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特開2024-180338インク組成物、インクセット、および印刷物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180338
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】インク組成物、インクセット、および印刷物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/322 20140101AFI20241219BHJP
   C09D 11/101 20140101ALI20241219BHJP
   C09D 11/54 20140101ALI20241219BHJP
   C09D 11/38 20140101ALI20241219BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241219BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C09D11/322
C09D11/101
C09D11/54
C09D11/38
B41J2/01 501
B41J2/01 123
B41J2/01 129
B41M5/00 120
B41M5/00 132
B41M5/00 134
B41M5/00 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024095247
(22)【出願日】2024-06-12
(31)【優先権主張番号】P 2023098255
(32)【優先日】2023-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306029349
【氏名又は名称】ゼネラル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田伏 廣輝
(72)【発明者】
【氏名】村上 将和
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EA14
2C056EE17
2C056FC02
2C056HA42
2C056HA44
2H186AB03
2H186AB04
2H186AB09
2H186AB11
2H186AB37
2H186AB43
2H186AB51
2H186AB54
2H186AB56
2H186AB58
2H186BA08
2H186DA08
2H186FA08
2H186FA14
2H186FB04
2H186FB11
2H186FB34
2H186FB36
2H186FB38
2H186FB44
2H186FB46
2H186FB55
2H186FB56
4J039AB02
4J039AD21
4J039AE01
4J039BA06
4J039BA32
4J039BC13
4J039BC56
4J039BE12
4J039BE22
4J039BE27
4J039EA33
4J039EA46
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】保存安定性およびインクジェット吐出性を向上することができる、紫外線硬化型インクジェットインク用のインク組成物を提供する。
【解決手段】基材2上に、インクセットからプライマ受容体およびインク組成物をこの順に印刷することによってプライマ受容層6およびメタリック層7を含むパターン画像を形成し、その後、紫外線照射によってパターン画像の硬化処理を行う。次に、硬化後のパターン画像上に、トップコートインクまたはカラーインクを砂吹きすることにより砂吹き層9を形成する。次に、砂吹きに使用したトップコートインクまたはカラーインクをパターン画像上に印刷することによりトップ層8を形成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面処理されたアルミニウム顔料と、
少なくとも(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチルを含む重合性成分と
ケトン系樹脂とを含有する、紫外線硬化型インクジェットインク用のインク組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチルは、前記インク組成物に含有される前記重合性成分の総質量に対して85質量%以上の割合で含有されている、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項3】
前記ケトン系樹脂の水酸基価が、100mgKOH/g以上である、請求項1または2に記載のインク組成物。
【請求項4】
請求項1に記載のインク組成物と、
セルロースアセテート系樹脂およびグリコールエーテル系溶剤を含有する溶剤系プライマ受容体インクとを含む、紫外線硬化型インクジェットインク用のインクセット。
【請求項5】
前記セルロースアセテート系樹脂が、セルロースアセテートプロピオネートである、請求項4に記載のインクセット。
【請求項6】
請求項1に記載のインク組成物と、
プライマ用重合性成分と、ケトン系樹脂とを含有する紫外線硬化型プライマ受容体インクとを含む、紫外線硬化型インクジェットインク用のインクセット。
【請求項7】
前記インク組成物および前記紫外線硬化型プライマ受容体インクは、フッ素系界面活性剤をさらに含有している、請求項6に記載のインクセット。
【請求項8】
前記インク組成物および前記紫外線硬化型プライマ受容体インクは、アシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤をさらに含有し、
前記プライマ重合性成分の含有量(M2)に対する前記紫外線硬化型プライマ受容体インク中の前記アシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤の含有量(P2)の第2質量割合(P2/M2)は、前記重合性成分の含有量(M1)に対する前記インク組成物中の前記アシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤の含有量(P1)の第1質量割合(P1/M1)よりも少ない、請求項7に記載のインクセット。
【請求項9】
前記第2質量割合(P2/M2)は、前記第1質量割合(P1/M1)の30%以上70%以下である、請求項8に記載のインクセット。
【請求項10】
請求項4~9のいずれか一項に記載のインクセットを基材に印刷してなる印刷物の製造方法であって、
前記基材上に、前記インクセットから前記プライマ受容体インクおよび前記インク組成物をこの順に印刷することによってパターン画像を形成する第1工程を含む、印刷物の製造方法。
【請求項11】
前記第1工程後、紫外線照射によって前記パターン画像の硬化処理を行う第2工程と、
硬化後の前記パターン画像上に、トップコートインクまたはカラーインクを砂吹きする第3工程と、
前記第3工程後、前記砂吹きに使用した前記トップコートインクまたは前記カラーインクを前記パターン画像上に印刷する第4工程とをさらに含む、請求項10に記載の印刷物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク組成物、当該インク組成物を含むインクセット、および当該インクセットを基材に印刷してなる印刷物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、アルミニウム顔料分散液、アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル、フェノキシエチルアクリレート、光重合開始剤、スリップ剤(レベリング剤)、および重合禁止剤を含有する紫外線硬化型インクジェット用インク組成物を開示している。特許文献1では、インクジェットプリンタから、当該インク組成物をPETフィルムに直接印刷してパターン画像を記録し、その後に硬化処理している。特許文献1は、さらに、インク組成物に含有可能な分散剤として、ポリオキシアルキレンポリアルキレンポリアミン、ビニル系ポリマーおよびコポリマー、アクリル系ポリマーおよびコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、アミノ系ポリマー、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマー、含フッ素ポリマー、およびエポキシ樹脂のうち1種以上を主成分とするものを開示している。
【0003】
特許文献2は、a)同じ色及び色濃度を持つが異なる組成を持つ二つ以上のカラーインクジェットインクをインクジェットプリンタに対して準備する;b)前記二つ以上のカラーインクジェットインクを制御された量で混合する;そしてc)前記二つ以上のカラーインクジェットインクの混合物をインクジェットプリンタでインク受容体上に印刷する、インクジェット印刷法を開示している。特許文献2は、さらに、インク受容体の一例として、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルを開示している。
【0004】
特許文献3は、UV硬化型のプライマインク(顔料を含まないクリア)およびUV硬化型のカラーインクを含むインクセットを開示している。
【0005】
特許文献3のプライマインクの一例は、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレートを20質量部、エポキシメタクリレートオリゴマーを20質量部、イソボルニルアクリレートを44.8質量部、およびベンジルアクリレートを10質量部、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイド(重合開始剤)を5質量部、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(重合禁止剤)を0.1質量部、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(有機溶剤)を0.1質量部の割合で含んでいる。
【0006】
特許文献3のカラーインクの一例は、顔料を2質量部、顔料分散剤を1質量部、N-ビニルカプロラクタムを15質量部、フェノキシエチルアクリレートを48.7質量部、イソボルニルアクリレートを5質量部、ジプロピレングリコールジアクリレートを10質量部、エトキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレートを10質量、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイド(重合開始剤)を5質量部、2-イソプロピルチオキサントン(重合開始剤)を3質量部、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(重合禁止剤)を0.1質量部、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(有機溶剤)を0.1質量部、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(表面張力調整剤)を0.1質量部の割合で含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012-077221号公報
【特許文献2】特表2010-521330号公報
【特許文献3】特開2021-195467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載のインク組成物では、アルミニウム顔料分散液の分散性が悪く、粘度上昇に起因して吐出性の劣化が存在する。そのため、均一な分散が維持されないという課題がある。また、インク組成物を被印刷体に直接印刷しているので、被印刷体の材質の種類によってインク組成物の吸収性が異なり、インクの定着性が大きく影響を受ける。また、アルミニウム鱗片を含有するメタリックインクの印刷後、トップコートやカラーインク等をさらに重ねて印刷した際に、アルミニウム鱗片が印刷層の表面から欠落して光沢がなくなってしまう課題もある。
【0009】
アルミニウム鱗片を含有するメタリックインクの印刷に特許文献2に記載の印刷法を適用した場合、インク受容体への適切なインクの浸透が、アルミニウム鱗片のリーフィングによる皮膜表面への配向を促進すると考えられる。しかしながら、特許文献1および2のいずれにも、特許文献1に記載の各種金属が蒸着されたプラスチック製のフィルム等の非吸収性被記録媒体に、特許文献2に記載のインク受容体を組み合わせる動機付けや合理的な理由は一切教示されていない。さらに、特許文献2は、インク受容体の一例としてポリエステル、配向ポリスチレン(OPS)、配向ナイロン(ONy)、ポリプロピレン(PP)、配向ポリプロピレン(OPP)、ポリ塩化ビニル(PVC)等の多数の物質を列挙しているが、これらのうちポリエステル、特にセルロースアセテートが特に好ましいといった理由は一切なく、ましてや、アルミニウム鱗片を含有するメタリックインクとセルロースアセテートとの組み合わせに関する言及は全くされていない。
【0010】
そこで、本発明の目的は、保存安定性およびインクジェット吐出性を向上することができる、紫外線硬化型インクジェットインク用のインク組成物を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、光沢性および定着性に優れるパターン画像を提供できるインクセットおよび当該インクセットを基材に印刷してなる印刷物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るインク組成物は、表面処理されたアルミニウム顔料と、少なくとも(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチルを含む重合性成分と、ケトン系樹脂とを含有する、紫外線硬化型インクジェットインク用のインク組成物である。
【0013】
本発明に係るインク組成物では、前記(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチルは、前記インク組成物に含有される前記重合性成分の総質量に対して85質量%以上の割合で含有されていることが好ましい。
【0014】
本発明に係るインク組成物では、前記ケトン系樹脂の水酸基価が、100mgKOH/g以上であることが好ましい。
【0015】
本発明の一実施形態に係るインクセットは、前記インク組成物と、セルロースアセテート系樹脂およびグリコールエーテル系溶剤を含有する溶剤系プライマ受容体インクとを含む、紫外線硬化型インクジェットインク用のインクセットである。
【0016】
本発明の一実施形態に係るインクセットでは、前記セルロースアセテート系樹脂が、セルロースアセテートプロピオネートであることが好ましい。
【0017】
本発明の他の実施形態に係るインクセットは、前記インク組成物と、プライマ用重合性成分と、ケトン系樹脂とを含有する紫外線硬化型プライマ受容体インクとを含む、紫外線硬化型インクジェットインク用のインクセットである。
