IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 白金科技股▲分▼有限公司の特許一覧

<>
  • 特開-複合感光構造及びその製造方法 図1
  • 特開-複合感光構造及びその製造方法 図2
  • 特開-複合感光構造及びその製造方法 図3
  • 特開-複合感光構造及びその製造方法 図4
  • 特開-複合感光構造及びその製造方法 図5
  • 特開-複合感光構造及びその製造方法 図6
  • 特開-複合感光構造及びその製造方法 図7
  • 特開-複合感光構造及びその製造方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180373
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】複合感光構造及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/22 20060101AFI20241219BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20241219BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20241219BHJP
   C07F 19/00 20060101ALI20241219BHJP
   C07F 9/38 20060101ALN20241219BHJP
   C07F 9/09 20060101ALN20241219BHJP
   C07F 1/08 20060101ALN20241219BHJP
【FI】
G02B5/22
G02B3/00
G02B1/04
C07F19/00
C07F9/38 Z
C07F9/09 K
C07F1/08 B
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024096973
(22)【出願日】2024-06-14
(31)【優先権主張番号】112122741
(32)【優先日】2023-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】516210676
【氏名又は名称】白金科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】成 詩宋
(72)【発明者】
【氏名】朱 柏勳
(72)【発明者】
【氏名】張 家誠
(72)【発明者】
【氏名】陳 冠諭
(72)【発明者】
【氏名】張 仕琳
(72)【発明者】
【氏名】陳 錦隆
【テーマコード(参考)】
2H148
4H048
4H050
【Fターム(参考)】
2H148CA04
2H148CA05
2H148CA09
2H148CA12
2H148CA17
2H148CA24
4H048AA02
4H048AA05
4H048AB76
4H048VA20
4H048VA56
4H048VB10
4H050AA02
4H050AA05
4H050AB76
(57)【要約】
【課題】従来のフィルター部品に代わり、感光素子上にフィルターフィルムを直接形成することで、組み立て後の製品寸法を減少させ、前記フィルターフィルムは、さらに加工して形状化させることにより、マイクロレンズ機能を持たせることが可能である方法の提供。
【解決手段】複合感光構造及びその製造方法を提供する。感光素子と、前記感光素子上に形成された近赤外線吸収層とを含む複合感光構造であって、前記近赤外線吸収層は、銅錯体を含み、前記銅錯体は、銅イオンを供給するために用いられる銅化合物、本明細書における式1で示されるホスホン酸、及び少なくとも1種の本明細書における式2~式4で示されるリン含有化合物により形成され、前記近赤外線吸収層の入射光波長930nm~950nmに対するOD値は4超である、前記複合感光構造である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光素子と、前記感光素子上に形成された近赤外線吸収層とを含む複合感光構造であって、
前記近赤外線吸収層は銅錯体を含み、前記銅錯体は、銅イオンを供給するために用いられる銅化合物、下記式1で示されるホスホン酸、及び少なくとも1種の下記式2~式4で示されるリン含有化合物により形成され、
(式中、R、R、R、Rは、それぞれ独立して、置換若しくは無置換のC~C12アルキル又はC~C12アリールである。)
前記近赤外線吸収層の入射光波長930nm~950nmに対するOD値は4超である、複合感光構造。
【請求項2】
前記感光素子は、感光性結合素子又は相補型金属酸化膜半導体センサーである、請求項1に記載の複合感光構造。
【請求項3】
前記置換若しくは無置換のC~C12アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、及びtert-ブチルからなる群より選択され、前記置換若しくは無置換のC~C12アリールは、フェニル、ナフチル、及びクロロフェニルからなる群より選択される、請求項1に記載の複合感光構造。
【請求項4】
前記近赤外線吸収層のヘイズは0.4%以下である、請求項1に記載の複合感光構造。
【請求項5】
前記近赤外線吸収層のX線光電子スペクトルは、結合エネルギーが930電子ボルト(eV)~940電子ボルトである場合、少なくとも1つのメインピークを有する、請求項1に記載の複合感光構造。
