(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180416
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】画像形成装置及び画像位置調整方法
(51)【国際特許分類】
H04N 1/387 20060101AFI20241219BHJP
B41J 29/393 20060101ALI20241219BHJP
B41J 21/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
H04N1/387
B41J29/393 103
B41J21/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024175438
(22)【出願日】2024-10-07
(62)【分割の表示】P 2023213064の分割
【原出願日】2019-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 庄一
(57)【要約】
【課題】印刷に使用する用紙束の断裁精度が十分では無い場合も、後工程の断裁後の用紙間の画像の位置ずれが少ない、良好な印刷結果が得られる画像形成装置及び画像位置調整方法を提供する。
【解決手段】用紙に画像を形成する画像形成手段と、用紙のエッジと前記画像形成手段により当該用紙に印刷された測定パターンとの位置関係に基づいて、前記画像形成手段により用紙に印刷される画像の位置を調整する画像位置調整手段と、を備える画像形成装置であって、前記画像位置調整手段は、前記用紙のエッジのうち、対向する用紙のエッジそれぞれと前記測定パターンとの位置関係に基づいて、前記画像形成手段により用紙に印刷される画像の位置を調整する第一の調整モードと、前記対向する用紙エッジうちの一方と前記測定パターンとの位置関係に基づいて、前記画像形成手段により用紙に印刷される画像の位置を調整する第二の調整モードと、を有する。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙に画像を形成する画像形成手段と、
用紙のエッジと前記画像形成手段により当該用紙に印刷された測定パターンとの位置関係に基づいて、前記画像形成手段により用紙に印刷される画像の位置を調整する画像位置調整手段と、
を備える画像形成装置であって、
前記画像位置調整手段は、前記用紙のエッジのうち、対向する用紙のエッジそれぞれと前記測定パターンとの位置関係に基づいて、前記画像形成手段により用紙に印刷される画像の位置を調整する第一の調整モードと、前記対向する用紙エッジうちの一方と前記測定パターンとの位置関係に基づいて、前記画像形成手段により用紙に印刷される画像の位置を調整する第二の調整モードと、を有する画像形成装置。
【請求項2】
前記画像位置調整手段は、前記第二の調整モードにおいて、用紙の搬送方向に平行な方向の前記対向する用紙エッジの一方と、前記用紙の搬送方向に直交する方向の前記対向する用紙エッジの一方とに基づいて、前記画像形成手段により用紙に印刷される画像の位置を調整する、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第一の調整モードにおいては、前記測定パターンが、前記対向する用紙のエッジそれぞれと所定の距離となるよう形成される、請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第二の調整モードにおいては、前記測定パターンが、前記対向する用紙エッジうちの一方と所定の距離となるよう形成される、請求項1~3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記画像位置調整手段は、前記第一の調整モードにおいて、さらに、前記対向する用紙のエッジそれぞれと前記測定パターンとの位置関係に基づいて、用紙に印刷される画像の倍率を調整する、請求項1~4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記画像位置調整手段は、前記第二の調整モードにおいて、用紙の両面に画像を印刷する場合、先に印刷された一方の面の画像を基準として、後から印刷される他方の面の画像の表裏差を調整する、請求項1~5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
用紙のエッジと画像形成手段により当該用紙に印刷された測定パターンとの位置関係に基づいて、前記画像形成手段により用紙に印刷される画像の位置を調整する画像位置調整方法であって、
前記用紙のエッジのうち、対向する用紙のエッジそれぞれと前記測定パターンとの位置関係に基づいて、前記画像形成手段により用紙に印刷される画像の位置を調整する第一の調整モードと、前記対向する用紙エッジうちの一方と前記測定パターンとの位置関係に基づいて、前記画像形成手段により用紙に印刷される画像の位置を調整する第二の調整モードと、を含む画像位置調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置及び画像位置調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷業界において、最終商品より大きなサイズの用紙に断裁トンボとともに画像を印刷し、印刷後に断裁を含む後加工を行うことが行われている。しかし、印刷用紙は必ずしも正確な大きさを持つ矩形では無いから、断裁作業の際、断裁トンボ位置で正確に断裁する工程に多くの労力を裂いていた。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1には、最初の用紙断裁位置を断裁用紙束上に示すとともに、これと対向する辺に画像位置を合わせる制御をすることで、断裁作業を容易に遂行できるようにした技術が開示されている。この特許文献1には、用紙外形と画像位置を測定するための測定パターン(トンボ)との距離をもとに画像のひずみを測定し、画像変形により、画像位置を調節する手段が提案されている。
【0004】
また、印刷時の経時的な画像の位置ずれを逐次測定し、補正するために、印刷対象の画像の四隅にトンボを印刷し、これと用紙エッジ(用紙端)との距離を測定し、用紙エッジと四隅のトンボの距離が一定となるように調整することで、印刷中の画像位置ずれを調整する手法(リアルタイム調整と呼ぶ)が一般に用いられている。リアルタイム調整により、連続印刷中の画像形成装置の経時的な変化に適宜対応し、良好な画像の位置合わせが実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、用紙エッジと四隅のトンボの位置関係で画像位置調整を実施する場合、印刷で利用する用紙束の断裁精度が十分であれば特に問題は発生しないが、用紙の断裁精度が悪い場合、印刷経過とともに「用紙起因で」用紙エッジと四隅のトンボの位置関係が変化し、これを安定させるように調整すると、画像倍率が変化し、後処理の断裁工程で画像位置のズレが生じる場合があった。
