(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180349
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ポリエステル弾性複合糸、その製造方法、並びにそれを含む糸及び織物
(51)【国際特許分類】
D02G 1/02 20060101AFI20241219BHJP
D02G 3/32 20060101ALI20241219BHJP
D02G 3/04 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
D02G1/02 A
D02G3/32
D02G3/04
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024096061
(22)【出願日】2024-06-13
(31)【優先権主張番号】112122182
(32)【優先日】2023-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】592177443
【氏名又は名称】新光合成纎維股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】呉 國忠
(72)【発明者】
【氏名】▲ト▼ 益仁
(72)【発明者】
【氏名】徐 嘉珍
【テーマコード(参考)】
4L036
【Fターム(参考)】
4L036MA04
4L036MA05
4L036MA15
4L036MA39
4L036PA05
4L036PA14
4L036PA33
4L036PA42
4L036PA46
4L036UA07
(57)【要約】
【課題】ポリエステル弾性複合糸、その製造方法、並びにそれを含む糸及び織物を提供する。
【解決手段】ポリエステル繊維を原料として仮撚工程によりポリエステル繊維糸を形成することと、弾性を有する熱可塑性ポリエステルエラストマーを原料として解舒を行うことによって、ポリエステルエラストマー繊維糸を形成することと、混繊工程によりポリエステル繊維糸とポリエステルエラストマー繊維糸を混合させ、2種類の繊維糸を含むポリエステル弾性複合糸を得ることと、を含む、ポリエステル弾性複合糸の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル繊維を原料として仮撚工程によりポリエステル繊維糸を形成することと、
弾性を有する熱可塑性ポリエステルエラストマーを原料として解舒を行うことによって、ポリエステルエラストマー繊維糸を形成することと、
混繊工程により前記ポリエステル繊維糸と前記ポリエステルエラストマー繊維糸を混合させ、2種類の繊維糸を含むポリエステル弾性複合糸を得ることと、を含む、ポリエステル弾性複合糸の製造方法。
【請求項2】
前記ポリエステル繊維は、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリブチレンテレフタレート(PBT)繊維、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)繊維、カチオン可染ポリエステル繊維、又は再生ポリエステル繊維である、請求項1に記載のポリエステル弾性複合糸の製造方法。
【請求項3】
前記ポリエステル繊維は、芯鞘型繊維、セグメントパイ繊維、又は海島型繊維である、請求項1に記載のポリエステル弾性複合糸の製造方法。
【請求項4】
前記熱可塑性ポリエステルエラストマーは、PBT型ポリエステルエラストマーである、請求項1に記載のポリエステル弾性複合糸の製造方法。
【請求項5】
前記熱可塑性ポリエステルエラストマーは、非リサイクルプロセス又はリサイクルプロセスにより製造されたものである、請求項1に記載のポリエステル弾性複合糸の製造方法。
【請求項6】
前記熱可塑性ポリエステルエラストマーは、物理的リサイクルプロセス又は化学的リサイクルプロセスにより製造されたものである、請求項5に記載のポリエステル弾性複合糸の製造方法。
【請求項7】
前記ポリエステルエラストマー繊維糸は、モノフィラメント又はマルチフィラメントである、請求項1に記載のポリエステル弾性複合糸の製造方法。
【請求項8】
前記ポリエステルエラストマー繊維糸のフィラメント当たりのデニール(dpf)は、100デニール(De)以下である、請求項7に記載のポリエステル弾性複合糸の製造方法。
【請求項9】
前記ポリエステル繊維糸と前記ポリエステルエラストマー繊維糸の延伸倍率が異なる、請求項1に記載のポリエステル弾性複合糸の製造方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載のポリエステル弾性複合糸の製造方法により製造されるポリエステル弾性複合糸であって、前記ポリエステル繊維糸と前記ポリエステルエラストマー繊維糸を含み、前記ポリエステル繊維糸と前記ポリエステルエラストマー繊維糸は、それぞれ独立して互いに撚り合わせられている、ポリエステル弾性複合糸。
【請求項11】
請求項10に記載の前記ポリエステル弾性複合糸と他の繊維とを含む、糸。
【請求項12】
請求項10に記載の前記ポリエステル弾性複合糸又は請求項11に記載の前記糸を含む、織物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル繊維を原料として仮撚工程によりポリエステル繊維糸を形成するとともに、弾性を有する熱可塑性ポリエステルエラストマー(thermoplastic polyester elastomer; TPEE)を使用し解舒(unwind)を行うことによって、ポリエステルエラストマー繊維糸を形成した後、混繊工程により前記ポリエステル繊維糸と前記ポリエステルエラストマー繊維糸を混合させ、ポリエステル弾性複合糸を形成するポリエステル弾性複合糸の製造方法に関するものである。本発明は、さらに、ポリエステル弾性複合糸、並びに前記ポリエステル弾性複合糸を含む糸及び織物を提供する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル繊維、例えば、PET繊維は、テレフタル酸モノマーとエチレングリコールモノマーを重合したものであり、耐熱性や化学的安定性に優れ、高い機械的強度を有することから、テキスタイル原料として衣服、インテリア、工業用途等に広く使用されている。しかし、PETは、モジュラスが高く、硬度が大きく、弾性回復率がナイロン66に比べてはるかに劣るという欠点がある。上記のような弾性回復率が低いという欠点を改善するために、重合工程中に1,4-ブタンジオール(1,4-BDO)モノマー、1,3-プロパンジオール(1,3-BDO)モノマー、及びテレフタル酸モノマーを重合させることによって、PBT、PTTを製造する方法が提案されている。PBT、PTTにより形成された繊維は、弾性がPETにより形成された繊維よりも優れている。しかしながら、繊維の弾性回復率は依然として不十分である。
【0003】
弾性不足の問題を解決するために、業界では、一般的に、ポリエステル繊維から仮撚加工糸を生成、さらに「糸巻き」によりスパンデックス(Spandex;ポリウレタンから紡糸されたフィラメントの一種)と結合させる従来の方法を採用している。このような複合フィラメントの弾性回復率は非常に良いが、両者は異なる材質で、一緒にリサイクルしにくいため、環境に大きな影響を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記のような従来の技術の問題点を解決するために、伸縮弾性及び弾性回復率を有する織物を製造するためのポリエステル弾性複合糸の製造方法を提供することを目的としている。前記ポリエステル弾性複合糸は、伸縮弾性及び弾性回復率を有する糸及び織物の製造に使用することができ、リサイクルが容易であり、環境への影響を低減することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ポリエステル繊維を原料として仮撚工程によりポリエステル繊維糸を形成することと、弾性を有する熱可塑性ポリエステルエラストマーを原料として解舒を行うことによって、ポリエステルエラストマー繊維糸を形成することと、混繊工程によりポリエステル繊維糸とポリエステルエラストマー繊維糸を混合させ、2種類の繊維糸を含むポリエステル弾性複合糸を得ることと、を含む、ポリエステル弾性複合糸の製造方法を提供する。
