周エッジに斜面を形成することによって、遠位端の外周エッジを除去することを含んでもよい。
【0020】
チューブはGLT、例えばIDが2mm未満、あるいは1mm未満のGLTであることが好適である。いくつかの例において、チューブは0.050~1mmの範囲のIDをもつGLTである。あるいは、チューブは、1mm超あるいは1.5mm超のIDをもつ鋼製チューブなど、より大きな寸法の鋼製チューブであってもよい。いくつかの例では、チューブは、1.5~25mmの範囲のIDをもつ鋼製チューブである。鋼はステンレス鋼でもよい。
【0021】
テーパ付きフェルールは、均一なテーパ面を有する円錐形などの、円錐形フェルールであってもよい。テーパ付きフェルールは、ステンレス鋼で構成されてもよい。フェルールは、その狭端部がチューブの遠位端に最も近く、その広端部がチューブの遠位端から離れた状態で、チューブ上に配置される。
【0022】
ねじ付きナットおよび/またはねじ付きエンドフィッティングは、ステンレス鋼で形成されてよい。予備スウェージング工具はステンレス鋼であってもよい。好適には、エンドフィッティングは、HPLC装置用の、例えばチューブから流出する液体のサンプリング/分析のためなどの、他の既知の構成要素への以降の接続を可能にする既知の設計のものであってもよい。
【0023】
好適には、チューブの遠位端とエンドフィッティングの内表面との間の接続部にワッシャが設けられる。このワッシャは、例えばPEEKワッシャであってもよい。また、チューブから流出する流体を濾過するためのフィルタ/スクリーンが、エンドフィッティングに設けられてもよい。ワッシャとフィルタ/スクリーンは、例えば一体型フィルタ/スクリーンを備えたワッシャなどの、単一の部品として設けられてもよい。他の例では、フィルタ/スクリーンを別個の部品として設け、ワッシャとエンドフィッティングの内表面との間に配置してもよい。フィルタ/スクリーンは、HPLCカラムに用いられるものとして知られている種類のポリマーフィルタ/スクリーンであってもよい。
【0024】
ワッシャは、チューブの遠位端がエンドフィッティングと接触する表面においてシールを提供することを補助する。そこで、ワッシャをシールとして説明してもよい。上述したように、遠位端に斜面を用いると、ワッシャが存在する場合、外周エッジのワッシャ材料が斜面に押し付けられた状態で遠位端においてワッシャを圧縮することにより、優れたシールを形成することができる。その場合、ワッシャの外径は斜面の内径よりも大きくなければならず、好ましくは、ワッシャの外径はチューブの外径と同じである。GLTの場合、ワッシャの内径はチューブのガラスライニングの外径より小さいことが好適である。これにより、接続プロセス中にガラスライニングに力がかかるリスクが回避され、ガラスが損傷するリスクが低減される。
【0025】
凹溝はチューブの遠位端近傍に形成される。遠位端と凹溝との間の距離は、予備スウェージングや組立の際に遠位端に対する損傷/変形のリスクを回避し、また、シールがフェルールによってではなく遠位端において形成されることを保証するのに十分でなければならない。しかし、あまり大きすぎてはならない。なぜなら非現実的な大きさのねじ付きナットが必要になるからである。いくつかの例では、遠位端と凹溝との間の距離は、チューブの外径の5倍未満の長さであり、および/または、チューブの外径の少なくとも0.3倍であってもよい。典型的な実施形態では、チューブの外径の0.5~3倍に相当する距離を有してもよく、例えば、溝はチューブの遠位端から外径の1~2倍の距離に配置されてもよい。
【0026】
凹溝は、正方形の形状、すなわち、断面視で直角のコーナー部を有する形状を有していてもよい。正方形の溝の断面は、幾何学的な正方形(すべての辺の長さが等しい)であってもよいし、長方形であってもよい。あるいは、凹溝は、断面視で別の形状、例えば、台形または1つ以上の斜めの辺を有する他の四辺形であってもよく、湾曲した辺を有する形状であってもよく、また、溝の断面が三角形であってもよい。断面が三角形であれば、凹溝に円錐形状を与えることができ、すなわち、狭端部をチューブの遠位端に向けた円錐台を形成することができる。
