(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180333
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】改善した打撃フェースを具備するゴルフクラブヘッド
(51)【国際特許分類】
A63B 53/04 20150101AFI20241219BHJP
A63B 102/32 20150101ALN20241219BHJP
【FI】
A63B53/04 F
A63B102:32
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024094999
(22)【出願日】2024-06-12
(31)【優先権主張番号】18/336,670
(32)【優先日】2023-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】390023593
【氏名又は名称】アクシュネット カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ACUSHNET COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100086531
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100093241
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 正昭
(74)【代理人】
【識別番号】100101801
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 英治
(72)【発明者】
【氏名】ダグ エム. タケハラ
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン ヘブレオ
(72)【発明者】
【氏名】リチャード エル. クレグホン
【テーマコード(参考)】
2C002
【Fターム(参考)】
2C002AA03
2C002CH01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ゴルフクラブの設計において、打撃フェースは非常に重要な部分である。打撃フェースは、インパクト時にゴルフボールと相互作用し、ボールの軌道、速度、スピンに影響を与えるゴルフクラブヘッドの部分である。これらのパラメータは、すべて、ボールの移動距離や飛行形状に影響を与えるため、ゴルファーにとって重要である。したがって、パフォーマンスを向上させる打撃フェースの設計が強く求められている。
【解決手段】改良された打撃フェース102を具備するゴルフクラブヘッドがここに開示される。より具体的には、この発明に従うゴルフクラブヘッドは、薄いセンターゾーンと、このセンターゾーンを囲む複数のゾーンを含む打撃フェースを具備する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイアン型ゴルフクラブにおいて、
ゴルフクラブヘッド、グリップ、およびそれらの間のシャフトを有し、
上記ゴルフクラブヘッドは、当該ゴルフクラブヘッドの前部に位置する打撃フェース部分と、上記シャフトを収容するホーゼル、上記ゴルフクラブヘッドの上部を横切って延びるトップライン、上記ゴルフクラブヘッドの底部にある、トウ部分、ヒール部分、およびソール部分を有する本体部分とから構成され、
上記打撃フェース部分は、打撃フェース面積を具備し、上記打撃フェース部分のフェース中心を囲むセンターゾーン、上記センターゾーンと上記トップラインとの間に位置する上部センターゾーン、上記センターゾーンと上記ソール部分との間に位置する下部センターゾーン、上記センターゾーンと上記ヒール部分との間に位置するヒールセンターゾーン、上記ヒールセンターゾーンと上記トップラインとの間に位置するヒール上部ゾーン、上記ヒールセンターゾーンと上記ソール部分との間に位置するヒール下部ゾーン、上記センターゾーンと上記トウ部分との間に位置するトウセンターゾーン、上記トウセンターゾーンと上記トップラインとの間に位置するトウ上部ゾーン、および上記トウセンターゾーンと上記ソール部分との間に位置するトウ下部ゾーンを含む9つのゾーンを有し、
