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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018046
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】電子制御装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20240201BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20240201BHJP
【FI】
H05K9/00 R
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121091
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】方田 勲
(72)【発明者】
【氏名】大前 彩
(72)【発明者】
【氏名】篠田 博史
【テーマコード(参考)】
5E321
5H770
【Fターム(参考)】
5E321AA02
5E321AA14
5E321AA17
5E321BB57
5E321CC16
5E321GG05
5H770QA01
5H770QA27
5H770QA35
(57)【要約】
【課題】本開示は、導電性接続部が回路基板の表面で不要に広がることを防止しつつ、電磁両立性を向上させることが可能な電子制御装置を提供する。
【解決手段】電子制御装置は、回路基板110と、樹脂製のベース部120と、金属性のカバーと、導電性接続部140と、流動防止部150とを有する。回路基板110は、ノイズ低減の対象となる対象配線111と、その対象配線111の近傍に実装される電子部品112と、その電子部品112に接続される信号グランド114と、電子部品112を介して信号グランド114に接続されるとともに導電性接続部140を介してカバーに接続される筐体グランド113と、を有する。流動防止部150は、導電性接続部140と電子部品112との間に連絡通路151を有する。筐体グランド113は、導電性接続部140に接続される第1接続部113aと、電子部品112に接続される第2接続部113bと、連絡通路151を通り第1接続部113aと第2接続部113bとを接続する連絡部113cと、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板と、該回路基板を支持する樹脂製のベース部と、該ベース部に支持された前記回路基板を覆う金属製のカバーと、該カバーを前記回路基板に接続する導電性接続部と、該導電性接続部の広がりを防止する流動防止部と、を有する電子制御装置であって、
前記回路基板は、ノイズ低減の対象となる対象配線と、該対象配線の近傍に実装される電子部品と、該電子部品に接続される信号グランドと、前記電子部品を介して前記信号グランドに接続されるとともに前記導電性接続部を介して前記カバーに接続される筐体グランドと、を有し、
前記流動防止部は、前記導電性接続部と前記電子部品との間に連絡通路を有し、
前記筐体グランドは、前記導電性接続部に接続される第1接続部と、前記電子部品に接続される第2接続部と、前記流動防止部の前記連絡通路を通り前記第1接続部と前記第2接続部とを接続する連絡部と、を有することを特徴とする電子制御装置。
【請求項2】
前記連絡通路は、前記対象配線と前記導電性接続部との距離が最短となる経路上に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記流動防止部は、前記ベース部に設けられた凸部であり、
前記回路基板は、前記流動防止部を貫通させる開口部を有することを特徴とする請求項2に記載の電子制御装置。
【請求項4】
前記導電性接続部は、前記回路基板の端縁に沿う方向の寸法が、前記回路基板の前記端縁に交差する方向の寸法よりも大きいことを特徴とする請求項3に記載の電子制御装置。
【請求項5】
前記流動防止部は、前記回路基板の前記端縁に沿う方向において、前記導電性接続部の両端よりも外側まで延びる長さを有し、
前記回路基板の前記開口部は、前記流動防止部に沿う長さが15mm以下であることを特徴とする請求項4に記載の電子制御装置。
【請求項6】
前記導電性接続部と前記流動防止部の前記連絡通路との間に配置され、前記導電性接続部と前記連絡通路との間の経路を遮蔽する遮蔽部を有することを特徴とする請求項2に記載の電子制御装置。
【請求項7】
前記回路基板の一つの端縁に沿って二つの前記導電性接続部が隣接して配置され、
前記流動防止部は、前記二つの前記導電性接続部と前記電子部品との間に配置され、前記二つの前記導電性接続部の間に前記連絡通路を有し、