【0018】
本発明の他の実施形態に係るインクセットでは、前記インク組成物および前記紫外線硬化型プライマ受容体インクは、フッ素系界面活性剤をさらに含有していることが好ましい。
【0019】
本発明の他の実施形態に係るインクセットでは、前記インク組成物および前記紫外線硬化型プライマ受容体インクは、アシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤をさらに含有し、前記プライマ重合性成分の含有量(M2)に対する前記紫外線硬化型プライマ受容体インク中の前記アシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤の含有量(P2)の第2質量割合(P2/M2)は、前記重合性成分の含有量(M1)に対する前記インク組成物中の前記アシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤(P1)の含有量の第1質量割合(P1/M1)よりも少ないことが好ましい。
【0020】
本発明の他の実施形態に係るインクセットでは、前記第2質量割合(P2/M2)は、前記第1質量割合(P1/M1)の30%以上70%以下であることが好ましい。
【0021】
本発明に係る印刷物の製造方法は、前記インクセットを基材に印刷してなる印刷物の製造方法であって、前記基材上に、前記インクセットから前記プライマ受容体インクおよび前記インク組成物をこの順に印刷することによってパターン画像を形成する第1工程を含む、印刷物の製造方法である。
【0022】
本発明に係る印刷物の製造方法は、前記第1工程後、紫外線照射によって前記パターン画像の硬化処理を行う第2工程と、硬化後の前記パターン画像上に、トップコートインクまたはカラーインクを砂吹きする第3工程と、前記第3工程後、前記砂吹きに使用した前記トップコートインクまたは前記カラーインクを前記パターン画像上に印刷する第4工程とをさらに含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、保存安定性およびインクジェット吐出性を向上することができる、紫外線硬化型インクジェットインク用のインク組成物を提供することができる。
【0024】
また、本発明によれば、光沢性および定着性に優れるパターン画像を提供できるインクセットおよび当該インクセットを基材に印刷してなる印刷物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る印刷物の製造方法により製造される印刷物の模式図である。
図2図2は、前記印刷物の製造方法の一部を示す模式図である。
図3図3は、図2の工程の後の工程を示す図である。
図4図4は、図3の工程の後の工程を示す図である。
図5図5は、図4の工程の後の工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[インク組成物]
本発明のインク組成物は、紫外線硬化型インクジェットインク用のインク組成物である。紫外線硬化型インク組成物は、例えば、紫外線照射によって重合反応を起こして硬化するモノマー、オリゴマー等の重合性化合物(以下、これらを総称して単に「モノマー」と略する場合がある。)を含むUVインクである。特に、本発明のインク組成物は、アルミニウム顔料分散液を原料とするアルミニウム(Al)メタリックUV硬化型インクジェットインク用のインク組成物である。以下では、本発明のインク組成物を、「メタリックインク」と称する場合がある。
【0027】
本発明のインク組成物は、(1)アルミニウム顔料分散液と、(2)添加剤とを含有している。
(1)アルミニウム顔料分散液
アルミニウム顔料分散液は、表面処理されたアルミニウム顔料(A)と、モノマー(B)と、ケトン系樹脂(C)とを含有する。
(A)表面処理されたアルミニウム顔料
表面処理されたアルミニウム顔料は、例えば、カップリング剤処理アルミニウム顔料、樹脂被覆アルミニウム顔料、無機皮膜処理アルミニウム顔料、シリカ処理アルミニウム顔料等、カップリング剤等の表面処理剤や、溶剤や樹脂等のバインダーで処理された表面酸化を抑制されたアルミニウム粒子である。なお、以下では単に「アルミニウム顔料」と記述する場合があるが、当該「アルミニウム顔料」は「表面処理されたアルミニウム顔料」である。
【0028】
本発明で使用されるアルミニウム顔料として好ましくは、カップリング剤処理アルミニウム顔料、シリカ処理アルミニウム顔料である。分散安定化の観点から、さらに好ましくは、シランカップリング剤、リン酸エステルによるシリカ被覆アルミニウム顔料である。より詳細には、特開2012-77221号公報の一般式(1)で示されるシラン化合物が化学的に結合した構造を有する被膜を備えたアルミニウム顔料であってもよい。
【0029】
アルミニウム顔料の形態としては、例えば、平板状もしくは鱗片状であってもよい。したがって、アルミニウム顔料は、平坦面を有する薄い厚さのアルミニウム粒子により形成されている。ここで、「平板状もしくは鱗片状のアルミニウム粒子」とは、アルミニウム粉子が略平坦な面を有し、かつ厚さが略一定であるアルミニウム粒子を意味している。アルミニウム粒子のサイズは、例えば、長さおよび幅が0.5μm以上3μm以下程度であり、厚さが5nm以上30nm以下程度である。アルミニウム粒子のサイズは、例えば、粒子増分析装置により測定することができる。使用可能な粒子像分析装置としては、例えば、フロー式粒子像分析装置「FPIA-2100」、「FPIA-3000」、「FPIA-3000S」(以上、シスメックス株式会社製)等が挙げられる。
【0030】
平板状もしくは鱗片状のアルミニウム顔料は、種々の方法により製造できるが、好ましくは、成膜法により製造される。
【0031】
より詳細には、例えば、まず、シート状の基材に剥離層を形成する。シート状の基材としては、特に制限されないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ナイロン66、ナイロン6等のポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、トリアセテートフィルム、ポリイミドフィルム等の離型性フィルムが挙げられる。これらのうち好ましくは、ポリエチレンテレフタレートまたはその共重合体が挙げられる。
【0032】
剥離層は、アルミニウム層のアンダーコート層であり、シート状の基材の表面との剥離性を向上させるための層である。剥離層に用いられる樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、セルロース誘導体、アクリル酸重合体または変性ナイロン樹脂等が挙げられる。剥離層は、上記例示した樹脂の1種または2種以上の混合物の溶液をシート状の基材に塗布し、乾燥させることによって形成することができる。塗布後は、粘度調整剤等の添加剤を添加してもよい。
【0033】
剥離層は、公知のグラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、エクストルージョン塗布、ディップ塗布、スピンコート法、バーコート法等の方法により塗布することができる。塗布および乾燥後、カレンダー処理によって表面の平滑化を行ってもよい。
【0034】
次に、剥離層にアルミニウムまたはアルミニウム合金層を積層する。積層方法としては、例えば、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等が挙げられる。
【0035】
次に、有機溶剤中で、シート状の基材と剥離層との界面で剥離し、アルミニウムまたはアルミニウム合金層を破砕または微細化処理することによって、アルミニウム粒子が分散した分散液が得られる。そして、得られた分散液を濾過して粗大粒子を除去することによって粒径調整を行う。これにより、アルミニウム粒子が分散した分散液を得ることができる。
【0036】
使用される有機溶剤としては、例えば、極性有機溶剤であることが好ましい。極性有機溶剤としては、例えば、アルコール類(メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、フッ化アルコール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等)、カルボン酸エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等)、エーテル類(ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチレングリコールジエチルエーテル等)等が挙げられる。これらは単独使用または2種以上併用することができる。
【0037】
次に、アルミニウム粒子分散液中のアルミニウム粒子に対して、上記したシリカ処理等の表面処理を施す。例えば、アルミニウム粒子の被膜を構成する化合物を含有する処理剤を添加して攪拌する。これにより、アルミニウム粒子の表面に被膜を形成することができる。特開2012-77221号公報の一般式(1)で示されるシラン化合物が化学的に結合した構造を有する被膜を備えたアルミニウム顔料を形成する場合、特開2012-77221号公報の段落[0067]~段落[0078]に記載の方法に倣って被膜を形成することができる。
【0038】
以上の工程を経ることによって、表面処理されたアルミニウム顔料が得られる。表面処理の後、アルミニウム顔料分散液中の有機溶媒を除去する。分散液中の有機溶媒を分離する手段としては、例えば、濾過、濃縮、遠心沈降、遠心分離等が挙げられる。これらの手段によって、アルミニウム粒子分散液の濃度調製が行われる。
【0039】
そして、得られたアルミニウム顔料は、紫外線硬化型インク組成物に添加し易くさせる観点から、アルミニウム顔料をモノマー中に分散させた分散液を調製する。モノマーとしては、以下に示す各種モノマー(B)を用いることができる。
(B)モノマー
モノマーは、少なくとも(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(以下、アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチルを「VEEA」と略し、メタクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチルを「VEEM」と略する場合がある。)を含み、その他のモノマーを含んでいてもよい。VEEA(VEEM)は、インク粘度を低下させ、インクジェット吐出性およびインクの定着性を向上する目的で添加されるモノマーである。
【0040】
VEEA(VEEM)の含有量は、インク組成物に含有されるモノマーの総質量に対して、80質量%以上であることが好ましく、さらに好ましくは、85質量%以上であり、最も好ましくは、100質量%である。つまり、本発明のインク組成物のモノマーとしてはVEEA(VEEM)が単独で含有され、その他のモノマーが含有されていない(意図せずに含有された微量なモノマーは除く)ことが最も好ましい。後述するケトン系樹脂(C)との組み合わせにおいて、VEEA(VEEM)を単独で使用することにより、インクジェット吐出性およびインクの定着性の両方を向上することができる。
【0041】
VEEA(VEEM)を除くその他のモノマーとしては、例えば、公知の、単官能、2官能および3官能以上の多官能モノマーおよびオリゴマーを使用することができる。例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸およびマレイン酸等の不飽和カルボン酸やそれらの塩またはエステル、ウレタン、アミドおよびその無水物、アクリロニトリル、スチレン、種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、ならびに不飽和ウレタン等が挙げられる。上記オリゴマーとしては、例えば、直鎖アクリルオリゴマー等の上記モノマーから形成されるオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレート、オキセタン(メタ)アクリレート、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート、芳香族ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独使用または2種以上併用することができる。
【0042】
他の単官能モノマーや多官能モノマーとしては、例えば、N-ビニル化合物を含んでいてもよい。N-ビニル化合物としては、例えば、N-ビニルフォルムアミド、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、およびそれらの誘導体等が挙げられる。
【0043】
その他のモノマーとして、例えば、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の多官能モノマーが挙げられる。多官能モノマーを配合することにより、塗膜硬度を向上することができる。
【0044】
VEEA(VEEM)およびその他のモノマーを含むモノマー(B)のインク組成物における含有量は、例えば、インク組成物の総質量に対して、40質量%以上、90質量%以下であり、好ましくは45質量%以上、85質量%以下である。40質量%未満では、インク組成物中の硬化成分が不足して定着性が低下する場合がある。一方、90質量%を超えると、粘度上昇によってインクジェット吐出性が低下する場合がある。
(C)ケトン系樹脂
ケトン系樹脂は、インク組成物の分散安定性を向上させる目的で添加される。例えば、ケトン系樹脂はインク組成物中で分散助剤として機能し、モノマー中のアルミニウム顔料の分散性を安定させる。また、ケトン系樹脂は、VEEA(VEEM)に対する溶解性も良好である。
【0045】
ケトン系樹脂としては、例えば、ケトン・アルデヒド縮合樹脂、ホルムアルデヒド等のアルデヒド化合物を反応させて得られたケトン樹脂、およびウレタン変性ケトン樹脂等が挙げられる。これらは単独使用または2種以上併用することができる。これらのうち好ましくは、ケトン・アルデヒド縮合樹脂が挙げられる。
【0046】
ケトン・アルデヒド縮合樹脂としては、例えば、メチルエチルケトン系、メチルイソブチルケトン系、メチルシクロヘキサノン系、シクロヘキサノン系、アセトフェノン系等の樹脂が挙げられる。好ましくは、シクロヘキサノン系、アセトフェノン系の樹脂である。シクロヘキサノン系ケトン樹脂としては、例えば、シクロヘキサノンとホルムアルデヒドからなるケトン樹脂が挙げられ、アセトフェノン系ケトン樹脂としては、例えば、アセトフェノンとホルムアルデヒドからなるケトン樹脂が挙げられる。
【0047】
また、ケトン系樹脂の水酸基価としては、例えば、100mgKOH/g以上であることが好ましい。ケトン系樹脂の水酸基価が100mgKOH/g未満であると、アルミニウム顔料分散液との親和性が高くなく、保存安定性が十分ではない場合がある。
【0048】