上記センターゾーンは、実質的に均一なセンターゾーン厚さt1を具備し、また、上記打撃フェース面積の約15%~35%であるセンターゾーン面積A1を具備し、
上記上部センターゾーンは、上記センターゾーンに隣接する最小厚さt1から上記トップラインに隣接する最大厚さt2まで増加する可変厚さを具備し、
上記下部センターゾーンは、上記センターゾーンに隣接する最小厚さt1から、上記ソール部分に隣接する下部センターゾーン最大厚さt3まで増加する可変厚さを具備し、
上記ヒールセンターゾーンは、上記センターゾーンに隣接する最小厚さt1から、上記ヒール部分に隣接するヒールセンターゾーン最大厚さt4まで増加する可変厚さを具備し、
上記ヒール下部ゾーンは、上記センターゾーンおよび上記ヒールセンターゾーンに隣接する点の最小厚さt1から、上記ソール部分に隣接するヒール下部ゾーン最大厚さt6まで増加する可変厚さを具備し、
上記トウセンターゾーンは、上記センターゾーンに隣接する最小厚さt1から、上記トウ部分に隣接するトウセンターゾーン最大厚さt7まで増加する可変厚さを具備し、
上記トウ上部ゾーンは、上記センターゾーンおよび上記トウセンターゾーンに隣接する点における最小厚さt1から、上記トップラインに隣接するトウ上部ゾーン最大厚さt8まで増加する可変厚さを具備し、
上記トウ下部ゾーンは、上記センターゾーンおよび上記トウセンターゾーンに隣接する点における最小厚さt1から、上記ソール部分に隣接するトウ下部ゾーンの最大厚さt9まで増加する可変厚さを具備することを特徴とするアイアン型ゴルフクラブ。
【請求項2】
上記センターゾーンの厚さt1が2.2mm未満である請求項1に記載のゴルフクラブ。
【請求項3】
上記センターゾーン厚さt1が約1.5mm~2.0mmであり、上記センターゾーンの周囲が実質的に四角形である請求項1に記載のゴルフクラブ。
【請求項4】
上記センターゾーンは実質的に長方形の周囲を具備する請求項3に記載のゴルフクラブ。
【請求項5】
上記上部センターゾーンの最大厚さt2が、上記ヒールセンターゾーン最大厚さt4および上記トウセンターゾーン最大厚さt7よりも小さい請求項1に記載のゴルフクラブ。
【請求項6】
上記センターゾーン厚さt1が上記ヒールセンターゾーンの最大厚さt7の65%未満である請求項5に記載のゴルフクラブ。
【請求項7】
上記センターゾーン厚さt1が上記ヒールセンターゾーンの最大厚さt4の80%未満である請求項5に記載のゴルフクラブ。
【請求項8】
上部センターゾーン厚さがt1からt2まで連続的に増加し、t2がt1より少なくとも25%大きい請求項1に記載のゴルフクラブ。
【請求項9】
上記下部センターゾーンの厚さがt1からt3まで連続的に増加し、t3がt1より少なくとも10%大きい請求項1に記載のゴルフクラブ。
【請求項10】
上記ヒールセンターゾーンの厚さがt1からt4まで連続的に増加する請求項1に記載のゴルフクラブ。
【請求項11】
上部ヒールゾーンの厚さがt1からt5まで連続的に増加することを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブ。
【請求項12】
上記下部ヒールゾーンの厚さがt1からt6まで連続的に増加する請求項1に記載のゴルフクラブ。
【請求項13】
上記センタートウゾーンの全体の厚さがt1からt7まで連続的に増加する請求項1に記載のゴルフクラブ。
【請求項14】
上部トウゾーンの厚さがt1からt8まで連続的に増加する請求項1に記載のゴルフクラブ。
【請求項15】
上記下部トウゾーンの厚さがt1からt9まで連続的に増加する請求項1に記載のゴルフクラブ。
【請求項16】
上記上部ヒールゾーンの厚さがt1からt5まで連続的に増加する請求項1に記載のゴルフクラブ。
【請求項17】
上記トウ上部ゾーンは、上記打撃フェース面積の約10%~30%のトウ上部面積A8を具備する請求項1に記載のゴルフクラブ。
【請求項18】
上記トウセンターゾーンは、上記打撃フェース面積の約10%~30%のトウセンター面積A7を具備する請求項1に記載のゴルフクラブ。
【請求項19】
アイアン型ゴルフクラブにおいて、
クラブヘッド、グリップ、およびそれらの間のシャフトを有し、
上記ゴルフクラブヘッドは、上記クラブヘッドの前部に位置する打撃フェース部分と、上記シャフトを収容するためのホーゼル、上記クラブヘッドの上部を横切って延びるトップライン、上記クラブヘッドの下部のトウ部分、ヒール部分、およびソール部分を有する本体部分とを有し、