【請求項6】
前記少なくとも1つのメインピークの1秒あたりのカウント数の値は4500以上である、請求項5に記載の複合感光構造。
【請求項7】
前記近赤外線吸収層の厚さは25μm~150μmである、請求項1に記載の複合感光構造。
【請求項8】
前記感光素子は複数の感光エリアを含み、前記近赤外線吸収層がそれぞれの前記感光エリアの上に形成され、前記近赤外線吸収層の境界線が前記感光エリアの境界線と揃えるか又は前記感光エリアの境界線を超えている、請求項1に記載の複合感光構造。
【請求項9】
前記近赤外線吸収層は、対向する第1の表面及び第2の表面を備え、前記第2の表面は感光エリアの表面に接触し、かつ前記第1の表面は平ら面、凸面又は凹面である、請求項1に記載の複合感光構造。
【請求項10】
前記近赤外線吸収層をマイクロレンズとしている、請求項9に記載の複合感光構造。
【請求項11】
複合感光構造の製造方法であって、
銅イオンを供給するために用いられる銅化合物、式1で示されるホスホン酸、及び少なくとも1種の式2~式4で示されるリン含有化合物を用意し、銅錯体含有塗布液を形成すること、
(式中、R、R、R、Rは、それぞれ独立し、置換若しくは無置換のC~C12アルキル又はC~C12アリールである。)
前記塗布液を、感光素子配列を含むウエハーの上に塗布し、硬化させて近赤外線吸収層を形成すること、及び
前記ウエハーをカットすることにより、複合感光構造を得ることを含み、
前記近赤外線吸収層の入射光波長930nm~950nmに対するOD値は4超である、製造方法。
【請求項12】
前記感光素子は、感光性結合素子又は相補型金属酸化膜半導体センサーである、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記置換若しくは無置換のC1~C12アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチルからなる群より選択され、前記置換若しくは無置換のC~C12アリールが、フェニル、ナフチル、クロロフェニルからなる群より選択される、請求項11に記載の製造方法。
【請求項14】
前記近赤外線吸収層のヘイズは0.4%以下である、請求項11に記載の製造方法。
【請求項15】
前記近赤外線吸収層のX線光電子スペクトルは、結合エネルギーが930電子ボルト(eV)~940電子ボルトである場合、少なくとも1つのメインピークを有する、請求項11に記載の製造方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つのメインピークの1秒あたりのカウント数の値は4500以上である、請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
前記近赤外線吸収層の厚さは25μm~150μmである、請求項16に記載の製造方法。
【請求項18】
前記硬化は光硬化であり、硬化前に前記塗布液を乾燥させることで溶媒を除去する、請求項11に記載の製造方法。
【請求項19】
リソグラフィープロセスにより、前記近赤外線吸収層をパターン化することをさらに含む、請求項11に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複合感光構造に関し、特に、感光素子とその上に形成された近赤外線吸収層とを含む複合感光構造に関する。
【背景技術】
【0002】
公知の感光素子は、大まかにマイクロレンズ、カラーフィルター層及び光電変換層や駆動回路等の部品を含み、いくつかのリソグラフィープロセスにより、ウエハー上に感光素子配列を製造した後に、それをカットして感光素子となることができる。光電変換層は、可視光に感度を持つことに加えて、一部の近赤外線にも感度を持つ。すなわち、感知する波長範囲は、可視光と一部の近赤外線をより広く含む。しかしながら、近赤外線を感知している際に発生する電気信号は干渉信号と見られて正常な画像表示を妨げるため、光電変換層に入れる赤外線を効果的にカットすることが望ましい。従来より、感光素子を光学レンズに組み立てる際に、光入射側に独立した外部式近赤外線フィルターを設置することにより、近赤外線をカットするという目的を達成することが一般的である。
【0003】
しかしながら、画質に対するニーズがどんどん高くなるにつれて、外部式フィルターを採用して近赤外線をカットする問題が徐々に顕在化している。外部式近赤外線フィルターは可視光透過率が十分に高くないため、光電変換層の入射光量が低下するだけではなく、外部式フィルターの設置スペースを設けるため、光学レンズのサイズが大きすぎるという問題もある。その結果、現在のスマートフォンは、レンズが外側に突出するのが一般的であり、また、ハイエンドスマートフォンであっても同様であるため、傷つきや損傷などのリスクが増えている。部品の小型化・薄型化の流れには、公知の外部式近赤外線フィルターを設置した光学レンズは、前記の制限のため、顕著な進展が成し遂げられているのが難しくなる。
【0004】
加えて、近赤外線吸収フィルターの製造プロセスにおいて、一般的には、近赤外線吸収層を形成した上で、反射防止層(Anti-reflective coating)をコーティングする。しかしながら、現在、反射防止層を形成するコーティングプロセスは200~300℃の高温で行うため、近赤外線吸収層中の有機染料は、高温により分解又は失活しやすい。そのため、有機染料の選択やコーティングプロセスのパラメータの調整及び制御には、大きな制限が存在する。
