(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180367
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】車両内装部品において目標破断線を作製及び検査するための方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/359 20140101AFI20241219BHJP
B23K 26/03 20060101ALI20241219BHJP
B23K 26/382 20140101ALI20241219BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20241219BHJP
【FI】
B23K26/359
B23K26/03
B23K26/382
B23K26/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024096640
(22)【出願日】2024-06-14
(31)【優先権主張番号】10 2023 115 790.6
(32)【優先日】2023-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】502122347
【氏名又は名称】イェーノプティク アウトマティジールングステヒニーク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 功
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ボーデ・モージッヒ
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD01
4E168AD11
4E168CA02
4E168CA04
4E168CA13
4E168CB22
(57)【要約】
【課題】センサマトリクスを用いて目標破断線における残りの残留壁厚が監視され、追加的な検知手段を用いることなく、車両内装部品における目標破断線の輪郭と位置を検査することのできる方法を見出す。
【解決手段】本発明は、走査するレーザ光線(S)を用いて車両内装部品(1)に目標破断線(2)を作製し且つ検査するための方法に関する。センサマトリクス(3)の個別センサにより、目標破断線(2)での個々の生じる穴において、レーザ光線(S)の透過部分が検知され、複数の個別測定信号が形成される。これらの個別測定信号の少なくとも幾つかは、全測定信号による全基準信号の到達に際して記憶され、加工箇所に割り当てられている個別基準値と比較される。この比較から、作製された目標破断線(2)の輪郭と位置が評価可能である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内装部品(1)に目標破断線(2)を作製するための方法であって、
車両内装部品(1)は、センサマトリクス(3)とレーザ走査装置(4)の間の作業面(A)内に配置され、
レーザ走査装置(4)は、目標破断線(2)に沿って、車両内装部品(1)の内面側でレーザ光線(S)を走査し、材料除去が、穴の形で、時間的に次々にそれぞれ、予め定められた残留壁厚に至るまで、目標破断線(2)に沿ったそれぞれの加工箇所(P)において行われ、
加工箇所(P)においてそれぞれ次々に透過するレーザ光線(S)の透過部分が、センサマトリクス(3)の個別センサに対して個別測定値を生じさせ、これらの個別測定値のうち少なくとも幾つかが検知され、同時に検知された複数の個別測定値から、それぞれの加工箇所(P)のためにそれぞれ1つの全測定値が形成され、この全測定値は、予め定められた残留壁厚が割り当てられて保存されているそれぞれ1つの全基準測定値と比較され、そして、
レーザ光線(S)は、それぞれ全測定値が全基準測定値に達したときにスイッチオフされる、前記方法において、
作業面(A)内の車両内装部品(1)の配置は、センサマトリクス(3)に対し及びレーザ走査装置(4)に対し、既知の相対位置において行われること、及び、
それぞれの全測定値における検知された複数の個別測定値の少なくとも幾つかが、全測定値による全基準測定値の到達に際して、該当の個別センサと該当の加工箇所(P)に割り当てられて記憶され、それぞれ、該当の個別センサと該当の加工箇所(P)に割り当てられて記憶されており且つ加工箇所(P)の目標ポジションに割り当てられている個別基準測定値と比較され、それから得られるずれ量が目標破断線(2)の輪郭と位置の評価のために使用されること、
