(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180336
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ダニ類防除方法及びダニ類防除用噴射製剤
(51)【国際特許分類】
A01N 25/06 20060101AFI20241219BHJP
A01N 53/10 20060101ALI20241219BHJP
A01N 53/08 20060101ALI20241219BHJP
A01P 7/02 20060101ALI20241219BHJP
A01N 37/46 20060101ALI20241219BHJP
A01N 31/16 20060101ALI20241219BHJP
A01N 53/06 20060101ALI20241219BHJP
A01M 7/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
A01N25/06
A01N53/10 210
A01N53/08 110
A01P7/02
A01N37/46
A01N31/16
A01N53/08 100
A01N53/06 150
A01M7/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024095197
(22)【出願日】2024-06-12
(31)【優先権主張番号】P 2023097677
(32)【優先日】2023-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】水島 正太
(72)【発明者】
【氏名】延原 健二
(72)【発明者】
【氏名】池田 菫
【テーマコード(参考)】
2B121
4H011
【Fターム(参考)】
2B121AA16
2B121CB07
2B121CC02
2B121EA01
2B121EA05
2B121FA06
4H011AC04
4H011BA06
4H011BB03
4H011BB06
4H011BB15
4H011BC03
4H011DA21
4H011DB05
4H011DD05
4H011DE15
(57)【要約】
【課題】簡便な処理により、処理面からダニ類を徒に忌避させることなく、また、処理面へのダニ類の無作為な移動による侵入を抑制することなく、処理空間全体におけるダニ類の致死効果を高められる防除方法を提供すること。
【解決手段】ダニ類防除成分及び有機溶剤を含む原液を、被処理面に対する前記ダニ類防除成分の処理量が2~10mg/m2となるように下方に向けて噴射する、ダニ類防除方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダニ類防除成分及び有機溶剤を含む原液を、被処理面に対する前記ダニ類防除成分の処理量が2~10mg/m2となるように下方に向けて噴射する、ダニ類防除方法。
【請求項2】
前記有機溶剤が炭素数2~3の低級アルコールである、請求項1に記載のダニ類防除方法。
【請求項3】
前記原液及びジメチルエーテルを含むエアゾール組成物を噴射する、請求項1又は2に記載のダニ類防除方法。
【請求項4】
ダニ類防除成分及び有機溶剤を含み、下方に向けて噴射するための噴射製剤であって、被処理面に対する前記ダニ類防除成分の処理量が2~10mg/m2となるように調整された、ダニ類防除用噴射製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダニ類防除方法及びダニ類防除用噴射製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒョウヒダニ、コナダニ等の屋内塵性ダニ類は、屋内の布団やカーペット内で増殖し、その虫体や死骸、糞がアレルゲンとなり、喘息や皮膚炎といったアレルギー性疾患の原因となることが知られている。これらの屋内塵性ダニ類を防除するために、様々な方法が提案されている(特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-153108号公報
【特許文献2】特開2003-137710号公報
【特許文献3】特開2010-180131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燻煙剤や全量噴射型エアゾールにより屋内塵性ダニ類を駆除する方法として、特許文献1には、(RS)-α-シアノ-4-フルオロ-3-フェノキシベンジル(1RS)-シス-トランス-3-(2,2-ジクロロビニル)-2,2-ジメチルシクロプロパンカルボキシラートと、発熱性基材とを含有する屋内塵性ダニ類防除用燻煙剤組成物を屋内にて加熱する、屋内塵性ダニ類の防除方法が開示されている。しかしながら、この方法においては、防除剤の使用後に一定時間処理空間を閉め切る必要があり、また、高濃度の防除成分が処理空間中に拡散するものであるため、使用の簡便性、防除成分による汚染、人体への安全性の面で改善の余地があった。
【0005】
局所処理により屋内塵性ダニ類を駆除する方法として、特許文献2には、フェノトリン及びディートを含むエアゾールを6畳部屋の畳に内部注入して、ケナガコナダニの生息密度を減少させる方法が記載されている。しかしながら、この方法は、防除成分を局所に処理する方法であり、処理された部分のダニ類は致死するものの、残存した防除成分が処理面周辺のダニ類に忌避効果を及ぼすため、室内空間全体のダニ類防除という面で改善の余地があった。
【0006】
忌避剤の処理により屋内塵性ダニ類を防除する方法として、特許文献3には、ダニよけ成分である桂皮酸誘導体、消臭成分、炭素数1~3の低級アルコールを含むダニ類忌避剤組成物を、トリガーポンプにて塗布面に噴霧する屋内ダニよけスプレー剤を用いる方法が記載されている。しかしながら、この方法は、処理面からダニ類が忌避する効果は期待できるものの、処理空間内のダニ類の生息頭数は変わらないため、防除効果の面で改善の余地があった。
【0007】
本発明は、このような従来の問題に鑑みてなされたものであり、簡便な処理により、処理面からダニ類を徒に忌避させることなく、また、処理面へのダニ類の無作為な移動による侵入を抑制することなく、処理空間全体におけるダニ類の致死効果を高められる防除方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、ダニ類防除成分及び有機溶剤を含む原液を、被処理面に対して所定量を下方に向けて噴射することにより、処理面からダニ類を徒に忌避させることなく、また、処理面へのダニ類の無作為な移動による侵入を抑制することなく、処理空間全体におけるダニ類の致死効果を高められることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は下記に関するものである。
[1]
ダニ類防除成分及び有機溶剤を含む原液を、被処理面に対する前記ダニ類防除成分の処理量が2~10mg/m2となるように下方に向けて噴射する、ダニ類防除方法。
[2]
前記有機溶剤が炭素数2~3の低級アルコールである、[1]に記載のダニ類防除方法。
[3]
前記原液及びジメチルエーテルを含むエアゾール組成物を噴射する、[1]又は[2]に記載のダニ類防除方法。
[4]
ダニ類防除成分及び有機溶剤を含み、下方に向けて噴射するための噴射製剤であって、被処理面に対する前記ダニ類防除成分の処理量が2~10mg/m2となるように調整された、ダニ類防除用噴射製剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明のダニ類防除方法及びダニ類防除用噴射製剤により、処理面からダニ類を徒に忌避させることなく、また、処理面へのダニ類の無作為な移動による侵入を抑制することなく、処理空間全体におけるダニ類の致死効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、忌避効果及び致死効果の確認方法を説明するための、実験装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のダニ類防除方法及びダニ類防除用噴射製剤の態様について説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
また、本明細書において、数値範囲を示す「A~B」はA及びBを含む範囲を意味し、「A以上B以下」であることを示す。
