(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180376
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】化合物、免疫増強剤、ワクチン組成物及び粘膜ワクチン組成物
(51)【国際特許分類】
C07H 15/04 20060101AFI20241219BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20241219BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20241219BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20241219BHJP
A61K 39/145 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C07H15/04 E
A61K39/39
A61P31/12
A61P37/04
A61K39/145
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024097222
(22)【出願日】2024-06-17
(31)【優先権主張番号】P 2023099628
(32)【優先日】2023-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023099629
(32)【優先日】2023-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168114
【弁理士】
【氏名又は名称】山中 生太
(74)【代理人】
【識別番号】100162259
【弁理士】
【氏名又は名称】末富 孝典
(74)【代理人】
【識別番号】100146916
【弁理士】
【氏名又は名称】廣石 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】若尾 雅広
(72)【発明者】
【氏名】新地 浩之
(72)【発明者】
【氏名】隅田 泰生
【テーマコード(参考)】
4C057
4C085
【Fターム(参考)】
4C057AA30
4C057BB02
4C057BB03
4C057BB04
4C057CC03
4C057DD01
4C057JJ09
4C085AA38
4C085BA55
4C085BB12
4C085CC08
4C085EE01
4C085FF14
4C085GG10
(57)【要約】
【課題】免疫細胞への高い移行性を有し、より効果的に免疫細胞を活性化することができる化合物を提供する。
【解決手段】化合物は、C型レクチン受容体に結合する複数の第1リガンド部分と、Toll様受容体に結合する第2リガンド部分と、複数の第1リガンド部分及び第2リガンド部分の各々が末端に結合した分岐構造を有するリンカーと、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
C型レクチン受容体に結合する複数の第1リガンド部分と、
Toll様受容体に結合する第2リガンド部分と、
前記複数の第1リガンド部分及び前記第2リガンド部分の各々が末端に結合した分岐構造を有するリンカーと、
を有する化合物。
【請求項2】
式(1)
【化1】
(式(1)において、R
Cは前記第1リガンド部分を有し、R
Tは前記第2リガンド部分を有し、p
1~p
3は、それぞれ独立して0以上6以下の整数である。)
に示される構造を有する、
請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記第1リガンド部分の構造は、
グルコース、ガラクトース、マンノース、アミノ糖及び酸性糖からなる群から選択される単糖が前記リンカーに結合した構造、又は
グルコース、ガラクトース、マンノース、アミノ糖及び酸性糖からなる群から選択される1種若しくは複数種からなるオリゴ糖若しくは多糖が前記リンカーに結合した構造である、
請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
前記第2リガンド部分は、
Toll様受容体4、Toll様受容体7及びToll様受容体8からなる群から選択される少なくとも1つに結合する、
請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項5】
前記第2リガンド部分の構造は、
1V209が前記リンカーに結合した構造である、
請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項6】
C型レクチン受容体に結合する複数の第1リガンド部分と、
Toll様受容体に結合する第2リガンド部分と、
前記複数の第1リガンド部分及び前記第2リガンド部分の各々が末端に結合した分岐構造を有するリンカーと、
を有する化合物を含む、
免疫増強剤。
【請求項7】
ワクチン用アジュバントである、
請求項6に記載の免疫増強剤。
【請求項8】
粘膜免疫増強剤である、
請求項6に記載の免疫増強剤。
【請求項9】
粘膜ワクチン用アジュバントである、
請求項8に記載の免疫増強剤。
【請求項10】
請求項7に記載の免疫増強剤と、
抗原と、
を含む、ワクチン組成物。
【請求項11】
請求項9に記載の免疫増強剤と、
抗原と、
を含む、粘膜ワクチン組成物。
【請求項12】
鼻粘膜投与用である、
請求項11に記載の粘膜ワクチン組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、免疫増強剤、ワクチン組成物及び粘膜ワクチン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
新興性感染症又は再興性感染症に対するワクチン及びがん免疫療法薬の開発では、免疫システムを増強又は調節する薬剤が求められている。免疫システムは、自然免疫と獲得免疫から成り立っている。自然免疫の活性化が初期応答の起点となる。自然免疫は、自然免疫受容体(パターン認識受容体ともいう)が特定の分子パターンを認識することによって活性化される。自然免疫の活性化は、細胞性免疫、液性免疫等の獲得免疫を誘導することから、生体の免疫応答全般において重要である。自然免疫受容体は、免疫細胞の細胞表層及びエンドソームに発現している。自然免疫を活性化する様々な自然免疫受容体のリガンドは免疫制御薬として用いることができる。また、自然免疫受容体のリガンドは、ワクチン製剤に添加することで、免疫応答の有効性を高めるアジュバントとしても使用することができる。
【0003】
従来、自然免疫受容体のリガンドとして、病原因子関連分子の構造をもとに、糖類、脂質類、タンパク質類、核酸類等が用いられてきた。例えば、自然免疫受容体の1つであるToll様受容体(Toll-like receptor:TLR)を活性化できる糖脂質(モノホスホリルリピッドA:MPLA、非特許文献1参照)又は核酸類(PolyI:C、CpG ODN等、非特許文献2参照)をアジュバントとして利用する粘膜ワクチンが開発されている。
【0004】
抗原を粘膜に投与する粘膜ワクチンは、非侵襲的かつ簡便に投与できることに加え、粘膜系の局所免疫応答だけでなく全身性の免疫応答も誘導できることから、次世代型ワクチンとして期待されている(非特許文献3参照)。粘膜ワクチン用アジュバントとして、例えば、増粘作用のある糖類及び脂質、コレラトキシン等の毒素タンパク質、アルミニウム塩等の無機塩類が用いられてきた。これらは、拡散して粘膜組織の免疫細胞に取り込まれ免疫応答を誘導するが、免疫細胞の自然免疫受容体の活性化能を持たない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Rhea N. Coler, et al., Development and Characterization of Synthetic Glucopyranosyl Lipid Adjuvant System as a Vaccine Adjuvant, PLoS One 6 (2011) e16333.
【非特許文献2】Neslihan Kayraklioglu et al., CpG Oligonucleotides as Vaccine Adjuvants, Methods in Molecular Biology 2197 (2021) 51-85
【非特許文献3】Marian R. Neutra and Pamela A. Kozlowski, Mucosal vaccines: the promise and the challenge, Nat. Rev. Immunol., 6, (2006) 148-158
【非特許文献4】Akihito Baba, et al., Synthesis and immunostimulatory activity of sugar-conjugated TLR7 ligands, Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 30 (2020) 126840
【非特許文献5】R. L. Miller, et al., Imiquimod applied topically: a novel immune response modifier and new class of drug, Int. J. Immunopharmacol. 21 (1999) 1-14
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、糖類、脂質類、タンパク質類及び核酸類は、不均一であるため製剤化が難しいうえ、免疫細胞に対する移行性が低い。これに対し、非特許文献4では、疎水性のTLR7リガンドである1V209を糖と結合させることで、親水性が高まるとともに1V209の細胞内への取り込みが増加し、樹状細胞等の免疫細胞におけるサイトカインの分泌が、糖と結合していない1V209で処理した細胞よりも増強されることが報告されている。
【0007】
一方、臨床応用されている、自然免疫受容体を活性化できる薬剤には、MPLA、イミキモド(非特許文献5参照)等がある。MPLAは脂溶性でエマルジョン製剤であるため、製剤の安定性に課題がある。また、イミキモドは局所投与に限られており、その適用範囲が非常に限られている。なお、ワクチンのアジュバントとして汎用されている薬剤としてアルム、スクワレン等があるが、これらはほとんど自然免疫受容体を活性化しない。
【0008】
また、粘膜ワクチンの開発では、粘膜組織下に存在する免疫細胞に対して、抗原を効率良く輸送し、免疫細胞を活性化するアジュバントの添加が不可欠である。これら両作用を有するアジュバントは、万能なユニバーサルアジュバントとして利用できるため、精力的に研究されているが、実用化には至っていない。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、免疫細胞への高い移行性を有し、より効果的に免疫細胞を活性化することができる化合物及び免疫増強剤を提供することを目的とする。また、免疫細胞に対して、抗原を効率良く輸送し、免疫細胞を活性化することができるワクチン組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、粘膜組織下に存在する免疫細胞に対して、抗原を効率良く輸送し、免疫細胞を活性化することができる免疫増強剤及び粘膜ワクチン組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(化合物)
本発明に記載された化合物は、
C型レクチン受容体に結合する複数の第1リガンド部分と、
Toll様受容体に結合する第2リガンド部分と、
前記複数の第1リガンド部分及び前記第2リガンド部分の各々が末端に結合した分岐構造を有するリンカーと、
を有する。
【0011】
上記本発明に記載された化合物は、
式(1)
【化1】
(式(1)において、R
Cは前記第1リガンド部分を有し、R
Tは前記第2リガンド部分を有し、p
1~p
3は、それぞれ独立して0以上6以下の整数である。)
に示される構造を有することとしてもよい。
【0012】
前記第1リガンド部分の構造は、
グルコース、ガラクトース、マンノース、アミノ糖及び酸性糖からなる群から選択される単糖が前記リンカーに結合した構造、又は
グルコース、ガラクトース、マンノース、アミノ糖及び酸性糖からなる群から選択される1種若しくは複数種からなるオリゴ糖若しくは多糖が前記リンカーに結合した構造であることとしてもよい。
【0013】
前記第2リガンド部分は、
Toll様受容体4、Toll様受容体7及びToll様受容体8からなる群から選択される少なくとも1つに結合することとしてもよい。
【0014】
前記第2リガンド部分の構造は、
1V209が前記リンカーに結合した構造であることとしてもよい。
【0015】
(免疫増強剤)
本発明に記載された免疫増強剤は、
C型レクチン受容体に結合する複数の第1リガンド部分と、
Toll様受容体に結合する第2リガンド部分と、
前記複数の第1リガンド部分及び前記第2リガンド部分の各々が末端に結合した分岐構造を有するリンカーと、
を有する化合物を含む。
【0016】
本発明に記載された上記免疫増強剤は、
ワクチン用アジュバントであることとしてもよい。
【0017】
本発明に記載された上記免疫増強剤は、
粘膜免疫増強剤であることとしてもよい。
【0018】
本発明に記載された上記免疫増強剤は、
粘膜ワクチン用アジュバントであることとしてもよい。
【0019】
(ワクチン組成物)
本発明に記載されたワクチン組成物は、
本発明に記載された上記免疫増強剤と、
抗原と、
を含む。
【0020】
(粘膜ワクチン組成物)
本発明に記載された粘膜ワクチン組成物は、
本発明に記載された上記免疫増強剤と、
抗原と、
を含む。
【0021】
本発明に記載された上記粘膜ワクチン組成物は、
鼻粘膜投与用であることとしてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る化合物及び免疫増強剤は、免疫細胞への高い移行性を有し、より効果的に免疫細胞を活性化することができる。本発明に係るワクチン組成物は、免疫細胞に対して、抗原を効率良く輸送し、免疫細胞を活性化することができる。本発明に係る免疫増強剤及び粘膜ワクチン組成物は、粘膜組織下に存在する免疫細胞に対して、抗原を効率良く輸送し、免疫細胞を活性化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】試験例1におけるマウス骨髄由来樹状細胞の糖鎖TLRリガンド複合体による処理で培養培地に実質的に添加されたToll様受容体7リガンドの濃度に対するIL-6の産生量を示す図である。
【
図2】試験例2におけるオボアルブミン(OVA)に対する糖鎖TLRリガンド複合体による免疫増強活性を示す図である。(A)及び(B)は、それぞれ鼻腔洗浄液及び血清中のOVAに対するIgA抗体産生価を示す。(C)及び(D)は、それぞれ鼻腔洗浄液及び血清中のOVAに対するIgG抗体産生価を示す。
【
図3】試験例2におけるマウスの脾臓重量を示す図である。
【
図4】試験例3におけるインフルエンザウイルス由来ヘマグルチニン(HA)に対する糖鎖TLRリガンド複合体による免疫増強活性を示す図である。(A)及び(B)は、それぞれ鼻腔洗浄液及び血清中のHAに対するIgA抗体産生価を示す。(C)及び(D)は、それぞれ鼻腔洗浄液及び血清中のHAに対するIgG抗体産生価を示す。
【
図5】試験例4におけるインフルエンザワクチンHAに対する糖鎖TLRリガンド複合体による免疫増強活性を示す図である。(A)及び(B)は、それぞれ鼻腔洗浄液及び血清中のHAに対するIgA抗体産生価を示す。(C)及び(D)は、それぞれ鼻腔洗浄液及び血清中のHAに対するIgG抗体産生価を示す。