を特徴とする方法。
【請求項2】
それぞれ全基準測定値に達した全測定値における同時に検知されて記憶された個別測定値から、それぞれの加工箇所(P)の実際ポジションが導き出され、それぞれの加工箇所(P)のために保存されている目標ポジションと比較され、作製された目標破断線(2)の位置と延在経過の検査により品質評価が行われること、
を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
加工箇所(P)の目標ポジションに対し、1つの個別センサの最大の延在部よりも小さい中心間隔を有する個別センサのためだけに、加工箇所(P)ごとに個別測定値が記憶されて比較されること、
を特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
加工箇所(P)に割り当てられた他の個別基準測定値と比較し、最も高い個別基準測定値が検知される正に2つの個別センサのために、加工箇所(P)ごとに個別測定値が記憶されて比較されること、
を特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
読み出された個別センサの少なくとも1つが個別測定値を提供しないか、又は付属の個別基準測定値から50%よりも多くずれている個別測定値を提供する場合には、欠陥の個別センサがあると断定されること、
を特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
割り当てられた個別基準測定値からの個別測定値の負のずれ量から、該当の個別センサの中心点から離れる、加工箇所(P)の実際ポジションの当該加工箇所(P)の目標ポジションからの位置ずれ量が断定されること、及び、割り当てられた個別基準測定値からの個別測定値の正のずれ量から、該当の個別センサの中心点に向かう、加工箇所(P)の実際ポジションの当該加工箇所(P)の目標ポジションからの位置ずれ量が断定されること、
を特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
加工箇所(P)の幾つかにおいて、加工箇所(P)の実際ポジションが、隣接する加工箇所(P)の検出された実際ポジションから検出されること、
を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
同時に検知された個別測定値は、個別センサの異なる感度及び/又は異なる応答時間に依存し、異なる重み付けをもって全測定値に取り込まれること、
を特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
許容誤差範囲外の位置ずれ量の個数に対し、上限値が定められ、この上限値を上回らない場合に、車両内装部品(1)が良好部品として認められること、
を特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
加工箇所(P)の実際ポジションは、目標ポジションに割り当てられて記録されること、
を特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両内装部品に目標破断線(引き裂き線)を作製するため及びその輪郭と位置を検査するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本方法は、センサマトリクス(センサ行列)とレーザ走査装置(レーザスキャン装置)を含む装置を用いて実行され、該装置を用いることで、センサマトリクスの個別センサにより、車両内装部品を透過するレーザ光線の透過部分が検知されるに至るまで、目標破断線の作製の間、車両内装部品にわたり目標破断線に沿って走査するレーザ光線(レーザビーム)が材料を除去する。
【0003】
前置きとして、本明細書の意味において、加工状態に依存せず、目標破断線が沿うように生成される所定のラインが目標破断線と称されることを述べておく。
【0004】
車両内装部品において、例えば、ダッシュボード、ドア内装品、又はステアリングホイールハブにおけるエアバック開口部のために、又は車室内に突出する、例えばカップホルダのような構成部品における破断位置として、レーザを用いて目標破断線を作製することは、以前から知られている。一方では、必要な場合に信頼性のある破壊開放に対する高い要求に基づき、他方では、車両搭乗者が目標破断開口部を肉眼で知覚すべきでないという装備部品の美的外観に対する高い要求に基づき、目標破断開口部を画定する目標破断線に沿った材料除去は、センサ監視ないしセンサ制御されて行われる。