上記打撃フェース部分は、打撃フェース面積を具備し、上記打撃フェース部分のフェース中心を囲むセンターゾーン、上記センターゾーンと上記トップラインとの間に位置する上部センターゾーン、上記センターゾーンと上記ソールとの間に位置する下部センターゾーン、上記センターゾーンと上記ヒール部分との間に位置するヒールセンターゾーン、上記ヒールセンターゾーンと上記トップラインとの間に位置するヒール上部ゾーン、上記ヒールセンターゾーンと上記ソールとの間に位置するヒール下部ゾーン、上記センターゾーンと上記トウ部分との間に位置するトウセンターゾーン、上記トウセンターゾーンと上記トップラインとの間に位置するトウ上部ゾーン、および上記トウセンターゾーンと上記ソールとの間に位置するトウ下部ゾーンを含む9つのゾーンを有し、
上記センターゾーンは、実質的に均一な厚さt1を具備し、センターゾーン面積A1は、上記打撃フェース面積の約15%~30%であり、
上記上部センターゾーンは、上記センターゾーンに隣接する最小厚さt1から上記トップラインに隣接する上部センターゾーン最大厚さt2まで増加する可変厚さを具備し、上記打撃フェース面積の5%から15%の間の上部センターゾーン面積A2を具備し、上記上部センターゾーン最大厚さt2は上記センターゾーン厚さt1より少なくとも25%大きく、
上記下部センターゾーンは、上記センターゾーンに隣接する最小厚さt1から上記ソールに隣接する下部センターゾーン最大厚さt3まで増加する可変厚さを具備し、
上記ヒールセンターゾーンは、上記センターゾーンに隣接する最小厚さt1から上記ヒール部分に隣接するヒールセンターゾーン最大厚さt4まで増加する可変厚さを具備し、
上記トウセンターゾーンは、上記センターゾーンに隣接する最小厚さt1からトウ部分に隣接するトウセンターゾーン最大厚さt7まで増加する可変厚さを具備し、また、上記打撃フェース面積の10%から30%の間であるトウセンターゾーン面積を具備し、上記センターゾーンの最小厚さt1はトウセンターゾーン最大厚さt7の65%未満であることを特徴とするアイアン型ゴルフクラブ。
【請求項20】
アイアン型ゴルフクラブでにおいて、
クラブヘッド、グリップ、およびそれらの間のシャフトを有し、
上記ゴルフクラブヘッドは、上記クラブヘッドの前部に位置する打撃フェース部分と、本体部分であって、上記シャフトを収容するためのホーゼルと、上記クラブヘッドの上部を横切って延びるトップライン、上記クラブヘッドの下部のトウ部分、ヒール部分、およびソール部分からなるクラブヘッド周囲とを有する上記本体部分から構成され、
上記打撃フェース部分は、打撃フェース面積を具備し、上記打撃フェース部分のフェース中心を囲むセンターゾーンと、上記センターゾーンと上記クラブヘッド周囲との間に延びる複数の周囲ゾーンとを有し、上記センターゾーンは実質的に均一な厚さt1を具備し、上記打撃フェース面積の約15%から30%の間のセンターゾーン面積A1を具備し、上記複数の周囲ゾーンはすべて、上記センターゾーンに隣接する最小厚さt1を具備し、上記クラブヘッド周囲に隣接して最大厚さまで連続的に厚さが増加することを特徴とするアイアン型ゴルフクラブ。
【請求項21】
上記センターゾーン厚さt1が2mm未満であり、上記打撃フェース部分の質量が54グラムを超える請求項20に記載のゴルフクラブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、全般的には、改良された打撃フェースを具備するゴルフクラブヘッドに関する。より具体的には、この発明に従うゴルフクラブヘッドは、複数の領域を具備する打撃フェース部分から構成される。各領域は、CORを改良するために異なる厚さプロファイルを具備する。
【背景技術】
【0002】
現代のゴルフクラブの設計は、ゴルフの初期の頃から進化してきた。ゴルフクラブ技術のあらゆる技術的進歩の良い点は、あらゆるレベルのゴルファーにとってゴルフがより簡単にプレイできるようになったことである。しかし、こうした進歩は、ゴルフクラブのエンジニアにとって大きな課題を伴う。
【0003】
ゴルフクラブの設計において、打撃フェースは非常に重要な部分である。打撃フェースは、インパクト時にゴルフボールと相互作用し、ボールの軌道、速度、スピンに影響を与えるゴルフクラブヘッドの部分である。これらのパラメータは、すべて、ボールの移動距離や飛行形状に影響を与えるため、ゴルファーにとって重要である。したがって、パフォーマンスを向上させる打撃フェースの設計が強く求められている。