【0007】
図13Aに、正確に断裁された用紙束のイメージ図を示す。
図13Aに示すように正確に矩形に断裁された用紙束であれば、用紙エッジと四隅のトンボの距離が一定となるように随時調整を行うことにより、
図13Bに示すように、常に安定した画像位置に画像を印刷することができる。なお、
図13Bにおいて、四隅のトンボの内側が画像位置である。(
図14Bについても同様)。
【0008】
図14Aに、断裁が不正確な用紙束の例として、下に行くほど用紙サイズが大きくなる用紙束のイメージ図を示す。
図14Aに示すように、印刷に用いる用紙束の断裁状態が歪んでいる場合、印刷が進むに従って用紙サイズが変化してしまう。この場合に、用紙エッジと四隅のトンボの距離が一定となるように画像位置を調整すると、
図14Bに示すように、各々の用紙エッジに対する画像位置は安定するものの、用紙サイズの変化に伴い画像の倍率が変化してしまい、印刷後の用紙束を印刷開始時の位置を基準として断裁すると、断裁後の画像位置が、印刷開始時点(用紙束上方の用紙を利用)と、印刷終了時点(用紙束下方の用紙を利用)で変化してしまう状況となる。また、断裁すると、印刷終了時点で印刷された用紙は
図14Bの点線の位置で断裁されるため、画像が用紙からはみ出てしまう場合がある。
【0009】
本発明は、印刷に使用する用紙束の断裁精度が十分では無い場合も、後工程の断裁後の用紙間の画像の位置ずれが少ない、良好な印刷結果が得られる画像形成装置及び画像位置調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
用紙に画像を形成する画像形成手段と、
用紙のエッジと前記画像形成手段により当該用紙に印刷された測定パターンとの位置関係に基づいて、前記画像形成手段により用紙に印刷される画像の位置を調整する画像位置調整手段と、
を備える画像形成装置であって、
前記画像位置調整手段は、前記用紙のエッジのうち、対向する用紙のエッジそれぞれと前記測定パターンとの位置関係に基づいて、前記画像形成手段により用紙に印刷される画像の位置を調整する第一の調整モードと、前記対向する用紙エッジうちの一方と前記測定パターンとの位置関係に基づいて、前記画像形成手段により用紙に印刷される画像の位置を調整する第二の調整モードと、を有する。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記画像位置調整手段は、前記第二の調整モードにおいて、用紙の搬送方向に平行な方向の前記対向する用紙エッジの一方と、前記用紙の搬送方向に直交する方向の前記対向する用紙エッジの一方とに基づいて、前記画像形成手段により用紙に印刷される画像の位置を調整する。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、
前記第一の調整モードにおいては、前記測定パターンが、前記対向する用紙のエッジそれぞれと所定の距離となるよう形成される。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1~3のいずれか一項に記載の発明において、
前記第二の調整モードにおいては、前記測定パターンが、前記対向する用紙エッジうちの一方と所定の距離となるよう形成される。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1~4のいずれか一項に記載の発明において、
前記画像位置調整手段は、前記第一の調整モードにおいて、さらに、前記対向する用紙のエッジそれぞれと前記測定パターンとの位置関係に基づいて、用紙に印刷される画像の倍率を調整する。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項1~5のいずれか一項に記載の発明において、
前記画像位置調整手段は、前記第二の調整モードにおいて、用紙の両面に画像を印刷する場合、先に印刷された一方の面の画像を基準として、後から印刷される他方の面の画像の表裏差を調整する。
【0016】
請求項7に記載の発明は、
用紙のエッジと画像形成手段により当該用紙に印刷された測定パターンとの位置関係に基づいて、前記画像形成手段により用紙に印刷される画像の位置を調整する画像位置調整方法であって、
前記用紙のエッジのうち、対向する用紙のエッジそれぞれと前記測定パターンとの位置関係に基づいて、前記画像形成手段により用紙に印刷される画像の位置を調整する第一の調整モードと、前記対向する用紙エッジうちの一方と前記測定パターンとの位置関係に基づいて、前記画像形成手段により用紙に印刷される画像の位置を調整する第二の調整モードと、を含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、印刷に使用する用紙束の断裁精度が十分では無い場合も、後工程の断裁後の用紙間の画像の位置ずれが少ない、良好な印刷結果が得られる画像形成装置及び画像位置調整方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】画像形成装置の機能的構成を示すブロック図である。
【
図2】画像形成装置の各部の機械的構成要素を示す図である。
【
図4】第一の調整モードで印刷されるトンボの一例を示す図である。
【
図5A】縦倍率、横倍率、上下画像シフト、左右画像シフトのそれぞれの調整項目における調整値の範囲及び調整イメージを示す図である。
【
図5B】回転、スキュー、たて台形、よこ台形、曲り、曲り位置のそれぞれの調整項目における調整値の範囲及び調整イメージを示す図である。
【
図6】第二の調整モードで印刷されるトンボの一例を示す図である。
【
図7】従来のリアルタイム調整を実施したジョブにおいて、ジョブ中に用紙サイズが変化してジョブ開始時点よりジョブ終了時点のほうが用紙サイズが大きくなった場合の、ジョブ開始時点とジョブ終了時点の印刷物を示す図である。
【
図8A】第二モードのエッジ基準モードで画像位置調整を行った場合のジョブ開始時点とジョブ終了時点の印刷物を示す図である。
【
図8B】第二モードの中央基準モードで画像位置調整を行った場合のジョブ開始時点とジョブ終了時点の印刷物を示す図である。