【0005】
また他の適用においても、例えば包装産業においても、レーザを用いて目標破断線を分断補助部として容器などに作り込むことが知られている。
【0006】
レーザを用いた材料除去により目標破断線を作製するためには、該当の車両内装部品に対し、予め定められたラインに沿って、完全には切断しないスリット又は穴、ないし車両内装部品を極めて小さい穴でのみ貫通する所謂マイクロパーフォレーション穴が作り込まれる。この際、残留壁部又は穴を透過する放射線エネルギーの検知において、予め定められた閾値の超過分が制御量として使用されることにより、センサ監視ないしセンサ制御を介し、再現可能な残りの残留壁厚、又は再現可能な直径を有する小さい穴が、目標破断線を形成するラインに沿って作製される。この際、少なくとも1つのセンサが、車両内装部品においてレーザとは反対側(見える側)に配置されており、該センサは、車両内装部品が目標破断線内でそれぞれの加工点において所定の残留壁厚だけを有するか又は既にマイクロ穴を有する場合に、加工の間、加工レーザ放射線の透過部分を検知する。目標破断線を生成するために必要な相対運動は、基本的に、ツールとしてのレーザ光線により、又はツールが定置の場合には車両内装部品により生成可能であり、この際、レーザ光線の運動を用いた方法が、より簡単に実現できるものとわかっている。またこの際、目標破断線の上方での目標破断線に沿ったレーザ源のロボット制御式の案内と比べ、目標破断線に沿ったレーザ光線の二次元ないし三次元の走査(スキャニング)は、技術的に簡単に実施可能であり、それに加え、遥かに迅速な加工を可能にする。
【0007】
下記特許文献1(DE 10 2005 026 906 A1)は、車両用の内装部品、及びそのような内装部品を作製するための方法を開示している。この方法を実行するための装置は、集束光学系を備えたレーザと、スキャナミラーシステムとを有する。レーザにより生成されたレーザ光線の焦点は、内装部品内の所定の深さに位置し、この際、その焦点において材料が除去される。
【0008】
下記特許文献2(DE 10 2005 054 607 A1)から、構成部品に止まり穴又は切り溝を形成する際に残留層厚を決定するための方法が知られており、この方法において、止まり穴又は切り溝は、レーザ放射線を用い、構成部品の一方の側から出発して形成され、また構成部品の反対側の表面において、この表面から放出された電磁放射線を用いて温度が非接触式で決定され、それによりレーザ放射線のそれぞれの加工領域における残留層厚が検出される。
【0009】
下記特許文献3(EP 1 118 421 B1)に開示された方法は、パルス化された又は連続的なレーザ放射を用いた、パーフォレーション穴から成る目標破断線の作製方法を記載している。レーザ光線は、加工光学系を用い、車両内装部品の裏面側に向けられる。反対側、即ち車両内装部品の前面側には、センサがレーザの光線路内にあり、つまり加工光学系の光軸線上にある。生成すべき目標破断線に沿った車両内装部品と加工光学系の間の相対運動の間、レーザは、車両内装部品において部分的に重なり合う個別パルスによる限定的なシーケンス、又は限定的な期間の連続的なレーザ放射線を放出する。この際、車両内装部品には、連続的に減少する残留壁厚を有するスリットが作成される。センサを用い、前面側でレーザ放射線の突破が検知されると直ちに、レーザ放射は中断される。必要な相対運動がレーザにより実行されるべき場合には、センサ軸線と、加工光学系の光軸とが常に一致するために、センサの高精度の連動が実現されなくてはならない。
【0010】
また下記特許文献4(EP 0 827 802 B1)によると、外面側からセンサにより加工箇所における透過放射線が検知されることにより、残りの残留壁厚(材料厚)に至るまでの規定の材料除去が保証される。この目的のためにセンサは、車両内装部品に向けられたレーザ光線の光軸線上に配置されている必要がある。ここでは、目標破断線の生成のために必要であるレーザ光線と車両内装部品の間の相対運動を実現することについて、説明は成されていない。
【0011】