【0013】
<ダニ類防除方法>
本発明によるダニ類防除方法は、ダニ類防除成分及び有機溶剤を含む原液を、被処理面に対するダニ類防除成分の処理量が2~10mg/m2となるように下方に向けて噴射するものである。
なお、本明細書において、単に「噴射」と記載されている場合であっても、特に断りがない限り、「下方に向けて噴射」することを意味する。
【0014】
[原液]
本発明によるダニ類防除方法において用いられる原液は、ダニ類防除成分及び有機溶剤を含む。
【0015】
(ダニ類防除成分)
ダニ類防除成分は特に限定されないが、例えば、ピレトリン、アレスリン、レスメトリン、フラメトリン、フェノトリン、ペルメトリン、エムペントリン、プラレトリン、シフェノトリン、イミプロトリン、トランスフルトリン、メトフルトリン、プロフルトリン、メパフルトリン、ジメフルトリン、フタルスリン、エトフェンプロックス、ビフェントリン、フェンプロパトリン、シフルトリン、モンフルオロトリン、トラロメトリン、シラフルオフェン、テラレスリン、サイパーメスリン等のピレスロイド系化合物;フェニトロチオン、ジクロルボス、ダイアジノン、プロポクスル等のカーバメート系化合物;トリクロルホン、ブロモホス、カルクロホス、ピリダフェンチオン、クロルピリホスメチル等の有機リン系化合物;メトキサジアゾン等のオキサジアゾール系化合物;ジノテフラン等のネオニコチノイド系化合物、ブロフラニリド等のメタジアミド系化合物;フィプロニル等のフェニルピラゾール系化合物;ハッカ油、オレンジ油、ウイキョウ油、ケイヒ油、チョウジ油、テレビン油、ユーカリ油、ヒバ油、ジャスミン油、ネロリ油、ペパーミント油、ベルガモット油、ブチグレン油、レモン油、レモングラス油、シナモン油、シトロネラ油、ゼラニウム油、シトラール、l-メントール、酢酸シトロネリル、シンナミックアルデヒド、テルピネオール、ノニルアルコール、cis-ジャスモン、リモネン、リナロール、1,8-シネオール、ゲラニオール、α-ピネン、p-メンタン-3,8-ジオール、オイゲノール、酢酸メンチル、チモール、安息香酸ベンジル、サリチル酸ベンジル等の各種精油成分;その他、ピリプロキシフェン、ジフルベンズロン、ヒドラメチルノン、アミドフルメト等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、被処理面に対して噴射されたダニ類防除成分の揮散を防ぎ、ダニ類を防除する効果を持続させる観点から、ダニ類防除成分の蒸気圧は1×10-4mmHg(25℃)未満であることが好ましく、例えばフェノトリン(1.4×10-7mmHg(25℃))、エトフェンプロックス(6.1×10-9mmHg(25℃))、ビフェントリン(1.8×10-7mmHg(25℃))、フェンプロパトリン(1.7×10-7mmHg(25℃))、ブロフラニリド(6.7×10-11mmHg(25℃))が挙げられる。ダニ類防除成分の蒸気圧は1×10-5mmHg(25℃)未満であることがより好ましく、5×10-6mmHg(25℃)未満であることがさらに好ましく、1×10-6mmHg(25℃)未満であることが特に好ましい。
【0016】
ダニ類防除成分の含有量は、原液中、0.01w/v%以上であることが好ましく、0.05w/v%以上であることがより好ましい。また、ダニ類防除成分の含有量は、原液中、99w/v%以下であることが好ましく、60w/v%以下であることがより好ましく、20w/v%以下であることが特に好ましい。ダニ類防除成分の含有量が上記範囲内であることにより、適用箇所への処理量の調整が容易となる。
【0017】
(有機溶剤)
有機溶剤は、ダニ類防除成分を均一に配合するために含有される。一例を挙げると、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等の低級アルコール;グリセリン、エチレングリコール等の多価アルコール;直鎖、分岐鎖又は環状のパラフィン類、灯油等の石油類;ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル等のエステル類等である。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらのうち、平均粒子径の範囲が後述する範囲に調整されやすい点から、炭素数2~3の低級アルコールが好ましく、イソプロパノールがより好ましい。
【0018】
原液は、上記ダニ類防除成分や有機溶剤のほか、適宜の任意成分が配合されてもよい。任意成分は、例えば、非イオン、陰イオン又は陽イオン界面活性剤、ジブチルヒドロキシトルエン等の抗酸化剤、クエン酸、アスコルビン酸等の安定化剤、タルク、珪酸等の無機粉体、共力剤、殺菌成分、防黴成分、消臭成分、芳香成分、香料、色素等である。
【0019】
(水)
本発明によるダニ類防除方法において用いられる原液は、ダニ類防除成分及び有機溶剤に加えて、本発明の効果を損ねない範囲において水を含むことができる。
【0020】
[噴射剤]
本発明によるダニ類防除方法において、エアゾール組成物を用いることができる。エアゾール組成物は、原液に加えて、原液を噴射するための噴射剤をさらに含む。噴射剤は、原液とともにエアゾール容器に加圧充填することができる。一例を挙げると、噴射剤は、ハイドロフルオロオレフィン、ジメチルエーテル(DME)、液化石油ガス(LPG)等の液化ガス;炭酸ガス、窒素ガス、圧縮空気等の圧縮ガス;HFC-152a、HFC-134a、HFO-1234yf、HFO-1234ze等のハロゲン化炭素ガス等の1種又は2種以上を用いることができる。これらのうち、平均粒子径の範囲が後述する範囲に調整されやすい点から、ジメチルエーテルが好ましい。
例えば、本発明によるダニ類防除方法の一態様として、原液及びジメチルエーテルを含むエアゾール組成物を噴射することが挙げられる。
【0021】
エアゾール組成物の原液と噴射剤との配合割合(体積比)は1:99~70:30であることが好ましく、5:95~60:40であることがより好ましく、10:90~50:50であることがさらに好ましい。原液と噴射剤との配合割合を上記範囲とすることで、防除成分の被処理面への均一拡散性と付着性とを両立することができる。
【0022】
[ダニ類防除方法の態様]
(処理量)
本発明によるダニ類防除方法において、ダニ類防除成分及び有機溶剤を含む原液は、被処理面に対するダニ類防除成分の処理量が2~10mg/m2となるように下方に向けて噴射される。被処理面に対するダニ類防除成分の処理量は3~9mg/m2であることが好ましく、3~7mg/m2であることがより好ましく、3~6mg/m2であることがさらに好ましい。
処理量は2~10mg/m2の範囲になるように、被処理面の大きさに応じて、エアゾールの処方や噴射量、噴射回数等によって適宜調整され得る。
【0023】
本明細書において、「被処理面」とは、本発明によるダニ類防除方法によって原液を噴射しようとする面を意味し、「被処理面」は、後述する処理空間の床面全体であってもよいし、床面の一部であってもよい。また、「処理面」とは、本発明によるダニ類防除方法によって原液が噴射された面を意味する。
【0024】
本明細書において、ダニ類防除成分の処理量は、噴射される原液に含まれるダニ類防除成分の量(mg)を被処理面の面積(m2)で下記式のとおり除することにより求めることができる。
処理量(mg/m2)=ダニ類防除成分の量(mg)/被処理面の面積(m2)
【0025】
ダニ類防除成分は処理面全体において均一に付着していてもよく、均一に付着していなくてもよい。ダニ類防除成分を被処理面に対して噴射した場合、ダニ類防除成分は処理面全体において均一に付着することが好ましい。ただし、ダニ類防除成分は処理面全体において均一に付着していなくても、ダニ類が処理面を忌避することなく処理面への侵入を続けダニ類防除成分と接触するため、ダニ類防除成分は処理面全体において不均一に付着していてもよい。
【0026】
被処理面に対するダニ類防除成分の処理量が上記の範囲内にあると、処理面におけるダニ類防除成分の濃度が低くなるため、ダニ類は処理面を忌避することなく処理面への侵入を続け、ダニ類防除成分と接触する。そして、処理面に侵入したダニ類が処理面内を移動することでダニ類防除成分がダニ類に蓄積され、ダニ類はやがて死に至る。そして、処理面を含む処理空間に生息するダニ類は、時間の経過とともに、処理面への侵入、ダニ類防除成分との接触及び死に至ることを順次繰り返し、やがて処理空間全体のダニ類が防除される。