【
図6】試験例5における鼻腔粘膜に産生された抗体のウイルス中和活性評価の結果を示す図である。
【
図7】試験例6におけるマウスを用いたインフルエンザウイルス感染防御試験の結果を示す図である。(A)及び(B)は、それぞれ感染後のマウスの体重の経時変化及び生存率を示す。
【
図8】試験例7におけるマウスを用いたインフルエンザウイルス感染防御試験の結果を示す図である。(A)及び(B)は、それぞれ感染後のマウスの体重の経時変化及び生存率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照して説明する。各図面においては、同一又は同等の部分には同一の符号が付される。なお、本発明は下記の実施の形態及び図面によって限定されるものではない。なお、下記の実施の形態において、“有する”、“含む”又は“含有する”といった表現は、“からなる”又は“から構成される”という意味も包含する。
【0025】
本実施の形態に係る免疫増強剤は化合物を含む。当該化合物は、C型レクチン受容体(以下、“CLR”ともいう)に結合する第1リガンド部分としてのCLRリガンド部分と、TLRに結合する第2リガンド部分としてのTLRリガンド部分と、を有する。分子構造内においてTLRリガンド部分はCLRリガンド部分にリンカーを介して連結されている。CLRリガンド部分とTLRリガンド部分とがリンカーを介して連結されているとは、CLRリガンドを構成する少なくとも1つの原子及びTLRリガンドを構成する少なくとも1つの原子それぞれがリンカーを構成する原子に結合又は置換していることをいう。CLRリガンド部分とは、CLRリガンドを構成する原子のうち、リンカーとの結合に供されていない残りの原子からなる原子団をいう。同様に、TLRリガンド部分とは、TLRリガンドを構成する原子のうち、リンカーとの結合に供されていない残りの原子からなる原子団をいう。
【0026】
例えば、上記化合物の構造は、下記式(2)に示される。
LC-L-LT 式(2)
式(2)において、LCはCLRリガンド部分を示す。Lはリンカーを示す。LTはTLRリガンド部分を示す。
【0027】
好ましくは、上記化合物は、1分子あたり複数のCLRリガンド部分を有する。複数のCLRリガンド部分は、すべて同じであってもよいし、互いに構造が異なるCLRリガンド部分であってもよい。化合物が1分子あたり複数のCLRリガンド部分を有する場合、例えば、複数のCLRリガンド部分をLC1及びLC2とすると、当該化合物の構造は、下記式(3)に示される。
LC1-L(-LC2)-LT 式(3)
式(3)において、Lはリンカーを示す。LTはTLRリガンド部分を示す。式(2)及び式(3)において、LC、LC1及びLC2はそれぞれCLRリガンドを構成する少なくとも1つの原子がリンカーを構成する原子に置換している構造である。式(2)及び式(3)において、LTはTLRリガンドを構成する少なくとも1つの原子がリンカーを構成する原子に置換している構造である。言い換えると、CLRリガンド部分及びTLRリガンド部分は、リンカーとの結合によって、本実施の形態に係る化合物の構造にそれぞれCLRリガンドに由来する構造及びTLRリガンドに由来する構造として含まれる。
【0028】
CLRリガンドは、CLRに対して結合能を有する分子であれば、特に限定されない。これまでに、C型レクチン様ドメインを有する18種類のCLRのグループが見出されている。それぞれのCLRは、病原体又は内在性の糖鎖構造を認識すると考えられている。CLRリガンドとしては、例えば、単糖及び糖鎖が挙げられる。
【0029】
単糖とはこれ以上加水分解されない最小単位の糖である。単糖又は糖鎖としては、例えば、グルコース、ガラクトース、マンノース、フコース、マルトース、アラビノース、キシロース、ラムノース、イソマルトース、イドース、ラクトース、パノース、セロビオース、メリビオース、アラビノビオース、イソプリメベロース、ゲンチオビオース、マンノオリゴ糖鎖、キトオリゴ糖鎖、ラミナリオリゴ糖鎖、グルコサミン、N-アセチルグルコサミン、グルクロン酸、シクロデキストリン、アミノシクロデキストリン、アミロペクチン、アミロース、アラビナン、アラビノキシラン、カードラン、デキストラン、グルコマンナン、ガラクトマンナン、マンナン、プルラン、ザイモサン、キシラン、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヒアルロン酸、アルギン酸、カラギーナン、フコイダン、ポリグルロン酸、ポリマンヌロン酸、キトサン、キチン等が挙げられる。単糖として、シアリルラクトース等のシアル酸を有する糖、及びデキストラン硫酸等の硫酸化糖(硫酸基を有する糖)を用いてもよい。好適には、単糖は、グルコース、ガラクトース、マンノース、アミノ糖及び酸性糖からなる群から選択される。
【0030】
糖鎖は、複数の単糖を有する限り、糖鎖におけるその他の構成は特に限定されない。糖鎖は、複数の上記単糖がグリコシド結合によって結合した化合物であってもよく、例えば、オリゴ糖及び多糖である。オリゴ糖及び多糖は、環状であってもよいし、枝分かれした構造(分枝構造)を有していてもよい。
【0031】
糖鎖が、オリゴ糖又は多糖である場合、同一の単糖からなる単一オリゴ糖又は多糖であってもよいし、種々の単糖又はその誘導体からなる複合糖であってもよい。糖鎖を構成する単糖は、いずれも、自然界から単離及び精製して得られる種々の天然の糖であってもよいし、人工的に合成された糖であってもよい。上記単糖及びオリゴ糖は、多糖を分解して得られたものであってもよい。
【0032】
具体的には糖鎖としては、Glc、GlcNAc、Gal、Ara、Xyl、Rha、Glcα1-4Glc、Glcα1-4Glcα1-4Glc、Glcα1-6Glc、Glcα1-6Glcα1-6Glc、Araα1-5Ara、Glcβ1-3Glcβ1-3Glc、Glcβ1-4Glc、Glcβ1-6Glc、Galα1-6Glc、Galα1-4Galβ1-4Glc、Galβ1-3GalNAcα1-6Glc、Galβ1-4GlcNAcβ1-6Glc、Galβ1-4Glc、Galβ1-4[Fucα1-2]GlcNAcβ1-3Galβ1-4Glc、Manα1-2Man、Manα1-3Manα1-6Man、Manα1-6Man、Fucα1-2Galβ1-4Glc、Fucα1-6Glc、Fucβ1-6Glc、Xylβ1-6Glc、GlcNAcα1-6Glc、GlcNAcβ1-4GlcNAc、GlcNAcβ1-6Glc、GlcNAcβ1-3Galβ1-4GlcNAcβ1-3Galβ1-4Glc、GalNAcα1-6Glc、GalNAcβ1-3Gal、Neu5Acα2-3Galβ1-4Glc、Neu5Acα2-3Galβ1-4GlcNAc、Neu5Acα2-3Galβ1-3GlcNAcβ1-6Glc、Neu5Acα2-3Galβ1-4GlcNAcβ1-6Glc、Neu5Acα2-6Galβ1-4Glc、Neu5Acα2-6Galβ1-3GlcNAcβ1-6Glc、Neu5Acα2-6Galβ1-4GlcNAcβ1-6Glc、GlcNS6Sα1-4IdoA2Sβ1-6Glc、Galβ1-4GlcGalβ1-4GlcNAcβ1-6Glc、Neu5Acα2-3Galβ1-4Glc、Neu5Acα2-6Galβ1-4Glc、Neu5Acα2-3Galβ1-3GlcNAcβ1-6Glc、Neu5Acα2-6Galβ1-3GlcNAcβ1-6Glc、Neu5Acα2-3Galβ1-4GlcNAcβ1-6Glc、Neu5Acα2-6Galβ1-4GlcNAcβ1-6Glc、GlcAβ1-3GalNAc4Sβ1-6Glc、GlcAβ1-3GalNAc6Sβ1-6Glc、GlcA2Sβ1-3GalNAc6Sβ1-6Glc、GlcAβ1-3GalNAc4S6Sβ1-6Glc、GlcNS6Sα1-4IdoA2Sα1-6Glc、GlcNSα1-4IdoA2Sα1-6Glc、GlcNS6Sα1-4GlcA2Sβ1-6Glc、GlcNSα1-4GlcAβ1-6Glc、αCD、βCD、γCD等を挙げることができる。
【0033】
なお、本明細書において、“Glc”はグルコース(Glucose)を、“Gal”はガラクトース(Galactose)を、“Man”はマンノース(Mannose)を、“Fuc”はフコース(Fucose)を、“Xyl”はキシロース(Xylose)を、“Ara”はアラビノース(Arabinose)を、“Rha”はラムノース(Rhamnose)を、“NAc”はN-アセチル(N-Acetyl)を、“Ido”はイドース(Idose)を、“Neu5Ac”はN-アセチルノイラミン酸(N-Acetylneuraminic acid)を、“GlcA”はグルクロン酸(Glucuronic acid)を、“IdoA”はイズロン酸(Iduronic aid)を、“CD”はシクロデキストリン(Cyclodextrin)を、糖鎖の化学式中に表される“S”はスルフォニル(硫酸基)をそれぞれ表す。例えば、GlcAβ1-3GalNAc4Sβ1-6Glcにおける“4S”は4-O-硫酸を表す。
【0034】
また、糖鎖の化学式における“α”又は“β”は、還元末端側の糖の水酸基がα又はβの立体構造で隣り合う糖の水酸基と結合していることを示す。例えば、“α1-4”は還元末端側の糖の1位水酸基がαの立体構造で隣り合う糖の4位の水酸基と結合していることを示す。
【0035】
好ましくは、単糖は、グルコース、ガラクトース、マンノース、アミノ糖及び酸性糖からなる群から選択される。多糖は、グルコース、ガラクトース、マンノース、アミノ糖及び酸性糖からなる群から選択される1種若しくは複数種からなるオリゴ糖若しくは多糖である。
【0036】
単糖及び糖鎖は、還元末端、非還元末端を有していてもよいし、又は側鎖にアルキルアミン、アミノ基、カルボキシ基、アジド基、アルキン基等を有していてもよい。“還元末端を有する糖鎖”は、例えば、アノマー炭素原子が置換を受けていない糖鎖などである。還元末端を有する糖鎖は、還元糖であるともいえる。
【0037】
CLRリガンドがアミノ糖又は酸性糖を含む糖鎖である場合、糖鎖のアミノ基(例えば-NH2基)又はカルボキシ基(-COOH基)を介したアミド結合によって、CLRリガンド部分がリンカーと結合していてもよい。なお、上記化合物は、1種類のみの糖鎖を含んでいてもよいし、2種類以上の糖鎖を組み合わせて含んでいてもよい。
【0038】
本実施の形態に係る化合物におけるCLRリガンド部分の構造は、グルコース、ガラクトース、マンノース、アミノ糖及び酸性糖からなる群から選択される単糖がリンカーに結合した構造、又はグルコース、ガラクトース、マンノース、アミノ糖及び酸性糖からなる群から選択される1種若しくは複数種からなるオリゴ糖若しくは多糖がリンカーに結合した構造である。
【0039】
TLRリガンドとは、TLRに対して結合能を有する化合物又は分子である。ヒトでは、TLR1からTLR10の10種類のTLRが同定されている。それぞれのTLRに対して、同一の、又は異なるTLRリガンドが存在する。
【0040】
TLRリガンドとして、いずれのTLRに対するリガンドも使用できる。TLRリガンドとしては、微生物、ウイルス及びTLRを発現している生物由来のリガンドである天然由来のTLRリガンドであってもよいし、合成されたTLRリガンドであってもよい。TLRリガンドとしては、公知のリガンドを用いることができる。
【0041】
好ましくは、TLRリガンド部分は、TLR4、TLR7又はTLR8に結合して、TLRの活性を誘起する。すなわち、好適には、TLRリガンド部分は、TLR4、TLR7及びTLR8からなる群から選択される少なくとも1つに結合する。TLR4又はTLR7に対する結合能を有し、TLRの活性を誘起するTLRリガンドがより好ましく、TLR7に対する結合能を有し、TLR7に結合して、TLRの活性を誘起するTLRリガンドがさらに好ましい。
【0042】
より具体的には、TLRリガンドとしては、(i)TLR4に対するTLRリガンド(以下、“TLR4リガンド”ともいう)であるモノホスホリルリピッドA(式(4))、ピリミドインドール体(式(5))、4-((3-ニトロ-5-フェノキフェニル)アミノ)キナゾリン-2-カルボキシ酸(4-((3-nitro-5-phenoxyphenyl)amino)quinazoline-2-carboxylic acid、式(6))、(ii)TLR7に対するTLRリガンド(以下、“TLR7リガンド”ともいう)である1V209(式(7))、(iii)TLR8に対するTLRリガンド(以下、“TLR8リガンド”ともいう)であるVTX-2337(式(8))、並びに(iv)TLR7及びTLR8に対するTLRリガンドであるR848(式(9))が挙げられる。TLRリガンドとして、特に1V209が好ましい。
【0043】
【0044】
好ましくは、TLRリガンド部分の構造は、1V209がリンカーに結合した構造である。本実施の形態に係る化合物は、1種類のTLRリガンドに由来する構造を含んでいてもよく、2種類以上のTLRリガンドそれぞれに由来する構造を含んでいてもよい。TLRリガンドが、例えばアミノ基、ヒドロキシ基又はカルボキシ基を有する場合、TLRリガンドのアミノ基、ヒドロキシ基又はカルボキシ基を介して、TLRリガンド部分がリンカーと結合していてもよい。
【0045】
上記化合物が1分子あたり複数のCLRリガンド部分を有する場合、好ましくは、リンカーは、複数のCLRリガンド部分及びTLRリガンド部分の各々が末端に結合した分岐構造を有する。例えば、リンカーが分岐構造を有する化合物の構造は下記式(1)に例示される。
【0046】
【0047】
式(1)において、RCはCLRリガンド部分を有し、RTはTLRリガンド部分を有する。p1~p3は、それぞれ独立して0以上6以下の整数である。
【0048】
本実施の形態に係る化合物の構造は、例えば、下記の式(10)、式(11)及び式(12)に示される。
【0049】
【0050】
本実施の形態に係る化合物は、公知の方法で製造することができる。当該化合物は、CLRリガンドに結合させた第1リンカー化合物と、TLRリガンド又はTLRリガンドに結合させた第2リンカー化合物とを連結することで合成されてもよいし、CLRリガンドと、TLRリガンドに結合させた第2リンカー化合物とを連結することで合成されてもよい。
【0051】
第1リンカー化合物は、例えば、CLRリガンドと結合し得るアミノ基、カルボキシ基、アジド基又はアルキン基を一端に有し、他端にアミノ基、カルボキシ基、アジド基又はアルキン基を含む炭化水素構造を有する炭化水素鎖又は炭化水素誘導鎖である。炭化水素鎖及び炭化水素誘導鎖は、炭素及び水素からなる炭化水素鎖又は一部の炭素若しくは水素が、他の原子又は置換基に置換されてもよい。例えば、炭化水素誘導鎖及び炭化水素誘導鎖は、主鎖である炭素-炭素結合(C-C結合)の一部が、炭素-窒素結合(C-N結合)、炭素-酸素結合(C-O結合)、アミド結合(CO-NH結合)等に置き換わっていてもよい。
【0052】
上記他端の炭化水素構造とは、炭素及び水素からなる炭化水素構造であってもよく、一部の炭素若しくは水素が、他の原子又は置換基に置換されてもよい。当該炭化水素構造は、直鎖又は分岐鎖であってもよいし、環状であってもよいし、鎖状及び環状の両方の構造の組み合わせであってもよい。
【0053】
例えば、第1リンカー化合物としては、上述のCLRリガンドと結合し得る一端をX1、他端をY1として下記の式(13)で表される構造を有する化合物が挙げられる。
【0054】
【0055】
式(13)において、m及びnは、それぞれ独立して0以上6以下の整数であり、X1及びY1は、それぞれ独立して、末端にアミノ基、カルボキシ基、アジド基又はアルキン基を有する。
【0056】