【0006】
一実施形態では、ポリエステル繊維は、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリブチレンテレフタレート(PBT)繊維、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)繊維、カチオン可染ポリエステル繊維、又は再生ポリエステル繊維である。
【0007】
一実施形態では、ポリエステル繊維は、芯鞘型繊維、セグメントパイ繊維、又は海島型繊維である。
【0008】
一実施形態では、熱可塑性ポリエステルエラストマーは、PBT型ポリエステルエラストマーである。
【0009】
一実施形態では、熱可塑性ポリエステルエラストマーは、非リサイクルプロセス又はリサイクルプロセスにより製造されたものである。
【0010】
一実施形態では、熱可塑性ポリエステルエラストマーは、物理的リサイクルプロセス又は化学的リサイクルプロセスにより製造されたものである。
【0011】
一実施形態では、ポリエステルエラストマー繊維糸は、モノフィラメント又はマルチフィラメントである。
【0012】
一実施形態では、ポリエステルエラストマー繊維糸のフィラメント当たりのデニール(dpf)は、100デニール(De)以下である。
【0013】
一実施形態では、ポリエステル繊維糸とポリエステルエラストマー繊維糸の延伸倍率が異なる。
【0014】
本発明は、さらに、前記方法により製造されるポリエステル弾性複合糸であって、ポリエステル繊維糸とポリエステルエラストマー繊維糸を含み、ポリエステル繊維糸とポリエステルエラストマー繊維糸は、それぞれ独立して互いに撚り合わせられているポリエステル弾性複合糸を提供する。
【0015】
本発明は、さらに、前記ポリエステル弾性複合糸と他の繊維とを含む、糸を提供する。
【0016】
本発明は、さらに、前記ポリエステル弾性複合糸又は前記糸を含む織物を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係わるポリエステル弾性複合糸の製造方法により得られたポリエステル弾性複合糸は、優れた伸縮弾性及び弾性回復率を有するものである。また、本発明に係わるポリエステル弾性複合糸の製造方法により得られたポリエステル弾性複合糸を使用して製織、染色、整理加工を行うことで得られた織物も、優れた伸縮弾性及び弾性回復率を有するものである。さらに、本発明に係わるポリエステル弾性複合糸の製造方法で使用されるポリエステルエラストマー及びポリエステル繊維は、いずれもポリエステル系重合体に属すものであり、織物をリサイクルする際に一緒にリサイクルすることができるため、さらにリサイクルコストを低下させ、環境への影響を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係わる複合糸に弾性を付与するポリエステル弾性複合糸の製造方法の概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係わるポリエステル弾性複合糸の断面の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、織物に弾性を付与するポリエステル弾性複合糸の製造方法を提供する。前記方法は、ポリエステル繊維を原料として仮撚工程によりポリエステル繊維糸を形成するとともに、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)を原料として解舒を行うことによって、ポリエステルエラストマー繊維糸を形成した後、混繊工程によりポリエステル繊維糸とポリエステルエラストマー繊維糸を混合させ、ポリエステル弾性複合糸を生成する。
【0020】
本発明の技術特徴は、特定な技術特徴も含めて、特許請求の範囲に開示されている。本発明の技術特徴を理解するために、本発明について、明細書、本発明の原理に基づく実施形態、及び図面を用いて詳しく説明する。なお、本開示の内容は、当業者であれば理解して実現することができるものである。発明の概念を逸脱しない全ての均等な変更又は改良は、特許請求の範囲に完全にカバーされるものである。
【0021】
明細書及び特許請求の範囲に言及される全ての技術的及び科学的用語は、別段の定義がない限り、当業者が知り得る定義である。単数形の「一つ」、「当該」、又はそれらの類似の用語は、別段の説明がない限り、2つ以上の対象を指すこともできる。本開示で使用される「又は」、「及び」、「と」という用語は、別段の説明がない限り、いずれも「又は/及び」を指す。また、「含む」、「含有する」という用語は、制限的でない開放式の接続詞である。また、前記定義は、用語の定義を説明するためのものだけであり、請求の発明に対する制限として解釈されるべきではない。別段の説明がない限り、本開示で使用される材料は全て市販されるものであり、容易に入手可能である。
【0022】
本開示に記載される濃度又は濃度範囲等の値は、全ての場合において「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。「約」という用語は、当業者によって決定される特定の値の許容誤差範囲内を意味し、その値がどのように測定又は決定されるか、即ち、測定システムの限界に部分的に依存することになる。特定の試験、結果又は実施形態の文脈において、実施形態又は明細書の他の箇所に特に明示的に記載されていない限り、「約」という用語は、本開示の技術分野の慣習にしたがって、1標準偏差以内又は最大5%以内の何れか大きい方を意味する。
【0023】
本開示において、「解舒(unwind)」とは、塊、ボール、束、又はロールのように巻かれた繊維を解きほぐすことを指す。
【0024】
以下の詳細な説明では、本発明の様々な原理に対する理解を提供するために、特定の詳細な内容を開示する例示的な実施形態が示されるが、それらに限定されるものではない。本開示によれば、特定の詳細な内容から逸脱する他の実施形態において本発明を実施可能であることは、当業者には明らかであろう。さらに、本発明の様々な原理に対する説明に焦点を絞るために、良く知られている装置、方法、又は材料の説明を省略する場合がある。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係わる複合糸に弾性を付与するポリエステル弾性複合糸の製造方法の概略図である。
図1に示すように、本発明に係わるポリエステル弾性複合糸の製造方法において、まず、紡糸により形成された繊維A(ポリエステル繊維)を原料として仮撚工程を行った。ポリエステル繊維に対して、解舒を行い、第1軸1を通過させた後、ヒータ2を通過させて加熱し、さらに冷却板3を通過させて冷却し、そして、摩擦スピンドル4を通過させて撚り・解撚を施し、第2軸5を通過させて延伸するここで、ポリエステル繊維糸が生成された。なお、本発明に係わるポリエステル弾性複合糸の製造方法に用いるもう一方の原料は繊維B(熱可塑性ポリエステルエラストマー)であり、熱可塑性ポリエステルエラストマーに対して、解舒を行った後、ゼロ軸9を通過させ、さらに第2軸5を通過させて延伸することで、ポリエステルエラストマー繊維糸が生成された。ポリエステル繊維及び熱可塑性ポリエステルエラストマーが第2軸5で延伸された後、形成されたポリエステル繊維糸及びポリエステルエラストマー繊維糸の各々は同時にエアノズル6に入り、エアノズルにより混繊し交絡させた後、第3軸7を通過させ、巻取機8によりポリエステル弾性複合糸に巻き取られる。