【
図9】第二モードで画像位置調整を行った場合、先に印刷する用紙の第一面に画像を印刷した後に用紙が伸縮して、表裏の画像の倍率にずれが生じた例を示す図である。
【
図10A】第三モードのエッジ基準モードで、表裏位置調整を行った場合のジョブ開始時点とジョブ終了時点の印刷物を示す図である。
【
図10B】第三モードのエッジ基準モードで、表裏倍率調整を行った場合のジョブ開始時点とジョブ終了時点の印刷物を示す図である。
【
図11】
図1の制御部により実行される設定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図12】
図1の制御部により実行される画像位置調整処理の流れを示すフローチャートである。
【
図13A】正確に断裁された用紙束のイメージ図である。
【
図13B】
図13Aに示す用紙束を用いて用紙エッジと四隅のトンボの距離が一定となるように随時調整を行いながら印刷を行った場合の印刷開始時と印刷終了時の画像位置を示す図である。
【
図14A】下に行くほど用紙サイズが大きくなる用紙束のイメージ図である。
【
図14B】
図14Aに示す用紙束を用いて用紙エッジと四隅のトンボの距離が一定となるように随時調整を行いながら印刷を行った場合の印刷開始時と印刷終了時の画像位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されない。
【0020】
〔画像形成装置の構成〕
まず、本実施形態における画像形成装置100の構成について説明する。
図1は、画像形成装置100の各部の機能的構成を示す機能ブロック図、
図2は、画像形成装置100の各部の機械的構成要素を示す図である。
【0021】
図1に示すように、画像形成装置100は、制御部101、通信部102、操作表示部103、記憶部104、給紙部105、搬送部106、原稿読取部110、画像処理部140、画像形成部150、定着部160、出力物読取部170、画像解析部180を備えて構成されている。
【0022】
制御部101は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備える。制御部101のCPUは、ROMから処理内容に応じたプログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムと協働して画像形成装置100の各部の動作を集中制御する。
【0023】
通信部102は、例えばLAN(Local Area Network)カード等の通信制御カードで構成され、LAN、WAN(Wide Area Network)等の通信ネットワークに接続された外部
機器(例えばコントローラー)との間で各種データの送受信を行う。
【0024】
操作表示部103は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイといった表示装置と、操作キーや、表示装置の画面に重ねられて配置されたタッチパネルやテンキーといった入力装置(操作部)とを備える。操作表示部103は、表示装置において各種情報を表示させ、また入力装置に対するユーザーの入力操作を操作信号に変換して制御部101に出力する。
【0025】
記憶部104は、例えば、不揮発性の半導体メモリー(いわゆるフラッシュメモリー)やハードディスクドライブ等により構成される。記憶部104には、画像形成装置100に係る各種設定情報を始めとする各種データや、ジョブ(Job)の情報(設定情報及び画像データ)等が記憶されている。例えば、記憶部104には、後述する設定処理(
図11参照)で設定される第二の調整モードに係る各設定情報(調整モードやトンボ位置設定等)が記憶される。また、記憶部104には、画像位置調整の各調整項目の調整値(表、裏それぞれの調整値)が記憶される。
【0026】
給紙部105は、制御部101からの指示に従って給紙トレイに収容された用紙を給紙する。
搬送部106は、搬送経路及びレジストローラー対等の複数の搬送ローラー対を有し、給紙部105から給紙された用紙を画像形成装置100内で搬送する。また、搬送部106は、反転機構106aを有し、用紙の表裏を反転させて画像形成部150に搬送することが可能である。
【0027】
原稿読取部110は、ADF(Auto Document Feeder)と称される自動原稿給紙装置および原稿画像走査装置(スキャナー)等を備えて構成され、原稿の画像を読み取って、画像データを生成する。
【0028】
画像処理部140は、制御部101の制御下で、原稿読取部110により読み取られた画像データや、外部機器(例えば、PC(Personal Computer))から送信されたPDL
データにラスタライズ処理を施すコントローラー等)から入力された画像データに対して、画像位置調整、階調補正、色変換、シェーディング補正等の各種画像処理や、圧縮処理等を施す。これらの処理が施された画像データは、画像形成部150に入力される。
【0029】
画像形成部150は、ジョブの設定情報と画像データとに基づいて用紙上に画像を印刷する。
定着部160は、用紙上に印刷されたトナーによる画像を熱と圧力とで用紙に定着させる。
なお、
図2においては、画像形成部150をいわゆる電子写真方式の画像形成部として図示しているが、これに限定されるものではなく、例えば、インクジェット方式の画像形成部であってもよい。
【0030】
出力物読取部170は、画像形成部150により用紙に印刷され、定着部160により定着された画像を読み取り、得られた読取画像データを画像解析部180に出力する。出力物読取部170は、画像形成部150と定着部160の下流側に配置されており、用紙搬送中に画像を読み取る構成となっている。出力物読取部170は、用紙の一方の面の画像を読み取る読取部170aと、用紙の他方の面の画像を読み取る読取部170bと、を備えて構成されている。読取部170aと読取部170bのそれぞれには、用紙搬送経路を挟んで対向する位置に、背景部材171a、171bが設けられている。背景部材171a、171bは、例えば、
図3に示すように、黒色面1711、白色面1712を有し、図示しない駆動源により回転させることで、用紙を読み取る際の背景を黒色又は白色に切り替えることができるようになっている。また、出力物読取部170による読取サイズは、用紙サイズよりも大きくなっており、用紙の4辺のエッジを読み取り可能に構成されている。
【0031】
画像解析部180は、出力物読取部170により出力された読取画像データを解析して、用紙の表面と裏面のそれぞれに印刷する画像の位置の調整値を算出して制御部101に出力する。
【0032】