なお、本明細書において、「処理空間」とは、ダニ類を防除する対象となる空間を意味し、処理空間の底面は被処理面を含む。処理空間の具体例としては、例えば、屋内の一部屋を挙げることができる。また、本明細書において、処理空間の底面の面積を「床面積」と称することがある。
【0027】
このように、本発明によるダニ類防除方法は、処理面からダニ類を徒に忌避させることなく、また、処理面へのダニ類の無作為な移動による侵入を抑制することなく、処理空間に生息するダニ類全体の致死効果を高めることができる。さらに、本発明によるダニ類防除方法は、高度な薬剤拡散システムを用いる必要がない点、及び、被処理面に対するダニ類防除成分の使用量が少量であり、部屋の薬剤汚染を最小限に抑えながら、従来のダニ類防除方法と同等の効果が処理空間全体で得られる点でも、従来のダニ類防除方法に対して有利である。
【0028】
これに対し、被処理面に対するダニ類防除成分の処理量が2mg/m2未満であると、ダニ類防除成分の濃度が低く、処理面からのダニ類の忌避及び処理面へのダニ類の侵入の抑制は依然として起こりにくいが、処理空間に生息するダニ類の致死効果が低くなる。他方、被処理面に対するダニ類防除成分の処理量が10mg/m2を超えると、ダニ類防除成分の濃度が高いため、ダニ類が処理面を忌避してしまい、その結果として、ダニ類がダニ類防除成分と接触する機会が低下するため、処理空間全体に生息するダニ類の致死効果が低くなる。
【0029】
また、本発明によるダニ類防除方法は、上述した効果とは別に、以下の副次的な効果があると考えられる。すなわち、本発明によるダニ類防除方法において、被処理面に対するダニ類防除成分の処理量が2~10mg/m2と比較的少ないため、ダニ類防除成分と接触したダニ類は即死することなく、ダニ類防除成分を体内及び/又は体表面に保持した状態で一定の時間処理空間を徘徊することができる。そして、ダニ類防除成分と接触したダニ類は、処理空間の処理面以外の領域において、ダニ類防除成分に触れていない別のダニ類と接触することが可能となる。これにより、処理面に侵入していないダニ類であっても、ダニ類防除成分と接触したダニ類を介してダニ類防除成分と間接的に接触し、やがて死に至る。
このように、本発明によるダニ類防除方法は、ダニ類防除成分と直接的に接触したダニ類のみでなく、間接的に接触したダニ類をも致死させることができるという副次的効果を発揮すると考えられる。本発明によるダニ類防除方法は、このような副次的効果により、ダニ類を自発的に処理面へ侵入させ、かつ、処理面に侵入したダニ類を介してダニ類防除成分を処理面の深部へ伝播及び蓄積させることにより、処理空間全体のダニ類の防除を効率的に実現することができると考えられる。ここで、ダニ類防除成分を処理面の深部へ伝播及び蓄積させるとは、例えば、カーペットや畳等、隙間や浸透可能な空間が存在する材質の処理面について、処理面に対して垂直方向(処理面を構成する材質の深部)に向かってダニ類防除成分を伝播及び蓄積させることが挙げられる。
【0030】
(原液の噴射)
本発明によるダニ類防除方法は、ダニ類防除成分及び有機溶剤を含む原液を下方に向けて噴射することを特徴とする。原液は、後述するように、原液のまま噴射されてもよく、噴射剤をさらに含むエアゾール組成物として噴射されてもよい。
なお、本明細書において、「下方」とは、床面と水平方向に対して10~90°の角度で下の方向と定義される。また、噴射時の角度は、床面と水平方向に対して20~80°であることが好ましく、30~70°であることがより好ましい。従来、原液は上方に向けて噴射され、噴射した原液を沈降させて適用箇所に処理することがあった。しかしながら、このような方法は、ダニ類防除成分の量を一定に噴射できたとしても被処理面の面積が安定せず、適用箇所への処理量の調整が困難であるという問題がある。これに対し、本発明によるダニ類防除方法は、下方に向けて原液を噴射することにより、適用箇所への処理量の調整が容易であるという利点がある。その結果、本発明によるダニ類防除方法は、処理面からダニ類を徒に忌避させることなく、また、処理面へのダニ類の無作為な移動による侵入を抑制することなく、処理空間全体におけるダニ類の致死効果を高めることができる。
【0031】
また、本発明によるダニ類防除方法は、下方に向けて原液を噴射することにより、防除成分の吸入リスクを低減することができる。さらに、下方に向けて原液を噴射することにより、処理面に到達するまでの時間が短くなるため、有機溶剤の揮散が抑制され、噴霧粒子の被処理面への付着性や浸透性を高めることができる。
【0032】
本発明によるダニ類防除方法は、原液を下方に向けて噴射することにより、適用箇所におけるダニ類防除成分の処理量が調整される。処理量とは、噴射によって被処理面1m2当たりにダニ類防除成分が付着する量のことであり、具体的には、本発明によるダニ類防除方法における処理量は、被処理面1m2当たり2~10mgである。
【0033】
本発明によるダニ類防除方法において、被処理面に対するダニ類防除成分の処理量が2~10mg/m2となるように原液を噴射する回数は、被処理面1か所当たり通常1回のみであるが、2回以上噴射することによって被処理面に対するダニ類防除成分の処理量を2~10mg/m2とすることもできる。
ただし、効率的にダニ類を防除する観点から、被処理面1m2当たりの処理回数を10回以下とすることが好ましく、8回以下とすることがより好ましい。
【0034】
本発明によるダニ類防除方法において、被処理面に対するダニ類防除成分の処理量が2~10mg/m2となるように、原液を噴射する噴射時間を調整してもよい。
ただし、効率的にダニ類を防除する観点から、被処理面1m2当たりの噴射時間を40秒以下とすることが好ましく、20秒以下とすることがより好ましい。
【0035】
本発明によるダニ類防除方法によって形成された、ダニ類防除成分の処理量が2~10mg/m2の処理面は、ダニ類を防除する対象となる処理空間中の少なくとも1か所に設けられていればよく、2か所以上に設けられていてもよい。
【0036】
本発明によるダニ類防除方法において、ダニ類を防除する対象となる処理空間中、ダニ類防除成分の処理量が2~10mg/m2の処理面に加えて、ダニ類防除成分の処理量が10mg/m2を超える別の処理面が形成されたとしても、特に問題がない。なぜならば、ダニ類はダニ類防除成分の処理量が10mg/m2を超える別の処理面を忌避する一方、同処理量が2~10mg/m2の処理面には依然として侵入することができ、同様の効果が得られるためである。ただし、被処理面に対するダニ類防除成分の使用量を少量とし、部屋の薬剤汚染を最小限に抑える観点から、ダニ類を防除する対象となる処理空間中、ダニ類防除成分の処理量が10mg/m2を超える別の処理面は設けられていないことが好ましい。
【0037】
本発明によるダニ類防除方法において、1回の噴射当たりの被処理面の面積には特に制限がないが、0.01~8m2であることが好ましく、0.05~7m2であることがより好ましく、0.1~6m2であることがさらに好ましい。
1回の噴射当たりの被処理面の面積を上記の範囲とすることにより、上述した処理面を形成しやすくすることができる。
【0038】
また、本発明によるダニ類防除方法において、下方に向けて原液が噴射される処理空間の容積には特に制限がないが、0.1~50m3であることが好ましく、0.15~40m3であることがより好ましく、0.3~30m3であることがさらに好ましい。
処理空間の容積を上記の範囲とすることにより、上述した処理面を形成しやすくすることができる。
【0039】
本発明によるダニ類防除方法によって形成された、ダニ類防除成分の処理量が2~10mg/m2となる処理面の割合には特に制限がないが、処理空間の床面積に対して70%以下であってもよく、60%以下であってもよく、50%以下であってもよい。本発明によるダニ類防除方法は、ダニ類防除成分の処理量が上記範囲を満たせば、処理面の割合に関わらず処理空間全体におけるダニ類の致死効果を発揮することができる。
処理空間の床面積に対する処理面の割合を上記の範囲とすることにより、噴射する原液の量を最小限に抑えつつ処理空間全体のダニ類を防除することができるという利点がある。すなわち、原液を広い範囲に対して噴射すること等によってダニ類防除成分を処理空間にムラなく処理する必要がないことから、経済的かつ簡便にダニ類を防除することができる。