【0027】
凹溝は、最大深さが0.1~1mm、および/または、幅が0.8~3mmを有してもよい。最大深さは、チューブの材料の利用可能な深さに関して制限されねばならず、例えば、チューブ構造の深さ、またはチューブがGLTである場合には外側構造の深さの75%を超えてはならない。すなわち、凹溝は、GLTの外側層の深さの75%までの深さを有してよい。幅は深さと同程度であってもよく、および/または、深さより大きくてもよい。凹溝は、チューブを完全に包囲することが好適であり、チューブの円周にわたって均一な断面を有してよい。凹溝は、例えば、CNC旋盤やCNCフライス盤を用いるなどの機械加工によって、チューブの外表面から材料を除去することによって形成されてよい。平坦な端部を形成する、および/または遠位端の外周エッジを除去するという特徴が存在する場合には、そのために同様の機械加工プロセスを用いてもよい。
【0028】
ハードウェアコネクタ装置は、単一のねじ付きナット、すなわち、本明細書で言及する第1のねじ付きナットを含んでよく、このねじ付きナットは、ねじ付き予備スウェージング工具およびねじ付きエンドフィッティングの両方へのねじ接続に用いられる。したがって、ねじ付き予備スウェージング工具とねじ付きエンドフィッティングのねじ山は同じであってもよい。一方、上述したように、ねじ付きエンドフィッティングに用いられる第2のねじ付きナットがあってもよい。第2のねじ付きナットに関する上記の特徴は、言い換えれば、ねじ付きエンドフィッティングのねじ山を第1のねじ付きナットおよび第2のねじ付きナットのうちの一方に接続すると定義することができる。「第1の」および「第2の」という言及は、単なる用語の一つであり、言い換えれば、ねじ付きナットと(オプションとして)別のねじ付きナットの使用として、または予備スウェージングナットとエンドフィッティングナットとして説明されてもよいことに留意すべきである。
【0029】
第2のねじ付きナットの使用は、組立の種々の段階での便宜上の要素であってよく、すなわち、同一のねじ設計を有する2つのねじ付きナットを用いてもよい。しかしながら、例えば、ねじ山のリード、ピッチおよび/または直径を異ならせることにより、または、予備スウェージング作業およびエンドフィッティングへの接続についてのさまざまな要件に対して最適化するためにその他のねじ山特性を変化させることにより、もし第2のねじ付きナットを第1のねじ付きナットと異ならせたなら、利点が生じ得ることが理解されよう。一例として、第1のねじ付きナットは、第2のねじ付きナットよりも小さいピッチおよび/またはリードを有してよい。その場合、ねじ付き予備スウェージング工具は、ねじ付きエンドフィッティングのねじ山よりも小さなピッチおよび/またはリードのねじ山を有することになる。これにより、予備スウェージング作業中のより細かな制御が可能になり、第1のねじ付きナットは、さらなるコネクタのための同様の後の工程で再使用される専用の予備スウェージングナットとなる。第2のねじ付きナットは、遠位端をねじ付きエンドフィッティングにシールする動作に必要な精度が低いため、ピッチおよび/またはリードがより大きい、粗いねじ山を有することができる。このことはまた、第2のねじ付きナットとねじ付きエンドフィッティングをより容易(且つ、より安価)に製造し得ることを意味する。
【0030】
