(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180394
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】光学積層体、画像表示装置、及び光学積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20241219BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20241219BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20241219BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20241219BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20241219BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20241219BHJP
H10K 50/86 20230101ALI20241219BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20241219BHJP
【FI】
G02B5/30
G09F9/00 313
C09J7/38
C09J201/00
B32B7/023
B32B27/36 102
H10K50/86
H10K59/10
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024155424
(22)【出願日】2024-09-10
(62)【分割の表示】P 2022184946の分割
【原出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浪岡 優吉
(72)【発明者】
【氏名】長田 潤枝
(72)【発明者】
【氏名】木村 智之
(57)【要約】
【課題】耐衝撃性及び密着性が向上した光学積層体を提供する。
【解決手段】光学積層体は、位相差フィルム、アンカー層、及び粘着シートを含む。光学積層体は、位相差フィルム、アンカー層、及び粘着シートがこの順に積層された構造を有する。位相差フィルムは、ポリカーボネート系樹脂を含む。アンカー層は、ポリマーCを含む。アンカー層の厚みは、15nm以上28nm以下である。ポリマーCは、ポリオキシアルキレン基含有ポリマー及びポリウレタン系ポリマーからなる群より選択される少なくとも1つを含有していてもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート系樹脂を含む位相差フィルム、ポリマーCを含むアンカー層、及び粘着シートを含み、前記位相差フィルム、前記アンカー層、及び前記粘着シートがこの順に積層された光学積層体であって、
前記アンカー層の厚みは、15nm以上28nm以下である、光学積層体。
【請求項2】
前記ポリマーCは、ポリオキシアルキレン基含有ポリマー及びポリウレタン系ポリマーからなる群より選択される少なくとも1つを含有する、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項3】
前記アンカー層の厚みは、15nm以上23nm以下である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項4】
前記粘着シートの25℃における貯蔵弾性率は、0.05MPa以上である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項5】
前記粘着シートの25℃における貯蔵弾性率は、0.15MPa以上である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の光学積層体と、画像形成層と、を備える、画像表示装置。
【請求項7】
ポリカーボネート系樹脂を含む位相差フィルム、ポリマーCを含むアンカー層、及び粘着シートを含み、前記位相差フィルム、前記アンカー層、及び前記粘着シートがこの順に積層された光学積層体の製造方法であって、
有機溶媒を含む溶媒Sと、ポリマーCとを含有するアンカー層塗布液を、前記位相差フィルムに塗布して厚みがT(μm)の塗布膜を形成することと、
前記塗布膜を乾燥することと、を含み、
前記アンカー層塗布液において、前記溶媒S100重量部に対する前記ポリマーCの重量部Wcは、0.01以上0.5以下であり、
下記式(1)により求めた、前記塗布膜の換算厚みは、2μm以上10μm以下である、光学積層体の製造方法。
塗布膜の換算厚み=T×Wc/0.1 (1)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体、画像表示装置、及び光学積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置及びエレクトロルミネセンス(EL)表示装置(例えば、有機EL表示装置、無機EL表示装置)に代表される画像表示装置が急速に普及している。これら各種の画像表示装置は、通常、液晶層、EL発光層等の画像形成層と、光学フィルム及び粘着シートを含む光学積層体と、の積層構造を有している。粘着シートは、主に、光学積層体に含まれるフィルム間の接合や、画像形成層と光学積層体との接合に使用される。
【0003】
特許文献1には、少なくともポリカーボネート樹脂(A)を含有するフィルム層と、このポリカーボネート樹脂(A)とは異なるポリカーボネート樹脂(B)を含有する基体とを含み、フィルム層が表層にあるポリカーボネート樹脂積層体であって、ポリカーボネート樹脂を含有するフィルム層が所定の条件を満足する、ポリカーボネート樹脂積層体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光学積層体は、例えば、位相差フィルム等の光学フィルムと粘着シートとを有する。画像表示装置の製造プロセスにおいて、光学積層体は、所定の位置に配置するために、その側面が棒及びピン等の位置合わせ用部材に沿って配置されることがある。この際、位置合わせ用部材との接触により、光学積層体の端部に粘着剤の欠けが生じる場合がある。粘着剤の欠けは、画像表示装置における表示不良の原因になりうる。
【0006】
そこで本発明は、耐衝撃性及び密着性が向上した光学積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
ポリカーボネート系樹脂を含む位相差フィルム、ポリマーCを含むアンカー層、及び粘着シートを含み、前記位相差フィルム、前記アンカー層、及び前記粘着シートがこの順に積層された光学積層体であって、
前記アンカー層の厚みは、15nm以上28nm以下である、光学積層体を提供する。
【0008】
さらに、本発明は、
上記の光学積層体と、画像形成層と、を備える、画像表示装置を提供する。
【0009】
さらに、本発明は、
ポリカーボネート系樹脂を含む位相差フィルム、ポリマーCを含むアンカー層、及び粘着シートを含み、前記位相差フィルム、前記アンカー層、及び前記粘着シートがこの順に積層された光学積層体の製造方法であって、
有機溶媒を含む溶媒Sと、ポリマーCとを含有するアンカー層塗布液を、前記位相差フィルムに塗布して厚みがT(μm)の塗布膜を形成することと、
前記塗布膜を乾燥することと、を含み、
前記アンカー層塗布液において、前記溶媒S100重量部に対する前記ポリマーCの重量部Wcは、0.01以上0.5以下であり、
下記式(1)により求めた、前記塗布膜の換算厚みは、2μm以上10μm以下である、光学積層体の製造方法を提供する。
塗布膜の換算厚み=T×Wc/0.1 (1)
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐衝撃性及び密着性が向上した光学積層体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本実施形態の光学積層体の一例を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、光学積層体の別の一例を示す模式的な断面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態の画像表示装置の一例を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第1態様にかかる光学積層体は、
ポリカーボネート系樹脂を含む位相差フィルム、ポリマーCを含むアンカー層、及び粘着シートを含み、前記位相差フィルム、前記アンカー層、及び前記粘着シートがこの順に積層された光学積層体であって、
前記アンカー層の厚みは、15nm以上28nm以下である。
【0013】
本発明の第2態様において、例えば、第1態様にかかる光学積層体では、前記ポリマーCは、ポリオキシアルキレン基含有ポリマー及びポリウレタン系ポリマーからなる群より選択される少なくとも1つを含有する。
【0014】
本発明の第3態様において、例えば、第1又は第2態様にかかる光学積層体では、前記アンカー層の厚みは、15nm以上23nm以下である。
【0015】
本発明の第4態様において、例えば、第1~第3態様のいずれか1つにかかる光学積層体では、前記粘着シートの25℃における貯蔵弾性率は、0.05MPa以上である。
【0016】
本発明の第5態様において、例えば、第1~第4態様のいずれか1つにかかる光学積層体では、前記粘着シートの25℃における貯蔵弾性率は、0.15MPa以上である。
【0017】
本発明の第6態様にかかる画像表示装置は、第1~第5態様のいずれか1つにかかる光学積層体と、画像形成層と、を備える。
【0018】
本発明の第7態様にかかる光学積層体の製造方法は、
ポリカーボネート系樹脂を含む位相差フィルム、ポリマーCを含むアンカー層、及び粘着シートを含み、前記位相差フィルム、前記アンカー層、及び前記粘着シートがこの順に積層された光学積層体の製造方法であって、
有機溶媒を含む溶媒Sと、ポリマーCとを含有するアンカー層塗布液を、前記位相差フィルムに塗布して厚みがT(μm)の塗布膜を形成することと、
前記塗布膜を乾燥することと、を含み、
前記アンカー層塗布液において、前記溶媒S100重量部に対する前記ポリマーCの重量部Wcは、0.01以上0.5以下であり、
下記式(1)により求めた、前記塗布膜の換算厚みは、2μm以上10μm以下である。
塗布膜の換算厚み=T×Wc/0.1 (1)
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本発明は、以下に示す実施形態に限定されない。
【0020】
本実施形態に係る光学積層体は、位相差フィルム、アンカー層、及び粘着シートを含む。光学積層体は、位相差フィルム、アンカー層、及び粘着シートがこの順に積層された構造を有する。位相差フィルムは、ポリカーボネート系樹脂を含む。アンカー層は、ポリマーCを含む。アンカー層の厚みは、15nm以上28nm以下である。
【0021】
アンカー層の形成は、粘着シートの欠けの防止と密着性とを両立させうる手段である。しかし、本発明者らの検討によれば、ポリカーボネート系樹脂を含む位相差フィルムにアンカー層を積層させたとき、位相差フィルムのアンカー層が形成される面に脆弱層が生じることが判明した。脆弱層は、ポリカーボネート系樹脂を含む位相差フィルムを用いたときに特異的に発達する。詳細は明らかでないが、アンカー層を形成するための塗布液に含まれている有機溶媒が位相差フィルムに含まれるポリカーボネート系樹脂と部分的に反応し、又は部分的に変質させることにより、脆弱層が生じると推察される。脆弱層が生じることにより、粘着シートと位相差フィルムとの密着力、すなわち投錨力は低下する。さらに検討を進めた結果、脆弱層の影響を緩和しながら粘着シートの欠けを防止するためには、アンカー層を適切な厚みで形成するとよいことが見い出された。
【0022】
図1は、本実施形態の光学積層体の一例を模式的に示す断面図である。光学積層体1Aは、位相差フィルム2、アンカー層3、及び粘着シート4を含む。光学積層体1Aは、位相差フィルム2、アンカー層3、及び粘着シート4がこの順に積層された構造を有する。
【0023】
アンカー層3は、位相差フィルム2上に形成されている。アンカー層3は、位相差フィルム2に接している。アンカー層3は、位相差フィルム2の一方の主面に形成されている。
図1では、アンカー層3は、位相差フィルム2の一方の主面の全体に形成されている。ただし、位相差フィルム2の一方の主面の一部のみにアンカー層3が形成されていてもよい。本明細書において、「主面」は、フィルム又は層の最も広い面積を有する面を意味する。
【0024】
粘着シート4は、アンカー層3に接して形成されている。粘着シート4は、アンカー層3の一方の主面に形成されている。詳細には、粘着シート4は、アンカー層3の位相差フィルム2が形成されていない主面に形成されている。
図1では、粘着シート4は、アンカー層3の一方の主面の全体に形成されている。ただし、アンカー層3の一方の主面の一部のみに粘着シート4が形成されていてもよい。
【0025】
[粘着シート]
粘着シートは、例えば、粘着剤組成物(I)から形成される。以下、粘着剤組成物(I)の詳細について述べる。
【0026】
[粘着剤組成物(I)]