好ましくは、第1リンカー化合物は、X1にアミノ基を有し、Y1にアジド基を有する。X1にアミノ基を有する場合、当該アミノ基を介して、CLRリガンドを第1リンカー化合物に簡便に結合させることができる。当該アミノ基は、未修飾のアミノ基の他、例えばメチル基、ホルミル基などのアルキル基で修飾されたアミノ基であってもよいし、芳香環に結合したアミノ基であってもよい。より具体的には、X1にアミノ基を有する第1リンカー化合物として、下記の式(14)で表される構造を有する化合物が例示される。
【0057】
【0058】
式(14)において、m及びnは、それぞれ独立して0以上6以下の整数であり、Y1は、それぞれ独立して、末端にアミノ基、カルボキシ基、アジド基又はアルキン基を有する。
【0059】
好ましくは、CLRリガンドと第1リンカー化合物との還元アミノ化反応によって、CLRリガンドが、例えば式(13)におけるX1に導入される。還元アミノ化反応の最適条件であるpH3~4においては、アミノ基がプロトン化されないことが必要である。そのため、X1に含まれるアミノ基は、式(14)に示すように、芳香族との共役によってpH3~4でも非共有電子対が窒素原子上に存在する芳香環に結合したアミノ基が好ましい。
【0060】
第1リンカー化合物は、例えば、式(13)及び式(14)におけるY1の末端にアジド基を有することが好ましい。当該アジド基とTLRリガンドに結合した第2リンカー化合物が有するアルキン基とを介して、CLRリガンドとTLRリガンドとを複合体化することができる。言い換えると、第1リンカー化合物のY1がアジド基を有する場合、当該アジド基と、TLRリガンドに結合した第2リンカー化合物が有するアルキン基とをクリック反応に供することができる。クリック反応は、例えば、銅触媒を用いて行われる。
【0061】
なお、第1リンカー化合物は、Y1の末端にアルキン基を有していてもよい。当該アルキン基とTLRリガンドに結合した第2リンカー化合物が有するアジド基とを介したクリック反応によってCLRリガンドとTLRリガンドとを連結し複合体化することができる。
【0062】
第2リンカー化合物は、例えば、一端にTLRリガンドと結合し得るアミノ基、カルボキシ基、アジド基又はアルキン基を有し、他端にアミノ基、カルボキシ基、アジド基、アルキン基又はtert-ブチル基等のアルキン基に変換可能な基を含む炭化水素構造を有する炭化水素鎖又は炭化水素誘導鎖である。炭化水素鎖及び炭化水素誘導鎖は、上述の第1リンカー化合物における炭化水素鎖及び炭化水素誘導鎖と同様である。
【0063】
例えば、第2リンカー化合物としては、上述のTLRリガンドと結合し得る一端をY2、他端をX2として下記の式(15)で表される構造を有する化合物が挙げられる。
【0064】
【0065】
式(15)において、m及びnは、それぞれ独立して0以上6以下の整数であり、X2及びY2は、それぞれ独立して、末端にアミノ基、カルボキシ基、アジド基又はアルキン基を有する。X2は、末端にアミノ基、カルボキシ基、アジド基、アルキン基又はアルキン基に変換可能な基を有するとともに、主鎖として炭素-炭素結合、炭素-酸素結合、炭素-窒素結合等を有していてもよい炭化水素鎖又は炭化水素誘導鎖を、直鎖で、あるいは、分岐構造で有してもよい。X2が有する炭化水素鎖又は炭化水素誘導鎖が分岐構造を有する場合、分岐の数は特に限定されないが、好ましくは、X2は、2鎖又は3鎖からなる分岐構造を有する。なお、X2に含まれるアミノ基、カルボキシ基、アジド基又はアルキン基は、炭化水素のみで構成されていてもよいし、炭素以外の元素を含む複素環であってもよい。
【0066】
好ましくは、X2は、下記の式(16)又は式(17)で表される構造を有する。
【0067】
【0068】
式(16)及び式(17)において、p1~p5は、それぞれ独立して0以上6以下の整数である。またZは、末端にアミノ基、カルボキシ基、アジド基、アルキン基又はアルキン基に変換可能な基を有するとともに、主鎖に炭素-炭素結合、炭素-酸素結合、炭素-窒素結合を有していてもよい炭化水素鎖又は炭化水素誘導鎖である。
【0069】
X2が分岐構造を有する場合、第2リンカー化合物を用いて合成された上記化合物におけるリンカーは、それぞれがCLRリガンド部分を有する分岐構造を有し、上記化合物は、1分子あたり複数のCLRリガンド部分を有する。なお、X2に含まれるアミノ基、カルボキシ基、アジド基又はアルキン基は、炭化水素のみで構成されていてもよいし、炭素以外の元素を含む複素環であってもよい。
【0070】
好ましくは、第2リンカー化合物は、X2の末端にアジド基を有し、Y2の末端にアミノ基を有する。当該アミノ基は、未修飾のアミノ基の他、例えばメチル基、ホルミル基などのアルキル基で修飾されたアミノ基であってもよいし、芳香環に結合したアミノ基であってもよい。Y2にアミノ基を有する場合、当該アミノ基を介して、例えばカルボキシ基を有するTLRリガンドを第2リンカー化合物に縮合剤等を用いて簡便に導入することができる。カルボキシ基を有するTLRリガンドは例えば1V209である。TLRリガンドと第2リンカー化合物との縮合反応(アミド化反応)に用いる縮合剤は、特に限定されず、例えば、HATU、COMU、PyBOP、EDC等が挙げられる。なお、“カルボキシ基を有するTLRリガンド”とは、第2リンカー化合物との結合後、TLRへの結合親和性を失わないものである。カルボキシ基を有するTLRリガンドは、分子末端にカルボキシ基を有するTLRリガンドであってもよいし、TLRへの結合親和性を失わない範囲で、分子末端にカルボキシ基を導入した化合物であってもよい。
【0071】
第2リンカー化合物は、Y2にカルボキシ基を有していてもよい。Y2にカルボキシ基を有する場合、当該カルボキシ基を介して、例えばアミノ基を有するTLRリガンドを第2リンカー化合物に簡便に導入することができる。TLRリガンドを導入後、当該カルボキシ基は、TLRリガンドと結合したカルボニル基となる。“アミノ基を有するTLRリガンド”とは、第2リンカー化合物との結合後、TLRへの結合親和性を失わないものである。アミノ基を有するTLRリガンドは、分子末端にアミノ基を有するTLRリガンドであってもよいし、TLRへの結合親和性を失わない範囲で、分子末端にアミノ基を導入した化合物であってもよい。
【0072】
好ましくは、X2は、末端にアルキン基を有する下記の式(18)で表される構造を有する。
【0073】
【0074】
式(18)において、p1~p3はそれぞれ独立して1以上6以下の整数である。
【0075】
より具体的には、X2にアルキン基を有する第2リンカー化合物として、下記の式(19)で表される構造を有する化合物が例示される。
【0076】
【0077】
式(19)において、m及びnは、それぞれ独立して0以上6以下の整数である。式(19)におけるY2は、上記式(15)おけるY2と同じである。
【0078】
第2リンカー化合物がX2の末端にアルキン基を有することで、当該アルキン基とCLRリガンドに結合した第1リンカー化合物が有するアジド基とを介して、上述のクリック反応によって、CLRリガンドとTLRリガンドとを複合体化することができる。なお、X2が末端にカルボキシ基を有する場合、当該カルボキシ基とCLRリガンドが有するアミノ基とを縮合反応によって結合してもよい。なお、X2が末端に、アルキン基に変換可能な基を有する場合、TLRリガンドと第2リンカー化合物とを結合した後で、アルキン基に変換可能な基をアルキン基に変換してもよい。
【0079】
本実施の形態に係る化合物の合成経路を以下に例示する。上記第1リンカー化合物及び第2リンカー化合物は、それぞれ“架橋基”として、CLRリガンド及びTLRリガンドに付加されたものとする。
【0080】
【0081】
スキーム1に示した合成経路では、末端にカルボキシ基を有する第2リンカー化合物が導入されたことによってカルボキシ基を有する架橋基が結合したTLRリガンド部分と、CLRリガンドとしての糖鎖(アミノ糖)のアミノ基とを脱水縮合させて、酸アミド結合(ペプチド結合)を介してTLRリガンド部分とCLRリガンド部分とが連結される。この場合、リンカーは酸アミド結合及び架橋基を含む部分である。
【0082】
スキーム2に示した合成経路では、まず、末端にアミノ基を有する第1リンカー化合物と、CLRリガンドとしての糖鎖(還元糖)のヒドロキシ基とを脱水縮合させて、糖鎖に架橋基を付加する。続いて、架橋基を介してTLRリガンドと糖鎖とを結合させることでTLRリガンド部分とCLRリガンド部分とが連結される。
【0083】
スキーム3に示した合成経路では、末端にアジド基を有する第1リンカー化合物が導入されたことによってアジド基を有する架橋基が結合したCLRリガンド部分と、末端にアルキン基を有する第2リンカー化合物が導入されたことによってアルキン基が結合したTLRリガンド部分とを、クリック反応に供する。これにより、TLRリガンド部分とCLRリガンド部分とが連結される。
【0084】
上記化合物は塩の態様で本実施の形態に係る免疫増強剤に含まれてもよい。化合物の塩は、免疫増強活性を示し、かつ薬理学的に許容される塩であれば特に限定されない。塩は特に限定されず、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、リン酸塩等の無機酸塩;並びに酢酸塩、プロピオン酸塩、ヘキサン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、グリコール酸塩、ピルビン酸塩、乳酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、リンゴ酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、o-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸塩、桂皮酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、1,2-エタンジスルホン酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-クロロベンゼンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩、4-メチルビシクロ[2.2.2]オクト-2-エン-1-カルボン酸塩、グルコヘプタン酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、トリメチル酢酸塩、第三級ブチル酢酸塩、ラウリル硫酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、ムコン酸塩等の有機酸塩である。
【0085】
本実施の形態に係る免疫増強剤は、既知の方法で製造され、有効成分として0.000001~99.9質量%、0.00001~99.8質量%、0.0001~99.7質量%、0.001~99.6質量%、0.01~99.5質量%、0.1~99質量%、0.5~60質量%、1~50質量%又は1~20質量%の上記化合物を含む。免疫増強剤は、固形製剤であっても、液状製剤であってもよい。
【0086】
免疫増強剤は上記化合物に加え、薬理学的に許容される任意の成分を含んでもよい。任意の成分は、例えば、担体、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤等である。また、必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤等の添加物が免疫増強剤に配合されてもよい。
【0087】
本実施の形態に係る免疫増強剤の投与量は、投与対象の性別、年齢、体重、症状、抗原等によって適宜決定される。当該免疫増強剤は、上記化合物が有効量となるように投与される。有効量とは、所望の結果を得るために必要な上記化合物の量であり、免疫増強活性をもたらすのに必要な量である。
【0088】
免疫増強剤の投与量は、例えば、0.01mg/kg~1000mg/kg、好ましくは0.1mg/kg~200mg/kg、より好ましくは0.2mg/kg~20mg/kgであり、1日に1回、又はそれ以上に分割して投与することができる。免疫増強剤を分割して投与する場合、免疫増強剤は、1日に1~4回投与される。また、免疫増強剤は、毎日、隔日、1週間に1回、隔週、1ヶ月に1回等の様々な投与頻度で投与してもよい。なお、必要に応じて、上記の範囲外の量を用いることもできる。
【0089】
免疫増強剤の投与経路は特に限定されない。免疫増強剤は、例えば非経口で投与されてもよいし、経口で投与されてもよい。非経口投与の場合、静脈注射、皮下注射、腹腔内注射、筋肉内注射、経皮投与、経粘膜投与、経肺投与、経腸投与等であってもよい。免疫増強剤は、点滴を介して投与されてもよい。
【0090】
免疫増強剤は、任意の形態の製剤とすることができる。経口投与の場合、免疫増強剤は、糖衣錠、バッカル錠、コーティング錠、チュアブル錠等の錠剤;トローチ剤、丸剤、散剤、ソフトカプセルを含むカプセル剤、顆粒剤、懸濁剤、乳剤、ドライシロップを含むシロップ剤、エリキシル剤等の液剤であってもよい。非経口投与の場合、免疫増強剤は、注射剤、吸入剤、経皮吸収テープ、エアゾール剤、坐剤等であってもよい。
【0091】
免疫増強剤は任意の対象に投与される。例えば、免疫増強剤の投与対象は、ヒト及びヒト以外の動物であって、好ましくは哺乳動物である。対象は、例えばヒト、チンパンジー等の霊長類、ラット、マウス、ウサギ等の実験動物、ブタ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ等の家畜動物、イヌ、ネコ等の愛玩動物である。
【0092】
本実施の形態に係る免疫増強剤は、免疫細胞への高い移行性を有し、より効果的に免疫細胞を活性化することができる。当該免疫増強剤はCLRリガンド部分とTLRリガンド部分とを有するため、下記実施例に示すように、自然免疫応答を増強する作用を有する。
【0093】
また、下記試験例3で示されたように、本実施の形態に係る免疫増強剤はウイルス感染防御効果を有する。このため、免疫増強剤は抗ウイルス薬としても使用できる。
【0094】
なお、生体内では、当該化合物が代謝されることがあるため、CLRリガンド部分とTLRリガンド部分とが解離して、それぞれCLR及びTLRに結合することで、免疫応答が誘導又は増強されてもよい。また、当該化合物が免疫細胞に輸送された後、CLRリガンド部分とTLRリガンド部分とが解離してもよい。
【0095】
また、下記試験例2~7で示されたように、本実施の形態に係る免疫増強剤は粘膜を介して投与される粘膜免疫増強剤としても有用である。粘膜免疫増強剤の投与部位は、粘膜であれば特に限定されない。好ましくは、粘膜免疫増強剤は、公知の方法で鼻の粘膜から投与される。粘膜免疫増強剤は、粘膜組織下に存在する免疫細胞に対して、抗原を効率良く輸送し、免疫細胞を活性化することができる。当該粘膜免疫増強剤は、CLRリガンド部分及びTLRリガンド部分を有する化合物を含むため、CLR及びTLRを介した自然免疫応答をより効果的に誘導可能である。
【0096】
本実施の形態に係る免疫増強剤は、ワクチン用アジュバントであってもよい。当該ワクチン用アジュバントは、上記化合物の他に、溶媒を含有してもよい。溶媒としては、例えば、水、生理食塩水、グリセロール等が挙げられる。溶媒は、上記化合物の溶解度、反応速度等を考慮して適宜選択できる。
【0097】
ワクチン用アジュバントにおける溶媒の含有量は、特に限定されないが、例えば、化合物1質量部に対して、溶媒が1~500質量部又は20~200質量部である。ワクチン用アジュバントは、上記化合物及び溶媒以外のその他の成分を、必要に応じて含んでもよい。その他の成分としては、ワクチン用アジュバントによる免疫応答の誘起を妨げない限り特に制限されないが、例えば、緩衝剤、界面活性剤、乾燥剤、防腐剤、粘膜付着剤等が挙げられる。
【0098】