【発明の概要】
【0005】
前記課題に対して、本開示は、感光素子と、前記感光素子上に形成された近赤外線吸収層とを含む複合感光構造であって、
近赤外線吸収層は銅錯体を含み、前記銅錯体は、銅イオンを供給するために用いられる銅化合物、下記式1で示されるホスホン酸、及び少なくとも1種の下記式2~式4で示されるリン含有化合物により形成され、
(式中、R、R、R、Rは、それぞれ独立して、置換若しくは無置換のC~C12アルキル又はC~C12アリールである。)
近赤外線吸収層の入射光波長930nm~950nmに対するOD値が4超である、前記複合感光構造を提供する。
【0006】
一実施形態において、感光素子は、感光性結合素子(charged-couple device、CCD)又は相補型金属酸化膜半導体センサー(complementary metal-oxide-semiconductor、CMOS)である。
【0007】
一実施形態において、置換若しくは無置換のC~C12アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、及びtert-ブチルからなる群より選択され、置換若しくは無置換のC~C12アリールは、フェニル、ナフチル、及びクロロフェニルからなる群より選択される。
【0008】
一実施形態において、近赤外線吸収層のヘイズは0.4%以下である。
【0009】
一実施形態において、近赤外線吸収層のX線光電子スペクトルは、結合エネルギー(binding energy)が930電子ボルト(eV)~940電子ボルトである場合、少なくとも1つのメインピークを有する。他の実施形態において、近赤外線吸収層のX線光電子スペクトルには、少なくとも1つのメインピークの1秒あたりのカウント数(counts per second)値は4500以上である。
【0010】
一実施形態において、近赤外線吸収層の厚さは25μm~150μmである。
【0011】
一実施形態において、近赤外線吸収層は、熱可塑性樹脂及び/又は光硬化性樹脂である光学樹脂をさらに含む。他の実施形態において、光学樹脂は、ポリカーボネート類、ポリエステル類、ポリシクロオレフィン類、ポリアクリル酸類、シロキサン樹脂、及びポリイミド類から選択される。別の実施形態において、光学樹脂は、メタクリル酸メチルである。
【0012】
一実施形態において、銅化合物、式1で示されるホスホン酸及び少なくとも1種の式2~式4で示されるリン含有化合物は、溶媒と銅錯体含有の分散液を形成し、分散液と光学樹脂とを質量比5:1~1:1の比で混合して近赤外線吸収層を形成する。
【0013】
一実施形態において、感光素子は複数の感光エリアを含み、近赤外線吸収層がそれぞれの感光エリアの上に形成され、近赤外線吸収層の境界線が感光エリアの境界線と揃えるか又は感光エリアの境界線を超えている。
【0014】
一実施形態において、近赤外線吸収層は、対向する第1の表面及び第2の表面を備え、第2の表面が感光エリアの表面に接触し、第1の表面は、平ら面、凸面又は凹面である。
【0015】
一実施形態において、近赤外線吸収層をマイクロレンズとしている。
【0016】
また、本開示は、複合感光構造の製造方法であって、
銅イオンを供給するために用いられる銅化合物、下記式1で示されるホスホン酸、及び少なくとも1種の式2~式4で示されるリン含有化合物を用意し、銅錯体含有塗布液を形成すること、
(式中、R、R、R、Rは、それぞれ独立し、置換若しくは無置換のC~C12アルキル又はC~C12アリールである。)
塗布液を、感光素子配列を含むウエハー上に塗布し、硬化させて近赤外線吸収層を形成すること、及び
ウエハーをカットすることにより、複合感光構造を得ることを含み、
近赤外線吸収層の入射光波長930nm~950nmに対するOD値は4超である、製造方法を提供する。
【0017】
一実施形態において、前記感光素子は、感光性結合素子又は相補型金属酸化膜半導体センサーである。
【0018】
一実施形態において、置換若しくは無置換のC1~C12アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、及びtert-ブチルからなる群より選択され、置換若しくは無置換のC~C12アリールは、フェニル、ナフチル、及びクロロフェニルからなる群より選択される。
【0019】
一実施形態において、近赤外線吸収層のヘイズは0.4%以下である。
【0020】
一実施形態において、近赤外線吸収層のX線光電子スペクトルは、結合エネルギー(binding energy)が930電子ボルト(eV)~940電子ボルトである場合、少なくとも1つのメインピークを有する。他の実施形態において、近赤外線吸収層のX線光電子スペクトルには、少なくとも1つのメインピークの1秒あたりのカウント数(counts per second)値が4500以上である。
【0021】
一実施形態において、近赤外線吸収層の厚さは25μm~150μmである。
【0022】
一実施形態において、前記した銅錯体含有塗布液を形成する工程は、銅化合物、ホスホン酸及びリン含有化合物を溶媒中に添加させ混合して、分散液を形成することを含む。他の一実施形態において、銅化合物、ホスホン酸及びリン含有化合物の合計と溶媒との質量比は、1:5~1:1である。別の実施形態において、前記した銅錯体含有塗布液を形成する工程は、分散液と光学樹脂を混合させて、塗布液を形成することをさらに含む。別の更なる実施形態において、分散液と光学樹脂との質量比は、5:1~1:1である。