粘着シートを構成する粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、エポキシ系粘着剤、ポリエーテル系粘着剤などが挙げられる。なお、粘着シートを構成する粘着剤は、単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。ただし、透明性、加工性、耐久性、密着性などの点から、(メタ)アクリル系ポリマーを含有するアクリル系粘着剤(組成物)を単独で用いることが好ましい。言い換えると、粘着シートは、(メタ)アクリル系ポリマーを含むことが好ましい。本明細書において「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを意味する。また、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートを意味する。
【0027】
[(メタ)アクリル系ポリマー(A)]
(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、炭素数1~30のアルキル基を側鎖に有する(メタ)アクリル系単量体に由来する構成単位を主たる単位として有していてもよい。アルキル基は、直鎖状であっても分岐を有していてもよい。(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、(メタ)アクリル系単量体(A1)に由来する構成単位を1種又は2種以上有していてもよい。(メタ)アクリル系単量体(A1)の例は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、n-へキシル(メタ)アクリレート、イソヘキシル(メタ)アクリレート、イソヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート(ラウリル(メタ)アクリレート)、n-トリデシル(メタ)アクリレート及びn-テトラデシル(メタ)アクリレートである。本明細書において「主たる単位」とは、ポリマーが有する全構成単位のうち、例えば50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上を占める単位を意味する。
【0028】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、ホモポリマーとしたときにガラス転移温度(Tg)が-70~-20℃の範囲にある(メタ)アクリル系単量体(A1)に由来する構成単位を有していてもよい。当該単量体(A1)の例は、n-ブチルアクリレートである。
【0029】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、(メタ)アクリル系単量体(A1)に由来する構成単位以外の構成単位を有していてもよい。当該構成単位は、(メタ)アクリル系単量体(A1)と共重合可能な単量体(A2)に由来する。(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、当該構成単位を1種又は2種以上有していてもよい。
【0030】
単量体(A2)の例は、芳香環含有単量体である。芳香環含有単量体は、芳香環含有(メタ)アクリル系単量体であってもよい。芳香環含有単量体の例は、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル化β-ナフトール(メタ)アクリレート及びビフェニル(メタ)アクリレートである。(メタ)アクリル系ポリマー(A)における芳香環含有単量体に由来する構成単位の含有率は、例えば0~50重量%であり、1~30重量%、5~25重量%、さらには8~20重量%であってもよい。粘着剤組成物(I)における架橋剤(B)の配合量が増すと、架橋剤(B)の自己重合体が形成されることがある。芳香環含有単量体に由来する構成単位を(メタ)アクリル系ポリマー(A)が有することは、(メタ)アクリル系ポリマー(A)と、架橋剤(B)及びその自己重合体との相溶性を向上させる。相溶性の向上は、例えば自己重合体の析出が抑制されることによって、粘着シートの均一性の向上に寄与しうる。
【0031】
単量体(A2)の別の例は、水酸基含有単量体である。水酸基含有単量体は、水酸基含有(メタ)アクリル系単量体であってもよい。水酸基含有単量体の例は、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート及び12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、並びに(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)-メチルアクリレートである。なお、水酸基は、各種の架橋剤と反応しうる。形成する架橋構造の均一性を高める観点からは、(メタ)アクリル系ポリマー(A)における水酸基含有単量体に由来する構成単位の含有率は、1重量%以下であってもよく、0.5重量%以下、更には0.1重量%以下であってもよく、0重量%であっても(当該構成単位を含まなくても)よい。
【0032】
単量体(A2)は、カルボキシル基含有単量体、アミノ基含有単量体、アミド基含有単量体であってもよい。カルボキシル基含有単量体の例は、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸及びクロトン酸である。アミノ基含有単量体の例は、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びN,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートである。アミド基含有単量体の例は、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メチロール-N-プロパン(メタ)アクリルアミド、アミノメチル(メタ)アクリルアミド、アミノエチル(メタ)アクリルアミド、メルカプトメチル(メタ)アクリルアミド及びメルカプトエチル(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド系単量体;N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン及びN-(メタ)アクリロイルピロリジン等のN-アクリロイル複素環単量体;並びにN-ビニルピロリドン及びN-ビニル-ε-カプロラクタム等のN-ビニル基含有ラクタム系単量体である。カルボキシル基含有単量体、特にアクリル酸、に由来する構成単位を(メタ)アクリル系ポリマー(A)が有することで、例えば、架橋剤(B)の自己重合性を高めることができる。架橋剤(B)の自己重合性の向上は、特に、加湿環境下における粘着シートの剥がれの抑制や、架橋剤(B)の含有率が高い系における粘着シートの物性の安定化に寄与しうる。
【0033】
単量体(A2)は、多官能性単量体であってもよい。多官能性単量体の例は、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート(1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート)、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート及びウレタンアクリレート等の多官能アクリレート;並びにジビニルベンゼンである。多官能アクリレートは、好ましくは1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートである。
【0034】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)におけるカルボキシル基含有単量体、アミノ基含有単量体、アミド基含有単量体及び多官能性単量体に由来する構成単位の含有率の合計は、好ましくは20重量%以下であり、より好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは8重量%以下である。(メタ)アクリル系ポリマー(A)が当該構成単位を有する場合、含有率の合計は、例えば0.01重量%以上であり、0.05重量%以上であってもよい。(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、多官能性単量体に由来する構成単位を含まなくてもよい。
【0035】
その他の単量体(A2)の例は、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシトリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-メトキシブチル及び(メタ)アクリル酸4-エトキシブチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル;(メタ)アクリル酸グリシジル及び(メタ)アクリル酸メチルグリシジル等のエポキシ基含有単量体;ビニルスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸基含有単量体;リン酸基含有単量体;(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル及び(メタ)アクリル酸イソボルニル等の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル;酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;スチレン及びビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン及びイソブチレン等のオレフィン類、又はジエン類;ビニルアルキルエーテル等のビニルエーテル類;並びに塩化ビニルである。
【0036】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)における上記その他の単量体(A2)に由来する構成単位の含有率の合計は、例えば30重量%以下であり、10重量%以下であってもよく、0重量%(当該構成単位を含まない)であってもよい。
【0037】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、上述した1種又は2種以上の単量体を公知の方法により重合して形成できる。単量体と、単量体の部分重合物とを重合してもよい。重合は、例えば、溶液重合、乳化重合、塊状重合、熱重合、活性エネルギー線重合により実施できる。光学的透明性に優れる粘着シートを形成できることから、溶液重合、活性エネルギー線重合が好ましい。重合は、単量体及び/又は部分重合物と酸素との接触を避けて実施することが好ましく、このために、例えば、窒素等の不活性ガス雰囲気下における重合、あるいは樹脂フィルム等により酸素を遮断した状態での重合を採用できる。形成する(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等のいずれの態様であってもよい。
【0038】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)を形成する重合系は、1種又は2種以上の重合開始剤を含んでいてもよい。重合開始剤の種類は、重合反応により選択でき、例えば、熱重合開始剤、光重合開始剤であってもよい。
【0039】
溶液重合に使用する溶媒は、例えば、酢酸エチル、酢酸n-ブチル等のエステル類;トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;n-ヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類である。ただし、溶媒は上記例に限定されない。溶媒は、2種以上の溶媒の混合溶媒であってもよい。
【0040】
溶液重合に使用する重合開始剤は、例えば、アゾ系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤、レドックス系重合開始剤である。過酸化物系重合開始剤は、例えば、ジベンゾイルペルオキシド、t-ブチルペルマレエートである。なかでも、特開2002-69411号公報に開示のアゾ系重合開始剤が好ましい。当該アゾ系重合開始剤は、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4’-アゾビス-4-シアノバレリアン酸である。ただし、重合開始剤は上記例に限定されない。アゾ系重合開始剤の使用量は、例えば、単量体の全量100重量部に対して0.05~0.5重量部であり、0.1~0.3重量部であってもよい。
【0041】
活性エネルギー線重合に使用する活性エネルギー線は、例えば、α線、β線、γ線、中性子線、電子線等の電離性放射線、及び紫外線である。活性エネルギー線は、紫外線が好ましい。紫外線の照射による重合は、光重合とも称される。活性エネルギー線重合の重合系は、典型的には、光重合開始剤を含む。活性エネルギー重合の重合条件は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)が形成される限り、限定されない。
【0042】
光重合開始剤は、例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α-ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤である。ただし、光重合開始剤は上記例に限定されない。