【0004】
ビソネット等の米国特許第6,605,007号は、可変のフェース厚さを有するゴルフクラブを定義している。フェースは、打撃フェースの総面積の15%から60%の間のセンターゾーンから構成される。センターゾーンは周辺ゾーンに囲まれており、センターゾーンは周辺ゾーンよりも大幅に高い曲げ剛性を具備する。
【0005】
同様に、ウィレット等の米国特許第6,904,663号は、かなりの厚さの変化があるゴルフクラブを定義している。この厚さの変化は、上部の凹部と同程度の厚さの小さなセンター凹部と、最小の厚さであるヒールとトゥの厚さがあるように打撃フェースを機械加工することによって達成される。フェースの最も厚い部分は、小さなセンター凹部を囲んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6605007号明細書
【特許文献2】米国特許第6904663号明細書
【発明の概要】
【0007】
この発明の一側面は、ゴルフクラブヘッド、グリップ、およびそれらの間のシャフトを有するゴルフクラブであり、このゴルフクラブヘッドは、CORおよび感触が改善されている。ゴルフクラブヘッドは、好ましくは、前部に位置する打撃フェース部分と、打撃フェース部分に取り付けられてその間に空洞を形成する本体部分とから構成される。打撃フェースは、薄いセンターゾーンと、センターゾーンを囲む複数の可変厚さゾーンとから構成される。
【0008】
この発明の他の実施例は、クラブヘッド、グリップ、およびそれらの間のシャフトを備えたアイアン型ゴルフクラブを有する。ゴルフクラブヘッドは、クラブヘッドの前部に位置する打撃フェース部分と、シャフトを収容するホーゼル、および、クラブヘッドの上部を横切るトップライン、クラブヘッドの下部のトウ部分、ヒール部分、およびソール部分からなるクラブヘッド周囲を有する本体部分とから構成される。打撃フェース部分は、打撃フェース面積を具備し、打撃フェース部分のフェース中心を囲むセンターゾーンを有する。センターゾーンは、ほぼ均一な厚さを有し、センターゾーン面積は、打撃フェース面積の約15%から30%の間である。複数の周囲ゾーンが、センターゾーンとクラブヘッドの周囲との間に延びており、センターゾーンに隣接する部分の厚さは最小で、クラブヘッドの周囲に隣接する部分の厚さは最大まで連続的に増加する。好ましくは、周囲ゾーンの厚さは、約1°から5°の傾斜で直線的に増加する。好ましくは、センターゾーンの厚さは2mm未満であり、打撃フェース部分の質量は54グラムを超える。
【0009】
この発明の一側面は、ゴルフクラブヘッド、グリップ、およびそれらの間のシャフトを含むアイアン型ゴルフクラブであり、このゴルフクラブヘッドは、CORおよび感触が改善されている。ゴルフクラブヘッドは、好ましくは、前部に位置する打撃フェース部分と、打撃フェース部分に取り付けられてその間に空洞を形成する本体部分とから構成される。ゴルフクラブヘッドは、トップライン、ソール、トウ部分、ヒール部分、およびホーゼルを具備する。この発明において、打撃フェース部分は、好ましくは、センターゾーン、上部センターゾーン、下部センターゾーン、ヒール上部ゾーン、ヒールセンターゾーン、ヒール下部ゾーン、トウ上部ゾーン、トウセンターゾーン、およびトウ下部ゾーンを含む9つのゾーンを具備する。センターゾーンは、フェースセンターを含み、好ましくは、打撃フェースの最小厚さを具備する。
【0010】
この発明の他の好ましい実施例は、ゴルフクラブヘッド、グリップ、およびそれらの間のシャフトを含むアイアン型ゴルフクラブであり、ゴルフクラブヘッドは、センターゾーン、上部センターゾーン、下部センターゾーン、ヒール上部ゾーン、ヒールセンターゾーン、ヒール下部ゾーン、トウ上部ゾーン、トウセンターゾーン、およびトウ下部ゾーンを具備する改良された打撃フェースを有する。センターゾーンは、フェースセンターを含み、最小のフェース厚さを具備し、総打撃フェース面積の約10%~40%を有する。さらに、センターゾーンは、好ましくは一定の厚さであり、四辺形を形成する。さらにより好ましくは、センターゾーンは平行四辺形であり、最も好ましくは長方形である。
【0011】