【0026】
この実施形態では、第1軸1と第2軸5との回転速度の違いにより、繊維A(ポリエステル繊維)から第1延伸倍率を有するポリエステル繊維糸が生成された。例えば、第2軸5の回転速度は、400から700m/minの間であっても良い。好ましくは、第2軸5の回転速度は、例えば、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700m/min、又は上記の2つの値の間の任意の値又は範囲内であっても良いが、それらに限定されない。第1軸1の回転速度は、100から700m/minの間であっても良い。好ましくは、第1軸1の回転速度は、例えば、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700m/min、又は上記の2つの値の間の任意の値又は範囲内であっても良いが、それらに限定されない。特に、第1軸1の回転速度は、第1延伸倍率が1から5の間となるように、通常、第2軸5の回転速度よりも低い。好ましくは、第1延伸倍率は、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.50、1.55、1.60、1.65、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、又は上記の2つの値の間の任意の値又は範囲内であっても良いが、それらに限定されない。
【0027】
本実施形態において、同様に、ゼロ軸9と第2軸5との回転速度の違いによって、繊維B(熱可塑性ポリエステルエラストマー)から第2延伸倍率を有するポリエステルエラストマー繊維糸が形成される。第2軸5の回転速度は上記と同様であるため、ここでは重複した説明を省略する。ゼロ軸9の回転速度は、例えば、50から700m/minであり、好ましくは50から600m/minであり、より好ましくは100から400m/minの間であっても良いが、それらに限定されない。例を挙げると、ゼロ軸9の回転速度は、例えば、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700m/min、又は上記の2つの値の間の任意の値又は範囲内であっても良いが、それらに限定されない。特に、ゼロ軸9の回転速度は、第2延伸倍率が1から6の間、好ましくは2から4の間となるように、通常、第2軸5の回転速度よりも低い。例を挙げると、第2延伸倍率は、例えば、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.50、1.55、1.60、1.65、1.7、1.8、1.9、1.95、2.0、2.05、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、2.95、3.0、3.05、3.1、3.2、3.3、3.4、3.45、3.5、3.55、3.6、3.65、3.7、3.8、3.9、3.95、4.0、4.05、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、4.95、5.0、5.05、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、又は上記の2つの値の間の任意の値又は範囲内であっても良いが、それらに限定されない。
【0028】
特に、第1延伸倍率と第2延伸倍率が互いに異なるように、第1軸1及びゼロ軸9の回転速度が互いに異なることにより、ポリエステル弾性複合糸の弾性を向上させることができる。
【0029】
そして、ポリエステル繊維糸及びポリエステルエラストマー繊維糸は、同時にエアノズル6に入り、エアノズルにより2本の糸を混繊させて交絡を形成し、さらに第3軸7を通過し、巻取機8によりポリエステル弾性複合糸に巻き取られた。例を挙げると、エアノズル6のエア圧は、2.0から4.0Kg/cm2の間であり、例えば、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.85、2.9、2.95、3.0、3.05、3.1、3.15、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0Kg/cm2、又は上記の2つの値の間の任意の値又は範囲内であっても良いが、それらに限定されない。
【0030】
前記製造工程において、ヒータの温度は、100から300℃の間であり、好ましくは100から220℃の間であり、より好ましくは180℃又は200℃である。例を挙げると、ヒータの温度は、例えば、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300℃、又は上記の2つの値の間の任意の値又は範囲内であっても良いが、それらに限定されない。
【0031】
本開示において、ポリエステルとは、ポリオールと多塩基酸を重縮合させて得られるポリマーの一般的な用語であり、通常、ポリエチレンテレフタレート(PET)を指すが、ポリブチレンテレフタレート(PBT)又はポリトリメチレンテレフタレート(PTT)等の他の直鎖状の熱可塑性ポリマーも含む。ポリエステルは、優れた特性と幅広い用途を備えたエンジニアリングプラスチックの一種であり、ポリエステル繊維の製造に使用することができる。一実施形態では、ポリエステル繊維は、合成繊維業界で一般的に知られている従来の紡糸方法又は複合紡糸方法で紡糸された連続長繊維糸であっても良く、又は、合成繊維業界で一般的に知られている物理的リサイクル法又は化学的リサイクル法を用いて得られた環境に優しいリ再生ポリエステル繊維であっても良い。例えば、従来の紡糸方法で紡糸された長繊維糸として、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリブチレンテレフタレート(PBT)繊維、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)繊維、カチオン可染ポリエステル(cationic-dyeable polyester;CD Polyester)繊維等が含まれるが、それらに限定されない。複合紡糸方法で紡糸された連続長繊維糸は、少なくとも2種類以上の成分を含むことができ、各成分の前記複合繊維における分布形式により、サイドバイサイド型(Side by side)、芯鞘型(sheath-core;S/C)、セグメントパイ(segment pie)、又は海島型(Sea & Islands;S/I)に分けられる。一つの好ましい実施形態では、複合紡糸方法で紡糸された連続長繊維糸は、例えば、芯鞘型繊維、セグメントパイ繊維、又は海島型繊維を含むが、それらに限定されない。別の好ましい実施形態では、ポリエステル繊維の断面は、円形断面又は非円形断面であっても良い。非円形断面の場合、例えば、十字形断面、三角形断面、多角形断面、亜鈴形断面、Y字形断面、波状一字形断面、三弁花形断面、四弁花形断面、又は当業者に良く知られている他の非円形断面であっても良いが、それらに限定されない。
【0032】