前記筐体グランドは、前記二つの前記導電性接続部に接続される二つの前記第1接続部と、前記連絡通路を通り前記二つの前記第1接続部の間の部分と前記第2接続部とを接続する前記連絡部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の電子制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から電子制御装置が知られている。たとえば、下記特許文献1に記載された電子制御装置は、樹脂製の基台と、電子部品が搭載された回路基板と、その回路基板を覆う金属カバーと、その金属カバーと回路基板の接地回路とを導電接続する導電性接続部と、を備えている。この電子制御装置は、上記回路基板は上記基台と上記金属カバーとの間に挟持され、上記導電性接続部と上記電子部品との間に凸状部材が配置され、上記導電性接続部と上記凸状部材とが当接されたことを特徴としている(特許文献1、第0011段落、請求項1)。
【0003】
この従来の電子制御装置によれば、導電性材料を回路基板上の所定の位置に設置する際、その回路基板面での不要な広がりを防止できる。したがって、回路基板上の部品禁止帯を小さく設定した場合でも、導電性材料の回路基板上での電子部品や配線パターンとの接触を防止でき、回路の破損を防止することができる(特許文献1、第0012段落)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2022/059263号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような電子制御装置においては、エミッション(EMI)の抑制とイミュニティ(EMS)の向上、すなわち、電磁両立性(EMC)のさらなる向上が求められている。しかしながら、上記従来の電子制御装置は、前述のように、導電性接続部と電子部品との間に凸状部材が配置されることで、導電性材料の回路基板面での不要な広がりを防止できる反面、凸状部材がEMC向上の障害となるおそれがある。
【0006】
本開示は、導電性接続部が回路基板の表面で不要に広がることを防止しつつ、EMCを向上させることが可能な電子制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、回路基板と、該回路基板を支持する樹脂製のベース部と、該ベース部に支持された前記回路基板を覆う金属製のカバーと、該カバーを前記回路基板に接続する導電性接続部と、該導電性接続部の広がりを防止する流動防止部と、を有する電子制御装置であって、前記回路基板は、ノイズ低減の対象となる対象配線と、該対象配線の近傍に実装される電子部品と、該電子部品に接続される信号グランドと、前記電子部品を介して前記信号グランドに接続されるとともに前記導電性接続部を介して前記カバーに接続される筐体グランドと、を有し、前記流動防止部は、前記導電性接続部と前記電子部品との間に連絡通路を有し、前記筐体グランドは、前記導電性接続部に接続される第1接続部と、前記電子部品に接続される第2接続部と、前記流動防止部の前記連絡通路を通り前記第1接続部と前記第2接続部とを接続する連絡部と、を有することを特徴とする電子制御装置である。
【発明の効果】
【0008】
本開示の上記一態様によれば、導電性接続部が回路基板の表面で不要に広がることを防止しつつ、EMCを向上させることが可能な電子制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示に係る電子制御装置の一実施形態を示す分解斜視図。
図2図1の電子制御装置のベース部と回路基板の周縁部の模式的な拡大平面図。
図3図2のIII-III線に沿う電子制御装置の模式的な拡大断面図。
図4図2のIV-IV線に沿う電子制御装置の模式的な拡大断面図。
図5図2の電子制御装置の変形例を示す模式的な拡大平面図。
図6図2の電子制御装置の変形例を示す模式的な拡大平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本開示に係る電子制御装置の実施形態を説明する。
【0011】
図1は、本開示に係る電子制御装置の一実施形態を示す分解斜視図である。図2は、図1の電子制御装置100のベース部120と回路基板110の周縁部の模式的な拡大平面図である。図3は、図2のIII-III線に沿う電子制御装置100の模式的な拡大断面図である。図4は、図2のIV-IV線に沿う電子制御装置100の模式的な拡大断面図である。
【0012】