〔画像位置調整の動作〕
次に、画像形成装置100における画像位置調整の動作について説明する。
画像位置調整は、画像形成装置100において用紙に印刷される画像の位置を調整するものであり、第一の調整モードと、第二の調整モードを有する。
【0033】
第一の調整モードは、本印刷前(ジョブに基づく印刷前)に画像形成部150により用紙に印刷される画像の位置を調整するモードである。具体的に、第一の調整モードでは、まず、画像形成部150により
図4に示す測定パターン(トンボと呼ぶ)T1~T4を、ジョブを印刷する用紙の4辺のエッジから予め設定された距離(例えば、用紙エッジから10mm)だけ内側に付与して画像形成部150用紙の表裏に印刷し、その印刷物を出力物読取部170により読み取り、得られた読取画像データを画像解析部180により解析して用紙エッジとトンボT1~T4との位置関係(距離)を取得する。そして、画像解析部180は、表裏のそれぞれについて、用紙エッジとトンボT1~T4(各用紙エッジに対向するトンボ)との距離が所定の距離となるように複数の調整項目の調整値を算出し、記憶部104に記憶させる。なお、測定精度や安定性を向上するために、第一の調整モードは複数回繰り返しても構わない。また、複数枚の前記トンボT1~T4を付与した印刷物を印刷して各々調整値を算出し、その平均値を用いるようにしてもよい。本印刷時には、制御部101は、記憶部104に記憶された調整値に基づいて、画像処理部140、画像形成部150、搬送部106等を制御して用紙に印刷される画像の位置を調整する。
【0034】
第一の調整モードにおいて算出される複数の調整項目としては、縦横それぞれの倍率、上下、左右それぞれの画像シフト、回転、スキュー、たて台形、よこ台形、曲り、曲り位置、が挙げられる。これらの調整項目は、それぞれ独立して調整値を求めることが可能である。上記の調整項目のうち、倍率、画像シフト、回転、スキュー、たて台形、よこ台形の調整項目の調整により、四隅の画像位置を調整することができる。また、曲り、曲り位置は、画像の歪みを調整するためのもので、これらを併用することで、さらに高度な画像位置調整が可能である。
【0035】
図5Aに、縦倍率、横倍率、上下画像シフト、左右画像シフトのそれぞれの調整項目における調整値の範囲及び調整イメージを示す。
図5Bに、回転、スキュー、たて台形、よこ台形、曲り、曲り位置のそれぞれの調整項目における調整値の範囲及び調整イメージを示す。なお、
図5A、
図5Bにおける太矢印Aは、用紙搬送方向を示すものであり、実線は用紙を、点線は目標とする画像位置を、ハッチングは現状の画像位置を、細矢印は調整により画像が動く方向を示している。なお、
図5Aの画像シフトについては、現状の画像位置と目標の画像位置の双方を示すと見にくくなるため、両者を同一として表し、調整により画像が動く方向のみを示す図としている。また、
図5Bについては、用紙を示す実線は省略している。
【0036】
なお、本実施形態において、第一の調整モードは、トンボT1~T4が印刷された用紙を出力物読取部170で読み取って、得られた読取画像データを画像解析部180で解析することにより
図5A、
図5Bに示す各調整項目の調整値を自動的に取得することとして説明しているが、トンボT1~T4が印刷された用紙をユーザーが目視で観察して決定した各調整項目の調整値の入力を操作表示部103から受け付けて、各調整値の値を取得することとしてもよい。また、原稿読取部110でトンボT1~T4が印刷された用紙を読み取り、解析するように構成してもよい。この場合、原稿読取部110は複写機能用途に作られているから、背景は白となる。本目的では用紙エッジを明確に読み取るために、トンボT1~T4が印刷された用紙に例えば濃色の背景紙を重ねて、用紙エッジが適切に読み取れるように、印刷された用紙の表裏、天地を入れ替えて適宜(例えば4回)読み取り、解析してもよい。
【0037】
第二の調整モードは、本印刷中に、画像形成部150により用紙に印刷される画像の位置を調整するモード(いわゆるリアルタイム調整モード)である。具体的に、第二の調整モードでは、まず、
図6に示すトンボT11~T14を、ジョブを印刷する用紙の四隅から予め設定された距離(例えば、用紙の四隅を構成する2辺の用紙エッジから、各々3mm
)だけ内側の四隅に付与して画像形成部150により用紙に印刷し、その印刷物を出力物読取部170により読み取り、得られた読取画像データを画像解析部180により解析して用紙エッジとトンボT11~T14(各用紙エッジに対向するトンボ)との距離を取得する。そして、画像解析部180は、取得した用紙エッジとトンボT11~T14との距離に基づいて、取得すべき各調整項目の調整値を算出及び更新する。制御部101は、更新された調整値に基づいて、画像処理部140、画像形成部150、搬送部106等を制御して、以降の印刷における用紙に印刷される画像の位置を調整する。
なお、前出の予め設定された距離が、第二の調整モードのほうが小さくなっているのは、第二の調整モードでは、トンボT11~T14とともに印刷したユーザコンテンツの画像を利用するので、トンボT11~T14とユーザコンテンツが重ならないようにするためである。また用紙のエッジ付近には、例えば印刷のオペレータが印刷条件等を確認するための補助情報が印刷されていることが多い。これらとトンボT11~T14が重なると、第二の調整モードが正しく動作しない可能性があるため、トンボ周辺の画像情報を白塗り(トナー印刷されない状態に)する処理を加えてもよい。
【0038】
本実施形態において、第二の調整モードでは、処理の簡略化のために曲り、曲り位置の調整を省略するため、
図6に示すような、四隅に独立したトンボT11~T14を用いる。なお、第一の調整モードと同様にトンボT1~T4を用いて曲り、曲り位置の調整も行うこととしてもよい。
【0039】
ここで、従来の画像形成装置において本印刷中に実施されるリアルタイム調整では、上述の第一の調整モードと同様に、用紙エッジとトンボT1~T4との距離が所定の距離となるように画像位置の調整を行っていた。
【0040】
図7は、従来のリアルタイム調整を実施したジョブにおいて、ジョブによる印刷に用いた用紙束の断裁が不正確であったために、ジョブ中に用紙サイズが変化してジョブ開始時点よりジョブ終了時点のほうが用紙サイズが大きくなった場合の、ジョブ開始時点(印刷開始時点)とジョブ終了時点(印刷終了時点)の印刷物を示す図である。
図7に示すジョブ終了時点の印刷物上の点線は、ジョブ開始時点の用紙サイズを示している(
図8A~
図10Bについても同様)。なお、ジョブにより出力される印刷物では、トンボT11~T14の内側に、ジョブに基づく画像が印刷されているが、