下記特許文献5(EP 3 321 024 A1)により、レーザを用いた材料除去により予め定められた輪郭に沿って平面的な加工物に弱化線を作製するための方法及び装置が開示されている。この方法において加工物は、センサのアセンブリとレーザスキャナとの間の作業域内に配置される。レーザスキャナは、弱化線に沿って、平面的な加工物の裏面側にわたり、パルス化されたレーザ光線を走査し、この際、材料除去は、穴の形式で、それぞれ、予め定められた残留壁厚に至るまで、弱化線に沿った多数の除去箇所において行われる。個々のセンサにより、材料除去の間、除去箇所においてレーザ光線の透過部分により生成される測定信号が検知される。続いて比較信号が形成され、該比較信号は、予め定められた残留壁厚が割り当てられている基準信号と比較される。レーザパルスを発生させるレーザジェネレータは、予め定められた残留壁厚が達成されるに至るまでの間のみ、レーザパルスがそれぞれ除去箇所に当たるように制御される。レーザパルスの透過レーザ放射出力は、該透過レーザ放射出力がセンサの感度範囲の下限値の上側に位置する場合に検知され、弱化線は、センサのアセンブリの視野内において任意に位置決めされることが可能である。
【0012】
下記特許文献6(DE 10 2007 024 510 B3)には、加工すべき車両内装部品の外面側に配置されたセンサを有する装置が開示されており、このセンサの測定領域は、目標破断線全体を検知する。ここでセンサは、ピクセルが個別に読み出し可能であるマトリクスカメラである。付設の制御計算ユニットは、センサと信号技術的に接続され、また加工レーザ放射線を発生させるレーザジェネレータと信号技術的に接続されている。加工の間、それぞれ関連の加工箇所に割り当てられているピクセルだけを読み出すために、制御計算ユニットは、マトリクスカメラのピクセルの箇所データを個々の加工箇所に割り当てて保存するように構成されている。
【0013】
それに対応し、目標破断線に沿った個々の加工箇所が、それぞれ割り当てられたピクセルに対し、予め決められた相対位置をとるために、車両内装部品は、センサに対して正確に指向されて位置決めされてなくてはならない。
【0014】
前記特許文献6に記載の方法によると、レーザ光線が、保持装置内に位置固定で保持された車両内装部品の内面側に向けられ、目標破断線に沿って案内され、材料除去が、残留壁厚を有する穴の形で、目標破断線に沿った多数の加工箇所において行われることにより、目標破断線が車両内装部品に作製される。この際、車両内装部分の外面側の目標破断線の経路全体を検知する位置固定のセンサの、予め決められたピクセルにより、残留壁厚と等価である測定値が検知される。これらの測定値に依存し、少なくとも1つの基準測定値と比較して、レーザ光線を放出するレーザジェネレータが制御される。前記特許文献6で開示された方法にとって本質的なことは、測定値を決定するために、マトリクスカメラにおける予め決められたピクセルだけが読み出されるということである。この際、予め決められたピクセルは、個々の加工箇所にそれぞれ受信可能なピクセルとして割り当てられて保存されているピクセルである。
【0015】
上述したそれらの方法と比べ、下記特許文献7(DE 10 2021 115 496 B3)による方法では、有利には、加工すべき車両内装部品をセンサアセンブリに対して正確に位置決めする必要はない。ここで車両内装部品は、センサマトリクスとレーザ走査装置の間の作業面内に配置され、レーザ光線が、目標破断線に沿って走査され、この際、材料除去は、穴の形で、それぞれ、予め定められた残留壁厚に至るまで、目標破断線に沿ったそれぞれの加工箇所において行われる。レーザ光線の透過部分は、次々に加工箇所のそれぞれにおいて、センサマトリクスの個別センサに対して個別測定値を生じさせる。同時に検知された複数の個別測定値から、それぞれ1つの全測定値が形成され、この全測定値は、予め定められた残留壁厚が割り当てられているそれぞれ1つの全基準値と比較される。それぞれ全測定値が全基準値に達したときにレーザ光線がスイッチオフされる。ここで開示された方法の特殊性は、目標破断線のために記憶された座標を車両内装部品の実際の位置に適合させるために、該方法の開始時には、レーザスキャナに関する座標系内の車両内装部品の実際ポジションが、座標系内ではその相対位置が既知であるカメラを介し、検出されることにある。センサマトリクスの測定値からは、単に目標破断線に沿った残留壁厚を断定することだけが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】独国特許出願公開第102005026906号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102005054607号明細書
【特許文献3】欧州特許第1118421号明細書