ケトン系樹脂の具体例としては、特に制限されないが、例えば、荒川化学工業社製の市販品(商品名:K-90 水酸基価:1mgKOH/g)、degussa(EVONIK)社の市販品(商品名:VariPlus AP(水酸基価:5mgKOH/g)、VariPlus SK(水酸基価:325mgKOH/g)、VariPlus 1201TF(水酸基価:200mgKOH/g)、VariPlus CA(水酸基価:110mgKOH/g))、BASF社製の市販品(商品名:Laropal(登録商標) K80(水酸基価:150mgKOH/g)、Laropal(登録商標) A81(水酸基価:40mgKOH/g)、Laropal(登録商標) A101(水酸基価:35mgKOH/g))等が挙げられる。
【0049】
ケトン系樹脂のインク組成物における含有量は、例えば、インク組成物の総質量に対して、5質量%以上、30質量%以下であり、好ましくは10質量%以上、25質量%以下である。5質量%未満では、インク組成物の分散安定性が低下しやすくなる。一方、30質量を超えると、粘度上昇によってインクジェット吐出性が低下すると共に、重合性モノマーの硬化の促進が阻害され、定着性が低下する場合がある。
(2)添加剤
本発明のインク組成物は、アルミニウム顔料の分散液以外の添加剤(成分)を含有していてもよい。添加剤としては、特に制限されないが、例えば、光ラジカル重合開始剤(D)、増感剤(E)、ラジカル重合禁止剤(F)、界面活性剤(G)等が挙げられる。
(D)光ラジカル重合開始剤
光ラジカル重合開始剤は、インク組成物に照射する活性エネルギー線が紫外線等の光である場合、活性エネルギー線硬化性としての光硬化性をインク組成物に付与する。光ラジカル重合開始剤としては、任意の波長の光の照射によってラジカルを発生させて、ラジカル重合性成分をラジカル重合反応させることができる種々の化合物を使用することができる。
【0050】
光ラジカル重合開始剤としては、特に制限されないが、例えば、以下に示す各種化合物等が挙げられる。
【0051】
ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、4,4′-ジクロロベンゾフェノン、4,4′-ビスジエチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4′-ビスジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4-メトキシ-4′-ジメチルアミノベンゾフェノン、特開2008-280427号公報の一般式(1)で示されるベンゾフェノン化合物等のベンゾフェノン類またはその塩。
【0052】
チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、イソプロポキシクロロチオキサントン、特開2008-280427号公報の一般式(2)で示されるチオキサントン化合物等のチオキサントン類またはその塩。
【0053】
エチルアントラキノン、ベンズアントラキノン、アミノアントラキノン、クロロアントラキノン等のアントラキノン類。
【0054】
アセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシフェニルアセトフェノン、4′-ジメチルアミノアセトフェノン、ジメチルヒドロキシアセトフェノン等のアセトフェノン類。
【0055】
2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール2量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)イミダゾール2量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール2量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール2量体、2-(p-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール2量体、2-ジ(p-メトキシフェニル)-5-フェニルイミダゾール2量体、2-(2,4-ジメトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール2量体、2,4,5-トリアリールイミダゾール2量体等のイミダゾール類。
【0056】
ベンジルジメチルケタール、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ‐1‐(4-モルホリノフェニルブタン)-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、9,10-フェナンスレンキノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-プロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル等のベンゾイン類。
【0057】
9-フェニルアクリジン、1,7-ビス(9,9′-アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体。
【0058】
ビスアシルフォスフィンオキサイド、ビスフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、エチルフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィネート、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ビス(p-トリス)ホスフィンオキサイド、エチル(3-ベンゾイル-2,4,6-トリメチルベンゾイル)(フェニル)フォスフィネート等のフォスフィンオキサイド類。
【0059】
2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}2-メチルプロパン-1-オン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)ブタン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、メチルベンゾイルフォーメート、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6-トリハロメチルトリアジン、ベンジル、メチルベンゾイル、ベンゾイル蟻酸メチル、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-4-モルフォリノブチロフェノン等。
【0060】
上記した光ラジカル重合開始剤は、単独使用または2種以上を併用することができる。光ラジカル重合開始剤の含有量は、任意に設定することができる。ただし、インク組成物に良好な光硬化性を付与することを考慮すると、光ラジカル重合開始剤の含有量は、例えば、インク組成物の総質量に対して0.1質量%以上、15質量%以下であり、好ましくは、1質量%以上、10質量%以下である。2種以上の光ラジカル重合開始剤を併用する場合は、その合計の含有量を、上記の範囲とすればよい。
(E)増感剤
光硬化性のインク組成物は、必要に応じて、任意の増感剤を含有することが好ましい。増感剤は、紫外線等の照射によって励起状態となり、光ラジカル重合開始剤と相互作用して、光ラジカル重合開始剤におけるラジカルの発生を助ける。特に、光源としてLEDを使用する場合には、その波長域が狭い。したがって、インク組成物が感度を有する波長域を広げて感度を向上させる、すなわち増感するために増感剤を含有することが好ましい。
【0061】
増感剤としては、上記した光ラジカル重合開始剤のうち、例えば、2,4-ジエチルチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントンと4-イソプロピルチオキサントンの混合物等のチオキサントン類またはその塩や、ベンゾフェノンと2,3-および4-メチルベンゾフェノンの共晶混合物、メチル-2-ベンゾフェノン、ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4′-メチルフェニルサルファイド、4-メチルベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン等のベンゾフェノン類またはその塩、2-エチルアントラキノン、4,4′-ビスジエチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)等が挙げられる。
【0062】
その他の増感剤としては、例えば、ばエチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2-エチル-4-(ジメチルアミノベンゾエート)等のベンゾエート化合物、ナフタレンベンゾオキサゾリル誘導体、チオフェンベンゾオキサゾリル誘導体、スチルベンベンゾオキサゾリル誘導体、クマリン誘導体、スチレンビフェニル誘導体、ピラゾロン誘導体、スチルベン誘導体、ベンゼン及びビフェニルのスチリル誘導体、ビス(ベンザゾールー2-イル)誘導体、カルボスチリル、ナフタルイミド、ジベンゾチオフェン-5,5’-ジオキシドの誘導体、ピレン誘導体、ピリドトリアゾール、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0063】
増感剤としては、上記した各種の増感剤の中から、光源からの光の波長域、および光ラジカル重合開始剤の吸収波長域に応じて増感に適した吸収波長域を有する化合物を選択することができる。上記の増感剤は、単独使用または2種以上を併用することができる。
【0064】
増感剤の含有量は、任意に設定することができる。ただし、増感剤による増感効果を良好に発現させることを考慮すると、増感剤の含有量は、例えば、インク組成物の総質量に対して、0.1質量%以上、5質量%以下であり、好ましくは、0.5質量%以上、3質量%以下である。2種以上の増感剤を併用する場合は、その合計の含有量を、上記の範囲とすればよい。
(F)ラジカル重合禁止剤
インク組成物は、必要によりラジカル重合禁止剤を含有していてもよい。ラジカル重合禁止剤は、インク組成物を貯蔵中、またはパッケージに封入して保管中等に、ラジカル重合性成分がラジカル重合反応してインク組成物がゲル化することを防止する。ラジカル重合禁止剤としては、上記のゲル化を防止することができる種々の化合物を使用することができる。
【0065】
ラジカル重合禁止剤としては、例えば、ニトロソアミン系化合物、ハイドロキノン類、カテコール類、ヒンダードアミン類、フェノール類、フェノチアジン類、縮合芳香族環のキノン類等が挙げられる。
【0066】
ニトロソアミン系化合物としては、例えば、N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンのアンモニウム塩(アンモニウム-N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン)、N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンのアルミニウム塩(アルミニウム-N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン)等が挙げられる。
【0067】
ハイドロキノン類としては、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、1-o-2,3,5-トリメチロールハイドロキノン、2-tert-ブチルハイドロキノン等が挙げられる。カテコール類としては、例えば、カテコール、4-メチルカテコール、4-tert-ブチルカテコール等が挙げられる。
【0068】
ヒンダードアミン類としては、例えば、重合禁止効果を有する任意のヒンダードアミン類等が挙げられる。フェノール類としては、例えば、フェノール、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ピロガロール、没食子酸アルキルエステル、ヒンダードフェノール類等が挙げられる。フェノチアジン類としては、例えば、フェノチアジン等が挙げられる。縮合芳香族環のキノン類としては、例えば、ナフトキノン等が挙げられる。
【0069】
上記したラジカル重合禁止剤は、単独使用または2種以上を併用することができる。ラジカル重合禁止剤の含有量は、例えば、インク組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、3質量%以下であり、好ましくは、0.05質量%以上、0.5質量%以下である。2種以上のラジカル重合禁止剤を併用する場合は、その合計の含有量を、上記の範囲とすればよい。
(G)界面活性剤
界面活性剤としては、例えば、シリコーン系、フッ素系、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、両性の種々の界面活性剤が挙げられる。これらのうち好ましくは、シリコーン系、フッ素系の界面活性剤が挙げられる。
【0070】
シリコーン系界面活性剤の市販品としては、例えば、ビックケミー・ジャパン株式会社製のBYK(登録商標)307、310、320、330、333、342、377;東レ・ダウコーニング(株)製の8029 ADDITIVE、8054 ADDITIVE、205SL、8032 ADDITIVE、57 ADDITIVE、8526 ADDITIVE等が挙げられる。
【0071】
フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、DIC株式会社製のメガファック(登録商標)F-553、F-554、F-556、F-558、F-559、株式会社ネオス製のフタージェント(登録商標)の含フッ素基オリゴマー、含フッ素基反応タイプオリゴマー、AGCセイケミカル株式会社製のサーフロン(登録商標)のうち溶媒として水を含まないもの、共栄社化学株式会社製のLE-604、LE-605等が挙げられる。
【0072】
上記の界面活性剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0073】
界面活性剤の含有量は、例えば、界面活性剤中の有効成分量換算で、インク組成物の総質量に対して0.1質量%以上、3質量%以下であり、好ましくは、0.2質量%以上、2質量%以下である。2種以上の界面活性剤を併用する場合は、その合計の含有量を、上記の範囲とすればよい。
(H)その他の添加剤
本発明のインク組成物は、上記の添加剤を除くその他の添加剤を含有していてもよい。その他の添加剤としては、例えば、公知の、重合促進剤、浸透促進剤、湿潤剤(保湿剤)、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、増粘剤等が挙げられる。
【0074】
そして、本発明のインク組成物を製造するには、予め定めた組成(質量%)となるように、モノマー(B)および添加物(D~H)を混合し完全に溶解させた後、これにアルミニウム顔料の分散液を所定の組成(質量%)となるように撹拌しながら滴下する。滴下終了後、例えば常温で混合撹拌し、さらに濾過することにより本発明の紫外線硬化型インク組成物が得られる。
【0075】