【0023】
一実施形態において、光学樹脂は、熱可塑性樹脂及び/又は光硬化性樹脂である。他の実施形態において、光学樹脂は、ポリカーボネート類、ポリエステル類、ポリシクロオレフィン類、ポリアクリル酸類、シロキサン樹脂、及びポリイミド類から選択される。別の実施形態において、前記光学樹脂は、メタクリル酸メチルである。
【0024】
一実施形態において、硬化工程は光硬化が採用され、硬化前には塗布液を乾燥させることで溶媒を除去する。
【0025】
一実施形態において、本開示の複合感光構造の製造方法は、リソグラフィープロセスにより、近赤外線吸収層をパターン化することをさらに含む。
【0026】
本開示は、まず、波長800nm~1100nmの入射光を効率よく吸収し、特に、波長940nmの入射光を良好に吸収し、かつ可視光に対して非常に高い透過率を示す近赤外線吸収層を形成し得るコーティング液を調製し、それを感光素子上に直接塗布して近赤外線吸収層を形成することで、複合感光構造を製造する。本開示の複合感光構造の光学レンズを使用すれば、独立した外部式近赤外線フィルターを設置していなくても、優れた近赤外線遮断効果をもたらして、光学レンズの厚さを著しく減少させる。また、赤外線吸収層を形成する際にリソグラフィープロセスを行うことにより、近赤外線吸収層に特定の形状(例えば、凸レンズ、凹レンズ)与えるため、近赤外線吸収層もマイクロレンズとして利用でき、光学レンズの厚さをさらに減少させる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本開示の複合感光構造を製造する方法のプロセスの概略図である。
図2図2は、本開示の複合感光構造を製造する方法のプロセスの概略図である。
図3図3は、本開示の複合感光構造を製造する方法のプロセスの概略図である。
図4図4は、本開示の複合感光構造を製造する方法のプロセスの概略図である。
図5図5は、本開示の複合感光構造を製造するもう1つの方法のプロセスの概略図である。
図6図6は、本開示の複合感光構造を製造するもう1つの方法のプロセスの概略図である。
図7図7は、本開示の複合感光構造を製造するもう1つの方法のプロセスの概略図である。
図8図8は、製造例1における近赤外線吸収層のX線光電子スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、特定の具体的な実施例により、本開示の実施形態を説明する。当業者であれば、本明細書に記載の内容に基づき本開示の範囲及び効果を容易に理解することができる。
【0029】
ただし、本明細書に添付された図面に示される構造、比率、サイズ等は、明細書の記載内容に合わせて、当業者に理解や閲覧させるためのものであり、本開示の実施可能の条件を限定するものではないため、技術上の実質的な意義を有せず、あらゆる構造的修飾、比率の変更、又はサイズの調整は、本開示によって得られる効果及び達成できる目的に影響を与えないに限り、いずれも、本開示で開示する技術内容の範囲に含まれているとすべきである。同時に、本明細書において使用される「上」、「第1の」、「第2の」等の用語は、説明の便宜上のみに用いられるものであり、本開示の範囲を限定するものではないため、技術内容に実質的な変更がない限り、それらの相対関係の変更や調整も、本開示が実施できる範囲内にあるものとみなすべきである。
【0030】
本明細書において、特定の要件を「含む」、「包含する」又は「有する」と記載されている場合、他に記載がない限り、他の部品、成分、構造、エリア、部位、装置、システム、工程又は接続関係などの要件を含んでもよく、かかる他の要件を排除するものではない。
【0031】
本明細書において、他に明確な記載がない限り、本明細書における前記の単数の形式の「一つ」及び「当該」は、複数の形式も含み、また、本明細書における前記の「又は」及び「及び/又は」は、交換可能に使用されている。
【0032】
本明細書に記載の数値範囲は、包含的にかつ合併できるものである。本明細書に記載の範囲内に含まれる任意の数値は、すべて最小値または最大値としてさらなる範囲を導き出すことができる。例えば、「25~200」の数値範囲は、端点である25と端点である200との間の任意のさらなる範囲(例えば、25~150、30~200、30~150…等のさらなる範囲)を包含すると理解すべきである。なお、ある数値が本明細書に記載の各範囲内(例えば、最大値と最小値との間)にある場合、本開示の範囲に含まれるものとみなすべきである。
【0033】
本開示の第1の形態は、感光素子と、前記感光素子上に形成された近赤外線吸収層とを含む、複合感光構造である。
【0034】
前記感光素子は、入射光線と作用してシグナルを生成できるものであれば、本開示の範囲内に含まれ、感光性結合素子CCDや相補型金属酸化膜半導体センサーCMOSを含むが、これらに限られない。
【0035】
前記した感光素子上に形成されたとは、具体的には、近赤外線吸収層が感光素子に直接接触することを指してもよい。すなわち、両者を直接接触させることができる手段のすべてが、本開示の範囲内に含まれ、例えば、近赤外線吸収層前駆体を感光素子表面上に形成させ、近赤外線吸収層前駆体をさらに処置して近赤外線吸収層とすること、接着剤を用いて又は用いずに近赤外線吸収層を粘着剤を用いて光素子表面上に貼り付けるか、又は粘着剤を用いずに感光素子表面上に貼り付けること等が挙げられる。
【0036】