この発明の他の好ましい実施例は、クラブヘッド、グリップ、およびそれらの間のシャフトを含むアイアン型ゴルフクラブである。ゴルフクラブヘッドは、クラブヘッドの前部に位置する打撃フェース部分と、シャフトを収容するホーゼル、クラブヘッドの上部を横切るトップライン、クラブヘッドの下部のトウ部分、ヒール部分、およびソール部分を有するボディ部分とから構成される。改良された打撃フェース部分は、打撃フェース面積を具備し、打撃フェース部分のフェース中心を囲むセンターゾーン、センターゾーンとトップラインとの間に位置する上部センターゾーン、センターゾーンとソールとの間に位置する下部センターゾーン、センターゾーンとヒール部分との間に位置するヒールセンターゾーン、ヒールセンターゾーンとトップラインとの間に位置するヒール上部ゾーン、ヒールセンターゾーンとソールとの間に位置するヒール下部ゾーン、センターゾーンとトウ部分との間に位置するトウセンターゾーン、トウセンターゾーンとトップラインとの間に位置するトウ上部ゾーン、およびトウセンターゾーンとソールとの間に位置するトウ下部ゾーンを含む9つのゾーンを有する。センターゾーンは、実質的に均一な厚さt1を有し、センターゾーン面積A1は、打撃フェース面積の約15%~35%である。好ましくは、センターゾーン面積は、9つのゾーンすべての中で最大である。上部センターゾーンは、好ましくは、センターゾーンに隣接する最小厚さt1からトップラインに隣接する最大厚さt2まで増加する可変厚さを具備する。下部センターゾーンは、好ましくは、センターゾーンに隣接する最小厚さt1からソールに隣接する最大厚さt3まで増加する可変厚さを具備する。ヒールセンターゾーンは、好ましくは、センターゾーンに隣接する最小厚さt1からヒール部分に隣接する最大厚さt4まで増加する可変厚さを具備する。下部ヒールゾーンは、好ましくは、センターゾーンおよびヒールセンターゾーンに隣接する点の最小厚さt1からソールに隣接する最大厚さt6まで増加する可変厚さを具備する。トウセンターゾーンは、好ましくは、センターゾーンに隣接する最小厚さt1からトウ部分に隣接する最大厚さt7まで増加する可変厚さを具備する。上部トウゾーンは、好ましくは、センターゾーンおよびトウセンターゾーンに隣接する点の最小厚さt1からトップライン付近の最大厚さt8まで増加する可変厚さを具備し、下部トウゾーンは、センターゾーンおよびトウセンターゾーンに隣接する点の最小厚さt1からソール付近の最大厚さt9まで増加する可変厚さを具備する。好ましくは、トウ上部ゾーンの最大厚さt8は、打撃フェースにおける最大厚さである。
【0012】
好ましい実施例において、中心厚さt1は2.2mm未満であり、より好ましくは、中心厚さt1は約1.5mm~2.0mmであり、センターゾーンは実質的に四辺形の周囲を具備する。より好ましくは、センターゾーンは実質的に長方形の周囲を具備する。好ましくは、打撃フェースの最小厚さt1は、打撃フェースの最大厚さt8の60%未満である。さらに、好ましくは、打撃フェースの最小厚さt1は、ヒール部分t4における打撃フェースの厚さの80%未満である。さらに、好ましくは、トップラインt2における打撃フェースの厚さは、打撃フェースの最小厚さt1よりも少なくとも25%大きい。
【0013】
この発明の好ましい実施例において、センターゾーンの厚さは実質的に一定であり、他のゾーンの厚さはすべて、センターゾーンから一定に増加する可変の厚さである。例えば、下部センターゾーンの厚さはt1からt3まで連続的に増加し、t3はt1より少なくとも10%大きく、ヒールセンターゾーンの厚さはt1からt4まで連続的に増加する。同様に、ヒール上部ゾーンの厚さはt1からt5まで連続的に増加し、ヒール下部ゾーンの厚さはt1からt6まで連続的に増加する。トウセンターゾーンの厚さも、最小厚さt1から最大厚さt7まで連続的に増加する。トウ上部ゾーンの厚さはt1からt8まで連続的に増加し、トウ下部ゾーンの厚さはt1からt9まで連続的に増加する。
【0014】
この発明の一実施例において、センターゾーンは、打撃フェース面積の約15%~35%のセンターゾーン面積A1を有する。好ましくは、センターゾーンは、トウ上部ゾーン面積A8よりも大きいセンターゾーン面積A1を具備し、トウ上部面積A8は、打撃フェース面積の約10%~30%である。さらに、センターゾーンは、トウセンターゾーン面積A7よりも大きいセンターゾーン面積A1を具備し、トウセンター面積A7は、打撃フェース面積の約10%~30%である。
【0015】