本実施の形態に係るワクチン用アジュバントは、抗原と併用されて対象に投与される。抗原には、ワクチン用に精製された、又は市販の細菌由来抗原、ウイルス抗原、トキソイド等のタンパク質、糖タンパク質、アレルゲン、糖質、核酸等を使用することができる。抗原は、例えば、水痘ウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、ポリオウイルス、ロタウイルス、インフルエンザウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、コロナウイルス、ウエストナイルウイルス、ハンタウイルス、デングウイルス、日本脳炎ウイルス、黄熱ウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス、HIVウイルス、C型肝炎ウイルス、豚熱ウイルス、豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス、豚流行性下痢ウイルス、牛ウイルス性下痢ウイルス、牛伝染性リンパ腫ウイルス、百日咳菌、髄膜炎菌、インフルエンザb型菌、肺炎菌、コレラ菌、マラリア病原体等に対するワクチン用の抗原である。抗原として、好ましくは、インフルエンザウイルス等のスパイクタンパク質であるHA、肺炎球菌及びインフルエンザウイルスの莢膜多糖体等を用いることができる。抗原は、不活性化又は弱毒化した抗原であってもよい。抗原は、1種類であってもよい、複数種類であってもよい。
【0099】
本実施の形態に係るワクチン用アジュバントは、がん免疫療法用ワクチンとしても有用である。がん免疫療法用ワクチンにおけるワクチン用アジュバントとして使用する場合、抗原は、例えば、がん細胞に特異的に、又は正常細胞に比べて過剰に発現する遺伝子又はタンパク質(がん抗原)である。がん抗原としては、例えば、MAGEA1~4,NY-ESO-1、PRAME、SSX2、CT83、CD19、GP100、MART1、PSA、PSMA、チロシナーゼ、WT1、HER2、MUC1、CEA、サバイビン、サイクリンB1、EGFR、メソテリン、テロメラーゼ、MUC1T、LSP1、BCR-ABL1、HRAS、KRAS等が挙げられる。がん免疫療法用ワクチンは、ペプチドワクチンの他、遺伝子ワクチン及び樹状細胞(DC)ワクチンであってもよい。
【0100】
“併用”とは、ワクチン用アジュバントである免疫増強剤と抗原とを含むワクチン組成物を対象に投与することはもちろんのこと、当該免疫増強剤と抗原とを別々に同時に投与すること、及び別々に連続して投与することも包含する。抗原の投与経路は、当該免疫増強剤の投与経路と同じであってもよいし、別の投与経路であってもよい。
【0101】
ワクチン用アジュバントの投与部位は特に限定されない。好ましくは、ワクチン用アジュバントは、公知の方法で投与される。ワクチン用アジュバントの投与量は、投与対象の性別、年齢、体重、症状、抗原の種類等に応じて適宜決定される。ワクチン用アジュバントは、上記化合物が有効量となるように投与される。有効量とは、所望の結果を得るために必要な化合物の量であり、特には、免疫応答を誘起できる量である。
【0102】
なお、本実施の形態に係る粘膜免疫増強剤である免疫増強剤は、粘膜ワクチン用アジュバントとしても有用である。
【0103】
別の実施の形態では、ワクチン組成物が提供される。ワクチン組成物は、上記実施の形態に係るワクチン用アジュバントである免疫増強剤と、抗原と、を含む。別の実施の形態では、粘膜ワクチン組成物が提供される。粘膜ワクチン組成物は、上述の粘膜ワクチン用アジュバントである免疫増強剤と、抗原と、を含む。好ましくは、当該粘膜ワクチン組成物は鼻粘膜投与用である。
【0104】
以下の実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【実施例0105】
[製造例1:1V209を有する一本鎖リンカー成分の合成]
下記に示すように1V209とプロパルギルアミン(第2リンカー化合物)との縮合反応により、1V209一本鎖誘導体(4-((6-amino-8-hydroxy-2-(2-methoxyethoxy)-9H-purin-9-yl)methyl)-N-(prop-2-yn-1-yl)benzamide、式(20))を62%の収率で合成した。
【0106】
【0107】
詳細には、アルゴン雰囲気下で1V209(104mg,288μmol)とHATU(190mg,500μmol)をDMF(5mL)に溶解させ、プロパルギルアミン(47.6mg,864μmol)を加え0℃で24時間撹拌した。反応溶液にクロロホルムと蒸溜水を加えてクロロホルムに抽出した。有機層を蒸溜水で1回、飽和食塩水で1回洗浄し無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾去してエバポレーターで減圧濃縮し、残渣を中圧シリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=20:1)で精製して1V209一本鎖誘導体(式(20))を白色固体(71.0mg,62%)として得た。なお、1V209は文献(Michael Chan, et al., Synthesis and Characterization of PEGylated Toll Like Receptor 7 Ligands, Bioconjugate Chem., 22 (2011) 445-454)に記載の合成経路で合成した。
【0108】
1H-NMR(400MHz,DMSO(d6))δ10.03(1H,s),8.90(1H,dd,J=5.5,5.5Hz),7.81(2H,d,J=8.2Hz),7.37(2H,d,J=8.2Hz),6.51(2H,s),4.92(2H,s),4.26(2H,dd,J=5.5,4.1Hz),4.05(2H,dd,J=5.5,2.7Hz),3.58(2H,t,J=4.6Hz),3.12(1H,dd,J=2.5Hz),2.52-2.50(1H,m).
13C-NMR(100MHz,DMSO(d6))δ165.6,159.8,152.2,149.1,147.7,140.4,132.9,128.6,127.5,127.3,120.4,98.3,81.3,72.8,70.2,65.3,58.1,42.1,28.4.
ESI-TOF/MS(positive mode);Found:m/z 397.1624[(M+H)+],Calcd.For C19H20N6O4:397.1619.
【0109】
[製造例2:1V209を有する三分岐鎖リンカー成分の合成]
下記に示すように1V209三分岐誘導体(4-(2-(4-((6-amino-8-hydroxy-2-(2-methoxyethoxy)-9H-purin-9-yl)methyl)benzamido)acetamido)-4-(3-oxo-3-(prop-2-yn-1-ylamino)propyl)-N1,N7-di(prop-2-yn-1-yl)heptanediamide、式(21))を58%の収率で合成した。1V209三分岐誘導体では、文献(Yasuo Suda, et al., Immobilization and Clustering of Structurally Defined Oligosaccharides for Sugar Chips: An Improved Method for Surface Plasmon Resonance Analysis of Protein-Carbohydrate Interactions, Bioconjugate Chem., 17 (2006) 1125-1135)の合成経路で合成したベンジルオキシカルボニル体(Z体、a)を接触還元により、第2リンカー化合物としてのアミン体(b)へと誘導し、その後、HATUを用いて1V209と縮合した(c)。続いて、tert-ブチル基をTFAで処理して除去し、HATU及びプロパルギルアミンを用いて縮合反応を行った。
【0110】
【0111】
詳細には、アルゴン雰囲気下で1V209(71.8mg,200μmol)及びHATU(116mg,300μmol)をDMF(5mL)に溶解し、アミン体を加え氷冷下で12時間撹拌した。反応溶液にクロロホルムと蒸溜水を加えてクロロホルム層に抽出した。有機層を蒸溜水で1回、飽和食塩水で1回洗浄し無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾去してエバポレーターで減圧濃縮し、残渣を中圧シリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=20:1)で精製し黄色固体(119mg,75%)を得た。
【0112】
1H-NMR(600MHz,CDCI3)δ7.83(2H,d),7.50(2H,d),5.04(2H,s),4.42(2H,t),3.72(2H,t),3.40(3H,s),2.22(6H,t),1.96(6H,t),1.41(27H,s).
13C-NMR(100MHz,CDCI3)δ172.7,172.6,170.1,167.9,160.5,153.9,149.4,147.9,140.4,132.6,128.6,127.9,99.4,80.8,80.6,70.7,66.2,59.0,58.2,39.8,30.0,29.8,29.6,28.1,28.0.
ESI-TOF/MS(positive mode);Found:m/z 814.4345[(M+H)+],Calcd.for C40H60N7O11:814.4345.
【0113】
上記黄色固体(115mg,141μmol)をTFA:CH2CI2:H2O=1:1:0.1の溶液に溶解させ、24時間撹拌した。その後、減圧濃縮を行って白色固体(115mg)定量的に得た。得られた白色固体(47.1mg,73.0μmol)とHATU(90.1mg,237μmol)をDMF(3ml)に溶解させ、プロパルギルアミン(27.0mg,490μmol)を加え氷冷下で24時間撹拌した。反応溶液にクロロホルムと蒸溜水を加えてクロロホルム層に抽出した。有機層を蒸溜水で1回、飽和炭酸水素ナトリウム溶液で1回、飽和食塩水で1回洗浄し無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾去してエバポレーターで減圧濃縮し、残渣を中圧シリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=20:1)で精製して1V209三分岐誘導体(式(21))を黄色固体(21.4mg,58%)として得た。
【0114】
1H-NMR(400MHz,DMSO(d6))δ8.31(3H,dd,J=5.5,2.7Hz),7.85(2H,d,J=8.2Hz),7.36(3H,d,J=8.2Hz),6.80(2H,s),4.91(2H,s),4.25(2H,t,J=5.0Hz),3.82(6H,dd,J=5.5,2.3Hz),3.58(2H,dd,J=6.0,3.0Hz),3.08(3H,t,J=2.5Hz),2.06-2.03(5H,m),1.82-1.79(6H,m).
13C-NMR(100MHz,DMSO(d6))δ171.9,168.1,166.3,159.9,152.1,149.0,147.9,140.4,133.1,127.6,127.2,98.5,81.3,79.4,79.6,77.6,72.9,70.2,65.3,58.1,56.9,30.0,29.3,28.3,27.9.
ESI-TOF/MS(positive mode);Found:m/z 779.3236[(M+Na)+],Calcd.for C37H44N10O8Na:779.3236.
【0115】
[製造例3:アジドアミンの合成]
下記に示すように、m-フェニレンジアミンとモノクロロ酢酸との縮合反応及びクロロ基とアジ化物イオンとの置換反応により、第1リンカー化合物としてのアジドアミン(N-(3-アミノフェニル)-2-アジドアセトアミド、式(22))を60%の収率で合成した。
【0116】
【0117】
詳細には、m-フェニレンジアミン(211mg,2.24mmol)とモノクロロ酢酸(240mg,2.22mmol)とを、縮合剤に1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl)(427mg,2.42mmol)を用いて、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF,10mL)中氷冷下で作用させて4時間反応させた。その後、アジ化ナトリウム(281mg,4.31mmol)を加えて、60℃で24時間撹拌した。蒸溜水を加えて反応を停止させ、蒸溜水で1回、飽和食塩水で1回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥剤を濾去後、エバポレーターで濃縮した。残渣をクロロホルムメタノール溶液に溶解させ、少量のシリカゲルに吸着させた。中圧シリカゲルクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=3:2)で精製し、アジドアミン(式(22))を黄色固体(260mg,60%)として得た。
【0118】
1H-NMR(400MHz,CD3OD)δ6.92(2H,dd,J=10.7,4.9Hz),6.70(1H,d,J=7.3Hz),6.38(1H,d,J=7.3Hz),3.84(2H,s).
13C-NMR(400MHz,CD3OD)δ168.2,149.4,139.8,130.4,112.9,111.1,108.4,53.2.
ESI-TOF/MS(positive mode);Found:m/z 214.0643[(M+Na)+],Calcd.for C8H9N5ONa:214.0699.
【0119】
[製造例4:アジド基を有する糖鎖の合成]
下記に示すように、アジドアミン(式(22))と糖鎖成分との還元アミノ化反応によりαGlc4-N3(2-azido-N-({[(α-D-glucopyranosyl)-(1→4)-(1-deoxy-D-glucitol-1-yl)]amino}phenyl)acetamide、式(23))を83%の収率で調製した。αGlc4-N3の合成では、マルトースとアジドアミンとを混合した後、シアノホウ素化水素ナトリウムを用いて還元アミノ化反応を行った。
【0120】
【0121】
詳細には、マルトース(103mg,284μmol)を蒸溜水(4mL)に溶解させ、酢酸(0.8mL)を加えpH4~5に調整し、アジドアミン(16)(55.6mg,290μmol)を溶解させたメタノール(4mL)を加え50℃で6時間撹拌した。その後、シアノホウ素化水素ナトリウム(18.2mg,2.90mmol)を加え24時間撹拌した。溶液を減圧濃縮させることで残渣を回収し、中圧ODSカラムクロマトグラフィー(蒸溜水:メタノール=5:5)で精製し、αGlc4-N3を白色固体(118mg,83%)として得た。
【0122】
1H-NMR(600MHz,D2O)δ7.18(1H,dd,J=8.4,8.4Hz),6.86(1H,s),6.74(1H,d,J=8.4Hz),6.61(1H,d,J=8.4Hz),5.03(1H,d,J=4.8Hz),4.06(2H,s),3.93-3.91(1H,m),3.88(1H,dt,J=7.5,4.0Hz),3.84-3.80(3H,m),3.77(1H,dd,J=12.2,2.0Hz),3.71(1H,dd,J=12.2,4.0Hz),3.67-3.66(2H,m),3.56(1H,dd,J=12.2,7.5Hz),3.49(1H,dd,J=9.9,4.0Hz),3.37(1H,dd,J=4.0,9.5Hz),3.27(1H,dd,J=13.6,4.8Hz),3.17(1H,dd,J=13.6,8.2Hz).