本開示において、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)は、一般的に、テレフタル酸と1,4-ブタンジオールとの重合により生成されるものである。熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)は、コポリエーテルエステルとも呼ばれ、エラストマー材料の1種類であり、これらの材料は熱可塑加工性質を有するとともに、弾性及び回復性を有し、弾性疲労になりにくい。前記性質は、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)の結晶性ポリエーテルセグメント(ハードセグメントとも呼ばれ、芳香族ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリブチレンテレフタレート(PBT)であっても良い)と非晶性ポリエステルセグメント(ソフトセグメントとも呼ばれ、ポリエーテルエステル、例えば、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)であっても良い)からなる共重合分子によるものである。ポリエーテルセグメントとポリエステルセグメントが互いに共重合するこのにより、高分子ブロック骨格が形成された。溶融冷却後、ハードセグメント(例えば、PBT)は自動的にクラスターし、弾性のあるソフトセグメントを接続するハード結晶域が形成された。ハードセグメントとソフトセグメントは互いに機械的に結合し(interlocking)、強い分子間力を形成するが、化学的結合のネットワークが形成されない。従って、ポリエステルエラストマーを結晶域の融点以上(約200℃以上)に加熱し、再加工することができる。
【0033】
一つの好ましい実施形態では、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)は、ハードセグメントがポリブチレンテレフタレート(PBT)である熱可塑性ポリエステルエラストマーである。一つの好ましい実施形態では、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)は、ハードセグメントがポリブチレンテレフタレートであり、ソフトセグメントがポリエーテルエステルである熱可塑性ポリエステルエラストマーである。好ましくは、前記ポリエーテルエステルは、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)である。
【0034】
一実施形態では、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)は、以下のプロセスにより生成される。
TPA + 1,4-BDO + PTMEG → PBT型TPEE
【化1】
各略語の意味は以下の通りである。
TPA:テレフタル酸;
BDO:ブタンジオール;
PTMEG:ポリテトラメチレンエーテルグリコール;
PBT:ポリブチレンテレフタレート;
TPEE:熱可塑性ポリエステルエラストマー。
【0035】
別の実施形態では、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)は、非リサイクルプロセス又はリサイクルプロセスにより製造される熱可塑性ポリエステルエラストマーであっても良い。一つの好ましい実施形態では、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)は、リサイクルプロセスにより製造されるものであるが、物理的リサイクルプロセス又は化学的リサイクルプロセスにより製造されるものに限定されない。
【0036】
上記の実施形態では、本発明で使用する熱可塑性ポリエステルエラストマーから形成されるポリエステルエラストマー繊維糸の繊維本数は、モノフィラメント又はマルチフィラメントであっても良い。ポリエステル繊維から形成されるポリエステル繊維糸の繊維本数も、モノフィラメント又はマルチフィラメントであっても良く、好ましくはマルチフィラメントである。
【0037】
上記の実施形態では、ポリエステルエラストマー繊維糸は、実際のニーズに応じて、優れた伸長率及び弾性回復率を有する長繊維製品又は短繊維製品の製造に使用することができる。このポリエステルエラストマー繊維糸のフィラメント当たりのデニール(Denier per Filament : dpf)は、如何なるデニールの繊維であっても良い。
【0038】
本開示における「デニール(De)」とは、繊維の9000メートル当たりの質量(グラム)を指す。デニールは、繊維、フィラメント、糸の線密度、単位長さあたりの質量を表すものであって、ASTM D1577の項目Bに従って測定されるものである。一つの好ましい実施形態では、ポリエステルエラストマー繊維糸のフィラメント当たりのデニールは、100デニール(De)以下、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100デニール(De)、又は上記の2つの値の間の任意の値又は範囲内であっても良いが、それらに限定されない。一つの好ましい実施形態では、ポリエステル繊維糸のフィラメント当たりのデニールは、200デニール(De)以下であっても良く、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200デニール(De)、又は上記の2つの値の間の任意の値又は範囲内であっても良いが、それらに限定されない。
【0039】
上記の実施形態では、熱可塑性ポリエステルエラストマー繊維糸の断面は、円形断面又は非円形断面であっても良い。非円形断面の場合、例えば、十字形断面、三角形断面、多角形断面、亜鈴形断面、Y字形断面、波状一字形断面、三弁花形断面、四弁花形断面、又は当業者に良く知られている他の非円形断面であっても良いが、それらに限定されない。
【0040】
本発明に係わるポリエステル弾性複合糸の製造方法において、必要に応じてその他の機能性添加剤を適宜添加しても良い。前記機能性添加剤として、他の熱可塑性ポリマー、熱安定剤、光安定剤、艶消し剤、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、難燃剤等の少なくとも1種を含んでも良いが、それらに限定されない。
【0041】
本発明に係わるポリエステル弾性複合糸の製造方法により製造されたポリエステル弾性複合糸は、ポリエステル弾性複合糸及び他の繊維を含む糸が形成されるように、他の繊維と混合させることにより混合糸を製造することができ、或いは、他の繊維のコア糸等と組み合わせて使用することができる。他の繊維として、例えば、天然繊維、合成繊維、又は当業者に良く知られている別の繊維を含んでも良いが、それらに限定されない。天然繊維として、例えば、動物繊維、植物繊維、鉱物繊維、又は当業者に良く知られている別の天然繊維を含んでも良いが、それらに限定されない。動物繊維として、例えば、羊毛、馬毛、兎毛、牛毛、ラクダ毛、桑絹、別の動物の毛、又はそれらにより製造された絹等を含んでも良いが、それらに限定されない。植物繊維として、例えば、綿、麻、カポック、ヤシ殻、竹原、バナナの茎、桑皮、又は別の植物由来の繊維等を含んでも良いが、それらに限定されない。鉱物繊維として、例えば、石綿等を含んでも良いが、それらに限定されない。合成繊維として、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリプロピレン繊維、又は当業者に良く知られている別の合成繊維を含んでも良いが、それらに限定されない。
【0042】
特に、本発明に係わるポリエステル弾性複合糸の製造方法により製造されたポリエステル弾性複合糸の染色条件は、当該ポリエステル弾性複合糸を形成するためのポリエステル繊維に依存し得る。つまり、ポリエステル繊維の染色条件に応じて、ポリエステル弾性複合糸の染色を行うことができる。
【0043】
さらに、本発明に係わるポリエステル弾性複合糸の製造方法により製造されたポリエステル弾性複合糸は、ポリエステル繊維糸及びポリエステルエラストマー繊維糸を含み、且つポリエステル繊維糸及びポリエステルエラストマー繊維糸は、それぞれ独立して互いに撚り合わせられている。
図2を参照し、
図2は本発明の一実施形態に係わるポリエステル弾性複合糸の断面の顕微鏡写真である。本実施形態において、ポリエステル繊維はPET繊維であり、熱可塑性ポリエステルエラストマーは熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)である。まず、PET繊維を原料として仮撚工程によりPETポリエステル繊維糸を形成するとともに、弾性を有する熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)を原料として解舒を行うことによって、ポリエステルエラストマー繊維糸を形成する。次に、混繊工程によりポリエステル繊維糸とポリエステルエラストマー繊維糸を混合させることによって、二種類の繊維糸を含むポリエステル弾性複合糸が得られた。このポリエステル弾性複合糸を切断し顕微鏡で500倍に拡大してその断面を観察する。例えば、
