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特開2024-180378樹脂、硬化性樹脂組成物、感光性樹脂組成物、及び硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180378
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】樹脂、硬化性樹脂組成物、感光性樹脂組成物、及び硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/08 20060101AFI20241219BHJP
   C08F 290/14 20060101ALI20241219BHJP
   C08G 59/66 20060101ALI20241219BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20241219BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C08G59/08
C08F290/14
C08G59/66
G03F7/004 501
G03F7/027 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024097662
(22)【出願日】2024-06-17
(31)【優先権主張番号】P 2023099377
(32)【優先日】2023-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2024039205
(32)【優先日】2024-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】寺田 拓真
(72)【発明者】
【氏名】大槻 信章
(72)【発明者】
【氏名】石川 知紀
【テーマコード(参考)】
2H225
4J036
4J127
【Fターム(参考)】
2H225AC21
2H225AC36
2H225AC53
2H225AC54
2H225AC72
2H225AD06
2H225AD26
2H225AF23P
2H225AF78P
2H225AG00P
2H225AM70P
2H225AN02P
2H225AP08P
2H225BA24P
2H225CA21
2H225CB05
2H225CC01
2H225CC13
4J036AA02
4J036AF06
4J036CA21
4J036CC01
4J036DD02
4J036DD07
4J036FA02
4J036HA02
4J036HA12
4J036JA07
4J036JA08
4J036JA09
4J036KA03
4J127AA03
4J127AA04
4J127BB041
4J127BB081
4J127BB221
4J127BC031
4J127BC051
4J127BC131
4J127BD191
4J127BE341
4J127BE34Y
4J127BF311
4J127BF31Y
4J127BG10
4J127BG121
4J127BG331
4J127CB371
4J127CC111
4J127DA06
4J127EA03
4J127EA13
4J127FA16
4J127FA18
4J127FA21
4J127FA30
4J127FA38
4J127FA41
(57)【要約】
【課題】高屈折率の硬化物を与えることができる樹脂、及び樹脂の硬化物や、硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される芳香環含有構造を有することを特徴とする樹脂。
[化1]
(式中、Rは、置換基を有していてもよい芳香族基を表す。Rは、水素原子又はカルボキシル基含有基を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される芳香環含有構造を有することを特徴とする樹脂。
【化1】
(式中、Rは、置換基を有していてもよい芳香族基を表す。Rは、水素原子又はカルボキシル基含有基を表す。)
【請求項2】
更に、下記一般式(2)で表される構造、及び、下記一般式(3)で表される構造からなる群より選択される少なくとも一種の構造を有することを特徴とする請求項1に記載の樹脂。
【化2】
(式中、Rは、水素原子又はカルボキシル基含有基を表す。Rは、有機基を表す。)
【化3】
【請求項3】
下記一般式(4)で表されることを特徴とする請求項1に記載の樹脂。
【化4】
(式中、Rは、置換基を有していてもよい芳香族基を表す。R及びRは、同一又は異なって、水素原子又はカルボキシル基含有基を表す。Aは、2価の有機基を表す。Rは、有機基を表す。nは、0又は1を表す。)
【請求項4】
前記Aで表される2価の有機基は、下記一般式(5)で表される2価の基であることを特徴とする請求項3に記載の樹脂。
【化5】
(式中、R及びR11は、同一又は異なって、芳香族基を含む2価の有機基を表す。R及びR10は、同一又は異なって、水素原子又はカルボキシル基含有基を表す。Rは、芳香族基を含む2価の有機基を表す。mは、1以上の整数を表す。)
【請求項5】
請求項1に記載の樹脂と、金属酸化物粒子、光ラジカル重合開始剤、熱ラジカル重合開始剤、熱酸発生剤、光酸発生剤、及び光塩基発生剤からなる群より選択される少なくとも1種とを含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の樹脂と、アルカリ可溶性樹脂と、光ラジカル重合開始剤と、重合性化合物とを含むことを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の樹脂、請求項5に記載の硬化性樹脂組成物、又は請求項6に記載の感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化物であって、
該硬化物の屈折率が1.60以上であることを特徴とする硬化物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂、硬化性樹脂組成物、感光性樹脂組成物、及び硬化物に関する。詳しくは、高屈折率の硬化物を与えることができる樹脂、硬化性樹脂組成物、感光性樹脂組成物、及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置や固体撮像素子等に用いられるカラーフィルター、インキ、印刷版、プリント配線板、半導体素子、フォトレジスト、有機絶縁膜、有機保護膜等の、各種の光学部材や電機・電子機器等の各種用途に適用される樹脂や樹脂組成物について、各種用途に応じた特性を有する様々なものが開発されている。近年では、光学部材や電機・電子機器等の小型化・薄型化・省エネルギー化が進みつつあり、それに伴って、使用される各種部材等にはより高品位な性能が要望されている。そのような要望に応えるため、各種部材等の材料となる樹脂や樹脂組成物において更なる研究が行われている。
【0003】
これまでに様々な要望に応じた樹脂が開発されている。
例えば、特許文献1、2には、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と、特定のフェノール化合物及び/又はナフトール化合物、あるいは更にヒドロキシル基含有置換基を有するフェノール化合物と、不飽和基含有モノカルボン酸との反応生成物のアルコール性水酸基に対して多塩基酸無水物を反応させて得られる感光性プレポリマー等を含む、プリント配線板のソルダーレジストや多層配線板の層間絶縁層等に要求される特性を維持もしくは向上させた硬化皮膜を得るためのアルカリ現像可能な光硬化性・熱硬化性組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-315107号公報
【特許文献2】特開2004-171026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の樹脂は、屈折率が低く、高屈折率が要求される光学用途等に使用するには1.60以上の高い屈折率を有することが必要とされるが、そのような要望には未だ充分に応えられていない。
【0006】
本開示は、上記現状に鑑みて、高屈折率の硬化物を与えることができる樹脂、及び樹脂の硬化物や、硬化性樹脂組成物、感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、硬化性樹脂組成物に使用する樹脂について種々検討したところ、特定の芳香環含有構造を有することにより、高屈折率の硬化物を与えることができることを見出し、本開示に至った。
【0008】
すなわち、本開示は、下記の態様を提供する。
[1]下記一般式(1)で表される芳香環含有構造を有することを特徴とする樹脂。
【0009】
【化1】
(式中、Rは、置換基を有していてもよい芳香族基を表す。Rは、水素原子又はカルボキシル基含有基を表す。)
[2]更に、下記一般式(2)で表される構造、及び、下記一般式(3)で表される構造からなる群より選択される少なくとも一種の構造を有することを特徴とする上記[1]に記載の樹脂。
【0010】
【化2】
(式中、Rは、水素原子又はカルボキシル基含有基を表す。Rは、有機基を表す。)
【0011】
【化3】
[3]下記一般式(4)で表されることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の樹脂。
【0012】
【化4】
【0013】
(式中、Rは、置換基を有していてもよい芳香族基を表す。R及びRは、同一又は異なって、水素原子又はカルボキシル基含有基を表す。Aは、2価の有機基を表す。Rは、有機基を表す。nは、0又は1を表す。)
[4]上記Aで表される2価の有機基は、下記一般式(5)で表される2価の基であることを特徴とする上記[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂。
【0014】
【化5】
【0015】
(式中、R及びR11は、同一又は異なって、芳香族基を含む2価の有機基を表す。R及びR10は、同一又は異なって、水素原子又はカルボキシル基含有基を表す。Rは、芳香族基を含む2価の有機基を表す。mは、1以上の整数を表す。)
[5]上記[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂と、金属酸化物粒子、光ラジカル重合開始剤、熱ラジカル重合開始剤、熱酸発生剤、光酸発生剤、及び光塩基発生剤からなる群より選択される少なくとも1種とを含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物。
[6]上記[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂と、アルカリ可溶性樹脂と、光ラジカル重合開始剤と、重合性化合物とを含むことを特徴とする感光性樹脂組成物。
[7]上記[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂、上記[5]に記載の硬化性樹脂組成物、又は上記[6]に記載の感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化物であって、該硬化物の屈折率が1.60以上であることを特徴とする硬化物。
【発明の効果】
【0016】
本開示の樹脂、硬化性樹脂組成物、及び感光性樹脂組成物は、高屈折率の硬化物を与えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本開示の好ましい形態について具体的に説明するが、本開示は以下の記載のみに限定されるものではなく、本開示の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下に記載される本開示の個々の好ましい形態を2又は3以上組み合わせた形態も、本開示の好ましい形態に該当する。
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」を意味し、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート及び/又はメタクリレート」を意味する。
また、本明細書において、数値範囲「(最小値)~(最大値)」は、(最小値)以上、且つ、(最大値)以下を意味し、例えば、「5~10」と記載される場合、「5以上、10以下」を意味する。さらに、上限値および下限値について、好適な数値を段階的に記載する場合、各々分けて記載した上限値と下限値を、適宜組み合わせた数値範囲も好適な数値範囲である。
【0018】
1.樹脂
本開示は、上記一般式(1)で表される芳香環含有構造を有することを特徴とする樹脂(以下、「樹脂(X)」とも称する。)である。
本開示の樹脂が、高屈折率の硬化物を与えることができるのは、原子屈折率の高い硫黄原子を介して芳香族基を有することにより、樹脂の硬化物の屈折率が高くなるためと考えられる。
【0019】
上記一般式(1)において、Rは、置換基を有していてもよい芳香族基を表す。
上記芳香族基は、芳香環構造を有していればよく、単環であっても、多環であってもよい。また、ヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0020】
多環の芳香族基を構成する環同士は、縮合していてもよいし、単結合で結合していてもよいし、1つの炭素原子を共有する形で連結していてもよい。また、多環の芳香族基を構成する環は、少なくとも芳香環を含んでいればよく、芳香環のみからなる基であってもよいし、芳香環と非芳香環とからなる基であってもよい。
【0021】
上記芳香族基としては、例えば、ベンゼン系芳香族化合物、非ベンゼン系芳香族化合物、又は、複素芳香族化合物から水素原子を1個取り除いてできる一価の基が挙げられる。
【0022】
上記ベンゼン系芳香族化合物としては、ベンゼン環を含む炭化水素化合物が挙げられ、例えば、ベンゼン等の単環炭化水素化合物;ナフタレン、アントラセン、トリフェニレン、ピレン等の縮合環炭化水素化合物;ビフェニレン、フルオレン等の多環炭化水素化合物等が挙げられる。
【0023】
上記非ベンゼン系芳香族化合物としては、アヌレン、アズレン等の、ベンゼン環以外の不飽和環状化合物を含む炭化水素化合物が挙げられる。
【0024】
上記複素芳香族化合物としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等の、炭素原子と水素原子以外の元素を含む不飽和環状化合物が挙げられ、例えば、フラン、チオフェン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアゾール、チアゾール、チアジゾール、テトラゾール等の単環複素芳香族化合物;カルバゾール、ベンズオキサゾール、プリン、アズレン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾトリアゾール、イソベンゾチオフェン、インドール、イソインドール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール等の多環複素化合物等が挙げられる。
【0025】
なかでも、上記芳香族基としては、ベンゼン系芳香族化合物から水素原子を1個取り除いてできる一価の基が好ましく、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基がより好ましく、フェニル基、ビフェニル基が更に好ましく、フェニル基が最も好ましい。
【0026】
上記芳香族基の炭素数は、好ましくは1~30であり、より好ましくは2~20であり、更に好ましくは6~12である。
【0027】
上記芳香族基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、アラルキル基、アリール基、チオエステル基、チオエーテル基、ジスルフィド基、アルコキシ基、アミノ基又はその塩、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、ベンズアミノ基、ボロン酸基、水酸基、メルカプト基、チオシアネート基、アルキルチオシアネート基、イソチオシアネート基、チオウレア基、スルホン酸基、カルボキシル基、アルデヒド基、複素環基、又は、これらを組み合わせた基が挙げられる。なかでも、アルキル基が好ましい。
上記置換基の炭素数は、好ましくは1~20であり、より好ましくは1~10であり、更に好ましくは1~6である。
上記芳香族基は、上述した置換基の1種又は2種以上を有していてもよい。
【0028】
上記置換基を有していてもよい芳香族基の具体例としては、上述した具体的な芳香族基以外に、例えば、トリル基、キシリル基、ベンジル基、フェネチル基、ベンズヒドリル基、トリチル基、スチリル基、シンナミル基等の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0029】
また、上記置換基を有していてもよい芳香族基の具体例として、下記の芳香族化合物から水素原子を1個取り除いてできる一価の基が挙げられる:
ベンジルチオシアネート等のチオシアネート化合物;
フェニルイソチオシアネート、ベンジルイソチオシアネート、3,4-ジフロロフェニルイソチオシアネート等のイソチオシアネート化合物;
トリチルメルカプタン、4-アミノチオフェノール、4-フルオロチオフェノール、2,4-ジフルオロチオフェノール、2-アミノ-4-(トリフルオロメチル)チオフェノール塩酸塩、3,5-ジクロロチオフェノール、ビス(3,5-ジクロロフェニル)ジスルフィド、4-メトキシチオフェノール、3-メルカプト-4-メチル-1,2,4-トリアゾール、4-ブロモチオフェノール、2-メルカプトベンズオキサゾール、2,6-ジメチルチオフェノール、4,4’,4’’-(1,3,5,2,4,6-トリオキサトリボリナン-2,4,6-トリール)トリベンゼンチオール、1,3,5-トリス[3-(2メルカプトエチルスルファニル)プロピル]イソシアネート、6-アミノ-8-メルカプトプリン、4-メルカプトベンズアミド、4-メルカプトフェニルボロン酸、2-ナフタレンチオール、ジフェニルジスルフィド等のメルカプタン化合物;
チオ酢酸-S-フェニルエステル等のチオカルボン酸化合物;
2-メシチレンスルフォニルクロライド等のスルフォニルハロゲン化合物;
ベンゼンスルホン酸等のスルホン酸化合物;
ジフェニルチオウレア等のチオウレア化合物;
2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、2-チオ酢酸-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾール、2,5-ジチオ酢酸-1,3,4-チアジアゾール等のチアジアゾール化合物;
4-ドデシルベンゼンスルフォニルアジド、4-アセチルアミノベンゼンスルフォニルアジド、ジフェニルリン酸アジド等のアジド化合物;
1H-テトラゾール、5-アミノ-1H-テトラゾール、5-メチル-1H-テトラゾール、5-フェニル-1H-テトラゾール、1-メチル-5-エチル-1H-テトラゾール、1-メチル-5-メルカプト-1H-テトラゾール、1-フェニル-5-メルカプト-1H-テトラゾール、1-(2-ジメチルアミノエチル)-5-メルカプト-1H-テトラゾール、2-メトキシ-5-(5-トリフルオロメチル-1H-テトラゾール-1-イル)-ベンズアルデヒド、5,5’-ビ-1H-テトラゾール・ジアンモニウム塩、4,5-ジ(5-テトラゾリル)-[1,2,3]トリアゾール、5,5’-アゾビス-1H-テトラゾール、1-メチル-5-ベンゾイル-1H-テトラゾール、(1-メチル-1H-テトラゾール-5-イル)フェニルメタノンオキシム(E+Z)、5-エチルチオ-1H-テトラゾール、1-ベンジル-5‐フェニル-1H-テトラゾール等のテトラゾール化合物;
2,4-チアゾリジンジオン、2-チオ-4-チアゾリドン、2-イミノ-4-チアゾリジノン等のチアゾリジン化合物;
4-チアゾールカルボン酸;
2-ヒドロキシアセトフェノン、4-ヒドロキシアセトフェノン、2-ヒドロキシプロピオフェノン、4-ヒドロキシプロピオフェノン等のケトン化合物;
2,6-ナフタレンジカルボキシアルデヒド、2,7-ナフタレンジカルボキシアルデヒド等のジカルボキシアルデヒド化合物;
トリチルクロライド、4,4’-ジメトキシトリチルクロライド等のトリチルクロライド化合物。
【0030】
なかでも、Rとしては、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基が好ましく、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基がより好ましく、置換基を有していてもよいフェニル基、ビフェニル基が更に好ましい。
【0031】
は、水素原子又はカルボキシル基含有基を表す。カルボキシル基含有基としては、カルボキシル基を含む基であれば特に限定されず、例えば、-R2a-COOH(R2aは、2価の有機基を表す。)が挙げられる。
【0032】
上記R2aで表される2価の有機基としては、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基、又は、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基と-O-、-CO-、-COO-、-NH-、-S-、-SO-もしくは-SO-との組み合わせからなる基が挙げられ、好ましくは、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基、又は、-CO-R2a1-(R2a1は、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を表す。)が挙げられる。
【0033】
上記2価の炭化水素基は、鎖状であっても環状であってもよいし、飽和炭化水素基であっても不飽和炭化水素基であってもよい。
上記2価の炭化水素基としては、2価の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0034】
2価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、t-ブチレン基、ペンチレン基、ネオペンチレン基、ヘキサメチレン基等のアルキレン基や、ビニレン基、プロペニレン基、イソプロペニレン基、ブテニレン基、ブタジエニレン基、ペンテニレン基、ヘキセニレン基等のアルケニレン基等が挙げられる。
【0035】
2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、ノルボルニレン基、アダマンチレン基等のシクロアルキレン基や、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基等のシクロアルキリデン基等が挙げられる。
【0036】
2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基等のアリーレン基や、シンナミリデン基、ビフェニレン基等が挙げられる。
【0037】
なかでも、上記2価の炭化水素基は、2価の脂肪族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基であることが好ましく、2価の脂肪族炭化水素基であることがより好ましく、アルキレン基であることが更に好ましい。