13C-NMR(150MHz,D2O)δ169.6,149.2,137.9,130.7,112.6,112.4,108.0,101.1,82.6,73.5,73.1,73.0,72.2,71.9,69.9,69.5,62.7,60.9,52.8,47.1.ESI-TOF/MS(positive mode);Found:m/z 540.1907[(M+Na)+],Calcd.for C20H31N5O11Na:540.1912.
【0123】
αGlc4-N3と糖鎖成分が異なる、下記に示すアジド基を有する糖鎖を、糖鎖成分を代えてαGlc4-N3と同様の操作で合成した。
βGlc6-N3(2-azido-N-({[(β-D-glucopyranosyl)-(1→6)-(1-deoxy-D-glucitol-1-yl)]amino}phenyl)acetamide、収率84%)
1H-NMR(400MHz,D2O-DMSO(d6))δ7.07(1H,t,J=7.8Hz),6.78(1H,dd,J=1.8,2.3Hz),6.67(1H,dd,J=2.3,8.4Hz),6.48(1H,dd,J=1.8,8.2Hz),4.23(1H,d,J=7.8Hz),3.95(2H,s),3.92(1H,dd,J=2.7,11.4Hz),3.83-3.56(6H,m),3.51(1H,dd,J=4.6,11.9Hz),3.29(1H,dd,J=8.7,9.1Hz),3.24-3.14(3H,m),3.12(1H,dd,J=8.7,9.1Hz),2.97(1H,dd,J=8.2,13.7Hz).
13C-NMR(100MHz,D2O)δ170.0,150.3,139.1,131.6,112.8,112.6,109.0,104.4,77.3,77.1,74.7,72.9,72.6,72.0,71.3,71.0,62.1,53.6,47.5
ESI-TOF/MS(positive mode);Found:m/z 540.1907[(M+Na)+],Calcd.for C20H31N5O11Na:540.1912.
【0124】
βGlc4-N3(2-azido-N-({[(β-D-glucopyranosyl)-(1→4)-(1-deoxy-D-glucitol-1-yl)]amino}phenyl)acetamide、収率:88%)
1H-NMR(600MHz,D2O-DMSO(d6))δ7.06(1H,ddd,J=2.0,7.5,8.2Hz),6.78(1H,d,J=2.0Hz),6.65(1H,dd,J=2.0.7.5Hz),6.50(1H,dd,J=2.0,8.2Hz),4.35(1H,d,J=8.2Hz),3.95(2H,s),3.92-3.87(1H,m),3.76-3.70(2H,m),3.68-3.63(2H,m),3.57-3.51(2H,m),3.47(1H,dd,J=4.1,12.2Hz),3.27(1H,ddd,J=1.4,9.5,10.2Hz),3.24-3.18(2H,m),3.17-3.08(2H,m),2.95(1H,dd,J=8.2,12.2Hz).
13C-NMR(150MHz,D2O-DMSO(d6))δ169.3,150.0,138.1,131.0,112.3,107.7,109.0,103.2,80.0,76.3,76.1,74.90,71.5,71.2,71.0,70.1,62.6,60.9,52.8,46.9.
ESI-TOF/MS(positive mode);Found:m/z 540.1902[(M+Na)+],Calcd.for C20H31N5O11Na:540.1912
【0125】
βGal4-N3(2-azido-N-({[(β-D-galactopyranosyl)-(1→4)-(1-deoxy-D-glucitol-1-yl)]amino}phenyl)acetamide、収率:91%)
1H-NMR(600MHz,D2O-DMSO(d6))δ7.28(1H,t,J=8.4Hz),6.96(1H,s),6.86(1H,d,J=8.4Hz),6.72(1H,d,J=8.4Hz),4.51(1H,d,J=7.5Hz),4.14(2H,s),4.12(1H,t,J=3.9Hz),3.97-3.95(1H,m),3.93(1H,dd,J=10.2,3.4Hz),3.90-3.87(2H,m),3.76(1H,dd,J=11.9,6.4Hz),3.67(1H,dd,J=6.5,6.1Hz),3.64(1H,dd,J=3.4,3.2Hz),3.62(1H,d,J=6.1Hz),3.58(1H,dd,J=9.5,7.0Hz),3.40(1H,dd,J=12.9,4.7Hz),3.16(1H,dd,J=12.9,8.2Hz).
13C-NMR(150MHz,D2O-DMSO(d6))δ169.5,149.5,137.9,130.6,112.6,112.5,108.1,103.7,80.2,75.6,73.1,71.7,71.6,71.1,70.6,69.1,62.6,61.3,52.8,47.0.
ESI-TOF/MS;Found:m/z 540.1912[(M+Na)+],Calcd.For C20H31N5O11Na:540.1912.
【0126】
αGal6-N3(2-azido-N-({[(α-D-galactopyranosyl)-(1→6)-(1-deoxy-D-glucitol-1-yl)]amino}phenyl)acetamide、収率:54%)
ESI-TOF/MS;Found:m/z 540.1902[(M+Na)+],Calcd.For C20H31N5O11:540.1912.
【0127】
αFuc2-βGal4-N3(2-azido-N-({[(α-D-fucosyl)-(1→2)-(β-D-galactopyranosyl)-(1→4)-(1-deoxy-D-glucitol-1-yl)]amino}phenyl)acetamide、収率:85%)
1H-NMR(400MHz,D2O-DMSO(d6))δ7.11(1H,dd,J=7.9,8.2Hz),6.79(1H,dd,J=1.8,2.3Hz),6.70(1H,dd,J=1.8,7.9Hz),6.56(1H,dd,J=2.3,8.2Hz),5.16(1H,d,J=3.2Hz),4.42(1H,d,J=8.2Hz),4.09(1H,dd,J=5.9,12.8Hz),4.00(2H,s),3.84(1H,ddd,J=4.9,4.8,8.8Hz),3.99-3.93(1H,m),3.79-3.60(10H,m),3.57-3.46(5H,m),3.25(1H,dd,J=3.7,12.8Hz),2.98(1H,dd,J=8.2,13.6Hz),1.04(3H,d,J=6.4Hz).
ESI-TOF/MS(positive mode);Found:m/z 664.2672[(M+Na)+],Calcd.for C20H31N5O11Na:664.2678.
【0128】
αXyl6-N3(2-azido-N-({[(α-D-xylopyranosyl)-(1→6)-(1-deoxy-D-glucitol-1-yl)]amino}phenyl)acetamide、収率:74%)
1H-NMR(400MHz,D2O-DMSO(d6))δ7.11(1H,dd,J=8.2,8.2Hz),6.79(1H,dd,J=1.4,2.0Hz),6.69(1H,dd,J=1.4,8.2Hz),6.54(1H,dd,J=2.0,8.2Hz),4.71(1H,d,J=3.4Hz),4.00(2H,s),3.84(1H,ddd,J=4.9,4.8,8.8Hz),3.77(1H,ddd,J=2.7,4.8,7.5Hz),3.74-3.69(2H,m),3.63(1H,dd,J=2.7,8.2Hz),3.55-3.48(2H,m),3.48-3.39(3H,m),3.38(1H,dd,J=4.1,9.5Hz),3.24(1H,dd,J=4.8,13.6Hz),3.02(1H,dd,J=7.5,13.6Hz).
13C-NMR(100MHz,D2O-DMSO(d6))δ170.0,150.3,139.1,131.6,112.8,112.6,109.0,104.4,77.3,77.1,74.7,72.9,72.6,72.0,71.3,71.0,62.1,53.6,47.5
ESI-TOF/MS(positive mode);Found:m/z 510.1807[(M+Na)+],Calcd.for C19H29N5O10Na:510.1807
【0129】
αAra5-N3(2-azido-N-({[(α-D-arabinopyranosyl)-(1→5)-(1-deoxy-D-arabinitol-1-yl)]amino}phenyl)acetamide、収率:65%)
1H-NMR(600MHz,D2O-DMSO(d6))δ7.10(1H,dd,J=8.2Hz),6.80(1H,dd,J=1.3,2.0Hz),6.69(1H,dd,J=1.3,8.2Hz),6.51(1H,dd,J=2.0,8.2Hz),4.88(1H,brs),4.00(2H,s),3.96-3.87(3H,m),3.78(1H,dd,J=2.7,6.1Hz),3.74-3.70(2H,m),3.65(1H,dd,J=3.4,12.9Hz),3.60(1H,dd,J=4.8,13.6Hz),3.54(1H,dd,J=4.8,12.9Hz),3.47(1H,dd,J=1.3,7.5Hz),3.18(1H,dd,J=4.8,13.6Hz),3.10(1H,dd,J=8.2,13.6Hz).
13C-NMR(150MHz,D2O-DMSO(d6))δ169.7,150.4,138.8,131.6,113.8,112.8,108.9,102.1,85.3,82.4,78.0,72.4,70.8,70.4,69.1,62.7,56.5,53.6.
ESI-TOF/MS(positive mode);Found:m/z 480.1701[(M+Na)+],Calcd.for C18H27N5O9Na:480.1701
【0130】
αMan6-N3(2-azido-N-(α-D-mannopyranosyl)-(1→6)-(1-deoxy-D-glucitol-1-yl)amino(phenyl)acetamide、収率:84%)
1H-NMR(600MHz,D2O)δ7.09(1H,t,J=8.4Hz),6.77(1H,s),6.67(1H,d,J=7.5Hz),6.53(1H,d,J=8.2Hz),3.97(2H,s),3.83(1H,ddd,J=7.8,7.8,4.0Hz),3.80(1H,dd,J=4.0,1.4Hz),3.75(2H,tt,J=8.2,2.6Hz),3.71(1H,s),3.71-3.67(3H,m),3.66(1H,d,J=2.6Hz),3.61-3.58(2H,m),3.54-3.52(1H,m),3.50-3.47(2H,m),3.20(1H,dd,J=13.6,4.1Hz),3.00(1H,dd,J=13.6,7.8Hz).
13C-NMR(150MHz,D2O)δ169.6,149.2,137.9,130.7,112.6,112.4,108.0,101.1,82.6,73.4,73.0,73.0,72.2,71.9,69.9,69.5,62.7,60.9,52.8,47.1.
ESI-TOF/MS(positive mode);Found:m/z 540.1907[(M+Na)+],Calcd. for C20H31N5O11Na:540.1912.
【0131】
(βGlcNAc4)4-N3(2-azido-N-[(2-acetamido-1-deoxy-β-D-glucopyranosyl)-(1→4)-(2-acetamido-1-deoxy-β-D-glucopyranosyl)-(1→4)-(2-acetoamido-1-deoxy-β-D-glucopyranosyl)-(1→4)-(2-acetamido-1-deoxy-β-D-glucopyranosyl)-(1→4)-(2-acetamido-1,2-deoxy-D-glucitol-1-yl)amino(phenyl)]acetamide、収率:58%)
1H-NMR(600MHz,CD3OD)δ7.19(1H,dd,J=8.4,8.4Hz),6.93(1H,s),6.80(1H,d,J=8.4Hz),6.61(1H,d,J=8.4Hz),4.57-4.51(4H,m),4.31(1H,dd,J=12.2,6.7Hz),4.11(3H,d,J=7.8Hz),3.90(2H,d,J=12.2Hz),3.83(2H,d,J=10.1Hz),3.76-3.74(4H,m),3.70-3.55(13H,m),3.53-3.51(6H,m),3.41(1H,t,J=9.2Hz),3.36-3.33(1H,m),3.22(1H,dd,J=14.3,7.5Hz),2.04(3H,s),2.04(3H,s),2.04(3H,s),2.01(3H,s),1.97(3H,s).
13C-NMR(150MHz,CD3OD)δ174.6,169.0,130.8,115.2,111.9,111.5,107.0,104.3,104.0,86.2,86.2,80.9,77.5,77.1,77.0,75.8,74.9,74.6,74.5,74.5,72.0,71.9,71.8,71.0,69.9,64.1,62.1,62.0,53.2,49.6,49.4,49.3,49.0,49.0,48.9,48.7,48.6,46.8.
ESI-TOF/MS(positive mode);Found: m/z 1231.4810[(M+Na)+],Calcd.for C48H76N10O26Na:1231.4824.
【0132】
(βGlc3)4-N3(2-azido-N-[(β-D-glucopyranosyl)-(1→3)-(β-D-glucopyranosyl)-(1→3)-(β-D-glucopyranosyl)-(1→3)-(β-D-glucopyranosyl)-(1→3)-(1-deoxy-D-glucitol-1-yl)amino(phenyl)]acetamide、収率:52%)
1H-NMR(600MHz,CD3OD)δ7.16(1H,dd,J=8.4,8.4Hz),6.94(1H,s),6.84(1H,d,J=8.4Hz),6.59(1H,d,J=8.4Hz),4.81-4.78(5H,m),4.74-4.69(3H,m),4.25-4.21(1H,m),4.07(2H,s),4.04(1H,d,J=6.6Hz),4.00-3.94(5H,m),3.83(1H,dd,J=11.6,2.7Hz),3.71-3.61(10H,m),3.56(1H,t,J=8.5Hz),3.51(2H,m),3.47-3.39(10H,m),3.43-3.38(2H,m),3.16(1H,dd,J=13.6,8.2Hz).
13C-NMR(600 MHz, CD3OD)δ174.6,169.0,130.8,115.2,111.9,111.5,107.0,104.3,104.0,86.2,86.2,80.9,77.5,77.1,77.0,75.8,74.9,74.6,74.5,74.4,72.0,71.9,71.8,71.0,69.9,64.1,62.1,62.0,53.2,49.6,49.4,49.3,49.1,49.0,48.9,48.7,48.6,46.8.
ESI-TOF/MS(positive mode);Found:m/z 1026.3483[(M+Na)+],Calcd.for C38H61N5O26Na:1026.3497.
【0133】
(αGlc6)n-N3(2-azido-N-(dextran)amino(phenyl)]acetamide、MW17,000)
1H-NMR(400MHz,D2O)δ7.24(1H,dd,J=7.8,8.2Hz),6.89(1H,brs),6.85(1H,d,J=8.2Hz),6.69(1H,d,J=7.8Hz),5.04-4.90(~75H,m),4.10-3.36(~450H,m).
【0134】
(αGlc6)n-N3(2-azido-N-(dextran)amino(phenyl)]acetamide、MW40,000)
1H-NMR(400MHz,D2O)δ7.15-7.05(1H,br),6.82-6.67(2H,m),6.59-6.52(1H,m),4.92-4.74(~150H,m),3.97-3.22(~900H,m).