図7~
図10Bにおいては簡略化のため、省略している。
【0041】
上述のように、従来のリアルタイム調整では、用紙エッジと四隅のトンボの距離が一定となるように画像倍率を調整するため、ジョブ中に用紙サイズが変化すると、
図7に示すように、これに合わせて画像サイズが変化してしまう。そうすると、例えば、印刷後の用紙束を、ジョブ開始時の位置を基準として断裁する場合、ジョブ終了時点の印刷物では、断裁後に画像が切れてしまったりする等の不具合が生じる場合がある。
【0042】
そこで、本実施形態の第二の調整モードは、従来のリアルタイム調整と同等の調整を行う第一モードの他、倍率調整を制限する第二モード、倍率調整を制限するとともに、倍率調整を制限することにより生じる表裏差を調整する第三モードを有する。さらに、第二モード及び第三モードのそれぞれは、用紙の少なくとも一方の面に印刷される画像と特定の用紙エッジとの距離が所定の距離となるように画像の位置を調整するエッジ基準モードと、用紙に印刷される画像の位置が用紙中央に位置するように画像の位置を調整する中央基準モードのいずれかが操作表示部103により選択可能に構成されている。
【0043】
図8Aは、第二モードのエッジ基準モードで画像位置調整を行った場合のジョブ開始時点とジョブ終了時点の印刷物を示す図である。
図8Aでは、エッジE1とE4を特定の用紙エッジとした例である。
第二モードのエッジ基準モードでは、倍率調整を制限するとともに、特定の用紙エッジ(
図8Aにおいては、E1、E4)から所定の距離となるように画像位置を調整するため、
図8Aに示すように、特定の用紙エッジに対向する辺(E3、E2)を断裁するように後工程を組んだ場合、ジョブ開始時点とジョブ終了時点の印刷物における画像位置を容易に揃えることができる。
【0044】
図8Bは、第二モードの中央基準モードで画像位置調整を行った場合のジョブ開始時点とジョブ終了時点の印刷物を示す図である。
第二モードの中央基準モードでは、倍率調整を制限するとともに、各用紙エッジから均等な位置に画像位置がくるように画像位置を調整するため、
図8Bに示すように、画像を用紙中央に位置させることができる。
例えば、後工程の断裁がなく、かつ、画像サイズを規定どおりに仕上げる必要がある場合には、この調整モードでの画像位置調整が好ましい場合がある。
【0045】
第二モードで画像位置調整を行った場合、
図9に示すように、先に印刷する用紙の第一面(ここでは、表面とする)に画像を印刷した後に用紙が伸縮して、表裏の画像の倍率にずれが生じる場合がある。
図9において、実線のトンボは表面のトンボ、点線のトンボは裏面のトンボを表す(
図10A、
図10Bも同様)。第三モードは、このように倍率調整を制限することにより表裏の画像の倍率にずれが生じた場合の表裏差を調整可能なモードである。
【0046】
第三モードにおける表裏差の調整手法としては、画像形成部150において先に印刷される面の画像を基準として、後から印刷される面の画像の倍率を合わせるように調整することで、用紙の表裏に印刷される画像の表裏差を調整する手法(表裏倍率調整と呼ぶ)と、先に印刷される面の画像に対する後から印刷される面の画像の位置ずれが四隅で平均して最小となる位置に後から印刷される面の画像の位置を調整する手法(表裏位置調整と呼ぶ)がある。いずれの調整手法を採用するかは、操作表示部103により選択可能である。
【0047】
図10Aは、第三モードのエッジ基準モードで、表裏位置調整を行った場合のジョブ開始時点とジョブ終了時点の印刷物を示す図である。
図10Bは、第三モードのエッジ基準モードで、表裏倍率調整を行った場合のジョブ開始時点とジョブ終了時点の印刷物を示す図である。
図10A、
図10Bに示すように、第三モードでは、表面と裏面の印刷の間で用紙の伸縮が生じても、表裏の画像位置関係を良好に保つことができる。
【0048】
なお、
図7~
図10Bにおいては、印刷が進むに従って用紙が大きくなる場合を示して説明したが、逆に印刷が進むに従って、用紙が小さくなる場合もあり得る。この場合、用紙エッジ近傍にトンボT11~T14を印刷した場合、印刷が進むに従って、いずれかのトンボと用紙エッジとの距離が接近し、さらにはトンボが用紙エッジからはみ出る場合が想定できる。この場合、正しい画像位置の調整が実施できなくなる可能性がある。そこで、本実施形態では、第二の調整モードで倍率調整を制限する場合(すなわち、第二モード、第三モードの場合)に、トンボT11~T14と用紙エッジとの距離が倍率調整の実施を制限しない場合に比べて大きくなるようにトンボT11~T14の位置を調整することが可能である。トンボT11~T14の位置の調整を行うか否かは、操作表示部103により選択可能である。
【0049】
図11は、上述の画像位置調整における調整モード等の各種設定事項を設定するための設定処理の流れを示すフローチャートである。
図11に示す設定処理は、制御部101のCPUとRAMに記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0050】
まず、制御部101は、倍率調整の実施を制限するか否かを選択するための選択ボタンを操作表示部103に表示させる。ユーザーの操作表示部103の操作により倍率調整の実施を制限しないことを選択する選択ボタンが選択されると(ステップS1;NO)、制御部101は、調整モードを第一モードに設定し(ステップS2)、設定処理を終了する。
【0051】
ステップS1において、ユーザーの操作表示部103の操作により倍率調整の実施を制限することを選択する選択ボタンが選択されると(ステップS1;YES)、制御部101は、表裏差調整を実施するか否かを選択するための選択ボタンを操作表示部103に表示させる。ユーザーの操作表示部103の操作により表裏差調整を実施しないことを選択する選択ボタンが選択されると(ステップS3;NO)、制御部101は、調整モードを第二モードに設定し(ステップS4)、ステップS8に移行する。
【0052】
ユーザーの操作表示部103の操作により表裏差調整を実施することを選択する選択ボタンが選択されると(ステップS3;YES)、制御部101は、表裏倍率調整を実施するか否かを選択するための選択ボタンを操作表示部103に表示させる。ユーザーの操作表示部103の操作により表裏倍率調整を実施しないことを選択する選択ボタンが選択されると(ステップS5;NO)、制御部101は、調整モードを第三モード(表裏位置調整)に設定し(ステップS6)、ステップS8に移行する。