この発明の他の好ましい実施例は、クラブヘッド、グリップ、およびそれらの間のシャフトを有するアイアン型ゴルフクラブである。ゴルフクラブヘッドは、クラブヘッドの前部に位置する打撃フェース部分と、シャフトを収容するホーゼルと、クラブヘッドの上部を横切るトップライン、クラブヘッドの下部のトウ部分、ヒール部分、およびソール部分を有するボディ部分とから構成される。打撃フェース部分は、打撃フェース面積を具備し、打撃フェース部分のフェース中心を囲むセンターゾーン、センターゾーンとトップラインとの間に位置する上部センターゾーン、センターゾーンとソールとの間に位置する下部センターゾーン、センターゾーンとヒール部分との間に位置するヒールセンターゾーン、ヒールセンターゾーンとトップラインとの間に位置するヒール上部ゾーン、ヒールセンターゾーンとソールとの間に位置するヒール下部ゾーン、センターゾーンとトウ部分との間に位置するトウセンターゾーン、トウセンターゾーンとトップラインとの間に位置するトウ上部ゾーン、およびトウセンターゾーンとソールとの間に位置するトウ下部ゾーンを含む9つのゾーンを有する。センターゾーンは、実質的に均一な厚さt1を具備し、センターゾーン面積A1は、打撃フェース面積の約15%~35%である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
この発明の前述および他の特徴および利点は、添付の図面に示されているように、この発明の以下の説明から明らかになるであろう。ここに組み込まれ、明細書の一部を形成する添付の図面は、この発明の原理を説明し、関連技術の当業者がこの発明を実施および使用することを可能にするのにさらに役立つ。
【0017】
この発明の上述およびその他の特徴および利点は、添付の図面に示されたこの発明の以下の説明から明らかになるであろう。ここに組み込まれ、明細書の一部を構成する添付の図面は、この発明の原理をさらに説明し、関連技術の当業者がこの発明を製造および使用できるようにするものである。
【
図1】添付図面の
図1は、この発明の一実施例に従うゴルフクラブヘッドの正面斜視図を示す。
【
図2】添付図面の
図2は、
図1に開示されたゴルフクラブの背面斜視図を示す。
【
図3】添付図面の
図3は、この発明の一実施例に従うクラブヘッドの打撃フェースの背面図を示す。
【
図4】添付図面の
図4は、
図3の打撃フェースの背面図を示し、打撃フェースの断面図を示している。
【
図5】添付図面の
図5は、
図3の打撃フェースの上部部分の水平断面図を示す。
【
図6】添付図面の
図6は、
図3の打撃フェースの水平センター部分の水平断面図を示す。
【
図7】添付図面の
図7は、
図3の打撃フェースの下部の水平断面図を示す。
【
図8】添付図面の
図8は、
図3の打撃フェースのヒール部分の縦断面図を示す。
【
図9】添付図面の
図9は、
図3の打撃フェースの垂直センター部分の垂直断面図を示す。
【発明の詳細な説明】
【0018】
以下の詳細な説明は、この発明を実施するための現在考えられる最良のモードを説明する。この説明はこの発明を限定するものではなく、この発明の一般原理を説明することのみを目的として提供される。この発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって最もよく定義される。以下に種々の発明の特徴を説明するけれども、それぞれは独立して使用することも、他の特徴と組み合わせて使用することもできる。
【0019】
添付図面の
図1~2は、この発明の例示的な実施例に従うゴルフクラブヘッド100を示す。ここに示すゴルフクラブヘッド100は、打撃フェース部分102と、トップライン部分112、トウ部分114、ソール部分116、ヒール部分118、およびホーゼル120を含む後方本体部分または本体部分104とを含む。ホーゼル120は、図示されていないゴルフシャフトの先端部を受け入れるように構成されている。ゴルフシャフトのバット端は、図示されていないゴルフグリップを受け入れるように構成されている。ここに示すゴルフクラブヘッド100は、ゴルフクラブヘッド100が中空になるように、オプションのバックプレート122を具備する。
【0020】
図1に示す打撃フェース部分102は、フェースセンターFCを含むほぼ平面状の外側前面フェース部分124と、リーディングエッジLEおよびソール部分116の前部を形成するリターン部126とを含む。打撃フェース部分102は、好ましくは、フェースセンターの厚さが2mm未満であり、全体の質量が54グラムを超える。