【0043】
ベンゾインエーテル系光重合開始剤は、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、アニソールメチルエーテルである。アセトフェノン系光重合開始剤は、例えば、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、4-(t-ブチル)ジクロロアセトフェノンである。α-ケトール系光重合開始剤は、例えば、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、1-[4-(2-ヒドロキシエチル)フェニル]-2-メチルプロパン-1-オンである。芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤は、例えば、2-ナフタレンスルホニルクロライドである。光活性オキシム系光重合開始剤は、例えば、1-フェニル-1,1-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)-オキシムである。ベンゾイン系光重合開始剤は、例えば、ベンゾインである。ベンジル系光重合開始剤は、例えば、ベンジルである。ベンゾフェノン系光重合開始剤は、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンである。ケタール系光重合開始剤は、例えば、ベンジルジメチルケタールである。チオキサントン系光重合開始剤は、例えば、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントンである。
【0044】
光重合開始剤の使用量は、例えば、単量体の全量100重量部に対して0.01~1重量部であり、0.05~0.5重量部であってもよい。
【0045】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量(Mw)は、例えば、100万~280万であり、粘着シートの耐久性及び耐熱性の観点からは、120万以上、さらには140万以上であってもよい。本明細書におけるポリマー及びオリゴマーの重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)の測定に基づく値(ポリスチレン換算)である。
【0046】
粘着剤組成物(I)における(メタ)アクリル系ポリマー(A)の含有率は、固形分比で、例えば、50重量%以上であり、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、さらには85重量%以上であってもよい。含有率の上限値は、例えば、99.5重量%であり、99重量%、97重量%、95重量%、93重量%、さらには90重量%であってもよい。
【0047】
[架橋剤(B)]
架橋剤(B)は、典型的には、1分子あたり2以上の架橋反応基を有する多官能性架橋剤である。架橋剤(B)は、1分子あたり3以上の架橋反応基を有する3官能以上の架橋剤であってもよい。1分子あたりの架橋反応基の数の上限は、例えば5である。
【0048】
架橋剤(B)は、例えば、イソシアネート系架橋剤である。イソシアネート系架橋剤は、架橋反応基としてイソシアネート基を含む。イソシアネート系の架橋剤(B)は、芳香族イソシアネート化合物、脂環族イソシアネート化合物、脂肪族イソシアネート化合物であってもよい。イソシアネート系架橋剤(特に、三官能のイソシアネート系架橋剤)は、耐久性の点で好ましい。
【0049】
架橋剤(B)に使用しうる芳香族イソシアネート化合物の例は、フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート及び1,5-ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートである。
【0050】
架橋剤(B)に使用しうる脂環族イソシアネート化合物の例は、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート及び水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネートである。
【0051】
架橋剤(B)に使用しうる脂肪族イソシアネート化合物の例は、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート及び2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートである。
【0052】
架橋剤(B)は、上記イソシアネート化合物の誘導体であってもよい。誘導体の例は、多量体(2量体、3量体、5量体等)、トリメチロールプロパン等の多価アルコールに付加して得た付加物(アダクト体)、ウレア変性体、ビウレット変性体、アロファネート変性体、イソシアヌレート変性体、カルボジイミド変性体、並びにポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等に付加して得たウレタンプレポリマーである。
【0053】
架橋剤(B)は、好ましくは芳香族イソシアネート化合物及びその誘導体であり、より好ましくは、トリレンジイソシアネート及びその誘導体(換言すれば、トリレンジイソシアネート系(TDI系)架橋剤)である。TDI系架橋剤は、キシリレンジイソシアネート及びその誘導体(換言すれば、キシリレンジイソシアネート系(XDI系)架橋剤)に比べて反応の均一性に優れる。TDI系架橋剤の例は、トリレンジイソシアネートと多官能アルコールとの付加物であり、より具体的な例は、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物である。
【0054】
架橋剤(B)には市販品を使用できる。市販品の例は、ミリオネートMT、ミリオネートMTL、ミリオネートMR-200、ミリオネートMR-400、コロネートL、コロネートHL及びコロネートHX(以上、東ソー製:いずれも商品名)、並びにタケネートD-101E、タケネートD-102、タケネートD-103、タケネートD-110N、タケネートD-120N、タケネートD-140N、タケネートD-160N、タケネートD-165N、タケネートD-170HN、タケネートD-178N、タケネート500及びタケネート600(以上、三井化学社製;いずれも商品名)である。架橋剤(B)には、タケネートD-101Eを好ましく使用できる。
【0055】
イソシアネート系架橋剤は、上述のものを1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。粘着剤組成物(I)におけるイソシアネート系架橋剤の配合量は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して、例えば、0.1重量部以上、0.2重量部以上、0.3重量部以上、0.5重量部以上、0.6重量部以上、1重量部以上、2重量部以上、さらには2.3重量部以上であってもよい。配合量の上限は、例えば30重量部以下であり、28重量部以下、25重量部以下、20重量部以下、15重量部以下、10重量部以下、8重量部以下、5重量部以下、4重量部以下、さらには3重量部以下であってもよい。
【0056】
粘着剤組成物(I)は、イソシアネート系架橋剤以外の架橋剤を含んでいてもよい。イソシアネート系架橋剤以外の架橋剤の例は、過酸化物系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イミン系架橋剤及び多官能性金属キレートである。イソシアネート系架橋剤以外の架橋剤の配合量は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して、例えば、2重量部以下、1重量部以下、0.5重量部以下、0.3重量部以下、0.28重量部以下、0.25重量部以下、0.2重量部以下、さらには0.15重量部以下であってもよい。配合量の下限値は、例えば、0重量部である。架橋剤(B)は、イソシアネート系架橋剤及び過酸化物系架橋剤を含んでいてもよい。粘着シートの耐久性の観点から、粘着剤組成物(I)は、他の架橋剤、特にエポキシ系架橋剤、を実質的に含んでいなくてもい。
【0057】
[添加剤]
粘着剤組成物(I)は、その他の添加剤を含んでいてもよい。添加剤の例は、シランカップリング剤、多官能アルコール、顔料及び染料等の着色剤、界面活性剤、可塑剤、粘着性付与剤、表面潤滑剤、レベリング剤、リワーク向上剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、帯電防止剤(イオン性化合物であるアルカリ金属塩、イオン液体、イオン固体等)、無機充填材、有機充填材、金属粉等の粉体、粒子、箔状物である。添加剤は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して、例えば10重量部以下、好ましくは5重量部以下、より好ましくは1.5重量部以下の範囲で配合できる。
【0058】
シランカップリング剤の例は、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン及び2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン及びN-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン及び3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤;並びに3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基含有シランカップリング剤である。
【0059】
粘着剤組成物(I)がシランカップリング剤を含む場合、その配合量は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して、例えば5重量部以下であり、3重量部以下、1重量部以下、0.5重量部以下、0.2重量部以下、0.1重量部以下、さらには0.05重量部以下であってもよい。粘着剤組成物(I)は、シランカップリング剤を含まなくてもよい。
【0060】
粘着剤組成物(I)は、多官能アルコールを含んでいてもよい。多官能アルコールの分子量は、例えば240以下であり、230以下、220以下、210以下、200以下、190以下、180以下、170以下、160以下、さらには150以下であってもよい。分子量の下限は、例えば60以上であり、80以上、90以上、さらには100以上であってもよい。
【0061】
多官能アルコールの例は、エチレングリコール及びプロピレングリコール等のアルキレングリコール及びその重合体;ジエチレングリコール等のエーテルグリコール及びその重合体;トリメチロールエタン;トリメチロールプロパン;グリセリン;並びにペンタエリスリトール及びソルビトール等の糖アルコールである。多官能アルコールは、好ましくはトリメチロールプロパン、グリセリン、並びにジエチレングリコール及びその重合体であり、より好ましくはトリメチロールプロパンである。
【0062】
多官能アルコールは3官能以上であってもよい。3官能の多官能アルコールの例は、トリメチロールプロパン及びグリセリンである。
【0063】
多官能アルコールは、水酸基以外に、架橋剤(B)との反応性を有する反応基を有さなくてもよい。当該反応基は、例えば、アミノ基、カルボキシル基及びエポキシ基から選ばれる少なくとも1種であり、特にアミノ基、である。
【0064】
粘着剤組成物(I)における多官能アルコールの配合量は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して、例えば、0.5重量部以上20重量部以下である。配合量の上限は、15重量部以下、10重量部以下、8重量部以下、5重量部以下、4重量部以下、さらには3重量部以下であってもよい。
【0065】
粘着剤組成物(I)は、触媒等の架橋促進剤を含まなくてもよい。架橋促進剤の一例は、架橋剤(B)との反応性を有する反応基を有するポリエーテル、ポリエーテルポリオール、リン酸エステルである。反応基は、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基及びエポキシ基から選ばれる少なくとも1種であり、特に水酸基又はアミノ基、である。粘着剤組成物(I)は、アミノ基を有するポリエーテルポリオールを含まなくてもよく、水酸基を有するリン酸エステルを含まなくてもよい。
【0066】
粘着剤組成物(I)の型は、例えば、エマルション型、溶剤型(溶液型)、活性エネルギー線硬化型(光硬化型)、熱溶融型(ホットメルト型)である。耐久性により優れる粘着シートを形成できる観点からは、粘着剤組成物(I)は溶剤型であってもよい。溶剤型の粘着剤組成物(I)は、紫外線硬化剤等の光硬化剤を含まなくてもよい。
【0067】
[粘着シートの製造方法]
粘着シート4は、粘着剤組成物(I)から形成される。粘着シート4は、例えば、(メタ)アクリル系ポリマー(A)の架橋物を含む。粘着シート4は、粘着剤組成物(I)から、以下の方法によって形成できる。
【0068】
粘着シート4の製造方法は、例えば、(メタ)アクリル系ポリマー(A)及び架橋剤を含む粘着剤組成物(I)を基材に塗布し、塗布膜を形成することと、得られた塗布膜を乾燥することと、を含む。