本実施形態の電子制御装置100は、たとえば、車両に搭載され、車両のエンジンや、変速機などに用いられる各種のアクチュエータを制御する。電子制御装置100は、たとえば、車両全体の軽量化を目的として、部品の樹脂化を含む軽量化が進められるとともに、エンジン本体や変速機に直接的に固定され、接続ケーブルの短縮化が図られている。
【0013】
電子制御装置100は、たとえば、回路基板110と、樹脂製のベース部120と、金属製のカバー130と、導電性接続部140と、流動防止部150と、を有している。また、電子制御装置100は、たとえば、シール部材160と、コネクタ170と、を有している。
【0014】
回路基板110は、たとえば、図2に示すように、ノイズ低減の対象となる対象配線111と、その対象配線111の近傍に実装される電子部品112と、を有する多層基板である。また、回路基板110は、たとえば、図2および図3に示すように、回路基板110の周縁部に回路基板110の端縁に沿って設けられた筐体グランド113と、その筐体グランド113よりも回路基板110の内側に設けられた信号グランド114と、を有している。さらに、回路基板110は、たとえば、複数の開口部115と、複数の貫通ビア116と、を有している。
【0015】
対象配線111は、たとえば、回路基板110の第1層目に配置されたクロック配線、電源配線、または信号配線であり、回路基板110の第2層目に配置された信号グランド114と対を成しており、クロック、電源、または信号を伝送する。電子部品112は、たとえば、コンデンサなどの回路素子であり、対象配線111に可能な限り近い位置に配置されている。また、電子部品112は、たとえば、対象配線111と導電性接続部140との間の位置に配置されている。
【0016】
筐体グランド113は、たとえば、図3に示すように、多層基板である回路基板110の複数の層に設けられ、各層に設けられた筐体グランド113が複数の貫通ビア116によって互いに接続されている。同様に、信号グランド114は、たとえば、回路基板110の複数の層に設けられ、各層に設けられた信号グランド114が複数の貫通ビア116によって互いに接続されるとともに、回路基板110に設けられた図示を省略する個々の回路に接続されている。また、信号グランド114は、たとえば、電子部品112に接続され、筐体グランド113は、たとえば、電子部品112を介して信号グランド114に接続されるとともに、導電性接続部140を介してカバー130に接続されている。
【0017】
開口部115は、たとえば、回路基板110を貫通する貫通孔によって導電性接続部140と電子部品112との間に形成され、後述する流動防止部150を貫通させる。貫通ビア116は、たとえば、図2および図3に示すように、回路基板110の各々の層に設けられた筐体グランド113、信号グランド114などを電気的に接続している。このような貫通ビア116を設けることで、導電性接続部140から回路基板110の第2層目の信号グランド114に至る経路が短縮される。
【0018】
ベース部120は、たとえば、図1に示すように、樹脂の成形品であり、上部と前部が開放された凹形状を有し、回路基板110を収容する筐体の一部を構成する。ベース部120は、回路基板110の下面を覆うとともに、回路基板110の下面および周縁を支持する。また、ベース部120は、たとえば、幅方向の両側に複数の脚部121を有している。各々の脚部121は、たとえば、ボルトによってエンジン本体や変速機などに取り付けられる。
【0019】
カバー130は、たとえば、図1に示すように、凹凸を有する金属製の矩形板状の部材であり、ベース部120とともに回路基板110を収容する筐体の一部を構成する。カバー130は、たとえば、ベース部120の角部に設けられた固定用のピン122をカバー130の角部に設けられた貫通孔131に挿通させ、ピン122の先端を加熱して拡径させることによってベース部120に固定され、回路基板110の上面を覆う。
【0020】
導電性接続部140は、たとえば、回路基板110の筐体グランド113とカバー130とを接続する導電性を有する部材である。導電性接続部140は、たとえば、導電性接着剤または導電性グリスであり、少なくとも電子制御装置100の組み立て時に流動性を有している。より具体的には、ベース部120に支持された回路基板110の上に導電性接続部140を配置した状態でベース部120にカバー130を取り付けると、回路基板110とカバー130との間で圧縮された導電性接続部140が回路基板110の上で流動して広がる。
【0021】
流動防止部150は、上記のような導電性接続部140の広がりを防止する。より具体的には、流動防止部150は、対象配線111に対向する導電性接続部140の側面に隣接して設けられ、導電性接続部140の対象配線111へ向かう方向への流動を防止する。図1に示す例において、流動防止部150は、ベース部120に設けられた凸部であり、回路基板110は、流動防止部150を貫通させる開口部115を有している。なお、流動防止部150は、たとえば、カバー130に設けられた凸部であってもよく、回路基板110に設けられていてもよい。