図2の顕微鏡写真から、直径の大きなポリエステルエラストマー繊維糸と、そのポリエステルエラストマー繊維糸を取り囲む複数のPETポリエステル繊維糸とを確認することができる。
図2から、PETポリエステル繊維糸及びポリエステルエラストマー繊維糸は、互いに独立し且つ分離可能な繊維構造であり、互いに撚り合わせられていることが分かる。換言すれば、ポリエステル弾性複合糸は、少なくとも2つの互いに独立し且つ分離可能な繊維構造が共に絡み合うことにより形成されるものである。本実施形態における繊維の種類、数量、サイズ、形状は、単に例示するためのものであり、本発明を制限するものではない。
【0044】
本発明に係わるポリエステル弾性複合糸の製造方法により製造されたポリエステル弾性複合糸の物性は、当該ポリエステル弾性複合糸、それを用いて製造された糸及び織物の幾つかのパラメータを測定することによって定義することができる。以下、詳しく説明する。
【0045】
(1)糸の破断強度及び破断伸長率:
STATIMAT ME型自動引張試験機(Textechno Inc, Germany)によりASTM D 885規格に従って測定した。
【0046】
(2)織物を60%延伸した時の弾性回復率:
サンプルとして長さ20cm(L0)の織物を取り、サンプルの一端を上部の固定クランプに固定し60%延伸した後、サンプルに32cm間隔でマークを付けた時の長さをL1とした。1時間後、固定クランプを緩め、さらに1時間後、マーク間の長さを測定し、その時のサンプルの長さをL2とした。上記の測定を3回繰り返す。糸の弾性回復率は、以下の式で算出された。測定結果は、緩めて1時間放置した後の3回の平均値で示された。
糸の弾性回復率(%)=[(L1-L2)/(L1-L0)]×100%
【0047】
本発明に係わるポリエステル弾性複合糸の製造方法は、実施形態に記載された内容の他に、当業者に良く知られている従来の技術に基づいて実施することができる。
【0048】
[実施例]
以下、実施例1~4に係わるポリエステル弾性複合糸の製造方法について説明する。実施例1~4では、従来の紡糸方法により製造されたPET繊維と、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)とを原料として、本発明に係わるポリエステル弾性複合糸の製造を行った。実施例1~4では、ヒータの温度、第2軸の回転速度、繊維の仕様、延伸倍率等が若干異なる。
【0049】
(実施例1)
この実施例に係わるポリエステル弾性複合糸は、
図1に示す部材を有する仮撚機により製造された。詳細には、繊維A及び繊維Bの延伸倍率が異なるため、仮撚機は、第1軸1とは異なる回転速度を提供するためにゼロ軸9を有する必要がある。従って、仮撚工程では、撚糸機は2つの異なる原料に対して異なる延伸倍率を与えることが可能である。この実施例では、繊維AはPET繊維であり、繊維Bは熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)である。この実施例では、まず、紡糸により形成されたPET繊維を原料として仮撚工程を行った。PET繊維に対して、解舒を行い、第1軸1を通過させた後、ヒータ2(温度:200℃)を通過させて加熱し、さらに冷却板3を通過させて冷却し、そして、摩擦スピンドル4を通過させて撚り・解撚を施し、第2軸5を通過させて延伸する(紡糸速度:600m/min)ことで、延伸倍率が1.65であるポリエステル繊維糸(仕様:75/72(De/本数))が形成された。一方、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)に対して、室温下で解舒を行い、まずゼロ軸9を通過させた後、第2軸5を通過させて延伸する(紡糸速度:600m/min)ことで、延伸倍率が3.8であるポリエステルエラストマー繊維糸(仕様:40/1(De/本数))が形成された。PET繊維及び熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)が第2軸5(紡糸速度:600m/min)で延伸された後、形成したポリエステル繊維糸及びポリエステルエラストマー繊維糸の各々は、同時にエアノズル6に入り、続いてエアーノズル6(エアー圧:3.0Kg/cm
2)により混繊、交絡された後、第3軸7を通過し、巻取機8によりポリエステル弾性複合糸に巻き取られた。
【0050】
(実施例2)
この実施例では、繊維AはPET繊維であり、繊維Bは熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)である。この実施例では、まず、紡糸により形成されたPET繊維を原料として仮撚工程を行った。PET繊維に対して、解舒を行い、第1軸1を通過させた後、ヒータ2(温度:200℃)を通過させて加熱し、さらに冷却板3を通過させて冷却し、そして、摩擦スピンドル4を通過させて撚り・解撚を施し、第2軸5を通過させて延伸する(紡糸速度:550m/min)ことで、延伸倍率が1.65であるポリエステル繊維糸(仕様:75/72(De/本数))が形成された。一方、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)に対して、室温下で解舒を行い、まずゼロ軸9を通過させた後、第2軸5を通過させて延伸する(紡糸速度:550m/min)ことで、延伸倍率が4であるポリエステルエラストマー繊維糸(仕様:80/1(De/本数))が形成された。PET繊維及び熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)が第2軸5(紡糸速度:550m/min)で延伸された後、形成したポリエステル繊維糸及びポリエステルエラストマー繊維糸の各々は、同時にエアノズル6に入り、続いてエアーノズル6(エアー圧:3.0Kg/cm2)により混繊、交絡された後、第3軸7を通過し、巻取機8によりポリエステル弾性複合糸に巻き取られた。
【0051】
(実施例3)
この実施例では、繊維AはPET繊維であり、繊維Bは熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)である。この実施例では、まず、紡糸により形成されたPET繊維を原料として仮撚工程を行った。PET繊維に対して、解舒を行い、第1軸1を通過させた後、ヒータ2(温度:200℃)を通過させて加熱し、さらに冷却板3を通過させて冷却し、そして、摩擦スピンドル4を通過させて撚り・解撚を施し、第2軸5を通過させて延伸する(紡糸速度:500m/min)ことで、延伸倍率が1.65であるポリエステル繊維糸(仕様:75/144(De/本数))が形成された。一方、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)に対して、室温下で解舒を行い、まずゼロ軸9を通過させた後、第2軸5を通過させて延伸する(紡糸速度:500m/min)ことで、延伸倍率が2であるポリエステルエラストマー繊維糸(仕様:40/3(De/本数))が形成された。PET繊維及び熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)が第2軸5(紡糸速度:500m/min)で延伸された後、形成したポリエステル繊維糸及びポリエステルエラストマー繊維糸の各々は、同時にエアノズル6に入り、続いてエアーノズル6(エアー圧:3.0Kg/cm2)により混繊、交絡された後、第3軸7を通過し、巻取機8によりポリエステル弾性複合糸に巻き取られた。