【0040】
粒子濃度は、噴霧粒子にレーザー光を照射した際に発生する散乱光の強度から算出することができる。具体的には、定量噴射型エアゾール製品又はポンプスプレー製品の粒子濃度を測定する場合、25℃において、レーザー粒度分布測定装置(LDSA-1400A、東日コンピュータアプリケーションズ株式会社製)を用いて、オート・スタート平均(平均化回数3回、間隔0.60ms)とし、噴口から30cmの位置における粒子濃度を測定することができる。連続噴射型エアゾール製品の粒子濃度を測定する場合、25℃において、レーザー粒度分布測定装置(LDSA-1400A、東日コンピュータアプリケーションズ株式会社製)を用いて、キー・スタート平均(平均化回数1回)とし、噴口から30cmの位置における粒子濃度を測定することができる。粒子濃度は3回測定したときの平均値を用いる。定量噴射型エアゾール製品の粒子濃度は上述の処理量の範囲内となりやすい点から、2500以上であることが好ましく、3000以上であることがより好ましく、3500以上であることが特に好ましい。連続噴射型エアゾール製品の粒子濃度は上述の処理量の範囲内となりやすい点から、1000以上であることが好ましく、1300以上であることがより好ましく、1500以上であることが特に好ましい。ポンプスプレー製品の粒子濃度は上述の処理量の範囲内となりやすい点から、3000以上であることが好ましく、4000以上であることがより好ましく、5000以上であることが特に好ましい。
【0041】
また、粒子濃度は噴射時の角度により変動する。水平方向に噴射したときの粒子濃度、及び水平方向に対して30°上方又は下方に向けて噴射したときの粒子濃度から、下式により粒子濃度比率を算出することができる。
粒子濃度比率=上方又は下方に向けて噴射したときの粒子濃度/水平方向に噴射したときの粒子濃度
【0042】
粒子濃度比率は上述の処理量の範囲内になりやすい点から、1.05~4の範囲であることが好ましく、1.1~3.5の範囲であることがより好ましく、1.15~3の範囲であることが特に好ましい。
【0043】
本発明によるダニ類防除方法において、原液を噴射する際の被処理面からの噴射位置(高さ)には特に制限がないが、使用者(例えば、成人)が起立した状態で容器を手に持って噴射する高さであることが好ましい。被処理面からの噴射位置(高さ)としては、例えば、噴射口先端の位置が10~150cmであることが好ましく、35~135cmであることがより好ましく、60~120cmであることがさらに好ましい。
上記の高さから被処理面に対して原液を下方に向けて噴射することにより、適用箇所への処理量の調整が容易になるという利点がある。
【0044】
(被処理面)
本発明によるダニ類防除方法において、原液が噴射される被処理面としては、例えば家屋の床面に相当する面を挙げることができる。一例を挙げると、被処理面は、フローリング、畳、カーペット、ござ、すのこ、タイル、コンクリート等である。また、被処理面は家屋の床面に相当する面に限定されず、ベッドのマットレス、ソファの座面、布団、座布団等であってもよい。
【0045】
前記被処理面の材質には特に制限がないが、例えば、ウール、綿、麻、竹、いぐさ、ラタン、シルク等の天然繊維;ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、アクリル、レーヨン、塩化ビニル等の化学繊維;革などを挙げることができる。
【0046】
(防除対象)
本発明によるダニ類防除方法により防除され得るダニ類は、特に限定されない。一例を挙げると、ダニ類は、屋内に生息する屋内塵性ダニ類、例えば、コナヒョウヒダニ、ヤケヒョウヒダニ等のヒョウヒダニ類、コウノホシカダニ、ケナガコナダニ、ムギコナダニ等のコナダニ類、チリニクダニ、イエニクダニ、サヤアシニクダニ等のニクダニ類、マルニクダニ類、ミナミツメダニ、クワガタツメダニ、フトツメダニ、ホソツメダニ、アシナガツメダニ、イヌツメダニ等のツメダニ類、イエダニ、トリサシダニ、ワクモ、スズメサシダニ等のイエダニ類、イエササラダニ類、シラミダニ類、ヒゼンダニ類等が挙げられる。中でも、本発明によるダニ類防除方法は、ヒョウヒダニ類、コナダニ類、ツメダニ類、イエダニ類に対して有効である。
本発明によるダニ類防除方法は、これらのダニ類に対して実施されることにより、処理面からダニ類を徒に忌避させることなく、また、処理面へのダニ類の無作為な移動による侵入を抑制することなく、処理空間全体におけるダニ類の致死効果を高めることができる。
【0047】
[原液の噴射の態様]
(原液そのものの噴射)
本発明によるダニ類防除方法において、ダニ類防除成分及び有機溶剤を含む原液そのものを噴射することができる。このような噴射の態様として、例えば、ポンプスプレーなどのスプレー噴射等を挙げることができる。
【0048】
原液そのものを噴射する態様において、原液中のダニ類防除成分の濃度には特に制限がないが、被処理面に対するダニ類防除成分の処理量が調節しやすくなることから、0.01~99w/v%であることが好ましく、0.05~60w/v%であることがより好ましく、0.1~20w/v%であることがさらに好ましい。
【0049】
(エアゾール噴射)
本発明によるダニ類防除方法において、ダニ類防除成分及び有機溶剤を含む原液は、噴射剤をさらに含むエアゾール組成物として噴射することができる。このような噴射の態様として、例えば、エアゾール噴射等を挙げることができる。
本発明によるダニ類防除方法に採用され得るエアゾール噴射の類型としては、例えば、定量噴射型、連続噴射型等を挙げることができる。これらのうち、被処理面に対するダニ類防除成分の処理量が調節しやすくなることから、定量噴射型が好ましい。
【0050】
エアゾール組成物を噴射する態様において、エアゾール組成物中のダニ類防除成分の濃度には特に制限がないが、被処理面に対するダニ類防除成分の処理量が調節しやすくなることから、0.0001~70w/v%であることが好ましく、0.0025~40w/v%であることがより好ましく、0.01~10w/v%であることがさらに好ましい。
【0051】
<ダニ類防除用噴射製剤>
本発明は、ダニ類防除成分及び有機溶剤を含み、下方に向けて噴射するための噴射製剤であって、被処理面に対する前記ダニ類防除成分の処理量が2~10mg/m2となるように調整された、ダニ類防除用噴射製剤にも関する。本発明によるダニ類防除用噴射製剤は、本発明によるダニ類防除方法においても使用することができる。
【0052】
本発明によるダニ類防除用噴射製剤に含まれるダニ類防除成分及び有機溶剤、並びに、任意に含み得るその他の成分及び噴射剤の詳細と好ましい態様は、本発明によるダニ類防除方法について上述したとおりである。また、処理量及び噴射の態様の詳細と好ましい態様も、本発明によるダニ類防除方法について上述したとおりである。
以下、本発明によるダニ類防除用噴射製剤の実施態様として、定量噴射型エアゾール製品、連続噴射型エアゾール製品及びポンプスプレー製品について詳述する。なお、以下の定量噴射型エアゾール製品、連続噴射型エアゾール製品及びポンプスプレー製品は、本発明によるダニ類防除方法においても使用することができる。
【0053】
[定量噴射型エアゾール製品]
本実施態様の定量噴射型エアゾール製品は、上述した原液及び噴射剤を含むエアゾール組成物が充填されたエアゾール容器と、エアゾール容器に取り付けられた定量噴射用エアゾールバルブと、定量噴射用エアゾールバルブを介してエアゾール容器に取り付けられる噴射部材とを備える。
【0054】
(エアゾール容器)
エアゾール容器は、エアゾール組成物を加圧充填するための耐圧容器である。エアゾール容器は、内部にエアゾール組成物が充填される空間が形成された概略筒状の容器である。エアゾール容器の上部には開口が設けられている。開口は、後述する定量噴射用エアゾールバルブによって密封される。
【0055】
エアゾール容器の材質は特に限定されない。一例を挙げると、エアゾール容器は、耐圧性を有する各種金属製、樹脂製、ガラス製等であってもよい。
【0056】
(定量噴射用エアゾールバルブ)
定量噴射用エアゾールバルブは、エアゾール容器内に充填されたエアゾール組成物を取り出すための機構であり、エアゾール容器の開口を閉止する。また、本実施態様の定量噴射用エアゾールバルブは、エアゾール容器から取り出されたエアゾール組成物を一時的に貯留するための定量室が形成されている。定量室の容積は、1回の噴射によって噴射されるエアゾール組成物の容量に相当する。