【0069】
基材としては、例えば、離型フィルムを用いることができる。離型フィルムに形成された粘着シート4は、例えば、光学フィルムなどに転写できる。基材は、光学フィルムであってもよい。この場合、第一粘着シートを光学フィルムに形成でき、第一粘着シート付き光学フィルムを得ることができる。
【0070】
離型フィルムは、粘着シート4をアンカー層3に転写した後において、粘着シート4が実用に供されるまでセパレータとして用いることができ、工程面における簡略化ができる。
【0071】
離型フィルムの構成材料としては、例えば、プラスチックフィルム、紙、布、不織布などの多孔質材料、ネット、発泡シート、金属箔、及びこれらのラミネート体などの適宜な薄葉体などをあげることができるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。
【0072】
プラスチックフィルムとしては、特に限定されず、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルムなどが挙げられる。
【0073】
離型フィルムの厚みは、通常5~200μm、好ましくは5~100μm程度である。離型フィルムには、例えば、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系などの離型処理が施されている。離型フィルムには、脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉などによる離型及び防汚処理、塗布型、練り込み型、蒸着型などの帯電防止処理が施されていてもよい。
【0074】
基材には、粘着剤組成物(I)を含む溶液(粘着剤溶液)を塗布してもよい。粘着剤溶液の固形分濃度は、例えば5~50重量%であり、好ましくは10~40重量%である。なお、粘着剤溶液は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)の重合形態に応じて、重合溶剤と同じ溶媒又は異なる溶媒を粘着剤組成物(I)に適宜添加することによって調製できる。
【0075】
粘着剤組成物(I)を基材に塗布する方法としては、各種方法が用いられ、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーターなどによる押出しコート法などの方法が挙げられる。粘着剤組成物(I)の塗布量は、目的とする粘着シート4の厚さに応じて適宜調節できる。
【0076】
塗布膜を乾燥させることによって塗布膜が硬化し、粘着シート4が形成される。塗布膜の乾燥温度は、特に限定されず、例えば130℃以下であり、好ましくは125℃以下であり、より好ましくは120℃以下であり、さらに好ましくは110℃以下であり、特に好ましくは100℃以下である。塗布膜の乾燥温度は、60℃以上であってもよく、80℃以上であってもよい。乾燥温度が60℃以上である場合、例えば、イソシアネート系架橋剤の反応がスムーズに進行し、粘着シート4の凝集力を向上させることができ、画像表示装置の表示ムラを低減できる傾向がある。乾燥温度が130℃以下である場合、例えば、イソシアネート系架橋剤の反応速度を適切に調整でき、透明性を確保できる傾向がある。
【0077】
塗布膜の乾燥時間は、粘着剤組成物(I)の組成に応じて適宜調節でき、好ましくは30秒~300秒、さらに好ましくは40秒~240秒、特に好ましくは60秒~180秒である。
【0078】
粘着シート4の厚さは、特に限定されず、2~150μmであってもよく、2~100μmであってもよく、5~50μmであってもよい。粘着シート4の厚さを適切に調節することによって、位相差フィルム2と粘着シート4との密着性を向上させることができる。加えて、粘着シート4の厚さを適切に調節することによって、ガラス及び画像表示装置等の被着体から粘着シート4の剥離を抑制できる。
【0079】
粘着シート4の25℃における貯蔵弾性率G’は、0.05MPa以上であってもよく、0.08MPa以上、0.10MPa以上、0.12MPa以上、0.13MPa以上、さらには0.15MPa以上であってもよい。粘着シート4の25℃における貯蔵弾性率G’の上限値は、5MPa以下、4MPa以下、3MPa以下、2MPa以下、1MPa以下、0.5MPa以下、0.3MPa以下、0.25MPa、さらには0.20MPa以下であってもよい。
【0080】
高い貯蔵弾性率G’は、熱ムラと呼ばれる粘着シートの加熱時の収縮の抑制には適している。しかし、高過ぎる貯蔵弾性率G’は、粘着剤と基材との密着性の低下の要因となることがある。
【0081】
[アンカー層]
ポリマーCを含むアンカー層3は、アンカー層塗布液から形成されうる。アンカー層塗布液は、有機溶媒を含む溶媒S及びポリマーCを含む。
【0082】
(有機溶媒を含む溶媒S)
溶媒Sは、有機溶媒を含む。溶媒Sは、有機溶媒であっても、有機溶媒と水との混合溶媒であってもよい。有機溶媒は、アルコール等の極性有機溶媒であってもよい。溶媒Sは、水及びアルコールを含んでいてもよい。溶媒Sは、水を65重量%以上100重量%未満含み、アルコールを0重量%より多く35重量%以下含む混合溶媒であってもよく、水を0重量%以上35重量%以下含み、アルコールを65重量%以上100重量%以下含む混合溶媒であってもよい。混合溶媒における、水及びアルコールの含有率を適切に調節することで、アンカー層塗布液に含まれる溶質の分散安定性を向上させることができるため、アンカー層の異物発生を抑制できる。特に、水を65重量%以上100重量%未満含み、アルコールを0重量%より多く35重量%以下含む混合溶媒(以下、「水リッチ混合溶媒」と称する)は、バインダー成分として好適な導電性を有するポリチオフェン系ポリマーの分散性を十分に向上させることを可能とする。その結果、アンカー層塗布液を塗布して乾燥した後に得られるアンカー層の導電性能がより向上する。
【0083】
一方、水を0重量%以上35重量%以下含み、アルコールを65重量%以上100重量%以下含む混合溶媒(以下、「アルコールリッチ混合溶媒」と称する)を使用した場合は、アンカー層塗布液の相溶性、位相差フィルムへの濡れ性、位相差フィルムとアンカー層との密着性、及びアンカー層の塗布外観性をより向上させることができる。
【0084】
アルコールは、常温(25℃)において、水と任意の割合で混合可能であってもよい。アルコールは、炭素数1~6のアルコールであってもよく、炭素数1~4のアルコールであってもよく、炭素数1~3のアルコールであってもよい。アルコールの具体例は、メタノール、エタノール、n‐プロパノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec-アミルアルコール、tert-アミルアルコール、1-エチル-1-プロパノール、2-メチル-1-ブタノール、n-ヘキサノール、及びシクロヘキサノールである。アルコールとしては、好ましくはエタノール及びイソプロピルアルコールであり、より好ましくはイソプロピルアルコールである。アルコールは、上記化合物から選ばれる1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。2種以上のアルコールは任意の割合で混合してもよい。アルコールとして、例えば、エタノールとイソプロパノールとを任意の割合で混合した混合アルコールを使用してもよい。
【0085】
溶媒Sは、水及びアルコールの混合溶媒を主成分として含んでいてもよい。これにより、光学フィルムの光学特性がより向上しうる。加えて、水及びアルコールの混合溶媒を主成分として含むことにより、高温環境下及び高湿度環境下における光学積層体の耐久性をより向上させることができる。本明細書において、「主成分」は、重量基準で最も多く含まれる成分を意味する。溶媒Sに含まれる水及びアルコールの合計量は、90重量%以上であってもよく、95重量%以上であってもよく、99重量%以上であってもよく、100重量%であってもよい。
【0086】
(ポリマーC)
アンカー層塗布液は、ポリマーCを含む。ポリマーCは、ポリオキシアルキレン基含有ポリマー及びポリウレタン系ポリマーからなる群より選択される少なくとも1つを含有していてもよい。以下、これらのポリマーの詳細について述べる。
【0087】
(ポリオキシアルキレン基含有ポリマー)
ポリオキシアルキレン基含有ポリマーの例は、ポリオキシアルキレン基含有ポリ(メタ)アクリレートである。ポリオキシアルキレン基含有ポリ(メタ)アクリレートは、主鎖がポリ(メタ)アクリレート重合体であり、側鎖にポリオキシエチレン基及びポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基を含有する構造を有する。ポリオキシアルキレン基含有ポリマーは、ポリオキシエチレン基含有ポリ(メタ)アクリレートであってもよい。
【0088】
アンカー層塗布液において、溶媒S100重量部に対するポリオキシアルキレン基含有ポリマーの重量部は、0.005~5であってもよく、0.01~3であってもよく、0.01~1であってもよく、0.01~0.5であってもよい。
【0089】
(ポリウレタン系ポリマー)
ポリウレタン系ポリマーの例は、水溶性ポリウレタン樹脂系バインダー及び水分散性ポリウレタン樹脂系バインダーである。本明細書において、「水溶性」とは、溶質の、水100gに対する溶解度が5g以上であることを意味する。
【0090】
ポリウレタン系ポリマーは、例えば、粘着シートの投錨力の向上に寄与しうる。詳細には、ポリマーCがポリウレタン系ポリマーを含むことによって、位相差フィルム2と粘着シート4との密着性が向上しうる。
【0091】
アンカー層塗布液において、溶媒S100重量部に対するポリウレタン系ポリマーの重量部は、0.005~5であってもよく、0.01~3であってもよく、0.01~1であってもよく、0.01~0.5であってもよい。
【0092】
(オキサゾリン基含有ポリマー)
ポリマーCは、オキサゾリン基含有ポリマーを含んでいてもよい。オキサゾリン基含有ポリマーは、アクリル骨格又はスチレン骨格からなる主鎖を含む。加えて、オキサゾリン基含有ポリマーは、側鎖にオキサゾリン基を有する。オキサゾリン基含有ポリマーは、アクリル骨格からなる主鎖を含み、その主鎖の側鎖にオキサゾリン基を有しているオキサゾリン基含有アクリル系ポリマーであってもよい。
【0093】
オキサゾリン基の例は、2-オキサゾリン基、3-オキサゾリン基、及び4-オキサゾリン基である。オキサゾリン基は、2-オキサゾリン基であってもよい。
【0094】
オキサゾリン基含有ポリマーの数平均分子量は、5000以上であってもよく、10000以上であってもよい。オキサゾリン基含有ポリマーの数平均分子量の上限値は、特に限定されず、例えば、1000000である。オキサゾリン基含有ポリマーの数平均分子量を適切に調節することによって、アンカー層は所望の強度を有しうる。
【0095】
オキサゾリン基含有ポリマーのオキサゾリン価は、1500g solid/eq.以下であってもよく、1200g solid/eq.以下であってもよく、1000g solid/eq.以下であってもよく、500g solid/eq.以下であってもよく、300g solid/eq.以下であってもよい。オキサゾリン基は、粘着剤組成物(I)に含まれているカルボキシル基及び水酸基等の官能基と比較的低温で反応する。このため、オキサゾリン基含有ポリマーがアンカー層に含まれることで、アンカー層と粘着シートとの密着性を向上させることができる。
【0096】
オキサゾリン基含有ポリマーの例は、オキサゾリン基含有アクリル系ポリマー及びオキサゾリン基含有アクリル/スチレン系ポリマーである。オキサゾリン基含有アクリル系ポリマーの例は、日本触媒社製の、エポクロスWS-300、エポクロスWS-500、及びエポクロスWS-700である。オキサゾリン基含有アクリル/スチレン系ポリマーの例は、日本触媒社製のエポクロスK-1000シリーズ及びエポクロスK-2000シリーズである。オキサゾリン基含有ポリマーは、上記ポリマーから選ばれる1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0097】
(その他のポリマー)
ポリマーCは、その他のポリマーとして、エポキシ樹脂系バインダー、イソシアネート樹脂系バインダー、及びポリエステル樹脂系バインダーを含んでいてもよい。加えて、ポリマーCは、分子中にアミノ基を含むポリマー類及びオキサゾリン基などを含有するアクリル樹脂系バインダー等の、有機反応性基を有する樹脂(ポリマー)を含んでいてもよい。
【0098】
(ポリチオフェン系ポリマー)
ポリマーCは、アンカー層の導電性能及び光学積層体の光学特性を向上させるために、ポリチオフェン系ポリマーをさらに含んでいてもよい。
【0099】
ポリチオフェン系ポリマーの例は、水溶性ポリチオフェン系ポリマー及び水分散性ポリチオフェン系ポリマーである。ポリチオフェン系ポリマーの、ポリスチレン換算による重量平均分子量は、400000以下であってもよく、300000以下であってもよい。重量平均分子量を適切に調節することによって、ポリチオフェン系ポリマーは、水溶性又は水分散性を満たしうる。水溶性ポリチオフェン系ポリマー又は水分散性ポリチオフェン系ポリマーを用いてアンカー層塗布液を調製することによって、アンカー層塗布液は、適切な粘度を有しうるので、均一な膜厚を有するアンカー層を形成することが可能になる。
【0100】