ユーザーの操作表示部103の操作により表裏倍率調整を実施することを選択する選択ボタンが選択されると(ステップS5;YES)、制御部101は、調整モードを第三モード(表裏倍率調整)に設定し(ステップS7)、ステップS8に移行する。
【0053】
ステップS8において、制御部101は、トンボ位置の調整を行うか否かを選択するための選択ボタンを操作表示部103に表示させる。ユーザーの操作表示部103の操作によりトンボ位置を調整することを選択する選択ボタンが選択されると(ステップS8;YES)、制御部101は、第二の調整モードのトンボ位置を予め設定された基準位置より用紙エッジから所定距離だけ離す方向に設定し(ステップS9)、ステップS11に移行する。
ユーザーの操作表示部103の操作によりトンボ位置を調整しないことを選択する選択ボタンが選択されると(ステップS8;NO)、制御部101は、第二の調整モードのトンボ位置を予め設定された基準位置に設定し(ステップS10)、ステップS11に移行する。
【0054】
ステップS11において、制御部101は、特定の用紙エッジに画像位置を合わせるか否かを選択するための選択ボタンを操作表示部103に表示させる。ユーザーの操作表示部103の操作により特定の用紙エッジに画像位置を合わせることを選択する選択ボタンが選択されると(ステップS11;YES)、制御部101は、現在設定されている調整モードにエッジ基準モードを追加設定し(ステップS12)、設定処理を終了する。
ユーザーの操作表示部103の操作により特定の用紙エッジに画像位置を合わせないことを選択する選択ボタンが選択されると(ステップS11;NO)、制御部101は、現在設定されている調整モードに中央基準モードを追加設定し(ステップS13)、設定処理を終了する。
【0055】
なお、特定の用紙エッジは、例えば、印刷時の設定や通紙経路、印刷後の後工程に応じて、制御部101が自動的に設定すればよい。
例えば、印刷後に、先頭ページが上面を向いて排紙されるフェイスアップと、下面を向いて排紙されるフェイスダウンが存在し、フェイスアップ/フェイスダウンの切り替え制御を、出力物読取部170に通紙した後に実施するような場合、後工程の都合で特定の用紙エッジの方向(辺)を設定すると、出力物読取部170で読み取った画像における特定の用紙エッジの方向は、フェイスアップ/フェイスダウンの設定により異なることになる。また、後工程にオンラインの断裁機やステープラ、サドルバインダーのような製本機が設けられている場合、後続の装置により、特定の用紙エッジとして設定すべき用紙端が異なることが容易に想像できる。そこで、制御部101が、後続の装置の構成に応じて自動的に特定の用紙エッジを設定することが好ましい。
【0056】
また、上述の設定処理では、ユーザーが操作パネル上で画像位置調整に係る各種設定を行う場合を例として説明したが、管理者に限定された画面に画像位置調整の設定機能を設けて管理者のみが設定可能としてもよいし、画像形成装置100のメンテナンスを行うサービスマンが、専用のメンテナンスモードの画面を開き、設定できるようにしてもよい。あるいは、ディップスイッチのようなメカ、エレキ機構で設定できるようにしてもよい。
【0057】
以下、上記設定処理による設定に基づいて、制御部101により実行される画像位置調整処理について説明する。
図12は、画像位置調整処理の流れを示すフローチャートである。画像位置調整処理は、画像位置調整が設定された状態でジョブが選択され、印刷開始が指示された際に、制御部101により実行される。
【0058】
まず、制御部101は、第一の調整モードで表裏それぞれの画像位置調整を実施する(ステップS21)。
第一の調整モードの画像位置調整については、上述したとおりであるので説明を援用する。
なお、制御部101は、使用される用紙の色によって、出力物読取部170において用紙に対向させる背景部材171a、171bの面を黒色面1711又は白色面1712を切り替え(白い用紙の場合は黒色面1711を対向させ、黒い用紙の場合は白色面1712を対向させ、その他用紙色の場合は、読み取りやすい、あるいは読み取り可能な背景部材の色を適宜選択する。なお、黒い用紙の場合、用紙に印刷するトンボの色調も、用紙と容易に識別できる色材、例えば白トナー、で形成してもよい)、出力物読取部170にて用紙エッジの4辺が読み取られるようにする。
【0059】
次いで、制御部101は、ジョブに基づく印刷を開始し(ステップS22)、第二の調整モードで画像位置を調整しながらジョブの各ページの印刷を行う。
【0060】
すなわち、制御部101は、まず、印刷対象ページの画像の余白部に、用紙エッジからの距離を測定するためのトンボT11~T14を付与する(ステップS23)。
ここで、制御部101は、記憶部104に記憶されているトンボ位置の設定情報に基づいて、トンボT11~T14を付与する。
【0061】
次いで、制御部101は、記憶部104に記憶されている各調整項目の調整値に基づいて、画像処理部140、画像形成部150、搬送部106等を制御して用紙に印刷される画像の位置を調整し、トンボT11~T14が付与された画像を用紙上に印刷させ、定着部160により定着させる(ステップS24)。なお、両面印刷を行う場合、制御部101は、搬送部106及び画像形成部150を制御して、両面印刷を行わせる。
【0062】
次いで、制御部101は、出力物読取部170により印刷済み用紙(印刷物)を読み取らせ、用紙エッジを含む読取画像データを取得する(ステップS25)。
【0063】
次いで、制御部101は、出力物読取部170により取得された読取画像データを画像解析部180により解析して用紙エッジとトンボT11~T14との距離を取得させる(ステップS26)。
【0064】
次いで、制御部101は、画像解析部180により、設定されている調整モードで、用紙エッジとトンボT11~T14との距離に基づいて、取得すべき各調整項目の調整値を算出して更新し(ステップS27)、ステップS28に移行する。
【0065】
例えば、調整モードが第一モードに設定されている場合、用紙エッジとトンボT11~T14(各用紙エッジと対向するトンボ)との距離が所定の距離となるように、倍率、画像シフト、回転、スキュー、たて台形、よこ台形の調整項目の調整値を算出し、記憶部104におけるこれらの調整値を更新させる。
【0066】
例えば、調整モードが第二モードのエッジ基準モードに設定されている場合、特定の用紙エッジと当該特定エッジに対向するトンボとの距離が所定距離となるように、画像シフト、回転、スキュー、たて台形、よこ台形の調整項目の調整値を算出し、記憶部104におけるこれらの調整値を更新させる。倍率調整は実施しない。