【0038】
上記2価の炭化水素基の炭素数は、好ましくは1~20であり、より好ましくは2~8であり、更に好ましくは3~7である。
【0039】
上記2価の炭化水素基が有していてもよい置換基としては、カルボキシル基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0040】
上記カルボキシル基含有基としては、下記式で表される基が好ましく挙げられる。
【0041】
【化6】
(式中、R2a1は、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を表す。)
【0042】
2a1で表される2価の炭化水素基、及び、該2価の炭化水素基が有していてもよい置換基は、上述したとおりである。
【0043】
なかでも、Rは、樹脂にアルカリ可溶性を付与できる点で、-R2a-COOHであることが好ましい。
【0044】
上記樹脂(X)は、更に、上記一般式(2)で表される構造、及び、上記一般式(3)で表される構造からなる群より選択される少なくとも一種の構造を有することが好ましい。これらの構造を有することにより、樹脂の硬化性や、硬化物の耐溶剤性、密着性を向上させることができる。
【0045】
上記一般式(2)中のRは、上記一般式(1)中のRと同じである。
上記一般式(2)中のRは、有機基を表す。
で表される有機基としては、例えば、上述した2価の有機基に水素原子を付加して1価にした有機基が挙げられる。
で表される有機基の炭素数は、好ましくは1~30であり、より好ましくは2~20であり、更に好ましくは3~10である。
【0046】
なかでも、Rで表される有機基としては、-CO-Rb1(Rb1は、1価の有機基を表す。)で表される基が挙げられる。樹脂の硬化性をより一層向上させることができる点で、-CO-Rb2-CRb3=CH(Rb2は、直接結合、2価の炭化水素基、又は、2価の炭化水素基と-O-もしくは-COO-との組み合わせからなる基を表す。Rb3は、水素原子又はメチル基を表す。)が好ましい。上記Rb2は、より好ましくは、直接結合又は2価の脂肪族炭化水素基である。
で表される有機基は、より好ましくは-CO-CRb3=CHである。
【0047】
上記一般式(1)で表される芳香環含有構造を有する樹脂(X)としては、例えば、下記一般式(6)で表される構造単位(A)を有する樹脂(X1)が好ましく挙げられる。なお、本明細書において、「構造単位」とは、樹脂を構成するモノマー等に由来する繰り返し単位を意味する。
【0048】
【化7】
【0049】
(式中、Aは、ベンゼン環又はナフタレン環を表す。R12は、炭素数1~20の2価の炭化水素基を表す。R13は、Aに結合する置換基を表す。aは、R13の個数を表し、0~5の整数である。R13が2個以上ある場合、それぞれ互いに同一であっても、異なっていてもよい。R14は、2価の基を表す。R及びRは、一般式(1)と同じである。)
【0050】
一般式(6)において、Aは、ベンゼン環又はナフタレン環を表す。屈折率がより高い点で、Aは、ベンゼン環であることが好ましい。
【0051】
12で表される2価の炭化水素基は、鎖状であっても環状であってもよいし、飽和炭化水素基であっても不飽和炭化水素基であってもよい。
上記2価の炭化水素基としては、上述した2価の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基が挙げられる。
なかでも、上記R12で表される2価の炭化水素基は、主鎖に柔軟性を付与できる点で、2価の脂肪族炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基であることが好ましく、2価の脂肪族炭化水素基であることがより好ましく、アルキレン基であることが更に好ましい。
【0052】
上記R12で表される2価の炭化水素基の炭素数は、好ましくは1~14であり、より好ましくは1~10であり、更に好ましくは1である。
【0053】
上記R12で表される2価の炭化水素基は、当該炭化水素基を構成する原子の少なくとも一つが、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、又は、ハロゲン原子に置換されていてもよい。
また、上記2価の炭化水素基は、アルコキシ基等の置換基を有していてもよい。
【0054】
13で表される置換基としては、水酸基、又は、炭素数1~20の有機基が挙げられる。
【0055】
上記有機基の炭素数は、好ましくは1~15であり、より好ましくは1~10であり、更に好ましくは1~3である。
【0056】
上記有機基としては、1価の炭化水素基、又は、1価の炭化水素基と-O-、-CO-、-COO-、-NH-、-SO-、-SO-若しくは2価の炭化水素基との組み合わせからなる基が挙げられる。
上記1価の炭化水素基としては、上述した2価の炭化水素基に水素原子が付加した1価の基が挙げられ、例えば、アルキル基、アルケニル基等の1価の脂肪族炭化水素基、シクロアルキル基等の1価の脂環式炭化水素基、アリール基、ビフェニル基等の1価の芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0057】
なかでも、硬化性が良好である点で、R13で表される置換基は、-OH、-O-CH-(CO)、-CRc1c2-(C)-O-CH-(CO)、-CRc3c4-(C)-OH(式中、Rc1~Rc4は、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を表す。)、又は、炭素数1~20の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、炭素数1~20の脂肪族炭化水素基であることがより好ましく、炭素数1~10の脂肪族炭化水素基であることが更に好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
【0058】
上記一般式(6)において、aは、置換基R13の個数を表し、0~5の整数である。aは、0~3であることが好ましく、1~3であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。aが2以上の場合、すなわち、R13が2個以上ある場合、R13はそれぞれ互いに同一であっても、異なっていてもよい。
【0059】
14で表される2価の基としては、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基、-O-、-CO-、-COO-、-NH-、-S-、-SO-、-SO-、又は、これらの組み合わせからなる基が挙げられる。
【0060】
上記2価の炭化水素基としては、例えば、R12で表される2価の炭化水素基と同様の基が挙げられる。
上記2価の炭化水素基の炭素数は、好ましくは1~30であり、より好ましくは1~10であり、更に好ましくは1~3である。
【0061】
14で表される2価の基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルコキシ基、アルキル基等が挙げられる。
【0062】
14で表される2価の基としては、好ましくは、-O-、又は、-Rd1-O-(Rd1は、炭素数1~10の2価の有機基を表す。)が挙げられ、より好ましくは、-O-が挙げられる。
【0063】
上記一般式(6)において、Rは、水素原子であることが好ましい。
【0064】
上記樹脂(X1)は、1種又は2種以上の上記構造単位(A)を有していてもよい。
上記樹脂(X1)が上記構造単位(A)を有する場合、その含有割合は、屈折率がより高くなるとともに、現像性が良好になる点で、樹脂の全構造単位100モル%に対して、好ましくは1~99モル%であり、より好ましくは20~95モル%であり、更に好ましくは40~90モル%である。
【0065】
上記樹脂(X1)が、上記一般式(2)で表される構造を有する場合、下記一般式(7)で表される構造単位(B)を有することが好ましい。
【0066】
【化8】
【0067】
(式中、Aは、ベンゼン環又はナフタレン環を表す。R15は、炭素数1~20の2価の炭化水素基を表す。R16は、Aに結合する置換基を表す。bは、R16の個数を表し、0~5の整数である。R17は、2価の基を表す。R及びRは、上記一般式(2)と同じである。)
【0068】
上記一般式(7)において、Aはベンゼン環であることが好ましい。
【0069】
上記一般式(7)において、R15で表される炭素数1~20の2価の炭化水素基としては、上述した一般式(6)のR12と同じものが挙げられる。
【0070】
上記一般式(7)において、R16で表される置換基としては、上述した一般式(6)のR13と同じものが挙げられる。
【0071】
上記一般式(7)において、R17で表される2価の基としては、上述した一般式(6)のR14と同じものが挙げられる。
【0072】
上記一般式(7)において、Rは水素原子であることが好ましい。
【0073】
上記一般式(7)において、bは、置換基R16の個数を表し、0~5の整数である。bは、0~3であることが好ましく、1~3であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。bが2以上の場合、すなわち、R16が2個以上ある場合、R16はそれぞれ互いに同一であっても、異なっていてもよい。
【0074】
上記樹脂(X1)は、1種又は2種以上の上記構造単位(B)を有していてもよい。
本開示の樹脂が上記構造単位(B)を有する場合、その含有割合は、硬化物の密着性や耐溶剤性が良好になる点で、樹脂の全構造単位100モル%に対して、好ましくは0.1~99モル%であり、より好ましくは1~80モル%であり、更に好ましくは5~50モル%である。
【0075】
上記樹脂(X1)が、上記一般式(3)で表される構造を有する場合、下記一般式(8)で表される構造単位(C)を有することが好ましい。
【0076】
【化9】
【0077】
(式中、Aは、ベンゼン環又はナフタレン環を表す。R18は、炭素数1~20の2価の炭化水素基を表す。R19は、Aに結合する置換基を表す。cは、R19の個数を表し、0~5の整数である。R20は、2価の基を表す。)
【0078】
上記一般式(8)において、Aはベンゼン環であることが好ましい。
【0079】
上記一般式(8)において、R18で表される炭素数1~20の2価の炭化水素基としては、上述した一般式(6)のR12と同じものが挙げられる。
【0080】
上記一般式(8)において、R19で表される置換基としては、上述した一般式(6)のR13と同じものが挙げられる。
【0081】
上記一般式(8)において、R20で表される2価の基としては、上述した一般式(6)のR14と同じものが挙げられる。なかでも、上記2価の基は、-O-Re1-(Re1は、2価の炭化水素基を表し、好ましくは2価のアルキレン基を表し、より好ましくは炭素数1~5のアルキレン基を表す。)が好ましい。
【0082】
上記一般式(8)において、cは、置換基R19の個数を表し、0~5の整数である。cは、0~3であることが好ましく、1~3であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。cが2以上の場合、すなわち、R19が2個以上ある場合、R19はそれぞれ互いに同一であっても、異なっていてもよい。
【0083】
上記樹脂(X1)は、1種又は2種以上の上記構造単位(C)を有していてもよい。
上記樹脂(X1)が上記構造単位(C)を有する場合、その含有割合は、硬化物の耐溶剤性や保存安定性の観点から、樹脂の全構造単位100モル%に対して、好ましくは0.1~99モル%、より好ましくは1~80モル%、更に好ましくは10~40モル%である。
【0084】
上記樹脂(X1)は、また、下記一般式(9)で表される構造単位(D)を有していてもよい。上記構造単位(D)の導入により鎖延長を行うことで、樹脂を任意の分子量に設計することができる。
【0085】
【化10】
【0086】
上記一般式(9)中、Lは、直接結合又は連結基を表す。R21及びR22は、同一又は異なって置換基を表す。dは、R21の個数を表し、0~4の整数である。eは、R22の個数を表し、0~4の整数である。R21及びR22が複数の場合、それぞれ互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0087】
上記連結基としては、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基や、-O-、-CO-、-S-、-SO-、-SO-、-NH-等の2価の結合、又は、それらの組合せが挙げられる。
【0088】
上記アルキレン基は、炭素数1~20のアルキレン基であることが好ましく、炭素数1~10のアルキレン基であることがより好ましい。また、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。
【0089】
上記アルキレン基、及び、アリーレン基は、置換基を有していてもよい。上記置換基としては、特に限定されず、例えば、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、又は、アルキル基が挙げられる。
【0090】
21及びR22で表される置換基としては、炭化水素基が好ましく、炭素数1~10の炭化水素基がより好ましく、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基が更に好ましい。
【0091】
dは、R21の個数を表し、0~4の整数であり、好ましくは0~2の整数であり、より好ましくは0又は2である。
【0092】
eは、R22の個数を表し、0~4の整数であり、好ましくは0~2の整数であり、より好ましくは0又は2である。
【0093】
上記式(9)で表される構造単位(D)は、ビスフェノールA、ビスフェノールAP、ビスフェノールAF、ビスフェノールB、ビスフェノールBP、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールG、ビスフェノールM、ビスフェノールS、ビスフェノールP、ビスフェノールPH、ビスフェノールTMC、ビスフェノールZ、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレンから選択されるいずれか1種のビスフェノール化合物由来の構造単位であることが好ましく、ビスフェノールS、ビスフェノールA、又は、ビスフェノールF由来の構造単位であることがより好ましく、ビスフェノールS由来の構造単位であることが更に好ましい。
【0094】
上記構造単位(D)としては、好ましくは、下記式(9-1)、(9-2)、又は(9-3)で表される構造単位が挙げられる。
【0095】
【化11】
【0096】
上記樹脂(X1)が上記構造単位(D)を有する場合、その含有割合は、全構造単位100モル%に対して、好ましくは0.1~10モル%であり、より好ましくは0.2~5モル%であり、更に好ましくは0.5~2モル%である。
【0097】
上記樹脂(X1)の酸価は、30mgKOH/g未満であることが好ましい。上記酸価が上述の範囲であると、樹脂の保存安定性が良好になる。上記樹脂の酸価は、保存安定性がより一層優れる点で、25mgKOH/g以下であることが好ましく、10mgKOH/g以下であることがより好ましく、1mgKOH/g以下であることが更に好ましい。
上記酸価は、水酸化カリウム(KOH)溶液を用いた中和滴定法により測定して得られる、樹脂固形分1gあたりの酸価であり、具体的には、後述する実施例に記載の方法により求めることができる。
【0098】
また、上記一般式(1)で表される芳香環含有構造を有する樹脂(X)としては、例えば、下記一般式(4)で表される樹脂(X2)が挙げられる。金属酸化物粒子との相溶性が良好である点で、樹脂(X2)が好ましい。
【0099】
【化12】
(式中、Rは、置換基を有していてもよい芳香族基を表す。R及びRは、同一又は異なって、水素原子又はカルボキシル基含有基を表す。Aは、2価の有機基を表す。Rは、有機基を表す。nは、0又は1を表す。)
【0100】
上記一般式(4)中のRは、上記一般式(1)中のRと同じである。上記一般式(4)中のR及びRは、上記一般式(1)のRと同じである。
【0101】
上記一般式(4)中のRは、有機基を表す。Rで表される有機基としては、例えば、炭化水素基、又は、炭化水素基と-O-、-CO-、-COO-、-NH-、-S-、-SO-もしくは-SO-との組み合わせからなる基が挙げられる。上記有機基の炭素数は、好ましくは1~30であり、より好ましくは2~20である。
なかでもRは、好ましくはエポキシ基、-S-R又は重合性二重結合含有基を表す。Rは、置換基を有していてもよい芳香族基を表す。これらの基を有することにより、樹脂に光架橋性又は熱架橋性を付与したり、樹脂の屈折率を高めたりすることができる。
で表される置換基を有していてもよい芳香族基としては、上述したRで表されるものと同様の基が挙げられる。
nが0である場合、Rはエポキシ基を表すことが好ましい。
【0102】
上記重合性二重結合含有基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、メタリル基等の重合性二重結合基を含む基が挙げられる。なかでも、(メタ)アクリロイル基を含む基が好ましい。
上記重合性二重結合含有基としては、好ましくは-Rf1-Rf2(式中、Rf1は、直接結合又は2価の基を表す。Rf2は、上記重合性二重結合基を表す。)が挙げられる。上記2価の基としては、上述したR14で表される2価の基と同様の基が挙げられる。
上記重合性二重結合含有基としては、より好ましくは-O-CO-CRf3=CH(Rf3は、水素原子又はメチル基を表す。)が挙げられる。
【0103】
上記Aで表される2価の有機基としては、上述した2価の有機基が挙げられる。なかでも、上記Aで表される2価の有機基は、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基、又は、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基と-O-、-CO-及び-SO-からなる群より選択される少なくとも一種の結合基との組み合わせからなる2価の基であることが好ましい。
【0104】
上記2価の炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は、これらの組み合わせからなる炭化水素基が挙げられる。上記組み合わせからなる炭化水素基としては、ビフェニレン、フルオレン等の多環化合物から水素原子を2個除いて形成される2価の基が挙げられる。
上記置換基としては、上述した置換基が挙げられる。
【0105】
なかでも、上記Aで表される2価の有機基としては、下記一般式(5)で表される2価の基であることが好ましい。
【0106】
【化13】
【0107】
(式中、R及びR11は、同一又は異なって、芳香族基を含む2価の有機基を表す。R及びR10は、同一又は異なって、水素原子又はカルボキシル基含有基を表す。Rは、芳香族基を含む2価の有機基を表す。mは、1以上の整数を表す。)
【0108】
上記R及びR11で表される芳香族基を含む2価の有機基における芳香族基としては、上述した芳香族基と同様の基が挙げられる。
【0109】
なかでも上記R及びR11で表される芳香族基を含む2価の有機基としては、例えば、下記一般式(10)で表される2価の基が挙げられる。
【0110】
【化14】
(式中、Arは、アリーレン基を表す。R23は、直接結合、又は、2価の環式炭化水素基を表す。R24及びR25は、同一又は異なって、該Arに結合する置換基を表す。f及びgは、同一又は異なって、0~4の整数を表す。Rg1及びRg2は、同一又は異なって、直接結合又は2価の有機基を表す。)
【0111】
上記一般式(10)においてArは、フェニレン基、ナフチレン基、フェナントリレン基等のアリーレン基を表す。なかでも、溶媒への溶解性が良好な点で、フェニレン基、ナフチレン基が好ましい。
【0112】
上記R23で表される2価の環式炭化水素基としては、例えば、2価の脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、又はこれらの組み合わせからなる環式炭化水素基等が挙げられる。
上記2価の脂環式炭化水素基としては、シクロアルキレン基等が挙げられる。
上記2価の芳香族炭化水素基としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン等の芳香族炭化水素化合物から2つの水素原子を除いた2価の基が挙げられる。
上記2価の脂環式炭化水素基と芳香族炭化水素基との組み合わせからなる基としては、上述した脂環式炭化水素基と芳香族炭化水素基が結合又は縮合して形成される環式炭化水素基であって、例えば、フルオレン等の縮合炭化水素化合物から水素原子を2個除いて形成される2価の基等が挙げられる。
なかでも、R23は、屈折率がより高くなる点で、フルオレン等の縮合炭化水素化合物から水素原子を2個除いて形成される2価の基であることが好ましく、下記一般式(11)で表される構造がより好ましく挙げられる。
【0113】
【化15】
【0114】
(式(11)中、Xは、直接結合、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子、又はセレン原子を表す。Rx1及びRx2は、同一又は異なって、水素原子又は置換基を表す。)
上記一般式式(11)中、Xは、直接結合、酸素原子、硫黄原子であることが好ましく、入手が容易な点から直接結合であることがより好ましい。
x1及びRx2で表される置換基としては、上述した置換基が挙げられる。
x1及びRx2は、水素原子であることが好ましい。
上記一般式(11)中、*は、隣接するArとの結合部位を表す。
【0115】
上記R24及びR25で表される置換基としては、上述した置換基が挙げられるが、なかでも炭化水素基が好ましく、炭素数1~10の炭化水素基がより好ましく、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基が更に好ましい。
【0116】
fは、R24の個数を表し、0~4の整数であり、好ましくは0~2の整数であり、より好ましくは0又は2である。
【0117】
gは、R25の個数を表し、0~4の整数であり、好ましくは0~2の整数であり、より好ましくは0又は2である。
【0118】
上記一般式(10)におけるRg1及びRg2は、同一又は異なって、直接結合又は有機基を表す。
g1及びRg2で表される2価の有機基としては、上述した2価の有機基が挙げられるが、なかでも、炭化水素基、又は、炭化水素基と-O-とからなる基が好ましく、-(Rg3O)-(Rg3は、炭素数1~10のアルキレン基を表す。mは1以上の整数を表す。)で表される基がより好ましい。
g1及びRg2は、同一又は異なって、直接結合又は上記-(Rg3O)-で表される基が更に好ましく、直接結合が特に好ましい。
【0119】
上記R及びR11で表される芳香族基を含む2価の有機基の割合は、上記樹脂(X2)100質量%に対して、好ましくは1~90質量%であり、より好ましくは20~80質量%であり、更に好ましくは40~70質量%である。