水溶性ポリチオフェン系ポリマーの水100gに対する溶解度は20~30gであってもよい。
【0101】
水分散性ポリチオフェン系ポリマーは、微粒子状で水中に分散しているポリチオフェン系ポリマーを意味する。水分散性ポリチオフェン系ポリマーを含む水分散液は、低粘度を有し得るのでアンカー層塗布液を基材に容易に塗布できる。加えて、このような水分散液を使用することによって、アンカー層が均一な膜厚を有することができる。微粒子のサイズは、特定の値に限定されず、例えば、1μm以下である。
【0102】
水溶性ポリチオフェン系ポリマー及び水分散性ポリチオフェン系ポリマーは、分子中に親水性官能基を有していてもよい。親水性官能基の例は、スルホン基、アミノ基、アミド基、イミノ基、四級アンモニウム塩基、ヒドロキシル基、メルカプト基、ヒドラジノ基、カルボキシル基、硫酸エステル基、リン酸エステル基、及びそれらの塩である。分子内に親水性官能基を有することにより、水への溶解性が向上したり、微粒子状で水に分散しやすくなったりする。加えて、分子内に親水性官能基を有することにより、水溶性ポリチオフェン系ポリマー及び水分散性ポリチオフェン系ポリマーを容易に調製できる。
【0103】
水溶性ポリチオフェン系ポリマー及び水分散性ポリチオフェン系ポリマーの具体例として、ナガセケムテック社製のデナトロンP-580Wが挙げられる。
【0104】
アンカー層塗布液において、溶媒S100重量部に対するポリマーCの重量部Wcは、0.01以上0.5以下であってもよく、0.03以上0.3以下であってもよく、0.05以上0.2以下であってもよく、0.08以上0.15以下であってもよい。Wcを適切に調節することによって、アンカー層の厚さを適切に調節できるとともに、ポリカーボネート樹脂を含む位相差フィルムとアンカー層との密着力の低下を抑制できる。なお、本明細書では、Wcを、ベース濃度と称することがある。
【0105】
アンカー層塗布液には、必要に応じて、添加剤を配合できる。添加剤としては、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、酸化防止剤等が挙げられる。これら添加剤の割合は、通常、ポリマーC100重量部に対して、0.01~500重量部程度であってもよく、0.1~300重量部であってもよく、1~100重量部であってもよい。
【0106】
アンカー層3は、例えば、アンカー層塗布液を位相差フィルムに塗布して乾燥させることによって形成できる。アンカー層3の作製方法の詳細は、後述する。アンカー層3は、ポリマーCを含む。ポリマーCは、ポリオキシアルキレン基含有ポリマー及びポリウレタン系ポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1つを含有していてもよい。
【0107】
アンカー層3の厚みは、15nm以上28nm以下である。これにより、密着性及び耐衝撃性が向上した光学積層体1を得ることができる。アンカー層3の厚みは、16nm以上であってもよく、17nm以上であってもよい。アンカー層3の厚みの上限値は、27nm以下、26nm以下、25nm以下、24nm以下、23.5nm以下、23nm、さらには22.5nm以下であってもよい。なお、アンカー層3の厚みは、平均厚みにより特定できる。アンカー層の平均厚みは、実施例の欄に記載する方法により測定できる。
【0108】
[位相差フィルム]
位相差フィルムは、ポリカーボネート系樹脂を含む。位相差フィルムは、例えば、樹脂フィルムの延伸フィルムで構成されている。位相差フィルムは、ポリカーボネート系樹脂を主成分として含んでいてもよい。位相差フィルムにおけるポリカーボネート系樹脂の含有率は、例えば、50重量%以上であり、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、さらには85重量%以上であってもよい。含有率の上限値は、99.5重量%以下、99重量%以下、97重量%以下、95重量%以下、93重量%以下、さらには90重量%以下であってもよい。位相差フィルムは、樹脂としてポリカーボネート系樹脂のみを含んでいてもよい。
【0109】
ポリカーボネート系樹脂は、構造単位同士を結合するカーボネート結合を有する。ポリカーボネート系樹脂は、構造単位相互の結合として、カーボネート結合と共にエステル結合を有していてもよい。言い換えれば、ポリカーボネート系樹脂はポリエステルカーボネート系樹脂を含んでいてもよい。
【0110】
ポリカーボネート系樹脂は、下記一般式(1)で表される構造単位及び下記一般式(2)で表される構造単位からなる群より選択される少なくとも1つの構造単位を含んでいてもよい。これらの構造単位は、2価のオリゴフルオレンに由来する構造単位であり、以下、オリゴフルオレン構造単位と称する場合がある。このようなポリカーボネート系樹脂等は、正の屈折率異方性を有する。
【0111】
【0112】
【0113】
<オリゴフルオレン構造単位>
オリゴフルオレン構造単位は、上記一般式(1)又は(2)で表される。一般式(1)及び(2)中、R1~R3は、それぞれ独立に、直接結合、置換若しくは非置換の炭素数1~4のアルキレン基であり、R4~R9は、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは非置換の炭素数1~10のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数4~10のアリール基、置換若しくは非置換の炭素数1~10のアシル基、置換若しくは非置換の炭素数1~10のアルコキシ基、置換若しくは非置換の炭素数1~10のアリールオキシ基、置換若しくは非置換のアミノ基、置換若しくは非置換の炭素数1~10のビニル基、置換若しくは非置換の炭素数1~10のエチニル基、置換基を有する硫黄原子、置換基を有するケイ素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、又はシアノ基である。ただし、R4~R9は、互いに同一であっても、異なっていてもよく、R4~R9のうち隣接する少なくとも2つの基が互いに結合して環を形成していてもよい。
【0114】
ポリカーボネート系樹脂におけるオリゴフルオレン構造単位の含有量は、樹脂全体に対して、1重量%~40重量%であってもよく、10重量%~35重量%であってもよく、15重量%~30重量%であってもよく、18重量%~25重量%であってもよい。オリゴフルオレン構造単位の含有量を適切に調節することによって、光弾性係数の絶対値を所望の範囲に調節できる、信頼性を向上させることができる、位相差発現性を向上させることができる。オリゴフルオレン構造単位の含有量を適切に調節することによって、所望の特性を有する位相差フィルムを製造できる。
【0115】
<他の構造単位>
ポリカーボネート系樹脂は、オリゴフルオレン構造単位に加えて他の構造単位を含みうる。他の構造単位の例は、ジヒドロキシ化合物又はジエステル化合物由来でありうる。例えば、逆分散波長性を発現させるためには、負の固有複屈折を有するオリゴフルオレン構造単位とともに、正の固有複屈折を有する構造単位をポリマー構造に組み込む必要がある。このため、共重合する他の構成単位(モノマー)としては、正の複屈折を有する構造単位の原料となるジヒドロキシ化合物又はジエステル化合物であってもよい。
【0116】
共重合モノマーとしては、芳香族環を含む構造単位を導入可能な化合物と、芳香族環を含む構造単位を導入しない、すなわち脂肪族構造で構成される化合物とが挙げられる。
【0117】
脂肪族構造で構成される化合物の例は、直鎖脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物、分岐脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物、脂環式炭化水素の2級アルコール、脂環式炭化水素の3級アルコール、脂環式炭化水素の1級アルコール、オキシアルキレングリコール類、環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物、環状アセタール構造を有するジヒドロキシ化合物、脂環式ジカルボン酸、及び脂肪族ジカルボン酸である。直鎖脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物の具体例は、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,5-ヘプタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、及び1,12-ドデカンジオールである。分岐脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物の具体例は、ネオペンチルグリコール及びヘキシレングリコールである。脂環式炭化水素の2級アルコールの具体例は、1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、及び水添ビスフェノールAである。脂環式炭化水素の3級アルコールの具体例は、1,3-アダマンタンジオール及び2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオールである。脂環式炭化水素の1級アルコールの具体例は、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、2,6-デカリンジメタノール、1,5-デカリンジメタノール、2,3-デカリンジメタノール、2,3-ノルボルナンジメタノール、2,5-ノルボルナンジメタノール、及び1,3-アダマンタンジメタノールである。脂環式炭化水素の1級アルコールの別の具体例は、リモネン等の、テルペン化合物から誘導されるジヒドロキシ化合物である。オキシアルキレングリコール類の具体例は、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコールである。環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物お具体例は、イソソルビドである。環状アセタール構造を有するジヒドロキシ化合物の具体例は、スピログリコール及びジオキサングリコールである。脂環式ジカルボン酸の具体例は、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、及び1,4-シクロヘキサンジカルボン酸である。脂肪族ジカルボン酸の具体例は、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、及びセバシン酸である。
【0118】
芳香族環を含む構造単位を導入可能な化合物の例は、芳香族ビスフェノール化合物、芳香族基に結合したエーテル基を有するジヒドロキシ化合物、及び芳香族ジカルボン酸である。芳香族ビスフェノール化合物の具体例は、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジエチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-(3-フェニル)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-(3,5-ジフェニル)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-エチルヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、ビス(4-ヒドロキシ-3-ニトロフェニル)メタン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,3-ビス(2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル)ベンゼン、1,3-ビス(2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル)ベンゼン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、及び4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジクロロジフェニルエーテルである。芳香族基に結合したエーテル基を有するジヒドロキシ化合物の具体例は、2,2-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、及びビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)スルホンである。芳香族ジカルボン酸の具体例は、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’-ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4’-ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸、及び2,6-ナフタレンジカルボン酸である。
【0119】
なお、上記記載した脂肪族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸は、ジカルボン酸そのものとしてポリエステルカーボネート樹脂の原料とできる。ただし、製造法に応じて、メチルエステル体、フェニルエステル体等のジカルボン酸エステル、及びジカルボン酸ハライド等のジカルボン酸誘導体を原料とすることもできる。