アルミニウム顔料のインク組成物における含有量は、インク組成物の総質量に対して、例えば固形分として0.5質量%以上、10質量%以下が好ましく、より好ましくは、1質量%以上、5質量%以下である。0.5質量%未満では、インク組成物中のアルミニウム顔料が少なすぎ、記録されたパターン画像の金属光沢性が不十分となる場合がある。一方、10質量%を超えると、粘度上昇によってアルミニウム顔料が沈殿し、インクジェット吐出性が低下する場合がある。
【0076】
[溶剤系プライマ受容体インク]
溶剤系プライマ受容体インクは、印刷後に乾燥することによって、上記のメタリックインクの受容層として機能する。溶剤系プライマ受容体インクは、汎用的な基材への定着性と、インク受容層としてアルミニウム顔料の配向を補助する。
【0077】
溶剤系プライマ受容体インクは、(I)プライマ用樹脂と、(J)プライマ用溶剤と、(K)プライマ用添加剤とを含有している。
(I)プライマ用樹脂
プライマ用樹脂は、UV硬化型モノマーに溶解しないがUV硬化型モノマーを適度に吸収(膨潤)し、メタリックインクのリーフィングを補助する。プライマ用樹脂は、少なくともセルロースアセテート系樹脂を含み、その他の樹脂を含んでいてもよい。セルロースアセテート系樹脂は、メタリックインクに配合されるモノマーに溶解しにくく、かつ表面光沢性に優れ、均一な表面を形成しやすい。これにより、アルミニウム顔料の配向を補助することができる。
【0078】
セルロースアセテート系樹脂としては、例えば、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース誘導体が挙げられる。これらは、単独使用または2種以上併用することができる。これらのうち好ましくは、セルロースアセテートプロピオネートが使用される。セルロースアセテートプロピオネートであれば、溶剤系プライマ受容体インクの濾過性を向上でき、インクジェット吐出性を向上することができる。
【0079】
セルロースアセテート系樹脂の溶剤系プライマ受容体インクにおける含有量は、例えば、溶剤系プライマ受容体インクの総質量に対して、1質量%以上、10質量%以下であり、好ましくは、2質量%以上、8質量%以下である。1質量%未満では、溶剤系プライマ受容体インクが不足してメタリックインクの光沢が損なわれる場合がある。一方、10質量%を超えると、粘度上昇によってインクジェット吐出性が低下する場合がある。
【0080】
セルロースアセテート系樹脂を除くその他の樹脂としては、一般的にインク受容層に使用される樹脂が好ましく、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニル系樹脂等の公知の樹脂が挙げられる。プライマ用樹脂としては、セルロースアセテート系樹脂が単独で含有され、その他の樹脂が含有されていない(意図せずに含有された微量な樹脂は除く)ことが最も好ましい。上記のメタリックインクとの組み合わせにおいて、セルロースアセテート系樹脂を単独で使用することによって、印刷後のパターン画像の光沢性および定着性の両方を向上することができる。
(J)プライマ用溶剤
プライマ用溶剤としては、例えば、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-ブタノール、2-メチル-2-プロパノール、3-メトキシ-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール等の一価のアルコール溶剤;エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ペンチレングリコール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等のグリコール系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤;N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、ε-カプロラクタム等のラクタム系溶剤;ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、出光製エクアミドM-100、エクアミドB-100等のアミド系溶剤等が挙げられる。これらは、単独使用または2種以上併用することができる。これらのうち好ましくは、セルロースアセテート系樹脂に対する溶解性が優れる観点から、グリコールエーテル系溶剤が挙げられる。
【0081】
メタリックインクとの関係性において、溶剤系プライマ受容体インクの乾燥性を考慮すると、適切な範囲の引火点を有するグリコールエーテル系溶剤を選択することが好ましい。引火点が低すぎるとインクジェットノズルを詰まらせる原因となり、一方、引火点が基材のTgよりも高いと加熱乾燥により基材の変形が生じてしまう場合がある。そこで、例えば、引火点が50℃以上70℃以下の溶剤を選択することが好ましい。この範囲の引火点を有する溶剤として、例えば、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルが挙げられる。
【0082】
グリコールエーテル系溶剤の溶剤系プライマ受容体インクにおける含有量は、例えば、溶剤系プライマ受容体インクの総質量に対して、15質量%以上、50質量%以下であり、好ましくは20質量%以上、45質量%以下である。15質量%未満では、プライマ用樹脂の溶解性が不足して、十分な樹脂の配合量を得られない場合がある。一方、50質量%を超えると、インクジェットヘッドがダメージを受け、インクジェット吐出性が低下する場合がある。
【0083】
また、溶剤系プライマ受容体インクの粘度との関係性において、溶剤系プライマ受容体インクは、アルコール系溶剤を含有することが好ましい。使用されるアルコール系溶剤は、溶剤系プライマ受容体インクの粘度に合わせて適宜選択することができる。上記の一価のアルコール溶剤の中では、粘度が比較的高い3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-1-ブタノール等が好ましい。これら一価のアルコールは、グリコールエーテル系溶剤と組み合わせることによって、インク組成物のセルロースアセテート系樹脂を良好に溶解する。
【0084】
粘度調整用のアルコール溶剤の溶剤系プライマ受容体インクにおける含有量は、例えば、溶剤系プライマ受容体インクの総質量に対して、40質量%以上、85質量%以下であり、好ましくは、50質量%以上、80質量%以下である。40質量%未満では、グリコールエーテル系溶剤が過剰となってインクジェットヘッドがダメージを受け、インクジェット吐出性が低下する場合がある。一方、85質量%を超えると、プライマ用樹脂の溶解性が不足し、プライマ樹脂が溶剤に溶け残る場合がある。
(K)プライマ用添加剤
プライマ用添加剤としては、公知の種々の添加剤を使用することができる。プライマ用添加剤としては、例えば、表面調整剤(レベリング剤)、防かび剤、防腐剤、抗菌剤等が挙げられる。これら添加剤の含有量は、それぞれ任意に設定することができる。これらのうち、レベリング作用によってプライマ受容層の表面が平滑になり、さらに擦過性が向上するという観点から、表面調整剤を含有することが好ましい。
【0085】
表面調整剤(レベリング剤)としては、特に制限されないが、例えば、アクリル系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等が挙げられる。
【0086】
アクリル系界面活性剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸系共重合体が挙げられる。上記のアクリル系界面活性剤の市販品としては、例えば、1970,230,LF-1980,LF-1982(-50),LF-1983(-50),LF-1984(-50),LHP-95,LHP-96,UVX-35,UVX-36,UVX-270、UVX-271,UVX-272,AQ-7120,AQ-7130(以上、楠本化成社製商品名)、BYK-350,BYK-352,BYK-354,BYK-355,BYK-358,BYK-380,BYK-381,BYK-392(以上、BYK社製商品名)、ポリフローNo.57,95(以上、共栄社油脂化学工業社製商品名)等が挙げられる。
【0087】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、ポリエステル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン等が挙げられる。上記のシリコーン系界面活性剤の市販品としては、例えば、BYK-347、BYK-348、BYK-UV3500、3510、3530、3570(ビックケミー・ジャパン社製)が挙げられる。
【0088】
溶剤系プライマ受容体インクを調製するには、上記の(I)プライマ用樹脂、(J)プライマ用溶剤および(K)プライマ用添加剤を所定の割合(例えば、質量%)で混合し、完全に溶解する。これにより、溶剤系プライマ受容体インクが得られる。
【0089】
[紫外線硬化型プライマ受容体インク]
紫外線硬化型プライマ受容体インクは、印刷後に紫外線照射により半硬化させることによって、メタリックインクの受容層として機能する。紫外線硬化型プライマ受容体インクは、汎用的な基材への定着性と、インク受容層としてアルミニウム顔料の配向を補助する。以下では、紫外線硬化型プライマ受容体インクを、単に「UVプライマ受容体インク」と略する場合がある。
【0090】
UVプライマ受容体インクは、例えば、紫外線照射によって重合反応を起こして硬化するモノマー、オリゴマー等の重合性化合物(以下、これらを総称して単に「プライマ用モノマー」「プライマ用重合性成分」と略する場合がある。)を含むUVインクである。
【0091】
UVプライマ受容体インクは、メタリックインクに近い組成であることが、メタリックインクの吸収性を向上できるため好ましい。UVプライマ受容体インクは、プライマ用モノマー(L)と、プライマ用ケトン系樹脂(M)と、プライマ用添加剤(N)とを含有する。
(L)プライマ用モノマー
プライマ用モノマーは、紫外線硬化型の各種インク用モノマーを使用できるが、少なくとも(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(以下、アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチルを「VEEA」と略し、メタクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチルを「VEEM」と略する場合がある。)を含むことが好ましい。VEEA(VEEM)は、インク粘度を低下させ、インクジェット吐出性およびインクの定着性を向上する目的で添加されるモノマーである。
【0092】
VEEA(VEEM)の含有量は、UVプライマ受容体インクに含有されるモノマーの総質量に対して、80質量%以上であることが好ましく、さらに好ましくは、85質量%以上であり、最も好ましくは、100質量%である。つまり、UVプライマ受容体インクのモノマーとしてはVEEA(VEEM)が単独で含有され、その他のモノマーが含有されていない(意図せずに含有された微量なモノマーは除く)ことが最も好ましい。後述するプライマ用ケトン系樹脂(M)との組み合わせにおいて、VEEA(VEEM)を単独で使用することにより、インクジェット吐出性およびインクの定着性の両方を向上することができる。
【0093】
プライマ用モノマーは、VEEA(VEEM)を除くその他のモノマーを含んでいてもよい。その他のモノマーとしては、前述のインク組成物の(B)モノマーの一例として挙げたVEEA(VEEM)を除くその他のモノマーを使用できる。
【0094】
VEEA(VEEM)およびその他のモノマーを含むプライマ用モノマーのUVプライマ受容体インクにおける含有量は、例えば、UVプライマ受容体インクの総質量に対して、40質量%以上、90質量%以下であり、好ましくは45質量%以上、85質量%以下である。40質量%未満では、インク組成物中の硬化成分が不足して定着性が低下する場合がある。一方、90質量%を超えると、粘度上昇によってインクジェット吐出性が低下する場合がある。
(M)プライマ用ケトン系樹脂
プライマ用ケトン系樹脂は、例えば、メタリックインクが上層として印刷された後、アルミニウム顔料のリーフィング時に分散性を安定させる。また、プライマ用ケトン系樹脂は、VEEA(VEEM)に対する溶解性も良好である。
【0095】
プライマ用ケトン系樹脂としては、前述のインク組成物の(C)ケトン系樹脂の一例として挙げたケトン系樹脂を使用できる。
【0096】
プライマ用ケトン系樹脂のUVプライマ受容体インクにおける含有量は、例えば、UVプライマ受容体インクの総質量に対して、5質量%以上、30質量%以下であり、好ましくは10質量%以上、25質量%以下である。5質量%未満では、リーフィング時のアルミニウム顔料の分散安定性が低下して光沢性が欠けやすくなる。一方、30質量を超えると、粘度上昇によってインクジェット吐出性が低下すると共に、重合性モノマーの硬化の促進が阻害され、定着性が低下する場合がある。
(N)プライマ用添加剤
プライマ用添加剤としては、特に制限されないが、例えば、界面活性剤、光ラジカル重合開始剤、増感剤、ラジカル重合禁止剤等が挙げられる。
【0097】
界面活性剤としては、例えば、シリコーン系、フッ素系、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、両性の種々の界面活性剤が挙げられる。これらのうち好ましくは、上記インク組成物の界面活性剤(G)と同種の界面活性剤が使用され、特に好ましくは、メタリックインクおよびUVプライマ受容体インクが共に、フッ素系界面活性剤を含有する。メタリックインクのフッ素系界面活性剤は塗膜表面に配向しやすく、アルミニウム顔料が表面にリーフィングすることを補助する。さらに、UVプライマ受容体インクのフッ素系界面活性剤も同様に、アルミニウム顔料のリーフィングを補助するためである。
【0098】
界面活性剤の具体例としては、前述のインク組成物の(G)界面活性剤の一例として挙げた界面活性剤を使用できる。
【0099】
界面活性剤の含有量は、例えば、界面活性剤中の有効成分量換算で、UVプライマ受容体インクの総質量に対して0.1質量%以上、3質量%以下であり、好ましくは、0.2質量%以上、2質量%以下である。2種以上の界面活性剤を併用する場合は、その合計の含有量を、上記の範囲とすればよい。
【0100】
光ラジカル重合開始剤は、UVプライマ受容体インクに照射する活性エネルギー線が紫外線等の光である場合、活性エネルギー線硬化性としての光硬化性をUVプライマ受容体インクに付与する。光ラジカル重合開始剤としては、任意の波長の光の照射によってラジカルを発生させて、ラジカル重合性成分をラジカル重合反応させることができる種々の化合物を使用することができる。
【0101】
光ラジカル重合開始剤としては、特に制限されないが、例えば、前述のインク組成物の(D)光ラジカル重合開始剤の一例として挙げた開始剤を使用できる。例えば、ベンゾフェノン類またはその塩、チオキサントン類またはその塩、アントラキノン類、アセトフェノン類、イミダゾール類、ベンゾイン類、アクリジン誘導体、フォスフィンオキサイド類