第1のねじ付きナットは、テーパ付きフェルールの広端部と係合するための肩部を備えている。第2のねじ付きナットが用いられる場合、第2のねじ付きナットは、同様にテーパ付きフェルールの広端部と係合するための第2の肩部を備えることが好適である。第1のねじ付きナットと第2のねじ付きナットの肩部は、同じフェルールと相互作用するため、同じ形と大きさであってよい。肩部は、テーパ付きフェルールの広端部と同様な幅であってもよく、例えば、円錐形のフェルールには、フェルールの広端部と同じ外径を持つ円環状の肩部であってもよい。フェルールの広端部とねじ付きナットの肩部は、チューブ上の所定の位置にあるとき、平行であることが好ましい。例えば、両者ともにチューブの長軸に直交する平坦面であってもよい。肩部は、テーパ付きフェルールの広端部を受け入れる凹部内に形成された肩部のような内側肩部であってもよい。肩部は、ねじ付きナットとねじ付きエンドフィッティングのねじ山が一緒に締め付けられるときに、テーパ付きフェルールの広端部に軸方向の力を加えるために用いられる。これにより、テーパ付きフェルールのチューブへのスウェージング結合を介してチューブに軸方向の力が加わり、チューブの遠位端における軸方向の力を許容し、遠位端がねじ付きエンドフィッティングのシール面に突き当たる。本明細書で言及する軸方向とは、チューブの長軸に沿った方向であることが理解されよう。
【0031】
ねじ付きナットは、予備スウェージング工具および/またはエンドフィッティングの雄ねじと係合するための雌ねじを含んでもよい。その場合、雌ねじは、肩部をも囲い込む凹部の周囲に設けることができ、したがってこの肩部は内側肩部である。これにより、一般に雄ねじを有する既存の予備スウェージング工具およびエンドフィッティングの使用が可能となる。しかしながら、「ナット」上の雄ねじと、予備スウェージング工具および/またはエンドフィッティング上の雌ねじとで、同じ機能を達成できることが理解されよう。したがって、このような雌ねじと雄ねじの配置も本開示の範囲内である。
【0032】
ねじ付き予備スウェージング工具は一時的にしか使用されないため、この方法は、新しいチューブとフェルールを用い、しかし同じねじ付き予備スウェージング工具を用いて、予備スウェージングと接続作業を繰り返すことを含んでもよい。
【0033】
ねじ付きエンドフィッティングは、チューブの遠位端との接続に用いられるシール面を有する。チューブの遠位端とねじ付きエンドフィッティングのシール面は、互いに平行であることが好ましい。例えば、チューブの遠位端とねじ付きエンドフィッティングのシール面は、チューブの長軸に直交する平行平面を有していてもよい。上述したように、本方法は、チューブの遠位端に適当に平坦な端部を形成することを含むことができ、これにより、ねじ付きエンドフィッティングのシール面と平行になる端面を形成してよい。ねじ付きエンドフィッティングのシール面は、エンドフィッティングの凹部の底の内表面であってもよい。エンドフィッティングが雄ねじを有する場合、これは、凹部と内表面とを含む円筒部の外側に形成されたねじ山であってもよい。ねじ付きエンドフィッティングはまた、テーパ付きフェルールの狭端部を受け入れ、したがって、フェルールの外表面に係合するためのテーパ面を有してよい。円錐形フェルールの場合、ねじ付きエンドフィッティングは相補的形状の円錐面を有してよい。従って、ねじ付きエンドフィッティングの凹部は、その開口部に円錐面を有してもよく、これは、チューブを受容する大きさの円形孔と、それから円形孔の底の内側シール面を案内する。
【0034】
本方法および本装置において、テーパ付きフェルールの狭端部の端面は、狭端部に向かってフェルールをさらにテーパ状にする角度ωを有して設計されてもよいことが理解されよう。このことは、溝と係合するように変形されるフェルールの狭端部の材料厚さをさらに減少させる。角度ωは、5°~30°、7°~25°、9°~20°、12°~19°、14°~18°、15°~17°であってよい。
【0035】
上述した方法および装置は、それ自体が新規性かつ進歩性をもつと考えられる部品およびサブアセンブリの組み合わせを含むことが理解されよう。従って、さらなる態様によれば、本発明は、高速液体クロマトグラフカラム用のチューブを形成するためのキットを提供し、このキットは、遠位端に凹溝を有するチューブと、前記凹溝において前記チューブとのスウェージング係合を形成するためのテーパ付きフェルールとを含む。さらに別の態様では、本発明は、高速液体クロマトグラフチューブのサブアセンブリを提供し、このサブアセンブリは、前記テーパ付きフェルールの狭端部を変形させて凹溝とスウェージング係合させるためのねじ付き予備スウェージング工具を用いることにより、上記態様のキットから形成される。