【0120】
共重合モノマーとして、負の複屈折を有する構造単位を有する化合物として既知の化合物を、オリゴフルオレン化合物と組み合わせて使用してもよい。そのような化合物の例は、フルオレン環を有するジヒドロキシ化合物及びフルオレン環を有するジカルボン酸化合物である。フルオレン環を有するジヒドロキシ化合物の例は、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、及び9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレンである。
【0121】
ポリカーボネート系樹脂には、脂環式構造を有する化合物によって導入可能な構造単位のうち、共重合成分として下記式(3)で表される構造単位を含有していてもよい。
【0122】
【0123】
式(3)で表される構造単位を導入可能なジヒドロキシ化合物として、スピログリコールが挙げられる。
【0124】
ポリカーボネート系樹脂において、式(3)で表される構造単位の含有率は、5重量%以上90重量%以下であってもよい。含有率の上限は、70重量%であってもよく、50重量%であってもよい。含有率の下限は、10重量%であってもよく、20重量%であってもよく、25重量%であってもよい。式(3)で表される構造単位の含有率が5重量%以上であることによって、機械物性及び耐熱性を向上させることができるとともに、低い光弾性係数を得ることができる。さらに、アクリル系樹脂との相溶性が向上し、得られる樹脂組成物の透明性をさらに向上させることができる。また、含有率が90重量%以下であることによって、スピログリコールの重合反応の速度が比較的遅いため、重合反応を制御しやすくなる。
【0125】
ポリカーボネート系樹脂は、共重合成分として、下記式(4)で表される構造単位をさらに含有していてもよい。
【0126】
【0127】
式(4)で表される構造単位を導入可能なジヒドロキシ化合物として、立体異性体の関係にある、イソソルビド(ISB)、イソマンニド、及びイソイデットが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0128】
ポリカーボネート系樹脂において、式(4)で表される構造単位の含有率は、5重量%以上90重量%以下であってもよい。含有率の上限は、70重量%以下であってもよく、50重量%以下であってもよい。含有率の下限は、10重量%以上であってもよく、15重量%以上であってもよい。式(4)で表される構造単位の含有率を適切に調節することによって、機械物性及び耐熱性を向上させることができるとともに、低い光弾性係数を得ることができる。加えて、式(4)で表される構造単位の含有率を適切に調節することによって、樹脂の吸水による成形体の寸法変化を許容範囲に抑えることができる。
【0129】
ポリカーボネート系樹脂は、さらに別の構造単位を含んでいてもよい。なお、このような構造単位を「その他の構造単位」と称する。その他の構造単位を有するモノマーとしては、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、及び1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、並びにそれらの誘導体が挙げられる。その他の構造単位は、1,4-シクロヘキサンジメタノール及びトリシクロデカンジメタノールであってもよい。これらのモノマーに由来する構造単位を含む樹脂は、光学特性、耐熱性、及び機械特性等のバランスに優れる。なお、ジエステル化合物の重合反応性は比較的低いため、反応効率を高める観点から、オリゴフルオレン構造単位を含有するジエステル化合物以外のジエステル化合物は使用しなくてもよい。
【0130】
ポリカーボネート系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、例えば、110℃以上160℃以下である。ガラス転移温度は、155℃以下であってもよく、150℃以下、さらには145℃以下であってもよい。ガラス転移温度は、120℃以上であってもよく、130℃以上であってもよい。ガラス転移温度が上記範囲内であることによって、ポリカーボネート系樹脂の耐熱性を向上させることができる。その結果、フィルムを成形したときの寸法変化を抑制でき、光学積層体の使用条件下における品質の信頼性を向上させることができる。加えて、ガラス転移温度が上記範囲内であることによって、延伸性及び透明性を向上させることができる。
【0131】
オリゴフルオレン構造単位の詳細、並びにポリカーボネート系樹脂の構成及び製造方法等の詳細は、例えば、国際公開第2015/159928号パンフレットに記載されている。
【0132】
<アクリル系樹脂>
位相差フィルムは、アクリル系樹脂をさらに含有していてもよい。アクリル系樹脂の含有量は、例えば、0.5重量%~1.5重量%である。
【0133】
アクリル系樹脂としては、熱可塑性樹脂としてのアクリル系樹脂が使用される。アクリル系樹脂の構造単位となる単量体としては、例えば、以下の化合物が挙げられる:メタクリル酸メチル、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸、ベンジル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、コハク酸2-(メタ)アクロイルオキシエチル、マレイン酸2-(メタ)アクロイルオキシエチル、フタル酸2-(メタ)アクロイルオキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸2-(メタ)アクリオイルオキシエチル、ペンタメチルピペリジル(メタ)アクリレート、テトラメチルピペリジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、シクロペンチルメタクリレート、シクロペンチルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘプチルメタクリレート、シクロヘプチルアクリレート、シクロオクチルメタクリレート、シクロオクチルアクリレート、シクロドデシルメタクリレート、シクロドデシルアクリレート。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上の単量体を組み合わせて用いる形態は、2種以上の単量体の共重合、1種の単量体の単独重合体の2つ以上のブレンド、及びこれらの組み合わせが挙げられる。さらに、これらのアクリル系単量体と共重合可能な他の単量体(例えば、オレフィン系単量体、ビニル系単量体)を併用してもよい。
【0134】
アクリル系樹脂は、メタクリル酸メチル由来の構造単位を含む。アクリル系樹脂におけるメタクリル酸メチル由来の構造単位の含有率は、70質量%以上100質量%以下であってもよい。含有率は、80質量%以上であってもよく、90質量%以上、さらには95質量%以上であってもよい。この範囲であると、本発明のポリカーボネート系樹脂と優れた相溶性が得られる。メタクリル酸メチル以外の構造単位としては、アクリル酸メチル、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレンを用いることが好ましい。アクリル酸メチルを共重合することで熱安定性を向上させることができる。フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレンを用いることで、アクリル系樹脂の屈折率を調整できる。このため、組み合わせる樹脂の屈折率に合わせ込むことで、得られる樹脂組成物の透明性を向上させることができる。このようなアクリル系樹脂を用いることで、伸張性及び位相差発現性に優れ、かつ、ヘイズの小さい逆分散位相差フィルムが得られうる。
【0135】
アクリル系樹脂の重量平均分子量Mwは、例えば、10,000以上、200,000以下である。重量平均分子量は、30,000以上であってもよく、50,000以上であってもよい。また、重量平均分子量は、180,000以下であってもよく、150,000以下であってもよい。重量平均分子量がこのような範囲であれば、ポリカーボネート系樹脂との相溶性が得られる。その結果、最終的な位相差フィルムの透明性を向上させることができ、かつ、延伸時の伸張性を十分に向上させることができる。アクリル系樹脂の重量平均分子量は、GPCにより測定される、ポリスチレン換算の分子量である。また、アクリル系樹脂は実質的に分岐構造を含有しないことが相溶性の観点から好ましい。分岐構造を含有しないことは、アクリル系樹脂のGPCカーブが単峰性であることにより確認できる。
【0136】
上記したとおり、位相差フィルムは、例えば、樹脂フィルムの延伸フィルムで構成されている。位相差フィルムは、例えば、Re(450)<Re(550)を満たす。位相差フィルムは、Re(550)<Re(650)をさらに満たしていてもよい。位相差フィルムは、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散の波長依存性を示しうる。位相差フィルムのRe(450)/Re(550)は、例えば0.5を超えて1.0未満であり、好ましくは0.7以上0.95以下であり、より好ましくは0.75以上0.92以下であり、さらに好ましくは0.8以上0.9以下である。Re(650)/Re(550)は、好ましくは1.0以上1.15未満であり、より好ましくは1.03以上1.1以下である。
【0137】
Re(450)は、23℃において、波長450nmの光で測定したフィルムの面内位相差を意味する。Re(550)は、23℃において、波長550nmの光で測定したフィルムの面内位相差を意味する。Re(λ)は、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、Re=(nx-ny)×dによって求められる。「nx」は、面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率を意味する。「ny」は、面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率を意味する。
【0138】
位相差フィルムの面内位相差Re(550)は、100nm以上200nm以下であってもよく、110nm以上180nm以下であってもよく、120nm以上160nm以下であってもよく、130nm以上150nm以下であってもよい。位相差フィルムは、いわゆるλ/4板として機能しうる。
【0139】
位相差フィルムは、例えば、面内位相差を有する。このため、位相差フィルムは、nx>nyの関係を有していてもよい。位相差フィルムは、nx>nyの関係を有する限り、任意の適切な屈折率特性を示す。位相差フィルムの屈折率特性は、代表的にはnx>ny≧nzの関係を示す。「nz」は、厚み方向の屈折率を意味する。なお、ここで「ny=nz」はnyとnzとが完全に等しい場合だけではなく、実質的に等しい場合も包含する。したがって、本発明の効果を損なわない範囲で、ny<nzとなる場合がありうる。
【0140】
位相差フィルムのNz係数は、0.9以上2.0以下であってもよく、0.9以上1.5以下であってもよく、0.9以上1.2以下であってもよい。このような関係を満たすことにより、位相差フィルムを含む光学積層体を画像表示装置に用いた場合に、非常に優れた反射色相を達成しうる。ここで、「Nz係数」は、Nz=Rth/Reによって求められる係数である。「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定したフィルムの厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(450)」は、23℃における波長450nmの光で測定したフィルムの厚み方向の位相差である。「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定したフィルムの厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、Rth=(nx-nz)×dによって求められる。
【0141】
位相差フィルムの厚みは、λ/4板として最も適切に機能し得るように設定されうる。言い換えれば、厚みは、所望の面内位相差が得られるように設定されうる。具体的には、厚みは、15μm以上80μm以下であってもよく、20μm以上70μm以下であってもよく、30μm以上60μm以下であってもよい。
【0142】
位相差フィルムの光弾性係数の絶対値は、20×10-12(m2/N)以下であってもよく、1.0×10-12(m2/N)~15×10-12(m2/N)であってもよく、2.0×10-12(m2/N)~12×10-12(m2/N)であってもよい。光弾性係数の絶対値がこのような範囲であれば、位相差フィルムを含む光学積層体を画像表示装置に適用した場合に表示ムラを抑制できる。
【0143】
位相差フィルム2のアンカー層3が形成される主面には、表面改質処理が施されていてもよい。表面改質処理が施されることによって、位相差フィルム2とアンカー層3との接着力をより向上させることができる。表面改質処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、エキシマ処理、フレーム処理などが挙げられる。位相差フィルム2のアンカー層3が形成される主面には、表面改質処理として、コロナ処理及び/又はプラズマ処理が施されていてもよく、プラズマ処理が施されていてもよい。