【特許文献4】欧州特許第0827802号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第3321024号明細書
【特許文献6】独国特許発明第102007024510号明細書
【特許文献7】独国特許発明第102021115496号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の課題は、センサマトリクスを用いて目標破断線における残りの残留壁厚が監視され、追加的な検知手段を用いることなく、車両内装部品における目標破断線の輪郭と位置を検査することのできる方法を見出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記課題は、請求項1の特徴を有する方法により解決される。
【0019】
有利には、記憶された個別測定値は、個別基準値(個別基準測定値とも称する)と比較されるだけでなく、それぞれ、個別比較値とも比較され、これらの個別比較値は、該当の個別センサ及び該当の加工箇所に割り当てられて保存されており、これらの個別比較値には、それぞれ目標ポジションからの位置ずれ量が割り当てられている。そして補間(内挿)により個別測定値から実際ポジションを断定することができる。
【0020】
僅かな計算手間で目標破断線の輪郭と位置を決定可能とするために、有利には、加工箇所の目標ポジションに対し、1つの個別センサの最大の延在部(大きさ)よりも小さい中心間隔を有する個別センサのためだけに、加工箇所ごとに個別測定値が記憶されて比較される。(ここで、中心間隔とは、目標ポジションの中心点(例えば穴の中心点)と、個別センサの中心点(例えば正方形又は長方形の個別センサの中心点)との間の間隔のことである。また1つの個別センサの最大の延在部とは、例えば正方形又は長方形の1つの個別センサの対角線の長さとしてよい。)
【0021】
或いは、有利には、加工箇所に割り当てられた他の個別基準値と比較し、最も高い個別基準値が検知される正に2つの個別センサのために、加工箇所ごとに個別測定値が記憶されて比較される。
【0022】
読み出された個別センサの少なくとも1つが個別測定値を提供しないか、又は付属の個別基準値から50%よりも多くずれている個別測定値を提供する場合には、欠陥の個別センサがあると断定できることは、有利である。
【0023】
有利には、割り当てられた個別基準値からの個別測定値の負(マイナス)のずれ量から、該当の個別センサの中心点から離れる、加工箇所の実際ポジションの当該加工箇所の目標ポジションからの位置ずれ量を断定することができ、また割り当てられた個別基準値からの個別測定値の正(プラス)のずれ量から、該当の個別センサの中心点に向かう、加工箇所の実際ポジションの当該加工箇所の目標ポジションからの位置ずれ量を断定することができる。
【0024】
必ずしも、あらゆる加工箇所のために、実際ポジションが、本発明による方法ステップを用いて検出される必要はなく、加工箇所の幾つかのために、加工箇所の実際ポジションを、隣接する加工箇所の検出された実際ポジションから検出することもできる。
【0025】
同時に検知された個別測定値が、個別センサの異なる感度及び/又は異なる応答時間に依存し、異なる重み付けをもって全測定値に取り込まれると、より正確な結果が達成される。
【0026】
車両内装部品が良好部品であるかどうかを決定するために、有利には、許容誤差範囲外の位置ずれ量の個数に対し、上限値が定められ、この上限値を上回らない場合に、車両内装部品が良好部品として認められる。
【0027】
後からの検証のために、加工箇所の実際ポジションが、目標ポジションに割り当てられて記録(ドキュメント化)されると有利である。そのような記録は、2次元マップとしてもよく、この2次元マップ内では、加工箇所が局所的に記入され、これらの加工箇所において、例えば、個別基準値と個別測定値が提供されており、又は、局所的に個別測定値の大きさが対応の色強度により反映される。
【0028】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】車両内装部品に目標破断線を作製するための、従来技術から既知の装置の概要図を示す図である。
【