フォスフィンオキサイド類等を使用できる。これらのうち、フォスフィンオキサイド類を使用することが特に好ましい。
【0102】
上記した光ラジカル重合開始剤は、単独使用または2種以上を併用することができる。光ラジカル重合開始剤の含有量は、任意に設定することができる。ただし、UVプライマ受容体インクの光ラジカル重合開始剤は、メタリックインクの光ラジカル重合開始剤(D)よりも少ないことが好ましい。特に、メタリックインクとUVプライマ受容体インクとを比較して、フォスフィンオキサイド類の開始剤の含有量に差があることが好ましい。つまり、プライマ用モノマーの含有量(M2)に対するUVプライマ受容体インク中のフォスフィンオキサイド系重合開始剤の含有量(P2)の第2質量割合(P2/M2)は、メタリックインクのモノマーの含有量(M1)に対するメタリックインク中のフォスフィンオキサイド系重合開始剤の含有量(P1)の第1質量割合(P1/M1)よりも少ないことが好ましい。
【0103】
フォスフィンオキサイド系重合開始剤の含有量(P2)は、好ましくは、プライマ用モノマーの総質量に対して、2質量%以上、9質量%以下である。2種以上の光ラジカル重合開始剤を併用する場合は、その合計の含有量を、上記の範囲とすればよい。フォスフィンオキサイド系重合開始剤の含有量(P2)が2質量%未満であると、硬化が不十分となり、基材に対する定着性が低下する場合がある。
【0104】
また、第2質量割合(P2/M2)は、第1質量割合(P1/M1)の30%以上70%以下であることが好ましい。例えば、30%未満であると硬化が不十分となり定着性が欠けてしまい、70%を超えると、メタリックインクの浸透が不十分なままで硬化してしまい、リーフィングが不十分となり光沢性が欠ける場合がある。UVプライマ受容体インクの開始剤の含有量が、上層として重ねられるメタリックインクの開始剤と同じまたは過剰量であると、UVプライマ受容体インクの層がメタリックインクを吸収する受容体となり得ず、リーフィングによる表面配向が悪いため、光沢性が損なわれる。
【0105】
フォスフィンオキサイド類の開始剤の含有量の差に関連して、特許文献3には、チオキサントン系化合物は着色するような光重合開始剤であるためクリアのUVプライマインクに配合することは好ましくないと記載されている(特許文献3の段落0060)。特許文献3の実施例20は、光重合開始剤としてTPOのみを含むクリアUVプライマインク(P-1)と、光重合開始剤としてTPOおよびITXの2種を含むカラーインク(C-1)とを含むインクセットを開示している。
【0106】
このインクセットではクリアUVプライマインクとカラーインクとの間に、光重合開始剤の含有量に差が生じている。この差は、クリアUVプライマインクが2種類の開始剤のうち片方を配合していないため、結果的に生じているものであり、クリアUVプライマインクの硬化を遅らせるために開始剤の配合量を抑える考え方ではない。つまり、特許文献3には、クリアUVプライマインクにおいて主で用いる開始剤(アシルフォスフィンオキサイド系)の配合量を抑える考え方は無い。
【0107】
また、カラーインクに含まれるITX(イソプロピルチオキサントン)は、開始剤または増感剤として作用する考え方もあり、この実施形態では、ITXは、メタリックインクおよびUVプライマ受容体インクの両インクに同等で、増感剤として配合してもよい。
【0108】
光硬化性のUVプライマ受容体インクは、必要に応じて、任意の増感剤を含有することが好ましい。増感剤は、紫外線等の照射によって励起状態となり、光ラジカル重合開始剤と相互作用して、光ラジカル重合開始剤におけるラジカルの発生を助ける。特に、光源としてLEDを使用する場合には、その波長域が狭い。したがって、UVプライマ受容体インクが感度を有する波長域を広げて感度を向上させる、すなわち増感するために増感剤を含有することが好ましい。増感剤の具体例としては、前述のインク組成物の(E)増感剤の一例として挙げた増感剤を使用できる。
【0109】
増感剤の含有量は、任意に設定することができる。ただし、増感剤による増感効果を良好に発現させることを考慮すると、増感剤の含有量は、例えば、UVプライマ受容体インクの総質量に対して、0.1質量%以上、5質量%以下であり、好ましくは、0.5質量%以上、3質量%以下である。2種以上の増感剤を併用する場合は、その合計の含有量を、上記の範囲とすればよい。
【0110】
UVプライマ受容体インクは、必要によりラジカル重合禁止剤を含有していてもよい。ラジカル重合禁止剤は、UVプライマ受容体インクを貯蔵中、またはパッケージに封入して保管中等に、ラジカル重合性成分がラジカル重合反応してUVプライマ受容体インクがゲル化することを防止する。ラジカル重合禁止剤としては、上記のゲル化を防止することができる種々の化合物を使用することができる。ラジカル重合禁止剤の具体例としては、前述のインク組成物の(F)ラジカル重合禁止剤の一例として挙げた禁止剤を使用できる。
【0111】
ラジカル重合禁止剤の含有量は、例えば、UVプライマ受容体インクの総質量に対して、0.01質量%以上、3質量%以下であり、好ましくは、0.05質量%以上、0.5質量%以下である。2種以上のラジカル重合禁止剤を併用する場合は、その合計の含有量を、上記の範囲とすればよい。
【0112】
そして、UVプライマ受容体インクは、予め定めた組成(質量%)となるように、プライマ用モノマー(B)、プライマ用ケトン系樹脂(M)およびプライマ用添加剤(N)を混合し完全に溶解させた後、さらに濾過することにより得られる。
【0113】
[インクセット]
本発明のインクセットは、少なくとも、上記紫外線硬化型インクジェットインク用のインク組成物(メタリックインク)および溶剤系プライマ受容インクもしくは紫外線硬化型プライマ受容体インクを含む。当該インクセットは、メタリックインクおよびプライマ受容体インクを除くその他のインクを含んでいてもよい。
【0114】
その他のインクとしては、例えば、トップコートインク、カラーインク等が挙げられる。これらは単独使用または2種以上併用することができる。トップコートインクは、前述のプライマ受容インクおよびメタリックインクを順に積層した印刷体に着色する目的で積層されるインクではなく、印刷体の表面を保護する保護層を形成する目的で積層される。トップコートインクとしては、上記の目的で使用されるインクであれば特に制限されない。トップコートインクとして、好ましくは、紫外線硬化型インクであり、さらに好ましくは、本発明のインク組成物と同様に、モノマーとして少なくともVEEA(VEEM)を含有し、とりわけ好ましくは、VEEA(VEEM)を主モノマー(その中でもVEEA(VEEM)の含有量がモノマーの総質量に対して100質量%が好ましい)として含有するインクである。また、トップコートインクは、顔料や染料等の色剤の含有量が0.1質量%未満、好ましくは、0質量%である、クリアインクであることが好ましい。
【0115】
カラーインクは、前述のプライマ受容インクおよびメタリックインクを順に積層したメタリック印刷体に着色層として積層され、印刷体にメタリックカラーを提供する。カラーインクとしては、上記の目的で使用される透光性のカラーインクであれば特に制限されない。カラーインクとして、好ましくは、紫外線硬化型インクであり、さらに好ましくは、本発明のインク組成物と同様に、モノマーとして少なくともVEEA(VEEM)を含有し、とりわけ好ましくは、VEEA(VEEM)を主モノマー(その中でもVEEA(VEEM)の含有量がモノマーの総質量に対して100質量%が好ましい)として含有するインクである。また、カラーインクにおける色剤(顔料または染料)の含有量は、特に制限されず、例えば、印刷体の使用用途、下層のメタリックインクの組成等に応じて適宜設定することができる。
【0116】
[印刷物]
図1は、本発明の一実施形態に係る印刷物の製造方法により製造される印刷物1の模式図である。上記したインクセットにより製造される本発明の印刷物1は、基材2と、基材2に形成された印刷層3とを含む。
【0117】
基材2は、例えば、浸透性または非浸透性の基材(記録媒体)であり、好ましくは、非浸透性の基材である。基材2としては、公知の種々の、水性のインクジェットインクに対する吸収性を有しない、または吸収性の低い基材を用いることができる。非浸透性基材としては、例えば、ポリ塩化ビニルシート、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレンフィルム(例えば、OPPフィルム)、ポリエチレンフィルム、ナイロンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリエチレン板、ABS樹脂板、ポリカーボネート板、ポリ塩化ビニル板、アクリル板等の熱可塑性樹脂基材、アルミニウム箔、鉄、銀、銅、アルミニウム、ステンレス、真鋳等の金属類のプレート等の金属基材、はがき、光沢紙、特殊紙、布、フィルム、OHPシート、汎用印刷用紙等の印刷用塗工紙が挙げられる。印刷用塗工紙の具体例としては、例えば、キャストコート紙、アート紙、コート紙、軽量コート紙、微塗工紙といった商業印刷・出版印刷に用いられている種々の塗工紙が挙げられる。基材2の種類は、印刷物1の用途に応じて適宜選択することができる。例えば、印刷物1の用途によっては、基材2はフィルム状または板状である必要はなく、立体的構造物(例えば、キャップ、容器等)であってもよい。
【0118】
基材2は、印刷面4が滑らかであっても、凹凸のついたものであっても良いし、透明、半透明、不透明のいずれであってもよい。また、2種以上の基材2を互いに張り合わせたものでもよい。さらに、基材2の印刷面4の反対側の裏面5に剥離粘着層等を設けてもよい。また、印刷層3の形成後、印刷層3を覆うよう粘着層等を設けてもよい。基材2の形状は、ロール状でも枚葉状でもよい。
【0119】
印刷層3は、所定のパターン画像で形成されている。パターン画像は、印刷物1の用途に合わせて適宜設定することができ、例えば、情報伝達のための文字、装飾性のある文字や図柄、基材2の印刷面4の全体を被覆するベタ膜(ベタ塗り層)等であってもよい。
【0120】
印刷層3は、基材2の印刷面4から順に積層された、プライマ受容層6、メタリック層7およびトップ層8を含む。プライマ受容層6は、上記のプライマ受容体インクにより形成される印刷層である。メタリック層7は、上記のメタリックインク(UV硬化型インク組成物)中のアルミニウム顔料(アルミニウム粒子13)の配列によって形成される層である。トップ層8は、上記のトップコートインクおよびカラーインクの少なくとも一方により形成される層である。
【0121】
例えば、トップコートインクおよびカラーインクが併用される場合、トップ層8は、メタリック層7に接する下層のカラーインク層と、当該カラーインク層に積層された上層(表面層)のトップコートインク層とを含んでいてもよい。
【0122】
また、トップ層8は、形成方法の違いにより、下層の砂吹き層9および上層の本吹き層10を含んでいてもよい。砂吹き層9および本吹き層10は、互いに同じインクにより形成される層であるため、一体化により単層として形成されていてもよい。なお、トップ層8がトップコートインクおよびカラーインクの積層構造である場合には、下層のカラーインク層のみが選択的に砂吹き層9および本吹き層10を含んでいてもよい。
【0123】
[印刷物の製造方法]
図2図5は、印刷物1の製造方法の一部を工程順に示す模式図である。
【0124】
印刷物1は、例えば、公知の産業用インクジェットプリンタを用いて基材2上に印刷層3を形成することによって製造することができる。より詳細には、まず、上記のインクセットを備えたインクジェットインク(例えば、カートリッジ)をインクジェットプリンタにセットする。インクジェットインク用の吐出ヘッドとしては、例えば、オンデマンド型またはコンティニュアス型で、かつサーマル方式、およびピエゾ方式のいずれの吐出ヘッドを使用することもできる。ただし、吐出の安定性を向上すること等を考慮すると、吐出ヘッドとしては、ピエゾ方式の吐出ヘッドを採用することが好ましい。
【0125】
次に、図2を参照して、吐出ヘッドから基材2上に向かって順に、プライマ受容体インクおよびメタリックインクを吐出する。
【0126】
より詳細には、プライマ受容体インクが溶剤系プライマ受容体インクの場合には、プライマ受容体インクを吐出して基材2にプライマ受容層6を印刷し、その後、乾燥させる。一方、プライマ受容体インクがUVプライマ受容体インクの場合には、プライマ受容体インクを吐出して基材2にプライマ受容層6を印刷し、活性エネルギー線源からの活性エネルギー線(紫外線)の照射によって、インク中のプライマ用モノマー(L)を重合反応させて半硬化させる。プライマ受容層6の厚さは、例えば、0.1μm以上5μm以下であってもよい。
【0127】
プライマ受容層6の形成後、プライマ受容層6上にメタリックインク11を吐出する。本発明では、プライマ受容層6が形成されているので、メタリックインク11中のモノマー(B)およびケトン系樹脂(C)等の液状成分がプライマ受容層6に浸透する(図2の矢印12参照)。これにより、メタリックインク11中の平板状もしくは鱗片状アルミニウム顔料(アルミニウム粒子13)をリーフィングさせて塗膜表面に配向させることができる(図2の矢印14参照)。図3を参照して、アルミニウム粒子13の配向により、メタリックインク11の液状成分が浸透したプライマ受容層6の表面には、規則的に配列されたアルミニウム粒子13からなるメタリック層7が形成される。
【0128】
その後、活性エネルギー線源からの活性エネルギー線(紫外線)の照射によって、インク中のモノマー(B)を重合反応させて硬化させる。活性エネルギー線源は、例えば、インクジェットプリンタのヘッドに組み込んだり、インクジェットプリンタとは別に用意したりすることができる。活性エネルギー線源としては、例えば、紫外線ランプ、紫外線発光ダイオード、紫外線レーザダイオード等が挙げられる。ここで、活性エネルギー線の発光ピーク波長は、例えば、350nm以上420nm以下の範囲であることが好ましい。
【0129】
次に、図4を参照して、印刷層3の表面に対して、トップコートインクまたはカラーインクの砂吹きにより塗布する。ここで「砂吹き」とは、例えば、インクの微細液滴を対象物(この実施形態では、印刷層3)噴射により塗布することである。その後、砂吹きされたトップコートインクまたはカラーインクの硬化工程を行う。メタリックインク11の場合と同様に、活性エネルギー線源からの活性エネルギー線(紫外線)の照射によって、トップコートインクまたはカラーインク中のモノマーを重合反応させて硬化させる。活性エネルギー線の発光ピーク波長は、例えば、350nm以上420nm以下の範囲であることが好ましい。これにより、メタリック層7を保護する樹脂層として機能する砂吹き層9が形成される。
【0130】