【0135】
[製造例5:クリック反応による糖鎖TLRリガンド複合体の合成]
下記に示すように糖鎖TLRリガンド複合体であるαGlc4-1V209(4-((6-amino-8-hydroxy-2-(2-methoxyethoxy)-9H-purin-9-yl)methyl)-N-(α-D-glucopyranosyl)-(1→4)-(1-deoxy-D-glucitol-1-yl)amino(phenyl)-1H-1,2,3-triazol-4-yl)methyl)benzamide、式(10))を合成した。αGlc4-1V209の合成では、αGlc4-N3(式(23))と1V209一本鎖誘導体(式(20))とを混合した後、硫酸銅とアスコルビン酸ナトリウム存在下、クリック反応を行って、αGlc4-1V209(式(10))を49%の収率で調製した。
【0136】
【0137】
詳細には、αGlc4-N3(15.2mg,38.3μmol)をDMF(1mL)に溶解させ、硫酸銅五水和物(4.78mg,19.2μmol)とアスコルビン酸ナトリウムを加え、その後、蒸溜水(1mL)に溶かしておいた1V209一本鎖誘導体(αGlc4-1V209,14.2mg,27.4μmol)を加え50℃で24時間撹拌した。エバポレーターで濃縮し残渣を回収、中圧ODSカラムクロマトグラフィー(蒸溜水:メタノール=5:5)で精製し、αGlc4-1V209を白色固体(12.2mg,49%)として得た。
【0138】
1H-NMR(600MHz,D2O-DMSO(d6))δ7.97(1H,s),7.83(2H,d,J=8.2Hz),7.37(2H,d,J=8.2Hz),7.00(1H,dd,J=8.2Hz),6.86(1H,s),6.74(1H,d,J=8.2Hz),6.35(1H,d,J=8.2Hz),5.24(2H,s),4.93(2H,s),4.85(1H,d,J=4.1Hz),4.53(2H,s),4.25(2H,dd,J=6.1,4.7Hz),3.73(3H,dd,J=12.2,6.5Hz),3.62(3H,d,J=9.5Hz),3.57(2H,t,J=4.4Hz),3.51(1H,dd,J=12.2,3.4Hz),3.47(1H,dd,J=11.9,5.8Hz),3.41(2H,dt,J=11.9,9.5Hz),3.28(1H,dd,J=9.5,4.1Hz),3.25(3H,s),3.13-3.11(2H,m),3.01(1H,dd,J=12.6,6.5Hz),1.97(2H,s).
13C-NMR(150MHz,D2O-DMSO(d6))δ170.5,166.4,164.1,160.2,152.6,149.7,149.4,148.0,145.2,140.7,139.2,133.5,132.0,129.6,127.9,127.6,124.9,108.5,107.2,103.1,101.4,101.3,98.4,84.4,73.5,73.4,72.3,72.2,71.6,70.5,70.0,68.9,65.7,62.5,60.8,58.4,52.4,46.6,42.4.
ESI-TOF/MS(positive mode);Found:m/z 936.3436[(M+Na)+],Calcd.for C39H51N11O15Na:936.3458.
【0139】
αGlc4-1V209と糖鎖成分が異なる、下記に示す糖鎖TLRリガンド複合体を、糖鎖を代えてαGlc4-1V209と同様の操作で合成した。
【0140】
βGal4-1V209(4-((6-amino-8-hydroxy-2-(2-methoxyethoxy)-9H-purin-9-yl)methyl)-N-(β-D-galactopyranosyl)-(1→4)-(1-deoxy-D-glucitol-1-yl)amino(phenyl)-1H-1,2,3-triazol-4-yl)methyl)benzamide、収率:87%)
1H-NMR(600MHz,D2O(1滴)-DMSO(d6)(1:40))δ7.93(1H,s),7.79(2H,d,J=8.4Hz),7.33(2H,d,J=8.4Hz),6.96(1H,dd,J=8.4Hz),6.81(1H,s),6.72(1H,d,J=8.2Hz),6.33(1H,d,J=8.2Hz),5.21(2H,s),4.89(2H,s),4.49(2H,s),4.26(1H,d,J=7.5Hz),4.22(2H,t,J=4.4Hz),3.79-3.76(1H,m),3.68-3.64(3H,m),3.56-3.52(4H,m),3.50-3.48(2H,m),3.43(1H,dd,J=10.5,6.5Hz),3.37(1H,dd,J=6.1Hz),3.32(1H,dd,J=8.5Hz),3.29(1H,dd,J=10.5,3.1Hz),3.22(3H,s),3.12(1H,dd,J=12.5,5.8Hz),2.93(1H,dd,J=12.9,6.5Hz),2.49(2H,t,J=1.7Hz).
13C-NMR(150MHz,D2O-DMSO(d6)(1:40))δ166.4,164.1,160.2,152.7,149.8,149.4,148.0,145.2,140.7,139.2,133.4,129.5,127.8,127.6.124.9.108.7,107.3,104.5,104.5,103.2,99.8,98.6,82.8,75.6,73.3,71.5,71.3,70.8,70.5,69.3,68.2,65.7,62.2,60.4,58.4,52.5,52.4,46.4,42.4.
ESI-TOF/MS(positive mode);Found:m/z 936.3410[(M+Na)+],Calcd.for C39H51N11O15Na:936.3458.
【0141】
tri-βGal4-1V209(4-[2-(4-{[6-amino-8-hydroxy-2-(2-methoxyethoxy)-9H-purin-9-yl]methyl}benzamido)acetamido]-N1,N7-bis[(1-{2-[(3-{(β-D-galacopyranosyl)-(1→4)-(1-deoxy-D-glucitol-1-yl)amino}phenyl)amino]-2-oxoethyl}-1H-1,2,3-triazol-4-yl)methyl]-4-[3-({[1-(2-{(3-[(β-D-galacopyranosyl)-(1→4)-(1-deoxy-D-glucitol-1-yl)amino]phenyl)amino}-2-oxoethyl)-1H-1,2,3-triazol-4-yl]methyl}amino)-3-oxopropyl]heptanediamide、収率:50%)
13C-NMR(100MHz,D2O-DMSO(d6))δ.
1H-NMR(600MHz,D2O-DMSO(d6)(1:1))δ7.76(3H,s),7.58(2H,d,J=8.4Hz),7.23(2H,d,J=8.4Hz),6.95(3H,dd,J=8.4Hz),6.73(3H,s),6.65(3H,d,J=8.4Hz),6.36(3H,d,J=8.4Hz),5.12(6H,s),4.81(2H,s),4.27(4H,d,J=7.5Hz),4.20(9H,d,J=17.7Hz),3.81(4H,s),3.73(2H,s),3.68(9H,s),3.63(9H,dd,J=18.4,2.7Hz),3.58(4H,d,J=10.2Hz),3.51(7H,dd,J=10.8,4.1Hz),3.46(8H,d,J=6.1Hz),3.38(5H,dd,J=4.7Hz),3.36(3H,d,J=2.7Hz),3.32(4H,dd,J=8.5Hz),3.12(2H,s),2.91(3H,dd,J=10.2,6.8Hz).
13C-NMR(150MHz,D2O-DMSO(d6))δ174.3,164.3,153.0,148.9,144.3,137.8,129.6,127.5,127.3,127.3,124.7,108.9,108.8,104.2104.2,102.8,79.6,74.7,72.2,70.8,70.6,70.1,69.9,68.0,65.5,61.5,60.2,57.8,52.0,45.7,33.9,29.3.
ESI-TOF/MS(positive mode); Found: m/z 1176.9612[(M+2Na)2+],Calcd.for C97H137N25O41Na2:2353.9188.
【0142】
βGlc6-1V209(4-((6-amino-8-hydroxy-2-(2-methoxyethoxy)-9H-purin-9-yl)methyl)-N-(β-D-glucopyranosyl)-(1→6)-(1-deoxy-D-glucitol-1-yl)amino(phenyl)-1H-1,2,3-triazol-4-yl)methyl)benzamide、収率:47%)
1H-NMR(400MHz,D2O(1滴)-DMSO(d6)(1:40))δ7.92(1H,s),7.76(2H,d,J=8.2Hz),7.33(2H,d,J=8.2Hz),7.00(1H,dd,J=7.8,8.2Hz),6.83(1H,brs),6.68(1H,d,J=7.8Hz),6.34(1H,d,J=8.2Hz),5.19(2H,s),4.90(2H,s),4.50(2H,s),4.26-4.19(2H,m),4.15(1H,d,J=8.2Hz),3.75-3.69(1H,m),3.69-3.60(2H,m),3.57-3.50(2H,m),3.48-3.38(2H,m),3.24-2.96(7H,m),2.94-2.86(2H,m).
13C-NMR(100MHz, D2O(1滴)-DMSO(d6)(1:40))δ171.8,167.3,164.6,160.7,153.3,150.0,149.8,145.6,141.2,139.4,133.7,130.1,128.3,128.2,128.1,125.5,109.4,108.2,104.8,104.0,98.9,77.1,76.6,74.1,72.5,72.4,71.6,70.8,70.5,70.5,70.2,66.2,61.5,58.8,52.9,46.4,42.9,35.4.
ESI-TOF/MS (positive mode);Found:m/z936.3457[(M+Na)+],Calcd.for C39H51N11O15Na:936.3458.
【0143】
βGlc4-1V209(4-((6-amino-8-hydroxy-2-(2-methoxyethoxy)-9H-purin-9-yl)methyl)-N-(β-D-glucopyranosyl)-(1→4)-(1-deoxy-D-glucitol-1-yl)amino(phenyl)-1H-1,2,3-triazol-4-yl)methyl)benzamide、収率:45%)
1H-NMR(400MHz,D2O(1滴)-DMSO(d6)(1:40))δ7.97(1H,s),7.82(2H,d,J=8.2Hz),7.39(2H,d,J=8.2Hz),7.04(1H,dd,J=7.8,8.2Hz),6.90(1H,brs),6.74(1H,d,J=7.8Hz),6.41(1H,d,J=8.2Hz),5.25(2H,s),4.96(2H,s),4.56(2H,s),4.38(1H,d,J=6.9Hz),4.32-4.24(2H,m),3.89-3.81(1H,m),3.81-3.64(4H,m),3.64-3.52(4H,m),3.47(1H,dd,J=5.5,11.0Hz),3.26(3H,s),3.25-2.96(7H,m).
ESI-TOF/MS(positive mode);Found:m/z 936.3457[(M+Na)+],Calcd.for C39H51N11O15Na:936.3458.
【0144】
αGal6-1V209(4-((6-amino-8-hydroxy-2-(2-methoxyethoxy)-9H-purin-9-yl)methyl)-N-(α-D-galactopyranosyl)-(1→6)-(1-deoxy-D-glucitol-1-yl)amino(phenyl)-1H-1,2,3-triazol-4-yl)methyl)benzamide、収率:36%)
1H-NMR(400MHz,D2O(1滴)-DMSO(d6)(1:40))δ7.97(1H,s),7.82(2H,d,J=7.8Hz),7.39(2H,d,J=7.8Hz),7.05(1H,dd,J=7.3,8.2Hz),6.88(1H,brs),6.73(1H,d,J=8.2Hz),6.39(1H,d,J=7.3Hz),5.24(2H,s),4.96(2H,s),4.71(1H,d,J=2.3Hz),4.55(2H,s),4.31-4.24(2H,m),3.82-3.66(6H,m),3.65-3.43(8H,m),3.26(3H,s),3.21(1H,dd,J=6.0,12.8Hz),2.97(1H,dd,J=6.9,12.8Hz).
13C-NMR(100MHz, D2O(1滴)-DMSO(d6)(1:40))δ167.3.,164.6,160.7,153.3,150.0,149.8,145.6,141.2,139.4,133.7,130.2,128.3,128.1,125.5,108.2,104.6,103.9,99.3,98.9,74.4,72.4,71.8,70.8,70.2,70.0,69.8, 69.5,69.2,66.2,61.2,58.8,46.4,42.9,35.3.
ESI-TOF/MS(positive mode);Found:m/z 936.3476[(M+Na)+],Calcd.for C39H51N11O15Na:936.3458.
【0145】
αFuc2-βGal4-1V209(4-((6-amino-8-hydroxy-2-(2-methoxyethoxy)-9H-purin-9-yl)methyl)-N-(α-D-fucosyl)-(1→2)-(β-D-glucopyranosyl)-(1→4)-(1-deoxy-D-glucitol-1-yl)amino(phenyl)-1H-1,2,3-triazol-4-yl)methyl)benzamide、収率:40%)
1H-NMR(400MHz,D2O(1滴)-DMSO(d6)(1:40))δ7.93(1H,s),7.82(2H,d,J=7.8Hz),7.39(2H,d,J=7.8Hz),7.04(1H,dd,J=7.8,7.8Hz),6.88(1H,brs),6.77(1H,d,J=7.8Hz),6.42(1H,d,J=7.8Hz),5.26(2H,s),5.09(1H,s),4.96(2H,s),4.55(2H,s),4.47(1H,d,J=6.8Hz),4.32-4.25(2H,m),3.91-3.83(1H,m),3.81-3.67(3H,m),3.67-3.40(12H,m),3.26(3H,s),3.26-3.18(1H,m),3.01-2.92(1H,m),1.07(3H,d,J=6.4).
ESI-TOF/MS(positive mode);Found:m/z 000.0000[(M+Na)+],Calcd.for C45H61N11O19Na:1082.4037.
【0146】
αXyl6-1V209(4-((6-amino-8-hydroxy-2-(2-methoxyethoxy)-9H-purin-9-yl)methyl)-N-(α-D-xylopyranosyl)-(1→6)- (1-deoxy-D-glucitol-1-yl)amino(phenyl)-1H-1,2,3-triazol-4-yl)methyl)benzamide、収率:40%)
1H-NMR(400MHz,D2O(1滴)-DMSO(d6)(1:40))δ7.97(1H,s),7.82(2H,d,J=7.8Hz),7.38(2H,d,J=7.8Hz),7.03(1H,dd,J=7.8,8.2Hz),6.87(1H,brs),6.75(1H,d,J=1.8,7.8Hz),6.38(1H,d,J=2.2,8.2Hz),5.24(2H,s),4.94(2H,s),4.63(1H,d,J=3.2Hz),4.55(2H,s),4.47(1H,d,J=6.8Hz),4.32-4.25(2H,m),3.91-3.83(1H,m),3.81-3.67(3H,m),3.67-3.40(12H,m),3.26(3H,s),3.26-3.18(1H,m),3.01-2.92(1H,m),1.07(3H,d,J=6.4).