図2】センサマトリクスと、4つの隣接する個別センサの間の1つの加工箇所のために形成された複数の個別測定値との概要図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1には、従来技術から既知であり、車両内装部品1に目標破断線2を作製するための方法の実行に適した装置の概要図が図示されている。この装置は、センサマトリクス(センサ行列)3と、センサマトリクス3に対して規定して配置された、レーザジェネレータとレーザ走査装置(レーザスキャン装置)4を有する加工ヘッドと、センサマトリクス3と加工ヘッドの間に位置する作業面Aと、センサマトリクス3及びレーザ走査装置4と信号技術的に接続されている制御計算ユニットとを含み、作業面A内には、加工すべき車両内装部品1が、センサマトリクス3に対し及びレーザ走査装置4に対し、規定された位置に配置される。また作業面Aは、車両内装部品1の表面輪郭に適合されており、幾何学的な面である必要はない。目標破断線2が目標輪郭をもって目標位置に作製されるときには、センサマトリクス3に対する規定の配置により、どの個別センサが、目標破断線2のそれぞれ1つの穴の作製に際して透過レーザ放射線を検知するのかが既知である。個々の穴の目標位置のためには、該当する個別センサに対し、それぞれ割り当てられた個別基準値が保存されている。
【0031】
この方法は、加工すべき車両内装部品1が、センサマトリクス3とレーザ走査装置4の間の作業面A内で、センサマトリクス3に対して予め定められた相対位置に配置されることにより開始する。従ってそれにより、生成すべき目標破断線2と、目標破断線2を形成する生成すべき複数の穴も、レーザ走査装置4に対し及びセンサマトリクス3に対し、従ってセンサマトリクス3の個別センサに対し、予め定められた相対位置をとる。
【0032】
レーザ走査装置4は、目標破断線2に沿って、車両内装部品1の内面側でレーザ光線(レーザビーム)Sを走査し、この際、材料除去は、穴の形で、それぞれ、予め定められた残留壁厚に至るまで、目標破断線2に沿ったそれぞれの加工箇所Pにおいて行われる。
【0033】
加工箇所Pにおいてそれぞれ次々に透過するレーザ光線Sの透過部分は、センサマトリクスの個別センサにおける個別測定値を生じさせ、これらの個別測定値のうち少なくとも幾つかが検知される。通常の検知は、所定の閾値の上側に位置する個別測定値の検知である。それとは異なり、それぞれの加工箇所Pにおける及びその周りにおける選択された個別センサの個別測定値を検知することも可能である。より多くの個別測定値が全測定値に取り込まれるほど、全測定値は、レーザ光線の衝突点(加工箇所)の位置に依存しなくなる。
【0034】
同時に検知された複数の個別測定値から、それぞれの加工箇所Pのためにそれぞれ1つの全測定値が形成され、予め定められた残留壁厚が割り当てられて保存されているそれぞれ1つの全基準測定値(全基準値とも称する)と比較される。レーザ光線Sは、それぞれ全測定値が全基準測定値に達したときにスイッチオフされる。
【0035】
本発明に本質的なことは、それぞれの全測定値における複数の個別測定値の少なくとも幾つかが、全測定値による全基準測定値の到達に際して、該当の個別センサと該当の加工箇所に割り当てられて保存され、それぞれ、該当の個別センサと該当の加工箇所に割り当てられて保存されている個別基準測定値と比較され、それから得られるずれ量(差異)が目標破断線2の輪郭と位置の評価のために使用されるということである。
【0036】
図2には、センサマトリックスの概要と、1つの加工箇所Pに割り当てられた複数の個別測定値が示されている。ここで加工箇所Pの目標ポジションは、例として、4つの隣接する個別センサの間の交差点のところ(X印のあるところ)に正確に位置している。基本的に全測定値の形成のために検知された全ての個別測定値を記憶して考慮することができる。しかし好ましくは、加工箇所の目標ポジションに対する個別センサの中心間隔が、予め定められた間隔を上回らず、且つ好ましくは1つの個別センサの最大の延在部(大きさ)よりも小さいという個別センサからくる、検知された複数の個別測定値だけが保存され、個別基準値との比較のために考慮される。それ故、この例では、個別センサ14、15、22、23の個別測定値が考慮され、従って加工箇所Pのところに直接的に位置する4つの個別センサの個別測定値だけが記憶される。加工箇所Pが、相対的にこれらの個別のセンサ14、15、22、23に対し、正確にその目標ポジションでもあるところに位置する場合には、それらの個別測定値は、それぞれ、付属の個別基準値に対応する。その際のずれ量は、目標ポジションに対する実際ポジションの位置ずれ量を示すことになる。