【0120】
上記R及びR10で表されるカルボキシル基含有基としては、上述したRで表されるカルボキシル基含有基と同様の基が挙げられる。
【0121】
は、芳香族基を含む2価の有機基を表す。上記芳香族基としては、上述した芳香族基と同様の基が挙げられる。なかでも、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基が好ましい。
上記芳香族基を含む2価の有機基としては、-SO-もしくは-C(CH-と芳香族基とを含む基、又は、カルド構造を含む基が好ましく、より好ましくは、下記一般式(12)で表される基が挙げられる。
【0122】
【化16】
【0123】
(式中、Yは、-SO-、-C(CH-、又は上記一般式(11)で表される構造を表す。R26は、酸素原子、-COO-又は-NH-を表す。R27及びR28は、同一又は異なって、置換基を表す。h及びiは、同一又は異なって、0~4の整数を表す。)
Yは、-SO-、-C(CH-、又は上記一般式(11)で表される構造を表し、樹脂の屈折率がより一層高い点で、-SO-であることが好ましい。
【0124】
27及びR28で表される置換基は、上述したR24及びR25で表される置換基と同様の基が挙げられる。
hは、置換基R27の個数を表し、好ましくは0~4の整数、より好ましくは0~2の整数、更に好ましくは0又は2である。
iは、置換基R28の個数を表し、好ましくは0~4の整数、より好ましくは0~2の整数、更に好ましくは0又は2である。
【0125】
で表される芳香族基を含む2価の有機基の割合は、上記樹脂(X2)100質量%に対して、好ましくは1~70質量%であり、より好ましくは3~50質量%であり、更に好ましくは5~20質量%である。
【0126】
上記一般式(5)において、mは、1以上の整数を表す。上記樹脂(X2)が溶剤への溶解性が良好な点で、mは、1~5であることが好ましく、1~4であることがより好ましく、1~3であることが更に好ましい。mは、繰り返し単位数の平均値を表す。
【0127】
上記樹脂(X2)の酸価は、30mgKOH/g以上であることが好ましい。上記酸価が上述の範囲であると、樹脂にアルカリ可溶性を付与できる。上記樹脂(X2)の酸価は、現像性に優れる点で、40mgKOH/g以上であることがより好ましく、50mgKOH/g以上であることが更に好ましく、60mgKOH/g以上であることが特に好ましい。また、上記酸価は、アルカリ現像液によって露光部分が侵食されにくくなる点で、200mgKOH/g以下であることが好ましく、180mgKOH/g以下であることがより好ましく、150mgKOH/g以下であることが更に好ましい。
上記酸価は、上述した樹脂(X1)の酸価と同様の方法により求めることができる。
【0128】
上記樹脂(X)の二重結合当量は、200~20000g/当量であることが好ましい。二重結合当量が上記範囲であると、耐溶剤性や密着性を向上できる。上記樹脂の二重結合当量は、硬化性、保存安定性、耐溶剤性や密着性の観点から300~10000g/当量であることが好ましく、400~5000g/当量であることがより好ましく、500~3000g/当量であることが更に好ましい。
【0129】
上記二重結合当量は、上記樹脂の重合性不飽和結合1molあたりの樹脂溶液の固形分の質量である。本明細書において、上記二重結合は、重合性二重結合を意味する。上記樹脂溶液の固形分の質量とは、上記樹脂を構成する単量体成分の質量である。上記二重結合当量は、樹脂溶液の樹脂固形分の質量(g)を樹脂の重合性不飽和結合量(mol)で除することにより、求めることができる。また、JIS K 0070:1992に記載のよう素価の試験方法に準拠して、アルカリ可溶性樹脂1gあたりに含まれるエチレン性二重結合の数を測定することにより算出することができる。
【0130】
上記樹脂(X)のエポキシ当量は、200~20000g/当量であることが好ましい。エポキシ当量が上記範囲であると、耐溶剤性と保存安定性のバランスが良好となる。上記エポキシ当量は、保存安定性、現像性、耐溶剤性の点から、500~4000g/当量であることが好ましく、700~3000g/当量であることがより好ましく、900~2500g/当量であることが更に好ましい。上記エポキシ当量は、樹脂固形分量を樹脂中に含まれるエポキシ基のモル数で除すことで求めることができる。また、上記エポキシ当量は、JIS K7236:2001に準拠した方法で求めることができる。
【0131】
上記樹脂(X)の重量平均分子量は、1000~100000であることが好ましい。上記アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、耐溶剤性が良好である点で、2000~30000であることがより好ましく、3000~20000であることが更に好ましく、4000~10000であることが特に好ましい。
上記重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー法(GPC)により求めることができる。
【0132】
上記樹脂(X)のガラス転移温度(Tg)は、硬化物強度と現像性の観点から、好ましくは0~300℃であり、より好ましくは10~250℃であり、更に好ましくは60~200℃である。
上記ガラス転移温度は、JIS-K7121に準拠した方法により求めることができる。
【0133】
上記樹脂(X)の屈折率は、好ましくは1.60以上であり、より好ましくは1.62以上であり、更に好ましくは1.64以上である。上記屈折率は、実施例に記載の方法により求めることができる。
【0134】
<樹脂(X)の製造方法>
本開示の樹脂(X)の製造方法としては、上述した樹脂が得られるのであれば、特に限定されないが、効率良く製造することができる点で、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(a)に芳香族基含有化合物(b)を反応させる工程(1)を有することが好ましい。
【0135】
上記樹脂(X)の製造方法において、出発原料となる1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(a)としては、特に限定されず、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する公知のエポキシ樹脂であればいずれも用いることができ、例えば、上記樹脂(X1)を製造する場合は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;テトラグリシジルアミノジフェニルメタン等の多官能性グリシジルアミン樹脂;テトラフェニルグリシジルエーテルエタン等の多官能性グリシジルエーテル樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン含有ノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、ナフトール等のフェノール化合物と、フェノール性ヒドロキシル基を有する芳香族アルデヒドとの縮合反応により得られるポリフェノール化合物と、エピクロルヒドリンとの反応物;フェノール化合物とジビニルベンゼンやジシクロペンタジエン等のジオレフィン化合物との付加反応により得られるポリフェノール化合物と、エピクロルヒドリンとの反応物;4-ビニルシクロヘキセン-1-オキサイドの開環重合物を過酸でエポキシ化したもの;トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環を有するエポキシ樹脂;等が挙げられる。また、これらのエポキシ樹脂の2分子以上を、多塩基酸、ポリフェノール化合物、多官能アミノ化合物あるいは多価チオール等の鎖延長剤との反応によって結合して鎖延長したものも使用できる。あるいは、グリシジル(メタ)アクリレートや3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートのようなエポキシ基を有する単量体の単独重合体や共重合体であってもよい。なかでも、屈折率が高い点で、ノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
これらのエポキシ樹脂は、ハロゲン原子、アルキル基、アルキレン基、シクロアルキレン、アリーレン基、シアノ基等の置換基を有していてもよい。
【0136】
上記樹脂(X2)を製造する場合は、上記エポキシ樹脂(a)として、2官能エポキシ樹脂を使用することが好ましい。
上記2官能エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型2官能エポキシ樹脂、フルオレン型2官能エポキシ樹脂、バイノール型2官能エポキシ樹脂(例えば、2,2’-ジグリシジルオキシ-1,1’-ビナフタレン(バイノール、スガイ化学工業社製))、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、デナコールEX-810、EX-810P、EX-850、EX-851、EX-821、EX-830、EX-832、EX-841、EX-861、いずれもナガセケムテック社製)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(例えば、デナコールEX-211、EX-212、いずれもナガセケムテック社製)、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(例えば、デナコールEX-214、ナガセケムテック社製)、レゾルシノールジグリシジルエーテル(例えば、デナコールEX-201、ナガセケムテック社製)、結晶性エポキシ樹脂(例えば、YDC-1312、YSLV-70XY、YSLV-80XY、YSLV-120TE、いずれも日鉄ケミカル&マテリアル社製)等が挙げられる。エポキシ樹脂(a)は、1種のみ使用してもよいし、2種以上使用してもよい。なかでも、屈折率が高い点で、上記2官能エポキシ樹脂としては、ビスフェノール型2官能エポキシ樹脂、フルオレン型2官能エポキシ樹脂が好ましく、フルオレン型2官能エポキシ樹脂がより好ましい。
【0137】
上記ビスフェノール型2官能エポキシ樹脂としては、例えば、4,4’-ビフェニルジイルビス(グリシジルエーテル)、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ビス(グリシジルオキシ)-1,1’-ビフェニル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル(例えば、デナコールEX-252、ナガセケムテック社製)等が挙げられる。
【0138】
上記フルオレン型2官能エポキシ樹脂としては、フルオレン骨格を有する2官能エポキシ樹脂が挙げられ、例えば、OGSOL PG-100、OGSOL CG-500、OGSOL EG-200、OGSOL EG-280(以上、大阪ガスケミカル社製)、TBIS-GG、TBIS-RXG(以上、田岡化学工業社製)等のフルオレン型2官能エポキシ樹脂が挙げられる。
【0139】
上記フルオレン型2官能エポキシ樹脂としては、上記以外にも、例えば、ビスフェノールフルオレン化合物をエピハロヒドリンと反応させて得ることができるものが挙げられる。
【0140】
ビスフェノールフルオレン化合物の具体例としては、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(5-ヒドロキシ-1-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フルオロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)フルオレン、それらの類似化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0141】
エピハロヒドリンの具体例としては、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、それらの類似化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0142】
上記フルオレン型2官能エポキシ樹脂の具体例としては、例えば、9,9-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)フルオレンや9,9-ビス(6-グリシジルオキシナフチル)フルオレン等が挙げられる。
【0143】
上記フルオレン型2官能エポキシ樹脂としてはまた、例えば、特開平10-36485号公報、特開平10-45871号公報、特開2009-155256号公報、特表2020-537184号公報、特表2018-531311号公報に記載のフルオレン骨格を有する2官能エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0144】
なかでも、上記フルオレン型2官能エポキシ樹脂は、屈折率がより一層高い点で、9,9-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)フルオレン等のフェニルフルオレン骨格を有するもの、9,9-ビス(6-グリシジルオキシナフチル)フルオレン等のナフチルフルオレン骨格を有するものがより好ましく、上記ナフチルフルオレン骨格を有するものが更に好ましい。
【0145】
上記2官能エポキシ樹脂のエポキシ当量は、屈折率が高い点で、150~500g/当量の範囲であることが好ましく、200~400g/当量の範囲であることがより好ましく、250~350g/当量の範囲であることが更に好ましい。
【0146】
芳香族基含有化合物(b)としては、芳香族基を有し、かつ、エポキシ基と反応しうる基を有する化合物であれば特に限定されず、上述した芳香族化合物等が挙げられる。
上記芳香族基としては、上述した置換基を有していてもよい芳香族基が挙げられる。
上記エポキシ基と反応しうる基としては、酸性基、アミノ基、水酸基等が挙げられる。上記酸性基としては、カルボキシル基、フェノール性水酸基、メルカプト基等が挙げられ、好ましくはフェノール性水酸基、メルカプト基が挙げられる。
芳香族基含有化合物(b)は、1種又は2種以上を用いることができるが、本開示では、少なくともメルカプト基等の硫黄原子を含む酸性基を有する化合物を使用する。芳香族基含有化合物(b)の具体例としては、ベンゼンチオール、トルエンチオール等のチオフェノール誘導体や、ナフタレンチオール等のチオナフトール誘導体が好ましく挙げられる。
【0147】
エポキシ樹脂(a)に芳香族基含有化合物(b)を反応させる場合、芳香族基含有化合物(b)の添加量は、エポキシ樹脂(a)のエポキシ基1化学当量(モル当量)に対し、芳香族基含有化合物(b)中の酸基が0.1~0.99モルとなるように仕込んで反応させることが好ましく、0.4~0,95モルがより好ましく、0.6~0.9モルが更に好ましい。
【0148】
また、上記反応工程(1)において、エポキシ樹脂(a)にモノカルボン酸やリン酸、フェノール類等の酸化合物や、アミン化合物に代表される塩基性化合物等を反応させてもよい。エポキシ樹脂(a)に、このようなエポキシ基と反応できる化合物を反応させることにより、エポキシ基の量を調整することができる。上記エポキシ基と反応できる化合物としては、特に限定されないが、なかでも、エポキシ基の量の調整が容易である点で、モノカルボン酸(c)が好ましい。
【0149】
モノカルボン酸(c)としては、アルキルモノカルボン酸(c-1)や、不飽和モノカルボン酸(c-2)が挙げられる。なかでも、樹脂の側鎖に重合性二重結合を導入することができ、樹脂の硬化性を向上させることができる点で、不飽和モノカルボン酸(c-2)が好ましい。例えば、上述した一般式(2)で表される構造を有し、側鎖末端に重合性二重結合を有する樹脂とすることができる。
【0150】
アルキルモノカルボン酸(c-1)としては、例えば、プロピオン酸、酢酸、酪酸、デカン酸、2-エチルヘキシルカルボン酸等が挙げられる。アルキルモノカルボン酸(c-1)を使用することで、樹脂の二重結合当量やエポキシ当量、ガラス転移温度等を調整することができる。なかでも、反応性が良好である点で、炭素数1~30のものが好ましく、炭素数1~20のものがより好ましく、炭素数2~10のものが更に好ましい。
【0151】
不飽和モノカルボン酸(c-2)としては、ビニル基、アクリロイル基等の重合性不飽和結合とカルボキシル基とを有するものであれば特に限定されないが、炭素数3~20のものが好ましい。より好ましくは、炭素数3~10のものであり、更に好ましくは、炭素数3~4のものである。
【0152】
不飽和モノカルボン酸(c-2)としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、β-アクリロキシプロピオン酸、1個のヒドロキシル基と1個の(メタ)アクリロイル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと二塩基酸無水物との反応物、1個のヒドロキシル基と2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートと二塩基酸無水物との反応物等が挙げられる。なかでも好ましいのは、アクリル酸、メタクリル酸等の(メタ)アクリロイル基を有するものである。特に樹脂が耐溶剤性に優れた硬化物を与える点からは、メタクリル酸が特に好ましい。これらは、1種又は2種以上を用いることができる。
【0153】
芳香族基含有化合物(b)及びモノカルボン酸(c)の添加は、一括で添加しても、分割又は逐次添加してもよいが、副反応を抑制することができる点で、分割又は逐次添加が好ましい。
【0154】
上記反応工程(1)においては、エポキシ樹脂(a)のエポキシ基1モルに対し、芳香族基含有化合物(b)及びモノカルボン酸(c)の総使用量を0.3~1.3モルとすることが好ましい。このような割合で使用することで、得られる最終的に得られる樹脂の硬化性、硬化物の物性を良好なものとしやすくなる。好ましくは0.85~1.15モル、より好ましくは0.9~1.1モルである。
【0155】
上記反応工程(1)は、反応槽を窒素等の不活性ガスで置換し、酸素濃度を低くして行うことにより、反応速度を速めることができる。上記反応工程(1)における反応槽の酸素濃度は、1体積%以下であることが好ましく、0.5体積%以下であることがより好ましく、0.3体積%以下であることが更に好ましい。反応溶液中の酸素濃度を低くするために、溶液を窒素等の不活性ガスでバブリングすることも好ましい。
【0156】
エポキシ樹脂(a)に対する芳香族基含有化合物(b)とモノカルボン酸(c)の反応は、いずれを先に行っても、同時に反応させてもよい。
これらの反応は、後述する重合性化合物や溶剤等の希釈剤の存在下あるいは非存在下で、ハイドロキノンや酸素等の重合禁止剤、および三級アミン、トリメチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の三級ホスフィン、塩化リチウム、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩等の反応触媒の共存下、通常80~130℃で行うことができる。
反応触媒としては、反応効率、反応中の安定性、樹脂の保存安定性の点から三級ホスフィンが好ましく、特にトリフェニルホスフィンが好ましい。
【0157】
上記反応触媒の量は、特に限定されないが、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(a)100質量部に対して、0.05~5質量部であることが好ましい。より好ましくは、0.1~3質量部であり、更に好ましくは、0.2~2質量部である。
【0158】
また上記反応工程(1)においては、重合禁止剤を用いてもよい。重合禁止剤としては、特に限定されず、公知のものを使用することができ、例えば、ベンゾキノン、ヒドロキノン類(例えば、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、p-tert-ブチルヒドロキノン、p-ベンゾキノン等)、フェノール類(例えば、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、6-t-ブチル-2,4-ジメチルフェノール、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)等)、カテコール類(例えば、p-tert-ブチルカテコール等)、アミン類(例えば、N,N-ジエチルヒドロキシルアミン等)、1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル、トリ-p-ニトロフェニルメチル、フェノチアジン、ピペリジン1-オキシル類(例えば、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル等)、酸素等を用いることができる。
【0159】
上記反応工程において上記重合禁止剤を使用する場合、重合禁止剤の使用量は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(a)100質量%に対して、0.001~1質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.01~0.5質量%である。
【0160】
上記反応は溶媒中で行ってもよく、反応溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素類;セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類;セロソルブアセテート、カルビトールアセテート、(ジ)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、グルタル酸(ジ)メチル、コハク酸(ジ)メチル、アジピン酸(ジ)メチル等のエステル類;メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等のケトン類;(ジ)エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類等が挙げられる。
【0161】
上記反応工程の反応温度は、反応が進行する限り特に制限されないが、80~140℃が好ましい。このような温度で行うことで、反応を効率的に進めることができる。反応温度は、より好ましくは、85~135℃であり、更に好ましくは、90~130℃である。
【0162】
また、上記樹脂(X1)が上記構成単位(D)を有する場合は、例えば、上記反応工程(1)の前に、予めエポキシ樹脂(a)と上記構成単位(D)を導入しうる化合物とを反応させることにより、エポキシ樹脂(a)を鎖延長させておき、鎖延長したエポキシ樹脂(a)を、上記反応工程(1)に供することで、上記構成単位(D)を有する樹脂(X1)を製造することができる。
【0163】
上記構成単位(D)を導入しうる化合物としては、例えば、上述した構成単位(D)の由来となるビスフェノール化合物が挙げられる。
【0164】