ESI-TOF/MS(positive mode);Found:m/z 906.3458[(M+Na)+],Calcd.for C38H49N11O14Na:906.3353.
【0147】
αAra5-1V209(4-((6-amino-8-hydroxy-2-(2-methoxyethoxy)-9H-purin-9-yl)methyl)-N-(α-D-arabinopyranosyl)-(1→5)-(1-deoxy-D-arabinitol-1-yl)amino(phenyl)-1H-1,2,3-triazol-4-yl)methyl)benzamide、収率:16%)
ESI-TOF/MS(positive mode);Found:m/z 876.3247[(M+Na)+],Calcd.for C37H47N11O13Na:876.3247.
【0148】
αMan6-1V209(4-[{6-amino-8-hydroxy-2-(2-methoxyethoxy)-9H-purin-9-yl}methyl]-N-[(1-{2-([3-{(α-D-mannopyranosyl)-(1→6)-(1-deoxy-D-glucitol-1-yl)-amino}phenyl]amino]-2-oxoethyl}-1H-1,2,3-triazol-4-yl}methyl]benzamide、収率:48%)
1H-NMR(600MHz,D2O-DMSO(d6)(1:40))δ7.97(1H,s),7.82(2H,d,J=8.2Hz),7.38(2H,d,J=8.2Hz),7.02(1H,dd,J=8.2Hz),6.87(1H,s),6.74(1H,d,J=8.2Hz),6.37(1H,d,J=8.2Hz),5.24(2H,s),4.94(2H,s),4.64(1H,d,J=4.1Hz),4.54(2H,s),4.20(2H,d,J=4.1Hz),3.78(1H,s),3.69(1H,t,J=5.4Hz)3.64-3.34(18H,m),3.22-3.17(4H,m),3.12(1H,dd,J=12.9Hz),2.88(1H,dd,J=12.6,4.6Hz),2.04(2H,s).
13C-NMR:(150MHz,D2O-DMSO(d6)(1:40))δ166.4,165.8,163.6,152.9,149.1,148.4,145.0,144.6,140.5,139.0,133.3,129.1,127.5,127.3,124.6,108.8,108.4,106.8,106.6,102.7,102.4,99.5,99.3,73.0,72.7,72.5,70.8,70.5,70.2,69.5,68.7,68.6,66.5,66.1,60.5,57.9,51.2,46.4,42.1.
ESI-TOF/MS(positive mode);Found:m/z 936.3471[(M+Na)+],Calcd.for C39H51N11O15Na:936.3458.
【0149】
(βGlcNAc4)4-1V209(4-[{6-amino-8-hydroxy-2-(2-methoxyethoxy)-9H-purin-9-yl}methyl]-N-[(1-{2-[(3-{(2-acetamido-2-deoxy-β-D-glucopyranosyl)-(1→4)-(2-acetamido-2-deoxy-β-D-glucopyranosyl)-(1→4)-(2-acetamido-2-deoxy-β-D-glucopyranosyl)-(1→4)-(2-acetamido-2-deoxy-β-D-glucopyranosyl)-(1→4)-(2-acetamido-1,2-deoxy-D-glucitol-1-yl)-amino}phenyl)amino]-2-oxoethyl}-1H-1,2,3-triazol-4-yl)methyl]benzamide、収率:38%)
ESI-TOF/MS(positive mode);Found:m/z 1627.6375[(M+Na)+],Calcd.for C67H96N16O30Na:1627.6370.
【0150】
(βGlc3)4-1V209(4-[{6-amino-8-hydroxy-2-(2-methoxyethoxy)-9H-purin-9-yl}methyl]-N-[(1-{2-[(3-{(β-D-glucopyranosyl)-(1→3)-(β-D-glucopyranosyl)-(1→3)-(β-D-glucopyranosyl)-(1→3)-(β-D-glucopyranosyl)-(1→3)-(1-deoxy-D-glucitol-1-yl)-amino}phenyl)amino]-2-oxoethyl}-1H-1,2,3-triazol-4-yl)methyl]benzamide、収率:84%)
1H-NMR(600MHz,D2O-DMSO(d6)(1:40))δ7.85(1H,s),7.65(3H,d,J=8.2Hz),7.29(4H,d,J=8.2Hz),6.98(1H,dd,J=8.2Hz),6.75(1H,s),6.64(1H,d,J=8.2Hz),6.37(1H,d,J=8.2Hz),5.14(2H,s),4.87(4H,s),4.51-4.43(6H,m),4.42-4.40(5H,m),4.36-4.34(1H,m),4.21-4.17(4H,m),3.93-3.87(2H,m),3.81-3.78(1H,m),3.69-3.60(7H,m),3.59-3.55(1H,m),3.52-3.29(19H,m),3.29-3.13(9H,m),3.06-3.04(3H,m),2.95-2.93(1H,m),2.51(2H,d,J=3.6Hz).
ESI-TOF/MS(positive mode)Found:m/z 1422.5053[(M+Na)+],Calcd.for C57H81N11O30Na:1422.5043.
【0151】
tri-αMan6-1V209(4-[2-(4-{[6-Amino-8-hydroxy-2-(2-methoxyethoxy)-9H-purin-9-yl]methyl}benzamido)acetamido]-N1,N7-bis[(1-{2-[(3-{(α-D-mannopyranosyl)-(α1→6)-(1-deoxy-D-glucitol-1-yl)amino}phenyl)amino]-2-oxoethyl}-1H-1,2,3-triazol-4-yl)methyl]-4-[3-({[1-(2-{(3-[(α-D-mannopyranosyl)-(1→6)-(1-deoxy-D-glucitol-1-yl)amino]phenyl)amino}-2-oxoethyl)-1H-1,2,3-triazol-4-yl]methyl}amino)-3-oxopropyl]heptanediamide、収率:30%)
1H-NMR(600MHz,D2O-DMSO(d6)(1:1))δ7.75(3H,s),7.58(2H,d,J=8.4Hz),7.23(1H,d,J=8.4Hz),6.96(2H,dd,J=8.4Hz),6.73(3H,d,J=8.4Hz),6.64(3H,d,J=8.4Hz),6.35(3H,d,J=8.4Hz),5.11(6H,s),4.83(2H,d,J=10.9Hz),4.61(4H,s),4.21(8H,d,J=10.4Hz),3.72(6H,s),3.68(5H,s),3.64(6H,dd,J=7.5Hz),3.61(9H,s),3.57(5H,dd,J=10.2,2.7Hz),3.51(7H,dd,J=11.6,4.8Hz),3.46(9H,dd,J=8.5Hz),3.43(6H,s),3.40(3H,d,J=10.2Hz),3.12(4H,dd,J=10.2,4.8Hz),2.91(3H,dd,J=10.2,8.1Hz).
ESI-TOF/MS(positive mode);Found:m/z 1176.9563[(M+2Na)2+],Calcd.for C97H137N25O41Na2:2353.9188.
【0152】
tri-αGlc4-1V209(4-[2-(4-{[6-amino-8-hydroxy-2-(2-methoxyethoxy)-9H-purin-9-yl]methyl}benzamido)acetamido]-N1,N7-bis[(1-{2-[(3-{(α-D-glucopyranosyl)-(1→4)-(1-deoxy-D-glucitol-1-yl)amino}phenyl)amino]-2-oxoethyl}-1H-1,2,3-triazol-4-yl)methyl]-4-[3-({[1-(2-{(3-[(α-D-glucopyranosyl)-(1→4)-(1-deoxy-D-glucitol-1-yl)amino]phenyl)amino}-2-oxoethyl)-1H-1,2,3-triazol-4-yl]methyl}amino)-3-oxopropyl]heptanediamide、収率:28%)
1H-NMR(600MHz,D2O-DMSO(d6)(1:1))δ7.73(3H,s),7.55(2H,d,J=8.4Hz),7.21(2H,d,J=8.4Hz),6.94(3H,dd,J=8.4Hz),6.71(3H,s),6.60(3H,d,J=8.4Hz),6.33(3H,d,J=8.4Hz),5.10(6H,s),4.85(3H,d,J=3.4Hz),4.79(2H,s),4.23-4.15(9H,m),3.71-3.67(10H,m),3.67-3.64(8H,m),3.63(3H,dd,J=5.4,2.0Hz),3.62-3.58(6H,m),3.52-3.45(14H,m),3.39(4H,dd,J=11.6,6.8Hz),3.31(4H,dd,J=10.2,5.4Hz),3.17(3H,d,J=9.6Hz),3.14(3H,d,J=3.4Hz),3.08(3H,dd,J=12.9,4.0Hz),2.97(3H,dd,J=12.9,7.4Hz).
13C-NMR(150MHz,D2O-DMSO(d6)(1:1))δ176.2,166.1,154.9,150.4,146.1,139.4,131.3,129.0,126.4,111.4,110.6,106.6,106.0,102.0,101.9,100.0,84.9,83.8,74.3,73.9,73.7,72.5,71.6,70.7,70.4,70.3,65.4,63.5,61.8,59.5,59.4,53.7,47.7,35.7,31.0.
ESI-TOF/MS(positive mode);Found:m/z 1176.9616[(M+2Na)2+],Calcd.for C97H137N25O41Na2:2353.9188.
【0153】
tri-(βGlc3)4-1V209(4-[2-(4-{(6-amino-8-hydroxy-2-(2-methoxyethoxy)-9H-purin-9-yl)methyl}benzamido)acetamido]-N1,N7-bis[(1-{2-[(3-{(β-D-glucopyranosyl)-(1→3)-(β-D-glucopyranosyl)-(1→3)-(β-D-glucopyranosyl)-(1→3)-(β-D-glucopyranosyl)-(1→3)-(1-deoxy-D-glucitol-1-yl)amino}phenyl)amino]-2-oxoethyl}-1H-1,2,3-triazol-4-yl)methyl]-4-[3-({[1-(2-{(3-[(β-D-glucopyranosyl)-(1→3)-(β-D-glucopyranosyl)-(1→3)-(β-D-glucopyranosyl)-(1→3)-(β-D-glucopyranosyl)-(1→3)-(1-deoxy-D-glucitol-1-yl)amino]phenyl)amino}-2-oxoethyl)-1H-1,2,3-triazol-4-yl]methyl}amino)-3-oxopropyl]heptanediamide、収率:29%)
1H-NMR(600MHz,D2O-DMSO(d6)(1:1))δ7.75(3H,s),7.57(2H,d,J=8.4Hz),7.23(2H,d,J=8.4Hz),6.96(3H,dd,J=8.4Hz),6.72(3H,s),6.65(3H,d,J=8.4Hz),6.37(3H,d,J=8.4Hz),5.11(6H,s),4.56-4.43(13H,m),4.25-4.18(10H,m),3.92(3H,brs),3.83-3.80(4H,m),3.72-3.65(19H,m),3.64-3.58(5H,m),3.52-3.35(48H,m),3.33-3.29(10H,m),3.27-3.16(30H,m),3.15-3.08(14H,m).
ESI-TOF/MS(positive mode);Found:m/z 1897.7229[(M+Na)+],Calcd.for C160H245N25O77Na:1897.7904.
【0154】
(αGlc6)n-1V209(MW17,000)
1H-NMR(400MHz,D2O)δ7.83(1H,br),7.46(2H,br),7.11(2H,br),6.94(1H,br),6.69(1H,br),6.56(1H,br),6.39(1H,br),4.96-4.76(~100H,m),4.01-3.03(~600H,m).
【0155】
(αGlc6)n-1V209(MW40,000)
1H-NMR(400MHz,D2O)δ7.88(1H,br),7.56(2H,br),7.21(2H,br),7.04(1H,br),6.78(1H,br),6.65(1H,br),6.48(1H,br),4.90-4.77(~160H,m),4.03-3.08(~960H,m).