本開示の近赤外線吸収層は、銅イオンを供給するために用いられる銅化合物、下記式1で示されるホスホン酸、及び少なくとも1種の下記式2~式4で示されるリン含有化合物により形成される銅錯体を含み、
式中、R、R、R、Rは、それぞれ独立して、置換若しくは無置換のC~C12アルキル又はC~C12アリールである。
【0037】
前記銅錯体は、化学式Cu2+Xで表され、式中、Cu2+は銅化合物から供給され、Xはホスホン酸及び/又はリン含有化合物から供給される。
【0038】
前記アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル等を含むが、これらに限られない。また、置換されたアルキルは、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ニトロアルキル、アルコキシアルキル等を含むが、これらに限られない。前記アリールは、フェニル、ナフチル等を含むが、これらに限られない。また、置換されたアリールは、ハロアリール(例えば、クロロフェニル)、ニトロアリール、ヒドロキシアリール、アルコキシアリール、アルキルアリール、ハロアルキルアリール、ニトロアルキルアリール、ヒドロキシアルキルアリールを含むが、これらに限られない。
【0039】
一実施形態において、ホスホン酸は、ブチルホスホン酸である。
【0040】
前記銅イオンを供給するために用いられる銅化合物は、主に銅イオンの供給源として用いられ、公知の銅イオンを供給できる銅化合物、例えば、銅塩を使用することができる。例としては、酢酸銅又は酢酸銅の水和物が挙げられ、また、塩化銅、ギ酸銅、ステアリン酸銅、安息香酸銅、ピロリン酸銅、ナフテン酸銅、クエン酸銅の無水物又は水和物が挙げられる。一実施形態において、銅イオンを供給するために用いられる銅化合物は、酢酸銅である。
【0041】
リン含有化合物は、分散機能を有してもよく、組成物中の成分(形成された銅錯体を含む)を互いに凝集せず均一に分散させる。この機能による効果の1つとして、組成物中の結晶子サイズが100nm以下、さらに5nm~80nmの間、又は20nm~60nmの間にあり、例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100nmとなり得る。結晶子サイズが5nm以上である場合、十分な近赤外線吸収特性を示す一方で、結晶子サイズが100nm以下である場合、凝集粒径の平均粒子数が小さく、製造された製品のヘイズが低くなる。
【0042】
本開示の銅錯体は、近赤外線吸収組成物により製造され得る。近赤外線吸収組成物は、前記した銅化合物、ホスホン酸及びリン含有化合物を含み、各成分が互いに作用し、反応して、銅錯体を形成する。本開示において、必要に応じて、各成分の比を調整することができる。例えば、近赤外線吸収組成物には、銅イオンを供給するために用いられる銅化合物の量は150質量部であってもよく、その例としては、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145又は150質量部が挙げられ、ホスホン酸の量は100質量部であってもよく、その例としては、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95又は100質量部が挙げられ、リン含有化合物の合計の量は1~90質量部であってもよく、その例としては、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85又は90質量部が挙げられる。
【0043】
一実施形態において、近赤外線吸収組成物は、式2~式4で示されるリン含有化合物を全て含み、必要に応じて、それらの比を調整することができる。例えば、近赤外線吸収組成物には、式2で示されるリン含有化合物の量は1~90質量部であってもよく、式3で示されるリン含有化合物の量は1~90質量部であってもよく、式4で示されるリン含有化合物の量は1~90質量部であってもよく、そのうち、式2~式4で示されるリン含有化合物のそれぞれの量としては、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85又は90質量部が挙げられる。他の実施形態において、式2で示されるリン含有化合物:式3で示されるリン含有化合物:式4で示されるリン含有化合物は20:20:50である。
【0044】
一実施形態において、近赤外線吸収組成物は、分散液形態であってもよく、すなわち、前記銅化合物、ホスホン酸及びリン含有化合物のほかにさらに溶媒を含む。調製の際に、銅化合物、ホスホン酸及びリン含有化合物を溶媒中に添加して混合することができ、これらの成分と溶媒との比は1:5~1:1であり、例えば、1:3であってもよいが、これらに限られない。
【0045】
前記溶媒は、公知の溶媒を選択してもよく、水、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン等を含むが、これらに限られない。具体的には、前記アルコール類は、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等である。前記エステル類は、例えば、ギ酸アルキル、酢酸アルキル、プロピオン酸アルキル、酪酸アルキル、乳酸アルキル、アルコキシ酢酸アルキル、プロピオン酸3-アルコキシアルキル、プロピオン酸2-アルコキシアルキル、2-アルコキシ-2-メチルプロピオン酸アルキル、ピルビン酸アルキル、アセト酢酸アルキル、2-オキソ酪酸アルキル等である。前記エーテル類は、例として、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等が挙げられる。前記ケトン類は、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン等である。前記芳香族炭化水素類は、例えば、トルエン、キシレン等である。