【0052】
(実施例4)
この実施例では、繊維AはPET繊維であり、繊維Bは熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)である。この実施例では、まず、紡糸により形成されたPET繊維を原料として仮撚工程を行った。PET繊維に対して、解舒を行い、第1軸1を通過させた後、ヒータ2(温度:200℃)を通過させて加熱し、さらに冷却板3を通過させて冷却し、そして、摩擦スピンドル4を通過させて撚り・解撚を施し、第2軸5を通過させて延伸する(紡糸速度:500m/min)ことで、延伸倍率が1.65であるポリエステル繊維糸(仕様:75/144(De/本数))が形成された。一方、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)に対して、室温下で解舒を行い、まずゼロ軸9を通過させた後、第2軸5を通過させて延伸する(紡糸速度:500m/min)ことで、延伸倍率が3であるポリエステルエラストマー繊維糸(仕様:80/4(De/本数))が形成された。PET繊維及び熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)が第2軸5(紡糸速度:500m/min)で延伸された後、形成したポリエステル繊維糸及びポリエステルエラストマー繊維糸の各々は、同時にエアノズル6に入り、続いてエアーノズル6(エアー圧:3.0Kg/cm2)により混繊、交絡された後、第3軸7を通過し、巻取機8によりポリエステル弾性複合糸に巻き取られた。
【0053】
その後、上記の測定方法に従って、実施例1~4のポリエステル弾性複合糸について、破断強度、破断伸長率、織物を60%延伸した時の弾性回復率を測定し、その結果を表1に示した。
【0054】
表1:実施例1~4の製造条件及び結果のまとめ
【表1】
【0055】
表1の結果から、原料としてPET繊維及び熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)を使用する本発明に係わるポリエステル弾性複合糸の製造方法により製造されたポリエステル弾性複合糸は、いずれも、破断強度が3~4(g/d)の間であり、破断伸長率が20%よりも大きく、織物を60%延伸した時の弾性回復率が90%よりも大きいことが示された。従って、実施例1~4のポリエステル弾性複合糸は、優れた伸縮弾性及び弾性回復率を有し、且つ破断しにくいことが確認された。
【0056】
以下、実施例5~7に係わるポリエステル弾性複合糸の製造方法について説明する。実施例5~7では、従来の紡糸方法により製造されたS/I繊維、セグメントパイ繊維又はS/C繊維と、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)とを原料として、本発明に係わるポリエステル弾性複合糸の製造を行った。実施例5~7では、原料の種類、繊維の仕様及び延伸倍率等が若干異なる。さらに、実施例5~7と実施例1~4との相違点は、実施例1~4の繊維Aが従来の紡糸方法により製造されたものであり、実施例5~7の繊維Aが従来の複合紡糸方法により製造されたものである。
【0057】
(実施例5)
この実施例では、繊維AはS/I繊維であり、繊維Bは熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)である。この実施例では、まず、紡糸により形成されたS/I繊維を原料として仮撚工程を行った。S/I繊維に対して、解舒を行い、第1軸1を通過させた後、ヒータ2(温度:200℃)を通過させて加熱し、さらに冷却板3を通過させて冷却し、そして、摩擦スピンドル4を通過させて撚り・解撚を施し、第2軸5を通過させて延伸する(紡糸速度:500m/min)ことで、延伸倍率が1.65であるポリエステル繊維糸(仕様:75/36(De/本数))が形成された。一方、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)に対して、室温下で解舒を行い、まずゼロ軸9を通過させた後、第2軸5を通過させて延伸する(紡糸速度:500m/min)ことで、延伸倍率が4であるポリエステルエラストマー繊維糸(仕様:4/1(De/本数))が形成された。S/I繊維及び熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)が第2軸5(紡糸速度:500m/min)で延伸された後、形成したポリエステル繊維糸及びポリエステルエラストマー繊維糸の各々は、同時にエアノズル6に入り、続いてエアーノズル6(エアー圧:3.0Kg/cm2)により混繊、交絡された後、第3軸7を通過し、巻取機8によりポリエステル弾性複合糸に巻き取られた。
【0058】
(実施例6)
この実施例では、繊維AはS/C繊維であり、繊維Bは熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)である。この実施例では、まず、紡糸により形成されたS/C繊維を原料として仮撚工程を行った。S/C繊維に対して、解舒を行い、第1軸1を通過させた後、ヒータ2(温度:200℃)を通過させて加熱し、さらに冷却板3を通過させて冷却し、そして、摩擦スピンドル4を通過させて撚り・解撚を施し、第2軸5を通過させて延伸する(紡糸速度:500m/min)ことで、延伸倍率が1.65であるポリエステル繊維糸(仕様:75/72(De/本数))が形成された。一方、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)に対して、室温下で解舒を行い、まずゼロ軸9を通過させた後、第2軸5を通過させて延伸する(紡糸速度:500m/min)ことで、延伸倍率が5であるポリエステルエラストマー繊維糸(仕様:40/1(De/本数))が形成された。S/C繊維及び熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)が第2軸5(紡糸速度:500m/min)で延伸された後、形成したポリエステル繊維糸及びポリエステルエラストマー繊維糸の各々は、同時にエアノズル6に入り、続いてエアーノズル6(エアー圧:3.0Kg/cm2)により混繊、交絡された後、第3軸7を通過し、巻取機8によりポリエステル弾性複合糸に巻き取られた。
【0059】
(実施例7)
この実施例では、繊維Aはセグメントパイ繊維であり、繊維Bは熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)である。この実施例では、まず、紡糸により形成されたセグメントパイ繊維を原料として仮撚工程を行った。セグメントパイ繊維に対して、解舒を行い、第1軸1を通過させた後、ヒータ2(温度:200℃)を通過させて加熱し、さらに冷却板3を通過させて冷却し、そして、摩擦スピンドル4を通過させて撚り・解撚を施し、第2軸5を通過させて延伸する(紡糸速度:500m/min)ことで、延伸倍率が1.65であるポリエステル繊維糸(仕様:75/72(De/本数))が形成された。一方、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)に対して、室温下で解舒を行い、まずゼロ軸9を通過させた後、第2軸5を通過させて延伸する(紡糸速度:500m/min)ことで、延伸倍率が2であるポリエステルエラストマー繊維糸(仕様:40/3(De/本数))が形成された。セグメントパイ繊維及び熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)が第2軸5(紡糸速度:500m/min)で延伸された後、形成したポリエステル繊維糸及びポリエステルエラストマー繊維糸の各々は、同時にエアノズル6に入り、続いてエアーノズル6(エアー圧:3.0Kg/cm2)により混繊、交絡された後、第3軸7を通過し、巻取機8によりポリエステル弾性複合糸に巻き取られた。