【0022】
図1に示す例において、流動防止部150は、半円筒状の形状を有している。なお、流動防止部150は、たとえば、回路基板110の端縁に沿って延びる平板状の部分と、その平板状の部分の端部において、平面視で円形の導電性接続部140の外周に沿って回路基板110の端縁へ向けて湾曲する円弧状の部分とを有してもよい。この場合、回路基板110の開口部115は、流動防止部150の形状に対応する円弧状の形状または直線状の部分と円弧状の部分とを有している。
【0023】
図2に示すように、流動防止部150は、導電性接続部140と電子部品112との間に連絡通路151を有している。図2に示す例において、流動防止部150は、平面視で円形の導電性接続部140の対象配線111に対向する半円筒状の側面に隣接して設けられ、導電性接続部140に外縁に沿う半円筒状の形状を有している。流動防止部150の連絡通路151は、たとえば、導電性接続部140と電子部品112との間の位置に設けられている。また、連絡通路151は、たとえば、対象配線111と導電性接続部140との距離が最短となる経路上に設けられている。
【0024】
回路基板110の筐体グランド113は、たとえば、導電性接続部140に接続される第1接続部113aと、電子部品112に接続される第2接続部113bと、を有している。図2に示すように、第1接続部113aは、たとえば、回路基板110の外周縁に沿って設けられた枠状の筐体グランド113において、導電性接続部140の平面形状に対応する円形に拡張されたパッド状の部分である。また、第2接続部113bは、たとえば、枠状の筐体グランド113の内側で対象配線111に隣接して設けられた矩形のパッド状の部分である。
【0025】
また、筐体グランド113は、たとえば、流動防止部150の連絡通路151を通り、第1接続部113aと第2接続部113bとを接続する連絡部113cを有している。連絡部113cは、たとえば、第1接続部113aと第2接続部113bとを最短経路で結ぶ直線状に設けられている。連絡部113cの幅は、たとえば、対象配線111のノイズを低減可能な範囲で可能な限り狭くされる。
【0026】
これにより、流動防止部150の連絡通路151の幅を可能な限り狭くすることができ、導電性接続部140の対象配線111へ向けた流動を防止することができる。なお、導電性接続部140の粘度を、連絡通路151の幅に応じて適切に設定することで、導電性接続部140の対象配線111へ向けた流動を防止してもよい。また、導電性接続部140の連絡通路151を通した流動をより確実に防止するために、流動防止部150は、たとえば、遮蔽部152を有してもよい。
【0027】
遮蔽部152は、たとえば、図2および図3に二点鎖線で示すように、導電性接続部140と連絡通路151との間に配置され、導電性接続部140と連絡通路151との間の経路を遮蔽する壁状の部分である。遮蔽部152は、たとえば、カバー130の回路基板110に対向する面から回路基板110へ突出させて設けられている。なお。遮蔽部152は、たとえば、筐体グランド113の第1接続部113aまたは連絡部113cの上に連絡通路151を遮蔽するように固定されていてもよい。
【0028】
シール部材160は、たとえば、図1に示すように、ベース部120とカバー130との間に配置される枠状の部分と、ベース部120とコネクタ170との間に配置される枠状の部分とを有している。シール部材160は、ベース部120とカバー130との間をシールするとともに、ベース部120とコネクタ170との間をシールする。
【0029】
コネクタ170は、たとえば、図1に示すように、回路基板110に取り付けられた状態でベース部120の開放された前部に配置され、ベース部120およびカバー130によってシール部材160を介して上下左右から支持される。コネクタ170は、回路基板110の回路に接続された複数のコネクタピン171を有し、図示を省略する接続ケーブルに接続される。
【0030】
以下、前述の特許文献1に記載された従来の電子制御装置との対比に基いて、本実施形態の電子制御装置100の作用を説明する。
【0031】
上記従来の電子制御装置は、前述のように、導電性接続部と電子部品との間に凸状部材が配置され、導電性接続部と凸状部材とが当接されている。これにより、導電性材料を回路基板上の所定の位置に設置する際、その回路基板面での不要な広がりを防止できる。したがって、回路基板上の部品禁止帯を小さく設定した場合でも、導電性材料の回路基板上での電子部品や配線パターンとの接触を防止でき、回路の破損を防止することができる。