【0036】
上記態様のチューブおよび/またはテーパ付きフェルールは、第1および第2の態様のチューブおよび/またはテーパ付きフェルールについて上述したようなさらなる特徴を有してよい。キットは、さらに、第1のねじ付きナットおよび/またはエンドフィッティングと、オプションとして、第2のねじ付きナット、および/または、ワッシャおよび/またはフィルタ/スクリーンなどの他の好適なさらなる部品を含んでよい。サブアセンブリを形成するために用いられる予備スウェージング工具は、上述したような特徴を有してもよく、サブアセンブリは、第1の態様の方法またはその任意の変形例により形成されてもよい。
【0037】
本発明はさらに、ねじ付きナットおよびねじ付きエンドフィッティングとともに上記態様のサブアセンブリを含む高速液体クロマトグラフ装置にも及び、前記ねじ付きナットは、前記テーパ付きフェルールの広端部に軸方向の力を加え、それにより前記チューブの前記遠位端と前記ねじ付きエンドフィッティングのシール面との間にシールを形成するために、前記ねじ付きエンドフィッティングの前記ねじ山と係合する。この場合のねじ付きナットは、上述したように、第1のねじ付きナットまたは第2のねじ付きナットであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1A】HPLCカラム用の雄型コネクタ部品の分解図であり、部品には、凹溝を備えたチューブ、円錐形フェルール、およびねじ付きナットが含まれる。
図1B】HPLCカラム用の雄型コネクタ部品の予備アセンブリ図である。
図2】雄型コネクタ部品の予備アセンブリを予備スウェージング工具とともに示す図である、
図3図2に示す部品の斜視図である。
図4A】円錐形フェルールを変形させるための予備スウェージング工具の使用後の、組み立てられた雄型コネクタ部品を含むサブアセンブリの側面図である。
図4B】円錐形フェルールを変形させるための予備スウェージング工具の使用後の、組み立てられた雄型コネクタ部品を含むサブアセンブリの断面図である。
図5】組み立てられた雄型コネクタ部品を、ワッシャと、フィルタ/スクリーンと、雌型接続部を含むエンドフィッティングとともに、示す図である。
図6図5に示した同じ部品の斜視図である。
図7A】エンドフィッティングの雌型接続部が、組み立てられた雄型コネクタ部品に接続された、HPLCカラム用の組立てられたチューブの断面図である。
図7B】エンドフィッティングの雌型接続部が、組み立てられた雄型コネクタ部品に接続された、HPLCカラム用の組立てられたチューブの側面図である。
図7C】エンドフィッティングの雌型接続部が、組み立てられた雄型コネクタ部品に接続された、HPLCカラム用の組立てられたチューブの拡大/詳細図である。
図8A】円錐形の凹溝を有する金属製/PEEKガラスライニングチューブ(GLT)の断面図である。
図8B】円錐形の凹溝を有する金属製/PEEKガラスライニングチューブ(GLT)の側面図である。
図9A】正方形の凹溝を有する金属製/PEEKガラスライニングチューブ(GLT)の断面図である。
図9B】正方形の凹溝を有する金属製/PEEKガラスライニングチューブ(GLT)の側面図である。
図10A】円錐形の凹溝を有する鋼製チューブの断面図である。
図10B】円錐形の凹溝を有する鋼製チューブの側面図である。
図11A】四角形の凹溝を有する鋼製チューブの断面図である。
図11B】四角形の凹溝を有する鋼製チューブの側面図である。
図12A】フェルールの側面図である。
図12B】フェルールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明のいくつかの具体的な実施形態を、例示として、添付図面を参照して説明する。
【0040】