【0057】
定量室の容積は特に限定されない。一例を挙げると、定量室の容積は、0.2mL以上であることが好ましい。また、定量室の容積は、3.0mL以下であることが好ましい。定量室の容積が上記範囲内であることにより、定量噴射型エアゾール製品は、噴射されたエアゾール組成物の平均粒子径の範囲が後述する範囲に調整されやすい。
【0058】
定量噴射用エアゾールバルブは、噴射部材が使用者に操作されることにより定量噴射用エアゾールバルブの定量室内と外部との連通及び遮断を切り替えるための開閉部材と、開閉部材が取り付けられるハウジングと、ハウジングをエアゾール容器の所定の位置に保持するためのマウント部材を備える。また、開閉部材は、噴射部材と連動して上下に摺動するステムを含む。ステムの摺動によりエアゾール組成物の連通(噴射状態)及び遮断(非噴射状態)が切り替えられる。定量噴射用エアゾールバルブには、エアゾール容器からエアゾール組成物を取り込むためのハウジング孔と、取り込まれたエアゾール組成物を噴射部材に送るためのステム孔とが形成されている。ハウジング孔は、ハウジングに形成されている。ステム孔は、ステムに形成されている。ハウジング孔からステム孔までの経路は、エアゾール組成物が通過する内部通路を構成する。
【0059】
ステムは、定量噴射用エアゾールバルブに取り付けられる部位であり、定量噴射用エアゾールバルブに取り込まれたエアゾール組成物を、噴射ボタンに送るための内部通路が形成されている。内部通路は、ステムラバーによって適宜開閉される。
【0060】
原液及び噴射剤が充填された状態において、25℃における定量噴射用エアゾールバルブの内圧は、0.2MPa以上であることが好ましく、0.25MPa以上であることがより好ましい。また、25℃における定量噴射用エアゾールバルブの内圧は、0.8MPa以下であることが好ましく、0.7MPa以下であることがより好ましい。定量噴射用エアゾールバルブの内圧が0.2MPa以上であることにより、被処理面に対するダニ類防除成分の処理量が調節しやすくなる。一方、定量噴射用エアゾールバルブの内圧が0.8MPa以下であることにより、噴射の勢いによってダニ類が吹き飛ぶことを抑制しやすくなる。なお、定量噴射用エアゾールバルブの内圧は、例えば25℃でWGA-710C-0計装用コンディショナ(株式会社共和電業製)に取り付けたPGM-E小型圧力センサ(株式会社共和電業製)を定量噴射用エアゾールバルブに接続することにより測定することができる。
【0061】
(噴射部材)
噴射部材は、エアゾール容器から取り込まれた原液を、噴射剤とともに噴射するための部材である。噴射部材には、エアゾール組成物を噴射するための噴口が形成されている。
【0062】
噴口の数、寸法及び形状は特に限定されない。噴口の数、寸法及び形状は、例えば、噴射されたエアゾール組成物の平均粒子径を後述する範囲に調整することができるように、適宜調整される。一例を挙げると、噴口の数は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。また、噴口の寸法(噴口径)は、0.2mm以上であることが好ましく、0.3mm以上であることがより好ましい。また、噴口径は、4.5mm以下であることが好ましく、3.0mm以下であることがより好ましい。噴口の形状(断面形状)は、円形、楕円形、角形、各種不定形であってもよい。
【0063】
また、噴口の総断面積(総開口面積)は特に限定されない。総断面積は、例えば、噴射されたエアゾール組成物の平均粒子径を後述する範囲に調整することができるように、適宜調整される。一例を挙げると、総断面積は、0.03mm2以上であることが好ましく、0.07mm2以上であることがより好ましい。また、総断面積は、16.0mm2以下であることが好ましく、7.5mm2以下であることがより好ましい。なお、本実施態様において、「総断面積」とは、噴口の断面積(開口面積)の合計面積である。すなわち、噴口が1個である場合、総断面積は、噴口の断面積そのものであり、噴口が2個以上である場合、総断面積は、すべての噴口の断面積の和である。
【0064】
本実施態様の定量噴射型エアゾール製品は、使用者によって噴射ボタンが操作されることにより、ステム機構及び定量噴射用エアゾールバルブが作動し、定量噴射用エアゾールバルブの定量室内と外部とが連通する。これにより、定量噴射用エアゾールバルブの定量室内のエアゾール組成物は、定量噴射用エアゾールバルブの定量室内と外部との圧力差に従って一定量が取り出され、噴射部材の噴口から噴射される。
【0065】
本実施態様の定量噴射型エアゾール製品は、1回あたりの噴射量が0.2mL以上となるように調整されることが好ましい。また、定量噴射型エアゾール製品は、1回あたりの噴射量が3.0mL以下となるように調整されることが好ましい。1回あたりの噴射量が上記範囲内となるように調整されることにより、本実施態様によるダニ類防除方法は、適用箇所において、処理面からダニ類を徒に忌避させることなく、また、処理面へのダニ類の無作為な移動による侵入を抑制することなく、処理空間全体におけるダニ類の致死効果を高めることができる。
【0066】
(エアゾール組成物の平均粒子径)
本実施態様の定量噴射型エアゾール製品から噴射されたエアゾール組成物の平均粒子径(D50)は、特に限定されない。一例を挙げると、平均粒子径(D50)は、15μm以上となるように噴射されることが好ましく、20μm以上となるように噴射されることがより好ましい。また、平均粒子径(D50)は、95μm以下となるように噴射されることが好ましく、90μm以下となるように噴射されることがより好ましく、70μm以下となるように噴射されることがさらに好ましい。平均粒子径(D50)が上記範囲内に調整されることにより、本発明によるダニ類防除方法は、適用箇所において、処理面からダニ類を徒に忌避させることなく、また、処理面へのダニ類の無作為な移動による侵入を抑制することなく、処理空間全体におけるダニ類の致死効果を高めることができる。
なお、本実施態様において、平均粒子径(D50)は、粒度分布測定装置により測定され、自動演算処理装置により解析されたD50(累積50%)を意味する。具体的には、平均粒子径(D50)は、25℃において、レーザー粒度分布測定装置(LDSA-1400A、東日コンピュータアプリケーションズ株式会社製)を用いて、オート・スタート平均(平均化回数3回、間隔0.60ms)とし、噴口から30cmの位置における平均粒子径を指す。
【0067】
(定量噴射型エアゾール製品の製造方法)
本実施態様の定量噴射型エアゾール製品の製造方法は特に限定されない。一例を挙げると、定量噴射型エアゾール製品は、エアゾール容器に原液を充填し、定量噴射用エアゾールバルブによってエアゾール容器の開口を閉止し、噴射剤を加圧充填することによって製造することができる。
【0068】
[連続噴射型エアゾール製品]
本実施態様の連続噴射型エアゾール製品は、上述した原液及び噴射剤を含むエアゾール組成物が充填されたエアゾール容器と、エアゾール容器に取り付けられた連続噴射用エアゾールバルブと、連続噴射用エアゾールバルブを介してエアゾール容器に取り付けられる噴射部材とを備える。
【0069】
(エアゾール容器)
エアゾール容器は、エアゾール組成物を加圧充填するための耐圧容器である。エアゾール容器は、内部にエアゾール組成物が充填される空間が形成された概略筒状の容器である。エアゾール容器の上部には開口が設けられている。開口は、後述する連続噴射用エアゾールバルブによって密封される。
【0070】
エアゾール容器の材質は特に限定されない。一例を挙げると、エアゾール容器は、耐圧性を有する各種金属製、樹脂製、ガラス製等であってもよい。
【0071】
(連続噴射用エアゾールバルブ)
連続噴射用エアゾールバルブは、エアゾール容器内に充填されたエアゾール組成物を取り出すための機構であり、エアゾール容器の開口を閉止する。
【0072】