【0021】
図3に示すように、打撃フェース部分102は、好ましくは、非平面状の背面表面130を具備し、これにより、打撃フェース部分102は、センターゾーン132、上部センターゾーン134、下部センターゾーン136、ヒール上部ゾーン138、ヒールセンターゾーン140、ヒール下部ゾーン142、トウ上部ゾーン144、トウセンターゾーン146、およびトウ下部ゾーン148を含む9つのゾーンを具備する。また、打撃フェース部分102は、また、外周150も含を含み、この外周150は、トップライン部分112、トウ部分114、およびヒール部分118に溶接されている。打撃フェース部分102のリターン部126も、ソール部分116に溶接されて、その前部およびリーディングエッジLEを形成する。
図3は、参考のために垂直方向yと水平方向xも開示している。
【0022】
センターゾーン132はフェースセンターFCを含み、好ましくは、打撃フェースの最小厚さt1を具備する。好ましくは、センターゾーン132は、実質的に均一な厚さt1を具備し、センターゾーン面積A1は、
図3および4の打撃フェース部分102の周囲の内側に示される平面領域である打撃フェース部分面積の約15%から35%の間である。好ましくは、センターゾーン面積A1は、9つのゾーンすべての中で最大の面積である。上部センターゾーン134は、好ましくは、センターゾーン132に隣接する最小厚さt1からトップライン部分112に隣接する最大厚さt2まで増加する可変厚さを具備する。下部センターゾーン136は、センターゾーン132に隣接する最小厚さt1からソール部分116に隣接する最大厚さt3まで増加する可変厚さを具備することが好ましい。ヒールセンターゾーンは、センターゾーン132に隣接する最小厚さt1からヒール部分118に隣接する最大厚さt4まで増加する可変厚さを具備することが好ましい。ヒール下部ゾーンは、センターゾーン132およびヒールセンターゾーン140に隣接するポイントでの最小厚さt1からソール部分116に隣接する最大厚さt6まで増加する可変厚さを具備することが好ましい。トウセンターゾーン146は、センターゾーン132に隣接する最小厚さt1からトウ部分114に隣接する最大厚さt7まで増加する可変厚さを具備することが好ましい。トウ上部ゾーンの最大厚さt8は、打撃フェース部分102上で最大の厚さであることが好ましい。トウ上部ゾーン144は、好ましくは、センターゾーン132およびトウセンターゾーン146に隣接する点の最小厚さt1からトップライン部分112付近の最大厚さt8まで増加する可変厚さを具備し、トウ下部ゾーン148は、センターゾーン132およびトウセンターゾーン146に隣接する点の最小厚さt1からソール部分116付近の最大厚さt9まで増加する可変厚さを具備する。
【0023】
好ましくは、
図4~10に示すように、上部センターゾーン134は、最小厚さt1から最大厚さt2まで連続的に増加する可変厚さを具備することが好ましい。さらに好ましくは、上部センターゾーン134は、角度αが3°~5°である、最小厚さt1から最大厚さt2まで直線的に連続的に増加する可変厚さを具備することが好ましい。下部センターゾーン136は、最小厚さt1から最大厚さt3まで連続的に増加する可変厚さを具備することが好ましい。より好ましくは、下部センターゾーン136は、最小厚さt1から最大厚さt3まで直線的に連続的に増加する可変厚さを具備し、ここで角度α2は3°から5°の間である。ヒールセンターゾーンは、好ましくは、最小厚さt1から最大厚さt4まで直線的に連続的に増加する可変厚さを具備する。より好ましくは、ヒールセンターゾーン140は、最小厚さt1から最大厚さt4まで直線的に連続的に増加する可変厚さを具備し、ここで角度α3は3°から5°の間である。トウセンターゾーン146は、好ましくは、センターゾーン132に隣接する最小厚さt1から最大厚さt7まで連続的に増加する可変厚さを具備し、ここで角度α4は約3°から7°の間であり、α3より大きい。トウ上部ゾーン144は、好ましくは、垂直方向にトップライン部分112に向かって約1°から4°の角度α6で増加する可変厚さを具備し、トウ下部ゾーン148は、トウ部分114に向かって水平方向に約1°から4°の角度α5で増加する可変厚さを具備する。
【0024】