【0144】
プラズマ処理の条件は、放電量により表して、例えば、0.5~100kJ/m2である。放電量は、1kJ/m2以上、2kJ/m2以上、さらには5kJ/m2以上であってもよい。放電量の上限値は、50kJ/m2、40kJ/m2、30kJ/m2、20kJ/m2、さらには10kJ/m2であってもよい。プラズマ処理における放電量を適切に調整することによって、位相差フィルム2とアンカー層3との接着力をより向上させることができる。
【0145】
光学積層体は、偏光フィルム及び表面保護フィルムをさらに有していてもよい。このような光学フィルムの一例を
図2に示す。
図2は、光学積層体の別の一例を示す模式的な断面図である。
図2の光学積層体1Bは、粘着シート4、アンカー層3、位相差フィルム2A、層間粘着シート5、偏光フィルム6、及び表面保護フィルム7がこの順に積層された積層構造を有する。
【0146】
層間粘着シート5には、公知の粘着剤を使用できる。粘着シート4を層間粘着シート5に使用してもよい。
【0147】
偏光フィルム6は、偏光子を含む。偏光フィルム6は、典型的には、偏光子及び保護フィルム(透明保護フィルム)を含む。保護フィルムは、例えば、偏光子の主面に接して配置されている。偏光子は、2つの保護フィルムの間に配置されていてもよい。保護フィルムは、偏光子の少なくとも一方の面に配置されていてもよい。
【0148】
偏光子としては、特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素、二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの;ポリビニルアルコールの脱水処理物、ポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等が挙げられる。偏光子は、典型的には、ポリビニルアルコール系フィルム(ポリビニルアルコール系フィルムには、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルムが含まれる)、及び、ヨウ素等の二色性物質からなる。
【0149】
偏光子の厚さは、特に限定されず、例えば80μm以下であり、50μm以下、30μm以下、25μm以下、さらには20μm以下であってもよい。偏光子の厚さの下限は、特に限定されず、例えば1μm以上であり、5μm以上、10μm以上、さらには15μm以上であってもよい。薄型の偏光子(例えば、厚さ20μm以下)は、寸法変化が抑制されており、光学積層体の耐久性、特に高温下の耐久性、の向上に寄与しうる。
【0150】
保護フィルムの材料としては、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性等に優れる熱可塑性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、及び、これらの混合物が挙げられる。保護フィルムの材料は、(メタ)アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂又は紫外線硬化型樹脂であってもよい。偏光フィルムが2つの保護フィルムを有する場合、2つの保護フィルムの材料は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。例えば、偏光子の一方の主面に対して、接着剤を介して、熱可塑性樹脂で構成された保護フィルムが貼り合わされ、偏光子の他方の主面に対して、熱硬化性樹脂又は紫外線硬化型樹脂で構成された保護フィルムが貼り合わされていてもよい。保護フィルムは、任意の添加剤を1種類以上含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤等が挙げられる。
【0151】
保護フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には、強度及び取扱性等の作業性、薄膜性等の点より10~200μm程度である。
【0152】
偏光子と保護フィルムとは通常、水系接着剤等を介して密着している。水系接着剤としては、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス、水系ポリウレタン、水系ポリエステル等を例示できる。上記の接着剤以外の他の接着剤としては、紫外線硬化型接着剤、電子線硬化型接着剤等が挙げられる。電子線硬化型偏光板用接着剤は、各種の保護フィルムに対して、好適な接着性を示す。接着剤は、金属化合物フィラーを含んでいてもよい。
【0153】
偏光フィルム6では、保護フィルムに代えて、位相差フィルム等を偏光子上に形成することもできる。保護フィルム上には、さらに別の保護フィルムを設けること、位相差フィルム等を設けること等もできる。
【0154】
保護フィルムについて、偏光子と接着している表面と対向する表面には、ハードコート層が設けられていてもよく、反射防止、スティッキング防止、拡散、アンチグレア等を目的とした処理を施すこともできる。
【0155】
偏光フィルム6は、円偏光フィルムであってもよい。
【0156】
表面保護フィルム7は、光学積層体1Bの流通及び保管時、並びに光学積層体1Bを画像表示装置に組み込んだ状態において、最外層である偏光フィルム6を保護する機能を有する。また、表面保護フィルム7は、画像表示装置に組み込んだ状態において、外部空間へのウィンドウとして機能する保護フィルムであってもよい。表面保護フィルム7は、典型的には、樹脂フィルムである。表面保護フィルム7を構成する樹脂は、例えば、PET等のポリエステル、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン、アクリル、シクロオレフィン、ポリイミド、並びにポリアミドであり、ポリエステルが好ましい。ただし、表面保護フィルム7は上記例に限定されない。表面保護フィルム7は、ガラス製のフィルム、又はガラス製のフィルムを含む積層フィルムであってもよい。表面保護フィルム7には、アンチグレア、反射防止、帯電防止等の表面処理が施されていてもよい。
【0157】
表面保護フィルム7は、任意の粘着剤によって偏光フィルム6に接合されていてもよい。粘着シート4による接合も可能である。
【0158】
本実施形態の光学積層体は、典型的には、画像表示装置に用いられる。画像表示装置は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ及び無機ELディスプレイ等のELディスプレイである。
【0159】
(光学積層体の製造方法)
本実施形態に係る光学積層体の製造方法は、有機溶媒を含む溶媒Sと、ポリマーCとを含有するアンカー層塗布液を、位相差フィルムに塗布して厚みがT(μm)の塗布膜を形成することと、塗布膜を乾燥することと、を含む。ここで、光学積層体は、位相差フィルム、アンカー層、及び粘着シートを含む。光学積層体は、位相差フィルム、アンカー層、及び粘着シートがこの順に積層された光学積層体である。位相差フィルムは、ポリカーボネート系樹脂を含む。アンカー層は、ポリマーCを含む。アンカー層塗布液において、溶媒S100重量部に対するポリマーCの重量部Wcは、0.01以上0.5以下である。加えて、下記式(1)により求めた、塗布膜の換算厚みは、2μm以上10μm以下である。この換算厚みは、Wcが0.1重量部の塗布液を用いたときの厚みに換算した値である。
塗布膜の換算厚み=T×Wc/0.1 (1)
【0160】
光学積層体の製造方法は、位相差フィルム2にアンカー層3を形成することと、アンカー層3に粘着シート4を形成することと、を含む。
【0161】
位相差フィルム2にアンカー層3を形成することは、位相差フィルム2にアンカー層塗布液を塗布して厚みがT(μm)の塗布膜を形成することと、得られた塗布膜を乾燥させることと、を含む。
【0162】
アンカー層塗布液を位相差フィルム2に塗布する方法としては、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーターなどによる押出しコート法が挙げられる。アンカー層塗布液の塗布量は、目的とするアンカー層3の厚さに応じて適宜調節できる。
【0163】
アンカー層塗布液を位相差フィルム2に塗布して得られた塗布膜の厚み、すなわちT(μm)は、1μm以上20μm以下であってもよく、2μm以上10μm以下であってもよく、2.5μm以上8μm以下であってもよい。T(μm)を適切に調節することによって、得られるアンカー層3の塗布外観性が向上する。T(μm)の測定方法は、実施例の欄に記載する。
【0164】
上記式(1)で表された塗布膜の換算厚みは、2μm以上10μm以下であり、4μm以上8μm以下であってもよい。
【0165】
塗布膜を乾燥させることによって塗布膜が硬化し、アンカー層3が形成される。塗布膜の乾燥温度は、例えば、100℃以下であり、90℃以下、80℃以下、70℃以下、さらには60℃以下であってもよい。塗布膜の乾燥温度は、室温(25℃)であってもよく、30℃以上であってもよく、40℃以上であってもよく、45℃以上であってもよい。
【0166】
塗布膜の乾燥時間は、アンカー層3の組成に応じて適宜調節でき、5~100秒であってもよく、5~70秒であってもよく、10~35秒であってもよい。塗布膜の乾燥時間を適切に調節することによって、アンカー層3の塗布外観性が向上しうる。
【0167】
位相差フィルム2にアンカー層3を形成した後、アンカー層3に粘着シート4を形成することにより、光学積層体1を製造できる。例えば、離型シートに形成された粘着シート4をアンカー層3に転写することにより、アンカー層3に粘着シート4を形成できる。
【0168】
離型シートに形成された粘着シート4をアンカー層3に転写する方法では、まず、離型シートに粘着シート4を形成する。離型シートに粘着シート4を形成する方法は、上記[粘着シートの製造方法]の欄で説明したとおりである。
【0169】
次に、アンカー層3に粘着シート4を転写することによって、光学積層体1を得ることができる。
【0170】
[画像表示装置]
画像表示装置は、例えば、光学積層体と、画像形成層とを備える。
図3は、本実施形態の画像表示装置の一例を示す模式的な断面図である。
図3の画像表示装置11は、基板9、画像形成層(例えば有機EL層又は液晶層)8、及び光学積層体1Aを備える。詳細には、画像表示装置11は、基板9、画像形成層8、粘着シート4、アンカー層3、及び位相差フィルム2がこの順に積層された積層構造を有している。画像表示装置11は、光学積層体1Aに代えて、
図2の光学積層体1Bを有していてもよい。基板9及び画像形成層8は、公知の画像表示装置が備える基板及び画像形成層と、それぞれ同様の構成を有していればよい。
【0171】
図3の画像表示装置11は、有機ELディスプレイであってもよく、液晶ディスプレイであってもよい。ただし、画像表示装置11はこの例に限定されない。画像表示装置11は、エレクトロルミネセンス(EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイ(PD)、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)等であってもよい。画像表示装置11は、家電用途、車載用途、パブリックインフォメーションディスプレイ(PID)用途等に用いてもよい。
【実施例0172】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、以下に示す実施例に限定されない。
【0173】
[貯蔵弾性率G’(25℃)]
粘着シートの25℃における貯蔵弾性率G’は、以下の方法により評価した。まず、測定用サンプルを準備した。測定用サンプルは、複数の粘着シートが積層された積層体を円盤状に打ち抜いたものを使用した。測定用サンプルの底面の直径は8mmであり、測定用サンプルの厚さは1mmであった。次に、測定用サンプルについて、動的粘弾性測定を実施した。動的粘弾性測定には、TA Instruments製、ARES-G2を用いた。動的粘弾性測定の結果から、粘着シートの25℃における貯蔵弾性率G’を求めた。なお、動的粘弾性測定の条件は、以下のとおりであった。
・測定条件
周波数:1Hz
変形モード:ねじり
測定温度:-70℃~150℃
昇温速度:5℃/分
【0174】
[塗布膜の厚みT(μm)の測定]
アンカー層塗布液を位相差フィルムに塗布して得られた塗布膜の厚みT(μm)は、以下の方法により測定した。23℃及び55%RHの条件下で、アンカー層塗布液を、グラビアコーターを用いて位相差フィルムに塗布した後、直ちに、反射分光干渉式膜厚計(オーシャンインサイト社製)により塗布膜の厚みT(μm)を測定した。加えて、以下の式(1)により、溶媒S100重量部に対するポリマーCの重量部Wcを0.1としたときの塗布膜の換算厚みを算出した。
塗布膜の換算厚み=T×Wc/0.1 (1)
【0175】
[通常密着性]