【0046】
前記混和とは、例えば、室温(例えば、25℃)下でよく攪拌し、例えば、4時間以上、6時間以上、8時間以上攪拌することであるが、これらに限られない。
【0047】
本開示において、分散液形態の近赤外線吸収組成物は、光学樹脂と混合して塗布液形態の近赤外線吸収組成物となり、その後、近赤外線吸収層を形成する。分散液と光学樹脂との比は、5:1~1:1又は3:1~1:1であり、例えば、0.65:0.35であってもよいが、これらに限られない。塗布液形態の近赤外線吸収組成物を使用する場合、これを基材の上に形成し、乾燥・硬化させて、近赤外線吸収層を形成する。
【0048】
前記光学樹脂は、熱可塑性樹脂及び/又は光硬化性樹脂であってもよい。一実施形態において、光学樹脂は、ポリカーボネート類、ポリエステル類、シクロオレフィンポリマー類、ポリアクリル酸類、シロキサン樹脂及びポリイミド類から選択される。他の実施形態において、光学樹脂は、シロキサン樹脂である。別の実施形態において、光学樹脂は、メタクリル酸メチルである。
【0049】
一実施形態において、近赤外線吸収組成物は、重合開始剤、例えば、光重合開始剤をさらに添加することにより、光照射により光学樹脂を重合させることができる。公知の重合開始剤を使用してもよく、アゾビスイソブチロニトリルを含むが、これに限られない。一実施形態において、均一に混合しやすくするように、溶媒を添加してもよい。公知の溶媒は、本明細書に記載のものを含むが、これらに限られない。一実施形態において、硬化プロセスを促進するために、硬化劑、例えば、光硬化劑をさらに添加することにより、光照射により硬化させて膜を形成することができる。
【0050】
一実施形態において、近赤外線吸収層の光学特性をさらに向上させ、例えば、近赤外線や紫外線の遮断をさらに向上させるために、吸収染料を含むこともできる。一実施形態において、吸收染料は、近赤外線吸収染料及び/又は紫外線吸収染料を含む。
【0051】
前記近赤外線吸収染料、例えば、アゾ化合物、ジイミン化合物、ジチオフェン金属錯体、スクアライン(squaraine)類化合物、シアニン(cyanine)類化合物やフタロシアニン(phthalocyanine)類化合物は、最大吸収波長を650~1100nm、より具体的には650~750nmの間に調整することができる。前記紫外線吸収染料は、例えば、アゾメチン類化合物、インドール類化合物、ケトン類化合物、ベンゾイミダゾール類化合物、及びトリアジン類化合物である。
【0052】
一実施形態において、より良い光透過率を維持するために、近赤外線吸収層のヘイズは、0.4%以下、0.3%又は0.2%以下であり、例えば、0.4%、0.35%、0.3%、0.25%、0.2%、0.19%、0.18%、0.17%、0.16%、0.15%、0.14%、0.13%、0.12%、0.11%又は0.1%である。
【0053】
近赤外線吸収層の厚さも、近赤外線吸収特性に影響を与える。一般的には、近赤外線吸収層の厚さが増加すると、近赤外線遮断能も増加するが、それは薄型化の要求を満たさない。一方、近赤外線吸収層の厚さが低減すると、近赤外線遮断能も低減する。一実施形態において、本開示の近赤外線吸収層は、厚さが小さい場合であっても、優れた近赤外線遮断能を実現することができ、具体的には、近赤外線吸収層の厚さは、25μm~150μmの間、50μm~150μmの間又は100μm~150μmの間にあり、例えば、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μm、110μm、120μm、125μm、130μm、135μm、140μm、145μm、146μm、147μm又は150μmである。
【0054】
一実施形態において、本開示の近赤外線吸収層のX線光電子スペクトルは、結合エネルギーが930電子ボルト~940電子ボルトである場合、少なくとも1つのメインピークを有する。一実施形態において、少なくとも1つのメインピークの1秒あたりのカウント数数は、4500以上、4600以上、4700以上、4800以上、4900以上又は5000以上である。
【0055】
一実施形態において、本開示の近赤外線吸収層の930nm~950nmの入射光波長範囲(940nm入射光を含む)に対する最大透過率は、0.1%以下、0.1%未満、0.05%以下、0.05%未満、0.01%以下、0.01%未満、0.0005以下又は0.005%未満であり、例えば、0.1%、0.09%、0.08%、0.07%、0.06%、0.05%、0.04%、0.03%、0.02%、0.01%、0.009%、0.008%、0.007%、0.006%、0.005%、0.004%、0.003%、0.002%、0.001%である。一方、近赤外線吸収層の入射光波長930nm~950nm(940nm入射光を含む)に対するOD値は、3以上、3超、3.5以上、3.5超、4以上、4超、4.5以上又は4.5超であり、例えば、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9である。一実施形態において、本開示の近赤外線吸収層の入射光波長範囲460nm~560nmに対する最小透過率は、80%以上又は85%以上であり、例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%又は90%である。