連続噴射用エアゾールバルブは、噴射部材が使用者に操作されることによりエアゾール容器内と外部との連通及び遮断を切り替えるための開閉部材と、開閉部材が取り付けられるハウジングと、ハウジングをエアゾール容器の所定の位置に保持するためのマウント部材を備える。また、開閉部材は、噴射部材と連動して上下に摺動するステムを含む。ステムの摺動によりエアゾール組成物の連通(噴射状態)及び遮断(非噴射状態)が切り替えられる。連続噴射用エアゾールバルブには、エアゾール容器からエアゾール組成物を取り込むためのハウジング孔と、取り込まれたエアゾール組成物を噴射部材に送るためのステム孔とが形成されている。ハウジング孔は、ハウジングに形成されている。ステム孔は、ステムに形成されている。ハウジング孔からステム孔までの経路は、エアゾール組成物が通過する内部通路を構成する。
【0073】
ステムは、連続噴射用エアゾールバルブに取り付けられる部位であり、連続噴射用エアゾールバルブに取り込まれたエアゾール組成物を、噴射ボタンに送るための内部通路が形成されている。内部通路は、ステムラバーによって適宜開閉される。
【0074】
原液及び噴射剤が充填された状態において、25℃における連続噴射用エアゾールバルブの内圧は、0.2MPa以上であることが好ましく、0.25MPa以上であることがより好ましい。また、25℃における連続噴射用エアゾールバルブの内圧は、0.8MPa以下であることが好ましく、0.7MPa以下であることがより好ましい。連続噴射用エアゾールバルブの内圧が0.2MPa以上であることにより、被処理面に対するダニ類防除成分の処理量が調節しやすくなる。一方、連続噴射用エアゾールバルブの内圧が0.8MPa以下であることにより、噴射の勢いによってダニ類が吹き飛ぶことを抑制しやすくなる。なお、連続噴射用エアゾールバルブの内圧は、例えば25℃でWGA-710C計装用コンディショナ(株式会社共和電業製)に取り付けたPGM-E小型圧力センサ(株式会社共和電業製)を連続噴射用エアゾールバルブに接続することにより測定することができる。
【0075】
(噴射部材)
噴射部材は、エアゾール容器から取り込まれた原液を、噴射剤とともに噴射するための部材である。噴射部材には、エアゾール組成物を噴射するための噴口が形成されている。
【0076】
噴口の数、寸法及び形状は特に限定されない。噴口の数、寸法及び形状は、例えば、噴射されたエアゾール組成物の平均粒子径を後述する範囲に調整することができるように、適宜調整される。一例を挙げると、噴口の数は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。また、噴口の寸法(噴口径)は、0.2mm以上であることが好ましく、0.3mm以上であることがより好ましい。また、噴口径は、4.5mm以下であることが好ましく、3.0mm以下であることがより好ましい。噴口の形状(断面形状)は、円形、楕円形、角形、各種不定形であってもよい。
【0077】
また、噴口の総断面積(総開口面積)は特に限定されない。総断面積は、例えば、噴射されたエアゾール組成物の平均粒子径を後述する範囲に調整することができるように、適宜調整される。一例を挙げると、総断面積は、0.03mm2以上であることが好ましく、0.07mm2以上であることがより好ましい。また、総断面積は、16.0mm2以下であることが好ましく、7.5mm2以下であることがより好ましい。なお、本実施態様において、「総断面積」とは、噴口の断面積(開口面積)の合計面積である。すなわち、噴口が1個である場合、総断面積は、噴口の断面積そのものであり、噴口が2個以上である場合、総断面積は、すべての噴口の断面積の和である。
【0078】
本実施態様の連続噴射型エアゾール製品は、使用者によって噴射ボタンが操作されることにより、ステム機構及び連続噴射用エアゾールバルブが作動し、エアゾール容器内と外部とが連通する。これにより、エアゾール容器内のエアゾール組成物は、連続噴射用エアゾールバルブを通ってエアゾール容器の外部へ押し出され、噴射部材の噴口から噴射される。
【0079】
(エアゾール組成物の平均粒子径)
本実施態様の連続噴射型エアゾール製品から噴射されたエアゾール組成物の平均粒子径(D50)は、特に限定されない。一例を挙げると、平均粒子径(D50)は、15μm以上となるように噴射されることが好ましく、20μm以上となるように噴射されることがより好ましい。また、平均粒子径(D50)は、95μm以下となるように噴射されることが好ましく、90μm以下となるように噴射されることがより好ましく、70μm以下となるように噴射されることがさらに好ましい。平均粒子径(D50)が上記範囲内に調整されることにより、本発明によるダニ類防除方法は、適用箇所において、処理面からダニ類を徒に忌避させることなく、また、処理面へのダニ類の無作為な移動による侵入を抑制することなく、処理空間全体におけるダニ類の致死効果を高めることができる。
なお、本実施態様において、平均粒子径(D50)は、粒度分布測定装置により測定され、自動演算処理装置により解析されたD50(累積50%)を意味する。具体的には、平均粒子径(D50)は、25℃において、レーザー粒度分布測定装置(LDSA-1400A、東日コンピュータアプリケーションズ株式会社製)を用いて、キー・スタート平均(平均化回数1回)とし、噴口から30cmの位置における平均粒子径を指す。
【0080】
(連続噴射型エアゾール製品の製造方法)
本実施態様の連続噴射型エアゾール製品の製造方法は特に限定されない。一例を挙げると、連続噴射型エアゾール製品は、エアゾール容器に原液を充填し、連続噴射用エアゾールバルブによってエアゾール容器の開口を閉止し、噴射剤を加圧充填することによって製造することができる。
【0081】
[ポンプスプレー製品]
本実施態様のポンプスプレー製品は、上述した原液が充填されたポンプスプレー容器と、ポンプスプレー容器に取り付けられたトリガースプレー部材とを備える。
【0082】
(ポンプスプレー容器)
ポンプスプレー容器は、原液を充填するための容器である。ポンプスプレー容器は、内部に原液を充填することができれば形状は特に限定されない。ポンプスプレー容器の上部には開口が設けられている。開口は、後述するトリガースプレー部材によって密封される。
【0083】
ポンプスプレー容器の材質は特に限定されない。一例を挙げると、ポンプスプレー容器は、ポリプロピレン製、ポリエチレン製、ポリエチレンテレフタレート製等であってもよい。
【0084】
(トリガースプレー部材)
トリガースプレー部材は、ポンプスプレー容器内の原液を外部に噴射する噴射機構と、噴射機構を手の握力で駆動するためのトリガー機構とを備え、ポンプスプレー容器の底部付近まで延びたチューブが取り付けられている。本実施態様のポンプスプレー製品は、トリガー機構を操作することにより、噴射口から原液を噴射することができる。
【0085】
噴口の数、寸法及び形状は特に限定されない。噴口の数、寸法及び形状は、例えば、噴射された原液の平均粒子径を後述する範囲に調整することができるように、適宜調整される。一例を挙げると、噴口の数は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。また、噴口の寸法(噴口径)は、0.2mm以上であることが好ましく、0.3mm以上であることがより好ましい。また、噴口径は、4.5mm以下であることが好ましく、3.0mm以下であることがより好ましい。噴口の形状(断面形状)は、円形、楕円形、角形、各種不定形であってもよい。
【0086】
また、噴口の総断面積(総開口面積)は特に限定されない。総断面積は、例えば、噴射された原液の平均粒子径を後述する範囲に調整することができるように、適宜調整される。一例を挙げると、総断面積は、0.03mm2以上であることが好ましく、0.07mm2以上であることがより好ましい。また、総断面積は、16.0mm2以下であることが好ましく、7.5mm2以下であることがより好ましい。なお、本実施態様において、「総断面積」とは、噴口の断面積(開口面積)の合計面積である。すなわち、噴口が1個である場合、総断面積は、噴口の断面積そのものであり、噴口が2個以上である場合、総断面積は、すべての噴口の断面積の和である。
【0087】
本実施態様のポンプスプレー製品は、1回あたりの噴射量が0.2mL以上となるように調整されることが好ましい。また、ポンプスプレー製品は、1回あたりの噴射量が3.0mL以下となるように調整されることが好ましい。1回あたりの噴射量が上記範囲内となるように調整されることにより、本実施態様によるダニ類防除方法は、適用箇所において、処理面からダニ類を徒に忌避させることなく、また、処理面へのダニ類の無作為な移動による侵入を抑制することなく、処理空間全体におけるダニ類の致死効果を高めることができる。