【0156】
[試験例1:糖鎖TLRリガンド複合体の免疫増強活性の測定]
製造例5で調製した糖鎖TLRリガンド複合体の免疫増強活性を評価した。免疫増強活性の評価では、マウス骨髄由来樹状細胞(mouse bone marrow derived dendritic cell、以下、“mBMDC”とする)において糖鎖TLRリガンド複合体によって誘導されたサイトカイン(IL-6)の産生量をELISA法で定量した。まず、96ウェルプレートに、1ウェルあたりの細胞数が1×105個になるように細胞懸濁液を150μLずつ播種し、37℃、5%CO2の条件下で18時間インキュベートした。
【0157】
次に、糖鎖TLRリガンド複合体の濃度が8μMになるように調整した。得られた糖鎖TLRリガンド複合体溶液を、4倍ずつ連続希釈し、上記96ウェルプレートの各ウェルに50μLずつ加え、37℃、5%CO2の条件下で18時間インキュベートした。ここで、(i)糖鎖と複合体化していないTLRリガンド(1V209)の水溶液(8μM)を4倍ずつ連続希釈した溶液も、上記96ウェルプレートの各ウェルに50μLずつ加え、37℃、5%CO2の条件下で18時間インキュベートした。
【0158】
続いて、以下の手順に沿って、ELISA法を行った。まず、96ウェルELISA用プレートにCoating Bufferで250倍希釈した抗マウスIL-6抗体50μLを加え、4℃で18時間インキュベートした。抗体溶液を除去後、Tween20を1%含むPBS溶液(以下、“1%PBS/T”とする。)300μLで各ウェルを3回洗浄した。その後、1%ウシ血清アルブミン-PBS溶液(以下、“ブロッキングバッファーとする。)300μLをウェルに加え、37℃、5%CO2の条件下で2時間インキュベートした。ブロッキングバッファーを除去後、300μLの1%PBS/Tで各ウェルを3回洗浄した。
【0159】
次に、培養上清150μLを別の96ウェルプレートに移し、そのうち50μLを抗IL-6抗体が固定化されたELISAプレートに移した。ELISAプレートを4℃で2時間インキュベート後、培養上清を除去し、Tween20を0.05%含有するPBS(以下、“0.05%PBS/T”という)溶液で各ウェルを3回洗浄した。その後、ブロッキングバッファーで1000倍希釈したビオチン標識抗IL-6抗体を各ウェルに50μLずつ加え、室温で2時間インキュベートした。抗体溶液を除去後、300μLの1%PBS/Tで各ウェルを3回洗浄し、ブロッキングバッファーで1000倍希釈したHRP修飾ストレプトアビジン溶液50μLを加えた。室温で1時間インキュベート後、1%PBS/Tで各ウェルを5回洗浄した。その後、TMB Microwell Peroxidase Substrate(ナカライテスク社製)を50μL加え、化学発光を観察後、1Mのo-Phosphoric Acid溶液を50μL加えて化学発光を停止した。その後、速やかに、ELISAプレートをプレートリーダーに供し、450nmの吸光度で測定した。培養上清中のIL-6の産生量は、GraphPad Prism 7ソフトウェアを用いて解析した。なお、濃度既知の組み換えマウスIL-6(eBioscience社製)を用いて、同様にELISAを行い、検量線を作成した。
【0160】
(結果)
図1は糖鎖TLRリガンド複合体溶液のmBMDCへの添加によって産生されたIL-6の産生量を示す図である。
図1に示されたTLR7リガンドの量(μM)は、添加した糖鎖TLRリガンド複合体の濃度から算出され、実質的に添加された量を示す。TLRリガンド複合体では、TLR7リガンドの濃度依存的なIL-6の産生の増大が確認された。
【0161】
表1は糖鎖TLRリガンド複合体溶液のmBMDCへの添加によって産生されたIL-6の産生量から得られた50%効果濃度(EC50)を示す。EC50が低いほど免疫増強効果が高い。TLRリガンド複合体の免疫増強効果は1V209より高いことが確認された。
【0162】
【0163】
[試験例2:ニワトリ由来OVAと糖鎖TLRリガンド複合体とを用いた免疫増強活性の測定]
上記非特許文献3に記載の方法で調製した、下記に示す糖鎖TLRリガンド複合体(3NH-αCD-1V209、式(24))のin vivoでの免疫増強活性を、BALB/cAマウス(7週齢、雌)を用いて評価した。OVAをモデル抗原とし、OVA(20μg)と3NH-αCD-1V209(2nmol又は20nmol)とを混合した溶液(20μL)を、0、7、14日目にマウスに3回経鼻投与した(1群4匹又は8匹)。コントロールには、1V209(2nmol)及びCholera toxin(5μg)を用いた。
【0164】
【0165】
免疫開始21日目に、血液、鼻腔洗浄液及び脾臓を採取した。血液はセボフルラン吸入麻酔下で眼窩静脈叢から採取した。得られた血液を遠心分離(4,000×g、10分、4℃)し、血清層を回収した。鼻腔洗浄液は、大塚蒸留水(300μL)を食道付近からシリンジ(27G×3/4’)で注入して回収した。血清層を再度遠心分離(4,000×g、10分、4℃)し、上清を回収した。鼻腔洗浄液及び血清中のIgA及びIgG抗体をELISAで評価した。
【0166】
ELISAでは、まず、96ウェルELISA用プレートの各ウェルにPBSで希釈したタンパク質溶液(OVA:5μg/mL、50μL/ウェル)を加え、4℃で18時間インキュベートした。タンパク質溶液を除去後、Tween20を0.05%含むPBS溶液(以下、“PBS/T”とする、300μL/ウェル)で各ウェルを3回洗浄した。その後、ブロッキングバッファー(300μL/ウェル)を加え、プレートシェイカー(400rpm、室温)上で2時間インキュベートした。ブロッキングバッファーを除去後、PBS/T(300μL/ウェル)で各ウェルを3回洗浄した。続いて、ブロッキングバッファーで希釈した血清溶液又は鼻腔洗浄液(50μL/ウェル)を加えて、プレートシェイカー(400rpm、室温)で2時間インキュベートした。この際、血清の場合は、1ドース目にブロッキングバッファーで25倍希釈した血清溶液(50μL/ウェル)を加え、2ドース目から8ドース目は4倍ずつ連続希釈した溶液(50μL/ウェル)を加えた。鼻腔洗浄液の場合は、1ドース目はブロッキングバッファーで2倍希釈した鼻腔洗浄液(50μL/ウェル)を加え、2ドース目から8ドース目は2倍ずつ連続希釈した溶液(50μL/ウェル)を加えた。血清溶液又は鼻腔洗浄液を除去後、プレートをPBS/Tで5回洗浄し、ブロッキングバッファーで10000倍希釈したヤギ抗マウスIgAα鎖(HRP)、又は5000倍希釈した抗IgG(H+L鎖)(マウス)pAb-HRP(50μL/ウェル)を加え、プレートシェイカー(400rpm、室温)で1.5時間インキュベートした。抗体溶液を除去後、プレートをPBS/Tで5回洗浄した。その後、TMB Microwell Peroxidase Substrate(50μL/ウェル)を加え、化学発光を観察後、o-Phosphoric Acid溶液(1M、50μL/ウェル)を加えて反応を停止した。その後、速やかにプレートリーダーを用いて450nmの吸光度を測定した。統計解析には、GraphPad Prism7を用いた。
【0167】
(結果)
図2(A)及び
図2(B)は、それぞれ鼻腔洗浄液及び血清中のOVAに対するIgA抗体産生価を示す。
図2(C)及び
図2(D)は、それぞれ鼻腔洗浄液及び血清中のOVAに対するIgG抗体産生価を示す。3NH-αCD-1V209の混合液を投与した群において、OVAに対するIgA及びIgGの抗体産生能が10倍から100倍向上することが示された。
【0168】
群間で体重に有意な差はなく、
図3に示すように群間における脾臓重量にも有意な差はなかった。
【0169】
[試験例3:インフルエンザウイルス由来HAと糖鎖TLRリガンド複合体(3NH-αCD-1V209)を用いた免疫増強活性の測定]
インフルエンザウイルスのスパイクタンパク質抗原である組換えHA(A/Pueruto Rico/8/1934、以下“Flu HA”ともいう)を用いて、試験例2と同様に免疫増強活性を評価した(1群6匹)。免疫増強活性の評価では、試験例2と同様の免疫スケジュールで、Flu HA(5μg)と3NH-αCD-1V209(20nmol)との混合液(20μL)を経鼻投与した。免疫開始21日目に、血液及び鼻腔洗浄液を採取した。鼻腔洗浄液及び血清中のIgA及びIgG抗体を、5μg/mLのOVAに代えて5μg/mLのFlu HAを含むタンパク質溶液を使用する点を除いて試験例2と同様にELISAで定量した。
【0170】
(結果)
図4(A)及び
図4(B)は、それぞれ鼻腔洗浄液及び血清中のHAに対するIgA抗体産生価を示す。
図4(C)及び
図4(D)は、それぞれ鼻腔洗浄液及び血清中のFlu HAに対するIgG抗体産生価を示す。HAと3NH-αCD-1V209との混合液を投与した群では、鼻腔洗浄液及び血清の両方で、IgA抗体及びIgG抗体の抗体価がFlu HA単独投与群に比べて10倍から1000倍向上することが示された。
【0171】
[試験例4:インフルエンザワクチンと糖鎖TLRリガンド複合体(3NH-αCD-1V209)を用いた免疫増強活性の測定]
市販のインフルエンザワクチン(デンカ生研、A型2種、B型2種、以下“Flu vaccine”ともいう)を用いて、試験例3と同様に免疫増強活性を評価した(1群6匹)。試験例3と同様の免疫スケジュールでFlu vaccine(総HA量約5μg)と3NH-αCD-1V209(20nmol)との混合溶液(50μL)を経鼻投与した。免疫開始21日目に、血液及び鼻腔洗浄液を採取した。鼻腔洗浄液及び血清中のIgA及びIgG抗体を、試験例3と同様にELISAで評価した。
【0172】
Flu vaccine(1ml中インフルエンザウイルスのHA画分1株あたり30μg以上、40μL)とPBS(10μL)又は3NH-αCD-1V209(20nmol、2mM、10μL)とを混合し、BALB/cAマウス(7週齢、雌)に0日目、7日目、14日目に経鼻投与した。免疫開始21日目に血液及び鼻腔洗浄液を採取した。鼻腔洗浄液及び血清中のIgA及びIgG抗体を試験例3と同様にELISAで定量した。
【0173】
(結果)
図5(A)及び
図5(B)は、それぞれ鼻腔洗浄液及び血清中のHAに対するIgA抗体産生価を示す。
図5(C)及び
図5(D)は、それぞれ鼻腔洗浄液及び血清中のHAに対するIgG抗体産生価を示す。Flu vaccineと3NH-αCD-1V209との混合溶液を投与した群では、Flu vaccine単独投与群に比べて、IgA抗体及びIgG抗体の抗体価が5~30倍向上することが示された。
【0174】
[試験例5:鼻腔粘膜に産生された抗体のウイルス中和活性評価]
ウイルスの感染を阻害できるか評価するために、試験例4で回収した鼻腔洗浄液を用いて、インフルエンザウイルスB型(野外分離株)を用いた中和活性試験を行った。細胞には、MDCK細胞株を用いた。インフルエンザウイルスB型と鼻腔洗浄液とを混合し、細胞溶液に加えて4日間培養後、細胞をクリスタルバイオレットで染色して、感染阻害効果を評価した。クリスタルバイオレット染色では、ウイルス感染が阻害され細胞が生存している場合に染色され、ウイルス感染によって細胞が死滅すると染色されないため、ウイルス感染の有無を評価することができる。
【0175】
96ウェルプレートにMDCK細胞(3×104個/ウェル)を播種し、37℃、5%CO2の条件下で一晩培養した。次に、ウイルス溶液(60μL、120TCID50/60μL)と鼻腔洗浄液(60μL、原液から10倍ずつE-MEM感染培地で段階希釈)とを混合し、34℃、5%CO2の条件下で1時間インキュベートした。細胞の培養液を除去し、PBSで2回、E-MEM感染培地で1回洗浄後、鼻腔洗浄液(50μL)とウイルス溶液(50μL)の混合溶液(上記の1時間インキュベートしたサンプル)を加えて、34℃、5%CO2の条件下で4日間培養した。その後、培養上清を除去し、PBSで洗浄した。70%エタノール(5分)で細胞を固定し、70%エタノールを除去後、0.4%クリスタルバイオレット溶液(100μL)を加えて、室温で30分間インキュベートした後、クリスタルバイオレットを除去し水で洗浄した。
【0176】
(結果)
図6に示すように、Flu vaccineの単独投与群では、中和活性を有する抗体は一部のマウスでしか誘導されなかった。一方、3NH-αCD-1V209とFlu vaccineとの混合溶液を投与した群では、すべてのマウスで中和活性を有する抗体の産生が誘導された。したがって、3NH-αCD-1V209は、インフルエンザウイルスに対する感染阻害活性を有する抗体の産生を増強することが示された。
【0177】
[試験例6:マウスを用いたインフルエンザウイルス感染防御試験]
BALB/cAマウス(7週齢・雌、1群5匹)を用いてインフルエンザウイルスに対する感染防御効果について評価した。インフルエンザウイルスには、A型H1N1プエルトリコ株(A/Pueruto Rico/8/1934)を用いた。
【0178】
Flu HAについては試験例3、Flu vaccineについては試験例4と同様の免疫スケジュールで免疫し、最終免疫の7日後、致死量のインフルエンザウイルス(50μL、片鼻25μLずつ、1×104TCID50/50μL)を、麻酔下で経鼻感染させた。ウイルス感染後は2週間、体重と体温を測定した。ウイルス感染後14日後に麻酔下で頸椎脱臼によってマウスを安楽死させた。また、エンドポイント(ウイルス感染前と比較して20%以上の低体重、7日間で25%以上の体重減少、沈鬱状態又は給餌・給水が困難な状態が認められた場合)に達したマウスも安楽死させ、生存率を評価した。
【0179】
(結果)
図7(A)及び
図7(B)は、それぞれ感染後の体重の経時変化及び生存率を示す。3NH-αCD-1V209を混合投与した群(3NH-αCD-1V209+Flu HA及び3NH-αCD-1V209+Flu vaccine)では、ほとんど体重が減少せず、死亡が確認されたかった。一方、3NH-αCD-1V209未投与群(PBS、PBS+Flu HA及びPBS+Flu vaccine)は、体重が減少し、全例が死亡した。これらの結果から、糖鎖TLRリガンド複合体が粘膜ワクチン用アジュバントとして有用であることが示された。
【0180】
[試験例7:マウスを用いたインフルエンザウイルス感染防御試験]
BALB/cAマウス(7週齢・雌、1群5匹)を用いて、製造例5で得られたtri-βGal4-1V209(上記式(12))のin vivoでの免疫増強活性によるインフルエンザウイルスに対する感染防御効果について評価した。インフルエンザウイルスには、A型H1N1プエルトリコ株(A/Pueruto Rico/8/1934)を用いた。
【0181】
インフルエンザウイルスのスパイクタンパク質抗原である組換えHA(A/Pueruto Rico/8/1934、以下“Flu HA”ともいう、5μg)とtri-βGal4-1V209(20nmol)とを混合した溶液(20μL)を、マウスに2回経鼻投与した。最終免疫の22日後、致死量のインフルエンザウイルス(50μL、片鼻25μLずつ、1×104TCID50/50μL)を、麻酔下で経鼻感染させた。ウイルス感染後は2週間、体重と体温を測定した。ウイルス感染後14日後に麻酔下で頸椎脱臼によってマウスを安楽死させた。また、エンドポイント(ウイルス感染前と比較して20%以上の低体重、7日間で25%以上の体重減少、沈鬱状態又は給餌・給水が困難な状態が認められた場合)に達したマウスも安楽死させ、生存率を評価した。
【0182】
(結果)
図8(A)及び
図8(B)は、それぞれ感染後の体重の経時変化及び生存率を示す。tri-βGal4-1V209を混合投与した群(tri-βGal4-1V209+Flu HA)では、ほとんど体重が減少せず、死亡が確認されたかった。一方、tri-βGal4-1V209未投与群(PBS及びPBS+Flu HA)は、体重が減少し、全例が死亡した。これらの結果から、糖鎖TLRリガンド複合体がワクチン用アジュバントとして有用であることが示された。
【0183】
上述した実施の形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。