【0032】
このような電子制御装置においては、エミッション(EMI)の抑制とイミュニティ(EMS)の向上、すなわち、電磁両立性(EMC)のさらなる向上が求められている。しかし、上記従来の電子制御装置は、凸状部材が障害となり、回路基板の実装領域に設けられたクロック配線等の対象配線の近傍の信号グランドを、金属カバーに接続された導電性接続部の近傍の筐体グランドに接続することが困難になる。すなわち、対象配線の近傍から導電性接続部の近傍の筐体グランドに至る信号グランドの経路は、凸状部材を迂回する経路となり、信号グランドのインピーダンスが増加して放射ノイズが増加する。
【0033】
これに対し、本実施形態の電子制御装置100は、前述のように、回路基板110と、その回路基板110を支持する樹脂製のベース部120と、そのベース部120に支持されたベース部120を覆う金属製のカバー130と、を有している。また、電子制御装置100は、カバー130を回路基板110に接続する導電性接続部140と、その導電性接続部140の広がりを防止する流動防止部150と、を有している。回路基板110は、ノイズ低減の対象となる対象配線111と、その対象配線111の近傍に実装される電子部品112と、を有している。また、回路基板110は、電子部品112に接続される信号グランド114と、電子部品112を介して信号グランド114に接続されるとともに導電性接続部140を介してカバー130に接続される筐体グランド113と、を有している。そして、流動防止部150は、導電性接続部140と電子部品112との間に連絡通路151を有している。さらに、筐体グランド113は、導電性接続部140に接続される第1接続部113aと、電子部品112に接続される第2接続部113bと、流動防止部150の連絡通路151を通り第1接続部113aと第2接続部113bとを接続する連絡部113cと、を有している。
【0034】
このような構成により、本実施形態の電子制御装置100は、流動防止部150を迂回することなく、対象配線111の近傍の信号グランド114を、導電性接続部140を介してカバー130に接続された筐体グランド113に接続することができる。より詳細には、導電性接続部140に接続された筐体グランド113の第1接続部113aと、対象配線111の近傍で電子部品112を介して信号グランド114に接続された筐体グランド113の第2接続部113bとを、筐体グランド113の連絡部113cによって接続している。この連絡部113cは、導電性接続部140と電子部品112との間に設けられた流動防止部150の連絡通路151を通過している。
【0035】
そのため、導電性接続部140に接続された筐体グランド113の第1接続部113aから、電子部品112を介して対象配線111の近傍の信号グランド114に接続された筐体グランド113の第2接続部113bに至る経路が短縮される。これにより、電子制御装置100は、流動防止部150によって導電性接続部140の不要な広がりを防止しつつ、金属製のカバー130と対象配線111の近傍の信号グランド114との間の経路のインピーダンスを低下させることができる。より具体的には、本実施形態の電子制御装置100は、たとえば、上記従来の電子制御装置と比較して、寄生インダクタンスが支配的となる100MHz以上の周波数において、上記経路のインピーダンスを約75%程度、低減することが可能になる。
【0036】
このように、ノイズ源となる対象配線111のリターン経路である信号グランド114が、キャパシタまたはコンデンサなどの電子部品112、筐体グランド113、貫通ビア116、および導電性接続部140を介してカバー130に低インピーダンスで接続される。その結果、信号グランド114を安定化させ、対象配線111におけるコモンモードノイズの発生を抑制することができる。したがって、本実施形態の電子制御装置100によれば、導電性接続部140が回路基板110の表面で不要に広がることを防止しつつ、放射ノイズを抑制して、EMCを向上させることができる。
【0037】
また、本実施形態の電子制御装置100において、流動防止部150の連絡通路151は、対象配線111と導電性接続部140との距離が最短となる経路上に設けられている。このような構成により、連絡通路151を通り、導電性接続部140に接続された第1接続部113aと、電子部品112に接続された第2接続部113bとを接続する連絡部113cの長さを最短にすることができる。したがって、本実施形態の電子制御装置100によれば、金属製のカバー130と対象配線111の近傍の信号グランド114との間の経路のインピーダンスをより低下させ、EMCをより向上させることができる。