また、上記樹脂(X2)が上記一般式(5)で表される構造を有する場合もまた、上記反応工程(1)の前に、エポキシ樹脂(a)と上記一般式(5)中のRを導入しうる化合物とを反応させることにより、エポキシ樹脂(a)を鎖延長させておき、鎖延長したエポキシ樹脂(a)を、上記反応工程(1)に供することで、上記構造を有する樹脂(X2)を製造することができる。上記一般式(5)中のRを導入しうる化合物としては、例えば、上述した構成単位(D)の由来となるビスフェノール化合物と同じ化合物が挙げられる。
【0165】
上記反応においては、反応触媒を使用してもよい。当該反応において使用する反応触媒としては、上述した工程(1)で使用する触媒と同様のものが挙げられる。
【0166】
上記一般式(1)で表される芳香環含有構造、又は、上記一般式(2)で表される構造において、Rがカルボキシル基含有基である場合、あるいは、上記一般式(4)におけるR又はRがカルボキシル基含有基である場合は、上記製造方法は、上述した工程(1)の後に、上記工程(1)で得られた反応生成物に多塩基酸無水物(d)を反応させる工程(2)を含む方法が好ましい。
【0167】
工程(2)では、上記工程(1)で得られた反応生成物に多塩基酸無水物(d)を反応させる。このような反応により、多塩基酸無水物(d)が上記反応生成物に存在するヒドロキシル基と反応して、カルボキシル基が導入された樹脂(X)が得られる。そのような樹脂(X)は、アルカリ現像が可能となるので、画像形成用等のアルカリ現像型硬化樹脂として使用することができる。
【0168】
工程(2)で使用する多塩基酸無水物(d)としては、特に限定されないが、炭素数3~30のものが好ましい。より好ましくは炭素数4~20のものであり、更に好ましくは炭素数4~10のものである。
【0169】
多塩基酸無水物(d)としては、無水フタル酸、無水コハク酸、オクテニル無水コハク酸、ペンタドデセニル無水コハク酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、3,6-エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、トリメリット酸等の二塩基酸無水物;ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族あるいは芳香族四塩基酸二無水物等が挙げられる。これらの多塩基酸無水物は、1種または2種以上を使用することができる。これらの中でも、二塩基酸無水物を用いることが好ましい。また得られる樹脂(X)を耐溶剤性に特に優れた硬化物を与えるものとする点からは、無水フタル酸等のような、樹脂(X)が構造中に環状構造を有するものとなるような多塩基酸無水物が特に好ましい。
【0170】
工程(2)では、多塩基酸無水物(d)を、工程(1)で得られた反応生成物のヒドロキシル基1化学当量に対して、好ましくは1~99モル、より好ましくは20~80モルの割合で反応させる。このように多塩基酸無水物(d)を反応させることにより、多塩基酸無水物(d)の付加反応を効率的に行うことができ、また得られる樹脂(X)にカルボキシル基を好適に導入することができる。
【0171】
工程(2)における工程(1)で得られた反応生成物と多塩基酸無水物(d)との反応は、工程(1)の反応と同様に、後述する重合性化合物や溶媒等の希釈剤の存在下あるいは非存在下で、必要に応じて上述した重合禁止剤や反応触媒の共存下で行うことができる。
工程(2)においては、反応触媒を使用してもよく、三級ホスフィンが好ましく、トリフェニルホスフィンがより好ましい。
【0172】
工程(2)における反応温度は、反応が進行する限り特に制限されないが、45~130℃が好ましい。このような温度で行うことで、反応を効率的に進めることができる。反応温度は、より好ましくは、50~120℃であり、さらに好ましくは55~110℃である。
【0173】
上記樹脂(X)の製造方法は、上述した反応工程以外の他の工程を含んでいてもよい。他の工程としては、例えば、熟成工程、中和工程、希釈工程、乾燥工程、濃縮工程、精製工程等が挙げられる。これらの工程は、公知の方法により行うことができる。
【0174】
<バインダー樹脂>
本開示の樹脂(X)は、アルカリ可溶性樹脂と組み合わせて、バインダー樹脂とすることができる。
上記樹脂(X)は、単独でも使用できるが、1種又は2種以上のアルカリ可溶性樹脂と混合することで、アルカリ可溶性の樹脂として使用することができる。
このような上記樹脂(X)とアルカリ可溶性樹脂とを含むバインダー樹脂も本開示の好ましい形態の一つである。
【0175】
上記アルカリ可溶性樹脂としては、酸基を有し、アルカリ溶液に可溶である公知の樹脂であれば特に限定されない。また、後述するアルカリ可溶性樹脂を用いてもよい。
【0176】
バインダー樹脂とする場合の、上記樹脂(X)とアルカリ可溶性樹脂との混合割合は、特に限定されず、用途等に応じて適宜決定するとよいが、組成物の屈折率を向上させる点で、上記樹脂(X)の含有割合は、上記樹脂(X)とアルカリ可溶性樹脂の合計質量100質量%に対して、好ましくは1~99質量%であり、より好ましくは10~80質量%であり、更に好ましくは20~50質量%である。
【0177】
2.アルカリ可溶性樹脂
本開示においてはまた、下記一般式(13)で表される構造を有し、二重結合当量が8000g/当量超であり、エポキシ当量が10000g/当量超であることを特徴とするアルカリ可溶性樹脂(以下、「アルカリ可溶性樹脂(Y)」とも称する。)も好ましい形態の一つである。
【0178】
【化17】
(式中、R29は、置換基を有していてもよい芳香族基を表す。R30は、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を表す。)
【0179】
上記アルカリ可溶性樹脂(Y)が高屈折率の硬化物を与えることができるのは、樹脂が原子屈折率の高い硫黄原子を介して芳香族基を有するためと考えられる。また、上記アルカリ可溶性樹脂(Y)は、エポキシ当量が特定範囲量であるためエポキシ基が非常に少なく、保存安定性にも優れる。また二重結合が特定範囲であるため、現像後のパターンの線太りも少ないという特長がある。
【0180】
上記一般式(13)において、R29で表される置換基を有していてもよい芳香族基としては、上述した一般式(1)中のRと同じものが挙げられる。
【0181】
30は、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を表す。
30で表される2価の炭化水素基としては、上述したR2a1で表される2価の炭化水素基と同じものが挙げられる。なかでも、R30で表される2価の炭化水素基は、合成安定性が良好である点で、2価の脂肪族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基であることが好ましく、2価の脂肪族炭化水素基であることがより好ましく、アルキレン基であることが更に好ましい。
【0182】
30で表される2価の炭化水素基の炭素数は、好ましくは2~20であり、より好ましくは2~8であり、更に好ましくは2である。
【0183】
30で表される2価の炭化水素基が有していてもよい置換基としては、カルボキシル基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0184】
上記一般式(13)で表される構造を有するアルカリ可溶性樹脂(Y)としては、例えば、下記一般式(14)で表される構造単位(A’)を有する樹脂が好ましく挙げられる。
【0185】
【化18】
【0186】
(式中、Aは、ベンゼン環又はナフタレン環を表す。R31は、炭素数1~20の2価の炭化水素基を表す。R32は、Aに結合する置換基を表す。jは、R32の個数を表し、0~5の整数である。R33は、2価の基を表す。R29及びR30は、それぞれ一般式(12)と同じである。)
【0187】
上記一般式(14)において、Aはベンゼン環であることが好ましい。
【0188】
上記一般式(14)において、R31で表される炭素数1~20の2価の炭化水素基としては、上述した一般式(6)のR12と同じものが挙げられる。
【0189】
上記一般式(14)において、R32で表される置換基としては、上述した一般式(6)のR13と同じものが挙げられる。
【0190】
上記一般式(14)において、R33で表される2価の基としては、上述した一般式(6)のR14と同じものが挙げられる。
【0191】
上記一般式(14)において、jは、置換基R32の個数を表し、0~5の整数である。jは、0~3であることが好ましく、1~3であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。jが2以上の場合、すなわち、R32が2個以上ある場合、R32はそれぞれ互いに同一であっても、異なっていてもよい。
【0192】
上記アルカリ可溶性樹脂(Y)は、1種又は2種以上の上記構造単位(A’)を有していてもよい。
上記アルカリ可溶性樹脂(Y)が上記構造単位(A’)を有する場合、その含有割合は、アルカリ可溶性樹脂(Y)の全構造単位100モル%に対して、好ましくは10~99モル%、より好ましくは30~95モル%、更に好ましくは60~80モル%である。
【0193】
上記アルカリ可溶性樹脂(Y)は、上述した上記一般式(13)で表される構造以外に、上述した樹脂(X)と同様の上記一般式(3)で表される構造を有していてもよい。また、下記一般式(15)で表される構造を有していてもよい。
【0194】
【化19】
【0195】
(式中、R34は、水素原子又は一般式(16)で表される基を表す。R35は、有機基を表す。R36は、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を表す。)
【0196】
35で表される有機基としては、上述した一般式(2)中のRで表される有機基と同じものが挙げられる。
【0197】
36で表される置換基を有していてもよい2価の炭化水素基としては、上述した一般式(13)中のR30で表される基と同じものが挙げられる。
【0198】
上記アルカリ可溶性樹脂(Y)が、上記一般式(15)で表される構造を有する場合、下記一般式(17)で表される構造単位(E)を有することが好ましい。
【0199】
【化20】
【0200】
(式中、Aはベンゼン環又はナフタレン環を表す。R37は、炭素数1~20の2価の炭化水素基を表す。R38は、Aに結合する置換基を表す。kは、R38の個数を表し、0~5の整数である。R39は、2価の基を表す。R34及びR35は、一般式(15)と同じである。)
【0201】
上記一般式(17)において、Aはベンゼン環であることが好ましい。
【0202】
上記一般式(17)において、R37で表される炭素数1~20の2価の炭化水素基としては、上述した一般式(6)のR12と同じものが挙げられる。
【0203】
上記一般式(17)において、R38で表される置換基としては、上述した一般式(6)のR13と同じものが挙げられる。
【0204】
上記一般式(17)において、R39で表される2価の基としては、上述した一般式(6)のR14と同じものが挙げられる。
【0205】
上記一般式(17)において、kは、置換基R38の個数を表し、0~5の整数である。kは、0~3であることが好ましく、1~3であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。kが2以上の場合、すなわち、R38が2個以上ある場合、R38はそれぞれ互いに同一であっても、異なっていてもよい。
【0206】
上記アルカリ可溶性樹脂(Y)は、1種又は2種以上の上記構造単位(E)を有していてもよい。
上記アルカリ可溶性樹脂(Y)が上記構造単位(E)を有する場合、その含有割合は、樹脂の屈折率が高い点で、アルカリ可溶性樹脂(Y)の全構造単位100モル%に対して、好ましくは0.1~90モル%、より好ましくは2~70モル%、更に好ましくは10~30モル%である。
【0207】
上記アルカリ可溶性樹脂(Y)が、上記一般式(3)で表される構造を有する場合、上述した樹脂(X)の構造単位(C)と同じ構造単位(C’)を有する樹脂であることが好ましい。
【0208】
上記アルカリ可溶性樹脂(Y)は、1種又は2種以上の上記構造単位(C’)を有していてもよい。
上記アルカリ可溶性樹脂(Y)が上記構造単位(C’)を有する場合、その含有割合は、耐溶剤性に優れる点で、アルカリ可溶性樹脂(Y)の全構造単位100モル%に対して、好ましくは0.1~80モル%、より好ましくは2~60モル%、更に好ましくは10~30モル%である。
【0209】
上記アルカリ可溶性樹脂(Y)は、更に、上述した樹脂(X)の構造単位(D)と同じ構造単位(D’)を有していてもよい。上記構造単位(D’)を導入して鎖延長を行うことで、アルカリ可溶性樹脂を任意の分子量に設計することができる。
【0210】
上記アルカリ可溶性樹脂(Y)が上記構造単位(D’)を有する場合、その含有割合は、全構造単位100モル%に対して、好ましくは0.01~30モル%であり、より好ましくは0.1~20モル%であり、更に好ましくは0.5~10モル%である。
【0211】
上記アルカリ可溶性樹脂(Y)の二重結合当量は、8000g/当量超である。二重結合当量が上記範囲であると、樹脂の保存安定性に優れる。上記二重結合当量は、硬化性、保存安定性、耐溶剤性や密着性の点から、好ましくは8500~100000g/当量であり、より好ましくは9000~70000g/当量であり、更に好ましくは10000~50000g/当量である。二重結合当量の測定方法は、上述した方法と同じである。
【0212】
上記アルカリ可溶性樹脂(Y)のエポキシ当量は、10000g/当量超である。エポキシ当量が上記範囲であると、樹脂の保存安定性に優れる。上記エポキシ当量は、保存安定性、現像性、耐溶剤性の点から、好ましくは11000~100000g/当量であり、より好ましくは12000~70000g/当量であり、更に好ましくは15000~50000g/当量である。エポキシ当量の測定方法は、上述した方法と同じである。
【0213】
上記アルカリ可溶性樹脂(Y)の酸価は、10~300mgKOH/gであることが好ましい。上記酸価が上述の範囲であると、樹脂の保存安定性とともに現像性が良好になる。上記樹脂の酸価は、保存安定性、現像性がより一層良好になる点で、好ましくは20~200mgKOH/gであり、より好ましくは30~150mgKOH/gであり、更に好ましくは40~120mgKOH/gである。酸価の測定方法は、上述した方法と同じである。
【0214】
上記アルカリ可溶性樹脂(Y)の重量平均分子量は、1000~100000であることが好ましい。上記アルカリ可溶性樹脂(Y)の重量平均分子量は、現像性が良好である点で、より好ましくは2000~50000であり、更に好ましくは3000~20000であり、特に好ましくは4000~10000である。重量平均分子量の測定方法は、上述した方法と同じである。
【0215】
上記アルカリ可溶性樹脂(Y)のガラス転移温度(Tg)は、膜強度と現像性の観点から、好ましくは40~300℃であり、より好ましくは60~250℃であり、更に好ましくは80~200℃である。ガラス転移温度の測定方法は、上述した方法と同じである。
【0216】
<アルカリ可溶性樹脂(Y)の製造方法>
上記アルカリ可溶性樹脂(Y)の製造方法としては、上述したアルカリ可溶性樹脂(Y)が得られるのであれば、特に限定されないが、効率良く製造することができる点で、上述した樹脂(X)の製造方法における工程(1)及び工程(2)と同様の工程を含むことが好ましい。
【0217】
また、上記アルカリ可溶性樹脂(Y)が上記構成単位(D’)を有する場合は、例えば、上記工程(1)の前に、予めエポキシ樹脂(a)と上記構成単位(D’)を導入しうる化合物とを反応させることにより、エポキシ樹脂(a)を鎖延長させておき、鎖延長したエポキシ樹脂(a)を、上記工程(1)に供することで、上記構成単位(D’)を有するアルカリ可溶性樹脂を製造することができる。
【0218】
上記構成単位(D’)を導入しうる化合物としては、例えば、上述した構成単位(D’)の由来となるビスフェノール化合物が挙げられる。
【0219】
上記反応においては、反応触媒を使用してもよい。当該反応において使用する反応触媒としては、上述した工程(1)や工程(2)で使用する触媒と同様のものが挙げられる。
【0220】
上記アルカリ可溶性樹脂(Y)の製造方法は、上述した工程(1)及び(2)以外の他の工程を含んでいてもよい。他の工程としては、例えば、熟成工程、中和工程、希釈工程、乾燥工程、濃縮工程、精製工程等が挙げられる。これらの工程は、公知の方法により行うことができる。
【0221】
3.硬化性樹脂組成物
本開示の樹脂(X)及び上記アルカリ可溶性樹脂(Y)は、用途や目的に応じて、他の成分と組み合わせて、硬化性樹脂組成物とすることができる。上記他の成分としては、例えば、金属酸化物粒子、熱酸発生剤、多官能チオール化合物、光酸発生剤、光塩基発生剤、光ラジカル重合開始剤、熱ラジカル重合開始剤、重合性化合物、アルカリ可溶性樹脂、酸化合物等が好ましく挙げられる。上記硬化性樹脂組成物は、これらの成分の1種又は2種以上を含んでいてもよい。
【0222】
(金属酸化物粒子)
上記樹脂と金属酸化物粒子とを含む樹脂組成物とすることにより、より高屈折率の硬化物を与えることができる。また、光感度と誘電特性が良好となる。この理由は定かではないが、樹脂と金属酸化物粒子の屈折率差が小さくなると、露光時に、レイリー散乱等による光のロスを低減することができるためと推察できる。硬化性樹脂組成物に金属酸化物粒子を高充填しても解像性を損なわないため、誘電特性を向上させることができる。
【0223】
上記金属酸化物粒子としては、例えば、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Ce、Gd、Tb、Dy、Yb、Lu、Ti、Zr、Hf、Nb、Mo、W、Zn、B、Al、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Te等の原子を含む光透過性で屈折率の高い金属の酸化物粒子が挙げられる。なかでも、上記金属酸化物粒子は、より高い屈折率の硬化物を提供できる点で、Ti、Al、Zr、Zn、Sn、Ce、及びSiからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を含むことがより好ましく、更に、高い比誘電率の硬化膜を提供できるという観点からはZrを含むことがより好ましく、高硬度の硬化膜を提供できるという観点からはSiを含むことがより好ましい。
【0224】
上記金属酸化物は、単一金属の酸化物であってもよいし、2種以上の酸化物の固溶体であってもよいし、あるいは複合酸化物であってもよい。単一金属酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム(Al)、酸化チタン(TiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化インジウム(In)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、酸化ランタン(La)、酸化イットリウム(Y)、酸化セリウム(CeO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ケイ素(SiO)等が挙げられる。2種以上の酸化物の固溶体としては、例えば、ITO、ATO等が挙げられる。複合酸化物としては、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)、灰チタン石(CaTiO)、スピネル(MgAl)等が挙げられる。なかでも、高屈折率と高比誘電率又は高硬度の硬化物を提供し得る点で、二酸化ジルコニウム粒子(ZrO粒子)及び/又は二酸化ケイ素粒子(SiO粒子)が好ましい。
【0225】
上記金属酸化物粒子は、硬化性樹脂組成物中での分散性を高めることができる点で、表面修飾された金属酸化物粒子であることが好ましい。上記金属酸化物粒子の表面修飾は、上記金属酸化物粒子と表面修飾剤とを溶媒中で混合する方法や、水存在下で水熱反応を行う方法等の公知の方法により得ることができる。
【0226】
上記金属酸化物粒子は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記金属酸化物粒子の含有量は、樹脂の固形分総量100質量%に対して、好ましくは0.1~99質量%であり、より好ましくは1~80質量%であり、更に好ましくは10~40質量%である。
なお、本明細書において、「固形分総量」とは、硬化物を形成する成分(硬化物の形成時に揮発する溶媒等や硬化触媒を除く成分)の総量を意味する。
【0227】
(熱酸発生剤)
上記樹脂と熱酸発生剤とを含む樹脂組成物とすることにより、上記樹脂の硬化性を向上させることができる。
上記熱酸発生剤としては、特に限定されず、樹脂に配合可能な熱酸発生剤として公知の化合物を使用することができ、好ましくは、サンアプロ社製のTA-100及びTA-120等が挙げられる。
【0228】
上記熱酸発生剤は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記熱酸発生剤の含有量は、樹脂組成物の固形分総量100質量%に対し、0.3~15質量%であることが好ましく、0.5~10質量%であることがより好ましく、1~8質量%であることが更に好ましい。
【0229】
(多官能チオール化合物)
上記樹脂と多官能チオール化合物とを含む樹脂組成物とすることにより、上記樹脂の硬化性を向上させることができる。上記樹脂が特に側鎖に重合性不飽和結合を含む場合に、多官能チオール化合物を含む樹脂組成物とすると、露光又は加熱時にエンチオール反応が併発し、架橋密度が向上しうる。特に樹脂中にアクリレート性の重合性不飽和結合が存在する場合、良好にエンチオール反応が進行する。また側鎖にエポキシ基を有する樹脂と多官能モノマーとは付加反応が進行する。
【0230】
上記多官能チオール化合物としては、1分子中にメルカプト基を2以上有し、分子量は200~1000である化合物が好ましく、3~5官能の2級チオールが特に好ましい。上記硬化性樹脂組成物にこのような多官能チオール化合物を添加することで、硬化性、保存安定性がより一層向上しうる。
【0231】
上記多官能チオール化合物の具体例としては、例えば、ブタンジオールビスチオプロピオネート、エチレングリコールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)(カレンズPE-1)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン(カレンズBD-1)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン(カレンズNR-1)等のメルカプトプロピオン酸誘導体が挙げられる。なお、上記多官能チオール化合物としては、分子内に水酸基及び/又は芳香環を有しない化合物が好ましい。
【0232】
上記多官能チオール化合物の市販品を用いることもでき、例えば、花王株式会社製「チオカルコール20」、昭和電工株式会社製「カレンズMT PE1」、「カレンズMT BD1」、「カレンズMT NR1」、「TPMB」、「TEMB」、SC有機化学株式会社製「TMMP」、「TEMPIC」、「PEMP」、「EGMP-4」、「DPMP」、「TMMP II-20P」、「PEMP II-20P」等が挙げられる。
【0233】