【0088】
(ポンプスプレー原液の平均粒子径)
本実施態様のポンプスプレー製品から噴射された原液の平均粒子径(D50)は、特に限定されない。一例を挙げると、噴射された原液の平均粒子径(D50)は、80μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましい。また、噴射された原液の平均粒子径(D50)は、250μm以下が好ましく、230μm以下がより好ましい。平均粒子径(D50)が上記範囲内に調整されることにより、本発明によるダニ類防除方法は、適用箇所において、処理面からダニ類を徒に忌避させることなく、また、処理面へのダニ類の無作為な移動による侵入を抑制することなく、処理空間全体におけるダニ類の致死効果を高めることができる。
なお、本実施態様において、平均粒子径(D50)は、粒度分布測定装置により測定され、自動演算処理装置により解析されたD50(累積50%)を意味する。具体的には、平均粒子径(D50)は、25℃において、レーザー粒度分布測定装置(LDSA-1400A、東日コンピュータアプリケーションズ株式会社製)を用いて、オート・スタート平均(平均化回数3回、間隔0.60ms)とし、噴口から30cmの位置における平均粒子径を指す。
【0089】
(ポンプスプレー製品の製造方法)
本実施態様のポンプスプレー製品の製造方法は特に限定されない。一例を挙げると、ポンプスプレー製品は、ポンプスプレー容器に原液を充填し、トリガースプレー部材によってポンプスプレー容器の開口を閉止し、製造することができる。
【実施例0090】
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0091】
実施例及び比較例で用いる定量噴射型エアゾール製品、連続噴射型エアゾール製品及びポンプスプレー製品を、下記のとおり製造した。
【0092】
[原液]
ダニ類防除成分(有効成分)及び有機溶剤を含む原液を、表1に記載の処方にてそれぞれ調製した。
【0093】
【0094】
[噴射剤]
噴射剤として、ジメチルエーテル(DME)及び液化石油ガス(LPG)を用意した。
【0095】
<実施例1>
上で得られたフェノトリンを含む原液(原液1)30mLを容量100mL(満注量:142mL)のエアゾール容器に充填し、定量噴射用エアゾールバルブ(定量室の容量:1mL)を取り付けた後、原液と噴射剤との配合割合(体積比:v/v%)が原液/噴射剤=40/60となるように噴射剤(DME)45mLを加圧充填し、噴射部材(噴口径φ1mm、噴口3個)を取り付け、定量噴射型エアゾール製品Aを製造した。
得られた定量噴射型エアゾール製品Aを用いて、下記の手順により忌避効果、致死効果及び伝播による致死効果の評価を行った。
【0096】
[忌避効果及び致死効果の評価]
(ダニ類防除成分で処理された黒紙の作製)
5cm角の黒紙に25mgの新鮮培地(餌)を配置し、ピートチャンバー(底面:1.8m×1.8m、高さ:1.8m)中央に1m×1mの区画を作製し、1m×1mの区画内中央部に、新鮮培地(餌)を配置した黒紙を置いた。
1m×1mの区画内中央部に置いた黒紙に対して表2に記載の処理量となるように、定量噴射型エアゾール製品Aを用いて、ピートチャンバーの底面隅のうち1箇所より高さ75cmの位置から水平方向30°下向きの角度でエアゾール組成物を4回(計4mL)噴射した。エアゾール組成物の噴射後、黒紙を25℃の条件にて30分間静置した。以下に示す実験装置には、1m×1mの区画内中央部に置いた黒紙を用いた。
なお、この条件において噴射されたエアゾール組成物の平均粒子径(測定方法は以下を参照)は44μm、粒子濃度比率(測定方法は以下を参照)は1.3であった。また、この処理方法によれば、1m×1mの区画内中央部に置いた黒紙に対する、ダニ類防除成分であるフェノトリンの処理量は4mg/m2であった。
【0097】
(実験装置の作製)
図1は、忌避効果及び致死効果の確認方法を説明するための、実験装置の模式図である。
直径10cmのシャーレ1のふちに対して、ダニ逃走防止用のワセリンを塗布した。
図1に示されるように、シャーレ1の中央部分に、上記方法により作製された黒紙2を配置した。
ここで、1m×1mの区画は、被処理面に対してダニ類防除成分が噴射された部分、すなわち処理面、に相当する。よって、1m×1mの区画内中央部に置いて作製された黒紙2は、処理面の中の一部に相当する。
【0098】
(忌避効果及び致死効果の測定方法)
黒紙の4辺の各中央からシャーレ外縁部に1cm離れた地点を供試虫の供試箇所3(計4箇所)として、培地から分離したヤケヒョウヒダニを1箇所当たり0.5mgずつ、計2mg供試した。25℃、75%RHの条件にて7日間静置し、処理区(黒紙2の範囲)及び無処理区(シャーレ1の底面のうち黒紙2以外の範囲)の供試虫を計数し、以下の算出式により、忌避率(%)及び補正致死率(%)を算出した。
試験は2回行った。忌避率(%)及び補正致死率(%)の平均値を表2に示す。
【0099】
忌避率(%)
=(供試頭数-処理区への侵入頭数)/供試頭数×100
補正致死率(%)
=(処理区の致死率-無処理区の致死率)/(1-無処理区の致死率)×100
【0100】
[ダニ類防除成分の伝播による致死効果の評価]
(ダニ類防除成分で処理された供試虫の作製)
直径4cmのガラスシャーレに、培地から分離したヤケヒョウヒダニを1000mg供試し、ピートチャンバー(底面:1.8m×1.8m、高さ:1.8m)中央に1m×1mの区画を作製し、1m×1mの区画内中央部に設置した。
1m×1mの区画内中央部に置いたシャーレに対して表2に記載の処理量となるように、定量噴射型エアゾール製品Aを用いて、ピートチャンバーの底面隅のうち1箇所より高さ75cmの位置から水平方向30°下向きの角度でエアゾール組成物を4回(計4mL)噴射した。エアゾール組成物の噴射後、シャーレを25℃の条件にて30分間静置した。
別に用意した直径4cmのガラスシャーレに、着色された供試虫として、予め着色剤によって着色されたヤケヒョウヒダニ2mgを準備した。このシャーレに、定量噴射型エアゾール製品Aを処理したヤケヒョウヒダニ2mgを供試した。25℃、75%RHの条件にて7日間静置し、着色されたダニ類を計数し、以下の算出式により、伝播致死率(%)を算出した。試験は2回行った。伝播致死率(%)の平均値を表2に示す。
【0101】
伝播致死率(%)
=着色された供試虫の致死頭数/着色された供試虫の供試頭数×100
【0102】
(エアゾール組成物の平均粒子径の測定方法)
25℃において、レーザー粒度分布測定装置(LDSA-1400A、東日コンピュータアプリケーションズ株式会社製)を用いて、オート・スタート平均(平均化回数3回、間隔0.60ms)として、噴口から30cmの位置における平均粒子径(D50)を測定した。平均粒子径(D50)を表2に示す。
【0103】
(エアゾール組成物の粒子濃度比率の測定方法)
25℃において、レーザー粒度分布測定装置(LDSA-1400A、東日コンピュータアプリケーションズ株式会社製)を用いて、オート・スタート平均(平均化回数3回、間隔0.60ms)とし、噴口から30cmの位置における粒子濃度を測定した。粒子濃度は3回測定したときの平均値を用いた。
【0104】
粒子濃度は噴射時の角度により変動するため、水平方向に噴射したときの粒子濃度、及び水平方向に対して30°上方又は下方に向けて噴射したときの粒子濃度から、下式により粒子濃度比率を算出した。粒子濃度比率を表2に示す。
【0105】
粒子濃度比率
=上方又は下方に向けて噴射したときの粒子濃度/水平方向に噴射したときの粒子濃度
【0106】
【0107】
<実施例2>
処理量が表2のとおりとなるようにした以外は実施例1と同様の方法により、忌避効果、致死効果及び伝播による致死効果の評価を行った。結果を表2に示す。なお、処理量は、定量噴射型エアゾール製品からのエアゾール組成物の噴射回数により調節した。
【0108】
<実施例3>
ダニ類防除成分としてピレトリンを含む原液(原液2)を用いた以外は実施例1と同様の方法により、忌避効果及び致死効果の評価を行った。結果を表2に示す。
【0109】
<実施例4>
ダニ類防除成分としてブロフラニリドを含む原液(原液3)を用いた以外は実施例1と同様の方法により、忌避効果、致死効果及び伝播による致死効果の評価を行った。結果を表2に示す。
【0110】
<実施例5>