【0056】
一実施形態において、近赤外線吸収層は、300nm~850nm、300nm~800nm又は350nm~750nmの波長範囲と重なる通過帯域を有し、当該通過帯域の中心波長は、300nm~850nm、300nm~800nm、350nm~750nm、400nm~700nm、450nm~650nm、500nm~600nm又は500nm~550nmの波長範囲内にある。本明細書において、前記「通過帯域」とは、波長範囲内の入射光に対する透過率がいずれも50%以上のドメインを指し、前記「通過帯域の中心波長」とは、入射光に対する透過率が50%となる場合の2つの入射光の波長の平均値を指す。
【0057】
一実施形態において、入射光がそれぞれ0度及び30度の入射角で本開示の近赤外線吸収層に入射されると、通過帯域の中心波長がシフトし、そのシフト量は、1.4nm以下であり、例えば、1.4nm、1.3nm、1.2nm又は1.1nmである。一実施形態において、入射光がそれぞれ0度及び35度の入射角で本開示の近赤外線吸収層に入射されると、通過帯域の中心波長がシフトし、そのシフト量は、1.9nm以下であり、例えば、1.9nm、1.8nm又は1.7nmである。
【0058】
本開示の複合感光構造において、感光素子は、複数の感光エリアを含んでもよく、また、近赤外線吸収層が各感光エリア上に形成される。例えば、感光素子が複数の感光ユニットを有するカットされていないウエハーである場合、感光ユニットは、本明細書に記載の感光エリアを指し、近赤外線吸収層がウエハー全面の上に形成され、さらに加工することができる。より具体的には、近赤外線吸収層は、複數の感光ユニットを接触してもよい。一実施形態において、近赤外線吸収層の境界線が感光エリアの境界線と揃えるか、又は前記感光エリアの境界線を超えていることにより、赤外線が近赤外線吸収層に遮断され、その下の感光エリアに漏れない。
【0059】
一実施形態において、本開示の複合感光構造の近赤外線吸収層は、対向する第1の表面及び第2の表面を備え、近赤外線吸収層の第2の表面が感光エリアの表面に接触し、かつ近赤外線吸収層の第1の表面が平ら面、凸面又は凹面である。ここで、近赤外線吸収層は、例えば、エッチング、レーザー切断、研削、フォトリソグラフィープロセスなどの加工により、第1の表面を平ら面、凸面又は凹面にし、また、前記加工は、近赤外線吸収層が感光エリアに形成される前、その期間又はその後に行ってもよい。前記凸面とは、第2の表面に対して、第1の表面が外側に突出していることを指する。前記凹面とは、第2の表面に対して、第1の表面が内側に落ち込むことを指す。一実施形態において、近赤外線吸収層の第1の表面を光入射面として、この第1の表面により光が収束又は発散されるため、近赤外線吸収層がマイクロレンズとして機能する。
【0060】
本開示の第2の形態は、複合感光構造の製造方法であって、
銅イオンを供給するために用いられる銅化合物、式1で示されるホスホン酸、及び少なくとも1種の下記式2~式4で示されるリン含有化合物を用意し、銅錯体含有塗布液を形成すること、
(式中、R、R、R、Rは、それぞれ独立し、置換若しくは無置換のC~C12アルキル又はC~C12アリールである。)
前記塗布液を感光素子配列を含むウエハーの上に塗布し、硬化させて近赤外線吸収層を形成すること、及び
前記ウエハーをカットすることにより、複合感光構造を得ることを含む、製造方法である。
【0061】
具体的な実施手段は、図1図4に示されている。まず、銅イオンを供給するために用いられる銅化合物、ホスホン酸、リン含有化合物を用意し、続いてこれらを溶媒と混合して分散液を形成する。ここでの混合は、例えば、最初に銅化合物と溶媒とを混合して第1の混合物を形成し、別途でリン含有化合物と溶媒とを混合して第2の混合物を形成し、第1の混合物と第2の混合物を混合した後にホスホン酸をさらに混和して、分散液を形成することができる。ここで、各成分の反応や相互作用により、分散液中に銅錯体が形成される。
【0062】
塗布液を形成するために、分散液を光学樹脂とさらに混合する。前記光学樹脂は、本明細書における第1の形態で記載されているものである。
【0063】
一実施形態において、まず、分散液を乾燥させて粉末にし、続いて粉末を第2の溶媒に添加して分散液を形成し、その後、光学樹脂と混合する。前記第2の溶媒は、本明細書における第1の形態に記載の溶媒から選択され得る。
【0064】
吸収染料を添加する場合、吸収染料は、必要に応じて分散液・塗布液に添加し、例えば、光学樹脂と混合する前に分散液中に添加するか、分散液とともに光学樹脂と混合するか、又は分散液と光学樹脂とを混合した後に塗布液に添加する。
【0065】
図1に示すように、前記塗布液20を、感光素子配列(複數の感光エリア11を含む)を含むウエハー10の上に塗布する。必要に応じて、塗布の前又はその後に、例えば、超音波振動、負圧環境下への設置、又は両者をともに行うことにより、塗布液から気泡を除去する。本明細書において、前記塗布の実施方法は制限されず、例えば、スピンコート、スプレーコート、ブレードコート、ローラーコート、ディッピング等の方法により塗布することができる。