例えば、調整モードが第二モードの中央基準モードに設定されている場合、用紙エッジから均等な位置に(用紙中央に)トンボT11~T14がくるように、画像シフト、回転、スキュー、たて台形、よこ台形の調整項目の調整値を算出し、記憶部104におけるこれらの調整値を更新させる。倍率調整は実施しない。
【0067】
例えば、調整モードが第三モード(表裏位置調整)に設定されている場合、まず、先に印刷された第一面のトンボT11~T14のうち、特定の用紙エッジに対向するトンボの位置が当該特定の用紙エッジから所定距離となるよう、画像シフト、回転、スキュー、たて台形、よこ台形の調整項目の調整値を算出し、記憶部104におけるこれらの調整値を更新させる。倍率調整は実施しない。次いで、後から印刷された第二面のトンボT11~T14と第一面の調整されたトンボT11~T14との位置ずれが四隅で平均して最小となるように、画像シフト、回転、スキュー、たて台形、よこ台形の調整項目の調整値を算出し、記憶部104におけるこれらの調整値を更新させる。倍率調整は実施しない。
【0068】
なお、本実施形態では、倍率調整を制限しない調整モードでは、倍率、画像シフト、回転、スキュー、たて台形、よこ台形の調整項目の調整値を算出することとし、倍率調整を制限する調整モードでは、画像シフト、回転、スキュー、たて台形、よこ台形の調整項目の調整値を算出することとしているが、ずれの少ない調整項目等については省略してもよい。また、いずれの調整項目の調整値を算出するかをユーザーが操作表示部103から設定可能に構成してもよい。
【0069】
また、第二の調整モードでは、印刷済みの用紙を読み取ってトンボT11~T14と用紙エッジとの距離を測定し、測定した結果に基づいて調整値を算出し、算出した調整値をこれから印刷する画像に対して適用する。そのため、測定に用いた印刷からその調整値を適用した印刷までに、たとえば用紙数枚から数十枚程度の遅延が発生する。そのため、制御部101は、調整しすぎないよう、調整値の更新の程度を加減するように制御してもよい。
【0070】
また、各調整値を算出する際には、画像解析部180は、直近の複数回分(例えば、20回分)の調整の調整値を保存しておき、今回の読取画像データに基づいて算出した調整値と直近の複数回分の調整値を用いて、トレンドを加味して調整値を算出することが好ましい。これにより、調整精度を向上させることができる。
【0071】
ステップS28において、制御部101は、全ページの印刷が終了したか否かを判断する(ステップS28)。全ページの印刷が終了していないと判断した場合(ステップS28;NO)、制御部101は、ステップS23に戻り、次のページについてステップS23~S28の処理を繰り返し実行する。全ページの印刷が終了したと判断した場合(ステップS28;YES)、制御部101は、画像位置調整処理を終了する。
【0072】
以下、上記画像位置調整処理の変形例について説明する。
〔変形例1〕
図12に示すフローチャートでは、ジョブの実行前に第一の調整モードでの調整を行う場合を図示しているが、第一の調整モードでの調整は、少なくとも用紙束を交換した直後のジョブの実行前に行えばよく、毎回のジョブの実行前に第一の調整モードを行う必要はない。ただし、ユーザーがジョブ間で第二の調整モードにおけるモード設定をやり直した場合、それまでに設定されていた調整モードのみの調整を行って調整値を更新してきた場合は、新たに設定された調整モードでの調整値を保持していないため、次のジョブ開始前に、調整値をリセットして第一の調整モードでの調整をし直す必要がでてくる。
これを避け、第一の調整モードでの調整を行うことなく第二の調整モードにおける調整モードの切り替えをスムーズに可能とするために、第二の調整モードにおいて、画像解析部180は、少なくとも2つの調整モードによる調整値を並行して算出し、記憶部104に記憶しておくことが好ましい。例えば、ユーザーにより設定された調整モードでの調整値の算出と、倍率調整の制限を行わない第一モードでの調整値の算出を並行して実施してそれぞれの調整値を記憶部104に記憶しておく。あるいは、並行して算出する調整モードを操作表示部103から設定可能とし、設定された調整モードでの調整値を実際の調整モードの調整値と並行して算出、記憶しておくこととしてもよい。
この場合、調整値を更新した際の印刷結果が実際に得られるのは、現在設定されている調整モードのみであるので、並行して調整値を算出する調整モードの調整値は、現在設定されている調整モードの調整値との差分値として算出し、更新していけばよい。
【0073】
〔変形例2〕
後工程に断裁処理が入る場合、断裁位置の調整が容易に実施できることが好ましい。上記画像位置調整処理によって、特定の用紙エッジから所定の距離に画像が配置されるように画像位置を調整した場合、特定の用紙エッジに対向する辺を最初に断裁することで、印刷用紙の用紙束の用紙サイズにバラツキがあっても、用紙裁きや断裁処理が容易に実施できるようになる。
ここで、断裁処理を行う際、ユーザーが特定の用紙エッジの方向を正しく把握する必要があるため、上記画像位置調整処理において、例えば、最初に断裁する方向(辺)が容易に識別できるよう、最初に断裁する方向(辺)の断ちトンボのデザインに変化をつける、特定のマークを付与する、ジョブに基づく実際の印刷物とは別に、印刷ジョブ束の最上面に見える形で、断裁方向や断裁方法を示す後工程情報を印刷したシートを印刷し重ねる等の処理を行うこととしてもよい。また、画像形成装置100から断裁機前に設置された表示装置に後工程情報を送信したり、画像形成装置100からサーバー経由で後工程情報を断裁機前に設置された表示装置に送信したりする制御を組み合わせてもよい。
【0074】
〔変形例3〕
上記実施形態では、特定の用紙エッジを定め、当該エッジとトンボ間の距離を調整することで画像位置を調整することとして説明したが、特定のトンボを定め、それに近い用紙エッジとの間で、用紙エッジとトンボ間の距離を調整することでも同様の処理結果を得ることができる。あるいは、用紙エッジとトンボ間の距離の調整に使用しない用紙エッジやトンボを特定するようにしてもよい。
【0075】
〔変形例4〕
上記実施形態の画像位置調整に、例えば、印刷前の用紙の通紙位置を検知し、検知した情報に基づいて、用紙位置や印刷画像の片寄り補正量を算出して調節する、従来の片寄り補正等の他の補正処理を併用しても良い。例えば、印刷前の用紙エッジの通紙位置を読み取るセンサを設け、その結果をもとに、印刷直前に用紙の片寄りを補正する機構が一般に用いられているが、例えば前記センサが用紙エッジの片側(例えば手前側)のみ検知している場合、画像位置は、用紙エッジの手前側に対し、より安定して制御されていることが期待できる。そのような場合、前記特定の用紙エッジとして、前記センサが読み取るエッジ側を設定する、あるいは設定するよう推奨するメッセージを操作画面に表示するように構成してもよい。同様に用紙位置を規制する機構が別途ある場合、その規制で画像位置と用紙エッジとの関係が安定しやすい用紙エッジを、前記特定の用紙エッジとして設定あるいは推奨することができる。