本開示は、IDが0.050~1mmの小寸法カラムのためのガラスライニングチューブ(GLT)が破断する問題を解決し、また、IDが1.5~25mmの鋼製チューブのための簡単で費用効果の高い方法を提供する。また、他のチューブサイズや材料種にも適用可能である。提案する概念は、以下に説明し図面において例示として示す方法と装置を使用することができる。
【0041】
図1Aおよび図1Bは、HPLCカラムに接続するための雄コネクタ部品の予備アセンブリを示している。これらの部品には、チューブ4、円錐形フェルール3、およびねじ付きナット2が含まれる。これらは、図1Aにおいて分解図で、図1Bにおいて予備アセンブリ形態で示されている。フェルール3は、均一なテーパを有する円錐形であることが好適である。フェルール3は、ステンレス鋼を含んでもよく、ステンレス鋼で構成されてもよい。図1Bの部品の組み合わせは、フェルール3がまだチューブ4にスウェージングされていないため、予備アセンブリ形態と呼ばれる。提案された方法には、フェルール3をチューブ4に接合して、サブアセンブリを形成する予備スウェージング工程が含まれ、そのサブアセンブリはその後でエンドフィッティング8への最終接続のために使用される。この予備スウェージング工程は、例えば機械加工によってチューブ4の外表面に形成される凹溝1の使用を含む。凹溝1の深さは例えば0.1~1mm、幅は0.8~3mmとすることができる。深さは、チューブ4の利用可能な材料深さの75%以下でなければならず、この材料深さはGLTの外側層の材料深さであってもよい。凹溝1は、正方形の溝であってもよいし、以下に述べるような円錐形を含む他の適切な形状であってもよい。溝1を有するだけでなく、チューブ4の端部13からエッジ/隆起を取り除き、斜面をもつ平坦な端部13を設ける(図8A~11Bにより明確に示される)ことによってもチューブ4を適応させる。平坦な端部13により、シールの圧力定格が向上する。斜面は、ワッシャ6を圧縮する際に平坦な端部13がシールのワッシャ6に押し付けられることを可能にすることにより、シールを強化する。
【0042】
図2および図3に示すように、専用の予備スウェージング工具5が用意され、この工具を用いて円錐形フェルール3をチューブ4に結合する。図1Bの予備アセンブリにおいて、フェルール3は、その先端(狭端部11)を凹溝1に隣接させて、チューブ4上に配置される。次に、ねじ付きナット3を予備スウェージング工具5と一緒にねじ込み、フェルール3を予備スウェージング工具5内の適切な形状のチャンバー内に引き込む。これにより、円錐形のフェルール3の先端が圧縮され、凹溝1を埋めるように変形する。次に、フェルール3がチューブ4にしっかりと装着された状態で、予備スウェージング工具5を取り外す。これにより、図4Aおよび図4Bに示すような雄型コネクタ部品のサブアセンブリが得られる。特に、スウェージング工程では、フェルール3の狭端部11を凹部1においてチューブ4に接続するのに十分な圧縮を与えることのみが必要とされる。チューブ4自体に大きな圧縮力を加える必要はない。これにより、金属製チューブを変形させたり、GLTのガラスライニングに亀裂を生じさせたりする半径方向の力が回避される。
【0043】
HPLCハードウェアのための接続を完成させるために、次に、予備スウェージング済みチューブ4と「適所に係止された」フェルール3のサブアセンブリを、図5図6に示されるように、ねじ付きエンドフィッティング8内に配置する。この例では、ねじ付きエンドフィッティング8は、図7A図7Cに示すように、組み立てられた雄型コネクタ部品を受け入れるための雌型接続部を有する。最終アセンブリはまた、ポリマーライニングフィルタ/スクリーン7などのフィルタ/スクリーン7、および適切なワッシャ6を含む。これは例えばPEEKワッシャ6であってもよい。ワッシャ6とフィルタ7は、図7Cに最もよく示されるように、チューブ4の平坦な端部とエンドフィッティング8の平坦な底部9との間に配置される。図示した構成に代えて、フィルタ/スクリーン7をワッシャ6と一体化して、シール機能とフィルタ機能を単一部品により提供することもできる。
【0044】