各実施例及び比較例に係る基材付き光学積層体を、25cm×25cmのサイズに切断した。次に、基材付き光学積層体から基材を剥離させて粘着シートを露出させることによって光学積層体を作製した。そして、光学積層体を、光学積層体の粘着シートを介して、ITOフィルムに、2kgローラーで1往復して貼り合せた。その後、1分以内に、引張試験機(ミネベア社製、製品名:TG-1KN)を用いて、剥離角度180度、剥離速度300mm/minの条件で、ITOフィルムから光学積層体を剥離させて剥離力を測定した。下記基準により、通常密着性を評価した。なお、ITOフィルムは、SiO2を蒸着処理したポリエチレンテレフタレートフィルム「125テトライトOES」(尾池工業社製)を使用した。粘着シートは、SiO2が蒸着された面に貼り合わせた。
A:剥離力が20N以上
B:剥離力が15N以上20N未満
C:剥離力が10Nより大きく15N未満
D:剥離力が10N以下
【0176】
[促進密着性]
各実施例及び比較例に係る基材付き光学積層体を、40℃及び92%RHの環境下に3日以上保管した。保管後、基材付き光学積層体を取り出し、室温で1時間静置させた。その後、基材付き光学積層体を、25cm×25cmのサイズに切断した。次に、基材付き光学積層体から基材を剥離させて粘着シートを露出させることによって光学積層体を作製した。そして、光学積層体を、光学積層体の粘着シートを介して、ITOフィルムに、2kgローラーで1往復して貼り合せた。その後、1分以内に、上記引張試験機を用いて、剥離角度180度、剥離速度300mm/minの条件で、ITOフィルムから光学積層体を剥離させて剥離力を測定した。下記基準により、促進密着性を評価した。なお、ITOフィルムは、上記した、SiO2を蒸着処理したポリエチレンテレフタレートフィルム「125テトライトOES」を使用した。粘着シートは、SiO2が蒸着された面に貼り合わせた。
A:剥離力が20N以上
B:剥離力が15N以上20N未満
C:剥離力が10Nより大きく15N未満
D:剥離力が10N以下
【0177】
[耐衝撃性]
各実施例及び比較例に係る基材付き光学積層体の位相差フィルムに、層間粘着シート、偏光板、及び表面保護フィルムをこの順に積層させた、耐衝撃性評価用の基材付き光学積層体を作製した。
【0178】
(層間粘着シートの作製)
<アクリル系ポリマーA1の調製>
撹拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、及び冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート82.1部、ベンジルアクリレート13部、4-ヒドロキシブチルアクリレート0.1部、及びアクリル酸4.8部を含有するモノマー混合物を仕込んだ。さらに、このモノマー混合物100部に対して、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1部を酢酸エチル100部と共に仕込み、緩やかに撹拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した。その後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って8時間重合反応を行って、重量平均分子量(Mw)220万、Mw/Mn=3.0のアクリル系ポリマーA1の溶液を調製した。
【0179】
アクリル系ポリマーA1溶液の固形分100部に対して、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物(東ソー社製、商品名「コロネートL」)0.45部、過酸化物架橋剤(ベンゾイルパーオキサイド)0.1部、エポキシ基含有シランカップリング剤(信越化学工業社製、商品名「KBM-403」)0.2部、及び反応性シリル基を有するポリエーテル化合物(カネカ社製、商品名「サイリルSAT10」)0.25部を配合して、層間粘着剤組成物を得た。
【0180】
層間粘着剤組成物を、シリコーン系剥離剤で処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(剥離フィルム)の表面に、ファウンテンコータで均一に塗布して塗布膜を得た。その後、155℃の空気循環式恒温オーブンで2分間塗布膜を乾燥し、剥離フィルムの表面に厚さ20μmの層間粘着シートを形成した。
【0181】
(偏光板P1の作製)
偏光板の作製において、まず偏光子を以下のとおり作製した。長尺状のポリビニルアルコール(PVA)系樹脂フィルム(クラレ社製、製品名「PE3000」、厚さ30μm)を、ロール延伸機を用いて長手方向に一軸延伸(総延伸倍率5.9倍)すると同時に、上記樹脂フィルムに対して膨潤、染色、架橋、洗浄及び乾燥の各処理を順に施して、厚さ12μmの偏光子を作製した。膨潤処理では、上記樹脂フィルムを20℃の純水で処理しながら2.2倍延伸した。染色処理では、ヨウ素及びヨウ化カリウムを重量比1:7で含有する30℃の水溶液で処理しながら、上記樹脂フィルムを1.4倍延伸した。水溶液中のヨウ素濃度は、作製する偏光子の単体透過率が45.0%となるように調整された。架橋処理には、2段階処理を採用した。1段階目の架橋処理では、ホウ酸及びヨウ化カリウムを溶解させた40℃の水溶液で処理しながら、上記樹脂フィルムを1.2倍延伸した。1段階目の架橋処理に用いた水溶液におけるホウ酸の含有率は5.0重量%、ヨウ化カリウムの含有率は3.0重量%とした。2段階目の架橋処理では、ホウ酸及びヨウ化カリウムを溶解させた65℃の水溶液で処理しながら、上記樹脂フィルムを1.6倍延伸した。2段階目の架橋処理に用いた水溶液におけるホウ酸の含有率は4.3重量%、ヨウ化カリウムの含有率は5.0重量%とした。洗浄処理には、20℃のヨウ化カリウム水溶液を用いた。洗浄処理に用いた水溶液におけるヨウ化カリウムの含有率は2.6重量%とした。乾燥処理は、70℃及び5分間の乾燥条件で実施した。
【0182】
上記作製した偏光子の各主面に、それぞれ、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(コニカミノルタ社製、製品名「KC2UA」、厚さ25μm)をポリビニルアルコール系接着剤により貼り合わせた。ただし、一方の主面に貼り合わせたTACフィルムには、偏光子側とは反対側の主面にハードコート(厚さ7μm)が形成されていた。このようにして、ハードコート付き保護層/偏光子/保護層(ハードコートなし)の構成を有する偏光板P1を得た。
【0183】
(耐衝撃性評価用の基材付き光学積層体の作製)
各実施例及び比較例に係る基材付き光学積層体の位相差フィルムが形成されている表面に、剥離フィルムの表面に形成した層間粘着シートを転写して層間粘着シート付き光学積層体を作製した。層間粘着シート付き光学積層体の剥離フィルムを剥離し、偏光板P1及び表面保護フィルムをこの順に積層させた。これにより、耐衝撃性評価用の基材付き光学積層体を作製した。耐衝撃性評価用の基材付き光学積層体は、基材、粘着シート、アンカー層、位相差フィルム、層間粘着シート、偏光板P1、及び表面保護フィルムがこの順に積層された構造を有していた。表面保護フィルムには、日東電工社製の電子・工学部材用表面保護フィルム(PET材質、製品名:E-MASK RP109F)を使用した。
【0184】
(端部処理)
耐衝撃性評価用の基材付き光学積層体に端部処理を実施した。まず、耐衝撃性評価用の基材付き光学積層体を100枚積層させることによって積層体を作製した。この積層体の積層方向において、上下から万力状の治具にて積層体を加圧した状態で保持した。次に、積層体の積層方向に直交する方向において、積層体の端辺から1.0mm内側を、回転刃を用いて切削することによって端部処理を実施した。これにより、耐衝撃性評価用サンプルを作製した。
【0185】
[耐衝撃性の評価方法]
直径約4mmの金属棒に、両面テープを介して粘着テープ(セキスイセロテープ、No.252)を巻き付けた。この金属棒を、耐衝撃性評価用サンプルの端部に押し込んだ。詳細には、まず、金属棒の長軸が耐衝撃性評価用サンプルの積層方向と同じ方向になるように、かつ耐衝撃性評価用サンプルの端辺に接触するように金属棒を配置した。次に、耐衝撃性評価用サンプルの積層方向に直交する方向において、耐衝撃性評価用サンプルの端辺よりも内側に金属棒を5mm程押し込んだ。このように、金属棒と耐衝撃性評価用サンプルの端辺とが接触した状態を維持しつつ、耐衝撃性評価用サンプルの表面保護フィルムから基材に向かって金属棒を引いた。このようにして、耐衝撃性評価用サンプルの端辺を金属棒で擦った。その後、擦った部分について、耐衝撃性評価用サンプルの端部からの粘着剤の欠けを光学顕微鏡(微分干渉顕微鏡;ニコン社製)で観察し、下記基準により、耐衝撃性を評価した。なお、「粘着剤の欠けの端辺からの深さ」とは、粘着シートの欠落した部分において、耐衝撃性評価用サンプルの端辺から、面方向の内側に欠落した粘着シートの当該方向における最大距離を意味する。
A:粘着剤の欠けの端辺からの深さが100μm未満
B:粘着剤の欠けの端辺からの深さが100μm以上
【0186】
[アンカー層の厚み測定]
各実施例及び各比較例において、アンカー層付き位相差フィルムを、2%ルテニウム酸水溶液を用いて2分間染色してサンプルを作製した。その後、このサンプルをエポキシ樹脂中に埋めこみ、ウルトラミクロトーム(Ultracut S、ライカ社製)により、厚み約80nmに切削して測定用フィルム切片を作製した。次に、この測定用フィルム切片の断面をTEM(Hitachi H-7650、加速電圧100kV)で観察した。「アンカー層の厚み」は、測定により得られたアンカー層の最小厚みの値及び測定により得られたアンカー層の最大厚みの値の平均値とした。
【0187】
[基材付き光学積層体の作製]
(実施例1)
<粘着剤組成物の調製>
冷却管、窒素導入管、温度計、及び撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸ブチル76.1重量部、アクリル酸4-ヒドロキシブチル0.1重量部、及び2,2-アゾビスイソブチロニトリルをモノマー(固形分)100重量部に対して0.3重量部を酢酸エチルと共に加えて窒素ガス気流下、60℃で4時間反応させて反応液を調製した。その後、この反応液に酢酸エチルを加えて、重量平均分子量220万のアクリル系ポリマーを含有するポリマー溶液Aを得た。アクリル系ポリマー溶液Aの固形分100重量部に対して、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物(三井化学社製、商品名「タケネートD101E」)2.5重量部、エポキシ基含有シランカップリング剤(信越化学工業社製、商品名「KBM-403」)0.04重量部、及び反応性シリル基を有するポリエーテル化合物(カネカ社製、商品名「サイリルSAT10」)1重量部を配合して、粘着剤組成物PSA1を得た。
【0188】
<アンカー層塗布液の調製>
固形分でポリウレタン系ポリマーを50重量%以上含む溶液(ナガセケムテックス社製、商品名「デナトロンB-510C」)と、固形分でオキサゾリン基含有アクリル系ポリマーを10~70重量%、及びポリオキシエチレン基含有メタクリレートを10~70重量%含む溶液(日本触媒社製、商品名「エポクロスWS-700」)とを、水35重量%及びイソプロピルアルコール(IPA)65重量%を含む混合溶媒に添加してアンカー層塗布液を調製した。アンカー層塗布液は、ポリマーCとして、ポリウレタン系ポリマー、オキサゾリン基含有アクリル系ポリマー、及びポリオキシエチレン基含有メタクリレートを含んでいた。アンカー層塗布液において、混合溶媒100重量部に対するポリウレタン系ポリマーの重量部は、0.017であった。アンカー層塗布液において、混合溶媒100重量部に対する、オキサゾリン基含有アクリル系ポリマーの重量部及びポリオキシエチレン基含有メタクリレートの重量部の合計は、0.033であった。アンカー層塗布液において、混合溶媒100重量部に対するポリマーCの重量部Wcは、0.05であった。
【0189】
<アンカー層付き位相差フィルムの作製>
アンカー層付き位相差フィルムの作製は、ロールツーロール法により実施した。帝人社製の位相差フィルム(ポリカーボネート樹脂フィルム、製品名:ピュアエースRM-147)の片面に、ライン上でプラズマ処理(放電量:5.83kJ/m2)を実施した。その後、グラビアコーターを用いて、アンカー層塗布液を位相差フィルムのプラズマ処理を実施した面に塗布して厚みが5μmの塗布膜を形成した。その後、50℃の条件で塗布膜を乾燥させて、アンカー層付き位相差フィルムを作製した。このフィルムを長尺で巻き取りした。
【0190】
<基材付き光学積層体の作製>
粘着剤組成物PSA1を、シリコーン系剥離剤で処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(基材)の表面に、ファウンテンコータで均一に塗布して塗布膜を得た。その後、155℃の空気循環式恒温オーブンで2分間塗布膜を乾燥し、基材の表面に粘着シートを形成した。粘着シートの厚みは、15μmであった。粘着シートの25℃における貯蔵弾性率G’は、0.180MPaであった。
【0191】
次に、アンカー層付き位相差フィルムのアンカー層が積層されている表面に、基材の表面に形成した粘着シートを転写して、実施例1に係る基材付き光学積層体を作製した。基材付き光学積層体は、基材、粘着シート、アンカー層、及び位相差フィルムがこの順に積層されていた。
【0192】
(実施例2~9、比較例1~5)
表1に記載した条件に変更したことを除き、実施例1と同じ方法で、実施例2~9及び比較例1~5に係る、基材付き光学積層体を作製した。
【0193】
【0194】
表1に示すように、実施例に係る光学積層体は、比較例に係る光学積層体に比べて、耐衝撃性及び密着性に優れていた。