【0060】
その後、上記の測定方法に従って、実施例5~7のポリエステル弾性複合糸について、破断強度、破断伸長率、織物を60%延伸した時の弾性回復率を測定し、その結果を表2に示した。
【0061】
表2:実施例5~7の製造条件及び結果のまとめ
【表2】
【0062】
表2の結果から、原料としてS/I繊維、セグメントパイ繊維又はS/C繊維及び熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)を使用する本発明に係わるポリエステル弾性複合糸の製造方法により製造されたポリエステル弾性複合糸は、いずれも、破断強度が3~4(g/d)の間であり、破断伸長率が20%よりも大きく、織物を60%延伸した時の弾性回復率が90%よりも大きいことが示された。従って、実施例5~7のポリエステル弾性複合糸は、優れた伸縮弾性及び弾性回復率を有し、且つ破断しにくいことが確認された。
【0063】
以下、実施例8~11に係わるポリエステル弾性複合糸の製造方法について説明する。実施例8~11では、従来の紡糸方法により製造された異なる断面を有する異なるポリエステル繊維と、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)とを原料として、本発明に係わるポリエステル弾性複合糸の製造を行った。実施例8~11では、ヒータの温度、ポリエステル繊維の種類、ポリエステル繊維の断面の形状、繊維の仕様、延伸倍率等が若干異る。
【0064】
(実施例8)
この実施例では、繊維AはPET繊維(断面が十字形である)であり、繊維Bは熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)である。この実施例では、まず、紡糸により形成されたPET繊維(断面が十字形である)を原料として仮撚工程を行った。PET繊維(断面が十字形である)に対して、解舒を行い、第1軸1を通過させた後、ヒータ2(温度:200℃)を通過させて加熱し、さらに冷却板3を通過させて冷却し、そして、摩擦スピンドル4を通過させて撚り・解撚を施し、第2軸5を通過させて延伸する(紡糸速度:500m/min)ことで、延伸倍率が1.55であるポリエステル繊維糸(仕様:75/48(De/本数))が形成された。一方、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)に対して、室温下で解舒を行い、まずゼロ軸9を通過させた後、第2軸5を通過させて延伸する(紡糸速度:500m/min)ことで、延伸倍率が4であるポリエステルエラストマー繊維糸(仕様:40/1(De/本数))が形成された。PET繊維(断面が十字形である)及び熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)が第2軸5(紡糸速度:500m/min)で延伸された後、形成したポリエステル繊維糸及びポリエステルエラストマー繊維糸の各々は、同時にエアノズル6に入り、続いてエアーノズル6(エアー圧:3.0Kg/cm2)により混繊、交絡された後、第3軸7を通過し、巻取機8によりポリエステル弾性複合糸に巻き取られた。
【0065】
(実施例9)
この実施例では、繊維AはPET繊維(断面が三角形である)であり、繊維Bは熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)である。この実施例では、まず、紡糸により形成されたPET繊維(断面が三角形である)を原料として仮撚工程を行った。PET繊維(断面が三角形である)に対して、解舒を行い、第1軸1を通過させた後、ヒータ2(温度:200℃)を通過させて加熱し、さらに冷却板3を通過させて冷却し、そして、摩擦スピンドル4を通過させて撚り・解撚を施し、第2軸5を通過させて延伸する(紡糸速度:500m/min)ことで、延伸倍率が1.55であるポリエステル繊維糸(仕様:75/48(De/本数))が形成された。一方、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)に対して、室温下で解舒を行い、まずゼロ軸9を通過させた後、第2軸5を通過させて延伸する(紡糸速度:500m/min)ことで、延伸倍率が3.5であるポリエステルエラストマー繊維糸(仕様:40/1(De/本数))が形成された。PET繊維(断面が三角形である)及び熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)が第2軸5(紡糸速度:500m/min)で延伸された後、形成したポリエステル繊維糸及びポリエステルエラストマー繊維糸の各々は、同時にエアノズル6に入り、続いてエアーノズル6(エアー圧:3.0Kg/cm2)により混繊、交絡された後、第3軸7を通過し、巻取機8によりポリエステル弾性複合糸に巻き取られた。
【0066】
(実施例10)
この実施例では、繊維AはCD繊維(断面が円形である)であり、繊維Bは熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)である。この実施例では、まず、紡糸により形成されたCD繊維(断面が円形である)を原料として仮撚工程を行った。CD繊維(断面が円形である)に対して、解舒を行い、第1軸1を通過させた後、ヒータ2(温度:180℃)を通過させて加熱し、さらに冷却板3を通過させて冷却し、そして、摩擦スピンドル4を通過させて撚り・解撚を施し、第2軸5を通過させて延伸する(紡糸速度:500m/min)ことで、延伸倍率が1.65であるポリエステル繊維糸(仕様:75/72(De/本数))が形成された。一方、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)に対して、室温下で解舒を行い、まずゼロ軸9を通過させた後、第2軸5を通過させて延伸する(紡糸速度:500m/min)ことで、延伸倍率が2であるポリエステルエラストマー繊維糸(仕様:40/3(De/本数))が形成された。CD繊維(断面が円形である)及び熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)が第2軸5(紡糸速度:500m/min)で延伸された後、形成したポリエステル繊維糸及びポリエステルエラストマー繊維糸の各々は、同時にエアノズル6に入り、続いてエアーノズル6(エアー圧:3.0Kg/cm2)により混繊、交絡された後、第3軸7を通過し、巻取機8によりポリエステル弾性複合糸に巻き取られた。
【0067】
(実施例11)
この実施例では、繊維AはPBT繊維(断面が円形である)であり、繊維Bは熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)である。この実施例では、まず、紡糸により形成されたPBT繊維(断面が円形である)を原料として仮撚工程を行った。PBT繊維(断面が円形である)に対して、解舒を行い、第1軸1を通過させた後、ヒータ2(温度:180℃)を通過させて加熱し、さらに冷却板3を通過させて冷却し、そして、摩擦スピンドル4を通過させて撚り・解撚を施し、第2軸5を通過させて延伸する(紡糸速度:500m/min)ことで、延伸倍率が1.65であるポリエステル繊維糸(仕様:75/24(De/本数))が形成された。一方、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)に対して、室温下で解舒を行い、まずゼロ軸9を通過させた後、第2軸5を通過させて延伸する(紡糸速度:500m/min)ことで、延伸倍率が3であるポリエステルエラストマー繊維糸(仕様:40/4(De/本数))が形成された。PBT繊維(断面が円形である)及び熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)が第2軸5(紡糸速度:500m/min)で延伸された後、形成したポリエステル繊維糸及びポリエステルエラストマー繊維糸の各々は、同時にエアノズル6に入り、続いてエアーノズル6(エアー圧:3.0Kg/cm2)により混繊、交絡された後、第3軸7を通過し、巻取機8によりポリエステル弾性複合糸に巻き取られた。