ねじ付きナット2がエンドフィッティング8のねじ山に締め付けられると、チューブ4の平坦な端部13とエンドフィッティング8の平坦な底部9との間に漏れ防止接続が形成される。ねじ付きエンドフィッティング8または同様のコネクタ部品は、いくつかの変形例では、注入ポートの一体部品として提供することもできる。本明細書で説明する原理は、チューブ4の端部の任意のねじ付きコネクタに適用されるため、ねじ付きエンドフィッティング8は、任意の適切な装置のねじ付き部品とすることができ、図に示すような別体の端部部品のみに限定されないことが理解されよう。
【0045】
この例では、ねじ付きエンドフィッティング8は、予備スウェージング工程で使用された同じねじ付きナット2に接続する。しかしながら、別のねじ付きナット2を使用してもよい。この第2のねじ付きナット2は、異なるピッチおよび/またはリードを有するなど、異なる形態のねじ山を有してもよい。ねじ山が異なる2つのねじ付きナットがある場合、ねじ付き予備スウェージング工具5とねじ付きエンドフィッティング8は、それらのねじ山に同様の相違を有することになる。
【0046】
この接続装置は、チューブ4の遠位端13をエンドフィッティング8の雌型接続部に押し込むために、円錐形フェルール3の広端部12の基部に対するねじ付きナット2の軸方向移動を用いる。最終的に、ねじ付き部品の締め付けにより、チューブ4の平坦な端部13がエンドフィッティング8の底部9のワッシャ6に押し付けられた状態で軸方向の力が生じる。これにより、漏れ防止シールが形成される。力の軸方向伝達は、フェルール3の狭端部11が溝1を介してチューブ4にスウェージング接続されることによって可能となる。接続システムの雄部にはフェルール3が含まれ、これはエンドフィッティング8の円錐形凹部10内に収容されるが、フェルール3には半径方向の大きな力はかからない。フェルール3は、接続のための圧力シールを形成するためには用いられず、その代わりに、チューブ4の平坦な遠位端13における軸方向の力によってシールが与えられる。これは、フェルールの雄型円錐形と圧縮フィッティングの雌型円錐の間に漏れ防止接続が生じる、圧縮フィッティングの工業規格的な使用とは対照的である。
【0047】
予備アセンブリと予備スウェージング工程については圧縮原理を使用し、最終アセンブリにおいては軸方向の力に切り替える、提案された接続システムのハイブリッド設計から大きな利点が生じることが理解されよう。このことにより、極小径のチューブにさえもねじ付きコネクタを使用することができ、小径GLTの破損にともなう問題が回避される。また、より大きい寸法のチューブや異なる材料に対しても高いシール性能を提供する簡単で費用効率の高い接続システムが提供される。得られたシールは10,000~20,000psi(約68.9~137.9MPa)の範囲の内部圧力に対して漏れを防止できることが判明し、この接続システムは、そのような圧力で作動するHPLCカラムの一部となってもよい。
【0048】
図8A図11Bには、GLT(例えば、ガラスライニング付き金属製チューブまたはPEEKチューブ)または固体材料(例えば、ステンレス鋼)のチューブのいずれかを用いたさまざまな実施例が示されている。図面は正確な縮尺ではなく、上述した方法/装置は、様々な直径を有するHPLCシステム用の広範囲にわたるチューブとともに用い得ることが理解されよう。図8Aおよび8Bは、円錐形の凹溝1を有する金属製/PEEKガラスライニングチューブ(GLT)4の断面図および側面図である。この溝の最大深さは0.1~1mmで、幅は0.8~3mmである。最大深さは、利用可能な材料深さ、例えばGLTの外側層の深さ、の75%を超えないことが好適である。溝1は、図に示すように、その深さが幅方向に直線的に減少する円錐台形状を形成してもよい。図9Aとおよび図9Bは、正方形の凹溝1を持つ同様のGLT4の断面図および側面図である。この正方形の溝は、0.1~1mmの均一な深さと0.8~3mmの幅を持ってよく、例えば方形波のように直角のコーナーを持つ断面によって「正方形」の形である。深さは、利用可能な材料深さ、例えばGLTの外側層の深さの75%を超えないことが好適である。断面は、幾何学的な正方形、すなわち同一の深さと幅を有するものであっても、または長方形であってもよい。図10A図11Bは、それぞれ円錐形の凹溝1および正方形の凹溝1を有する鋼製チューブ4のさまざまな例を示す。これらの溝1の寸法は、上述したものと同様とすることができる。