上記多官能チオール化合物は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記多官能チオール化合物の含有量は、硬化性樹脂組成物の固形分総量100質量%に対し、0.3~15質量%であることが好ましく、0.5~10質量%であることがより好ましく、1~8質量%であることが更に好ましい。
【0234】
(光酸発生剤)
上記樹脂と光酸発生剤とを含む樹脂組成物とすることにより、硬化性樹脂組成物の硬化性がより一層向上しうる。
上記光酸発生剤は、放射線等の活性エネルギー線に暴露されることにより酸を発生する化合物であり、例えば、トルエンスルホン酸または四フッ化ホウ素などの強酸、スルホニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩またはセレニウム塩などのオニウム塩類;鉄-アレン錯体類;シラノール-金属キレート錯体類;ジスルホン類、ジスルホニルジアゾメタン類、ジスルホニルメタン類、スルホニルベンゾイルメタン類、イミドスルホネート類、ベンゾインスルホネート類などのスルホン酸誘導体;有機ハロゲン化合物類;等が挙げられる。
【0235】
上記光酸発生剤は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記光酸発生剤の含有量は、硬化性樹脂組成物の固形分総量100質量%に対し、0.3~20質量%であることが好ましく、0.5~10質量%であることがより好ましく、1~8質量%であることが更に好ましい。
【0236】
(光塩基発生剤)
上記樹脂と光酸発生剤とを含む樹脂組成物とすることにより、光照射によってエポキシの重合が生じやすくなり、硬化性樹脂組成物の硬化性及び耐溶剤性をより向上させることができる。
【0237】
上記光塩基発生剤としては、光照射によって塩基を発生する化合物が挙げられ、例えば、2-(9-オキソキサンテン-2-イル)プロピオン酸1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、2-(9-オキソキサンテン-2-イル)プロピオン酸、アセトフェノン O-ベンゾイルオキシム、シクロヘキシルカルバミン酸2-ニトロベンジル、シクロヘキシルカルバミン酸1,2-ビス(4-メトキシフェニル)-2-オキソエチル、(Z)-{[ビス(ジメチルアミノ)メチリデン]アミノ}-N-シクロヘキシル(シクロヘキシルアミノ)メタンイミニウム=テトラキス(3-フルオロフェニル)ボラート(富士フイルム和光純薬株式会社製 WPBG-345)、1,2-ジイソプロピル-3-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]グアニジウム=2-(3-ベンゾイルフェニル)プロピオナート(富士フイルム和光純薬株式会社製 WPBG-266)、N,N-ジエチルカルバミン酸9-アントリルメチル(富士フイルム和光純薬株式会社製 WPBG-018)、N-シクロヘキシルカルバミン酸1-(アントラキノン-2-イル)エチル(富士フイルム和光純薬株式会社製 WPBG-174)、ピペリジン-1-カルボン酸9-アントリルメチル(富士フイルム和光純薬株式会社製 WPBG-015)、N,N-ジシクロヘキシルカルバミン酸9-アントリルメチル(富士フイルム和光純薬株式会社製 WPBG-172)、イミダゾール-1-カルボン酸1-(アントラキノン-2-イル)エチル(富士フイルム和光純薬株式会社製 WPBG-140)、シクロヘキシルアンモニウム2-(3-ベンゾイルフェニル)プロピオン酸塩(富士フイルム和光純薬株式会社製 WPBG-168)、(E)-N-シクロヘキシル-3-(2-ヒドロキシフェニル)アクリルアミド(富士フイルム和光純薬株式会社製 WPBG-025)、ジシクロヘキシルアンモニウム2-(3-ベンゾイルフェニル)プロピオン酸塩(富士フイルム和光純薬株式会社製 WPBG-167)、1,2-ジシクロヘキシル-4,4,5,5-テトラメチルビグアニジウム=n-ブチルトリフェニルボラート(富士フイルム和光純薬株式会社製 WPBG-300)、4-ヒドロキシピペリジン-1-カルボン酸(2-ニトロフェニル)メチル(富士フイルム和光純薬株式会社製 WPBG-158)、4-(メタクリロイルオキシ)ピペリジン-1-カルボン酸(2-ニトロフェニル)メチル(富士フイルム和光純薬株式会社製 WPBG-165)、グアニジウム2-(3-ベンゾイルフェニル)プロピオン酸塩(富士フイルム和光純薬株式会社製 WPBG-082)、(E)-1-ピペリジノ-3-(2-ヒドロキシフェニル)-2-プロペン-1-オン(富士フイルム和光純薬株式会社製 WPBG-027)等が挙げられる。なかでも、保存安定性が良好である点で、イミダゾール-1-カルボン酸1-(アントラキノン-2-イル)エチル、又は、4-ヒドロキシピペリジン-1-カルボン酸(2-ニトロフェニル)メチルが好ましく、4-ヒドロキシピペリジン-1-カルボン酸(2-ニトロフェニル)メチルがより好ましい。
【0238】
上記光塩基発生剤は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記光塩基発生剤の含有量は、硬化性樹脂組成物の固形分総量100質量%に対して、0.01~20質量%であることが好ましく、0.02~10質量%であることがより好ましく、0.1~3質量%であることが更に好ましい。
【0239】
(光ラジカル重合開始剤)
光ラジカル重合開始剤としては、特に限定されず、公知の光ラジカル重合開始剤を使用することができ、具体例としては、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン(「IRGACURE907」、BASF社製)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1(「IRGACURE369」、BASF社製)、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン(「IRGACURE379」、BASF社製)等のアミノケトン系化合物;2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(「IRGACURE651」、BASF社製)、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル(「DAROCUR MBF」、BASF社製)等のベンジルケタール系化合物;1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(「IRGACURE184」、BASF社製)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(「DAROCUR1173」、BASF社製)、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(「IRGACURE2959」、BASF社製)、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン(「IRGACURE127」、BASF社製)、[1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン+ベンゾフェノン](「IRGACURE500」、BASF社製)等のハイドロケトン系化合物;等の他、特開2013-227485号公報段落[0084]~[0086]に例示された、他のアルキルフェノン系化合物;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(O-ベンゾイルオキシム)(「OXE01」、BASF社製)、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)(「OXE02」、BASF社製)、1,2-オクタンジオン、1-[4-(フェニルチオ)-,2-,(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン(「OXE03」、BASF社製)、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)(「OXE04」、BASF社製)等のオキシムエステル系化合物;ベンゾフェノン系化合物;ベンゾイン系化合物;チオキサントン系化合物;ハロメチル化トリアジン系化合物;ハロメチル化オキサジアゾール系化合物;ビイミダゾール系化合物;チタノセン系化合物;安息香酸エステル系化合物;アクリジン系化合物等;ホスフィンオキシド系化合物;等が挙げられる。なかでも、アミノケトン系化合物、オキシムエステル系化合物が好ましい。光ラジカル重合開始剤は、1種のみ使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0240】
光ラジカル重合開始剤の含有量は、樹脂の固形分総量100質量%に対して、好ましくは0.01~30質量%であり、より好ましくは0.1~20質量%であり、更に好ましくは1~10質量%である。
【0241】
(熱ラジカル重合開始剤)
熱ラジカル重合開始剤としては、特に限定されず、公知の熱ラジカル重合開始剤を使用することができ、具体例としては、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等の有機過酸化物;2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)等のアゾ化合物;等が挙げられる。熱ラジカル重合開始剤は、1種のみ使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0242】
熱ラジカル重合開始剤の含有量は、樹脂の固形分総量100質量%に対して、好ましくは0.01~30質量%であり、より好ましくは0.1~20質量%であり、更に好ましくは1~10質量%である。
【0243】
(重合性化合物)
重合性化合物は、フリーラジカル、電磁波(例えば赤外線、紫外線、X線等)、電子線等の活性エネルギー線の照射等により重合し得る、重合性不飽和結合(重合性不飽和基とも称す)を有する低分子化合物であり、例えば、重合性不飽和基を分子中に1つ有する単官能の化合物と、2個以上有する多官能の化合物が挙げられる。
【0244】
上記単官能の化合物としては、例えば、N置換マレイミド系単量体;(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド類;不飽和モノカルボン酸類;不飽和多価カルボン酸類;不飽和基とカルボキシル基の間が鎖延長されている不飽和モノカルボン酸類;不飽和酸無水物類;芳香族ビニル類;共役ジエン類;ビニルエステル類;ビニルエーテル類;N-ビニル化合物類;不飽和イソシアネート類;等が挙げられる。また、活性メチレン基や活性メチン基を有する単量体等を用いることもできる。
【0245】
上記多官能の化合物としては、例えば、下記の化合物等が挙げられる。
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレート等の2官能(メタ)アクリレート化合物;
【0246】
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン付加ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートコハク酸変性物、ペンタエリスリトールトリアクリレートコハク酸変性物、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートフタル酸変性物、ペンタエリスリトールトリアクリレートフタル酸変性物、下記式:
【0247】
【化21】
【0248】
で表されるジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの変性物等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物;
【0249】
エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキシドジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル等の多官能ビニルエーテル類;
【0250】
(メタ)アクリル酸2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1-メチル-2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸5-ビニロキシペンチル、(メタ)アクリル酸6-ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4-ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸p-ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシエトキシエトキシエトキシ)エチル等のビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類;
【0251】
エチレングリコールジアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、プロピレングリコールジアリルエーテル、ブチレングリコールジアリルエーテル、ヘキサンジオールジアリルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジアリルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキシドジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラアリルエーテル、グリセリントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタアリルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサアリルエーテル、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリアリルエーテル、エチ
レンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラアリルエーテル、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、エチレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサアリルエーテル等の多官能アリルエーテル類;
【0252】
(メタ)アクリル酸アリル等のアリル基含有(メタ)アクリル酸エステル類;トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(メタクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、アルキレンオキシド付加トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、アルキレンオキシド付加トリ(メタクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等の多官能(メタ)アクリロイル基含有イソシアヌレート類;トリアリルイソシアヌレート等の多官能アリル基含有イソシアヌレート類;トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の多官能イソシアネートと(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類との反応で得られる多官能ウレタン(メタ)アクリレート類;ジビニルベンゼン等の多官能芳香族ビニル類;等。これらの重合性化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0253】
上記重合性化合物のなかでも、硬化性樹脂組成物の硬化性をより高める観点から、多官能の重合性化合物を用いることが好ましい。上記多官能の重合性化合物の官能数としては、3以上が好ましく、4以上がより好ましい。また、上記官能数は10以下が好ましく、8以下がより好ましい。上記重合性化合物の分子量としては特に限定されないが、取り扱いの観点から、例えば、2000以下が好ましい。
【0254】
上記多官能の重合性化合物としては、なかでも、反応性、経済性、入手性等の観点から、好ましくは多官能(メタ)アクリレート化合物、多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物、(メタ)アクリロイル基含有イソシアヌレート化合物等の、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が挙げられ、より好ましくは多官能(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含むことにより、上記硬化性樹脂組成物が感光性及び硬化性により優れたものとなり、より一層高硬度で高透明性の硬化物を得ることができる。上記多官能の重合性化合物としては、3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物を用いることが更に好ましい。
【0255】
重合性化合物の含有量は、硬化性樹脂組成物の固形分総量100質量%に対して、好ましくは1~99質量%であり、より好ましくは2~80質量%であり、更に好ましくは10~60質量%である。
【0256】
(アルカリ可溶性樹脂)
アルカリ可溶性樹脂としては、特に限定されず、酸基を有し、アルカリ溶液に可溶である公知のアルカリ可溶性樹脂であれば特に限定されない。
【0257】
上記アルカリ可溶性樹脂の含有量は、硬化性樹脂組成物の用途や他の成分の配合等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、硬化性樹脂組成物の固形分総量100質量%に対して、好ましくは0.1~99質量%であり、より好ましくは1~60質量%であり、更に好ましくは5~50質量%であり、より更に好ましくは10~40質量%である。
【0258】
(酸化合物)
上記酸化合物は、pKaが4.2以下である化合物である。上記硬化性樹脂組成物が、pKaが4.2以下である酸化合物を含むと、硬化性樹脂組成物に含まれる成分のエポキシ基とカルボキシル基等の酸基との反応が抑制され、保存安定性を向上させることができる。上記保存安定性を向上できるのは、上記酸基よりも酸強度の強い酸化合物が存在することで、上記樹脂の酸基のアニオン性が低下して、当該酸基とエポキシ基の反応性が抑制されるためと考えられる。また、上記硬化性樹脂組成物中に塩基性化合物が存在すると、カルボキシル基と塩を形成していた塩基性化合物を、pKaが4.2以下である酸化合物が補足し、共重合体中のカルボキシル基の求核力が低下して、当該酸基とエポキシ基の反応性を抑制することができると考えられる。
【0259】
pKaが4.2以下である理由は、酸基を導入しうる単量体のpKa値を閾値としたためである。上記単量体のpKa値としては、例えば、アクリル酸(pKa4.35)、メタクリル酸(pKa4.26)、コハク酸モノ(2-アクロイルオキシエチル)(pKa4.35)、コハク酸モノ(2-メタクロイロキシエチル)(pKa4.35)等が挙げられる。
【0260】
上記酸化合物のpKaは、3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましい。上記酸化合物のpKaの下限は、特に限定されないが、-3以上であることが好ましく、0以上であることがより好ましい。
【0261】
pKa(酸解離定数)は、酸から水素イオンが放出される解離反応における平衡定数Kaの負の常用対数(逆数の対数)を意味し、特に25℃の水中における値を意味する。
pKaの値は、例えば、化学便覧、基礎編II(改訂5版、丸善株式会社)等の文献を参照することができ、当該文献に掲載されてない数値は、当該文献に記載の方法で算出することができる。
【0262】
pKaが4.2以下である酸化合物の具体例としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸誘導体、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、硫酸、亜硫酸、チオ硫酸、ジメチル亜硫酸、ジエチル亜硫酸、ジプロピル亜硫酸、ジブチル亜硫酸、ジフェニル亜硫酸、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、ジプロピル硫酸、ジブチル硫酸、ジフェニル硫酸、ベンゼンスルフィン酸、トルエンスルフィン酸、ナフタレンスルフィン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ジイソプロピルナフタレンスルホン酸、ジイソブチルナフタレンスルホン酸などの芳香族スルホン酸類、メチルスルホン酸、エチルスルホン酸、プロピルスルホン酸などのアルキルスルホン酸類、α-オレフィンスルホン酸類、スルホン化ポリスチレン類、アクリル酸メチル-スルホン化スチレン共重合体及びこれらの誘導体が挙げられる。特にリン酸誘導体が好ましい。
【0263】
上記リン酸誘導体としては、リン酸エステル、亜リン酸エステル、亜リン酸、次亜リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸が好ましく挙げられ、リン酸エステル、ホスホン酸、ホスフィン酸がより好ましく挙げられる。
【0264】
上記リン酸エステル又は亜リン酸エステルのエステル基としては、アルキルエステル基、アリールエステル基、アラルキルエステル基、重合性二重結合を有するエステル基等が挙げられる。上記アルキルエステル基のアルキルとしては、メチル、エチル、オクチル、2-エチルヘキシル等が挙げられる。上記アリールエステル基のアリールとしては、フェニル、トリル、ナフチル等が挙げられる。上記アラルキルエステル基のアラルキルとしては、ベンジル等が挙げられる。上記重合性二重結合を有するエステル基としては、2-アクリロイロキシエチルエステル基、2-メタクリロイロキシエチルエステル基等が挙げられる。
【0265】
上記リン酸エステルの具体例としては、例えば、メチルホスフェート等のモノアルキルホスフェート;ジブチルホスフェート等のジアルキルホスフェート;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリオクタデシルホスフェート、ジステアリルペンタエリスリチルジホスフェート、トリス(2-クロロエチル)ホスフェート、トリス(2,3-ジクロロプロピル)ホスフェート等のトリアルキルホスフェート;トリシクロヘキシルホスフェート等のトリシクロアルキルホスフェート;モノアリールホスフェート;ジアリールホスフェート;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリス(ノニルフェニル)ホスフェート、2-エチルフェニルジフェニルホスフェート等のトリアリールホスフェート;2-メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、2-アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、3-メタクロイロキシプロピルアシッドホスフェート、メタクリロイロキシポリオキシエチレングリコールアシッドホスフェート、メタクリロイロキシポリオキシプロピレングリコールアシッドホスフェート等の重合性二重結合を有するエステル基を含むリン酸エステル;メチルホスホン酸等のアルキルホスホン酸;フェニルホスホン酸等のアリールホスホン酸;メチルホスフィン酸等のアルキルホスフィン酸;フェニルホスフィン酸等のアリールホスフィン酸等が挙げられる。