砂吹きの方法は、例えば、インクジェット法、スプレー法のいずれも採用することができる。インクジェット法の場合には、砂吹き用のトップコートインクまたはカラーインクを上記のインクセットの一部としてインクジェットプリンタに充填し、プライマ受容層6およびメタリック層7の一連の流れでトップコートインクまたはカラーインクを砂吹きすればよい。一方、スプレー法の場合には、砂吹き用のトップコートインクまたはカラーインクがセットされたスプレー(例えば、別途準備したスプレーコータ、インクジェットプリンタの吐出ヘッドに併設したスプレーヘッド等)により、砂吹き用のインクを噴射すればよい。また、スプレー法として、例えば、消毒用アルコール等を噴霧する手動噴霧器にトップコートインクまたはカラーインクを充填し、当該手動噴霧器からインクを噴霧してもよい。なお、手動噴霧器としては、有機溶剤に対応した加圧式の噴霧器を使用することが好ましい。
【0131】
次に、図5を参照して、砂吹き層9上にトップコートインクまたはカラーインクを吐出して本吹き層10を形成する。その後、活性エネルギー線源からの活性エネルギー線(紫外線)の照射によって、トップコートインクまたはカラーインク中のモノマーを重合反応させて硬化させる。活性エネルギー線の発光ピーク波長は、例えば、350nm以上420nm以下の範囲であることが好ましい。
【0132】
これにより、メタリック層7を被覆するトップ層8が形成される。この際、メタリック層7が砂吹き層9に被覆された保護されているので、トップ層8の形成時に、アルミニウム粒子がトップ層8のインクに侵されて泳いでしまうことを防止することができる。
【0133】
以上の工程を経て、図1に示す印刷物1が得られる。
【実施例0134】
次に、本発明を実施例、比較例および参考例に基づいて説明するが、本発明は下記の実施例によって限定されるものではない。
1.実施例Aシリーズ(実施例A1~A9および比較例A1~A2)
下記表1は、実施例Aシリーズで調製した紫外線硬化型インク組成物(Alインク例)の組成および当該インク組成物の評価結果を示している。以下、インク組成物の調製方法および評価方法を説明する。
【0135】
【表1】
【0136】
[実施例A1(Alインク例1)]
実施例A1では、アルミニウム顔料分散液を調製した後、必要なモノマーおよび添加剤を加えることによって、紫外線硬化型インク組成物を調製する。
(1)アルミニウム顔料分散液の調製
PETフィルム上に、セルロースアセテートブチレート(ブチル化率35~39%、関東化学株式会社製)3.0質量%およびジエチレングリコールジエチルエーテル(日本乳化剤株式会社製)97質量%を含有する剥離層塗工液をバーコート法によって均一に塗布した。塗布後、60℃で10分間乾燥することによって、PETフィルム上に剥離層薄膜を形成した。
【0137】
次に、真空蒸着装置(「VE-1010型真空蒸着装置」、株式会社真空デバイス製)を用いて、剥離層上に平均膜厚20nmのアルミニウム蒸着層を形成した。次に、剥離層およびアルミニウム蒸着層の積層体を、ジエチレングリコールジエチルエーテル中、VS-150超音波分散機(アズワン株式会社製)を用いて、剥離・微細化・分散処理を同時に行った。これにより、積算の超音波分散処理時間が12時間であるアルミニウム粒子分散液を作製した。
【0138】
次に、アルミニウム粒子分散液を、開き目5μmのSUSメッシュフィルターにて濾過処理を行い、粗大粒子を除去した。さらに、濾液を丸底フラスコに入れ、ロータリーエバポレーターを用いてジエチレングリコールジエチルエーテルを留去した。これにより、アルミニウム粒子分散液を濃縮し、その後、そのアルミニウム粒子分散液の濃度調整を行い、5質量%のアルミニウム粒子分散液を得た。
【0139】
次の工程は、アルミニウム粒子の表面処理工程である。3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名「KBM-503」、信越化学工業株式会社製)1.25当量と、トリメトキシメチルシラン(東京化成工業株式会社製)1.25当量と、の混合物に対して、1当量となるように水を添加し、40℃で1~2時間撹拌することにより処理剤を調製した。次に、得られたアルミニウム粒子分散液100gをビーカーへ投入し、上記の処理剤の全量を添加して、3日間室温で撹拌することにより加水分解反応させた。このようにして、アルミニウム粒子の表面に被膜が形成されたアルミニウム顔料分散液を得た。
【0140】
次に、得られたアルミニウム顔料分散液を遠心分離(12,000rpm、60分間)し、溶媒を除去した。その後、その除去した溶媒と同量のジエチレングリコールジエチルエーテルを添加して十分に撹拌した。さらに、これを遠心分離(12,000rpm、60分間)して溶媒を除去し、そして、アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(株式会社日本触媒製、商品名「VEEA」)およびケトン樹脂(Evonik社製、商品名「TEGO(登録商標) VariPlus CA」)を表1の割合となるように添加して溶媒を置換し、十分に撹拌することにより、固形分10質量%のアルミニウム顔料分散液を得た。
(2)紫外線硬化型インク組成物の調製
表1に記載の組成(質量%)となるように、モノマー、光ラジカル重合開始剤、増感剤、ラジカル重合禁止剤、界面活性剤を混合し完全に溶解させた後、これにアルミニウム顔料分散液を表1に記載の濃度となるように撹拌しながら滴下した。滴下終了後、常温で1時間混合撹拌し、さらに5μmのメンブランフィルタで濾過して、紫外線硬化型インク組成物(Alインク例1)を得た。
【0141】
なお、表1で使用した成分の情報は、次の通りである。
・アクリル酸2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル(株式会社日本触媒製、商品名「VEEA」)
・フェノキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製、商品名「V#192」)
・ケトン樹脂(Evonik社製、商品名「TEGO(登録商標) VariPlus CA」 水酸基価:110mgKOH/g)
・ケトン樹脂(BASF社製、商品名「Laropal(登録商標) A81(水酸基価:40mgKOH/g)
・テルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル株式会社製、商品名「YSポリスターU115」)
・A-TPO(Lambson社製、ジフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィンオキサイド、光ラジカル重合開始剤)
・Omnirad 819(BASFジャパン株式会社製、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、光ラジカル重合開始剤)
・A-2ITX(Lambson社製、2-イソプロピルチオキサントン、増感剤)
・フェノチアジン(精工化学株式会社製、ラジカル重合禁止剤)
・フッ素系界面活性剤(DIC株式会社製、商品名「メガファック(登録商標)F-556」)
[実施例A2(Alインク例2)]
実施例A1の(2)紫外線硬化型インク組成物の調製において、ケトン樹脂(Evonik社製、商品名「TEGO(登録商標) VariPlus CA」 水酸基価:110mgKOH/g)に代えてケトン樹脂(BASF社製、商品名「Laropal(登録商標) A81(水酸基価:40mgKOH/g))を使用したことを除いて、実施例A1と同様に(1)アルミニウム顔料分散液の調製および(2)紫外線硬化型インク組成物の調製を行うことによって、紫外線硬化型インク組成物(Alインク例2)を得た。
【0142】
[実施例A3~A4(Alインク例3~4)]
実施例A1の(2)紫外線硬化型インク組成物の調製において、VEEAに加えてフェノキシエチルアクリレートを表1に記載の組成(質量%)で使用したことを除いて、実施例A1と同様に(1)アルミニウム顔料分散液の調製および(2)紫外線硬化型インク組成物の調製を行うことによって、紫外線硬化型インク組成物(Alインク例3~4)を得た。つまり、実施例A3~A4は、VEEA単独使用の実施例A1~A2に対して、モノマーとしてVEEAおよびフェノキシエチルアクリレートの混合物を使用した実施例である。
【0143】
[実施例A5~A8(Alインク例5~8)]
実施例A1の(2)紫外線硬化型インク組成物の調製において、VEEAおよびケトン樹脂を表1に記載の組成(質量%)で使用したことを除いて、実施例A1と同様に(1)アルミニウム顔料分散液の調製および(2)紫外線硬化型インク組成物の調製を行うことによって、紫外線硬化型インク組成物(Alインク例5~8)を得た。つまり、実施例A5~A8は、実施例A1のケトン樹脂の含有量を基準にして下側および上側にケトン樹脂の含有量を変化させた実施例である。
【0144】
[実施例A9(Alインク例9)]
実施例A1の(2)紫外線硬化型インク組成物の調製において、フッ素系界面活性剤に代えてシリコーン系界面活性剤(Evonik社製、商品名「TEGO(登録商標) Wet 240」)を使用したことを除いて、実施例A1と同様に(1)アルミニウム顔料分散液の調製および(2)紫外線硬化型インク組成物の調製を行うことによって、紫外線硬化型インク組成物(Alインク例9)を得た。
【0145】
[比較例A1(Alインク例10)]
実施例A1の(2)紫外線硬化型インク組成物の調製において、ケトン樹脂に代えてテルペンフェノール樹脂を使用したことを除いて、実施例A1と同様に(1)アルミニウム顔料分散液の調製および(2)紫外線硬化型インク組成物の調製を行うことによって、紫外線硬化型インク組成物(Alインク例10)を得た。
【0146】
[比較例A2(Alインク例11)]
実施例A1の(2)紫外線硬化型インク組成物の調製において、ケトン樹脂を使用しなかったことを除いて、実施例A1と同様に(1)アルミニウム顔料分散液の調製および(2)紫外線硬化型インク組成物の調製を行うことによって、紫外線硬化型インク組成物(Alインク例11)を得た。
【0147】
[インク組成物の評価]
(1)保存安定性
実施例A1~A9および比較例A1~A2で得られた紫外線硬化型インク組成物(Alインク例1~11)を透明なサンプル瓶に入れ、完全に密閉した。このサンプル瓶を60℃で5日間静置した。その後、静置前後の状態を目視で比較して保存安定性を評価した。保存安定性の評価基準は、次の通りである。評価結果を表1に示す。
「〇」:静置前後で、ほぼ増粘なし
「△」:静置後に10mPas程度増粘あり。
「×」:静置後に粘度が激増しゲル化した。
(2)インクジェット吐出性
実施例A1~A9および比較例A1~A2で得られた紫外線硬化型インク組成物(Alインク例1~11)の初期粘度を、東機産業株式会社製の粘度計(TVE-35L)で測定した。それぞれの初期粘度を測定することによりインクジェット吐出性を評価した。インクジェット吐出性の評価基準は、次の通りである。評価結果を表1に示す。インクジェット吐出性と初期粘度との関係性については、ピエゾ式インクジェットインクとして初期粘度が低粘度であり過ぎると、ノズルからの押し出しの際にインクの飛び散りが起こるサテライトが発生して描写が悪くなる。一方、初期粘度が高粘度であり過ぎると、ノズル詰まりの原因になり得る。
「〇」:初期粘度10±1mPas
「△」:初期粘度6~8mPas、または11~14mPas
「×」:初期粘度5mPas以下、または15mPas以上
[評価結果]
表1に示すように、実施例A1~実施例A9と比較例A1~A2との比較から、ケトン樹脂を含有する紫外線硬化型インク組成物であれば、保存安定性およびインクジェット吐出性がいずれも良好であった。また、比較例A1の結果から、樹脂を含有するが、その樹脂がケトン樹脂に代えてテルペンフェノール樹脂である場合には、良好な保存安定性およびインクジェット吐出性が得られないことが分かった。
【0148】
また、実施例A1および実施例A2の比較から、ケトン系樹脂の水酸基価が100mgKOH/g以上である実施例A1であれば、ケトン系樹脂の水酸基価が100mgKOH/g未満の実施例A2に比べて、ケトン系樹脂とアルミニウム顔料分散液との親和性が高くなり、保存安定性に優れることが分かった。
【0149】
また、実施例A3と実施例A4との比較から、紫外線硬化型インク組成物のモノマーとしてVEEAとその他のモノマーとを併用する場合、モノマーの総質量に対するVEEAの含有量が85質量%以上であれば、優れた保存安定性およびインクジェット吐出性を維持できることが分かった。ただし、実施例A3のように、VEEAの含有量が85質量%未満であっても、保存安定性にはほとんど影響がなく、インクジェット吐出性が若干低下する程度であることが分かった。
【0150】
また、実施例A1および実施例A6~A7と、実施例A5および実施例A8との比較から、紫外線硬化型インク組成物の総質量に対するケトン樹脂の含有量が10質量%以上、25質量%以下であれば、優れた保存安定性およびインクジェット吐出性を維持できることが分かった。ただし、実施例A5のように、ケトン樹脂の含有量が10質量%未満であっても、インクジェット吐出性にはほとんど影響がなく、保存安定性が若干低下する程度であることが分かった。一方、実施例A8のように、ケトン樹脂の含有量が25質量%を超えている場合には、保存安定性にはほとんど影響がなく、インクジェット吐出性が若干低下する程度であることが分かった。
【0151】
また、実施例A1と実施例A9との比較から、インクに含有される界面活性剤は、フッ素系界面活性剤(実施例A1)およびシリコーン系界面活性剤(実施例A9)のいずれであっても、優れた保存安定性およびインクジェット吐出性を発現できることが分かった。
2.実施例Bシリーズ(実施例B1~B13および参考例B1~B2)
下記表2は、実施例Bシリーズに使用するプライマ受容体インク(プライマ例)の組成および当該プライマ受容体インクの評価結果を示している。下記表3および表4は、実施例B1~B13および参考例B1~B2に係るインクセットにおけるAlインク例とプライマ例との組み合わせ、およびインクセットの評価結果を示している。以下、プライマ受容体インクの調製方法およびインクセットの評価方法を説明する。
【0152】
【表2】
【0153】
【表3】
【0154】
【表4】
【0155】
[プライマ例1~8]
表2に示す成分を所定の含有割合で配合して十分に溶解するまで撹拌することにより、プライマ受容体インク(プライマ例1~8)を調製した。
【0156】
なお、表2で使用した成分の情報は、次の通りである。
・セルロースアセテートプロピオネート(EASTMAN CHEMICAL社製、商品名「CAP-504-0.2」)
・セルロースアセテートブチレート(EASTMAN CHEMICAL社製、商品名「CAB-553-0.4」)
・ポリビニルブチラール(株式会社クラレ製、商品名「モビタール(登録商標) B30H」)
・ジエチレングリコールエチルメチルエーテル(東邦化学工業株式会社製、商品名「ハイソルブEDM」)
・3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(株式会社クラレ製、商品名「ソルフィット(登録商標)」)
・アクリル系レベリング剤(BYK社製、商品名「BYK-350」)
[プライマ受容体インクの評価]
(1)保存安定性