【0049】
図中の直線形状を非直線状/曲線状の輪郭に替えた円錐台溝1の変形や、半径方向に並んだエッジの一方または両方を傾斜したエッジに替える正方形凹溝1の変形など、他の溝形状も可能である。フェルール3の形状も、図面に描かれた一様なテーパ状の円錐形と比べて変化させてもよい。例えば、一様でないテーパや円錐形からのその他何らかの変更を有してもよい。
【0050】
さらなる変形例において、上記の提案は、上述したようなさまざまな材質のチューブ用の接続システムとしても実施されてよい。すなわち、PEEKSil、ポリイミド被覆溶融シリカチューブ、またはPEEKライニング鋼製カラムハードウェアなどである。
【0051】
図12A図12Bに、テーパ付きフェルールの詳細図を示す。図12Aはフェルール3の側面図である。狭端部の端面における角度ωが図示されている。中心線A-Aは、図12Bに示す断面をあらわす。Dは、チューブ用の貫通開口の直径である。δは、フェルールのテーパ面の角度である。δは、狭端部をチューブの溝に押し込む予備スウェージング工具の構造に適合される。角度δは通常20°と40°の間である。
【0052】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0053】
(付記1) 高速液体クロマトグラフカラム用のハードウェアを接続する方法であって、前記ハードウェアは、ねじ付きエンドフィッティングに接続されるチューブを含み、前記方法は、
前記チューブの遠位端に凹溝を設け、
テーパ付きフェルールを、前記テーパ付きフェルールの狭端部が前記チューブの前記遠位端にある状態で、前記チューブ上の前記凹溝の近くに配置し、
前記チューブの前記遠位端をねじ付き予備スウェージング工具に挿入し、
前記テーパ付きフェルールを前記ねじ付き予備スウェージング工具に向けて押すために、第1のねじ付きナットの肩部を前記テーパ付きフェルールの広端部に位置決めし、
前記第1のねじ付きナットを前記ねじ付き予備スウェージング工具に係合させ、得られたねじ接続を用いて、前記テーパ付きフェルールの前記狭端部を変形させて前記凹溝に係合させる予備スウェージング作業を行い、
前記ねじ付き予備スウェージング工具を取り外し、
前記チューブの前記遠位端を、前記チューブの前記遠位端を受け入れるためのシール面を有する前記ねじ付きエンドフィッティングに挿入し、
前記第1のねじ付きナットまたは第2のねじ付きナットを、前記ねじ付きエンドフィッティングに係合させ、前記ねじ付きナットから前記テーパ付きフェルールの前記広端部に軸方向の力を加え、これにより前記チューブの前記遠位端を前記ねじ付きエンドフィッティングの前記シール面に押し付けることを含む、方法。
【0054】
(付記2) 前記方法は、前記遠位端に平坦な端部を有する前記チューブを提供することを含む、付記1に記載の方法。
【0055】
(付記3) 前記チューブの前記遠位端と前記エンドフィッティングの前記シール面との間にワッシャおよび/またはフィルタ/スクリーンを配置することを含む、付記1または2に記載の方法。
【0056】
(付記4) 高速液体クロマトグラフカラム用のハードウェアコネクタ接続装置であって、前記装置は、
遠位端に凹溝を有するチューブと、
前記チューブ上に配置するためのテーパ付きフェルールと、
前記テーパ付きフェルールに軸方向の力を加えるために、前記テーパ付きフェルールの広端部に押し付けるための肩部を備える第1のねじ付きナットと、
前記チューブの前記遠位端に接続するためのねじ付きエンドフィッティングと、
ねじ付き予備スウェージング工具とを備え、