【0076】
〔変形例5〕
上記実施形態の画像形成装置100では、第二の調整モードにおいて複数の調整モードを有する構成とし、どの調整モードで調整を実行するかをユーザーが選択することとして説明したが、いずれか一つの調整モードが画像形成装置に組み込まれていてもよい。
【0077】
〔変形例6〕
また、上記実施形態では、出力物読取部170による印刷済み用紙の読取画像データを画像解析部180により解析して調整値を算出し、算出された調整値に基づいて制御部101が画像形成部150を始めとする各部を制御して画像位置を調整することとしたが、印刷済み用紙の読取画像データの解析による調整値の算出は、制御部101により行うこととしてもよい。
あるいは、画像解析部180により算出された調整値を通信部102により外部機器(コントローラーやサーバー)に送信し、外部装置において、受信した調整値に応じて用紙上の位置が調整された画像及び余白を含む用紙イメージ画像を生成して画像形成装置100に送信することとしてもよい。そして、画像形成装置100においては、受信した画像を位置調整せずにそのまま印刷することで、画像位置が調整された印刷物を出力することとしてもよい。または、用紙エッジとトンボとの距離の測定結果を通信部102により外部機器に送信し、外部装置で調整値の算出についても行うこととしてもよい。
【0078】
以上説明したように、画像形成装置100によれば、制御部101は、画像位置調整の動作モードとして、本印刷前に、画像形成部150により用紙に印刷される画像の位置を調整する第一の調整モードと、本印刷中に、画像形成部150により用紙に印刷される画像の位置を調整する第二の調整モードとを有し、第二の調整モードでの動作時に、第一の調整モードで実施される調整項目のうち、少なくとも倍率調整の実施を制限する。
したがって、印刷に使用する用紙束の断裁精度が十分でない場合であっても、ジョブを通した画像倍率ずれを低減することができ、後工程における断裁後の用紙間の画像の位置ずれが少ない、良好な印刷結果を得ることが可能となる。
【0079】
また、第二の調整モードは、倍率調整の実施を制限しない第一モードと倍率調整の実施を制限する第二モードとを有し、ユーザーが第一モード又は第二モードを選択可能に構成されているため、倍率制限を実施せずに、用紙の外形に画像を合わせることも可能となる。
【0080】
また、第二の調整モードは、倍率調整の実施を制限し、さらに用紙の表裏に印刷される画像の表裏差を調整する第三モードを有するため、ジョブ中に機内温度や用紙状態の変化で用紙伸縮率が変化した場合であっても、表裏差の少ない印刷結果を得ることが可能となる。
【0081】
また、第二の調整モードに含まれる複数の調整モードのうち、倍率調整の実施を制限する調整モードのそれぞれは、画像形成部150により用紙の少なくとも一方の面に印刷される画像と用紙の特定のエッジとの距離が所定の距離となるように画像の位置を調整する調整モードと、画像形成部150により用紙に印刷される画像の位置が用紙中央に位置するように画像の位置を調整する調整モードのいずれかが選択可能に構成されている。したがって、特定のエッジとの距離が所定の距離となるように画像の位置を調整する調整モードを選択すれば、ジョブを通して、画像位置と用紙の特定エッジとの関係を維持することができるため、後工程の断裁処理が容易となる。また、画像位置を用紙中央に位置させることもできる。
ここで、前述した、画像位置と用紙の特定エッジとの関係の維持は、あらかじめ定められた距離を維持するように構成されてもよいし、第二の調整モードで印刷を始めた際の関係(距離)を維持するように構成されてもよい。この構成の選択は、あらかじめ定めておいてもよいし、操作パネル等の手段で設定された内容に従ってもよい。
また、上記の説明では、画像位置調整の例として、倍率と画像位置を制御対象として具体的に説明したが、本発明はこれらに限定されない。例えば、
図5Bに示す回転の画像位置調整は、通常は、用紙を矩形近似した外形に対し、傾きが無いように調整されるが、用紙のエッジが特定された場合に、当該用紙エッジに対して傾きが無いよう、調整するように構成されてもよい。
【0082】
また、制御部101は、第二の調整モードで調整を行う場合に、第二の調整モードに含まれる少なくとも2つの調整モードの調整値を算出して記憶部104に記憶させるので、別の調整モードへの切り替えが容易となる。
【0083】
また、制御部101は、第二の調整モードにおいて倍率調整の実施を制限する場合に、画像形成部150により用紙に印刷される測定パターンと当該用紙のエッジとの距離が倍率調整の実施を制限しない場合に比べて大きくなるように測定パターンの位置を調整する。したがって、用紙束の断裁精度が悪く、ジョブが進むにつれて用紙が小さくなった場合に測定パターンが用紙エッジからはみ出すことを防止することができる。
【0084】
なお、上記実施形態における記述は、本発明に係る画像形成装置の好適な例であり、これに限定されるものではない。
【0085】
また、上記の説明では、各処理を実行するためのプログラムを格納したコンピューター読み取り可能な媒体として不揮発性の半導体メモリーやハードディスクを使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピューター読み取り可能な媒体として、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用することも可能である。また、プログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウェーブ(搬送波)を適用することとしてもよい。
【0086】
その他、画像形成装置を構成する各部の細部構成及び細部動作に関しても本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0087】
100 画像形成装置
101 制御部
102 通信部
103 操作表示部
104 記憶部
105 給紙部
106 搬送部
110 原稿読取部
140 画像処理部
150 画像形成部
160 定着部
170 出力物読取部
180 画像解析部