【0266】
なかでも、上記リン酸エステルとしては、上記重合性二重結合を有するエステル基を含むリン酸エステルが好ましい。上記重合性二重結合を有するエステル基を含むリン酸エステルを使用すると、上記硬化性樹脂組成物の硬化時に、上記樹脂や重合性化合物とともに架橋構造を形成し、含まれる成分の揮発や溶出が抑制され、反応系の汚染や電気絶縁性の低下等の不具合が生じるのを格段に抑制できる。上記リン酸エステルは、重合性二重結合を2個又は3個以上含むことが好ましい。
【0267】
上記重合性二重結合を有するエステル基を含むリン酸エステルとしては、例えば、ライトエステルP-1M、ライトエステルP-2M(いずれも、共栄社化学製)、ホスマーM(ユニケミカル社製)等の市販品を使用してもよい。なかでも、ライトエステルP-2Mが好ましい。
【0268】
上記酸化合物の分子量は、400以下であることが好ましく、350以下であることがより好ましい。上記酸化合物の分子量は、150以上であることが好ましく、250以上であることがより好ましい。
【0269】
上記酸化合物は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記酸化合物の含有量は、硬化性樹脂組成物の固形分総量100質量%に対して、好ましくは0.01~10質量%であり、より好ましくは0.05~5質量%であり、更に好ましくは0.1~3質量%である。
【0270】
なかでも、上記硬化性樹脂組成物としては上述した樹脂(X)と、金属酸化物粒子、光ラジカル重合開始剤、熱ラジカル重合開始剤、熱酸発生剤、光酸発生剤、及び光塩基発生剤からなる群より選択される少なくとも1種とを含む硬化性樹脂組成物が好ましく挙げられる。このような硬化性樹脂組成物もまた本開示の一つである。
【0271】
上記硬化性樹脂組成物において、上記樹脂(X)の含有量は、特に限定されず、用途や他の成分の配合等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、上記硬化性樹脂組成物の固形分総量100質量%に対して、好ましくは0.1~99質量%であり、より好ましくは1~60質量%であり、更に好ましくは5~50質量%であり、より更に好ましくは10~40質量%である。
【0272】
上記硬化性樹脂組成物は、更に、必要に応じて、上述した成分以外の他の成分を含んでいてもよい。上記他の成分としては、例えば、溶剤;色材(顔料、染料);分散剤;耐熱向上剤;レベリング剤;現像助剤;シラン系、アルミニウム系、チタン系等のカップリング剤;フィラー;熱硬化性樹脂;可塑剤;重合禁止剤;紫外線吸収剤;酸化防止剤;艶消し剤;消泡剤;帯電防止剤;スリップ剤;表面改質剤;揺変化剤;揺変助剤;キノンジアジド化合物;多価フェノール化合物;カチオン重合性化合物;等が挙げられる。これらは、1種のみ用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの他の成分は、公知のものから適宜選択して使用することができ、その使用量も適宜設定することができる。
【0273】
<硬化性樹脂組成物の調製>
上記硬化性樹脂組成物を調製する方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いればよく、例えば、上述した各含有成分を、各種の混合機や分散機を用いて混合分散する方法が挙げられる。混合・分散工程は特に制限されず、公知の方法により行えばよい。また、通常行われる他の工程を更に含んでいてもよい。
【0274】
<感光性樹脂組成物>
上記硬化性樹脂組成物の好ましい形態の一つとして、上述した樹脂(X)と、光ラジカル重合開始剤と、アルカリ可溶性樹脂と、重合性化合物とを含む感光性樹脂組成物(以下、「感光性樹脂組成物(x)」とも称する。)が挙げられる。このような感光性樹脂組成物は、ネガ型レジストとして特に好適に使用でき、微細なパターンの形成が可能になる。このような感光性樹脂組成物(x)もまた本開示の一つである。
【0275】
感光性樹脂組成物(x)において、上述した樹脂(X)の含有量は、特に限定されず、用途や他の成分の配合等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、感光性樹脂組成物(x)の固形分総量100質量%に対して、好ましくは0.1~99質量%であり、より好ましくは1~60質量%であり、更に好ましくは5~50質量%であり、より更に好ましくは10~40質量%である。
【0276】
また、上記硬化性樹脂組成物の好ましい別の形態の一つとして、上記アルカリ可溶性樹脂(Y)と、光ラジカル重合開始剤と、重合性化合物とを含む感光性樹脂組成物(以下、「感光性樹脂組成物(y)」とも称する。)が挙げられる。このような感光性樹脂組成物もまた本開示の一つである。感光性樹脂組成物(y)が更に上記樹脂(X)を含む形態も好ましい形態の一つである。
【0277】
アルカリ可溶性樹脂(Y)の含有量は、特に限定されず、用途や他の成分の配合等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、感光性樹脂組成物の固形分総量100質量%に対して、好ましくは0.1~99質量%であり、より好ましくは1~60質量%であり、更に好ましくは5~50質量%であり、より更に好ましくは10~40質量%である。
【0278】
感光性樹脂組成物(y)が樹脂(X)を含む場合、樹脂(X)の含有量は、特に限定されず、用途や他の成分の配合等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、感光性樹脂組成物(y)の固形分総量100質量%に対して、好ましくは1~99質量%であり、より好ましくは10~80質量%であり、更に好ましくは20~70質量%であり、より更に好ましくは30~60質量%である。
【0279】
4.硬化物
上記樹脂(X)及び/又はアルカリ可溶性樹脂(Y)、又は、これを含む硬化性樹脂組成物を用いると、高い屈折率の硬化物を与えることができる。上記硬化物の屈折率は、1.60以上であることが好ましい。このような、上述した樹脂(X)、硬化性樹脂組成物、又は、感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化物であって、上記硬化物の屈折率が1.60以上である硬化物も本開示の一つである。
【0280】
上記硬化物の屈折率は1.60以上であることが好ましく、1.62以上であることがより好ましい。上記屈折率は、実施例に記載の方法により、求めることができる。
【0281】
本開示の樹脂又は硬化性樹脂組成物を用いて上記硬化物を得る方法は、特に限定されず、公知の方法を用いればよく、例えば、上述した樹脂もしくは硬化性樹脂組成物を基材上に塗布、又は成形したものを、加熱、又は、紫外線等の活性エネルギー線の照射、あるいはこれらの組み合わせにより硬化させる方法が挙げられる。なかでも、硬化物の製造方法としては、基材上に、上記硬化性樹脂組成物を塗布して塗膜を形成する工程、形成された塗膜に光照射する工程、及び、光照射した塗膜を加熱する工程を含む方法が好ましい。
【0282】
上記基材としては、特に制限されず、目的や用途に応じて適宜選択すればよく、例えば、ガラス板、プラスチック板等、種々の材料からなる基材が挙げられる。
【0283】
上記硬化性樹脂組成物を基材上に塗布して塗膜を形成する方法としては、特に制限されず、スピン塗布、スリット塗布、ロール塗布、流延塗布等の公知の方法で行うことができる。
【0284】
上記硬化性樹脂組成物を基材上に塗布した後、塗布物を乾燥させて塗膜を形成することが好ましい。上記乾燥は、公知の方法で行うことができ、例えば、ホットプレート、IRオーブン、コンベクションオーブン等を用いて行うことができる。乾燥条件は、含まれる溶媒成分の沸点、硬化成分の種類、膜厚、乾燥機の性能等に応じて適宜選択されるが、通常、50~160℃の温度で10秒~300秒間行うことが好適である。
【0285】
形成された塗膜に光照射する方法としては、特に制限されず、公知の方法で行うことができる。光照射に使用される活性光線の光源としては、例えば、キセノンランプ、ハロゲンランプ、タングステンランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、中圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、蛍光ランプ等のランプ光源、アルゴンイオンレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー、窒素レーザー、ヘリウムカドミニウムレーザー、半導体レーザー等のレーザー光源等が挙げられる。
【0286】
上記塗膜に光照射する場合、フォトマスクを介して光照射を行ってもよい。フォトマスクとして、目的とするパターンに応じて遮光部が形成されたマスクを用いるとよい。
フォトマスクを介して光照射を行った後、現像液によって現像処理し、未照射部分を除去する工程を有していてもよい。光照射により、照射部分は硬化し、硬化物は現像液に対して不溶化又は難溶化される。一方、未照射部分は現像液に溶解するので、現像処理により除去され、パターン化された硬化膜を得ることができる。現像処理は、通常、10~50℃の現像温度で、浸漬現像、スプレー現像、ブラシ現像、超音波現像等の方法で行うことができる。
【0287】
上記現像液は、上記硬化性樹脂組成物を溶解するものであれば特に限定されないが、通常、有機溶媒やアルカリ性水溶液が用いられ、これらの混合物を用いてもよい。なお、現像液としてアルカリ性水溶液を用いる場合には、現像後、水で洗浄することが好ましい。有機溶媒やアルカリ性水溶液としては、例えば、特開2015-157909号公報に記載のものと同様のものが挙げられる。
【0288】
上記光照射後、塗膜を300℃以下で加熱することが好ましい。塗膜の加熱温度は、好ましくは50~250℃であり、より好ましくは60~180℃であり、更に好ましくは70~100℃である。
【0289】
加熱時間は、特に制限されず、例えば、5~60分間とすることが好適である。また、加熱方法も特に限定されず、例えば、ホットプレート、コンベクションオーブン、高周波加熱機等の公知の加熱機器を用いて行うことができる。
【0290】
上記硬化物が硬化膜である場合、その膜厚は、高屈折率の特性を充分に発揮できる点で、0.1~50μmであることが好ましく、0.5~40μmであることがより好ましく、1~30μmであることが更に好ましい。
【0291】
5.用途
本開示の樹脂(X)、アルカリ可溶性樹脂(Y)、これらを含む硬化性樹脂組成物は、高屈折率の硬化物を与えることができる。そのため、本開示の樹脂、アルカリ可溶性樹脂、及び、硬化性樹脂組成物は、高屈折率が必要とされる用途に好適に用いることができる。
【0292】
上記アルカリ可溶性樹脂(Y)、及び、これらを含む硬化性樹脂組成物は、現像性が要求される用途にも好適に用いることができ。そのため、光学材料用として好適に使用され、レジスト用として特に好適に使用される。
【0293】
高屈折率である本開示の樹脂(X)、アルカリ可溶性樹脂(Y)、及び、これらを含む硬化性樹脂組成物は、例えば、磁気記録材料、触媒材料、紫外線吸収材料、歯科材料、コンタクトレンズ、眼内レンズ、眼鏡用高屈折レンズ、光学的コンピューティング、光記憶媒体、反射防止膜、コンフォーマルコーティング、マイクロレンズアレイ、自動車用トップコート、塗料、コーティング剤、頭髪用化粧品、勾配屈折率光学部品及び動的勾配屈折率部品、ナノインプリント材料、光硬化プラスチック、ホログラム記録用重合性化合物、ガラスの表面コーティング材、太陽電池用透明コーティング材、プラスチックレンズ、印刷版、半導体発光素子(発光ダイオード、有機発光ダイオード、レーザダイオード)、導光路(平面及び「ファイバー」両方の幾何学的形状)、半導体素子、光拡散部材、プリズムシート、ハードコート材、光配線部材、回折格子、LED等の封止材料、感圧接着剤、CCD/CMOS等のセンサー素子やマイクロLEDディスプレイ等の表示装置の表示素子に用いられるガラス、フィルム及びシートの表面に用いる保護膜、液晶等の画像表示部材とプラスチック製カバーパネルとの貼り合わせに用いる光硬化性樹脂(OCR)、透明電極等に使用する反射保護膜、タッチパネルのITO電極の骨見え防止のためのインデックスマッチング、アンチブロッキング層、ディスプレイの反射防止膜、半導体の層間絶縁用フィルム等の各種用途に広く適用することができる。なかでも、半導体部材形成用又は光学材料用硬化性樹脂又は樹脂組成物として好適であり、特に光学材料用硬化性樹脂又は樹脂組成物として好適である。
【0294】
本開示において、「光学材料」とは、光学分野や電機・電子分野における装置の構成部材等に使用される材料をいい、例えば、液晶・有機EL・量子ドット・ミニ/マイクロLED表示装置/固体撮像素子/タッチパネル式表示装置等に用いられるカラーフィルター、光取り出し層、ブラックマトリクス、フォトスペーサー、ブラックカラムスペーサー、フォトレジスト、オーバーコート、TFT用平坦化層、TFT用絶縁膜、光学レンズの表面コート等に材料として使用されるものをいう。本開示の樹脂は、アルカリ可溶性を有する点でフォトリソグラフィーを適用する用途にも好適に使用でき、高屈折、高硬度、高い透明性を有する硬化膜となり得る。本開示の硬化性樹脂組成物(特に、感光性樹脂組成物)は、カラーフィルター、光取り出し層、有機EL表示装置用色変換層用の樹脂組成物であることが最も好ましい。
【0295】
本開示の樹脂(X)、アルカリ可溶性樹脂(Y)、及び、これらを含む硬化性樹脂組成物は、その他、インク、プリント配線板、絶縁膜、フィルム、有機保護膜等の各種の光学部材や電機・電子機器等の構成部材に好適に使用することができる。
【実施例0296】
以下に実施例を掲げて本開示を更に詳細に説明するが、本開示はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0297】
本実施例で使用した各種評価方法は、下記の通りである。
【0298】
<重量平均分子量>
重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレンを標準物質として用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により求めた。測定条件は以下のとおりである。
装置:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置HLC-8320GPC(東ソー社製)
カラム:TSKgel SuperHZM-M(東ソー社製)
検出器:液体クロマトグラム用RI検出器
測定温度:40℃
溶媒:THF(テトラヒドロフラン)
試料濃度:0.05g/10cc
サンプル側流量:0.6ml/分
【0299】
<酸価>
樹脂溶液を3g精秤し、アセトン90gと水10gの混合溶媒に溶解させ、0.1NのKOH水溶液を滴定液として用いて滴定した。滴定は、自動滴定装置(商品名:COM-555、平沼産業社製)を用いて行い、樹脂溶液の酸価と樹脂溶液の固形分から固形分1g当たりの酸価(mgKOH/g)を求めた。
なお、樹脂溶液の固形分は以下の方法で求めた。すなわち、樹脂溶液をアルミカップに約1gはかり取り、アセトン約3gを加えて溶解させた後、常温で自然乾燥させた。そして、真空乾燥機(EYELA社製、商品名:VOS-301SD)を用い、真空下140℃で1.5時間乾燥した後、デシケータ内で放冷し、質量を測定した。その質量減少量から、樹脂溶液の固形分(質量%)を計算した。
【0300】
<二重結合当量>
樹脂固形分の質量(g)を樹脂の重合性二重結合量(mol)で除することにより求めた。
【0301】
<エポキシ当量>
JIS K7236:2001に準拠する方法で固形分換算値を求めた。
【0302】
<屈折率(露光なし)>
得られた樹脂溶液又は硬化性樹脂組成物を、スピンコーター(ミカサ社製、1H-D7)を用いて、ガラス基板(松浪スライドグラスS9111、松浪硝子工業社製)上に均一に塗布した。塗布板を85℃で3分間乾燥させることにより、ガラス基板上に塗膜が形成された積層体を得た。ガラス基板の端部に付着している樹脂を除去した後、得られた積層体を、パーフェクトオーブン恒温器(エスペック社製)を用いて85℃で30分間加熱処理を行い、室温まで冷却し、膜厚0.5μmの薄膜が形成された積層体を得た。
得られた積層体を測定試料とし、下記の装置を用いて反射スペクトルを測定し、測定した薄膜干渉による反射率からフレネルの式に基づいて薄膜の反射率シミュレーションを行うことで、589nmにおける薄膜の屈折率の値を算出して求めた。
装置:フィルメトリクス社製膜厚測定システムF-20。
標準ファイバーステージSS-1(スポット径1.5mm)。
【0303】
<屈折率(露光100mJ)>
得られた樹脂溶液、感光性樹脂組成物、又は硬化性樹脂組成物を、スピンコーター(ミカサ社製、1H-D7)を用いて、ガラス基板(松浪スライドグラスS9111、松浪硝子工業社製)上に均一に塗布した。塗布板を85℃で3分間乾燥させ、2.0kWの超高圧水銀ランプを装着したUVアライナ(大日本科研社製、商品名「MA-1100」)によって、100mJ/cm(365nm照度換算)の露光量で露光を行い、ガラス基板上に塗膜が形成された積層体を得た。ガラス基板の端部に付着している樹脂を除去した後、得られた積層体を、パーフェクトオーブン恒温器(エスペック社製)を用いて85℃で30分間加熱処理を行い、室温まで冷却し、膜厚0.5μmの薄膜が形成された積層体を得た。得られた積層体を測定試料とした以外は、上述した露光なしの場合と同様に反射スペクトルを測定して、屈折率の値を求めた。
【0304】
<増粘率>
樹脂溶液又は感光性樹脂組成物の粘度を、粘度計(VISCOMETER TV-22、東機産業社製)を用いて、25℃で測定した。40℃で1カ月保管後に再度粘度を測定し、下記式により増粘率を求めた。
増粘率(%)=(保管後の粘度-保管前の粘度)/保管前の粘度×100
【0305】
<耐溶剤性>
感光性樹脂組成物を5cm角のガラス基板上にスピンコートし、100℃で3分間乾燥後、高圧水銀灯を用いて200mJで露光を行い、85℃でそれぞれ30分間熱処理(後硬化)を行い、膜厚2μmの硬化膜を得た。そして、硬化膜の質量を測定した後、その硬化膜をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)20gに40℃で10分間浸漬した後取り出し、再度硬化膜の質量を測定し、浸漬前に対する浸漬後の硬化膜の質量割合(%)を求めた。上記質量割合が大きい程、浸漬後の硬化膜の重量減少率が小さく、耐溶剤性が高いと評価する。
【0306】
<現像速度>
感光性樹脂組成物を10cm角のガラス基板にスピンコート法により塗布し、加熱処理(90℃、3分間)した後、塗布膜から50μmの距離に30μmのラインアンドスペースの開口部を設けたフォトマスクを介して、2.0kWの超高圧水銀ランプを装着したUVアライナ(大日本科研社製、商品名「MA-1100」)によって、60mJ/cm(365nm照度換算)の露光量で露光を行い、0.05%水酸化カリウム水溶液をスピン現像機にて散布し、未露光部を溶解、除去し、残った露光部を純水で10秒間水洗することにより現像することで、現像性の評価を行った。
具体的には、上記のようにフォトマスクを介して現像された塗布膜を、表面粗さ計(菱化システム社製、商品名「VertScan2.0」)にて観察し、未露光部が流れるのに要した0.05%水酸化カリウム水溶液の散布時間を現像時間とした。
【0307】
<最小密着パターン>
水酸化カリウム水溶液散布を行う時間を、現像速度試験で求めた現像時間の2倍に変更した以外、現像速度試験の操作と同様にしてラインアンドスペースのパターンを形成した。パターン形成可能な最小パターンの大きさを光学顕微鏡で観察し、最小密着パターンとした。最小密着パターンは1に近いほど良好という判断を行った。
【0308】
<線太り>
感光性樹脂組成物を10cm角のガラス基板にスピンコート法により塗布し、加熱処理(90℃、3分間)した後、塗布膜から50μmの距離に30μmのラインアンドスペースの開口部を設けたフォトマスクを介して、2.0kWの超高圧水銀ランプを装着したUVアライナ(大日本科研社製、商品名「MA-1100」)によって、60mJ/cm(365nm照度換算)の露光量で露光を行い、0.05%水酸化カリウム水溶液をスピン現像機にて散布し、未露光部を溶解、除去し、残った露光部を純水で10秒間水洗することにより現像することで、現像性の評価を行った。
具体的には、上記のようにフォトマスクを介して現像された塗布膜を、表面粗さ計(菱化システム社製、商品名「VertScan2.0」)にて観察し、30μmからの線太りを評価した。数値が小さい方が、パターン線太りが少なく、微細化に優れる。
【0309】
<質量減少率の測定>
TG-DTA(熱重量-示差熱分析)装置により、空気雰囲気下、室温から800℃まで10℃/分で被覆型酸化ジルコニウム粒子を昇温し、該粒子の質量減少率を測定した。この質量減少率により、金属酸化物粒子を被覆しているカルボキシレート化合物の割合、及び金属酸化物の割合を知ることができる。
【0310】
(実施例1)樹脂溶液(A-1)の製造
温度計、攪拌機、ガス導入管、冷却管及び滴下槽導入口を備えた反応槽に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを102.1g、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(YDCN-704A、エポキシ当量207.8g/当量(eq)、日鉄ケミカル&マテリアル社製)を100.0g仕込み、加熱して100℃まで昇温し30分保持することによりエポキシ樹脂を溶解させた。反応槽の温度を70℃まで降温した後、同温度を保持しながら窒素ガスバブリングにより反応槽の酸素濃度が0.5vol%以下となるまで置換し、ベンゼンチオール(BT)を53.0g、トリフェニルホスフィン(TPP)を0.1g投入して付加反応を行い、5時間反応させ、120℃に昇温し30分保持することにより反応を完結させ、樹脂溶液(A-1)を得た。得られた樹脂溶液(A-1)の各種物性を表1に示す。
【0311】
(実施例2)樹脂溶液(A-2)の製造