【0066】
次に、塗布液を硬化させて近赤外線吸収層を形成する。図2に示すように、硬化は、光硬化を採用することができ、光源Lから塗布液を照射して、ウエハー10全面の上に近赤外線吸収層21を形成する。
【0067】
また、図3及び図4に示すように、レーザーやダイヤモンドナイフなどの切断器Cで、ウエハー10をカットすることにより、感光素子12とその上に形成された近赤外線吸収層21を有する複合感光構造1を得る。
【0068】
図5図7は、感光構造の製造方法のもう1つの具体的な実施形態を表す。図1図4と比べて、近赤外線吸収層をパターン化する工程をさらに設置する。図5図7に表されるプロセスは、図1に続き、それぞれ図2~4に対応する。図5は、リソグラフィープロセスをさらに行う点で図2と相異する、具体的には、グレースケールマスクなどのフォトマスクMを設置し、その下の塗布液を選択的に曝露させることにより、特定のパターンを有するか又は特定の形状となる近赤外線吸収層21’、21”を得る。前記「特定のパターンを有するか又は特定の形状となる」は、図6及び図7に示すように、近赤外線吸収層の第1の表面を上に突出するか又は下に落ち込むことができる。
【0069】
一実施形態において、ウエハーの全面の上の塗布液は、各感光エリア11に対応する位置の上に、例えば、図6及び図7に示される近赤外線吸収層21’、21”のように、それぞれ独立したパターン化した近赤外線吸収層を形成する。ここで、前記の「それぞれ独立した」とは、具体的には、任意の隣接する2つの赤外線吸収層の間に接触がないことを指し、これは、前記のリソグラフィープロセスにより達成することができる。
【0070】
一実施形態において、塗布液を硬化する前に、それを乾燥させること(例えば、120℃で乾燥する)により、溶媒を除去する。
【0071】
本開示は、以下の具体的な実施例を参照して詳細をさらに説明するが、これらの具体的な実施例は、本開示の範囲を制限することは意図していない。
(実施例)
【0072】
製造例1-近赤外線吸収層
150質量部の酢酸銅と15000質量部のエタノールと混合し、室温下で1.5時間攪拌し、第1の混合液を形成した。別途で20質量部の式2で示されるリン含有化合物(plysurf A242G、日本第一工業製薬株式会社から購入)、20質量部の式3で示されるリン含有化合物(plysurf W542C、日本第一工業製薬株式会社から購入)、及び50質量部の式4で示される含有化合物(plysurf A285C、日本第一工業製薬株式会社から購入)と、1500質量部のエタノールとを混合し、第2の混合液を形成した。前記の第1の混合液と前記の第2の混合液とを混合し、室温下で1時間攪拌し、続いて100質量部のブチルホスホン酸を添加し、室温下で3時間攪拌して反応させた。その後、85℃のオーブンに入れて12時間放置し、粉末を得た。粉末とキシレンを質量比1:3で混合して分散液を形成し、また、当該分散液とメタクリル酸メチル(methyl methacrylate、MMA)を質量比0.65:0.35で混合して塗布液を形成し、それを基材上に塗布し、70℃の温度で30分間ベーキングし、近赤外線吸収層を得た。
【0073】
前記近赤外線吸収層に対してX線光電子分光法(ESCA/XPS)により解析を行う。そのX線光電子スペクトルは、図5に示されている。結合エネルギーが930eV~940eVである場合、銅錯体に関連する特徴的なピーク(Cu(PO、CuO、CuO、Cu(OH))が観察されている。なお、結合エネルギーが940eV以上である場合に現れるピークは、サテライトピーク(satellite peak)である。
【0074】
実施例1
製造例1の方法に基づいて分散液及び塗布液を調製するが、塗布液中に、光重合開始剤として、0.5gのアゾビスイソブチロニトリル(azobisisobutyronitrile、AIBN)と、適量の溶媒であるプロピレングリコールモノメチルエーテル(propylene glycol methyl ether、PGME)をさらに添加した。次に、負圧環境下で、超音波振動により気泡を除去し、その後、スピンコートにより感光素子配列を設置したウエハーの上に塗布した。120℃の温度でベーキングして溶媒を除去し、紫外線で塗布層を照射することにより、感光素子配列の表面上に近赤外線吸収層を形成した。最後に、レーザーでウエハーをカットし、複合感光構造を得た。
【0075】
実施例2
以外スピンコート工程の後かつ紫外線照射の前に、ウエハーの上にグレースケールマスクを設置し、塗布液を選択的に曝露させる以外は、実施例1と同様に感光素子配列を設置したウエハーの上に近赤外線吸収層を形成する。これにより、感光素子配列の表面上にパターン化した近赤外線吸収層を形成し、複合感光構造を得た。
【0076】
前記した各実施形態及び具体的な実施例は本開示を限定するものではなく、挙げられた各技術的特徴やアプローチを互いに組み合わせることができる。本開示も、他の異なる実施形態により実行又は応用することができる。本明細書に記載の各詳細事項も、異なる観点及び応用に応じて、本開示から逸脱することなく、様々な変更や修正を加えることができる。
【符号の説明】
【0077】
1,1‘:複合感光構造
10:ウエハー
11:感光エリア
12:感光素子
20:塗布液
21、21’、21”:近赤外線吸収層
C:切断器
L:光源
M:フォトマスク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8