【0068】
その後、上記の測定方法に従って、実施例8~11のポリエステル弾性複合糸について、破断強度、破断伸長率、織物を60%延伸した時の弾性回復率を測定し、その結果を表3に示した。
【0069】
表3:実施例8~11の製造条件及び結果のまとめ
【表3】
【0070】
表3の結果から、原料として異なる断面形状を有するPET繊維、CD繊維又はPBT繊維及び熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)を使用する本発明に係わるポリエステル弾性複合糸の製造方法により製造されたポリエステル弾性複合糸は、いずれも、破断強度が3~4(g/d)の間であり、破断伸長率が20%よりも大きく、織物を60%延伸した時の弾性回復率が90%よりも大きいことが示された。従って、実施例8~11のポリエステル弾性複合糸は、優れた伸縮弾性及び弾性回復率を有し、且つ破断しにくいことが確認された。
【0071】
以下、比較例1~3に係わるポリエステル弾性複合糸の製造方法について説明する。比較例1~3では、業界周知の一般的な複合糸を使用した。比較例1~3では、従来の紡糸方法により製造されたPET繊維を繊維Aの原料とし、PET繊維、PBT繊維、Spandex繊維のそれぞれを繊維Bの原料とした。上記の2つの原料をそれぞれ使用し、本発明に係わるポリエステル弾性複合糸の製造方法によりポリエステル弾性複合糸を製造した。
【0072】
(比較例1)
この比較例では、繊維Aと繊維BはいずれもPET繊維である。この比較例では、まず、紡糸により形成されたPET繊維を繊維Aの原料として仮撚工程を行った。このPET繊維に対して、解舒を行い、第1軸1を通過させた後、ヒータ2(温度:200℃)を通過させて加熱し、さらに冷却板3を通過させて冷却し、そして、摩擦スピンドル4を通過させて撚り・解撚を施し、第2軸5を通過させて延伸する(紡糸速度:500m/min)ことで、延伸倍率が1.55であるポリエステル繊維糸(仕様:75/72(De/本数))が形成された。一方、繊維Bの原料であるPET繊維に対して、室温下で解舒を行い、まずゼロ軸9を通過させた後、第2軸5を通過させて延伸する(紡糸速度:500m/min)ことで、延伸倍率が1であるポリエステル繊維糸(仕様:75/72(De/本数))が形成された。2つのPET繊維が第2軸5(紡糸速度:500m/min)で延伸された後、形成したポリエステル繊維糸の各々は、同時にエアノズル6に入り、続いてエアーノズル6(エアー圧:3.0Kg/cm2)により混繊、交絡された後、第3軸7を通過し、巻取機8によりポリエステル弾性複合糸に巻き取られた。
【0073】
(比較例2)
この比較例では、繊維AはPET繊維であり、繊維BはPBT繊維である。この比較例では、まず、紡糸により形成されたPET繊維を原料として仮撚工程を行った。PET繊維に対して、解舒を行い、第1軸1を通過させた後、ヒータ2(温度:200℃)を通過させて加熱し、さらに冷却板3を通過させて冷却し、そして、摩擦スピンドル4を通過させて撚り・解撚を施し、第2軸5を通過させて延伸する(紡糸速度:500m/min)ことで、延伸倍率が1.55であるポリエステル繊維糸(仕様:75/72(De/本数))が形成された。一方、PBT繊維に対して、室温下で解舒を行い、まずゼロ軸9を通過させた後、第2軸5を通過させて延伸する(紡糸速度:500m/min)ことで、延伸倍率が1であるポリエステルエラストマー繊維糸(仕様:75/24(De/本数))が形成された。PET繊維及びPBT繊維が第2軸5(紡糸速度:500m/min)で延伸された後、形成したポリエステル繊維糸の各々は、同時にエアノズル6に入り、続いてエアーノズル6(エアー圧:3.0Kg/cm2)により混繊、交絡された後、第3軸7を通過し、巻取機8によりポリエステル弾性複合糸に巻き取られた。
【0074】
(比較例3)
この比較例では、繊維AはPET繊維であり、繊維BはSpandex繊維である。この比較例では、まず、紡糸により形成されたPET繊維を原料として仮撚工程を行った。PET繊維に対して、解舒を行い、第1軸1を通過させた後、ヒータ2(温度:180℃)を通過させて加熱し、さらに冷却板3を通過させて冷却し、そして、摩擦スピンドル4を通過させて撚り・解撚を施し、第2軸5を通過させて延伸する(紡糸速度:500m/min)ことで、延伸倍率が1.65であるポリエステル繊維糸(仕様:75/72(De/本数))が形成された。一方、Spandex繊維に対して、室温下で解舒を行い、まずゼロ軸9を通過させた後、第2軸5を通過させて延伸する(紡糸速度:500m/min)ことで、延伸倍率が3であるポリエステルエラストマー繊維糸(仕様:40/3(De/本数))が形成された。PET繊維及びSpandex繊維が第2軸5(紡糸速度:500m/min)で延伸された後、形成したポリエステル繊維糸及びポリエステルエラストマー繊維糸の各々は、同時にエアノズル6に入り、続いてエアーノズル6(エアー圧:3.0Kg/cm2)により混繊、交絡された後、第3軸7を通過し、巻取機8によりポリエステル弾性複合糸に巻き取られた。
【0075】
その後、上記の測定方法に従って、比較例1~3のポリエステル弾性複合糸について、破断強度、破断伸長率、織物を60%延伸した時の弾性回復率を測定し、その結果を表4に示した。
【0076】
表4:比較例1~3の製造条件及び結果のまとめ
【表4】
【0077】
表4の結果から、PET繊維を繊維A及び繊維Bの原料とした比較例1では、2つのPET繊維に異なる延伸倍率を持たせたが、製造されたポリエステル弾性複合糸は60%延伸できず、弾性回復率が悪いことが確認された。PET繊維及びPBT繊維をそれぞれ繊維A及び繊維Bの原料とした比較例2では、種類の異なるポリエステル繊維をポリエステル弾性複合糸の製造に使用したが、製造されたポリエステル弾性複合糸の織物を60%延伸した時の弾性回復率が15未満であり、弾性回復率が良くないことが確認された。一般的に弾性回復率を増加させるための従来のSpandex繊維を繊維Bとした比較例3では、その織物を60%延伸した時の弾性回復率が95%を超えたが、製造されたポリエステル弾性複合糸は2種類の異なる成分を含むため、一緒にリサイクルすることができない。
【0078】
上記のように、従来の複合繊維と比べ、本発明に係わるポリエステル弾性複合糸の製造方法により製造された少なくとも2種類の異なる成分を有するポリエステル弾性複合糸は、優れた伸縮弾性及び弾性回復率を有するものである。前記ポリエステル弾性複合糸を使用して製織、染色、整理加工を行うことで得られた織物も、優れた伸縮弾性及び弾性回復率を有するものである。なお、本発明に係わるポリエステル弾性複合糸の製造方法で使用されるポリエステルエラストマーは、ポリエステル繊維と同様にポリエステル系ポリマーに属すものであり、織物をリサイクルする際に一緒にリサイクルすることができるため、さらにリサイクルコストを低下させ、環境への影響を低減することができる。
【0079】
本開示に係わる実施形態又は実施例は、単なる例示であって、当業者であればそれらに限定されないことを理解するであろう。当業者であれば様々な変換、置換によって実施することができ、本開示の技術特徴と異なることはない。本開示に係わる実施形態又は実施例によれば、実施に支障のない多くの変換を有することができる。本開示に添付された特許請求の範囲は、本開示の範囲を定義するものであり、上記の方法と構成及びそれらと均等の発明を含むものである。
【符号の説明】
【0080】
1 第1軸
2 ヒータ
3 冷却板
4 摩擦スピンドル
5 第2軸
6 エアノズル
7 第3軸
8 巻取機
9 ゼロ軸
A 繊維
B 繊維