プライマ例1~8に係るプライマ受容体インクを透明なサンプル瓶に入れ、完全に密閉した。このサンプル瓶を室温で2日間静置した。その後、静置前後の状態を目視で比較して保存安定性を評価した。保存安定性の評価基準は、次の通りである。評価結果を表2に示す。
「〇」:静置前後で特に変化なし
「△」:静置後に多少の濁りが生じているが、瓶を振ると解消する。
「×」:静置後に濁りが生じており、その濁りが消えず分散が壊れている。
(2)インクジェット吐出性
プライマ例1~8に係るプライマ受容体インクを、ADVANTEC社製の減圧濾過用フィルターホルダー(KGS-25)に入れ、ADVANTEC社製のガラス濾紙(GB-140)により減圧濾過を行った。減圧濾過に要する時間を測定することによりインクジェット吐出性を評価した。濾過の状態が悪いと吐出詰まりの可能性があるためである。インクジェット吐出性の評価基準は、次の通りである。評価結果を表2に示す。
「〇」 :30秒以内
「〇△」:31秒以上45秒以内
「△」 :46秒以上60秒以内
「×」 :61秒以上
[評価結果]
表2に示すように、プライマ例1~2およびプライマ例5~8と、プライマ例3~4との比較から、セルロースアセテート系樹脂およびグリコールエーテル系溶剤の両方を含有するプライマ受容体インクであれば、保存安定性およびインクジェット吐出性がいずれも良好であった。特に、プライマ例4によれば、グリコールエーテル系溶剤を含有していないため、セルロースアセテートプロピオネートが溶剤中に溶け残り、他の評価実験に使用することができない状態であった。
【0157】
また、プライマ例1とプライマ例2との比較から、セルロースアセテート系樹脂であっても、セルロースアセテートブチレートよりもセルロースアセテートプロピオネートを使用する方が、より優れたインクジェット吐出性を達成できることが分かった。
【0158】
また、プライマ例1およびプライマ例5~8の比較から、プライマ受容体インクの総質量に対するグリコールエーテル系溶剤の含有量が20質量%以上、45質量%以下であれば、優れた保存安定性およびインクジェット吐出性を維持できることが分かった。ただし、プライマ例5のように、グリコールエーテル系溶剤の含有量が20質量%未満であっても、インクジェット吐出性にはほとんど影響がなく、保存安定性が若干低下する程度であることが分かった。一方、プライマ例8のように、グリコールエーテル系溶剤の含有量が45質量%を超えている場合には、保存安定性にはほとんど影響がなく、インクジェット吐出性が若干低下する程度であることが分かった。
【0159】
[実施例B1~B13および参考例B1~B2]
図2図3を参照して、表3および表4に示す組み合わせで実施例B1~B13および参考例B1~B2に係るインクセットを準備し、ピエゾヘッドを備えるピエゾ方式のインクジェットプリンタにセットした。次に、常温常圧下で、アクリル板(株式会社クラレ製、商品名「コモグラス(登録商標) 9041K 2mm厚 A4サイズ」)からなる基材2に対して、A4ベタパターンとなるようにプライマ受容体インクを吐出してサンプル画像を印刷した。印刷条件は、印刷速度:50m/min、解像度:600×600、パス数:4とした。その後、70℃のオーブンで5分間、乾燥させることによりプライマ受容層6を形成した。
【0160】
次に、常温常圧下で、プライマ受容層6上に対して、A4ベタパターンとなるようにメタリックインク11を吐出して積層した。印刷条件は、プライマ受容層6の形成時と同じである。その後、印刷層3が形成された基材2を紫外線照射装置に移し、紫外線照射による硬化処理を行った。紫外線の照射条件は、波長:350nm~420nm、搬送速度:25m/minとした。以上により、アクリル板上に、プライマ受容層6およびメタリック層7の積層体からなるA4ベタパターンのサンプル画像が記録された評価サンプルを作製した。そして、得られた評価サンプルに関して、以下の評価を行った。
【0161】
[サンプル画像の評価]
(1)光沢性
各評価サンプルのサンプル画像を上から目視で観察することにより、光沢性を評価した。光沢性の評価基準は、次の通りである。評価結果を表3および表4に示す。
「〇」:銀光沢あり
「△」:光沢は少ないが銀色に見えた
「×」:光沢がなく灰色に見えた
(2)定着性
各評価サンプルのサンプル画像の表面にセロハンテープを貼着し、400gの荷重を1分間、サンプル画像の全体に均等に加えた。その後、セロハンテープを剥離し、剥離後のサンプル画像の状態を目視で観察することにより、定着性を評価した。定着性の評価基準は、次の通りである。評価結果を表3および表4に示す。
「〇」:サンプル画像(印刷物)に影響がない。
「△」:サンプル画像(印刷物)の一部がセロハンテープ側に移っていた。
「×」:サンプル画像(印刷物)の全部がセロハンテープ側に移っていた。
【0162】
[評価結果]
表3および表4に示すように、実施例B1~B13と参考例B1との比較から、非浸透性基材であるアクリル板に印刷層3を印刷する場合でも、プライマ受容層6を介してメタリック層7を印刷すれば、光沢性および定着性が良好な印刷層3を形成できることが分かった。これは、紫外線硬化型インク組成物の液体成分がプライマ受容層6に浸透することにより、液体成分が下側にアルミニウム粒子13が上側にそれぞれ上手く分離され、アルミニウム粒子13の配向が促進されたものと考えられる。ただし、参考例B2の結果から、プライマ受容層6が設けられる場合でも、プライマ受容体インクにセルロースアセテート系樹脂が含有されていない場合には、光沢性が低下することが分かった。
【0163】
一方、参考例B1では、紫外線硬化型インク組成物がアクリル板(基材2)に浸透せず、インク中でアルミニウム粒子13が塗膜表面に十分にリーフィングしなかったために配向せず、光沢性が低下したと考えられる。
【0164】
また、実施例B3および実施例B8の結果から、インクジェット吐出性が若干劣る紫外線硬化型インク組成物を使用した場合は、たとえセルロースアセテート系樹脂およびグリコールエーテル系溶剤の両方を含有するプライマ受容層6が設けられていても、定着性が若干低下することが分かった。より詳細には、実施例B3は、使用したAlインク例3においてVEEAの配合量が他のAlインク例に比べて少なかった結果、定着性が低下したと考えられる。一方、実施例B8では、使用したAlインク例8において樹脂の配合割合が大きく、モノマーの配合割合が少なくなった。その結果、重合性モノマーの硬化の促進が阻害され、定着性が低下したと考えられる。
3.実施例Cシリーズ(実施例C1~C22)
下記表5および表6は、実施例Cシリーズに使用するプライマ受容体インク(UVプライマ例)の組成および当該プライマ受容体インクの評価結果を示している。下記表7~表9は、実施例C1~C22に係るインクセットにおけるAlインク例とUVプライマ例との組み合わせ、およびインクセットの評価結果を示している。以下、プライマ受容体インクの調製方法およびインクセットの評価方法を説明する。
【0165】
【表5】
【0166】
【表6】
【0167】
【表7】
【0168】
【表8】
【0169】
【表9】
【0170】
[UVプライマ例1~14]
表5および表6に示す成分を所定の含有割合で配合して十分に溶解するまで撹拌することにより、プライマ受容体インク(UVプライマ例1~14)を調製した。
【0171】
なお、表5および表6で使用した成分の情報は、次の通りである。
・アクリル酸2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル(株式会社日本触媒製、商品名「VEEA」)
・フェノキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製、商品名「V#192」)
・ケトン樹脂(Evonik社製、商品名「TEGO(登録商標) VariPlus CA」 水酸基価:110mgKOH/g)
・ケトン樹脂(BASF社製、商品名「Laropal(登録商標) A81(水酸基価:40mgKOH/g)
・テルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル株式会社製、商品名「YSポリスターU115」)
・Omnirad 819(BASFジャパン株式会社製、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、光ラジカル重合開始剤)
・A-2ITX(Lambson社製、2-イソプロピルチオキサントン、増感剤)
・フェノチアジン(精工化学株式会社製、ラジカル重合禁止剤)
・フッ素系界面活性剤(DIC株式会社製、商品名「メガファック(登録商標)F-556」)
・シリコーン系界面活性剤(Evonik社製、商品名「TEGO(登録商標) Wet 240」)
[プライマ受容体インクの評価]
(1)保存安定性
UVプライマ例1~14に係るプライマ受容体インクを透明なサンプル瓶に入れ、完全に密閉した。このサンプル瓶を室温で2日間静置した。その後、静置前後の状態を目視で比較して保存安定性を評価した。保存安定性の評価基準は、次の通りである。評価結果を表5および表6に示す。
「〇」:静置前後で特に変化なし
「△」:静置後に多少の濁りが生じているが、瓶を振ると解消する。
「×」:静置後に濁りが生じており、その濁りが消えず分散が壊れている。
(2)インクジェット吐出性
UVプライマ例1~14に係るプライマ受容体インクを、ADVANTEC社製の減圧濾過用フィルターホルダー(KGS-25)に入れ、ADVANTEC社製のガラス濾紙(GB-140)により減圧濾過を行った。減圧濾過に要する時間を測定することによりインクジェット吐出性を評価した。濾過の状態が悪いと吐出詰まりの可能性があるためである。インクジェット吐出性の評価基準は、次の通りである。評価結果を表5および表6に示す。
「〇」 :30秒以内
「〇△」:31秒以上45秒以内
「△」 :46秒以上60秒以内
「×」 :61秒以上
[評価結果]
表5および表6に示すように、UVプライマ例1~14の結果から、いずれのUVプライマ例1~14であっても保存安定性がいずれも良好であった。一方、UVプライマ例1、UVプライマ例8およびUVプライマ例9の比較から、VEEAの含有量がモノマーの総質量に対して80質量%以下になると、インク粘度が上昇し、インクジェット吐出性が若干低下することが分かった。
【0172】
また、表5および表6に示すように、UVプライマ例1およびUVプライマ例11~14の比較から、UVプライマインクの総質量に対する樹脂の割合が30質量%以上になると、インク粘度が上昇し、インクジェット吐出性が若干低下することが分かった。
【0173】
また、表5に示すように、UVプライマ例1~3の比較から、インク組成物に含有される樹脂はケトン系樹脂およびテルペンフェノール樹脂のいずれであっても、プライマ受容体インク単体の優れた保存安定性およびインクジェット吐出性を維持できることが分かった。
【0174】
また、表5に示すように、UVプライマ例1およびUVプライマ例4~7の比較から、重合開始剤の含有量がモノマーの総質量に対して少なくとも1質量%以上9質量%以下の範囲では、プライマ受容体インク単体の保存安定性およびインクジェット吐出性に全く問題ないことが分かった。
【0175】
また、表5および表6に示すように、UVプライマ例1およびUVプライマ例10の比較から、インク組成物に含有される界面活性剤はフッ素系およびシリコーン系のいずれであっても、プライマ受容体インク単体の優れた保存安定性およびインクジェット吐出性を維持できることが分かった。
【0176】
[実施例C1~C22]
図2図3を参照して、表7~表9に示す組み合わせで実施例C1~C22に係るインクセットを準備し、ピエゾヘッドを備えるピエゾ方式のインクジェットプリンタにセットした。次に、常温常圧下で、アクリル板(株式会社クラレ製、商品名「コモグラス(登録商標) 9041K 2mm厚 A4サイズ」)からなる基材2に対して、A4ベタパターンとなるようにプライマ受容体インクを吐出してサンプル画像を印刷した。印刷条件は、印刷速度:50m/min、解像度:600×600、パス数:4とした。その後、プライマ受容体インクが印刷された基材2を紫外線照射装置に移し、紫外線照射による仮硬化処理(半硬化処理)を行った。紫外線の照射条件は、波長:350nm~420nm、搬送速度:25m/minとした。これにより、プライマ受容層6を形成した。
【0177】
次に、常温常圧下で、プライマ受容層6上に対して、A4ベタパターンとなるようにメタリックインク11を吐出して積層した。印刷条件は、プライマ受容層6の形成時と同じである。その後、印刷層3が形成された基材2を紫外線照射装置に移し、紫外線照射による本硬化処理を行った。紫外線の照射条件は、波長:350nm~420nm、搬送速度:25m/minとした。以上により、アクリル板上に、プライマ受容層6およびメタリック層7の積層体からなるA4ベタパターンのサンプル画像が記録された評価サンプルを作製した。そして、得られた評価サンプルに関して、以下の評価を行った。
【0178】
[サンプル画像の評価]
(1)光沢性
各評価サンプルのサンプル画像を上から目視で観察することにより、光沢性を評価した。光沢性の評価基準は、次の通りである。評価結果を表7~表9に示す。
「〇」:銀光沢あり
「△」:光沢は少ないが銀色に見えた
「×」:光沢がなく灰色に見えた
(2)定着性
各評価サンプルのサンプル画像の表面にセロハンテープを貼着し、400gの荷重を1分間、サンプル画像の全体に均等に加えた。その後、セロハンテープを剥離し、剥離後のサンプル画像の状態を目視で観察することにより、定着性を評価した。定着性の評価基準は、次の通りである。評価結果を表7~表9に示す。
「〇」:サンプル画像(印刷物)に影響がない。
「△」:サンプル画像(印刷物)の一部がセロハンテープ側に移っていた。
「×」:サンプル画像(印刷物)の全部がセロハンテープ側に移っていた。
【0179】
[評価結果]
表7~表9に示すように、実施例C1~C22の結果から、非浸透性基材であるアクリル板に印刷層3を印刷する場合でも、プライマ受容層6を介してメタリック層7を印刷すれば、光沢性および定着性が良好な印刷層3を形成できることが分かった。これは、紫外線硬化型インク組成物の液体成分がプライマ受容層6に浸透することにより、液体成分が下側にアルミニウム粒子13が上側にそれぞれ上手く分離され、アルミニウム粒子13の配向が促進されたものと考えられる。
【0180】
しかも、実施例C1~C22では、プライマ受容層6およびメタリック層7がいずれも紫外線硬化型のインクである。プライマ受容層6を印刷後に紫外線照射することにより半硬化状態とし、メタリックインクを受容している。また、プライマ受容層6の硬化性は維持しつつ、重合開始剤のみの配合量の調整により硬化速度を遅くする。これにより、最初の紫外線照射では半硬化、メタリックインクを印刷後の紫外線照射により完全硬化させることができる。
【0181】