【0038】
また、本実施形態の電子制御装置100において、流動防止部150は、ベース部120に設けられた凸部であり、回路基板110は、流動防止部150を貫通させる開口部115を有している。このような構成により、樹脂製のベース部120と流動防止部150とを一体に成形することが可能になり、電気絶縁性を有する流動防止部150を容易に形成することができる。また、ベース部120に回路基板110を配置するときに、回路基板110の開口部115に流動防止部150を挿通させ、ベース部120に対して回路基板110を位置決めすることができ、電子制御装置100の組立性が向上する。
【0039】
また、本実施形態の電子制御装置100は、前述のように、導電性接続部140と流動防止部150の連絡通路151との間に配置され、導電性接続部140と連絡通路151との間の経路を遮蔽する遮蔽部152を有することができる。このような構成により、遮蔽部152によって、導電性接続部140が連絡通路151に浸入または通過することを防止して、導電性接続部140が不要に広がることを、より確実に防止することが可能になる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態によれば、導電性接続部140が回路基板110の表面で不要に広がることを防止しつつ、EMCを向上させることが可能な電子制御装置100を提供することができる。なお、本開示に係る電子制御装置は、前述の実施形態に係る電子制御装置100の構成に限定されない。以下、図5および図6を参照して、前述の実施形態に係る電子制御装置100の変形例を説明する。
【0041】
図5は、図2の電子制御装置100の変形例1を示す模式的な拡大図である。本変形例に係る電子制御装置100において、導電性接続部140は、回路基板110の端縁に沿う方向の寸法が、回路基板110の端縁に交差する方向の寸法よりも大きい。より具体的には、導電性接続部140は、回路基板110の端縁に沿って延びる直線部と、その直線部の両端の半円状の端部とを有する長円形の平面形状を有している。このような構成により、導電性接続部140と、筐体グランド113およびカバー130との接触面積を増加させ、筐体グランド113とカバー130との間のインピーダンスをさらに低下させることが可能になる。
【0042】
また、本変形例に係る電子制御装置100において、流動防止部150は、回路基板110の端縁に沿う方向において、導電性接続部140の両端よりも外側まで延びる長さを有している。また、回路基板110の開口部115は、それぞれ、導電性接続部140に沿う長さが15mm以下になっている。このような構成により、回路基板110の開口部115の長さに応じて発生するスリット放射の周波数を、EMI規格が設定されていない6GHz以上の周波数へシフトさせることができる。
【0043】
図6は、図2の電子制御装置100の変形例2を示す模式的な拡大図である。本変形例に係る電子制御装置100は、回路基板110の一つの端縁に沿って二つの導電性接続部140が隣接して配置されている。また、流動防止部150は、二つの導電性接続部140と電子部品112との間に配置され、二つの導電性接続部140の間に連絡通路151を有している。筐体グランド113は、二つの導電性接続部140に接続される二つの第1接続部113aと、連絡通路151を通り二つの第1接続部113aの間の部分と第2接続部113bとを接続する連絡部113cと、を有している。このような構成によっても、前述の実施形態に係る電子制御装置100と同様の効果を奏することができる。
【0044】
以上、図面を用いて本開示に係る電子制御装置の実施形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本開示に含まれるものである。
【0045】
たとえば、前述の電子制御装置の実施形態において、流動防止部の形状は、直線状の部分の両端に円弧状の部分を有する形状や、半円筒状の形状であった。しかし、流動防止部の形状は、たとえば、一端が開放されたチャネル形状または角型のU字形状、直線状の形状、複数のピンが直線状に並んだ形状など、任意の形状を採用することができる。また、流動防止部は、成形性向上のためのリブを有してもよい。
【符号の説明】
【0046】
100 電子制御装置
110 回路基板
111 対象配線
112 電子部品
113 筐体グランド
113a 第1接続部
113b 第2接続部
113c 連絡部
114 信号グランド
115 開口部
120 ベース部
130 カバー
140 導電性接続部
150 流動防止部
151 連絡通路
152 遮蔽部
図1
図2
図3
図4
図5
図6