好ましくは、センターゾーン132は、フェースセンターFCの投影を囲み、外側前面フェース部分124のフェースセンターFCがインパクト時に撓んで、全体的な打撃フェースCORを向上させることを可能にする。好ましい実施例において、厚さt1は約1.5mm~2.0mm、t2は2.2mm~2.9mm、t3は2.0mm~2.5mm、t4は2.3mm~3.0mm、t5は2.1mm~2.5mm、t6は2.7mm~3.2mm、t7は3.0mm~3.5mm、t8は3.0mm~3.6mm、t9は2.8mm~3.2mmである。好ましくは、t8>t7>t9>t6>t4>t5>t2>t3>t1である。さらに、好ましくは、t8はt1より少なくとも50%大きく、t7はt1より少なくとも40%大きく、t2はt1より少なくとも25%大きく、t3はt1より少なくとも10%大きい。同様に、t1はt8の60%未満、t7の65%未満、t4の80%未満である。
【0025】
外側前面フェース部分124は、好ましくは鋼で形成され、打撃フェース部分102の外側前面部分に配置される。外側前面フェース部分124は、複数の溝128を含む実質的に平面の外面である。さらに好ましくは、外側前面フェース部分124は、最大引張強度が2000MPaを超える高強度鋼で形成され、さらに好ましくは2300MPaを超える。最も好ましくは、外側前面フェース部分124は、AerMet340などから形成される。この薄い外側前面フェース部分124とその高強度は、ゴルフクラブヘッド100の高CORの形成に役立つ。
【0026】
この発明の好ましい高COR実施例において、センターゾーンは、打撃フェース面積、すなわち
図3および
図4の打撃フェース部分102の周囲の内側に示される平面面積の約15%~35%であるセンターゾーン面積A1を具備する。好ましくは、センターゾーン面積A1は、トウ上部ゾーン面積A8およびトウ上部面積A8よりも大きく、打撃フェース面積の約10%~30%である。さらに、センターゾーン面積A1は、トウセンターゾーン面積A7およびトウセンター面積A7よりも大きく、打撃フェース面積の約10%~30%である。好ましくは、センターゾーン面積A1が最大面積であり、上部センターゾーン面積A2および下部センターゾーン面積A3が打撃フェース面積の5%~15%であり、ヒールセンターゾーン面積A4が打撃フェース面積の10%~20%である。さらに、フェースの水平センター部分の面積(A1+A7+A4)は、フェースの水平上部部分の面積(A2+A8+A5)とフェースの水平下部部分の面積(A3+A6+A9)の合計よりも大きい。つまり、次の式が満たされる:
a.(A1+A7+A4)>(A2+A8+A5)+(A3+A6+A9)
好ましくは、フェースの水平センター部分の面積(A1+A7+A4)は、打撃フェース面積の50%よりも大きい。
【0027】
動作例以外、または明示的に指定されていない限り、前述の明細書部分における材料の量、慣性モーメント、重心位置、ロフト、ドラフト角度、さまざまな性能比などの数値範囲、量、値、およびパーセンテージはすべて、値、量、または範囲に「約」という語が明示的に現れていない場合でも、「約」という語が前置されているものとして読むことができる。したがって、反対であることが示されていない限り、先の明細書および添付の特許請求の範囲に記載されている数値パラメータは、この発明によって取得しようとする所望の特性に応じて変化する可能性がある近似値である。少なくとも、均等論の適用を特許請求の範囲に限定する試みとしてではなく、各数値パラメータは、報告された有効桁数を考慮して、通常の丸め手法を適用して解釈する必要がある。
【0028】
この発明の広い範囲を示す数値範囲およびパラメータは近似値であるけれども、特定の例で示される数値は可能な限り正確に報告されている。しかし、いかなる数値も、それぞれの試験測定で見られる標準偏差から必然的に生じる一定の誤差を本質的に含んでいる。さらに、ここで種々の範囲の数値範囲が示されている場合、列挙された値を含むこれらの値の任意の組み合わせが使用されることが想定される。
【0029】
もちろん、上述は、この発明の例示的な実施例に関するものであり、以下の請求項に記載されたこの発明の精神および範囲から逸脱することなく変更が可能であることは理解されるべきである。例えば、先に説明したこの発明の例では、ほぼ四角形のセンターゾーン132について言及しているが、センターゾーン132の形状を異なる多角形ゾーンまたは楕円形ゾーンに変更しても、この発明の目的の多くを満たすことは明らかである。
【外国語明細書】