実際ポジションが、例えば、個別センサ22にわたり斜めにずれているのであれば、個別センサ22の個別測定値の大きさは大きくなり、それに対し、個別センサ14、15、23の3つの個別測定値の大きさは小さくなる。またここに示された例において、全測定値は、これらの4つの個別測定値からだけで形成される。該当の複数の個別基準値と比較して加工箇所の目標位置からの加工箇所の位置ずれ量を断定するためには、基本的に2つの個別センサの個別測定値で十分である。加工箇所の目標ポジションに対する個別センサの中心間隔が1つの個別センサの最大の延在部よりも小さいという個別センサの個別測定値だけを使用するという設定では、最大で6つの個別センサの個別測定値が考慮される。加工箇所が1つの個別センサの中心点に正確に当たるという特殊な場合でのみ、この設定では、1つの測定値だけが考慮される。この場合には、この加工箇所のために、実際ポジションを、隣接した複数の加工箇所における検出された実際ポジションから補間(内挿)により検出することができる。
【0037】
残留壁厚が目標破断線全体にわたり一定であるべき場合には、全ての加工箇所Pのために、同じ全基準値が記憶されているが、しかしこの全基準値は、局所的には異なって、異なる個数で異なる個別基準値から得られる。異なる個別基準値は、位置検出を可能にする。
【0038】
品質評価にどの要求が求められるかに応じ、例えば、考慮された個別測定値の許容ずれ量のために限界値を保存することができ、これらの限界値を上回る場合には、それぞれの加工箇所Pにおいて生じた穴は、その実際ポジションをもって、許容誤差外であると評価される。
【0039】
或いは、それぞれの加工箇所Pに関し、加工箇所Pの目標ポジションに割り当てられている記憶された個別基準値に加え、個別比較値を保存することが可能であり、これらの個別比較値は、目標ポジションからの加工箇所Pの所定の位置ずれ量に割り当てられている。つまり1つの加工箇所Pにおいて得られ且つ記憶された複数の個別測定値から、個別比較値を用いて補間(内挿)により加工箇所Pの実際ポジションを断定することができる。
【0040】
個別測定値と、それに対応し、個別基準値と個別比較値は、個別センサにより形成された電気的な信号から導き出される値である。これらは、例えば、信号振幅、又は信号のもとの積分としてよい。全測定値は、合計形成、又は他の既知の処理規則により複数の個別測定値から形成される。この際、異なる重み付けを有する個別測定値を取り込むことができる。
図2に図示された例では、個別センサの可能なパラメータ許容誤差を顧慮せず、同じ重み付けを有する信号振幅が全測定値に取り込まれる。実際的には、個別センサに対し、異なる重み付けが行われる。異なる重み付けは、変動幅の影響下にある応答特性や感度範囲のような、個別センサの特性から得られる。重み付けは、センサパラメータのその変動幅をできるだけ排除するために行われる。
【0041】
特殊な場合では、加工箇所Pの目標ポジションは、水平方向及び垂直方向において、正確に個別センサ14と個別センサ15の間の中央にある。ここでは、それらに隣接する個別センサの中心間隔は、1つの個別センサの最大の延在部よりも大きく、それにより個別センサ14と個別センサ15の個別測定値だけが記憶され、個別基準値と比較される。この際、全測定値を形成するためには、それらに隣接する個別センサの個別測定値も使用しなくてはならないことは明らかであり、その理由は、目標ポジションから加工箇所の位置ずれ量が明らかな場合には、所望の残留壁厚は、全測定値が全基準値に達するよりも、明らかに早期に達成されてしまうためである。
【0042】
本発明による方法を用い、それぞれの加工箇所にまだ存在する残留壁厚が監視され、また全測定値が全基準値に達する場合に加工が局所的に終了されることにより、それらの加工箇所における穴の加工が制御される。同時に、全測定値を形成する複数の個別測定値の少なくとも一部分から、目標ポジションからの加工箇所の実際ポジションの位置ずれ量が断定される。この際、位置ずれ量が生じているということが確定されるだけでなく、この位置ずれ量が、予め定められた許容誤差内に位置するかどうか、又は位置ずれ量の結果としてどこに実際ポジションがあるのかも確定することができる。個々の加工箇所に関するこれらの情報から、車両内装部品における目標破断線の輪郭と位置を断定することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 車両内装部品
2 目標破断線
3 センサマトリクス
4 レーザ走査装置
P 加工箇所
A 作業面
S レーザ光線