プライマ受容層6をインクジェット印刷することで被印刷基材の選択によらずメタリック光沢を付与することが可能である。また、プライマ受容層6とメタリック層7が共に紫外線硬化型のインクであるため、1種類のUVインクジェットプリンタのみでプライマ受容層6およびメタリック層7を印刷することができる。この点が、実施例B1~B13と大きく異なる点である。実施例B1~B13では、プライマ受容層6がセルロースアセテート系樹脂およびグリコールエーテル系溶剤を含有する溶剤系プライマ受容体インクにより形成されるため、メタリック層7のためのUVインクジェットプリンタとは別に、プライマ受容層6のための溶剤用インクジェットプリンタが必要であった。
【0182】
また、実施例C3および実施例C8の結果から、インクジェット吐出性が若干劣る紫外線硬化型インク組成物(メタリックインク11)を使用した場合は、たとえケトン系樹脂を含有し、メタリックインク11に近い組成を有するプライマ受容層6が設けられていても、定着性が若干低下することが分かった。より詳細には、実施例C3は、使用したAlインク例3においてVEEAの配合量が他のAlインク例に比べて少なかった結果、定着性が低下したと考えられる。一方、実施例C8では、使用したAlインク例8において樹脂の配合割合が大きく、モノマーの配合割合が少なくなった。その結果、重合性モノマーの硬化の促進が阻害され、定着性が低下したと考えられる。
【0183】
表1、表7および表9に示すように、実施例C1、実施例C9および実施例C18の比較から、メタリックインク11およびプライマ受容体インク(UVプライマインク)に含有される界面活性剤は同種が好ましいことが分かった。実施例C9では、使用したAlインク例9がシリコーン系界面活性剤を単独で含有し、UVプライマ例1がフッ素系界面活性剤を単独で含有しているため、光沢性が若干欠けていた。同様に、実施例C18では、使用したAlインク例1がフッ素系界面活性剤を単独で含有し、UVプライマ例10がシリコーン系界面活性剤を単独で含有しているため、光沢性が若干欠けていた。
【0184】
特に、メタリックインク11およびプライマ受容体インク(UVプライマインク)が双方ともにフッ素系界面活性剤を含有することが好ましい。メタリックインクのフッ素系界面活性剤は塗膜表面に配向しやすく、アルミニウム顔料が表面にリーフィングすることを補助する。さらに、UVプライマインクのフッ素系界面活性剤も同様に、アルミニウム顔料のリーフィングを補助するためである。
【0185】
表7および表8に示すように、実施例C1、実施例C10および実施例C11の結果から、UVプライマインクに含有される樹脂はケトン系樹脂が好ましいことが分かった。ケトン系樹脂はUVプライマインク単体としては大きな作用は起こさないが(表5のUVプライマ例1~3の比較)、メタリックインク11が上層に印刷された後、アルミニウム顔料のリーフィング時に分散性を保持する効果を有する。
【0186】
また、UVプライマインク中のケトン系樹脂の含有量は、プライマ受容層6およびメタリック層7の組み合わせにおいて、UVプライマインクの総質量に対して5質量%を超える(より好ましくは、10質量%以上)ことが好ましいことが分かった。これは、表9の実施例C19~C22の結果が明示している。実施例C19では、UVプライマインク中のケトン系樹脂の含有量が5質量%であるため、リーフィング時のAl顔料の分散性が低下し、光沢性が欠ける結果となった。なお、UVプライマインク中のケトン系樹脂の含有量が30質量%以上の場合、プライマ受容層6およびメタリック層7の組み合わせでは優れた光沢性および定着性を実現できるが、UVプライマインク単体であるとインクジェット吐出性に劣ることは前述の通りである(表6のUVプライマ例14参照)。
【0187】
表5および表8に示すように、実施例C12~C15の結果から、UVプライマインクの重合開始剤はメタリックインクの重合開始剤よりも少ないことが好ましいことが分かった。その中でも、特にアシルフォスフィンオキサイド系開始剤の配合量に差があることが好ましい。より詳細には、UVプライマインクのモノマー(M2)に対するUVプライマインク中のアシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤(P2)の第2質量割合(P2/M2)が、メタリックインクのモノマー(M1)に対するメタリックインク中のアシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤(P1)の第1質量割合(P1/M1)よりも少ないことが好ましい。
【0188】
特に、第2質量割合(P2/M2)が、第1質量割合(P1/M1)の30%以上70%以下であることが好ましい。実施例C15では(P2/M2)/(P1/M1)が15.09%(≦30%)であるため、硬化が不十分となり定着性が欠ける結果となった。一方、実施例C18では(P2/M2)/(P1/M1)が96.60%(≧70%)であるため、UVプライマインクへのメタリックインクの浸透が不十分なままで硬化してしまい、リーフィングが不十分となり光沢性が欠ける結果となった。
【0189】
表5~表9に示すように、実施例C1、実施例C16および実施例C17の結果から、UVプライマインク中のVEEAの含有量は、モノマーの総質量に対して80質量%を超えることが好ましいことが分かった。より詳細には、実施例C16は、使用したUVプライマ例8においてVEEAの配合量がモノマーの総質量に対して80質量%であり、実施例C1(UVプライマインクのVEEA=100質量%)および実施例C17(UVプライマインクのVEEA=85質量%)に比べて少なかった結果、定着性が低下したと考えられる。
4.実施例Dシリーズ(実施例D1~D8)
下記表10は、実施例D1~D8に係る印刷物の印刷方法、および当該印刷物の評価結果を示している。以下、印刷物の印刷方法および評価方法を説明する。
【0190】
【表10】
【0191】
[トップコートインクの調製]
以下の各成分を、表11に示す割合で配合して、十分に溶解するまで撹拌した後、5μmのメンブランフィルタを用いて濾過することにより、光硬化性クリアインク(トップコートインク)を調製した。
・ラジカル重合性モノマー:トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート(サートマー社製、商品名「SR368」)
・ラジカル重合性モノマー:アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(株式会社日本触媒製、商品名「VEEA」)
・光ラジカル重合開始剤:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(BASFジャパン株式会社製、商品名「Omnirad 819」)・ラジカル重合禁止剤:キノン系ゲル化防止剤(BASFジャパン株式会社製、商品名「Irgastab UV-22」)
・界面活性剤:水酸基含有ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(ビックケミー・ジャパン株式会社製、商品名「BYK-377」)
【0192】
【表11】
【0193】
[カラーインクの調製]
まず、以下の各成分を、表12に示す割合で配合し、撹拌したのちビーズミルを用いて分散させて、マゼンダ顔料分散体を調製した。
・マゼンタ顔料:C.I.ピグメントレッド202〔BASF社製のCinquasia Magenta L4530〕
・分散剤:リューブリゾール社製、商品名「ソルスパース(登録商標)32000」
・分散媒:ラジカル重合性成分である、分子中に水酸基を含有しない2-フェノキシエチルアクリレート(サートマー社製、商品名「SR339NS」)
【0194】
【表12】
【0195】
次に、以下の各成分(マゼンダ顔料分散体を除く)を、下記表13に示す割合で配合して、十分に溶解するまで撹拌した後、先に調製したマゼンダ顔料分散体を表13に示す割合で加えてさらに撹拌した後、5μmのメンブランフィルタを用いて濾過することにより、マゼンダのカラーインクを調製した。
・ラジカル重合性モノマー:アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(株式会社日本触媒製、商品名「VEEA」)
・ウレタン(メタ)アクリレート:イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体と、2官能のカプロラクトン系ポリオールと、2-ヒドロキシエチルアクリレートとの反応生成物(重量平均分子量Mw:2000、3官能、以下「UAA」と略記する場合がある。)
・アミン変性アクリレート:サートマー社製、商品名「CN371」
・ジエチルアクリルアミド(DEAA)
・光ラジカル重合開始剤:Speedcure TPO(Lambson社製、ジフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィンオキサイド)
・増感剤:A-2ITX(Lambson社製、2-イソプロピルチオキサントン)
・ラジカル重合禁止剤:N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンのアルミニウム塩(富士フィルム和光純薬株式会社製、商品名「Q-1301」)
・表面調整剤:シリコーン系表面調整剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製、商品名「BYK-UV3510」)
【0196】
【表13】
【0197】
[実施例D1]
まず、消毒用アルコール等を噴霧する手動噴霧器に上記のトップコートインクを充填した。次に、図4を参照して、実施例B1で得られたプライマ受容層6およびメタリック層7の積層体が形成された印刷物1に対して、手動噴霧器から上記のトップコートインクをサンプル画像に噴霧することにより砂吹き処理を行った。そして、砂吹き後の基材2を紫外線照射装置に移し、紫外線照射による硬化処理を行った。紫外線の照射条件は、波長:350nm~420nm、搬送速度:25m/minとした。
【0198】
次に、常温常圧下で、砂吹き層9上に対して、A4ベタパターンとなるように砂吹き処理に使用したトップコートインクと同じトップコートインクを吐出して積層した。印刷条件は、プライマ受容層6の形成時と同じである。その後、印刷層3が形成された基材2を紫外線照射装置に移し、紫外線照射による硬化処理を行った。紫外線の照射条件は、波長:350nm~420nm、搬送速度:25m/minとした。以上により、アクリル板上に、プライマ受容層6、メタリック層7およびトップ層8の積層体からなるA4ベタパターンのサンプル画像が記録された評価サンプルを作製した。
【0199】
[実施例D2]
砂吹き処理を実施しなかったことを除いて、実施例D1と同様にトップ層8を形成することにより、プライマ受容層6、メタリック層7およびトップ層8(砂吹き層9なし)の積層体からなるA4ベタパターンのサンプル画像が記録された評価サンプルを作製した。
【0200】
[実施例D3]
トップ層8のインク材料としてトップコートインクに代えて上記のカラーインクを使用したことを除いて、実施例D1と同様にトップ層8を形成することにより、プライマ受容層6、メタリック層7およびトップ層8(砂吹き層9あり)の積層体からなるA4ベタパターンのサンプル画像が記録された評価サンプルを作製した。
【0201】
[実施例D4]
トップ層8のインク材料としてトップコートインクに代えて上記のカラーインクを使用し、かつ砂吹き処理を実施しなかったことを除いて、実施例D1と同様にトップ層8を形成することにより、プライマ受容層6、メタリック層7およびトップ層8(砂吹き層9なし)の積層体からなるA4ベタパターンのサンプル画像が記録された評価サンプルを作製した。
【0202】
[実施例D5]
プライマ受容層6として実施例C1で得られたプライマ受容層6を使用したことを除いて、実施例D1と同様にトップ層8を形成することにより、プライマ受容層6、メタリック層7およびトップ層8(砂吹き層9あり)の積層体からなるA4ベタパターンのサンプル画像が記録された評価サンプルを作製した。
【0203】
[実施例D6]
プライマ受容層6として実施例C1で得られたプライマ受容層6を使用したことを除いて、実施例D2と同様にトップ層8を形成することにより、プライマ受容層6、メタリック層7およびトップ層8(砂吹き層9なし)の積層体からなるA4ベタパターンのサンプル画像が記録された評価サンプルを作製した。
【0204】
[実施例D7]
プライマ受容層6として実施例C1で得られたプライマ受容層6を使用したことを除いて、実施例D3と同様にトップ層8を形成することにより、プライマ受容層6、メタリック層7およびトップ層8(砂吹き層9あり)の積層体からなるA4ベタパターンのサンプル画像が記録された評価サンプルを作製した。
【0205】
[実施例D8]
プライマ受容層6として実施例C1で得られたプライマ受容層6を使用したことを除いて、実施例D4と同様にトップ層8を形成することにより、プライマ受容層6、メタリック層7およびトップ層8(砂吹き層9なし)の積層体からなるA4ベタパターンのサンプル画像が記録された評価サンプルを作製した。
【0206】
[印刷物の評価]
(1)光沢性
各評価サンプルのサンプル画像を上から目視で観察することにより、光沢性を評価した。光沢性の評価基準は、次の通りである。評価結果を表10に示す。なお、実施例D3、D4、D7およびD8については、メタリックマゼンダカラーのように銀光沢を認識できるかどうかを基準に評価した。
「〇」:銀光沢あり
「△」:光沢は少ないが銀色に見えた
「×」:光沢がなく灰色に見えた
(2)定着性
各評価サンプルのサンプル画像の表面にセロハンテープを貼着し、400gの荷重を1分間、サンプル画像の全体に均等に加えた。その後、セロハンテープを剥離し、剥離後のサンプル画像の状態を目視で観察することにより、定着性を評価した。定着性の評価基準は、次の通りである。評価結果を表10に示す。
「〇」:サンプル画像(印刷物)に影響がない。
「△」:サンプル画像(印刷物)の一部がセロハンテープ側に移っていた。
「×」:サンプル画像(印刷物)の全部がセロハンテープ側に移っていた。
【0207】
[評価結果]
表10に示すように、実施例D1、D3、D5およびD7の結果から、砂吹き処理を行った上で、トップコートインクまたはカラーインクを塗工してトップ層8を印刷することにより、光沢性および定着性のいずれにも優れる印刷層3を形成できることが分かった。これは、砂吹き処理によって形成された砂吹き層9によってメタリック層7が保護され、メタリック層7(配向したアルミニウム粒子13)が、その後に塗布されるトップコートインクまたはカラーインクに直接侵されることがなくなったためであると考えられる。
【0208】
一方、実施例D2、D4、D6およびD8の結果から、砂吹き処理を行わずに、トップコートインクまたはカラーインクをメタリック層7に直接塗工してトップ層8を印刷した場合には、光沢性が若干低下することが分かった。これは、トップコートインクまたはカラーインクの塗布までは規則的に配列していたメタリック層7のアルミニウム粒子13がインクに侵されてインク中に分散してしまったと考えられる。
【符号の説明】
【0209】
1 印刷物
2 基材
3 印刷層
4 印刷面
5 裏面
6 プライマ受容層
7 メタリック層
8 トップ層
9 砂吹き層
10 本吹き層
11 メタリックインク
13 アルミニウム粒子
図1
図2
図3
図4
図5