処理量が表2のとおりとなるようにした以外は実施例4と同様の方法により、忌避効果、致死効果及び伝播による致死効果の評価を行った。結果を表2に示す。なお、処理量は、定量噴射型エアゾール製品からのエアゾール組成物の噴射回数により調節した。
【0111】
<実施例6>
上で得られたフェノトリンを含む原液(原液4)20mLを容量60mL(満注量:74mL)のエアゾール容器に充填し、定量噴射用エアゾールバルブ(定量室の容量:0.2mL)を取り付けた後、原液と噴射剤との配合割合(体積比:v/v%)が原液/噴射剤=40/60となるように噴射剤(DME)30mLを加圧充填し、噴射部材(噴口径φ1mm、噴口1個)を取り付け、定量噴射型エアゾール製品Bを製造した。
得られた定量噴射型エアゾール製品Bを用いたこと以外は上記と同様の手順により、忌避効果及び致死効果の評価を行った。結果を表3に示す。なお、処理量は、定量噴射型エアゾール製品からのエアゾール組成物の噴射回数により調節した。
【0112】
【0113】
<実施例7>
原液と噴射剤との配合割合(体積比:v/v%)が原液/噴射剤=10/90となるように調整した以外は実施例1と同様の方法により、忌避効果及び致死効果の評価を行った。結果を表3に示す。なお、処理量は、定量噴射型エアゾール製品からのエアゾール組成物の噴射回数により調節した。
【0114】
<実施例8>
有機溶剤として1号灯油(商品名:ネオチオゾール、三光化学工業株式会社製)を含む原液(原液5)を用い、噴射剤としてLPG4.0(0.39MPa)を用いた以外は実施例1と同様の方法により、忌避効果及び致死効果の評価を行った。結果を表3に示す。
【0115】
<実施例9>
ダニ類防除成分としてエトフェンプロックスを含む原液(原液6)を用いた以外は実施例1と同様の方法により、忌避効果、致死効果及び伝播による致死効果の評価を行った。結果を表4に示す。
【0116】
【0117】
<実施例10>
ダニ類防除成分としてビフェントリンを含む原液(原液7)を用いた以外は実施例1と同様の方法により、忌避効果、致死効果及び伝播による致死効果の評価を行った。結果を表4に示す。
【0118】
<実施例11>
ダニ類防除成分としてフェンプロパトリンを含む原液(原液8)を用いた以外は実施例1と同様の方法により、忌避効果、致死効果及び伝播による致死効果の評価を行った。結果を表4に示す。
【0119】
<実施例12>
ダニ類防除成分としてフェノトリン及びビフェントリンを含む原液(原液9)を用い、噴射剤としてLPG4.0(0.39MPa)及びDMEを50:50(体積比:v/v%)の混合比率で用いた以外は実施例1と同様の方法により、忌避効果及び致死効果の評価を行った。結果を表4に示す。
【0120】
<実施例13>
ダニ類防除成分としてフェノトリン及びブロフラニリドを含む原液(原液10)を用いた以外は実施例1と同様の方法により、忌避効果及び致死効果の評価を行った。結果を表4に示す。
【0121】
<比較例1>
処理量が表5のとおりとなるようにした以外は実施例1と同様の方法により、忌避効果及び致死効果の評価を行った。結果を表5に示す。なお、処理量は、定量噴射型エアゾール製品からのエアゾール組成物の噴射回数により調節した。
【0122】
【0123】
<比較例2>
処理量が表5のとおりとなるようにエアゾール組成物を上方に噴射した以外は比較例1と同様の方法により、忌避効果、致死効果及び伝播による致死効果の評価を行った。結果を表5に示す。
なお、上方への噴射は、ピートチャンバーの底面隅より高さ75cmの位置から水平方向30°上向きの角度でエアゾール組成物を4回(計4mL)噴射することにより行った。
【0124】
<比較例3>
処理量が表5のとおりとなるようにした以外は実施例1と同様の方法により、忌避効果、致死効果及び伝播による致死効果の評価を行った。結果を表5に示す。なお、処理量は、定量噴射型エアゾール製品からのエアゾール組成物の噴射回数により調節した。
【0125】
[原液]
ダニ類防除成分(有効成分)及び有機溶剤を含む原液を、表6に記載の処方にて調製した。
【0126】
【0127】
[噴射剤]
噴射剤として、ジメチルエーテル(DME)を用意した。
【0128】
<実施例14>
上で得られたフェノトリンを含む原液(原液11)40mLを容量220mL(満注量:288mL)のエアゾール容器に充填し、連続噴射用エアゾールバルブ(型番:C(F)6285(0.4)LL×132)を取り付けた後、原液と噴射剤との配合割合(体積比:v/v%)が原液/噴射剤=40/60となるように噴射剤(DME)60mLを加圧充填し、噴射部材(噴口径φ3mm、噴口1個)を取り付け、連続噴射型エアゾール製品Cを製造した。
得られた連続噴射型エアゾール製品Cを用い、エアゾール組成物の吐出量が4mLとなるように、高さ75cmの位置から水平方向30°下向きの角度で1m×1mの区画内に満遍なく処理したこと、並びに、エアゾール組成物の平均粒子径及び粒子濃度比率の測定を下記のとおり行ったこと以外は上記と同様の手順により、忌避率、補正致死率及び伝播致死率を求めた。結果を表7に示す。
【0129】
(エアゾール組成物の平均粒子径の測定方法)
25℃において、レーザー粒度分布測定装置(LDSA-1400A、東日コンピュータアプリケーションズ株式会社製)を用いて、キー・スタート平均(平均化回数1回)として、噴口から30cmの距離における平均粒子径(D50)を測定した。平均粒子径(D50)を表7に示す。
【0130】
(エアゾール組成物の粒子濃度比率の測定方法)
25℃において、レーザー粒度分布測定装置(LDSA-1400A、東日コンピュータアプリケーションズ株式会社製)を用いて、キー・スタート平均(平均化回数1回)とし、噴口から30cmの位置における粒子濃度を測定した。粒子濃度は3回測定したときの平均値を用いた。
【0131】
粒子濃度は噴射時の角度により変動するため、水平方向に噴射したときの粒子濃度、及び水平方向に対して30°上方又は下方に向けて噴射したときの粒子濃度から、下式により粒子濃度比率を算出した。粒子濃度比率を表7に示す。
【0132】
粒子濃度比率
=上方又は下方に向けて噴射したときの粒子濃度/水平方向に噴射したときの粒子濃度
【0133】
【0134】
[原液]
ダニ類防除成分(有効成分)及び有機溶剤を含む原液を、表8に記載の処方にて調製した。
【0135】
【0136】
<実施例15>
上で得られたフェノトリンを含む原液(原液12)100mLを容量350mLのポンプスプレー容器に充填し、噴射部材(吐出量:1mL、噴口径φ3mm、噴口1個)を取り付け、ポンプスプレー製品Dを製造した。
得られたポンプスプレー製品Dを用い、原液の吐出量が4mLとなるように、高さ75cmの位置から水平方向30°下向きの角度で1m×1mの区画内に4回処理したこと以外は実施例1と同様の手順により、忌避率、補正致死率及び伝播致死率を求めた。結果を表9に示す。
【0137】
【0138】
表2~4、7及び9に示されるように、実施例1~15のダニ類防除方法によれば、処理面からダニ類を徒に忌避させることなく、また、処理面へのダニ類の無作為な移動による侵入を抑制することなく、処理空間全体におけるダニ類の致死効果を高められることが分かった。
これに対し、表5に示されるように、比較例1のダニ類防除方法では、処理面へのダニ類の侵入は抑制されないものの、ダニ類防除成分の処理量が十分でなく、ダニ類防除成分と接触したダニ類に対しても致死効果が低いことが分かった。また、比較例2のダニ類防除方法では、処理量は所定の範囲となるものの、ダニ類の致死効果が低いことが分かった。比較例2においてこのような結果となる理由は明らかではないが、上方に向けて噴射したことにより噴霧粒子が空中を移動する時間が長くなり、その結果として有機溶剤の揮散が促進され、噴霧粒子の被処理面への付着性や浸透性が低下したことでダニ類の致死効果が低くなったと考えられる。さらに、比較例3のダニ類防除方法では、ダニ類防除成分の処理量が過大であるため、ダニ類が処理面を忌避してしまうことによりダニ類防除成分とダニ類とが接触する機会が大幅に低下し、その結果としてダニ類の致死効果が低くなることが分かった。
本発明は、簡便な処理により、処理面からダニ類を徒に忌避させることなく、また、処理面へのダニ類の無作為な移動による侵入を抑制することなく、処理空間全体におけるダニ類の致死効果を高められるため、ダニ類の防除方法として利用可能である。