温度計、攪拌機、ガス導入管、冷却管及び滴下槽導入口を備えた反応槽に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを95.4g、NC-7000-L(ナフタレン含有ノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量231g/当量、日本化薬製)100.0g仕込み、加熱して100℃まで昇温し30分保持することによりエポキシ樹脂を溶解させた。反応槽の温度を70℃まで降温した後、同温度を保持しながら窒素ガスバブリングにより酸素濃度が0.5vol%以下となるまで系内を置換し、ベンゼンチオール(BT)を42.9g、トリフェニルホスフィンを0.1g投入して付加反応を行い、5時間反応させ、120℃に昇温し30分保持することにより反応を完結させ、樹脂溶液(A-2)を得た。得られた樹脂溶液(A-2)の各種物性を表1に示す。
【0312】
(実施例3)樹脂溶液(A-3)の製造
温度計、攪拌機、ガス導入管、冷却管及び滴下槽導入口を備えた反応槽に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを91.5g、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(前出)を100.0g仕込み、加熱して100℃まで昇温し30分保持することによりエポキシ樹脂を溶解させた。反応槽の温度を70℃まで降温した後、同温度を保持しながら窒素ガスバブリングにより酸素濃度が0.5vol%以下となるまで系内を置換し、ベンゼンチオール(BT)を37.1g、トリフェニルホスフィンを0.1g投入して付加反応を行い、5時間反応させ、120℃に昇温し30分保持することにより反応を完結させ、樹脂溶液(A-3)を得た。得られた樹脂溶液(A-3)の各種物性を表1に示す。
【0313】
(実施例4)樹脂溶液(A-4)の製造
温度計、攪拌機、ガス導入管、冷却管及び滴下槽導入口を備えた反応槽に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを98.6g、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(前出)を100.0g仕込み、加熱して100℃まで昇温し30分保持することによりエポキシ樹脂を溶解させた。反応槽の温度を70℃まで降温した後、同温度を保持しながら窒素ガスバブリングにより酸素濃度が0.5vol%以下となるまで系内を置換し、ベンゼンチオール(BT)を47.7g、トリフェニルホスフィンを0.1g投入して付加反応を行い、5時間反応させ、120℃に昇温し30分保持することにより反応を完結させた。
その後、酸素濃度7%に調整した窒素・空気混合ガスを吹き込みながら、アクリル酸(AA)を3.5g、トリフェニルホスフィンを0.6g、重合禁止剤としてアンテージW-400(川口化学工業社製)を0.3g投入して120℃にて付加反応を行い、16時間反応させて反応を完結させ、樹脂溶液(A-4)を得た。得られた樹脂溶液(A-4)の各種物性を表1に示す。
【0314】
(実施例5)樹脂溶液(A-5)の製造
温度計、攪拌機、ガス導入管、冷却管及び滴下槽導入口を備えた反応槽に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを96.5g、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(前出)を100.0g仕込み、加熱して100℃まで昇温し30分保持することによりエポキシ樹脂を溶解させた。反応槽の温度を70℃まで降温した後、同温度を保持しながら窒素ガスバブリングにより酸素濃度が0.5vol%以下となるまで系内を置換し、ベンゼンチオール(BT)を37.1g、トリフェニルホスフィンを0.1g投入して付加反応を行い、5時間反応させ、120℃に昇温し30分保持することにより反応を完結させた。
その後、酸素濃度7%に調整した窒素・空気混合ガスを吹き込みながら、アクリル酸(AA)を10.4g、トリフェニルホスフィンを0.6g、重合禁止剤としてアンテージW-400(前出)を0.2g投入して120℃にて付加反応を行い、16時間反応させて反応を完結させ、樹脂溶液(A-5)を得た。得られた樹脂溶液(A-5)の各種物性を表1に示す。
【0315】
(実施例6)樹脂溶液(A-6)の製造
温度計、攪拌機、ガス導入管、冷却管及び滴下槽導入口を備えた反応槽に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを96.5g、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(前出)を100.0g仕込み、加熱して100℃まで昇温し30分保持することによりエポキシ樹脂を溶解させた。反応槽の温度を70℃まで降温した後、同温度を保持しながら窒素ガスバブリングにより酸素濃度が0.5vol%以下となるまで系内を置換し、ベンゼンチオール(BT)を37.1g、トリフェニルホスフィンを0.1g投入して付加反応を行い、5時間反応させ、120℃に昇温し30分保持することにより反応を完結させた。
その後、プロピオン酸(PA)を10.7g、トリフェニルホスフィンを0.6g投入して120℃にて付加反応を行い、16時間反応させて反応を完結させ、樹脂溶液(A-6)を得た。得られた樹脂溶液(A-6)の各種物性を表1に示す。
【0316】
(実施例7)樹脂溶液(A-7)の製造
温度計、攪拌機、ガス導入管、冷却管及び滴下槽導入口を備えた反応槽に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを87.9g、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(前出)を100.0g仕込み、加熱して100℃まで昇温し30分保持することによりエポキシ樹脂を溶解させた。反応槽の温度を70℃まで降温した後、同温度を保持しながら窒素ガスバブリングにより酸素濃度が0.5vol%以下となるまで系内を置換し、ベンゼンチオール(BT)を31.8g、トリフェニルホスフィンを0.1g投入して付加反応を行い、5時間反応させ、120℃に昇温し30分保持することにより反応を完結させた。
その後、酸素濃度7%に調整した窒素・空気混合ガスを吹き込みながら、アクリル酸(AA)を6.9g、トリフェニルホスフィンを0.6g、重合禁止剤としてアンテージW-400(前出)を0.2g投入して120℃にて付加反応を行い、16時間反応させて反応を完結させ、樹脂溶液(A-7)を得た。得られた樹脂溶液(A-7)の各種物性を表1に示す。
【0317】
(実施例8)樹脂溶液(A-8)の製造
温度計、攪拌機、ガス導入管、冷却管及び滴下槽導入口を備えた反応槽に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを86.3g、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名「jER834」;三菱ケミカル製;エポキシ当量248.0g/当量)100.0g仕込み、加熱して100℃まで昇温し30分保持することによりエポキシ樹脂を溶解させた。反応槽の温度を70℃まで降温した後、同温度を保持しながら窒素ガスバブリングにより酸素濃度が0.5vol%以下となるまで系内を置換し、ベンゼンチオール(BT)を29.4g、トリフェニルホスフィンを0.1g投入して付加反応を行い、5時間反応させ、120℃に昇温し30分保持することにより反応を完結させ、樹脂溶液(A-8)を得た。得られた樹脂溶液(A-8)の各種物性を表1に示す。
【0318】
(実施例9)樹脂溶液(A-9)の製造
温度計、攪拌機、ガス導入管、冷却管及び滴下槽導入口を備えた反応槽に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを91.5g、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(前出)を100.0g仕込み、加熱して100℃まで昇温し30分保持することによりエポキシ樹脂を溶解させた。反応槽の温度を70℃まで降温した後、同温度を保持しながら窒素ガスバブリングにより酸素濃度が0.5vol%以下となるまで系内を置換し、ベンゼンチオール(BT)を37.1g、トリフェニルホスフィンを0.1g投入して付加反応を行い、5時間反応させ、120℃に昇温し30分保持することにより反応を完結させた。
その後、プロピオン酸(PA)10.7g、トリフェニルホスフィン0.6gを投入して付加反応を行い、16時間反応させて反応を完結させた。
その後、室温まで冷却した後、無水コハク酸(SAH)33.7g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート24.9g投入し110℃7時間保持することにより反応を完結させ、樹脂溶液(A-9)を得た。得られた樹脂溶液(A-9)の各種物性を表1に示す。
【0319】
(実施例10)樹脂溶液(A-10)の製造
温度計、攪拌機、ガス導入管、冷却管及び滴下槽導入口を備えた反応槽に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを90.5g、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(前出)を100.0g仕込み、加熱して100℃まで昇温し30分保持することによりエポキシ樹脂を溶解させた。反応槽の温度を70℃まで降温した後、同温度を保持しながら窒素ガスバブリングにより酸素濃度が0.5vol%以下となるまで系内を置換し、ベンゼンチオール(BT)を35.6g、トリフェニルホスフィンを0.1g投入して付加反応を行い、5時間反応させ、120℃に昇温し30分保持することにより反応を完結させた。
酸素濃度7%に調整した窒素・空気混合ガスを吹き込みながら、アクリル酸(AA)を5.5g、トリフェニルホスフィンを0.6g、重合禁止剤としてアンテージW-400(前出)を0.2g投入して120℃にて付加反応を行い、16時間反応させて反応を完結させた。
その後、室温まで冷却した後、無水コハク酸(SAH)14.4g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート12.0g投入し60℃12時間保持することにより反応を完結させ、樹脂溶液(A-10)を得た。得られた樹脂溶液(A-10)の各種物性を表1に示す。
【0320】
(実施例11)樹脂溶液(A-11)の製造
温度計、攪拌機、ガス導入管、冷却管及び滴下槽導入口を備えた反応槽に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを135.9g、ビフェニル型2官能エポキシ樹脂(3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ビス(グリシジルオキシ)-1,1’-ビフェニル。エポキシ当量188.0g/当量)を100.0g仕込み、加熱して100℃まで昇温し30分保持することによりエポキシ樹脂を溶解させた。反応槽の温度を70℃まで降温した後、同温度を保持しながら窒素ガスバブリングにより酸素濃度が0.5vol%以下となるまで系内を置換し、ベンゼンチオール(BT)を52.7g、トリフェニルホスフィンを0.5g投入して付加反応を行い、5時間反応させ、120℃に昇温し30分保持することにより反応を完結させた。
その後、酸素濃度7%に調整した窒素・空気混合ガスを吹き込みながら、アクリル酸(AA)4.8g、トリフェニルホスフィン0.3g、重合禁止剤としてアンテージW-400(川口化学工業社製)を0.2g投入して120℃を保持して付加反応を行い、16時間反応させて反応を完結させた。
その後、室温まで冷却した後、テトラヒドロ無水フタル酸(THPA)20.2g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート16.8g、トリフェニルホスフィン0.4gを投入し110℃7時間保持することにより反応を完結させ、樹脂溶液(A-11)を得た。得られた樹脂溶液(A-11)の各種物性を表1に示す。
【0321】
(実施例12)樹脂溶液(A-12)の製造
温度計、攪拌機、ガス導入管、冷却管及び滴下槽導入口を備えた反応槽に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを133.8g、ビフェニル型2官能エポキシ樹脂(3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ビス(グリシジルオキシ)-1,1’-ビフェニル。エポキシ当量188.0g/当量)を100.0g仕込み、加熱して100℃まで昇温し30分保持することによりエポキシ樹脂を溶解させた。反応槽の温度を120℃まで昇温した後、同温度を保持しながら窒素ガスバブリングにより酸素濃度が0.5vol%以下となるまで系内を置換し、ビスフェノールS(BPS)を33.3g、トリフェニルホスフィンを0.5g投入して付加反応を行い、5時間反応させ反応を完結させた。
その後、40℃まで降温し、ベンゼンチオール(BT)を23.4g、トリフェニルホスフィンを0.5g投入し、40℃で3時間反応させ反応を完結させた。
その後、酸素濃度7%に調整した窒素・空気混合ガスを吹き込みながら、アクリル酸(AA)4.8g、トリフェニルホスフィン1.0g、重合禁止剤としてアンテージW-400(川口化学工業社製)を0.2g投入して120℃に昇温して付加反応を行い、16時間反応させて反応を完結させた。
その後、室温まで冷却した後、無水コハク酸(SAH)13.3g、トリフェニルホスフィン0.4g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート17.0g投入し110℃7時間保持することにより反応を完結させ、樹脂溶液(A-12)を得た。得られた樹脂溶液(A-12)の各種物性を表1に示す。
【0322】
(実施例13)樹脂溶液(A-13)の製造
温度計、攪拌機、ガス導入管、冷却管及び滴下槽導入口を備えた反応槽に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを117.1g、ビフェニル型2官能エポキシ樹脂(3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ビス(グリシジルオキシ)-1,1’-ビフェニル。エポキシ当量188.0g/当量)を100.0g仕込み、加熱して100℃まで昇温し30分保持することによりエポキシ樹脂を溶解させた。反応槽の温度を120℃まで昇温した後、同温度を保持しながら窒素ガスバブリングにより酸素濃度が0.5vol%以下となるまで系内を置換し、ビスフェノールS(BPS)を16.6g、トリフェニルホスフィンを0.5g投入して付加反応を行い、5時間反応させ反応を完結させた。
その後、40℃まで降温し、ベンゼンチオール(BT)を38.1g、トリフェニルホスフィンを0.3g投入し、40℃で3時間反応させ反応を完結させた。
その後、酸素濃度7%に調整した窒素・空気混合ガスを吹き込みながら、アクリル酸(AA)4.8g、トリフェニルホスフィン1.0g、重合禁止剤としてアンテージW-400(川口化学工業社製)を0.2g投入して120℃に昇温して付加反応を行い、16時間反応させて反応を完結させた。
その後、室温まで冷却した後、無水コハク酸(SAH)13.3g、トリフェニルホスフィン0.4g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート31.3g投入し110℃7時間保持することにより反応を完結させ、樹脂溶液(A-13)を得た。得られた樹脂溶液(A-13)の各種物性を表1に示す。
【0323】
(実施例14)樹脂溶液(A-14)の製造
温度計、攪拌機、ガス導入管、冷却管及び滴下槽導入口を備えた反応槽に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを117.1g、ビフェニル型2官能エポキシ樹脂(3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ビス(グリシジルオキシ)-1,1’-ビフェニル。エポキシ当量188.0g/当量)を100.0g仕込み、加熱して100℃まで昇温し30分保持することによりエポキシ樹脂を溶解させた。反応槽の温度を120℃まで昇温した後、同温度を保持しながら窒素ガスバブリングにより酸素濃度が0.5vol%以下となるまで系内を置換し、ビスフェノールS(BPS)を16.6g、トリフェニルホスフィンを0.5g投入して付加反応を行い、5時間反応させ反応を完結させた。
その後、40℃まで降温し、ベンゼンチオール(BT)を38.1g、トリフェニルホスフィンを0.5g投入し、40℃で3時間反応させ反応を完結させた。
その後、酸素濃度7%に調整した窒素・空気混合ガスを吹き込みながら、メタクリル酸(MAA)5.7g、トリフェニルホスフィン1.0g、重合禁止剤としてアンテージW-400(川口化学工業社製)を0.2g投入して120℃に昇温して付加反応を行い、16時間反応させて反応を完結させた。
その後、室温まで冷却した後、無水コハク酸(SAH)26.6g、トリフェニルホスフィン0.4g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート45.3g投入し110℃7時間保持することにより反応を完結させ、樹脂溶液(A-14)を得た。得られた樹脂溶液(A-14)の各種物性を表1に示す。
【0324】
(実施例15)樹脂溶液(A-15)の製造
温度計、攪拌機、ガス導入管、冷却管及び滴下槽導入口を備えた反応槽に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを117.1g、ビフェニル型2官能エポキシ樹脂(3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ビス(グリシジルオキシ)-1,1’-ビフェニル。エポキシ当量188.0g/当量)を100.0g仕込み、加熱して100℃まで昇温し30分保持することによりエポキシ樹脂を溶解させた。反応槽の温度を120℃まで昇温した後、同温度を保持しながら窒素ガスバブリングにより酸素濃度が0.5vol%以下となるまで系内を置換し、ビスフェノールS(BPS)を16.6g、トリフェニルホスフィンを0.5g投入して付加反応を行い、5時間反応させ反応を完結させた。
その後、40℃まで降温し、ベンゼンチオール(BT)を29.3g、トリフェニルホスフィンを0.4g投入し、40℃で3時間反応させ反応を完結させた。
その後、酸素濃度7%に調整した窒素・空気混合ガスを吹き込みながら、アクリル酸(AA)10.5g、トリフェニルホスフィン1.0g、重合禁止剤としてアンテージW-400(川口化学工業社製)を0.2g投入して120℃に昇温して付加反応を行い、16時間反応させて反応を完結させた。
その後、室温まで冷却した後、無水コハク酸(SAH)13.3g、トリフェニルホスフィン0.4g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート29.5g投入し110℃7時間保持することにより反応を完結させ、樹脂溶液(A-15)を得た。得られた樹脂溶液(A-15)の各種物性を表1に示す。
【0325】
(実施例16)樹脂溶液(A-16)の製造
温度計、攪拌機、ガス導入管、冷却管及び滴下槽導入口を備えた反応槽に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを122.1g、フルオレン型2官能エポキシ樹脂(9,9-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)フルオレン。エポキシ当量250.0g/当量)を100.0g仕込み、加熱して100℃まで昇温し30分保持することによりエポキシ樹脂を溶解させた。反応槽の温度を120℃まで昇温した後、同温度を保持しながら窒素ガスバブリングにより酸素濃度が0.5vol%以下となるまで系内を置換し、ビスフェノールS(BPS)を25.0g、トリフェニルホスフィンを0.5g投入して付加反応を行い、5時間反応させ反応を完結させた。
その後、40℃まで降温し、ベンゼンチオール(BT)を17.6g、トリフェニルホスフィンを0.3g投入し、40℃で3時間反応させ反応を完結させた。
その後、酸素濃度7%に調整した窒素・空気混合ガスを吹き込みながら、アクリル酸(AA)3.6g、トリフェニルホスフィン0.8g、重合禁止剤としてアンテージW-400(川口化学工業社製)を0.2g投入して120℃に昇温して付加反応を行い、16時間反応させて反応を完結させた。
その後、室温まで冷却した後、無水コハク酸(SAH)10.0g、トリフェニルホスフィン0.3g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート7.6g投入し110℃7時間保持することにより反応を完結させ、樹脂溶液(A-16)を得た。得られた樹脂溶液(A-16)の各種物性を表1に示す。
【0326】
(実施例17)樹脂溶液(A-17)の製造
温度計、攪拌機、ガス導入管、冷却管及び滴下槽導入口を備えた反応槽に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを133.8g、ビフェニル型2官能エポキシ樹脂(3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ビス(グリシジルオキシ)-1,1’-ビフェニル。エポキシ当量188.0g/当量)を100.0g仕込み、加熱して100℃まで昇温し30分保持することによりエポキシ樹脂を溶解させた。反応槽の温度を120℃まで昇温した後、同温度を保持しながら窒素ガスバブリングにより酸素濃度が0.5vol%以下となるまで系内を置換し、ビスフェノールS(BPS)を33.3g、トリフェニルホスフィンを0.3g投入して付加反応を行い、5時間反応させ反応を完結させた。
その後、40℃まで降温し、ベンゼンチオール(BT)を20.5g、トリフェニルホスフィンを0.4g投入し、40℃で3時間反応させ反応を完結させた。
その後、室温まで冷却した後、無水コハク酸(SAH)13.3g、トリフェニルホスフィン0.3g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート9.5g投入し60℃12時間保持することにより反応を完結させ、樹脂溶液(A-17)を得た。得られた樹脂溶液(A-17)の各種物性を表1に示す。
【0327】
(実施例18)樹脂溶液(A-18)の製造
温度計、攪拌機、ガス導入管、冷却管及び滴下槽導入口を備えた反応槽に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを117.1g、ビフェニル型2官能エポキシ樹脂(3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ビス(グリシジルオキシ)-1,1’-ビフェニル。エポキシ当量188.0g/当量)を100.0g仕込み、加熱して100℃まで昇温し30分保持することによりエポキシ樹脂を溶解させた。反応槽の温度を120℃まで昇温した後、同温度を保持しながら窒素ガスバブリングにより酸素濃度が0.5vol%以下となるまで系内を置換し、ビスフェノールS(BPS)を33.3g、トリフェニルホスフィンを0.5g投入して付加反応を行い、5時間反応させ反応を完結させた。
その後、40℃まで降温し、ベンゼンチオール(BT)を23.4g、トリフェニルホスフィンを0.3g投入し、40℃で3時間反応させ反応を完結させた。