前記ねじ付き予備スウェージング工具は、前記テーパ付きフェルールと共に前記チューブの前記遠位端を受け入れるように、且つ、前記テーパ付きフェルールの狭端部が変形して前記凹溝に係合した状態で前記テーパ付きフェルールを前記チューブにスウェージングするために前記第1のねじ付きナットのねじ山に係合するように構成され、
前記ねじ付きエンドフィッティングは、前記ねじ付き予備スウェージング工具を取り外した後、スウェージングされた前記フェルールとともに前記チューブの前記遠位端を受け入れるように構成され、
前記ねじ付きエンドフィッティングのねじ山は、前記第1のねじ付きナット、または、第2のねじ付きナットと係合して前記テーパ付きフェルールの前記広端部に軸方向の力を加え、これにより前記チューブの前記遠位端を前記ねじ付きエンドフィッティングのシール面に押し付けるように構成される、装置。
【0057】
(付記5) 前記装置は、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法とともに用いるように構成される、付記4に記載の装置。
【0058】
(付記6) 前記チューブは、内径が2mm未満の、オプションとして内径が0.050~1mmの範囲のガラスライニングチューブである、付記1~5のいずれか1項に記載の方法または装置。
【0059】
(付記7) 前記チューブは、内径が1mm超の、オプションとして内径が1.5~25mmの範囲の鋼製チューブである、付記1~5のいずれか1項に記載の方法または装置。
【0060】
(付記8) 前記凹溝は前記チューブを完全に取り囲み、前記チューブの外周にわたって均一な断面を持つ、付記1~7のいずれか1項に記載の方法または装置。
【0061】
(付記9) 前記凹溝は、前記凹溝の断面が正方形または長方形である、矩形の形状を有する、付記1~8のいずれか1項に記載の方法または装置。
【0062】
(付記10) 前記凹溝は円錐形を有する、付記1~8のいずれか1項に記載の方法または装置。
【0063】
(付記11) 前記凹溝は、前記チューブの利用可能な材料深さの75%の最大深さ、および/または、0.8~3mmの幅を有する、付記1~10のいずれか1項に記載の方法または装置。
【0064】
(付記12) 前記テーパ付きフェルールの前記狭端部の端面は、前記フェルールを前記狭端部に向かってさらにテーパ状にする角度ωを有して設計されている、付記1~11のいずれか1項に記載の方法または装置。
【0065】
(付記13) 前記角度ωは5°~30°である、付記12に記載の装置。
【0066】
(付記14) 遠位端に凹溝を有するチューブと、前記凹溝において前記チューブとのスウェージング係合を形成するためのテーパ付きフェルールとを含む、高速液体クロマトグラフカラム用のチューブを形成するためのキット。
【0067】
(付記15) 前記チューブは、内径が0.05~1mmの範囲のガラスライニングチューブである、付記14に記載のキット。
【0068】
(付記16) 前記テーパ付きフェルールの狭端部を変形させて前記凹溝とスウェージング係合させるためのねじ付き予備スウェージング工具を用いることにより、付記14または15のキットから形成される、高速液体クロマトグラフチューブのサブアセンブリ。
【0069】
(付記17) ねじ付きナットおよびねじ付きエンドフィッティングとともに付記16のサブアセンブリを含む高速液体クロマトグラフ装置であって、前記ねじ付きナットは、前記テーパ付きフェルールの広端部に軸方向の力を加え、それにより前記チューブの前記遠位端と前記ねじ付きエンドフィッティングのシール面との間にシールを形成するために、前記ねじ付きエンドフィッティングのねじ山と係合する、高速液体クロマトグラフ装置。
【符号の説明】
【0070】
1 予備機械加工済み凹溝
2 ねじ付きナット
3 円錐形フェルール
4 HPLCカラム
5 予備スウェージング工具
6 ワッシャ
7 フィルタ/スクリーン
8 エンドフィッティング
9 平坦な底部
10 エンドフィッティングの受容形状
11 円錐形フェルールの狭端部
12 円錐形フェルールの広端部
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B