その後、プロピオン酸(PA)4.9g、トリフェニルホスフィン1.0g、重合禁止剤としてアンテージW-400(川口化学工業社製)を0.2g投入して120℃に昇温して付加反応を行い、16時間反応させて反応を完結させた。
その後、室温まで冷却した後、無水コハク酸(SAH)38.9g、トリフェニルホスフィン0.4g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート39.0g投入し110℃7時間保持することにより反応を完結させ、樹脂溶液(A-18)を得た。得られた樹脂溶液(A-18)の各種物性を表1に示す。
【0328】
(実施例19)樹脂溶液(A-19)の製造
温度計、攪拌機、ガス導入管、冷却管及び滴下槽導入口を備えた反応槽に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを120.4g、ビフェニル型2官能エポキシ樹脂(3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ビス(グリシジルオキシ)-1,1’-ビフェニル。エポキシ当量188.0g/当量)を100.0g仕込み、加熱して100℃まで昇温し30分保持することによりエポキシ樹脂を溶解させた。反応槽の温度を120℃まで昇温した後、同温度を保持しながら窒素ガスバブリングにより酸素濃度が0.5vol%以下となるまで系内を置換し、ビスフェノールS(BPS)を20.0g、トリフェニルホスフィンを0.5g投入して付加反応を行い、5時間反応させ反応を完結させた。
その後、40℃まで降温し、ベンゼンチオール(BT)を24.0g、トリフェニルホスフィンを0.3g投入し、40℃で3時間反応させ反応を完結させた。
その後、酸素濃度7%に調整した窒素・空気混合ガスを吹き込みながら、アクリル酸(AA)12.1g、トリフェニルホスフィン0.9g、重合禁止剤としてアンテージW-400(川口化学工業社製)を0.2g投入して120℃に昇温して付加反応を行い、16時間反応させて反応を完結させ、樹脂溶液(A-19)を得た。得られた樹脂溶液(A-19)の各種物性を表1に示す。
【0329】
(実施例20)樹脂溶液(A-20)の製造
温度計、攪拌機、ガス導入管、冷却管及び滴下槽導入口を備えた反応槽に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを125.1g、ビフェニル型2官能エポキシ樹脂(3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ビス(グリシジルオキシ)-1,1’-ビフェニル。エポキシ当量188.0g/当量)を100.0g仕込み、加熱して100℃まで昇温し30分保持することによりエポキシ樹脂を溶解させた。反応槽の温度を120℃まで昇温した後、同温度を保持しながら窒素ガスバブリングにより酸素濃度が0.5vol%以下となるまで系内を置換し、ビスフェノールS(BPS)を24.6g、トリフェニルホスフィンを0.5g投入して付加反応を行い、5時間反応させ反応を完結させた。
その後、40℃まで降温し、ベンゼンチオール(BT)を21.7g、トリフェニルホスフィンを0.3g投入し、40℃で3時間反応させ反応を完結させ、樹脂溶液(A-20)を得た。得られた樹脂溶液(A-20)の各種物性を表1に示す。
【0330】
(実施例21)樹脂溶液(A-21)の製造
温度計、攪拌機、ガス導入管、冷却管及び滴下槽導入口を備えた反応槽に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを104.1g、フルオレン型2官能エポキシ樹脂(9,9-ビス(6-グリシジルオキシナフチル)フルオレン。エポキシ当量305.0g/当量)を100.0g仕込み、加熱して100℃まで昇温し30分保持することによりエポキシ樹脂を溶解させた。反応槽の温度を120℃まで昇温した後、同温度を保持しながら窒素ガスバブリングにより酸素濃度が0.5vol%以下となるまで系内を置換し、ビスフェノールS(BPS)を12.3g、トリフェニルホスフィンを0.45g投入して付加反応を行い、5時間反応させ反応を完結させた。
その後、40℃まで降温し、ベンゼンチオール(BT)を21.7g投入し、40℃で3時間反応させ反応を完結させた。
その後、酸素濃度7%に調整した窒素・空気混合ガスを吹き込みながら、アクリル酸(AA)3.0g、トリフェニルホスフィン0.8g、重合禁止剤としてアンテージW-400(川口化学工業社製)を0.2g投入して120℃に昇温して付加反応を行い、16時間反応させて反応を完結させた。
その後、室温まで冷却した後、無水コハク酸(SAH)15.7g、トリフェニルホスフィン0.3g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート14.8g投入し110℃7時間保持することにより反応を完結させ、樹脂溶液(A-21)を得た。得られた樹脂溶液(A-21)の各種物性を表1に示す。
【0331】
(実施例22)樹脂溶液(A-22)の製造
温度計、攪拌機、ガス導入管、冷却管及び滴下槽導入口を備えた反応槽に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを98.4g、フルオレン型2官能エポキシ樹脂(9,9-ビス(6-グリシジルオキシナフチル)フルオレン。エポキシ当量305.0g/当量)を100.0g仕込み、加熱して100℃まで昇温し30分保持することによりエポキシ樹脂を溶解させた。反応槽の温度を120℃まで昇温した後、同温度を保持しながら窒素ガスバブリングにより酸素濃度が0.5vol%以下となるまで系内を置換し、ビスフェノールS(BPS)を6.2g、トリフェニルホスフィンを0.43g投入して付加反応を行い、5時間反応させ反応を完結させた。
その後、40℃まで降温し、ベンゼンチオール(BT)を21.7g投入し、40℃で3時間反応させ反応を完結させた。
その後、酸素濃度7%に調整した窒素・空気混合ガスを吹き込みながら、アクリル酸(AA)6.5g、トリフェニルホスフィン0.8g、重合禁止剤としてアンテージW-400(川口化学工業社製)を0.2g投入して120℃に昇温して付加反応を行い、16時間反応させて反応を完結させた。
その後、室温まで冷却した後、無水コハク酸(SAH)15.7g、トリフェニルホスフィン0.3g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート14.8g投入し110℃7時間保持することにより反応を完結させ、樹脂溶液(A-22)を得た。得られた樹脂溶液(A-22)の各種物性を表1に示す。
【0332】
(実施例23)樹脂溶液(A-23)の製造
温度計、攪拌機、ガス導入管、冷却管及び滴下槽導入口を備えた反応槽に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを122.1g、フルオレン型2官能エポキシ樹脂(9,9-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)フルオレン。エポキシ当量250.0g/当量)を100.0g仕込み、加熱して100℃まで昇温し30分保持することによりエポキシ樹脂を溶解させた。反応槽の温度を120℃まで昇温した後、同温度を保持しながら窒素ガスバブリングにより酸素濃度が0.5vol%以下となるまで系内を置換し、ビスフェノールS(BPS)を7.5g、トリフェニルホスフィンを0.4g投入して付加反応を行い、5時間反応させ反応を完結させた。
その後、40℃まで降温し、ベンゼンチオール(BT)を26.4g投入し、40℃で3時間反応させ反応を完結させた。
その後、室温まで冷却した後、テトラヒドロ無水フタル酸(THPA)29.2g、トリエチルアミン0.5g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート27.4g投入し110℃7時間保持することにより反応を完結させ、ライトエステルP-2M(共栄社化学株式会社製)を1.9g投入し、樹脂溶液(A-23)を得た。得られた樹脂溶液(A-23)の各種物性を表1に示す。
【0333】
(実施例24)樹脂溶液(A-24)の製造
温度計、攪拌機、ガス導入管、冷却管及び滴下槽導入口を備えた反応槽に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを107.3g、フルオレン型2官能エポキシ樹脂(9,9-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)フルオレン。エポキシ当量250.0g/当量)を100.0g仕込み、加熱して100℃まで昇温し30分保持することによりエポキシ樹脂を溶解させた。反応槽の温度を120℃まで昇温した後、同温度を保持しながら窒素ガスバブリングにより酸素濃度が0.5vol%以下となるまで系内を置換し、ビスフェノールA(BPA)を6.8g、トリフェニルホスフィンを0.4g投入して付加反応を行い、5時間反応させ反応を完結させた。
その後、40℃まで降温し、ベンゼンチオール(BT)を30.8g、トリフェニルホスフィンを0.3g投入し、40℃で3時間反応させ反応を完結させた。
その後、酸素濃度7%に調整した窒素・空気混合ガスを吹き込みながら、アクリル酸(AA)6.5g、トリフェニルホスフィン0.9g、重合禁止剤としてアンテージW-400(川口化学工業社製)を0.2g投入して120℃に昇温して付加反応を行い、16時間反応させて反応を完結させた。
その後、室温まで冷却した後、無水コハク酸(SAH)28.0g、トリフェニルホスフィン0.3g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート19.1g投入し110℃7時間保持することにより反応を完結させ、樹脂溶液(A-24)を得た。得られた樹脂溶液(A-24)の各種物性を表1に示す。
【0334】
(比較例1)樹脂溶液(B-1)の製造
温度計、攪拌機、ガス導入管、冷却管及び滴下槽導入口を備えた反応槽に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを88.7g、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(前出)を100.0g仕込み、加熱して100℃まで昇温し30分保持することによりエポキシ樹脂を溶解させた。反応槽の温度を120℃まで昇温した後、同温度を保持しながら系内を窒素置換し、プロピオン酸(PA)を35.6g、トリフェニルホスフィンを0.5g投入して付加反応を行い、12時間反応させ、樹脂溶液(B-1)を得た。得られた樹脂溶液(B-1)の各種物性を表1に示す。
【0335】
(比較例2)樹脂溶液(B-2)の製造
温度計、攪拌機、ガス導入管、冷却管及び滴下槽導入口を備えた反応槽に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを88.5g、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(前出)を100.0g仕込み、加熱して100℃まで昇温し30分保持することによりエポキシ樹脂を溶解させた。反応槽の温度を120℃まで昇温した後、同温度を保持しながら系内を窒素置換し、プロピオン酸(PA)を32.7g、トリフェニルホスフィンを0.5g投入して付加反応を行い、12時間反応させ、樹脂溶液(B-2)を得た。得られた樹脂溶液(B-2)の各種物性を表1に示す。
【0336】
(比較例3)樹脂溶液(B-3)の製造
温度計、攪拌機、ガス導入管、冷却管及び滴下槽導入口を備えた反応槽に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート219.8g仕込み、窒素置換した後、加熱して90℃まで昇温した。他方、滴下槽(A)として、ビーカーにメタクリル酸メチル(MMA)87.0g、メタクリル酸(MAA)13.0g、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート2.0g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを10.0g攪拌混合したものを準備し、滴下槽(B)に、n-ドデシルメルカプタン2.0g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート3.5gを攪拌混合したものを準備した。反応槽の温度が90℃になった後、同温度を保持しながら、滴下槽から3時間かけて滴下を開始し、重合を行った。滴下終了後30分間90℃を保った後、115℃まで昇温し、90分間熟成を行った。その後、室温まで冷却した後、メタクリル酸グリシジル(GMA)7.4g、トリエチルアミン0.3g、アンテージW-400を0.2g投入し、酸素濃度7%に調整した酸素/窒素MIXガスを20ml/minでバブリングしながら115℃7時間反応させ樹脂溶液(B-3)を得た。得られた樹脂溶液の各種物性を表2に示す。
【0337】
(比較例4)樹脂溶液(B-4)の製造
温度計、攪拌機、ガス導入管、冷却管及び滴下槽導入口を備えた反応槽に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート153.9g、プロピレングリコールモノメチルエーテル65.9g仕込み、窒素置換した後、加熱して90℃まで昇温した。他方、滴下槽(A)として、ビーカーにメタクリル酸メチル(MMA)70.0g、メタクリル酸(MAA)30.0g、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート2.0g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10.0gを攪拌混合したものを準備し、滴下槽(B)に、n-ドデシルメルカプタン2.0g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート3.5gを攪拌混合したものを準備した。反応槽の温度が90℃になった後、同温度を保持しながら、滴下槽から3時間かけて滴下を開始し、重合を行った。滴下終了後30分間90℃を保った後、115℃まで昇温し、90分間熟成を行った。その後、室温まで冷却した後、メタクリル酸グリシジル(GMA)16.9g、トリエチルアミン0.3g、アンテージW-400を0.2g投入し、酸素濃度7%に調整した酸素/窒素MIXガスを20ml/minでバブリングしながら115℃7時間反応させ樹脂溶液(B-4)を得た。得られた樹脂溶液の各種物性を表2に示す。
【0338】
(実施例25~61、比較例5~9)
表3~5に示す配合(固形分量)で、上記で得られた樹脂溶液と、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、光ラジカル重合開始剤(イルガキュアOXE-02、BASF社製)、熱ラジカル重合開始剤(パーブチルO、日油社製)、金属酸化物粒子、光酸発生剤(CPI-100P、サンアプロ株式会社製)、光塩基発生剤(WPBG-140、富士フイルム和光純薬株式会社製)、熱酸発生剤(TA-100、サンアプロ株式会社製)、又は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを混合して、感光性樹脂組成物1~30及び硬化性樹脂組成物1~12を得た。なお、金属酸化物粒子は、下記に示す方法で調製した。
【0339】
<金属酸化物粒子の調製>
製造例1
(2-エチルヘキサン酸及び/又は2-エチルヘキサン酸由来のカルボキシレートで被覆された被覆型酸化ジルコニウム粒子(被覆型ZrO粒子1)の製造)
2-エチルヘキサン酸ジルコニウムミネラルスピリット溶液(782g、2-エチルヘキサン酸ジルコニウム含有率44質量%、第一希元素化学工業社製)に純水(268g)を混合した。得られた混合液を、攪拌機付きオートクレーブ内に仕込み、該オートクレーブ内の雰囲気を窒素ガスで置換した。その後、混合液を180℃まで加熱し、該温度で16時間保持(オートクレーブ内圧力は0.94MPa)して反応させ、酸化ジルコニウム粒子を生成した。続いて、反応後の混合液を取り出し、底部に溜まった沈殿物を濾別してアセトンで洗浄した後に、乾燥した。乾燥後の上記沈殿物(100g)をトルエン(800mL)に分散させたところ、白濁溶液となった。次に、精製工程として、定量濾紙(アドバンテック東洋社製、No.5C)にて再度濾過し、沈殿物中の粗大粒子などを除去した。更に、濾液を減圧濃縮してトルエンを除去することで白色の酸化ジルコニウム粒子(被覆型ZrO粒子1)を回収した。
【0340】
得られた被覆型ZrO粒子1の結晶構造をXRD回折パターンで確認したところ、正方晶と単斜晶に帰属される回折線が検出され、回折線の強度から、正方晶と単斜晶の割合は54/46で、その粒子径(結晶子径)は5nmであった。
【0341】
電子顕微鏡(日本電子社製、FE-TEM JEM-2100F、倍率60万倍)により測定して得られた被覆型ZrO粒子1の平均粒子径(数平均一次粒子径)は、12nmであった。また、得られた被覆型ZrO粒子1を、赤外吸収スペクトルによって分析したところ、C-H由来の吸収と、COOH由来の吸収が確認できた。当該吸収は、被覆型ZrO粒子1において表面を被覆している2-エチルヘキサン酸及び/又は2-エチルヘキサン酸由来のカルボキシレートに起因するものと考えられる。
更に上記<質量減少率の測定>に従って測定した被覆型ZrO粒子1の質量減少率は、12質量%であった。従って、被覆型ZrO粒子1において表面を被覆している2-エチルヘキサン酸及び/又は2-エチルヘキサン酸由来のカルボキシレートは、被覆型ZrO粒子1全体の12質量%であることが分かった。
【0342】
製造例2
(2-エチルヘキサン酸及び/又は2-エチルヘキサン酸由来のカルボキシレートと2-アクリロイルオキシエチルサクシネートで被覆された酸化ジルコニウム粒子(被覆型ZrO粒子2)の製造)
上記製造例1で得られた被覆型ZrO粒子1(10g)と2-アクリロイルオキシエチルサクシネート(1.5g)をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(12g、以下「PGMEA」と称する)中で均一分散するまで撹拌混合した。次いで、n-ヘキサン(36g)を添加することで分散粒子を凝集させて溶液を白濁させ、白濁液から凝集粒子を濾紙により分離した。その後、分離した凝集粒子をn-ヘキサン(36g)中に添加、10分撹拌後、凝集粒子を濾紙により分離し、得られた粒子を室温で真空乾燥することで、2-エチルヘキサン酸及び/又は2-エチルヘキサン酸由来のカルボキシレートと2-アクリロイルオキシエチルサクシネートで表面処理された酸化ジルコニウム粒子(被覆型ZrO粒子2)を調製した。
【0343】
得られた被覆型ZrO粒子2を重クロロホルムに分散させて測定資料とし、H-NMRによる分析を行なった。その結果、2-エチルヘキサン酸及び/又は2-エチルヘキサン酸由来のカルボキシレートと2-アクリロイルオキシエチルサクシネートの存在モル比率が24:76であることがわかった。
【0344】
上記<質量減少率の測定>に従って測定した被覆型ZrO粒子2の質量減少率は、18質量%だった。従って、被覆型酸化ジルコニウム粒子を被覆する2-エチルヘキサン酸及び/又は2-エチルヘキサン酸由来のカルボキシレート、及び2-アクリロイルオキシエチルサクシネートは、被覆型酸化ジルコニウム粒子全体の18質量%であることが分かった。
【0345】
上記で得られた被覆型ZrO粒子2(7g)、メチルエチルケトン(3g)、DISPER BYK-111(ビッグケミー・ジャパン社製、0.14g)を配合し、均一撹拌することで、ジルコニア粒子分散液を得た。電子顕微鏡により測定した上記被覆型ZrO粒子2の数平均一次粒子径は、12nmであった。
【0346】
得られた感光性樹脂組成物1~30及び硬化性樹脂組成物1~12について、各種評価を行った。結果を表3~5に示す。
【0347】
【表1】
【0348】
【表2】
【0349】
【表3】
【0350】
【表4】
【0351】
【表5】
【0352】
表1より、上記一般式(1)で表される芳香環含有構造を有する実施例1~24の樹脂は、上記芳香環含有構造を有しない比較例1~2の樹脂と比べて高い屈折率を示すことが確認された。特に実施例16、21~24に示すフルオレン骨格を有するエポキシ樹脂を出発原料とすることで、非常に屈折率の高いアルカリ可溶性樹脂を合成できた。但し、実施例10、17、23の樹脂はエポキシ基と酸基が共存するため、他の実施例の樹脂と比較して、保存安定性が劣る結果となった。実施例23の樹脂は、pKaが4.2以下の酸化合物を含有するため、実施例10や17の樹脂よりは保存安定性が改善されていた。
【0353】
表3より、実施例の樹脂を添加した感光性樹脂組成物の硬化物もまた、高い屈折率を示すことが確認された。また、実施例35より、金属酸化物粒子を併用することにより、より高い屈折率を示すことが確認された。また、実施例の感光性樹脂組成物は、比較例の感光性樹脂組成物と比べて、現像速度が速かった。これは、実施例の樹脂がチオエーテル結合をもつためである。
【0354】
また、実施例の感光性樹脂組成物は、耐溶剤性も良好であり、これは芳香族ユニットがπ-π相互作用することにより密な硬化膜となるためと推察される。耐溶剤性はエポキシ基や二重結合(特にエポキシ基)の存在により、さらに特性を向上させることができる。
【0355】
実施例の感光性樹脂組成物は、密着性も良好であり、これはチオエーテル結合により基板との密着性が向上したためと推察される。密着性は、二重結合やエポキシ基(特に二重結合)の存在により、さらに向上させることができる。
【0356】
上記一般式(1)の構造を有し、かつアルカリ可溶性を有する実施例9の樹脂は、エポキシ当量が10000g/当量超であり、二重結合当量が、二重結合当量を有しないため8000g/当量超である。このような樹脂を含む感光性樹脂組成物では、熱や光によって余分な硬化が起こらないため線太りが小さいパターンを形成することができた。
また、2官能エポキシ樹脂を出発原料とする実施例11~24の樹脂を含む感光性樹脂組成物は、骨格のしなやかさにより、現像速度が比較的速い結果となった。フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂を出発原料とする樹脂(実施例16、21~24)は、ビフェニル基を有するエポキシ樹脂を出発原料とする樹脂(実施例11~15、17~20)より現像速度がやや劣る結果となった。なお実施例1~8や実施例19~20の樹脂はアルカリ可溶性を持たないため、現像には別のアルカリ可溶性樹脂と併用が必要な点で他の実施例の樹脂には劣る結果となっている。
【0357】
表4より、実施例の樹脂を添加した硬化性樹脂組成物の硬化物もまた、高い屈折率を示すことが確認された。エポキシ基を有する樹脂は、光酸発生剤や光塩基発生剤、熱酸発生剤の添加により硬化が促進され、硬化物の屈折率を向上させることができた。二重結合を有する樹脂は光ラジカル重合開始剤や熱ラジカル重合開始剤の添加により硬化が促進され、硬化物の屈折率を向上させることができた。
【0358】
表5より、2官能エポキシ樹脂を出発原料にする樹脂を含むと、線状構造により凝集が制御されて、金属酸化物粒子との保存安定性が良好となることがわかった。